IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アー・ファウ・アー ライフサイエンス ゲー・エム・ベー・ハーの特許一覧

特許7401160フローサイトメトリー測定法およびそれを実施するためのキット
<>
  • 特許-フローサイトメトリー測定法およびそれを実施するためのキット 図1
  • 特許-フローサイトメトリー測定法およびそれを実施するためのキット 図2
  • 特許-フローサイトメトリー測定法およびそれを実施するためのキット 図3
  • 特許-フローサイトメトリー測定法およびそれを実施するためのキット 図4
  • 特許-フローサイトメトリー測定法およびそれを実施するためのキット 図5
  • 特許-フローサイトメトリー測定法およびそれを実施するためのキット 図6
  • 特許-フローサイトメトリー測定法およびそれを実施するためのキット 図7
  • 特許-フローサイトメトリー測定法およびそれを実施するためのキット 図8
  • 特許-フローサイトメトリー測定法およびそれを実施するためのキット 図9
  • 特許-フローサイトメトリー測定法およびそれを実施するためのキット 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】フローサイトメトリー測定法およびそれを実施するためのキット
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20231212BHJP
   G01N 15/14 20060101ALI20231212BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20231212BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20231212BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20231212BHJP
   G01N 33/49 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
G01N33/53 Y
G01N15/14 C
G01N15/14 J
G01N15/14 D
G01N33/48 M
G01N21/64 F
C12Q1/02
G01N33/49 K
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021551854
(86)(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-01
(86)【国際出願番号】 EP2019055142
(87)【国際公開番号】W WO2020177840
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】520002209
【氏名又は名称】アー・ファウ・アー ライフサイエンス ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】AVA Lifescience GmbH
【住所又は居所原語表記】Norsinger Strasse 30, 79189 Bad Krozingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー クラップロート
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ ビアスナー
(72)【発明者】
【氏名】マーク ケッセマイアー
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/136025(WO,A1)
【文献】特開2008-261802(JP,A)
【文献】国際公開第2018/101389(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/136152(WO,A1)
【文献】高坂勉 他,フローサイトメトリーにおける蛍光測定の標準化-機器の精度管理を中心として-,Cytometry Research,2004年,14(2),23-32
【文献】A. Schwartz et al,Standardizing Flow Cytometry:A Classification System of Fluorescence Standards Used for Flow Cytometry,Cytometry,1998年,33,106-114
【文献】Barry van der Strate,Best practices in performing flow cytometry in a regulated environment: feedback from experience within the European Bioanalysis Forum,Bioanalysis,2017年,9(16),1253-1264
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48~33/98
G01N 15/00~15/14
G01N 21/64
C12Q 1/00~ 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の測定チャネルを用いてフローサイトメトリー測定値を記録するためのフローサイトメトリー測定法において、流体とそれに含まれる分類すべき生体細胞とを有する分析媒体を準備し、前記測定チャネルの数に対応する数の異なるマーカー分子の少なくとも1つを準備し、前記細胞が標的構造を有する場合に、前記個々のマーカー分子が前記細胞の表面上にある前記マーカー分子に対して結合特異的な少なくとも1つの標的構造に特異的に結合することができるように前記分析媒体と接触させ、前記細胞が個々にエネルギー光線および/または電場の測定領域に到達する前記分析媒体の流体流を生じさせ、前記測定領域内にある個々の細胞について、それぞれ少なくとも1つの第1のフローサイトメトリー測定値および少なくとも1つの第2のフローサイトメトリー測定値が記録され、少なくとも前記第1のフローサイトメトリー測定値が、当該のマーカー分子が前記エネルギー光線または前記電場によって励起された場合に発する蛍光放射について記録され、前記細胞がフローサイトメトリー測定値に基づいて分類され、非水溶性、無機かつ/または高分子の材料から構成される固体粒子をそれぞれが有する、少なくとも1つの第1のキャリブレーターおよび少なくとも1つの第2のキャリブレーターを準備し、前記少なくとも1つの第1のキャリブレーターと前記少なくとも1つの第2のキャリブレーターの前記固体粒子とが形態、サイズおよび材料に関して一致しており、前記少なくとも1つの第1のキャリブレーターが、それぞれが当該のマーカー分子と接触したときに異なるマーカー分子の1つに特異的に結合する、前記測定チャネルの数に対応する数の標的構造の1つを表面上に有し、前記標的構造が、前記細胞の標的構造と一致しかつ前記第1のキャリブレーターの前記固体粒子に固定化されており、前記少なくとも1つの第2のキャリブレーターが前記標的構造を有さず、前記少なくとも1つの第1のキャリブレーターおよび前記少なくとも1つの第2のキャリブレーターを、前記フローサイトメトリー測定値を記録する前に、前記分析媒体中にある少なくとも1つのマーカー分子が前記第1のキャリブレーターの前記少なくとも1つの標的構造に結合するように前記分析媒体と混合し、前記流体流中の前記キャリブレーターが個々に前記測定領域に次々に導入され、前記細胞と前記第1のキャリブレーターおよび前記第2のキャリブレーターとの両方について、それぞれ複数の測定チャネルについて少なくとも1つの1のフローサイトメトリー測定値が記録され、前記キャリブレーターを前記細胞と区別するための前記少なくとも1つの第2のフローサイトメトリー測定値が、前記測定領域内で生じる前記エネルギー光線の前方散乱の前方散乱測定値および前記測定領域内で生じる前記エネルギー光線の側方散乱の側方散乱測定値を含み、ならびに個々の測定チャネルに対してそれぞれ前記少なくとも1つの細胞について正規化された第1のフローサイトメトリー測定値生成するために、前記第1のキャリブレーターの第1のフローサイトメトリー測定値と前記第2のキャリブレーターの第1のフローサイトメトリー測定値との間の差を、前記細胞の第1のフローサイトメトリー測定値と前記第2のキャリブレーターの第1のフローサイトメトリー測定値との間の差に対して関連付ける、フローサイトメトリー測定法。
【請求項2】
複数の測定チャネルを用いてフローサイトメトリー測定値を記録するためのフローサイトメトリー測定法において、流体とそれに含まれる分類すべき生体細胞とを有する分析媒体を準備し、前記測定チャネルの数に対応する数の異なるマーカー分子の少なくとも1つを準備し、前記細胞が標的構造を有する場合に、前記個々のマーカー分子が前記細胞の表面上にある前記マーカー分子に対して結合特異的な少なくとも1つの標的構造に特異的に結合することができるように前記分析媒体と接触させ、前記細胞が個々にエネルギー光線および/または電場の測定領域に到達する前記分析媒体の流体流を生じさせ、前記測定領域内にある個々の細胞について、それぞれ少なくとも1つの第1のフローサイトメトリー測定値および少なくとも1つの第2のフローサイトメトリー測定値が記録され、少なくとも前記第1のフローサイトメトリー測定値が、当該のマーカー分子が前記エネルギー光線または前記電場によって励起された場合に発する蛍光放射について記録され、前記細胞がフローサイトメトリー測定値に基づいて分類され、非水溶性、無機かつ/または高分子の材料から構成される固体粒子をそれぞれが有する、複数の同一の第1のキャリブレーターおよび複数の同一の第2のキャリブレーターを準備し、前記少なくとも1つの第1のキャリブレーターと前記少なくとも1つの第2のキャリブレーターの前記固体粒子とが形態、サイズおよび材料に関して一致しており、前記第1のキャリブレーターが、それぞれが当該のマーカー分子と接触したときに異なるマーカー分子の1つに特異的に結合する、前記測定チャネルの数に対応する数の標的構造の1つを表面上に有し、前記標的構造が、前記細胞の標的構造と一致しかつ前記第1のキャリブレーターの前記固体粒子に固定化されており、前記少なくとも1つの第2のキャリブレーターが前記標的構造を有さず、前記第1のキャリブレーターおよび前記少なくとも1つの第2のキャリブレーターを、前記フローサイトメトリー測定値を記録する前に、前記分析媒体中にある少なくとも1つのマーカー分子が前記第1のキャリブレーターの前記少なくとも1つの標的構造に結合するように前記分析媒体と混合し、前記流体流中の前記キャリブレーターが個々に前記測定領域に次々に導入され、前記細胞と前記第1のキャリブレーターおよび前記第2のキャリブレーターとの両方について、それぞれ複数の測定チャネルについて第1のフローサイトメトリー測定値が記録され、前記キャリブレーターを前記細胞と区別するための前記第2のフローサイトメトリー測定値が、前記測定領域内で生じる前記エネルギー光線の前方散乱の前方散乱測定値および前記測定領域内で生じる前記エネルギー光線の側方散乱の側方散乱測定値をそれぞれ含み、ならびに細胞の正規化された第1のフローサイトメトリー測定値を生成するために、前記第1のキャリブレーターの平均された第1のフローサイトメトリー測定値と前記第2のキャリブレーターの平均された第1のフローサイトメトリー測定値との間の差を、前記細胞の第1のフローサイトメトリー測定値と前記第2のキャリブレーターの平均された第1のフローサイトメトリー測定値との間の差に対して関連付ける、フローサイトメトリー測定法。
【請求項3】
複数の測定チャネルを用いてフローサイトメトリー測定値を記録するためのフローサイトメトリー測定法において、流体とそれに含まれる分類すべき生体細胞とを有する分析媒体を準備し、前記測定チャネルの数に対応する数の異なるマーカー分子の少なくとも1つを準備し、前記細胞が標的構造を有する場合に、前記個々のマーカー分子が前記細胞の表面上にある前記マーカー分子に対して結合特異的な少なくとも1つの標的構造に特異的に結合することができるように前記分析媒体と接触させ、前記細胞が個々にエネルギー光線および/または電場の測定領域に到達する前記分析媒体の流体流を生じさせ、前記測定領域内にある個々の細胞について、それぞれ少なくとも1つの第1のフローサイトメトリー測定値および少なくとも1つの第2のフローサイトメトリー測定値が記録され、少なくとも前記第1のフローサイトメトリー測定値が、当該のマーカー分子が前記エネルギー光線または前記電場によって励起された場合に発する蛍光放射について記録され、前記細胞がフローサイトメトリー測定値に基づいて分類され、非水溶性、無機かつ/または高分子の材料から構成される固体粒子をそれぞれが有する、第1のキャリブレーターの少なくとも2つのキャリブレータータイプおよび少なくとも1つの第2のキャリブレーターを準備し、前記第1のキャリブレーターと前記少なくとも1つの第2のキャリブレーターの前記固体粒子とが形態、サイズおよび材料に関して一致しており、第1のキャリブレータータイプの少なくとも1つの第1のキャリブレーターが、前記細胞の少なくとも1つの第1の標的構造と一致しかつ前記キャリブレーターの前記固体粒子に固定化された少なくとも1つの第1の標的構造を表面上に有し、第2のキャリブレータータイプの少なくとも1つの第1のキャリブレーターが、前記細胞の少なくとも1つの第2の標的構造と一致しかつ前記キャリブレーターの前記固体粒子に固定化された少なくとも1つの第2の標的構造を表面上に有し、前記第1のキャリブレータータイプの前記少なくとも1つの第1のキャリブレーターが前記第2の標的構造を表面上に有さず、かつ前記第2のキャリブレータータイプの前記少なくとも1つの第1のキャリブレーターが前記第1の標的構造を表面上に有さず、前記少なくとも1つの第2のキャリブレーターが前記少なくとも1つの第1の標的構造および前記少なくとも1つの第2の標的構造を有さず、第1のキャリブレーターの前記少なくとも2つのキャリブレータータイプおよび前記少なくとも1つの第2のキャリブレーターを、前記フローサイトメトリー測定値を記録する前に、前記分析媒体中にある少なくとも1つのマーカー分子が前記第1のキャリブレーターの前記少なくとも1つの標的構造に結合するように前記分析媒体と混合し、前記第1のキャリブレーターの前記少なくとも2つの第2のキャリブレータータイプの前記標的構造は、それぞれが異なるマーカー分子の1つに対して結合特異的であり、前記流体流中の前記キャリブレーターが個々に前記測定領域に次々に導入され、前記細胞と前記第1のキャリブレーターおよび前記第2のキャリブレーターとの両方について、それぞれ複数の測定チャネルについて少なくとも1つの第1のフローサイトメトリー測定値が記録され、前記キャリブレーターを前記細胞と区別するための前記少なくとも1つの第2のフローサイトメトリー測定値が、前記測定領域内で生じる前記エネルギー光線の前方散乱の前方散乱測定値および前記測定領域内で生じる前記エネルギー光線の側方散乱の側方散乱測定値を含み、ならびに個々の測定チャネルに対してそれぞれ前記少なくとも1つの細胞について正規化された第1のフローサイトメトリー測定値を生成するために、前記第1のキャリブレーターの第1のフローサイトメトリー測定値と前記第2のキャリブレーターの第1のフローサイトメトリー測定値との間の差を、前記細胞の第1のフローサイトメトリー測定値と前記第2のキャリブレーターの第1のフローサイトメトリー測定値との間の差に対して関連付ける、フローサイトメトリー測定法。
【請求項4】
複数の測定チャネルを用いてフローサイトメトリー測定値を記録するためのフローサイトメトリー測定法において、流体とそれに含まれる分類すべき生体細胞とを有する分析媒体を準備し、前記測定チャネルの数に対応する数の異なるマーカー分子の少なくとも1つを準備し、前記細胞が標的構造を有する場合に、前記個々のマーカー分子が前記細胞の表面上にある前記マーカー分子に対して結合特異的な少なくとも1つの標的構造に特異的に結合することができるように前記分析媒体と接触させ、前記細胞が個々にエネルギー光線および/または電場の測定領域に到達する前記分析媒体の流体流を生じさせ、前記測定領域内にある個々の細胞について、それぞれ少なくとも1つの第1のフローサイトメトリー測定値および少なくとも1つの第2のフローサイトメトリー測定値が記録され、少なくとも前記第1のフローサイトメトリー測定値が、当該のマーカー分子が前記エネルギー光線または前記電場によって励起された場合に発する蛍光放射について記録され、前記細胞がフローサイトメトリー測定値に基づいて分類され、非水溶性、無機かつ/または高分子の材料から構成される固体粒子をそれぞれが有する、第1のキャリブレータータイプの複数の同一の第1のキャリブレーター、第2のキャリブレータータイプの複数の同一の第1のキャリブレーターおよび複数の同一の第2のキャリブレーターを準備し、前記第1のキャリブレーターと前記第2のキャリブレーターの前記固体粒子とが形態、サイズおよび材料に関して一致しており、前記第1のキャリブレータータイプの前記複数の第1のキャリブレーターが、前記細胞の少なくとも1つの第1の標的構造と一致しかつ当該のキャリブレーターの前記固体粒子に固定化された少なくとも1つの第1の標的構造を表面上にそれぞれ有し、前記第2のキャリブレータータイプの前記複数の第1のキャリブレーターが、前記細胞の少なくとも1つの第2の標的構造と一致しかつ当該のキャリブレーターの前記固体粒子に固定化された少なくとも1つの第2の標的構造を表面上にそれぞれ有し、前記第1のキャリブレータータイプの前記第1のキャリブレーターが前記第2の標的構造を表面上に有さず、かつ前記第2のキャリブレータータイプの前記第1のキャリブレーターが前記第1の標的構造を表面上に有さず、前記第2のキャリブレーターが前記少なくとも1つの第1の標的構造および前記少なくとも1つの第2の標的構造を表面上に有さず、前記第1のキャリブレーターおよび前記第2のキャリブレーターを、前記フローサイトメトリー測定値を記録する前に、前記分析媒体中にある少なくとも1つのマーカー分子が第1のキャリブレーターの前記少なくとも1つの標的構造に結合するように前記分析媒体と混合し、前記第1のキャリブレータータイプおよび前記第2のキャリブレータータイプの前記第1のキャリブレーターの前記標的構造は、それぞれが異なるマーカー分子の1つに対して結合特異的であり、前記流体流中の前記キャリブレーターが個々に前記測定領域に次々に導入され、前記細胞と前記第1のキャリブレーターおよび前記第2のキャリブレーターとの両方について、それぞれ複数の測定チャネルについて少なくとも1つの第1のフローサイトメトリー測定値が記録され、前記キャリブレーターを前記細胞と区別するための前記第2のフローサイトメトリー測定値が、前記測定領域内で生じる前記エネルギー光線の前方散乱の前方散乱測定値および前記測定領域内で生じる前記エネルギー光線の側方散乱の側方散乱測定値をそれぞれ含み、ならびに細胞の正規化された第1のフローサイトメトリー測定値を生成するために、前記第1のキャリブレーターの平均された第1のフローサイトメトリー測定値と前記第2のキャリブレーターの平均された第1のフローサイトメトリー測定値との間の差を、前記細胞の第1のフローサイトメトリー測定値と前記第2のキャリブレーターの平均された第1のフローサイトメトリー測定値との間の差に対して関連付ける、フローサイトメトリー測定法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第1のキャリブレーターに対し、前記第1のフローサイトメトリー測定値についての測定信号に関して前記第1のキャリブレーターの測定信号強度と前記標的構造を有する第1の参照キャリブレーターの測定信号強度との間の比率に相当する第1の較正係数を準備すること、前記第1のキャリブレーターの第1のフローサイトメトリー測定値について第1の測定信号を記録するとともに、前記第1の測定信号および前記第1の較正係数から前記第1のキャリブレーターの第1のフローサイトメトリー測定値を生成すること、前記第2のキャリブレーターに対し、前記第1のフローサイトメトリー測定値についての測定信号に関して前記第2のキャリブレーターの測定信号強度と前記標的構造を有しない第2の参照キャリブレーターの測定信号強度との間の比率に相当する第2の較正係数を準備すること、ならびに前記第2のキャリブレーターの第1のフローサイトメトリー測定値について第2の測定信号を記録するとともに、前記第2の測定信号および前記第2の較正係数から前記第2のキャリブレーターの第1のフローサイトメトリー測定値を生成する、請求項1からまでのいずれか1項記載のフローサイトメトリー測定法。
【請求項6】
少なくとも2つのキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターを準備し、前記分析媒体と混合すること、異なるキャリブレータータイプのキャリブレーターが、前記固体粒子の表面上の前記少なくとも1つの標的構造の面積占有密度および/または配置に関して、第1のキャリブレータータイプの第1のフローサイトメトリー測定値が、前記第2のキャリブレーターの第1のフローサイトメトリー測定値の信号強度よりも大きく、かつ第2のキャリブレータータイプの第1のフローサイトメトリー測定値の信号強度よりも小さい信号強度を有するように互いに異なる、請求項1または2記載のフローサイトメトリー測定法。
【請求項7】
第1の集団の細胞の第1のフローサイトメトリー測定値が第1の信号強度範囲内にあり、第2の集団の細胞の第1のフローサイトメトリー測定値が、前記第1の信号強度範囲外の第2の信号強度範囲内にあるように互いに異なる、少なくとも2つの異なる細胞の集団が前記流体に含まれること、および前記第1のキャリブレータータイプの第1のフローサイトメトリー測定値の信号強度が、前記第1の信号強度範囲と前記第2の信号強度範囲との間にあるように選択される、請求項記載のフローサイトメトリー測定法。
【請求項8】
前記固体粒子の最大寸法が20μm未満であり、かつ/または前記固体粒子の最小寸法が4μm超である、請求項1からまでのいずれか1項記載のフローサイトメトリー測定法。
【請求項9】
前記固体粒子の材料がポリスチレン、メラミン、ラテックスまたはケイ酸塩である、請求項1からまでのいずれか1項記載のフローサイトメトリー測定法。
【請求項10】
前記第1のキャリブレーター上の前記標的構造が、少なくとも1つのタンパク質、ならびに/または少なくとも1つのペプチド、ならびに/または少なくとも1つの受容体、ならびに/または少なくとも1つのアレルゲン、ならびに/または少なくとも1つのグリコシル化タンパク質、ならびに/または少なくとも1つのリポ糖、ならびに/または少なくとも1つのオリゴ糖、ならびに/または少なくとも1つの多糖、ならびに/または少なくとも1つの核酸、ならびに/または上述の物質の少なくとも1つの断片および/もしくは誘導体を含む、少なくとも1つの抗原を有する、請求項1からまでのいずれか1項記載のフローサイトメトリー測定法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの第1のキャリブレーターの前記標的構造が、少なくとも1つの活性化カルボキシ基および/または少なくとも1つの活性化NH基を介して前記第1のキャリブレーターの前記固体粒子に固定化されている、請求項1から10までのいずれか1項記載のフローサイトメトリー測定法
【請求項12】
前記少なくとも1つの第2のフローサイトメトリー測定値が、前記マーカー分子が発する蛍光放射の蛍光測定値であり、前記蛍光放射が、前記第1のフローサイトメトリー測定値の蛍光放射とは蛍光放射の波長が異なる、請求項1から11までのいずれか1項記載のフローサイトメトリー測定法。
【請求項13】
請求項1または2記載の方法を実施するためのキットであって、
-非水溶性、無機かつ/または高分子の材料から構成される第1の固体粒子を有し、前記第1の固体粒子に固定化された少なくとも2つの数の標的構造を表面上に有する、少なくとも1つの第1のキャリブレーターと、
-形態、サイズおよび材料に関して前記第1の固体粒子と一致した第2の固体粒子を有し、前記標的構造を表面上に有しない、少なくとも1つの第2のキャリブレーターと、
それぞれが当該のマーカー分子と接触したときに異なる標的構造の1つに特異的に結合する、前記第1の固体粒子に固定化された標的構造の数に対応する数の、少なくとも1つのマーカー分子と
を含む、キット。
【請求項14】
請求項3または4記載の方法を実施するためのキットであって、
-それぞれが非水溶性、無機かつ/または高分子の材料から構成される第1の固体粒子を有し、第1のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターが、前記第1のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターの前記第1の固体粒子に固定化された少なくとも1つの第1の標的構造を表面上に有し、第2のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターが、前記第2のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターの前記第1の固体粒子に固定化された少なくとも1つの第2の標的構造を表面上に有し、前記第1のキャリブレータータイプの少なくとも1つの第1のキャリブレーターが前記第2の標的構造を表面上に有さず、かつ前記第2のキャリブレータータイプの少なくとも1つの第1のキャリブレーターが前記第1の標的構造を表面上に有さない、第1のキャリブレータータイプの少なくとも1つの第1のキャリブレーターおよび第2のキャリブレータータイプの少なくとも1つの第1のキャリブレーターと、
-形態、サイズおよび材料に関して前記第1の固体粒子と一致した第2の固体粒子を有し、前記少なくとも1つの第1の標的構造および前記少なくとも1つの第2の標的構造を表面上に有しない、少なくとも1つの第2のキャリブレーターと、
-前記第1のキャリブレーターの前記キャリブレータータイプの数に対応する数の、少なくとも1つの異なるマーカー分子と
を含み、
-前記第1のキャリブレーターの前記少なくとも2つのキャリブレータータイプの異なる標的構造が、それぞれが前記異なるマーカー分子に結合特異的である、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体とそれに含まれる分類すべき生体細胞とを有する分析媒体を準備し、少なくとも1つのマーカー分子を準備し、細胞が標的構造を有する場合に、マーカー分子が細胞の表面上にある少なくとも1つの標的構造に特異的に結合することができるように分析媒体と接触させ、細胞が個々にエネルギー光線および/または電場の測定領域に到達する分析媒体の流体流を生じさせ、測定領域内にある個々の細胞について、それぞれ少なくとも第1の物理的パラメーターに対する第1のフローサイトメトリー測定値および第2の物理的パラメーターに対する第2のフローサイトメトリー測定値が記録され、少なくとも第1のパラメーターが、少なくとも1つのマーカー分子がエネルギー光線または電場によって励起された場合に発する蛍光放射であり、細胞がフローサイトメトリー測定値に基づいて分類される、フローサイトメトリー測定法に関する。加えて、本発明は上記方法を実施するためのキットに関する。
【0002】
フローサイトメトリー(サイトメトリー:細胞測定)という用語は、生物学および医学において用いられる測定法を表す。これにより、個々に電場または光線を高速で通過する生体細胞の分析が可能となる。細胞の形態、構造および/または色に応じて異なるフローサイトメトリー測定値が記録され、それから個々の細胞の特性を導き出すことで、細胞を分類することができる。
【0003】
フローサイトメトリーの一形態では、蛍光標識された細胞が色に応じて異なる試薬容器に選別される。対応する装置は、フローソーターまたはFACS(蛍光活性化細胞選別)と称される。FACS(=蛍光活性化細胞スキャニング)という用語が、細胞の選別ではなく、細胞の特性の分析または分類のみを実施する装置に対して、この意味で使用されることがある。
【0004】
この検査の原理は、レーザー光線を通過する際の細胞による光信号の放出に基づく。サンプルはシース流によって集束されて、ガラスまたは石英製の高精度キュベットのマイクロチャネル内に入り、各細胞が個々にレーザー光線の測定領域を通って次々に導かれる。その際に生じる散乱光または蛍光信号は、検出器によって記録される。これにより細胞1つ1つに関する定量的情報が得られる。多数の細胞を非常に短い時間間隔(>1000細胞/秒)で分析することによって、分析媒体に含まれる細胞集団に関する代表的な情報が迅速に得られる。
【0005】
フローサイトメーターでは、散乱光と同時に蛍光色素を測定することができる。それ自体が蛍光を発する細胞はごく僅かである。したがって、例えば細胞の特定の標的構造に結合する色素のようなマーカー分子が使用される。例えば、細胞のデオキシリボ核酸(DNA)に結合する(DAPI)か、またはそれに挿入され、すなわち塩基間に沈着する(ヨウ化プロピジウム)、色素DAPI(4’,6-ジアミジン-2’-フェニルインドールジヒドロクロリド)およびヨウ化プロピジウムを使用することで、細胞に固定化された少なくとも1つのマーカー分子がレーザー光線を通過する際に発する蛍光放射の明るさに基づいて、細胞が含有するDNAの量を検査することができる。
【0006】
蛍光色素で標識された抗体もマーカー分子として使用することができる。抗体は、主に特定の表面タンパク質、例えばCD分類(CD:分化抗原群)のタンパク質に対するものである。この場合、標識後に必要に応じて、これらの特徴に従って細胞の選別を行うこともできる。様々な色のレーザーおよび特にフィルターを用いることで、使用可能な色素の数、ひいては情報密度を高めることができる。その際、抗体が細胞上の表面タンパク質を標識するために最もよく使用される分子である。マーカー分子は、少なくとも1つの光学マーカーで標識された抗体、および/または分析媒体に含まれる細胞、例えば癌細胞の表面上にある標的構造に特異的に結合し、細胞を光学的に標識するのに適した他の分子と理解される。
【0007】
フローサイトメーターは、蛍光標識された細胞の場合に、標識された細胞の数の測定と個々の細胞が発した蛍光信号の測定値の記録との両方を可能にするが、測定に使用されるフローサイトメーターが様々であり、異なるフローサイトメーターで行われた測定では、フローサイトメトリー測定値の比較可能性が保証されないため、蛍光信号の定量的評価は困難である。特に、フローサイトメトリー測定値は、測定領域の照射に使用されるレーザー光線の強度、光学フィルターの許容誤差、フロー測定セル(流体)の構成、使用される試薬、検出器、およびマーカー分子を含有するサンプルの変動性によって影響を受ける。
【0008】
第1のフローサイトメトリー測定値と閾値との比較により細胞の蛍光測定値の定量化が可能であるが、閾値は大抵の場合、任意に設定される。細胞当たりの結合事象の正確な定量化、ひいては蛍光測定値のプラットフォームに依存しない普遍的な比較可能性は、これまで不可能であった。
【0009】
エネルギー光線または電場の測定領域を通って導かれる流体中に配置された蛍光微粒子を用いてフローサイトメトリー測定装置を較正することも既知である。しかしながら、この較正が、様々なフローサイトメーターで測定された蛍光測定値の正確な比較を可能にするには不十分であることが明らかになった。
【0010】
したがって、本発明の課題は、細胞の表面上の標的構造を非常に正確に定量的に検出することを可能にする冒頭で述べたタイプのフローサイトメトリー測定法を提供することである。加えて、蛍光測定によって得られた定量的測定値は、様々なフローサイトメーターで測定されたものである場合に互いに正確に比較可能であることが望ましい(参照/正規化)。本発明の更なる課題は、上記方法を実施するためのキットを提供することである。
【0011】
フローサイトメトリー測定法に関して、この課題は、請求項1の特徴によって解決される。この点で、本発明によると、流体とそれに含まれる分類すべき生体細胞とを有する分析媒体を準備し、少なくとも1つのマーカー分子を準備し、細胞が標的構造を有する場合に、マーカー分子が細胞の表面上にある少なくとも1つの標的構造に特異的に結合することができるように分析媒体と接触させ、細胞が個々にエネルギー光線および/または電場の測定領域に到達する分析媒体の流体流を生じさせ、測定領域内にある個々の細胞について、それぞれ少なくとも第1の物理的パラメーターに対する第1のフローサイトメトリー測定値および第2の物理的パラメーターに対する第2のフローサイトメトリー測定値が記録され、少なくとも第1のパラメーターが、少なくとも1つのマーカー分子がエネルギー光線または電場によって励起された場合に発する蛍光放射であり、細胞がこのフローサイトメトリー測定値に基づいて分類され、非水溶性、無機かつ/または高分子の材料から構成される固体粒子をそれぞれが有する、少なくとも1つの第1のキャリブレーターおよび少なくとも1つの第2のキャリブレーターを準備し、少なくとも1つの第1のキャリブレーターと少なくとも1つの第2のキャリブレーターの固体粒子とが形態、サイズおよび材料に関して一致しており、少なくとも1つの第1のキャリブレーターが、細胞の少なくとも1つの標的構造と一致しかつ第1のキャリブレーターの固体粒子に固定化された少なくとも1つの標的構造を表面上に有し、少なくとも1つの第2のキャリブレーターが標的構造を有さず、少なくとも1つの第1のキャリブレーターおよび少なくとも1つの第2のキャリブレーターを、フローサイトメトリー測定値を記録する前に、分析媒体中にある少なくとも1つのマーカー分子が第1のキャリブレーターの少なくとも1つの標的構造に結合するように分析媒体と混合し、流体流中のキャリブレーターが個々に測定領域に次々に導入され、少なくとも1つの第1のキャリブレーターおよび少なくとも1つの第2のキャリブレーターについて、細胞と同様に対応する第1および第2のフローサイトメトリー測定値が記録され、細胞の第2のフローサイトメトリー測定値およびキャリブレーターの第2のフローサイトメトリー測定値に割り当てられたパラメーターが、キャリブレーターを第2の測定値に基づいて細胞と区別することができるように選択され、少なくとも1つの第1のキャリブレーターの少なくとも1つの第1のフローサイトメトリー測定値、少なくとも1つの第2のキャリブレーターの少なくとも1つの第1のフローサイトメトリー測定値、および少なくとも1つの細胞の第1のフローサイトメトリー測定値から、少なくとも1つの細胞について正規化された第1のフローサイトメトリー測定値が生成される、フローサイトメトリー測定法が提供される。
【0012】
本発明は、細胞の標的構造へのマーカー分子の結合の検出に使用される試薬の許容誤差、マーカー分子の変動性、および分析媒体の組成が、分類すべき細胞のフローサイトメトリー測定値に大きな影響を与えるという認識に基づく。この許容誤差は、特にマーカー分子の古さ、方法、フローサイトメトリー測定法の実施前にマーカー分子をどのように、またどのような条件下で保存したか、および標的構造へのマーカー分子の結合を困難にするか、またはマーカー分子の代わりに標的構造に結合する、細胞の他に分析媒体に含まれる物質、例えば阻害剤によって影響を受ける。加えて、例えば温度等の環境条件も細胞のフローサイトメトリー測定値に影響を及ぼす可能性がある。
【0013】
本発明による方法では、これらの影響は、標準化された第1および第2のキャリブレーターを準備すること、細胞と同様にこれらのキャリブレーターについて対応するフローサイトメトリー測定値を記録すること、ならびに細胞について測定されたフローサイトメトリー測定値をキャリブレーターのフローサイトメトリー測定値を用いて正規化することによって補償される。これにより、個々の細胞とマーカー分子またはその抗体との間に生じる結合事象の細胞当たりの正確な定量化が可能となる。正規化されたフローサイトメトリー測定値は、フローサイトメトリー測定を異なるフローサイトメーターを用いて実施するか、かつ/または特性に関して互いに異なる試薬もしくはマーカー分子を使用した場合であっても互いに正確に比較することができる。これにより、特にクラスター分析によって互いに密接に関係する細胞の部分集団を特定することが可能となる。キャリブレーターは生細胞ではなく、少なくとも1つの標的構造のキャリアとして固体粒子を有するため、キャリブレーターは長時間安定であり、すなわち、標的構造の検出に関連する特性が大幅に変化することなく長時間にわたって保存することができる。
【0014】
各分析のパラメーター空間は、細胞当たりの最大結合事象の数および測定パラメーターに依存する。すなわち、例えば3つのパラメーターを決定する際に三次元空間が生じるが、その軸は必ずしも互いに直角になるとは限らない。この場合、マーカーのタイプおよびマーカーの密度(抗体当たりのフルオロフォアの数)、ならびに使用される抗体(またはマーカー分子)の結合強度および特異性も同様に役割を果たす。
【0015】
本発明による方法では、細胞について正規化されたフローサイトメトリー測定値が得られるが、これは方法の実施に使用されるフローサイトメーターの物理的特性から独立し、使用される試薬およびマーカー分子の許容誤差から独立し、かつ細胞の他に分析媒体に含まれ得る物質および作用物質から独立している。
【0016】
本発明の有利な実施形態では、正規化された第1のフローサイトメトリー測定値を生成するために、第1のキャリブレーターの第1のフローサイトメトリー測定値と第2のキャリブレーターの第1のフローサイトメトリー測定値との間の差を、細胞の第1のフローサイトメトリー測定値と第2のキャリブレーターの第1のフローサイトメトリー測定値との間の差に対して関連付ける。その際、細胞の正規化されたフローサイトメトリー測定値は、好ましくは100%となり、細胞の第1のフローサイトメトリー測定値が第1のキャリブレーターの第1のフローサイトメトリー測定値と一致する。細胞の第1のフローサイトメトリー測定値が第2のキャリブレーターの第1のフローサイトメトリー測定値と一致する場合、細胞の正規化されたフローサイトメトリー測定値は、ゼロの値をとる。第1のキャリブレーターは、好ましくは、少なくとも1つの第1のキャリブレーターの第1のフローサイトメトリー測定値が、細胞の第1のフローサイトメトリー測定値の期待される最大値と一致するか、または期待される第1のキャリブレーターの第1のフローサイトメトリー測定値を幾らか、特に最大で3%、最大で5%、最大で10%または最大で25%上回るように設計される。対応する期待値は、実験的に求めることができる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、複数の同一の第1のキャリブレーターおよび複数の同一の第2のキャリブレーターを準備し、個々についてのフローサイトメトリー測定値を記録する前に分析媒体と混合し、第1のキャリブレーターの第1のフローサイトメトリー測定値から、第1のキャリブレーターについての平均された第1のフローサイトメトリー測定値が生成されるとともに、第2のキャリブレーターの第1のフローサイトメトリー測定値から、第2のキャリブレーターについての平均された第1のフローサイトメトリー測定値が生成され、
-細胞の正規化された第1の測定値を生成するために、第1のキャリブレーターの平均された第1のフローサイトメトリー測定値と第2のキャリブレーターの平均された第1のフローサイトメトリー測定値との間の差を、細胞の第1のフローサイトメトリー測定値と第2のキャリブレーターの平均された第1のフローサイトメトリー測定値との間の差に対して関連付けるか、
または
-複数の細胞を含む細胞集団についての正規化された第1の測定値を生成するために、それぞれ個々の細胞について第1のフローサイトメトリー測定値を記録し、このフローサイトメトリー測定値から、細胞集団についての平均された第1のフローサイトメトリー測定値を生成し、複数の細胞についての正規化された第1の測定値を生成するために、
a)第1のキャリブレーターの平均された第1のフローサイトメトリー測定値と第2のキャリブレーターの平均された第1のフローサイトメトリー測定値との間の差を、細胞集団の第1の平均されたフローサイトメトリー測定値と第2のキャリブレーターの平均された第1のフローサイトメトリー測定値との間の差に対して関連付けるか、もしくは
b)平均された第1のフローサイトメトリー測定値とキャリブレーターの平均された第1のフローサイトメトリー測定値との間の商を、所定の信号強度を有する信号、特に100%の信号に対して生成する。
【0018】
その際、平均値は、それ自体が既知の統計的方法を用いて決定することができ、特に算術平均値とすることができる。必要に応じて、正規化された第1の測定値をさらにスケーリングすることができ、スケーリング係数は、例えば第1のキャリブレーターの平均された第1のフローサイトメトリー測定値と数値100との商に相当し得る。
【0019】
本発明の発展形態では、少なくとも1つの第1のキャリブレーターに対し、第1のパラメーターについての測定信号に関して第1のキャリブレーターの測定信号強度と標的構造を有する第1の参照キャリブレーターの測定信号強度との間の比率に相当する第1の較正係数を準備し、第1のキャリブレーターの第1の物理的パラメーターについて第1の測定信号を記録するとともに、第1の測定信号および第1の較正係数から第1のキャリブレーターの第1のフローサイトメトリー測定値を生成し、第2のキャリブレーターに対し、第1のパラメーターについての測定信号に関して第2のキャリブレーターの測定信号強度と標的構造を有しない第2の参照キャリブレーターの測定信号強度との間の比率に相当する第2の較正係数を準備し、第2のキャリブレーターの第1の物理的パラメーターについて第2の測定信号を記録するとともに、第2の測定信号および第2の較正係数から第2のキャリブレーターの第1のフローサイトメトリー測定値を生成する。
【0020】
較正係数によって、第1のキャリブレーターおよび/または第2のキャリブレーターの様々な互いに異なるバッチを用いて実施したフローサイトメトリーの測定値をさらに正確に互いに比較することが可能である。較正係数は、好ましくは正確に定義された条件下で実験的に測定される。
【0021】
ここで、初めに第1のバッチにおいて生成される第1および第2の参照キャリブレーターについて、それぞれ第1のフローサイトメトリー測定値の期待値が決定される。その際、分析媒体の代わりに、第1または第2の参照キャリブレーターが配置された、定義された一定の特性を有するバッファーが使用される。生体細胞はバッファーに含まれない。このバッファーでは、多数の同じまたは本質的に同じ第1または第2の参照キャリブレーターについて、それぞれ対応する第1のフローサイトメトリー測定値が測定される。このようにして得られる参照フローサイトメトリー測定値から、それ自体が既知の統計的方法を用いて、第1および第2の参照キャリブレーターのそれぞれについて期待値を決定する。
【0022】
更なる工程では、第2のバッチの第1および第2のキャリブレーターについて同様に期待値を決定する。
【0023】
その後、第2のバッチの第1のキャリブレーターの第1のフローサイトメトリー測定値の期待値と第1の参照キャリブレーターの第1のフローサイトメトリー測定値の期待値とから商を生成することによって第1の較正係数を求める。同様に、第2のバッチの第2のキャリブレーターの第1のフローサイトメトリー測定値の期待値と第2の参照キャリブレーターの第1のフローサイトメトリー測定値の期待値とから商を生成することによって第2の較正係数を求める。
【0024】
本発明の有利な実施形態では、少なくとも2つのキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターを準備し、分析媒体と混合するが、異なるキャリブレータータイプのキャリブレーターは、特に固体粒子の表面上の少なくとも1つの標的構造の面積占有密度および/または配置に関して、第1のキャリブレータータイプの第1のフローサイトメトリー測定値が、第2のキャリブレーターの第1のフローサイトメトリー測定値の信号強度よりも大きく、かつ第2のキャリブレータータイプの第1のフローサイトメトリー測定値の信号強度よりも小さい信号強度を有するように互いに異なる。これにより、フローサイトメトリー測定値を記録する際の非線形の信号の推移の影響を補償することができる。
【0025】
第1の集団の細胞の第1のフローサイトメトリー測定値が第1の信号強度範囲内にあり、第2の集団の細胞の第1のフローサイトメトリー測定値が、第1の信号強度範囲外の第2の信号強度範囲内にあるように互いに異なる、少なくとも2つの異なる細胞の集団が流体に含まれる場合、および第1のキャリブレータータイプの第1のフローサイトメトリー測定値の信号強度が、第1の信号強度範囲と第2の信号強度範囲との間にあるように選択される場合が有利である。この場合、第1のキャリブレータータイプのキャリブレーターは、2つの部分集団の参照範囲を互いに区別することを可能にする信号強度を生じる。すなわち、第1のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターの第1のフローサイトメトリー測定値よりも小さい第1のフローサイトメトリー測定値を有する細胞は、第1の集団に属し、より高いフローサイトメトリー測定値を有する細胞は、第2の集団に属する。
【0026】
本発明の好ましい形態では、固体粒子の最大寸法は20μm未満、特に15μm未満、好ましくは10μm未満であり、かつ/または固体粒子の最小寸法は4μm超、特に5μm超、好ましくは6μm超である。適切な固体粒子は、例えば直径6~10μmのマイクロスフェアである。固体粒子は、好ましくは分析媒体中にある細胞と同様のサイズを有する。
【0027】
固体粒子は、好ましくは合成微粒子である。固体粒子はポリスチレン、メラミン、ラテックスおよび/もしくはケイ酸塩を含むか、またはこれらの材料の1つからなるものであり得る。
【0028】
マーカー分子は、細胞またはキャリブレーターの表面上の標的抗原に結合し、続いてこの標的抗原の検出に使用することができる分子であり得る。かかる分子は、例えば抗体およびその断片、レクチン、他の結合タンパク質(例えばプロテインA)である。
【0029】
第1のキャリブレーター上の標的抗原は、好ましくは共有結合によって固定化されている。かかる共有結合を生じさせる方法は、従来技術で既知であり、例えばアミン(架橋剤による)、チオール、エポキシド、アルデヒド、マレインイミドおよび他の基への結合を含む。適切な方法およびその化学変換は、専門文献に記載されている(Bioconjugate Techniques, Third Edition 3rd edition by Hermanson, Greg T. (2013))。しかし、非共有結合的な方法、例えばHisタグ、ビオチン-ストレプトアビジン、プロテインG、プロテインA、固定化済みの抗体を用いることもできる。
【0030】
第1のキャリブレーター上の標的抗原または標的構造は、例えばタンパク質、ペプチド、受容体、アレルゲン、グリコシル化タンパク質、リポ糖、オリゴ糖および多糖、核酸、ならびに上述の物質の断片および誘導体であり得る。
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1つの第2のフローサイトメトリー測定値は、測定領域内で生じるエネルギー光線の前方散乱の前方散乱測定値および/または測定領域内で生じるエネルギー光線の側方散乱の側方散乱測定値を含む。これらの測定値は、適切なセンサーを用いて単純な方法で記録することができる。前方散乱測定値は、サイズの尺度であり、側方散乱測定値は、細胞またはキャリブレーターの粒度の尺度である。これらの測定量に基づいて細胞とキャリブレーターとを区別することができる。これにより、測定されたフローサイトメトリー測定値を、前方および側方散乱測定値に基づいて細胞およびキャリブレーターに明確に割り当てることができる。
【0032】
しかしながら、少なくとも1つの第2のフローサイトメトリー測定値が、第1のフローサイトメトリー測定値の蛍光放射とは異なる、マーカー分子が発する蛍光放射の蛍光測定値であることも可能である。その際、好ましくは、第1および第2のフローサイトメトリー測定値の蛍光放射の波長は異なる。
【0033】
細胞と第1および第2のキャリブレーターとの両方について、それぞれ複数の測定チャネルに対して少なくとも1つの第1のフローサイトメトリー測定値が記録される場合、測定チャネルの数に対応する数の異なるマーカー分子の少なくとも2つ、特に少なくとも1つを準備し、分析媒体と接触させる場合、ならびに少なくとも1つの第1のキャリブレーターが、それぞれが当該のマーカー分子と接触したときに異なるマーカー分子の1つに特異的に結合する、測定チャネルの数に対応する数の標的構造の少なくとも1つを有する場合が有利である。
【0034】
しかしながら、細胞と第1および第2のキャリブレーターとの両方について、それぞれ複数の測定チャネルに対して少なくとも1つの第1のフローサイトメトリー測定値が記録されること、測定チャネルの数に対応する数の異なるマーカー分子の少なくとも1つを準備し、分析媒体と接触させること、少なくとも2つのキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターを準備すること、第1のキャリブレータータイプの少なくとも1つの第1のキャリブレーターが、細胞の少なくとも1つの第1の標的構造と一致しかつこのキャリブレーターの固体粒子に固定化された少なくとも1つの第1の標的構造を表面上に有すること、第2のキャリブレータータイプの少なくとも1つの第1のキャリブレーターが、細胞の少なくとも1つの第2の標的構造と一致しかつこのキャリブレーターの固体粒子に固定化された少なくとも1つの第2の標的構造を表面上に有すること、ならびに第1のキャリブレータータイプの少なくとも1つの第1のキャリブレーターが、第2の標的構造を表面上に有さず、第2のキャリブレータータイプの少なくとも1つの第1のキャリブレーターが、第1の標的構造を表面上に有しないことも考えられる。その際、測定チャネルの数に対応する数の異なる第1のキャリブレーターの少なくとも1つを準備し、分析媒体と混合することもでき、この第1のキャリブレーターは、それぞれが異なるマーカー分子の1つに対して結合特異的な異なる標的構造を有していてもよい。
【0035】
この場合、複数の測定パラメーターおよびそのキャリブレーターの使用は、測定装置の測定チャネルの数および利用可能なフルオロフォアによってのみ制限される。通常、6~8個のパラメーターを記録することができる。AML細胞の分析について、今日では既に30個の関連パラメーターが記録されているが、それらは数回の測定で記録する必要がある。近赤外領域でも測定が可能な最新の装置では、8個よりもはるかに多いパラメーターを記録することができる。かかるパラメーター空間において細胞のサブクラスを記録する場合には、測定の分解能が重要である。測定チャネル当たりの記録することができる測定の数は、固体粒子のサイズが第1の粒子クラスのキャリブレーターの固体粒子とは異なる更なる粒子クラスのキャリブレーターを使用することで増加させることができる。
【0036】
第1のキャリブレーター(相対信号強度100%)により、予想される最大信号を装置特異的に記録することが可能であるため、(例えば、測定技術的に最大の分解能を測定から得ることができるような検出器のレーザー出力または増幅器出力の調整によって)分解能を高めることができる。そのように記録および処理された信号を用いることで、細胞集団を数学的方法(例えば、https://de.wikipedia.org/wiki/Clusteranalyseに記載されている標準的な数学的方法であるクラスター分析)を用いて記録することができる。これにより、治療に対する反応の適切なマーカーを記録および評価することができることから、例えば白血病のような非常に多様な疾患をより良好に類型化するとともに、より良好に治療することができる。リンパ腫および白血病の特定の場合では、疾患の予後に強い影響を与える多数のマーカーが知られている。現在の研究では、CD38のような既知のマーカーに加えて、CD49dの発現が慢性リンパ性白血病(CLL)の経過に非常に深刻な影響を与えることが証明されている(DOI:10.1111/j.1365-2141.2011.08725.x)。
【0037】
本発明の好ましい形態では、第1のキャリブレーター上の標的構造は、少なくとも1つの抗原を有し、これは、好ましくは少なくとも1つのタンパク質、ならびに/または少なくとも1つのペプチド、ならびに/または少なくとも1つの受容体、ならびに/または少なくとも1つのアレルゲン、ならびに/または少なくとも1つのグリコシル化タンパク質、ならびに/または少なくとも1つのリポ糖、ならびに/または少なくとも1つのオリゴ糖、ならびに/または少なくとも1つの多糖、ならびに/または少なくとも1つの核酸、ならびに/または上述の物質の少なくとも1つの断片および/もしくは誘導体を含む。
【0038】
本発明の有利な実施形態では、少なくとも1つの第1のキャリブレーターの標的構造は、少なくとも1つの活性化カルボキシ基および/または少なくとも1つの活性化NH基を介して第1のキャリブレーターの固体粒子に固定化されている。これにより、固体粒子への標的構造、例えば抗原の安定したカップリングおよび固定化が可能となる。適切な微粒子は市販されている。
【0039】
第1のキャリブレーターの固体粒子に固定化された少なくとも1つの標的構造が、少なくとも1つの血液癌タイプの細胞に典型的な標的構造の1つに一致していれば有利である。この場合、本発明による方法を白血病細胞の分類に用いることができる。特に、その際に、急速に成長するM型細胞とより侵襲性が低いD型細胞とを区別することができる。
【0040】
本発明の好ましい形態では、第1のキャリブレーターの固体粒子に固定化された少なくとも1つの標的構造は、慢性リンパ性白血病細胞(CLL細胞)の表面上のB細胞受容体(BCR)内に存在する標的構造の1つと一致する。これらの白血病細胞は特に侵襲性である。この標的構造は、高い親和性および特異性のためにフローサイトメトリー診断(FACS)によく適している。
【0041】
キャリブレーターを測定時に分析媒体、例えば血液に添加する。キャリブレーターの適切な濃度は、好ましくは1×10個の細胞当たり1×10個である。測定時に、キャリブレーターは前方散乱(サイズ)および側方散乱(粒度)のパラメーターによって特定され、それにより標的細胞から分離される。
【0042】
キットに関して、上述の課題は、請求項14の特徴によって解決される。本発明によると、キットは、
-非水溶性、無機かつ/または高分子の材料から構成される第1の固体粒子を有し、第1の固体粒子に固定化された少なくとも1つの標的構造を表面上に有する、少なくとも1つの第1のキャリブレーターと、
-形態、サイズおよび材料に関して第1の固体粒子と一致した第2の固体粒子を有し、標的構造を表面上に有しない、少なくとも1つの第2のキャリブレーターと、
-標的構造に対して結合特異的な少なくとも1つのマーカー分子と
を含む。
【0043】
かかるキットを用いることで、フローサイトメトリー測定法において、流体中に含まれる分類すべき生体細胞の表面上に配置された標的構造を非常に正確に定量的に記録することができる。対応する測定値を、異なるフローサイトメーターを用いて測定した場合であっても互いに正確に比較することができる。少なくとも1つの標的構造は、好ましくは抗原である。必要に応じて、キットがバッファーをさらに含んでいてもよい。
【0044】
キットの好ましい実施形態では、少なくとも1つの第1のキャリブレーターの表面上に、第1の固体粒子に固定化された複数の異なる標的構造が配置されている。この場合、キットは、これらの標的構造ごとに、当該の標的構造に対して結合特異的なマーカー分子をそれぞれ少なくとも1つ含む。かかるキットを用いて並行測定を実施することができる。標的構造によるキャリブレーターの並行負荷は、固体粒子の占有密度、ひいては達成され得る最大信号によってのみ制限される。
【0045】
しかしながら、並行測定を実施するためのキットが、異なる標的構造を表面上に有する複数の異なる第1のキャリブレーターを含むことも考えられる。この場合、各々の第1のキャリブレーターは、それぞれ1つの標的構造しか有することができない。少なくとも1つの第1のキャリブレーターが、同じマーカー分子に対して結合特異的な標的構造を有する複数の領域を有することも可能である。
【0046】
マーカー分子は、好ましくは蛍光色素を備える。かかる色素は通常、共有結合によってマーカー分子に結合する。例えばCy3、Cy5、Cy7、FITC、ローダミン、フィコエリトリン、リサミンのような多数のかかる色素が市販されており、様々な色素のリストは、https://en.wikipedia.org/wiki/Fluorophoreに見られる。
【0047】
本発明の好ましい形態では、キットは、少なくとも1つの第1のキャリブレーターに対する第1の較正係数および/または少なくとも1つの第2のキャリブレーターに対する第2の較正係数を記憶する、少なくとも1つのデータキャリアを含む。かかるキットを用いてキャリブレーターの許容誤差を補償することができる。これは、第1または第2のキャリブレーターの異なるバッチを用いて実施したフローサイトメトリー測定法の測定結果を互いに比較すべき場合に特に有利である。データキャリアは、例えばバーコードまたはQRコードを備えるキャリアを有することができる機械可読データキャリアであり得る。しかしながら、例えば添付文書等のキットに付属する書類、またはキットに付属するパッケージに数値の形で較正係数が印刷されていることも可能である。
【0048】
キットが少なくとも2つのキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターを含む場合、ならびに異なるキャリブレータータイプのキャリブレーターが、特に固体粒子の表面上の少なくとも1つの標的構造の面積占有密度および/または配置に関して、それらの標的構造がマーカー分子で標識されているときに、フローサイトメトリー測定において異なる信号強度の測定信号を生じるように互いに異なる場合が有利である。かかるキットを用いることで、蛍光信号が非線形の推移を有するフローサイトメトリー測定において回帰を実施することができる。
【0049】
本発明の更なる詳細、特徴および利点は、図面に関連した以下の実施例の記載から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】フローサイトメーターを用いて第2のキャリブレーター(ゼロキャリブレーター)の集団について記録された測定値のグラフであり、測定された強度PEを横軸にプロットし、結合事象の数nを横軸にプロットしたものである。
図2図1と同様の図であるが、第1のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターの集団についての測定値を示す。
図3図1と同様の図であるが、第2のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターの集団についての測定値を示す。
図4】2.1×10個の固体粒子当たりのタンパク質CD23の量を横軸にプロットし、MFI値(平均蛍光測定値)を縦軸にプロットした標準曲線である。
図5】サイズおよび粒度のパラメーターについて測定された測定信号のグラフであり、細胞およびキャリブレーター粒子に対する蛍光放射のサイズのパラメーターに割り当てられた前方散乱(FSC)を横軸にプロットし、粒度のパラメーターに割り当てられた側方散乱(SSC)を縦軸にプロットしたものである。
図6】IgMおよびCD19に対する細胞およびキャリブレーター粒子について測定された強度値のグラフであり、IgMに対する強度を横軸にプロットし、CD19に対する強度を縦軸にプロットしたものである。
図7】IgDおよびCD19に対する細胞およびキャリブレーター粒子について測定された強度値のグラフであり、IgDに対する強度を横軸にプロットし、CD19に対する強度を縦軸にプロットしたものである。
図8】IgDおよびIgMに対する細胞およびキャリブレーター粒子について測定された強度値のグラフであり、IgDに対する強度を横軸にプロットし、IgMに対する強度を縦軸にプロットしたものである。
図9図6~8による測定空間の三次元表示である。
図10図6~9に示される測定空間についてのクラスター分析のグラフである。
【0051】
本発明の第1の実施例では、標的構造として疾患関連抗原を準備する。第1の標的構造としてIgM(免疫グロブリンM)を準備し、第2の標的構造としてIgD(免疫グロブリンD)を準備する。
【0052】
加えて、多数の固体粒子、すなわち直径6μmのポリスチレン製のマイクロスフェアを準備する。固体粒子は、その形態、サイズおよび材料に関して一致している。
【0053】
固体粒子は、それに結合したカルボキシル基(-COOH)で表面がコーティングされている。カルボキシル基の代わりにまたはカルボキシル基に加えて、固体粒子の表面上にNH基を設けることができる。カルボキシル基および/またはNH基を介して、第1および第2の標的構造を固体粒子の表面に結合することができる。
【0054】
さらに、第1および第2のマーカー分子を準備する。第1のマーカー分子は、第1の標的構造IgMに対して結合特異的な抗原である。第2のマーカー分子は、第2の標的構造IgDに対して結合特異的な抗原である。マーカー分子はそれぞれ、適切な励起放射によって励起されて蛍光放射を発する、少なくとも1つの光学マーカーを有する。
【0055】
1.1 固体粒子の表面への疾患関連抗原のカップリング
表面上にカルボキシル基を有する同数の固体粒子をそれぞれが含む、13個の固体粒子集団を準備する。
【0056】
6個の固体粒子集団の固体粒子の表面に第1の標的構造をカップリングし、別の6個の固体粒子集団の固体粒子の表面に第2の標的構造をカップリングする。このために、固体粒子に対し、いずれの場合にも1.2×10個の固体粒子当たり、
-第1の固体粒子集団については2.00μgのIgM、
-第2の固体粒子集団については1.00μgのIgM、
-第3の固体粒子集団については0.40μgのIgM、
-第4の固体粒子集団については0.20μgのIgM、
-第5の固体粒子集団については0.08μgのIgM、
-第6の固体粒子集団については0.04μgのIgM、
-第7の固体粒子集団については2.00μgのIgD、
-第8の固体粒子集団については1.00μgのIgD、
-第9の固体粒子集団については0.40μgのIgD、
-第10の固体粒子集団については0.20μgのIgD、
-第11の固体粒子集団については0.08μgのIgD、
-第12の固体粒子集団については0.04μgのIgDを
当該の固体粒子集団の固体粒子に添加し、結合バッファー(50mM MES、pH5.2;0.05%Proclin)中で絶えず撹拌しながら60分間インキュベートする。カップリングはそれぞれ、EDAC(カルボジイミド)による活性化を用いた標準プロトコルに従って行われる。固体粒子を洗浄し、EDAC溶液(20mg/ml)中で活性化する。
【0057】
個々の固体粒子集団を800gで遠心分離した後、それぞれ上清を取り、残りの抗原濃度の対照測定のために別にしておく。固体粒子を洗浄バッファーに加え、再懸濁する。再度の遠心分離後に上清を捨て、占有されていない反応基を飽和させるために粒子を洗浄および保存バッファー(10mM Tris、pH8.0;0.05%BSA;0.05%Proclin)に加える。
【0058】
第13の固体粒子集団の固体粒子の表面には、第1の標的構造も第2の標的構造もカップリングしない。代わりに、ブロッキングタンパク質がCOOH基に非特異的に結合し得るように、反応性COOH基をブロッキングタンパク質と接触させる。ブロッキングタンパク質としては、例えばウシ血清アルブミンまたは加水分解カゼインを使用することができる。
【0059】
1.2 カップリングに使用されるIgMおよびIgDの濃度の決定
13個の固体粒子集団の各々を、それぞれフローサイトメーター(FACS)を用いて測定する。このために、第1~第6の固体粒子集団の固体粒子および第1のマーカー分子(1回の測定につき約0.5μg)を流体に懸濁し、暗所で10分間インキュベートする。サンプルを遠心分離し、上清を捨てる。2mlのPBSバッファー(リン酸緩衝生理食塩水)で1回洗浄した後、再度遠心分離する。上清を捨てた後、固体粒子を100~200μlのPBSに加える。このようにして得られる懸濁液を、PBSに含まれる固体粒子が個々にレーザー光線の測定領域に到達するように測定領域を制限するフローサイトメーターのノズル開口部を通して導く。第1の標的構造に特異的に結合した第1のマーカー分子がレーザー光線により励起して蛍光放射を発する。これにより光学検出器を用いて蛍光測定値を記録する。その際、各固体粒子集団のそれぞれについて多数の蛍光測定値(強度測定値)を測定する。各固体粒子集団の個々の固体粒子について記録された蛍光測定値から、それぞれ平均値を得る(MFI値または蛍光強度中央値)。
【0060】
第7~第12の固体粒子集団の固体粒子を、同様にフローサイトメーターを用いて測定する。その際、第2の標的構造に特異的に結合した第2のマーカー分子がレーザー光線により励起して蛍光放射を発する。
【0061】
血清に由来するヒトIgM(免疫グロブリンM)は容易に入手可能であるが、固体粒子へのカップリング、特にカップリング後の安定性について、組換えにより作製されたヒト単量体IgMがより適切であることが判明している。血清中では、IgMは主に五量体で存在する。IgM五量体の結合では、大抵の場合、完全な結合が生じないことが明らかになった。五量体のIgM分子の一部は、粒子に共有結合しない。この場合、無制御な分解が、その後の使用時にフローサイトメーターにおける分解能の喪失につながる。したがって、IgMとIgD(免疫グロブリンD)との両方について、組換えにより作り出された単量体IgMおよびIgDが使用される。
【0062】
図1~3に第1、第2および第7の固体粒子集団の蛍光測定値および平均値をグラフで示す。横軸には、それぞれ問題の固体粒子集団の固体粒子についてフローサイトメーターを用いて測定した蛍光放射の強度PEをプロットし、横軸には結合事象の数nをプロットしている。
【0063】
図4に示されるように、それぞれ第1の標的構造について個々の蛍光の平均値を2.1×10個の固体粒子当たりのCD23タンパク質量PMに対してプロットし、カップリング曲線とする。対応するカップリング曲線を第2の標的構造について作成する。
【0064】
当該のカップリング曲線に基づいて、蛍光の所望の強度または信号強度に必要とされる第1のまたは第2の標的構造の量を読み取ることができる。カップリング曲線に基づいて、それぞれの標的構造についての強度の最大平均値Imaxを決定および定義する。その後、75%値(P75)および25%値(P25)を以下:
75=Imax×0.75
25=P75/10
のように定義する。
第1の実施例では、カップリングについて以下の値:
max=21700
75=21700×0.75=16275
25=16275/10=1627
が得られる。
これらの値を参照として設定する。ここで、カップリング曲線から適切なタンパク質量を読み取ることができる。P75については、これは2.1×10個の固体粒子当たり1.3μgとなる。
【0065】
1.3 CLLに特徴的な2つのパラメーターであるIgMおよびIgDに対するキャリブレーターの準備
第1および第2の標的構造(IgMおよびIgD)について、それぞれ複数のキャリブレーター集団を作製することが目的である。
【0066】
第1のキャリブレーター集団は、第1のキャリブレータータイプの多数の一致した第1のキャリブレーターを含む。これらのキャリブレーターはそれぞれ、第1のキャリブレータータイプの個々の第1のキャリブレーターの蛍光信号がフローサイトメトリー分析において25%の相対強度にそれぞれ達するように第1の標的構造としてIgMが表面に固定化された固体粒子を有する。
【0067】
第2のキャリブレーター集団は、第2のキャリブレータータイプの多数の一致した第1のキャリブレーターを含む。これらのキャリブレーターはそれぞれ、第1のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターと同じ固体粒子を有する。第2のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターの固体粒子の表面には、第1のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターの表面と同じ標的構造が固定化される。しかしながら、第2のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターの標的構造の面積占有密度および配置は、第2のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターの蛍光信号がフローサイトメトリー分析において75%の相対強度に達するように選択される。
【0068】
第3のキャリブレーター集団は、第3のキャリブレータータイプの多数の一致した第1のキャリブレーターを含む。これらのキャリブレーターはそれぞれ、第1および第2のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターと同じ固体粒子を有する。第3のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターには、第4のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターの蛍光信号がフローサイトメトリー分析において25%の相対強度に達するように、IgDに対して結合特異的な第2の標的構造が固定化される。
【0069】
第4のキャリブレーター集団は、第4のキャリブレータータイプの多数の一致した第1のキャリブレーターを含む。これらのキャリブレーターはそれぞれ、第1、第2および第3のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターと同じ固体粒子を有する。第4のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターの固体粒子の表面には、第3のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターの表面と同じ標的構造が固定化される。しかしながら、第4のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターの標的構造の面積占有密度および配置は、第4のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターの蛍光信号が、フローサイトメトリー分析において75%の相対強度に達するように選択される。
【0070】
加えて、第5のキャリブレータータイプの多数の一致した第1のキャリブレーターを含む第5のキャリブレーター集団を作製する。これらのキャリブレーターはそれぞれ、第1、第2、第3および第4のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターと同じ固体粒子を有する。第5のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターの固体粒子の表面には、2つの異なる標的構造が固定化される。これらの標的構造の一方は、第1の標的構造(IgMに対して結合特異的)と同一であり、もう一方の標的構造は、第2の標的構造(IgDに対して結合特異的な抗原)と同一である。第5のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターの抗原IgMおよびIgDの面積占有密度および配置は、第5のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターの蛍光信号が、フローサイトメトリー分析においてIgMとIgDとの両方について75%の相対強度にそれぞれ達するように選択される。
【0071】
さらに、多数の一致した第2のキャリブレーターを有する負の集団を作製する。第2のキャリブレーターはそれぞれ、第1の標的構造(IgM)も第2の標的構造(IgD)も固定化されていない固体粒子からなる。負の集団では、固体粒子の表面上にあるカルボキシル基(-COOH)またはNF基がブロッキングタンパク質に非特異的に結合する。第2のキャリブレーターの固体粒子は、第1のキャリブレーターの固体粒子と同一である。
【0072】
固体粒子への抗原のカップリングのために、作製する各集団に必要とされる量の固体粒子を反応容器に移す。固体粒子を800gで5分間遠心分離し、上清を捨てる。その後、固体粒子をカップリングバッファーに加える。カップリングは上記のプロトコルに従って行われ、第1、第2および第5のキャリブレーター集団については適量のIgM、第3、第4および第5のキャリブレーター集団については適量のIgDを使用する。
【0073】
このようにして準備されるキャリブレーター集団を以下に列挙する:
第1のキャリブレーター:
a)IgMキャリブレーター:
PD25-IgM濃度Int25
PD75-IgM濃度Int75
b)IgDキャリブレーター:
PD25-IgD濃度Int25
PD75-IgD濃度Int75
c)IgMおよびIgDキャリブレーター:
md-IgMおよびIgD濃度Int75
第2のキャリブレーター:
-IgMもIgDも有しない
【0074】
個々のキャリブレーターを作製後にマーカーで標識された市販の抗体を使用してFACS(蛍光活性化細胞選別)によって測定する。その後の診断を目的とした用途については、キャリブレーターを組み合わせてキットにする。このため、その後のFACS測定では、診断目的で測定空間を個々の集団によって定義、標準化および正規化する。
【0075】
1.4 FACSによる血液サンプルの分析のためのキャリブレーターの使用
以下のものを含むキットを準備する:
a)セクション1.3に記載の多数の第1のキャリブレーターPD25を含み、第1の標的構造としてIgMが表面に固定化された、第1のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターの第1の集団。
b)セクション1.3に記載の多数の第1のキャリブレーターPD75を含み、第1の標的構造としてIgMが表面に固定化された、第1のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターの第2の集団。
c)セクション1.3に記載の多数の第1のキャリブレーターPD25を含み、第1の標的構造としてIgDが表面に固定化された、第2のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターの第1の集団。
d)セクション1.3に記載の多数の第1のキャリブレーターPD75を含み、第1の標的構造としてIgDが表面に固定化された、第2のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターの第2の集団。
e)セクション1.3に記載の多数の第2のキャリブレーターPを含む、第2のキャリブレーターの集団。
f)第1の標的構造IgMに対して結合特異的な第1の抗原をそれぞれ有する、第1のマーカー分子の集団。第1のマーカー分子はそれぞれ、第1の抗原にカップリングし、適切な第1の励起放射によって励起されて第1の蛍光放射を発する第1の光学マーカーを有する。
g)第2の標的構造IgDに対して結合特異的な第2の抗原をそれぞれ有する、第2のマーカー分子の集団。第2のマーカー分子はそれぞれ、第2の抗原にカップリングし、適切な第2の励起放射によって励起されて第2の蛍光放射を発する第2の光学マーカーを有する。
h)リン酸緩衝生理食塩水(PBSバッファー)。
【0076】
血球のFACSベースの分析の場合、分類すべき細胞(リンパ腫細胞)の細胞数を採血後に分析媒体である血液中で決定し、各FACS分析に必要とされる細胞数を反応容器に入れる(例えば、1回の測定につき1×10個の細胞)。その後、マーカー分子(1回の測定につき約0.5μg)およびキャリブレーターP、PD25、PD75を添加し、暗所で10分間インキュベートする。インキュベーション時間後に、2mlの溶解-固定バッファーで容量を満たし、再び10分間インキュベートする。この工程では、細胞を固定するだけでなく、赤血球の大半を破裂させる。赤血球は測定には重要でなく、場合によっては測定を妨げる恐れがある。
【0077】
サンプルを遠心分離し、上清を捨てる。2mlのPBSバッファー(リン酸緩衝生理食塩水)で1回洗浄した後、再度遠心分離する。上清を捨てた後、細胞を100~200μlのPBSに加える。
【0078】
その後、このようにして得られる分析媒体をFACSフローサイトメーターにおいて分析する。FACSフローサイトメーターでは、分析媒体を、マーカー分子で標識された細胞および異なるキャリブレーターのそれぞれが個々にレーザー光線の測定領域に到達するように測定領域を制限するノズル開口部を通して導く。
【0079】
FACSフローサイトメーターを用いて、測定領域に到達した各キャリブレーターおよび測定領域に到達した各細胞について、1つの第1のフローサイトメトリー測定値および2つの第2のフローサイトメトリー測定値をそれぞれ記録する。第1のフローサイトメトリー測定値は、測定領域内にある当該のキャリブレーターまたは測定領域内にある当該の細胞に結合した少なくとも1つのマーカー分子が、レーザー光線による励起によって発する蛍光放射に依存する。2つの第2のフローサイトメトリー測定値は、レーザー光線が測定領域内にある当該のキャリブレーターまたは測定領域内にある当該の細胞に衝突することで生じる散乱放射の前方散乱測定値および側方散乱測定値を含む。
【0080】
第2のフローサイトメトリー測定値を参照値と比較する。比較の結果に応じて、細胞およびキャリブレーターの様々な散乱特性により、第2のフローサイトメトリー測定値が細胞またはキャリブレーターでのレーザー光線の散乱によって得られたものであるかを確認することができる。異なるキャリブレーターは、それらの第1のフローサイトメトリー測定値の信号レベルに基づいて区別することができる。したがって、比較の結果に応じて、第1のフローサイトメトリー測定値を細胞またはキャリブレーターのいずれかに割り当てる。
【0081】
キャリブレーターである場合に、第1のフローサイトメトリー測定値を異なるキャリブレーター粒子集団に割り当てられる比較区間と比較する。これにより、第1のフローサイトメトリー測定値を特定のキャリブレーター粒子集団のキャリブレーターに割り当てることができる。割当ては、例えば適切なソフトウェアを用いて自動的に行うことができる。
【0082】
個々の標的構造(IgMまたはIgD)ごとに、個々のキャリブレーターP、PD25およびPD75に対し、第1のフローサイトメトリー測定値(蛍光強度)のそれぞれの平均値を決定する。これらが測定に使用される参照測定空間の基礎となる。キャリブレーターPの第1のフローサイトメトリー測定値は、チャネルのバックグラウンドを決定するために用いられる。加えて、キャリブレーターPの第1のフローサイトメトリー測定値により、マーカー分子の抗原とそれらにそれぞれ割り当てられた標的構造(陰性対照)とのカップリングの品質について説明することが可能となる。
【0083】
加えて、細胞について、個々の標的構造ごとに第1のフローサイトメトリー測定値の平均値を決定する。
【0084】
実施例では、IgMに対し、第1のフローサイトメトリー測定値の以下の平均値:
第1のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターPD25:1600
第1のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターPD75:16000
第2のキャリブレーターP:25
第1の標的構造に対する細胞:5600
が求められる。
【0085】
初めに、バックグラウンドノイズを測定値から除去する。バックグラウンドノイズは、使用されるマーカー分子の抗体とキャリブレーターの固体粒子または細胞との非特異的結合によって生じる。このために、第1のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターPの第1のフローサイトメトリー測定値を、第1のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターPD25およびPD75、第2のキャリブレーターP、ならびに細胞の第1のフローサイトメトリー測定値からそれぞれ減算する。これにより、IgMに対し、以下の調整済みの第1のフローサイトメトリー測定値:
第1のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターPD25:1600-25=1575
第1のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターPD75:16000-25=15975
第2のキャリブレーターP:25-25=0
第1の標的構造に対する細胞:5600-25=5575
が得られる。
【0086】
キャリブレーターPD25およびPD75について参照単位を定義する。第1のキャリブレータータイプのキャリブレーターPD75の調整済みの第1のフローサイトメトリー測定値に100参照単位を割り当てる。このため、参照単位は、15975/100=159.75の調整済みの第1のフローサイトメトリー測定値に相当する。この数値は、以下で第1のスケール係数とも称される。第1のキャリブレータータイプのキャリブレーターPD25の調整済みの第1のフローサイトメトリー測定値は、1575/159.75=9.86参照単位に相当する。細胞の第1の標的構造に対する調整済みの第1のフローサイトメトリー測定値および第1のスケール係数から、第1の正規化された測定値:5575/159.75=34.90参照単位が得られる。
【0087】
実施例では、IgDに対し、第1のフローサイトメトリー測定値の以下の平均値:
第2のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターPD25:3103
第2のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターPD75:31030
第2のキャリブレーターP:144
第2の標的構造に対する細胞:4450
が求められる。
【0088】
これにより、IgDに対し、以下の調整済みの第1のフローサイトメトリー測定値:
第2のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターPD25:3103-144=2959
第2のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターPD75:31030-144=30886
第2のキャリブレーターP:144-144=0
第2の標的構造に対する細胞:4450-144=4306
が得られる。
【0089】
この場合もキャリブレーターPD25およびPD75について参照単位を定義する。第2のキャリブレータータイプのキャリブレーターPD75の調整済みの第1のフローサイトメトリー測定値に100参照単位を割り当てる。このため、参照単位は、30886/100=308.86の調整済みの第1のフローサイトメトリー測定値に相当する。この数値は、以下で第2のスケール係数とも称される。第2のキャリブレータータイプのキャリブレーターPD25の調整済みの第1のフローサイトメトリー測定値は、2959/308.86=9.58参照単位に相当する。細胞の第2の標的構造に対する調整済みの第1のフローサイトメトリー測定値および第2のスケール係数から、第2の正規化された測定値:4306/308.86=13.94参照単位が得られる。
【0090】
参照単位の割当てにより、細胞の調整済みの第1のフローサイトメトリー測定値は、使用されるフローサイトメーターの特性および設定から独立し、最初に述べたフローサイトメーターとは異なる設定であるか、またはそれとは別の特性を有するフローサイトメーターによる、対応する調整済みの第1のフローサイトメトリー測定値と比較することができる。
【0091】
その後の工程では、必要に応じて、参照単位に関する正規化された細胞の測定値をカップリング曲線(図4)の値と関連付けることができる。カップリング曲線は、ロジスティック関数(ガウス-ローレンツ分布)に相当する。したがって、「最適」曲線を用いて、細胞上にある当該の標的構造の量に相当する、参照単位に指定された値から絶対値を決定することができる。
【0092】
2.1 CLLに特徴的な3つのパラメーターであるIgM、IgDおよびCD19を用いたキャリブレーターの準備
第2の実施例では、更なるパラメーターの使用のために、個々の集団の数および組合せを第1の実施例と比べて拡張する。IgMおよびIgDについて説明したように、ヒトのおよび組換えにより作製されたBリンパ球抗原CD19についても、初めに有効強度の標準曲線を作成した。これに関し、適切な量をカップリングに使用した。
【0093】
第1のキャリブレーター:
a)IgMキャリブレーター:
PD25-IgM濃度Int25
PD75-IgM濃度Int75
b)IgDキャリブレーター:
PD25-IgD濃度Int25
PD75-IgD濃度Int75
c)CD19キャリブレーター:
PD25-CD19濃度Int25
PD75-CD19濃度Int75
d)IgMおよびIgDキャリブレーター:
md-IgMおよびIgD濃度Int75
e)CD19およびIgMキャリブレーター:
CD19/m-CD19およびIgM濃度Int75
f)CD19およびIgDキャリブレーター:
CD19/d-CD19およびIgD濃度Int75
第2のキャリブレーター:P-IgMもIgDもCD19も有しない
この方法は、任意の数のパラメーターに拡張し、変更することができる。
【0094】
2.2 キャリブレーター粒子を用いた免疫プロファイリングの概略図
分類すべき細胞およびキャリブレーター粒子をフローサイトメーターにおいて同時に測定し、分析する。図5に示されるように、第1の工程では、細胞の測定信号およびキャリブレーター粒子の測定信号の分離をサイズおよび粒度のパラメーターに従って行う。その際、サイズはエネルギー光線の前方散乱測定値(FSC)によって表され、粒度はエネルギー光線の側方散乱測定値(SSC)によって表される。この段階においては、分析すべき細胞およびキャリブレーター粒子の選択(ゲーティング)を行う。図5では、選択された細胞(細胞集団)の測定値を第1の楕円1で囲み、選択されたキャリブレーター(キャリブレーター集団)の測定値を第2の楕円2で囲む。
【0095】
これらの集団はここで、様々なパラメーター(カラーチャネル)について一緒に分析することができる。その際、キャリブレーター粒子が各チャネルについて参照グリッドを形成する。図6~9には、3つのパラメーター(IgM、IgDおよびCD19)の例示的な分析をグラフで示すが、
-I(IgM)はIgMについて測定された蛍光放射の平均強度を意味し、
-I(IgD)はIgDについて測定された蛍光放射の平均強度を意味し、
-I(CD19)は抗原CD19について測定された蛍光放射の平均強度を意味する。第1のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターPD25-IgMの第1の集団の測定値は参照番号3で示し、第1のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターPD75-IgMの第2の集団の測定値は参照番号4で示し、第2のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターPD25-IgDの第1の集団の測定値は参照番号5で示し、第2のキャリブレータータイプの第1のキャリブレーターPD75-IgDの第2の集団の測定値は参照番号6で示し、第2のキャリブレーターPの集団の測定値は参照番号7で示す。キャリブレーターPD25-CD19の測定値は参照番号8で示し、キャリブレーターPD75-CD19の測定値は参照番号9で示し、キャリブレーターPmd-IgMおよびIgDの測定値は参照番号10で示し、キャリブレーターPCD19/m-CD19およびIgMの測定値は参照番号11で示し、キャリブレーターPCD19/d-CD19およびIgDの測定値は参照番号12で示す。
【0096】
キャリブレーター粒子は、複数の目的を果たす:
1.細胞と比較して同一条件下で使用される検出抗体の染色特性についての陽性および陰性対照。
【0097】
2.測定空間の定義および標準化、これにより、
i)特定の装置および/または製造業者からの独立性が達成され、
ii)分析すべき細胞のプロファイルを、分析すべきパラメーター(この例では、IgM、IgD、CD19)に関して作成することができ、
iii)自動分析の基礎が築かれる。
【0098】
このように定義および標準化された多パラメーター測定空間(図9)に関して、細胞の値を正規化し、それらの得られるプロファイルに基づいて群またはクラスターに組み合わせることができる。このクラスター化は、分析すべき細胞の抗原プロファイルの作成の基礎となる。
【0099】
図10にクラスター分析の結果をグラフで示す。各円はクラスター化された部分集団を表し、円の直径は、測定値の総数と比べた当該の部分集団に属する測定値の数の尺度である。この情報は、直径が最大の円によって示される初期集団の平均蛍光強度(MFI)に関連する。この初期集団はCD19、IgMおよびIgDについてMFI値X、YおよびZを有する。別の部分集団は、対応するMFI値の変化を有する。したがって、初期集団の値がX=1000である場合、X+200のクラスターは、当該のパラメーターについて1200のMFIを有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10