(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】手術支援装置
(51)【国際特許分類】
A61B 34/37 20160101AFI20231212BHJP
【FI】
A61B34/37
(21)【出願番号】P 2023521120
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2021048580
(87)【国際公開番号】W WO2023127026
(87)【国際公開日】2023-07-06
【審査請求日】2023-04-05
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515075692
【氏名又は名称】リバーフィールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金澤 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】只野 耕太郎
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-194163(JP,A)
【文献】国際公開第2019/155383(WO,A1)
【文献】特開2021-000247(JP,A)
【文献】特許第4916011(JP,B2)
【文献】特開2012-055996(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0270867(US,A1)
【文献】特開2020-163522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スレイブ側装置を遠隔操作するためのマスタ側装置であって、
所定の可動域を有し前記スレイブ側装置の可動部の操作に用いられる第1操作子と、
前記第1操作子に対する特定操作に応じて前記可動部をロール方向に回動させる制御を行う制御部と、
前記マスタ側装置と前記スレイブ側装置の連携を解除する連携解除操作子と、を備え、
前記制御部は、
前記連携解除操作子に対する操作の有無に応じて、前記特定操作に基づく前記可動部のロール方向の回動の実施可否を決定する処理を行い、
前記連携解除操作子
の操作中においては前記特定操作に基づく前記可動部のロール方向とパン方向とピッチ方向の回動を規制し且つ前記第1操作子のロール方向の回動の規制を解除し前記第1操作子のパン方向とピッチ方向の回動を規制した第1状態と、前記連携解除操作子の操作中においては前記特定操作に基づく前記可動部のロール方向とパン方向とピッチ方向の回動を規制し且つ前記第1操作子のロール方向とパン方向とピッチ方向の回動を規制した第2状態と、を切り替え可能とされた
手術支援装置。
【請求項2】
前記制御部による表示処理によって画像が表示される表示部を備え、
前記制御部は、
所定の選択肢を選択するための選択操作子を設けた画面を前記表示部に表示し、
前記所定の選択肢が選択された場合に、
前記第1状態へと切り替える
請求項1に記載の手術支援装置。
【請求項3】
前記所定の選択肢として、
前記第1状態への切り替えを選択する第1選択肢と、
前記第2状態への切り替えを選択する第2選択肢のみが設けられ、
前記選択操作子は、操作されるごとに前記第1選択肢が選択された状態と前記第2選択肢が選択された状態とを切り換えるボタン操作子とされた
請求項2に記載の手術支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術支援装置についての技術に関し、特に、マスタ側の装置とスレイブ側の装置が連携されて患者の手術が行われる手術支援装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
術者が患者を手術するために用いられる装置として、スレイブ側の装置と連携するマスタ側の装置が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような装置では、術者の手の動きと患者側に配置された鉗子等の手術具の動きを連動させることにより、術者の意図した動きを手術具にさせることにより手術を進めていくものである。
ところで、術者の手の可動範囲には限りがあり、場合によっては手術具を意図した通りに動かせない虞がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、手術を適切に行うことが可能な手術支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る手術支援装置は、スレイブ側装置を遠隔操作するためのマスタ側装置であって、所定の可動域を有し前記スレイブ側装置の可動部の操作に用いられる第1操作子と、前記第1操作子に対する特定操作に応じて前記可動部をロール方向に回動させる制御を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記特定操作に応じて前記可動部のロール方向の回動の実施可否を決定する処理を行うものである。
これにより、マスタ側装置1とスレイブ側装置2の連携を解除することが可能となる。特に、所定の方向の並進動作或いは所定の軸の軸周り方向の回動動作のみを対象として連携を解除することが可能に構成されることにより、術者の多様な要望に合致する操作態様を提供することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、手術を適切に行うことが可能な手術支援装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施の形態におけるマスタ側装置の斜視図である。
【
図5】デルタ機構の各可動部の各可動範囲における略中央に位置した状態(基準位置)を示す斜視図である。
【
図6】デルタ機構の支持部が基準位置よりも前方(術者側)に位置した状態を示す斜視図である。
【
図7】デルタ機構の支持部が基準位置よりも上方に位置した状態を示す斜視図である。
【
図9】パン方向の回動操作における姿勢変更機構の動きを概略的に示す斜視図である。
【
図10】ピッチ方向の回動操作における姿勢変更機構の動きを概略的に示す斜視図である。
【
図11】ロール方向の回動操作における姿勢変更機構の動きを概略的に示す斜視図である。
【
図12】姿勢変更機構の把持機構を主に示す側面図である。
【
図13】患者の腹壁に設置されたトロッカーと該トロッカーに挿入された状態の手術具を示す断面図である。
【
図14】手術支援システムの機能ブロック図である。
【
図15】第2モニタに表示される設定画面において第1設定タブが選択された状態を示す図である。
【
図16】第2モニタに表示される設定画面において第2設定タブが選択された状態を示す図である。
【
図17】ニュートラルアシスト機能を実現するためのフローチャートの一例である。
【
図18】リストアングルスケーリング機能を実現するためのフローチャートの一例である。
【
図19】ロールクラッチ機能を実現するためのフローチャートの一例である。
【
図20】第2モニタに表示される設定画面において第2設定タブが選択された状態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<1.手術支援システムの構成>
以下、実施の形態の手術支援システムSについて添付図を参照して説明する。
なお、参照する図面に記載された各構成は、本発明を実現するための一例を示したものにすぎない。従って、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて様々な変更が可能である。また一度説明した構成については重複を避けるため、以降、同一符号を付して再度の説明を省略することがある。
【0009】
手術支援システムSは、マスタ側装置1とスレイブ側装置2とを備えている。
【0010】
マスタ側装置1は、手術を行う術者(医者)によって使用される装置とされる。また、スレイブ側装置2は、手術対象の患者が寝かされた手術室に設置され患者に対して実際に手術を行う装置である。
【0011】
マスタ側装置1とスレイブ側装置2は離隔して設置されている。マスタ側装置1とスレイブ側装置2は別々の部屋に設置されていてもよいし、同じ部屋に設置されていてもよい。
【0012】
マスタ側装置1とスレイブ側装置2は、有線または無線によるデータ通信が可能に接続されており、マスタ側装置1に対する術者の操作に応じて遠隔に位置されたスレイブ側装置2が備える各部が駆動されて患者に手術が行われる。
【0013】
以下に示す実施の形態においては、マスタ側装置1及びスレイブ側装置2が手術室の床等に設置されて使用されるタイプに適用した例を示す。但し、本発明の適用範囲は手術室の床等に設置されて使用されるタイプに限られることはなく、本発明は手術室の天井や壁面に取り付けられて使用されるタイプに適用することもできる。
【0014】
尚、以下に示す前後上下左右の方向は説明の便宜上のものであり、本発明の実施に関しては、これらの方向に限定されることはない。
【0015】
また、以下に示す手術支援システムSは可動体が回動される構成を有しているが、この「回動」は任意の一点を含む基準軸(中心軸)の軸回り方向への動作を意味し、「回転」をも含む動作を言う。尚、以下には、可動体が回動動作される例を示すが、可動体は回動動作に限られず、直進動作が行われてもよく、「動作」は回動動作と直進動作の双方を含む意味である。
【0016】
マスタ側装置1の具体的な構成について
図1に示す。
なお、マスタ側装置1の説明においては、マスタ側装置1から見た術者の方向を前方として前後左右を示す。即ち、術者はマスタ側装置1の前方に位置する。
【0017】
マスタ側装置1は、床面に設置される土台部3と、土台部3の前面部3aの上方において左右に離隔して取り付けられる二つの操作ユニット4と、前面部3aの下方中央に取り付けられる第1フットボタン5と、土台部3と有線で接続され床面に配置可能な第2フットボタン6と、土台部3の上面部3bに取り付けられる第1モニタ7と、上面部3bに取り付けられ第1モニタ7よりも小型とされた第2モニタ8とを備えている。
【0018】
二つの操作ユニット4のうちの一つは、術者が右手で扱う右用操作ユニット4Rとされ、もう一つは左手で扱う左用操作ユニット4Lとされている。
【0019】
術者は、土台部3の前方(前面部3a側)に設置された図示しない椅子に座った状態で、右手で右用操作ユニット4Rを操作し、左手で左用操作ユニット4Lを操作する。
【0020】
右用操作ユニット4R及び左用操作ユニット4Lを用いた操作に応じて、
図2に示すスレイブ側装置2の各部が駆動することにより患者に対する手術が行われる。右用操作ユニット4Rと左用操作ユニット4Lに対する具体的な構造とそれに対する操作、そして該操作に対するスレイブ側装置2の動作については後述する。
【0021】
第1フットボタン5は、マスタ側装置1に対する操作とスレイブ側装置2の動作を連携させるか否かを切り換えるための操作子である。術者は両手を使って操作ユニット4を操作しているため、第1フットボタン5は術者が足で操作可能な位置に設置されるのが望ましい。
【0022】
第1フットボタン5に対する操作を行うたびに、マスタ側装置1とスレイブ側装置2の連携がされている状態とされていない状態が切り換わる。
なお、両装置が連携されている状態とは、マスタ側装置1の操作ユニット4に対する操作に応じてスレイブ側装置2が備える鉗子などの各部が駆動される状態とされる。また、両装置が連携されていない状態とは、マスタ側装置1の操作ユニット4に対する操作を行ったとしても、スレイブ側装置2が備える鉗子などの各部が駆動されることはなく各部の位置や姿勢等が維持される状態とされる。
【0023】
第2フットボタン6は、患者の体腔内などの術野を撮影するための撮影ボタンとして機能する。例えば、スレイブ側装置2には、右用操作ユニットRによって操作される鉗子と左用操作ユニット4Lによって操作される鉗子の他に、内視鏡を有して構成されている。第2フットボタン6は、内視鏡の画角に基づく画像を撮像して保存するための撮影ボタンである。
【0024】
第1モニタ7は、スレイブ側装置2が備える内視鏡についてのスルー画を表示するためのモニタ装置である。
【0025】
第2モニタ8は、各種の情報が表示されるモニタ装置であり、例えば、内視鏡の姿勢情報を表示することや、各種の設定画面を表示することが可能とされている。第2モニタ8に表示される画面については改めて後述する。
【0026】
第1モニタ7や第2モニタ8は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイデバイスとされている。
【0027】
続いて、スレイブ側装置2の大まかな構成について
図2を参照して説明する。手術室には手術台200が設置され、手術台200には患者300が、例えば、仰向けの状態で横たえられている。患者300の体腔301を形成する部分、例えば腹壁301aには1または複数のポート302が形成される。ポート302には外科手術が行われるときに後述する手術具の一部(先端部)が挿入される。ポート302は軸状の手術具が挿入される小孔である。
【0028】
スレイブ側装置2は手術室の床等に載置されるベースユニット20と、ベースユニット20上に取り付けられるステージ21と、ステージ21に取り付けられた1本又は複数本のアーム22と、アーム22の先端に取り付けられた手術具保持装置23と、手術具保持装置23に交換可能に保持された手術具24を有する。
【0029】
ベースユニット20は、手術室の床等に載置される基台部25と、基台部25の上部に取り付けられる昇降機構26と、昇降機構26の上部に取り付けられるベースアームリア27と、ベースアームリア27に対して水平方向に延出可能に取り付けられるベースアームフロント28とを備えている。
【0030】
昇降機構26は、上下方向に伸縮することによりベースアームリア27が上下方向に昇降され、適切な高さ位置に調整可能とされる。
ベースアームフロント28はベースアームリア27に対して水平方向に延出可能とされることにより、ベースアームフロント28の先端に取り付けられているステージ21の位置を調整可能とされる。
【0031】
ステージ21はベースアームフロント28上に形成され、アーム22を軸支する。
【0032】
本実施の形態においては、アーム22として、三つのアーム22が取り付けられている。一つは、マスタ側装置1の右用操作ユニット4Rに対する操作に対応して駆動される手術具24Rを保持する右用アーム22Rとされ、もう一つは、マスタ側装置1の左用操作ユニット4Lに対する操作に対応して駆動される手術具24Lを保持する左用アーム22Lとされ、残りの一つは、手術具24としての内視鏡24Sを保持する内視鏡用アーム22Sとされている。なお、手術具24として内視鏡24Sを備える構成を例示しているが、手術具24の内の一つが内視鏡以外の撮像装置とされていてもよい。
【0033】
以降の説明においては、特に説明せずに手術具24と記載した場合には鉗子などの手術具24R、24Lだけでなく内視鏡24Sも含むものとする。
【0034】
それぞれのアーム22は、ステージ21上で上下に延びる軸の軸周り方向に回動可能とされている。
【0035】
各アーム22は、1又は複数の関節部や回動部を備え、その先端を任意の位置に移動させやすい機構を有している。
【0036】
アーム22の先端部にはジンバル機構等を介して手術具保持装置23が取り付けられている。
【0037】
内視鏡24Sは、例えば、内視鏡を有する内視鏡ユニットとして設けられ、前後に延びるシャフトとシャフトの先端部に結合されたカメラヘッドとシャフトの中間部に結合されたライトガイドなどを有している。
【0038】
手術具24は、シャフトの先端部が患者300に形成されたポート302から体腔301の内部に挿入される。
シャフトの先端部が体腔301の内部に挿入された状態において、内視鏡ユニットのシャフトの先端部から照明光が照射され、撮像素子によって体腔301の内部の状態が撮影される。該撮影に基づく画像の取得は、例えば、
図1に示す第2フットボタン6によって実行される。
【0039】
撮像素子によって撮影された体腔301の内部の状態は
図1に示す第1モニタ7に撮影画像信号として送出され、術者が遠隔から体腔301の内部の状態を観察することができる。
また術者は、右用操作ユニット4Rに対する操作を行うことにより右用アーム22Rに取り付けられた手術具24Rの位置及び姿勢を遠隔操作可能とされる。また、術者は、左用操作ユニット4Lに対する操作を行うことにより左用アーム22Lに取り付けられた手術具24Lの位置及び姿勢を遠隔操作可能とされる。
【0040】
各アーム22における関節部や回動部など可動する部分の全部又は一部は、マスタ側装置1による遠隔操作に応じて、内蔵するモータ等のアクチュエータによる駆動が行われる。
【0041】
尚、3本のアーム22により三つの手術具24を操作可能なスレイブ側装置2を例示しているが、マスタ側装置1による遠隔操作によってスレイブ側装置2を用いた手術を行うことを考えると、2本のアームにより内視鏡24Sと他の手術具24を扱うことができるものであればよい。
また、その場合には、内視鏡24S以外の手術具24が右用操作ユニット4Rによって遠隔操作されてもよいし、左用操作ユニット4Lによって遠隔操作されてもよいし、右用操作ユニット4R及び左用操作ユニット4Lの双方を用いて遠隔操作されてもよい。
【0042】
このような手術支援システムSを用いることにより、1又は複数の手術具を遠隔制御して外科手術を行うことが可能になり手術時間の短縮化を図ることが可能になる他に、異なる種類の複数の手術具を使用して高度な外科手術を行うことも可能になる。
【0043】
<2.操作ユニットと手術具の連携>
マスタ側装置1の操作ユニット4とスレイブ側装置2の手術具24の連携について添付図を参照して説明する。
先ず、マスタ側装置1の操作ユニット4の構成について説明する。
図3は右用操作ユニット4Rの斜視図であり、
図4は左用操作ユニット4Lの斜視図である。
【0044】
操作ユニット4は、手術具24の位置を移動させるためのデルタ機構50と、手術具24の姿勢を変更するための姿勢変更機構51とを備えている。
【0045】
右用操作ユニット4Rは、左用操作ユニット4Lの左右を反転した構造とされている。従って、以降の説明においては、主に左用操作ユニット4Lについて説明する。
【0046】
デルタ機構50は、一端が土台部3の前面部3aに取り付けられ、他端が姿勢変更機構51を支持する支持部とされている。
【0047】
デルタ機構50は、対応する手術具24の上下左右前後方向の位置決めを行うための機構とされている。
【0048】
なお、以下の説明において手術具24についての方向を説明する場合には、手術具24の長手方向(軸が延びる方向)で見たときの方向で説明する。即ち、手術具24についての前後方向とは手術具24の長手方向を指し、手術具24についての上下方向とは手術具24の基準姿勢における垂直方向を指し、手術具24についての左右方向とは手術具24の基準姿勢における前後方向及び垂直方向に直交する方向を指す。
従って、手術具24の姿勢が基準姿勢に対して長手方向に延びる軸の軸周り方向に180deg回転した姿勢とされている場合、即ち上下が逆さまの姿勢とされている場合には、手術具24の上下の方向が逆となる。
【0049】
術者はデルタ機構50の支持部に支持された姿勢変更機構51の所定部位を把持しながら姿勢変更機構51全体を上下左右前後に移動させるように操作を行うことにより、デルタ機構50の各部が回動動作されて、手術具24の位置決めを行うことができる。
【0050】
具体的に、デルタ機構50は
図3、
図4及び
図5等に示すように、土台部3の前面部3aに取り付けられる土台とされた取付土台部52と、取付土台部52における中央やや上方と中央やや右下と中央やや左下にそれぞれ一端が取り付けられる三つのジョイント部53と、ジョイント部53の多端に取り付けられるリンク機構54と、リンク機構54の他端に取り付けられることにより三つのリンク機構54によって支持された支持部55とを備えている(
図3及び
図4参照)。
ジョイント部53は、取付土台部52に取り付けられる端部が端部53aとされ、リンク機構54に取り付けられる端部が端部53bとされる。
【0051】
支持部55の空間上の位置は手術具24の位置に対応している。即ち、術者は、支持部55の位置を動かすことにより手術具24の位置を遠隔で動かすことができる。
【0052】
ジョイント部53は、例えば、端部53aがボールジョイント機構によって取付土台部52に取り付けられており、ジョイント部53の端部53aは回動軸Ax0の軸周り方向に回動可能とされている。三つのジョイント部53の端部53aのそれぞれの回動軸Ax0は、土台部3の前面部3aに並行且つそれぞれ120度ずつ異なる方向とされている。
【0053】
ジョイント部53の端部53aが回動軸Ax0の軸周り方向に回動することにより、支持部55の前後方向の大まかな位置が決定される(
図5及び
図6参照)。
【0054】
一端がジョイント部53の端部53bに接続されるリンク機構54は、2本の並行リンクを備えて構成され平行四辺形(長方形を含む)に変形可能にされている。
【0055】
リンク機構54の変形によって支持部55の上下及び左右方向の大まかな位置が決定される。例えば、
図5に示す状態から姿勢変更機構51全体を上方に移動させるように操作することで
図7に示すようにリンク機構54が略長方形から平行四辺形に変形する。
【0056】
なお、厳密には、支持部55の前後方向の位置を変更した場合には、それぞれのジョイント部53とリンク機構54の成す角度が変化すると共に、リンク機構54の変形がなされる。
また、支持部55を上下方向や左右方向に移動させた場合についても、リンク機構54の変形がなされると共に、それぞれのジョイント部53の端部53bが回動され、ジョイント部53とリンク機構54の成す角度が変化する。
【0057】
支持部55は、デルタ機構50の動きによって同じ姿勢(向き)を保ったまま空間を上下左右前後に並進移動が可能とされる。
【0058】
デルタ機構50の構成及び動作については公知の技術であるため、これ以上の詳述を省く。
【0059】
続いて、デルタ機構50の支持部55に取り付けられることによりデルタ機構50に支持される姿勢変更機構51の具体的な構成について説明する。なお、姿勢変更機構51の構成を模式化したものを
図8に示す。
【0060】
姿勢変更機構51は、第1部材56と、第1部材56に連結される第2部材57と第2部材57に連結される第3部材58と、第3部材58に連結される把持機構59とを備えている。
【0061】
第1部材56は、支持部55に支持され前後を向く板状に形成された被支持部60と、被支持部60の被支持部60の一端部から延びる第1接続部61と、第1接続部61の他端部に連続し上下を向く円盤状に形成された第1回動支持部62を有している。
【0062】
第2部材57は、第1回動支持部62の下面部に取り付けられる第1回動被支持部63と、第1回動被支持部63から左右方向の一方に延び略中央部から下方に延びるL字状に形成された第2接続部64と、第2接続部64に連続し左右を向く円盤状に形成された第2回動支持部65を有している。
【0063】
第2部材57の第1回動被支持部63は、第1部材56の第1回動支持部62に対して上下方向に延びる軸の軸周り方向に回動可能とされている(
図8及び
図9参照)。これにより、左用操作ユニット4Lに対応してスレイブ側装置2に設けられた手術具24Lの先端部における左右の首振り動作が可能となる。この操作を、パン方向回動操作Paと記載する。なお、ここでいう先端部の左右方向は、上述したように、手術具24Lが基準姿勢とされたときの左右方向であり、手術具24Lの姿勢によっては先端部の左右方向が垂直方向とされる場合斜めの方向とされる場合などもある。
【0064】
第3部材58は、第2回動支持部65の右側面部に取り付けられ左右を向く円盤状に形成された第2回動被支持部66と、第2回動被支持部66の一端から左右方向の一方に延びる第3接続部67と、第3接続部67の他端部に連続し前後方向を向く円盤状に形成され把持機構59が取り付けられる被取付端部68を有している。
【0065】
第3部材58の第2回動被支持部66は、第2部材57の第2回動支持部65に対して左右方向に延びる軸の軸周り方向に回動可能とされている(
図8及び
図10参照)。これにより、手術具24Lの先端部における上下の首振り動作が可能となる。この操作を、ピッチ方向回動操作Piと記載する。
【0066】
把持機構59は、被取付端部68に取り付けられ略円盤状に形成された取付端部69と、取付端部69の前面に一端部が連結された第1連結部70と、第1連結部70の他端部に取り付けられる把持部71と、把持部71から側方に延びる第2連結部72と、第2連結部72の把持部71とは反対側の端部に連結され前方に延び略L字状とされた開閉部73とを有している。
【0067】
把持機構59の取付端部69は、第3部材58の被取付端部68に対して前後方向に延びる軸の軸周り方向に回動可能とされている(
図8及び
図11参照)。これにより、手術具24Lの長手方向の軸の軸周り方向に手術具24Lを回動させることができる。この操作をロール方向回動操作Roと記載する。
【0068】
なお、パン方向回動操作Pa、ピッチ方向回動操作Pi及びロール方向回動操作Roの説明において示した姿勢変更機構51における各方向は、あくまで姿勢変更機構51が
図8に示す基準姿勢を採った場合についての方向である。従って、各部が回動されることにより姿勢変更機構51の姿勢が
図8に示す姿勢とは異なる姿勢となった場合にはこの限りではない。例えば、第2部材57の第1回動被支持部63が第1部材56の第1回動支持部62に対して上方から見て反時計回りに90deg回動された場合には、第3部材58の被取付端部68に対する把持機構59の取付端部69の回動軸は前後ではなく左右方向に延びる軸とされる。
【0069】
把持機構59は、第1連結部70の側面に取り付けられ術者の指が挿入される第1把持補助具74と、開閉部73の下面に取り付けられ術者の別の指が挿入される第2把持補助具75とを備えている。
【0070】
例えば、術者は、把持部71を左手の掌で把持した状態で、左手の親指を第1把持補助具74に挿入し、左手の人差し指を第2把持補助具75に挿入することにより、姿勢変更機構51の操作を好適に行うことができる。
また、左手の親指と人差し指の指先同士を近づけるように動かすことで取付端部69に対して開閉部73の先端部が近づくように操作される(閉操作Cl)。そして、左手の親指と人差し指の指先同士を遠ざけるように動かすことで取付端部69に対して開閉部73の先端部が遠ざかるように操作される(開操作Op)。
【0071】
この開操作Opと閉操作Clを行うことにより、スレイブ側装置2において対応して設けられた手術具24Lとしての鉗子の先端を閉じたり開いたりすることができる。
【0072】
このように、姿勢変更機構51は4自由度を有して構成されており、これにより、手術具24の先端部のパン方向に首振りさせるためのパン方向回動操作Paとピッチ方向に首振りさせるためのピッチ方向回動操作Piとロール方向に回動させるためのロール方向回動操作Roと鉗子等の先端部を開閉させるための開閉操作OCが可能とされている。
【0073】
把持機構59は上述した各部に加えてクラッチ操作子76を備えている。クラッチ操作子76は
図12に示すように、姿勢変更機構51の基準姿勢において把持機構59の第1連結部70の下面部に取り付けられ、例えば、トリガー形状に形成された操作子とされている。
【0074】
クラッチ操作子76は、マスタ側装置1の操作ユニット4とスレイブ側装置2のアーム22や手術具24の連動を解除するために設けられている。
具体的に、クラッチ操作子76が前方(取付端部69から離隔する方向、即ち、術者側)に引かれている状態においては、操作ユニット4に対する操作を行ってもスレイブ側装置2の各部が動作しないようにされる。
【0075】
クラッチ操作子76の具体的な操作目的としては、例えば、把持機構59の把持部71を把持した状態の術者の手の位置が体から離れてしまい操作がし難くなった場合に、術者はクラッチ操作子76を手前に引く操作を行うことでマスタ側装置1とスレイブ側装置2の連携を解除ことができる。そして、クラッチ操作子76を手前に引いたまま姿勢変更機構51の全体を動かすように把持部71を並進移動させた後、クラッチ操作子76に対する操作を解除する。これにより、マスタ側装置1とスレイブ側装置2の連携が再開され、術者は操作ユニット4の操作を行いやすい位置に手を移動させた状態で手術を再開させることができる。
【0076】
図12に示すように、術者は右手の掌で把持部71を把持し右手の親指を第1把持補助具74に挿入し人差し指を第2把持補助具75に挿入した状態で、中指等を用いてクラッチ操作子76を手前(術者側)に引くことが可能とされている。即ち、手術具24の先端部の並進移動や回動動作を行うことが可能な手のポジションを変更することなくクラッチ操作子76の操作が可能とされている。これにより、操作性の向上が図られている。
【0077】
なお、本実施の形態においては、クラッチ操作子76の操作中であってマスタ側装置1とスレイブ側装置2の連携を解除した状態でマスタ側装置1の把持機構59の位置を自由に変更することができるが、パン方向回動操作Paやピッチ方向回動操作Piやロール方向回動操作Roはできないように、即ち、第1部材56と第2部材57と第3部材58と把持機構59の位置関係が変化しないように、各部にブレーキが掛けられている。
【0078】
クラッチ操作子76の操作中にロール方向回動操作Roを実行するためには、後述するロールクラッチ機能を用いることで実現可能である。なお、パン方向回動操作Paやピッチ方向回動操作Piについてのクラッチ機能を手術支援システムSが備えていてもよい。
【0079】
姿勢変更機構51に応じて姿勢が変化する手術具24の具体的な機構を模式的に
図13に示す。
【0080】
図13においては、手術具24として、手術具24R、24L、内視鏡24Sとを示している。
【0081】
手術具24R、24Lは、例えば全体として軸状に形成され、手術具保持装置23に保持される第1シャフト部80と、一端部が第1シャフト部80の先端部に接続された第2シャフト部81と、第2シャフト部81の他端部に保持される回動連結部82と、回動連結部82に支持される二つの先端片83とを有して構成されている。
【0082】
第2シャフト部81は、第1シャフト部80に対して第2シャフト部81の軸周り方向に回動が可能とされており、把持機構59についてのロール方向回動操作Roに応じて回動される(回動動作Ro’)。
【0083】
回動連結部82は、第2シャフト部81に対して
図13に示す第1軸Ax1の軸周り方向に回動可能とされており、把持機構59についてのピッチ方向回動操作Piに応じて回動される(回動動作Pi’)。
【0084】
二つの先端片83のそれぞれは、回動連結部82に対して回動動作Ro’の回動軸と回動動作Pi’の回動軸のそれぞれに直交する軸の軸周り方向に回動可能とされている。
【0085】
把持機構59についてのパン方向回動操作Paに応じて、二つの先端片83が同方向に回動される(回動動作Pa’)。また、把持機構59についての開閉操作OCにおける開操作Opに応じて、二つの先端片83が互いに離隔する方向へ回動される(開動作Op’)。更に、把持機構59についての開閉操作OCにおける閉操作Clに応じて、二つの先端片83が互いに近づく方向へ回動される(閉動作Cl’)。
このようにして、先端片83の回動動作Pa’及び開閉動作OC’が実現される。
【0086】
次に内視鏡24Sの構成例について説明する。
内視鏡24Sは、例えば全体として軸状に形成され、手術具保持装置23に保持される第1シャフト部80と、一端部が第1シャフト部80の先端部に接続された第2シャフト部81と、第2シャフト部81の他端部に接続される第3シャフト部84と、第3シャフト部84に保持されるカメラヘッド85とを有して構成されている。
【0087】
上述した例では、右用操作ユニット4Rに対する操作に応じて手術具24Rの位置や姿勢が変化し、左用操作ユニット4Lに対する操作に応じて手術具24Lの位置や姿勢が変化する構成について説明した。
しかし手術中には、内視鏡24Sの画角の変更が必要となる場面も存在する。その場合には、右用操作ユニット4Rまたは左用操作ユニット4Lの何れかに対する操作に応じて内視鏡24Sの位置及び姿勢を変化させてもよい。例えば、右用操作ユニット4Rと手術具24Rの連携を解除した後に右用操作ユニット4Rと内視鏡24Sの連携を開始させてもよい。
これにより、内視鏡24Sから適切な画角に基づく画像を得ることができ、手術をやりやすくすることができる。
【0088】
具体的には、内視鏡24Sの第2シャフト部81は、第1シャフト部80に対して
図13に示す第2軸Ax2の軸周り方向に回動が可能とされており、把持機構59についてのピッチ方向回動操作Piに応じて回動される(回動動作Pi’)。
【0089】
内視鏡24Sの第3シャフト部84は、第2シャフト部81に対して第3シャフト部84の軸周り方向に回動可能とされており、把持機構59についてのロール方向回動操作Roに応じて回動される(回動動作Ro’)。
【0090】
カメラヘッド85は、第3シャフト部84に対して
図13に示す第3軸AX3の軸周り方向に回動可能とされており、把持機構59についてのパン方向回動操作Paに応じて回動される(回動動作Pa’)。
このようにして、内視鏡24Sの姿勢変更が実現される。
【0091】
なお、詳述は避けるが、手術具24の先端部を体腔301内に挿入する際には、腹壁301aに形成されたポート302に設置されるトロッカー303が使用される。そして、手術具24の位置や姿勢を変化させる際には、トロッカー303の内部、即ち、ポート302の中心付近にピボット点Pが設定される。
【0092】
手術具24の先端部が患者300の体腔301に挿入される状態において、手術具24の一部が常にピボット点Pを通るように位置が制御されることにより、手術具24の位置及び姿勢の変化前後において患者300の体表付近の組織に対する負荷の発生が防止されて安全性を確保することができる。
【0093】
<3.機能構成>
手術を円滑に行うために手術支援システムSが備える機能構成について説明する。
【0094】
<3-1.マスタ側装置の機能構成>
先ず、マスタ側装置1の機能構成について
図14を参照して説明する。本図は、手術支援システムSにおけるマスタ側装置1とスレイブ側装置2の機能ブロック図である。
【0095】
マスタ側装置1は、マスタ側駆動部90と、マスタ側センサ91と、操作部92と、マスタ側制御部93と、マスタ側通信部94と、表示部95とを備えている。
【0096】
マスタ側駆動部90は、操作ユニット4におけるデルタ機構50の各部や姿勢変更機構51の各部として設けられている。具体的には、
図5に示す回動軸Ax0の軸周り方向にジョイント部53の端部53aを回動させるアクチュエータや、リンク機構54と支持部55との相対的な回動状態を制御するためのアクチュエータ、或いは、
図8に示す第1部材56に対して第2部材57をパン方向回動操作Paの方向に回動させるアクチュエータなどがマスタ側駆動部90とされる。
【0097】
マスタ側駆動部90は、マスタ側制御部93から供給される制御信号に基づいて駆動されることにより、マスタ側装置1における各部の位置や姿勢を変更可能とされている。
【0098】
マスタ側センサ91は、各部の位置関係をセンシングするセンサとして設けられており、例えば、
図5に示す回動軸Ax0の軸周り方向におけるジョイント部53の端部53aの回動状態を表す回動角度や、
図8に示す第1部材56に対する第2部材57の回動状態を表す回動角度等を検出して検出信号を出力する。
【0099】
操作部92は、例えば、上述したクラッチ操作子76や第1フットボタン5や第2フットボタン6などが該当する。また、第1モニタ7や第2モニタ8などがタッチパネル機能を有している場合には、該タッチパネル部分も操作部92の一例である。なお、第2モニタ8などに表示されるメニュー画面等の操作を行うためのマウスなどが接続されている場合には、マウス等も操作部92とされる。
【0100】
他にも、マスタ側装置1が音声入力に対応している場合には、マスタ側装置1が備えるマイクロフォン等が操作部92とされていてもよい。
【0101】
表示部95は、上述した第1モニタ7や第2モニタ8などが該当する。
【0102】
マスタ側制御部93は、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等を備えて構成されており、CPUなどの演算処理装置がROMに記憶されたプログラムやRAMにロードされたプログラムを実行することにより、所定の機能を実現する。
【0103】
具体的に、マスタ側制御部93は、表示制御部FM1、マスタ側通信制御部FM2、マスタ側駆動制御部FM3、力覚提示処理部FM4、マスタ側位置検出部FM5、制御量変換部FM6、ニュートラルアシスト機能FM7、リストアングルスケーリング機能FM8、ロールクラッチ機能FM9を有している。
【0104】
表示制御部FM1は、第1モニタ7や第2モニタ8に対する表示制御を行う。本実施の形態において、表示制御部FM1は、第2モニタ8に対して各種の設定を行うための設定画面を表示させる。各設定画面には、ドロップダウンリストやボタン等が操作部92として適宜配置され、該操作部92に対する操作情報は、ニュートラルアシスト機能FM7やリストアングルスケーリング機能FM8やロールクラッチ機能FM9に通知される。
【0105】
また、表示制御部FM1は、スレイブ側装置2が備える手術具24としての内視鏡24Sで撮像した画像データをマスタ側通信部94を介して受け取り、第1モニタ7に出力する処理を行う。
【0106】
マスタ側通信制御部FM2は、マスタ側通信部94を用いてスレイブ側装置2と各種の情報の送受信を行うための処理を行う。
【0107】
マスタ側駆動制御部FM3は、マスタ側装置1の各部を制御するためにマスタ側駆動部90として設けられる各種のアクチュエータの制御を行う。
なお、マスタ側駆動制御部FM3は、マスタ側制御部93が備える各種機能を実現するために他の機能や部によって制御され得る。即ち、マスタ側駆動制御部FM3は、他の機能や部から出力されたコマンドに基づいてマスタ側駆動部90を制御するための処理を実行可能とされている。
【0108】
その一例として力覚提示制御がある。具体的に、力覚提示処理部FM4は、スレイブ側装置2が備える鉗子等の手術具24の動きに応じて、手術具24を自身の手で扱っているかのような力覚を術者に提示するための処理を行う。例えば、手術具24が障害物にぶつかった場合には、術者が入力した操作を打ち消す方向にマスタ側駆動部90を駆動させることにより、術者は手術具24を動かすために必要な力が普段よりも大きくなり、障害物にぶつかったことを知覚することができる。
このような制御を行うために、力覚提示処理部FM4は、マスタ側駆動制御部FM3に対する指示を行う。
【0109】
マスタ側制御部93は、マスタ側装置1に対する術者の操作に応じてスレイブ側装置2の各部を駆動させるための制御を行う。
具体的に、マスタ側位置検出部FM5は、マスタ側センサ91からの出力信号に基づいてマスタ側駆動部90の位置及び姿勢等を検出して制御量変換部FM6へ出力する。
【0110】
制御量変換部FM6は、マスタ側位置検出部FM5から入力されるマスタ側駆動部90の位置及び姿勢等からマスタ側駆動部90の変化量を算出する。制御量変換部FM6は、該変化量に基づいてスレイブ側装置2における各駆動部の制御量に変換する。なお、スレイブ側装置2が有する各手術具24は、患者300のポート302付近に設定されたピボット点Pを通るように位置及び姿勢の変更がなされる。制御量変換部FM6は、手術具24がピボット点Pを通過するように、マスタ側装置1における支持部55の並進移動をスレイブ側装置2の駆動部の回動動作や他の種類の動作に変換する処理を行う。
【0111】
制御量変換部FM6によってスレイブ側装置2の駆動部ごとに算出された制御量(駆動量)は、マスタ側通信制御部FM2の処理によってマスタ側通信部94からスレイブ側装置2に送信される。
【0112】
ニュートラルアシスト機能FM7、リストアングルスケーリング機能FM8、ロールクラッチ機能FM9は、手術を円滑に行うための補助機能とも言うべきものである。
【0113】
<3-1-1.ニュートラルアシスト機能>
ニュートラルアシスト機能FM7は、マスタ側装置1が備える操作ユニット4のデルタ機構50を適切な位置に誘導するための機能である。
【0114】
ニュートラルアシスト機能FM7は、例えば、左用操作ユニット4Lの姿勢変更機構51に設けられたクラッチ操作子76と、右用操作ユニット4Rの姿勢変更機構51に設けられたクラッチ操作子76を同時に操作(術者から見て手前に引く操作)することで発動する機能である。なお、当該操作方法はあくまで一例であり、音声による操作によって当該機能が実行されてもよいし、例えば、第1フットボタン5及び第2フットボタン6を同時押しする操作を行うことにより当該機能が実行されてもよい。更には、クラッチ操作子76等に対して所定の操作パターンを入力することにより当該機能が実行されてもよい。
【0115】
ニュートラルアシスト機能FM7は、スレイブ側装置2の各部を動かさずにマスタ側装置1のデルタ機構50のみ所定の位置に移動させる機能である。そのため、ニュートラルアシスト機能FM7を実行する際には、スレイブ側装置2との連携を解除(中断)させることが制御量変換部FM6に通知される。制御量変換部FM6ではこれに応じてマスタ側センサ91による検出結果がどのようなものであっても、スレイブ側装置2の駆動部の回動動作や他の種類の動作の動作量を「0」と算出する。
【0116】
ニュートラルアシスト機能FM7は、スレイブ側装置2との連携が終了された状態で、デルタ機構50を適切な位置に誘導するための処理を行う。
【0117】
なお、マスタ側装置1とスレイブ側装置2の連携の終了は、このようにソフトウェアのみを用いて行われてもよいが、ハードウェアの機構を用いて行われてもよい。
例えば、スレイブ側装置2の各可動部が、通電がきれた場合にブレーキがかかり位置及び姿勢が維持されるように構成された無励磁作動形ブレーキとしての電磁ブレーキ機構を備えていてもよい。この場合には、電磁ブレーキに対する通電を停止させることにより各可動部にブレーキが掛かり各可動部の位置及び姿勢が維持される。このように、制御量変換部FM6による動作量の算出に手を加えなくても実現可能である。
【0118】
マスタ側装置1のデルタ機構50は、上下方向、左右方向及び前後方向において所定の可動域を有しており、これにより、デルタ機構50に取り付けられた姿勢変更機構51の位置(或いは把持機構59の位置)が取り得る範囲は各方向において限りがある。
【0119】
例えば、術者が把持機構59の可動域の端付近で操作を行うと、デルタ機構50の可動域が限界に達してしまい意図した操作ができずに適切な処置を患者300に対して行うことができない虞がある。
【0120】
こうした事態に対処するためにニュートラルアシスト機能FM7によるデルタ機構50の誘導が行われる。
具体的には、ニュートラルアシスト機能FM7は、左右それぞれの把持機構59が各方向において可動域の略中央付近に位置するように、左右のデルタ機構50が備える各部を可動させる。
【0121】
これにより、術者が把持する把持機構59は、上下方向、左右方向及び前後方向の各方向において、何れの側にもある程度の可動域が残された状態で手術を再開することができるため、適切な処置を行うことが可能となる。
【0122】
ニュートラルアシスト機能FM7は、このために、マスタ側駆動制御部FM3に対する指示を行う。
【0123】
なお、把持機構59を所定の位置に誘導させるために、把持機構59を把持している術者のそれぞれの掌に対して動かすべき方向を伝えるための力覚提示を行ってもよい。
【0124】
ニュートラルアシスト機能FM7によって把持機構59が所定の位置に移動された後、マスタ側装置1とスレイブ側装置2の連携が再開可能となる。連携の再開は、自動的に行われてもよいし、手動操作を行うまでは再開しないように構成されていてもよい。
【0125】
なお、クラッチ操作子76は、術者側に引いた状態でマスタ側装置1とスレイブ側装置2の連携が終了し、術者側に引いた状態を解除するとマスタ側装置1とスレイブ側装置2の連携が再開されるものである。しかし、左右のクラッチ操作子76を同時に操作した場合においては、ニュートラルアシスト機能FM7による把持機構59の自動制御中に左右のクラッチ操作子76を手前に引いた状態を解除したとしても、該自動制御を終えるまではマスタ側装置1とスレイブ側装置2の連携を再開させない方が安全面において好適である。
【0126】
また、ニュートラルアシスト機能FM7による把持機構59の自動制御中に左右のクラッチ操作子76を手前に引いた状態を解除した場合に、ニュートラルアシスト機能FM7による自動制御を打ち切って即座にマスタ側装置1とスレイブ側装置2の連携を再開させてもよい。
【0127】
本実施の形態においては、ニュートラルアシスト機能FM7のON/OFFを切り換えることが可能とされている。該切り換えは、第2モニタ8に表示された設定画面に対する操作によって実現される。
【0128】
設定画面G1の一例について添付図を参照して説明する。
設定画面G1は二つのタブを備えた画面として構成されており、
図15は「Setting1」と表示された第1設定タブTab1が選択された状態を示している。この画面を設定画面G1aとする。
【0129】
設定画面G1aには、位置スケーリング選択欄Sel1と、ニュートラルアシストボタンBtn1と、左用力覚提示強度選択欄Sel2と、右用力覚提示強度選択欄Sel3と、キャンセルボタンBtnCと、実行ボタンBtnOKが配置されている。
【0130】
このうち、ニュートラルアシスト機能FM7のON/OFFを切り換えるための操作子はニュートラルアシストボタンBtn1である。
【0131】
ニュートラルアシストボタンBtn1上には、現在の状態が表示されており、ニュートラルアシストボタンBtn1を操作することでONとOFFが切り換わる。
【0132】
キャンセルボタンBtnCを操作すると、設定画面G1aで設定した設定を反映せずに設定画面G1を閉じることができる。
【0133】
また、実行ボタンBtnOKを操作すると、設定画面G1aで設定した設定を反映して設定画面G1を閉じることができる。
【0134】
<3-1-2.リストアングルスケーリング機能>
リストアングルスケーリング機能FM8は、パン方向回動操作Paに対する回動動作Pa’の回動量や、ピッチ方向回動操作Piに対する回動動作Pi’の回動量や、ロール方向回動操作Roに対する回動動作Ro’の回動量を変更するための機能である。
【0135】
人間の手首の可動量はおおよそ決まっており、例えば、緻密な操作をしながら手首を360deg回転させることは難しい。リストアングルスケーリング機能FM8はこのような問題を解決するための機能である。
【0136】
操作量と回動量の比率は、操作部92の操作によって実行可能である。リストアングルスケーリング機能FM8は、操作部92の操作に基づいて設定された該比率を制御量変換部FM6に通知する。制御量変換部FM6では、該通知に基づいて操作量から算出したスレイブ側装置2の各部の動作量に上述の比率を乗算することにより最終的な動作量を得る。
【0137】
操作量と回動量の比率を決定するための操作部92としては、ダイヤル式の摘みのような物理的なものであってもよいし、ソフトウェアによって実現される画面上の表示される操作子であってもよい。一例を
図16に示す。
【0138】
図16は、二つのタブを備えた設定画面G1において「Setting2」と表示された第2設定タブTab2が選択された状態を示している。この画面を設定画面G1bとする。
【0139】
設定画面G1bには、ロールクラッチボタンBtn2と、比率選択欄Sel4と、キャンセルボタンBtnCと、実行ボタンBtnOKが配置されている。
【0140】
このうち、リストアングルスケーリング機能FM8における操作量と回動量の比率を決定するための操作子は比率選択欄Sel4である。
【0141】
比率選択欄Sel4は、例えば、「1.0」、「1.5」、「2.0」の三つの選択肢から選択が可能とされている。例えば「2.0」を選択すると、マスタ側装置1においてパン方向回動操作Paを30degした場合に、スレイブ側装置2における手術具24の先端部が60deg回動した状態に制御される。
【0142】
なお、比率選択欄Sel4から選択可能な選択肢に1.0未満の数値が含まれていてもよい。これにより、緻密な作業を行う場合に好適である。
また、比率選択欄Sel4の代わりにスライダ操作子を設けることにより、比率を略無段階に変更可能とされていてもよい。
【0143】
キャンセルボタンBtnC及び実行ボタンBtnOKについての操作は設定画面G1bと同様のため説明を省略する。
【0144】
なお、マスタ側制御部93は、パン方向回動操作Paに対する回動動作Pa’の回動量を調整するためのスケーリング機能と、ピッチ方向回動操作Piに対する回動動作Pi’の回動量を調整するためのスケーリング機能と、ロール方向回動操作Roに対する回動動作Ro’の回動量を調整するためのスケーリング機能をそれぞれ有していてもよい。そして、それらの各スケーリング機能に対して異なる比率を設定可能とされていてもよい。
また、マスタ側制御部93が一部のスケーリング機能を備えていなくてもよい。
【0145】
<3-1-3.ロールクラッチ機能>
ロールクラッチ機能FM9は、ロール方向回動操作Roを行った際にスレイブ側装置2の手術具24の先端部の回動動作Ro’を行うか否かを決定する機能である。
【0146】
この機能は、人間の手首の可動域によって手術がし難くなってしまう問題を解決するための機能である。
【0147】
例えば、ロール方向回動操作Roとして180degの回動操作を行うと、具体的には下を向いた掌が上を向くように手首を回動させる操作を行うと、手術具24の先端部も180degの回動動作Ro’が行われる。この状態で同方向の回動動作Ro’を行いたい場合に、術者の手首の可動域のために難しい場合がある。その場合には、ロールクラッチ機能FM9によって、ロール方向回動操作Roを行っても手術具24の先端部の回動動作Ro’が行われない状態に変更する。
【0148】
そして、術者は掌が再度下を向くように手首を回動させた後、再びロールクラッチ機能FM9によってロール方向回動操作Roによって手術具24の先端部の回動動作Ro’が行われる状態に変更する。
【0149】
このようなことを繰り返すことで、同方向の回動動作Ro’をいくらでも行うことが可能となる。
【0150】
ロール方向回動操作Roと回動動作Ro’の連携のON/OFFを行うための操作部92としては、ボタンのような物理的な操作子であってもよいし、ソフトウェアによって実現される画面上の表示される操作子であってもよい。
【0151】
図16に示す例においては、設定画面G1bにおけるロールクラッチボタンBtn2がロールクラッチ機能FM9についての操作子である。
【0152】
ロールクラッチボタンBtn2上には、現在の状態が表示されており、ロールクラッチボタンBtn2を操作することでロール方向の操作と回動動作の連係のONとOFFを切り換えることができる。
【0153】
<3-2.スレイブ側装置の機能構成>
スレイブ側装置2は、スレイブ側駆動部100、スレイブ側センサ101、スレイブ側制御部102、スレイブ側通信部103とを備えている。
【0154】
スレイブ側駆動部100は、スレイブ側装置2が備えるアーム22の各部や手術具保持装置23の各部や手術具24の各部などにおける可動部として設けられている。
【0155】
スレイブ側駆動部100は、スレイブ側制御部102から供給される制御信号にもとづいて駆動されることにより、各種の並進動作や回動動作が実現され、手術具24の先端部の位置及び姿勢の変更が可能とされる。
【0156】
スレイブ側センサ101は、スレイブ側装置2の可動部についての位置関係をセンシングするセンサとして設けられており、例えば、
図13に示す第1シャフト部80に対する第2シャフト部31の回動位置や、回動連結部82に対する先端片83の回動位置等に応じた検出信号を出力する。
なお、内視鏡24Sが備えるイメージセンサ等もスレイブ側センサ101の一例である。
【0157】
スレイブ側制御部102は、CPUやROMやRAM等を備えて構成されており、CPUなどの演算処理装置がROMに記憶されたプログラムやRAMにロードされたプログラムを実行することにより、所定の機能を実現する。
【0158】
具体的に、スレイブ側制御部102は、スレイブ側通信制御部FS1とスレイブ側駆動制御部FS2とを有している。
【0159】
スレイブ側通信制御部FS1は、スレイブ側通信部103を用いてマスタ側装置1と各種の情報の送受信を行うための処理を行う。
【0160】
スレイブ側駆動制御部FS2は、スレイブ側装置2の各部として設けられている駆動部を制御するためにスレイブ側駆動部100として設けられる各種のアクチュエータの制御を行う。具体的には、スレイブ側駆動制御部FS2は、マスタ側制御部93の制御量変換部FM6によって算出された制御量(駆動量)に基づいてスレイブ側装置2の各アクチュエータに対して制御信号を出力する。
【0161】
<4.処理の流れ>
マスタ側装置1が備える上述した各種機能を実現するにあたってマスタ側制御部93としての演算処理部が実行する処理の流れの一例を示す。
【0162】
<4-1.ニュートラルアシスト機能に係る処理>
ニュートラルアシスト機能FM7に係る処理として、マスタ側制御部93は
図17に示す一連の処理を実行する。
【0163】
マスタ側制御部93はステップS101において、ニュートラルアシスト機能についての設定変更操作を検出したか否かを判定する。該設定変更操作は、例えば、設定画面G1aに配置されたニュートラルアシストボタンBtnを押下して現在の状態を変更した後に実行ボタンBtnOKを押下する操作である。
【0164】
設定変更操作を検出していないと判定した場合、マスタ側制御部93はステップS102からステップS104の各処理を実行せずにステップS105へと進む。
【0165】
一方、設定変更操作を検出したと判定した場合、マスタ側制御部93はステップS102において、二つのクラッチ操作子76を同時押しするような所定の操作入力に応じてニュートラルアシスト機能を発動させるか否かを示す設定がONであるかOFFであるかを判定する。
【0166】
ニュートラルアシスト機能がONである場合、マスタ側制御部93はステップS103において、該機能をOFFに設定する。
一方、ニュートラルアシスト機能がOFFである場合、マスタ側制御部93はステップS104において、該機能をONに設定する。
【0167】
ステップS103またはステップS104を実行した後、或いはステップS101において「No」判定を行った後、マスタ側制御部93はステップS105において、所定の操作入力、即ち、二つのクラッチ操作子76の同時操作入力を検出したか否かを判定する。
【0168】
該操作入力を検出していないと判定した場合、マスタ側制御部93はステップS109へと進む。
【0169】
一方、該操作入力を検出したと判定した場合、マスタ側制御部93はステップS106において、ニュートラルアシスト機能がONであるか否かを判定する。
【0170】
ニュートラルアシスト機能がONであると判定した場合、マスタ側制御部93は、ステップS107においてマスタ側装置1とスレイブ側装置2の連携を解除(中断)し、ステップS108においてニュートラルアシスト機能を実行する。
即ち、マスタ側制御部93は、左右それぞれの把持機構59が各方向において可動域の略中央付近に位置するように、左右のデルタ機構50が備える各部を可動させる。
なお、ニュートラルアシスト機能の実行においては、上述したように、力覚提示処理部FM4による力覚提示を利用して行ってもよい。
【0171】
一方、ニュートラルアシスト機能がOFFであると判定した場合、マスタ側制御部93はステップS101の処理へと戻る。
【0172】
ステップS108を実行した後、マスタ側制御部93はステップS109において、マスタ側装置1とスレイブ側装置2の連携を再開させる条件が成立したか否かを判定する。
【0173】
該連携を再開させる条件が成立したと判定した場合、マスタ側制御部93はステップS110において、マスタ側装置1とスレイブ側装置2の連携を再開させ、ステップS101の処理へと戻る。
一方、該連携を再開させる条件が成立していないと判定した場合、マスタ側装置1とスレイブ側装置2の連携が中断された状態でステップS101の処理へと戻る。
【0174】
手術支援システムSが起動中は
図17に示す一連の処理が所定時間ごとに繰り返し実行されることで、術者は任意のタイミングでニュートラルアシスト機能を発動させることができる。また、
図17に示す一連の処理は、例えば、手術支援システムSの電源が落とされる際に終了する。
【0175】
<4-2.リストアングルスケーリング機能に係る処理>
リストアングルスケーリング機能FM8に係る処理として、マスタ側制御部93は
図18に示す一連の処理を実行する。
【0176】
先ず、マスタ側制御部93はステップS201において、リストアングルスケーリング機能についての設定変更操作を検出したか否かを判定する。該設定変更操作は、例えば、設定画面G1bに配置された比率選択欄Sel4から現在と異なる比率を選択した後に実行ボタンBtnOKを押下する操作である。
【0177】
設定変更操作を検出していないと判定した場合、マスタ側制御部93は再度ステップS201の処理を実行する。
【0178】
一方、設定変更操作を検出したと判定した場合、マスタ側制御部93は、ステップS202において、選択された設定を取得し、ステップS203において選択された設定を適用する。選択された設定の適用とは、例えば、制御量変換部FM6に比率情報を通知することで行われる。制御量変換部FM6は、通知された比率情報に基づいてスレイブ側装置2における各可動部の動作量を得る。
【0179】
ステップS203の処理を終えた後、マスタ側制御部93はステップS201の処理へと戻る。
【0180】
手術支援システムSが起動中は
図18に示す一連の処理が所定時間ごとに繰り返し実行されることで、術者は任意のタイミングでリストアングルスケーリング機能に基づいて操作量と動作量の比率を変更することができる。また、
図18に示す一連の処理は、例えば、手術支援システムSの電源が落とされる際に終了する。
【0181】
<4-3.ロールクラッチ機能に係る処理>
ロールクラッチ機能FM9に係る処理として、マスタ側制御部93は
図19に示す一連の処理を実行する。
【0182】
先ず、マスタ側制御部93はステップS301において、ロールクラッチ機能の設定変更操作を検出したか否かを判定する。該設定変更操作は、例えば、設定画面G1bに配置されたロールクラッチボタンBtn2を押下して現在の状態を変更した後に実行ボタンBtnOKを押下する操作である。
【0183】
設定変更操作を検出していないと判定した場合、マスタ側制御部93はすステップS301の処理を再度実行する。
【0184】
一方、設定変更操作を検出したと判定した場合、マスタ側制御部93はステップS302において、ロールクラッチ機能がOFFからONに変更されたか否かを判定する。
【0185】
OFFからONに変更されたと判定した場合、マスタ側制御部93はステップS303において、クラッチ操作子76を手前に引く操作を行った際のロールに関する機構についてのブレーキを解除する設定を適用する。これにより、術者は、クラッチ操作子76を手前に引く操作をした状態で、把持機構59の並進動作に加えてロール方向回動操作Roを行うことができる。
例えば、鉗子としての手術具24が備える二つの先端片83の形状が異なる場合に、手術具24の先端部を好適な姿勢とするために回動動作Ro’を180deg行う必要があるケースが存在するが、このようなケースにおいてロールクラッチ機能は好適である。
【0186】
ステップS302において、ロールクラッチ機能がONからOFFに変更されたと判定した場合、マスタ側制御部93はステップS304において、クラッチ操作子76を手前に引く操作を行った際のロールに関する機構についてのブレーキを掛ける設定を適用する。これにより、クラッチ操作子76を手前に引く操作を行ったとしても、
図8に示す被取付端部68に対する取付端部69の回動が行われないようにブレーキが掛けられる。
【0187】
ステップS303の処理またはステップS304の処理を終えた後、マスタ側制御部93はステップS301の処理へと戻る。
【0188】
手術支援システムSが起動中は
図19に示す一連の処理が所定時間ごとに繰り返し実行されることで、術者は任意のタイミングでロールクラッチ機能のONとOFFを切り換えることができる。また、
図19に示す一連の処理は、例えば、手術支援システムSの電源が落とされる際に終了する。
【0189】
<5.変形例>
手術支援システムSは、手術具24の先端部の並進移動を行う際の操作量と実際の移動量のスケーリングが可能とされていてもよい。例えば、
図15に示す設定画面G1aにおいては、位置スケーリング選択欄Sel1が設けられている例を示した。
【0190】
位置スケーリング選択欄Sel1は、デルタ機構50を用いて術者が把持機構59を並進させる操作を行った場合の操作量と、該操作に応じて手術具24の先端部が並進移動されるときの移動量の比率を選択可能としたものである。
【0191】
位置スケーリング選択欄Sel1においては、「2:1」や「3:1」、或いは「1:1」などが選択可能とされている。操作量に対する移動量が小さくなるような選択肢が設けられることで、細かな手術に好適に対応することができる。
【0192】
上述したニュートラルアシスト機能FM7においては、手術具24の先端部の並進移動についての操作がしやすいように、把持機構59の上下方向、左右方向及び前後方向における可動域の略中央に誘導するための処理を行うことを説明した。
【0193】
ニュートラルアシスト機能FM7においては、これに加えて、姿勢変更機構51についてのパン方向回動操作Pa、ピッチ方向回動操作Pi及びロール方向回動操作Roについてもそれぞれの可動域の略中央に誘導するように力覚提示を行ってもよい。
【0194】
また、その場合には、設定画面G1において、ニュートラルアシスト機能を実行したときの対象操作を術者が選択可能に構成されていてもよい。例えば、パン方向回動操作Pa及びピッチ方向回動操作Piについてはニュートラルアシスト機能の対象外とするが、ロール方向回動操作Roについては該機能の対象とする選択が可能に構成されていてもよい。これにより、術者の好みに合わせたカスタマイズが可能となる他、各種のシチュエーションに好適に対応することが可能となる。
【0195】
図16においては、リストアングルスケーリング機能FM8として、パン方向回動操作Paに対する回動動作Pa’の回動量を調整するためのスケーリング機能と、ピッチ方向回動操作Piに対する回動動作Pi’の回動量を調整するためのスケーリング機能と、ロール方向回動操作Roに対する回動動作Ro’の回動量を調整するためのスケーリング機能を実現するための比率選択欄Sel4が設けられている例を説明した。
【0196】
図20には、リストアングルスケーリング機能FM8における、パン方向及びピッチ方向についてのスケーリングを行うための選択欄と、ロール方向についてのスケーリングを行うための選択欄を別にした例を示す。
【0197】
具体的に、設定画面G1b’には、ロールクラッチボタンBtn2と、パン及びピッチ比率選択欄Sel4aと、ロール比率選択欄Sel4bと、キャンセルボタンBtnCと、実行ボタンBtnOKが配置されている。
【0198】
パン及びピッチ比率選択欄Sel4aとロール比率選択欄Sel4bは、それぞれ別の比率を選択することが可能とされている。これにより、術者の好みに合わせたカスタマイズをすることや、各種のシチュエーションに好適に対応することが可能となる。
【0199】
<6.まとめ>
上述した手術支援システムSにおける手術支援装置は、スレイブ側装置2を遠隔操作するためのマスタ側装置1であって、所定の可動域を有しスレイブ側装置の可動部(アーム22の可動部や手術具保持装置23の可動部や手術具24の可動部、即ち、スレイブ側駆動部100)の操作に用いられる第1操作子(把持部71或いは把持機構59)と、第1操作子に対応して設けられた第2操作子(クラッチ操作子76)と、第1操作子に対する操作入力に応じて可動部の制御を行う制御部(マスタ側制御部93)と、を備え、制御部は、第2操作子に対する操作が行われた場合に第1操作子の位置を所定の可動域における所定位置(可動域の略中央)に移動させる処理を行うものである。
この処理は、上述したニュートラルアシスト機能FM7が実行する処理である。
これにより、第1操作子が所定の可動域における端付近に位置した場合に術者が操作しやすい位置、具体的には、可動域の略中央付近に第1操作子を移動させることができる。
従って、可動域の限界に達してしまい術者の意図した操作ができなくなってしまうことが防止され、手術を行いやすくすることができる。また、可動域に基づく操作ミスを減らすことができ安全性の観点からも好適である。
【0200】
図14、
図18において説明したように、手術支援装置としてのマスタ側装置1は、第1操作子(把持部71或いは把持機構59)を介してスレイブ側装置2において検出される触覚をフィードバックするための駆動部(マスタ側駆動部90)を有し、制御部は、駆動部を制御することにより第1操作子を所定位置(例えば可動域の略中央)に移動させてもよい。
これにより、術者の手を優しく誘導することが可能となり、術者の手を痛めずに好適な操作位置に第1操作子を動かすことができる。
【0201】
図12等を参照して説明したように、手術支援装置としてのマスタ側装置1における制御部(マスタ側制御部93)は、第2操作子(クラッチ操作子76)が操作された場合に、第1操作子(把持部71或いは把持機構59)と可動部(アーム22の可動部や手術具保持装置23の可動部や手術具24の可動部、即ち、スレイブ側駆動部100)の操作に用いられる第1操作子(把持部71或いは把持機構59)の連携を解除してもよい。
これにより、マスタ側装置1とスレイブ側装置2の連携を解除した上で第1操作子を所定の位置に移動させる処理を実行することができ、安全性の面で好適である。
【0202】
上述したように、手術支援装置としてのマスタ側装置1における第1操作子(把持部71或いは把持機構59)は互いに直行する三つの軸(パン方向の回動軸、ピッチ方向の回動軸及びロール方向の回動軸)の軸方向に可動部(アーム22の可動部や手術具保持装置23の可動部や手術具24の可動部、即ち、スレイブ側駆動部100)を動かすことが可能な操作子とされ、所定位置は、三つの軸の軸方向におけるそれぞれの可動域の中心位置とされてもよい。
即ち、三つの軸の軸方向とは、手術具24の軸が延びる方向から手術具24の先端部を見た場合に、前後方向(手術具24の軸方向)、左右方向(手術具24が鉗子であれば、鉗子の先端片83が並ぶ方向、)及び上下方向(前後方向と左右方向の双方に直交する方向)とされる。そして、手術具24の先端部の姿勢が変わらないように並進移動されて各可動域の中心位置に移動される。
【0203】
図17等を参照して説明したように、手術支援装置としてのマスタ側装置1における制御部(マスタ側制御部93)は、所定の操作入力(例えば、設定画面G1aのニュートラルアシストボタンBtn1に対する入力操作)に応じて所定位置への移動の可否を選択してもよい。
これにより、術者は好みに応じてニュートラルアシスト機能のONとOFFを切り換えることができる。従って、複数の術者がマスタ側装置1を利用する場合であっても、術者ごとに異なる設定をすることができ、利便性の向上を図ることができる。
【0204】
変形例において説明したように、手術支援装置としてのマスタ側装置1における第1操作子(把持部71或いは把持機構59)は互いに直行する三つの軸の軸周り方向に可動部(アーム22の可動部や手術具保持装置23の可動部や手術具24の可動部、即ち、スレイブ側駆動部100)を回動させることが可能な操作子とされ、所定位置は、三つの軸の軸周り方向におけるそれぞれの可動域の中心角度位置とされてもよい。
これにより、ニュートラルアシスト機能を利用した場合に並進操作だけでなく回動操作においても好適な位置に自動的に調整されるため、最適な手の位置及び手の姿勢から手術を再開することができる。
【0205】
図12等を参照して説明したように、手術支援装置としてのマスタ側装置1は、第1操作子における把持部71に連続する連続部分(第1連結部70)を備え、第2操作子(クラッチ操作子76)は、把持部または連続部分の何れかに設けられていてもよい。
これにより、術者は、把持部71を把持した状態で手術具24の先端部の並進移動及び回動動作を行いながら第2操作子についての操作も可能となり、操作容易性を向上させることができる。
【0206】
図14、
図17等を参照して説明したように、手術支援装置としてのマスタ側装置1における第1操作子(把持部71或いは把持機構59)として、ユーザ(術者、或いは操作者)の右手によって操作される右用第1操作子(右用操作ユニット4Rの把持部71或いは把持機構59)と、ユーザ(術者)の左手によって操作される左用第1操作子(左用操作ユニット4Lの把持部71或いは把持機構59)と、が設けられ、第2操作子として、右用第1操作子に対応した右用第2操作子(右用操作ユニット4Rのクラッチ操作子76)と、左用第1操作子に対応した左用第2操作子(左用操作ユニット4Lのクラッチ操作子76)と、が設けられ、制御部(マスタ側制御部93)は、右用第2操作子と左用第2操作子とが共に操作された場合に左用第1操作子と右用第1操作子の双方の位置をそれぞれの所定位置に移動させる処理を行ってもよい。
両手のクラッチ操作子76の同時操作によってニュートラルアシスト機能が発動するように構成することで、誤動作を防止することができる。
【0207】
図14、
図17等を参照して説明したように、スレイブ側装置2に右用第1操作子(右用操作ユニット4Rの把持部71或いは把持機構59)に対応した右用可動部(アーム22Rの可動部や手術具24R用の手術具保持装置23の可動部や手術具24Rの可動部)と、左用第1操作子(左用操作ユニット4Lの把持部71或いは把持機構59)に対応した左用可動部(アーム22Lの可動部や手術具24L用の手術具保持装置23の可動部や手術具24Lの可動部)とが設けられ、制御部(マスタ側制御部93)は、右用第2操作子が操作された場合に、右用第1操作子と右用可動部の連携を解除し、左用第2操作子が操作された場合に、左用第1操作子と左用可動部の連携を解除してもよい。
これにより、両手のクラッチ操作子76の同時操作によってニュートラルアシスト機能が発動する場合に必然的に右用第1操作子と右用可動部の連携、及び左用第1操作子と左用可動部の連携が共に解除(中断)され、安全性の面でより好適である。
【0208】
上述した手術支援システムSにおける手術支援装置は、スレイブ側装置2を遠隔操作するためのマスタ側装置1であって、所定の可動域を有しスレイブ側装置2の可動部(アーム22の可動部や手術具保持装置23の可動部や手術具24の可動部、即ち、スレイブ側駆動部100)の操作に用いられる第1操作子(把持部71或いは把持機構59)と、第1操作子に対する操作入力に応じて可動部の制御を行う制御部(マスタ側制御部93)と、を備え、制御部は、第1操作子の操作量と可動部の可動量の対応関係を決定する処理を行ってもよい。
これにより、第1操作子を小さく動かすだけで対応する可動部を大きく可動させることなどが可能となる。
従って、術者は自信の手首の可動範囲内の動きで手術具24の先端部を意図した通りに動かすことができ、操作性の向上を図ることが可能となる。
また、上述したニュートラルアシスト機能を用いる回数を低減させることができ、円滑且つ迅速な手術を行うことが可能となる。
【0209】
図14や
図18等を参照して説明したように、第1操作子(把持部71或いは把持機構59)の操作量と可動部(アーム22の可動部や手術具保持装置23の可動部や手術具24の可動部、即ち、スレイブ側駆動部100)の可動量の対応関係は、第1操作子(把持部71或いは把持機構59)の操作量と可動部におけるパン方向及びピッチ方向の回動についての可動量の関係とされてもよい。
これにより、術者の手首の可動域以上に手術具24の先端部を回動させることができる。従って、種々の操作を行いやすくすることができる。
【0210】
図14や
図18等を参照して説明したように、第1操作子(把持部71或いは把持機構59)の操作量と可動部(アーム22の可動部や手術具保持装置23の可動部や手術具24の可動部、即ち、スレイブ側駆動部100)の可動量の対応関係は、第1操作子の操作量と可動部におけるロール方向の回動についての可動量の関係とされてもよい。
これにより、術者が手首をひねるようにして操作を行うことにより手術具24の先端部をロール方向に回動させる場合に、手首の可動域以上の動作を手術具24の先端部にさせることができる。
【0211】
図16や
図18等を参照して説明したように、上述した手術支援システムSにおける手術支援装置としてのマスタ側装置1における制御部(マスタ側制御部93)は、対応関係を選択可能な表示処理を行ってもよい。
これにより、術者はパン方向及びピッチ方向についての操作量と可動量を選択することができる。従って、術者の好みに対応関係をカスタマイズすることができるため、マスタ側装置1を利用する術者が複数いる場合に好適である。
【0212】
図14、
図16及び
図18等を参照して説明したように、手術支援システムSにおける手術支援装置としてのマスタ側装置1における制御部(マスタ側制御部93)による表示処理によって画像が表示される表示部(第2モニタ8)を備え、制御部は、対応関係を選択可能な選択欄(比率選択欄Sel4)を設けた画面(設定画面G1b)を表示部に表示し、選択欄に対する操作に応じて対応関係を決定してもよい。
これにより、術者は第2モニタ8に表示された設定画面G1bに配置された比率選択欄Sel4に対する選択操作を行うことで、対応関係を変更することができる。従って、変更操作が容易となり、手術の妨げになってしまうことを抑制することができる。
【0213】
図16等を参照して説明したように、手術支援システムSにおける手術支援装置としてのマスタ側装置1における制御部(マスタ側制御部93)は、第1操作子(把持部71或いは把持機構59)に対する操作量よりも可動部(アーム22の可動部や手術具保持装置23の可動部や手術具24の可動部、即ち、スレイブ側駆動部100)の可動量の方が大きくなる選択肢が含まれるように選択欄を設けてもよい。
これにより、術者の手首の可動域よりも大きく可動部を動かすことができる。従って、マスタ側装置1とスレイブ側装置2の連携を解除せずに一回の操作で所望の操作を実現することができ、利便性の向上を図ることができる。
【0214】
図16等を参照して説明したように、手術支援システムSにおける手術支援装置としてのマスタ側装置1における制御部(マスタ側制御部93)は、第1操作子(把持部71或いは把持機構59)に対する操作量よりも可動部(アーム22の可動部や手術具保持装置23の可動部や手術具24の可動部、即ち、スレイブ側駆動部100)の可動量の方が小さくなる選択肢が含まれるように選択欄を設けてもよい。
これにより、術者の手首を大きく動かしても可動部を小さく動かすことが可能となるため、より精密な操作に好適に対応することができる。従って、操作ミスを減らすことができ、手術の安全性を向上させることができる。
【0215】
上述した手術支援システムSにおける手術支援装置は、スレイブ側装置2を遠隔操作するためのマスタ側装置1であって、所定の可動域を有しスレイブ側装置2の可動部(アーム22の可動部や手術具保持装置23の可動部や手術具24の可動部、即ち、スレイブ側駆動部100)の操作に用いられる第1操作子(把持部71或いは把持機構59)と、第1操作子に対する特定操作に応じて可動部をロール方向に回動させる制御を行う制御部(マスタ側制御部93)と、を備え、制御部は、特定操作に応じて可動部のロール方向の回動の実施可否を決定する処理を行ってもよい。
これにより、マスタ側装置1とスレイブ側装置2の連携を解除することが可能となる。
特に、所定の方向の並進動作或いは所定の軸の軸周り方向の回動動作のみを対象として連携を解除することが可能に構成されることにより、術者の多様な要望に合致する操作態様を提供することができ、利便性の向上を図ることができる。
【0216】
図14、
図16及び
図19等を参照して説明したように、手術支援システムSにおける手術支援装置としてのマスタ側装置1において、第1操作子(把持部71或いは把持機構59)に対する特定操作は、可動部(アーム22の可動部や手術具保持装置23の可動部や手術具24の可動部、即ち、スレイブ側駆動部100)をロール方向に回動させるための操作(ロール方向回動操作Ro)とされ、制御部(マスタ側制御部93)は、決定する処理(第1操作子の操作に応じて可動部の可動を行うか否かを決定する処理)において、特定操作に応じて可動部のロール方向の回動(回動動作Ro’)を行うか否かを決定してもよい。
これにより、術者が手首をひねるようにして操作を行うことにより手術具24の先端部をロール方向に回動させる場合に、手首の可動域に阻まれて所望の操作ができない場合に、ロール方向における連携を解除することができ、手首を操作しやすい姿勢に戻すことが可能となる。これにより、ロール方向の回動動作を多く行いたい場合に適切な動作が可能な環境を提供することができる。
【0217】
図14、
図16及び
図19等を参照して説明したように、手術支援システムSにおける手術支援装置としてのマスタ側装置1における制御部(マスタ側制御部93)は、所定の選択肢が選択可能な表示処理を行い、所定の選択肢が選択された場合に、決定する処理(第1操作子の操作に応じて可動部(アーム22の可動部や手術具保持装置23の可動部や手術具24の可動部、即ち、スレイブ側駆動部100)の可動を行うか否かを決定する処理)において特定操作に応じた可動部のロール方向の回動を行わないと決定してもよい。
これにより、術者は、例えば、ロール方向についての回動操作に対してスレイブ側の可動部におけるロール方向の回動動作を行うか否かを選択することができる。従って、術者の好みに対応関係をカスタマイズすることができるため、マスタ側装置1を利用する術者が複数いる場合に好適である。
特にタッチパネル機能を備えた表示部に対する操作を行うことで実現可能な構成を備えることにより直感的に操作できるため、誤操作を起こしにくく好適である。
【0218】
図14、
図16及び
図19等を参照して説明したように、手術支援システムSにおける手術支援装置としてのマスタ側装置1における制御部(マスタ側制御部93)による表示処理によって画像が表示される表示部(第2モニタ8)を備え、制御部は、所定の選択肢を選択するための選択操作子(ロールクラッチボタンBtn2)を設けた画面(設定画面G1b)を表示部に表示してもよい。
これにより、術者は第2モニタ8に表示された設定画面G1bに配置されたロールクラッチボタンBtn2に対する選択操作を行うことで、ロール方向の回動操作についてのマスタ側装置1とスレイブ側装置2の連携をするか否か、変更することができる。従って、変更操作が容易となり、手術の妨げになってしまうことを抑制することができる。
特にタッチパネル機能を備えた表示部に対する操作を行うことで実現可能な構成を備えることにより直感的に操作できるため、誤操作を起こしにくく好適である。
【0219】
図16等を参照して説明したように、所定の選択肢として、特定操作に応じて可動部(アーム22の可動部や手術具保持装置23の可動部や手術具24の可動部、即ち、スレイブ側駆動部100)のロール方向の回動を行うことを選択する第1選択肢(OFF選択肢)と、該回動を行わないことを選択する第2選択肢(ON選択肢)のみが設けられ、選択操作子は、操作されるごとに第1選択肢が選択された状態と第2選択肢が選択された状態とを切り換えるボタン操作子(ロールクラッチボタンBtn2)とされてもよい。
これにより、設定変更が容易とされる。従って、手術の進行を妨げることなく設定変更を行うことが可能となる。
【0220】
なお、上述した各種の例は、いかように組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0221】
1 マスタ側装置
2 スレイブ側装置
59 把持機構(第1操作子、右用第1操作子、左用第1操作子)
70 第1連結部(連続部分)
71 把持部(第1操作子、把持部)
76 クラッチ操作子(第2操作子、右用第2操作子、左用第2操作子)
93 マスタ側制御部(制御部)
100 スレイブ側駆動部(可動部)