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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】樹脂組成物、増粘剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20231212BHJP
   C08F 2/16 20060101ALI20231212BHJP
   C08F 2/38 20060101ALI20231212BHJP
   C08F 20/12 20060101ALI20231212BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C09K3/00 103G
C08F2/16
C08F2/38
C08F20/12
C08L33/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018017251
(22)【出願日】2018-02-02
(65)【公開番号】P2018178076
(43)【公開日】2018-11-15
【審査請求日】2020-07-27
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2017076912
(32)【優先日】2017-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】辻本 桂
【合議体】
【審判長】藤原 浩子
【審判官】海老原 えい子
【審判官】近野 光知
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-80613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L33/04
C08F 2/16,2/38,20/12
C09K3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル及びメタクリル酸ブチルからなる群から選択される少なくとも1種のメタクリル酸エステル単量体に由来する単量体単位と、任意で、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル及びアクリル酸n-ブチルからなる群から選択される少なくとも1種のアクリル酸エステル単量体に由来する単量体単位と、任意で、(メタ)アクリレート基を2つ以上有する単量体単位とからなり、高分子末端を構成する単量体単位の少なくとも一部に構造式(2)の構造を有するメタクリル系樹脂であって、前記(メタ)アクリレート基を2つ以上有する単量体単位がメタクリル系樹脂100質量%に対して0.2質量%以下であり、残存モノマー量がメタクリル系樹脂100質量%に対して0.8質量%以下であるメタクリル系樹脂を含むメタクリル系樹脂組成物を含有し、
前記メタクリル系樹脂組成物の重量平均分子量Mwは2.2万以上40.5万以下であり、
前記メタクリル系樹脂組成物の平均粒径Dは100μm以上であり、
前記メタクリル系樹脂組成物の平均粒径Dを体積基準の累積10%粒子径で除した値Aは1.4以上2.8以下であり、
前記メタクリル系樹脂組成物を90質量%以上含む
ことを特徴とする、有機系増粘剤。
【化1】
(式中、R1は炭素数1又は2の飽和炭化水素基を示し、R2は炭素数8の飽和炭化水素基を示し、Pはメタクリル系樹脂骨格を示す。)
【請求項2】
前記メタクリル系樹脂組成物の平均粒径Dが100μm以上800μm以下である、請求項1に記載の有機系増粘剤。
【請求項3】
前記メタクリル酸エステル単量体がメタクリル酸メチルであり、前記アクリル酸エステル単量体がアクリル酸メチルである、請求項1又は2に記載の有機系増粘剤。
【請求項4】
前記メタクリル系樹脂組成物の重量平均分子量Mwが50,000以上350,000以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の有機系増粘剤。
【請求項5】
前記メタクリル樹脂組成物の製造が懸濁重合法、乳化重合法からなる群から選択される一つによることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の有機系増粘剤の製造方法。
【請求項6】
前記メタクリル樹脂組成物の製造において(メタ)アクリレート基を2つ以上有する単量体を用いない、請求項に記載の有機系増粘剤の製造方法。
【請求項7】
メタクリル系樹脂組成物製造時の最大発熱速度Bが1100J/mol・min.以下である、請求項又はに記載の有機系増粘剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタクリル系樹脂組成物、有機系増粘剤に関する。
【背景技術】
【0002】
有機系増粘剤は、浴槽や、洗面化粧台、キッチンシンク等を製造に用いられるシラップの無機フィラー沈降を防止するために無機系増粘剤と併用して用いられる。塗料、接着剤の製造においては製品のハンドリング性を向上させるために用いられている。
【0003】
有機系増粘剤の中でも、メタクリル系樹脂組成物を用いたものは透明樹脂として他の透明樹脂より高い光透過率、耐候性を有している。また、耐薬品性に優れる、モノマーとの親和性に優れるといった特徴を持つため、浴槽や、洗面化粧台、キッチンシンク等の製造においては製品に深みのある風合いを付与し、塗料においては色材の発色を阻害しない、接着剤においては透明性を維持しながら迅速にモノマー中に溶解するため、有機系増粘剤として広く利用されている。
【0004】
特許文献1に記載されるような利用方法においては、貯蔵中に粘度の変化や固化しないこと、製品の劣化を促進しないことが求められる。かかる要求に応えるために、安定剤として重合禁止剤を添加することがあるが、重合禁止剤には有害物が多い、重合禁止剤によって製品の硬化反応が阻害されてしまうことがあるといった課題があった。また、安定剤を添加した場合においてもその効果が十分でなく貯蔵中に粘度の変化や固化が生じることがしばしばあった。特許文献2に記載のように分子量分布に特徴を持たせた有機系増粘剤を用いた場合においても、増粘剤の溶解性は良好であるが、貯蔵・保管環境によっては貯蔵・保管中に粘度の変化や固化が生じることがあり、貯蔵・保管安定性の更なる改良が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5556977号公報
【文献】特許第5131956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明においては、有機系増粘剤として好適に利用でき、有機系増粘剤として利用した時に、増粘対象の保管・貯蔵中の粘度増大、固化を抑制し、製品の貯蔵・保管安定性を改善できる有機系増粘剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上述した従来技術の問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の化学構造を有するメタクリル系樹脂組成物を含有する有機系増粘剤によって、増粘対象製品の貯蔵・保管安定性を改善できることを見出し、従来技術の課題を解決するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル及びメタクリル酸ブチルからなる群から選択される少なくとも1種のメタクリル酸エステル単量体に由来する単量体単位と、任意で、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル及びアクリル酸n-ブチルからなる群から選択される少なくとも1種のアクリル酸エステル単量体に由来する単量体単位と、任意で、(メタ)アクリレート基を2つ以上有する単量体単位とからなり、高分子末端を構成する単量体単位の少なくとも一部に構造式(2)の構造を有するメタクリル系樹脂であって、前記(メタ)アクリレート基を2つ以上有する単量体単位がメタクリル系樹脂100質量%に対して0.2質量%以下であり、残存モノマー量がメタクリル系樹脂100質量%に対して0.8質量%以下であるメタクリル系樹脂を含むメタクリル系樹脂組成物を含有し、
前記メタクリル系樹脂組成物の重量平均分子量Mwは2.2万以上40.5万以下であり、
前記メタクリル系樹脂組成物の平均粒径Dは100μm以上であり、
前記メタクリル系樹脂組成物の平均粒径Dを体積基準の累積10%粒子径で除した値Aは1.4以上2.8以下であり、
前記メタクリル系樹脂組成物を90質量%以上含む
ことを特徴とする、有機系増粘剤。
【化1】
(式中、R1は炭素数1又は2の飽和炭化水素基を示し、R2は炭素数8の飽和炭化水素基を示し、Pはメタクリル系樹脂骨格を示す。)
[2]
前記メタクリル系樹脂組成物の平均粒径Dが100μm以上800μm以下である、[1]に記載の有機系増粘剤。
[3]
前記メタクリル酸エステル単量体がメタクリル酸メチルであり、前記アクリル酸エステル単量体がアクリル酸メチルである、[1]又は[2]に記載の有機系増粘剤。
[4]
前記メタクリル系樹脂組成物の重量平均分子量Mwが50,000以上350,000以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の有機系増粘剤。
[5
記メタクリル樹脂組成物の製造が懸濁重合法、乳化重合法からなる群から選択される一つによることを特徴とする、[1]~[]のいずれかに記載の有機系増粘剤の製造方法。

前記メタクリル樹脂組成物の製造において(メタ)アクリレート基を2つ以上有する単量体を用いない、[]に記載の有機系増粘剤の製造方法。

メタクリル系樹脂組成物製造時の最大発熱速度Bが1100J/mol・min.以下である、[]又は[]に記載の有機系増粘剤の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、増粘剤として利用した時に、増粘対象や、製品の貯蔵・保管安定性を改善できるメタクリル系樹脂組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0011】
〔メタクリル系樹脂組成物〕
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、メタクリル系樹脂を含み、必要に応じて、その他の樹脂、添加剤等をさらに含んでよい。
【0012】
〔メタクリル系樹脂〕
本実施形態のメタクリル系樹脂は、高分子末端を構成する単量体単位の少なくとも一部に構造式(1)の構造を有する。
【化2】
・・・(1)
(式中、R1は炭素数1又は2の飽和炭化水素基を示し、Pはメタクリル系樹脂骨格を示す。)
【0013】
好適には、上記構造式(1)の構造は、構造式(1a)の構造である。
【化3】
・・・(2)
(式中、R1は炭素数1又は2の飽和炭化水素基を示し、R2は水素又は炭素数6~18の飽和炭化水素基を示し、Pはメタクリル系樹脂骨格を示す。)
詳細には、R2は炭素数8の飽和炭化水素基が好ましく、-CH2CHC49(C25)が特に好ましい。
【0014】
本実施形態のメタクリル系樹脂骨格は、メタクリル酸エステル単量体を単独で重合したメタクリル樹脂でも良いが、メタクリル酸エステルと共重合可能なビニル単量体の少なくとも1種の単量体とメタクリル酸エステルとを共重合させたメタクリル樹脂でも良い。
メタクリル系樹脂を構成する樹脂は、一種単独のメタクリル系樹脂を用いても良いが、二種以上のメタクリル系樹脂を混練しても良い。
【0015】
メタクリル系樹脂に含まれるメタクリル酸エステル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メタクリル酸、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸(2-エチルヘキシル)、メタクリル酸(t-ブチルシクロヘキシル)、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸(2,2,2-トリフルオロエチル)、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸イソボルニル等が挙げられる。入手のしやすさ、価格の観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルが好ましい。
前記メタクリル酸エステル単量体は、一種のみを単独で使用してもよく、又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0016】
また、メタクリル酸エステル単量体と共重合可能なビニル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等のアクリレート基を1つ有するアクリル酸エステル単量体が挙げられる。
その他にも(メタ)アクリレート基を2つ以上有する、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のエチレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート等の2個のアルコールの水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール誘導体をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;といったアクリル酸エステル単量体が挙げられる。
特に、入手しやすさの観点から、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチルが好ましい。
これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0017】
特に、メタクリル系樹脂(100質量%)においては、(メタ)アクリレート基を2つ有する単量体を使用する場合には0.4質量%以下での使用が、(メタ)アクリレート基を3つ有する単量体を使用する場合には0.3質量%以下での使用が、(メタ)アクリレート基を4つ以上有する単量体を使用する場合には0.2質量%以下での使用が、増粘剤としての溶解性の観点から好ましい。
【0018】
また、前記メタクリル酸エステル単量体に共重合可能な、アクリル酸エステル単量体以外の他のビニル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸やメタクリル酸等のα,β-不飽和酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、桂皮酸等の不飽和基含有二価カルボン酸及びそれらのアルキルエステル;スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、3,4-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、p-エチルスチレン、m-エチルスチレン、о-エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、イソプロペニルベンセン(α-メチルスチレン)等のスチレン系単量体;1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、1,1-ジフェニルエチレン、イソプロペニルトルエン、イソプロペニルエチルベンゼン、イソプロペニルプロピルベンゼン、イソプロペニルブチルベンゼン、イソプロペニルペンチルベンゼン、イソプロペニルヘキシルベンゼン、イソプロペニルオクチルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物類;マレイミドや、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-置換マレイミド等;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;ジビニルベンゼン等の多官能モノマー等が挙げられる。
【0019】
<構造式(1)の導入方法>
構造式(1)の構造をメタクリル系樹脂の分子末端に導入するには、連鎖移動剤としてチオール基とエステル基を併せ持つ連鎖移動剤を用いて重合する方法がある。
チオール基とエステル基を併せ持つ連鎖移動剤としては、以下に限定されるものではないが例えば、2-エチルヘキシルチオグリコレート、β-メルカプトプロピオン酸、メチル-3-メルカプトプロピオネート、2-エチルヘキシル-3-メルカプトプロピオネート、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート、メトキシブチル-3-メルカプトプロピオネート、ステアリル-3-メルカプトプロピオネート、3,3’-チオジプロピオン酸、3,3’-チオジプロピオン酸ジメチル、ジチオジプロピオン酸、ラウリルチオプロピオン酸、チオグリコール酸、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸モノエタノールアミン等のモノチオール類;トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジチオグリコール酸ジアンモニウム等の多官能チオール類等が挙げられる。
中でも、価格、入手のしやすさの観点から、2-エチルヘキシル-3-メルカプトプロピオネート、2-エチルヘキシル-チオグリコレートが好ましい。
【0020】
〔メタクリル系樹脂の製造方法〕
本実施形態のメタクリル系樹脂は、塊状重合法やキャスト重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の製造方法により製造できる。これらの方法に限定されるものではないが、溶解性の観点から、懸濁重合法、乳化重合法での製造が好ましい。
懸濁重合法、乳化重合法によって製造を実施するときには、残存モノマー量や未反応開始剤量の低減の観点から、重合ピークを迎えた後に後処理としてキュアと呼ばれる重合温度よりも高い温度で系内を保持する時間を設けることが好ましい。
キュア温度は90℃以上が好ましく、91℃以上がより好ましく、93℃以上がさらに好ましい。また、キュア時間は30分以上が好ましく、45分以上がより好ましく、1時間以上がさらに好ましい。
また、重合温度は65℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、75℃以上がさらに好ましい。
【0021】
本実施形態では、(メタ)アクリレート基を2つ以上有する単量体を用いない製造方法を用いてもよい。(メタ)アクリレート基を2つ以上有する単量体を用いない態様の場合、(メタ)アクリレート基を2つ以上有する単量体の量をメタクリル系樹脂100質量%に対して0.1質量%以下としてよく、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.013質量%以下である。
【0022】
この他、懸濁重合法、乳化重合法によって製造を実施する際には、高分子末端への連鎖移動剤構造導入に対する阻害因となる重合水中の溶存金属イオンと連鎖移動剤との吸着を抑制するために、キレート化剤を用いると良い。
キレート化剤の種類は、以下に限定されるものではないが、エチレンジアミン4酢酸ナトリウム塩の水和物、ジエチレントリアミン5酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム、トリエチレンテトラミン6酢酸等が挙げられる。
キレート化剤の添加量は、金属イオン封止の観点から単量体100質量部に対して、0.001質量部以上添加すると良く、ポリマーへの着色の観点から0.02質量部以下であると良い。好ましくは、0.002質量部以上0.018質量部以下、より好ましくは0.003質量部以上0.015質量部以下、さらに好ましくは0.003質量部以上0.012質量部以下である。
【0023】
<最大発熱速度B>
本実施形態の製造方法では、後述の実施例の方法によって計算されたメタクリル系樹脂製造時の最大発熱速度Bは1100J/mol・min.以下であると良い。1100J/mol・min.以下を満たすことにより、メタクリル系樹脂の分子末端に構造式(1)の構造を効率よく導入することが出来るだけでなく、メタクリル系樹脂中における未反応物を低減することが出来、未反応物の反応による粘度変化の促進を抑制できる。また、150J/mol・min.以上であれば生産効率良く、効率的にメタクリル系樹脂組成物を製造できる。最大発熱速度Bの値は150J/mol・min.以上1100J/mol・min.以下であることが好ましく、より好ましくは190J/mol・min.以上1000J/mol・min.以下、さらに好ましくは200J/mol・min.以上900J/mol・min.以下、特に好ましくは400J/mol・min.以上700J/mol・min.以下である。
上記最大発熱速度Bは、重合温度、キュア温度、重合開始剤の添加量により、調整することができる。
【0024】
本実施形態の製造方法では、生産性良く、効率的にメタクリル系樹脂を製造するには重合開始剤を用いることが好ましい。
重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤が挙げられる。
この中でも、反応性と価格、色味の観点から、過酸化ラウロイル、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、2,2’-アゾビスイソブチロニトリルが好ましい。
本願においては、重合開始剤を使用した場合、開始剤は特に樹脂組成物の製造方法における重合転化率の計算において単量体として取り扱う。
有機系増粘剤を溶解させた時の発熱を抑制するために未反応の重合開始剤が少量であった方が良い。メタクリル系樹脂組成物では、未反応の重合開始剤量はメタクリル系樹脂100質量部に対し0.04質量部以下であると良い。好ましくは0.03質量部以下、より好ましくは0.02質量部以下である。
本実施形態の製造方法では、重合開始剤の添加量は単量体100質量部に対し0.8質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.7質量部以下であり、さらに好ましくは0.6質量部以下であり、また、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましい。
【0025】
本実施形態の製造方法では、生産性良く、効率的にメタクリル系樹脂を製造するには連鎖移動剤を用いることが好ましい。
本願においては、連鎖移動剤を使用した場合、連鎖移動剤は特に樹脂組成物の製造方法における重合転化率の計算において単量体として取り扱う。
連鎖移動剤としては、上述の連鎖移動剤としてチオール基とエステル基を併せ持つ連鎖移動剤が好ましい。
本実施形態の製造方法では、チオール基とエステル基を併せ持つ連鎖移動剤の添加量は単量体100質量部に対し0.01~5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~4質量部である。
【0026】
なお、上述の本実施形態のメタクリル系樹脂の製造方法は、メタクリル系樹脂の製造において後述の添加剤を含める態様においても、用いられてよい。
【0027】
〔その他の樹脂〕
前記有機系増粘剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、従来公知のその他の樹脂を混合することができる。
当該その他の樹脂としては、特に限定されるものではなく、公知の熱可塑性樹脂が好適に使用される。
熱可塑性樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、シンジオタクテックポリスチレン系樹脂、ABS系樹脂、メタクリル系樹脂、AS系樹脂、BAAS系樹脂、MBS樹脂、AAS樹脂、生分解性樹脂、ポリカーボネート-ABS樹脂のアロイ、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、酢化セルロース、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリアルキレンアリレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。
特に、AS樹脂、BAAS樹脂は、流動性を向上させるために好ましく、ABS樹脂、MBS樹脂は耐衝撃性を向上させるために好ましく、また、ポリエステル樹脂は耐薬品性を向上させるために好ましい。
また、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フェノール系樹脂、ポリカーボネート等は難燃性を向上させる効果が得られる。
これらの樹脂は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上の樹脂を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
〔添加剤〕
有機系増粘剤には、増粘対象や製品に所定の各種特性を付与するため、本発明の効果を損なわない範囲で各種の添加剤を混合してもよい。
添加剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系等の可塑剤;高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸のモノ、ジ、又はトリグリセリド系、高級脂肪酸金属塩等の離型剤;ポリエーテル系、ポリエーテルエステル系、ポリエーテルエステルアミド系、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩等の帯電防止剤;酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤等の安定剤;難燃剤、難燃助剤、硬化剤、硬化促進剤、導電性付与剤、応力緩和剤、結晶化促進剤、加水分解抑制剤、潤滑剤、衝撃付与剤、摺動性改良剤、相溶化剤、核剤、強化剤、補強剤、流動調整剤、染料、増感材、着色用顔料、沈降防止剤、タレ防止剤、充填剤、消泡剤、カップリング剤、防錆剤、抗菌・防黴剤、防汚剤、防曇剤、導電性高分子、カーボンブラック等が挙げられる。
【0029】
前記難燃剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、環状窒素化合物、リン系難燃剤、シリコン、籠状シルセスキオキサン又はその部分開裂構造体、シリカが挙げられる。
【0030】
前記熱安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系加工安定剤等の酸化防止剤等が挙げられ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。具体的には、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド、3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリン)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミン)フェノール等が挙げられ、ペンタエリスリトールテラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
【0031】
前記紫外線吸収剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、フェノール系化合物、オキサゾール系化合物、マロン酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、ラクトン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンズオキサジノン系化合物等が挙げられ、好ましくはベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物である。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上併用して用いてもよい。
【0032】
〔メタクリル系樹脂組成物中の残存モノマー量〕
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物中の残存モノマー量(質量%)は、メタクリル系樹脂組成物中のメタクリル系樹脂100質量%に対して、0.8質量%以下であることが好ましい。残存モノマー量は、例えばGC-1700(FID)(島津社製ガスクロマトグラフィー)を用いて測定することができる。より具体的には、後述する実施例の<残存モノマー量の測定>に記載された方法により測定できる。
残存モノマー量は、0.8質量%以下の範囲が、ハンドリング性及び接着剤として好ましい。残存モノマー量は、好ましくは0.01質量%以上0.7質量%以下の範囲であり、より好ましくは0.02質量%以上0.6質量%以下の範囲であり、さらに好ましくは0.05質量%以上0.5質量%以下の範囲である。0.8質量%以下であることにより、ハンドリング時のビーズのブロッキングが抑制でき、さらに例えば接着剤に対する増粘剤として使用する場合等において貯蔵・保管安定性に優れる。
【0033】
〔メタクリル系樹脂組成物の重量平均分子量〕
メタクリル系樹脂組成物の分子量は、本発明の効果を得るにおいて、特に限定されるものではないが、重量平均分子量Mwが50,000以上350,000以下であれば、増粘効果と溶解性のバランスのとれた有機系増粘剤が得られるため好ましい。重量平均分子量Mwは60,000以上320,000以下がより好ましく、60,000以上300,000以下がさらに好ましい。
なお、重量平均分子量(Mw)については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定することができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0034】
〔メタクリル樹脂組成物の粒径〕
メタクリル樹脂組成物の平均粒径Dは、本発明の効果を得るにおいて、特に限定されるものではないが、100μm以上800μm以下であると、溶解性と増粘剤添加時の配管内部への増粘剤付着や増粘剤付着による配管の閉塞の抑制や安息角といったハンドリング性の観点から好ましい。平均粒径Dは100μm以上700μm以下がより好ましく、200μm以上600μm以下がさらに好ましい。
また、上記方法で粒径を測定した際の平均粒径Dを体積基準の累積10%粒子径で除した値Aは、本発明の効果を得るにおいて、特に限定されるものではないが、1.4以上2.8以下を満たすと、増粘剤添加時の配管内部への増粘剤付着や増粘剤付着による配管の閉塞の抑制や、安息角を低下させることが出来、ハンドリング性の観点から好ましい。Aは1.5以上2.7以下であるとより好ましく、1.6以上2.6以下であるとさらに好ましい。
なお、本願において、平均粒径D及び体積基準の累積10%粒子径はレーザー散乱法により測定することができる。具体的には、平均粒径D及び体積基準の累積10%粒子径は、測定用試料として、有機系増粘剤0.1gを0.1質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液10mL中に分散させ、分散液としたものを気泡が生じない程度に緩く振とうしながらLS13320に滴下して、濃度計の示度を適正範囲に合わせることで測定を行い算出した値である。平均粒径(平均径)Dは、体積基準の累積50%粒子径である。
【0035】
〔増粘剤〕
本実施形態の有機系増粘剤は、上述の本実施形態のメタクリル系樹脂組成物を90質量%以上含み、上述の本実施形態のメタクリル系樹脂組成物からなることが好ましい。
【0036】
本発明によれば、貯蔵・保管安定性に優れた増粘対象物を製造することが可能になるので、本発明の有機系増粘剤は、浴槽、浴槽床、洗面化粧台、キッチンシンク、BMCの製造等に用いられるシラップの製造や、塗料、接着剤に対する増粘剤として好適である。
【実施例
【0037】
以下、本発明について具体的な実施例、参考例及び比較例を挙げて説明するが、本発明は、後述する実施例に限定されるものではない。
【0038】
〔実施例、参考例及び比較例において用いた原料〕
メタクリル系樹脂(A)の製造に用いた原料は下記のとおりである。
【0039】
・メタクリル酸メチル(MMA):旭化成製(重合禁止剤として中外貿易製2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール(2,4-di-methyl-6-tert-butylphenol)を2.5ppm添加されているもの)
・アクリル酸メチル(MA):三菱化学製(重合禁止剤として川口化学工業製4-メトキシフェノール(4-methoxyphenol)が14ppm添加されているもの)
・トリメチロールプロパンアクリレート(A-TMPT):新中村化学製
・n-オクチルメルカプタン(n-octylmercaptan):アルケマ製
・n-ドデシルメルカプタン:和光純薬製
・2-エチルヘキシルチオグリコレート(2-ethylhexyl thioglycolate):アルケマ製
・2-エチルヘキシル-3-メルカプトプロピオネート(2-ethylhexyl 3-Mercaptopropionate):SC有機化学社製
・ラウロイルパーオキサイド(lauroyl peroxide):日油製
・t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート:日油製
・第3リン酸カルシウム(calcium phosphate):日本化学工業製、懸濁剤として使用
・炭酸カルシウム(calcium calbonate):白石工業製、懸濁剤として使用
・ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate):和光純薬工業製、懸濁助剤として使用
・エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム2水和物(EDTA):キシダ化学製
・ステアリルアルコール:和光純薬工業製
・2(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール:BASF製
【0040】
〔貯蔵・保管安定性〕
MMA75質量部をあらかじめ加えた攪拌機の付いた容器の中に後述の実施例、参考例、比較例によって得られた増粘剤25質量部を漏斗を用いて投入し、40℃において溶解させた溶液1.5gを2gポリエチレン容器に密封し50℃、95%RH環境下で2週間保管後の粘度をポリエチレン容器に密封し冷暗所で保管しておいたものと比較した。
明らかに大きく粘度が変化していたり、固化したものは「×(不良)」、粘度の違いが多少感じられるものは「△(実用可能)」、粘度の変化があまり感じられなかったものは「〇(良)」とした。
【0041】
〔溶解性・増粘性・ハンドリング性〕
先記〔貯蔵・保管安定性〕においてMMA75質量部をあらかじめ加えた攪拌機の付いた容器の中に有機系増粘剤25質量部を漏斗を用いて投入し、40℃において溶解させた時の性質を下記の基準により評価した。
溶解性として、有機系増粘剤投入完了から目視での溶解完了までの時間が4時間以内であったものは「〇(良)」、4時間超6時間未満であれば「△(実用可能)」、6時間後でも未溶解のものが残っていた場合は「×(不良)」とした。
増粘性として、増粘剤を溶解させた溶液がMMAよりも明らかに粘度が変化したものは「〇(良)」、やや変化したものは「△(実用可能)」、あまり変化が感じられなかったものは「×(不良)」とした。
また、ハンドリング性として、有機系増粘剤投入時に漏斗を用いた際、漏斗に多くの有機系増粘剤が付着した場合やつまりを生じた場合は「△(実用可能)」、漏斗への付着が少なく、つまりも生じなかった場合は「〇(良)」とした。
【0042】
〔総合評価〕
上記の貯蔵・保管安定性、溶解性・増粘性・ハンドリング性の総合評価を以下基準で行った。
「〇(全ての評価において良)」、「△(一評価でも△実用可能判定がある)」、「×(一評価でも×不良判定がある)」とした。
【0043】
〔メタクリル樹脂組成物の粒径、粒径分布〕
ベックマン・コールター社製LS13320のレーザー散乱方式にて測定した平均径をメタクリル系樹脂組成物の平均粒径とした。
測定用試料としては、有機増粘剤0.1gを0.1質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液10mL中に分散させ、分散液としたものを使用した。容器内を緩く振とうしながら、前記分散液をLS13320に滴下して、濃度計の示度を適正範囲に合わせて自動的に測定を開始した。測定中は容器内を気泡が入らない程度に緩く振とうしながら測定し、体積基準の累積50%及び10%粒子径を算出した。平均粒径(平均径)は、体積基準の累積50%粒子径とした。
また、メタクリル樹脂組成物の平均粒径Dを体積基準の累積10%粒子径で除した値Aを計算した。
【0044】
〔メタクリル系樹脂組成物の分子量〕
メタクリル系樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)を下記の装置、及び条件で測定した。
測定装置:東ソー株式会社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(HLC-8320GPC)
・測定条件:
カラム:TSKguardcolumn SuperH-H 1本、TSKgel SuperHM-M 2本、TSKgel SuperH2500 1本を順に直列接続して使用した。本カラムでは、高分子量が早く溶出し、低分子量は溶出する時間が遅い。
検出器 :RI(示差屈折)検出器
検出感度 :3.0mV/min
カラム温度:40℃
サンプル :0.02gのメタクリル系樹脂のテトラヒドロフラン20mL溶液
注入量 :10μL
展開溶媒 :テトラヒドロフラン、流速;0.6mL/min、内部標準として、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を、0.1g/L添加した。
検量線用標準試料として、単分散の重量ピーク分子量が既知で分子量が異なる以下の10種のポリメタクリル酸メチル(Polymethyl methacrylate Calibration Kit PL2020-0101 M-M-10)を用いた。
なお、検量線用標準試料として用いたポリメタクリル酸メチルは、すべて単ピークのものであり、それぞれの単ピークにおける分子量を「ピーク分子量(Mp)」として以下に表記する。
ピーク分子量(Mp)
標準試料1 1,916,000
標準試料2 625,500
標準試料3 298,900
標準試料4 138,600
標準試料5 60,150
標準試料6 27,600
標準試料7 10,290
標準試料8 5,000
標準試料9 2,810
標準資料10 850
上記の条件で、メタクリル系樹脂の溶出時間に対する、RI検出強度を測定した。
GPC溶出曲線におけるエリア面積と、3次近似式の検量線を基にメタクリル系樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0045】
〔最大発熱速度Bの算出〕
重合中10分間ごとに反応系から系の0.1質量%程度の液抜きを実施し、下記の方法に従って重合転化率を求めた。
まず、得られたスラリーの一部を採取し、ヒドロキノンを0.01g添加し精秤した。それを、減圧乾燥器中で120℃で1時間乾燥し、その乾燥後の質量を固形分量として精秤した。次に、乾燥後の質量の乾燥前の質量に対する割合をスラリー中の固形成分比率として求めた。最後に、この固形成分比率を用いて、以下の数式により重合転化率を算出した。なお、特にこの重合転化率を算出する数式において、開始剤及び連鎖移動剤は、仕込み単量体として取り扱った。
重合転化率=(仕込み原料総質量×固形成分比率-水・単量体以外の原料総質量-ヒドロキノン質量)/仕込み単量体質量
次に、ある時間tにおける重合転化率xと、(t+10分)における重合転化率yとより、tから(t+10分)までにおける発熱速度を下式に従い算出した。式中の[単量体の重合反応熱総量]とは、各単量体の重合反応熱に各単量体の添加割合をそれぞれ乗じたうで足し合わせたものをいう。
発熱速度(J/mol・min.)=[単量体の重合反応熱総量]×(y-x)/(10×仕込み単量体総物質量)
実施例、参考例において単量体の重合反応熱として、メタクリル酸メチル(分子量100.12)54kJ/mol、アクリル酸メチル(分子量86.04)81.5kJ/mol、トリメチロールプロパンアクリレート(分子量296.32)244.5kJ/molを用いた。
こうして、算出した発熱速度の当該反応における最大値を最大発熱速度Bとした。
【0046】
〔残存モノマー量の測定〕
島津ガスクロマトグラフィーGC-1700(FID)を用いて、下記のカラム及び条件で、得られたビーズ状ポリマー組成物の残存モノマー量を測定した。
試験条件
使用カラム:TC-1(無極性)φ0.32mm×30m×0.25μm
キャリアガス:窒素 1.3mL/min
設定温度:INJ/DET=230℃/300℃
試料:0.3gのビーズ状ポリマー組成物を25mLのクロロホルムに溶解
保持時間:15min
【0047】
<実施例1>
表1に示す配合に従って、攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:90g、炭酸カルシウム:55g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.6g、EDTA:2.3gを投入し、混合液(b)を得た。
次いで、60Lの反応器に不純物5ppm以下のイオン交換水:26kg、混合液(b)を投入して80℃に昇温し、メタクリル酸メチル:21.2kg、アクリル酸メチル:1.35kg、ラウロイルパーオキサイド:45.3g、及び2-エチルヘキシルチオグリコレート:58.9g、ステアリルアルコール11g、2(2―ヒドロキシ―5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール2.3gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、93℃に1℃/minの速度で昇温した。
その後、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマー組成物を洗浄脱水乾燥処理し、有機系増粘剤を得た。
得られた有機系増粘剤の重量平均分子量は14.1万であった。
【0048】
<実施例2~9>
表1に示す配合に従って、実施例1と同様に有機系増粘剤の製造を実施した。
【0049】
<実施例10>
表1に示す配合に従って、実施例1と同様に有機系増粘剤を得た後、250μmメッシュの篩の中で少量ずつ有機系増粘剤をふるい分け、250μmメッシュの篩を通過しなかったものを実施例10とした。
【0050】
参考例11>
表1に示す配合に従って、実施例1と同様に有機系増粘剤を得た後、100μmメッシュの篩の中で少量ずつ有機系増粘剤をふるい分け、100μmメッシュの篩を通過したものを参考例11とした。
【0051】
参考例12>
表1に示す配合に従って、実施例1と同様に有機系増粘剤を得た後、300μmメッシュの篩の中で少量ずつ有機系増粘剤をふるい分け、300μmメッシュの篩を通過したものを、続いて150μmメッシュの篩を用いて同様にふるい分けを実施し、150μmメッシュの篩を通過しなかったものを参考例12とした。
【0052】
参考例13>
実施例1と参考例11とを50質量部ずつ混合したものを参考例13とした。
【0053】
参考例14>
実施例1を70質量部、参考例11を30質量部、混合したものを参考例14とした。
【0054】
参考例15>
表1に示す配合に従って、実施例1の製造方法において、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、90℃に1℃/minの速度で昇温した以外は同様の方法で製造した。
【0055】
<比較例1、2>
表1に示す配合に従って、実施例1と同様に有機系増粘剤の製造を実施した。
【0056】
【表1】
【0057】
上記のようにして製造された有機系増粘剤の評価結果を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
実施例1~10、参考例11~15において、比較例1,2に比べ分子末端に特定の化学構造を有するため貯蔵・保管安定性が改善された。実施例4において、実用上問題ないレベルであるが、最大発熱量が大きかったため環境試験後にその他の実施例よりも粘度の上昇が見られた。実施例5において増粘効果がほかの実施例に比べ劣っていた。有機系増粘剤として貯蔵・保管安定性において実用上問題はないが、所望の粘度に対し添加量が増やすことになるため、経済性がわずかに劣る。実施例8、9においては分子量が高いため、実施例10においては平均粒径が大きいため、その他の実施例に比べ溶解性がわずかに劣っていた。貯蔵・保管安定性において実用上問題はないが、溶解工程の時間が長くなるため経済性がわずかに劣る。参考例11~15においては有機系増粘剤として貯蔵・保管安定性において実用上問題はないが、ハンドリング性においてわずかにその他の実施例に劣っていた。具体的には、参考例11では高安息角に由来する漏斗のつまり、有機増粘剤一粒当たりの質量が減少したことによる漏斗への有機系増粘剤の付着が見られた。参考例12においては、平均粒径Dを体積基準の累積10%粒子径で除した値Aが最も好ましい範囲から外れていたため、高安息角に由来する漏斗のつまりが見られた。参考例13、14においても同様に漏斗への有機系増粘剤の付着が見られた。参考例15においては、残存モノマー量が最も好ましい値から外れており、ビーズのブロッキングにより漏斗のつまりが見られた。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば、有機系増粘剤は浴槽、浴槽床、洗面化粧台、キッチンシンク、BMCの製造等に用いられるシラップの製造や、塗料、接着剤に対する増粘剤として有用であり、産業上利用の可能性がある。