(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】塗布具
(51)【国際特許分類】
B43K 8/02 20060101AFI20231212BHJP
A45D 34/04 20060101ALI20231212BHJP
B05C 17/00 20060101ALI20231212BHJP
B43L 19/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B43K8/02 130
A45D34/04 510B
B05C17/00
B43L19/00 G
(21)【出願番号】P 2017097309
(22)【出願日】2017-05-16
【審査請求日】2020-03-25
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】丸山 精一
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】八木 敬太
【審判官】村上 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-2984(JP,A)
【文献】特開2003-136882(JP,A)
【文献】実開昭54-147429(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/04
B43K 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後方内部の収容部に塗布液が収容される軸筒と、該軸筒の先端側が先細状となると共に、その軸筒先端内部には、周状のフランジ部が後方側に形成された先細の
筆体から構成される塗布体とを有し、該塗布体の先端側は軸筒の先端から突出し、上記軸筒内の収容部に収容した塗布液を上記塗布体に供給する塗布具であって、
前記軸筒先端内部に有する塗布体のフランジ部の前端の受け部に有する周状の前端面と、前記軸筒の
テーパー状となる内周面の周状の係止部との当接状態が
軸線方向に対して45°未満に点接触となるように非面当たり
となり、かつ、前記軸筒のテーパー状となる内周面の周状の係止部は、所定間隔毎に形成された、三角形状の頂部を有し、その各底部が周面状に連設され非面当たりとなるように形成されたことを特徴とする塗布具。
【請求項2】
前記軸筒の
テーパー状となる内周面の周状の係止部
に、前記塗布体のフランジ部の前端の受け部に有する周状の前端面が点接触となるように非面当たりで当接して抜け止めされる構造となる請求項1記載の塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具用インクや化粧液等の塗布液を塗布するための化粧具、筆記具などの塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、筆ペン等の筆記具あるいは化粧用具等、筆記具用インクあるいは化粧液等の塗布液を紙面あるいは肌面等の塗布媒体に塗布する塗布具として、種々のものが用いられている。
【0003】
特に、細く塗布する需要が増大しており、それに対応すべく塗布部が小径ながら先端部分への塗布液の誘導を確実に行って、塗布液を良好な状態で塗布しようとする塗布具が知られている。
【0004】
このような塗布具としては、例えば、
1) 筆記部の中に中芯を装入して塗布液を誘導する塗布具が開示されており、塗布具の塗布液漏れを防止するために、コレクターを先軸と軸体によって覆っており、毛束よりなる筆状の筆記部はその後端部がフランジ状に拡径した箇所が先軸内の内周面に係合して抜け止めされてなる塗布具(例えば、本出願人による特許文献1参照)、
2) 毛束からなるブラシ状の塗布体と、前記塗布体が内周側に装着される筒状の先軸と、前記毛束の外周側に装着され、前記先軸の内周側部分に係合して前記塗布体を前側から係止する前側係合部材と、前記塗布体を後側から係止する後側係合部とが備えられ、前記前側係合部材には、前後方向に向いた略筒状の外周拘束部が設けられ、前記外周拘束部の横側部分には、前記毛束に横側から装着されるように、前後方向に連続して内周側と外周側とを連通させる割溝が設けられ、前記前側係合部材は、弾性材料により形成され、前記先軸の内周面には、前記前側係合部材と係合するテーパー段差状の前側係止部が設けられた毛束からなるブラシ状の塗布体液体塗布具(例えば、本出願人による特許文献2参照)が知られている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の塗布具にあっては、塗布具の組み立ての際に、毛束よりなる筆状の筆記部を先軸の後端側から挿入して、筆状の筆記部を先軸外に突出せしめ、後端側のフランジ状に拡径した箇所を先軸内に形成した段差を有する係止部の全周面に当接した状態で係止せしめているものであるが、上記筆状の筆記部を先軸の後端側から挿入すると、毛束の一部の先端が係止部の段差に引っかかり、ループ状となったりして先軸内に残り、毛束よりなる筆状の筆記部の全てを先軸外に突出させることができず、不良となったり、製造性(取り付け性)が低下するなどの課題が生じている。また、上記特許文献2の塗布具において、外周拘束部を用いて毛束からなるブラシ状の塗布体を軸筒に取り付ける形態の場合も、上記特許文献1と同様の、毛束からなるブラシ状の塗布体の一部が先軸に引っかかり先軸内に残るなどの課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-2984号公報(段落0031、
図3、4等)
【文献】特開2000-279873号公報(特許請求の範囲、
図1,2等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題等について、これを解消するためになされたものであり、筆体より構成される塗布体を先軸に取り付ける際に、筆体の一部が先軸内に引っかかって先軸内に残り、取り付け不良となるなどno課題等を解消して、確実に筆体より構成される塗布体を先軸に取り付けることができる塗布具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明らは、上記従来の課題について鋭意検討した結果、塗布液が収容される軸筒と、該軸筒の先端内部にはフランジ部を有する筆体より構成される塗布体とを有し、上記軸筒内の収容部に収容した塗布液を上記塗布体に供給する塗布具において、前記塗布体のフランジ部の受け部と軸筒内面との当接状態を特定構造とすることにより、上記目的の塗布具が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
本発明の塗布具は、後方内部の収容部に塗布液が収容される軸筒と、該軸筒の先端内部にはフランジ部を有する筆体より構成される塗布体とを有し、上記軸筒内の収容部に収容した塗布液を上記塗布体に供給する塗布具であって、前記塗布体のフランジ部の受け部と軸筒内面との当接状態が非面当たりであることを特徴とする。
より詳細に説明すると、塗布液が収容される後軸と該後軸の先端側に設けられる先軸とからなる軸筒と、該先軸内には後端部にフランジ部を有する筆体より構成される塗布体とを有し、上記後軸内の収容部に収容した塗布液を上記塗布体に供給する塗布具であって、前記塗布体のフランジ部の受け部と先軸内面との当接状態が非面当たりであることを特徴とする。
なお、ここで述べる後方、後端の「後」とは、軸線方向に軸筒を配置した際に、塗布体やキャップを有する位置とは他端の位置であることを示す。
前記当接状態は放射状に配置されていることが好ましい。
前記塗布体のフランジ部の受け部が先軸内面に当接する点より先端側の軸筒内面が、テーパー状に面が構成されていることが好ましい。
前記塗布体のフランジ部の受け部が軸筒内面に当接する点と、当接する点より先端側での塗布体の挿入角度が、軸線方向に対して45°未満であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の塗布具によれば、筆体より構成される塗布体を先軸に取り付ける際に、筆体の一部が先軸内に引っかかって先軸内に残り、取り付け不良となるなどの課題が解消されて、確実に筆体より構成される塗布体を先軸に取り付けることができる塗布具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態の一例を示すキャップを装着した状態の塗布具であり、(a)は正面図、(b)は縦断面図である。
【
図2】本実施形態の塗布具において、キャップを取り外した状態の説明図であって、(a)は正面図、(b)は縦断面図、(c)は要部を示す拡大縦断面図である。
【
図3】本実施形態の塗布具に用いる先軸であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は縦断面図、(d)は左側面図、(e)はX-X線断面図、(f)は(c)の左側面図、(g)はY-Y線断面図である。
【
図4】本実施形態の塗布具に用いる先軸の断面を切り欠いた説明図であり、(a)は切り欠き斜視図、(b)は先軸先端側の切り欠き部分斜視図である。
【
図5】本実施形態の塗布具に用いる先軸と塗布体などとの取り付け態様を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は縦断面図である。
【
図6】本実施形態の塗布具に用いる先軸と塗布体などとの取り付け状態の途中を示す説明図であり、(a)は正面側から見た切り欠き斜視図、(b)は後方側から見た切り欠き斜視図、(c)は部分切り欠き平面図、(d)は部分切り欠き正面図、(e)は縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1及び2は、本発明の実施形態の一例を示すキャップを装着した塗布具と、キャップを外した各図面であり、
図3及び
図4は、本実施形態の塗布具に用いる先軸の各図面、
図5及び
図6は先軸と塗布体などとの取り付け態様を示す各図面である。
本実施形態に係る塗布具Aは、化粧料塗布具に適用したものであり、
図1及び
図2に示すように、軸筒として構成される先軸10と、該先軸10の後部側外周に外軸となる後軸20が嵌合する構造となっており、先軸10内に枚葉部が軸方向に複数配列された態様の櫛歯状に形成されたコレクター部材30が配設されている。
【0013】
また、外軸となる後軸20内に内軸として塗布液を収容する収容部21が配置されている。この収容部21は、先軸10の後部内に嵌合してコレクター部材30の後部に連通している。その塗布液が収容される収容部21は外軸となる後軸20と別体の二重管構造であって、コレクター式の化粧料塗布具となっている。
【0014】
前記外軸となる後軸20は、後部が閉鎖されており、該閉鎖された尾端とコレクター部材30後端とで挟まれた後軸20内の空間に収容部21が配設される構造となっている。
この収容部21内には、中綿等の含浸体を配置せず、直接塗布液が収容されており(直液式)、また、該塗布液を撹拌するための撹拌体25が内蔵されている。
そして、先軸10の前端の開口から、先細のテーパー状を呈した筆体から構成される塗布体40が突出しており、その塗布体40を覆うキャップ50が前記先軸10に着脱自在に嵌合する構造となっている。
【0015】
前記先軸10は、
図3及び
図4に示すように、ほぼ円錐側面形状を呈して先細く形成されており、該先軸10の先端角度は、塗布体40の先端角度と略同角度に形成することが望ましい。
先軸10の外周面には、前端部11がテーパー状で、中央部にキャップ50の嵌着時の位置決め用のフランジ12が外径方向に突出形成され、フランジ12の前方にキャップ50の嵌着用の突部13が、後方に外軸となる後軸20の嵌着用の突部14が膨出形成されている。また、先軸10の突部13の前方には、周面を内外に貫通する空気置換孔15が穿設形成されている。
【0016】
前記先軸10の先方には、毛束などから構成される筆体より構成される塗布体40が突出している。
先軸10、後軸20、収容部21、コレクター部材30、キャップ50等は樹脂成形品とすることができる。また、撹拌体25は、金属製、樹脂製等の円柱材を用いることができる。
前記コレクター部材30は、先軸10及び後軸20によって覆われて保持される構造となっている。
【0017】
塗布体40は、樹脂繊維、天然繊維などが多数集束した毛束(繊維束)などからなるブラシ状(筆状)に構成される先細の筆体から構成されている。塗布体40は、後端部がフランジ状に拡径した内部に空洞部41aを有するフランジ部41を有し、この拡径したフランジ部41の受け部42が先軸10内に非面当たりで当接して抜け止めされる構造となっている。
具体的には、
図3~
図6に示すように、先軸10の前端部11の内周面に、上記塗布体40のフランジ部41の受け部42が当接(接触)する面が全面でなく、非面当たりとなるように、本実施形態では、段差を有する段部16に、上記塗布体40のフランジ部41の受け部42が、点接触となる非面当たりで当接するように、先軸10の前端部11の内周面に所定間隔毎に形成された、三角形状の頂部17a、17a…を有し、各底部17b、17b…が周面状に連設される非面当たりとなる係止部17が形成されている。後述の塗布具とした際(組み立ての際)に、この非面当たりとなる係止部17に、塗布体40のフランジ部41の受け部42が非面当たりで当接(係止)して抜け止めされる構造となっている。
【0018】
また、中空の先細く形成された先軸10の内部には、塗布体40の後方に蛇腹状のコレクター部材30が配設されており、このコレクター部材30の中空部31内に中芯35が貫通して配置されている。中芯35は、樹脂繊維束、天然繊維束、樹脂製多孔質体等の毛管部材から構成されている。
【0019】
中芯35においては、コレクター部材30の後端部から収容部21内の収容空間21a内に中芯35が突出していない(
図1、
図2参照)。コレクター部材30の後端面に中芯35の後端面がほぼ一致している。中芯35を一致させることで、収容空間21a内に中芯35の後端が突出することがなく、収容空間21a内の容積を確保することができる。また、収容空間21a内に中芯35の後端が突出することがないので、撹拌体25が収容空間21a内に設けた場合、撹拌体25が収容空間21a内で動いても中芯35に衝突せず中芯35を変形させることないので、十分に塗布液を浸透することができる。また、中芯35の先端部は後述するように、塗布体40の空洞部41a内に配置されて、収容空間21a内の塗布液を効率よく中芯35を介して塗布体40に供給する構成となっている。
【0020】
コレクター部材30は、軸方向の前部には、前端に椀状部32が形成されている。また、コレクター部材30において、該軸方向の前部から中央部には、複数の櫛歯状のフィンが間隙を置いて配列された前側一時貯留部33a、後側一時貯留部33bが形成されている。
【0021】
また、コレクター部材30内には中芯35が設けられるが、実施形態では、コレクター部材30の軸中心付近に壁部が形成され、その壁部中心を貫通して、中空部31が当該壁部内に形成されている。この中空部31を形成する壁部外周に塗布液一時貯留用のフィン(前側一時貯留部33a及び後側一時貯留部33b)が外径方向に展開する複数の薄板状に形成された枚葉体である。当該壁部には、中空部31とフィンの間隙との間で塗布液を流通可能とする貫通孔が径方向に沿って外周から中空部31内周に渡って形成されている。
【0022】
更に、コレクター部材30には、前側一時貯留部33aから後側一時貯留部33bにかけて、塗布液をフィン間隙内に誘導するための前記のインク縦溝(スリット)が、後端部に露出して(収容部21の収容空間21a内に露出可能に)形成されている。また、前側一時貯留部33a及び後側一時貯留部33bの複数枚毎のフィン同士の間には、先軸10の内面に当接する厚肉の支持壁34で適宜に仕切られている。
具体的には、前側一時貯留部33a及び後側一時貯留部33bのフィンの枚数は、全体で40~60枚で、そのうち、前側一時貯留部33aが比率75~85%で、後側一時貯留部33bの比率が15~25%の枚数とする。フィン同士の間隔は、0.15~0.3mmとすることができる。
【0023】
本実施形態では、収容空間21a内に収容可能量が0.7(ml)となっている。収容部21の外径8.5(mm)、コレクター部材30の径は6.0(mm)とすることができる。
【0024】
前記キャップ50内には、塗布体40の気密性を高めるため覆うカップ状のインナーキャップ51が前後動可能に配置され、このインナーキャップ51を後方に付勢するスプリング52が配置されている。
【0025】
本実施形態の塗布具Aでは、収容部21の内径4.5(mm)と外軸となる後軸20の外径(10mm)の2重構造である。2重構造とするのは、加飾を行う後軸20を独立させられるため、印刷等に最適化した設計にできる。
前記撹拌体25は円柱状であって、その外径は、収容部21(収容空間21a)内径の40~60%、撹拌体25の長さは、収容部21(収容空間21a)長さの10~50%、撹拌体の重量は、0.2g~1.0gであり、防錆性の高い金属か、ホルムアルデビトを含まない樹脂で形成されたことが好ましい。
【0026】
前記撹拌体25の外径や長さを上記のように規定するので、収容部(収容部)21内の収容される長さのある棒状の撹拌体25にでき、収容部21内の液、空気の移動を遮らない小径でも長さによって重量を増やすことができる。したがって、撹拌ボールよりも製品細軸化や二重構造化しやすい。一方、細い撹拌棒は横向きに保管された場合に、塗布液における沈降物のケイクに埋まる部分や接する表面積が大きいため、振った際に撹拌する機能を担保するためにはボールに比べ重たくする必要があるので、長さのある撹拌体25であれば適度な重さにすることができる。
【0027】
また、本実施形態の塗布具の塗布体40より後方には、空気置換機構としてのコレクター部材30は、収容部21から中芯35やスリットを通って塗布液が流通しており、当該コレクター部材30の外周の気圧は先軸10の空気置換孔15によって外気が流通するので、収容部21内が増減しても、外気がコレクター部材30に適切に流通し、当該コレクター部材30が空気置換機構の機能を十分に果たすことができる。
また、収容部21の収容部空間21aと、当該コレクター部材30の空気置換機構との間に遮蔽板36を備えている。
【0028】
前記後軸20の収容部21に収容する塗布液としては、塗布具の用途等に応じて、好適な塗布液が収容されるものであり、塗布具がマーキングペン、筆ペンなどの筆記具用であれば、筆記具用水性インク組成物、筆記具用油性インク組成物、墨汁液などを用いることができ、塗布具が、化粧液塗布具、修正液塗布具、薬液塗布具、塗料液塗布具などであれば、化粧液、修正液、薬液、塗料液などの塗布液を用いることができる。
本実施形態の塗布液は、液体化粧料組成物からなるものであり、少なくとも、色材0.05~30質量%、水溶性有機溶剤0~20質量%と、皮膜形成剤2~20質量%(固形分換算)と、水と、防腐剤等を含有するものである。
【0029】
用いる色材としては、本実施形態では好適な撹拌体25を有するので、沈降しやすい、酸化チタン、酸化鉄、コンジョウ、グンジョウなどの少なくとも1種を用いることができる。酸化チタンは、比重:3.8~4.2であり、化粧料中の粒子径は200~500nmであることが好ましく、酸化鉄は、比重が3.8~5.5であり、化粧料中の粒子径は90~600nmであることが好ましく、コンジョウの比重は、1.8~1.9であり、化粧料中の粒子径は80~300nmであることが好ましく、グンジョウの比重は、1.8~1.9であり、化粧料中の粒子径は、300~600nmであることが好ましい。ここで、本発明において、「粒子径」は、液体化粧料(25℃)を動的光散乱法による粒子径測定器 FPAR-1000(大塚電子社製)より求めた値である。
【0030】
他に用いることができる色材としては、例えば、青色1号Alレーキ、赤色202号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、青色201号、青色204号、青色404号、黄色401号、黄色205号、黄色4号Alレーキ、黄色203号Alレーキ、赤色104号Alレーキ、カーボンブラック、カルミンなどの有機顔料や、赤色2号、赤色3号(FD&C Red No.3)、赤色40号(FD&C Red No.40)、赤色102号、赤色104号(D&C Red No.28)、赤色105号,赤色106号、赤色201号(D&C Red No.6)、赤色202号(D&C Red No.7)、赤色203号、赤色205号、赤色227号(D&C Red No.33)、赤色230-1号(D&C Red No.22)、赤色401号、赤色402号、赤色504号(FD&C Red No.4)、橙色205号(D&C Orange No.4)、橙色402号、黄色4号(FD&C Yellow No.5)、黄色5号(FD&C Yellow No.6)、黄色203号(D&C Yellow No.10)、黄色402号、黄色403-1号(Ext.D&CYellow No.7)、黄色406号、黄色407号、緑色3号(FD&C Green No.3)、緑色201号、緑色402号、青色1号(FD&C Blue No.1)、青色2号(FD&C Blue No.2)、青色203号、青色205号(D&C Blue No.4)、青色403号、青色404号、褐色201号(D&C Brown No.1)、紫色401号(Ext.D&C Violet No.2)、黒色401号などの酸性染料や、上述の酸化チタン、酸化鉄、コンジョウ、グンジョウなどの無機顔料から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、水性化粧料に用いられている色材であれば、特に限定されるものでない。
これらの色材の含有量は、発色性、好適な粘性、塗布体を備えた水性化粧料塗布具でのスムーズな吐出性などの点から、液体化粧料全量に対し、0.05~30%が好ましく、更に好ましくは、0.1~20%が望ましい。
【0031】
用いることができる水溶性有機溶剤としては、化粧品に一般的に用いられているものであれば、特に限定されず何れのものも使用できる。例えば、エタノール、イソプロパノール、フェノキシエタノール等が挙げられる。
これらの水溶性有機溶剤の含有量は、液体化粧料全量に対して、好ましくは、0~20%であり、より好ましくは、8~15%である。
【0032】
用いることができる皮膜形成剤としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸あるいはそれらのアルキルエステル又は誘導体、スチレン、酢酸ビニルの中の1種又は2種以上のモノマーから選択されてなる共重合体のエマルジョン樹脂が挙げられる。
これらの皮膜形成剤(エマルジョン樹脂)の含有量は、固形分(樹脂分)換算で液体化粧料全量に対して、2~15%が好ましく、更に好ましくは、2~10%とすることが望ましい。
【0033】
用いる液体化粧料は、水(精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等を含む)を溶媒とする。この水の含有量は、上記各成分、後述する任意成分を含有した残部となるものである。
更に、用いる液体化粧料には、前記各成分等の他に、通常の液体化粧料に用いられる任意成分などを含有せしめることができる。具体的には、防腐剤、酸化防止剤、中和剤、紫外線吸収剤、キレート剤、保湿剤、美容成分、香料、粘度調整剤などを、本発明の効果を損なわない範囲で適宜量含有せしめることができる。
【0034】
用いる液体化粧料では、好ましくは、塗布液を塗布具からスムーズに吐出せしめる点、良好な塗布性能を発揮せしめる点等から、ELD型粘度計による温度25℃、ずり速度76.6S-1での粘度が2~9mPa・sの範囲とすることが好ましく、また、液体化粧料の表面張力が34mN/m以上であることが望ましい。
【0035】
このように構成される本実施形態の塗布具Aでは、組立てに関して、下記の構造を有する。具体的には、上記各構造となる先軸10、外軸となる後軸20、コレクター部材30、塗布体40、キャップ50は、次のようにして組み立てられて本実施形態の塗布具が得られることとなる。
図5に示すように、中芯35の先端部が突出したコレクター部材30の前端面に塗布体40の空洞部41aを有するフランジ41を取り付け、この塗布体40を取り付けた中芯35を有するコレクター部材30を、
図6に示すように、先軸10の後方側の開口部から前方へ挿入(嵌入)せしめると、
図2(c)等に示すように、先軸10の内周面に形成した非面当たりとなる係止部17に、塗布体40のフランジ部41の受け部42が非面当たりで当接し(当接状態が非面当たりで当接し)、また、フランジ部41の外周面が先軸10の内周面に当接して抜け止めされる構造となっており、また、前記後側一時貯留部33bは、前側一時貯留部33aよりも外径が大径に形成され、
図1等に示されるよう、先軸10の内壁面に隣接するように配置されることとなる。次に、この塗布体40とコレクター部材30等を取り付けた先軸10に、塗布液を収容した収容部21を有する外軸となる後軸20を嵌合により固着し、
図1に示すように、キャップ50を取り付けることにより、塗布具が得られることとなる。
【0036】
得られる塗布具Aによれば、容易に組立てることができ、外軸となる後軸20内の収容部21内に収容した塗布液は、コレクター部材30内の中芯35を介して塗布体40に効率よく供給することができる。また、この塗布具Aでは、先軸10の前端部11のテーパー状の内周面に、塗布体40のフランジ部41の受け部42が当接(接触)する面が全面でなく、点接触などの非面当たりとなるように、三角形状の頂部17a、17aを有する非面当たりとなる係止部17が形成されており、この非面当たりとなる係止部17に、塗布体40のフランジ部41の受け部42が非面当たり(点接触)で当接(係止)等して抜け止めされる構造となっている。上記塗布体40のフランジ部41の受け部42と先軸10の前端部11のテーパー状の内周面に形成した非面当たりとなる係止部17とを非面当たり構造とすることにより、従来の塗布体のフランジ部の受け部が先軸の内周面に形成した箇所で全周面に当接した状態のものに較べ、筆体より構成される塗布体40を先軸10に取り付ける際に、毛束などからなる筆体の一部が先軸10内に引っかかってループ状となったりして先軸10内に全く残ることがなく、確実に筆体より構成される塗布体を先軸内に取り付けることができる塗布具が得られることとなる。
【0037】
前記塗布体40のフランジ部41の受け部42と先軸10内面との当接状態は、非面当たりとなるものであれば、その先軸10内の内周面に形成する非面当たりとなる係止部17の形状、配置構造は、特に限定されるものではなく、放射状に配置、不均等な点に配置、輪状に配置、等であってもよい。
また、前記塗布体40のフランジ部41の受け部42が先軸10内面に当接する点より先端側の軸筒内面は、筆体より構成される塗布体40の挿入性の点から、テーパー状に面が構成されていることが好ましい。
更に、前記塗布体40のフランジ部41の受け部42が軸筒内面に当接する点と、当接する点より先端側での塗布体40の挿入角度は、筆体より構成される塗布体40のより安定した挿入性の点から、軸線方向に対して45°未満であることが好ましい。
【0038】
本発明の塗布具は、上記実施形態などに限定されることなく、本発明の技術思想を変更しない範囲内で種々変更することができる。
本発明の塗布具の技術思想は、後方内部の収容部に塗布液が収容される軸筒と、該軸筒の先端内部にはフランジ部が形成された筆体より構成される塗布体とを有し、上記軸筒内の収容部に収容した塗布液を上記塗布体に供給する塗布具であって、前記塗布体のフランジ部の受け部と軸筒内面との当接状態が非面当たりであるため、例えば、上記実施形態では、塗布液を塗布体40に供給する機構が直液式のコレクター部材30を用いた塗布具であったが、塗布液供給機構をバルブ弁式塗布具や、塗布液を中綿等に吸蔵させた中綿式の塗布具であってもよいものである。
【実施例】
【0039】
次に、実施例により、本発明を更に詳述するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0040】
〔実施例1〕
下記構成及び
図1~
図6に準拠する塗布具、下記組成の塗布液を使用した。
(先軸10の構成)
ポリプロピレン製、長さ:50mm、テーパー状前端部長さ:15mm、先端側開口部直径:2mm、後端側開口部直径:6mm
(後軸20、撹拌体25、コレクター部材30、中芯35の構成)
後軸20:ポリプロピレン樹脂製、外径:10mm、長さ:90mm
撹拌体25:重量;0.40g、ステンレス製、形状:円柱状φ2.5mm×長さ10mm
【0041】
コレクター部材30:前側一時貯留部33a及び後側一時貯留部33bのフィンの枚数は、全体で47枚で、前側一時貯留部33aの比率80%、後側一時貯留部33bの比率が20%、フィン同士の間隔は、0.15~0.3mmであった。
収容空間21a内に収容可能量:0.7(ml)、収容部21の外径:8.5(mm)、内径:4.5(mm)、コレクター部材30の外径:6.0(mm)であった。
中芯35:ポリエステル製多孔質体、気孔率40~60%、直径1.8mm×長さ35mm
(塗布体40の構成)
原料としてポリブチレンテレフタレート樹脂繊維を用い、長さ15mm、直径100~150μm、約300~350本、フランジ部直径4mmから構成される塗布体を用いた。
【0042】
(塗布液組成)
塗布液として、下記組成の液体化粧料(合計100質量%)を使用した。
色材(カーボンブラック、酸化鉄、その他無機・有機顔料) 0.01~30質量%
皮膜形成剤(アクリルポリマー、ウレタン系ポリマー) 1~50質量%
防腐剤(パラベン類、フェノキシエタノール、その他化粧品に使用可能な防腐剤)
0.001~5質量%
水溶性有機溶剤(1.3ブチレングリコール) 0.1~20質量%
水(溶媒):イオン交換水 残 部
ELD型粘度計による温度25℃、ずり速度76.6S-1での粘度1~10mPa・s、表面張力は30~50mN/mであった。
【0043】
この実施例1の各部品を用いて組み立てた塗布具では、筆体より構成される塗布体を先軸に取り付ける際に、筆体の一部が先軸内に引っかかって先軸内に残り、取り付け不良となるなどの課題が全くなく、確実に筆体より構成される塗布体を先軸に取り付けることができる塗布具となることが確認された。また、この塗布具を用いて、アイライナーとして用いたところ、肌等に細く塗布することができた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の塗布具では、筆記具であれば、筆ペンなどに用いることができ、塗布具用であれば、アイライナー、アイブローなどの化粧液塗布具の他、修正液塗布具、薬液塗布具、塗料液塗布具等に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0045】
A 塗布具
10 先軸
20 後軸
25 撹拌体
30 コレクター部材
35 中芯
40 塗布体
41 フランジ部
42 受け部
50 キャップ