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特許7401166抗BTN3A抗体及びがん又は感染性障害の処置におけるその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】抗BTN3A抗体及びがん又は感染性障害の処置におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20231212BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20231212BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231212BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231212BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231212BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231212BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231212BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61P35/00
A61K39/395 T
A61K38/20
A61K9/19
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021529521
(86)(22)【出願日】2019-07-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 EP2019070693
(87)【国際公開番号】W WO2020025703
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】18306050.8
(32)【優先日】2018-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19153992.3
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520098187
【氏名又は名称】イムチェック セラピューティクス エスエーエス
【氏名又は名称原語表記】IMCHECK THERAPEUTICS SAS
(73)【特許権者】
【識別番号】511074305
【氏名又は名称】インセルム(インスティチュート ナショナル デ ラ サンテ エ デ ラ リシェルシェ メディカル)
(73)【特許権者】
【識別番号】521045623
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ エクス マルセイユ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE AIX MARSEILLE
(73)【特許権者】
【識別番号】520098202
【氏名又は名称】インスティテュート ジャン パオリ アンド イレーヌ カルメット
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT JEAN PAOLI & IRENE CALMETTES
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】トルーネ, アレムセゲド
(72)【発明者】
【氏名】オリーヴ, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】パセロ, クリスティーン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ ギャサート, オード
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0353643(US,A1)
【文献】特表2014-503522(JP,A)
【文献】特表2013-503852(JP,A)
【文献】特表2013-535190(JP,A)
【文献】特表2017-521097(JP,A)
【文献】Japanese Journal of Transfusion and Cell Therapy,Vol.62, No.1,2016年,p.3-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C12P 21/08
A61P 35/00
A61K 39/395
A61K 38/20
A61K 9/19
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1の可変重鎖ポリペプチドVH及び配列番号2又は配列番号3の可変軽鎖ポリペプチドVLを含む単離された抗BTN3A抗体。
【請求項2】
ヒトBTN3Aポリペプチドに結合する、請求項1に記載の単離された抗BTN3A抗体。
【請求項3】
表面プラズモン共鳴により測定した場合、ヒトBTN3Aポリペプチドに10nM又はそれ未満のKで、好ましくは5nM又はそれ未満のKで結合する、請求項1又は2に記載の単離された抗BTN3A抗体。
【請求項4】
前記抗体が、脱顆粒アッセイにおいて測定した場合、BTN3発現細胞との共培養においてVγ9Vδ2-T細胞の活性化を、5μg/ml未満の、好ましくは1μg/ml又はそれ未満のEC50で誘導する、請求項1~3のいずれか一項に記載の単離された抗BTN3A抗体。
【請求項5】
変異体又は化学的に改変されたIgG1定常領域を含み、前記変異体又は化学的に改変されたIgG1定常領域が、野生型IgG1アイソタイプ定常領域を有する対応する抗体と比べた場合、Fcγ受容体に結合しない又は結合が減少している、請求項1~4のいずれか一項に記載の単離された抗BTN3A抗体。
【請求項6】
前記変異体IgG1定常領域がIgG1三重変異体L247F L248E及びP350Sである、請求項5に記載の単離された抗BTN3A抗体。
【請求項7】
配列番号4の重鎖及び配列番号6の軽鎖を含むmAb1である、請求項1~6のいずれか一項に記載の単離された抗BTN3A抗体。
【請求項8】
(i)治療薬として又は(ii)診断薬として使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の単離された抗BTN3A抗体。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の単離された抗BTN3A抗体を含む第1の医薬組成物、及び、抗PD1若しくは抗PD-L1抗体、又はIL-2若しくはIL-15などのサイトカイン又はそのペグ化バリアントを含む第2の医薬組成物を含む、がんの処置のための医薬組成物キット。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載の単離された抗BTN3A抗体を含む第1の医薬組成物、及び、抗PD1抗体を含む第2の医薬組成物を含み、前記抗PD1抗体がペムブロリズマブである、がんの処置のための医薬組成物キット。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか一項に記載の単離された抗BTN3A抗体を含む第1の医薬組成物、及び、IL-2を含む第2の医薬組成物を含む、がんの処置のための医薬組成物キット。
【請求項12】
前記抗BTN3A抗体が、配列番号4の重鎖及び配列番号6の軽鎖を含むmAb1である、請求項10又は11に記載の医薬組成物キット。
【請求項13】
請求項1に記載の抗BTN3A抗体を、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体のうちの1つ又は複数と組み合わせて含む医薬組成物。
【請求項14】
任意選択で、他の活性成分、例えば、抗PD1若しくは抗PD-L1抗体、又はIL-2若しくはIL-15などのサイトカインと組み合わせて投与される、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記他の活性成分が抗PD1抗体を含み、前記抗PD1抗体がペムブロリズマブである、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記他の活性成分がIL-2を含む、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記抗BTN3A抗体が、配列番号4の重鎖及び配列番号6の軽鎖を含むmAb1である、請求項15又は16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
請求項1~7のいずれか一項に記載の抗BTN3A抗体を含む凍結乾燥製剤、プレフィルド注射器又はバイアル。
【請求項19】
宿主細胞における請求項1~7のいずれか一項に記載の抗BTN3A抗体の組換え産生のための発現ベクターであって、前記抗BTN3A抗体をコードする少なくとも1つの核酸を含む発現ベクター。
【請求項20】
少なくとも、請求項7に定義されるmAb1の重鎖及び軽鎖をコードする核酸を含む、請求項19に記載の発現ベクター。
【請求項21】
請求項19又は20に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項22】
請求項1~7のいずれか一項に記載の抗BTN3A抗体の産生のためのプロセスであって、(i)宿主細胞による前記抗体の発現のための請求項21に記載の宿主細胞を培養するステップ;任意選択で(ii)前記抗体を精製するステップ;(iii)前記抗体を回収するステップを含むプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
これより、BTN3Aに特異的に結合しVγ9/Vδ2 T細胞の細胞溶解機能を活性化する抗BTN3A活性化抗体が開示する。そのような抗体は、特に血液がん又は固形腫瘍などのがん障害を処置するのに有用である。本開示はさらに具体的には、対応する親マウス抗体7.2と比べて等価な若しくは改良された特性を有する特定のヒト化抗BTN3A活性化抗体、又はFc発現停止されたヒトIgG1若しくはIgG4定常領域を有するそのキメラバージョンに関する。
【背景技術】
【0002】
白血球は、病原体から身体を防御することに関与している免疫系の細胞である。これらの細胞のうち、特にリンパ球、単球、及び樹状細胞を挙げることができる。単球は血流から他の組織に遊走して、組織常在性マクロファージ又は樹状細胞に分化する。樹状細胞は、リンパ球を活性化する抗原提示細胞(APC)としての役割を果たす。リンパ球のうち、T細胞はαβ T細胞とγδ T細胞に分割することができる。γδ T細胞のサブセットである、Vγ9-Vδ2は、免疫防御系の重要なエフェクターである。Vγ9-Vδ2は、病原体感染した又は異常な細胞を直接溶解する。さらに、Vγ9-Vδ2は、樹状細胞(DC)成熟並びにアイソタイプスイッチ及び免疫グロブリン産生を誘導することにより免疫応答を調節する。免疫系のこの重要な細胞サブセットは、表面受容体、ケモカイン及びサイトカインにより厳密に調節されている。
【0003】
T細胞のプライミングは、特殊化した細胞の関与及び走化性サイトカインの分泌により調節される。2シグナル仮説は、T細胞活性化は、2つの相乗的イベントの結果であると仮定している。第1は、T細胞受容体(TCR)と抗原提示細胞(APC)の表面のプロセシングされた抗原と複合体を形成した主要組織適合抗原複合体(MHC)の間の相互作用である。第2のイベントは、CD28及びB7分子に関連する共刺激抗原非依存性シグナルである。共刺激シグナルが欠けるとアネルギー及び非応答性が誘動され、T細胞増殖、サイトカイン分泌、及び細胞傷害活性が存在しなくなる。これらの経路の研究により、自己免疫又はリンパ増殖性障害などの病理学的イベントの始動についての洞察が得られる。B7ファミリーは共刺激分子の拡張グループである(Coyle and Gutierrez-Ramos、2001年;Sharpe and Freeman、2002年)。B7ファミリーには、リガンドB7-1(CD80)及びB7-2(CD86)が属しており:これらリガンドの受容体は、T細胞活性化をもたらすCD28、及びCD28と競合して阻害シグナルを伝達するCTLA-4(CD152)である(Alegreら、2001年に概説されている)。T細胞活性化の負の制御因子としてのCD152の極めて重要な役割は、CTLA-4欠損マウスにおけるリンパ増殖性障害の発生により実証されている。CD152により発現される阻害機能に関する重要な知見は、T細胞プライミング中のナイーブTリンパ球による増殖又はサイトカイン産生の研究から得られる。特に、CD152はTリンパ球活性化に続いて発現され、PHA刺激又はAg選択に続いて得られるCTLクローンの細胞溶解機能を阻害する。B7-H1(PD-L1、CD274)及びB7-DC(PD-L2、CD273)は、その受容体がPD-1(CD279)であるが、T細胞増殖及びサイトカイン分泌を阻害することが判明した(Sharpe and Pauken、2018年に概説されている)。他の点では、異なる研究により、PD-L1とPD-L2会合がT細胞増殖及びIL-10又はIFN-γ産生を増やすことが明らかにされた。他の分子は、B7-H2(ICOS-L)を含む、T細胞の表面で発現されるB7ファミリーに関係しており、さらに最近になって同定されたB7-H3、B7-H4、B7-H5、B7-H6、及びB7-H7も免疫機能のチェックポイント制御因子としての関与が示唆された(Ni and Dong、2017年に概説されている)。
【0004】
Henryら、(1999)は、ブチロフィリン(BT)をコードする領域がヒト第6染色体上のMHCクラスI領域からテロメア位置にあることを発見した。特に彼らは、Igスーパーファミリー(IgSF)に属する共刺激分子の新たなグループ(BT2.1、BT2.2、BT2.3、BT3.1、BT3.2及びBT3.3)をコードし(Linsleyら、1992年;Williams and Barclay、1988年)、配列類似性分析によりB7ファミリーに関係付けられる2つの遺伝子Bt2及びBt3を記載しており:特に彼らは、CD80とCD86のIg-V様細胞外ドメインとの類似性を明らかにしている。
【0005】
BT3ファミリーメンバーは異なる名称で文献に現れ:BT3.1は、BTF5(Ruddyら、1997年)、又はBTN3A1(Rhodesら、2001年)、又はさらに最近ではCD277(Bensussan and Olive、2005年)とも呼ばれ;BT3.2は、BTF4(Ruddyら、1997年)、又はBTN3A2とも呼ばれ;最後に、BT3.3は、BTF3(Ruddyら、1997年)、又はBTN3A3(Rhodesら、2001年)としても現れる。BT3はIgSFを特徴付ける2つのIg様細胞外ドメインを有する。
【0006】
B7遺伝子並びにMHCクラスI及びII遺伝子は共通の先祖遺伝子を有し、T細胞活性化などの類似する機能に関与するタンパク質をコードすることが提唱されていた(Rhodesら、2001年)。BT3分子は、T、B及びNK細胞、単球及び樹状細胞などの免疫細胞並びに造血前駆体及び一部の新生物細胞株で見い出された。他の共刺激分子に関しては、その構造は、3つのドメイン:リガンドに結合する細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン及びおそらく細胞内スーパーオキシド濃度の調節に関与しているB30.2と呼ばれる細胞内ドメインにより特徴付けられる。これまでのところ、CD277のリガンド(複数可)はまだ知られていない(Guら、2015年に概説されている)。
【0007】
今まで、T細胞の調節を頼りにする種々の治療及びワクチン戦略が提唱されており;CTLA-4、PD-1及びPD-L1に対するいくつかの免疫調節抗体は、世界中の複数の規制機関によりすでに臨床使用を承認されている。これらの薬物はがん療法において大きな前進を表しているが、現在利用可能な処置に応答しないがん患者集団の大部分に対して満たされていない医療ニーズがまだ残っている。
【0008】
特許国際公開第2012/080351号、欧州特許出願公開第2651441号、欧州特許出願公開第2946791号、米国特許出願公開2014/0322235号、国際公開第2012/080769号は、Vγ9 Vδ2 T細胞の細胞溶解機能、サイトカイン産生及び増殖を活性化する又は阻害することができるBTN3Aに対する種々の抗体に言及している。しかし、これらのマウス抗体は治療応用には適していなかった。実際、ヒト患者への投与では、免疫原性反応を回避するためには抗体をヒト化することが今日では必須である。
【0009】
ヒト化は、効力を元のマウス抗体の同じレベルに維持する確実性なしでフレームワーク領域においてアミノ酸を改変する必要があることが多い。これは、CDR領域にすぐ隣接するアミノ酸を改変する場合に特に当てはまる(例えば、Queen patent US5,585,089参照)。
【0010】
その困難さにもかかわらず、本発明者らは、活性化mAb 7.2の特別なヒト化抗体を今や選択しており、この抗体はmAb 7.2親抗体の維持された機能特性をヒトに対して予測される減少した免疫原性と組み合わせるだけではなく、驚くべきことに、親マウス抗体と比べた場合、細胞株生産の改善された収率、さらに高い熱安定性などの優れた開発可能性、並びに酸及び熱ストレスに対する強い抵抗性も示す。さらに、本開示のヒト化抗体mAb1は、有利なことにカニクイザルBTN3Aに結合し、カニクイザル霊長類において100mg/kg/週の用量まで十分に許容的であり、それによって、ヒト治療における薬物として使用するための優秀な候補を提供する。
【発明の概要】
【0011】
したがって、本開示は、配列番号1の可変重鎖ポリペプチドVH及び配列番号2又は配列番号3の可変軽鎖ポリペプチドVLを含む単離された抗BTN3A抗体に関する。そのような抗体は、特にその親マウス抗体に対して予測される減少した免疫原性を有するヒト化抗体である。そのような単離された抗BTN3A抗体はヒトBTN3Aに結合する。特に、そのような単離された抗BTN3A抗体は、表面プラズモン共鳴により測定した場合、ヒトBTN3Aに10nM又はそれ未満のKで、好ましくは5nM又はそれ未満のKで結合する。
【0012】
特定の実施形態では、本開示に従った前記抗体は、脱顆粒アッセイで測定した場合、BTN3発現細胞と共培養においてγδ-T細胞、典型的にはVγ9Vδ2 T細胞の活性化を、5μg/ml未満の、好ましくは、1μg/ml又はそれ未満のEC50で誘導する。その結果、前記抗体は、腫瘍標的細胞の殺傷をその組織起源とは無関係に誘導する。
【0013】
特定の実施形態では、前記単離された抗BTN3A抗体は、変異又は化学的に改変されたIgG1定常領域を含み、前記変異又は化学的に改変されたIgG1定常領域は、野生型IgG1アイソタイプ定常領域を有する対応する抗体と比べた場合、Fcγ受容体に結合しない又は結合が減少している。典型的には、前記変異IgG1定常領域はIgG1三重変異体L247F L248E及びP350Sである。前記単離された抗BTN3A抗体の例は、配列番号4の重鎖及び配列番号6の軽鎖を含むmAb1、又は配列番号4の重鎖及び配列番号7の軽鎖を含むmAb2である。
【0014】
他の実施形態では、本開示の前記単離された抗BTN3A抗体は、好ましくは、Fab又はscFv抗体から選択される一価フォーマット抗体である。
【0015】
本開示の単離された抗BTN3A抗体は、(i)治療薬として又は(ii)診断薬として使用してもよい。例えば、これらの抗体は、がん、例えば、血液のがん、さらに具体的には、リンパ腫又は白血病の処置において有用である。他の実施形態では、これらの抗体は、固形腫瘍、さらに具体的には、前立腺、卵巣又は子宮内膜がんの処置にも使用することができる。あるいは、これらの抗体は、感染性障害の処置に使用してもよい。
【0016】
本開示は、上述の抗BTN3A抗体を、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体のうちの1つ又は複数と組み合わせて含み、任意選択で他の活性成分を含む医薬組成物にさらに関する。
【0017】
本開示の別の態様は、上述の抗BTN3A抗体を含む凍結乾燥製剤、プレフィルド注射器又はバイアルに関する。
【0018】
本開示は、宿主細胞、典型的にはCHO宿主細胞などの哺乳動物宿主細胞における上述の抗BTN3A抗体の組換え産生のための発現ベクターであって、前記抗BTN3A抗体をコードする少なくとも1つの核酸を含む発現ベクターに関する。そのような発現ベクターの実施形態は、少なくとも、本明細書に開示されるmAb1の重鎖及び軽鎖をコードする核酸を含む。そのような発現ベクターを含む宿主細胞も本明細書に記載されている。
【0019】
本開示の抗BTN3A抗体の産生のためのプロセスであって、(i)宿主細胞による前記抗体の発現のために上で定義される宿主細胞を培養するステップ;任意選択で(ii)前記抗体を精製するステップ;(iii)抗体を回収するステップを含む、プロセスも本明細書で開示される。
【0020】
本開示は、上で定義される抗BTN3A抗体のVH及びVLを含むFab又はscFvを含む少なくとも1つのアームを含む、二重特異性抗体などの多特異性抗体にさらに関する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】PBMCから増やしたヒトVγ9Vδ2 T細胞は、mAb1(又は対応するアイソタイプ対照)の指示された濃度で4時間の間、E対T 1対1の比でダウディ細胞株(バーキットリンパ腫)と一緒に共培養した。細胞は、CD107a及びCD107bに対する抗体で染色され、ポジティブ発現についてのゲートは非刺激対照に基づいていた。実験は3人の健康なドナーを用いて行った。
図1B】ダウディ細胞は、指示された濃度のmAb1(又は対応するアイソタイプ対照)で37℃で1時間プレインキュベートした。徹底的に洗浄後、mAbパルスされたダウディ細胞は、ダウディでカスパーゼ3/7活性を測定する前に37℃で、増やしたヒトVγ9Vδ2 T細胞と一緒に4時間の間、共培養した。A及びBでは、カーブフィッティングはGraphPad Prismソフトウェアからシグモイド4PL方程式を使用して得た。
図1C】(A)及び(B)に前に記載されたのと同じプロトコールを使用して、ダウディ細胞株と比べて他の腫瘍性細胞株(L-IPC:膵管腺癌、HT29:結腸直腸腺癌、A549:肺癌)に対して10μg/mLで使用されたmAb1(及び対応するアイソタイプ対照)の有効性を評価した。
図2A】mAb1はVγ9Vδ2 T細胞によるBTN3A発現標的細胞殺傷を媒介する。10,000HL60-WT又はBTN3AKO細胞(急性骨髄性白血病)を、漸増濃度のmAb1(又は関連アイソタイプ対照 hIgG1)+/-rHuIL-2(20 IU/ml)の存在下で、インビトロ増殖させたVγ9Vδ2 T細胞と一緒に24時間共培養した(1対1のE対T比)。細胞生存率は、ATPレベルを検出する生物発光アッセイを使用して測定した。
図2B】mAb1はVγ9Vδ2 T細胞によるBTN3A発現標的細胞殺傷を媒介する。10,000HL60-WT細胞を、漸増濃度のmAb1(又は関連アイソタイプ対照 hIgG1)+/-rHuIL-2(20 IU/ml)の存在下で、インビトロ増殖させたVγ9Vδ2 T細胞と一緒に4日間共培養した(1対1のE対T比)。細胞生存率は毎日測定した。
図2C】mAb1はVγ9Vδ2 T細胞によるBTN3A発現標的細胞殺傷を媒介する。10,000HL60-WT細胞を、漸増濃度のmAb1+rHuIL-2(20 IU/ml)の存在下で、ヒトPBMCから単離した新鮮なVγ9Vδ2 T細胞と一緒に4日間共培養した(1対1及び1対5のE対T比)。細胞生存率は毎日測定した。シグナル上のマーク。
図3】異なる組織起源の10,000腫瘍性細胞を、異なる濃度のmAb1の存在下で、インビトロ増殖させたVγ9Vδ2 T細胞と一緒に24時間共培養した(1対1のE対T比)。細胞生存率は、ATPレベルを検出する生物発光アッセイを使用して測定した。生物発光値を示している。4つのバーは左から右に、(1)mAbなし、(2)mAb1 0.1μg/ml、(3)mAb1 1μg/ml、(4)mAb1 10μg/mlを指す。
図4A】mAb1はカニクイザルVγ9Vδ2 T細胞の増殖及び活性化を促進する。3匹の動物由来のカニクイザル全血を、赤血球溶解バッファーを用いて処理した。徹底的に洗浄後、細胞は、200IU/mL rHuIL-2及びmAb1(10μg/mL)を含有する培地において1.5M/mLで蒔いた。Vγ9+T細胞の百分率は、特定の抗体を使用して0、3、6、8及び10日目にフローサイトメトリーにより評価した。グラフは、生細胞中のVγ9+T細胞百分率の動態を示している。それぞれの曲線は個々の動物を表している。
図4B】mAb1はカニクイザルVγ9Vδ2 T細胞の増殖及び活性化を促進する。10日間の増殖後、それぞれの動物由来の細胞は、培養培地、mAb1又はアイソタイプ対照(10μg/mL)の存在下、標的細胞として使用したダウディ、K562又はラージと一緒に4時間共培養し(1対1のE対T比)、フローサイトメトリーにより脱顆粒(CD107a/b)について分析した。
図5】ICT01投与後指示された時刻に収集されたカニクイザル血液試料は抗体の特定のカクテルで染色して、T細胞サブセット(CD4、CD8、Vγ9T細胞、調節性T細胞)、B細胞、単球、NK細胞、mDC、pDC及び顆粒球を定量し、フローサイトメトリーにより分析した。上のパネルは、単回投与動物についてCD3+T細胞中のVγ9δ2 T細胞の百分率を示した。下のパネルは、繰り返し投与動物についてCD3+T細胞中のVγ9δ2 T細胞の百分率を示した。データは、それぞれの試料採取時及び群において平均値±SDとして表されている。垂直方向の点線は、ICT01投与の時間を示した。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
本開示がもっと容易に理解されるように、ある特定の用語を先ず定義する。追加の定義は、詳細な説明の全体において表明される。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「BTN3A」は当技術分野でのその一般的な意味を有する。特定の実施形態では、この用語とは、配列番号18のBTN3A1、配列番号19のBTN3A2又は配列番号20のBTN3A3のいずれかを含むヒトBTN3Aポリペプチドのことである。
【0024】
本明細書で使用される用語「抗体」とは、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリンの免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子のことである。したがって、用語抗体は全抗体分子だけではなく、抗体断片並びに抗体のバリアント(誘導体を含む)も包含する。
【0025】
齧歯類及び霊長類の天然の抗体では、2つの重鎖はジスルフィド結合により互いに連結されており、それぞれの重鎖はジスルフィド結合により軽鎖に連結されている。軽鎖には2種類、ラムダ(λ)及びカッパ(κ)がある。抗体分子の機能活性を決定する5つの主な重鎖クラス(又はアイソタイプ):IgM、IgD、IgG、IgA及びIgEがある。それぞれの鎖ははっきり異なる配列ドメインを含有する。典型的なIgG抗体では、軽鎖は2つのドメイン、可変ドメイン(VL)及び定常ドメイン(CL)を含む。重鎖は、4つのドメイン、可変ドメイン(VH)及び3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3、併せてCHと呼ばれる)を含む。軽(VL)と重(VH)鎖の両方の可変領域は抗原に対する結合認識及び特異性を決定する。軽(CL)及び重(CH)鎖の定常領域ドメインは、抗体鎖会合、分泌、経胎盤性移動度、補体結合及びFc受容体(FcR)への結合などの重要な生物特性を与える。
【0026】
Fv断片は免疫グロブリンのFab断片のN終端部分であり、1つの軽鎖と1つの重鎖の可変部分からなる。抗体の特異性は、抗体結合部位と抗原決定基の間の構造的相補性に存在する。抗体結合部位は、主に超可変又は相補性決定領域(CDR)由来である残基で構成されている。時折、非超可変又はフレームワーク領域(FR)由来の残基が、抗体結合部位に関与する、又は全体的ドメイン構造、したがって、結合部位に影響を及ぼすことができる。相補性決定領域又はCDRとは、ナイーブ免疫グロブリン結合部位の天然のFv領域の結合親和性及び特異性を一緒に定義するアミノ酸配列のことである。免疫グロブリンの軽及び重鎖はそれぞれが、それぞれL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3及びH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と名付けられた3つのCDRを有する。したがって、抗原結合部位は典型的には、重鎖及び軽鎖V領域のそれぞれ由来のCDRセットを含む、6つのCDRを含む。フレームワーク領域(FR)とは、CDR間に挿入されたアミノ酸配列のことである。したがって、軽及び重鎖の可変領域は典型的には、以下の配列:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の4つのフレームワーク及び3つのCDRを含む。
【0027】
抗体可変ドメインの残基は従来、Kabatらにより考案された方式に従って番号付けされる。この方式は、Kabatら、1987年、Sequences of Proteins of Immunological Interest、US Department of Health and Human Services、NIH、USA(Kabatら、1992年、今後「Kabatら」)に表明されている。この番号付け方式は本明細書において使用されている。Kabat残基命名は必ずしも、SEQ ID配列でのアミノ酸残基の線形番号付けと直接一致しているわけではない。実際の線形アミノ酸配列は、基本的な可変ドメイン構造のフレームワークであれ相補性決定領域(CDR)であれ、構成成分の短縮化又は構成成分中への挿入に対応して厳格なKabat番号付けよりも少ない又は追加されたアミノ酸を含有することがある。残基の正確なKabat番号付けは、所与の抗体について、その抗体の配列中の相同な残基を「標準」Kabat番号付け配列と整列させることにより決定することができる。重鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付け方式に従えば、残基31~35(H-CDR1)、残基50~65(H-CDR2)及び残基95~102(H-CDR3)に位置している。軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付け方式に従えば、残基24~34(L-CDR1)、残基50~56(L-CDR2)及び残基89~97(L-CDR3)に位置している。
【0028】
特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、抗体断片、さらに詳細には、本明細書に開示される抗体の抗原結合ドメインを含む任意のタンパク質である。抗体断片は、Fv、Fab、F(ab’)2、Fab’、dsFv、scFv、sc(Fv)2及びダイアボディを含むがこれらに限定されない。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「特異性」とは、抗体が、BTN3Aなどの抗原上に示されるエピトープに検出できるほどに結合する能力のことである。一部の実施形態では、この用語は、末梢血骨髄細胞(PBMC)上で発現されるヒトBTN3Aに、好ましくは、実施例において決定される50μg/ml未満の、さらに好ましくは10μg/mlよりも下のEC50で、結合する抗体を指すことが意図されている(表4参照)。他の実施形態では、この抗体は、実施例において決定されるSPR測定により測定された場合、抗原組換えポリペプチドに、100nM若しくはそれ未満、10nM若しくはそれ未満、1nM若しくはそれ未満、100pM若しくはそれ未満、又は10pM若しくはそれ未満のKで結合する(表4参照)。
【0030】
「BTN3A以外の抗原と交差反応する」抗体とは、BTN3A以外のその抗原に10nM若しくはそれ未満、1nM若しくはそれ未満、又は100pM若しくはそれ未満のKで結合する抗体を指すことが意図されている。「特定の抗原と交差反応しない」抗体とは、その抗原に100nM若しくはそれよりも大きなK、又は1μM若しくはそれよりも大きなK、又は10μM若しくはそれよりも大きなKで結合する抗体を指すことが意図されている。ある特定の実施形態では、抗原と交差反応しないそのような抗体は、標準結合アッセイにおいてこれらのタンパク質に対して本質的に検出不能な結合を示す。特定の実施形態では、本開示のヒト化抗体、例えば、mAb1は、例えば、Biacoreアッセイにおいて測定した場合、それぞれ配列番号21、配列番号22及び配列番号23のカニクイザルBTN3A1、BTN3A2及びBTN3A3と交差反応する(表21参照)。
【0031】
「単離された抗体」とは、本明細書で使用される場合、異なる抗原特異性を有する他の抗体が実質的にない抗体のことである(例えば、BTN3Aに特異的に結合する単離された抗体は、BTN3A以外の抗原に特異的に結合する抗体が実質的にない)。しかし、BTN3Aに特異的に結合する単離された抗体は、他の種由来の関連するBTN3A分子などの他の抗原に対して交差反応性を有することがある。さらに、単離された抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質が実質的にないでもよい。
【0032】
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」とは、単一分子組成の抗体分子の調合剤のことである。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対して単一の結合特異性及び親和性を示す。
【0033】
語句「抗原を認識する抗体」及び「抗原に対する特異性を有する抗体」は、本明細書では、用語「抗原に特異的に結合する抗体」と互換的に使用される。
【0034】
用語「Kassoci」又は「K」とは、本明細書で使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度を指すことが意図されており、「Kdis」又は「K」とは、本明細書で使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指すことが意図されている。
【0035】
用語「K」とは、本明細書で使用される場合、Kに対するKの比(すなわち、K/K)から得られる解離定数を指すことが意図されており、モル濃度(M)として表される。抗体についてのK値は、当技術分野で確立した方法を使用して決定することができる。
【0036】
抗体のKを決定するための方法は、表面プラズモン共鳴を使用する、又はBiacore(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを使用することによる。
【0037】
特異性は、例えば、特定の抗原に結合する対他の無関係な分子への非特異的結合(この場合では、特定の抗原はBTN3Aポリペプチドである)での親和性/アビディティーの約10対1、約20対1、約50対1、約100対1、10,000対1又はそれよりも大きな比によりさらに示すことができる。用語「親和性」とは、本明細書で使用される場合、エピトープへの抗体の結合の強さを意味する。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「アビディティー」とは、抗体-抗原複合体の全体の安定性又は強度についての情報価値のある尺度のことである。アビディティーは、3つの主要な要因:抗体エピトープ親和性;抗原と抗体の両方の結合価;及び相互作用をする部分の構造的配置により制御される。最後に、これらの要因は、抗体の特異性、すなわち、特定の抗体が正確な抗原エピトープに結合している可能性を規定する。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「活性化抗体」とは、エフェクター細胞の免疫機能を直接的に又は間接的に誘導することができる抗体のことである。特に、本明細書で使用される場合、活性化抗BTN3A抗体は、BTN3A発現細胞との共培養で、下の実施例に記載される脱顆粒アッセイにおいて測定した場合、5μg/ml未満の、好ましくは、1μg/ml又はそれよりも下のEC50でγδ T細胞、典型的にはVγ9Vδ2 T細胞の活性化を誘導する能力を少なくとも有する。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「対象」とは、任意のヒト又は非ヒト動物を含む。用語「非ヒト動物」は、あらゆる脊椎動物、例えば、哺乳動物及び非ヒト霊長類などの非哺乳動物、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類、等を含む。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「最適化された」とは、ヌクレオチド配列が、産生細胞又は生物、一般には、真核細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)又はヒト細胞において好まれるコドンを使用してアミノ酸配列をコードするように変更されていることを意味する。最適化されたヌクレオチド配列は、出発ヌクレオチド配列により最初にコードされているアミノ酸配列を完全に又はできるだけ多く保持するように操作される。最適化されたヌクレオチド配列によりコードされたアミノ酸配列も最適化されたと呼ばれる。
【0042】
本明細書で使用される場合、2つの配列間のパーセント同一性は、ギャップの数及びそれぞれのギャップの長さを考慮に入れた上での、配列により共有される同一位置の数の関数であり(すなわち、%同一性=同一の位置の数/位置の全数×100)、このギャップの数及びそれぞれのギャップの長さは、2つの配列の最適アライメントのために導入される必要がある。配列の比較及び2つの配列間のパーセント同一性の決定は、下に記載されるように、数学アルゴリズムを使用して達成することができる。
【0043】
2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、PAM120残基重み付け表、ギャップ長ペナルティ12及びギャップペナルティ4を使用して、ALIGNプログラム(バージョン2.0)中に組み込まれたE.Meyers and W.Miller(Comput.Appl.Biosci.、4:11~17頁、1988年)のアルゴリズムを使用して決定することができる。あるいは、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、Blossom62マトリックス又はPAM250マトリックス、並びにギャップ重み16、14、12、10、8、6又は4及び長さ重み1、2、3、4、5、又は6を使用して、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラム(http://www.gcg.comで入手可能)中に組み込まれたNeedleman and Wunsch(J.Mol、Biol.48:444~453頁、1970年)アルゴリズムを使用して決定することができる。
【0044】
2つのヌクレオチドアミノ酸配列間のパーセント同一性は、例えば、デフォルトとしてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=4、及び両鎖の比較を使用する核酸配列についてのBLASTNプログラムなどのアルゴリズムを使用して決定してもよい。
【0045】
組換えヒト化抗BTN3A活性化抗体
本開示の抗体は、選択されたヒト化組換え抗体mAb1、mAb2、mAb4及びmAb5を含み、これらの抗体は下の表1に記載されるその可変重鎖及び軽鎖アミノ酸配列並びにヒト定常領域(アイソタイプ)により構造的に特徴付けられる。
【表1】
【0046】
mAb3及びmAb6は別の親マウス抗BTN3A抗体のヒト化抗体であり、mAb20.1と呼ばれ、国際公開第2012/080351号に記載されており、比較例として使用する。
【0047】
mAb1からmAb6を作製するために使用されるIgG1、IgG4並びにその変異バージョンIgG1 L247F/L248E/P350S及びIgG4 S241P/L248Eの定常アイソタイプ領域の対応するアミノ酸及びヌクレオチドコード配列は当技術分野では周知である(Oganesyanら、2008年;Reddyら、2000年)。IgGに見出されるC終端リジンは天然に切断されていることがあり、この改変は抗体の特性に影響を与えず、したがって、この残基は、mAb1からmAb6の構築物においてさらに欠失させてもよい。
【0048】
mAb1、mAb2、mAb4及びmAb5の完全長軽及び重鎖並びに対応するコード配列は、下の表2に示されている。
【表2】
【0049】
本開示に従ったいくつかの抗体のVH CDR1(HCDR1とも呼ばれる)、VH CDR2(HCDR2とも呼ばれる)、VH CDR3(HCDR3とも呼ばれる)、VL CDR1(LCDR1とも呼ばれる)、VL CDR2(LCDR2とも呼ばれる)、VL CDR3(LCDR3とも呼ばれる)のアミノ酸配列の例は表3に示されている。
【0050】
表3では、本開示の抗体のCDR領域は、Kabat番号付けを使用して描かれている(Kabatら、1992年、今後「Kabatら」)。
【0051】
読みやすさを目的に、CDR領域は今後、それぞれHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3と呼ばれる。
【表3】
【0052】
特定の実施形態では、上で定義される前記組換え抗BTN3A抗体は以下の特性:
(i)この抗体は、例えば、下の実施例に記載されるSPRにより測定した場合、10nM又はそれ未満のKで、好ましくは、1nM又はそれ未満のKでBTN3Aに結合する;
(ii)この抗体は、例えば、下の実施例に記載されるSPRにより測定した場合、100nM又はそれ未満のKで、好ましくは、10nM又はそれ未満のKでカニクイザルBTN3Aに交差反応する;
(iii)この抗体は、下の実施例に記載されるフローサイトメトリーアッセイにおいて測定した場合、50μg/ml又はそれよりも下の、好ましくは、10μg/ml又はそれよりも下のEC50でヒトPBMCに結合する;
(iv)この抗体は、BTN3発現細胞との共培養で、下の実施例に記載される脱顆粒アッセイにおいて測定した場合、5μg/ml未満の、好ましくは、1μg/ml又はそれよりも下のEC50でγδ T細胞、典型的にはVγ9Vδ2 T細胞の活性化を誘導する、
のうちの1つ又は複数を有する。
【0053】
前の実施形態と組み合わせてもよいある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、上で定義された抗体の抗体断片である。
【0054】
抗体断片は、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、ユニボディ、及びscFv断片、ダイアボディ、単一ドメイン又はナノボディ及び他の断片を含むがこれらに限定されない。
【0055】
好ましくは、抗体は、scFv断片のFabなどの一価抗体である。
【0056】
用語「ダイアボディ」とは、2つの抗原結合部位を有する小抗体断片のことであり、この断片は同じポリペプチド鎖(VH-VL)中の軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を許すには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインは別の鎖の相補的ドメインと対合して2つの抗原結合部位を生み出さざるを得なくなる。
【0057】
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべて若しくは一部又は軽鎖可変ドメインのすべて若しくは一部を含む抗体断片である。ある特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis、Inc.、Waltham、MA;例えば、米国特許第6,248,516号参照)。
【0058】
抗体断片は、無傷の抗体のタンパク質消化並びに本明細書に記載される組換え宿主細胞による産生を含むがこれらに限定されない種々の技法により作製することができる。
【0059】
本開示の抗体はヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、親非ヒト抗体の少なくとも同じ親和性(又は親よりも優れた親和性)を有するままで、ヒトに対する免疫原性を低減するためにヒト化される。好ましい実施形態では、本開示の抗体は、国際公開第2012/080351号に開示されている親抗体mAb7.2のヒト化抗体である。比較例は、国際公開第2012/080351号に開示されている親抗体mAb20.1にヒト化抗体を含む。
【0060】
一般に、ヒト化抗体は、CDR(又はその一部)が非ヒト抗体、例えば、マウスmAb7.2に由来し、FR(又はその一部)が免疫原性を低減する突然変異のあるマウス抗体配列に由来する1つ又は複数の可変ドメインを含む。ヒト化抗体は、任意選択で、ヒト定常領域の少なくとも一部も含む。
【0061】
好ましくは、本開示に従った組換え抗体は、ヒト化サイレント抗体、典型的にはヒト化サイレントIgG1又はIgG4抗体である。
【0062】
本明細書で使用される場合、用語「サイレント」抗体とは、実施例に記載されるアッセイなどの結合アッセイにおいて測定される場合、FcγR結合及び/若しくはC1q結合を示さない又は低いFcγR結合及び/若しくはC1q結合を示す抗体のことである。
【0063】
一実施形態では、用語「FcγR結合及び/若しくはC1q結合なし又は低いFcγR結合及び/若しくはC1q結合」とは、サイレント抗体が、野生型ヒトIgG1又はIgG4アイソタイプを有する対応する抗体を用いて観察されるFcγR及び/又はC1q結合の少なくとも50%未満、例えば、80%未満であるFcγR及び/又はC1q結合を示すことを意味する。
【0064】
フレームワーク又はFc操作
本開示の抗体は、対応するマウス抗体mAb7.2と比べて抗体の免疫原性を減らすためにVH及びVL内のフレームワーク残基に加えられた改変を含む。
【0065】
一特定の実施形態では、本開示の抗体は、親マウス抗体mAb7.2のヒト化モノクローナル抗体であり、VHフレームワーク領域に少なくとも以下のアミノ酸変異:V5Q;V11L;K12V;R66K;S74F;I75S;E81Q;S82AR;R82BS;R83T;D85E;T87S;L108S;及びVκフレームワーク領域に少なくとも以下のアミノ酸変異:T5N;V15L;R18T;V19I;K42N;A43I;D70G;F73L;Q100Gを含む。
【0066】
別の特定の実施形態では、本開示の抗体は、親マウス抗体mAb7.2のヒト化モノクローナル抗体であり、mAb7.2と比べて、VHフレームワーク領域に少なくとも以下のアミノ酸変異:V5Q;V11L;K12V;R66K;S74F;I75S;E81Q;S82AR;R82BS;R83T;D85E;T87S;L108S;及びVκフレームワーク領域に少なくとも以下のアミノ酸変異:T5N;V15L;R18T;V19I;K42N;A43I;S63T;D70G;F73L;Q100Gを含む。
【0067】
フレームワーク領域内で加えられた改変に加えて、本開示の抗体は、典型的には、血清半減期、補体結合、Fc受容体結合、及び/又は抗原依存的細胞傷害性などの、抗体の1つ又は複数の機能特性を変更するために、Fc領域内に改変を含むように操作してもよい。
【0068】
さらに、本開示の抗体は、抗体の1つ又は複数の機能特性を再び変更するために、化学修飾しても(例えば、1つ又は複数の化学的成分を抗体に結合させることができる)又はそのグリコシル化を変更するように改変してもよい。これらの実施形態のそれぞれが下にさらに詳細に記載されている。
【0069】
本明細書で使用される場合、用語「アイソタイプ定常領域」又は「Fc領域」は互換的に使用されて、天然の配列Fc領域及び変異Fc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC終端領域を定義する。ヒトIgG重鎖Fc領域は一般に、IgG抗体のC226位から又はP230位からカルボキシル終端までのアミノ酸残基を含むと定義され、ここでの番号付けはEU番号付け方式に従っている。Fc領域のC終端リジン(残基K447)は、例えば、抗体の産生若しくは精製中に取り除く、又はその対応するコドンを組換え構築物で欠失させてもよい。したがって、本開示の抗体の組成物は、K447残基がすべて取り除かれている抗体集団、K447残基が取り除かれていない抗体集団、並びにK447残基がある抗体とない抗体の混合物を有する抗体集団を含んでいる場合がある。
【0070】
一特定の実施形態では、CH1のヒンジ領域は、ヒンジ領域中のシステイン残基の数が変更される、例えば、増やされる又は減らされるように改変される。このアプローチは、Bodmerらにより米国特許第5,677,425号にさらに記載されている。CH1のヒンジ領域におけるシステイン残基の数は、例えば、軽及び重鎖の組み立てを促進するため、又は抗体の安定性を増やす若しくは減らすために変更される。
【0071】
別の実施形態では、抗体のFcヒンジ領域は、抗体の生物学的半減期を減らすために変異される。さらに具体的には、抗体が、天然のFc-ヒンジドメインSpA結合と比べて、障害されたブドウ球菌(Staphylococcyl)プロテインA(SpA)結合を有するように、1つ又は複数のアミノ酸変異がFc-ヒンジ断片のCH2-CH3ドメインインターフェイス領域中に導入される。このアプローチは、Wardらによる米国特許第6,165,745号にさらに詳細に記載されている。
【0072】
さらに別の実施形態では、Fc領域は、少なくとも1つのアミノ酸残基の代わりに異なるアミノ酸残基を使って抗体のエフェクター機能を変更することにより、変更される。例えば、1つ又は複数のアミノ酸は、抗体がエフェクターリガンドに対して変更された親和性を有するが親抗体の抗原結合能力は保持するように、異なるアミノ酸残基で置き換えることができる。対する親和性が変更されるエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体又は補体のC1構成成分が可能である。このアプローチは、両方ともWinterらによる米国特許第5,624,821号及び米国特許第5,648,260号にさらに詳細に記載されている。
【0073】
別の実施形態では、アミノ酸残基から選択される1つ又は複数のアミノ酸は、抗体が変更されたC1q結合及び/又は低減された若しくは消失された補体依存性細胞傷害(CDC)を有するように異なるアミノ酸残基で置き換えることができる。このアプローチは、Idusogieらによる米国特許第6,194,551号にさらに詳細に記載されている。
【0074】
別の実施形態では、1つ又は複数のアミノ酸残基が変更され、それによって、抗体が補体を固定する能力を変更する。このアプローチは、Bodmerらによる国際出願公開第94/29351号にさらに記載されている。
【0075】
他の実施形態では、Fc領域は、抗体が抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介する能力を減らし及び/又は1つ若しくは複数のアミノ酸を改変することによりFcγ受容体に対する抗体の親和性を減らすように改変される。エフェクター機能が減少した、特にADCCが減少したそのような抗体は、サイレント抗体を含む。
【0076】
ある特定の実施形態では、IgG1アイソタイプのFcドメインが使用される。一部の特定の実施形態では、IgG1 Fc断片の変異バリアント、例えば、融合ポリペプチドが抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介し及び/又はFcγ受容体に結合する能力を低減する又は取り除くサイレントIgG1 Fcが使用される。
【0077】
ある特定の実施形態では、IgG4アイソタイプのFcドメインが使用される。一部の特定の実施形態では、IgG4 Fc断片の変異バリアント、例えば、融合ポリペプチドが抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介し及び/又はFcγ受容体に結合する能力を低減する又は取り除くサイレントIgG4 Fcが使用される。
【0078】
沈黙したエフェクター機能(silenced effector functions)は、抗体のFc定常部分の変異により得ることができ、当技術分野に記載されている(Baudinoら、2008年;Strohl、2009年)。サイレントIgG1抗体の例は、三重変異バリアントIgG1 L247F L248E P350Sを含む。サイレントIgG4抗体の例は、二重変異バリアントIgG4 S241P L248Eを含む。
【0079】
ある特定の実施形態では、Fcドメインは、Fcドメインの314位でのグリコシル化を妨げるサイレントFc変異体である。例えば、Fcドメインは、314位にアスパラギンのアミノ酸置換を含有する。そのようなアミノ酸置換の例は、グリシン又はアラニンによるN314の置き換えである。
【0080】
さらに別の実施形態では、抗体のグリコシル化が改変される。例えば、アグリコシル化(aglycoslated)抗体を作製することができる(すなわち、抗体はグリコシル化を欠く)。グリコシル化は、例えば、抗原に対する抗体の親和性を増やすように変更することができる。そのような炭水化物修飾は、例えば、抗体配列内で1つ又は複数のグリコシル化部位を変更することにより達成できる。例えば、1つ又は複数の可変領域フレームワークグリコシル化部位を取り除き、それによって、その部位でのグリコシル化を取り除く1つ又は複数のアミノ酸置換を行うことができる。そのようなアグリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を増やしうる。そのようなアプローチは、Coらによる米国特許第5,714,350号及び米国特許第6,350,861号にさらに詳細に記載されている。
【0081】
本開示により想定されている本明細書の抗体の別の改変は、ペグ化又はhes化(hesylation)又は関連技術である。抗体は、例えば、抗体の生物学的(例えば、血清)半減期を増やすようにペグ化することができる。抗体をペグ化するためには、抗体又はその断片は典型的には、1つ又は複数のPEG基が抗体又は抗体断片に結合される条件下で、PEGの反応性エステル又はアルデヒド誘導体などの、ポリエチレングリコール(PEG)と反応する。ペグ化は、反応性PEG分子(又は類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシルカ反応又はアルキル化反応により実行することができる。本明細書で使用される場合、用語「ポリエチレングリコール」とは、モノ(C1~C10)アルコキシ-若しくはアリロキシ-ポリエチレングリコール又はポリエチレングリコール-マレイミドなどの、他のタンパク質を誘導体化するのに使用されてきた形態のPEGのいずれをも包含することが意図されている。ある特定の実施形態では、ペグ化される抗体はアグリコシル化抗体である。タンパク質をペグ化するための方法は当技術分野では公知であり、本開示の抗体に適用することができる。例えば、Nishimuraらによる欧州特許第0 154 316号及びIshikawaらによる欧州特許第0 401 384号を参照されたい。
【0082】
別の可能性は、本開示の抗体の少なくとも抗原結合領域の、得られた分子の半減期を増やすヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質に結合することができるタンパク質への融合である。そのようなアプローチは、例えば、Nygrenらの欧州特許第0 486 525号に記載されている。
【0083】
ある特定の実施形態では、ヒトIgG重鎖定常ドメイン上に広く存在するC終端リジンは、製造又は貯蔵中に広く観察されるこの残基の切断に起因する不均一性を低減するように操作される。そのような改変は、これらの分子に安定性という利益を与えつつ、これらの抗体の望ましい機能を知覚できるほど変化させない。
【0084】
本開示の抗体をコードする核酸分子
本開示の抗BTN3A抗体をコードする核酸分子も本明細書で開示される。可変軽鎖及び重鎖ヌクレオチド配列の例は、mAb1、mAb2、mAb4及びmAb5のいずれか1つの可変軽鎖及び重鎖アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列であり、アミノ酸配列は表1及び表2から容易に引き出され、遺伝コードを使用し、任意選択で、宿主細胞種に応じてコドンバイアスを考慮に入れる。
【0085】
本開示は、哺乳動物細胞、例えば、CHO細胞株におけるタンパク質発現用に最適化されているアミノ酸配列に由来する核酸分子にも関する。
【0086】
核酸は、全細胞に、細胞可溶化物に存在していてもよく、又は部分的に精製されている若しくは実質的に純粋な形態の核酸でもよい。核酸は、アルカリ性/SDS処理、CsClバンディング(banding)、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動及び当技術分野で周知である他の技法を含む標準技法により、他の細胞成分又は他の混入物、例えば、他の細胞核酸若しくはタンパク質から精製された場合、「単離され」ている又は「実質的に純粋になって」いる(Ausubelら、1988年)。本開示の核酸は、例えば、DNA又はRNAが可能であり、イントロン配列を含有していてもよく含有していなくてもよい。実施形態では、核酸は、ファージディスプレイベクターなどのベクターに、又は組換えプラスミドベクターに存在していてもよい。
【0087】
本開示の核酸は、標準分子生物学技法を使用して得ることができる。例えば、VH及びVLセグメントをコードするDNA断片が得られた後、これらのDNA断片は、例えば、可変領域遺伝子を完全長抗体鎖遺伝子に、Fab断片遺伝子に、又はscFv遺伝子に変換するため、標準組換えDNA技法によりさらに操作することができる。これらの操作では、VL-又はVH-コードDNA断片(例えば、表1に定義されているVL及びVH)は、別のDNA分子に、又は抗体定常領域若しくは柔軟なリンカーなどの別のタンパク質をコードする断片に作動可能に連結される。用語「作動可能に連結される」は、この文脈で使用される場合、2つのDNA断片が、例えば、2つのDNA断片によりコードされるアミノ酸配列がインフレームのままであるように、又はタンパク質が所望のプロモーターの制御下で発現されるように、機能的方法で結合されることを意味するよう意図されている。
【0088】
VH領域をコードする単離されたDNAは、VHコードDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2及びCH3)をコードする別のDNA分子に作動可能に連結することにより完全長重鎖遺伝子に変換することができる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野では公知であり(Kabatら、1992年)、これらの領域を包含するDNA断片は、標準PCR増幅により得ることができる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgD定常領域が可能である。一部の実施形態では、重鎖定常領域は、IgG1アイソタイプ、例えば、ヒトIgG1アイソタイプの中から選択される。他の実施形態では、重鎖定常領域は、IgG4アイソタイプ、例えば、ヒトIgG4アイソタイプの中から選択される。他の実施形態では、重鎖定常領域は、IgG4アイソタイプ、例えば、ヒトIgG4アイソタイプの中から選択される。Fab断片重鎖遺伝子では、VHコードDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に作動可能に連結することができる。
【0089】
VL領域をコードする単離されたDNAは、VLコードDNAを、軽鎖定常領域CLをコードする別のDNA分子に作動可能に連結することにより完全長軽鎖遺伝子に(並びに、Fab軽鎖遺伝子に)変換することができる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野では公知であり(Kabatら、1992年)、これらの領域を包含するDNA断片は、標準PCR増幅により得ることができる。軽鎖定常領域は、カッパ又はラムダ定常領域が可能である。
【0090】
scFv遺伝子を作製するためには、VH及びVL配列が連続一本鎖タンパク質として発現でき、VL及びVH領域が柔軟なリンカーにより結合されるように、VH-及びVLコードDNA断片は、柔軟なリンカーをコードする、例えば、アミノ酸配列(Gly4-Ser)をコードする別の断片に作動可能に連結される(Birdら、1988年;Hustonら、1988年;McCaffertyら、1990年)。
【0091】
モノクローナル抗体を産生するトランスフェクトーマ(transfectomas)の作製
本開示の抗体は、例えば、当技術分野で周知である組換えDNA技法と遺伝子トランスフェクション法の組合せを使用して宿主細胞トランスフェクトーマにおいて産生することができる(Morrison、1985年)。
【0092】
例えば、抗体、又はその抗体断片を発現するために、部分的又は完全長軽及び重鎖をコードするDNAは、標準分子生物学又は生化学技法(例えば、DNA化学合成、PCR増幅又は目的の抗体を発現するハイブリドーマを使用するcDNAクローニング)により得ることができ、そのDNAは、遺伝子が転写及び翻訳制御配列に作動可能に連結されるように、発現ベクター中に挿入することができる。この文脈では、用語「作動可能に連結される」とは、ベクター内の転写及び翻訳制御配列が抗体遺伝子の転写及び翻訳を調節するその意図された機能を果たすように、抗体遺伝子がベクター中にライゲートされていることを意味するように意図されている。発現ベクター及び発現制御配列は、使用される発現宿主細胞に適合するように選択される。抗体軽鎖遺伝子及び抗体重鎖遺伝子は別々のベクター中に挿入することができ、又は、さらに典型的には、両方の遺伝子は同じ発現ベクター中に挿入される。抗体遺伝子は標準法(例えば、抗体遺伝子断片及びベクター上の相補的制限部位のライゲーション、又は制限部位が存在しない場合は平滑末端ライゲーション)により発現ベクター中に挿入される。本明細書に記載される抗体の軽及び重鎖可変領域を使用すれば、VHセグメントはベクター内のCHセグメント(複数可)に作動可能に連結され、VLセグメントはベクター内のCLセグメントに作動可能に連結されるように、所望のアイソタイプの重鎖定常及び軽鎖定常領域をすでにコードする発現ベクター中にこれらの可変領域を挿入することにより任意の抗体アイソタイプの完全長抗体遺伝子を作製することができる。さらに又はあるいは、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ終端にインフレームで連結されるように、ベクター中にクローニングすることができる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド又は異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)が可能である。
【0093】
抗体鎖遺伝子に加えて、本明細書で開示される組換え発現ベクターは、宿主細胞において抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を担持する。用語「調節配列」は、抗体鎖遺伝子の転写又は翻訳を制御するプロモーター、エンハンサー及び他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが意図されている。そのような調節配列は、例えば、Goeddel’s publication(Goeddel、1990年)に記載されている。調節配列の選択を含む、発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現のレベル、等などの要因に依存しうることは当業者に認識される。哺乳動物宿主細胞発現のための調節配列は、サイトメガロウイルス(CMV)、サルウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルスメイジャー後期プロモーター(adenovirus major late promoter)(AdMLP))、及びポリオーマ由来のプロモーター及び/又はエンハンサーなどの、哺乳動物細胞において高レベルのタンパク質発現を指示するウイルスエレメントを含む。あるいは、ユビキチンプロモーター又はP-グロビンプロモーターなどの、非ウイルス調節配列を使用してもよい。さらに、調節エレメントは、SV40初期プロモーター及びヒトT細胞白血病ウイルス1型の長末端反復由来の配列を含有するSRaプロモーター系などの異なる供給源由来の配列で構成されている(Takebeら、1988年)。
【0094】
抗体鎖遺伝子及び調節配列に加えて、本開示の組換え発現ベクターは、宿主細胞においてベクターの複製を調節する配列などの追加の配列(例えば、複製起点)及び選択可能マーカー遺伝子を担持していてもよい。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を促進する(例えば、すべてAxelらによる、米国特許第4,399,216号、米国特許第4,634,665号、及び米国特許第5,179,017号参照)。例えば、典型的には、選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に、G418、ハイグロマイシン又はメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を与える。選択可能マーカー遺伝子は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅の場合dhfr-宿主細胞において使用するため)及びneo遺伝子(G418選択用)を含む。
【0095】
軽及び重鎖の発現では、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクター(複数可)は標準技法により宿主細胞中にトランスフェクトされる。用語「トランスフェクション」の種々の形態は、外因性DNAを原核又は真核宿主細胞中に導入するために広く使用される多種多様の技法、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAEデキストラントランスフェクション及び同類のものを包含することが意図されている。本開示の抗体を原核又は真核宿主細胞で発現することは理論的に可能である。真核細胞、例えば、哺乳動物宿主細胞、酵母又は糸状菌における抗体の発現が考察されるのは、そのような真核細胞、特に、哺乳動物細胞が、原核細胞よりも正しく折り畳まれ免疫学的に活性な抗体を組み立て分泌する可能性が高いからである。
【0096】
一特定の実施形態では、本開示に従ったクローニング又は発現ベクターは、適切なプロモーター配列に作動可能に連結されたmAb1、mAb2、mAb4及びmAb5のうちのいずれか1つの重鎖及び軽鎖のコード配列の1つを含む。
【0097】
本開示の組換え抗体を発現するための哺乳動物宿主細胞は、DHFR選択可能マーカー(Kaufman and Sharp、1982年に記載される)と一緒に使用されるdhfr-CHO細胞(Urlaub and Chasin、1980年に記載される)、CHOK1 dhfr+細胞株、NSO骨髄腫細胞、COS細胞及びSP2細胞、例えば、GS Xceed(商標)遺伝子発現系(Lonza)と一緒のGS CHO細胞株を含む、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)を含む。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞中に導入されると、宿主細胞における抗体の発現、及び、任意選択で宿主細胞を増殖させている培養培地中への抗体の分泌に十分な期間宿主細胞を培養することにより抗体は産生される。抗体は、例えば、抗体の分泌後培養培地から回収し、標準タンパク質精製法を使用して精製することができる(Shuklaら、2007年)。
【0098】
一特定の実施形態では、本開示の宿主細胞は、適切なプロモーター配列に作動可能に連結された、それぞれmAb1、mAb2、mAb4及びmAb5の発現に適したコード配列を有する発現ベクターをトランスフェクトされている宿主細胞である。
【0099】
例えば、本開示は、mAb1の重鎖及び軽鎖をそれぞれコードする配列番号8及び10の核酸を少なくとも含む宿主細胞に関する。
【0100】
次に、後者の宿主細胞は、それぞれmAb1、mAb2、mAb4及びmAb5からなる群から選択される本開示の抗体の発現及び産生に適した条件下でさらに培養してもよい。
【0101】
あるいは、mAb1、mAb2、mAb4及びmAb5のいずれかの産生のために無細胞発現系を使用してもよい。典型的には、タンパク質又は抗体の無細胞発現の方法はすでに記載されている(Stechら、2017年)。
【0102】
免疫コンジュゲート
別の態様では、本開示は、細胞毒、薬物(例えば、免疫抑制剤)又は放射性毒などの治療部分にコンジュゲートされた本明細書で開示される抗BTN3A抗体、又はその断片を特徴とする。そのようなコンジュゲートは、本明細書では「免疫コンジュゲート」と呼ばれる。1つ又は複数の細胞毒を含む免疫コンジュゲートは、「免疫毒素」と呼ばれる。細胞毒又は細胞傷害性薬物は、細胞に有害である(例えば、殺傷する)任意の作用物質を含む。例は、タクソン、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、t.コルヒチン(t.colchicin)、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracin dione)、ミトキサントロン、ミスラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びピューロマイシン並びにその類似体又は相同体を含む。治療剤は、例えば、代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルダカルバジン)、アブレーティング剤(ablating agents)(例えば、メクロレタミン、チオテパクロラムブシル(thioepa chloraxnbucil)、メルファラン(meiphalan)、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU))、シクロトスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、及びシス-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミスラマイシン及びアントラマイシン(AMC))、モノメチルオーリスタチンE及び有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン)も含む。
【0103】
細胞毒は、当技術分野で利用可能なリンカー技術を使用して本開示の抗体にコンジュゲートすることができる。細胞毒を抗体にコンジュゲートするのに使用されてきたリンカータイプの例は、ヒドラゾン、チオエーテル、エステル、ジスルフィド及びバリン-シトルリンリンカーなどのペプチド含有リンカーを含むがこれらに限定されない。例えば、リソソームコンパートメント内での低pHにより切断されやすい又はカテプシン(例えば、カテプシンB、C、D)などの腫瘍組織において優先的に発現されるプロテアーゼなどのプロテアーゼにより切断されやすいリンカーを選択することが可能である。
【0104】
細胞毒の種類、リンカー及び治療薬を抗体にコンジュゲートするための方法のさらなる考察では、抗体薬物コンジュゲートに関する概説はPanowskiら、2013年も参照されたい。
【0105】
本開示の抗体は、放射性免疫コンジュゲートとも呼ばれる細胞傷害性放射性医薬品を作製するために放射性同位元素にコンジュゲートすることもできる。診断用に又は治療用に使用するために抗体にコンジュゲートすることができる放射性同位元素の例は、ヨウ素131、インジウム111、イットリウム90、及びルテチウム177を含むがこれらに限定されない。放射性免疫コンジュゲートを調製するための方法は当技術分野では確立している。
【0106】
二重特異性又は多特異性分子
別の態様では、本開示の抗BTN3A抗体を含む二重特異性又は多特異性分子が本明細書でさらに開示される。抗体は、少なくとも2つの異なる結合部位又は標的分子に結合する二重特異性分子を作製するために誘導体化する又は別の機能的分子、例えば、別のペプチド又はタンパク質(例えば、別の抗体又は受容体に対するリガンド)に連結することができる。抗体は、実際、2つよりも多い異なる結合部位及び/又は標的分子に結合する多特異性分子を作製するために誘導体化する又は1つよりも多い他の機能的分子に連結してもよく、そのような多特異性分子は本明細書で使用される用語「二重特異性分子」により包含されることも意図されている。二重特異性分子を作製するために、本発明の抗体は、二重特異性分子が得られるように、別の抗体、抗体断片、ペプチド又は結合部分などの、1つ又は複数の他の結合分子に機能的に連結する(例えば、化学カップリング、遺伝子融合、非共有会合又は他の方法により)ことができる。
【0107】
したがって、本開示は、BTN3Aに対して少なくとも1つの第1の結合特異性、例えば、mAb1、mAb2、mAb4及びmAb5のいずれか1つの1つの抗原結合部分並びに第2の標的エピトープに対する第2の結合特異性を含む二重特異性分子を含む。
【0108】
さらに、二重特異性分子が多特異性である実施形態では、分子は、第1及び第2の標的エピトープに加えて、第3の結合特異性をさらに含むことができる。
【0109】
一実施形態では、本明細書で開示される二重特異性分子は、結合特異性として、少なくとも1つの抗体、又はFab、Fab’、F(ab’)、Fv、ユニボディ又は一本鎖Fvを含むその抗体断片を含む。抗体は、軽鎖若しくは重鎖ダイマー、又はFv若しくはLadnerらの米国特許第4,946,778号に記載される一本鎖構築物などのその任意の最小断片でもよい。
【0110】
本明細書で開示される二重特異性分子に用いることができる他の抗体は、マウス、キメラ及びヒト化モノクローナル抗体である。
【0111】
本開示の二重特異性分子は、当技術分野で公知の方法を使用して、構成要素の結合特異性体をコンジュゲートすることにより調製することができる。例えば、二重特異性分子のそれぞれの結合特異性体は、別々に作製し、その後互いにコンジュゲートすることができる。結合特異性体がタンパク質又はペプチドである場合、種々のカップリング又は架橋剤を共有結合コンジュゲーションに使用することができる。架橋剤の例は、プロテインA、カルボジイミド、N-サクシニミジル-アセチル-チオアセテート(SATA)、5,5’-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、o-フェニレンジマェイミド(oPDM)、N-サクシニミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、及びスルホサクシニミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(スルホ-SMCC)を含む(Karpovskyら、1984年;Liuら、1985年)。他の方法は、Brennanら、1985年;Glennieら、1987年;Paulus、1985年に記載される方法を含む。
【0112】
あるいは、両方の結合特異性体は同じベクターにコードされ、同じ宿主細胞において発現され組み立てられることが可能である。この方法は、二重特異性分子がmAb×mAb、mAb×Fab、Fab×F(ab’)又はリガンド×Fab融合タンパク質である場合に特に有用である。本開示の二重特異性分子は、1つの一本鎖抗体及び結合決定基を含む一本鎖分子、又は2つの結合決定基を含む一本鎖二重特異性分子が可能である。
【0113】
二重特異性分子のその特異的標的への結合は、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(REA)、FACS分析、バイオアッセイ(例えば、増殖阻害及びアポトーシス)、又はウェスタンブロットアッセイにより確かめることができる。これらのアッセイのそれぞれが一般的に、目的の複合体に特異的である標識試薬(例えば、抗体)を用いることにより特定の目的のタンパク質-抗体複合体の存在を検出する。
【0114】
本開示の抗体は、人工的T細胞受容体(キメラT細胞受容体又はキメラ抗原受容体(CAR)としても知られる)を調製するのにも使用しうる。例えば、抗体の可変領域は、膜貫通ドメイン(典型的にはCD8アルファの膜貫通ドメイン)及びTCR(例えば、CD3ゼータ)のシグナル伝達エンドドメイン、及び任意選択で共刺激シグナル伝達ドメイン(例えば、4-1BB又はCD28由来の)にスペーサーを介して連結されているFab又はscFvを形成するのに使用してもよく、T細胞の表面で産生されてもよい。そのようなCARは、例えば、増殖性障害を処置するため養子移植療法において使用してもよい。
【0115】
医薬組成物
別の態様では、本開示は、組成物、例えば、本明細書で開示される抗体のうちの1つ又は組合せ、例えば、mAb1、mAb2、mAb4及びmAb5からなる群から選択される1つの抗体又はその抗原結合部分を含有し、薬学的に許容される担体と合わせて処方される医薬組成物を提供する。そのような組成物は、上記の(例えば、2つ又はそれよりも多い異なる)抗体、又は免疫コンジュゲート又は二重特異性分子のうちの1つ又は組合せを含んでいてもよい。
【0116】
本明細書で開示される医薬組成物は、組合せ療法で、すなわち、他の薬剤と組み合わせて投与することも可能である。例えば、組合せ療法は、本開示の抗BTN3A抗体、例えば、mAb1、mAb2、mAb4及びmAb5からなる群から選択される1つの抗体又はその抗原結合部分を、少なくとも1つの抗ウイルス、抗炎症又は別の抗増殖剤と組み合わせて含むことができる。組合せ療法で使用することができる治療薬の例は、下の本開示の抗体の使用に関するセクションにはるかに詳細に記載されている。
【0117】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、生理的に適合するありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌及び抗真菌剤、等張及び吸収遅延剤、並びに同様のものを含む。担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄又は表皮投与(例えば、注射又は注入により)に適しているべきである。一実施形態では、担体は皮下経路又は腫瘍内注射に適しているべきである。投与経路に応じて、活性化合物、すなわち、抗体、免疫コンジュゲート、又は二重特異性分子は、化合物を酸の作用及び化合物を不活化する場合がある天然の条件から保護する物質で被覆されてもよい。
【0118】
無菌リン酸緩衝食塩水は、薬学的に許容される担体の一例である。他の適切な担体は当業者には周知である(Remington and Gennaro、1995年)。製剤は、1つ又は複数の賦形剤、保存剤、可溶化剤、緩衝剤、バイアル表面上でのタンパク質損失を防ぐためのアルブミン、等をさらに含んでもよい。
【0119】
医薬組成物の形態、投与経路、投与量及びレジメンは、当然のことながら、処置される状態、疾患の重症度、患者の年齢、体重、及び性別、等に依存する。
【0120】
本開示の医薬組成物は、局所的、経口、非経口、鼻腔内、静脈内、筋肉内、皮下又は眼球内投与及び同類のもの用に処方することができる。
【0121】
好ましくは、医薬組成物は、注射することができる製剤用の薬学的に許容されるビヒクルを含有する。これらの組成物は、特に、等張、無菌、生理食塩水(一ナトリウム若しくは二ナトリウムリン酸塩、ナトリウム、カリウム、カルシウム若しくはマグネシウムクロライド及び同類のもの又はそのような塩の混合物)又は、場合により、減菌水若しくは生理食塩水を添加すると、注射可能液の構成を可能にする乾燥、特に凍結乾燥組成物でもよい。
【0122】
投与用に使用される用量は、種々のパラメータの関数として、特に、使用される投与様式の、関連する病理学の、又はあるいは所望の処置期間の関数として適応させることができる。
【0123】
医薬組成物を調製するためには、有効量の抗体を、薬学的に許容される担体又は水性媒体に溶解させる又は分散させてもよい。
【0124】
注射可能な使用に適した医薬品形態は、無菌水溶液又は分散液;ゴマ油、落花生油又は水性プロピレングリコールを含む製剤;及び無菌注射可能液又は分散液の即時調剤用の無菌粉末又は凍結乾燥物(lyophilisates)を含む。あらゆる場合に、形態は無菌でなければならないし、容易な注入可能性(syringeability)が存在するほど流動性でなければならない。形態は、製造及び貯蔵条件下で安定でなければならないし、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。
【0125】
遊離塩基又は薬学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合した水で調製することができる。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物で並びに油で調製することもできる。貯蔵及び使用の通常の条件下では、これらの製剤は微生物の増殖を予防する保存剤を含有する。
【0126】
本開示の抗体は、中性又は塩の形態で組成物に処方することができる。薬学的に許容される塩は酸付加塩(タンパク質の遊離のアミノ基で形成される)を含み、酸付加塩は、例えば、塩酸若しくはリン酸などの無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸、及び同類のものなどの有機酸で形成される。遊離のカルボキシル基で形成される塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は水酸化第二鉄などの無機塩基、並びにイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカイン及び同類のものなどの有機塩基に由来することもできる。
【0127】
担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール並びに同類のもの)、それらの適切な混合物、及び植物油を含有する溶媒又は分散媒も可能である。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散の場合に必要な粒子径の維持により、及び界面活性剤の使用により維持することが可能である。微生物の作用の予防は、種々の抗菌及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、及び同類のものによりもたらすことができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖又は塩化ナトリウムを含むことが好ましくなる。注射可能組成物の長期の吸収は、組成物中での、吸収を遅延する薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によりもたらすことができる。
【0128】
無菌注射可能液は、必要に応じ、上に列挙した種々のその他の成分と一緒に活性化合物を必要量で適切な溶媒に取込み、続いて無菌濾過することにより調製される。一般に、分散液は、種々の無菌化活性成分を、基本の分散媒及び上に列挙した成分由来の必要な他の成分を含有するビヒクル中に取り込むことにより調製される。無菌注射可能液の調製用の無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥及び凍結乾燥技法であり、これらの技法により活性成分プラスその前もって無菌濾過した溶液由来である任意の追加の所望される成分の粉末が得られる。
【0129】
直接注射用のさらに、又は高度に濃縮された溶液の調製も検討されており、その場合、極めて迅速に浸透し、小さな腫瘍領域に高濃度の活性成分を送達するように溶媒としてDMSOの使用が想定される。
【0130】
処方すると、溶液は、投与製剤と適合する方法で、治療的に有効な量で投与される。製剤は、上記のようなタイプの注射可能液などの種々の剤形で容易に投与されるが、薬物放出カプセル及び同類のものも用いることが可能である。
【0131】
水溶液での非経口投与では、例えば、溶液は、必要ならば、適切に緩衝するべきであり、液体希釈剤は先ず十分な生理食塩水又はグルコースで等張にするべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下及び腹腔内投与に特に適している。この点について、用いることができる無菌水性媒体は、本開示を考慮すれば当業者にはわかるであろう。例えば、一投与量は、1mlの等張NaCl溶液に溶解し、1000mlの皮下注入液に添加する又は提唱される注入部位に注射することができると考えられる(例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第15版、1035~1038頁及び1570~1580頁参照)。処置を受ける対象の条件に応じて、投与量のある程度の変動は必ず起こる。投与の責任者が、いずれにしても、個々の対象にとり適切な用量を決定することになる。
【0132】
本開示の抗体は、用量あたり約0.0001~1.0ミリグラム、又は約0.001~0.1ミリグラム、又は約0.1~1.0若しくは1.0~約10ミリグラムさえも含むように治療混合物内に処方してもよい。複数用量も投与することができる。
【0133】
抗体の注入又は皮下注射用の溶液に適した処方は、当技術分野に記載されてきており、例えば、Cuiら、(Drug Dev Ind Pharm 2017年、43(4):519~530頁)に概説されている。
【0134】
静脈内又は筋肉内注射などの非経口投与用に処方される化合物に加えて、他の薬学的に許容される形態は、例えば、経口投与用の錠剤又は他の固体;持効性カプセル;及び現在使用されている他の任意の形態を含む。
【0135】
ある特定の実施形態では、宿主細胞中への抗体の導入のためにリポソーム及び/又はナノ粒子の使用が検討されている。リポソーム及び/又はナノ粒子の形成及び使用は当業者には公知である。
【0136】
ナノカプセルは一般に、化合物を安定した再現可能な方法で封入することができる。細胞内ポリマー過負荷に起因する副作用を回避するため、そのような超微細な粒子(約0.1μmのサイズ)は一般に、インビボで分解することができるポリマーを使用して設計される。本開示において使用するため、これらの必要条件を満たす生分解性ポリアルキル-シアノアクリレートナノ粒子が検討されており、そのような粒子は容易に作製しうる。
【0137】
リポソームは、水性媒体中に分散し、多層同心円状二分子膜小胞(multilamellar concentric bilayer vesicles)(多層小胞(MLV)とも呼ばれる)を自然に形成するリン脂質から形成される。MLVは一般に、25nm~4μmの径を有する。MLVを超音波処理すると、200~500Åの範囲の径を有し、核に水溶液を含有する小単層小胞(SUV)が形成される。リポソームの物理特性は、pH、イオン強度及び二価カチオンの存在に依存する。
【0138】
本開示の抗体の使用及び方法
本開示の抗体は、インビトロ及びインビボ診断用及び治療用有用性がある。例えば、これらの分子は、種々の障害を処置する、予防する又は診断するために、例えば、インビトロで、エクスビボで若しくはインビボで培養中の細胞に、又は対象において、例えば、インビボで投与することができる。
【0139】
本明細書で使用される場合、用語「処置する(treat)」、「処置する(treating)」又は「処置(treatment)」とは、(1)疾患を阻害する;例えば、疾患、状態又は障害の病態又は総体症状を経験している又は示している個人において疾患、状態又は障害を阻害する(すなわち、病態及び/又は総体症状のさらなる進行を停止させ);及び(2)疾患を軽快させる;例えば、疾患の重症度を減少する又は疾患の1つ又は複数の症状を低減する若しくは軽減するなどの、疾患、状態又は障害の病態又は総体症状を経験している又は示している個人において疾患、状態又は障害を軽快させる(すなわち、病態及び/又は総体症状を元に戻す)のうちの1つ又は複数のことである。特に、腫瘍の処置に関しては、用語「処置」は、腫瘍の成長の阻害、又は腫瘍のサイズの低減のことでもよい。
【0140】
本開示の抗体は抗BTN3A活性化抗体であり、Vγ9 Vδ2 T細胞の細胞溶解機能、サイトカイン産生及び/又は増殖を活性化することができ、それによって、がん患者で及び慢性感染中に観察される免疫抑制機構を克服するのに使用しうる。
【0141】
本明細書で使用される場合、用語「がん」、「過剰増殖」及び「新生物」とは、自律増殖、すなわち、急速に増殖する細胞増殖を特徴とする異常な状態又はコンディションをもたらす能力がある細胞のことである。過剰増殖及び新生物疾患状態は、病態、すなわち、疾患状態を特徴付ける若しくは構成するとして分類されてもよく、又は非病態、すなわち、正常からの逸脱であるが疾患状態と関連はないとして分類されてもよい。この用語は、組織病理学的タイプ又は侵襲性の段階とは無関係に、あらゆるタイプのがん腫又は発がん過程、転移性組織又は悪性形質転換(malignantly transformed)細胞、組織、又は器官を含むことが意図されている。
【0142】
用語「がん」又は「新生物」は、肺、乳房、甲状腺、リンパ球、胃腸、及び尿生殖器管を冒すなどの種々の臓器系の悪性腫瘍並びに大半の結腸がん、腎細胞癌、前立腺がん及び/又は精巣腫瘍、肺の非小細胞癌、小腸のがん及び食道のがんなどの悪性腫瘍を含む腺癌を含む。
【0143】
がんの例は、B細胞リンパ球新生物、T細胞リンパ球新生物、非ホジキンリンパ腫(NHL)、B-NHL、T-NHL、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、NK細胞リンパ球新生物及び急性骨髄性白血病を含む骨髄細胞系列新生物などの血液系腫瘍を含むがこれらに限定されない。
【0144】
非血液系(non-hematological)がんの例は、結腸がん、乳がん、肺がん、脳がん、前立腺がん、頭頚部がん、膵臓がん、膀胱がん、結腸直腸がん、骨がん、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、口腔がん、食道がん、甲状腺がん、腎臓がん、胃がん、卵巣がん及び皮膚がんを含むがこれらに限定されない。
【0145】
慢性感染症の例は、慢性肝炎、肺感染症、下気道感染症、気管支炎、インフルエンザ、肺炎(pneumoniae)及び性行為感染症などのウイルス、細菌、寄生虫又は真菌感染症を含むがこれらに限定されない。
【0146】
ウイルス感染症の例は、肝炎(HAV、HBV、HCV)、単純ヘルペス(HSV)、帯状疱疹、HPV、インフルエンザ(Flu)、AIDS及びAIDS関連症候群、水痘(水痘)、感冒、サイトメガロウイルス(CMV)感染症、天然痘(痘瘡)、コロラドダニ熱、デング熱、エボラ出血熱、口蹄疫、ラッサ熱、麻疹、マールブルグ出血熱、伝染性単核球症、流行性耳下腺炎、ノロウイルス、灰白髄炎、進行性多巣性白質脳症(PML)、狂犬病、風疹、SARS、ウイルス性脳炎、ウイルス性胃腸炎、ウイルス性髄膜炎、ウイルス肺炎、西ナイル病及び黄熱病を含むがこれらに限定されない。細菌感染症の例は、肺炎、細菌性髄膜炎、コレラ、ジフテリア、結核、炭疽病、ボツリヌス中毒、ブルセラ症、カンピロバクター症、チフス、淋病、リステリア症、ライム病、リウマチ熱、百日咳(百日咳)、ペスト、サルモネラ症、猩紅熱、細菌性赤痢、梅毒、破傷風、トラコーマ、野兎病、腸チフス、及び尿路感染症を含むがこれらに限定されない。例は、コクシエラ菌(Coxiella burnetii)、ウシ流産菌(Brucella abortus)、トロフェリマ・ウィッペリ(Tropheryma whipplei)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)及びマイクロバクテリウム・カネッティ(Mycobacterium canettii)により引き起こされる細菌感染症も含む。
【0147】
寄生虫感染症の例は、マラリア、リーシュマニア症、トリパノソーマ症、シャーガス病、クリプトスポリジウム症、肝蛭症、フィラリア症、アメーバ感染症、ジアルジア症、蟯虫感染症、住血吸虫症、条虫症、トキソプラズマ症、旋毛虫症、及びトリパノソーマ症を含むがこれらに限定されない。真菌感染症の例は、カンジダ症、アスペルギルス症、コクシジオイデス症、クリプトコッカス症、ヒストプラスマ症及び足白癬を含むがこれらに限定されない。
【0148】
したがって、本開示は、上で開示される障害のうちの1つの処置を、それを必要とする対象において行うための方法であって、前記対象に、上で開示される治療有効量の抗BTN3A抗体、典型的には、mAb1、mAb2、mAb4又はmAb5のうちの1つを投与することを含む前記方法に関する。
【0149】
ある特定の実施形態では、前記対象は、BTN3A発現腫瘍を有する患者の中で選択されている。
【0150】
上で開示される使用のための抗体は、例えば、上記の疾患の処置又は予防のために、唯一の活性成分として又は他の薬物、例えば、サイトカイン、抗ウイルス、抗炎症薬又は細胞傷害性、抗増殖、化学療法若しくは抗腫瘍薬、細胞療法製品(例えば、γδ T細胞組成物)と併せて、例えば、このアジュバンドとして又はこれと組み合わせて投与してもよい。
【0151】
例えば、上で開示される使用のための抗体は、細胞療法、特に、γδ T細胞療法、化学療法、抗悪性腫瘍薬、又は免疫療法薬と組み合わせて使用してもよい。
【0152】
本明細書で使用される場合、「細胞療法」とは、少なくとも治療有効量の細胞組成物をそれを必要とする対象にインビボ投与することを含む療法のことである。患者に投与される細胞は同種間又は自家性でもよい。用語「γδ T細胞療法」とは、細胞組成物が有効成分としてγδ T細胞、特にVγ9/Vδ2 T細胞を含む細胞療法のことである。
【0153】
細胞療法製品とは、治療目的で前記患者に投与される細胞組成物のことである。前記細胞療法製品は、治療有効用量の細胞及び任意選択で、追加の賦形剤、アジュバンド又は他の薬学的に許容される担体を含む。
【0154】
適切な抗悪性腫瘍薬は、限定せずに、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、メクロレタミン、クロラムブシル、メルファラン、ニトロソウレア、テモゾロミド)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、バルルビシン)、タキサン(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル)、エポチロン、トポイソレラーゼIの阻害剤(例えば、イリノテカン又はトポテカン)、トポイソレラーゼIIの阻害剤(例えば、エトポシド、テニポシド、又はタフルポシド(Tafluposide))、ヌクレオチド類似体及び前駆物質類似体(例えば、アザシチジン、アザチオプリン、カペシタビン、シタラビン、フルオロウラシル、ゲミシタビン、ヒドロキシウレア、メルカプトプリン、メトトレキサート、又はチオグアニン)、ペプチド抗生物質(例えば、カルボプラチン、シスプラチン及びオキサリプラチン)、レチノイド(例えば、トレチノイン、アリトレチノイン、ベキサロテン)、ビンカアルカロイド及び誘導体(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン)、キナーゼ阻害剤などの標的療法(例えば、イブルチニブ、イデラリシブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ベムラフェニブ、ビスモデギブ)、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ)、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えば、ボリノスタット又はロミデプシン)を含んでもよい。
【0155】
免疫療法薬の例は、限定せずに、ホスホ抗原(phosphoantigens)(例えば、ゾレドロン酸又は他のビスホスホネート)、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗BTLA抗体、抗CTLA-4抗体及びサイトカイン(例えば、インターロイキン2(IL-2)(Choudhry Hら、2018年、Biomed Res Int.2018年5月6日)、インターロイキン15(IL-15)(Patidar Mら、Cytokine Growth Factor Rev.2016年10月;31:49~59頁)、インターロイキン21(IL-21)(Caccamo N.ら、PLoS One.2012年;7(7):e41940)、又はインターロイキン33(IL-33)(Duault Cら、J Immunol.2016年1月1日;196(1):493~502頁)、又はその組換え形態及びその誘導体、又はリンパ球活性(例えば、増殖又はサイトカイン産生又は代謝変化)を誘導することができる任意のサイトカインを含む。用語誘導体は、PEG化(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)鎖へのコンジュゲーション)、アミノ酸欠失、置換若しくは挿入などの変異、又は増強剤との会合(例えば、IgG1 Fcに融合されたIL15/IL15Ra複合体、そこではIL-15がさらに変異されて(asn72asp)この複合体をIL-2及びIL-15Rβγスーパーアゴニストにする生物活性をさらに増やす(Rhode PRら、Cancer Immunol Res.2016年;4(1):49~60頁))に頼ることができる任意のサイトカイン改変のために使用される(Barroso-Sousa Rら、Curr Oncol Rep.2018年11月15日;21(1):1頁)。
【0156】
用語「IL-2」はその一般的な意味を有し、ヒトインターロイキン-2のことである。IL-2は身体の天然の免疫応答の一部である。IL-2は、IL-2受容体に結合することによりリンパ球活性を主に調節する。
【0157】
用語「IL-15」はその一般的な意味を有し、ヒトインターロイキン-15のことである。IL-2と同様に、IL-15は、IL-2/IL-15受容体ベータ鎖(CD122)と共通のガンマ鎖(ガンマ-C、CD132)で構成された複合体に結合しこれを通じてシグナルを送る。IL-15はT及びナチュラルキラー(NK)細胞の活性化及び増殖を調節する。
【0158】
用語「IL-21」はその一般的な意味を有し、ヒトインターロイキン-21のことである。IL-21は、NK細胞及びCD8+T細胞細胞傷害性を増強する、プラズマ細胞分化を調節する及びTreg細胞を阻害することを含むがこれらに限定されない多面的特性を有すると報告されている。
【0159】
用語「IL-33」はその一般的な意味を有し、ヒトインターロイキン-33のことである。IL-33は、組織ストレス又は損傷により放出されるアラーミンと見なされており、IL-1ファミリーのメンバーであり、ST2受容体に結合する。IL-33は、T1免疫細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、iNKT細胞、及びCD8 Tリンパ球の効果的な刺激因子として知られている。
【0160】
用語「PD-1」は当技術分野でのその一般的な意味を有し、プログラム死-1受容体のことである。用語「PD-1」は、I型膜貫通タンパク質のことでもあり、これはCD28、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)、誘導性共刺激分子(ICOS)、並びにB-及びTリンパ球アテニュエータ(BTLA)を含む受容体のCD28-B7シグナル伝達ファミリーに属する(Greenwald RJら、2005年、Riley JLら、2005年)。
【0161】
用語「BTLA」は当技術分野でのその一般的な意味を有し、B及びTリンパ球アテニュエータのことである。用語「BTLA」はCD272のことでもあり、これはCD28、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)、誘導性共刺激分子(ICOS)、及びプログラム死-1受容体(PD-1)を含む受容体のCD28-B7シグナル伝達ファミリーのメンバーである(Greenwald RJら、2005年、Riley JLら、2005年)。
【0162】
用語「抗PD-1抗体」又は「抗PD-L1」は当技術分野でのその一般的な意味を有し、それぞれPD-1又はPD-L1に対する結合親和性、及びPD-1に対するアンタゴニスト活性を有する抗体のことであり、すなわち、この抗体はPD-1に関係するシグナル伝達カスケードを阻害し、PD-1リガンド結合(PD-L1;PD-L2)を阻害する。そのような抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体は、受容体のCD28-B7シグナル伝達ファミリー(CD28;CTLA-4;ICOS;BTLA)のその他のサブタイプ又はアイソフォームとのその相互作用よりもそれぞれ大きな親和性及び効力でPD-1を優先的に不活化する。化合物がPD-1アンタゴニストであるかどうかを判定するための試験及びアッセイは当業者に周知であり、例えば、Greenwaldら、2005年;Rileyら、2005年に記載されている。
【0163】
そのような抗PD-1又は抗PD-L1抗体の例は、限定せずに、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、セミプリマブ、又はアテゾリズマブを含む。
【0164】
そのようなCTLA4抗体の例は、限定せずに、イピリムマブを含む。
【0165】
用語「抗BTLA抗体」は当技術分野でのその一般的な意味を有し、BTLAに対する結合親和性及びアンタゴニスト活性を有する抗体のことであり、すなわち、この抗体は、BTLAに関係するシグナル伝達カスケードを阻害することができる。化合物がBTLAアンタゴニストであるかどうかを判定するための試験及びアッセイは当業者に周知であり、例えば、(Greenwaldら、2005年;Rileyら、2005年)に記載されている。
【0166】
一部の実施形態では、抗BTLA抗体は、国際公開第2010/106051号、国際公開第2011/014438号、国際公開第2017/144668号に記載される抗体から選択される。
【0167】
一部の実施形態では、抗BTLA抗体は、国際公開第2010/106051号に開示されるなどのCNCM寄託番号I-4123の下で利用できるハイブリドーマから入手可能であるBTLA抗体(BTLA8.2)である。
【0168】
一部の実施形態では、抗BTLA抗体は、国際公開第2011/014438号に開示される4C7 mAbである。
【0169】
一部の実施形態では、抗BTLA抗体は、国際公開第2017/144668号に開示される629.3 mAb、又はそのヒト化バージョン若しくはそのバリアントである。
【0170】
前述のことに従えば、本開示はさらなる態様において:本開示の治療有効量の抗BTN3A抗体と少なくとも1つの第2の原薬を、例えば、同時に又は順次に同時投与することを含み、前記第2の原薬が抗ウイルス若しくは抗増殖薬又は免疫療法薬(例えば、抗PD-1、抗PD-L1抗体)、又はサイトカイン、例えば、IL-2若しくはIL-15、又は、例えば、上で指示されている細胞療法製品(例えば、γδ T細胞)である、上で定義される方法を提供する。
【0171】
一実施形態では、本開示の抗体を使用すれば、可溶性BTN3Aのレベル、又はBTN3Aを発現する細胞のレベルを検出することができる。これは、例えば、試料(例えば、インビトロ試料)及び対照試料を、抗体とBTN3A(例えば、血液試料中細胞又は可溶性BTN3Aの表面で発現される)の間での複合体の形成を可能にする条件下で抗BTN3A抗体に接触させることにより達成することができる。抗体とBTN3Aの間で形成されるいかなる複合体も検出され、試料及び対照において比較される。例えば、ELISA及びフローサイトメトリーアッセイなどの当技術分野で周知である標準検出法は、本開示の組成物を使用して実施することができる。
【0172】
したがって、一態様では、本開示は、試料中でBTN3A(例えば、ヒトBTN3A抗原)の存在を検出する、又はBTN3Aの量を測定するための方法であって、試料及び対照試料を、抗体又はその部分とBTN3Aの間での複合体の形成を可能にする条件下で、BTN3Aに特異的に結合する本開示の抗体若しくはタンパク質、又はその抗原結合領域に接触させるステップを含む方法をさらに提供する。次に、複合体の形成が検出され、対照試料と比べた試料間の複合体形成の違いが試料中のBTN3Aの存在を示している。
【0173】
本開示の範囲内には、本明細書で開示される組成物(例えば、ヒト化抗体、コンジュゲート抗体及び多特異性分子)及び使用のための説明書からなるキットも存在する。キットは、少なくとも1つの追加の試薬、又は1つ若しくは複数の追加の抗体若しくはタンパク質をさらに含有することができる。キットは典型的には、キットの内容物の意図される使用を示すラベルを含む。用語ラベルは、キット上に若しくは一緒に与えられる、又は他の方法でキットに添付される任意の書面又は記録された資料を含む。キットは、上で定義されるように、患者が抗BTN3A抗体処置に応答する群に属するかどうかを診断するためのツールをさらに含んでもよい。
【0174】
別の治療戦略は、ヒト対象の試料から単離されたVγ9 Vδ2 T細胞を選択的に増殖する及び/又は活性化する作用物質としての本明細書で開示されるヒト化抗体の使用に基づいている。
【0175】
したがって、本開示は、処置をそれを必要とする対象に施すための方法であって、
(a)Vγ9 Vδ2 T細胞を含む血液細胞、例えば、対象の血液試料由来のPBMCを単離するステップと、
(b)mAb1、2、4及び5のいずれか1つの存在下でVγ9 Vδ2 T細胞をインビトロで増殖するステップと、
(c)増殖したVγ9 Vδ2 T細胞を収集するステップと、
(d)任意選択で、増殖したVγ9 Vδ2 T細胞を処方し、治療有効量の前記Vγ9 Vδ2 T細胞を対象に投与するステップと
を含む方法に関する。
【0176】
本開示は、キメラ抗原受容体(CAR)Vγ9 Vδ2 T細胞を選択的に増殖する作用物質としての本明細書で開示されるヒト化抗体(例えば、mAb1、mAb2、mAb4又はmAb5)の使用にさらに関する。CAR γδ T細胞と養子T細胞がん免疫療法におけるその使用は、例えば、Mirzaeiら、(Cancer Lett 2016年、380(2):413~423頁)に記載されている。
【0177】
本開示は、γδ T細胞療法でそれを必要とする、典型的にはがんに罹っている対象において腫瘍細胞の増強剤としてインビボで使用するための抗BTN3A抗体にも関する。
【0178】
本明細書で使用される場合、用語γδ T細胞療法とは、それを必要とする対象に少なくとも有効量のγδ T細胞を投与することを含む療法のことである。そのようなγδ T細胞は同種である又は自家性でもよい。特定の実施形態では、γδ T細胞は、特定の遺伝子の欠失若しくはノックアウト又は挿入若しくはノックインにより遺伝子操作することができる。特定の実施形態では、前記γδ T細胞はキメラ抗原受容体を発現するγδ T細胞を含む。γδ T細胞は、エクスビボで増殖され及び/又は精製されていてもよい。あるいは、γδ T細胞は、他の血液細胞、例えば、免疫系の他の細胞を含む細胞組成物に含まれていてもよい。γδ T細胞療法に関する参考文献については、Pauza CD.ら、Front Immunol.2018年6月8日;9:1305.doi:10.3389、Saudemont A.ら、Front Immunol.2018年2月5日5;9:153.doi:10.3389.を参照されたい。
【0179】
実際、いかなる特定の理論にも縛られずに、本開示の抗BTN3A抗体の提唱された作用機序は、抗BTN3A抗体が腫瘍細胞の表面で発現されるBTN3Aに結合すると立体構造変化の引き金を引き、これによりVγ9 Vδ2 T細胞上の対抗受容体へのそのシグナル伝達が可能になるというものである。
【0180】
したがって、本開示は、がん、例えば、血液系腫瘍、特に、急性骨髄性白血病などの白血病に罹っており、腫瘍細胞、例えば、血液腫瘍細胞を有する対象の処置の方法であって、
(i)前記対象において、本明細書で開示される有効量の抗BTN3A抗体、典型的には、mAb1、mAb2、mAb4又はmAb5を投与するステップと、
(ii)前記対象において有効量のγδ T細胞組成物を投与するステップと
を含み、前記有効量の抗BTN3A抗体が、前記腫瘍細胞に対して前記γδ T細胞組成物により媒介される抗腫瘍細胞溶解を増強する能力を有する前記方法に関する。
【0181】
本開示は、固形腫瘍細胞、例えば、卵巣がん細胞のあるがんに罹っている対象を処置するための方法であって、
(i)前記対象において、本明細書で開示される有効量の抗BTN3A抗体、典型的には、mAb1、mAb2、mAb4又はmAb5を投与するステップと、
(ii)前記対象において有効量のγδ T細胞組成物を投与するステップと
を含み、前記有効量の抗BTN3A抗体が、前記腫瘍細胞に対して前記γδ T細胞組成物により媒介される抗腫瘍細胞溶解を増強する能力を有する前記方法にさらに関する。
【0182】
本開示は、処置をそれを必要とする対象に施すための方法であって、CAR T細胞、例えば、CAR γδ T細胞と本明細書で開示されるヒト化抗体(例えば、mAb1、mAb2、mAb4又はmAb5)の併用(同時又は順次)投与を含む前記方法にも関する。
【0183】
十分に説明された本発明は、この時点で、以下の例によりさらに図解されるが、これらの例は説明的なものにすぎず、さらに限定的であることを意図されていない。
【実施例
【0184】
ヒト化バリアントの選択
1.ヒト化戦略の説明
a.複合ヒト抗体(商標)可変領域配列の設計
マウス7.2及び20.1抗体V領域の構造モデルを、Swiss PDBを使用して作製し、抗体の結合特性に不可欠である可能性があるV領域中の重要な「拘束」アミノ酸(“constraining” amino acids)を同定するために分析した。CDR内に含有される大半の残基(KabatとChothia定義の両方を使用して)はいくつかのフレームワーク残基と共に重要であると見なされた。上記の分析から、7.2及び20.1抗体の複合ヒト配列が生み出された。
【0185】
b.CD4+T細胞エピトープ回避
構造分析に基づいて、7.2及び20.1ヒト化バリアントを作り出すのに使用することができる大きな予備セットの配列セグメントを選択し、ヒトMHCクラスII対立遺伝子に結合するペプチドのインシリコ分析のためのiTope(商標)技術(Perryら、2008年)を使用して、及び公知の抗体配列関連T細胞エピトープのTCED(商標)(Brysonら、2010年)を使用して分析した。ヒトMHCクラスIIへの有意な非ヒト生殖系列バインダーとして同定された又はTCED(商標)に対して有意なヒットのスコアを示した配列セグメントは廃棄した。これによりセグメントのセットは減少し、これらのセグメントの組合せを上記と同じように再び分析し、セグメント間の接合部が潜在的なT細胞エピトープを含有しないことを確かめた。選択された配列セグメントは、有意なT細胞エピトープを欠くと予測される完全V領域配列に組み立てた。次に、いくつかの重鎖及び軽鎖配列を、mAb7.2及び20.1についての哺乳動物細胞での遺伝子合成及び発現用に選択した。
【0186】
2.ヒト化バリアントの作製及び予備的特徴づけ
a.ヒト化バリアントプラスミドの構築
7.2及び20.1ヒト化バリアントは、ヒトIgG4(S241P、L248E)重及びカッパ軽鎖用の発現ベクター系中にクローニングするため隣接する制限酵素部位を用いて合成した。すべての構築物は塩基配列決定により確かめた。
【0187】
b.抗体の発現
キメラ7.2及び20.1(VH0/Vκ0)、2つの対照組合せ(VH0/Vκ1、VH1/Vκ0)並びにヒト化重鎖及び軽鎖の組合せは、対応するエンドトキシンフリーDNAからMaxCyte STX(登録商標)エレクトロポレーションシステム(MaxCyte Inc.、Gaithersburg、USA)を使用してFreeStyle(商標)CHO-S細胞(ThermoFisher、Loughborough、UK)中に一過性でトランスフェクトした。トランスフェクションは、OC-400プロセスアセンブリー(processing assemblies)を使用してそれぞれの抗体において着手した。細胞回収に続いて、細胞は、8mMのL-グルタミン(ThermoFisher、Loughborough、UK)及び1×ヒポキサンチン-チミジン(ThermoFisher、Loughborough、UK)を含有するCDオプティ-CHO培地(ThermoFisher、Loughborough、UK)中に3×10細胞/mLまで希釈した。トランスフェクションの24時間後、培養温度は32℃まで下げ、1mMの酪酸ナトリウム(Sigma、Dorset、UK)を添加した。培養物は、3.6%(開始容積の)のフィード(2.5%のCHO CDエフィシエントフィードA(ThermoFisher、Loughborough、UK)、0.5%のイーストレート(Yeastolate)(BD Biosciences、Oxford、UK)、0.25mMのグルタマックス(ThermoFisher、Loughborough、UK)及び2g/Lグルコース(Sigma、Dorset、UK))の添加により毎日養った。IgG上澄みタイターは、IgG ELISAによりモニターし、トランスフェクション物は、上澄みを収穫する前に14日間まで培養した。
【0188】
c.予備的親和性測定:BTN3Aに結合するヒト化バリアントのシングルサイクル動態解析
すべての7.2及び20.1複合ヒト抗体(商標)バリアントの結合を評価し、BTN3Aに対して最も高い親和性を有する抗体を選択するため、Biacore T200評価ソフトウェアV2.0.1(Uppsala、Sweden)を実行するBiacore T200(製造番号1909913)を使用してトランスフェクトされた細胞培養物由来の上澄みでシングルサイクル動態解析を実施した。
【0189】
抗体は、ELISAにより力価を滴定した(titered)上澄みから得た濃度に基づいて2%のBSA/PBSで2μg/mlの最終濃度まで希釈した。それぞれのサイクルの開始時、抗体は、プロテインAチップ(GE Healthcare、Little Chalfont、UK)のFc2、Fc3及びFc4上にロードした。IgGは10μl/分の流速で捕捉され、約50RUのRMaxを得るための理論値である約146.5RUの固定化レベル(RL)を与えた。次に、表面を安定化させておいた。シングルサイクル動態データは、いかなる潜在的な物質移動効果も最小限に抑えるために流速60μl/分で分析物としてBTN3A1-His(Sino Biological カタログ番号15973-H08H)を用いて、並びに泳動用バッファーとしてHBS-P+(GE Healthcare、Little Chalfont、UK)を使用して得た。キメラ抗体を用いた複数回繰り返しを実施して、動態解析での表面及び分析物の安定性を調べた。参照チャネルFc1(抗体なし)からのシグナルは、Fc2、Fc3及びFc4のシグナルから引き算して、参照表面への非特異的結合の差を補正した。それぞれの濃度間の再生なしでの1.56nM~25nMのBTN3A1の3点4倍希釈範囲を使用した。漸増濃度のBTN3A1の3回注射についての会合期は毎度240秒間モニターし、シングル解離期はBTN3A1の最後の注射に続いて2000秒間モニターした。プロテインA表面の再生は、10mMのグリシン-HCl pH1.5の2回注射を使用して実行し、続いて240秒の間安定化させた。
【0190】
それぞれの抗体空実験(CD277なし)からのシグナルを引き算して、表面安定性の差を補正した。シングルサイクル動態により、すべてのヒト化バリアントがBTN3Aに結合したことが示された。
【0191】
d.抗体の精製
Biacore、並びにiTope(商標)スコア及びそれぞれのヒト化バリアントのヒト性(humanness)の百分率に基づいて、最良の親和性及び最良のiTope(商標)スコアを有する7.2及び20.1ヒト化バリアントがさらなる分析のために選択された。
【0192】
選択されたヒト化バリアントは、そのキメラバージョン及び最も保存的にヒト化されたバリアント(VH1/Vκ1)と共に、さらなるアッセイ試験のために精製を受けた。抗体は、プロテインAセファロースカラム、続いて移動相として10mMの酢酸ナトリウム、100mMのNaCl、pH5.5及び最終処方バッファーを使用するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)(GE Healthcare、Little Chalfont、UK)上で細胞培養上澄みから精製した。試料は、予測されるアミノ酸配列に基づいて消衰係数(Ec(0.1%))を使用してOD280nmにより定量化した。
【0193】
抗体は、2μgのそれぞれの抗体をゲル状にロードすることによりSDS-PAGEを使用して分析し、典型的な抗体のプロファイルに対応するバンドが観察された。
【0194】
e.結合特性の検証:ヒト化とキメラ7.2及び20.1mAbの間の競合ELISA分析
精製されたバリアントは、対応するマウス抗体に対して競合する一方での組換えBTN3A1-His(Sino Biological カタログ番号15973-H08H)へのその結合について試験した。キメラ(VH0/Vκ0)及び無関係なヒトIgG4(S241P、L248E)は比較のためにそれぞれのプレート上で試験した。
【0195】
BTN3A1は1×PBSに0.5μg/mlまで希釈し、100μl/ウェルを4℃で96ウェルELISAプレート上に被覆した。次の日、プレートは1×PBS/0.05%のTween(PBS-T)で3回洗浄し、200μlの2%乳/PBSを用いて室温で1時間ブロックした。希釈96ウェルプレートでは、固定した濃度の7.2又は20.1(0.15μg/ml最終濃度)を等容積で4倍滴定シリーズの試験抗体に添加した(ブロッキングバッファーに希釈した80μg/mlから開始する(40μg/ml最終濃度))。Nunc ELISAプレートをPBS-Tで3回洗浄後、100μlのマウス/試験抗体混合物をELISAプレートに添加した。室温での1時間インキュベーション後、プレートはPBS-Tで3回洗浄し、ブロッキングバッファーに1対1000で希釈した抗マウスFc HRP-標識二次抗体(Sigma、Dorset、UK)100μlを室温で1時間適用して、結合したマウス抗体を検出した。発色現象では、プレートはPBS-Tで3回洗浄し、これに続いて100μlのTMB基質を添加し、室温で5分間インキュベートした。反応は100μlの3.0Mの塩酸で停止させ、Dynexプレートリーダーを450nmで使用して吸光度を直ちに読取った。
【0196】
IC50値はそれぞれのバリアントにおいて計算し、相対的IC50値は、ヒト化バリアントのIC50を同じプレート上でアッセイしたキメラ抗体のIC50で割ることにより計算した。
【0197】
3.ヒト化候補の選択
a.マルチサイクル動態解析
競合ELISA及び熱安定性評価から生まれたデータに基づいて、Biacore T200評価ソフトウェアV2.0.1(Uppsala、Sweden)を実行するBiacore T200(製造番号1909913)機器を使用してVH0/Vκ0キメラ抗体と共にヒト化7.2及び20.1バリアントの大半でマルチサイクル動態解析を実施した。
【0198】
精製された抗体は2%BSA/PBS中2μg/mlの濃度まで希釈した。それぞれのサイクルの開始時、それぞれの抗体はプロテインA上で約146.5RU(約50RUのRMaxを得るための理論値)の密度(RL)で捕捉された。捕捉に続いて、表面は、BTN3A1抗原(Sino Biological カタログ番号15973-H08H)の注射前に安定化させておいた。BTN3A1は、0.1%のBSA/HBS-P+(ランニングバッファー)において25~0.78nMの2倍希釈範囲で力価を滴定した。会合期は約400秒間、解離期は35分(2100秒)間モニターした。動態データは、いかなる潜在的な物質移動効果も最小限に抑えるために流速50μl/分を使用して得た。プロテインA表面の再生は、それぞれのサイクルの終了時に10mMのグリシン-HCL pH1.5の2回注射を使用して実行した。2つの空(BTN3Aなし)及び単一濃度の分析物の繰り返しは、動態サイクルでの表面及び分析物の安定性を点検するためにそれぞれの試験した抗体において実施した。参照チャネルFc1からのシグナルをFc2、Fc3及びFc4のシグナルから引き算して参照表面への非特異的結合の差を補正した。さらに、空試験をそれぞれのFcにおいて引き算して、ドリフトなどのいかなる抗原非依存性シグナル変動も補正した。センサーグラム(Sensorgrams)は、グルーバルRMaxパラメータがありバルクシグナルのない1対1結合数学モデルを使用してフィットさせた(定常RI=0RU)。
【0199】
b.ヒトPBMC上でのフローサイトメトリーによる結合アッセイ
7.2及び20.1ヒト化バリアントを、健康なドナーの血液から単離したヒトPBMCへのその結合について特徴付けた。PBMCは、Lymphoprep(Axis-shield、Dundee、UK)密度遠心分離を使用して、軟膜から単離した。次に、PBMCは凍結し、必要になるまで-80℃で又は液体窒素中で保存した。
【0200】
1×10細胞/mlで100μlの細胞を新しいU字型底96ウェルプレートのそれぞれのウェルに移し、次に、プレートは遠心分離して上澄みを廃棄した。
【0201】
抗体の段階希釈、0.001μg/ml~150μg/mlをPBS 2mM EDTAで調製した。ヒトPBMCは、調製した希釈試験抗体滴定系列の50μlに再懸濁した。
【0202】
暗所での4℃、30分間のインキュベーション後、プレートは遠心分離し、150μl/ウェルのPBS 2mM EDTAで2回洗浄し、これに続いてウェルは、PBS 2mM EDTA中1/100に希釈したヤギ抗ヒト抗体(PE標識されている)及び1/500に希釈したLive/dead neat IRで構成された混合物の50μlに再懸濁した。
【0203】
暗所での4℃、15分間のインキュベーション後、プレートは遠心分離し、150μl/ウェルのPBS 2mM EDTAで1回洗浄し、これに続いてウェルは200μlのPBS 2mM EDTAに再懸濁した。細胞は、BD LSR Fortessa血球計数器上で分析した。データは、FlowJoソフトウェア(バージョン10、FlowJo、LLC、Ashland、USA)を使用して解析した。(データは示さず)。
【0204】
カニクイザルPBMCとダウディバーキットリンパ腫細胞株では同じプロトコールを実施した。
【0205】
c.インビトロ機能的有効性:γδ-T細胞脱顆粒アッセイ
アッセイは、ダウディバーキットリンパ腫細胞株に対するγδ-T細胞脱顆粒への7.2及び20.1ヒト化バリアント及びそのキメラバージョンの活性化又は阻害効果を測定することからなる(Harlyら、2012年)。γδ-T細胞は、ゾレドロン酸(1μM)及びIL2(200Ui/ml)を用いて11~13日間培養することにより、健康なドナーのPBMCから増殖した。IL2は5日目、8日目及びその後2日ごとに添加される。γδ-T細胞の百分率は、培養開始時に決定され、フローサイトメトリーにより少なくとも80%に達するまで培養時間の間評価した。次に、凍結又は新鮮なγδ-T細胞を、ダウディ細胞株に対する脱顆粒アッセイにおいて使用し(1対1のE対T比)、細胞は、10μg/mlの7.2及び20.1ヒト化バリアント及びそのキメラバージョンの存在下、37℃で4時間共培養した。PMA(20ng/ml)プラスイオノマイシン(1μg/ml)の活性化はγδ-T細胞脱顆粒について正の対照として働き、培地単独は負の対照として働いた。4時間の共インキュベーションの終了時、細胞はフローサイトメトリーにより分析し、CD107a(LAMP-1、リソソーム膜タンパク質-1)+CD107b(LAMP-2)に陽性であるγδ-T細胞の百分率を評価した。活性化誘導顆粒開口放出に続いてCD107は細胞表面に集結し、したがって、表面CD107の測定は、最近脱顆粒した細胞溶解T細胞を特定するための高感度マーカーである。結果は試験された候補間でいかなる有意な変動も示さず、これにより、脱顆粒アッセイにおいてキメラ7.2又は20.1抗体と類似する活性化効果が示された。
【0206】
ダウディ細胞の代わりに標的細胞として患者から単離したAML芽細胞を使用して同じプロトコールを実施した。
【0207】
d.熱安定性分析
選択された7.2及び20.1複合ヒト抗体(商標)バリアントの熱安定性を評価するため、融解温度(タンパク質ドメインの50%がアンフォールドされる温度)を蛍光ベースの熱シフトアッセイを使用して決定した。
【0208】
すべての精製されたヒト化抗体、及びキメラ(VH0/Vκ0)抗体を、1000中1の希釈度でSYPRO(登録商標)Orange(ThermoFisher、Loughborough、UK)を含有する製剤バッファー(10mMの酢酸ナトリウム、100mMのNaCl、pH5.5)中0.1mg/mlの最終濃度まで希釈し、StepOnePlusリアルタイムPCRシステム(ThermoFisher、Loughborough、UK)上56分間の時間をかけて25℃~99℃の温度勾配にかけた。10mMの酢酸ナトリウム、100mMのNaCl、pH5.5を負の対照として使用した。融解曲線は、タンパク質熱安定性ソフトウェア(バージョン1.2)を使用して分析した。
【0209】
e.ヒト化候補の選択
上記の実験について得られたすべての結果に基づいて、35(7.2について作製された15のヒト化バリアント;20.1について作製された20のヒト化バリアント)から3つのバリアント:7.2(VH2/Vκ1)、7.2(VH2/Vκ2)及び20.1(VH3/Vκ1)をさらなる特徴付けのために選択した。
【0210】
mAb7.2及び20.1についての上記の異なる実験の結果は、3つのバリアント及びそのキメラバージョンについて表4及び表5に報告されている。
【表4】

【表5】

ヒト化プロセスにより免疫原性の減少が予測される複数の7.2及び20.1バリアントが作製される。
【0211】
3つのバリアント(7.2 VH2/Vκ1、7.2 VH2/Vκ2及び20.1 VH3/Vκ1)の選択されたセットは、親和性、結合及び機能アッセイにおける有効性の点でそのキメラバージョンと等価な特性を示した。免疫原性を低減するためにバリアント配列に加えられた改変は抗体機能を変えなかった。
【0212】
驚くべきことに、選択されたヒト化バリアント7.2 VH2/Vκ1、7.2 VH2/Vκ2の熱安定性はキメラ抗体と比べて改善されており、そのような改善された熱安定性はヒト化のこのプロセスでは予想外であった。
【0213】
抗体の定常領域:サイレントFc断片の比較
抗体のエフェクター機能を沈黙させる又は低減するために、いくつかのFc部分を試験した。異なるFcγ受容体へのこれらのFc断片の結合は、Biacoreを使用して評価し、C1q複合体上でのその結合はELISAアッセイにより評価した。
【0214】
1.Biacoreを使用しての異なるFcγ受容体への操作されたFc部分の結合
キメラ抗体20.1の異なるアイソタイプ(IgG1、IgG1[N314A]、IgG1[L247F、L248E P350S]、IgG2、IgG4[S241P]及びIgG4[S241P L248E])が異なるFcγ受容体に結合する能力は、精製された抗体及びシングルサイクルBiacore分析を使用して判定した。ヒトFc受容体、FcγRI、FcγRIIA(Arg167多型)及びIIB、並びにFcγRIIIA(Phe176多型)及びIIIBはSino Biologicalから入手した。
【0215】
Fcγ受容体は、HBS-P+(GE Healthcare、Little Chalfont、UK)に最終濃度0.5又は1.0μg/mlまで希釈した。それぞれのサイクルの開始時、Fcγ受容体を抗His CM5チップのFc2、FC3及びFc4(GE Healthcare、Little Chalfont、UK)上にロードした。Fcγ受容体は、流速5μl/分で捕捉して、Fcγ受容体の分子量に応じて30~180 RUの固定化レベルを得た。次に、表面を安定化させておいた。シングルサイクル動態データは、いかなる潜在的な物質移動効果も最小限に抑えるために流速30μl/分で分析物としてキメラ抗体を使用して得た。参照チャネルFc1(抗体なし)からのシグナルをFc2、FC3及びFc4のシグナルから引き算して、参照表面への非特異的結合の差を補正した。5点3倍希釈範囲をそれぞれのキメラ抗体において使用し、この濃度範囲は親和性の予測される差のせいでそれぞれ個々のFcγ受容体において変動した。それぞれの空試験(抗体なし)からのシグナルを引き算して、表面安定性の差を補正した。漸増濃度のキメラ抗体の5回注射のそれぞれについての会合期を、25~180秒(Fcγ受容体リガンドに応じて)間モニターし、シングル解離期は、抗体の最後の注射に続いて25~300秒間測定した。抗His表面の再生は、それぞれ30μl/分で15秒間、10mMのグリシン-HCl pH1.5の2回注射を使用して実行し、続いて180秒間安定化させた。
【0216】
シングルサイクル動態定数は、可能な場合には、標準1対1分析モデルを使用して決定した。強い相互作用では、動態実験を経て親和性を決定するほうが一般的に適切であった。しかし、いくつかのFcγ受容体では、相互作用は非常に弱く、このシナリオでは、データは安定した状態の親和性分析(これは弱い~中程度の相互作用の測定に特に適している)を使用して解析した。Fcγ受容体とキメラ抗体の相互作用についてのセンサーグラムを得た(データは示さず)。
【0217】
予想通り、高親和性FcγRI受容体は非改変IgG1及びIgG4(S241P)に良好な親和性で結合した。改変IgG1アイソタイプは、IgG2及びIgG4(S241P、L248E)と共に、FcγRIに結合できなかった。残りのFcγ受容体は、FcγRIと比べて異なるキメラ抗体に対してはるかに低い親和性相互作用を示した。予想通り、非改変IgG1は比較的低い親和性受容体の4つすべてへの最も強い結合を示し、IgG1の改変バージョンはこれらの受容体への有意に減少した結合を示した。IgG2及びIgG4(S241P)は、FcγRIIA及びBへのある程度の結合を示したが、FcγRIIIA及びBへの結合はわずかでしかなかった。
【0218】
2.ELISAアッセイによるC1q複合体への操作されたFc部分の結合
キメラ抗体20.1を、C1q複合体への結合について異なるIgGアイソタイプとして試験して、補体系を活性化するその能力を判定した。
【0219】
U字型底96ウェルプレートでは、異なるアイソタイプでの精製されたキメラ20.1の2.5倍希釈系列(10μg/ml~0.04μg/ml)を2%BSA/DPBSで調製した。Nunc Immuno MaxiSorp 96ウェル平底マイクロタイタープレート(ThermoFisher Scientific、Loughborough、UK)は、100μl/ウェルのこの滴定系列でプレコートし、4℃で一晩インキュベートした。次の日、プレートをPBSTで2回洗浄し、2%BSA/DPBSを用いて室温で1時間ブロックし、その後PBSTで5回洗浄した。2%BSA/PBS中5μg/mlまで希釈した精製された補体タンパク質C1q(Pathway Diagnostics Ltd、Dorking、UK)をプレートに添加し(100μl/ウェル)、室温で1時間インキュベートした。PBSTで5回洗浄後、C1q複合体の結合は、室温で1時間、抗C1q-HRP(Abcam、Cambridge、UK)(100μl/ウェル、2%のBSA/DPBSにおいて100中1に希釈)を用いて検出した。PBSTで5回洗浄後、結合は、TMB基質(ThermoFisher Scientific、Loughborough、UK)を用いて検出し、これに続いて反応は3M HCLで停止させ、吸光度はDynex Technologies MRX TC IIプレートリーダー上450nmで読取り、結合曲線をプロットした。
【0220】
予測通り、非改変IgG1アイソタイプのみがC1qへの良好な結合を示し、他のアイソタイプは最小の結合、乃至は結合なしを示した(データは示さず)。
【0221】
3.操作されたFc断片の選択
Fcγ受容体及びC1q複合体上でのすべての試験したアイソタイプの相対的結合は表6に記載されている。
【表6】

2つの操作されたIgG1 L247F、L248E、P350S及びIgG4 S241P、L248E Fc断片はFcγI受容体及びC1q複合体上での結合の全損失を示す唯一の断片であった。
【0222】
得られた結果に基づいて、2つの操作されたIgG1 L247F、L248E、P350S及びIgG4 S241P、L248Eアイソタイプはさらなる特徴付けのために選択された。
【0223】
6つのヒト化抗体の作製
3つの選択されたヒト化バリアントをクローニングして、2つの選択され操作されたFc断片に融合させ、6つの異なる候補:mAb1~mAb6を作製した。
【0224】
表1に記載される例mAb1~mAb6は、従来の抗体組換え産生及び精製プロセスを使用して産生することができる。
【0225】
例えば、コード配列は、哺乳動物産生細胞株において組換え発現用の産生ベクター中にクローニングされている。
【0226】
以下の表7及び表8は、本発明を実行するのに、特に、核酸、発現ベクター及び本開示のマウス7.2由来のヒト化抗体を産生するのに有用な詳細なアミノ酸及びヌクレオチド配列を提供する。
【表7】

【表8】





【0227】
6つのヒト化バリアントの開発可能性特性
1.細胞株の作製
a.発現ベクター構築
重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子配列をベクター中にクローニングした。遺伝子系を使用してCHO細胞において抗体を発現した。抗体発現は、EF1アルファプロモーターの制御下であった。発現ベクターは、トランス遺伝子を周囲のクロマチンのサイレンシング効果から遮蔽する独特な遺伝子エレメントを帯びる(Girodら、2007年)。転写は最高レベルで維持され、トランス遺伝子組込み部位とは無関係であり、安定した高レベルのタンパク質発現がもたらされる。
【0228】
b.細胞株開発
CHO宿主細胞株は、アメリカ124培養細胞系統保存機関(ATCC)のCHO-K1 CCL-61細胞由来であり、既成組成のBalanCD Growth A培養培地(Irvine Scientific)中浮遊状態で増殖するように適応させている。細胞はNeonトランスフェクションシステム(Invitrogen)を使用してエレクトロポレーションによりトランスフェクトした。
【0229】
c.ClonePix FL装置を使用する単細胞クローニング
全手順を通じてずっと細胞の環境を変化させないでおくため、同じ培地(BalanCD Growth A、Irvine Scientific)を、トランスフェクション、単細胞クローニング、及び産生のための基本培地として使用した。それぞれのベクターのトランスフェクションに続いて、ピューロマイシン選択圧を適用して安定なプールを作製した。希釈した細胞は半固体培地(CloneMedia(著作権);Molecular Devices)中に蒔き、プレートは加湿インキュベーターにおいて37℃、5%COでインキュベートした。増殖したコロニーは、Molecular Devices製のClonePix(商標)FL Imagerを使用して選び取り、96ウェルプレートに移し、次に、最初の24ウェル、次に6ウェルTCプレートで増殖した。
【0230】
d.フェドバッチ性能評価
個々のクローンの増殖及び産生能力は、Cell Boost7 A+7Bフィード(GE Healthcare、USA)を使用して10日フェドバッチプロセスで細胞増殖能力及び生産力の基準により最良のクローンを選択するために、125mlの振盪フラスコにおいて評価した。フェドバッチ培養は0.3×10細胞/mlの細胞濃度で開始した。
【0231】
細胞増殖及び生産力について得られた結果は表9にまとめている。
【0232】
2.製造可能性評価のための試料調製
それぞれの候補抗体は、澄ませたCHO細胞上澄みプールからプロテインA捕捉により精製し、試験用に十分な材料を確保するためにそれぞれのバリアントにおいて2つのプールが必要であった。タンパク質濃度はUV法によりすべての捕捉後試料について決定した。試料回収及び収率は大多数の試料について89%よりも大きく、すべてのバリアントが類似する収率を示した。次に、それぞれの抗体は、フロースルー物質が製剤用の標的pHに到達するまで、30kDa MWCO遠心分離フィルターユニットを使用して25mMのヒスチジン、125mMのNaCl、pH6.0中にバッファー交換した。交換ステップ中、バリアントのいずれについても交換中タンパク質沈澱又は遅くなった流れの徴候となるものはなかった。バッファー交換完了後、それぞれのバリアント試料の濃度は製剤バッファーを用いて1.0mg/mlに調整し、10%のPS-80を0.02%のPS-80の最終濃度まで添加した。
【0233】
3.熱安定性評価
示差走査蛍光定量(Differential scanning fluorimetry)分析を実施して、試験された抗体バリアントの熱安定性を評価し比較した。それぞれのバリアントは3通り分析し、それぞれの観察された熱転移において平均Tonset、Tagg及びTを決定した(データは示さず)。
【0234】
すべての試験したバリアントについて得られたTonsetとT値の間では有意差は観察されなかった。すべての抗体についての決定されたTm1値は61℃であり、Tonsetについての決定された値はすべての抗体で54~55℃であった。コロイド安定性についてのプロットに基づいて決定されたTagg値は71~78℃の範囲に及んだ。
【0235】
全体として、4つの選択されたバリアントすべてが同等の熱安定性を示しており、観察された変動は試験された抗体間で熱安定性に有意な変化を生じない。
【0236】
4.強制分解研究
a.攪拌
それぞれのバリアントにおける試料は、500rpmに設定されたオービタルシェイカー上、室温で攪拌ストレスを受けさせた。それぞれのバリアントにおいて1つの試料は24時間攪拌し、別の試料は48時間攪拌した。それぞれのバリアントの1つのバイアルは対照として48時間まで室温で保存した。攪拌した試料は対照と比べて外見上の変化は観察されず、すべての試料が澄んでおり、無色で眼に見える微粒子がないことが観察された(データは示さず)。さらに、UV法で決定した場合、全タンパク質含有量に有意な変化はなかった(データは示さず)。
【0237】
バリアントのパネルの安定性に対する攪拌ストレスの効果は、SEC、還元CGE、非還元CGE、及びicIEF法により評価された(データは示されず)。室温で保存された攪拌対照試料と攪拌ストレス試料の間では、試験した抗体の安定性の有意な変化も、分解物の蓄積における経時的な識別可能な傾向も観察されなかった。SEC分析において決定された%主ピークは、すべての対照及び攪拌試料について≧99.2%であった。R-CGE分析では、すべての対照及び攪拌試料について≧98.5%であった。NR-CGE分析では、対照とストレスを与えられた試料の間では%主ピークに有意な傾向も変化も明らかにされなかった。結論として、すべての候補バリアント間で安定性の有意差は観察されなかった。
【0238】
b.凍結-解凍ストレス
それぞれの候補の3つの試料をエッペンドルフチューブ中に等分し、凍結-解凍ストレスを受けさせた。試料は-75±10℃で保存し、次に、室温で解凍した。それぞれの候補において1つの試料に3つの凍結-解凍サイクルを受けさせ、別の試料は6つの凍結-解凍サイクルを受けさせ、第3の試料は10サイクルを受けさせた。すべてのストレスを与えられた試料は、澄んでおり、無色で眼に見える微粒子がないことが観察され(データは示さず)、UV法で決定した場合、全タンパク質含有量に有意な変化はなかった(データは示さず)。
【0239】
バリアントのパネルの安定性に対する凍結-解凍ストレスの効果は、SEC、還元CGE、非還元CGE、及びicIEF法により評価された(データは示されず)。凍結-解凍ストレスは、SEC、R-CGE及びNR-CGE分析に基づけば、抗体の安定性に何の影響も与えなかった。
【0240】
icIEF分析により、試験された抗体の電荷不均質の顕著な変化が明らかになった。塩基性バリアントの濃度は連続的F/Tサイクルで減少し、一般的対照と比べて10×F/Tサイクルで塩基性バリアントの濃度は最低であった。唯一の例外はバリアントIgG1 7.2 VH2/Vκ1であり、これについては、塩基性バリアントの濃度の減少はすべての試験したF/Tサイクルについて同じレベルであった(表9参照)。バリアントmAb1、mAb2、及びmAb3では、10×F/Tサイクル後、塩基性種はそれぞれ1.0、1.3、及び3.4%減少した。塩基性種の濃度の減少は、主ピークの%の増加と関係している。バリアントmAb4、mAb5及びmAb6では、塩基性種の減少はそれぞれ4.8、2.8及び4.7%である。バリアントmAb4の変化は大部分、%主ピークの増加に関係しており、バリアントmAb5及びmAb6の変化は、%主ピークと%酸性バリアントの両方の増加に関係している。
【0241】
全体として、凍結-解凍ストレスからの変化に対する最も高い抵抗性はバリアントmAb1(IgG1 7.2 VH2/Vκ1)及びmAb2(IgG1 7.2 VH2/Vκ2)で観察されることが確定された。
【0242】
c.酸性pHストレス
それぞれの候補における試料は室温で酸性pHストレスを受けさせ、それぞれの試料はHClでpH3.5に調整し、室温で2時間、4時間、及び24時間維持し、その後試料は、1MのTris、pH7.0で中和した。すべての試料は、澄んでおり、無色で眼に見える微粒子がないことが観察され(データは示さず)、UV法で決定した場合、タンパク質濃度に有意な変化はなかった(データは示さず)。
【0243】
バリアントのパネルに対する酸性pHストレスの効果は、SEC、還元CGE、非還元CGE、及びicIEF法により評価された(データは示されず)。R-CGE又はNR-CGE分析により、48時間RT対照と比べた場合、低pHに曝露された試料について分解物の蓄積に有意な変化は経時的に検出されなかった。電荷不均質分析では、塩基性バリアントの濃度は酸性pHストレスを受けたすべての試料において減少したが、経時的に明白な傾向は観察されなかった。
【0244】
塩基性バリアントの減少に対する酸性ストレスの全体的な最も低い影響は、バリアントmAb1(IgG1 7.2 VH2/Vκ1)及びmAb2(IgG1 7.2 VH2/Vκ2)について観察された。この結果は、凍結-解凍研究においてicIEFにより得られた結果とよく一致している。SEC分析では、すべてのバリアントが、酸性ストレスに曝露されるといくつかの凝集物を蓄積するのが観察され、これは%主ピークの減少と関係していたが、経時的に明白な傾向は観察されなかった。一般的に、凝集物の蓄積はIgG1バリアントと比べた場合、IgG4バリアントについては約9倍であった。IgG1バリアントについての凝集物の蓄積は、すべての酸性ストレス試料についての0.3~1.0%であり、IgG4バリアントについては蓄積はストレス試料についての4.3~7.8%であり、これは有意に高い(表9参照)。
【0245】
結論として、酸性ストレスに対する最も高い抵抗性は、バリアントmAb1(IgG1 7.2 VH2/Vκ1)及びmAb2(IgG1 7.2 VH2/Vκ2)で観察されることが確定された。
【0246】
d.熱ストレス
それぞれのバリアントにおける試料は、熱ブロックにおいて50℃で3日間、1週間、及び2週間、熱ストレスを受けさせ、次に、2~8℃で保存した一般対照試料のセットと比較した。試料の外観検査を定期的に実施し、相分離、不透明度の変化、又は沈澱の証拠は観察されなかった。すべての試料は、すべての時点で、澄んでおり、無色で眼に見える微粒子がないことが観察された(データは示さず)。さらに、UV法で決定した場合、タンパク質濃度に有意な変化はなかった(データは示さず)。
【0247】
バリアントのパネルに対する熱ストレスの効果は、SEC、R-CGE、NR-CGE、及びicIEF法により評価した。その結果により、すべてのバリアントが熱ストレスの影響を受けやすいことが明らかになった。
【0248】
SEC分析では、すべての試験されたバリアントについて、凝集物濃度の増加の明白な傾向が、時間の関数として観察された。IgG1と比べてIgG4バリアントでは凝集物の有意に高い蓄積が観察された。2週間後、%全凝集物の増加はIgG4バリアントについては33.7~44.7%の範囲に及んだが、IgG1バリアントについては13.0~18.2%だけであった(表9参照)。さらに、mAb1(IgG1 7.2 VH2/Vκ1)及びmAb2(IgG1 7.2 VH2/Vκ2)バリアントが蓄積した凝集物は、対照mAb3(IgG1 20.1 VH3/Vκ1)よりも少なかった。
【0249】
R-CGE分析では、すべての試験されたバリアントについて、純度が減少する明白な傾向(LC+HCの%の減少として定義される)が、時間の関数として観察されたが、すべての試験されたバリアント間では安定性の有意差は観察されなかった。試料分解のレベルはすべての試験された抗体について同等であった(データは示さず)。同様に、NR-CGEデータは、すべての試験されたバリアントについて時間の関数として純度が減少する明白な傾向(主ピークの減少として定義される)を明らかにした。IgG1と比べてIgG4バリアントでは有意に低い純度が観察された(データは示さず)。2週間後、%純度はIgG4バリアントでは34.8~41.7%減少していたが、IgG1バリアントでは20.0~30.0%だけであった(データは示さず)。さらに、mAb1(IgG1 7.2 VH2/Vκ1)及びmAb2(IgG1 7.2 VH2/Vκ2)バリアントは、mAb3 IgG1 20.1 VH3/Vκ1よりも低い分解を示した。IgG1抗体では、主ピークの減少は、フロント主ピーク不純物(断片)の増加を主に伴っていた。しかし、IgG4抗体では、フロント主ピーク不純物(断片)とバック主ピーク不純物(凝集物)の両方の蓄積が、減少する主ピークの関数として観察された(データは示さず)。この結果は、IgG1と比べてIgG4抗体では凝集物の有意に高い濃度が観察されたSECデータとよく一致している。
【0250】
IgG4バリアントについての1週目の試料は、icLEFによる分析にはひどく分解しすぎており、すべてのバリアントについての2週目の試料は分析にはひどく分解しすぎていた。したがって、3日間データのみを使用して、試験された抗体間の電荷不均質性の変化を評価した。%主ピークにより決定する場合の純度の差は、IgG1試料では12.4~14.4%差であり、IgG4試料では16.0~16.6%であった(データは示さず)。
【0251】
全体として、熱ストレスによる分解は、IgG4バリアントではIgG1バリアントと比べて大きく、これはすべての時点で観察されることが確定された。分析により、mAb1(IgG1 7.2 VH2/Vκ1)及びmAb2(IgG1 7.2 VH2/Vκ2)バリアントは、熱ストレスに最も影響を受けにくいことが示されており、この結果は、凍結-解凍及び酸性pHストレスについて得られたデータと一致している。
開発可能性特性の観点から最良の候補の選択
細胞株における生産力に関して、最良の結果はヒト化バリアントmAb1(7.2 VH2/Vκ1)を用いて得られ、生存細胞密度はmAb1については10日目で54×10生存細胞/ml上がった。
【0252】
熱安定性研究では、試料はDSF分析により標準マトリックスにおいて評価し、それぞれの候補においてTonset、T及びTaggを決定した。Tonset及びT1では変動は観察されず、Taggはすべてのバリアントについて70℃よりも大きかった。結果は、mAb1、mAb2、mAb4、及びmAb5が同等の熱安定性を実証していることを示している。
【0253】
強制分解研究では、試料は攪拌、凍結-解凍、酸性pH及び熱ストレスに曝露された。結果は、適切なストレス条件下で、候補バリアントのパネルの分解されやすさの程度が異なっていたことを示している:
攪拌ストレスに対する有意な応答は分析方法のいずれによっても観察されなかった。
【0254】
凍結-解凍ストレスに対する有意な応答はSEC又はCGE法によって観察されなかったが、icIEF分析は試験されたバリアント間で電荷不均質性の差を明らかにし、mAb1(IgG1 7.2 VH2/Vκ1)及びmAb2(IgG1 7.2 VH2/Vκ2)バリアントが凍結-解凍ストレスにより引き起こされる変化に対して最も高い抵抗性を示すことを明らかにした。
【0255】
酸性pHストレスに対する応答はicIEF及びSECにより観察され、すべての候補が曝露するといくつかの不純物を蓄積した。mAb1(IgG1 7.2 VH2/Vκ1)及びmAb2(IgG1 7.2 VH2/Vκ2)バリアントは酸性pHストレスに対して最も高い抵抗性を示した。
【0256】
観察された最も有意なストレス応答は50℃での試料貯蔵に対してであった。SEC、NR-CGE、及びicIEF分析は、経時的に試料純度が減少する有意な傾向を明らかにした。観察される純度の減少は、IgG1バリアントと比べた場合、IgG4バリアントでは一貫して大きかった。IgG1バリアントの群では、mAb1(7.2 VH2/Vκ1)及びmAb2(IgG1 7.2 VH2/Vκ2)が酸性熱ストレスに対して最も高い抵抗性を示した。
【0257】
異なるヒト化候補の開発可能性特性の結果は下の表9にまとめている。
【表9】
【0258】
結論として、mAb1バリアントは、開発可能性という観点からは最良の結果を示し、主力候補として選択された。
一価及び二価分子としてのヒト化mAb7.2バリアントの機能特性
1.Fab及びFab断片の調製
a.F(ab’)作製のためのペプシン消化
50%スラリー中の固定化したペプシン(Thermo Scientificキット、カタログ番号N°44988)を、スラリーを5000gで2分間、遠心沈澱させることにより消化バッファー(20mMの酢酸ナトリウム pH4.4)中にバッファー交換した。上澄みは廃棄し、スラリーは1mLの消化バッファーに再懸濁し、続いて5000gで2分間さらに回転させた。このステップはさらに4回繰り返した(全部で5回の樹脂洗浄)。次に、樹脂は、最初のスラリー容積まで消化バッファーに再懸濁した。
【0259】
mAb4、mAb5及びmAb6(7.2 VH2/Vκ1、7.2 VH2/Vκ2又は20.1 VH3/Vκ1 IgG4バリアント)は、5又は10mLのZeba Spinカラム(スケール依存的)を使用して消化バッファー中にバッファー交換し、Vivaspin濃縮器(10,000 MWCO)を製造業者のプロトコールに従って3mg/mLまで濃縮した。
【0260】
3mg/mLのmAb4、5及び6(前もって消化バッファーにバッファー交換されている)は樹脂上に固定化されたペプシンと混合され、37℃で回転させながら1.5~2時間インキュベートした。
【0261】
消化混合物は5000gで2分間遠心沈殿させた。上澄みは取り除いて、適切な注射器及び0.22μmの小型フィルター(Merck Millipore、Millex カタログ番号n°SLGV004SL)を使用して新しいチューブ中に濾過した。樹脂は1mLのPBSで洗浄し、5000gで1分間回転させた。上澄みは取り除き、濾過して、以前の上澄みと一緒にプールした。洗浄ステップを繰り返した。
【0262】
消化し濾過した上澄みは、移動相として10mMの酢酸ナトリウム、100mMのNaCl、pH5.5を使用するHiLoad 16/600 200pgサイズ排除カラムを使用して精製した。溶出したF(ab’)断片に対応する画分はプールし、濃縮して無菌濾過する。
【0263】
F(ab’)断片は、SDS-PAGE、分析SEC及びOD280nm読取り
により分析した。
【0264】
b.Fab作製のためのパパイン消化
50%スラリー中の固定化したペプシン(Thermo Scientificキット、カタログ番号N°20341)を、スラリーを5000gで2分間、遠心沈澱させることにより消化バッファー(20mMのリン酸ナトリウム、10mMのEDTA、150mMのシステイン pH7.0)中にバッファー交換した。上澄みは廃棄し、スラリーはもっと大きな容積の消化バッファーに再懸濁し、続いて5000gで2分間さらに回転させた。このステップはさらに4回繰り返した(全部で5回の樹脂洗浄)。次に、樹脂は、最初のスラリー容積まで消化バッファーに再懸濁した。
【0265】
mAb4、mAb5及びmAb6(7.2 VH2/Vκ1、7.2 VH2/Vκ2又は20.1 VH3/Vκ1 IgG4バリアント)は、5又は10mLのZeba Spinカラム(スケール依存性)を使用して消化バッファー中にバッファー交換し、Vivaspin濃縮器(10,000 MWCO)を製造業者のプロトコールに従って3mg/mLまで濃縮した。
【0266】
3mg/mLのmAb4、5及び6(前もって消化バッファーにバッファー交換されている)は樹脂上に固定化されたパパインと混合され、37℃で回転させながら42時間インキュベートした。
【0267】
消化混合物は5000gで2分間遠心沈殿させた。上澄みは取り除いて、適切な注射器及び0.22μmの小型フィルター(Merck Millipore、Millex カタログ番号n°SLGV004SL)を使用して新しいチューブ中に濾過した。樹脂はPBSで3回洗浄し、5000gで1分間回転させ、それぞれのサイクルで上澄みを収集しプールした。次に、プールした画分は、適切な注射器及び0.22μmの小型フィルターを使用して新しいチューブ中に濾過した。
【0268】
消化し濾過した上澄みは先ず、1×DPBS、pH7.4中にバッファー交換し、次に、第1にプロテインAカラムを使用して精製してFc及び未消化mAbを取り除き、続いて、移動相として10mMの酢酸ナトリウム、100mMのNaCl、pH5.5を有するサイズ排除(SEC)カラムを使用して研磨ステップを行った。溶出したFab断片に対応する画分はプールし、濃縮して無菌濾過した。
【0269】
Fab断片は、SDS-PAGE、分析SEC及びOD280nm読取りにより分析した。
【0270】
2.Biacoreを使用するヒト化7.2及び20.1Fab、F(ab’)断片並びにIgGフォーマットの親和性測定
BTN3Aに対する主力ヒト化7.2及び20.1抗体の親和性をその異なるフォーマット(Fab、F(ab’)及びIgG)で評価するため、Biacore T200 ControlソフトウェアV2.0.1を実行するBiacore T200(製造番号1909913)装置及びEvaluationソフトウェアV3.0(GE Healthcare、Uppsala、Sweden)を使用して、シングルサイクル動態解析を実施した。すべてのシングルサイクル動態実験は、0.1%のBSAを含有するHBS-P+ランニングバッファー(pH7.4)(GE Healthcare、Little Chalfont、UK)を用いて25℃で実行した。
【0271】
BNT3A Hisタグ付き抗原(Sino Biological、Beijing、China)を、0.4μg/mlの最終濃度までランニングバッファーに希釈した。それぞれのサイクル開始時に、BNT3A-Hisは、標準アミン化学反応とHis捕捉キットを使用してプレ連結されたCM5センサーチップのFc2(GE Healthcare、Little Chalfont、UK)上に10μl/分の流速で捕捉させた。約50RUのRMaxを得るための異なる理論値である、約34RU、16RU又は11RUの固定化レベル(RL)をそれぞれ分析物Fab、F(ab’)及びIgGに使用した。次に、表面は安定化させておいた。シングルサイクル動態データは、いかなる潜在的な物質移動効果も最小限に抑えるために流速40μl/分で精製された試料(Fab、F(ab’)及びIgG)を用いて得た。参照チャネルFc1(抗原捕捉なし)からのシグナルは、Fc2のシグナルから引き算して、参照表面への非特異的結合の差を補正した。BTN3A-His空試験(分析物なし)についてのシグナルを引き算して、表面安定性の差を補正した。漸増濃度のBTN3A1の5回注射についての会合期は毎度240秒間モニターし、シングル解離期はBTN3A1の最後の注射に続いて2000秒間モニターし、シングル解離期は分析物の最後の注射に続いて1400秒間測定した。チップ表面の再生は、10mMのグリシン-HCl pH1.5の2回注射を使用して実行し、続いて240秒の間安定化させた。生のセンサーグラムは、分析物の異なる原子価と一致して、Fab試料では1対1モデルで、F(ab’)及びIgG試料では二価分析物モデルでフィットさせた。動態定数はそれぞれのバリアントにおいて計算した(表10、11及び12参照)。
【表10】

【表11】

【表12】

3.親和性特性の観点からの最良候補の選択
【0272】
及びF(ab’)フォーマットを用いるとこれらの差を観察することができるが、そのギャップはFab断片を用いるとはるかに高くなり、実際、20.1は20.30の平均Kを示し、7.2は3.22(VH2/Vκ1)又は3.01(VH2/Vκ2)の平均Kを示した。
【0273】
4.一次T細胞及び他の細胞株へのmAb1結合アビディティー
次に、mAb1結合アビディティーは、ヒト一次T細胞で並びにWT及びBTN3A1、BTN3A2又はBTN3A3アイソフォームを用いて個々に再構成されたBTN3Aノックアウトを含む種々の細胞株でフローサイトメトリーにより評価してきた(データは示さず)。それぞれの試験された細胞型において得られたEC50値は表13にまとめている。
【0274】
BTN3A KO細胞において得られたデータは、mAb1がその標的に特異的に結合することを明白に示した。さらに、個々のアイソフォームでの再構成により、mAb1がBTN3A1、BTN3A2、及びBTN3A3を同等のアビディティーで認識することが確かめられた。他のすべての試験された細胞は、バーキットリンパ腫ダウディ細胞株についての9.6nMから結腸直腸腺癌細胞株HT29についての112.3nMに及ぶEC50値の範囲でmAb1結合について陽性なようであった。
【表13】

5.mAb1はオフターゲット結合がない
他の非BTN3A分子でのmAb1のオフターゲット結合の可能性をRetrogenix技術により評価した。この研究は、>5000ヒト膜受容体を発現する細胞アレイ又はHEK293細胞の表面で発現される分泌タンパク質をスクリーニングすることによりオフターゲット結合が存在しないことを実証することを目標にしていた(Retrogenixプラットフォーム)。
【0275】
細胞固定前又は後での非トランスフェクトHEK293細胞への、及びBTN3Aを過剰発現している細胞へのmAb1の結合のレベル調べると、固定された細胞上で5μg/mlが適切なスクリーニング条件であることを示した。この条件下で、mAb1を、細胞表面膜タンパク質、及び細胞表面に繋ぎ留められた分泌タンパク質を含む、5528のヒトタンパク質を個々に発現するヒトHEK293細胞に対する結合についてスクリーニングした。これにより10の主要なヒットが明らかにされた。
【0276】
それぞれの主要なヒットは、2つの対照受容体(CD20及びEGFR)と一緒に再発現され、5μg/mlのmAb1、5μg/mlのアイソタイプ対照抗体、並びに他の正の及び負の対照処置で再試験された。5つの非特異的ヒットを取り除いたのち、試験抗体について5つの特異的相互作用が残った。5つすべての特異的ヒットはBTN3A関係であり、BTN3A1の2つのアイソフォーム、BTN3A2の2つのアイソフォーム及びBTN3A3の1つのアイソフォームであった。
【0277】
研究結論は、mAb1についてのオフターゲット相互作用は確かめられず、そのBTN3Aエピトープに対するmAb1の高い特異性を示していたことである。
【0278】
6.mAb1はVγ9Vδ2 T細胞活性化及び腫瘍細胞殺傷を媒介する
もともと、マウス抗BTN3A mAbは、Vγ9Vδ2 T細胞によるBTN3A認識の引き金を引いて、(i)ヒトPBMCにおけるこの特定のサブセットの増殖、(ii)サイトカイン(IFNγ及びTNFα)の産生、及び(iii)感染した又は形質転換された標的細胞の細胞溶解(例えば、パーフォリン、グランザイム、TRAILによる)をもたらす活性化を媒介することが明らかにされていた(Harlyら、Blood、2012年 & Benyamine、A.ら、2016年、Oncoimmunology 5、e1146843)。
【0279】
いかなる特定の理論にも縛られずに、mAb1の提唱される作用機序は、腫瘍標的細胞の表面で発現されるBTN3AにmAb1が結合すると立体構造変化の引き金を引き、これによりVγ9Vδ2 T細胞上の対抗受容体へのそのシグナル伝達が可能になるというものである。抗BTN3A抗体の活性は、腫瘍細胞株(標的)とrHuIL-2(200UI/mL)及びアミノビスホスホネート(Zometa、1μM)の存在下で、10~14日間健康なドナーのPBMCから前もって増殖した一次ヒトVγ9Vδ2 T細胞(エフェクター)の共培養に基づくインビトロアッセイを使用してルーチンに評価する。増殖期の終了時、Vγ9Vδ2 T細胞の純度はフローサイトメトリーにより評価し、次に、これらの細胞は将来の使用のため凍結させる。実験前日、増殖したVγ9Vδ2 T細胞は解凍し、200UI/mLのrHuIL-2で一晩培養してインビトロ生存を維持する。共培養後、Vγ9Vδ2 T細胞活性化は、γδ T細胞上でのCD107a/b発現のフローサイトメトリー検出により、又は標的細胞殺傷の尺度としてカスパーゼ3/7活性化を定量化することによりモニターされる。
【0280】
先ず、3つの異なる健康なドナーPBMCから増殖されたヒトVγ9Vδ2 T細胞を、漸増濃度のmAb1を用いてダウディ細胞株(ATCC-CCL213;バーキットリンパ腫)と共培養した。4時間後、細胞は、フローサイトメトリーによりCD107a/bのVγ9Vδ2 T細胞発現について分析した。結果は、CD107a/bを発現するVγ9Vδ2 T細胞の百分率の濃度関連増加を示し、平均EC50は0.89nM(+/-0.39)であった(図1A)。並行して、本発明者らは、mAb1パルスダウディ細胞に対するVγ9Vδ2 T細胞細胞溶解活性を評価した。図1Bに示されるように、mAb1は標的細胞アポトーシスを濃度依存的方法で誘導し、EC50は0.35nMであった。さらに、Vγ9Vδ2 T細胞活性化(CD107a/b;図1C上パネル)及び腫瘍細胞溶解(カスパーゼ3/7;図1C下パネル)は、異なる組織起源由来の腫瘍細胞株を使用して試験し、ダウディ細胞と比較した。結果は、Vγ9Vδ2 T細胞活性化、及びそれに続く腫瘍細胞溶解は、mAb1が、L-IPC(膵管腺癌)、A549(肺癌上皮細胞)及びHT29(結腸直腸腺癌)細胞株に結合することにより誘導されることを明らかにした。
【0281】
7.mAb1は、細胞の組織起源とは無関係に、幅広いBTN3A発現ヒト細胞株のVγ9Vδ2 T細胞殺傷を増強する
a.材料及び方法
腫瘍細胞培養
HL-60は、急性前骨髄球性白血病由来のヒト前骨髄芽球(promyeloblast)細胞株である。ダウディは、バーキットリンパ腫由来のヒトBリンパ芽球細胞株である。ジャーカットは急性T細胞白血病細胞株である。
【0282】
HT-29及びHCT116は、結腸直腸腺癌由来のヒト上皮細胞である。
【0283】
PC3及びDU145は、前立腺癌(転移部、それぞれ骨及び脳)由来であった。
【0284】
SUM159及びMDA-MB-231は、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)細胞株である。
【0285】
HL60、ダウディ、ジャーカット、DU145及びMDA-MB-231細胞は、RPMI Glutamax、10%のFBS;1mMのピルビン酸ナトリウムにおいて37℃/5%COで培養した。PC3及びHT-29は、DMEM 10%のFBS、1mMのピルビン酸ナトリウムにおいて37℃/5%COで培養した。HCT116は、McCoy 5a培地 10%のSVFにおいて培養した。SUM159は、培地F12 Nut Mix 1×+Glutamax、5%のSVF、ヒドロコルチゾン2mg/ml、インスリンヒューマログ2mg/ml及び可欠アミノ酸において培養した。
【0286】
インビトロVγ9Vδ2 T細胞増殖
末梢血単核球(PBMC)は、Etablissement Francais du Sang Provence Alpes Cote d’Azur(France)から得た末梢血のフィコール密度勾配遠心分離により単離した。Vγ9Vδ2 T細胞を増殖するため、50.106PBMCを、rHuIL-2(200UI/mL)及びアミノビスホスホネート(Zoledronate、1μM)の存在下、10~14日間、75cmフラスコにおいて10%のFBS及び1%のピルビン酸ナトリウムを補充したRPMI1640中1.5×10細胞/mlで再懸濁した。5日目から、rHuIL-2は2日又は3日ごとに更新し、細胞は1×10/mlに保った。増殖期の終了時、Vγ9Vδ2 T細胞の純度はフローサイトメトリーにより評価し、Vγ9Vδ2 T細胞の数が生細胞の80%に到達した場合は、これらの細胞は将来使用するためにFBS20%DMSOに凍結した。
【0287】
ヒトPBMCからのVγ9Vδ2 T細胞の精製
新鮮なヒトPBMCを、PBS+2%のFBS+1mMのEDTAにおいて50.106細胞/mlで再懸濁した。Vγ9Vδ2は、EasySep(商標)ヒトガンマ/デルタ T細胞単離キット(Stemcell ♯19255)を製造業者の説明書に従って使用して単離した。手順の終了時、細胞純度はフローサイトメトリーにより測定した。生CD3+Vγ9+細胞は80%を超えていた。
【0288】
Vγ9Vδ2 T細胞殺傷アッセイ
10,000の増殖した又は新鮮なVγ9Vδ2 T細胞を、mAb1又は適切なアイソタイプ対照の存在下、RPMI 1640+glutamax、10%のFBS+1mMのNaPyにおいて指示された比(E対T 1対1又は1対5)で96ウェルプレートで腫瘍性細胞株と共培養した。共培養物に添加する場合、rHuIL-2は20IU/mlで使用した。指示された時間の後、ATPを、生細胞の数に比例する発光シグナルを生じるGlo試薬(Promega ♯G7572)を使用して測定した。
【0289】
b.結果
Vγ9Vδ2 T細胞との共培養による殺傷をモニターするための標的細胞のカスパーゼ3/7染色に基づく方法に加えて、本発明者らは、代謝活性細胞の指標である存在するATPの定量化に基づいて、培養中の生存細胞の数の評価に基づく補完的アプローチを開発した。
【0290】
このアッセイを用いて、本発明者らは、mAb1又は適切なアイソタイプ対照+/-rHuIL-2(20IU/ml)の存在下で増殖させたVγ9Vδ2 T細胞との共培養(比E対T 1対1)の24時間後、急性骨髄性白血病細胞株HL60-WT、又は-BTN3A-KOの生存をモニターした(図A)。結果は、mAb1の存在下でのHL60-WT生存の濃度依存性減少を示し、活性化されたVγ9Vδ2 T細胞による標的腫瘍細胞の効率的BTN3A依存性殺傷を示していた。類似する実験を、インビトロで増殖させた、又は新たに単離されたVγ9Vδ2 T細胞を用いて実施し(それぞれ図B及びC)、細胞生存率を4日間の期間にわたり測定した。
【0291】
図Bは、インビトロで増殖したVγ9Vδ2 T細胞がHL60-WT増殖を濃度依存的方法で制御することを示した。rHu-IL2の添加は、おそらく、一次T細胞のインビトロ培養に必要な生存シグナルを提供することによりエフェクター細胞殺傷能力を経時的に改善する。類似の結果は、1対1及び1対5のE対T比でHL60-WTと4日間共培養した、ヒトPBMCから単離した新鮮なVγ9Vδ2 T細胞を用いて得られた。これらの結果は、個々のVγ9Vδ2 T細胞が、mAb1媒介により活性化されると複数の腫瘍標的に繰り返し結合して殺傷する能力を示している(図2C)。
【0292】
次に、本発明者らはこのアッセイを使用して、異なる組織起源(結腸、乳房、前立腺、Tリンパ腫及びバーキットリンパ腫)由来のBTN3A発現細胞株に対するmAb1媒介Vγ9Vδ2 T細胞殺傷活性をモニターした。HT29、PC3、DU145、MDA-MB-231、HCT116、SUM159、ジャーカット及びダウディ細胞を、漸増濃度のmAb1の存在下で、インビトロで増殖したVγ9Vδ2 T細胞と一晩共培養し、細胞生存率を測定した。結果によれば、mAb1が、その組織起源とは無関係に、幅広いBTN3A発現ヒト細胞株のVγ9Vδ2 T細胞殺傷を増強することが確証された(Erreur! Source du renvoi introuvable.及び図)。
【表14】

8.mAb1はヒトAML細胞株を移植されたマウスモデルにおいてVγ9Vδ2 T細胞療法を改善する
mAb1標的BTN3Aは齧歯類では発現されず、Vγ9Vδ2 T細胞亜集団は霊長類に特有なので、Vγ9Vδ2 T細胞抗腫瘍活性という概念の実験証明は、通常、BTN3Aを発現するヒト腫瘍細胞株を移植し、健康なヒトドナー由来のVγ9Vδ2 T細胞(そのような再構成におけるVγ9Vδ2 T細胞は腫瘍細胞株とは同種である)を養子移入した免疫無防備状態NSGマウスにおいて試験される。これらのモデルは、広範囲の固形、並びに血液系腫瘍においてVγ9Vδ2 T細胞の抗腫瘍治療可能性を検証するのに広く使用されてきた(Pauza、C.D.ら、2018年、Immunol.9)。
【0293】
さらに、ヒトVγ9Vδ2 T細胞を受けていたマウスに投与されたマウス抗ヒトBTN3A抗体、m20.1は、AMLを帯びるNSGマウスの血液及び骨髄において、動物生存を増強し、白血病負荷(leukemic burden)を減らすと記載されていた(Benyamineら、2016年、上記参照)。このモデルでは、m20.1を、抗腫瘍リンパ球サブセットを増やし、マウスにおいてその生存を改善し、移入されたヒトVγ9Vδ2 T細胞の抗腫瘍活性を向上させることが明らかにされているrHuIL-15/IL-15Rα融合タンパク質であるRLIと組み合わせて注射した。
【0294】
インビボマウスモデルにおけるmAb1の有効性のさらなる特徴付けでは、本発明者らは、mAb1と組み合わせたヒトVγ9Vδ2 T細胞移入がAMLを帯びるNSGマウスで腫瘍成長を遅らせ動物生存を改善する可能性を調べた。
【0295】
a.U937モデル
健康な生後6~8週のメスのマウス(n=30)は、Gertner-Dardenne、J.ら、2012年.J.Immunol.188、4701~4708頁に記載される通りに、0日目に0.2×10ルシフェラーゼ形質導入U937細胞を受けた。1日目、腫瘍負荷は生物発光イメージングを使用して評価し、マウスは、1日目にインビトロで増やしたヒトVγ9Vδ2 T細胞(3×10細胞)の静脈注射を単独で又は抗BTN3A mAb1若しくは関連するアイソタイプ対照(10mg/kg、200μg/マウス)と組み合わせて受ける6つの群に無作為に割り当てられた。処置は7日目に繰り返された。群2及び4では、抗体は4日目及び10日目にも投与された。rHuIL-15/rHuIL-15Rαの複合体はヒトVγ9Vδ2 T細胞の増殖を可能にするので(J.Immunol.(2006)17、6072~608頁)、これらの複合体はVγ9Vδ2 T細胞と一緒に投与された。
【0296】
すべての群は表16に記載されている。
【0297】
hIL-15/IL-15R-Fc複合体は注射前の30分間室温(RT)でプレ複合体化し(マウスあたり0.2μgのhIL-15+1.2μgのIL-15R-Fc)、注射に先立ってVγ9Vδ2 T細胞と混合した。それぞれの注射における最終容積は100μlであった。処置mAbは、Vγ9Vδ2 T細胞移植の4時間前に注射した。
【0298】
本発明者らの結果により、Vγ9Vδ2 T細胞プラスrHuIL-15/rHuIL-15Rα注入が腫瘍量を減少することが確かめられた。この効果のほうがはるかに印象的であり、抗BTN3A mAb1がVγ9Vδ2 T細胞と共に添加された場合の生存の有意な増加と関連していた(表16及び17)。重要なことに、この極めて侵襲性のマウスモデルで使用される、急性骨髄性白血病の処置に最も効果的な薬物の1つであるシタラビン(Ara-C)(U937腫瘍を帯びるNSGマウス中10mg/kg)は、mAb1をヒトVγ9Vδ2 T細胞移入と組み合わせて観察した場合、2~3日(約10%)マウスの生存を改善した。
【0299】
これらのデータは、インビボでVγ9Vδ2 T細胞免疫療法と組み合わせた抗BTN3A mAbにより発揮される強力な抗白血病効果に光を当てている。
【表15】

【表16】


【表17】
【0300】
b.MOLM14モデル
AraC抵抗性ヒトAML由来細胞株である、MOLM14に対するmAb1のインビボ有効性を、ヒト腫瘍細胞株及びヒトVγ9Vδ2 T細胞を移植したNSGマウスを使用する異種移植片モデルにおいて評価した。この研究の目標は、腫瘍成長に対する及びマウス生存に対する、mAb1と組み合わせたヒトVγ9Vδ2 T細胞の繰り返し静脈注射の効果を確かめることであった。
【0301】
生後6~8週のメスのNSGマウスに、100μlの容積中マウスあたり0.2×10のルシフェラーゼを発現するMOLM14(CVCL_7916)細胞(luc2)を0日目に尾部静脈を介して静脈(iv)注射した。生物発光アッセイは、エンドトキシンフリーのルシフェリン(30mg/kg)の添加に続いてPhotonIMAGER(Biospace Lab)を使用して0日目に実施し、マウスは、生物発光シグナルの強度に基づいて7マウスの均一な群に無作為化した。3×10のヒトインビトロ増殖Vγ9Vδ2 T細胞及びhIL-15/IL-15R複合体は、1、8、15、22及び29日目に静脈注射した。mAb1又はhlgG1は、1、5、8、12、15、19、22、26及び29日目に静脈注射した。
【0302】
異なる実験群は表19にまとめている。
【0303】
hIL-15/IL-15R-Fc複合体は、注射前に室温で30分間プレ複合体化し(マウスあたり0.2μgのhIL-15+1.2μgのIL-15R-Fc)、注射に先立ってVγ9Vδ2 T細胞と混合した。それぞれの注射における最終容積は100μlであった。処置mAbは、Vγ9Vδ2 T細胞移植の4時間前に注射した。
【0304】
MOLM14細胞が発する生物発光シグナルは、腫瘍成長を追跡するための細胞注射後0、7、14、21及び28日目に測定した。血液採取は19日目に実行して、フローサイトメトリーにより循環するMOLM14細胞の数を評価した。赤血球溶解は染色前に実施した。mCD45+マウス細胞は分析から排除し、MOLM14腫瘍細胞はそのGFP発現により検出した。取得はLSRII SORP血液計数器(Becton Dickinson)上で実施し、分析はFlowJoソフトウェアを使用して実施した。疾患の症状(著しい体重減少、皺のよった毛皮、猫背、衰弱、及び低下した可動性)についてのマウスの毎日モニタリングにより、苦痛の徴候のある注射された動物について殺傷時間が決定された。
【0305】
表20に示されるように、無関係な対照アイソタイプ(hlgG1)を注射されたVγ9Vδ2 T細胞は腫瘍成長を有意に制御しない。これとは対照的に、もっと低い生物発光シグナルにより示されるように、腫瘍成長は、抗BTN3A mAb1がヒトVγ9Vδ2 T細胞と順次に投与されると強く低減された。結果は、プロトコールの19日目に循環芽細胞の数(末梢血においてフローサイトメトリーにより評価される)の有意な減少も示した(表20)。重要なことに、腫瘍成長の抗BTN3A mAb依存性減少は、マウス生存における45%の有意な改善をもたらす(それぞれのアイソタイプ対照と比べた場合)(表22)。
【表18】

【表19】

【表20】

【表21】
【0306】
9.mAb1はヒト卵巣がん細胞株SKOV-3を移植されたマウス固形腫瘍モデルにおいてVγ9Vδ2 T細胞療法を改善する
a.材料及び方法
インビボVγ9Vδ2 T細胞増殖
同種ヒトVγ9Vδ2 Tリンパ球は、Etablissment Francais du Sang(EFS、Nantes、France)により、フィコール密度遠心分離(Eurobio、Les Ulis、France)後に提供された健康なドナー血液試料から得られた末梢血単核球(PBMC)から増幅された。先ず、末梢同種ヒトVγ9Vδ2 Tリンパ球の特定の増殖では、10%の熱失活したウシ胎仔血清、2mMのL-グルタミン、10mg/mLのストレプトマイシン、100IU/mLのペニシリン(すべてGibco製)、及び100IU/mLの組換えヒトIL-2(PROLEUKIN、Novartis、Bale、Suisse)を補充したRPMI培地において、PBMCを、Innate Pharma(Marseille、France)より寄贈された3μMのブロモヒドリンピロホスフェート(BrHPP)と一緒にインキュベートした。4日後、培養物は300IU/mL IL-2を補充した。21日目、純度をフローサイトメトリーにより測定した(純度>90%)。純粋なヒトVγ9Vδ2 Tリンパ球は、10%の熱失活したウシ胎仔血清、2mMのL-グルタミン、10mg/mLのストレプトマイシン、100IU/mLのペニシリン(すべてGibco製)、及び100IU/mLの組換えヒトIL-2(Novartis)を補充したRPMI培地において、フィーダー細胞(混合された及び35Gy照射エプスタインバーウイルス形質転換Bリンパ球及びPBMC)及びPHA-Lを使用してさらに増殖させた。3週間後、静止エクスビボ増殖Vγ9Vδ2 Tリンパ球をインビボ実験のために使用した。
【0307】
マウスモデル
0日目、生後6~8週のNSGマウスに、無菌PBS100μLの容積中マウスあたり1×10のルシフェラーゼを発現するSKOV-3細胞(卵巣がん細胞株、SKOV-3-luc-D3、Perkin Elmer、Waltham、MA)を腹腔内(ip)に注射した。7日後、マウスは、5~6マウスの均一な群に無作為化した。7日目及び14日目に、mAb処置、マウスあたり200μgのmAb1又は適切なアイソタイプ対照(hlgG1)を無菌PBSの100μLでipに注射した。4時間後、マウスあたり無菌PBSの100μL中5×10のヒトインビトロ増殖Vγ9Vδ2 T細胞もipに注射した。
【0308】
SKOV-3細胞が発する生物発光シグナルは、腫瘍細胞移植後16、23及び30日目に測定し、腫瘍成長を追跡した。生物発光イメージングは、イソフルラン2%でマウスを麻酔すると、Biospaceイメージャー(Biospace Lab、Nesles-la-Vallee、France)上で、1.5mgのD-ルシフェリン(Interchim、San Diego、CA)のip注射の8分後に実現させた。実験エンドポイントは、マウスがその最初の体重の10%を失ったときに到達した。
【0309】
b.結果
卵巣がんに対するmAb1のインビボ有効性は、ヒト卵巣がん細胞株SKOV-3、及びヒトVγ9Vδ2 T細胞を移植したNSGマウスを使用する異種移植片モデルにおいて評価した。この研究の目標は、腫瘍成長に対する及びマウス生存に対するmAb1と組み合わせたヒトVγ9Vδ2 T細胞の2回のip注射の効果を評価することであった。
【0310】
NSGマウスは、0日目にSKOV-3を腹腔内に(ip)注射した。7日後、マウスは処置に従って均一な群に無作為化された。群は表23に記載されている。
【表22】
【0311】
結果は、mAb1と一緒に移入されたヒトVγ9Vδ2 T細胞が腫瘍成長を有意に遅らせ(表24)、動物生存が有意に改善されること(表25)を示していた。注目すべきことに、この効果は、IL-2又はIL-15などのプロVγ9Vδ2 T生存サイトカインの非存在下で観察された。
【表23】

【表24】
【0312】
10.カニクイザルVγ9Vδ2 T細胞に対するインビボ効果
齧歯類にはBTN3A及びVγ9Vδ2 Tサブセットが存在しないため、並びにカニクイザルマカクにおいてインビトロ及びインビボPAg媒介Vγ9Vδ2 T細胞活性化を記録した以前のデータに基づいて、カニクイザル(Macaca fascicularis)をmAb1の非臨床的安全評価のための唯一の関連種として選択した。
【0313】
a.材料及び方法
Biacore
mAb1は、Biacore T200(製造番号1909913)器械を使用するBiacoreマルチサイクル動態分析を介して、組換えヒト又はカニクイザルBTN3A1、BTN3A2及びBTN3A3タンパク質(それぞれ配列番号21、22及び23)への結合について評価してきた。mAb1は2%BSA/PBS中2μg/mlの濃度まで希釈した。それぞれのサイクルの開始時、抗体は約150RUの密度(RL)(約50RUのRMaxを得るための理論値)でプロテインA表面で捕捉した。捕捉に続いて、BTN3A抗原の注射前に表面は安定化させておいた。BTN3Aは、25~0.78nMの2倍希釈範囲において0.1%のBSA/HBS-P+(ランニングバッファー)で滴定した。会合期は420秒間モニターし、解離期は2000秒間モニターした。動態データは、いかなる潜在的質量移動効果も最小限に抑えるため50μl/分の流速を使用して得た。得たデータは1対1結合モデルを使用してフィットさせた。
【0314】
ELISA
ヒト及びカニクイザルBTN3A1に対するmAb1の見かけの親和性をELISAにより試験した。手短に言えば、標的上でのmAb1の結合は、リン酸バッファー(1×PBS)中1μg/mlでプレートに固定された組換えBTN3A1、続いてブロックバッファー(2%乳/PBS)を用いた飽和ステップを使用して評価した。mAb1は、0.00122~20μg/mlの4倍希釈範囲においてブロックバッファーで力価を滴定した。二次抗体(ヤギ抗ヒトlgk鎖、HRPコンジュゲート抗体、Millipore AP502P、ブロックバッファー中1対4000に希釈)及びTMB溶液を検出用に使用した。見かけの親和性はEC50%(シグナルプラトーの50%を得るのに必要な抗体濃度)として表した。
【0315】
ヒト及びカニクイザルCD3+細胞へのmAb1の結合アビディティー
赤血球溶解後、ヒト又はカニクイザルPBLは、4℃で30分間、漸増濃度のmAb1又はアイソタイプ対照と一緒にインキュベートし、2回洗浄して、ヤギ抗ヒトIgG-PEコンジュゲート二次抗体(eBioscience(商標)♯12-4998-82))で染色した。2回洗浄後、細胞は、抗CD3-PC3 mAb(BD Bioscience ♯557749)及びlive/dead試薬(Life Technology ♯L10119)で染色した。洗浄後、細胞は200μLのFlowバッファーに再懸濁した。次に、細胞はCytoflex細胞計数器(Beckman Coulter)上で分析した。データは、生存CD3+集団でゲート開閉するFlowJoソフトウェア(バージョン10、FlowJo、LLC、Ashland、USA)を使用して解析した。次に、PEチャネルからのMFI値を計算し、濃度に対してプロットした。カーブフィッティングは、GraphPad PrismソフトウェアからのS字型4PL方程式を使用して得た。
【0316】
ヒト及びカニクイザル循環細胞上でのBTN3A表面発現
白血球上でのBTN3A表面発現では、100μlのカニクイザル及びヒト全血を、特定の抗体のカクテル(Aqua live Dead試薬、CD20-V450、CD8-BV605、CD4-BV650、Vg9 TCR-FITC、抗BTN3A-PE(クローン20.1)(又はアイソタイプ対照ではmIgG1-PE)、CD3-PeCy7、CD45-AF700及びCD14-APC-H7)と一緒に96ウェルプレートに蒔き、RTで15分間、光から保護してインキュベートした。次に、赤血球細胞は、900μlの溶解試薬(BD Bioscience ♯349202)を製造業者の説明書に従って用いて溶解した。細胞は洗浄し、マルチパラメータフローサイトメトリーを使用して分析した。赤血球細胞及び血小板上でのBTN3A表面発現では、100μlのカニクイザル又はヒト全血を100μlのPBSで希釈し、抗体の特定のカクテル(Aqua live dead、CD41-APC、CD45-AF700及び抗BTN3A(クローン20.1)(又はアイソタイプ対照ではmIgG1-PE))と一緒にRTで15分間、光から保護してインキュベートした。洗浄後、細胞はマルチパラメータフローサイトメトリーを使用して分析した。BTN3A表面発現の相対的定量化を得るため、較正ビーズ(CellQuant Calibrator Biocytex ♯7208)及びヤギ抗マウスIgG(H+L)-PEを製造業者の説明書に従って並行して使用した。すべての細胞サブセットでは、抗BTN3A及びアイソタイプ対照についてはPEチャネルのMFIが報告された。分析は、抗BTN3A染色のMFIからアイソタイプ対照のMFIを引き算することにより実施し、相対的表面発現は較正ビーズを用いて得られた標準曲線に基づいて計算した。
【0317】
カニクイザルVγ9Vδ2 T細胞インビトロ増殖及び活性化
3動物からのカニクイザル全血は、赤血球溶解バッファーで処理した。広範囲な洗浄後、白血球はrHuIL-2(200IU/ml)及びmAb1(10μg/ml)の存在下、1.5M/mlのRPMI 10%SVFで6ウェルプレートに蒔いた。機能アッセイを実施するのに十分な数の細胞を入手するため、rHuIL-2を6日目及び8日目に添加して、ヒトPBMCの場合に使用される通常の細胞増殖プロトコールを模倣し、Vγ9Vδ2 T細胞長期インビトロ生存を改善した。Vγ9+T細胞の百分率は、特定の抗体のカクテル及びフローサイトメトリー分析(CD3-PC7 BD Bioscience ♯557749、Vg9 TCR-FITCクローン7A5 Invitrogen ♯TCR2720、Live Dead近IR ThermoFisher ♯L10119)を使用して0、6、8及び10日目に評価した。
【0318】
10日目、増殖Vγ9Vδ2 T細胞は計数し、ヒト腫瘍細胞株と1対1のE対T比で共培養した。100,000標的腫瘍細胞株(ラージ、ダウディ及びK562)は、96ウェルプレートにおいて、mAb1若しくはhIgG1アイソタイプ対照(10μg/ml)又は正の対照として使用されるPMA(20ng/ml)/イオノマイシン(1μg/ml)の存在下で、100,000カニクイザルVγ9Vδ2 T細胞と混合した。Vγ9Vδ2 T細胞脱顆粒は、CD107a/b(BD bioscience ♯555800)染色及びフローサイトメトリー分析を使用して4時間後にモニターした。
【0319】
カニクイザルインビボ研究
インライフ研究(in life study)
ベトナム起源の4~6歳、3~5kgのカニクイザル(Macaca fascicularis)をこの研究では使用した。すべての動物は、GLP動物施設の施設内動物管理使用委員会の指針に従って維持され使用された。繁殖動物健康手順として、すべての動物は結核について検査され、予防処置は繁殖動物記録に記述された。到着後、動物は、少なくとも2週間の期間、研究手順に順化させた。体調不良についての臨床検査及び試験が実施された。すべての動物の研究に対する適合性を確かめるため、前服用段階の開始前に動物健康評価を獣医が実施した。
【0320】
mAb1は、非絶食動物の皮膚を消毒した後、静脈内に投与した(椅子に拘束され、15分間かけて注入)。群1、4、及び5の動物は1、8、15、及び22日目に投与された。群2及び3の動物は1日目に1回投与された。
【0321】
薬物動態
カニクイザル血清でのmAb1の定量化のために条件付き薬物動態アッセイを開発した。手短に言えば、mAb1は、分光光度法によりELISAを使用して定量した。ストレプトアビジンプレ被覆プレートを使用してヒトIgG-Fc PKビオチンコンジュゲートを捕捉する。次に、mAb1はプレートの表面で捕捉され、結合した分析物は、ペルオキシダーゼ標識抗種抗体であるヤギ抗ヒトIgG-HRP(Fc特異的)抗体を使用して検出される。定量化の標的範囲は、生の血清中90ng/mL~10000ng/mLである。
【0322】
免疫表現型検査
血液試料(1.0mL)は、すべての動物から、橈側正中皮静脈又は小伏在静脈からLiヘパリンチューブ中に取り出した。免疫表現型検査は、特定のモノクローナル抗体のカクテルを用いて実行した。相対的細胞数(リンパ球/白血球の百分率)の分析を実施した。全顆粒球/リンパ球/白血球数はヘモアナライザー(hemoanalyser)により同じ日に決定し、絶対数の計算用に使用した。リンパ球亜群の絶対数は相対数からコンピュータ処理した。
【0323】
受容体占有
血液試料(400μL)は、すべての動物から、橈側正中皮静脈又は小伏在静脈からLiヘパリンチューブ中に取り出した。細胞上でBTN3A(クローン103.2)に非競合的に結合する標識抗体は、過剰なICT01と一緒にプレインキュベートされ、CD3+T細胞及びCD19+B細胞上での全表面BTN3A発現を決定するのに使用された。遊離のBTN3A結合部位の検出では、CD3+T細胞及びCD19+B細胞上での蛍光色素標識抗BTN3A抗体(mAb1)の結合を阻害するBTN3Aへの非標識mAb1の競合的結合を使用した。mAb1によりブロックされたBTN3Aの量に応じて、コンジュゲートmAb1の平均蛍光強度(MFI)は、幾何平均が減少すると測定された。その結果、アイソタイプ抗体の染色強度に近いAb7.2の染色強度は完全な飽和を示していた。
【0324】
b.結果
mAb1はカニクイザルBTN3Aに結合する
3つのBTN3Aアイソフォーム遺伝子の差示的識別は公共のデータベースからは可能ではなかったので、ImCheckは、適切なプライマーを設計するために膜貫通ドメインに接する高度に保存されたcDNA配列を使用して、カニクイザルPBMCから単離されたcDNAで標的PCRを実施した。PCR産物の塩基配列決定によりカニクイザルBTN3A1、BTN3A2、及びBTN3A3についての外部ドメイン配列の同定が可能になった。6×Hisタグに融合されたカニクイザルBTN3A1、BTN3A2及びBTN3A3アイソフォームの組換え外部ドメインは、これら配列(それぞれ配列番号21、22及び23)に基づいてCHO細胞において作製した。
【0325】
組換えタンパク質はBIAcore及びELISAによりmAb1結合について試験した(表26)。BIAcore結果により、mAb1は、有利なことに、3つのカニクイザル組換えBTN3A1、BTN3A2及びBTN3A3に結合するが、BTN3A1アイソフォームについては親和性は比較的低いことが示された。ELISAは、BTN3A1アイソフォームで実施した。興味深いことに、表26は、組換えヒト又はカニクイザルBTN3A1でのmAb1結合については同等のEC50を示している。
【表25】
【0326】
並行して、カニクイザルPBMC上でのmAb1結合はフローサイトメトリーにより評価した。カニクイザルCD3+T細胞へのmAb1結合の平均EC50は、ヒトCD3+T細胞へのmAb1結合のEC50に匹敵していた(表27)。カニクイザル対ヒトの健康なドナー全血由来の異なる免疫細胞亜群上での標的発現には、PEコンジュゲート抗BTN3A mAb(クローン20.1)を、ヒト及びカニクイザルマカク細胞表面マーカーに対する既知の交差反応性を有する表現型抗体のパネルと一緒に使用して、マルチパラメータフローサイトメトリーにより取り組んだ(データは示さず)。これらの結果により、BTN3Aは両方の種で末梢血細胞集団の広いパネルにおいて発現されるが、カニクイザルマカクでは見かけ上の一般的により低い発現が観察されたことが示される。
【表26】

mAb1はカニクイザルVγ9Vδ2 T細胞増殖及び活性化をインビトロで促進する
次に、mAb1の機能活性をカニクイザルVγ9Vδ2 T細胞上インビトロで評価した。先ず、本発明者らは、mAb1が、カニクイザルPBMCと一緒に10日間インキュベートした場合、カニクイザルVγ9Vδ2 T細胞増殖を促進するかどうかを評価した。図4Aに示されるように、mAb1は試験された3動物すべてにおいてVγ9Vδ2 T細胞増殖を促進し、この集団は10日後に60%に達し、これはヒト細胞について観察されたレベルに匹敵するレベルであった。10日間の増殖後、細胞は、mAb1の存在下で標的細胞として使用されるダウディ、K562又はラージ細胞株と4時間共培養し、フローサイトメトリーによりCD107a/bについて分析した。この実験により、mAb1は、3つの腫瘍細胞株すべてと共培養した場合、有意なVγ9Vδ2 T細胞を誘導することが明らかにされた(図4B)。
【0327】
結論として、結果は、(i)mAb1はヒト細胞に対するのと類似する結合アビディティーでカニクイザル細胞に結合する、(ii)BTN3Aは、ヒト及びカニクイザルにおいて同じ血液細胞上で発現されるが、後者の種のほうが観察された発現レベルは低かった、及び(iii)mAb1は、カニクイザルPBMCにおいてVγ9Vδ2 T細胞サブセット増殖を促進し、増殖した細胞はmAb1パルス腫瘍標的細胞に対して反応性であることを明らかにしている。
【0328】
mAb1はカニクイザルVγ9Vδ2 T細胞コンパートメントにインビボで影響を与える
インビボ研究は、4~6歳の健康なメスカニクイザルにおいて実行し、このサルはmAb1の単回又は繰り返し静脈内注入を受けた(表28)。
【0329】
投与の静脈経路は、それが意図しているヒト治療経路であるという理由で選んだ。動物は、時差漸増用量デザイン(staggered escalating dose design)に従ってmAb1を用いて処置した。
【表27】

以下のエンドポイント:臨床徴候、体重、臨床病理(血液学、臨床化学及び凝固)、末梢血白血球集団についての免疫表現型検査、活性化/増殖/分化マーカー、薬物動態及び薬力学(循環T及びB細胞上のBTN3A受容体占有)を評価した。
【0330】
mAb1の単回又は4回繰り返し15分注入を受けた後、すべての動物が研究29日目の予定された剖検まで生存した。体重又は摂食量に対する試験物関連効果(test article-related effects)は見られなかった。臨床徴候は、研究室収容状況でのカニクイザルで見られる知見と一致しており、したがって、試験物に起因していなかった。
【0331】
薬物動態
mAb1は、用量範囲0.1~100mg/kgにわたる静脈内(IV)投与に続いて凡その用量比例薬物動態(データは示さず)、及び標的媒介クリアランスの非存在下でIgG mAbに特有である長い排出半減期を示した。4回投与についての10又は100mg/kg/週の繰り返し投与に(データは示さず)続いて、曝露はすべての動物において処置期間を通して維持され、4週間処置期間を通して最小の蓄積のみであった。漸増毎週投与レジメンにおける1及び10mg/kg IVの投与に続く歩哨動物についての薬物動態プロファイルは、毎週投与間隔の終了頃にクリアランスが増加しているある証拠を示しており、これはmAb1に対するADAの形成の結果である可能性があるが、100mg/kgの最後のIV投与後はクリアランスが増加した証拠はなかった。
【0332】
受容体占有(RO)
血液でのBTN3A発現プロファイル及び細胞集団表示に従って、mAb1 ROをCD3+T細胞及びCD20+B細胞上で測定した。
【0333】
結果は、BTN3AがCD3+T細胞とCD20+B細胞の両方の上でmAb1注射後急速に占有されることを示している(データは示さず)。100mg/kgのmAb1での繰り返し投与は、毎週投与間隔を通してずっと完全受容体占有に必要とされるようであった。
【0334】
免疫表現型検査
それぞれの投与後選択された時点で、mAb1を受けた動物の血液は、T細胞サブセット(CD4、CD8、Vγ9 T細胞、制御性T細胞)、B細胞、単球、NK細胞、mDC、pDC及び顆粒球並びに関連活性化マーカー(CD69、CD86、CD95、グランザイムB、Ki67)を定量化するために特定のmAbのカクテルで染色されて、フローサイトメトリーにより分析された。分析は、それぞれの集団における相対的細胞数(リンパ球/白血球の百分率)を、同時に収穫され血液試料から決定され血液学的細胞計数装置を使用して分析された全リンパ球/白血球数から外挿した絶対細胞数と共に含んでいた。
【0335】
この広範な分析からの主な知見は:
Vδ9+T細胞(CD3+中の%)は、mAb1を受けたすべての動物において投与後有意に低下し、単回投与動物では漸進的に上に戻ってくる。この効果は、CD4及びCD8 αβ T細胞では観察されないので、特異的だと思われ、サル及びヒトにおいてCD3エンゲージャー二重特異性抗体について観察されるように、γδ T細胞活性化及び組織における辺縁趨向を示唆している(Smithら、2015年 Sci Rep.2015年12月11日;5:17943頁.doi:10.1038/srep17943.)。結果は図5に示されている。
【0336】
本研究は、mAb1が、IV経路により投与されると、100mg/kg/週までの用量では十分に許容的なようであることを示している。さらに、T細胞サブセット間では、Vγ9Vδ2 T細胞がmAb1により特異的に有意に影響を受ける。
【0337】
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