(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】浴室床構造、浴室用継ぎ目部材及び浴室床の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04F 19/02 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
E04F19/02 T
(21)【出願番号】P 2020054278
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】牧野 祐介
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-105464(JP,A)
【文献】特開平08-199785(JP,A)
【文献】実開昭54-146032(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0218448(US,A1)
【文献】特開2000-154639(JP,A)
【文献】特開平6-108610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 19/02
E04F 19/06
E04F 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室の床パネルと、
前記床パネル上に隣接して敷設された第1表層シート及び第2表層シートと、
前記第1表層シート及び前記第2表層シートどうしの継ぎ目に沿って延びる継ぎ目部材と、
を備え、
前記継ぎ目部材が、
前記第1表層シート及び前記第2表層シートの対向端面どうし間に配置された受け部材と、
前記受け部材の上側に配置された表側部材と、を含み、
前記受け部材が、前記第1表層シート及び前記第2表層シートより薄肉の底板部と、前記底板部の幅方向の中央部から上へ突出された複数の受け壁部とを有し、
隣り合う前記受け壁部には上端面から壁内部に向かって第一溝が形成され、かつ前記受け壁部の両外面と前記第1表層シート及び前記第2表層シートの対向端面との間にはそれぞれ第二溝が形成されており、
前記表側部材が、前記受け壁部の両側の前記第二溝を跨いで前記第1表層シート及び前記第2表層シートの上面に架け渡されたカバー部と、前記カバー部の幅方向の中央部から下へ突出されて前記第一溝と嵌合された嵌合凸部と有し、
前記第一溝と前記嵌合凸部との間に弾性接着剤を有することを特徴とする浴室床構造。
【請求項2】
前記第二溝に弾性接着剤が充填されていることを特徴とする請求項1に記載の浴室床構造。
【請求項3】
前記第1表層シート及び前記第2表層シートの上面と前記表側部材との隙間の少なくとも一部に弾性接着剤を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の浴室床構造。
【請求項4】
前記カバー部の幅が、前記底板部の幅より大きいことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の浴室床構造。
【請求項5】
前記受け部材が、前記第1表層シート及び前記第2表層シートの対向端面どうし間に挟まれるようにして、前記床パネル上に載置されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の浴室床構造。
【請求項6】
前記底板部の一端面が、前記第1表層シートの対向端面に突き当てられ、前記底板部の他端面が、前記第2表層シートの対向端面に突き当てられていることを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の浴室床構造。
【請求項7】
前記底板部の下面から前記カバー部の下面までの高さが、前記第1表層シート及び前記第2表層シートの厚さと実質等しいことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の浴室床構造。
【請求項8】
浴室の床パネル上に隣接して敷設された第1表層シート及び第2表層シートどうしの継ぎ目に沿って設けられる継ぎ目部材であって、
前記第1表層シート及び前記第2表層シートの対向端面どうし間に配置される受け部材と、
前記受け部材上に配置される表側部材と、を含み、
前記受け部材が、前記第1表層シート及び前記第2表層シートより薄肉の底板部と、前記底板部の幅方向の中央部から上へ突出された複数の受け壁部とを有し、隣り合う前記受け壁部には上端面から壁内部に向かつて第一溝が形成され、かつ前記受け壁部の両外面が前記第1表層シート及び前記第2表層シートの対向端面との間にそれぞれ第二溝を画成するようになっており、
前記表側部材が、前記受け壁部の両側の第二溝を跨いで前記第1表層シート及び前記第2表層シートの上面に架け渡されるカバー部と、前記カバー部の幅方向の中央部から下へ突出されて前記第一溝と嵌合される嵌合凸部と有し、
前記第一溝と前記嵌合凸部との間に弾性接着剤を有することを特徴とする浴室床用継ぎ目部材。
【請求項9】
第1表層シート、第2表層シート及び継ぎ目部材の受け部材を、前記受け部材が前記第1表層シート及び前記第2表層シートの対向端面どうし間に配置されるように、床パネル上に敷設し、
前記受け部材の底板部の幅方向中央部から上へ突出された複数の受け壁部上に弾性接着剤を塗布し、
その後、前記継ぎ目部材の表側部材を前記受け部材上に被せて、前記表側部材のカバー部を前記第1、第2表層シートの上面に架け渡すとともに、前記カバー部の幅方向中央部から下へ突出された嵌合凸部を、前記受け部材の第一溝に嵌合させることを特徴とする浴室床の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室床構造、浴室用継ぎ目部材及び浴室床の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ユニットバスはFRPの圧縮成形や積層成形によって作製され、表面がFRPによって構成されている。一方、意匠性やクッション性などを付加するために、表層シートが貼られる場合もある。この種の表層シートとしては、一定幅の複層発泡塩化ビニル製のシートが用いられることが多い。浴室床の幅が前記シートの幅より大きい場合は、複数のシートを並べて敷設する。このため、隣接するシートどうしの間に継ぎ目が形成される。
【0003】
特許文献1は、下地面とシートとの間に介在される帯板状の側片部およびシートから突出するように突設された被係合部を有する下部材と、前記下部材に突設された被係合部に嵌合される係止部を有する上部材とを備える、目地部材を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の目地部材では、上部材とシートとの間にある隙間から水漏れが起きてしまう恐れがある。また、上部から目地部材に負荷がかかった場合に、上部材が左右にぐらついてしまい、被係合部及び係止部に負荷がかかる恐れがある。その結果、目地部材が割れる恐れがある。
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、施工不良が起きにくく、耐久性に優れる浴室床構造及び浴室用継ぎ目部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る浴室床構造、浴室用継ぎ目部材及び浴室床の施工方法は、以下の特徴を有する。
(1)浴室の床パネルと、
前記床パネル上に隣接して敷設された第1表層シート及び第2表層シートと、
前記第1表層シート及び前記第2表層シートどうしの継ぎ目に沿って延びる継ぎ目部材と、
を備え、前記継ぎ目部材が、
前記第1表層シート及び前記第2表層シートの対向端面どうし間に配置された受け部材と、
前記受け部材の上側に配置された表側部材と、を含み、
前記受け部材が、前記第1表層シート及び前記第2表層シートより薄肉の底板部と、前記底板部の幅方向の中央部から上へ突出された複数の受け壁部とを有し、隣り合う前記受け壁部には上端面から壁内部に向かって第一溝が形成され、かつ前記受け壁部の両外面と前記第1表層シート及び前記第2表層シートの対向端面との間にはそれぞれ第二溝が形成されており、
前記表側部材が、前記受け壁部の両側の前記第二溝を跨いで前記第1表層シート及び前記第2表層シートの上面に架け渡されたカバー部と、前記カバー部の幅方向の中央部から下へ突出されて前記第一溝と嵌合された嵌合凸部と有し、
前記第一溝と前記嵌合凸部との間に弾性接着剤を有することを特徴とする浴室床構造。
(2)前記第二溝に弾性接着剤が充填されていることを特徴とする(1)に記載の浴室床構造。
(3)前記第1表層シート及び前記第2表層シートの上面と前記表側部材との隙間の少なくとも一部に弾性接着剤を有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の浴室床構造。
(4)前記カバー部の幅が、前記底板部の幅より大きいことを特徴とする(1)~(3)のいずれか一つに記載の浴室床構造。
(5)前記受け部材が、前記第1表層シート及び前記第2表層シートの対向端面どうし間に挟まれるようにして、前記床パネル上に載置されていることを特徴とする(1)~(4)のいずれか一項に記載の浴室床構造。
(6)前記底板部の一端面が、前記第1表層シートの対向端面に突き当てられ、前記底板部の他端面が、前記第2表層シートの対向端面に突き当てられていることを特徴とする(1)~(5)の何れか一項に記載の浴室床構造。
(7)前記底板部の下面から前記カバー部の下面までの高さが、前記第1表層シート及び前記第2表層シートの厚さと実質等しいことを特徴とする(1)~(6)の何れか一項に記載の浴室床構造。
(8)浴室の床パネル上に隣接して敷設された第1表層シート及び第2表層シートどうしの継ぎ目に沿って設けられる継ぎ目部材であって、
前記第1表層シート及び前記第2表層シートの対向端面どうし間に配置される受け部材と、
前記受け部材上に配置される表側部材と、を含み、
前記受け部材が、前記第1表層シート及び前記第2表層シートより薄肉の底板部と、前記底板部の幅方向の中央部から上へ突出された複数の受け壁部とを有し、隣り合う前記受け壁部には上端面から壁内部に向かつて第一溝が形成され、かつ前記受け壁部の両外面が前記第1表層シート及び前記第2表層シートの対向端面との間にそれぞれ第二溝を画成するようになっており、
前記表側部材が、前記受け壁部の両側の第二溝を跨いで前記第1表層シート及び前記第2表層シートの上面に架け渡されるカバー部と、前記カバー部の幅方向の中央部から下へ突出されて前記第一溝と嵌合される嵌合凸部と有し、
前記第一溝と前記嵌合凸部との間に弾性接着剤を有することを特徴とする浴室床用継ぎ目部材。
(9)第1表層シート、第2表層シート及び継ぎ目部材の受け部材を、前記受け部材が前記第1表層シート及び前記第2表層シートの対向端面どうし間に配置されるように、床パネル上に敷設し、
前記受け部材の底板部の幅方向中央部から上へ突出された複数の受け壁部上に弾性接着剤を塗布し、
その後、前記継ぎ目部材の表側部材を前記受け部材上に被せて、前記表側部材のカバー部を前記第1、第2表層シートの上面に架け渡すとともに、前記カバー部の幅方向中央部から下へ突出された嵌合凸部を、前記受け部材第一溝に嵌合させることを特徴とする浴室床の施工方法。
【0008】
(1)に記載の浴室床構造においては、前記第一溝と嵌合凸部との間に弾性接着剤を有する。これにより、弾性接着剤が第一溝と嵌合凸部との間で緩衝材となり、浴室床面上を車椅子やリフトその他の介助機器が走行したとしても、継ぎ目部材が破損することを防止できる。
また、弾性接着剤が、受け壁部と表側部材とを接着して、継ぎ目部材の強度を向上させることができる。
【0009】
(2)に記載の浴室床構造においては、前記第二溝に弾性接着剤が充填されている。これにより、受け壁部と表側部材とを確実に接着することができ、継ぎ目部材の強度を更に向上させることができる。また、弾性接着剤は防水性を有するので、継ぎ目部材の防水性をより向上させることができる。
【0010】
(3)に記載の浴室床構造においては、第1表層シート及び第2表層シートの上面と表側部材との隙間の少なくとも一部に弾性接着剤を有する。これにより、第1表層シート及び第2表層シートと表側部材とが接着されて、表側部材の端部の持ち上がりを抑制することができる。また、弾性接着剤は防水性を有するので、浴室床構造の防水性をより向上させることができる。
【0011】
(4)に記載の浴室床構造においては、カバー部の幅が、前記底板部の幅より大きい。これにより、カバー部の幅方向の両端部が、底板部よりも幅方向の外側へ延び出て、第1表層シート及び第2表層シートの端部の上面に確実に被さるようにできる。したがって、各表層シートの端部のメクレ、剥がれなどを確実に防止できる。
【0012】
(5)に記載の浴室床構造においては、前記受け部材が、前記第1表層シート及び前記第2表層シートの対向端面どうし間に挟まれるようにして、前記床パネル上に載置されている。これにより、受け部材ひいては継ぎ目部材を表層シートの継ぎ目に安定的に設置できる。また、第1表層シート及び第2表層シートの端部と底板部とを上下に重ねる必要がなく、第1表層シート及び第2表層シートの端部が盛り上がるのを防止できる。
【0013】
(6)に記載の浴室床構造においては、前記受け部材の底板部の一端面が、前記第1表層シートの対向端面に突き当てられ、前記底板部の他端面が、前記第2表層シートの対向端面に突き当てられている。これにより、受け部材、第1表層シート及び第2表層シートの位置決めを容易化できる。さらには、受け部材ひいては継ぎ目部材を表層シートの継ぎ目に一層安定的に設置でき、継ぎ目部材がずれ動くのを防止できる。したがって、受け部材のずれによる充填材又は弾性接着剤のちぎれや溢れ出しなどを確実に防止できる。
【0014】
(7)に記載の浴室床構造においては、前記底板部の下面から前記カバー部の下面までの高さは、前記表層シートの厚さと実質等しい。これにより、カバー部の両端部が、第1表層シート及び第2表層シートの端部の上面に確実に接するようにできる。「実質」とは、製造公差、施工誤差程度の寸法差は許容される趣旨である。
【0015】
(9)に記載の浴室床の施工方法においては、第1表層シート及び第2表層シート及び受け部材の設置後、上端面から壁内部に向かって形成される第一溝及び受け壁部の両側の一対の第二溝が上方へ開放されている。受け部材の上に弾性接着剤を塗布して、表側部材の嵌合凸部を受け部材の第一溝に嵌合させることで、弾性接着剤が第一溝内に侵入する。その結果、前記第一溝と嵌合凸部との間に弾性接着剤を有する。これにより、弾性接着剤が第一溝と嵌合凸部との間で緩衝材となり、浴室床面上を車椅子やリフトその他の介助機器が走行したとしても、継ぎ目部材が破損することを防止できる。
また、弾性接着剤が、受け壁部と表側部材とを接着して、継ぎ目部材の強度を向上させることができる。
さらに、表側部材を受け部材に嵌合させる時、塗布された弾性接着剤の一部が、表側部材のカバー部及び嵌合凸部に押されて第二溝へ侵入する。これにより、第二溝が弾性接着剤に充填される。その結果、受け壁部の両側の一対の第二溝内の充填材によって、第1表層シート及び第2表層シートと受け部材との間をシールでき、第1表層シート及び第2表層シートと床パネルとの間への水の侵入を防止できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、施工不良が起きにくく、耐久性に優れる浴室床構造及び浴室用継ぎ目部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る継ぎ目部材を含む浴室床の平面図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿う、前記浴室床の断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る継ぎ目部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
本実施形態における浴室は、例えば介護施設などにおいて用いられる比較的大型の浴室
である。浴室の全体が洗い場になっている。浴室の供用時には、別途、移動式の浴槽を搬
入可能である。
【0019】
図1に示すように、浴室床1(浴室床構造)は、複数の床パネル2と、外周枠3と、排水ピット4と、複数の表層シート10を備えている。外周枠3は、浴室床1の外周に沿って設けられ、図示しない浴室壁パネルや扉枠を受ける。浴室床1の奥行方向(
図1において上下)の中央部に排水ピット4が配置されている。該排水ピット4が、浴室床1の幅方向(
図1において左右)の一端部から他端部まで横断している。排水ピット4を挟んで両側の床部1aには、それぞれ複数(図では2つ)の床パネル2が幅方向に並べられて設置されている。床パネル2の上面(床面)には、排水ピット4へ向かって下へ傾く水流れ勾配が形成されている(
図2参照)。
【0020】
図2及び
図3に示すように、床パネル2は、例えば発泡樹脂製のパネル本体2aを鋼板製の上側補強板2b及び下側補強板2cによって上下から挟んでなるサンドイッチ構造になっている。これによって、床パネル2の製造コストを安価にでき、かつ所要強度を確保できる。
なお、床パネル2は、前記サンドイッチ構造に限らず、FRPの圧縮成形品や積層成形品であってもよい。
【0021】
図1及び
図2に示すように、浴室床1の上面(床面)には複数(図では1つの床部1aあたり3つ)の表層シート10が敷設されている。
図3に示すように、各床パネル2の上面には両面粘着テープ2dが貼られており、該両面粘着テープ2d上に表層シート10が貼り付けられている。表層シート10の厚さは、好ましくは数mm程度、より好ましくは3mm程度である。
【0022】
表層シート10としては、一定の規格幅寸法の複層発泡塩化ビニル製のシートが用いられている。
図1に示すように、床パネル2の幅ひいては床部1aの幅が前記規格幅寸法より大きい。このため、床部1aには、複数枚(
図1では3つ)の表層シート10が浴室幅方向(
図1において左右)に並べられて配置されている。なお、
図1においては、各表層シート10の幅が前記規格幅寸法になっているが、床部1aの大きさによっては、少なくとも1つの表層シートをカットして幅を詰めてもよい。各表層シート10の幅方向と直交する長手方向は浴室奥行方向(
図1において上下)へ向けられている。表層シート10の表面には、排水溝の形成、意匠性向上または滑り止めを目的として、エンボス加工やデボス加工により凹部や凸部が形成されている。
以下、複数枚の表層シート10のうち隣接する2つを互いに区別するときは、一方を「第1表層シート11」と称し、他方を「第2表層シート12」と称す。ここでは、便宜的に各床部1aの3つの表層シート10のうち中央のものを第1表層シート11とし、両側のものを第2表層シート12とする。
【0023】
図1に示すように、隣接する第1表層シート11及び第2表層シート12どうしの対向端面11e、12e間には、継ぎ目13が形成されている。好ましくは、表層シート11、12どうしの継ぎ目13は、床パネル2どうしの継ぎ目2gと交差しておらず、かつ重なっていない。これによって、両継ぎ目13、2gの交差部又は重なり部からの漏水のリスクを無くすことができる。より好ましくは、表層シート11、12どうしの継ぎ目13は、床パネル2どうしの継ぎ目2gと平行であり、かつ継ぎ目2gからずれて何れかの床パネル2の面上に配置されている。
【0024】
図1及び
図2に示すように、継ぎ目13に沿って継ぎ目部材14が設けられている。好ましくは、継ぎ目部材14は、浴室床1における水流れ勾配が付けられた方向(浴室奥行方向、
図1において上下)に沿って延びている。これによって、排水が継ぎ目部材14に沿って流れるようにできる。継ぎ目部材14が水流れ勾配が付けられた方向に対して交差していると、排水が継ぎ目部材14に堰き止められて、水や固形物の溜まりが出来やすい。
【0025】
図4に示すように、継ぎ目部材14は、下側の受け部材20と、上側の表側部材30とを含む。受け部材20及び表側部材30は、それぞれ一定の断面に形成され、直線状に延びている。受け部材20は、例えばABSなどの比較的硬質の樹脂を押し出し成形することによって形成されている。
図3及び
図4に示すように、受け部材20は、底板部21と、受け壁部22とを一体に有している。底板部21は、表層シート10(11、12)より薄肉かつ一定幅の帯板状に形成されている。
【0026】
底板部21の幅方向の中央部には、受け壁部22が上方へ突出するように形成されている。受け壁部22には上端面から壁内部に向かって第一溝23が形成されている。第一溝23の両側の溝壁にはそれぞれ係止突起24が形成されている。
受け壁部22が、第一溝23を挟んで2つの受け壁部分25、26に分断されている。
【0027】
図3に示すように、受け部材20は、表層シート11、12の対向端面11e、12e間に挟まれるようにして、床パネル2の上に載置されている。前記対向端面11e、12eどうしは、受け部材20の幅寸法の分だけ互いに離間されている。底板部21が、前記対向端面11e、12e間に現れた両面粘着テープ2dに接着されている。底板部21の一端面(
図3において左端)が、第1表層シート11の対向端面11eの下側部分に突き当てられている。底板部21の他端面(
図3において右端)が、第2表層シート12の対向端面12eの下側部分に突き当てられている。
受け壁部22の上端面は、表層シート10の上面とほぼ同じ高さに位置されている。
【0028】
受け壁部22の両外面と表層シート11、12の対向端面と11e、12eの間にはそれぞれ第二溝41、42が形成されている。
詳しくは、第1表層シート11側の受け壁部分25の外面と、第1表層シート11の対向端面11eとの間に第1の第二溝41が形成されている。底板部21における受け壁部分25よりも第1表層シート11側へ張り出した部分の上面が、第二溝41の溝底面を構成している。
【0029】
第2表層シート12側の受け壁部分26の外面と、第2表層シート12の対向端面12eとの間に第2の第二溝42が形成されている。底板部21における受け壁部分26よりも第2表層シート12側へ張り出した部分の上面が、第二溝42の溝底面を構成している。
2つの第二溝41、42は、継ぎ目13に沿って
図3の紙面直交方向に延びている。
【0030】
図3に示すように、第二溝41、42には、好ましくは、それぞれ充填材5が充填されている。より好ましくは、充填材5として弾性接着剤52が用いられている。なお、弾性接着剤とは、硬化物がゴム状弾性体である接着剤を言う。
弾性接着剤52として、例えば、アクリル変成シリコーン樹脂系弾性接着剤及び二液混合硬化型エポキシ・変成シリコーン系弾性接着剤が挙げられる。
【0031】
図3及び
図4に示すように、受け部材20上に表側部材30が配置されている。表側部材30は、カバー部31と、嵌合凸部33とを一体に有している。カバー部31は、ソフトアクリルなどの軟質樹脂によって構成され、嵌合凸部33はABSなどの硬質樹脂によって構成されている。表側部材30は、好ましくは、カバー部31と嵌合凸部33とを二色成形してなる二色成形体である。これによって、浴室の床面に面するカバー部31にはクッション性を付与できる。嵌合凸部33には嵌合に必要な硬さを付与できる。
【0032】
カバー部31は、一定幅の帯状に形成されている。カバー部31の幅は、底板部21の幅より大きい。カバー部31の幅方向の両端部が、底板部21よりも幅方向の外側へ延び出ている。
該カバー部31が、受け壁部22の両側の第二溝41、42を跨いで、第1表層シート11の上面と第2表層シート12の上面間に架け渡されている。カバー部31の幅方向両側部が、好ましくは、表層シート11、12の上面に被さり、表層シート11、12の上面に当接されている。
【0033】
カバー部31における、各表層シート11、12の上面に重なる部分の幅は好ましくは数mm程度、より好ましくは3mm程度である。
底板部21の下面からカバー部31の下面までの高さは、表層シート10の厚さとほぼ等しい。
【0034】
カバー部31の幅方向の中央部に嵌合凸部33が設けられている。嵌合凸部33は、カバー部31から下へ突出されている。嵌合凸部33の下端部には係止突起34が形成されている。該嵌合凸部33が、受け部材20の第一溝23に挿し込まれて嵌合されている。係止突起24、34どうしが係止されている。
【0035】
図3に示すように、第一溝23と嵌合凸部33との間に弾性接着剤52を有する。これにより、弾性接着剤52が前記第一溝23と前記嵌合凸部33との間で緩衝材となり、浴室床面上を車椅子やリフトその他の介助機器が走行したとしても、継ぎ目部材が破損することを防止できる。
また、弾性接着剤52が、受け壁部22と表側部材30とを接着して、継ぎ目部材14の強度を向上させることができる。
【0036】
図7に示すように、第一溝23と嵌合凸部33との間に弾性接着剤52が充填されていることが好ましい。これにより、第一溝23と嵌合凸部33との間の隙間がなくなり、浴室床面上を車椅子やリフトその他の介助機器が走行したとしても、表側部材30のぐらつきを防止することができる。その結果、継ぎ目部材14の耐久性及び強度が一層向上する。
さらに、第一溝23と嵌合凸部33との間の隙間がなくなるので、浴室床構造1の防水性が一層向上する。
【0037】
図7に示すように、第二溝に弾性接着剤52が充填されていることが好ましい。これにより、表側部材30と受け部材20とが接着されて継ぎ目部材14の強度が一層向上する。また、弾性接着剤52は防水性を有するので、浴室床構造1の防水性を確保することができる。
【0038】
図7に示すように、各表層シート11、12の上面と表側部材30との隙間の少なくとも一部に弾性接着剤52を有することがこのましい。これにより、各表層シート11、12の上面と表側部材30とが接着されて、表側部材30の端部の持ち上がりを抑制することができる。また、弾性接着剤52は防水性を有するので、浴室床構造1の防水性をより向上させることができる。
【0039】
表側部材30と受け部材20との間の隙間がすべて弾性接着剤52で充填されていることが更に好ましい。それにより、継ぎ目部材14の強度、耐久性及び防水性が更に向上する。
【0040】
図7に示すように、各表層シート11、12の上面と表側部材30とが対面する部分において、各表層シート11、12の上面側または表側部材30側に溝が形成されていることが好ましい。これにより、弾性接着剤52が溝に入り込み、各表層シート11、12の上面と表側部材30とを確実に接着することができる。これにより、表側部材30の端部の持ち上がりを一層抑制することができる。また、浴室床構造1の防水性をより向上させることができる。
【0041】
<浴室床の施工方法>
当該浴室床1の施工の際は、
図5(a)に示すように、例えば、床パネル2を設置した後、第1表層シート11を床パネル2上に敷設して、床パネル2の上面の両面粘着テープ2dに貼り付ける。
次に、
図5(b)に示すように、第1表層シート11の対向端面に沿って、継ぎ目部材14の受け部材20を設置する。該受け部材20の底板部21の一端面を第1表層シート11の対向端面11eに突き当てる。かつ受け部材20を床パネル2上に載せて、床パネル2の上面の両面粘着テープ2dに貼り付ける。
これによって、第1表層シート11の対向端面11eと受け壁部22との間に第1の第二溝41が形成される。この時点の第1の第二溝41は、上方へ開口されている。
【0042】
次に、
図5(c)に示すように、第2表層シート12の対向端面12eを受け部材20に沿わせて底板部21の他端面に突き当てるようにして、第2表層シート12を床パネル2上に敷設して両面粘着テープ2dに貼り付ける。これによって、第2表層シート12の対向端面12eと受け壁部22との間に第2の第二溝42が形成される。この時点の第2の第二溝42は、上方へ開口されている。
また、受け部材20が、表層シート11、12によって両側から挟み付けられて位置固定される。表層シート11、12の端部と底板部21とを上下に重ねる必要がなく、第1表層シート11及び第2表層シート12の端部が盛り上がるのを防止できる。
床パネル2への表層シート11、12の設置方法は特に限定されない。例えば、接着剤で表層シート11、12を床パネル2に設置してもよい。
【0043】
受け部材20が表層シート11、12の対向端面どうし間に配置されるように設置すればよく、受け部材20及び表層シート11、12の設置の順番は、特に限定されない。
【0044】
続いて、
図6(a)から(c)に示すように、受け部材20の上に弾性接着剤52を塗布する。弾性接着剤52を塗布した後、表側部材30を受け部材20上に被せ、嵌合凸部33を第一溝23に嵌合させる。このとき、表側部材30の嵌合凸部33が塗布された弾性接着剤52を第一溝23の中へ押し込む。これにより、表側部材30を受け部材20に嵌合させたあと、第一溝23と嵌合凸部33との間に弾性接着剤52を有する構造となる。また、表側部材30を受け部材20に嵌合させる時、塗布された弾性接着剤52の一部が、表側部材30のカバー部31及び嵌合凸部33に押されて第二溝41、42へ侵入する。これにより、第二溝41、42が弾性接着剤52に充填される。
【0045】
これにより、弾性接着剤52が前記第一溝23と前記嵌合凸部33との間で緩衝材となり、浴室床面上を車椅子やリフトその他の介助機器が走行したとしても、継ぎ目部材14が破損することを防止できる。そして、受け部材20が表層シート11、12によって両側から挟み付けられて位置固定されているから、表側部材30をも位置固定できる。ひいては、継ぎ目部材14を継ぎ目13に安定的に設置でき、継ぎ目部材14がずれ動くのを防止できる。
【0046】
さらに、弾性接着剤52が、受け壁部22と表側部材30とを接着して、継ぎ目部材14の強度を向上させることができる。また、弾性接着剤52が第二溝41、42に充填されているので、浴室床構造1に防水性を確保することができる。
加えて、表側部材30によって溝開口41a、42aに蓋をすることができ、さらに受け部材20及び弾性接着剤52を覆い隠すことができる。したがって、継ぎ目13の見栄えをよくして意匠性を向上できる。
【0047】
図6(c)に示すように、表側部材30の両端部が第1、第2表層シート11、12の端部の上面に被さることで、各表層シート11、12の端部のメクレ、剥がれなどを防止できる。さらに、供用後の浴室床面上を車椅子やリフトその他の介助機器が走行したとしても、表層シート11、12の端部が損傷するのを防止できる。また、当該浴継ぎ目処理においては熱風を必要としないから表層シート10に熱損傷を与えることがない。
【0048】
弾性接着剤を塗布する前に表層シート11、12の端部の上面にマスキングテープを端部の縁に沿って貼ってもよい。これにより、表側部材30を受け部材20へ嵌合させた後に、各表層シート11、12の露出面に弾性接着剤52が残留することを防止できる。その結果、浴室床構造1の見栄えをよくして意匠性を向上できる。
【0049】
弾性接着剤52を塗布した後、表側部材30を受け部材20の嵌合させる前に、弾性接着剤52を第一溝23及び第二溝41、42に充填してもよい。これにより、表側部材を受け部材の嵌合させたあと、嵌合凸部33と第一溝23との間の隙間に弾性接着剤52を確実に充填させることができる。この結果、浴室床面上を車椅子やリフトその他の介助機器が走行したとしても、表側部材30のぐらつきを防止することができ、継ぎ目部材14の耐久性及び強度が一層向上する。弾性接着剤52を第一溝23及び第二溝41、42に充填させる方法として、特に限定されないが、塗布した弾性接着剤52をヘラで平滑にするように充填してもよい。これにより、確実に弾性接着剤52を第一溝23及び第二溝41、42に充填することができる。マスキングテープを剥がし、表側部材30を押し込むと、第二溝41、42から弾性接着剤52が表層シート11、12の端部の上面に溢れ、カバー部31の端部と表側部材30はしっかり接着される。
【0050】
また、表側部材30を受け部材20の嵌合させるときに、表側部材30の嵌合凸部33によって、第一溝23に充填された弾性接着剤52が押し出される。これにより、押し出された弾性接着剤52が表側部材30と受け部材20との間を充填することができる。その結果、表層シート11、12と受け部材20との間をシールして、表層シート11、12と床パネルとの間への水の侵入を防止できる。従って、浴室床構造1の防水性が一層向上する。
【0051】
各第二溝41、42及び第一溝23は上方へ開口されているから、該溝開口23a、41a、42aから弾性接着剤を第二溝41、42及び第一溝23の内部に容易に塗布して充填できる。かつ溝開口23a、41a及び42a及び第一溝23を通して、弾性接着剤52の塗布・充填状況を容易に確認できる。したがって、施工不良を防止できる。
【0052】
表側部材30を受け部材20の嵌合させた後、各表層シート11、12の上面とカバー部31の下面との隙間の少なくとも一部に弾性接着剤52を溢れさせてもよい。これにより、各表層シート11、12の上面と表側部材30とが接着されて、カバー部31の端部の持ち上がりを抑制することができる。また、弾性接着剤52は防水性を有するので、浴室床構造1の防水性をより向上させることができる。
【0053】
表層シート11、12の端部の上面が継ぎ目13に沿って露出するようにマスキングをしてもよい。これにより、表側部材30を受け部材20の嵌合させるときに、各表層シート11、12の上面とカバー部31の下面との隙間の少なくとも一部に弾性接着剤52を確実に溢れさせることができる。
【0054】
弾性接着剤52の塗布不良が起きにくいから、表層シート11、12と受け部材20との間を確実にシールでき、継ぎ目13における防水性を確保できる。
表層シート10(11、12)を張り替える際は、継ぎ目部材14の表側部材30を受け部材20から引き剥がして撤去する。受け部材20は残置して再使用できる。
【0055】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、浴室床1が1つの床パネルだけで構成されていてもよい。床パネルがFRP製であってもよい。
浴室が、浴槽及び浴槽受けパンを有していてもよい。本発明の床パネルが、前記浴槽受けパンを含んでいてもよい。
本発明の浴室床構造は、介護施設などの大型浴室に限らず、戸建て住宅や集合住宅その他の浴室にも適用できる。
本発明の浴室床構造の表面部材は、軟質樹脂または硬質樹脂の単一材料で構成されていてもよい。
本発明の浴室床構造の表層シートの表面には、エンボス加工やデボス加工により凹部や凸部が形成されていなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、例えば介護施設などの大型の浴室に適用できる。
【符号の説明】
【0057】
1 浴室床、浴室床構造
2 床パネル
2d 両面粘着テープ
5 充填材
52 弾性接着剤
11 第1表層シート、表層シート
11e 対向端面
12 第2表層シート、表層シート
12e 対向端面
13 継ぎ目
14 継ぎ目部材
20 受け部材
21 底板部
22 受け壁部
23 第一溝
24 係止突起
25、26 受け壁部分
30 表側部材
31 カバー部
33 嵌合凸部
41,42 第二溝
23a、41a,42a 溝開口