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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/14 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
A47C7/14 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023175981
(22)【出願日】2023-10-11
【審査請求日】2023-10-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516354925
【氏名又は名称】有限会社オフィスpiano柏木
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】柏木 良信
【審査官】五十嵐 康弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-133831(JP,A)
【文献】特開2014-046131(JP,A)
【文献】特表2013-539710(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0182027(US,A1)
【文献】米国特許第7334841(US,B2)
【文献】西独国特許出願公告第1152232(DE,B)
【文献】中国特許出願公開第102934918(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/02- 7/35
B60N 2/00- 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚部と、
脚部に支えられる座面部と、
座面部の後端部側の上方に設けられる背もたれ部とを備える椅子において、
座面部を上下方向に貫通する状態で、前記座面部に対してその後端部から前後方向に移動可能に設けられるスライド体と、
前記スライド体に取り付けられ、前記座面部上に位置する受け部と、を有し、
前記受け部が前記座面部に座る着座者の骨盤後面を受ける支持面部を有しており、
前記スライド体が前方に移動し、かつ、前記受け部の支持面部が前記背もたれ部の前面よりも前側に位置する前進状態で前記スライド体が保持されるロック部材を有することを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記座面部の下部の後側に回転可能に取り付けられる軸体と、
前記軸体に対して前方に突出する状態に固定され、前記軸体を回転中心として上下方向に揺動する揺動体と、
前記スライド体と前記揺動体との間に架け渡される柔軟性を有する引張部材と、
前記引張部材に対して下方から当てられ、前記引張部材を前記揺動体へ向かって下方に案内するガイド体と、
前記軸体に対して前方に突出する状態で固定され、前記軸体を回転中心として上下方向に揺動する操作レバーとを備え、
前記スライド体が後方へ付勢されており、前記スライド体が前記前進状態にあるとき、前記ロック部材が前記操作レバーの上下方向の揺動を規制していることを特徴とする請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
前記操作レバーが前記座面部よりも左右方向一方の外側に位置し、前記ロック部材が前記座面部の左右方向一方の縁部に固定され、
前記ロック部材が前後方向に開口し、かつ上下方向に延びる環状部材であり、前記ロック部材の内周部に前記操作レバーが挿通されており、
前記ロック部材の上部は、その内部で前記操作レバーを上下方向に移動可能であり、
前記ロック部材の下部は、その内部の左右方向一方側で前記操作レバーを上下方向に移動可能であり、
前記ロック部材の下部の内周部の左右方向他方端に、上下方向に間隔をおいて複数の係止突起が設けられ、それぞれの前記係止突起に前記操作レバーを係止可能となっている請求項2に記載された椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、背もたれ部にもたれることなく着座者の仙骨を含む骨盤後面を支える受け部を備える椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、着座者が背もたれ部にもたれた状態で、着座者の仙骨を含む骨盤後面を支えることにより、着座者の姿勢を良好に保ち、長時間座った状態で疲れにくい椅子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の椅子は、台座(脚部)と、脚部に支持されるシート支持部材と、シート支持部材に対して揺動リンクを介して取り付けられるシート部および骨盤・腰部支え(受け部)と、受け部の上縁に揺動可能に支持される背凭れ部(背もたれ部)とを備えている。受け部はシート部の後端部に揺動リンクに対して旋回軸を介して揺動可能に取り付けられている。また、受け部はシート部から後方へ続く前側部分と、背もたれ部から下方に続く後側部分とが、ほぼ直角に配置されているものである。
【0004】
特許文献1に記載の椅子では、背もたれ部を後傾させずに上半身を直立させた作業状態では、揺動リンクの作用により、シート部がわずかに前傾状態となり、かつ、受け部の前側部分がシート部に対して持ち上る作業位置となる(特許文献1の図2参照)。このとき、受け部の前側部分で着座者の仙骨を含む骨盤後面を支える。さらに、この作業位置では受け部の後側部分の上端部が前方へ突き出し、この受け部の後側部分で着座者の腰部を支える。
【0005】
また、特許文献1に記載の椅子では、着座者が背もたれ部にもたれ掛かり、背もたれ部を後傾状態させたときには、上述の作業位置から休止位置となる。休止位置では、シート部および受け部の前側部分がシート部に沿ってわずかに後傾状態となり、受け部の後側部分と背もたれ部とが同一平面上に位置する状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭63-186605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、椅子に座って対面で会話する際に、椅子の背もたれ部にもたれて会話していると、相手に対して非礼となる場合がある。この場合では、椅子に浅く座ることで、椅子の背もたれ部にもたれずに会話をする必要がある。体幹が強くしっかりしている人は、背もたれ部にもたれずに椅子に座っていても疲れない。しかし、一般に、高齢者や、腹筋、
背筋の弱い人、胃腸が弱い人など(以下、高齢者などという)は、椅子の背もたれ部にもたれずに座っていると疲れる場合がある。
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の椅子が作業位置にあるとき、着座者がシート部に浅く座ると、受け部の前側部分で仙骨を含む骨盤後面を支えることができず、高齢者などは、疲れて長時間座っていることができない。
【0009】
そこで、この発明の課題は、背もたれ部にもたれていない状態でも疲れにくい椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、この発明は、以下の構成1~3を備えるものである。
[構成1]
脚部と、
脚部に支えられる座面部と、
座面部の後端部側の上方に設けられる背もたれ部とを備える椅子において、
座面部を上下方向に貫通する状態で、前記座面部に対してその後端部から前後方向に移動可能に設けられるスライド体と、
前記スライド体に取り付けられ、前記座面部上に位置する受け部と、を有し、
前記受け部が前記座面部に座る着座者の骨盤後面を受ける支持面部を有しており、
前記スライド体が前方に移動し、かつ、前記受け部の支持面部が前記背もたれ部の前面よりも前側に位置する前進状態で前記スライド体が保持されるロック部材を有することを特徴とする椅子。
【0011】
この構成では、ロック部材によりスライド体が前記前進状態で保持されると、スライド体の受け部の支持面部が背もたれ部の前面よりも前側に位置する。このため、着座者は、背もたれ部にもたれていない状態で、受け部の支持面部で骨盤後面を受けることができる。ここで、骨盤後面とは仙骨を含む骨盤の後面を意味する。
【0012】
[構成2]
前記座面部の下部の後側に回転可能に取り付けられる軸体と、
前記軸体に対して前方に突出する状態に固定され、前記軸体を回転中心として上下方向に揺動する揺動体と、
前記スライド体と前記揺動体との間に架け渡される柔軟性を有する引張部材と、
前記引張部材に対して下方から当てられ、前記引張部材を前記揺動体へ向かって下方に案内するガイド体と、
前記軸体に対して前方に突出する状態で固定され、前記軸体を回転中心として上下方向に揺動する操作レバーとを備え、
前記スライド体が後方へ付勢されており、前記スライド体が前記前進状態にあるとき、前記ロック部材が前記操作レバーの上下方向の揺動を規制していることを特徴とする構成1に記載の椅子。
【0013】
この構成では、操作レバーを下方に揺動させることで軸体が回転して、揺動体が下方に揺動する。揺動体が下方に揺動すると、引張部材が下方に引っ張られるとともに、ガイド体により案内されている引張部材がスライド体を前方へ引っ張り、スライド体が前進する。スライド体が前記前進状態にあるときに、操作レバーがロック部材により上下方向の揺動を規制される。
【0014】
[構成3]
前記操作レバーが前記座面部よりも左右方向一方の外側に位置し、
前記ロック部材が前記座面部の左右方向一方の縁部に固定され、
前記ロック部材が前後方向に開口し、かつ上下方向に延びる環状部材であり、前記ロック部材の内周部に前記操作レバーが挿通されており、
前記ロック部材の上部は、その内部で前記操作レバーを上下方向に移動可能であり、
前記ロック部材の下部は、その内部の左右方向一方側で前記操作レバーを上下方向に移動可能であり、
前記ロック部材の下部の内周部の左右方向他方端に、上下方向に間隔をおいて複数の係止突起が設けられ、それぞれの前記係止突起に前記操作レバーを係止可能となっている構成2に記載された椅子。
【0015】
この構成によると、ロック部材の下部の内周部に設けられた複数の係止突起のうち、1つの係止突起に操作レバーを係止することで、操作レバーの上下方向の揺動位置を段階的に調節することができる。また、操作レバーの上下方向の揺動位置に応じて、スライド体の座面部に対する前後方向の位置を段階的に調整することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、座面部に対してスライド体を前記前進状態とし、ロック部材でその前進状態に保持することができるため、着座者は、背もたれ部にもたれることなく、受け部の支持面部で着座者の骨盤後面を支えて、脊椎を正常に近い状態に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明の実施形態に係る椅子を示す斜視図
図2】同実施形態でのスライド体が後方へ移動した状態を示す側面図
図3】同実施形態でのスライド体の前進状態を示す側面図
図4】同実施形態のスライド体を示す斜視図
図5】同実施形態でのスライド体が後方へ移動した状態を示す底面図
図6】同実施形態でのスライド体の前進状態を示す底面図
図7図5中のA-A線における断面図
図8】同実施形態のスライドレールの取り付け状態を示す要部拡大断面図
図9】(a)同実施形態のスライド体が後方へ移動した状態を示す縦断面図、(b)同実施形態でのスライド体の前進状態を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施形態に係る椅子を図面の図1図9に基づいて説明する。図1図3に示すように椅子1は、脚部2と、脚部2に支持される座面部3と、座面部3の後端部の上方に設けられる背もたれ部4と、座面部3に対してその後端部から前後方向に移動可能に設けられるスライド体5と、スライド体5に取り付けられ、座面部3上に位置する受け部6とを備えている。以下において、前後、左右の向きは、背もたれ部4に背中を向けて座面部3に正視状態で着座した着座者を中心とした向きと合致する向きを意味するものとする。
【0019】
脚部2は、放射状に広がる多岐脚2aと、多岐脚2aの中央部分から上方に起立する脚柱2bとを有する。多岐脚2aの先端にはキャスタ2cが取り付けられている。
【0020】
座面部3は、基板部3aと、基板部3a上に固定され、外面を張地で被覆している合成樹脂製のクッション部3bとを有し、平面視において略長方形をなしている。座面部3は、基板部3aの中央で脚部2の脚柱2bに対して回転可能に支持されている。クッション部3bの左右方向両側部分は、前後方向の中央付近から後方に向かうに従って上方に盛り上がっている。座面部3の後端部分は、座面部3の左右方向両側部分の後端部分と連続するように、上方に盛り上がる状態となっている。座面部3は、後端部分から前方へ延びる一対のスリット3cが形成される。クッション部3bの後端部分において、一対のスリット3cよりも左右方向内側部分は、上方に盛り上がっておらず、クッション部3bの中央部分と同じ上下方向の厚さに形成されている(図7参照)。また、基板部3aの後端部には下方に突き出す突出板部3dが固定される。
【0021】
背もたれ部4は、脚部2の脚柱2bの上部から、座面部3の後方へ延び出し、さらに上方に延び出す一対の支柱4aを介して、座面部3の後端部分の上方に設けられている。背もたれ部4は合成樹脂製のクッションの外面を張地で被覆しているものである。
【0022】
図3図4に示すように、スライド体5は、座面部3を上下方向に貫通する一対の側板部5aと、一対の側板部5aを下端かつ前端で連結する前板部5bと、一対の側板部5aのそれぞれに対して下端かつ後端に固定される緩衝板部5cとを有する。一対の側板部5aは相互に左右方向に対向している。一対の側板部5aは座面部3の一対のスリット3c内にそれぞれ挿通されている。一対の側板部5aの上部の間には、受け部6が設けられている。
【0023】
図1に示すように、受け部6は、座面部3のクッション部3bの後端部分と同じ高さを有する。また、受け部6は、クッション部3bの後端部分において、スリット3c寄りの位置での上下方向の断面形状と同じ断面形状をなしている。受け部6の前面を形成する支持面部6aは、着座者の骨盤後面を支持可能となるように、上部から下部に向かって後方へ凹む湾曲面となっている。
【0024】
前板部5bと突出板部3dとの間には、自然状態から伸長した状態のコイルばね7が取り付けられている。コイルばね7の弾性復元力により、スライド体5が後方へ付勢される。前板部5bの前面には、後述する引張部材15の後端部が取り付けられている。緩衝板部5cの後面(後方を向く面)に弾性体5dが固定されている。図5に示すように、スライド体5が後方へスライドしたとき、緩衝板部5cの弾性体5dが脚部2の突出板部3dに当たりスライド体5の後方への移動を規制する。緩衝板部5cの弾性体5dは、突出板部3dに当たった際の衝撃を吸収する。
【0025】
図7図8に示すように、一対の側板部5aと座面部3の基板部3aとの間にスライドレール8が取り付けられている。スライドレール8は、座面部3の一対のスリット3cに沿って前後方向にそれぞれ配置されている。スライドレール8は、ガイドレール9と、ガイドレール9内を長さ方向に沿って移動するスライダ10と、ガイドレール9とスライダ10との間に介在する転動体としてのボール11とを備えている。
【0026】
ガイドレール9は帯状部材の両縁部にフランジ部9aを有するものである。ガイドレール9の帯状部材が座面部3の基板部3aに対して固定片8aを介して固定されている。スライダ10は、帯状部材の両縁部にフランジ部10aを有するものである。スライダ10の帯状部材が側板部5aの下端の左右方向外側に固定されている。ガイドレール9のフランジ部9aとスライダ10のフランジ部10aが上下方向に対向しており、これらのフランジ部9a、10aの間にリテーナ11aに保持されたボール11が転動可能に配列されている。なお、このスライドレール8は市販のスライドレールを用いることができる。
【0027】
図6に示すように、スライダ10をガイドレール9内でそのガイドレール9の長さ方向(前後方向)に移動させることにより、スライド体5が座面部3のスリット3cに沿って、座面部3に対して前後方向に移動させることができる。
【0028】
座面部3の基板部3aの後側部に左右方向に沿って軸体12が回転可能に支持されている。軸体12は、金属棒から形成されている。基板部3aに固定されて下方に延び出す左右一対の軸受ユニット12aによって、軸体12がその軸心を中心に回転可能に支持されている。図5に示すように、軸体12には金属棒からなる揺動体13と操作レバー14とが固定されている。揺動体13は、軸体12から前方へ向かって延びる一対の支持軸部13aと、一対の支持軸部13aの前端の間に架け渡す状態に一体に形成される前側軸部13bとを有する。前側軸部13bは左右方向に沿って配置され、脚部2の脚柱2bよりも前方に位置する。一対の支持軸部13aは、スライド体5が座面部3の後端部に位置している状態で水平状態となっている。揺動体13は、軸体12の回転とともに上下方向に揺動する。
【0029】
操作レバー14は、軸体12の左右方向の一方の端部(図5では右側の端部)から、前方へ向かって延び出している。操作レバー14は、スライド体5が座面部3の後端部に位置している状態で、前方に向かうに従って上方に延び出している。操作レバー14の前端部は、座面部3の前端部に位置している。このような位置関係とすることで、操作レバー14の上下方向の揺動と、揺動体13の上下方向の揺動が、軸体12を介して同じ上下方向の揺動となる状態に同期する。
【0030】
図5に示すように、スライド体5の前板部5bと揺動体13の前側軸部13bとの間には可撓性を有する引張部材15が複数(例えば、図5中では二つ)架け渡されている。この実施形態においては、引張部材15としては、手で容易に撓ませることが可能な可撓性を有する金属線材を使用することができる。なお、引張部材15としては、可撓性を有するものであれば、その材質として合成樹脂素材、天然素材やこれらを混合したもの、形状としては線状のみならず紐状あるいは帯状などを採用することができる。
【0031】
図2に示すように、座面部3の基板部3aには、引張部材15に対して下方から当てられるガイド体16が固定されている。ガイド体16としては、滑車やローラ等の軸体(図示省略)により回転可能に保持されたものが用いられる。ガイド体16は、揺動体13の前側軸部13bに対して上方に位置している。このような位置にあるガイド体16により、引張部材15が揺動体13の前側軸部13bに向かって下向きに案内される。
【0032】
座面部3の基板部3aの左右方向の一方の縁部(例えば、図1中では、右側端部)には、ロック部材17が固定されている。ロック部材17は、座面部3に対して前端部寄りに配置されている。図7に示すように、ロック部材17は、前後方向に開口する環状部材であり、その内部に操作レバー14が貫通している。ロック部材17の内周部は、上下方向に延びる長孔状に形成されており、上部が下部に対して、その開口幅が狭く形成されている。
【0033】
ロック部材17の内周部の上部では、操作レバー14の太さ(金属棒の直径)よりもわずかに大きく形成され、操作レバー14を上下方向に移動可能となっている。ロック部材17の下部は、ロック部材17の上部に対して右側(左右方向の座面部3から離れている側)が左右方向外向きに広がって形成されたものである。また、ロック部材17の下部の内周部の左側(左右方向の座面部3側)に、上下方向に間隔おいて係止突起17aが左右方向外向きに複数設けられている。
【0034】
この発明に係る実施形態の椅子1は以上のように構成される。次に、この椅子1の使用方法を図面に基づいて説明する。
まず、コイルばね7の弾性復元力により、スライド体5は後方へ移動している。このとき、図5図9(a)に示すように、スライド体5の緩衝板部5cの弾性体5dが座面部3の突出板部3dに突き当たる状態となっている。また、操作レバー14がロック部材17の内周部の上端部に係止している。ここで、この状態の椅子1に着座者が背もたれ部4にもたれた場合、着座者の骨盤後面が受け部6から前方に離れた状態となる。
【0035】
続いて、図3に示すように、操作レバー14を水平状態に近づくまで下方に揺動させ、ロック部材17の上部から下部に移動させる。つづいて、操作レバー14をロック部材17の内周部の右側(左右方向の座面部3と反対側)に沿わせつつ、さらに、操作レバー14を下げる。操作レバー14をロック部材17の内周部の下端部に移動させた後、操作レバー14をロック部材17内で左側(左右方向の座面部3側)へ移動させ、操作レバー14をロック部材17の最も下位にある係止突起17aの下部に係止する。
【0036】
操作レバー14を下方へ揺動させると、操作レバー14を左右方向一方の端部に設けた軸体12が正方向に回転する。軸体12の回転に伴い揺動体13が下方に揺動し、揺動体13に固定された引張部材15が下方に引っ張られる。引張部材15は、ガイド体16によりその向きを変更しているので、引張部材15が引っ張られることにより、スライド体5が引っ張られて前方に移動する。ここで、図8に示すように、スライド体5には、スライドレール8のスライダ10が固定されている。また、座面部3の基板部3aには、スライドレール8のガイドレール9が固定片8aを介して固定されている。
【0037】
このため、図6図9(b)に示すように、スライド体5とともにスライダ10がガイドレール9に沿ってリテーナ11aに保持された複数の転動体11を介して前方へ移動する。このように、スライド体5はスライドレール8を用いるため、円滑に前後方向に移動させることができる。
【0038】
スライド体5を前方に移動させ、操作レバー14をロック部材17の最も下位にある係止突起17aの下部に係止すると、図3に示すように、スライド体5の受け部6の支持面部6aが背もたれ部4の前面よりも前側に位置する前進状態となる。
【0039】
この前進状態となっている椅子1に着座すると、着座者は背もたれ部4にもたれていない状態で、受け部6の支持面部6aで骨盤後面を支持することができる。このため、高齢者などは、椅子1の背もたれ部4にもたれずに浅く座っても、骨盤後面が受け部6の支持面部6aで支持されて、脊椎を正常に近い状態に保つことができるので、疲れにくい。
【0040】
次に、受け部6を前進位置から後退させるには、操作レバー14を右側(左右方向の座面部3と反対側)に移動させて、ロック部材17の係止突起17aとの係止状態と解除する。そして、操作レバー14を手で持ちながら、ロック部材17の内周部の右側(左右方向の座面部3と反対側)に沿う状態とする。この状態において、スライド体5はコイルばね7の弾性復元力により後方に移動する。後方に移動するスライド体5により引張部材15が後方に引っ張られる。引張部材15がガイド体16により方向を変えられているので、引張部材15が固定されている揺動体13が上方に移動させられ、軸体12が逆方向に回転する。逆方向に回転する軸体12と一体に操作レバー14が上方に動揺する。操作レバー14がロック部材17の内周部の上端にまで達した状態とし、操作レバー14から手を離す。そして、スライド体5が後退し、その緩衝板部5cの弾性体5dが座面部3の突出板部3dに突き当たる状態に戻る。
【0041】
また、ロック部材17は、その下部の内周部の左側(左右方向の座面部3側)に、上下方向に間隔おいて係止突起17aが左右方向外向きに複数設けられている。必要に応じて、複数の係止突起17aのうち、1つの係止突起17aに操作レバー14を係止させることにより、操作レバー14の上下方向の揺動位置を段階的に調節することができる。そして、操作レバー14の上下方向の揺動位置に応じて、スライド体5の座面部3に対する前後方向の位置を段階的に調整することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 椅子
2 脚部
3 座面部
3a 基板部
3b クッション部
3c スリット
3d 突出板部
4 背もたれ部
5 スライド体
5a 側板部
5b 前板部
5c 緩衝板部
5d 弾性体
6 受け部
6a 支持面部
7 コイルばね
8 スライドレール
8a 固定片
9 ガイドレール
10 スライダ
11 ボール(転動体)
12 軸体
12a 軸受ユニット
13 揺動体
14 操作レバー
15 引張部材
16 ガイド体
17 ロック部材
17a 係止突起
【要約】
【課題】背もたれ部にもたれていない状態でも疲れにくい椅子を提供する。
【解決手段】座面部3を上下方向に貫通し、前後方向に移動するスライド体5に着座者の仙骨を含む骨盤後面を受ける受け部6が取り付けられる。座面部3の下部に回転可能に取り付けられる軸体12は、中央に固定される揺動体13と、右端に固定される操作レバー14とを有する。スライド体5と揺動体13との間に引張部材15が架け渡され、座面部3の右端にロック部材17が固定される。操作レバー14を下方に揺動させると、軸体12を介して揺動体13が下方に揺動し、ガイド体16により案内される引張部材15によりスライド体5が前方へ引っ張られて、スライド体5が前進する。スライド体5が前進状態にあるときに、操作レバー14がロック部材17により上下方向の揺動を規制され、着座者は、背もたれ部4にもたれていない状態で、受け部6で仙骨を含む骨盤後面を受けることができる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9