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  • 特許-健康用物品 図1
  • 特許-健康用物品 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】健康用物品
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/44 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
A61N1/44
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020009533
(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公開番号】P2021115181
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】522484870
【氏名又は名称】麻吹ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100157428
【弁理士】
【氏名又は名称】大池 聞平
(72)【発明者】
【氏名】麻吹 由香
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-285423(JP,A)
【文献】特開2002-306220(JP,A)
【文献】特開2005-171013(JP,A)
【文献】特開2005-319399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00 ― 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人又はペットなどの動物によって使用される健康用物品であって、
当該物品の少なくとも一部を構成し、主成分である樹脂に対し、マイナスイオンを放出する粒又は粉末をイオン放出材として配合された物品構成材と、
光触媒活性を有する微粒子であって、前記物品構成材の表面に自己結合している多数の微粒子により構成された微粒子コーティングとを備え、
前記物品構成材の総重量に対する前記イオン放出材の含有量は、10重量%以上であり、
前記物品構成材の主成分の樹脂として、透明のシリコン樹脂及び黒色のシリコン樹脂が併用され、前記透明のシリコン樹脂及び前記黒色のシリコン樹脂の総重量に対し、前記黒色のシリコン樹脂の含有量は、5重量%以上15重量%以下である、健康用物品(但し、イオン放出材が配合された合成繊維を用いた物品を除く。)
【請求項2】
前記物品構成材の総重量に対する前記イオン放出材の含有量は、5重量%以下である、請求項に記載の健康用物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイナスイオンを放出する健康用物品等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、マイナスイオンを放出する物質を含有する健康用物品が知られている。健康用物品としては、例えばネックレスなどの装身具が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、天然鉱物の混合物を充填したチューブを使用した健康具が記載されている。この健康具のチューブには、微弱放射線を放出する鉱物として、ZrO、SiO、P、Al、Fe、TiO、ThOなどの成分を粉砕配合した粉もしくは粒が充填されており、この成分が、静止した状態で半永久的に微弱の自然放射線を放出し、かつ、マイナスイオン、遠赤外線を大量に放出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3113338号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、マイナスイオンを放出する健康用物品は、マイナスイオンを放出する粒又は粉末を含有させる分だけ高価になる。しかし、健康用物品は、紫外線に晒されて使用されることが多く、紫外線により劣化して長期間に亘って使用できない虞がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、マイナスイオンを放出する健康用物品において、紫外線により劣化しにくい健康用物品を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するべく、第1の発明は、人又はペットなどの動物によって使用される健康用物品であって、当該物品の少なくとも一部を構成し、マイナスイオンを放出する粒又は粉末をイオン放出材として含有する又は付着させた物品構成材と、光触媒活性を有する微粒子であって、物品構成材の表面に自己結合している多数の微粒子により構成された微粒子コーティングとを備えている、健康用物品である。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、物品構成材は、主成分である樹脂に対し、イオン放出材が配合されたものである。
【0009】
第3の発明は、第2の発明において、物品構成材の総重量に対するイオン放出材の含有量は、8重量%以上で15重量%以下である。
【0010】
第4の発明は、第2の発明において、物品構成材の総重量に対するイオン放出材の含有量は、10重量%以上であり、物品構成材の主成分の樹脂として、透明のシリコン樹脂及び黒色のシリコン樹脂が併用されている。
【0011】
第5の発明は、第1の発明において、物品構成材は、イオン放出材を付着させた生地により構成されている。
【0012】
第6の発明は、人又はペットなどの動物によって使用される健康用物品であって、当該物品の少なくとも一部を構成し、主成分である樹脂に対し、マイナスイオンを放出する粒又は粉末がイオン放出材として配合された物品構成材と、光触媒活性を有する微粒子であって、物品構成材の表面に自己結合している多数の微粒子により構成された微粒子コーティングとを備え、物品構成材の総重量に対するイオン放出材の含有量は、8重量%以上で15重量%以下である。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、イオン放出材を放出する物品構成材の表面に、光触媒活性を有する微粒子コーティングが施されている。そのため、紫外線が微粒子コーティングにより吸収され、物品構成材に到達する紫外線が減少する。従って、紫外線により劣化しにくい健康用物品を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、第1の実施形態に係るネックレスの斜視図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るネックレス、又は、第2の実施形態のイオン放出生地の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態は、人又はペットなどの動物が、着用して、装着して、手で持って、足に履いて、又は持ち歩いて使用する健康用物品などに関する。健康用物品は、例えば、装身具(ネックレス、ブレスレット、ペット用の装身具(首輪など)など)、衣服、帽子、身の回り品(傘、かばん、携帯用化粧道具入れなど)、寝具(人用又はペット用)である。
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一例であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0017】
<第1の実施形態>
本実施形態に係る健康用物品は、図1に示すように、人が首に装着するネックレス10である。ネックレス10は、図2に示すように、紐状のネックレス本体11と、ネックレス本体11の表面に施された微粒子コーティング12とを備えている。ネックレス本体11には、飾りとしてペンダントトップ13が取り付けられている。また、ネックレス本体11の両端部には、その両端部を繋ぐ留め具(図示省略)が設けられている。なお、ネックレス本体11は、健康用物品の少なくとも一部を構成する物品構成材に相当する。
【0018】
ネックレス本体11は、シリコン樹脂などの樹脂を主成分とする、伸縮性がある紐状体である。ネックレス本体11は、マイナスイオンを放出する粉末(又は粒)をイオン放出材として含有する。具体的に、ネックレス本体11は、シリコン樹脂に対しイオン放出材が配合されたものである。そのため、周囲の花粉や微小粒子物質(PM2.5)がマイナスに帯電して、体表面に吸着されたり、重くなって落下したりして、鼻孔から吸収されにくくなる。イオン放出材の原料としては、イオン及び遠赤外線の放射によるイオン化作用を有するもの(例えば、トルマリンなどの鉱石、セラミックスなど)を用いることができる。
【0019】
ここで、ネックレス10は、顔に近い位置で使用される。そのため、マイナスイオンの効果として、花粉症を和らげる効果が期待できる。しかし、イオン放出材の含有量が少ない場合は、マイナスイオンの測定値が低く、十分な花粉症の効果が期待できない。そのため、十分な花粉症の効果が期待できるように、ネックレス本体11の総重量に対するイオン放出材の含有量を、8重量%以上としている。なお、この含有量は10重量%以上が好ましい。
【0020】
一方で、イオン放出材の含有量が15重量%を超えると、ネックレス本体11の弾力性が低下し、引っ張り荷重に対してネックレス本体11の強度が不足する虞があることが分かった。また、この含有量が15重量%を超えると、マイナスイオンの測定値が大きく伸びないことも分かった。そこで、本実施形態では、ネックレス本体11の総重量に対するイオン放出材の含有量を、15重量%以下としている。なお、引っ張り荷重に対して十分な強度を得るためには、この含有量は12重量%以下が好ましい。
【0021】
微粒子コーティング12は、光触媒活性を有する微粒子により構成されている。この微粒子としては、例えば、二酸化チタン又は水酸化チタンなどのチタン系微粒子を用いることができる。この場合に、二酸化チタン又は水酸化チタンのみを用いてもよいし、二酸化チタンと水酸化チタンを併用してもよい。
【0022】
チタン系微粒子は、最大粒径が100nm以下である。通常、二酸化チタンなどを用いた光触媒コーティングは、バインダーに二酸化チタン等の粒子を配合したものを用いる。この場合、多くの粒子がバインダーに埋もれて、十分な光触媒効果が発揮されない。それに対し、本実施形態では、チタン系微粒子が超微粒子であるため、チタン系微粒子は、分子間力による自己結合性を有し、バインダーを用いなくても、ネックレス本体11の表面に自己結合(付着)する。微粒子コーティング12は、バインダーを利用しておらず、図2に示すように、ほとんどのチタン系微粒子が露出した状態になっているため、優れた光触媒効果を発揮する。
【0023】
[ネックレスの製造方法]
ネックレス10の製造方法は、ネックレス本体11を製造する本体製造ステップと、ネックレス本体11に対し微粒子コーティング12を施すコーティングステップとを、この順番で行う。
【0024】
本体製造ステップでは、シリコン樹脂などの樹脂にイオン放出材を配合する配合工程と、イオン放出材が配合された樹脂を紐状に成形する成形工程とを、この順番で行う。
【0025】
ここで、黒色のネックレス本体11を作製しようとして、配合工程において黒色のトナーを配合する場合に、イオン放出材の含有量が10重量%を超えると、イオン放出材の影響により、ネックレス本体11は、黒色にならず灰色になってしまった。つまり、花粉低減効果を高めるためにイオン放出材の含有量を多くする場合、配合工程において黒色のトナーを配合したのでは、黒色のネックレス本体11は得られなかった。そこで、本実施形態では、着色にトナーを用いず、透明のシリコン樹脂及び黒色のシリコン樹脂を併用して、黒色のネックレス本体11を作製している。なお、黒色のシリコン樹脂の配合比率を多くすると使用者への色移りが発生する虞がある。そのため、透明のシリコン樹脂及び黒色のシリコン樹脂の総重量に対し、黒色のシリコン樹脂は、5重量%以上15重量%以下(例えば10重量%)としている。
【0026】
コーティングステップでは、二酸化チタンを微粒子化させる微粒化工程と、二酸化チタンの微粒子を水溶液に分散させて水溶性コーティング剤を得る分散工程と、水溶性コーティング剤をネックレス本体11に噴霧することによりネックレス本体11をコーティングする噴霧工程とが、この順番で行われる。
【0027】
微粒化工程では、例えば常温で、原料である四塩化チタンを、水溶性アルコール類の水溶液と反応させて、二酸化チタンの粒子として、最大粒径100nm以下の微粒子を得る。この反応では、四塩化チタンが水と反応して二酸化チタンの微粒子が生成される。その際、水溶性アルコール類が水溶液になることによって、四塩化チタンと水分子の反応が、急速かつ連続した状態で起きることを阻害するため、反応生成物が相互に集合して大きくなっていくことを回避することができる。なお、微粒化工程において、水酸化チタンの微粒子を生成するようにしてもよい。
【0028】
なお、水溶性アルコール類の水溶液の組成について、水溶性アルコール類の割合は、50体積%以上で、80体積%以下の範囲にすることが望ましい。水溶性アルコール類の割合が50体積%未満の場合、四塩化チタンと水の反応が急速に進み、反応生成物である二酸化チタンの量が水溶液中で過剰となって、微粒子が相互に会合凝集を起こし、粒子サイズが大きくなる。一方、水溶性アルコール類の割合が80体積%を超える場合、水分が不足し、粒子径にばらつきが生じ、微粒子を均一に分散させることができなくなる。
【0029】
また、四塩化チタンの添加量について、水溶性アルコール類の水溶液の総体積に対し、10体積%以下が望ましい。四塩化チタンの添加量が10体積%を超えると、反応生成物である二酸化チタンの量が水溶液中で過剰となって、微粒子が相互に会合凝集を起こし、粒子サイズが大きくなるためである。
【0030】
噴霧工程では、例えば、吊るした状態のネックレス本体11に対し、分散工程で得た水溶性コーティング剤を噴霧する。水溶性コーティング剤の噴霧は、ネックレス本体11に対し複数の方向から行う。そして、噴霧工程後にネックレス本体11の表面を乾燥させた後に、ペンダントトップ13及び留め具を取り付けることで、本実施形態に係るネックレス10が完成する。
【0031】
[本実施形態の効果等]
本実施形態では、イオン放出材を含有するネックレス本体11の表面に、光触媒活性を有する微粒子コーティング12が施されている。ここで、マイナスイオンの効果としては、発生するラジカルの酸化力を利用して周囲を滅菌する効果があると言われている。一方、光触媒の効果としても、酸化力を利用して滅菌効果があると言われている。そのため、滅菌効果という点においては、イオン放出材に対し光触媒を組み合わせる必要はない。本実施形態では、光触媒の効果として紫外線吸収に敢えて着目し、上述の微粒子コーティング12を採用している。本実施形態によれば、ネックレス本体11に到達する紫外線が減少して、紫外線により劣化しにくいネックレス10を実現することができる。
【0032】
<第2の実施形態>
本実施形態は、イオン放出材を付着させた生地11(「イオン放出生地」と言う。)を利用した健康用物品10である。健康用物品10としては、イオン放出生地11を用いた衣服、帽子又は寝具などである。健康用物品10は、図2に示すように、物品構成材であるイオン放出生地11と、イオン放出生地11の表面に施された微粒子コーティング12とを備えている。なお、衣服などは、人用ではなく、ペット用であってもよい。
【0033】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、光触媒活性を有する微粒子コーティング12によりイオン放出生地11が劣化しにくくなる。さらに、本実施形態によれば、微粒子コーティング12によりイオン放出生地11を通過する紫外線が減少するため、衣服又は帽子の着用者の日焼けを抑制することができる。
【0034】
なお、健康用物品10は、骨部材に取り付けられる傘生地11に、イオン放出生地を用いた傘であってもよい。この傘によれば、傘の使用者の日焼けを抑制することができる。
【実施例
【0035】
シリコン樹脂に対してイオン放出材を配合したネックレス本体11について、花粉除去性能試験を行った。ネックレス本体11の総重量に対するイオン放出材の含有量は、10重量%とした。
【0036】
測定は、60リットル(50cm×40cm×30cm)のボックス内に、ネックレス本体11を入れた場合と、ネックレス本体11を入れない場合のそれぞれについて、7500個/cc濃度の花粉(スギ花粉またはヒノキ花粉)を入れて、時間の経過に従って花粉の濃度を測定した。この濃度の測定機器としては、DYDOS CORPORATION製のDC110プロB型を使用した。表1には、初期濃度を100%とした花粉の濃度変化を示す。
【0037】
【表1】
【0038】
花粉除去性能試験によれば、本実施例は、スギ花粉とヒノキ花粉の何れに対しても濃度を低下させる効果があることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、マイナスイオンを放出する健康用物品等に適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
10 ネックレス(健康用物品)
11 ネックレス本体(物品構成材)
12 微粒子コーティング
13 ペンダントトップ
図1
図2