(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】炭化水素回収装置及び洗浄装置
(51)【国際特許分類】
B08B 3/08 20060101AFI20231212BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20231212BHJP
B01D 53/047 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B08B3/08 B
B01J20/34 A
B01J20/34 D
B01D53/047
(21)【出願番号】P 2022014013
(22)【出願日】2022-02-01
【審査請求日】2023-08-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592068635
【氏名又は名称】アクトファイブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 郁男
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-39717(JP,A)
【文献】特開平3-143520(JP,A)
【文献】特開2020-192515(JP,A)
【文献】特開2002-18374(JP,A)
【文献】特開2003-80182(JP,A)
【文献】特開平10-60676(JP,A)
【文献】特開昭59-132919(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108854434(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/08
B01J 20/34
B01D 53/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理気体に含まれる炭化水素を該被処理気体から除去して回収する装置であって、
a) 炭化水素を吸着可能な吸着材を内部に収容する吸着材収容空間を有する処理槽と、
b) 前記処理槽に接続された被処理気体導入管に設けられた弁である被処理気体導入弁と、
c) 前記処理槽に接続された処理後気体排出管に設けられた弁である処理後気体排出弁と、
d) 吸気口が真空吸引管により前記処理槽に接続された真空ポンプと、
e) 前記真空ポンプの排気口に接続された炭化水素液化部と、
f) 前記真空吸引管に設けられた弁である真空吸引弁と、
g) 前記処理槽を大気に開放する大気圧開放弁と、
h) 前記被処理気体導入弁及び前記処理後気体排出弁を開放し前記真空吸引弁及び前記大気圧開放弁を閉鎖する気体処理操作と、前記被処理気体導入弁及び前記処理後気体排出弁を閉鎖した状態で、前記大気圧開放弁を閉鎖し前記真空吸引弁を開放する吸引サブ操作と、該大気圧開放弁を開放し該真空吸引弁を閉鎖する大気圧開放サブ操作を交互に複数回ずつ実行する吸着剤再生操作と、を行う弁制御部と
を備える炭化水素回収装置。
【請求項2】
さらに、前記弁制御部が前記吸着剤再生操作を実行する間に前記吸着材配置空間内の吸着材を加熱する吸着材加熱機構を備える、請求項1に記載の炭化水素回収装置。
【請求項3】
さらに、前記弁制御部が前記気体処理操作を実行する間に前記吸着材配置空間内の吸着材を冷却する吸着材冷却機構を備える、請求項1又は2に記載の炭化水素回収装置。
【請求項4】
さらに、前記弁制御部が前記吸着剤再生操作を実行する間に前記吸着材配置空間内の吸着材を攪拌する吸着材攪拌機構を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の炭化水素回収装置。
【請求項5】
前記処理槽を2個備え、
前記2個の処理槽がそれぞれ前記被処理気体導入弁、前記処理後気体排出弁、前記真空吸引弁及び前記大気圧開放弁を備え、
前記弁制御部が、前記2個の処理槽のうちの一方の処理槽の被処理気体導入弁、処理後気体排出弁、真空吸引弁及び大気圧開放弁に前記気体処理操作を実行させているときには他方の処理槽の被処理気体導入弁、処理後気体排出弁、真空吸引弁及び大気圧開放弁に前記吸着剤再生操作を実行させ、該一方の処理槽の被処理気体導入弁、処理後気体排出弁、真空吸引弁及び大気圧開放弁に前記吸着剤再生操作を実行させているときには該他方の処理槽の被処理気体導入弁、処理後気体排出弁、真空吸引弁及び大気圧開放弁に前記気体処理操作を実行させるものである、
請求項1~4のいずれか1項に記載の炭化水素回収装置。
【請求項6】
内部にワークが収容される真空槽と、
前記真空槽内に、炭化水素を含有する洗浄液の蒸気を供給する蒸気供給部と、
吸気口が前記真空槽と接続された蒸気洗浄・真空乾燥用真空ポンプと、
前記蒸気洗浄・真空乾燥用真空ポンプの排気口が前記被処理気体導入管に直接又は間接的に接続された、請求項1~5のいずれか1項に記載の炭化水素回収装置と
を備える洗浄装置。
【請求項7】
前記真空ポンプと前記蒸気洗浄・真空乾燥用真空ポンプが同一の真空ポンプである、請求項6に記載の洗浄装置。
【請求項8】
前記蒸気供給部が、前記炭化水素液化部で液化された、炭化水素を含有する洗浄液を気化させることにより前記蒸気を生成するものである、請求項6又は7に記載の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気化した炭化水素を回収する炭化水素回収装置、及び炭化水素を含有する洗浄液でワークを洗浄する装置であって前記炭化水素回収装置を備える洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、炭化水素を含有する洗浄液を用いてワークを洗浄することが行われている。例えば、浸漬洗浄槽に貯留した洗浄液に浸漬することによってワークを洗浄(浸漬洗浄)した後、ワークを真空槽に収容し、真空槽内を真空にした後に洗浄液(通常は、浸漬洗浄槽とは別の貯留槽に貯留された洗浄液)の蒸気を導入し、低温のワークの表面で蒸気を液化させることによりワークを洗浄する(蒸気洗浄)。蒸気洗浄の操作を複数回繰り返すとワークの洗浄が進む一方、蒸気の熱によりワークの温度が徐々に上昇し、蒸気洗浄の効果が得られなくなってくる。そこで、ワークの温度が所定値以上となった時点で真空槽内を急激に減圧し、ワークの表面に付着している洗浄液を突沸・気化させることにより、ワークを乾燥させる(真空乾燥)。
【0003】
真空槽では、蒸気洗浄の際に洗浄液の蒸気の一部は液化せずに気体のまま排出されると共に、真空乾燥の際にはワークの表面に付着していた洗浄液が気化した気体が排出される。これらの気体には炭化水素が含まれているが、炭化水素は排出規制の対象となっているため、貯留槽や真空槽から排出される気体に含まれる炭化水素を回収する必要がある。
【0004】
特許文献1には、炭化水素系溶剤の成分を含む気体(以下、「被処理気体」と呼ぶ)から溶剤の成分を回収する炭化水素回収装置が記載されている。この装置では、主成分が活性炭である吸着材を吸着塔内に収容したうえで被処理気体を吸着塔内に送り、被処理気体に含まれる炭化水素を吸着材に吸着させることにより除去する(気体処理操作)。この操作を暫く継続すると、吸着材が溶剤の成分を吸着する能力が低下する。そこで、気体処理操作の開始から所定時間経過後に吸着塔内への被処理気体の送給を停止(従って、気体処理操作を停止)し、吸着塔内を減圧することにより、吸着材に吸着していた炭化水素を脱離させる(吸着剤再生操作)。この吸着剤再生操作により、吸着材が炭化水素を吸着する能力が回復する。吸着材から脱離した炭化水素の気体は吸着塔から排出され、冷却凝縮器で冷却されることにより液化して回収される。これら気体処理操作と吸着剤再生操作は交互に実行される。なお、冷却凝縮器では導入された炭化水素の気体の一部は液化せずに気体のまま通過し得るが、通過した気体は同じ冷却凝縮器に再度導入され、外部には排出されない。また、特許文献1に記載の装置は吸着塔を2個有しており、気体処理操作を行う吸着塔と吸着剤再生操作を行う供給塔を交互に切り替えている。これにより、常時、いずれか一方の吸着塔で被処理気体から炭化水素を除去して回収することができる。
【0005】
特許文献2にも特許文献1と同様に2塔の吸着塔を備えた構成を有する炭化水素回収装置が記載されている。但し、特許文献2の装置では、一方の吸着塔における吸着剤再生操作の際に冷却凝縮器で液化せずに通過した気体を、当該冷却凝縮器ではなく気体処理操作が行われている他方の吸着塔に導入することにより、当該気体が外部に排出されることを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平07-039717号公報
【文献】特開平03-143520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び2に記載の炭化水素回収装置ではいずれも、上記吸着剤再生操作を行ってもなお、吸着した炭化水素の一部が吸着材に残留する。そのため、気体処理操作と吸着剤再生操作を繰り返してゆくに従って、被処理気体から炭化水素を除去する能力が低下してしまう。
【0008】
ここではワークの洗浄の際に用いられる洗浄液の蒸気に含まれる炭化水素系溶剤の成分を除去する場合を例に説明したが、洗浄液の蒸気以外の、炭化水素系溶剤の成分を含む被処理気体から該成分を除去する場合にも同様の問題が生じる。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、炭化水素を含む被処理気体から炭化水素を除去する能力が低下することを抑えることができる炭化水素回収装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために成された本発明に係る炭化水素回収装置は、被処理気体に含まれる炭化水素を該被処理気体から除去して回収する装置であって、
a) 炭化水素を吸着可能な吸着材を内部に収容する吸着材収容空間を有する処理槽と、
b) 前記処理槽に接続された被処理気体導入管に設けられた弁である被処理気体導入弁と、
c) 前記処理槽に接続された処理後気体排出管に設けられた弁である処理後気体排出弁と、
d) 吸気口が真空吸引管により前記処理槽に接続された真空ポンプと、
e) 前記真空ポンプの排気口に接続された炭化水素液化部と、
f) 前記真空吸引管に設けられた弁である真空吸引弁と、
g) 前記処理槽を大気に開放する大気圧開放弁と、
h) 前記被処理気体導入弁及び前記処理後気体排出弁を開放し前記真空吸引弁及び前記大気圧開放弁を閉鎖する気体処理操作と、前記被処理気体導入弁及び前記処理後気体排出弁を閉鎖した状態で、前記大気圧開放弁を閉鎖し前記真空吸引弁を開放する吸引サブ操作と、該大気圧開放弁を開放し該真空吸引弁を閉鎖する大気圧開放サブ操作を交互に複数回ずつ実行する吸着剤再生操作と、を行う弁制御部と
を備える。
【0011】
本発明に係る炭化水素回収装置では、気体処理操作の際には、被処理気体導入弁及び処理後気体排出弁を開放し、真空吸引弁及び前記大気圧開放弁を閉鎖する。これにより、被処理気体を被処理気体導入管から吸着材配置空間に導入し、被処理気体に含まれる炭化水素を吸着材配置空間内の吸着材に吸着させることにより除去する。被処理気体から炭化水素が除去された気体(処理後気体)は、処理後気体排出管を通って炭化水素回収装置の外部に放出される。
【0012】
一方、吸着剤再生操作の際には、被処理気体導入弁及び処理後気体排出弁を閉鎖する。この状態でさらに、吸引サブ操作と大気圧開放サブ操作を交互に複数回ずつ実行する。吸引サブ操作では、大気圧開放弁を閉鎖し真空吸引弁を開放することにより、吸着材配置空間内を減圧する。すると、吸着材に吸着していた炭化水素が気化して吸着材から離脱し、炭化水素液化部で液化されることにより回収される。しかし、吸着材では炭化水素の気化に伴って気化熱により吸着材の温度が低下してゆき、しばらく経つと吸着材に残存する炭化水素がほとんど気化しなくなる。そこで、吸引サブ操作の開始から所定時間経過後に、真空吸引弁を閉鎖し大気圧開放弁を開放するという大気開放サブ操作を行うことにより吸着材配置空間内を大気圧にする。その後さらに、大気圧開放弁を閉鎖して真空吸引弁を開放することにより吸引サブ操作を行う。これにより、再び吸着材から炭化水素が離脱するようになる。
【0013】
本発明に係る炭化水素回収装置では、吸着剤再生操作の際にこれら吸引サブ操作と大気圧開放サブ操作を交互に複数回ずつ実行することにより、吸着材から炭化水素が離脱することを促進する。これにより、気体処理操作の際に被処理気体から炭化水素を除去する能力を高めることができる。
【0014】
前記吸着材には活性炭や活性炭素繊維を好適に用いることができる。
【0015】
本発明に係る炭化水素回収装置はさらに、前記弁制御部が前記吸着剤再生操作を実行する間に前記吸着材配置空間内の吸着材を加熱する吸着材加熱機構を備えることが好ましい。これにより、吸着剤再生操作の際に吸着材から炭化水素が離脱することをより促進することができる。
【0016】
本発明に係る炭化水素回収装置はさらに、前記弁制御部が前記気体処理操作を実行する間に前記吸着材配置空間内の吸着材を冷却する吸着材冷却機構を備えることが好ましい。これにより、気体処理操作の際に被処理気体に含まれる炭化水素を除去することをより促進することができる。特に、前記吸着材加熱機構を備える場合には、吸着剤再生操作で吸着材を加熱した後に気体処理操作を行う際に炭化水素を除去する効率が低下するおそれがあるため、併せて前記吸着材冷却機構を備えることが望ましい。
【0017】
本発明に係る炭化水素回収装置はさらに、前記弁制御部が前記吸着剤再生操作を実行する間に前記吸着材配置空間内の吸着材を攪拌する吸着材攪拌機構を備えることが好ましい。これにより、吸着剤再生操作の際に吸着材から炭化水素が離脱することをより促進することができる。
【0018】
本発明に係る炭化水素回収装置は、
前記処理槽を2個備え、
前記2個の処理槽がそれぞれ前記被処理気体導入弁、前記処理後気体排出弁、前記真空吸引弁及び前記大気圧開放弁を備え、
前記弁制御部が、前記2個の処理槽のうちの一方の処理槽の被処理気体導入弁、処理後気体排出弁、真空吸引弁及び大気圧開放弁に前記気体処理操作を実行させているときには他方の処理槽の被処理気体導入弁、処理後気体排出弁、真空吸引弁及び大気圧開放弁に前記吸着剤再生操作を実行させ、該一方の処理槽の被処理気体導入弁、処理後気体排出弁、真空吸引弁及び大気圧開放弁に前記吸着剤再生操作を実行させているときには該他方の処理槽の被処理気体導入弁、処理後気体排出弁、真空吸引弁及び大気圧開放弁に前記気体処理操作を実行させるものである
ことが好ましい。これにより、常時2個の処理槽のいずれかにおいて気体処理操作が実行されるため、被処理気体が発生する操作(例えば次に述べる蒸気洗浄及び真空乾燥)を中断することなく実行することができる。
【0019】
本発明に係る炭化水素回収装置は、炭化水素を含有する洗浄液によってワークを洗浄する洗浄装置に好適に用いることができる。そのような洗浄装置として、
内部にワークが収容される真空槽と、
前記真空槽内に、炭化水素を含有する洗浄液の蒸気を供給する蒸気供給部と、
吸気口が前記真空槽と接続された蒸気洗浄・真空乾燥用真空ポンプと、
前記蒸気洗浄・真空乾燥用真空ポンプの排気口が前記被処理気体導入管に直接又は間接的に接続された、本発明に係る炭化水素回収装置と
を備えるものを用いることができる。
【0020】
このような洗浄装置によれば、蒸気洗浄及び真空乾燥を行う際に発生する炭化水素を成分として含む洗浄液の気体から炭化水素を、炭化水素回収装置において再生された吸着材を用いて効率よく回収することができる。
【0021】
上記洗浄装置において、前記真空ポンプと前記蒸気洗浄・真空乾燥用真空ポンプが同一の真空ポンプであることが好ましい。このように蒸気洗浄及び真空乾燥に用いる真空ポンプ(蒸気洗浄・真空乾燥用真空ポンプ)と炭化水素回収装置に用いる真空ポンプを兼用させることにより、真空ポンプによる装置コストを抑えることができる。
【0022】
上記洗浄装置において、前記蒸気供給部が、前記炭化水素液化部で液化された、炭化水素を含有する洗浄液を気化させることにより前記蒸気を生成するものであることが好ましい。これにより、炭化水素回収装置で回収され炭化水素液化部で液化された炭化水素を含有する洗浄液を蒸気洗浄で再利用することができ、洗浄液の使用量を抑えることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、炭化水素回収装置において炭化水素を含む被処理気体から炭化水素を除去する能力が低下することを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る炭化水素回収装置の一実施形態を示す概略構成図。
【
図2】本実施形態の炭化水素回収装置が有する活性炭トレイを示す斜視図。
【
図3】本実施形態の炭化水素回収装置において活性炭トレイの周囲に設けられた加熱ジャケット及び冷却ジャケットを示す平面図。
【
図4】第1処理槽において気体処理を行い、第2処理槽において吸着剤再生処理のうち吸引サブ処理を行っている状態を示す図。
【
図5】第1処理槽において気体処理を行い、第2処理槽において吸着剤再生処理のうち大気開放サブ処理を行っている状態を示す図。
【
図6】第1処理槽において吸着剤再生処理のうち吸引サブ処理を行い、第2処理槽において気体処理を行っている状態を示す図。
【
図7】第1処理槽において吸着剤再生処理のうち大気開放サブ処理を行い、第2処理槽において気体処理を行っている状態を示す図。
【
図8】本実施形態の炭化水素回収装置の変形例を示す概略構成図。
【
図9】本実施形態の炭化水素回収装置を構成要素として有する洗浄装置を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1~
図9を用いて、本発明に係る炭化水素回収装置の実施形態、及び該炭化水素回収装置を構成要素として有する洗浄装置の実施形態を説明する。
【0026】
(1) 本実施形態の炭化水素回収装置の構成
図1に、本実施形態の炭化水素回収装置10の構成を概略的に示す。この炭化水素回収装置10は、第1処理槽11Aと第2処理槽11Bという2個の処理槽を有する。第1処理槽11Aと第2処理槽11Bは同様の構成を有する。そのため、以下では第1処理槽11Aを例として詳細な構成を説明し、第2処理槽11Bの構成の詳細な説明は省略する。第1処理槽11Aの説明中の各構成要素に付された符号の末尾に記載の「A」を「B」に置き換えたものが第2処理槽11Bの構成要素に該当する(例えば、第1処理槽11Aに接続された後述の第1被処理気体導入管121Aに対応する、第2処理槽11Bにおける構成要素は第2被処理気体導入管121B)である。
【0027】
第1処理槽11Aの下端付近の側面には第1被処理気体導入管121Aが接続されており、この第1被処理気体導入管121Aには第1被処理気体導入弁12Aが設けられている。第1被処理気体導入管121Aの上流側には被処理気体導入元管122が設けられており、この被処理気体導入元管122から第1被処理気体導入管121Aと第2被処理気体導入管121Bが分岐している。被処理気体導入元管122には、炭化水素の気体の発生源(図示せず)から該気体を第1処理槽11A及び第2処理槽11Bに向けて送給するファン123が設けられていると共に、ファン123よりも下流側に、発生源から被処理気体導入元管122に流入する気体の流量を調整(制限)する流量調整ダンパ124が設けられている。
【0028】
第1処理槽11Aの上端付近の側面には第1処理後気体排出管131Aが設けられており、この第1処理後気体排出管131Aには第1処理後気体排出弁13Aが設けられている。第1処理後気体排出管131Aと第2処理後気体排出管131Bは処理後気体合流管132に合流している。第1処理槽11A及び第2処理槽11Bで炭化水素が除去された気体である処理後気体は、処理後気体合流管132から炭化水素回収装置10の外部に放出される。
【0029】
第1処理槽11Aの下端付近の側面には第1真空吸引管141Aが設けられており、この第1真空吸引管141Aには第1真空吸引弁14Aが設けられている。第1真空吸引管141Aと第2真空吸引管141Bは真空吸引合流管142に合流しており、真空吸引合流管142には真空ポンプ19の吸気口が接続されている。
【0030】
真空ポンプ19の排気口は炭化水素回収管201を介して、炭化水素回収槽20内に設けられたノズル202に接続されている。炭化水素回収槽20にはノズル202よりも上方まで洗浄液Lが貯留されており、ノズル202から供給された炭化水素の気体が洗浄液Lに吸収されるようになっている。これら炭化水素回収槽20及びノズルは前述の炭化水素液化部に相当する。炭化水素回収槽20の上面には回収槽排出管203が接続されており、この回収槽排出管203は被処理気体導入元管122に接続されている。回収槽排出管203には、炭化水素回収槽20から被処理気体導入元管122に流入する気体の流量を調整(制限)する流量調整ダンパ204が設けられている。
【0031】
第1処理槽11Aの上面には第1大気開放管151Aが設けられており、この第1大気開放管151Aに第1大気圧開放弁15Aが設けられている。
【0032】
第1処理槽11A内には、吸着材である活性炭を収容する活性炭トレイ(第1下段活性炭トレイ161A、第1中段活性炭トレイ162A、第1上段活性炭トレイ163A)が縦方向に3個並んで配置されている。これらの活性炭トレイの底面166にはいずれも、気体を通過させつつ活性炭の粒子は通過させない粒径を有する気体通過孔167が設けられていると共に、後述の第1シャフト174A(又は第2シャフト174B)を通過させるシャフト通過孔168が設けられている(
図2、
図3参照)。
【0033】
第1処理槽11Aには第1活性炭攪拌ユニット17Aが設けられている。第1活性炭攪拌ユニット17Aは前述の吸着材攪拌機構に相当するものであって、第1下段活性炭トレイ161A、第1中段活性炭トレイ162A、及び第1上段活性炭トレイ163Aの各々のトレイ内に設けられた第1下段攪拌翼171A、第1中段攪拌翼172A及び第1上段攪拌翼173Aを有する。これら3個の攪拌翼は、共通の第1シャフト174Aに固定されている。第1シャフト174Aは略鉛直方向に延び、各活性炭トレイのシャフト通過孔168を通過するように設けられている。第1活性炭攪拌ユニット17Aはさらに、第1処理槽11Aの上面に設けられた、第1シャフト174Aを回転させる第1モータ175Aを有する。
【0034】
第1下段活性炭トレイ161A、第1中段活性炭トレイ162A、第1上段活性炭トレイ163Aの周囲にはそれぞれ、第1加熱ジャケット181A及び第1冷却ジャケット182Aが配置されている(
図3参照)。第1加熱ジャケット181Aは前述の吸着材加熱機構に相当するものであって、所定の温度(例えば130℃)に加熱されたオイルが下方から上方に流れる流路を有する。第1冷却ジャケット182Aは前述の吸着材冷却機構に相当するものであって、冷却水が下方から上方に流れる流路を有する。
【0035】
本実施形態の炭化水素回収装置10はさらに、制御部21を有する。制御部21は機能ブロックとして、弁制御部211と、温度制御部212とを有する。弁制御部211は、第1被処理気体導入弁12A、第2被処理気体導入弁12B、第1処理後気体排出弁13A、第2処理後気体排出弁13B、第1真空吸引弁14A、第2真空吸引弁14B、第1大気開放弁15A及び第2大気開放弁15Bの各弁の動作を制御する。温度制御部212は、第1加熱ジャケット181A及び第2加熱ジャケット181Bに加熱されたオイルを供給するタイミング、並びに第1冷却ジャケット182A及び第2冷却ジャケット182Bに冷却水を供給するタイミングを設定することにより、第1処理槽11A内及び第2処理槽11B内の活性炭の温度を制御する。これらの制御の詳細は、以下の炭化水素回収装置10の動作の説明中で述べる。制御部21は、CPUやメモリ等のハードウエア及びこれらの制御を実行するソフトウエアにより具現化されている。
【0036】
(2) 本実施形態の炭化水素回収装置の動作
本実施形態の炭化水素回収装置10の動作を説明する。この装置では、発生源(典型的には後述の洗浄装置1であるが、それには限定されない)から発生する、炭化水素を含有する被処理気体から炭化水素を除去する気体処理を行うと共に、気体処理によって活性炭トレイ内の活性炭に付着した炭化水素を除去することにより活性炭を再生する活性炭再生処理を行う。第1処理槽11Aで気体処理を行っている間には第2処理槽11Bでは活性炭再生処理を行い、第1処理槽11Aで活性炭再生処理を行っている間には第2処理槽11Bでは気体処理を行う。以下、これらの処理の詳細を説明する。
【0037】
まず以下のように、第1処理槽11Aで気体処理を行い、第2処理槽11Bで活性炭再生処理を行う操作を実行する。この操作を開始する際には、制御部21は、第1処理槽11Aに接続された各管に設けられた弁に対しては、前記気体処理操作として、第1被処理気体導入弁12A及び第1処理後気体排出弁13Aを開放し、第1真空吸引弁14A及び第1大気圧開放弁15Aを閉鎖する操作を行う。一方、制御部21は、第2処理槽11Bに接続された各管に設けられた弁に対しては、前記吸着剤再生操作として、第2被処理気体導入弁12B及び前記処理後気体排出弁13Bを閉鎖し、第2真空吸引弁14B及び第2大気圧開放弁15Bに対しては後述のように開閉を繰り返し実行させる操作を行う。
【0038】
以上の各弁の開閉操作により、発生源から発生した被処理気体は、ファン123の動作により被処理気体導入元管122に取り込まれ、第1被処理気体導入弁12Aが開放されている第1被処理気体導入管121Aを通過して第1処理槽11Aの底部付近に導入され、第1処理槽11A内において上方に向かって移動してゆく(
図4及び
図5参照。これらの図中、実線の太線は気体が流れている管を示し、破線の太線は気体が流れていない管を示す。なお、これらの図では炭化水素回収装置10の構成要素のうちの一部を省略して図示している。後述の
図6及び
図7も同様。)。この間、第1処理槽11A内では、被処理気体は、第1下段活性炭トレイ161A、第1中段活性炭トレイ162A、第1上段活性炭トレイ163Aの順に、各活性炭トレイに設けられた気体通過孔167を通過してゆき、被処理気体中に含まれる炭化水素が各活性炭トレイに収容されている活性炭Cに吸着することによって除去されてゆく。本実施形態では活性炭トレイを複数個(3個)備えることにより、活性炭トレイが1個のみの場合よりも確実に炭化水素を除去することができる。
【0039】
また、温度制御部212による制御によって第1冷却ジャケット182Aに冷却水が流れ、それにより第1下段活性炭トレイ161A、第1中段活性炭トレイ162A及び第1上段活性炭トレイ163A、さらにはそれら各活性炭トレイに収容されている活性炭が冷却される。このように活性炭が冷却されることによって、被処理気体に含まれる炭化水素が活性炭に吸着することが促進される。
【0040】
このようにして被処理気体から炭化水素が除去された処理後気体は、第1処理後気体排出管131A及び処理後気体合流管132を通って大気中に放出される(
図4及び
図5参照)。
【0041】
このように第1処理槽11Aで気体処理が行われている間、第2処理槽11Bでは、第2下段活性炭トレイ161B、第2中段活性炭トレイ162B及び第2上段活性炭トレイ163B内に収容されている活性炭に付着している炭化水素を除去する活性炭再生処理が以下のように行われる。なお、この活性炭再生処理は通常、それよりも前に第2処理槽11Bにおいて気体処理が行われている場合に実行されるものであって、第2処理槽11B内の各トレイに活性炭を収容した後に未だ気体処理が行われていない場合には省略することができる。但し、未だ気体処理が行われていない場合であっても、よりきれいな(炭化水素の付着がない)状態で活性炭を使用するために、活性炭再生処理を実行してもよい。
【0042】
活性炭再生処理ではまず、真空ポンプ19が作動している状態で、弁制御部211は、第2大気圧開放弁15Bを閉鎖し、第2真空吸引弁14Bを開放する。これにより、第2処理槽11B内の気体が真空ポンプ19により吸引され、第2処理槽11B内が減圧される。すると、活性炭Cに吸着していた炭化水素(HC)が活性炭Cから離脱し、炭化水素の気体が第2真空吸引管141B及び炭化水素回収管201を通ってノズル202から炭化水素回収槽20内の洗浄液L中に放出される(吸引サブ処理。
図4参照。)。これにより、炭化水素の気体の大半が洗浄液Lに吸収される。洗浄液Lに吸収されなかった一部の炭化水素の気体は、回収槽排出管203、被処理気体導入元管122及び第1被処理気体導入管121Aを通って、被処理気体と共に第1処理槽11A内に導入され、活性炭トレイ内の活性炭に吸着する。
【0043】
この吸引サブ処理の間、温度制御部212による制御によって加熱されたオイルが第2加熱ジャケット181Bに流れ、それにより第2下段活性炭トレイ161B、第2中段活性炭トレイ162B及び第2上段活性炭トレイ163B、さらにはそれら各活性炭トレイに収容されている活性炭Cが加熱される。これにより、活性炭Cから炭化水素が離脱することが促進される。それと共に、第2モータ175Bが作動して第2シャフト174B並びにそれに固定された第2下段攪拌翼171B、第2中段攪拌翼172B及び第2上段攪拌翼173Bが回転することにより活性炭Cが攪拌され、活性炭Cから炭化水素が離脱することがさらに促進される。
【0044】
このような吸引サブ処理を暫く実行していると、炭化水素の気化に伴って気化熱により活性炭の温度が低下してゆき、やがて活性炭に残存する炭化水素がほとんど気化しなくなる。そこで、吸引サブ処理の開始から所定時間経過後に、弁制御部211は、第2真空吸引弁14Bを閉鎖して第2大気圧開放弁15Bを開放する操作(大気開放サブ操作)を行うことにより大気を導入し、第2処理槽11B内を大気圧にする(
図5参照。大気開放サブ処理。)。その後さらに、弁制御部211は、第2大気圧開放弁15Bを閉鎖して第2真空吸引弁14Bをを開放する操作を行う。これにより、再び吸引サブ処理が実行され、活性炭Cから炭化水素が離脱するようになる。
【0045】
本実施形態の炭化水素回収装置10では、これら吸引サブ処理と大気開放サブ処理を交互に複数回ずつ実行する。これにより、活性炭から炭化水素が離脱することが促進されるため、その後の気体処理の際に被処理気体から炭化水素を除去する能力を高めることができる。
【0046】
以上のように第1処理槽11Aで気体処理を行いつつ第2処理槽11Bで活性炭再生処理を行った後、弁制御部211は、第1被処理気体導入弁12A、第1処理後気体排出弁13A、第2真空吸引弁14B及び第2大気圧開放弁15Bを閉鎖し、第2被処理気体導入弁12B及び第2処理後気体排出弁13Bを開放する制御を行う。さらに第1真空吸引弁14A及び第1大気圧開放弁15Aに関しては、弁制御部211は吸引サブ操作と大気開放サブ操作を交互に複数回ずつ実行する。これにより、第2処理槽11Bで気体処理を行いつつ第1処理槽11Aで活性炭再生処理を行う。第2処理槽11Bにおける気体処理の動作(
図6及び
図7)は前述した第1処理槽11Aにおける当該動作と同様であり、第1処理槽11Aにおける活性炭再生処理で行う吸引サブ処理の動作(
図6)及び大気圧開放サブ処理の動作(
図7)は第2処理槽11Bにおけるそれらの動作と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0047】
このように第1処理槽11Aと第2処理槽11Bで互いに逆のタイミングで気体処理と活性炭再生処理を行うことにより、被処理気体に対する気体処理を常時実行しつつ、活性炭を再生することで炭化水素を除去する能力が低下することを抑えることができる。
【0048】
(3) 本発明の炭化水素回収装置の変形例
本発明の炭化水素回収装置は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。例えば、活性炭攪拌ユニット、加熱ジャケット及び冷却ジャケットは必須ではなく、それらのうちの一部又は全部は省略してもよい。また、加熱ジャケットの代わりに電力を用いて加熱するヒータを用いてもよい。
【0049】
上記実施形態では1個の処理槽につき活性炭トレイを3個設けたが、活性炭トレイの個数は2個以下であってもよいし4個以上であってもよい。また、例えば籠形の保持具のように、上記実施形態で用いた活性炭トレイ以外の構造を有する保持具に活性炭を保持するようにしてもよい。
【0050】
上記実施形態では吸着材として活性炭を用いたが、活性炭素繊維やその他の吸着材を用いてもよい。
【0051】
上記実施形態では、第1被処理気体導入管121A及び第2被処理気体導入管121Bの直前のところに設けた被処理気体導入元管122から被処理気体を炭化水素回収装置10に導入しているが、その代わりに、
図8に示すように、真空ポンプ19の吸気口に被処理気体導入元管122Aを接続し、回収槽排出管203を第1被処理気体導入管121A及び第2被処理気体導入管121Bに直接接続するようにしてもよい。このように真空ポンプ19の吸気口に被処理気体導入元管122Aを接続することにより、被処理気体が第1処理槽11A又は第2処理槽11Bに導入される前に炭化水素回収槽20内の洗浄液Lに導入され、被処理気体に含まれる炭化水素の一部を洗浄液Lに吸収させることができる。
【0052】
なお、
図8中に太破線で示すように、さらに回収槽排出管203から分岐させた第2被処理気体導入元管122Bを設け、(被処理気体導入元管122Aから導入する被処理気体とは別に)第2被処理気体導入元管122Bからも被処理気体を導入するようにしてもよい。その場合には、例えば被処理気体導入元管122Aには洗浄装置において蒸気洗浄及び真空乾燥を行う真空槽を接続し、第2被処理気体導入元管122Bからは洗浄装置の周囲の気体を導入するようにすることができる。これにより、真空槽から被処理気体を炭化水素回収装置10に導入すると共に、炭化水素を含む気体が洗浄装置から漏出したとしてもその気体を第2被処理気体導入元管122Bから炭化水素回収装置10に導入することができる。
【0053】
本発明に係る炭化水素回収装置は、次に述べる洗浄装置において炭化水素を含有する洗浄液から発生する炭化水素を含有する気体から炭化水素を回収するために好適に用いることができる。但し、本発明に係る炭化水素回収装置は洗浄装置のみならず、他の装置や容器(例えば石油を貯留する容器)等から発生する炭化水素を含有する気体から炭化水素を回収する際にも用いることができる。
【0054】
(4) 本実施形態の炭化水素回収装置を有する洗浄装置
図9に、本実施形態の炭化水素回収装置10を有する洗浄装置1の構成を概略的に示す。この洗浄装置1は炭化水素回収装置10の他に、浸漬洗浄部30、蒸気洗浄・真空乾燥部40及び蒸留再生部50を有する。
図9に示した例では、炭化水素回収装置10には、
図8に示した変形例のうち第2被処理気体導入元管122Bを有するものを用いている。
【0055】
浸漬洗浄部30は、洗浄液が貯留される浸漬洗浄槽31と、浸漬洗浄槽31内に収容されるワークに洗浄液を介して超音波振動を付与する超音波振動子32と、浸漬洗浄槽31内の洗浄液を濾過する循環濾過器33とを有する。循環濾過器33は、両端が浸漬洗浄槽31に接続された循環管331と、循環管331内に設けられたフィルタ332及び液体ポンプ333とを有する。
【0056】
浸漬洗浄部30では、浸漬洗浄槽31に貯留された洗浄液にワークを浸漬したうえで、超音波振動子32により超音波振動をワークに付与することにより、ワークが洗浄される。ワークの洗浄に伴って洗浄液中に分散した不純物は、循環濾過器33においてフィルタ332により除去される。
【0057】
浸漬洗浄槽31は、蒸留再生洗浄液供給管541により、蒸留再生部50が有する蒸留液貯留タンク54と接続されている。これにより、炭化水素回収槽20で回収された炭化水素を含む洗浄液が蒸留再生部50で再生されて浸漬洗浄槽31に供給されることで再利用できる。また、浸漬洗浄槽31は、洗浄液を貯留する空間のうちの上寄りの位置において、戻り管35により炭化水素回収装置10の炭化水素回収槽20と接続されている。これにより、所定量を超える洗浄液が浸漬洗浄槽31に存在するときには、戻り管35を通して炭化水素回収槽20に洗浄液を流すことにより、浸漬洗浄槽31から洗浄液が溢れることが防止される。
【0058】
浸漬洗浄槽31は脱気回収管341により、真空ポンプ19に接続されている。脱気回収管341には脱気弁34が設けられている。脱気弁34を開放している間、浸漬洗浄槽31内の洗浄液Lから蒸発した気体を真空ポンプ19で吸引して炭化水素回収装置10により回収される。
【0059】
蒸気洗浄・真空乾燥部40は、真空槽41と、真空開閉弁42と、蒸気開閉弁43と、洗浄液回収槽44とを有する。真空槽41は真空ポンプ接続管421により真空ポンプ19に接続されている。真空ポンプ接続管421は、
図8に示した例の炭化水素回収装置10における被処理気体導入元管122に該当する。なお、炭化水素回収装置10が有する真空ポンプ19とは別の真空ポンプを蒸気洗浄・真空乾燥部40に設け、その真空ポンプに真空槽41を接続するようにしてもよい。その場合には、当該別の真空ポンプの排気口を、
図1に示した例の炭化水素回収装置10における被処理気体導入元管122に接続する。真空開閉弁42は真空ポンプ接続管421に設けられている。また、真空槽41は蒸気供給管431により蒸留再生部50が有する蒸留槽51と接続されており、蒸気供給管431に設けられた蒸気開閉弁43を開放しているときに内部に洗浄液の蒸気が供給される。
【0060】
洗浄液回収槽44は、洗浄液回収管441により真空槽41の底部と接続されており、真空槽41で液化した洗浄液を回収する容器である。洗浄液回収管441には洗浄液回収弁442が設けられている。洗浄液回収槽44は洗浄液供給管443により浸漬洗浄槽31にも接続されており、真空槽41で液化した洗浄液を浸漬洗浄部30で再利用できる。
【0061】
蒸気洗浄・真空乾燥部40では以下のように蒸気洗浄及び真空乾燥が行われる。まず、真空槽41にワークを収容したうえで真空開閉弁42を開放し、真空ポンプ19により真空槽41内を真空引きすることにより、真空槽41内の空気を排出する。次いで、真空開閉弁42を閉鎖したうえで蒸気開閉弁43を開放し、蒸留槽51から真空槽41内に洗浄液の蒸気を供給する。洗浄液の蒸気の供給を所定時間継続した後、蒸気開閉弁43を閉鎖したうえで真空開閉弁42を開放し、真空ポンプ19により真空槽41内の洗浄液の蒸気を排出する。これら蒸気の供給及び排出を複数回繰り返し実行する。最後に、真空ポンプ19により真空槽41内の圧力を急激に減圧してワークの表面に付着した洗浄液を突沸させることにより、真空乾燥を行う。
【0062】
蒸気洗浄及び真空乾燥の際に真空槽41から排出された洗浄液の蒸気は、炭化水素回収槽20に供給され、該蒸気に含まれる炭化水素が炭化水素回収装置10により回収される。
【0063】
蒸留再生部50は、蒸留槽51と、蒸気案内弁52と、蒸留器コンデンサ53と、蒸留液貯留タンク54と、エゼクタ55と、蒸留液循環ポンプ56とを有する。蒸留槽51は、炭化水素回収槽20に接続された蒸留対象液供給管511を介して炭化水素回収槽20から供給される洗浄液を貯留したうえでヒータ(図示せず)で加熱することにより、洗浄液の蒸気を発生させるものである。蒸気案内弁52は、蒸留槽51で発生した洗浄液の蒸気の流路を、蒸気洗浄・真空乾燥部40の蒸気供給管431と、蒸留器コンデンサ53に接続される蒸留器コンデンサ接続管531のいずれに供給するかを切り替える三方弁である。蒸留器コンデンサ53は、蒸留槽51から供給される洗浄液の蒸気を冷却して液化するものである。蒸留液貯留タンク54は、蒸留器コンデンサ53で液化した洗浄液を貯留するタンクである。蒸留液貯留タンク54は蒸留再生洗浄液供給管541を介して浸漬洗浄槽31に接続されている。エゼクタ55は、蒸留器コンデンサ53で液化した洗浄液を蒸留液貯留タンク54に引き込むように吸引するものであり、蒸留液循環ポンプ56で洗浄液が循環流路551を循環することにより動作する。
【0064】
蒸留再生部50では、常時、炭化水素回収槽20から供給される洗浄液を蒸留槽51で加熱することにより洗浄液の蒸気を生成する。生成した蒸気は、蒸気洗浄・真空乾燥部40において蒸気洗浄を行うときには蒸気案内弁52により流路を蒸気供給管431側に設定して真空槽41に供給し、それ以外のときには蒸気案内弁52により流路を蒸留器コンデンサ接続管531側に設定して蒸留器コンデンサ53に供給する。真空槽41に供給された蒸気は蒸気洗浄に用いられる。一方、蒸留器コンデンサ53に供給された蒸気は冷却されて液化することにより蒸留再生され、蒸留液貯留タンク54に貯留される。蒸留液貯留タンク54に貯留された蒸留再生後の洗浄液は、蒸留再生洗浄液供給管541を介して浸漬洗浄槽31に供給される。
【0065】
本実施形態の洗浄装置によれば、浸漬洗浄槽31内で洗浄液Lから蒸発した気体及び蒸気洗浄及び真空乾燥の際に真空槽41から排出される洗浄液の蒸気を炭化水素回収装置10に導入することにより、それら気体及び蒸気に含まれる炭化水素を環境中に排出することなく回収することができる。また、仮に浸漬洗浄槽31や真空槽41等から炭化水素を含む気体が漏出したとしても、その気体を第2被処理気体導入元管122Bから炭化水素回収装置10に導入することにより、その気体に含まれる炭化水素を回収することができる。さらに、回収した炭化水素を炭化水素回収槽20において洗浄液に吸収させ、その洗浄液を再利用することができるため、洗浄液の使用量を抑えることができる。さらに、炭化水素の回収を本実施形態の炭化水素回収装置10で行うことにより、前記蒸気から炭化水素を除去する能力が低下することを抑えることができる。
【0066】
また、蒸気洗浄及び真空乾燥の際に行う真空引きと、炭化水素回収装置10における吸着材(活性炭)の再生の際に行う真空引きを、共通の真空ポンプ19を用いて行う場合には、真空ポンプに要する装置コストを抑えることができる。
【0067】
本発明に係る炭化水素回収装置を用いた洗浄装置に関しても、上記の実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0068】
10…炭化水素回収装置
11A(11B)…第1(第2)処理槽
12A(12B)…第1(第2)被処理気体導入弁
121A(121B)…第1(第2)被処理気体導入管
122…被処理気体導入元管
123…ファン
124、204…流量調整ダンパ
13A(13B)…第1(第2)処理後気体排出弁
131A(131B)…第1(第2)処理後気体排出管
132…処理後気体合流管
14A(14B)…第1(第2)真空吸引弁
141A(141B)…第1(第2)真空吸引管
142…真空吸引合流管
15A(15B)…第1(第2)大気圧開放弁
151A(151B)…第1(第2)大気開放管
161A(161B)…第1(第2)下段活性炭トレイ
162A(162B)…第1(第2)中段活性炭トレイ
163A(163B)…第1(第2)上段活性炭トレイ
166…活性炭トレイの底面
167…気体通過孔
168…シャフト通過孔
17A(17B)…第1(第2)活性炭攪拌ユニット
171A(171B)…第1(第2)下段攪拌翼
172A(172B)…第1(第2)中段攪拌翼
173A(173B)…第1(第2)上段攪拌翼
174A(174B)…第1(第2)シャフト
175A(175B)…第1(第2)モータ
181A(181B)…第1(第2)加熱ジャケット
182A(182B)…第1(第2)冷却ジャケット
19…真空ポンプ
20…炭化水素回収槽
201…炭化水素回収管
202…ノズル
203…回収槽排出管
21…制御部
211…弁制御部
212…温度制御部
30…浸漬洗浄部
31…浸漬洗浄槽
32…超音波振動子
33…循環濾過器
331…循環管
332…フィルタ
333…液体ポンプ
34…脱気弁
341…脱気回収管
35…戻り管
40…蒸気洗浄・真空乾燥部
41…真空槽
42…真空開閉弁
421…真空ポンプ接続管
43…蒸気開閉弁
431…蒸気供給管
44…洗浄液回収槽
441…洗浄液回収管
442…洗浄液回収弁
443…洗浄液供給管
50…蒸留再生部
51…蒸留槽
511…蒸留対象液供給管
52…蒸気案内弁
53…蒸留器コンデンサ
531…蒸留器コンデンサ接続管
54…蒸留液貯留タンク
541…蒸留再生洗浄液供給管
55…エゼクタ
551…循環流路
56…蒸留液循環ポンプ
C…活性炭
L…洗浄液