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特許7401161慢性リンパ球性白血病のB細胞受容体を標的とする抗体およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】慢性リンパ球性白血病のB細胞受容体を標的とする抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/30 20060101AFI20231212BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20231212BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20231212BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20231212BHJP
【FI】
C07K16/30 ZNA
A61K39/395 N
A61P35/02
C07K16/46
C12N15/13
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023019459
(22)【出願日】2023-02-10
(65)【公開番号】P2023117408
(43)【公開日】2023-08-23
【審査請求日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】22156205
(32)【優先日】2022-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520002209
【氏名又は名称】アー・ファウ・アー ライフサイエンス ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】AVA Lifescience GmbH
【住所又は居所原語表記】Norsinger Strasse 30, 79189 Bad Krozingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マークス デューレン-フォン ミンデン
【審査官】茅根 文子
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-526590(JP,A)
【文献】特表2020-527727(JP,A)
【文献】Proc. Natl. Acad. Sci. USA,2020年,Vol. 117, No. 8,pp. 4320-4327,doi: 10.1073/pnas.1913810117
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
A61P 35/02
A61K 39/395
C12N 15/13
CAplus/REGISTRY(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IGLV3-21R110陽性患者におけるCLLの処置における使用のための抗体であって、
配列番号1の重鎖アミノ酸配列および配列番号2の軽鎖アミノ酸配列、もしくは
配列番号11の重鎖アミノ酸配列および配列番号12の軽鎖アミノ酸配列を有するか、または
配列番号16、配列番号17、配列番号18、および配列番号19のリストから選択される配列を有する可変軽鎖との任意の組合せで配列番号15および配列番号20からなるリストから選択される配列を有する可変重鎖を含む、
抗体。
【請求項2】
配列番号1に対応する重鎖および配列番号2に対応する軽鎖によって特徴付けられる、請求項1記載の抗体。
【請求項3】
配列番号11の重鎖アミノ酸配列および配列番号12の軽鎖アミノ酸配列によって特徴付けられる、請求項1記載の抗体。
【請求項4】
配列番号13に対応する重鎖および配列番号14に対応する軽鎖によって特徴付けられる、請求項1記載の抗体。
【請求項5】
配列番号21に対応する重鎖および配列番号14に対応する軽鎖によって特徴付けられる、請求項1記載の抗体。
【請求項6】
キメラ抗体である、請求項1または3記載の抗体。
【請求項7】
ヒト化抗体である、請求項4または5記載の抗体。
【請求項8】
0.25~25mg/kg(体重)の用量で適用される、請求項1記載の抗体。
【請求項9】
1~20mg/kg(体重)の用量で適用される、請求項8記載の抗体。
【請求項10】
7~15mg/kg(体重)の用量で適用される、請求項8記載の抗体。
【請求項11】
8~12mg/kg(体重)の用量で適用される、請求項8記載の抗体。
【請求項12】
請求項1記載の抗体と、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む、IGLV3-21R110陽性患者におけるCLLの処置における使用のための医薬組成物。
【請求項13】
請求項12記載の医薬組成物を含む、IGLV3-21R110陽性患者におけるCLLの処置における使用のためのキット。
【請求項14】
IGLV3-21 R110 陽性B細胞を枯渇させる活性を有する、請求項1記載の抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慢性リンパ球性白血病(CLL)の処置のための抗体を提供する。これらの抗体は、R110変異免疫グロブリンラムダ可変3-21(IGLV3-21R110)によって特徴付けられるCLL細胞のB細胞受容体(BCR)を標的とする。
【0002】
本発明は、前述の抗体をコードする核酸配列、それを含むベクター、医薬組成物、および使用説明書を含むキットも提供する。
【0003】
発明の背景
抗体療法は、B系列細胞の悪性形質転換由来の白血病およびリンパ腫の処置のための非常に有効な試薬であることが証明されている。リツキシマブなどのモノクローナル抗体の承認以来、CLLを有する患者の奏効率、長期転帰、および生活の質は著しく改善した。
【0004】
CLLは、骨髄、リンパ節、末梢血および脾臓に進行性に蓄積するBリンパ球のCD5陽性亜群のクローン増殖の結果生じる不均一な、Bリンパ球由来の悪性腫瘍である(Rozman C, Montserrat E. Chronic lymphocytic leukemia. N Engl J Med. 1995; 333: 1052-1057)。この疾患は、西洋諸国において最も一般的なタイプの白血病であり、高齢患者に典型的に発生し、女性と比較して男性のCLLを発症するリスクは2倍に増加する(Kipps TJ, Stevenson FK, Wu CJ, Croce CM, Packham G, Wierda WG, et al. Chronic lymphocytic leukemia. Nat Rev Dis Primers (2017) 3:1-12)。
【0005】
臨床的および生物学的証拠は、BurgerおよびChiorazzi(Burger JA, Chiorazzi N. B cell receptor signaling in chronic lymphocytic leukemia. Trends Immunol 2013; 34: 592-601)により総説されたようにBCRがCLL細胞のクローン選択および生存における主要因のうちの1つであることを示した。
【0006】
BCRは、非共有結合的に会合している抗原結合性サブユニットおよびシグナル伝達サブユニットから構成される多タンパク質構造体である。抗原結合性サブユニットは、各軽鎖中に1つの定常ドメインおよび各重鎖中に3つの定常ドメインを有する2本の同一の重鎖および2本の同一の軽鎖を含む膜免疫グロブリンからなる。各重鎖は軽鎖と会合して、抗原結合部位を形成する。各軽鎖および各重鎖は、抗原結合部位を形成する可変ドメインを含む。Igh、IglおよびIgk座にコードされる免疫グロブリン遺伝子は、1個または複数の定常エクソンの上流に多数のV(可変の)、D(多様性)およびJ(連結)遺伝子セグメントを含む。発生中のB細胞において、免疫グロブリン遺伝子再構成は、V、DおよびJ遺伝子セグメントをランダムに会合させて、Igh座に完全なVエクソンを、IgkまたはIgl座のいずれかにVおよびJ遺伝子セグメントを作成する。遺伝子セグメントのコンビナトリアル連結、結合多様性ならびにランダムな重鎖および軽鎖ペアリングを通じて、それぞれ個々のB細胞前駆体は、その独自のほぼ唯一の抗原結合性サブユニットを生成し、その抗原結合親和性は、体細胞超変異(SHM)によりさらに洗練され得る。
【0007】
BCRのシグナル伝達部分は、IgαおよびIgβ(CD79a/CD79b)タンパク質のジスルフィド結合ヘテロダイマーから構成される。IgαおよびIgβはそれぞれ、それらの細胞質尾部内に抗原結合時のBCR凝集後にシグナル伝達を開始する単一の免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含む(Flaswinkel, H., Reth, M., 1994. Dual role of the tyrosine activation motif of the Ig-alpha protein during signal transduction via the B cell antigen receptor. EMBO J. 13, 83-89)。
【0008】
抗原結合は、SrcファミリーキナーゼLynを急速に活性化して、Igα/Igβのリン酸化をもたらす。これは、BCR、様々なチロシンキナーゼ、アダプタータンパク質、およびシグナル伝達酵素から構成される膜の細胞質側で大きいシグナル伝達複合体の形成を開始する。近位のBCRシグナル伝達はタンパク質チロシンキナーゼSyk(脾臓チロシンキナーゼ)によって媒介され、これは、IgαおよびIgβのリン酸化ITAMにリクルートされ、アダプタータンパク質SLP65およびその下流のシグナル伝達酵素ブルトンチロシンキナーゼ(BTK)およびホスホリパーゼCγ2(PLCγ2)とのSykの会合を介してシグナルの伝播につながる。シグナル伝達複合体を生じるシグナルは、カルシウム動員、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)、核因子-κB(NF-κB)、活性化T細胞の核因子(NF-AT)、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)、およびラット肉腫(RAS)シグナル伝達経路を含む下流経路を活性化する(Burger JA and Chiorazzi N, 2013も参照)。
【0009】
B細胞受容体を通じた成熟B細胞の慢性活性化は、CLLの成立および進展において鍵となる過程であることが示されている(Stevenson FK, Krysov S, Davies AJ, Steele AJ, Packham G. B-cell receptor signaling in chronic lymphocytic leukemia Blood. 2011; 118: 4313-4320)。これは、マウスB1サブセットの発症が強く、かつ長いBCR刺激に依存することを示した、恒常的活性型BCRサロゲートとしてEBVタンパク質LMP2Aを使用した研究とも一致した(Casola S, Otipoby KI, Alimzhanov M, et al. B cell receptor signal strength determines B cell fate. Nat Immunol 2004; 5: 317-27)。さらに、細胞上の2つの隣接するBCRの相互作用に起因する原発性CLL B細胞の抗原非依存的な自律性シグナル伝達は、CLL発症の決定的なドライバーとして識別されており、結果としてBCR近位のシグナル伝達分子のチロシンリン酸化の増加をもたらし、周期シグナル伝達およびCa2+動員の増加につながる(Duehren-von Minden M et al. Chronic lymphocytic leukemia is driven by antigen-independent cell-autonomous signalling. Nature. 2012; 489: 309-313)。
【0010】
プロテインキナーゼSykが持続的なBCRシグナル伝達を通じて恒常的にリン酸化されることが十分に記述されており、幾つかの研究は、PKC、ホスホイノシチド3-キナーゼおよびマイトジェン活性化プロテインキナーゼp38など、正常B細胞におけるBCR結合の下流のシグナル伝達経路の他の鍵となる分子もB-CLL細胞において恒常的に活性化され、結果として幾つかの生存促進分子および下流経路の活性または発現の制御解除をもたらすことを明らかにした(Gobessi S, Laurenti L, Longo PG, Carsetti L, Berno V, Sica S et al. Inhibition of constitutive and BCR-induced Syk activation downregulates Mcl-1 and induces apoptosis in chronic lymphocytic leukemia B cells. Leukemia 2009; 23: 686-697. Ringshausen I, Schneller F, Bogner C, Hipp S, Duyster J, Peschel C et al. Constitutively activated phosphatidylinositol-3 kinase (PI-3K) is involved in the defect of apoptosis in B-CLL: association with protein kinase C delta. Blood 2002; 100: 3741-3748. Plate JM. PI3-kinase regulates survival of chronic lymphocytic leukemia B-cells by preventing caspase 8 activation. Leuk Lymphoma 2004; 45: 1519-1529. Sainz-Perez A, Gary-Gouy H, Portier A, Davi F, Merle-Beral H, Galanaud P et al. High Mda-7 expression promotes malignant cell survival and p38 MAP kinase activation in chronic lymphocytic leukemia. Leukemia 2006; 20: 498-504.)。
【0011】
NF-kBまたはPI3K/AKTなどの恒常的に活性化されたシグナル伝達経路は、鍵となる抗アポトーシスタンパク質、特にB細胞リンパ腫2(Bcl-2)およびアポトーシス阻害タンパク質(IAP)ファミリーの幾つかのメンバーの転写および過剰発現につながることが示されている(Loeder S et al. A novel paradigm to trigger apoptosis in chronic lymphocytic leukemia. Cancer Res. 2009; 69: 8977-8986)。Bcl-2自体に加えて、Mcl-1がCLL細胞におけるアポトーシスの障害の決定的なプレーヤであり、BCRシグナルは報告によると、PI3K/AKT経路を通じてMcl-1発現を上方制御することが十分に確認されている(Petlickovski A, Laurenti L, Li X, Marietti S, Chiusolo P, Sica S, Leone G, Efremov DG. Sustained signaling through the B-cell receptor induces Mcl-1 and promotes survival of chronic lymphocytic leukemia B cells. Blood. 2005; 105: 4820-4827)。
【0012】
BCRの異なる態様は、主なCLL疾患サブタイプを識別することが認識されている。例えば、BCR免疫グロブリン重鎖(IGHV)の可変領域内の体細胞超変異のレベルは、数十年間予後マーカーとして使用されてきた。変異IGHV遺伝子を有する、すなわち、その最も近い生殖系列との98%未満のIGHV遺伝子同一性を示すCLL患者(M-CLL)は一般に、98%以上の生殖系列同一性を有する未変異IGHV遺伝子を有するCLL患者(U-CLL)よりも緩徐進行性の疾患経過を有する。しかし、変異IGHV遺伝子状態がある種の疾患経過と相関し得ないこの規則の例外が観察されている。例えば、大部分は変異BCRを発現するがIGHV3-21遺伝子を使用するケースは、最悪の臨床転帰のうちの1つを有していた。異なるが、IGHVにより決定されるアプローチは、高度に均質な生物学的特徴、臨床症状および転帰をそれぞれ有する予後的に重要な異なるサブセットにCLL症例のおよそ30%がカテゴリー化されることになった。このカテゴリー化は、変異および未変異のケースの中に、相同性が高い重鎖相補性決定領域3(H-CDR3)配列を保有するステレオタイプのBCRが存在するという観察に基づいている。このアプローチに続いて、変異IGHV3-21によって特徴付けられるCLL症例をいわゆるサブセット#2に割り当てることができた(Stamatopoulos K, Belessi C, Moreno C, et al. Over 20% of patients with chronic lymphocytic leukemia carry stereotyped receptors: pathogenic implications and clinical correlations. Blood. 2007; 109(1): 259-270; Agathangelidis A., et al. Stereotyped B-cell receptors in one-third of chronic lymphocytic leukemia: A molecular classification with implications for targeted therapies. Blood. 2012; 119: 4467-4475)。
【0013】
注目すべきことに、サブセット#2によるIGHV3-21の使用は、軽鎖中のアミノ酸位置110におけるアルギニンでのグリシンの後天的な置換(IGLV3-21R110)と共に免疫グロブリンラムダ可変3-21鎖の発現と関連して常に観察されてきた。IGLV3-21R110のアルギニン110(R110)の原因は、免疫グロブリンラムダJおよび定常遺伝子の間のスプライス部位での単一のG>C置換である。あるBCR内の生殖系列にコードされたリシン16(K16)、および隣接するBCRのチロシン-アスパラギン酸-セリン-アスパラギン酸(YDSD)モチーフ内のアスパラギン酸(D)50および52と併せたR110の存在は、BCR-BCR相互作用を可能にし、したがって細胞自律性シグナル伝達をトリガーすることが確認されている(図6および図7;Minici, C. et al., Distinct homotypic B-cell receptor interactions shape the outcome of chronic lymphocytic leukemia, Nature Comm. 2017; 8:15746)。
【0014】
BCR軽鎖に焦点を合わせたCLL患者の大規模コホートのエピジェネティック、ゲノム、およびトランスクリプトームの特徴付けの過程で、およそ60%のIGLV3-21R110のケースが非ステレオタイプのBCRを保有することが明らかになった。これは、サブセット#2が、IGLV3-21R110によって特徴付けられるCLLの単なるマイナーなサブグループであることを強調する(Stamatopoulos B, Smith T, Crompot E, et al. The Light Chain IgLV3-21 Defines a New Poor Prognostic Subgroup in Chronic Lymphocytic Leukemia: Results of a Multicenter Study. Clin Cancer Res. 2018; 24(20): 5048-5057. Nadeu F, Royo R, Clot G, et al. IGLV3-21R110 identifies an aggressive biological subtype of chronic lymphocytic leukemia with intermediate epigenetics. Blood. 2021; 137(21): 2935-2946)。
【0015】
ヒトにおいて同定されたIGLV3-21遺伝子の4つの対立遺伝子のうち、対立遺伝子IGLV3-21*01(IMGT/LIGM-DBアクセッション番号X71966)およびIGLV3-21*04(IMGT/LIGM-DBアクセッション番号AC279208)は、必須のK16およびD50およびD52をコードし、最後の2つは、研究された大部分のケースにおいて、IGLV3-21R110の49位にチロシンおよび51位にセリンを含むモチーフに組み込まれた(例示的なIGLV3-21R110については図7参照)。しかし、フェニルアラニンでのチロシンの置換えまたはトレオニンでのセリンの置換えなど、このモチーフ内の機能的に同等の変形もIGLV3-21R110 CLL患者において観察されている(Nadeu et al. 2021も参照;変異体については図7も参照)。興味深いことに、対立遺伝子IGLV3-21*01およびIGLV3-21*04は、健常ドナーのB細胞において著しく過小評価されるのに対し、異なる群により研究された患者における全てのIGLV3-21遺伝子を対立遺伝子IGLV3-21*01または対立遺伝子IGLV3-21*04に割り当てることができた。これは、これらの対立遺伝子がIGLV3-21R110関連CLLの発症に機構的に必要とされ得ることを示唆する。
【0016】
名称サブセット#2Lも提案されているIGLV3-21R110 CLLサブグループは、非常に侵攻性の疾患経過に関連する。実際、IGLV3-21R110 CLL症例の不良転帰は、IGHV変異状態または重鎖の性質とは無関係である。IGHV3-21R110は、IGHV1-18、IGHV3-53またはIGHV3-64などの異なる重鎖と関連するだけでなく、サブセット#2(上記参照)などの変異CLLに見出されるため(Nadeu et al. 2021、上記)、IGLV3-21R110は、経験的に定義されたエピジェネティックなステレオタイプに基づく従来のサブセット分類にもIGHV変異状態にも限定されないCLLの群を定義する。さらに、CLLドライバー変異としてのR110の必須の役割は部位特異的変異誘発実験により確認されており、これは、IGLV3-21R110のIGLV3-21G110への復帰が結果としてBCRの自律性シグナル伝達能力の抑止につながったことを明らかにした(Stamatopoulos B, Smith T, Crompot E, et al. 2018も参照)。
【0017】
最初の処置までの時間(TTFT)および全生存(OS)をIGLV3-21R110保有BCRの存在と関係付ける研究は、非IGLV3-21R110 CLLを有する患者と比較してIGLV3-21R110を発現する患者について著しくより短い値を示した。これは、IGLV3-21R110陽性患者のための治療法の早急な必要性を強調する(Nadeu F et al. 2021も参照)。
【0018】
これらの患者におけるCLLは、単一の薬剤としての、および他の薬物と併用したイデラリシプおよびイブルチニブなどの化学療法剤で通常処置される。イデラリシプは、PI3Kの造血細胞限定δアイソフォームの阻害剤であり、これは、原発性CLL細胞においてアポトーシスを促進する(Hoellenriegel J, Meadows SA, Sivina M, et al. The phosphoinositide 3’-kinase delta inhibitor, CAL-101, inhibits B-cell receptor signaling and chemokine networks in chronic lymphocytic leukemia. Blood. 2011; 118: 3603-3612)。イブルチニブは、B細胞リンパ腫およびCLL細胞においてアポトーシスを誘導するBTKの阻害剤である(Hermann SE, Gordon AL, Hertlein E, et al. Bruton tyrosine kinase represents a promising therapeutic target for treatment of chronic lymphocytic leukemia and is effectively targeted by PCI-32765. Blood. 2011; 117: 6287-6296)。さらに最近の治療法は、例えば、CD52抗体として作用するアレムツズマブなどのモノクローナル抗体、または細胞表面B系列限定抗原CD-20を標的とするオビヌツズマブ、リツキシマブ、およびオファツムマブをますます使用している。これらの抗体を使用することにより、緩解時間をおよそ10カ月延長することができる。しかし、処置のための最先端の治療法は、薬物標的が正常B細胞および悪性B細胞の両方の生存に決定的であるため、患者にとって通常非常にストレスが多く、低レベルのある種の白血球(好中球減少)を含む低血球数が一般的な副作用である。さらに、化学療法剤に関して、高い感染リスク、潜伏感染および免疫系へのオフターゲット効果が更なる副作用として報告されている。一般に、腫瘍細胞だけでなく、免疫系の健康な細胞も損傷するので、治療法の望まれない副作用および薬物のしばしば不十分な効果は高い死亡率につながるとまとめることができる。
【0019】
そのため、前述の副作用を伴わないIGLV3-21R110陽性CLL患者のための1つの特定の処置選択肢が依然としてまだ見出されるべきである。
【0020】
BCRを持つIGLV3-21R110を標的とする潜在的な抗体に関する現在の調査は、CLLのこの特定のサブタイプの診断に主に焦点を合わせている。例として、Maityらは、CLLの予後マーカーとして使用される抗IGLV3-21R110抗体による免疫表現型研究について記載している。前記診断用抗IGLV3-21R110抗体はIgG2aおよびIgκ抗体であると開示されている(Maity PC, Bilal M, Koning MT, et al. IGLV3-21*01 is an inherited risk factor for CLL through the acquisition of a single-point mutation enabling autonomous BCR signalling. PNAS. 2020; 117(8): 4320-4327)。
【0021】
処置選択肢の開発に向かって前進する第一歩は国際公開第2019/008129号に開示されており、これは、血液サンプルからCLL細胞を除去するために使用することができる抗体を開示している。国際公開第2019/008129号の抗体は、マウス宿主に由来するハイブリドーマ細胞株におけるIgG抗体として表されている。国際公開第2019/008129号は、このような抗体のみのそれぞれの可変重鎖および軽鎖ドメインを開示している。
【0022】
国際公開第2019/008129号は、そこに開示された抗体が健常組織および患部組織の間で選択的であることも、それらがin vivoで適用されたことも示していない。したがって、そのいかなる治療効果も示されていない。
【0023】
前述から、IGLV3-21R110陽性患者におけるCLLの処置の改善を可能にするはずである特異的、選択的かつ他の組織に対して非交差反応性である処置選択肢、特に抗体が、依然として未知であるものの、必要とされている。
【0024】
発明の概要
本発明は上記の問題を、第1の態様において、抗体であって、配列番号1の重鎖アミノ酸配列および配列番号2の軽鎖アミノ酸配列、もしくは配列番号11の重鎖アミノ酸配列および配列番号12の軽鎖アミノ酸配列を有するか、または配列番号16、配列番号17、配列番号18、および配列番号19のリストから選択される配列を有する可変軽鎖との任意の組合せで配列番号15および配列番号20からなるリストから選択される配列を有する可変重鎖を含む、抗体を提供することにより解決する。
【0025】
このような抗体は、IGLV3-21R110を持つBCRに特異的、選択的かつCLL患者の他の組織に対して非交差反応性に結合し、それによって悪性B細胞を死滅させる。BCRのIGLV3-21R110部分の存在を認識する一方、この新しい抗体は、「サブセット#2 CLL」を処置することもでき、これは、IGHV3-21/IGLV3-21R110組合せを含むBCRまたはIGLV3-21R110を含む任意の他のCLLによって特徴付けられる。
【0026】
これらの抗体の提供は、結果として本発明の第2の態様につながり、これは、IGLV3-21R110陽性患者におけるCLLの処置における使用のための前記抗体の提供である。同じく本発明のこの第2の態様は、治療活性量の前記抗体を投与することによる、IGLV3-21R110陽性患者におけるCLLの処置の方法に関する。
【0027】
これは、IGLV3-21R110陽性患者におけるCLLのための第1の処置選択肢であり、これは、最新技術によって提供される処置に関連する副作用なく悪性B細胞の選択的死滅を可能にする。それよりさらに、CLLのマーカーとして識別されたIGLV3-21R110を持つBCRの存在によってのみ特徴付けられるB細胞の結合および死滅は、このような処置を、ある種のIGHVにより定義されるCLLのあらかじめ識別されたサブセットのいずれかにこのようなCLLが属する要求とは無関係にする。
【0028】
理論に拘束されることなく、本発明の抗体での処置は、共刺激シグナルの非存在下でBCRのIGLV3-21R110を介してB細胞の過剰活性化を誘導すると考えられる。これは最終的に、結果として抗体により結合されたCLL細胞におけるアポトーシス誘導につながる。したがって、本発明の抗体での処置は、悪性B細胞に対して高度に選択的であり、とりわけIGLV3-21R110陽性B細胞に対してさらにいっそう選択的である。
【0029】
第3の態様において本発明は、本発明の抗体をコードするDNA分子(核酸)にも関する。したがって、本発明は、本発明の核酸配列を含むベクターおよび宿主細胞にも関する。
【0030】
定義
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解される意味を有する。しかし、以下の参考文献は、本発明が属する技術分野の当業者に本発明において使用される用語のうちの多くの一般的な定義を提供することができ、このような定義が当技術分野において一般に理解される意味と一致している限り参照および使用することができる。このような参考文献には、これらに限定されないが、Singleton et ah, Dictionary of Microbiology and Molecular Biology (2d ed. 1994); The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker ed., 1988);Hale & Marham, The Harper Collins Dictionary of Biology (1991);およびLackie et al., The Dictionary of Cell & Molecular Biology (3d ed. 1999);およびCellular and Molecular Immunology, Eds. Abbas, Lichtman and Pober, 2nd Edition, W.B. Saunders Companyが含まれる。当技術分野において一般に理解される意味を有する、本明細書で使用される用語の定義を提供する当業者に利用可能な任意の追加の技術資源を参照することができる。本発明のために、以下の用語がさらに定義される。
【0031】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「and」、および「the」は、文脈により特に明確に示されていない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「遺伝子」への言及は、1種または複数種の遺伝子への言及であり、当業者に既知のその均等物などを含む。
【0032】
「自律的に活性な」BCRは、特別なタイプの恒久的に活性なBCRである。従来の活性化は外部抗原に基づいているが、自律的に活性なBCRは、同じ細胞の表面の膜構造とのその相互作用の結果起こる。CLLの臨床像については、同じ細胞の表面で互いに隣接するBCR間の自律的な活性化をトリガーする相互作用を示すことができた(例えば、M. Duehren-von Minden et. al; Nature 2012)。
【0033】
IGLV3-21R110は、BCRの軽鎖可変領域であり、これは、BCR-BCR相互作用が自律的に活性なBCRを誘導することを可能にする。構造的にこのようなIGLV3-21R110は、配列番号53により表される配列に対して80%超の配列同一性によって特徴付けられ、どのような場合でも前記配列の110位にアルギニンが存在し、グリシンが存在しない。
【0034】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子、好ましくはジスルフィド結合により典型的に相互接続されている4本のポリペプチド鎖、2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖からなる免疫グロブリン分子を指すことが意図される。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略記)および重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、例えば、3つのドメインCH1、CH2およびCH3を含むことができる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略記)および軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL)からなる。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存されている領域が散在した、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分することができる。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端まで、例えば、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配列された3つのCDRおよび最大4つのFRから典型的に構成される。
【0035】
本明細書で使用される場合、「相補性決定領域(CDR;例えば、CDR1、CDR2、およびCDR3)という用語は、その存在が抗原結合に必要である抗体可変ドメインのアミノ酸残基を指す。各可変ドメインは典型的には、CDR1、CDR2およびCDR3として識別される3つのCDR領域を有する。所与のCDRのアミノ酸配列境界は、Kabatら(“Sequences of Proteins of Immunological Interest,” 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991; “Kabat” numbering scheme)、ChothiaおよびLesk(J Mol Biol 196: 901-917 (1987))、およびLefrancら(“IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains,” Dev. Comp. Immunol., 27:55-77, 2003; “IMGT” numbering scheme)により記載されたものを含む幾つかの周知のスキームのいずれかを使用して容易に決定することができる。各相補性決定領域は、IMGTにより定義されるようなアミノ酸残基を含む。場合によっては、相補性決定領域は、Kabatによって定義されたCDR領域からのアミノ酸および/またはChothiaの付番方式による超可変ループも含むことができる。
【0036】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、インタクトな抗体を異なる「クラス」に割り当てることができる。インタクトな抗体の5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのうちの幾つかは、「サブクラス」(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgA2にさらに分けられ得る。異なるクラスの抗体に対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ[アルファ]、[デルタ]、[イプシロン]、[ガンマ]、および[ミュー]と呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元配置は周知である。
【0037】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、抗原結合性断片およびその変異体も含むと理解される。したがって、本発明の文脈における「抗体」へのどのような言及もまた、前記抗体を形成するために組み合わせられる抗体の完全な重鎖または完全な軽鎖を指定することによるなど、特に明記されなければ、抗原結合性断片および/またはその変異体への言及である。
【0038】
「抗原結合性断片」は本明細書に、抗原結合性領域を保持する抗体/免疫グロブリンの断片(例えば、IgGの可変領域)と定義される。本発明の抗原結合性断片は、Fab、Fab’、F(ab’)、およびFv断片;二重特異性抗体;単一ドメイン抗体(DAbs)、直鎖状抗体;単鎖抗体分子(scFv);ならびに抗体断片から形成される二重および三重特異性などの多重特異性抗体を含む(C. A. K Borrebaeck, editor (1995) Antibody Engineering (Breakthroughs in Molecular Biology), Oxford University Press; R. Kontermann & S. Duebel, editors (2001) Antibody Engineering (Springer Laboratory Manual), Springer Verlag)。「多重特異性」または「多機能性」抗体以外の抗体は、同一のその結合部位のそれぞれを有すると理解される。F(ab’)またはFabは、CH1ドメインおよびCドメインの間に生じる分子間ジスルフィド相互作用を最小化または完全に除去するように操作されてよい。
【0039】
抗体の「抗原結合性領域」は典型的には、抗体の1つまたは複数の超可変領域、例えば、CDR1、CDR2、および/またはCDR3領域に見出される;しかし、可変「フレームワーク」領域も、CDRに足場を提供することによるなど、抗原結合において重要な役割を果たすことができる。
【0040】
本発明において企図される抗体または抗原結合性断片の「変異体」は、IGLV3-21R110に対する抗体または抗原結合性断片の結合活性が維持される分子である。
【0041】
「ヒト化」抗体は、本明細書において、(i)非ヒト源(例えば、異種免疫系を持つトランスジェニックマウス)由来であり、この抗体はヒト生殖系列配列に基づいているか;(ii)ここで非ヒト抗体のフレームワーク領域のアミノ酸が遺伝子操作によりヒトアミノ酸配列に部分的に交換されているか、または(iii)可変ドメインのCDRが非ヒト起源からであり、一方、可変ドメインの1つまたは複数のフレームワークがヒト起源のものであり、定常ドメイン(存在する場合)がヒト起源のものであるCDR移植されたものと定義される。
【0042】
「キメラ」抗体は、本明細書において、可変ドメインが非ヒト起源由来であり、幾つかまたは全ての定常ドメインがヒト起源由来であるものと定義される。
【0043】
本明細書で使用される「モノクローナル」抗体という用語は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、少量存在し得る可能性のある変異、例えば、自然発生変異を除いて、集団を構成する個々の抗体が同一である。したがって、「モノクローナル」という用語は、抗体の特徴を別個の抗体の混合物ではないと示す。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、モノクローナル抗体製剤の各モノクローナル抗体は、抗原の単一の決定基に対する。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体製剤は、典型的に他の免疫グロブリンによって汚染されていないという点で有利である。「モノクローナル」という用語は、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。モノクローナル抗体という用語は具体的には、マウス抗体、キメラ抗体およびヒト化抗体を含む。
【0044】
本明細書で使用される場合、抗体「特異的に~に結合する」は、対象抗原、例えば、腫瘍関連ポリペプチド抗原標的(ここでは、IGLV3-21R110)「~に対して(to/for)特異的である」か、またはこれ「~を特異的に認識し」、このような抗原と1種または複数種の参照抗原を区別することができる。その最も一般的な形態において、「特異的結合」、「特異的に~に結合する」、「~に対して(to/for)特異的な」または「~を特異的に認識する」は、例えば、以下の方法のうちの1つに従って決定される場合に、対象抗原と関連しない抗原を区別する抗体の能力に言及している。このような方法には、これらに限定されないが、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット、ELISA試験、RIA試験、ECL試験、IRMA試験、免疫組織学的試験およびペプチドスキャンが含まれる。
【0045】
「結合親和性」または「親和性」は、分子の単一の結合部位とその結合パートナーとの間の非共有結合性相互作用の総和の強度を指す。特に示されていない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」または「親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体および抗原)間の1:1相互作用を反映する固有結合親和性を指す。解離速度定数Kは、平衡会合定数(k)および解離速度定数(k)の比に基づいて通常計算される。解離定数「K」は、分子(抗体など)とその結合パートナー(抗原など)との間の親和性、すなわち、どのくらいしっかりとリガンドが特定のタンパク質に結合するかを記述するために一般に使用される。リガンド-タンパク質親和性は、2つの分子間の非共有結合性分子間相互作用の影響を受ける。「高親和性」という用語は、抗体が10-9M以下の親和性(KD)(一価親和性)でIGLV3-21R110陽性CLL BCRに結合することを意味する。抗体は、他の関連しない分子と比較して、標的抗原に対する大幅により高い親和性を有してよい。親和性は、当技術分野において既知の一般的な方法により、例えば、実施例5に従って測定することができる。
【0046】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に特異的結合することができる任意のタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は、アミノ酸もしくは糖側鎖、またはそれらの組合せなどの分子の化学的に活性な表面グルーピングから通常なり、特定の三次元構造特徴、ならびに特定の電荷特徴を通常有する。
【0047】
「単離」抗体は、同定され、それを発現した細胞の成分から分離されたものである。細胞の汚染物質成分は、診断または抗体の治療的使用を妨げるであろう物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性溶質を含んでよい。好ましい実施形態において、抗体は、(1)例えば、ローリー法により、IN-Vis分光法により、またはSDS-キャピラリーゲル電気泳動(例えばCaliper LabChip GXII、GX 90またはBiorad Bioanalyzer装置による)により決定される場合に、95重量%超の抗体まで、更なる好ましい実施形態において99重量%超まで、(2)少なくとも15残基のN末端または内部アミノ酸配列を得るのに十分な程度まで、または(3)クーマシーブルーまたは、好ましくは、銀染色を使用する還元または非還元条件下のSDS-PAGEによる均一性まで精製される。抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しなくなるため、単離された自然発生抗体は、組換え細胞内にin situで抗体を含む。しかし、通常は、単離抗体は、少なくとも1つの精製ステップにより調製されることになる。
【0048】
「がん」という用語は、細胞が無制御に分裂し、未制御の細胞成長をもたらす生理的状態または疾患を指す。「腫瘍」は、1種または複数種のがん細胞を含む。
【0049】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」または「ADCC」は、ある種の細胞傷害性細胞(例えば、NK細胞、好中球、およびマクロファージ)上に存在するFcガンマ受容体(FcγR)に結合された分泌型Igにより、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が、抗原を持つ標的細胞に特異的に結合し、続いて標的細胞を例えば細胞毒で死滅させることができる細胞傷害の一形態を指す。
【0050】
「補体依存性細胞傷害」または「CDC」は、補体の存在下での標的細胞の溶解を指す。古典的な補体経路の活性化は、(適切なサブクラスの)抗体への補体系の第1の成分(C1q)の結合により開始され、これらは、それらの同種抗原に結合される。補体活性化を評価するために、CDCアッセイ、例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202: 163 (1996)に記載されているようなCDCアッセイが実施されてよい。改変されたFc領域アミノ酸配列を有するポリペプチド変異体(変異Fc領域を有するポリペプチド)およびC1q結合の増加または減少は、例えば、米国特許第6194551号明細書および国際公開第1999/51642号に記載されている。
【0051】
参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に対する「パーセント(%)配列同一性」はそれぞれ、必要であれば、最大パーセント配列同一性を達成するための、配列アライメントおよびギャップ導入後の、参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列それぞれにおける、核酸またはアミノ酸残基それぞれと同一である候補配列中の核酸またはアミノ酸残基それぞれの百分率と定義される。保存的置換は、配列同一性の一部と見なされない。好ましいのはアンギャップドアライメントである。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアライメントは、当技術分野の技能の範囲内の様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、LALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して、達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するのに必要とされる任意のアルゴリズムを含む、配列のアライメントに適切なパラメータを決定することができる。
【0052】
発明の詳細な説明
本発明の第1の態様-抗体
本発明の抗体は、IGLV3-21R110を持つBCRに対する特異的親和性を有し、かつ治療利益を対象にもたらすことができる新規なマウス抗体の発見に基づく。治療活性を可能にする抗体およびそれらの有益な特性を以下でより詳しく説明する。
【0053】
マウス抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体でよい本発明の抗体は多くの文脈で使用することができ、これらは、本明細書においてさらに詳しく説明する。
【0054】
本発明の第1の態様によれば、抗体であって、配列番号1の重鎖アミノ酸配列および配列番号2の軽鎖アミノ酸配列、もしくは配列番号11の重鎖アミノ酸配列および配列番号12の軽鎖アミノ酸配列を有するか、または配列番号16、配列番号17、配列番号18、および配列番号19のリストから選択される配列を有する可変軽鎖との任意の組合せで配列番号15および配列番号20からなるリストから選択される配列を有する可変重鎖を含む、抗体が提供される。
【0055】
これらの抗体は、マウス抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体であり得、それらは、高親和性でIGLV3-21R110-BCRに特異的に結合する。
【0056】
上記で概説したように、これらの抗体はIGLV3-21R110-BCRを強く活性化すると考えられる。より具体的には、これらの抗体は、短期間でSyk、BTK、およびPI3Kの強いリン酸化につながり、これはアポトーシスを誘導し、したがって最終的にin vivoで腫瘍成長を阻害する。
【0057】
本発明の第1の態様の好ましい実施形態は、実施例の表1および表2においてより詳しくさらに特徴付けられる。
【0058】
したがって、抗体「mAb01-01」は、本発明の第1の態様の第1の好ましい実施形態であり、これは、配列番号1に対応する重鎖および配列番号2に対応する軽鎖によって特徴付けられる。
【0059】
したがって、抗体「HC0-LC0」は、本発明の第1の態様の第2の好ましい実施形態であり、これは、配列番号11に対応する重鎖および配列番号12に対応する軽鎖によって特徴付けられる。
【0060】
したがって、抗体「HC6-LC6」は、本発明の第1の態様の第3の好ましい実施形態であり、これは、配列番号15に対応する可変重鎖領域および配列番号16に対応する可変軽鎖領域によって特徴付けられる。
【0061】
本発明の第1の態様の前記第3の好ましい実施形態のうち、配列番号13に対応する重鎖および配列番号14に対応する軽鎖によって特徴付けられる抗体がより好ましい。
【0062】
したがって、抗体「HC6-LC7」は、本発明の第1の態様の第4の好ましい実施形態であり、これは、配列番号15に対応する可変重鎖領域および配列番号17に対応する可変軽鎖領域によって特徴付けられる。
【0063】
本発明の第1の態様の前記第4の好ましい実施形態のうち、配列番号13に対応する重鎖および配列番号22に対応する軽鎖によって特徴付けられる抗体がより好ましい。
【0064】
したがって、抗体「HC6-LC8」は、本発明の第1の態様の第5の好ましい実施形態であり、これは、配列番号15に対応する可変重鎖領域および配列番号18に対応する可変軽鎖領域によって特徴付けられる。
【0065】
本発明の第1の態様の前記第5の好ましい実施形態のうち、配列番号13に対応する重鎖および配列番号23に対応する軽鎖によって特徴付けられる抗体がより好ましい。
【0066】
したがって、抗体「HC6-LC9」は、本発明の第1の態様の第6の好ましい実施形態であり、これは、配列番号15に対応する可変重鎖領域および配列番号19に対応する可変軽鎖領域によって特徴付けられる。
【0067】
本発明の第1の態様の前記第6の好ましい実施形態のうち、配列番号13に対応する重鎖および配列番号24に対応する軽鎖によって特徴付けられる抗体がより好ましい。
【0068】
したがって、抗体「HC7-LC6」は、本発明の第1の態様の第7の好ましい実施形態であり、これは、配列番号20に対応する可変重鎖領域および配列番号16に対応する可変軽鎖領域によって特徴付けられる。
【0069】
本発明の第1の態様の前記第7の好ましい実施形態のうち、配列番号21に対応する重鎖および配列番号14に対応する軽鎖によって特徴付けられる抗体がより好ましい。
【0070】
したがって、抗体「HC7-LC7」は、本発明の第1の態様の第8の好ましい実施形態であり、これは、配列番号20に対応する可変重鎖領域および配列番号17に対応する可変軽鎖領域によって特徴付けられる。
【0071】
本発明の第1の態様の前記第8の好ましい実施形態のうち、配列番号21に対応する重鎖および配列番号22に対応する軽鎖によって特徴付けられる抗体がより好ましい。
【0072】
したがって、抗体「HC7-LC8」は、本発明の第1の態様の第9の好ましい実施形態であり、これは、配列番号20に対応する可変重鎖領域および配列番号18に対応する可変軽鎖領域によって特徴付けられる。
【0073】
本発明の第1の態様の前記第9の好ましい実施形態のうち、配列番号21に対応する重鎖および配列番号23に対応する軽鎖によって特徴付けられる抗体がより好ましい。
【0074】
したがって、抗体「HC7-LC9」は、本発明の第1の態様の第10の好ましい実施形態であり、これは、配列番号20に対応する可変重鎖領域および配列番号19に対応する可変軽鎖領域によって特徴付けられる。
【0075】
本発明の第1の態様の前記第10の好ましい実施形態のうち、配列番号21に対応する重鎖および配列番号24に対応する軽鎖によって特徴付けられる抗体がより好ましい。
【0076】
本発明のこの第1の態様の抗体は、提供される特定のペプチド配列に限定されない。むしろ、本発明は、変異体も具体化する。本開示ならびに従来利用可能な技術および参考文献を参照して、当業者は、IGLV3-21R110-BCRに結合する能力を有し、それによってB細胞を死滅させるこれらの変異体が本発明の範囲内に入ることを理解しながら、本明細書に開示される抗体の機能的変異体を調製、試験および利用することができるであろう。
【0077】
変異体は、例えば、本明細書に開示されるペプチド配列に対して少なくとも1つの改変された相補性決定領域(CDR)(超可変)および/またはフレームワーク(FR)(可変)ドメイン/位置を有する抗体を含むことができる。この概念をよりよく説明するために、抗体構造の簡単な説明が続く。
【0078】
抗体は2本のペプチド鎖から構成され、それぞれ1つ(軽鎖)または3つ(重鎖)の定常ドメインおよび可変領域(VL、VH)を含み、これらのうちの後者は、それぞれの場合において、4つのFR領域および間を占める3つのCDR(相補性決定領域)で構成される。抗原結合部位は、1つまたは複数のCDRにより形成されるが、FR領域は、CDRに構造フレームワークを提供し、したがって、抗原結合において重要な役割を果たす。CDRまたはFR領域内の1個または複数のアミノ酸残基を改変することにより、当業者は、変異または多様化抗体配列を日常的に作成することができる。
【0079】
例として、当業者は、本明細書において提供される抗体の(例えば、表1および/または表2の)配列を使用して、本発明の範囲内であるペプチド変異体を設計することができる。
【0080】
さらに、変異体は、抗体内の1個または複数のアミノ酸残基、好ましくは1つまたは複数のCDR内のアミノ酸残基を多様化することにより、かつ抗体変異体の生じるコレクションをスクリーニングすることにより、最適化の出発点として本発明のこの第1の態様の1つの抗体を使用することにより得られてよい。多様化は、トリヌクレオチド変異誘発(TRIM)技術(Virnekiis B. et al., Nucl. Acids Res. 1994, 22: 5600.)を使用してDNA分子のコレクションを合成することにより行うことができる。抗体は、これらに限定されないが、例えば、改変された半減期(例えば、Fe部分の修正またはPEGなどの更なる分子の結合)、改変された結合親和性または改変されたADCCもしくはCDC活性につながる修正を含む修正/変形を含む分子を含む。
【0081】
本明細書に記載される抗体ペプチド配列の分子構造全体を保存するポリペプチド変異体が作製されてよい。個々のアミノ酸の特性を考えれば、幾つかの合理的な置換が当業者によって認識されるであろう。アミノ酸置換、「保存的置換」は、例えば、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および/または両親媒性の類似性に基づいて行われてよい。
【0082】
例えば、(a)非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プラリン(praline)、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンが含まれ;(b)極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが含まれ;(c)正に荷電した(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リシン、およびヒスチジンが含まれ;(d)負に荷電した(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる。置換は典型的には群(a)~(d)内で行うことができる。加えて、グリシンおよびプラリンは、α-ヘリックスを破壊するそれらの能力に基づいて互いに置換されてよい。同様に、アラニン、システイン、ロイシン、メチオニン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジンおよびリシンなどのある種のアミノ酸がα-ヘリックスにより一般に見出され、一方、バリン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンおよびトレオニンがβ-プリーツシートにより一般に見出される。グリシン、セリン、アスパラギン酸、アスパラギン、およびプロリンがひいては一般に見出される。以下の群:(i)SおよびT;(ii)PおよびG;ならびに(iii)A、V、LおよびIのうち、幾つかの好ましい置換を行うことができる。既知の遺伝暗号、ならびに組換えおよび合成DNA技法を考えれば、熟練した科学者は容易に、保存的なアミノ酸変異体をコードするDNAを構築することができる。
【0083】
本発明の第1の態様による抗体の第3から第10の好ましい実施形態は、配列番号15により示される可変重鎖と少なくとも83.3%、85%、90%、92%、95%配列同一、または配列番号20により示される可変重鎖と少なくとも82.5%、85%、90%、92%、95%配列同一である可変重鎖を含んでもよい。
【0084】
本発明の第1の態様による抗体の第3から第10の好ましい実施形態は、配列番号16により示される可変軽鎖と少なくとも90%、92%、95%配列同一、または配列番号17により示される可変軽鎖と少なくとも87%、90%、92%、95%同一、または配列番号18により示される可変軽鎖と少なくとも80.5%、85%、90%、92%、95%配列同一、または配列番号19により示される可変軽鎖と少なくとも77.7%、80%、85%、90%、92%、95%配列同一である可変軽鎖を含んでもよい。
【0085】
本発明の第1の態様による抗体の好ましい実施形態の全てが、配列番号5(H-CDR 1)、配列番号6(H-CDR 2)および配列番号7(H-CDR 3)により表される配列を含む可変重鎖配列を配列番号8(L-CDR 1)、配列番号9(L-CDR 2)、配列番号10(L-CDR 3)により表される配列を含む可変軽鎖配列と組み合わせる。
【0086】
本発明の第1の態様による抗体は、好ましくは任意のアイソタイプのIgG(例えば、IgG IgG、IgG、IgG)である。それらのそれぞれの抗原結合性断片は、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2またはscFvでよい。
【0087】
より好ましくは、本発明の第1の態様による抗体は、IgGアイソタイプ抗体として表され、さらにより好ましくはヒト化されている。
【0088】
本発明の第1の態様の最も好ましい抗体は、第2、第3および第7の実施形態の抗体(「HC0-LC0」、「HC6-LC6」および「HC7-LC6」)であり、とりわけ、最も重要な好ましい抗体は、第3および第7の実施形態の抗体(「HC6-LC6」および「HC7-LC6」)である。
【0089】
本発明の第1の態様の前記の好ましい実施形態の全てが特に有利である。というのは、それらがK~10-10Mの範囲内の非常に高い親和性を示すことが示されており、それらが、IGLV3-21R110を持つBCRに特異的、選択的かつCLL患者の他の組織に対して非交差反応性に結合し、それによって悪性B細胞の選択的死滅を可能にするという本発明の有益な態様を結果としてもたらすからである。
【0090】
最も好ましい抗体(「HC0-LC0」、「HC6-LC6」および「HC7-LC6」)に関して、それらは、わずか約1.2~2.1 10-10Mの間の最も高い親和性を示す。第3および第7の好ましい実施形態による抗体「HC6-LC6」および「HC7-LC6」はさらにヒト化され、それらの免疫原性の低下のためにそれらを治療的使用に特に適したものにする。
【0091】
本発明の第1の態様の前述の実施形態の全てが、IGLV3-21R110に選択的に結合する。上記のIGLV3-21R110のために提供された定義を越えて、前記IGLV3-21R110は、本発明のこの第1の態様の一般に好ましい実施形態において、配列番号53により表される配列に対して80%超の配列同一性によってさらに特徴付けられ、ここで、前記配列の16位にリシンが存在し、50位および52位にアスパラギン酸が存在する。本発明のこの第1の態様の一般により好ましい実施形態において、49位にチロシンまたはフェニルアラニンが存在し、51位にセリンまたはトレオニンが存在する。本発明のこの第1の態様の一般にさらにより好ましい実施形態において、49位にチロシンが存在し、51位にセリンが存在する。
【0092】
本発明の第2の態様-治療的使用
本発明の第2の態様は、IGLV3-21R110陽性患者におけるCLLの処置における使用のための本発明の第1の態様の抗体の提供に関する。同じく本発明のこの第2の態様は、本発明の第1の態様の治療活性量の抗体を投与することによる、IGLV3-21R110陽性患者におけるCLLの処置の方法に関する。
【0093】
したがって、本発明のこの第2の態様の第1の好ましい実施形態において、抗体は、配列番号1に対応する重鎖および配列番号2に対応する軽鎖によって特徴付けられる。
【0094】
本発明のこの第2の態様の第2の好ましい実施形態において、抗体は、配列番号11に対応する重鎖および配列番号12に対応する軽鎖によって特徴付けられる。
【0095】
本発明のこの第2の態様の第3の好ましい実施形態において、抗体は、配列番号15に対応する可変重鎖領域および配列番号16に対応する可変軽鎖領域によって特徴付けられる。
【0096】
前記第3の好ましい実施形態のうち、配列番号13に対応する重鎖および配列番号14に対応する軽鎖によって特徴付けられる抗体がより好ましい。
【0097】
本発明のこの第2の態様の第4の好ましい実施形態において、抗体は、配列番号15に対応する可変重鎖領域および配列番号17に対応する可変軽鎖領域によって特徴付けられる。
【0098】
前記第4の好ましい実施形態のうち、配列番号13に対応する重鎖および配列番号22に対応する軽鎖によって特徴付けられる抗体がより好ましい。
【0099】
本発明のこの第2の態様の第5の好ましい実施形態において、抗体は、配列番号15に対応する可変重鎖領域および配列番号18に対応する可変軽鎖領域によって特徴付けられる。
【0100】
前記第5の好ましい実施形態のうち、配列番号13に対応する重鎖および配列番号23に対応する軽鎖によって特徴付けられる抗体がより好ましい。
【0101】
本発明のこの第2の態様の第6の好ましい実施形態において、抗体は、配列番号15に対応する可変重鎖領域および配列番号19に対応する可変軽鎖領域によって特徴付けられる。
【0102】
前記第6の好ましい実施形態のうち、配列番号13に対応する重鎖および配列番号24に対応する軽鎖によって特徴付けられる抗体がより好ましい。
【0103】
本発明のこの第2の態様の第7の好ましい実施形態において、抗体は、配列番号20に対応する可変重鎖領域および配列番号16に対応する可変軽鎖領域によって特徴付けられる。
【0104】
前記第7の好ましい実施形態のうち、配列番号21に対応する重鎖および配列番号14に対応する軽鎖によって特徴付けられる抗体がより好ましい。
【0105】
本発明のこの第2の態様の第8の好ましい実施形態において、抗体は、配列番号20に対応する可変重鎖領域および配列番号17に対応する可変軽鎖領域によって特徴付けられる。
【0106】
前記第8の好ましい実施形態のうち、配列番号21に対応する重鎖および配列番号22に対応する軽鎖によって特徴付けられる抗体がより好ましい。
【0107】
本発明のこの第2の態様の第9の好ましい実施形態において、抗体は、配列番号20に対応する可変重鎖領域および配列番号18に対応する可変軽鎖領域によって特徴付けられる。
【0108】
前記第9の好ましい実施形態のうち、配列番号21に対応する重鎖および配列番号23に対応する軽鎖によって特徴付けられる抗体がより好ましい。
【0109】
本発明のこの第2の態様の第10の好ましい実施形態において、抗体は、配列番号20に対応する可変重鎖領域および配列番号19に対応する可変軽鎖領域によって特徴付けられる。
【0110】
前記第10の好ましい実施形態のうち、配列番号21に対応する重鎖および配列番号24に対応する軽鎖によって特徴付けられる抗体がより好ましい。
【0111】
本発明の第1の態様の文脈において述べられたように、本発明の第2の態様の上記で参照した実施形態の全てが、非常に高い親和性を有する抗体に依拠している。そのいずれも約0.3nmの捕捉率で約3・10-10M超の親和性を有さない。それからだけでも本発明の第2の態様は、IGLV3-21R110陽性である患者におけるCLLの高度に選択的な処置を可能にする。
【0112】
ここで、これらの抗体(図1参照)は、野生型IGLV3-21G110変異体と悪性IGLV3-21R110変異体を選択的に区別することができること、および異種移植マウスモデルにおけるこれらの抗体での処置(図5および実施例9参照)は、結果としてヒトIGLV3-21R110陽性B細胞の著しい枯渇につながり、結果としてCLLの寛解につながることがさらに示された。
【0113】
したがって、IGLV3-21R110陽性患者におけるCLLの処置における使用のための抗体が効果的であることが驚くべきことに見出された。
【0114】
さらに、このような処置のために使用される抗体は、他の組織に対して交差反応性を示さないことを示すことができた(図4、実施例8参照)。
【0115】
このような抗体の有効用量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。任意の化合物について、治療的有効用量は、初めに細胞培養アッセイ、例えば、新生細胞、または動物モデル、通常マウス、ウサギ、イヌ、ブタもしくはサルのいずれかにおいて推定することができる。動物モデルは、望ましい濃度範囲および投与経路を達成するためにも使用される。次いで、このような情報を使用して、ヒトにおける有用な用量および投与経路を決定することができる。
【0116】
治療的有効用量は、処置される症状または状態を寛解する抗体の量を指す。本発明の文脈において、処置されるこのような状態は、臨床的に明らかなCLLであり、これは、自律的に活性なBCRを有するB細胞の異常増殖によって引き起こされる。より具体的には、本発明の第2の態様は、IGLV3-21R110を持つ自律的に活性なBCRを有するB細胞の異常増殖によって特徴付けられる臨床的に明らかなCLLに対処する。
【0117】
本発明の第2の態様の前述の実施形態の全てが、IGLV3-21R110陽性である患者におけるCLLの処置に関する。上記のIGLV3-21R110のために提供された定義を越えて、前記IGLV3-21R110は、本発明のこの第2の態様の一般に好ましい実施形態において、配列番号53により表される配列に対して80%超の配列同一性によってさらに特徴付けられ、ここで、前記配列の16位にリシンが存在し、50位および52位にアスパラギン酸が存在する。本発明のこの第1の態様の一般により好ましい実施形態において、49位にチロシンまたはフェニルアラニンが存在し、51位にセリンまたはトレオニンが存在する。本発明のこの第1の態様の一般にさらにより好ましい実施形態において、49位にチロシンが存在し、51位にセリンが存在する。
【0118】
したがって、治療的有効量は、単回用量として、または複数回用量レジメンに従って患者の処置部位においてIGLV3-21R110陽性CLL細胞を枯渇させるのに十分な量の抗体の量であるが、この量は毒物学的に許容される。
【0119】
本発明の第2の態様において、0.25~25mg/kg(体重)、より好ましくは1~20mg/kg(体重)、最も好ましくは7超~15mg/kg(体重)、特に好ましい8~12mg/kg(体重)の用量で使用される、IGLV3-21R110陽性患者におけるCLLの処置における使用のための抗体が好ましい。
【0120】
これらの投与量は極めて低く、結果として悪性B細胞の強い枯渇を達成するための約80kgの平均的なヒト患者に仮定で投与される全薬物量は、特に好ましい640~960mgの間を超えない。
【0121】
厳密な投与量は、処置される患者を考慮して個々の医師により選ばれる。投与量および投与は、十分なレベルの活性部分を提供するように、または所望の効果を達成するように調整される。しかし、0.3mg/kg以下の週2回投与量が異種移植マウスモデルにおいて既に効果的であり、一方、悪性細胞の強い枯渇を10mg/kg(週2回)の投与量で達成することができたことが本発明により示されている。
【0122】
本発明の第2の態様による抗体を投与するとき、追加の要因も考慮されてよく、これには、疾患状態、例えば、腫瘍サイズおよび位置の重症度;年齢、体重および患者の性別および食事が含まれ得る。十分な用量を決定する更なる影響要因は、薬物併用、反応感受性、および治療法に対する耐性/応答であり得る。
【0123】
さらに、投与は1回を超えて実施されてよく、投与の時間および頻度が、投与される個々の投与量にさらに影響し得る。
【0124】
本発明の第2の態様によれば、抗体は、既知の医薬と共投与されてもよい。したがって、それらは、唯一の医薬品として、または1種もしくは複数種の追加の治療剤と併用して投与されてよく、ここで、併用は、許容できない有害作用を引き起こさない。この併用療法は、本発明の第1の態様による抗体および1種または複数種の追加の治療剤を含む単一の医薬投与製剤の投与、ならびに本発明の第1の態様の抗体およびその独自の別々の医薬投与製剤中の追加の各治療剤の投与を含む。
【0125】
別々の投与製剤が使用される場合、1種または複数種の追加の治療剤での本発明の第2の態様による処置は、本質的に同じ時間(例えば、同時)でも、時間を別々にずらしてもよい(例えば、順次)。特に、本発明による処置は、アルキル化剤、代謝拮抗剤、植物由来の抗腫瘍剤、ホルモン療法剤、トポイソメラーゼ阻害剤、カンプトテシン誘導体、キナーゼ阻害剤、標的薬物、抗体、インターフェロンおよび/または生物学的応答調節剤、抗血管新生化合物、ならびに他の抗腫瘍薬などの他の抗腫瘍剤との固定または別々の併用で実施されてよい。
【0126】
本発明の抗体は、がん治療において放射線療法および/または外科的介入と併せて使用されてもよい。
【0127】
第3の態様-ポリヌクレオチド
本発明は、本発明の第1の態様の抗体をコードするDNA分子にも関する。
【0128】
本発明のDNA分子は、本明細書に開示される配列に限定されず、その変異体も含む。本発明の範囲内のDNA変異体は、ハイブリダイゼーションにおけるそれらの物理的特性を参照することにより記載することができる。DNAを使用して、その補体と、DNAは二本鎖であるため、核酸ハイブリダイゼーション技法を使用して、その等価体または相同体とを同定することができることを当業者は理解されよう。ハイブリダイゼーションが100%未満の相補性で起こり得ることも認識されるであろう。しかし、条件の適切な選択を考えれば、ハイブリダイゼーション技法を使用して、特定のプローブとのそれらの構造的関連性に基づいてDNA配列を区別することができる。このような条件に関するガイダンスについては、Sambrook, J., Fritsch, E. F. and Maniatis, T. (1989) Molecular Cloning: A laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, USA and Ausubel et al., 1995 (Ausubel, F. M., Brent, R., Kingston, R. E., Moore, D. D., Sedman, J. G., Smith, J. A., & S1ruhl, K. eds. (1995). Current Protocols in Molecular Biology. New York: John Wiley and Sons)を参照されたい。
【0129】
2つのポリヌクレオチド配列間の構造的類似性は、2つの配列が互いにハイブリダイズすることになる条件の「ストリンジェンシー」の関数として表すことができる。本明細書で使用される場合、「ストリンジェンシー」という用語は、条件がハイブリダイゼーションを嫌う程度を指す。ストリンジェントな条件は、ハイブリダイゼーションを強く嫌い、最も構造的に関連する分子のみがこのような条件下で互いにハイブリダイズすることになる。逆に、非ストリンジェントな条件は、より低い程度の構造的関連性を示す分子のハイブリダイゼーションを好む。したがって、ハイブリダイゼーションストリンジェンシーは、2つの核酸配列の構造的関係と直接相関する。以下の関係は、ハイブリダイゼーションおよび関連性の関係付けにおいて有用である(式中、Tmは、核酸二重鎖の融解温度である):
【表1】
【0130】
ハイブリダイゼーションストリンジェンシーは、全DNA濃度、イオン強度、温度、プローブサイズ、および水素結合を破壊する薬剤の存在を含む多くの要因の関数である。ハイブリダイゼーションを促進する要因には、高DNA濃度、高イオン強度、低温、より長いプローブサイズ、および水素結合を破壊する薬剤の非存在が含まれる。ハイブリダイゼーションは典型的には2段階:「結合」段階および「洗浄」段階で実施される。
【0131】
本発明の範囲内のさらに別のクラスのDNA変異体は、それらがコードする産物を参照して記載することができる。これらの機能的に等価なポリヌクレオチドは、遺伝暗号の縮重のために配列番号1~24に見出される同じペプチド配列をそれらがコードすることによって特徴付けられる。
【0132】
本明細書において提供されるDNA分子の変異体は、幾つかの異なる方法で構築することができると認識されている。例えば、それらは完全合成DNAとして構築されてよい。20~約150ヌクレオチドの範囲内のオリゴヌクレオチドを効率的に合成する方法は広く利用可能である。Ausubel et al., section 2.11, Supplement 21 (1993)を参照されたい。重複オリゴヌクレオチドは、Khorana et al., J. Mol. Biol. 72:209-217 (1971)により初めて報告されたように合成および構築されてよい;Ausubel et al.、上記、Section 8.2も参照。適切なベクターへのクローニングを容易にするために遺伝子の5’および3’末端に操作された好都合な制限部位を有する合成DNAが好ましくは設計される。
【0133】
示されるように、変異体を生成する方法は、本明細書に開示されるDNAのうちの1つから出発し、次いで、部位特異的変異誘発を実施する。Ausubel et al.、上記、chapter 8, Supplement 37 (1997)を参照されたい。典型的な方法において、標的DNAが一本鎖DNAバクテリオファージビヒクルにクローニングされる。一本鎖DNAが単離され、所望のヌクレオチド変化を含むオリゴヌクレオチドとハイブリダイズされる。相補鎖が合成され、二本鎖ファージが宿主に導入される。生じる子孫の一部は所望のミュータントを含むことになり、これは、DNA配列決定を使用して確認することができる。加えて、子孫ファージが所望のミュータントになる可能性を高める様々な方法が利用可能である。これらの方法は当業者に周知であり、キットがこのようなミュータントの生成に商業的に利用可能である。
【0134】
本発明の第1の態様と同じく、本発明のこの第3の態様の対応する好ましい実施形態も存在する。
【0135】
本発明のこの第3の態様の第1の好ましい実施形態において、本発明は、配列番号25、配列番号29、配列番号33および配列番号38からなるリストから選択される任意の配列により表される本発明の第1の態様の1つの好ましい抗体の重鎖をコードするDNA分子に関する。
【0136】
本発明のこの第3の態様の第2の好ましい実施形態において、本発明は、配列番号26、配列番号30、配列番号34、配列番号35、配列番号36および配列番号37からなるリストから選択される任意の配列により表される本発明の第1の態様の1つの好ましい抗体の軽鎖をコードするDNA分子に関する。
【0137】
本発明の核酸は、本発明の核酸配列を含む標準的なベクターおよび宿主細胞を使用する抗体の組換え産生に適している。
【0138】
本発明の更なる態様
本発明の第2の態様において使用される本発明の第1の態様の抗体は、既知の医薬と共投与されてよい。例えば、抗体は、任意の一般的な抗B細胞抗体と共投与され得る。
【0139】
本発明は、本発明の第1の態様の実施形態のいずれかによる抗体を含む組成物にも関し、これは、本発明の第2の態様と同様に使用されてよい。
【0140】
したがって、本発明は、単独の、または少なくとも1種の他の薬剤と組み合わせた本発明の第1の態様による抗体と、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む医薬組成物を含む。
【0141】
他の薬剤は、例えば安定化化合物でよく、このような少なくとも1種の他の薬剤および本発明の第1の態様による抗体が、これらに限定されないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、および水を含む任意の滅菌した生体適合性医薬担体中で投与されてよい。
【0142】
本発明の医薬組成物は、当技術分野において既知の方法で、例えば、従来の混合、溶解、乳化、カプセル化、封入または凍結乾燥プロセスにより製造されてよい。
【0143】
好ましい医薬組成物は、使用前に緩衝液と組み合わせられる、4.5~5.5のpH範囲の1mM~50mMヒスチジン、0.1%~2%スクロース、2%~7%マンニトール中の本発明の第1の態様による抗体の凍結乾燥粉末から構成される。
【0144】
許容される担体中で製剤化された本発明の抗体を含む医薬組成物が調製された後、それらを適切な容器内に置き、示された状態の処置のためにラベルすることができる。
【0145】
結果として、関連する態様において、本発明は、IGLV3-21R110陽性患者におけるCLLの使用のためのこのような医薬組成物にも関する。同じく本発明のこの関連する態様は、治療活性量の前記このような医薬組成物を投与することによる、IGLV3-21R110陽性患者におけるCLLの処置の方法に関する。
【0146】
このような投与は非経口的に通常達成される。非経口送達の方法には、局所、動脈内(腫瘍に直接)、筋肉内、皮下、髄内、髄腔内、脳室内、静脈内、腹腔内、または鼻腔内投与が含まれる。
【0147】
好ましい投与経路は、静脈内および動脈内(腫瘍に直接)である。
【0148】
非経口投与のための医薬組成物は、活性化合物の水性溶液を含む。注射のために、本発明の医薬組成物は、水性溶液中で、好ましくはハンクス液、リンゲル液、または生理学的に緩衝化した生理食塩水などの生理学的に適合性の緩衝液中で製剤化されてよい。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなど、懸濁液の粘度を増加させる物質を含んでよい。さらに、活性化合物の懸濁液が適切な油性注射懸濁液として調製されてよい。適した親油性溶媒またはビヒクルには、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが含まれる。任意選択で、懸濁液は、化合物の溶解度を増加させて、高濃度溶液の調製を可能にする適した安定剤または薬剤を含んでもよい。
【0149】
局所または経鼻投与のために、浸透される特定のバリアに適切な浸透剤が製剤中で使用される。このような浸透剤は、当技術分野において一般に既知である。
【0150】
本発明はさらに、本発明の前述の組成物の成分のうちの1つまたは複数で充填された1つまたは複数の容器を含む医薬パックおよびキットに関する。このような容器には、医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関により規定されたフォームで、ヒトへの投与のための製品の製造、使用または販売の政府機関による承認を示す通知が添付されていてもよい。
【0151】
別の実施形態において、キットは、本発明の第3の態様による抗体をコードするDNA配列を含んでよい。好ましくはこれらの抗体をコードするDNA配列は、宿主細胞へのトランスフェクションおよび宿主細胞による発現に適したプラスミド中に提供される。プラスミドは、宿主細胞内のDNAの発現を制御するプロモーター(しばしば誘導性プロモーター)を含んでよい。プラスミドは、プラスミドへの他のDNA配列の挿入を容易にして、様々な抗体を産生する適切な制限部位を含んでもよい。プラスミドは、コードされたタンパク質のクローニングおよび発現を容易にする多数の他の要素を含んでもよい。このような要素は当業者に周知であり、例えば、選択マーカー、開始コドン、終止コドンおよび同種のものを含む。
【0152】
したがって、本発明はさらに、IGLV3-21R110陽性患者におけるCLLの処置における使用のための、本発明の前述の組成物の成分のうちの1つまたは複数で充填された1つまたは複数の容器を含む前述のパックおよびキットに関する。
【0153】
本発明の好ましい実施形態は以下の通りである。
【0154】
A.IGLV3-21R110陽性患者におけるCLLの処置における使用のための抗体であって、
配列番号1の重鎖アミノ酸配列および配列番号2の軽鎖アミノ酸配列、もしくは
配列番号11の重鎖アミノ酸配列および配列番号12の軽鎖アミノ酸配列を有するか、または
配列番号16、配列番号17、配列番号18、および配列番号19のリストから選択される配列を有する可変軽鎖との任意の組合せで配列番号15および配列番号20からなるリストから選択される配列を有する可変重鎖を含む、
使用のための抗体。
【0155】
B.配列番号1に対応する重鎖および配列番号2に対応する軽鎖によって特徴付けられる、実施形態A記載の使用のための抗体。
【0156】
C.配列番号11の重鎖アミノ酸配列および配列番号12の軽鎖アミノ酸配列によって特徴付けられる、実施形態A記載の使用のための抗体。
【0157】
D.配列番号13に対応する重鎖および配列番号14に対応する軽鎖によって特徴付けられる、実施形態A記載の使用のための抗体。
【0158】
E.配列番号21に対応する重鎖および配列番号14に対応する軽鎖によって特徴付けられる、実施形態A記載の使用のための抗体。
【0159】
F.キメラ抗体である、実施形態AまたはC記載の使用のための抗体。
【0160】
G.ヒト化抗体である、実施形態DおよびE記載の使用のための抗体。
【0161】
H.0.25~25mg/kg(体重)の用量で適用される、実施形態AからGまでのいずれか1つ記載の使用のための抗体。
【0162】
I.1~20mg/kg(体重)の用量で適用される、実施形態H記載の使用のための抗体。
【0163】
J.7~15mg/kg(体重)の用量で適用される、実施形態H記載の使用のための抗体。
【0164】
K.8~12mg/kg(体重)の用量で適用される、実施形態H記載の使用のための抗体。
【0165】
L.IGLV3-21R110陽性患者におけるCLLの処置における使用のための、単独の、または少なくとも1種の他の薬剤と組み合わせた前述の実施形態AからGまでのいずれか1つ記載の抗体と、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む医薬組成物。
【0166】
M.IGLV3-21R110陽性患者におけるCLLの処置における使用のための、実施形態L記載の医薬組成物を含むキット。
【図面の簡単な説明】
【0167】
図1A】FACS FSC-SSCプロットを示す図であり、実施例4に従って図1Aのプロットは、上記の蛍光標識抗体で染色されたIGHV3-21/IGLV3-21R110 BCR陽性TKOマウス細胞およびBCRがないTKO細胞を含む1:1細胞ミックス(細胞ミックスA)から作成された。
図1B】抗IgM-PE(y軸)にわたるmAb01-01-APC(x軸)のゲートしたプロットを示す図であり、実施例4に従って図1Bのプロットは、上記の蛍光標識抗体で染色されたIGHV3-21/IGLV3-21R110 BCR陽性TKOマウス細胞およびBCRがないTKO細胞を含む1:1細胞ミックス(細胞ミックスA)から作成された。図1Bおよび図1Dから容易に理解できるように、分析されたTKO細胞のほぼ半分がそれぞれの抗IgM抗体で陽性に染色され、それらがBCRを持つことを示し、これは、それぞれの細胞ミックスのTKO細胞のおよそ50%の表面のBCRの発現と一致し、図1Bおよび図1Dの比較により、本発明の抗体「mAb01-01」のみが、R110変異を持つIGLV3-21の悪性変異体を認識することが明らかになる。
図1C】FACS FSC-SSCプロットを示す図であり、図1Cのプロットは、IGHV3-21/IGLV3-21G110 BCR陽性TKOマウス細胞およびBCRがないTKO細胞を含む1:1細胞ミックス(細胞ミックスB)から作成された。
図1D】抗IgM-PE(y軸)にわたるmAb01-01-APC(x軸)のゲートしたプロットを示す図であり、図1Dのプロットは、IGHV3-21/IGLV3-21G110 BCR陽性TKOマウス細胞およびBCRがないTKO細胞を含む1:1細胞ミックス(細胞ミックスB)から作成された。図1Bおよび図1Dから容易に理解できるように、分析されたTKO細胞のほぼ半分がそれぞれの抗IgM抗体で陽性に染色され、それらがBCRを持つことを示し、これは、それぞれの細胞ミックスのTKO細胞のおよそ50%の表面のBCRの発現と一致し、図1Bおよび図1Dの比較により、本発明の抗体「mAb01-01」のみが、R110変異を持つIGLV3-21の悪性変異体を認識することが明らかになる。
図2A】実施例6に従って加工されたヒトPBMCのFACSプロットを示す図であり、ゲートが図1Aおよび図1Cと同様に明らかに生存している細胞に設定された前記PBMCのFSC-SSC図を示し、IGHV4-39/IGLV3-21R110-BCRを発現するB細胞を有することが陽性に診断された患者のヒトPBMCの解析を示す。
図2B】実施例6に従って加工されたヒトPBMCのFACSプロットを示す図であり、ゲートした細胞は、抗CD5-PE-Cy5に対する抗CD19-VioBright515を有するようにプロットされており、IGHV4-39/IGLV3-21R110-BCRを発現するB細胞を有することが陽性に診断された患者のヒトPBMCの解析を示し、図2Bおよび図2Dの比較から見て分かるように、CD5/CD19++B細胞は分離することができた。
図2C】実施例6に従って加工されたヒトPBMCのFACSプロットを示す図であり、ゲートした細胞は、mAb01-01-APCに対する抗CD19-VioBright515を有するようにプロットされており、IGHV4-39/IGLV3-21R110-BCRを発現するB細胞を有することが陽性に診断された患者のヒトPBMCの解析を示し、2つの患者サンプル間の更なる比較(図2Cおよび図2F)は、mAb01-01がIGLV3-21R110陽性CLL B細胞のみを選択的に識別し、CLLタイプ間の区別を可能にすることを示す。
図2D】実施例6に従って加工されたヒトPBMCのFACSプロットを示す図であり、ゲートが図1Aおよび図1Cと同様に明らかに生存している細胞に設定された前記PBMCのFSC-SSC図を示し、CLLがIGHV3-21R110-BCRによって特徴付けられない(すなわち、非IGLV3-21R110 CLL)患者のヒトPBMCの同じ解析を示し、図2Bおよび図2Dの比較から見て分かるように、CD5/CD19++B細胞は分離することができた。
図2E】実施例6に従って加工されたヒトPBMCのFACSプロットを示す図であり、ゲートした細胞は、抗CD5-PE-Cy5に対する抗CD19-VioBright515を有するようにプロットされており、CLLがIGHV3-21R110-BCRによって特徴付けられない(すなわち、非IGLV3-21R110 CLL)患者のヒトPBMCの同じ解析を示す。
図2F】実施例6に従って加工されたヒトPBMCのFACSプロットを示す図であり、ゲートした細胞は、mAb01-01-APCに対する抗CD19-VioBright515を有するようにプロットされており、CLLがIGHV3-21R110-BCRによって特徴付けられない(すなわち、非IGLV3-21R110 CLL)患者のヒトPBMCの同じ解析を示し、2つの患者サンプル間の更なる比較(図2Cおよび図2F)は、mAb01-01がIGLV3-21R110陽性CLL B細胞のみを選択的に識別し、CLLタイプ間の区別を可能にすることを示す。
図3】本発明および実施例7による抗体HC0-LC0、HC6-LC6およびHC7-LC6の比較結合速度論を示す図であり、見て分かるように、これらの3つの抗体は、本質的に同じ結合速度論を示し、遅くて濃度10μg/mlにおいて近い~同一の結合特異性を有する。
図4】実施例8による抗IgG単独での同じ組織サンプルの単独処置(右列)に対する(左列)mAb01-01およびこのようなmAb01-01に対する抗IgGで染色された組織(サンドイッチ-アッセイ)の比較を示す図であり、上段は、IGLV3-21R110陽性であるCLL患者の組織サンプルにおけるそれぞれの結果を示し、一方、下段は、健常ドナーサンプルにおける結果を示し、左上の写真と左列の残りの全ての写真の比較から、mAb01-01は、罹患患者の脾臓において罹患B細胞を陽性かつ選択的に識別すること、および同じ組織(脾臓)においても、他の組織タイプ(皮膚、腎臓、心臓および脳)のいずれかにおいても、健常ドナーのサンプルのいずれに対しても交差反応性が存在しないことが分かり、これは、本発明の抗体が選択的、安全かつ非交差反応性であることを示し、右列の更なる写真は、左上の写真の達成された染色ならびに左列の下側の写真の染色不足は、何らかのバックグラウンドまたは他の人工的な効果と関係がないことを示す。
図5】実施例9による実験の終了時の脾臓におけるCLL細胞の絶対数を示す図であり、前記実験において、IGLV3-21R110陽性CLLを人工的に患っている異種移植マウスモデルが(薬学的に不活性な)対照(群A)、0.3mg/kgの量(群B)、5mg/kgの量(群C)および10mg/kg(群D)体重のmAb01-01で処置された。この図から見て分かるように、全ての処置が、結果として脾臓においてCLL細胞の枯渇につながり、一方、10mg/kgにおいて枯渇は極めて著しい。これは、本発明の抗体が実際にIGLV3-21R110陽性BCRによって特徴付けられるCLLの効果的な処置を容易にすることを示す。
図6】(Miniciらにより記載されたような)IGLV3-21R110軽鎖のBCR-BCRホモタイプ相互作用の概略図であり、重鎖(HC)および軽鎖(LC)を含む抗原結合性サブユニット、膜貫通ドメイン(TM)、ならびにIgαおよびIgβタンパク質(CD79a/CD79b)のジスルフィド結合ヘテロダイマーから構成されるシグナル伝達サブユニット(SU)を含む2つの隣接するBCRが示されており、1つのBCRの110位の変異アルギニン(R)が、隣接するBCRの50位の生殖系列にコードされたアスパラギン酸(D)と相互作用し、2つのBCR間の更なる相互作用が、16位の生殖系列にコードされたアミノ酸残基リシン(K)および52位のアスパラギン酸(D)によって媒介される。
図7A】IGLV3-21R110の概略図であり、1文字表記の例示的なIGLV3-21R110(配列番号53)であり、MiniciらによるBCR-BCRホモタイプ相互作用に関与するアミノ酸残基が太字で示されている。
図7B】IGLV3-21R110の概略図であり、1行目はIGLV3-21R110内のアミノ酸位置であり、2行目はMiniciらによるBCR-BCRホモタイプ相互作用に関与するアミノ酸残基であり、3~5行目は比較のYDSD-モチーフの異なる変異体であり、アミノ酸は3文字表記で示されている。
図8】本明細書中において言及する配列を示す図である。
【0168】
本発明を以下の例によりさらに説明する。例は、特定の実施形態を参照することにより本発明を単に説明するために提供される。これらの例示は、本発明のある特定の態様を例示する一方で、制限を描写したり、開示されている発明の範囲を制限したりしない。
【0169】
全ての例が標準的な技術を使用して行われた。これらは、特に詳細に記載される場合を除き、当業者に周知かつ日常的である。以下の例の日常的な分子生物学的技術は、上記のSambrook et al., 1989などの標準的な実験マニュアルに記載されているように行うことができる。
【0170】
図6は、(Miniciらにより記載されたような)IGLV3-21R110軽鎖のBCR-BCRホモタイプ相互作用の概略図を示す。重鎖(HC)および軽鎖(LC)を含む抗原結合性サブユニット、膜貫通ドメイン(TM)、ならびにIgαおよびIgβタンパク質(CD79a/CD79b)のジスルフィド結合ヘテロダイマーから構成されるシグナル伝達サブユニット(SU)を含む2つの隣接するBCRが示されている。1つのBCRの110位の変異アルギニン(R)が、隣接するBCRの50位の生殖系列にコードされたアスパラギン酸(D)と相互作用する。2つのBCR間の更なる相互作用が、16位の生殖系列にコードされたアミノ酸残基リシン(K)および52位のアスパラギン酸(D)によって媒介される。
【0171】
図7は、IGLV3-21R110の概略図を示す。図7A:1文字表記の例示的なIGLV3-21R110(配列番号53)。MiniciらによるBCR-BCRホモタイプ相互作用に関与するアミノ酸残基が太字で示されている。図7B:1行目:IGLV3-21R110内のアミノ酸位置。2行目:MiniciらによるBCR-BCRホモタイプ相互作用に関与するアミノ酸残基。3~5行目:比較のYDSD-モチーフの異なる変異体。アミノ酸は3文字表記で示されている。
【0172】
本発明の好ましい実施形態は以下の通りである。
【0173】
実施例
実施例1
マウス抗体の生成
ハイブリドーマ細胞株の免疫化および生成
可溶型のBCRとのマウスの免疫化の組合せ、および完全かつ機能的なBCRに膜結合が提示される細胞系を使用した適した抗体の選択により、IGLV3-21R110を持つBCRに対するマウス抗体を発生させた。
【0174】
最初は、マウスの免疫化のためにIgGの形態の可溶型のBCRを得なければならなかった。したがって、IGLV3-21R110をカバーする例示的な可変重鎖(VH)および完全な軽鎖(LC)DNAとしてIGHV3-21をコードするDNAセグメントを受託製造業者により標準的な手順を使用して合成した。次いで、これらをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりマウスIgG定常セグメントと融合させ、サイトメガロウイルス(CMV)ベクターにクローニングした。HEK293T細胞に基づくヒト細胞発現系を、例えばRekombinante Antikoerper, Lehrbuch und Kompendium fuer Studium und Praxis, 2. Auflage, Springer Verlag 2019に先に記載されたようなIgG(VHについては配列番号49、およびLCについては配列番号50)の発現のために使用した。ポリエチレンイミン(PEI)ベースのプロトコールをトランスフェクションのために使用した。数回継代した後、上清をプールし、合わせた細胞上清に含まれる培地を、Protein Gカラムを使用して精製した。可溶性IgGの純度および品質をウエスタンブロッティングにより決定した。
【0175】
その後、組換えで作製された可溶型のBCRでマウスを免疫した(配列番号49および50参照)。
【0176】
次いで、所望の特異性を有する免疫細胞をこれらのマウスから得、細胞融合によりハイブリドーマ細胞に変換することができた。第2に、BCRの様々な変異体を発現するトリプルノックアウト細胞(TKO;遺伝子Lambda5、RAG2およびSLP65のノックアウト)を用いてFACSスクリーニング法を実施して、IGLV3-21R110を持つBCRを特異的に標的とする抗体を選択した。
【0177】
マウスにおける標準的な手順および次世代のハイブリドーマ細胞を使用してモノクローナル抗体を作製した。
【0178】
このアプローチは、特有のモノクローナル抗体「mAb01-01」(重鎖については配列番号1、および軽鎖については配列番号2)の単離を可能にした。
【0179】
モノクローナル抗体の選択
陽性クローンのスクリーニングは、通常通りの酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって実施しなかった。標的構造体は膜結合受容体であるため、すなわち、この細胞型に固有の細胞生理的状態をおおむね維持しながら、細胞系における潜在的な抗体の結合を検証することが中心的な重要性を持つ。まず、蛍光活性化セルソーティング(FACS)解析を使用して、プールした上清の群を結合事象に関して調べた。この目的のために、異なるBCR変異体をトリプルノックアウト(TKO)細胞株の表面で発現させた。これは、BCR自体を発現できない。
【0180】
TKO細胞の産生の出発点は、遺伝子Lambda5、RAG1またはRAG2およびSLP65のそれぞれのノックアウトを有するトランスジェニックマウスにより形成される(Duehren von Minden et al., 2012, Nature 489, p. 309-313)。RAG2またはRAG1およびLambda5のノックアウトの組合せは、プロB細胞期からプレB細胞期への移行における遮断につながり、これは、重鎖(HC)のVDJセグメントの初期の再配置によって古典的に特徴付けられる。したがって、それらはプロ/プレB細胞である。BCRの活性は、誘導性SLP65での再構成により測定することができる。このようなマウスの作製は、専門家に既知であり、最新技術に属する。細胞を得るために、マウスを屠殺した後、マウスから大腿骨の骨髄を抽出した。次いで、このようにして得られた細胞を、プロ/プレB細胞の生存を促進する条件下で培養した(37℃、7.5% CO2、Iscoves培地、10% FCS、P/S、マウスIL7)。数回継代した後、制御目的のためにFACSソーティングを行い、プロ/プレB細胞をソーティングし、次いで、培養に戻した。この目的のために使用されるマーカーは専門家に既知である。
【0181】
「対象BCR」での再構成のために、VHをコードする対応する配列をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりヒトIgM定常セグメントと融合させ、CMVプロモーターをそれぞれ有するそれぞれの発現ベクターに重(HC)鎖および軽(LC)鎖をクローニングした。これらをリポフェクションによりパッケージング細胞株(Phoenix細胞株)に導入した。36時間のインキュベーション後、ウイルス上清を除去し、TKO細胞のスピンフェクション(Spinfektion)のために使用した。FACSで抗IgMおよび抗LC抗体を使用してBCR発現を決定した。この目的のために、一部の細胞を採取し、PBS中の100μlの全体積中、それぞれ抗体5μlで染色した。上清を抽出する作業とTKOのスピンフェクションのいずれも、広く知られている手順であり、専門家に既知である。RAG2またはRAG1およびLambda5のノックアウトにより、「対象BCR」のみを表面で発現させることを保証した。
【0182】
このようにして、2種の異なるBCR発現TKO細胞株を生成し、これらのうちの1種が膜結合IGHV3-21/IGLV3-21R110 BCRを発現した。第2のBCR発現TKO細胞株の生成のために、IGLV3-21R110をコードするDNAの110位のアルギニンのコドンを周知の部位特異的変異誘発技法により生殖系列配列に戻した(例えば、上記のSambrook et al., 1989参照)。生じたTKO細胞は、アミノ酸位置110にグリシンを有するIGLV3-21(IGLV3-21G110)を含むBCRを発現した。その表面でBCR発現がない第3の対照TKO細胞株を生成するために、空の発現ベクターによるスピンフェクション(spinfection)を実施した。細胞を再構成する誘導性SLP65を使用することにより、発現したBCRの機能を特徴付けることができ、したがって、選択前に表面のIGHV3-21/IGLV3-21R110 BCRの自律的に活性な状態を検証することができた。選別方法はここで、FACS解析を使用したSLP65の誘導後のCaフラックスの測定およびIndo-1などのCa2+依存性色素の使用である。これらの方法は専門家に既知である(M. Duehren-von Minden et. al; Nature 2012参照)。「標的」としてのこれらの細胞に対して、ここでFACSを使用して、IGLV3-21R110を持つBCRに特異的に結合する抗体を同定した。第1のステップは、抗体が結合を示す上清を同定することであった。この第1の選別ラウンドにおいて、幾つかのクローンの上清を組み合わせ、それらの結合プロファイルに関して調べた。IGHV3-21/IGLV3-21R110-BCRに対する特異的結合が示される場合、陽性結合プロファイルが与えられる。このようなプロファイルを示す群を単離し、第2の選別ラウンド中に再び個々のクローンの結合プロファイルを特徴付けた。蛍光標識抗マウスIgG抗体を使用したFACS結合アッセイを使用してモノクローナル抗体の結合を検証した。
【0183】
この選別アプローチは、抗体mAb01-01の同定につながった。これはIGHV3-21/IGLV3-21R110 BCR陽性TKOマウス細胞を結合するが、IGHV3-21/IGLV3-21G110 BCR陽性TKOマウス細胞を結合しない。
【0184】
マウス抗体の産生
選別による好ましい抗体の同定後、個々のハイブリドーマクローンからmRNAを単離し、cDNAを作成し、アンカーPCRにより増幅した(Rapid expression cloning of human immunoglobulin Fab fragments for the analysis of antigen specificity of B cell lymphomas and anti-idiotype lymphoma vaccination; Osterroth F, Alkan O, Mackensen A, Lindemann A, Fisch P, Skerra A, Veelken H. J Immunol Methods 1999 Oct 29; 229(1-2):141-53)。モノクローナル抗体mAb01-01をコードするcDNAの配列をサンガー配列決定により確認し(HCヌクレオチドについては配列番号25、LCヌクレオチドについては配列番号26)、CHO細胞における発現に適したベクター内に配置した。
【0185】
二次抗マウスIgG1-APCおよびIgG2-APC抗体を使用してIgG1サブタイプとしてのmAb01-01の発現を検証した。この目的のために、二次抗体のみを含むあるバッチならびにmAb01-01および二次抗体を含む別のバッチにおいてIGHV3-21/IGLV3-21R110発現TKO細胞を染色した。その後のFACS解析により、抗体がIgG1として発現されたことが確認された。
【0186】
特異的なモノクローナル抗体mAb01-01を配列決定した。表1に示されるように以下のアミノ酸配列を決定した:HCについては配列番号1、LCについては配列番号2、VHについては配列番号3、VLについては配列番号4。重鎖、H-CDR1、H-CDR2およびH-CDR3の相補性決定領域(CDR)に対応する配列は配列番号5、6および7に含まれ、一方、軽鎖CDR、L-CDR1、L-CDR2およびL-CDR3に対応する配列は配列番号8、9および10に含まれる。
【0187】
実施例2
キメラ抗体の生成
マウスモノクローナル抗体mAb01-01VHおよびVLヌクレオチド配列(VHヌクレオチドについては配列番号27、およびVLヌクレオチドについては配列番号28)を使用してキメラ抗体を合成した。この目的のために、PCRによりVH配列をヒトIgG1アイソタイプ定常ドメイン配列(IgG1定常ヌクレオチドについては配列番号31)と融合させ、VL配列をヒトIgKアイソタイプ定常ドメイン(IgK定常ヌクレオチドについては配列番号32)と融合させ、CHOベースの一過性発現系を使用して発現させた。生じた抗体を含む細胞培養上清を遠心分離および濾過により清澄化した。キメラ抗体をアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製した。還元および変性ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で判断して、抗体の純度を95%超と決定した。抗体をPBS緩衝液中のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によってタンパク質含量および濃度に関して分析した。全てのステップを最先端の設備および技法を用いて実施した。
【0188】
このアプローチは、結果としてキメラ抗体「HC0-LC0」を生じた。これの配列を表1にまとめる。
【0189】
【表2】
【0190】
実施例3
ヒト化抗体の生成
Fusion Antibodies Plc、Belfast、N.Irelandによる標準的なCDR移植技術を使用してマウスCDRを成熟ヒト抗体フレームワークにインシリコ移植することによりmAb01-01のヒト化を行った。VH/VL界面および古典的ループ構造にとって重要な鍵となる残基は、CDRxプラットホーム(Fusion Antibodies Plc、Belfast、N.Ireland)を使用してヒト化変異体内にできるだけ維持された。続いて、融合抗体により生成されたヒト化変異体のアミノ酸配列を、Geneiouseソフトウェア(Geneious Prime 2、Auckland、New Zealand)を使用してヌクレオチド配列に変換した。PCRによりVH配列をヒトIgG1アイソタイプ定常ドメイン配列(IgG1定常ヌクレオチドについては配列番号31)と、およびVL配列をヒトIgKアイソタイプ定常ドメイン(IgK定常ヌクレオチドについては配列番号32)と融合することにより、16対のヒト化重鎖および軽鎖を産生し、抗体遺伝子配列がチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)において一過性に発現した。バッチ培養後、発現したヒト化抗体を細胞培養上清から精製し、HC0-LC0について実施例2に記載されているように分析した。表2に示されるよう8種のヒト化抗体が首尾よく得られた。
【0191】
【表3】
【0192】
実施例4
IGLV3-21 R110 -BCRおよびIGLV3-21 G110 -BCR発現TKO細胞へのmAb01-01の結合
蛍光マーカーに結合された抗体を使用したFACSアッセイにおいて、選択において観察された抗体mAb01-01の特異性(実施例1)を検証した。
【0193】
この目的のために、実施例1による3種の異なるTKO細胞株から、2種の細胞混合物、細胞ミックスAおよび細胞ミックスBを調製し、続いてmAb01-01-APCで染色した(mAb01-01をImmunotools GmbHによる蛍光マーカーAPCと結合させた)。対照について、各バッチを抗IgM抗体(抗ヒトIgM-PE、Clone:MHM-88、BioLegendカタログ番号:314508)でさらに染色した。
【0194】
PBS緩衝液(Gibco、pH7.2、カタログ番号20012-019)中1:1比のIGHV3-21/IGLV3-21R110B細胞受容体発現TKO細胞およびB細胞受容体陰性(空ベクター;対照)TKO細胞で細胞ミックスAを調製した。
【0195】
PBS緩衝液中1:1比のIGHV3-21/IGLV3-21G110B細胞受容体発現TKO細胞およびB細胞受容体陰性(空ベクター;対照)TKO細胞で細胞ミックスBを調製した。
【0196】
PBS緩衝液中の抗体の希釈液(100μlの全体積中、5μg/ml mAb01-01-APC、2μg/ml抗ヒトIgM-PE)に細胞ミックスAまたはBの細胞をFACSチューブあたりおよそ10細胞で懸濁させ、暗所にて4℃で15分間インキュベートした。次に、細胞を冷PBS緩衝液1mlで1回洗浄し、冷PBS緩衝液200μLに再懸濁させた。
【0197】
MACSQuant Analyzer 10を使用することによりFACS解析を実施した(Miltenyi Biotec B.V. & Co. KG;装置を製造業者により推奨されるように校正した、流速:低、ミックス サンプル:ミックス 穏やか、モード、標準、取込み量:50μL、サンプル量:200μL)。細胞ミックスAまたは細胞ミックスBのTKO細胞を側方散乱(SSC)対前方散乱(FSC)においてゲートし、ゲートしたTKO細胞を抗IgM-PE対mAb01-01-APCドット-プロットにおいて分析して、象限統計を使用して異なるTKO細胞集団を数えた。
【0198】
図1A~1Dに示されるように、mAb01-01は、ヒトIGLV3-21R110-BCRを発現するマウスTKO細胞に結合するのに対し、ヒトIGLV3-21G110-BCR発現TKOマウス細胞に対しては結合は起こらない。
【0199】
実施例5
IGLV3-21 R110 B細胞受容体に対する抗体の親和性
IGLV3-21R110を持つB細胞受容体に対する抗体の結合親和性を定義するために、可溶性組換えバージョンのBCR(170.5kDa;HCについては配列番号51およびLCについては配列番号52による配列)を、実施例1に記載されたプロトコールを使用した一過性発現により単量体ヒトIgMとして293-HEK細胞株において作製し、固定化抗IGLV3-21R110抗体への結合をFortebio Octet装置(Satorius)でBio-Layer Interferometry(BLI)によりモニターした。
【0200】
抗IGLV3-21R110抗体を間接的捕捉試薬、抗ヒトIgG Fc抗体によりバイオセンサー上にまず固定化することによりカイネティックアッセイを実施した。抗IGLV3-21R110抗体を0.01875μg/mlの濃度で負荷して、0.30~0.34nmの間の抗IGLV3-21R110抗体捕捉レベルを発生させた。ランニングバッファー(PBS、0.02% Tween20、0,1%BSA、0.05%ナトリウム酸)中の9nM BCR断片溶液を調製し、1:3に段階希釈して、9~0.012nM(9nM、3nM、1nM、0.333nM、0.111nM、0.037nM、および0.012nM)の7種の濃度を得た。次いで、異なる濃度の可溶性BCR断片が入ったウェルに抗IGLV3-21R110抗体捕捉バイオセンサーを900秒間(会合段階)沈め、その後、ランニングバッファー中の1200秒の解離ステップが続いた。1000rpmの一定の振盪速度でステップを実施した。全ての試薬を製造業者により記載されたように使用した。捕捉抗IGLV3-21R110抗体の自然解離ならびにセンサー表面への可溶性BCR断片の非特異的結合の両方を補償する二重基準補正(緩衝液およびブランクセンサー)後にセンサーグラムを生成した。Fortebio Data Analysisソフトウェア(Satorius)を使用してセンサーグラムを一次1:1結合モデルと適合させることにより得られた会合定数(k)および解離速度定数(k)の比に基づいて解離速度定数(K)を計算した。
【0201】
表3に示されるように、キメラ抗体HC0-LC0は、およそ120nMのK値で可溶性IGLV3-21R110B細胞受容体と結合する。ヒト化抗体HC6-LC6およびHC7-LC6は、キメラ抗体HC0-LC0のものと同様の結合特性を示し、キメラ抗体HC01 LC01の2倍以内の解離定数を示す。全てのヒト化抗体のK値については、表3を参照されたい。
【0202】
【表4】
【0203】
実施例6
IGLV3-21 R110 -BCR陽性ヒトB-CLL細胞の細胞表面へのマウス抗体mAb01-01の結合
IGLV3-21R110-B細胞受容体陽性ヒトCLL細胞対非IGLV3-21R110ヒトB細胞上のmAb01-01の結合特性を決定するために、結合をフローサイトメトリーにより試験した。
【0204】
この目的のために、2名のCLL患者の凍結保存された末梢血単核細胞(PBMC)を使用した。これらの患者のうちの1名におけるCLLをIGLV3-21R110の存在によって特徴付けた。より具体的には、CLL細胞は、IGHV4-39重鎖とのIGLV3-21R110の組合せを含むBCR(IGHV4-39/IGLV3-21R110-BCR)を発現した。他の患者は、非IGLV3-21R110 CLLを患っていると診断されていた。例えばBoyum A. Isolation of mononuclear cells and granulocytes from human blood. Scan. J. Clin. Lab. Invest 1968, 21 (Suppl. 97): 77-89により当技術分野において既知である技法を使用して、Ficoll-Paque PLUS(GE Healthcare Bio-Sciences AB)密度勾配遠心分離によりPBMCをヘパリン加静脈血から分離することができた。
【0205】
解凍され、細胞培養培地(RPMI、Gibco;10%FCS、PAN-Biotec)5mlに再懸濁させたサンプルである細胞300gで遠心分離(Eppendorf遠心分離機5425R)し、その後、RPMI 1mlへの追加の再懸濁が続いた。Neubauer Chamberを使用することにより細胞数を得た。染色のために1×10E6細胞を使用し、FACSチューブに移した。PBS緩衝液100μlの全体積中抗CD19 VioBright515(Miltiny Biotech、Klon:REA675、)2μl、抗CD5-PE-Vio770(Miltenyi Biotec、Klon:REA782)2μl、およびmAb01-01-APC(mAb01-01をImmunotools GmbHによる蛍光マーカーAPCと結合させた)5μlを使用して細胞を染色し、暗所にて4℃で15分間インキュベートした。次に、細胞を冷PBS緩衝液1mlで1回洗浄し、冷PBS緩衝液200μLに再懸濁させ、BD LSRFortessa(商標)Cell Analyzer(BDbioscience)を使用したフローサイトメトリーにより分析した。装置を製造業者により推奨されるように校正した。生データの解析は、FlowJo-Software X(BDbioscience)を使用することにより実施された。解析ゲートは、図2に示されるように設定された。
【0206】
図2に示されるように、mAb01-01は、IGLV3-21R110陽性CLL B細胞に排他的に結合するが、IGLV3-21R110を持たないCLL患者のBCRに排他的に結合しない。より具体的には、mAb01-01は、重鎖の性質に関係なくIGLV3-21R110-BCRを認識する。
【0207】
実施例7
IGLV3-21 R110 -BCR陽性マウスTKO細胞の細胞表面へのキメラ抗体およびヒト化抗体の結合特性
キメラ抗体および2種のヒト化バージョンの特異的IGLV3-21R110-BCR結合を比較するために、IGLV3-21R110-BCRマウスTKO細胞(実施例1参照)を異なる濃度の抗体HC0-LC0、HC6-LC6およびHC7-LC6とインキュベートし、フローサイトメトリーおよびサンドイッチアッセイセットアップにより分析した。TKO-空ベクター細胞株(表面BCRなし)を用いて制御を実施した。
【0208】
各細胞株から、7.5×10E6細胞を別々の15mlブルーキャップに移し、10分間(300g、4℃で)遠心分離し、PBS(Gibco)1,5mlに再懸濁させる。
【0209】
染色は、96ウェルプレート(VWR、U字底、無処置)において実施された。各反応について2×10E5細胞を使用した。実験セットアップを表4に示す。
【0210】
【表5】
【0211】
異なるヒト化変異体の結合特性を特徴付けるために、200μl/ウェルの全体積中、PBS中の10種の異なる濃度の各抗体を染色のために使用した(10、5、2.5、0.625、0.31、0.16、0.08、0.04、0μg/ml)。インキュベーションを4℃で30分間実施した(暗所)。次いで、96ウェルを300g、4℃で10分間遠心分離した(VWR、MEGA STAR 1.6R)。上清を捨て、細胞を氷冷PBS100μlに再懸濁させた。検出のために、APCで標識したヒトIgG1に向けられた二次抗体を10μg/mlの最終濃度で使用した。
【0212】
インキュベーションを全体積200μl/ウェル中、暗所にて4℃で15分間実施し、その後、氷冷PBSでの追加の洗浄ステップが続いた。細胞を取得のために氷冷PBS 150μlに再懸濁させた。製造業者の指示に従って校正されたMACS-Quant10(Miltenyi Biotec)で細胞を分析した。
【0213】
対照細胞値を引くことにより、全てのIGLV3-21R110-BCR TKO測定のMFI(蛍光強度中央値)を中和し、抗体の濃度に対してプロットした。3種全ての抗体についてIGLV3-21R110-BCRの結合の濃度依存的な増加を示す関数が生成された。図3に示されるように、2種のヒト化変異体は、抗体濃度の増加と共に次第にキメラ抗体と同一の結合特性を示し、遅くとも10μg/mlにおいてほぼ同一の結合特異性を有する。
【0214】
実施例8
mAb01-01の組織交差反応性プロファイル
免疫組織化学(IHC)実験においてヒトCLLおよび健常組織に対するmAB01-01の結合特性を決定するために、IGLV3-21R110-BCRを発現する脾臓組織ならびに健常な脾臓、皮膚、腎臓、心臓、および脳組織の切片に対して免疫染色を実施した。
【0215】
IHCの前に、組織切片を脱パラフィンし、水和した。抗原をアンマスクするために、クエン酸塩緩衝液pH6.0(クエン酸(0.1M)9mlおよびクエン酸ナトリウム(0.1M)41ml)でのマイクロ波処理を実施した。これのために、切片を泡立っているクエン酸塩緩衝液中で15分間煮沸し、この後、それらを室温で30分間冷やし、次いで、それらをPBS中で3×5分すすいだ。IHCのために、スライドを湿度チャンバー内で第1の抗体と1:200の希釈度で室温にて2時間インキュベートした。対照として、全ての組織の切片を第1の抗体がない同一条件下でインキュベートした。その後、スライドをPBS中で3×5分洗浄した。二次抗体としての西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートした抗IgG抗体(ヤギ抗マウスIgG(H+L)-HRP、Southern Biotech、カタログ番号1036-05)を加湿チャンバー内で1:10000の希釈度で室温にて1時間インキュベートした。続いて、これをPBSで10分間洗浄し、DAB基質キット(#34065、Thermo Fisher)を使用して、HRPの活性を検出した。DAB(3,3’-ジアミノベンジジン四塩酸塩)基質を15分間インキュベートした。Fluoromount-1をキャッピング剤として使用した。評価を30分後に行い、HRPコンジュゲート抗IgG抗体が組織に結合された部位において不溶性の褐色反応生成物を示した。
【0216】
図4に示されるように、IGLV3-21R110-BCR陽性脾臓切片について陽性染色を観察することができた。したがって、mAb01-01は、ヒトCLL組織への結合において交差反応性である。対照的に、脾臓、皮膚、腎臓、心臓、および脳の健常ヒト組織切片において染色は検出されなかった。したがって、mAB01-01は、健常ヒト組織に対して交差反応性を示さない。
【0217】
実施例9
患者由来の異種移植モデルにおける抗IGLV3-21 R110 -BCR抗体の試験
抗IGLV3-21R110抗体の効果を決定するために、患者由来の異種移植モデルを選んだ。用量設定実験のために、4匹のNOD-scid IL2rgヌル(NSG)-マウス(Jackson ImmunoResearch、Qi J et al.: An IgG1-like bispecific antibody targeting CD52 and CD20 for the treatment of B-cell malignancies, Methods 2019, 154:70-76に記載されているように用意された)を含む4群を使用した:
群A:抗体処置なしの対照群
群B:用量0.3mg/kg体重
群C:用量5mg/kg体重
群D:用量10mg/kg体重
IGLV3-21R110-BCR患者からのPMBSを解凍し、PBSに再懸濁させた。T細胞は、製造業者により提供された使用説明書に従ってMiltenyi CD3ビーズ(Miltenyi Biotec)を使用することにより分離した。前述のようにCD3/CD28ダイナビーズ(Dynabeads(商標)Human T-Activator CD3/CD28 for T Cell Expansion and Activation、カタログ番号11161D、GIBCO)を使用してT細胞を7日間培養および増殖した(Qi J et al. Methods, 2019も参照)。
【0218】
7日後、活性化T細胞およびPBMC(マウスあたり20×10CLL PBMCおよび5×10T細胞)をNSGマウスに静脈内注射した。処置のために、mAb01-01を異なる投与量で腹腔内に移植後第2週に開始して、週2回、合計3週間与えた。マウスは、毎週始めにヒト血清250μlでプレコンディショニングした。3週間の処置後、マウスを屠殺した。分析のために脾臓を単離し、mAb01-01およびヒトCD45、CD5、およびCD19に対する抗体(CD5 IgG1 UCHT2、BioLegend;CD19 IgG1 HIB19、BD Biosciences;CD45(ヒト)IgG1 H130 Invitrogen)を使用してフローサイトメトリーによりヒトIGLV3-21R110陽性CLL B細胞の存在に関して分析した。フローサイトメトリーのために、細胞を遠心分離により回収し、PBS中の氷冷0.1%(w/v)BSA(フローサイトメトリー緩衝液)に再懸濁させた。5×10細胞を含む100μLをV字底96ウェルプレート(Corning)に分配した。細胞をまず5%(v/v)ヤギ血清(Jackson ImmunoResearch)で氷上にて30分間ブロックし、次いで、製造業者により推奨されるように、示された抗体とインキュベートした。細胞を暗所で氷上にて30分間インキュベートした。次いで、細胞を氷冷フローサイトメトリー緩衝液で2回洗浄し、フローサイトメトリー緩衝液200μLに再懸濁させ、FACSCanto(BD Biosciences)を使用して分析した。
【0219】
図5に示されるように、mAb01-01での処置は、処置された全てのマウスにおいて腫瘍細胞数の減少につながり、10mg/kg mAb01-01での処置は、この上なく腫瘍成長を低下させた。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8-1】
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