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特許7401148ガス化装置、ガス化方法、水素製造システム、燃料生成システムおよび発電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】ガス化装置、ガス化方法、水素製造システム、燃料生成システムおよび発電システム
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/36 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
C01B3/36
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023091946
(22)【出願日】2023-06-02
【審査請求日】2023-06-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504240337
【氏名又は名称】株式会社マイクロ・エナジー
(74)【代理人】
【識別番号】100131657
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 律次
(72)【発明者】
【氏名】橋本 芳郎
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-112956(JP,A)
【文献】特開2008-174654(JP,A)
【文献】特開2007-238858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/02
C10J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素化合物を含有する原料から水素及び一酸化炭素を主体とするガスを生成するためのガス化装置であって、
前記原料をガス化する為のロータリーキルン型の横型ガス化炉と、前記横型ガス化炉の残渣の横型ガス化炉用排出口に接続され、前記横型ガス化炉からガス化していない炭素化合物を供給するための縦型ガス化炉用供給口と、ガス化していない炭素化合物を排出する縦型ガス化炉用排出口とを有する縦型ガス化炉と、
前記ガスを排気するためのガス化炉用排気口と、
前記横型ガス化炉に水蒸気を供給する横型ガス化炉用水蒸気供給手段と、
前記縦型ガス化炉に水蒸気を供給する縦型ガス化炉用水蒸気供給手段と、
前記横型ガス化炉に供給する水蒸気および前記縦型ガス化炉に供給する水蒸気の少なくともいずれか一方に酸素を混合する水蒸気酸素混合手段と、
前記横型ガス化炉を加熱する横型ガス化炉用加熱手段と、
前記縦型ガス化炉を加熱する縦型ガス化炉用加熱手段と、
前記横型ガス化炉及び縦型ガス化炉の温度を検出するガス化炉用温度検出手段と、
前記ガス化炉用温度検出手段が検出した温度に基づいて前記横型ガス化炉用加熱手段および前記縦型ガス化炉用加熱手段を制御し、前記横型ガス化炉および前記縦型ガス化炉の内部温度をタールの分解温度以上に維持するガス化炉用温度制御手段と、
を具備することを特徴とするガス化装置。
【請求項2】
前記ガス化炉用排気口は前記縦型ガス化炉の下部に形成されることを特徴とする請求項1記載のガス化装置。
【請求項3】
前記縦型ガス化炉内であって、前記ガス化炉用排気口の前にガス化していない炭素化合物を保持し、前記ガスを通す保持手段を具備することを特徴とする請求項2記載のガス化装置。
【請求項4】
前記横型ガス化炉は、当該横型ガス化炉を回転可能に接続する接続部を有し、
空気中の窒素と酸素を分離すると共に、当該窒素を前記接続部にシール剤として供給し、当該酸素を前記縦型ガス化炉内に酸化剤として供給する空気分離手段を具備することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のガス化装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載のガス化装置と、
前記ガス化装置で生成された水素及び一酸化炭素を主体とする合成ガスから、水素成分を分離して、高純度の水素ガスを生成する水素分離手段と、
を具備することを特徴とする水素製造システム。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれかに記載のガス化装置と、
前記ガス化装置で生成された水素及び一酸化炭素を合成して液体燃料を生成する液体燃料化装置と、
を具備することを特徴とする燃料生成システム。
【請求項7】
請求項1ないし3のいずれかに記載のガス化装置と、
前記ガス化装置で生成された水素及び一酸化炭素を燃料として電気を発生する発電手段と、
を具備することを特徴とする発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素化合物を含有する原料から水素及び一酸化炭素を主体とするガスを生成するためのガス化装置、ガス化方法、水素製造システム、燃料生成システムおよび発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多様なエネルギーの中で次世代のエネルギーとして、水素が注目されている。水素は燃料電池車や家庭用燃料電池などで使用されるが、燃料として使用しても二酸化炭素が発生せず、極めてクリーンなエネルギーだからである。水素は、例えば苛性ソーダの製造過程で発生する水素のように工業プロセスの副産物として製造されるものを利用することができる。また、水素は、水の電気分解によって製造することもできる。特に、再生可能エネルギー由来の電気を用いれば、よりクリーンなエネルギーとすることができる。
【0003】
一方、炭素化合物を含有する原料を高温下で水蒸気と反応させて水素を製造する方法がある。例えば、従来から、炭素化合物を含有する原料をガス化するガス化装置がある(特許文献1)。また、当該ガス化装置で生成されたガスの水素及び一酸化炭素をフィッシャー・トロプシュ合成(FT合成)して液体燃料を生成する燃料生成システムもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2010/021123号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、従来のガス化装置では、ガス化していない炭素化合物は、微細な粒子は生成ガス中に浮遊して搬送され、後工程で濾過分離して除去され、比較的大きな粒子は灰分と一緒に炉外に排出され、再度ガス化炉に投入されるか、残渣として廃棄処分するのが一般的であった。当該残渣を少なくするために、ガス化していない炭素化合物と水蒸気の反応を促進するための撹拌手段をガス化炉内に設けることが考えられる。しかし、撹拌すると反応効率が向上して生成ガス及び粉塵の発生量が増加する。その結果、炉内流速が速くなり、ガス化していない炭素化合物と水蒸気が生成ガスと共に炉外に搬出される量が増加してしまう。そこで、ガス中に浮遊する微細粒子は炉外でフィルター等により捕集して濾過分離する方法が一般的であるが、ガス量が増加するほど、後工程のガス精製プロセスの構成機器に負荷がかかる。また、当該構成機器を放置すると配管やフィルター類が閉塞して稼働不能となり、全停止に至る可能性が増大するためメンテナンスの頻度が増大する。
【0006】
そこで、本発明は、生成ガス中の微細粒子を炉外にださずに炉内に留めることによってガス化効率を向上させること、および、ガス化していない炭素化合物が流出するのを防ぐことによって、フィルター類のメンテナンスにかかる時間を削減できるガス化装置を提供することを目的とする。また、ガス化方法、水素製造システム、燃料生成システムおよび発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のガス化装置は、炭素化合物を含有する原料から水素及び一酸化炭素を主体とするガスを生成するためのガス化装置であって、前記原料を供給するための横型ガス化炉用供給口とガス化していない炭素化合物を排出する横型ガス化炉用排出口とを有するロータリーキルン型の横型ガス化炉と、前記横型ガス化炉用排出口に接続され、前記横型ガス化炉からガス化していない炭素化合物を供給するための縦型ガス化炉用供給口と、灰分及びガス化していない炭素化合物を排出する縦型ガス化炉用排出口とを有する縦型ガス化炉と、前記ガスを排気するためのガス化炉用排気口と、前記横型ガス化炉に水蒸気を供給する横型ガス化炉用水蒸気供給手段と、前記縦型ガス化炉に水蒸気を供給する縦型ガス化炉用水蒸気供給手段と、前記横型ガス化炉に供給する水蒸気および前記縦型ガス化炉に供給する水蒸気の少なくともいずれか一方に酸素を混合する水蒸気酸素混合手段と、前記横型ガス化炉を加熱する横型ガス化炉用加熱手段と、前記縦型ガス化炉を加熱する横型ガス化炉用加熱手段とを具備することを特徴とする。
【0008】
ここで、前記ガス化炉用排気口は前記縦型ガス化炉の下部に形成される方が好ましい。
【0009】
また、前記ガス化炉用排気口の前にガス化していない炭素化合物を保持し、前記ガスを通す保持手段を具備する方が好ましい。
【0010】
また、前記横型ガス化炉は、当該横型ガス化炉を回転可能に接続する接続部を有し、空気中の窒素と酸素を分離すると共に、当該窒素を前記接続部にシール剤として供給し、当該酸素を前記縦型ガス化炉内に酸化剤として供給する空気分離手段を具備する方が好ましい。
【0011】
また、前記ガス化装置は、前記横型及び縦型ガス化炉の温度を検出するガス化炉用温度検出手段を具備する方が好ましい。
【0012】
前記ガス化装置は、前記ガス化炉用温度検出手段が検出した温度に基づいて前記横型ガス化炉用加熱手段および前記縦型ガス化炉用加熱手段を制御し、前記横型ガス化炉および前記縦型ガス化炉の内部温度をタールの分解温度以上に維持するガス化炉用温度制御手段を具備する方が好ましい。
【0013】
また、本発明のガス化方法は、炭素化合物を含有する原料から水素及び一酸化炭素を主体とするガスを生成するためのガス化方法であって、前記原料をガス化するためのロータリーキルン型の横型ガス化炉内で前記原料と水蒸気を加熱して前記ガスを生成する横型ガス化炉ガス生成工程と、前記横型ガス化炉用排出口に接続され、前記横型ガス化炉からガス化していない炭素化合物を供給するための縦型ガス化炉用供給口と、ガス化していない炭素化合物を排出する縦型ガス化炉用排出口とを有する縦型ガス化炉内で、前記横型ガス化炉から排出されたガス化していない炭素化合物と水蒸気を加熱して前記ガスを生成する縦型ガス化炉ガス生成工程と、前記横型ガス化炉と縦型ガス化炉で生成された前記ガスを前記横型ガス化炉および縦型ガス化炉の外へ排気する排気工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の水素製造システムは、前記ガス化装置と、前記ガス化装置で生成された水素及び一酸化炭素を主体とする合成ガスから、水素成分を分離して、高純度の水素ガスを生成する水素分離手段を具備することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の燃料生成システムは、前記ガス化装置と、前記ガス化装置で生成された水素及び一酸化炭素を合成して液体燃料を生成する液体燃料化装置と、を具備することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の発電システムは、前記ガス化装置と、前記ガス化装置で生成された水素及び一酸化炭素を燃料として電気を発生する発電手段と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のガス化装置は、横型ガス化炉で発生したガス化していない炭素化合物および、生成ガス中の微細炭素粒子を縦型ガス化炉で捕集し、ガス化していない炭素化合物が炉外に流出するのを防ぐため、フィルター類のメンテナンスにかかる時間が削減され、かつ効率よくガスを生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のガス化装置を示す概略図である。
図2】本発明のガス化装置を示す概略図である。
図3】(a)本発明のガス化装置を示す概略図および(b)面状セラミックヒータの断面図である。
図4】本発明の撹拌手段を示す概略図である。
図5】本発明の搬送手段を示す概略図である。
図6】本発明の水素製造システムを示す概略図である。
図7】本発明の燃料生成システムを示す概略図である。
図8】本発明の液体燃料化装置及び発電機を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のガス化装置100について図1~5を用いて説明する。本発明のガス化装置100は、炭素化合物を含有する原料91から水素及び一酸化炭素を主体とするガスを生成するためのものであって、横型ガス化炉1と、縦型ガス化炉2と、ガス化炉用排気口29と、横型ガス化炉用水蒸気供給手段13と、縦型ガス化炉用水蒸気供給手段23と、水蒸気酸素混合手段9と、横型ガス化炉用加熱手段14と、縦型ガス化炉用加熱手段24と、で主に構成される。
【0020】
原料91としては、少なくとも炭素化合物を含有するものであればどのようなものでも良く、食品残渣、木質バイオマス、籾殻、農業残渣、活性汚泥、廃プラスチック等の廃棄物を用いることができる。また、これらの廃棄物は、横型ガス化炉1内で熱分解を起こし易くするために、粉砕機で所定の大きさに粉砕しておく方が好ましい。
【0021】
横型ガス化炉1は、ロータリーキルン型であって、原料をガス化する為のものである。当該横型ガス化炉1は、原料91を供給するための横型ガス化炉用供給口1Aと灰分及びガス化していない炭素化合物を排出する横型ガス化炉用排出口1Bとを有する。また、横型ガス化炉1は、内部で原料91と水蒸気とを空気遮断状態で加熱し、原料91を熱分解して水素と一酸化炭素を主体とするガスを生成するための横型ガス化室11を有するもので、例えば、水平方向に長い円筒形に形成することができる。また、横型ガス化炉1の材質としては、この熱分解を行う際の温度と圧力に耐えられるものであればどのようなものでも良いが、例えば、耐熱ステンレス製のものを用いることができる。
【0022】
横型ガス化炉用供給口1Aとしては、例えば、横型ガス化炉1内に原料91を供給するための開口を、横型ガス化炉1の水平方向の一端側に配置することができる。また、当該横型ガス化炉用供給口1Aには、原料91を定量的に連続供給するための原料供給手段94を設けてもよい。当該原料供給手段94としては、例えば、空気圧や油圧等で作動するピストン、コンベア、回転するスクリュー等で原料91を横型ガス化炉1へ供給するものを用いることができる。また、原料供給手段94や横型ガス化炉用供給口1Aには、熱分解を起こし易くするために、原料91を所定の大きさに粉砕することができる粉砕機を設けることも可能である。
【0023】
横型ガス化炉用排出口1Bとしては、例えば、ガス化していない炭素化合物や灰分を排出するための開口を、横型ガス化炉1の水平方向の他端側(横型ガス化炉用供給口1Aと逆側)に配置することができる。
【0024】
横型ガス化炉1をこのように構成することにより、横型ガス化炉用供給口1Aから供給された原料91は、当該炉の内部で水蒸気と空気遮断状態で加熱されると、熱分解して水素と一酸化炭素を主体とするガスとなり、後述するガス化炉用排気口29から取り出すことができる。
【0025】
縦型ガス化炉2は、横型ガス化炉用排出口1Bに接続され、横型ガス化炉1からガス化していない炭素化合物を縦型ガス化炉2内に供給するための縦型ガス化炉用供給口2Aと、灰分及びガス化していない炭素化合物を縦型ガス化炉2内から排出する縦型ガス化炉用排出口2Bとを有するものである。また、縦型ガス化炉2は、内部で炭素化合物と水蒸気とを空気遮断状態で加熱し、炭素化合物を熱分解して水素と一酸化炭素を主体とするガスを生成するための縦型ガス化室21を有するもので、例えば、垂直方向に長い円筒形に形成することができる。また、縦型ガス化炉2の材質としては、この熱分解を行う際の温度と圧力に耐えられるものであればどのようなものでも良いが、例えば、耐熱ステンレス製のものを用いることができる。
【0026】
縦型ガス化炉用供給口2Aとしては、例えば、横型ガス化炉1からガス化していない炭素化合物を縦型ガス化炉2内に供給するための開口を、縦型ガス化炉2の上端側に配置することができる。
【0027】
縦型ガス化炉用排出口2Bとしては、例えば、ガス化していない炭素化合物や灰分を排出するための開口を、縦型ガス化炉2の下端側(縦型ガス化炉用供給口2Aと逆側)に配置することができる。
【0028】
縦型ガス化炉2をこのように構成することにより、縦型ガス化炉用供給口2Aから供給された炭素化合物は、当該炉の内部で水蒸気と空気遮断状態で加熱されると、熱分解して水素と一酸化炭素を主体とするガスとなり、後述するガス化炉用排気口29から取り出すことができる。
【0029】
ガス化炉用排気口29は、横型ガス化炉1又は縦型ガス化炉2で原料91を基に発生した水素及び一酸化炭素を主体とするガスを横型ガス化炉1および縦型ガス化炉2の外へ排気するためのものである。ガス化炉用排気口29から排気したガスは、水素と一酸化炭素を分離して気体燃料として利用したり、水素及び一酸化炭素を合成して液体燃料として利用したりされる。ガス化炉用排気口29としては、例えば、生成したガスを排気するための開口を横型ガス化炉1の水平方向の他端側(横型ガス化炉用供給口1Aとは逆側)の上部や縦型ガス化炉2の下部に配置することができる。ここで、縦型ガス化炉2の下部に配置すると、ガス中の微細粒子を縦型ガス化炉2下部に堆積したガス化していない炭素化合物や灰分によるフィルター効果によって捕集でき、またガス化していない炭素化合物が炉外に流出するのを防ぐことができる。
【0030】
また、ガス化炉用排気口29を縦型ガス化炉2の下部に配置する場合、ガス化炉用排気口29の前にガス化していない炭素化合物を保持し、ガスを通す保持手段22を設ける方がよい。こうすることにより、保持されたガス化していない炭素化合物中を過熱水蒸気が均一に通りやすく、ガス化の効率がよくなる。また、ガス中の微細粒子を捕集しやすくなる効果もある。保持手段22としてはガス化していない炭素化合物を保持できればどのようなものでもよいが、例えば、縦型ガス化炉2内の断面と同形状のフィルターを用いればよい。フィルターの目や隙間の大きさは生成ガス中の微細粒子の大きさにより適宜決めれば良いが、例えば、100~200メッシュのものを用いることができる。フィルターとしては、例えばSUSなどの耐熱金網や耐熱ファイバー、耐熱メッシュ等を用いれば良い。また、これらを組み合わせて用いることもできる。また、これらを単独であるいは組み合わせて縦型ガス化室21内の保持手段22の厚みや体積を変えることで、圧損、捕集率、透過率等を調節することができる。
【0031】
横型ガス化炉用水蒸気供給手段13は、横型ガス化炉1内に水蒸気を供給するためのものである。なお、横型ガス化炉1内の温度をタールの分解温度以上に維持するという観点からは、横型ガス化炉用水蒸気供給手段13は、100℃を超える温度に加熱された過熱水蒸気を供給するものである方が好ましい。供給する過熱水蒸気の温度は、170℃以上、好ましくは、タールの分解温度(少なくとも950℃)以上である方がよい。水蒸気は、例えば、横型ガス化炉用水蒸気供給手段13の水蒸気加熱管内で加熱して生成すればよい。また、横型ガス化炉用水蒸気供給手段13は、横型ガス化炉1の横型ガス化炉用供給口1Aとは別の経路から水蒸気を供給するように形成するのが好ましい。横型ガス化炉用供給口1Aから供給する場合は投入原料が膨潤する恐れの無い場合に限る必要が有る。
【0032】
縦型ガス化炉用水蒸気供給手段23は、縦型ガス化炉2内に水蒸気を供給するためのものである。縦型ガス化炉用水蒸気供給手段23は、ガス化炉用排気口29が縦型ガス化炉2の上端側にある場合には、縦型ガス化炉2の下端側に設ければよく、縦型ガス化炉2の下端側にある場合には、縦型ガス化炉2の上端側に設ければよい。なお、縦型ガス化炉2内の温度をタールの分解温度以上に維持するという観点からは、縦型ガス化炉用水蒸気供給手段23は、100℃を超える温度に加熱された過熱水蒸気を供給するものである方が好ましい。供給する過熱水蒸気の温度は、170℃以上、好ましくは、タールの分解温度(少なくとも950℃)以上である方がよい。水蒸気は、例えば、横型ガス化炉用水蒸気供給手段13の水蒸気加熱管内で加熱して生成すれがよい。また、縦型ガス化炉用水蒸気供給手段23は、横型ガス化炉用水蒸気供給手段13からの水蒸気の供給が十分である場合には、なくても問題はない。
【0033】
水蒸気酸素混合手段9は、横型ガス化炉1に供給する水蒸気および縦型ガス化炉2に供給する水蒸気の少なくともいずれか一方に酸素を混合するためのものである。水蒸気酸素混合手段9は、当該酸素の量を調節可能に形成される。酸素は、例えば、横型ガス化炉用水蒸気供給手段13や縦型ガス化炉用水蒸気供給手段23の水蒸気加熱管内で混合すればよい。これにより、ガス化率の向上を図ることができる。また、上述した保持手段22が炭素化合物の微細粒子によって目詰まりを起こした場合には、水蒸気に混合する酸素の量を調節することで当該炭素化合物を燃焼し除去することができる。また、混合するための酸素には、後述する空気分離手段81が空気から分離した酸素を利用するようにしてもよい。
【0034】
横型ガス化炉用加熱手段14は、横型ガス化炉1を加熱するためのものである。横型ガス化炉用加熱手段14としては、横型ガス化炉1内をタールの分解温度以上、例えば1000℃以上に加熱できるものがよく、例えば電気ヒータを用いることができる。電気ヒータを用いることにより、横型ガス化炉1内の温度を正確に調節することができる。電気ヒータは、例えば横型ガス化炉1の上下であって、横型ガス化炉1の回転軸と直交する方向に複数並べて配置すればよい。また、本発明のガス化装置100は、横型ガス化炉1と横型ガス化炉用加熱手段14の周囲を囲い、熱が逃げるのを防ぐ横型ガス化炉用断熱手段17を有していてもよい。
【0035】
縦型ガス化炉用加熱手段24は、縦型ガス化炉2を加熱するためのものである。縦型ガス化炉用加熱手段24としては、縦型ガス化炉1内をタールの分解温度以上、例えば1000℃以上に加熱できるものがよく、例えば電気ヒータを用いることができる。電気ヒータを用いることにより、縦型ガス化炉2内の温度を正確に調節することができる。例えばラジアントチューブヒータ等の電気ヒータは、図2に示すように、縦型ガス化炉2の中心軸付近に配置すればよい。また、面状セラミックヒータ等の電気ヒータは、図3(a)、(b)に示すように、縦型ガス化炉2の中心軸を中心にして螺旋状に配置すればよい。また、本発明のガス化装置100は、縦型ガス化炉2と縦型ガス化炉用加熱手段24の周囲を囲い、熱が逃げるのを防ぐ縦型ガス化炉用断熱手段27を有していてもよい。
【0036】
また、本発明のガス化装置100は、生成したガスを吸引するためのガス吸引手段を備えていてもよい。ガス吸引手段とは、横型ガス化炉1内および縦型ガス化炉2内で発生したガスをガス化炉用排気口29から炉外に吸引するためのもので、これにより横型ガス化炉1および縦型ガス化炉2の排気量を調節することができる。ガス吸引手段としては、横型ガス化炉1および縦型ガス化炉2内で発生したガスをガス化炉用排気口29から炉外に吸引できればどのようなものでもよいが、例えば、吸引ブロワーを用いてガス化炉用排気口29から炉外にガスを吸引すればよい。
【0037】
また、本発明のガス化装置100は、横型ガス化炉1内および縦型ガス化炉2内のガスの圧力を検出するための圧力検出手段92を備えていてもよい。圧力検出手段92としては、横型ガス化炉1内および縦型ガス化炉2内のガスの圧力を検出することができればどのようなものでもよく、従来から知られているものを用いることができる。
【0038】
また、本発明のガス化装置100は、圧力検出手段92が検出した圧力に基づいてガス吸引手段を制御し、ガス化炉用排気口29からの排気量を調節して、横型ガス化炉1内および縦型ガス化炉2内の圧力を一定範囲に維持する圧力制御手段93を設けても良い。例えば、横型ガス化炉用供給口1Aや縦型ガス化炉用供給口2A近傍やガス化炉用排気口29に圧力センサを設けて圧力を検出し、横型ガス化炉1内および縦型ガス化炉2内の圧力を、大気圧に対して一定範囲の圧力に調節すれば良い。
【0039】
上述した保持手段22が炭素化合物の微細粒子によって目詰まりを起こすことがある。この場合、目詰まりによって縦型ガス化炉2内の圧力が高くなる。したがって、圧力制御手段93は、圧力検出手段92が検出した圧力に基づいて水蒸気酸素混合手段9を制御し、縦型ガス化炉2に供給する水蒸気に混合する酸素の量を調節してもよい。これにより、水蒸気に混合する酸素の量が多くなるように調節することで、保持手段22の目詰まりを起こしている炭素化合物の微細粒子を燃焼し除去することができる。
【0040】
また、本発明のガス化装置1は、生成されたガスと横型ガス化炉用水蒸気供給手段13又は縦型ガス化炉用水蒸気供給手段23が供給する水蒸気の元となる水との間で熱を交換する熱交換手段101を具備しても良い。例えば、ガス化炉用排気口29から排気された高温(例えば1000℃)のガスの顕熱を熱交換器等で回収して、ガスの温度を200~300℃まで冷却し、回収した熱を利用して水を加熱し、横型ガス化炉用水蒸気供給手段13又は縦型ガス化炉用水蒸気供給手段23が供給する水蒸気を生成すれば良い。
【0041】
また、横型ガス化炉1を回転させるための回転手段12を具備していてもよい。これにより、内部の炭素化合物の表面と下部を入れ替えるように撹拌でき、その結果炭素化合物と水蒸気をより多く接触させることができ、ガス化が効率的に行われる。また、回転手段12は、後述する搬送手段4の動力とすることもできる。回転手段12としては、横型ガス化炉1を当該炉の所定の回転軸を中心に回すモータ等の回転駆動装置を用いればよい。
【0042】
また、横型ガス化炉1には、当該横型ガス化炉1を非回転部に対して回転可能に接続する接続部72がある。当該接続部72には、横型ガス化炉1と非回転部の間にシール71が設けられるが、更に確実に密閉するためには、横型ガス化室11の当該接続部72付近に窒素ガス等の不活性ガスを供給する方が好ましい。当該窒素ガスの供給には、空気分離手段81を用いることができる。空気分離手段81とは、空気中の窒素と酸素を分離するためのものである。空気分離手段81により分離された窒素は接続部72に供給され、接続部72のシール用として利用される。また、空気分離手段81により分離された酸素は、水蒸気酸素混合手段9で水蒸気に混合する酸素として利用することもできる。酸素をガス化炉内に供給して炭素の酸化剤とすることにより、空気を酸化剤とする場合に比して窒素ガスを残留させることがなく、ガス化効率の促進及びガス化炉内の内部加熱用の熱源として有効に利用することができる。空気分離手段81としては空気中の窒素と酸素を分離できればどのようなものでもよいが、例えば、市販されている酸素が排気されるタイプの窒素発生機を用いればよい。
【0043】
また、横型ガス化炉1は、搬送手段4を具備してもよい。搬送手段4は、横型ガス化炉1内底部に堆積する炭素化合物を横型ガス化炉用排出口1Bに送るものである。また、より好ましくは、搬送手段4は、当該横型ガス化炉1内底部に堆積する炭素化合物の一定量を撹拌しながら横型ガス化炉用排出口1Bに送るものである方が好ましい。搬送手段4は、横型ガス化炉1内底部に堆積する炭素化合物を横型ガス化炉用排出口1Bに送ることができるものであればどのようなものでもよいが、例えば図5に示すように、横型ガス化炉1の内壁に複数の凸部をそれぞれ横型ガス化炉用供給口1A側から横型ガス化炉用排出口1B側までスパイラル状に形成したスクリューを用いることができる。これにより、回転手段12による横型ガス化炉1の回転に伴い当該凸部も回転するため、炭素化合物は当該凸部によって掻き上げられて撹拌されると共に、横型ガス化炉用排出口1Bへと搬送される。なお、凸部としては、横型ガス化炉1の内壁に一体に形成されるものであってもよいし、棒やパイプをスパイラル状に並べて配置したものであってもよい。また、凸部の大きさは、横型ガス化炉1の大きさや回転速度、炭素化合物のガス化効率等を元に適宜設定すればよいが、例えば、横型ガス化炉1の内壁に対する高さが50~100mmのものを用いればよい。
【0044】
また、本発明のガス化装置100は、図4に示すように、横型ガス化炉1内底部に堆積する炭素化合物を横型ガス化炉1内の空間に撹拌する撹拌手段5を備えていてもよい。横型ガス化炉1内底部に堆積する炭素化合物を炉内の底部から上部に掻き上げて落下させることで、炭素化合物中の微細粒子を炉内空間のガス中に浮遊させて、水蒸気との接触機会および接触する表面積を増大させ、反応が促進される。撹拌手段5としては、横型ガス化炉1内底部に堆積する炭素化合物を横型ガス化炉1の中心部の空間に撹拌できればどのようなものでもよいが、例えば、横型ガス化炉1内に当該炉の回転軸121に水平に配置された網状のものを用いればよい。具体的には、撹拌手段5としてSUS等の耐熱金網を用いることができる。撹拌手段5の網目の大きさは、炭素化合物のガス化効率等を考慮して、横型ガス化炉1内の空間に巻き上げたい炭素化合物の量により適宜決定すれば良い。
【0045】
また、本発明のガス化装置100は、横型ガス化炉1内の温度を検出することができる横型ガス化炉用温度検出手段15を備えていてもよい。横型ガス化炉用温度検出手段15としては、横型ガス化炉1内の温度を検出できればどのようなものでもよいが、例えば熱電対を用いることができる。また、横型ガス化炉用温度検出手段15は、後述する横型ガス化炉用温度制御手段16と電気的に接続されており、その検出情報を横型ガス化炉用温度制御手段16に送るように形成される。なお、横型ガス化炉1内全体の温度を正確に把握するためには、横型ガス化炉用温度検出手段15を横型ガス化炉1の横型ガス化炉用供給口1A側から横型ガス化炉用排出口1B側まで、複数箇所に配置する方が好ましい。また、横型ガス化炉用温度検出手段15を、更に横型ガス化炉1の上部側から下部側まで、複数箇所に配置するようにしてもよい。
【0046】
また、本発明のガス化装置100は、縦型ガス化炉2内の温度を検出することができる縦型ガス化炉用温度検出手段25を備えていてもよい。縦型ガス化炉用温度検出手段25としては、縦型ガス化炉2内の温度を検出できればどのようなものでもよいが、例えば熱電対を用いることができる。また、縦型ガス化炉用温度検出手段25は、後述する縦型ガス化炉用温度制御手段26と電気的に接続されており、その検出情報を縦型ガス化炉用温度制御手段26に送るように形成される。なお、縦型ガス化炉2内全体の温度を正確に把握するためには、縦型ガス化炉用温度検出手段25を縦型ガス化炉2の縦型ガス化炉用供給口2A側から縦型ガス化炉用排出口2Bまで、複数箇所に配置する方が好ましい。また、縦型ガス化炉用温度検出手段25を、更に縦型ガス化炉2の周囲の複数箇所に配置するようにしてもよい。
【0047】
また、本発明のガス化装置100は、横型ガス化炉用温度検出手段15が検出した温度に基づいて横型ガス化炉用加熱手段14を制御し、横型ガス化炉1内の少なくとも横型ガス化炉用排出口1B側をタールの分解温度以上に維持する横型ガス化炉用温度制御手段16を備えていてもよい。例えば、横型ガス化炉用温度制御手段16としてコンピュータを用い、このコンピュータに予めタールの分解温度以上の所定の温度を設定しておく。次に、設定温度と実際に熱電対が検出した温度の偏差に基づいてPID制御等により横型ガス化炉用加熱手段14に信号を送り、横型ガス化炉用加熱手段14の出力を調節して、横型ガス化炉1内の温度を制御する。設定温度としては、タールの分解温度以上、例えば1000℃以上に設定すれば良い。なお、横型ガス化炉1の耐熱温度を考慮して、加熱温度の上限値も設定しておくことができる。また、横型ガス化炉1内にタールの分解温度を下げる触媒を配置した場合には、タールの分解温度を低下させることができる。この場合には、更に低い設定温度を選択することも可能であり、触媒を用いた際のタールの分解温度以上に維持するようにすれば良い。これにより、横型ガス化炉1内の温度をタールの分解温度以上に正確に維持できるので、タールの熱分解を確実に行うことができ、生成されたガスにタール等が含まれるのを抑制することができる。
【0048】
また、本発明のガス化装置100は、縦型ガス化炉用温度検出手段25が検出した温度に基づいて空気分離手段81又は水蒸気酸素混合手段9を制御し、縦型ガス化炉2内の少なくとも縦型ガス化炉用排出口2B側をタールの分解温度以上に維持する縦型ガス化炉用温度制御手段26を備えていてもよい。縦型ガス化炉用温度制御手段26は、縦型ガス化炉2内に供給する酸素の量を調節してガス化していない炭素化合物を酸化させ、縦型ガス化炉内を加熱する。制御の方法としては、例えば、縦型ガス化炉用温度制御手段26としてコンピュータを用い、このコンピュータに予めタールの分解温度以上の所定の温度を設定しておく。次に、設定温度と実際に熱電対が検出した温度の偏差に基づいてPID制御等により空気分離手段811又は水蒸気酸素混合手段9に信号を送り、空気分離手段811又は水蒸気酸素混合手段9の出力を調節する。これにより、縦型ガス化炉2内への酸素供給量を制御して縦型ガス化炉2内の温度を制御する。設定温度としては、タールの分解温度以上、例えば1000℃以上に設定すれば良い。なお、縦型ガス化炉2の耐熱温度を考慮して、酸素供給量の上限値も設定しておくことができる。また、縦型ガス化炉2内にタールの分解温度を下げる触媒を配置した場合には、タールの分解温度を低下させることができる。この場合には、更に低い設定温度を選択することも可能であり、触媒を用いた際のタールの分解温度以上に維持するようにすれば良い。これにより、縦型ガス化炉2内の温度をタールの分解温度以上に正確に維持できるので、タールの熱分解を確実に行うことができ、生成されたガスにタール等が含まれるのを抑制することができる。したがって、ガス化装置100は、横型ガス化炉用温度制御手段16や縦型ガス化炉用温度制御手段26を備えることによって、タール分等を除去するためのガス精製装置及びガス改質装置を不要とすることができる。
【0049】
次に、本発明のガス化方法(ガス生成工程)について、上述したガス化装置100を用いて説明する。
【0050】
本発明のガス化方法は、炭素化合物を含有する原料91から水素及び一酸化炭素を主体とするガスを生成するための方法であって、横型ガス化炉ガス生成工程と、縦型ガス化炉ガス生成工程と、排気工程と、を主に有する。
【0051】
横型ガス化炉ガス生成工程とは、原料91を供給するための横型ガス化炉用供給口とガス化していない炭素化合物を排出する横型ガス化炉用排出口1Bとを有するロータリーキルン型の横型ガス化炉1内で炭素化合物を含有する原料91と水蒸気を加熱してガスを生成するものである。炭素化合物を含有する原料91と、水蒸気と、を空気遮断状態でタールの分解温度以上に維持することでガスを生成できる。当該水蒸気としては、過熱水蒸気である方が好ましい。また、水蒸気には、酸素が混合されていてもよい。
【0052】
縦型ガス化炉ガス生成工程とは、横型ガス化炉用排出口1Bに接続され、横型ガス化炉1からガス化していない炭素化合物を供給するための縦型ガス化炉用供給口2Aとガス化していない炭素化合物を排出する縦型ガス化炉用排出口2Bとを有する縦型ガス化炉2内で横型ガス化炉1から排出されたガス化していない炭素化合物と水蒸気を加熱してガスを生成するものである。横型ガス化炉1から排出されたガス化していない炭素化合物と、水蒸気と、を空気遮断状態でタールの分解温度以上に維持することでガスを生成できる。当該水蒸気としては、過熱水蒸気である方が好ましい。また、水蒸気には、酸素が混合されていてもよい。
【0053】
排気工程とは、横型ガス化炉1内と縦型ガス化炉2で生成されたガスを横型ガス化炉1および縦型ガス化炉2の外へ排気するものである。ここで、排気工程はガスをガス化炉用排気口29から吸引して排気するものであってもよい。これにより炉内の圧力を一定に保つことができる。排気したガスは、水素と一酸化炭素を分離して気体燃料として利用したり、水素及び一酸化炭素を合成して液体燃料として利用したりされる。
【0054】
本発明のガス化方法は、横型ガス化炉1内底部に堆積する炭素化合物を横型ガス化炉1の中心部の空間に撹拌する撹拌工程を有するものであってもよい。このように横型ガス化炉1内底部に堆積する炭素化合物を空中に巻き上げることによって、炭素化合物と水蒸気の触れ合う表面積が多くなり、反応が促進される。撹拌工程には、横型ガス化炉1内底部に堆積する炭素化合物を横型ガス化炉1の中心部の空間に撹拌できればどのように行ってもよいが、例えば、上述した撹拌手段5を用いることができる。具体的には、撹拌手段5として、横型ガス化炉1内を回転軸に水平にフィルターを設置すればよい。フィルターには例えばSUSなどの耐熱金網や耐熱ファイバー、耐熱メッシュ等を用いれば良い。また、これらを組み合わせて用いることもできる。フィルターの網目の大きさは生成ガス中の微細粒子の大きさにより適宜決めれば良い。
【0055】
また、本発明のガス化方法は、横型ガス化炉1内底部に堆積する炭素化合物の一定量を撹拌しながら横型ガス化炉用排出口1Bに搬送する搬送工程を有するものであってもよい。これにより、撹拌と搬送を同時に行えるので、上述した撹拌工程を補助することができる。撹拌搬送工程には、横型ガス化炉1内底部に堆積する炭素化合物の一定量を撹拌しながら横型ガス化炉用排出口1Bに搬送することができればどのように行ってもよいが、例えば、上述した搬送手段4を用いることができる。具体的には、搬送手段4として、横型ガス化炉1の内面に形成されるスパイラル状のスクリューを用いることができる。これにより、回転手段12による横型ガス化炉1の回転を利用して、当該スクリューにより炭素化合物は撹拌されながら自然と横型ガス化炉用排出口1Bへと搬送される。
【0056】
次に、本発明のガス化装置100を組み込んだ水素製造システム500について図6を用いて説明する。本発明の水素製造システムは、上述した本発明のガス化装置100と、水素分離手段150と、で主に構成される。
【0057】
ここで、水素分離手段150とは、ガス化装置100で生成された水素及び一酸化炭素を主体とする合成ガスから、水素成分を分離するためのものである。水素分離手段150としては、水素を分離できればどのようなものでもよいが、例えば、PSA(Pressure Swing Adsorption)、すなわち圧力スイング吸着と言われるガス精製方式によって水素を分離する装置を用いればよい。
【0058】
水素製造システム500は、ガス化装置100で得られた水素と一酸化炭素を主体とする合成ガスから、水素成分を分離して、高純度の水素ガスを生成するものである。また、水素製造システム500で生じた余剰ガスを燃料として発電する発電手段400を更に有していてもよい。
【0059】
次に、本発明のガス化装置100を組み込んだ燃料生成システム200について図7を用いて説明する。本発明の燃料生成システム200は、上述した本発明のガス化装置100と、ガス化装置100で生成された水素及び一酸化炭素を合成して液体燃料を生成する液体燃料化装置300と、で主に構成される。また、液体燃料化装置300で生じた余剰ガスを燃料として発電する発電手段400を更に有していてもよい。もちろん、液体燃料を生成する液体燃料化装置300を省略して生成ガスの全量を発電手段400に供給することも可能である。
【0060】
液体燃料化装置300は、ガス化装置100で得られた水素と一酸化炭素とをフィッシャー・トロプシュ(以下FTと記載する)法を用いて液体燃料化するものである。液体燃料化装置300としては、FT合成ができるものであれば周知のものを用いることができる。図8を用いて液体燃料化装置300を用いた処理の流れ(液体燃料化工程)の一例を示す。
【0061】
ガス化装置100で生成したガスは、不要なものを除去するガス精製工程を経た後にFT合成部333へ吹き込み、FT合成触媒334に通してFT合成を行うと、液体燃料となる軽質油と水が生成される。FT合成は、FT合成触媒334の性能により品質が大きく左右されるため、FT合成触媒334としては、高い一酸化炭素転化率と高い連鎖成長確率が得られるものが好ましい。
【0062】
軽質油と水は冷却分離部335へ導入して分離する。分離した軽質油は油タンク336に回収し、水は水タンク337を介して温水として回収し、分離しなかったものはFT合成部333へ戻して繰り返す。
【0063】
また燃料生成システム200には、液体燃料化装置300で生じた余剰ガスや油タンク336に回収した軽質油を燃料として電気を発電する(発電工程)発電手段400を組み合わせても良い。発電手段400としては、発電機、マイクロガスタービン発電機、燃料電池等を用いれば良い。
【0064】
また、ガス化装置100の横型ガス化炉用加熱手段14および縦型ガス化炉用加熱手段24を電気ヒータとし、この電気ヒータに発電手段400が発電した電気を用いれば、ガス化装置100に別途電源を用意する必要が無くなり、燃料生成システム200を外部と独立したシステムにすることができる。これにより、例えば、発展途上国の農村部等、木質バイオマスや農業残渣等の原料91は十分にあるが、電気関連設備が不十分な地域においても、本発明の燃料生成システム200を利用することが可能となる。
【符号の説明】
【0065】
1 横型ガス化炉
1A 横型ガス化炉用供給口
1B 横型ガス化炉用排出口
2 縦型ガス化炉
2A 縦型ガス化炉用供給口
2B 縦型ガス化炉用排出口
4 搬送手段
5 撹拌手段
9 水蒸気酸素混合手段
11 横型ガス化室
12 回転手段
13 横型ガス化炉用水蒸気供給手段
14 横型ガス化炉用加熱手段
15 横型ガス化炉用温度検出手段
16 横型ガス化炉用温度制御手段
17 横型ガス化炉用断熱手段
21 縦型ガス化室
22 保持手段
23 縦型ガス化炉用水蒸気供給手段
24 縦型ガス化炉用加熱手段
25 縦型ガス化炉用温度検出手段
26 縦型ガス化炉用温度制御手段
27 縦型ガス化炉用断熱手段
29 ガス化炉用排気口
71 シール
72 接続部
81 空気分離手段
91 原料
92 圧力検出手段
93 圧力制御手段
94 原料供給手段
100 ガス化装置
101 熱交換手段
150 水素分離手段
200 燃料生成システム
300 液体燃料化装置
333 FT合成部
334 FT合成触媒
335 冷却分離部
336 油タンク
337 水タンク
400 発電手段
500 水素製造システム
【要約】
【課題】 生成ガス中の微細粒子を炉外にださずに炉内に留めることによってガス化効率を向上させること、および、ガス化していない炭素化合物が流出するのを防ぐことによって、フィルター類のメンテナンスにかかる時間を削減できるガス化装置を提供すること。
【解決手段】 ロータリーキルン型の横型ガス化炉1と、横型ガス化炉1でガス化していない炭素化合物を供給するための縦型ガス化炉用供給口と、ガス化していない炭素化合物を排出する縦型ガス化炉用排出口とを有する縦型ガス化炉2と、ガスを排気するためのガス化炉用排気口29と、横型ガス化炉1、縦型ガス化炉2にそれぞれ水蒸気を供給する横型ガス化炉用水蒸気供給手段13、縦型ガス化炉用水蒸気供給手段23と、ガス化炉に供給する水蒸気に酸素を混合する水蒸気酸素混合手段と、横型ガス化炉、縦型ガス化炉をそれぞれ加熱する横型ガス化炉用加熱手段、縦型ガス化炉用加熱手段と、を具備するガス化装置。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8