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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】空燃比センサの取付構造
(51)【国際特許分類】
   F02D 35/00 20060101AFI20231212BHJP
   F01N 13/00 20100101ALI20231212BHJP
   F02M 26/14 20160101ALI20231212BHJP
【FI】
F02D35/00 368C
F02D35/00 368E
F01N13/00 A
F02M26/14
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017210038
(22)【出願日】2017-10-31
(65)【公開番号】P2019082145
(43)【公開日】2019-05-30
【審査請求日】2020-09-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122770
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】寺井 美裕
【合議体】
【審判長】山本 信平
【審判官】吉村 俊厚
【審判官】倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-280517(JP,A)
【文献】国際公開第2006/043502(WO,A1)
【文献】特開2012-207627(JP,A)
【文献】特開2004-218489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 35/00
F01N 13/00
F02M 26/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの各気筒に取り付けられた複数の排気管が一つに集合された集合部と、
前記集合部に接続された集合排気管と、
前記集合排気管に接続されたEGR配管から排気ガスの一部を前記エンジンの吸気系に再循環させるEGR装置と、
前記集合排気管に取り付けられ、前記エンジンの排気ガス中の酸素濃度に応じて各気筒毎の混合気の空燃比を検出する空燃比センサと、を備え、
前記複数の排気管は、1番気筒に接続される1番排気管と、2番気筒に接続される2番排気管と、3番気筒に接続される3番排気管と、4番気筒に接続される4番排気管と、を有し、前記1番排気管と前記2番排気管とが集合されるとともに、前記3番排気管と前記4番排気管とが集合され、集合された双方の排気管がさらに、前記集合部において一つに集合され、
前記エンジンでは、前記空燃比センサにより検出される各気筒毎の空燃比検出値に基づいて、各気筒毎に燃料噴射量が制御されるとともに、前記1番気筒、前記3番気筒、前記2番気筒、前記4番気筒の順に点火順序が設定されて、180°クランクアングル毎に、排気ガスが各気筒から各排気管に排出され、
前記集合排気管は、前記集合部よりも径が大きく、排気浄化触媒が収容される大径部と、前記集合部と前記大径部とをつなぎ、前記集合部から前記大径部に近づくにしたがって径が拡がる拡径部と、を含み、
前記EGR配管の接続孔は、前記集合排気管の拡径部、又は、前記集合排気管の大径部の排気浄化触媒の上流側に形成されており、
前記空燃比センサは、前記集合排気管の拡径部に、かつ、前記排気管の集合部と、前記EGR配管の接続孔との間の、再循環される排気ガスが流れる流線上に配置されていることを特徴とする空燃比センサの取付構造。
【請求項2】
前記空燃比センサは、前記集合排気管の外周面を、該外周面に接続された前記EGR配管の接続孔側かつ該接続孔に対して垂直な方向から見て、前記集合部の後端の内径を幅とし、前記集合部の後端から前記EGR配管の接続孔まで、前記集合排気管の軸線に沿って帯状に延ばした領域を、前記集合排気管の外周面に対して投影した領域内に配置されることを特徴とする請求項1に記載の空燃比センサの取付構造。
【請求項3】
前記空燃比センサは、前記集合排気管の外周面を、該外周面に接続された前記EGR配管の接続孔側かつ該接続孔に対して垂直な方向から見て、前記EGR配管の接続孔の内径を幅とし、前記EGR配管の接続孔から前記集合部の後端まで、前記集合排気管の軸線に沿って帯状に延ばした領域を、前記集合排気管の外周面に対して投影した領域内に配置されることを特徴とする請求項1に記載の空燃比センサの取付構造。
【請求項4】
前記空燃比センサは、排気ガスを浄化する排気浄化触媒の上流側に配置されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の空燃比センサの取付構造。
【請求項5】
前記エンジンは、一つの気筒から一度に排出される排気ガス量に対する、前記排気管の集合部までの容積の比率が、前記排気管及び前記集合部内で排気ガスの滞留が生じやすいか否かを判定するための所定値よりも大きいことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の空燃比センサの取付構造。
【請求項6】
前記エンジンは、気筒が内部に形成された複数のバンクを有し、
前記空燃比センサは、前記複数のバンクに取り付けられたすべての排気管が一つに集合された集合部の下流に配置されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の空燃比センサの取付構造。
【請求項7】
前記エンジンは、水平対向型エンジンであることを特徴とする請求項6に記載の空燃比センサの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気ガス中の酸素濃度に応じて混合気の空燃比を検出する空燃比センサの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンの排気ガス中に含まれるHC(炭化水素)、CO(一酸化炭素)、NOx(窒素酸化物)などの有害成分を低減するために、排気浄化触媒(以下、単に「触媒」ともいう)を用いた排気ガスの後処理が行われている。このような触媒として、COとHCの酸化反応とNOxの還元反応とを同時に行い、無害なCO(二酸化炭素)、HO(水)、N(窒素)に転換する機能を持つ三元触媒が、近年一般的に使用されている。三元触媒では、高い浄化率を得ようとした場合に、混合気の空燃比を理論空燃比(λ=1)近傍の狭い範囲に制御(空燃比フィードバック制御)する必要がある。そのため、このような三元触媒を用いたシステムでは、エンジンの気筒間で空燃比がばらつくと排気エミッションが悪化するおそれがある。
【0003】
ここで、特許文献1には、多気筒内燃機関における空燃比制御の気筒間バラツキを解消し、より精密な空燃比制御を実現する内燃機関の空燃比制御装置が開示されている。より詳細には、この空燃比制御装置が適用された内燃機関では、#1気筒~#4気筒の各排気ポートに連通する分岐部と、それらが集合する集合部とからなるエキゾーストマニホールドの集合部に空燃比センサ(A/Fセンサ)が取り付けられている。より詳細には、各気筒の排気ポートから空燃比センサまでの距離がほぼ等しく、また、各気筒からの排気ガスが常に均等に空燃比センサに当たるよう、空燃比センサが取り付けられている。
【0004】
そして、この内燃機関の空燃比制御装置では、空燃比センサによる空燃比計測時にその時の被計測ガスを排出した気筒を特定し、当該特定気筒に対して計測された空燃比を目標空燃比に一致させるように燃料噴射弁による燃料噴射量を制御する。より詳細には、この空燃比制御装置は、内燃機関の各気筒への燃料噴射時から内燃機関の所定ストローク後に当該燃料噴射に対応する空燃比を空燃比センサによって計測し、計測した空燃比がいずれの気筒の燃焼に対応するかを特定する。そして、その特定気筒に対して空燃比の計測結果を用いた燃料噴射量補正を行うことで、気筒毎の空燃比制御を可能とし、気筒間バラツキを解消している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-338285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、特許文献1に記載の内燃機関の空燃比制御装置では、排気ガス(被測定ガス)を排出した気筒を特定するために、各気筒の排気ポートから空燃比センサまでの距離がほぼ等しく、また、各気筒からの排気ガスが常に均等に空燃比センサに当たるよう、当該空燃比センサの取り付け位置が設定されている。しかしながら、排気管中を流れる排気ガスの流れは一様ではなく、例えば、エンジンの運転状態や、排気管や集合部の形状(例えば、配管長や、配管径、曲率など)によって、排気ガスの流れは変化する。
【0007】
例えば、低回転、低・中負荷運転領域では、排気ガスがスムーズに排出されずに、排気管内に滞留し、複数の気筒から排出された排気ガスが干渉することによって、各気筒毎の空燃比を精度よく検出することができなくなるおそれがある。特に、エンジン(排気ポート)から排気管の集合部までの間の排気管長が長く、当該部位の容積が大きい場合には、排気ガスの滞留が生じやすく、上述した問題がより顕著に表れる傾向が見られる。そのため、エンジンの運転状態や排気管(集合部)の形状に係わりなく、単一の空燃比センサで各気筒毎の空燃比を高精度に検出したいという要請があった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、エンジンの運転状態や排気管(集合部)の形状に係わりなく、単一の空燃比センサで各気筒毎の空燃比をより高精度に検出することが可能な空燃比センサの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る空燃比センサの取付構造は、エンジンの各気筒に取り付けられた複数の排気管が一つに集合された集合部と、集合部の下流側に接続されたEGR配管から排気ガスの一部をエンジンの吸気系に再循環させるEGR装置と、エンジンの排気ガス中の酸素濃度に応じて混合気の空燃比を検出する空燃比センサとを備え、空燃比センサが、排気管の集合部とEGR配管の接続孔との間の、再循環される排気ガスが流れる流線上に配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る空燃比センサの取付構造によれば、空燃比センサが、排気管の集合部とEGR配管の接続孔との間の、再循環される排気ガスが流れる流線上(流れの経路上)に配置されている。すなわち、排気ガスがEGR装置に吸引され、滞留が少なく排気ガスの流れがスムーズな領域に空燃比センサが配置される。そのため、他気筒から排出された排気ガスと干渉することなく、爆発順に沿って排気ガスが空燃比センサ(センサ素子部)に到達する。その結果、エンジンの運転状態や排気管(集合部)の形状に係わりなく、単一の空燃比センサで各気筒毎の空燃比をより高精度に検出することが可能となる。なお、空燃比センサには、LAFセンサ(Linear Air/Fuel センサ)と酸素センサ(Oセンサ)を含むものとする。
【0011】
本発明に係る空燃比センサの取付構造では、集合後の排気管の外周面を、該外周面に接続されたEGR配管の接続孔側かつ該接続孔に対して垂直な方向から見て、集合部の後端の内径を幅とし、集合部の後端からEGR配管の接続孔まで、集合後の排気管の軸線に沿って帯状に延ばした領域を、集合後の排気管の外周面に対して投影した領域内に空燃比センサが配置されることが好ましい。
【0012】
このようにすれば、排気ガスがEGR装置に吸引されることにより排気ガスの滞留が少なく、エンジン(気筒)の爆発順に排気ガスが流れやすい領域、すなわち、爆発順に排気ガスが空燃比センサに到達しやすい領域に空燃比センサを配置することが可能となる。
【0013】
本発明に係る空燃比センサの取付構造では、集合後の排気管の外周面を、該外周面に接続されたEGR配管の接続孔側かつ該接続孔に対して垂直な方向から見て、EGR配管の接続孔の内径を幅とし、EGR配管の接続孔から集合部の後端まで、集合後の排気管の軸線に沿って帯状に延ばした領域を、集合後の排気管の外周面に対して投影した領域内に空燃比センサが配置されることが好ましい。
【0014】
このようにすれば、排気ガスがEGR装置に吸引されることにより排気ガスの滞留がより少なく、エンジン(気筒)の爆発順に排気ガスが流れやすい領域、すなわち、より爆発順に排気ガスが空燃比センサに到達しやすい領域に空燃比センサを配置することが可能になる。
【0015】
本発明に係る空燃比センサの取付構造では、上記空燃比センサが、排気ガスを浄化する排気浄化触媒の上流側に配置されていることが好ましい。
【0016】
この場合、空燃比センサが、集合部の下流側、かつ排気浄化触媒の上流側(排気浄化触媒前)に配置される。そのため、各排気管から集合された後、浄化される前の排気ガス中の酸素濃度から各気筒毎の混合気の空燃比を検出することが可能となる。
【0017】
本発明に係る空燃比センサの取付構造では、エンジンの一つの気筒から一度に排出される排気ガス量に対する、排気管の集合部までの容積の比率が、所定値よりも大きいことが好ましい。
【0018】
この場合、一つの気筒から一度に排出される排気ガス量に対する、排気管の集合部までの容積の比率が、所定値よりも大きいエンジン、すなわち、排気ガスの滞留が生じやすいエンジンにおいて、より効果的に、各気筒毎の空燃比の検出精度を向上させることが可能となる。
【0019】
本発明に係る空燃比センサの取付構造では、上記エンジンが、気筒が内部に形成された複数のバンクを有し、空燃比センサが、複数のバンクに取り付けられたすべての排気管が一つに集合された集合部の下流に配置されていることが好ましい。
【0020】
ところで、複数のバンクを有するエンジンでは、直列型のエンジンに比べて集合部までの排気管の管長が長くなり、排気ガスの滞留が生じやすくなる。しかしながら、このようなエンジンに対して本発明に係る空燃比センサの取付構造を適用することにより、滞留が少なく爆発順に排気ガスが到達しやすい領域に空燃比センサを配置することができるため、より効果的に、各気筒毎の空燃比の検出精度を向上させることが可能となる。
【0021】
本発明に係る空燃比センサの取付構造では、上記エンジンが、水平対向型エンジンであることが好ましい。
【0022】
ところで、水平対向型エンジンでは、直列型のエンジンに比べて集合部までの排気管の管長が長くなり、排気ガスの滞留が生じやすくなる。しかしながら、このような水平対向エンジンに対して本発明に係る空燃比センサの取付構造を適用することにより、滞留が少なく爆発順に排気ガスが到達しやすい領域に空燃比センサを配置することができるため、より効果的に、各気筒毎の空燃比の検出精度を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、エンジンの運転状態や排気管(集合部)の形状に係わりなく、単一の空燃比センサで各気筒毎の空燃比をより高精度に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態に係る空燃比センサの取付構造が適用されたエンジンの全体構成を示す図である。
図2】実施形態に係る空燃比センサの取付構造を示す図(エンジンの下側から見た図)である。
図3】空燃比センサの取付領域を説明するための図である。
図4】変形例に係る空燃比センサの取付領域を説明するための図である。
図5】空燃比センサ(センサ素子部)の取付け位置と排気ガスの流れとの関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0026】
まず、図1図4を併せて用いて、実施形態に係る空燃比センサ19の取付構造について説明する。図1は、空燃比センサ19の取付構造が適用されたエンジン10の全体構成を示す図である。図2は、空燃比センサ19の取付構造を示す図(エンジン10の下側から見た図)である。図3は、空燃比センサ19の取付領域を説明するための図である。また、図4は、変形例に係る空燃比センサ19の取付領域を説明するための図である。
【0027】
エンジン10は、例えば水平対向型の4気筒エンジンである。また、エンジン10は、シリンダ内(筒内)に燃料を直接噴射する筒内噴射式のエンジンである。エンジン10では、エアクリーナ16から吸入された空気が、吸気管15に設けられた電子制御式スロットルバルブ(以下、単に「スロットルバルブ」ともいう)13により絞られ、インテークマニホールド11を通り、エンジン10に形成された各気筒に吸入される。ここで、エアクリーナ16から吸入された空気の量は、エアクリーナ16とスロットルバルブ13との間に配置されたエアフローメータ14により検出される。また、インテークマニホールド11を構成するコレクター部(サージタンク)の内部には、インテークマニホールド11内の圧力(吸気マニホールド圧力)を検出するバキュームセンサ30が配設されている。さらに、スロットルバルブ13には、該スロットルバルブ13の開度を検出するスロットル開度センサ31が配設されている。
【0028】
シリンダヘッドには、気筒毎に吸気ポート22と排気ポート23とが形成されている(図1では片バンクのみ示した)。各吸気ポート22、排気ポート23それぞれには、該吸気ポート22、排気ポート23を開閉する吸気バルブ24、排気バルブ25が設けられている。
【0029】
エンジン10の各気筒には、シリンダ内に燃料を噴射するインジェクタ12が取り付けられている。インジェクタ12は、高圧燃料ポンプ(図示省略)により加圧された燃料を各気筒の燃焼室内へ直接噴射する。
【0030】
また、各気筒のシリンダヘッドには、混合気に点火する点火プラグ17、及び該点火プラグ17に高電圧を印加するイグナイタ内蔵型コイル21が取り付けられている。エンジン10の各気筒では、吸入された空気とインジェクタ12によって噴射された燃料との混合気が点火プラグ17により点火されて燃焼する。燃焼後の排気ガスは排気管18を通して排出される。なお、排気管18の詳細については後述する。
【0031】
排気管18には、エンジン10から排出された排気ガスの一部を、エンジン10のインテークマニホールド11(吸気系)に再循環(還流)させる排気ガス再循環装置(以下「EGR(Exhaust Gas Recirculation)装置」という)40が設けられている。EGR装置40は、エンジン10の排気管18(集合部185の下流側)とインテークマニホールド11とを連通するEGR配管41、及びEGR配管41上に介装され、排気ガス還流量(EGR量)を調節するEGRバルブ42を有している。
【0032】
EGRバルブ42は、電子制御装置(以下「ECU」という)50によって開度が制御(デューティ制御)される。すなわち、ECU50は、エンジン10の運転状態に応じてEGRバルブ42の開閉量を調節することにより、排気ガスの還流量(再循環量)を制御する。なお、EGRバルブ42には、負圧式のものの他、ステッピングモータ等により駆動される形式のものを用いることができる。
【0033】
ここで、図2も併せて参照して、エンジン10の排気系レイアウトについて説明する。#1気筒の排気ポート23には#1排気管181が接続されている。また、#2気筒の排気ポート23には#2排気管182が接続されている。同様に、#3気筒の排気ポート23には#3排気管183が接続され、#4気筒の排気ポート23には#4排気管184が接続されている。ここで、エンジン10の爆発順序(点火順序)は、1番気筒(#1)-3番気筒(#3)-2番気筒(#2)-4番気筒(#4)の順とされており、各気筒からの排気ガスは、180°CA毎にそれぞれの排気管181~184に排出される。
【0034】
また、#1排気管181と#2排気管182とが集合されるとともに、#3排気管183と#4排気管184とが集合される。そして、双方が下流側(集合部185)でさらに集合される。すなわち、エンジン10の各気筒(#1気筒~#4気筒)に取り付けられた4本の#1~#4排気管181~184は集合部185において一つに集合される。集合部185には集合排気管186が接続されている。よって、排気管18は、#1~#4排気管181~184、集合部185、及び集合排気管186から構成される。なお、エンジン10は、一つの気筒から一度に排出される排気ガス量に対する、#1~#4排気管181~184それぞれの容積(すなわち各気筒の排気ポート23から集合部185までの容積)の比率が、所定値よりも大きくなっている。
【0035】
集合排気管186(集合部185の下流側)には排気浄化触媒(キャタライザ)20が介装されている。ここで、排気浄化触媒20は三元触媒であり、排気ガス中の炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)の酸化と、窒素酸化物(NOx)の還元を同時に行い、排気ガス中の有害ガス成分を無害な二酸化炭素(CO)、水蒸気(HO)及び窒素(N)に清浄化するものである。
【0036】
排気管18の集合部185とEGR配管41の接続孔18aとの間(排気浄化触媒20の上流側)には、排気ガス中の酸素濃度及び未燃ガス濃度に応じた信号を出力する(すなわち、混合気の空燃比を検出する)空燃比センサ19が取り付けられている。空燃比センサ19としては、空燃比をリニアに検出することのできるリニア空燃比センサ(LAFセンサ)が用いられる。ここで、加熱したジルコニア固体電解質に電圧を印可すると、空燃比が薄いとき(A/F>14.7)には排気ガス中の酸素濃度に応じ、濃いとき(A/F<14.7)には未燃ガス濃度に応じた酸素イオン電流が発生する。リニア空燃比センサ(LAFセンサ)19は、この特性(原理)を利用し、排気側に設けた拡散抵抗層により、排気ガス中の酸素濃度及び未燃ガス濃度に応じた電流値を出力として得るものである。なお、空燃比センサ19として、排気ガス中の酸素濃度に応じた信号を出力する(空燃比をオン-オフ的に検出する)Oセンサを用いてもよい。
【0037】
より詳細には、空燃比センサ19は、排気管18の集合部185と、EGR配管41の接続孔18aとの間の、再循環される排気ガスが流れる流線上(流れの経路上)に配置され、ボルトなどによって取り付けられている。なお、空燃比センサ19は、先端部(センサ素子部)が集合排気管186内に突出するように取り付けられる。
【0038】
より具体的な空燃比センサ19の取付領域を図3に示す。図3は、空燃比センサ19の取付領域を説明するための図である。図3にハッチングで示されるように、空燃比センサ19は、集合排気管186の外周面を、該外周面に接続されたEGR配管41の接続孔18a側かつ該接続孔18aに対して垂直な方向(接続孔18aの中心と集合排気管186の軸線とが重なる方向)から見て、集合部185の後端の内径を幅(一辺の長さ)とし、集合部185の後端からEGR配管41の接続孔18aまで、集合排気管186の軸線に沿って帯状に延ばした領域を、集合排気管186の外周面に対して投影した領域内(図3中のハッチング領域内)に配置される。
【0039】
次に、より好ましい空燃比センサ19の取付け領域(変形例に係る取付領域)を図4に示す。図4は、変形例に係る空燃比センサ19の取付領域を説明するための図である。図4にハッチングで示されるように、より好ましくは、空燃比センサ19は、集合排気管186の外周面を、該外周面に接続されたEGR配管41の接続孔18a側かつ該接続孔18aに対して垂直な方向(接続孔18aの中心と集合排気管186の軸線とが重なる方向)から見て、EGR配管41の接続孔18aの内径を幅(一辺の長さ)とし、EGR配管41の接続孔18aから集合部185の後端まで、集合排気管186の軸線に沿って帯状に延ばした領域を、集合排気管186の外周面に対して投影した領域内(図4中のハッチング領域内)に配置される。
【0040】
図1に戻り、上述したエアフローメータ14、空燃比センサ19、バキュームセンサ30、スロットル開度センサ31に加え、エンジン10のカムシャフト近傍には、エンジン10の気筒判別を行うためのカム角センサ32が取り付けられている。また、エンジン10のクランクシャフト10a近傍には、クランクシャフト10aの回転位置を検出するクランク角センサ33が取り付けられている。
【0041】
これらのセンサは、ECU50に接続されている。さらに、ECU50には、エンジン10の冷却水の温度を検出する水温センサ34、潤滑油の温度を検出する油温センサ35、アクセルペダルの踏み込み量すなわちアクセルペダルの開度を検出するアクセル開度センサ36、及び、吸入空気温度を検出する吸気温センサ37等の各種センサも接続されている。
【0042】
ECU50は、演算を行うマイクロプロセッサ、該マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM、バッテリによってその記憶内容が保持されるバックアップRAM、及び入出力I/F等を有して構成されている。また、ECU50は、インジェクタ12を駆動するインジェクタドライバ、点火信号を出力する出力回路、EGRバルブ42を駆動するドライバ、及び、電子制御式スロットルバルブ13を開閉する電動モータ13aを駆動するモータドライバ等を備えている。
【0043】
ECU50では、カム角センサ32の出力から気筒が判別され、クランク角センサ33の出力からエンジン回転数が求められる。また、ECU50では、上述した各種センサから入力される検出信号に基づいて、吸入空気量、吸気管負圧、アクセルペダル開度、各気筒毎の混合気の空燃比、吸入空気温度、及びエンジン10の水温や油温等の各種情報が取得される。そして、ECU50は、取得したこれらの各種情報に基づいて、燃料噴射量や点火時期、EGRバルブ42、及び、スロットルバルブ13等の各種デバイスを制御することによりエンジン10を総合的に制御する。特に、ECU50は、各気筒毎の空燃比(A/F)検出値に基づいて、各気筒毎に燃料噴射量を制御する。また、ECU50は、空燃比センサ19により検出される混合気の空燃比(A/F)の変動を利用した空燃比(A/F)変動法を用いて、排気エミッションの悪化要因となる空燃比の気筒間ばらつき異常を検知する(インバランス診断)。
【0044】
次に、空燃比センサ19の取付け位置と排気ガスの流れとの関係を図5に示す。図5に実線で示されるように、空燃比センサ19(センサ素子部)が、排気管18の集合部185と、EGR配管41の接続孔18aとの間の、再循環される排気ガスが流れる流線上(流れの経路上)に配置されること、すなわち、排気ガスがEGR装置40に吸引され、滞留が少なく排気ガスの流れがスムーズな領域に空燃比センサ19(センサ素子部)が配置されることにより、他気筒から排出された排気ガスと干渉することなく、爆発順(例えば、1番気筒(#1)-3番気筒(#3)-2番気筒(#2)-4番気筒(#4)の順)に排気ガスが空燃比センサ19(センサ素子部)に当たるようになる。また、空燃比センサ19(センサ素子部)に当たる排気ガス量も増大する。
【0045】
特に、空燃比センサ19が、集合排気管186の外周面を、該外周面に接続されたEGR配管41の接続孔18a側かつ該接続孔18aに対して垂直な方向(接続孔18aの中心と集合排気管186の軸線とが重なる方向)から見て、集合部185の後端の内径を幅(一辺の長さ)とし、集合部185の後端からEGR配管41の接続孔18aまで、集合排気管186の軸線に沿って帯状に延ばした領域を、集合排気管186の外周面に対して投影した領域内に配置されることにより、排気ガスがEGR装置40に吸引され、滞留が少なく、爆発順に排気ガスが空燃比センサ19(センサ素子部)に到達するようになる。
【0046】
一方、図5に破線で示した位置に空燃比センサ19が配置された場合(比較例)には、例えば、低回転、低・中負荷運転領域では、排気ガスがスムーズに流れて排出されずに、排気管181~184や集合部185内に滞留し、複数の気筒から排出された排気ガスが干渉することによって、各気筒毎の空燃比を精度よく検出することができなくなるおそれがある。特に、エンジン10(排気ポート23)から排気管18の集合部185までの間の排気管長が長く、当該部位の容積が大きい場合には、排気ガスの滞留が生じやすく、上述した傾向がより顕著に表れる。
【0047】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、空燃比センサ19(センサ素子部)が、排気管18の集合部185と、EGR配管41の接続孔18aとの間の、再循環される排気ガスが流れる流線上(流れの経路上)に配置されている。すなわち、排気ガスがEGR装置40に吸引され、滞留が少なく排気ガスの流れがスムーズな領域に空燃比センサ19が配置される。そのため、他気筒から排出された排気ガスと干渉することなく、爆発順に沿って排気ガスが空燃比センサ19(センサ素子部)に到達する。その結果、エンジン10の運転状態や排気管18(集合部185)の形状に係わりなく、単一の空燃比センサ19で各気筒毎の空燃比をより高精度に検出することが可能となる。
【0048】
特に、本実施形態によれば、空燃比センサ19が、集合排気管186の外周面を、該外周面に接続されたEGR配管41の接続孔18a側かつ該接続孔18aに対して垂直な方向(接続孔18aの中心と集合排気管186の軸線とが重なる方向)から見て、集合部185の後端の内径を幅(一辺の長さ)とし、集合部185の後端からEGR配管41の接続孔18aまで、集合排気管186の軸線に沿って帯状に延ばした領域を、集合排気管186の外周面に対して投影した領域内に配置される。そのため、排気ガスがEGR装置40に吸引されることにより排気ガスの滞留が少なく、エンジン10の爆発順に排気ガスが流れやすい領域、すなわち、爆発順に排気ガスが到達しやすい領域に空燃比センサ19を配置することが可能となる。
【0049】
より好ましくは、空燃比センサ19を、集合排気管186の外周面を、該外周面に接続されたEGR配管41の接続孔18a側かつ該接続孔18aに対して垂直な方向(接続孔18aの中心と集合排気管186の軸線とが重なる方向)から見て、EGR配管41の接続孔18aの内径を幅(一辺の長さ)とし、EGR配管41の接続孔18aから集合部185の後端まで、排集合排気管186の軸線に沿って帯状に延ばした領域を、集合排気管186の外周面に対して投影した領域内に配置することにより、排気ガスがEGR装置40に吸引されることにより排気ガスの滞留がもっとも少なく、エンジン10の爆発順に排気ガスが流れやすい領域、すなわち、もっとも爆発順に排気ガスが到達しやすい領域に空燃比センサ19を配置することが可能になる。
【0050】
本実施形態によれば、一つの気筒から一度に排出される排気ガス量に対する、各排気管181~184の集合部185までの容積の比率が、所定値よりも大きいエンジン10、すなわち、排気ガスの滞留が生じやすいエンジン10において、より効果的に、各気筒毎の空燃比の検出精度を向上させることが可能となる。
【0051】
特に、直列型のエンジンに比べて集合部185までの排気管181~184の管長が長くなり、排気ガスの滞留が生じやすくなる水平対向エンジン10に対して本実施形態に係る空燃比センサ19の取付構造を適用することにより、爆発順に排気ガスが到達しやすい領域に空燃比センサ19を配置することができるため、より効果的に、各気筒毎の空燃比の検出精度を向上させることが可能となる。
【0052】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、本発明を水平対向型のエンジン10に適用した場合を例にして説明したが、本発明は、例えばV型のエンジンなどにも適用することができる。さらに、エンジンの気筒数は4気筒に限られることなく、例えば、6気筒や、8気筒、又はそれ以上の気筒数を有するエンジンにも適用することができる。また、直列型のエンジンであっても、例えば排気管長が長く、排気管の容積が大きいエンジンに対しては効果的に適用することができる。
【0053】
また、上記実施形態では、本発明を筒内噴射式のエンジン10に適用した場合を例にして説明したが、本発明は、ポート噴射式のエンジンにも適用することができる。なお、空燃比センサ19として、LAFセンサ(Linear Air/Fuel センサ)に代えて酸素センサ(Oセンサ)を用いることもできる。
【符号の説明】
【0054】
10 エンジン
11 インテークマニホールド
18 排気管
181 #1排気管
182 #2排気管
183 #3排気管
184 #4排気管
185 集合部
186 集合排気管
18a 接続孔
19 空燃比センサ
20 排気浄化触媒
22 吸気ポート
23 排気ポート
40 EGR装置
41 EGR配管
42 EGRバルブ
図1
図2
図3
図4
図5