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特許7401117内部チャネルを有する3Dプリントインプラント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】内部チャネルを有する3Dプリントインプラント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/12 20060101AFI20231212BHJP
   A61F 2/02 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
A61F2/12
A61F2/02
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021518991
(86)(22)【出願日】2019-06-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 EP2019065264
(87)【国際公開番号】W WO2019238716
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】18177214.6
(32)【優先日】2018-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520489628
【氏名又は名称】ベラセノ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】BELLASENO GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】チャヤ, モヒット パラシャント
(72)【発明者】
【氏名】デサイ, アルピタ
(72)【発明者】
【氏名】カニ, ネーヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ルカロッティ, ザラ
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-528225(JP,A)
【文献】特開2008-188132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/02
A61F 2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に挿入するためのインプラント(16、33、52、61、62)であって、該インプラントは、
層(71、72、101)の3次元(3D)プリント構造と、
壁部を含む複数の中空チャネル(21)とを含み、
それぞれの前記層(71、72)は前記3次元プリント構造の充填パターン(76、77)を含み、それぞれの前記層の前記充填パターン(76、77)は一連の充填ラインを含み、
前記層(71、72)は、前記複数の中空チャネル(21)が前記インプラント内に形成されるように互いに重ねられて配置され、それぞれの前記チャネル(21)の前記壁部は、前記層のプリント構造における複数の層の前記充填ラインのセクションによって形成され、
前記複数の中空チャネル(21)のうちの少なくとも1つの中空チャネル(21)は、前記インプラントの第1外面と前記インプラントの第2外面との間に延在し、
前記少なくとも1つの中空チャネル(21)は、前記インプラントの前記第1外面に対して垂直の基準軸に対して傾斜する方向(53)に向き、
前記少なくとも1つの中空チャネルの長手方向軸と前記基準軸との角度は10度~85度の間である、インプラント。
【請求項2】
前記インプラントの前記第1外面及び前記第2外面は対向する面である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記第1外面は、前記3次元(3D)プリント構造の第1層によって形成された2次元平面に対して平行である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項4】
前記第1外面は前記インプラントの最大平板状面である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項5】
前記層(71、72、101)の3次元(3D)プリント構造は、第1組の層と第2組の層とを含み、
前記第1組の層は、前記層の3次元(3D)プリント構造の奇数層を含み、
前記第2組の層は、前記層の3次元(3D)プリント構造の偶数層を含み、
前記第1組の層の前記充填ラインは第1方向に向き、前記第2組の層の前記充填ラインは、前記第1方向と異なる第2方向に向き、
前記第1組の層の前記奇数層における前記充填パターンの部分は、前記第1組の層の第1充填層における前記充填パターンの部分に対して移動している、請求項1に記載のインプラント。
【請求項6】
前記第2組の層の前記偶数層における前記充填パターンの部分は、前記第2組の層の第1充填層における前記充填パターンの部分に対して移動している、請求項に記載のインプラント。
【請求項7】
第1奇数層の第1充填ライン(10211)と第2奇数層の第1充填ライン(10231)との間の横方向オフセット値は、前記第1奇数層の前記第1充填ライン(10211)と前記第1奇数層の隣接する第2充填ライン(10212)との間の距離の0%~50%の間である、請求項又はに記載のインプラント。
【請求項8】
第1奇数層の第1充填ライン(10211)と第2奇数層の第1充填ライン(10231)との間の横方向オフセット値は、前記第1奇数層の前記第1充填ライン(10211)と前記第1奇数層の隣接する第2充填ライン(10212)との間の距離の50%~100%の間である、請求項又はに記載のインプラント。
【請求項9】
前記複数の中空チャネルは、前記インプラントの前記第1外面又は前記第2外面の所定の領域(97)に向かって集中する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項10】
前記所定の領域(97)は、前記インプラントの前記第1外面又は前記第2外面を超えて位置する集中点である、請求項に記載のインプラント。
【請求項11】
少なくとも1つの中空チャネルはテーパー状チャネルである、請求項1又はに記載のインプラント。
【請求項12】
前記テーパー状チャネルは、前記インプラントの下面における前記チャネルの開口部のサイズが5~10mmの範囲であり、前記インプラントの上面における前記チャネルの開口部のサイズが0.5~5mmの範囲であるように構成される、請求項11に記載のインプラント。
【請求項13】
前記複数の中空チャネルのうちの少なくとも1つの中空チャネルは、前記インプラントの前記第1外面における第1開口部、及び前記インプラントの前記第2外面における第2開口部を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項14】
前記複数の中空チャネルのうちの少なくとも1つの中空チャネルは、傾斜部分及び少なくとも1つの非傾斜部分を含み、前記チャネルの前記非傾斜部分は前記インプラントの1つ以上の最外層を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項15】
前記少なくとも1つの中空チャネルの前記非傾斜部分は、前記インプラントの前記第1外面又は前記インプラントの前記第2外面における前記チャネルの開口部と、前記少なくとも1つの中空チャネルの前記傾斜部分との間に位置する、請求項14に記載のインプラント。
【請求項16】
前記複数の中空チャネルのうちの2つを超える中空チャネルは、前記基準軸に対して同じ角度だけ傾斜することができる、請求項1に記載のインプラント。
【請求項17】
前記複数の中空チャネルのうちの少なくとも10%の前記中空チャネルは、前記基準軸に対して同じ角度だけ傾斜することができる、請求項1に記載のインプラント。
【請求項18】
前記層(71、72、101)の3次元(3D)プリント構造は、第1組の層と第2組の層とを含み、
前記第1組の層は、前記層の3次元(3D)プリント構造の奇数層を含み、
前記第2組の層は、前記層の3次元(3D)プリント構造の偶数層を含み、
中空チャネルの第1壁部は、前記第1組の層の複数の奇数層のセクションによって形成され、
前記中空チャネルの第2壁部は、前記第1組の層の複数の偶数層のセクションによって形成される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項19】
それぞれの前記層の前記充填パターンは、前記層が互いに重ねられて配置されるとき、前記インプラントが3D形態を有するように、周囲部(78)に接する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項20】
それぞれの前記層の前記充填パターンは、前記層の開始点(74)から前記層の終了点(75)まで連続的に蛇行するプリント材料を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項21】
インプラントを形成する方法であって、該方法は、3次元(3D)プリント構造を形成するように、層を順次プリントすることを含み、
それぞれの前記層は充填パターンにしたがってプリントされ、それぞれの前記層の前記充填パターンは一連の充填ラインを含み、
前記層(71、72)は、壁部を含む複数の中空チャネル(21)が前記インプラント内に形成されるように互いに重ねられてプリントされ、それぞれの前記チャネル(21)の前記壁部は、前記層のプリント構造における複数の層の前記充填ラインのセクションによって形成され、
前記複数の中空チャネルのうちの少なくとも1つの中空チャネル(21)は、前記インプラントの第1外面と前記インプラントの第2外面との間に延在し、
前記少なくとも1つの中空チャネル(21)は、前記インプラントの前記第1外面に対して垂直の基準軸に対して傾斜する方向(53)に向き、
前記少なくとも1つの中空チャネルの長手方向軸と前記基準軸との角度は10度~85度の間である、方法。
【請求項22】
形成される前記チャネルの傾斜を定めるチャネル方向ベクトルを提供すること、
第1の高さで形成される層の第1孔の孔寸法を特定し、前記第1孔は第1ラインセグメントによって表されること、及び
第2の高さで形成される層の第2孔の孔寸法を特定し、前記第2孔は第2ラインセグメントによって表され、前記第1孔及び前記第2孔は形成される同じチャネルに属することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
第1ラインセグメントの左終了点と第2ラインセグメントの左終了点とを接続することで第1方向ラインを計算すること、
前記第1ラインセグメントの右終了点と前記第2ラインセグメントの右終了点とを接続することで第2方向ラインを計算すること、ここで、前記チャネル方向ベクトルは前記第2方向ラインに位置し、及び
前記第1方向ラインと前記第2方向ラインとの交点を計算して、形成される前記チャネルの集中点を定めること、によって形成される前記チャネルの集中点を定めることをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記集中点は、形成される前記インプラントの前記第1外面の外側又は前記第2外面の外側に位置する、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2018年6月12日に欧州特許庁に出願した欧州特許出願第18177214.6号の優先権を主張し、すべての表、図面、及び特許請求の範囲を含むその全体が言及によってあらゆる目的のため本明細書に援用される。
【0002】
[技術分野]
本発明は、インプラントの分野、特に内部チャネルを有する3D(3次元)プリントインプラント及びその製造に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、乳房増大術や乳房再生術は、美容上の理由で最も一般的に行われる手術の1つである。乳房手術において美容上の面は重要な役割を果たすので、手術を受ける女性の最も大きな関心の1つは最終的な結果におけるその外観である。実際に、美容上の面は、特に乳がんを経験し、その結果その自然な乳房組織の一部を除去した女性にとって、患者の心理状態にも重要である。ゆえに、この分野への注目度は大きくなってきている。現在のところ、種々の乳房再建術又は乳房増大術が用いられているが、両手術とも大部分がシリコーンインプラントの挿入に基づくものである。また、脂肪グラフトも一般的な技術であり、これら2つの手技の組合せは、最終的な結果を向上させるように、特に患者の美容上の期待に添うように、使用することができる。
【0004】
しかしながら、それらは形成外科手術において一般的であるにもかかわらず、シリコーンインプラントは、挿入インプラントの寸法に対応する不自然な見た目又は大きな瘢痕に関わる手術後の乳房の外観に関与する問題がある場合も多いとして知られる。さらに、シリコーンインプラント関わる主な問題は、その寿命が限られることである。シリコーンインプラントは一生涯の製品ではないため、インプラントは、所与の時間の後、身体内で破裂することがある。乳房被膜拘縮の形態における異物のインプラント材料に対する身体の免疫反応によるさらなる合併症が起こることがあり、これは乳房の硬さに影響し、不自然な触感をもたらし得る。被膜を処置する非手術法が存在するが、患者は、インプラントを摘出又は交換する第2の手術を受ける必要があることが多い。
【0005】
シリコーンインプラントに関する問題を解決するため、特に患者の安全性を向上するため、身体内組織再生を支援することを狙いとする、新しい生体吸収性インプラントの作製が考えられている。一部の熱可塑性プラスチックなどの生分解性材料は、物体に全体的な形状を与える型に溶融材料を注入する射出成形と呼ばれる技術を使用して製造することができる。残念ながら、複雑で細かい形状を作製する必要があるとき、このプロセスには制限がある。例えば、再生医学において、組織再生を可能にするために高多孔性構造をテンプレートとして用いる必要がある。
【0006】
近年、主に3Dプリント技術の急速な発展により、この技術はインプラント製造における使用に考慮されている。3Dプリンターは、典型的に、アディティブ法によって3D物体を作製する。より一般的には「3Dプリンティング」としても知られるが、アディティブ製造(AM)は、孔あけ、ミリングなどの材料ブロックのサブトラクションによって最も一般に行われる従来の機械加工とは本質的に異なるプロセスである、材料の層ごとの押し出しによって物理的部品を造形する技術群の最上位用語である。
【0007】
前述の乳房インプラントは、3Dプリンティング、特に溶解積層モデリング(FDM)技術、及びポリカプロラクトン(PCL)などの生分解性材料を用いて製造可能である。この特定のポリマーは、医療分野で広く使用されており、ゆえに規制機関によって既に承認されていることから、有利であり得る。最も重要な点は、PCLが分解を開始すると、新しい組織/血管構造が成長しインプラント内に定着可能であるというように、PCLが分解要件を満たすということである。
【0008】
3Dプリンティングによって製造したインプラントの挿入後、脂肪注入を行う必要がある。インプラント内で「再成長した」再生組織が自然の乳房組織よりも硬いということが観察されているため、脂肪注入は必要である。ゆえに、最終的な結果を自然の乳房組織ほど軟らかくするため、適切なパーセンテージの脂肪が、例えば脂肪吸引によって採取され、特定のニードルを用いてインプラントに注入される。注入の手技は、構造物に数回穿孔を行う無作為の注入がフィラメントを損傷し、全体的なインプラントの構造の完全性に影響し得るという意味で問題となる。この問題を解決するため、特許文献1に公開されている脂肪注入を容易にするインプラント設計手法及びインプラント自体を使用することができる。特許文献1に記載される手法は、身体内での組織再生を促進するインプラントの挿入、及び移植の所定期間後のその後の脂肪注入に関する。インプラントの損傷を避けるため、脂肪注入用のニードルを挿入するための空間を設ける必要がある。この目的で、特許文献1において公開されているインプラントは、3次元スキャフォールド構造に取り外し可能に取り付けられた空間占有構造で充填した空隙を有する3次元スキャフォールド構造を含む。空間占有構造は、組織及び/又は個々の細胞の該空隙への侵入を防ぐように設けられる。第2の手技において空間占有構造を取り外した後、好ましくは相互に接続されるとともに、1つの連続的なチャネル構造を形成し得る得られた空隙を、脂肪又は他の移植細胞で充填することができる。
【0009】
しかしながら、対応する3Dインプラントの設計は、製造の観点からはかえって困難であり、患者や外科医の観点からは理想的ではない。実際に、空間占有構造を取り外した後に形成されるチャネルを、3Dインプラントのプリントの際に考慮する必要があり、ゆえにプリント指示コードに含める必要があり、これは構造を脆弱にすることがある。さらに、空間占有構造を後に取り外すことはさらなる手技を必要とし、新しく再成長した組織を損傷し得ることから合併症を引き起こすことがあり、患者の安全性の問題をもたらし得、また、注入脂肪は壊死し得るか、又は予想される空隙空間容積と実際の注入脂肪の容積とのずれにより、構造物に十分に包埋されていないと再吸収され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】欧州特許出願公開第2995278号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、最終的な結果を向上するとともに、欠失した組織の再建、及び/又は組織/器官機能の回復を目的とした全体的な手技を容易にする改良したインプラントが当該技術分野おいて求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
種々の実施形態において、本発明は、層の3次元構造を含むインプラントに関し、各層は充填パターンを含み、該層は、複数の中空チャネルがインプラント内に形成されるように互いに重ねられて配置され、各中空チャネルは、層が互いに重ねられて配置される方向に対して傾斜する方向に向く。それぞれのチャネルの壁部は、充填パターンのセクションによって、特にプリント材料のフィラメント又はバーによって形成される。本記載の範囲内において、層の充填パターンの製造の際、プリンターによって押出される熱可塑性プラスチック原材料の部分又はセグメントは、フィラメントという。
【0013】
本発明におけるインプラントは、上述の問題を解決すること、特に、脂肪組織などの生物学的材料のインプラントへの注入を容易にすること、及び生物学的材料を注入するための空隙を作製する第2の手技を必要としなくなることを目的とする。以下において、一般性を失うことなく、脂肪又は脂肪細胞/組織のみを、インプラントへの注入に使用され得る生物学的材料の代表的な大きく関連する形態とする。しかしながら、その使用に対応して、他の任意のタイプの細胞又は生物学的材料をインプラントに注入できるということが理解される必要がある。
【0014】
本発明のインプラント構造は、インプラントの製造の際に必然的に生成されて、ゆえに機械指示(例えばGコード)において既に存在するチャネルを使用する。このようにして、そのいずれのフィラメントも損傷することなくインプラントに自然に形成されたチャネルに脂肪を注入することができる。この目的で、3Dプリントインプラントは高多孔性構造を示すので、インプラントは、インプラントを貫通する既存のチャネルが脂肪注入用チャネルと一致するように設計される。従来の3Dプリント物体においてプリント方向に沿って通常形成される種々の実施形態におけるインプラントのチャネルは方向づけられる。方向づけたチャネルは、プリント方向と平行に位置する必要はない。好ましくは、以下に記載されるように、チャネルは、外科医が脂肪をインプラントに注入することができる領域に向かってさらに集中させることができる。ゆえに、脂肪は、インプラント自体を損傷することなく、インプラントの必然的な構造、特にインプラントに形成される通路/チャネルを利用して、インプラントに注入することができる。特に、インプラントの設計において追加又は専用のチャネルを設ける必要はなく、ゆえに、特許文献1において知られる空間占有構造を用いる必要はない。
【0015】
「インプラント」という用語は、本願において使用するとき、失った生物学的構造を置換するため、損傷した生物学的構造を支持するため、及び/又は既存の生物学的構造を改良するために使用される医療装置に関する。特に、本発明のインプラントは、身体組織の再建、及び/又は組織若しくは器官の機能の回復のためのインプラントである。本記載において、インプラントは乳房再建又は乳房増大のためのインプラントとして記載されるが、インプラントは、任意の所望の生物学的材料で充填し、種々の身体の部位に用いることができる。好ましくは、インプラントは、生分解性材料でプリントすることができる。この目的のために適切な材料は、任意の熱可塑性プラスチック及び生体適合性又は生分解性の材料とすることができる。例えば、材料は、限定されるものではないが、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリグリコリド、ポリラクチド、及び/又はそれらの材料の少なくとも2つの(コ)-ポリマーを含むことができる又はそれらからなる。
【0016】
種々の実施形態は、患者に挿入するためのインプラントに関する。インプラントは、層の3次元(3D)プリント構造を含む。各層は、3次元プリント構造の充填パターンを含む。各層の充填パターンは、一連の充填ラインを含む。インプラントは、複数の中空チャネルをさらに含む。層は、複数の中空チャネルがインプラント内に形成されるように、互いに重ねられて配置される。各チャネルの壁部は、層のプリント構造における複数の層の充填ラインのセクションによって形成される。少なくとも1つの中空チャネルは、インプラントの第1外面とインプラントの第2外面との間に延在する。少なくとも1つの中空チャネルは、インプラントの第1外面に対して垂直の基準軸に対して傾斜する方向に向く。
【0017】
種々の実施形態において、インプラントの第1外面及び第2外面は対向する面である。
【0018】
種々の実施形態において、第1外面は、3次元(3D)プリント構造の第1層によって形成された2次元平面に対して平行である。
【0019】
種々の実施形態において、第1外面はインプラントの最大平板状面である。
【0020】
種々の実施形態において、チャネルの長手方向軸と基準軸との角度は、10度~85度の間である。
【0021】
種々の実施形態において、層の3次元(3D)プリント構造は、第1組の層と第2組の層とを含む。第1組の層は、層の3次元(3D)プリント構造の奇数層を含み、第2組の層は、層の3次元(3D)プリント構造の偶数層を含む。第1組の層の充填ラインは第1方向に向き、第2組の層の充填ラインは、第1方向と異なる第2方向に向く。第1組の層の奇数層における充填パターンの部分は、第1組の層の第1充填層における充填パターンの部分に対して移動している。
【0022】
種々の実施形態において、第2組の層の偶数層における充填パターンの部分は、第2組の層の第1充填層における充填パターンの部分に対して移動している。
【0023】
種々の実施形態において、第1奇数層の第1充填ラインと第2奇数層の第1充填ラインとの間の横方向オフセット値は、第1奇数層の第1充填ラインと第1奇数層の隣接する第2充填ラインとの間の距離の0%~50%の間である。
【0024】
種々の実施形態において、n+2×tの奇数層の第1充填ラインと第1奇数層の第1充填ラインとの間の横方向オフセット値は、第1奇数層の第1充填ラインと第1奇数層の隣接する第2充填ラインとの間の距離より小さく、式中、t値は2以下である。
【0025】
種々の実施形態において、第1奇数層の第1充填ラインと第2奇数層の第1充填ラインとの間の横方向オフセット値は、第1奇数層の第1充填ラインと第1奇数層の隣接する第2充填ラインとの間の距離の50%~100%の間である。
【0026】
種々の実施形態において、n+2×tの奇数層の第1充填ラインと第1奇数層の第1充填ラインとの間の横方向オフセット値は、第1奇数層の第1充填ラインと第1奇数層の隣接する第2充填ラインとの間の距離より大きく、式中、t値は2以上である。
【0027】
種々の実施形態において、複数の中空チャネルは、インプラントの第1外面又は第2外面の所定の領域に向かって集中する。
【0028】
種々の実施形態において、所定の領域は、インプラントの第1外面又は第2外面を超えて位置する集中点である。
【0029】
種々の実施形態において、少なくとも1つの中空チャネルは、テーパー状チャネルである。
【0030】
種々の実施形態において、テーパー状チャネルは、インプラントの下面におけるチャネルの開口部のサイズが5~10mmの範囲であり、インプラントの上面におけるチャネルの開口部のサイズが0.5~5mmの範囲であるように構成される。
【0031】
種々の実施形態において、複数の中空チャネルのうちの2つを超える中空チャネルは、基準軸に対して同じ角度だけ傾斜する。
【0032】
種々の実施形態において、複数の中空チャネルのうちの少なくとも10%の中空チャネルは、基準軸に対して同じ角度だけ傾斜する。
【0033】
種々の実施形態において、複数の中空チャネルのうちの少なくとも1つの中空チャネルは、インプラントの第1外面における第1開口部、及びインプラントの第2外面における第2開口部を含む。
【0034】
種々の実施形態において、複数の中空チャネルのうちの少なくとも1つの中空チャネルは、傾斜部分及び少なくとも1つの非傾斜部分を含み、チャネルの該非傾斜部分はインプラントの1つ以上の最外層を含む。
【0035】
種々の実施形態において、インプラントの非傾斜部分は、インプラントの第1外面又はインプラントの第2外面におけるチャネルの開口部と、インプラントの傾斜部分との間に位置する。
【0036】
種々の実施形態において、層の3次元(3D)プリント構造は、第1組の層と第2組の層とを含む。第1組の層は、層の3次元(3D)プリント構造の奇数層を含む。第2組の層は、層の3次元(3D)プリント構造の偶数層を含む。中空チャネルの第1壁部は、第1組の層の複数の奇数層のセクションによって形成される。中空チャネルの第2壁部は、第1組の層の複数の偶数層のセクションによって形成される。
【0037】
種々の実施形態において、各層の周囲部は、インプラントの投影3Dモデルのスライスによって定められる。各層の充填パターンは、層が互いに重ねられて配置されるとき、インプラントが該インプラントの3Dモデルに類似する3D形態を有するように、周囲部に接する。
【0038】
種々の実施形態において、各層の充填パターンは、層の開始点から層の終了点まで連続的に蛇行するプリント材料を含む。
【0039】
種々の実施形態は、インプラントを形成するための方法に関する。方法は、3次元(3D)プリント構造を形成するように、層を順次プリントすることを含み、各層は充填パターンにしたがってプリントし、各層の該充填パターンは一連の充填ラインを含む。層は、複数の中空チャネルがインプラント内に形成されるように、互いに重ねられてプリントされる。各チャネルの壁部は、層のプリント構造における複数の層の充填ラインのセクションによって形成される。各中空チャネルは、インプラントの第1外面とインプラントの第2外面との間に延在し、各中空チャネルは、インプラントの第1外面に対して垂直の基準軸に対して傾斜する方向に向く。
【0040】
種々の実施形態において、方法は、形成されるチャネルの傾斜を定めるチャネル方向ベクトルを提供すること、第1の高さで形成される層の第1孔の孔寸法を特定し、第1孔は第1ラインセグメントによって表されること、をさらに含む。方法は、第2の高さで形成される層の第2孔の孔寸法を特定し、第2孔は第2ラインセグメントによって表され、第1孔及び第2孔は形成される同じチャネルに属することをさらに含む。
【0041】
種々の実施形態において、方法は、第1ラインセグメントの左終了点と第2ラインセグメントの左終了点とを接続することで第1方向ラインを計算すること、第1ラインセグメントの右終了点と第2ラインセグメントの右終了点とを接続することで第2方向ラインを計算すること、ここで、方向ベクトルは第2方向ラインに位置し、第1方向ラインと第2方向ラインとの交点を計算することによって、形成されるチャネルの集中点を定めることをさらに含む。
【0042】
種々の実施形態において、集中点は、形成されるインプラントの第1外面の外側又は第2外面の外側に位置する。
【0043】
種々の実施形態において、インプラントを構成する相互接続層の3次元構造は、互いに積層した個々の層を含むスキャフォールド構造とすることができる。3Dインプラントは、互いに積層した層の形状を次第に変えることで、その所望の形態を得ることができる。インプラントの3Dスキャフォールド構造は、互いに隣接して配置されて互いに壁部で隔てられたチャネル又は孔を実質的に含むことができる。隣接するチャネル同士の間の距離又は隔たりは、チャネルの下層から上層まで同じとすることができる。例えば、隣接するチャネルを隔てる距離は、充填ラインの厚みとすることができる。チャネルの壁部は、1つおき(交互)の層のフィラメント(又はその一部)を含むことができる。例えば、チャネルの第1壁部は、奇数層の第1充填ラインのフィラメントを含むことができる。同チャネルの第2壁部は、奇数層の第2充填ラインのフィラメントを含むことができる。同チャネルの第3壁部は、偶数層の第1充填ラインのフィラメントを含むことができる。同チャネルの第4壁部は、偶数層の第2充填ラインのフィラメントを含むことができる。第1チャネルは、奇数層の第1充填ラインと奇数層の第2充填ラインとの間に形成することができる。隣接する第2チャネルは、奇数層の第2充填ラインと奇数層の第3充填ラインとの間とすることができる。一般に、層の充填パターンは設計パラメーターとし、例えばインプラントの機械的要件に対応して構成することができる。種々の実施形態において、層n及び層n+2の充填パターンは、それらの層の充填パターンが平行のバー/フィラメント(すなわち材料の一部)を含むことができるという意味で類似し得る。インプラントの充填層は、所定の層のバー及び連続する層のバーが、3Dインプラントの個々の設計に対応して、90°未満(例えば、少なくとも10°、好ましくは少なくとも30°、より好ましくは少なくとも45°、より好ましくは少なくとも60°、より好ましくは90°)の角度を形成するように構成することができる。言い換えると、所定の層のバーは、連続する層のバーに所定の角度で重ねることができる。隣接する層のバー同士の間の接続点は、層同士の相互接続点に対応し、インプラントに構造的完全性を与える。このようにして、いずれの層もその前の層及びその後の層に相互接続する。
【0044】
層nの充填パターンのバー/部分が層n+2のバー又は部分と平行である、互いに重ねられた層の配置は、バーが、インプラントのプリント方向から見て、すなわち層が互いに積層される方向から見て、オフセットするように互いに重ねられて配置されるようになっている。そうした構成により、傾くとともに、プリントの方向と平行にインプラントを貫通しない孔又はチャネルが形成される。ゆえに、インプラントの下部(面)、すなわちプリントされる第1層において開始し、インプラントの上部(面)、すなわちインプラントの表面の所定の位置において最後にプリントされるその層又は部分において終了する各チャネルは、プリント方向に対して傾斜する方向に向く。
【0045】
種々の実施形態において、チャネルのサイズは一定である、すなわちインプラントの任意の層のレベルにおけるチャネルの断面は同じとすることができる。その場合、チャネルの断面は、インプラントの下部におけるチャネルの開口部の幾何学的形状、及びインプラントの上部におけるチャネルの開口部に対応する。これらの実施形態において、傾斜角度、すなわち第1プリント層の平面と、その壁部それぞれと平行なチャネルを貫く軸との間の角度は、インプラントの各チャネルにおいて同じとすることができる。言い換えると、インプラントの各チャネルは、インプラントの下面の開口部とインプラントの上面の開口部との間の接続を形成する中空チャネルとして認められ、該チャネルは下面に対して垂直に延びないが、所定の方向に傾斜する。
【0046】
インプラントの種々の実施形態において、実質的に中空チャネルのそれぞれは、インプラントの上面に設けられた対応する第1開口部を含むことができ、該開口部のそれぞれはチャネルの端部に対応する。チャネルの開口部は、必ずしもインプラントの層と平行である平面に位置するわけではない。チャネルの開口部は、チャネルの開口部を画定するチャネル壁部のプリント材料の最外バー又は線が種々の層に属し得るという意味で、斜めとすることができる。本明細書において理解されるように、一部の材料のフィラメント又は線がその断面にわたるとしても、チャネルは中空であり開口すると考えられる。上部又は下部から(すなわちチャネルを貫く軸に沿って)見るとフィラメントが散在するチャネルもなお中空と考えられ、これは、チャネルの隅部同士の間に延在する単一のフィラメントが、チャネルに注入される脂肪を輸送するチャネルの能力に影響を及ぼさないためである。
【0047】
インプラントの種々の実施形態において、中空チャネルのそれぞれは、インプラントの上面に設けられた第1開口部と、インプラントの下面に設けられた第2開口部との間に延在することができる。インプラントの下面は、インプラントの製造時にプリントされる第1層に対応することができる。インプラントの上面は、(上下に1ずつ、2つの隣接する層を有する内部の層又は層の部分と対照的に)1つの隣接する層のみを有する層又は層の部分(例えばフィラメント)によって画定することができる。
【0048】
インプラントの種々の実施形態において、中空チャネルの任意の壁部は、インプラントを形成する層の配置において、1つおき(交互)の層(例えばプリント材料のバー)のセクションによって形成することができる。層の充填パターンは、プリント材料の任意の2つの隣接する層が交差パターンを形成して、プリント材料の層のフィラメント又はバーが所定の角度、例えば90°で交差するように設計することができる。ゆえに、チャネルの壁部は、例えば互いに対して平行であり得る、1つおきの層のフィラメント又はバーを含むことができる。3Dインプラントを形成するフィラメントの交差パターンにより、フィラメントを所定の壁部に「提供する」2つの層の間に位置する層のフィラメントは、通常、それら2つの層のフィラメントに対して角度をなして、例えば90°で配置されるので、壁部の一部を形成しない。所定のチャネルの任意の壁部を形成する層のフィラメントは、プリント材料の直線ライン又は曲線ラインとすることができる。充填ラインという用語は、必ずしも直線ラインであることに限定されず、例えば曲線ライン、ジグザグライン、及び/又幾重にも曲がったラインも含むことができるということが理解され得る。
【0049】
インプラントの種々の実施形態において、少なくとも1つの中空チャネルは、テーパー状チャネルとすることができる。テーパー状チャネルは、チャネルの下部開口部から上部開口部へとその断面が次第に増大又は減縮することによって特徴づけられる。言い換えると、テーパー状チャネルのサイズがその配置方向に沿って変化するので、テーパー状チャネルの上部開口部及び下部開口部のサイズ(領域)は異なる。インプラントの種々の実施形態において、少なくとも1つのテーパー状チャネルは、インプラントの上面に向かって集中させることができる。他の種々の実施形態において、少なくとも1つのテーパー状チャネルは、インプラントの上面に向かって拡散させることができる。テーパー状チャネルの構成(集中又は拡散)に対応して、上面及び下面における開口の量が同じであっても、下面の領域は上面の領域とサイズに関して異なり得る。インプラントの有利な実施形態には、複数のテーパー状チャネルがあるとすることができ、テーパー状チャネルは集中する、拡散する、又はその混合とすることができる。さらなる実施形態において、インプラントのすべてのチャネルは、好ましくは同じ種類(集中又は拡散)のテーパー状チャネルとすることができる。
【0050】
テーパー状チャネルを有するインプラントの実施形態は、最も大きい血管提供源である、筋肉に対向するインプラントの側に、より大きい開口部を含むことができ、筋肉に対向するインプラントの側は、一般性を失うことなく、下側又は下面と称する。本発明におけるインプラントのそうした構成は、インプラントの血管新生及び脂肪注入を容易にする。チャネルがインプラントへの脂肪注入に対してガイダンスとなることから、インプラント表面の特定の領域、例えば乳房インプラントの場合にインプラントの前下位側に集中するチャネルは、外科医にとってより使用しやすい。特に、インプラントにおけるチャネルの方向は、脂肪を乳房ひだ下から注入できるように(乳房下部注入)選択することができる。さらに、脂肪を注入する領域が特定領域に局所的に限定されているので、インプラントはまた、脂肪注入手技時に外科医にとってより使用しやすい。最後に、手技に関わる切開及び傷あとの数は、傷あとの数を少なくするため、利用可能であるとき、インプラント挿入及び脂肪注入/グラフトの同じ乳房下部切開部を使用することにより、少なくすることができる。
【0051】
より小さいチャネル開口部を有する領域が、より大きいチャネル開口部を有する領域より硬くなる傾向にあるため、種々のチャネル開口部を有する本発明におけるインプラントは、プリント方向における不均一な機械的特性を有するインプラントを特に提供するためにも使用することができる。
【0052】
インプラントの特に有用な実施形態は、チャネルがともにテーパー状であって傾いている/傾斜するものとすることができる。特に、その実施形態において、すべてのチャネルは集中又は拡散させることができる。インプラントのチャネルにおけるそうした構成により、チャネルの上部開口部を、インプラントの上面における所定の領域に「集中させる」又は方向づけることができる。
【0053】
種々の実施形態において、テーパー状チャネルを有するインプラントは、インプラントの上面におけるチャネルの開口部(すなわち、乳房インプラントの場合、胸壁から離れる方向に向くチャネルの開口部)のサイズを約0.5~5mmの範囲にとすることができ、インプラントの下面におけるチャネルの開口部(すなわち、乳房インプラントの場合、胸壁に対向するチャネルの開口部)のサイズを5~10mmの範囲とすることができるように構成することができる。さらなる実施形態において、下面におけるテーパー状チャネルの開口部のサイズは約6~9mmの範囲とすることができ、上面におけるテーパー状チャネルの開口部のサイズは約1~4mmの範囲とすることができる。またさらなる実施形態において、下面におけるテーパー状チャネルの開口部のサイズは約7~9mmの範囲とすることができ、上面におけるテーパー状チャネルの開口部のサイズは約2~3mmの範囲とすることができる。またさらなる実施形態において、下面におけるテーパー状チャネルの開口部のサイズは約8~9mmの範囲とすることができ、上面におけるテーパー状チャネルの開口部のサイズは約3~4mmの範囲とすることができる。特定のサイズは、正方形断面を有するチャネルに関するものとすることができる。
【0054】
本発明のインプラントは、先行技術において既知のインプラントよりもいくつかの利点がある。まず、インプラントの「天然の」チャネルは脂肪の注入及び収容に使用され、特に空間占有構造は必要とされないので、本発明におけるインプラントは、1つの材料のみを使用して製造することができる。一方で、これは異なる材料間の汚染のリスクを低減する。他方で、最終製品を単一の材料から製造することができるので、異なる材料の線/フィラメント同士の間の結合強度低下に関する問題を退けることができる。得られる構造はFDM技術を使用して容易にプリントされるので、インプラントの製造における、単一の材料、ゆえに単一の充填/プリントパターンの使用により、製造の観点から関与する作業が少なくなる。特に患者の観点からのさらなる利点は、構造物をインプラントから取り除いて脂肪注入のための空間を作製するさらなる手技の必要性がなくなるので、全体的な外科的手技が大幅に容易になるということである。ゆえに、組織の外傷を大幅に削減可能である。また、インプラントに必然的に提供されるチャネルに直接注入する脂肪を再生組織内に良好に包埋するというように、再生組織が障害されない状態になることから、インプラントを患者に挿入した後インプラントから何も取り除く必要はないということは、優れた生物学的パフォーマンスを提供する。最後に、インプラントのチャネルの内部構造を使用部位に適合させることによって、チャネルがインプラント表面の所望の点又は領域に集中する最適なレイアウトを見つけることができるので、両外科手術(インプラント挿入及び脂肪注入)において1つの小切開が必要となるのみである。
【0055】
ここで、本発明のさらなる実施形態は、以下の詳細な説明に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1図1は、3Dプリントインプラントの製造時に行われるステップを示す。
図2図2は、3Dプリントインプラントの概略平面図(右側)と、インプラント内のチャネルの個別の図(左側)を示す。
図3図3は、インプラントの一般的な例示形態(左欄)、例示のインプラント(中欄)、及び種々の向きの内部チャネルを有する種々の実施形態におけるインプラント(右欄)の、種々の図を示す。
図4図4は、種々の実施形態におけるインプラントの個別のテーパー状チャネルの概略図を示す。
図5図5は、インプラントの一般的な例示形態(左欄)、及び種々の実施形態における傾斜テーパー状チャネルを有する例示のインプラントの、種々の図を示す。
図6図6は、種々の実施形態における2つの異なるインプラントを示す。
図7図7は、3Dプリンティングによって製造される種々の実施形態におけるインプラントの2つの例示の層を示す。
図8図8は、本発明の方法におけるプリントパスの計算に使用されるモデリング空間を示す。
図9図9において、図9A及び図9Bは、3Dモデルのチャネルにおける集中点の計算を示す。
図10図10の上段は、3Dモデルの層への分割化を示し、図10の下段は、3Dモデルの層の充填を示す。
図11図11は、3Dモデルの境界領域の計算を示す。
図12図12は、3Dモデルの境界領域の計算を示す。
図13A図13Aは、種々の実施形態におけるインプラントの側面断面図を示す。
図13B図13Bは、種々の実施形態における傾斜/傾き中空チャネルを含むインプラントの側面断面図を示す。
図13C図13Cは、非傾斜/非傾きチャネルを含むインプラントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図1において、3Dインプラント16のプリントプロセスの主要なステップを示す。第1ステップ11において、インプラント16の3Dモデル10を、コンピュータ支援設計(CAD)ソフトウエアを使用して設計する。この段階では、3Dモデル10は、主に必要に応じたインプラント16の外形を設計するために使用される(例えば、特定の患者のためのインプラントのサイズに調節する)。第2ステップ12において、充填用ソフトウエアを使用して、設計した3Dモデルを多数の層にスライスする。第2ステップ12は、理論上の連続3Dモデル10から、連続3Dモデル10の層定義への移行と考えられる。個々の層は、ここまで、その内部構造について、すなわち層の3Dプリンティングに使用される可能な充填パターンについて定義されていない。第3ステップ13において、層状3Dモデルに基づいて、製造用インプットが生成される。この段階において、3Dモデル10の各層に対して、適切な充填パターンを選択する。製造用インプットは、最終インプラント16を層ごとにプリントするように3Dプリンターのノズル15を制御することができる、3Dプリンターが読み取り可能な一連の機械指示を含む。最終の第4ステップ14において、インプラント16の形態の「リアルライフ」3D物体を、3Dモデル10にしたがって製造する。3Dインプラント16は、3つすべての直交軸(X、Y、及びZ)において、機械指示にしたがって、3Dプリンターのノズル15を連係動作で移動させ、物体が下から上に完全に作製されるまで表面において適切なプリント材料の連続する層を設けることで製造される。一般に、個々の層はXY平面に平行に製造される。Z軸は、3Dプリンターのノズル15が1層を終えた後にそれに沿って移動してその後の層の押し出しを開始する垂直の軸である。以下において、この3つの軸の定義は、一般性を失うことなく以下に使用される。プリント材料が押し出されるところを決定する押出し具及びノズル15の動き及び3次元移動パターンは、コンピュータ数値制御(CNC)プログラミング言語、典型的には消費者用及び産業用3DプリンターではGコードによって制御される。
【0058】
図2において、3Dプリントインプラントの概略平面図(右側)と、インプラント内のチャネルの個別の図(左側)を示す。図の右側におけるインプラント16の平面図において、インプラント16は、該インプラント16のベース部から垂直に延在する複数のチャネル21を含むことが見てとれる。チャネル21は格子状パターンに配置される。インプラント16の縁部に位置していないチャネル21は、矩形状を有する。インプラント16の縁部に位置するチャネルは、それらの壁部の少なくとも1つがインプラント16の所望の外形をモデリングするために使用される壁部であるので、種々の形状、例えば三角形状を有することができる。一部のチャネル21は、その断面にわたって延在するプリント材料のフィラメント又はバー22を有するもとのとすることができることがさらに示される。一部のチャネル21の断面にわたって延在することが示されるフィラメント22は、例えば、インプラント16の所望の外形をモデリングするように、又は機械的安定性の理由のため、配置することができる。
【0059】
インプラント16の模式的チャネル21(破線円によって示す)を図2の左側に示し、矢印30はチャネル21の抽出拡大図を示す。チャネル21は、互いに重ねられて積層されるプリント材料22のフィラメント又はバーによって形成される。この例では、チャネル21は4つの壁部を有し、チャネル21の任意のレベルにおいて、層は2つの平行バー22を2つの対向壁部に提供し、バー22は所定の厚さ26を有する(これはインプラント16において変化し得る)。任意で、充填ラインは、80μm~250μm(又は例えば、100μm~200μm、又は例えば150μm~180μm、例えば170μm)の平均厚さを有することができる。チャネル21の長さ24及び幅25は、対応する層の隣接する対のバー22の距離によって与えられる。しかしながら、チャネル21の形状は任意とすることができ、特に外部パラメーターによって定義することができる(例えば安定性及び/又は剛性)ので、チャネルが正方形状又は矩形状を有することは必須ではない。チャネル21は、上部開口部27及び下部開口部28をさらに含む。この均一(テーパー状でない)チャネル21の例において、両開口部27、28は等しい。矢印23は、z軸と平行であり個々の層と垂直であるプリント方向を示す。異なるように示されるが、傾いても傾斜してもいない均一チャネル21を有するインプラント設計では、プリント方向は層が互いに積層される方向と一致する。
【0060】
3Dプリンティングにおいて、プリント材料の層は互いに重ねられて積層される。ゆえに、多孔性を作る最も容易で迅速な方法は、z方向に一定のチャネル、すなわちチャネルの任意のレベル(高さ)で同じ断面を有するチャネルをプリントすることである。そうしたインプラントの構成は図1及び図2に示している。しかしながら、本明細書に記載されるインプラントの種々の実施形態において、その構造は、インプラントのチャネルを所定の方向に向けるようになっている。これは、第1段34に示す斜視図、第2段35に示す平面図、第3段36に示す側面図とともに、インプラントの種々の図を示す図3において詳細に説明される。左欄において、例えばCADソフトウエアにて設計したような、製造されるインプラント16の投影形態31を示す。投影形態31は、審美的観点のもと設計され、主に製造されるインプラント16外形を描くものとすることができる。中欄において、投影形態31に対応するとともに均一チャネル21を有する形態を有する従来のインプラント32を示す。チャネル21は、インプラント16の下面からその上面に向かって垂直に延在する。従来のインプラント32の斜視図34に示す第1矢印37は、プリント方向を示す。従来のインプラントの場合には、しかしながら、第2矢印38で描いたチャネル21の向きがプリント方向と一致する(ゆえに、第1矢印37は従来の設計において第2矢印38に対応する)。すなわち、チャネル21の中心軸を表す第1矢印37は第2矢印38と一致する。平面図35から見てとれるように、従来のインプラント32において、上部開口部27はチャネルの下部開口部28と重なり合う。
【0061】
右欄において、種々の実施形態におけるインプラント33は、投影形態31に対応する形態で示される。種々の図から見てとれるように、チャネル21は、インプラント33の下面からその上面に延在し、傾いている/斜めになっている。言い換えると、第2矢印38によって示されるチャネル21の向きは、第1矢印37によって示されるプリント方向と一致せず、プリント方向を表す第1矢印37が、0ではない角度で、チャネル21の向きを表す第2矢印38に対して角度をなすというようになっている。チャネルの向きは、必要に応じて、すなわち脂肪注入の好ましい部位に対応して、及び/又はインプラント16の機械的要件に対応して、選択することができる従来のインプラント32と種々の実施形態におけるインプラント33との側面図36の比較によって見てとれるように、プリント方向、すなわち第1矢印37に対応する方向において平面で見て、後者の上部開口部27はチャネル21の下部開口部28と重なり合わない。
【0062】
図4において、種々の実施形態におけるインプラントのさらなる有利な変形の背後にある着想を説明する。図4は、原則として図2に示すチャネル21に類似するチャネル21を形成するプリント材料22のバー又はフィラメントの構成を示す。図4に示すチャネル21は、しかしながら、図示される例示の実施形態においてその下部開口部28から上部開口部27に向かって集中するテーパー状チャネルであるという点で、図2に示すチャネル21とは異なる。層の1つおきのバー22によって形成される4つの壁部のそれぞれは内側に傾き、チャネル21の全体的なテーパー状形態をもたらす。図4に示すように、集中チャネル、また分散チャネルも、第1矢印37によって示すチャネル21の向きの方向に沿うその断面の変化によって特徴づけることができる。テーパー状チャネルの向きは、チャネル21の断面の中間点又は中心点から挿入されるライン又は軸として定義することができる。
【0063】
図5は、左側にインプラントの投影3D形態31、及び右側にさらなる種々の実施形態における対応するインプラント52の図を示す。図3に類似して、斜視図を第1段34に示し、平面図を第2段35に示し、側面図を第3段36に示す。左欄において、図3の製造されるインプラントの投影3D形態31を示し、ここでも例として提示する。インプラント52は、そのチャネル21がまた、第1矢印37によって表される、プリント方向と一致しない方向に傾斜する又は向くという点で、図3のインプラント33に類似する。
【0064】
傾きに加え、チャネル21はテーパー状である、すなわち図4に基づいて既に詳細に説明した形態を有する。インプラント52の構成を示す種々の図から見てとれるように、インプラント33の下面からその上面及びその上部開口部27に延在するチャネル21は、インプラント52の上面の所定の領域に向かって集中する(この例示の場合、右上隅部)。第3矢印53は集中方向を示し、インプラント52の下面/層の中央、及び個々のチャネル21のすべての方向軸の交点である、2点によって定義される軸に対応することができる。下面/層の代わりに、また第1点は、インプラント52のベース部、すなわち下面/層上のインプラント52の質量部の中心の投影に対応するものとすることができる。あるいは、又は任意で、第1点はインプラントのかさ体積内の任意の点とすることができる。所望の設計に対応して、第3矢印53は実質的に任意の方向を指すとすることができる。
【0065】
既に上述したように、インプラント52の上面における所定の領域又は方向に向かって集中する、方向づけた孔/チャネルを有する図4に示すインプラント52の例示の実施形態は、外科医にとって脂肪注入手技を容易にし、患者は乳房に1つの傷あとを有するのみとすることができる。この理由は、インプラントを挿入するための最も一般に使用される方法の1つが乳房下部切開に基づくことである。脂肪注入はインプラント挿入後の数週後に行われるので、種々の実施形態におけるインプラントによって、挿入に使用される切開部はまた有利に脂肪注入にも使用することができる。そして、方向づけたチャネル21のパターンは、脂肪注入時に外科医のためのガイドとして使用することができる。ニードルがチャネル21にアライメントするので、インプラントはニードル自体によって損傷することはない。
【0066】
プリントした多孔性構造であるインプラントにおける方向づけた孔/チャネルは、プリント方向における全体的な構造の硬さを少なくするようにさらに有利に使用することができる。向きの角度、又は集中の角度、すなわちxy平面(プリント平面)と、それぞれ向きの方向又は集中方向との間の角度は、硬さを調整可能にする。一般に、集中の角度が小さいと、構造が軟らかくなる。この構想は、両者とも傾いたチャネルを有する、テーパー状チャネルを有する第1インプラント61と均一チャネルを有する第2インプラント62とを示す図6においてさらに例示される。上述の場合のように、第1矢印37は、両方の例示のインプラント61、62のプリント方向を示し、第1インプラント61に表示される第3矢印53は個々のチャネルの集中の方向を示す。第3矢印53の向きから推測できるように、チャネルはインプラント61の上部中心に向かって集中する。第2インプラント62において、第3チャネル53はインプラント62の右側に向かって方向づけられる。第2インプラント61の集中の角度が第2チャネルの集中の角度(90°に近い)よりも著しく小さいので、1つの層から次の層への横方向の移動と、つまり1つのフィラメントから次のフィラメントへの横方向の移動とは、第2インプラント62においてより大きい。このように、第2インプラント62におけるフィラメントは、直接互いに重ねられて配置されていない。この外観的な効果により、第1インプラント61と比較してより軟らかい第2インプラント62となる。
【0067】
既に上述で示したように、種々の実施形態におけるインプラントは層の順次プリントによって製造される。図7において、例示の第1層71と例示の第2層72を示す。3Dプリンティングによる層71、72の製造時に、各層は、所定の充填パターン76、77にしたがって、開始点74と終了点75との間にプリント材料のラインの形態でプリントされる。図示されるように、第1層71は第1充填パターン76を含み、第2層72は第2充填パターン77を含み、両方の充填パターン76、77はジグザク形状を有する。開始点74及び終了点75は最終製品において必ずしも見えることはなく、理解しやすくするため、図7に示す概略図において強調されている。層71、72のそれぞれの周囲部78は、インプラントの投影3Dモデルのスライスによって定められる。すなわち、各充填パターン76は、プリントプロセス時に製造される層が互いに重ねられて積層されるとき、最終3D製品が投影3Dモデルに非常に類似する3D形態を有するように、周囲部78に接する。対応する層の周囲部78に位置する充填パターンの部分は、周囲部78をたどるようにプリントされる。層71、72の内部は、境界条件(硬さ、多孔性、密度)にしたがって選択され得る任意の形状の充填パターンで充填することができる。3Dプリンターが第1層71の充填パターンを押し出した後、ノズルは第1層71の終了点75で停止し、ノズルとプリント平面との間の距離を変え(通常、ノズルを矢印73で示す方向に上方に移動させることによって)、第2層72の開始点74から開始して、第2層72の充填層が形成される。
【0068】
第2層72を第1層71の上部にプリントした後、第3層が第2層上に堆積される。第3層(図7に示さない)は第1層と類似するものとすることができる。図7に示すように、第1層71の周囲部78に配置されていない第1充填パターン76の材料のラインは、第2層の周囲部78に配置されていない第2充填パターン77の材料のラインに対して角度をなして配置される。この配置は、最終インプラント内のチャネルをもたらす。方向づけたチャネル及び/又は傾いたチャネルは、充填パターン76、77の内部構造を所望の方向に次第に移動させることで形成される。例えば、図7の右側に方向づけたチャネルは、図7に示すような第1層71を製造し、そして、図7に示す平面斜視から見たとき第3層の充填パターンの直線バーが第1充填パターンの直線バーに対して右にオフセットするように、第3層の充填層の直線バーを第1充填層76に対して右に移動させて、形成することができる。他の奇数層にこのプロセスを継続することで、図3の右欄に示すようなインプラントがもたらされる。テーパー状チャネルは、図4に示すような充填パターンのプリント材料のラインを配置することで形成することができる。
【0069】
本明細書に記載される3Dインプラントなどの多孔性物体を貫通するチャネルを含む多孔性物体をプリントするための、3Dプリンターのプリントパスを生成する方法が、本明細書においてさらに提供される。多孔性物体のチャネルは、多孔性物体の製造時にプリントされる層によって構成される孔によって形成される。生成されたプリントパスは、3Dプリンターのプリントノズルが1つずつ材料の層をプリントするようにそれに沿って移動して、最終的に3Dインプラントを製造する一連のパス点を含む。
【0070】
第1ステップにおいて、種々の実施形態においてプリントパスを生成するための方法は、多孔性物体(3D物体)の3Dモデルを一連の層に分解することを含み、各層は、プリント方向と一致する、3Dモデルの対応する高さにおける3Dモデルの外形を含む。このように、第1ステップは、3Dモデルの充填部をスライスにすることを含み、各スライスはプリント層を表すことができる。プリント時に、各層は、プリンターのノズルからプリントパスに沿ってプリント材料を押し出すことで製造される。通常、個々の平面は、xy平面に対応すると推定される3D物体がプリントされるプリント面と平行である。層は、z方向に対応すると推定されるプリント方向にプリント材料を互いに重ねるように押し出すことで製造される。全体的な層の押し出しは、一般に、1つの層のフィラメントが所定の角度、最も一般的には90°で前の層のフィラメント上に押し出されるように、交差パターンで行われる。設計/計画段階に相当する方法におけるこの第1ステップの目的は層の生成であり、各層は、3Dモデルの対応する高さにおける3Dモデルの外形を含む。各層の内部の構造は設計パラメーターであり、それぞれの用途における必要に応じて後に選択することができる。
【0071】
さらなるステップにおいて、この方法は、一連の層における1つ以上の層を一連の充填ラインと交差させることを含み、各層の充填ライン同士の間の距離は、充填ラインに対して垂直の方向におけるその層の孔の寸法に対応するように設定する。層を一連の充填ラインと交差させることで、2つの対向する側部が単に2つの隣接する充填ラインの部分に対応し、他の2つの対向する側部が層の外形の部分を表すように、層はストライプ状にセグメント化される。充填ラインは、好ましくは、プリントプロセス時に押し出される材料の部分の表現に相当する。層の外形の部分を表す2つの対向する側部はプリントプロセス時に直線ラインによって近似し、直線ラインは対応するストライプの縁部同士の間に延在することができる。一部の実施形態において、充填ラインは等距離とすることができるので、層内に均一のサイズを有する孔を得ることができる。
【0072】
この方法のさらなるステップにおいて、プリントパスは、一連の充填ラインと対応する層の外形との交点に基づいて、(前のステップでスライスされた)1つ以上の層のために形成される。この意味において、充填ラインはまた、層の外形とのその交点を探知するために使用されるので、探知ラインとも呼ぶことができる。好ましくは、所定の層のプリントパスは、3D物体のプリント時に、ノズルが1つの交点から次の交点に蛇行するようにプリントパスに沿って移動して、層の開始点から終了点まで連続的にプリント材料を押し出すというような順序で配置される交点からなるとすることができる。それぞれの層は実質的に外形を含み、計算された交点はすべて層の外形上に配置されるが、計算された交点に基づいて押し出される3D物体の材料層は、例えば図7に示すように、層における外形の不連続な表現、及び(充填ラインに対応する)プリント材料の直線ラインを含む充填部を含むことができる、ということが留意される。しかしながら、図7に示す層と対照的に、層における外形の不連続な表現の部分はまた、通常は直線ラインで移動する3Dプリンターノズルのプリントパスを簡素化するため、曲線を有する又は円弧状のラインの代わりに直線ラインによって近似することができる。
【0073】
この方法のさらなるステップにおいて、前の2つのステップ(層を充填し、プリントパスを形成する)は、それまでのところ(以前に)処理した層上に位置する1つ以上の層に対して、それまでのところ(以前に)処理した層に使用した一連の充填ラインに対して角度をなして、好ましくは90°で配置した、その目的のための一連の充填ラインを使用して行われる。3D物体の層を2組の層に分離することは、プリントプロセスの交差する特性を反映する。交差パターンは、繰り返して、第1方向に1つ以上の(a)充填ラインを堆積させ、そして、第1方向に対して角度をなして、好ましくは90°で方向づけた他の方向に1つ以上の(b)充填ラインを堆積させ、そして、少なくとも1回、好ましくは複数回プロセスを繰り返して形成される、ということが留意される。そのようにして、各組における層の数を調節することで、孔の壁部の高さを1つの層から次の層へと変えることができる。a=bである特別な場合において、交差パターンは、1つおきの充填ラインが第1方向に向けられ、単一の充填ラインをその間に配置し、第1方向と異なる第2方向に向けるようにする、3Dモデルの充填パターンによって形成される(例えば、図7参照)。第2方向が第1方向に対して90°である場合、各チャネルは、プリント方向と平行に見たとき正方形断面を有する。例えば、第1組の層は、3D物体の第1層(下層)から開始する、奇数を有する3D物体の層を含むことができる。第1組の層において、充填ラインは、プリントされる3D物体の3Dモデルが処理される/表される座標系のx軸に平行とすることができる。第2組の層は、3D物体の第2層から開始する、偶数を有する3D物体の層を含むことができる。矩形の孔の場合、第2組の層における層を充填するために使用される充填ラインは、プリントされる3D物体の3Dモデルが処理される/表される座標系のy軸に平行とすることができる。テーパー状チャネルの場合、充填ライン同士の間の距離は、チャネルが集中するか(例えば、図4図5、及び図6に示すように)又は拡散するかに対応して、下層から開始して、1つの層から次の層へ次第に小さく、又は大きくなる。
【0074】
この方法のさらなる実施形態において、一定のチャネルの場合(例えば図3参照)、ライン同士の間の距離はすべての層において同じとすることができる。
【0075】
この方法のさらなる実施形態において、1つの組の層における層に使用される一連のラインの第1ラインは、隣接する層に使用される一連のラインの第1ラインに対して横方向にオフセットすることができる。また、これは、隣接する層に使用される一連のラインの他のラインすべてについてもそのようであるとすることができる。それぞれの層における第1充填ラインの位置は、3Dモデルの境界平面と層が包埋された平面との間の交差ラインに対応することができる。3Dモデルは、3つの境界平面と接することができ、1つの平面は3Dモデルの下層が包埋された平面に対応することができる。3Dモデルの範囲領域の断面形状は、例えば、3Dモデル表現座標系のxz平面において見たとき、三角形とすることができる。
【0076】
さらなる実施形態において、この方法は、3Dモデルの範囲領域を定めることを目的とするステップをさらに含むことができる。つまり、この方法は、作業平面を形成するように、多孔性物体の3Dモデルの表現を平面と交差させること、及び作業平面においてその後のステップを行うことをさらに含む。作業平面は、一般性を失うことなく、3Dモデル表現座標系におけるxz平面に対応することができ、座標系の原点は、例えば、下面における3Dモデルの質量部の中心の投影、又は3Dモデルの下層の中心に位置することができる。この方法は、(作業平面に位置する)第1ラインセグメントで表される、3Dモデルの第1の高さにおける、好ましくはベース部(下面)における層の第1孔の孔寸法を特定することをさらに含むことができる。この方法は、(これも作業平面に位置する)第2ラインセグメントで表される、3Dモデルの第2の高さにおける多孔性物体の(異なる)層の第2孔の孔寸法を特定することをさらに含むことができ、第1孔と第2孔とは同じチャネルに属する。第1孔及び第2孔の孔寸法は、それぞれの層の充填部に使用されるライン同士の間の距離に対応することができる。この方法は、第1ラインセグメントの左終了点と第2ラインセグメントの左終了点とを接続することで第1方向ラインを計算すること、第1ラインセグメントの右終了点と第2ラインセグメントの右終了点とを接続することで第2方向ラインを計算することをさらに含むことができる。この方法は、第1方向ラインと第2方向ラインとの交点を計算することをさらに含むことができる。その交点は、一定でないチャネル、すなわち拡散又は集中チャネルの場合、それぞれの孔に関与する壁部の集中点に対応する。集中点は、集中チャネルではxy平面上方に、拡散チャネルではxy平面下方に位置し、3Dモデルのベース部又は下層はxy平面に包埋されている。この方法は、3Dモデルのベース部の中心に対する、又は3Dモデルのベース部における質量部の中心の投影に対する距離がより小さい第1方向ライン及び第2方向ラインのうちの1つに対応する、主方向ラインを選択することをさらに含むことができる。この方法は、共に交点(集中点)を貫き、3Dモデルに接する第1境界ライン及び第2境界ラインを定めるため、主方向ラインのスロープを変化させることをさらに含むことができる。第1境界ライン及び第2境界ラインの両方は、それぞれ、xz平面に対して角度をなして、例えば垂直に配置される対応する境界平面(接線平面)に拡張することができる。最後に、この方法は、層の外形と一連の充填ラインとの交点が定められる領域を、それぞれの層を含む平面と第1接線平面及び第2接線平面との交点に接する領域に範囲づけすることを含むことができる。
【0077】
【数1】
【0078】
【数2】
【0079】
少なくとも、ユーザー定義のパラメーターのサブセットは、3Dモデル81のチャネルを定義する壁部の集中点を計算するために使用することができる。これは、図8Aの座標系のxz平面における、それぞれチャネルを集中させる場合及びチャネルを拡散させる場合を示す図9A及び図9Bに基づいて説明する。入力データに基づき、アルゴリズムを使用してチャネルが集中又は拡散かを判定する。Poreは、その終了点の1つが座標系の原点84に対応する第1ラインセグメント91によって表される。Poreは、ユーザー定義の高さ92における第2ラインセグメント92によって表される。3Dモデル81の全体的な高さは、第2の高さ94に対応する。Pore及びPoreは、3Dモデル81の同じチャネルに関し、xz平面82における第1ラインセグメント91に対する第2ラインセグメント93の位置を方向ベクトル85から導出することができる。一般に、線形相関が、孔サイズPoreと対応する孔hの高さとの間に存在する。チャネル(又はその壁部)の集中点97は、第1ラインセグメント91の左終了点と第2ラインセグメント93の左終了点とを接続することで第1方向ライン96を計算すること、及び第1ラインセグメント91の右終了点と第2ラインセグメント93の右終了点とを接続することで第2方向ライン95を計算することによって定められる。図9A及び図9Bに示すように、方向ベクトル85は、第2方向ライン95上に位置する。第1方向ライン96及び第2方向ライン95は、チャネルの壁部の1次元表現に相当する。第1方向ライン96及び第2方向ライン95の交点を計算することによって、壁部の集中点97が得られる。3Dモデル81に対する集中点97の位置に対応して、すなわち、集中点97が、図9Aに示すように、3Dモデル81上方に、ゆえにxy平面上方に位置するか、又は図9Bに示すように、3Dモデル81下方に、ゆえにxy平面下方に位置するかどうかに対応して、アルゴリズムはチャネルが集中するか又は拡散するかを判定する。一定のチャネルの場合、第1ラインセグメント96及び第2ラインセグメント95は平行であり、方向ベクター85は一定のチャネルの方向を示す第2矢印38に相当する(図3参照)ということが留意される。
【0080】
チャネルの特性を判定した後、図10の上段に示す多孔性物体の3Dモデル81は一連の層101に分解され、各層は3Dモデルのそれぞれの高さにおける3Dモデルの外形を含む。半球の形態における3Dモデル81の例において、各層101は、座標系のxy平面に平行に配置されたディスクに相当し、単にノズルの2次元移動によってプリント時に押し出すことができる。
【0081】
図10の下段に示す次のステップにおいて、プリントパスは各層101に対して定められる。これは、各層101を一連の充填ライン102と交差させることによってなされ、各層101のための充填ライン102同士の間の距離103は、充填ラインに対して垂直の方向におけるその層101の孔の寸法に対応するように設定する。例えば、ユーザー定義の高さhにおける層では(図9A及び図9B参照)、充填ライン102同士の間の距離103は孔サイズPoreに対応するものとなる。プリントパスは、一連の充填ライン102と層101の外形との交点104に基づいて定められる。プリントパス105のセクションを図10の下段に示す。プリントパスは、順序づけた一連の交点104によって形成され、交点104はプリントパス105を形成する矢印によって示されるように配置される(すなわち、n番目の充填ラインの下方交点104->n番目の充填ラインの上方交点104->n+1番目の充填ラインの上方交点104->n+1番目の充填ラインの下方交点104)。
【0082】
【数3】
【0083】
一定でないチャネル、すなわち、集中又は拡散チャネルの場合、孔のサイズは1つの層から次の層へと次第に変化する。同時に、孔の数は、一定のチャネルの場合でも、すべての層Lにおいて等しい。
【0084】
【数4】
【0085】
集中チャネルの場合は図11に示すものと類似し、主に、回転軸121がxy平面120下方に配置されるのではなく、xy平面120の上方に配置されるという点で図11に示すものと異なる。したがって、第1境界平面123及び第2境界平面124のスロープは反転する、すなわち、第1境界平面123のスロープは正となり、第2境界平面124のスロープは負となる。チャネルの方向を表す方向ベクトル85、第1境界ライン、及び第2境界ラインが平行であるので、対応して集中点97が存在しない一定のチャネルの場合、第1境界ライン及び第2境界ライン(及び対応する第1境界平面123及び第2境界平面124)は、3Dモデル81に接するようになるまで第2方向ライン95を移動させることによって得られる。
【0086】
任意のs番目の層101における孔サイズPoreは、まず第1層(下層)における孔Nの数を計算することで定義することができる。
N=(Xmax-Xmin) /Poreb
【0087】
そして、一貫性の理由から3Dモデルのすべての層で一定である、計算した孔の数Nを使用して、s番目の層の孔サイズPoreを定めることができる。
Pores=(Xmax-Xmin)s/N
【0088】
図13Aは、種々の実施形態における患者に挿入するためのインプラント1330の側面断面図を示す。
【0089】
インプラント1330は、層101の3次元(3D)プリント構造を含む。各層101は、3次元プリント構造の(図7に関して記載するような)充填パターンを含む。各層の充填パターンは、一連の充填ライン102を含む。インプラント1330は、複数の中空チャネル21をさらに含む。層101は、複数の中空チャネル21がインプラント1330内に形成されるように、互いに重ねられて配置される。各チャネル21の壁部134は、層のプリント構造における複数の層の充填ラインのセクションによって形成される。少なくとも1つの中空チャネル(21)は、インプラントの第1外面138とのインプラントの第2外面139との間に延在する。少なくとも1つの中空チャネル(21)は、インプラントの第1外面に対して垂直の基準軸137に対して傾斜する方向(53)に向く。
【0090】
インプラントの第1外面138は、インプラントの最大平板状(平坦)面とすることができる。例えば、第1外面138は、インプラントの最も平坦な面、及び/又は湾曲の量が最も小さい面とすることができる。第1外面138は、患者に挿入後、患者の胸壁に対向する、又は患者の胸壁に最も近接するインプラントの面であり得る下面とすることができる。インプラントの第1外面は、3次元(3D)プリント構造の第1層(又は1つ以上の層)によって形成された2次元(x-y)平面に対して平行とすることができる。図13Aの側面断面図は、第1外面128に対して垂直の、すなわちx-y平面に対して垂直の断面からのものであり得る。
【0091】
さらに、又は任意で、第2外面139は、第1外面138と一致しない(例えば、交差しない)面とすることができる。第2外面139は、インプラントの側面、又はインプラントの上面とすることができる。任意で、インプラントの第1外面138及び第2外面139は対向する面とすることができる。例えば、インプラントの第1外面は下面とし、第2外面は上面とすることができる。任意で、第2外面139はインプラントの曲面とすることができる。チャネル21(又はチャネル21の投影又は延長線)は第2外面139にて終端し、チャネル21と第2外面139との交点を定義することができる。チャネル21と第2外面139との交点における接線平面は、x-y平面と平行ではないものとすることができる。
【0092】
傾斜対基準の角度αは、基準軸137とチャネル21の長手方向中心軸141との角度として定義することができる。基準軸137は、層のx-y平面に対して垂直(例えば、大部分の層に対して垂直、例えば50%を超える層に対して垂直)とすることができる。例えば、基準軸137はz軸と平行とすることができる。例えば、基準軸137は、インプラントの第1外面138によって形成される平面に対して垂直とすることができる。傾斜対基準の角度αは、x-y平面に対して垂直である、インプラント1330の側面断面図において、10度~85度の間(又は例えば、45度~85度の間)であるとすることができる。
【0093】
チャネル21の長手方向中心軸141は、チャネル21の壁部134を形成する充填ラインの中央点に位置する直線ラインであり得る長手方向中心対称軸とすることができる。任意で、テーパー状でないチャネルの場合、長手方向中心軸141は、チャネル21の壁部134のそれぞれに対して平行とすることができる。
【0094】
少なくとも1つの中空チャネル21(例えば、1つ以上の中空チャネル21)は、インプラントの第1外面138とのインプラントの第2外面139との間に延在する。任意で、30%を超える(又は例えば50%を超える、又は例えば80%を超える、又は例えばそれぞれの)中空チャネル21は、第1外面138と第2外面139との間に延在する。「第1外面138と第2外面139との間に延在する」とは、チャネル21が直接的に表面で終端しない、例を含むように理解することができる。例えば、「第1外面138と第2外面139との間に延在する」とは、チャネル21が第1外面138及び第2外面139に到達する前に(1つ以上の層を)終端する、言い換えると、チャネル21の開口部がインプラントの最外層で必ずしも形成されない、という例を含むことができる。一部の実施例において、チャネル21が傾いた(傾斜した)部分及び少なくとも1つの非傾斜部分を含むということが可能である。チャネル21の非傾斜部分は、基準軸に対して平行である部分とすることができる(例えば、傾斜対基準の角度がゼロ)。例えば、(第1)非傾斜部分は、インプラントの第1外面に開口部を有することができる。チャネル21の傾斜部分は、第1非傾斜部分と、任意でインプラントの第2外面に開口部を有する第2非傾斜部分との間に位置することができる。チャネル21の非傾斜部分は、インプラントの第1外面又はインプラントの第2外面におけるインプラントの1つ以上(例えば、複数)の最外層から形成することができる。
【0095】
また、「第1外面138と第2外面139との間に延在する」とは、チャネルの少なくとも1つの端部がインプラントの最外層で終端する、という例を含むことができる。例えば、チャネル21は、第1外面138から第2外面139に完全に延在することができる。例えば、チャネル21は、第1外面138にて開始して第2外面139にて終端する。さらに、すべての中空チャネル21が第1外面138から開始して第2外面139にて終端するわけではないということが可能であるということが理解される。例えば、インプラントの側部のチャネル21の一部(又はチャネルの延長線部)が第1外面138にて開始されないことが可能である。
【0096】
複数の中空チャネルのうちの少なくとも10%(又は例えば少なくとも20%、又は例えば少なくとも30%、又は例えば少なくとも50%、又は例えばすべて)の中空チャネルは、基準軸に対して同じ傾斜対基準の角度だけ傾斜させることができる。同じ傾斜対基準の角度を有する中空チャネルは同じ方向にアライメントすることができ、傾斜対基準の角度の大きさを同じとすることができる。あるいは、又は任意で、複数の中空チャネルのうちの2つを超える中空チャネル(又は例えば3つを超える中空チャネル、又は5つを超える中空チャネル)は、基準軸に対して同じ傾斜対基準の角度だけ傾斜させることができる。傾斜した一定のチャネルの場合、傾斜対基準の角度は、それぞれのチャネルにおいて同じとすることができる。言い換えると、インプラントの中空チャネルはすべて、製造の不具合によるずれを無視して、互いに対して平行とすることができる。
【0097】
任意で、少なくとも1つの中空チャネル(又は例えば1つ以上の若しくはすべての中空チャネル)は、テーパー状チャネルとすることができる。任意で、複数の中空チャネルは、インプラントの第1外面又は第2外面の所定の領域に向かって集中させることができる。一部の実施形態において、所定の領域は、インプラントの第1外面上に直接位置する、又は第2外面上に直接位置する集中点とすることができる。あるいは、所定の領域は、インプラントの第1外面を超えて(外側に)、又は第2外面を超えて(外側に)位置する集中点とすることができる。言い換えると、集中点は、(図9A及び図9Bに関して記載するように)インプラントの外側に位置することができる。
【0098】
図13Bは、種々の実施形態における傾斜/傾き中空チャネルを含むインプラント1330の側面断面図を示す。
【0099】
層の3次元(3D)プリント構造は、第1組の層と第2組の層とを含むことができる。第1組の層は、層の3次元(3D)プリント構造の奇数層を含むことができ、第2組の層は、層の3次元(3D)プリント構造の偶数層を含むことができる。
【0100】
第1組の層の充填ラインは第1方向に向けることができ、第2組の層の充填ラインは、第1方向と異なる第2方向に向けることができる。第1組の層の奇数層における充填パターンの部分は、第1組の層の第1充填層における充填パターンの部分に対して移動させることができる。さらに、又は任意で、第2組の層の偶数層における充填パターンの部分は、第2組の層の第1充填層における充填パターンの部分に対して移動させることができる。
【0101】
3Dプリント構造における複数の層の各奇数層は、第1充填ライン102y1、及び奇数層の第1充填ライン102y1に対して平行で、直接隣接し得る第2充填ライン102y2を含むことができる。一例として、奇数層は、層1、層3、層5など、又は一般に式の層n+2×(t)、式中tは0以上の整数であるとすることができる。tは、限定されるものではないが、例えば30~200の間である整数とすることができる。図13Aに示すように、任意の第1奇数層(層1)は、n=1、t=0の層であるとすることができる。第1奇数層は、限定されるものではないが、インプラントの第1外面における最外層とすることができる。
【0102】
横方向の孔寸法(pore)は、第1奇数層(層1)の第1充填ライン10211と第1奇数層の隣接する(直後の)第2充填ライン10212との間の距離103とすることができる。距離103は、第1奇数層の第1充填ライン10211の長手方向中心軸131に対して、及び/又は第1奇数層の第2充填ライン10212の長手方向中心軸132に対して垂直の方向(x方向)において測定することができる。第1奇数層の第1充填ライン10211の長手方向中心軸131は、第1奇数層の第1充填ライン10211の長さに対して平行の(例えば、y軸に対して平行の)軸とすることができる。第1奇数層の第2充填ライン10212の長手方向中心軸132は、第1奇数層の第2充填ライン10212の長さに対して平行の軸とすることができる。
【0103】
横方向オフセット値ovは、第1奇数層の第1充填ラインの長手方向中心軸131と、第2奇数層(例えば、層n+2=3)の第1充填ライン10231の長手方向中心軸133との間の最小距離として定義することができる。第2奇数層の第1充填ライン10231の長手方向中心軸133は、第2奇数層の第1充填ライン10231の長さに対して平行の(例えば、y軸に対して平行の)軸とすることができる。横方向オフセット値ovは、水平方向に、層と平行に(例えば、x軸と平行に)測定した寸法とすることができる。
【0104】
横方向オフセット値ovは、製造の不具合によるずれを無視して、ゼロより大きく、第1層(層1)の第1孔の孔サイズ103(又はpore)の50%未満(又は例えば30%未満、又は例えば10%未満、又は例えば5%未満、又は例えば1%未満)とすることができる。
【0105】
チャネル21の複数の奇数層の充填ライン102は、中空チャネル21の壁部134の部分を形成する奇数層(例えば、層1)の充填ライン10211の部分が、同じ中空チャネル21の同じ壁部134の部分を形成する隣接する奇数層(例えば、層3)の最も接近する(又は最も近接する)平行の充填ライン10231に対して横方向オフセット値ovだけオフセットするように、配置することができる。一例として、n+2×(1)層の充填ラインの部分は、n層の最も接近する(又は最も近接する)平行の充填ラインに対して横方向オフセット値ovだけオフセットすることができる。その後の奇数層、n+2×(2)は、n+2×(1)層の最も接近する平行の充填ラインに対して同じ横方向オフセット値だけオフセットすることができる。一定のチャネルの場合、横方向オフセット値は、製造によるずれを無視して、インプラントの80%を超える層において一定(又は同じ)とすることができる。
【0106】
同じ中空チャネルの同じ壁部を形成する充填ラインの部分すべては、その壁部を形成する第1層の充填ラインに対して、累積(合計)の横方向オフセット値を有することができる。一定の傾斜チャネルの場合、累積の横方向オフセット値は、直後の奇数層同士の間の横方向オフセット値の倍数とすることができる。例えば、壁部134のn+2×(t)層の第1充填ラインは、壁部134の第1層の第1充填ライン10211に対して、((t-1)×ov)の累積の横方向オフセット値を有することができる。充填ラインは、((t-1)×ov)の累積の横方向オフセット値が、2より大きいtの整数値において、すなわち奇数層7、9、及びそれ以降においてのみ、第1層の第1孔の孔サイズ103(又はpore)以上となるように、配置することができる。この場合、tは、限定されるものではないが、2<t<8、又は例えば、4<t<20などの値とすることができる。言い換えると、2以下のtの値において、製造によるずれを無視して、累積の横方向オフセット値((t-1)×ov)は、孔サイズ103(又はpore)未満とすることができる。あるいは、又は任意で、傾斜対基準の角度が非常に小さい(例えば、5度未満)場合、累積の横方向オフセット値((t-1)×ov)は、2より大きいtの整数値でも、孔サイズ103より小さくなることがある。
【0107】
インプラントの上面とインプラントの下面との間に延在する傾いたチャネル21の壁部134は、毎奇数層の充填ライン102の部分を含むことができる。壁部134は、チャネル21の複数の奇数層の充填ラインによって形成されるので、奇数層(例えば、層1)の充填ライン10211の部分と、隣接する(又は直後の)奇数層(例えば、層3)の最も接近する(近接する)平行の充填ライン10231の部分とが、同じ中空チャネル21の同じ壁部134の部分を形成することとなる。同様に、隣接する(又は直後の)奇数層(例えば、層5)の平行の充填ライン10251の部分は、同じ中空チャネル21の同じ壁部134の部分を形成する。
【0108】
中空チャネルの任意の壁部は、インプラントを形成する層の配置において、1つおきの層のセクションによって形成することができる。中空チャネル21の第1壁部134は、奇数層の第1充填ラインの部分から形成することができる。中空チャネル21の第2壁部134は、奇数層の第2充填ラインの部分から形成することができる。また、第2壁部134は、一定の傾斜したチャネルの場合第1中空チャネルと平行であり得る近接する(直接隣接する)第2中空チャネルの壁部とすることができる。
【0109】
3Dプリント構造における複数の層の各偶数層(例えば、層2、4、6、...2×t)は、第1充填ライン、及び偶数層の第1充填ラインに対して平行で、直接隣接し得る第2充填ラインを含むことができる。中空チャネル21の第3壁部は、偶数層の第1充填ラインの部分から形成することができる。中空チャネル21の第4壁部は、複数の層の偶数層における第2充填ラインの部分から形成することができる。
【0110】
一部の他の実施例において、第1奇数層の第1充填ライン10211と第2奇数層の第1充填ライン10231との間の横方向オフセット値は、第1奇数層の第1充填ライン10211と第1奇数層の隣接する第2充填ライン10212との間の距離の50%~100%の間(例えば、55%~95%の間)である。奇数層(例えば、n+2×t層)の第1充填ライン102t1と第1奇数層の第1充填ライン10211のとの間の累積の横方向オフセット値は、2以上のtの値において、第1奇数層の第1充填ライン10211と第1奇数層の隣接する第2充填ライン10212との間の距離より大きくすることができる。
【0111】
「奇数層」及び「偶数層」という用語は、単一の(すなわち、1つの)層を指すことができる、又はそれぞれ「奇数の一連の層」及び「偶数の一連の層」も指すことができるということが理解される。言い換えると、「奇数層」という用語は、奇数の一連の層内の1つ以上の層を指すことができる。同様に、「偶数層」という用語は、偶数の一連の層内の1つ以上の層を指すことができる。
【0112】
図1図12の実施形態に関して記載されるインプラントの特徴(層の3Dプリント構造、充填パターン、充填ライン、複数の中空チャネル、チャネルの壁部、奇数層、偶数層)はまた、図13A及び図13Bのインプラントにも適用することができることが理解される。
【0113】
図13Cは、プリント方向に対して傾斜していないチャネルの例を示す。図13Cに示すように、横方向オフセット値はゼロである。
【0114】
本発明が本目的を実行して、上述の最終形及び利点、並びにその本質的なものを得ることに良好に適応するということが、当業者は直ちに理解することができる。さらに、種々の代替形及び変形を、本発明の範囲及び趣旨から外れることなく本明細書に開示される発明に行うことができるということは、当業者にとって直ちに明らかなものとなる。このように、ここで所定の実施形態を表す、本明細書に記載される構成、方法、手法、処置、及び特定の材料は例示であり、本発明の範囲を限定することを意図しない。特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨内に含まれる、本明細書における変更、及び他の使用は、当業者によってなされることとなる。本明細書における既に刊行されている文書の列挙又は記述は、その文書が現状技術の一部である又は技術常識であるということを認めるとして必ずしも受け取られるべきでない。
【0115】
本明細書に例示的に記載される本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素、限定がなくとも適切に実施することができる。このように、例えば、「含む」、「含める」、「包含する」などの用語は、広範に、限定することなく解釈されることとなる。さらに、本明細書に使用される用語及び表現は、限定ではなく記載するための用語として用いられており、そうした用語及び表現の使用において、提示され記載される特徴の任意の同等物、又はその一部を排除するという意図は存在しないが、記載の本発明の範囲内において種々の変形が可能であるということが認められる。このように、本発明は例示の実施形態及び任意の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書にて具体化される本発明の変形及び変化形が当業者によって採用され得、そうした変形及び変化形が本発明の範囲内にあると考えられるということを理解する必要がある。
【0116】
本発明は、本明細書において広範かつ一般的に記載されている。また、一般的な開示内に該当する狭義の種及び下位の分類のそれぞれも本発明の一部をなす。これは、実施されるものが本明細書に具体的に記載されているかどうかに関わらず、その部類から任意の限定事項を除くという負の限定を前提で一般的な記載を含むものである。
【0117】
他の実施形態は以下の特許請求の範囲内にある。さらに、本発明の特徴又は態様はマーカッシュ群において記載されるところ、当業者は、本発明がまたそれによってマーカッシュ群の任意の個々の構成物又は下位群の構成物においても記載されるということを認めることとなる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C