(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 15/20 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
G01R15/20 C
(21)【出願番号】P 2018052964
(22)【出願日】2018-03-20
【審査請求日】2021-01-20
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(72)【発明者】
【氏名】酒井 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】三輪 大晃
(72)【発明者】
【氏名】江坂 卓馬
(72)【発明者】
【氏名】杉戸 達明
【合議体】
【審判長】濱野 隆
【審判官】中塚 直樹
【審判官】九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-194349(JP,A)
【文献】特開2013-205387(JP,A)
【文献】特開2002-107382(JP,A)
【文献】特開2010-286415(JP,A)
【文献】米国特許第5041780(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/00-15/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定電流の流動する導電部材(30)と、
前記被測定電流の流動によって生じる被測定磁界を第1極性の電気信号に変換する第1磁電変換部(21,25)、および、前記被測定磁界を前記第1極性とは異なる第2極性の電気信号に変換する第2磁電変換部(22,25)の搭載された配線基板(20)と、
前記第1磁電変換部の前記電気信号と前記第2磁電変換部の前記電気信号との差分を取る差分部(29,801,802)と、
前記配線基板が前記導電部材に対向する態様で、前記導電部材と前記配線基板それぞれを収納するセンサ筐体(50)と、
前記配線基板の前記導電部材との対向面(20a)を前記センサ筐体に接着する基板接着剤(56e)と、を有し、
互いに直交の関係にある3方向をx方向、y方向、および、z方向とすると、
前記導電部材の延長方向である前記y方向に対して直交する
一つの平面上に前記導電部材の中心点(CP)と、前記第1磁電変換部及び前記第2磁電変換部とが存在し、前記導電部材の中心点(CP)を介して、前記第1磁電変換部及び前記第2磁電変換部が前記x方向に並ぶように、前記第1磁電変換部と前記第2磁電変換部は前記対向面若しくは前記対向面の裏側の背面に配置されており、
前記第1磁電変換部および前記第2磁電変換部のそれぞれは、自身を透過する磁界の前記y方向に沿う成分と前記導電部材の横方向である前記x方向に沿う成分に応じて抵抗値が変動する磁気抵抗効果素子(25a,25b)を複数有する電流センサ。
【請求項2】
前記磁気抵抗効果素子は、前記透過する磁界の前記z方向に沿う成分によって抵抗値が変化しない請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記第1磁電変換部および前記第2磁電変換部のそれぞれは、前記磁気抵抗効果素子として抵抗値の増減が互いに逆転するように設けられた第1磁気抵抗効果素子(25a)および第2磁気抵抗効果素子(25b)を有し、
前記第1磁気抵抗効果素子と前記第2磁気抵抗効果素子とは、電源電位と基準電位との間で直列接続されてハーフブリッジ回路を構成しており、
前記第1磁電変換部の前記ハーフブリッジ回路と前記第2磁電変換部の前記ハーフブリッジ回路とで、前記第1磁気抵抗効果素子と前記第2磁気抵抗効果素子の配置を逆転させることにより、前記第1磁電変換部が出力する前記電気信号の極性と前記第2磁電変換部が出力する前記電気信号の極性が異なっている請求項1または請求項2に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記第1磁電変換部および前記第2磁電変換部のそれぞれは、前記磁気抵抗効果素子として抵抗値の増減が互いに逆転するように設けられた第1磁気抵抗効果素子(25a)および第2磁気抵抗効果素子(25b)と、差動アンプ(25c)を有し、
前記第1磁電変換部および前記第2磁電変換部は、前記第1磁気抵抗効果素子と前記第2磁気抵抗効果素子とが電源電位と基準電位との間で直列接続されてなるハーフブリッジ回路をそれぞれ2つ有しており、
前記第1磁電変換部および前記第2磁電変換部のそれぞれにおいて、前記ハーフブリッジ回路のひとつの中点電位が前記差動アンプの入力端子のひとつに入力され、前記ハーフブリッジ回路の他のひとつの中点電位が前記差動アンプの入力端子の他のひとつに入力されており、
前記第1磁電変換部の前記ハーフブリッジ回路のひとつと前記第2磁電変換部の前記ハーフブリッジ回路のひとつとで、前記第1磁気抵抗効果素子と前記第2磁気抵抗効果素子の配置が同じであり、前記第1磁電変換部の前記ハーフブリッジ回路の他のひとつと前記第2磁電変換部の前記ハーフブリッジ回路の他のひとつとで、前記第1磁気抵抗効果素子と前記第2磁気抵抗効果素子の配置が同じであり、
配置が互いに同じである前記第1磁電変換部の前記ハーフブリッジ回路と前記第2磁電変換部の前記ハーフブリッジ回路とで、前記差動アンプの入力端子を逆転させることにより、前記第1磁電変換部が出力する前記電気信号の極性と前記第2磁電変換部が出力する前記電気信号の極性が異なっている請求項1または請求項2に記載の電流センサ。
【請求項5】
被測定電流の流動する導電部材(30)と、
前記被測定電流の流動によって生じる被測定磁界を第1極性の電気信号に変換する第1磁電変換部(21,25)、および、前記被測定磁界を前記第1極性とは異なる第2極性の電気信号に変換する第2磁電変換部(22,25)の搭載された配線基板(20)と、
前記第1磁電変換部の前記電気信号と前記第2磁電変換部の前記電気信号との差分を取る差分部(29,801,802)と、
前記配線基板が前記導電部材に対向する態様で、前記導電部材と前記配線基板それぞれを収納するセンサ筐体(50)と、
前記配線基板の前記導電部材との対向面(20a)を前記センサ筐体に接着する基板接着剤(56e)と、を有し、
互いに直交の関係にある3方向をx方向、y方向、および、z方向とすると、
前記導電部材の延長方向
である前記y方向に対して直交する
一つの平面上に前記導電部材の中心点(CP)と、前記第1磁電変換部及び前記第2磁電変換部とが存在し、前記導電部材の中心点(CP)を介して、前記第1磁電変換部及び前記第2磁電変換部が前記x方向に並ぶように、前記第1磁電変換部と前記第2磁電変換部は前記対向面若しくは前記対向面の裏側の背面に配置されており、
前記センサ筐体は、前記配線基板を支持する基板支持部(56a)と、前記基板接着剤の設けられる基板接着部(56b)と、を備え、
前記基板支持部における前記配線基板の支持面(56c)よりも、前記基板接着部における前記基板接着剤(56e)の設けられる搭載面(56d)が前記配線基板から離間しており、
前記基板支持部の前記支持面に前記配線基板が搭載され、前記基板接着部の前記搭載面と前記配線基板との間に前記基板接着剤が設けられている電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の開示は、被測定電流を検出する電流センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、バスバーを流れる電流によって生じる磁界を電気信号に変換することで電流を検出する電流検出システム(電流センサ)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているように、電流センサの技術分野では電流(被測定電流)の検出精度の低下、という課題がある。
【0005】
そこで本明細書に記載の開示物は、被測定電流の検出精度の低下が抑制された電流センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示された1つは、被測定電流の流動する導電部材(30)と、
被測定電流の流動によって生じる被測定磁界を第1極性の電気信号に変換する第1磁電変換部(21,25)、および、被測定磁界を第1極性とは異なる第2極性の電気信号に変換する第2磁電変換部(22,25)の搭載された配線基板(20)と、
第1磁電変換部の電気信号と第2磁電変換部の電気信号との差分を取る差分部(29,801,802)と、
配線基板が導電部材に対向する態様で、導電部材と配線基板それぞれを収納するセンサ筐体(50)と、
配線基板の導電部材との対向面(20a)をセンサ筐体に接着する基板接着剤(56e)と、を有し、
互いに直交の関係にある3方向をx方向、y方向、および、z方向とすると、
導電部材の延長方向であるy方向に対して直交する一つの平面上に導電部材の中心点(CP)と、第1磁電変換部及び第2磁電変換部とが存在し、導電部材の中心点(CP)を介して、第1磁電変換部及び第2磁電変換部がx方向に並ぶように、第1磁電変換部と第2磁電変換部は対向面若しくは背面に配置されており、
第1磁電変換部および第2磁電変換部のそれぞれは、自身を透過する磁界のy方向に沿う成分と導電部材の横方向であるx方向に沿う成分に応じて抵抗値が変動する磁気抵抗効果素子(25a,25b)を複数有する。
開示の他の1つは、被測定電流の流動する導電部材(30)と、
被測定電流の流動によって生じる被測定磁界を第1極性の電気信号に変換する第1磁電変換部(21,25)、および、被測定磁界を第1極性とは異なる第2極性の電気信号に変換する第2磁電変換部(22,25)の搭載された配線基板(20)と、
第1磁電変換部の電気信号と第2磁電変換部の電気信号との差分を取る差分部(29,801,802)と、
配線基板が導電部材に対向する態様で、導電部材と配線基板それぞれを収納するセンサ筐体(50)と、
配線基板の導電部材との対向面(20a)をセンサ筐体に接着する基板接着剤(56e)と、を有し、
互いに直交の関係にある3方向をx方向、y方向、および、z方向とすると、
導電部材の延長方向であるy方向に対して直交する一つの平面上に導電部材の中心点(CP)と、第1磁電変換部及び第2磁電変換部とが存在し、導電部材の中心点(CP)を介して、第1磁電変換部及び第2磁電変換部がx方向に並ぶように、第1磁電変換部と第2磁電変換部は対向面若しくは背面に配置されており、
センサ筐体は、配線基板を支持する基板支持部(56a)と、基板接着剤の設けられる基板接着部(56b)と、を備え、
基板支持部における配線基板の支持面(56c)よりも、基板接着部における基板接着剤(56e)の設けられる搭載面(56d)が配線基板から離間しており、
基板支持部の支持面に配線基板が搭載され、基板接着部の搭載面と配線基板との間に基板接着剤が設けられている。
【0007】
このように本開示では、導電部材(30)の中心点(CP)を貫く中心線を対称軸(AS)として、第1磁電変換部(21,25)と第2磁電変換部(22,25)が対向面(20a)若しくは背面(20b)で線対称に配置されている。これにより第1磁電変換部(21,25)と第2磁電変換部(22,25)を透過する被測定磁界の絶対値が同等になる。そのために第1磁電変換部(21,25)と第2磁電変換部(22,25)から出力される電気信号の絶対値は同等になる。
【0008】
しかしながらこれら第1磁電変換部(21,25)と第2磁電変換部(22,25)の搭載された配線基板(20)は、基板接着剤(56e)を介してセンサ筐体(50)に固定されている。基板接着剤(56e)は環境温度の変化によって膨張収縮したりクリープなどの経年劣化をしたりする。このために配線基板(20)と導電部材(30)との相対位置が変化する。この結果、第1磁電変換部(21,25)と第2磁電変換部(22,25)を透過する被測定磁界の絶対値が同等ではなくなる。第1磁電変換部(21,25)と第2磁電変換部(22,25)から出力される電気信号の絶対値が同等ではなくなる。
【0009】
ただし、第1磁電変換部(21,25)と第2磁電変換部(22,25)はともに配線基板(20)に搭載されている。そのため、上記したように基板接着剤(56e)の変形によって配線基板(20)と導電部材(30)との相対位置が変化したとしても、配線基板(20)に搭載されている第1磁電変換部(21,25)と第2磁電変換部(22,25)との相対距離は変化しない。したがって、基板接着剤(56e)の変形によって配線基板(20)と導電部材(30)との相対位置が変化した場合、第1磁電変換部(21,25)および第2磁電変換部(22,25)の一方を透過する被測定磁界が減少し、他方を透過する被測定磁界が増大する。配線基板(20)と導電部材(30)との相対位置の変化が対向面(20a)若しくは背面(20b)に沿う方向の場合、磁電変換部を透過する被測定磁界の減少量と増大量は同等となることが期待される。
【0010】
そこで本開示のように、差分部(29,801,802)で互いに極性の異なる第1磁電変換部(21,25)の電気信号と第2磁電変換部(22,25)の電気信号の差分をとる。こうすることで、上記の基板接着剤(56e)の変形に起因する配線基板(20)と導電部材(30)との相対位置の変化による電気信号の減少と増大がキャンセルされる。これにより被測定電流の検出精度の低下が抑制される。
【0011】
なお、上記の括弧内の参照番号は、後述の実施形態に記載の構成との対応関係を示すものに過ぎず、技術的範囲を何ら制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】車載システムを説明するためのブロック図である。
【
図7】センシング部を説明するためのブロック図である。
【
図12】基板支持ピンと基板接着ピンを説明するための図表である。
【
図13】
図12の(b)欄に示すXIII-XIII線に沿う断面図である。
【
図14】シールド支持ピンとシールド接着ピンを説明するための図表である。
【
図15】
図14の(b)欄に示すXV-XV線に沿う断面図である。
【
図18】配線ケースへの個別センサの組み付けを説明するための斜視図である。
【
図24】第1シールドの磁気飽和を説明するための図表である。
【
図25】磁気飽和のシミュレーション結果を示す図表である。
【
図26】第2実施形態の第2シールドを説明するための図表である。
【
図27】シールドを透過する磁界を説明するための模式図である。
【
図30】第3実施形態の第1電流センサを示す斜視図である。
【
図31】
図30に示すXXXI-XXXI線に沿う断面図である。
【
図32】第1電流センサの固定形態を説明するための図表である。
【
図33】第4実施形態の磁電変換部と導電バスバーの配置を示す図表である。
【
図34】磁電変換部の出力変化を説明するための図表である。
【
図35】第4実施形態のセンシング部を説明するためのブロック図である。
【
図37】第5実施形態のシールドの遮蔽性を説明するための模式図である。
【
図38】シールドの遮蔽性を説明するための模式図である。
【
図41】第2電流センサの変形例を示す斜視図である。
【
図42】第2電流センサの変形例を示す図表である。
【
図43】第2電流センサの変形例を示す図表である。
【
図44】個別センサの配線ケースへの組み付け状態を示す斜視図である。
【
図45】検出形態の類型を説明するための図表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態を図に基づいて説明する。
【0014】
(第1実施形態)
<車載システム>
先ず、電流センサの適用される車載システム100を説明する。この車載システム100はハイブリッドシステムを構成している。
図1に示すように車載システム100は、バッテリ200、電力変換装置300、第1モータ400、第2モータ500、エンジン600、および、動力分配機構700を有する。
【0015】
また車載システム100は複数のECUを有する。
図1ではこれら複数のECUの代表として、電池ECU801とMGECU802を図示している。これら複数のECUはバス配線800を介して相互に信号を送受信し、ハイブリッド自動車を協調制御する。この協調制御により、バッテリ200のSOCに応じた第1モータ400の回生と力行、第2モータ500の発電、および、エンジン600の出力などが制御される。SOCはstate of chargeの略である。ECUはelectronic control unitの略である。
【0016】
なお、ECUは、少なくとも1つの演算処理装置(CPU)と、プログラムおよびデータを記憶する記憶媒体としての少なくとも1つのメモリ装置(MMR)と、を有する。ECUはコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体はコンピュータによって読み取り可能なプログラムを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体である。記憶媒体は半導体メモリまたは磁気ディスクなどによって提供され得る。以下、車載システム100の構成要素を個別に概説する。
【0017】
バッテリ200は複数の二次電池を有する。これら複数の二次電池は直列接続された電池スタックを構成している。二次電池としてはリチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池、および、有機ラジカル電池などを採用することができる。
【0018】
二次電池は化学反応によって起電圧を生成する。二次電池は充電量が多すぎたり少なすぎたりすると劣化が促進する性質を有する。換言すれば、二次電池はSOCが過充電だったり過放電だったりすると劣化が促進する性質を有する。
【0019】
バッテリ200のSOCは、上記の電池スタックのSOCに相当する。電池スタックのSOCは複数の二次電池のSOCの総和である。電池スタックのSOCの過充電や過放電は上記の協調制御により回避される。これに対して複数の二次電池それぞれのSOCの過充電や過放電は、複数の二次電池それぞれのSOCを均等化する均等化処理によって回避される。
【0020】
均等化処理は複数の二次電池を個別に充放電することで成される。バッテリ200には、複数の二次電池を個別に充放電するためのスイッチが含まれている。またバッテリ200には、複数の二次電池それぞれのSOCを検出するための電圧センサや温度センサなどが含まれている。電池ECU801はこれらセンサおよび後述の第1電流センサ11の出力などに基づいてスイッチを開閉制御する。これにより複数の二次電池それぞれのSOCが均等化される。
【0021】
電力変換装置300はバッテリ200と第1モータ400との間の電力変換を行う。また電力変換装置300はバッテリ200と第2モータ500との間の電力変換も行う。電力変換装置300はバッテリ200の直流電力を第1モータ400と第2モータ500の力行に適した電圧レベルの交流電力に変換する。電力変換装置300は第1モータ400と第2モータ500の発電によって生成された交流電力をバッテリ200の充電に適した電圧レベルの直流電力に変換する。電力変換装置300については後で詳説する。
【0022】
第1モータ400、第2モータ500、および、エンジン600それぞれは動力分配機構700に連結されている。第1モータ400は図示しないハイブリッド自動車の出力軸に直接連結されている。第1モータ400の回転エネルギーは出力軸を介して走行輪に伝達される。逆に、走行輪の回転エネルギーは出力軸を介して第1モータ400に伝達される。
【0023】
第1モータ400は電力変換装置300から供給される交流電力によって力行する。この力行によって発生した回転エネルギーは、動力分配機構700によってエンジン600やハイブリッド自動車の出力軸に分配される。これによりクランクシャフトのクランキングや走行輪への推進力の付与が成される。また第1モータ400は走行輪から伝達される回転エネルギーによって回生する。この回生によって発生した交流電力は、電力変換装置300によって直流電力に変換されるとともに降圧される。この直流電力がバッテリ200に供給される。また直流電力はハイブリッド自動車に搭載された各種電気負荷にも供給される。
【0024】
第2モータ500はエンジン600から供給される回転エネルギーによって発電する。この発電によって発生した交流電力は、電力変換装置300によって直流電力に変換されるとともに降圧される。この直流電力がバッテリ200や各種電気負荷に供給される。
【0025】
エンジン600は燃料を燃焼駆動することで回転エネルギーを発生する。この回転エネルギーが動力分配機構700を介して第2モータ500や出力軸に分配される。これにより第2モータ500の発電や走行輪への推進力の付与が成される。
【0026】
動力分配機構700は遊星歯車機構を有する。動力分配機構700はリングギヤ、プラネタリーギヤ、サンギヤ、および、プラネタリーキャリアを有する。
【0027】
リングギヤは環状を成す。リングギヤの外周面と内周面それぞれに複数の歯が周方向に並んで形成されている。
【0028】
プラネタリーギヤとサンギヤそれぞれは円盤形状を成す。プラネタリーギヤとサンギヤそれぞれの円周面に複数の歯が周方向に並んで形成されている。
【0029】
プラネタリーキャリアは環状を成す。プラネタリーキャリアの外周面と内周面とを連結する平坦面に複数のプラネタリーギヤが連結されている。プラネタリーキャリアとプラネタリーギヤそれぞれの平坦面は互いに対向している。
【0030】
複数のプラネタリーギヤはプラネタリーキャリアの回転中心を中心とする円周上に位置している。これら複数のプラネタリーギヤの隣接間隔は等しくなっている。本実施形態では3つのプラネタリーギヤが120°間隔で並んでいる。
【0031】
リングギヤの中心にサンギヤが設けられている。リングギヤの内周面とサンギヤの外周面とが互いに対向している。両者の間に3つのプラネタリーギヤが設けられている。3つのプラネタリーギヤそれぞれの歯がリングギヤとサンギヤそれぞれの歯とかみ合わさっている。これにより、リングギヤ、プラネタリーギヤ、サンギヤ、および、プラネタリーキャリアそれぞれの回転が相互に伝達される構成となっている。
【0032】
リングギヤに第1モータ400の出力軸が連結されている。プラネタリーキャリアにエンジン600のクランクシャフトが連結されている。サンギヤに第2モータ500の出力軸が連結されている。これにより第1モータ400、エンジン600、および、第2モータ500の回転数が共線図において直線の関係となっている。
【0033】
電力変換装置300から第1モータ400と第2モータ500に交流電力を供給することでリングギヤとサンギヤにトルクを発生させる。エンジン600の燃焼駆動によってプラネタリーキャリアにトルクを発生させる。こうすることで第1モータ400の力行と回生、第2モータ500の発電、および、走行輪への推進力の付与それぞれが行われる。
【0034】
第1モータ400、第2モータ500、および、エンジン600それぞれの挙動は複数のECUによって協調制御される。例えばMGECU802は、ハイブリッド自動車に搭載された各種センサで検出される物理量、および、他のECUから入力される車両情報などに基づいて、第1モータ400と第2モータ500の目標トルクを決定する。そしてMGECU802は第1モータ400と第2モータ500それぞれに生成されるトルクが目標トルクになるようにベクトル制御する。
【0035】
<電力変換装置>
次に電力変換装置300を説明する。電力変換装置300はコンバータ310、第1インバータ320、および、第2インバータ330を備えている。コンバータ310は直流電力の電圧レベルを昇降圧する機能を果たす。第1インバータ320と第2インバータ330は直流電力を交流電力に変換する機能を果たす。第1インバータ320と第2インバータ330は交流電力を直流電力に変換する機能を果たす。
【0036】
車載システム100において、コンバータ310はバッテリ200の直流電力を第1モータ400と第2モータ500の力行に適した電圧レベルに昇圧する。第1インバータ320と第2インバータ330はこの直流電力を交流電力に変換する。この交流電力が第1モータ400と第2モータ500に供給される。また第1インバータ320と第2インバータ330は第1モータ400と第2モータ500で生成された交流電力を直流電力に変換する。コンバータ310はこの直流電力をバッテリ200の充電に適した電圧レベルに降圧する。
【0037】
図1に示すようにコンバータ310は第1電力ライン301と第2電力ライン302を介してバッテリ200と電気的に接続されている。コンバータ310は第3電力ライン303と第4電力ライン304を介して第1インバータ320および第2インバータ330それぞれと電気的に接続されている。
【0038】
第1電力ライン301の一端はバッテリ200の正極に電気的に接続されている。第2電力ライン302の一端はバッテリ200の負極に電気的に接続されている。そして第1電力ライン301と第2電力ライン302それぞれの他端はコンバータ310に電気的に接続されている。
【0039】
第1電力ライン301と第2電力ライン302には第1平滑コンデンサ305が接続されている。第1平滑コンデンサ305の有する2つの電極のうちの一方が第3電力ライン303に接続され、他方が第4電力ライン304に接続されている。
【0040】
なお、バッテリ200は図示しないシステムメインリレー(SMR)を有している。このシステムメインリレーの開閉によって、バッテリ200の電池スタックと電力変換装置300との電気的な接続が制御される。すなわちシステムメインリレーの開閉によって、バッテリ200と電力変換装置300との間の電力供給の継続と中断が制御される。
【0041】
第3電力ライン303の一端は後述のコンバータ310のハイサイドスイッチ311と電気的に接続されている。第4電力ライン304の一端は第2電力ライン302の他端と電気的に接続されている。そして第3電力ライン303と第4電力ライン304それぞれの他端は第1インバータ320と第2インバータ330それぞれと電気的に接続されている。
【0042】
第3電力ライン303と第4電力ライン304には第2平滑コンデンサ306が接続されている。第2平滑コンデンサ306の有する2つの電極のうちの一方が第3電力ライン303に接続され、他方が第4電力ライン304に接続されている。
【0043】
第1インバータ320は第1通電バスバー341~第3通電バスバー343を介して第1モータ400の第1U相ステータコイル401~第1W相ステータコイル403と電気的に接続されている。第2インバータ330は第4通電バスバー344~第6通電バスバー346を介して第2モータ500の第2U相ステータコイル501~第2W相ステータコイル503と電気的に接続されている。
【0044】
<コンバータ>
コンバータ310は、ハイサイドスイッチ311、ローサイドスイッチ312、ハイサイドダイオード311a、ローサイドダイオード312a、および、リアクトル313を有する。これらハイサイドスイッチ311とローサイドスイッチ312としてはIGBTやパワーMOSFETなどを採用することができる。本実施形態ではハイサイドスイッチ311およびローサイドスイッチ312としてnチャネル型のIGBTを採用している。
【0045】
なお、ハイサイドスイッチ311およびローサイドスイッチ312としてMOSFETを採用する場合、MOSFETにはボディダイオードが形成される。そのためにハイサイドダイオード311aとローサイドダイオード312aはなくともよい。コンバータ310を構成する半導体素子は、Siなどの半導体、若しくは、SiCなどのワイドギャップ半導体によって製造することができる。
【0046】
ハイサイドダイオード311aはハイサイドスイッチ311に逆並列接続されている。すなわち、ハイサイドスイッチ311のコレクタ電極にハイサイドダイオード311aのカソード電極が接続されている。ハイサイドスイッチ311のエミッタ電極にハイサイドダイオード311aのアノード電極が接続されている。
【0047】
同様にして、ローサイドダイオード312aはローサイドスイッチ312に逆並列接続されている。ローサイドスイッチ312のコレクタ電極にローサイドダイオード312aのカソード電極が接続されている。ローサイドスイッチ312のエミッタ電極にローサイドダイオード312aのアノード電極が接続されている。
【0048】
図1に示すようにハイサイドスイッチ311のコレクタ電極に第3電力ライン303が電気的に接続されている。そしてハイサイドスイッチ311のエミッタ電極とローサイドスイッチ312のコレクタ電極が接続されている。ローサイドスイッチ312のエミッタ電極に第2電力ライン302と第4電力ライン304が電気的に接続されている。これにより第3電力ライン303から第2電力ライン302に向かってハイサイドスイッチ311とローサイドスイッチ312が順に直列接続されている。表現を換えれば、第3電力ライン303から第4電力ライン304に向かってハイサイドスイッチ311とローサイドスイッチ312が順に直列接続されている。
【0049】
直列接続されたハイサイドスイッチ311とローサイドスイッチ312との間の中点とリアクトル313の一端とが通電バスバー307を介して電気的に接続されている。そしてリアクトル313の他端が第1電力ライン301の他端と電気的に接続されている。
【0050】
以上により、直列接続されたハイサイドスイッチ311とローサイドスイッチ312の中点には、リアクトル313と通電バスバー307を介してバッテリ200の直流電力が供給される。ハイサイドスイッチ311のコレクタ電極には、第1インバータ320と第2インバータ330の少なくとも一方により直流電力に変換されたモータの交流電力が供給される。この直流電力に変換されたモータの交流電力は、ハイサイドスイッチ311、通電バスバー307、および、リアクトル313を介してバッテリ200に供給される。
【0051】
このように通電バスバー307にはバッテリ200を入出力する直流電力が流れる。流れる物理量を限定して言えば、通電バスバー307にはバッテリ200を入出力する直流電流が流れる。
【0052】
コンバータ310のハイサイドスイッチ311とローサイドスイッチ312はMGECU802によって開閉制御される。MGECU802は制御信号を生成し、それをゲートドライバ803に出力する。ゲートドライバ803は制御信号を増幅してスイッチのゲート電極に出力する。これによりMGECU802はコンバータ310に入力される直流電力の電圧レベルを昇降圧する。
【0053】
MGECU802は制御信号としてパルス信号を生成している。MGECU802はこのパルス信号のオンデューティ比と周波数を調整することで直流電力の昇降圧レベルを調整している。昇降圧レベルは上記の目標トルクとバッテリ200のSOCに応じて決定される。
【0054】
バッテリ200の直流電力を昇圧する場合、MGECU802はハイサイドスイッチ311とローサイドスイッチ312それぞれを交互に開閉する。そのためにMGECU802はハイサイドスイッチ311とローサイドスイッチ312に出力する制御信号の電圧レベルを反転している。
【0055】
ハイサイドスイッチ311のゲート電極にハイレベルが入力される場合、ローサイドスイッチ312のゲート電極にはローレベルが入力される。この場合、リアクトル313とハイサイドスイッチ311を介してバッテリ200の直流電力が第1インバータ320と第2インバータ330に供給される。この際、電流の流動によってリアクトル313に電気エネルギーが蓄積される。また第2平滑コンデンサ306に電荷が蓄えられる。第2平滑コンデンサ306が充電される。
【0056】
ハイサイドスイッチ311のゲート電極にローレベルが入力される場合、ローサイドスイッチ312のゲート電極にはハイレベルが入力される。この場合、第1平滑コンデンサ305、リアクトル313、および、ローサイドスイッチ312を通る閉ループが構成される。上記したようにリアクトル313には電気エネルギーが蓄積されている。そのためにリアクトル313は電流を流そうとする。このリアクトル313の電気エネルギーに起因する電流が上記の閉ループを流れる。
【0057】
またこの場合、ハイサイドスイッチ311を介した第1インバータ320と第2インバータ330への直流電力の供給が途絶える。しかしながら第2平滑コンデンサ306は充電されている。そのために第2平滑コンデンサ306から第1インバータ320と第2インバータ330への電力供給が成される。第1インバータ320と第2インバータ330への電力供給が継続される。
【0058】
この後にハイサイドスイッチ311にハイレベル、ローサイドスイッチ312にローレベルが入力される。この際、バッテリ200の直流電力とともにリアクトル313に蓄積された電気エネルギーが直流電力として第1インバータ320と第2インバータ330に供給される。これにより時間平均的に昇圧したバッテリ200の直流電力が第1インバータ320と第2インバータ330に供給される。また第2平滑コンデンサ306の充電が回復するとともに、その充電量が増大する。これにより第2平滑コンデンサ306から第1インバータ320と第2インバータ330に供給される直流電力の電圧レベルも上昇する。
【0059】
第1インバータ320と第2インバータ330の少なくとも一方から供給された直流電力を降圧する場合、MGECU802はローサイドスイッチ312に出力する制御信号をローレベルに固定する。それとともにMGECU802はハイサイドスイッチ311に出力する制御信号をハイレベルとローレベルに順次切り換える。
【0060】
ハイサイドスイッチ311のゲート電極にハイレベルが入力される場合、ハイサイドスイッチ311とリアクトル313を介して、第1インバータ320と第2インバータ330の少なくとも一方の直流電力がバッテリ200に供給される。
【0061】
ハイサイドスイッチ311のゲート電極にローレベルが入力される場合、第1インバータ320と第2インバータ330の少なくとも一方の直流電力がバッテリ200に供給されなくなる。この結果、時間平均的に降圧された直流電力がバッテリ200に供給される。
【0062】
なお、厳密に言うと、上記のようにハイサイドスイッチ311のゲート電極にハイレベルが入力されると、第1平滑コンデンサ305が充電される。リアクトル313に電気エネルギーが蓄積される。この後にハイサイドスイッチ311のゲート電極にローレベルが入力されると、第2平滑コンデンサ306とバッテリ200の出力電圧と時定数に差異がある場合、第2平滑コンデンサ306とバッテリ200との間で充放電が行われる。また図示しないダイオードが第1電力ライン301と第2電力ライン302を接続している。このダイオードのアノード電極が第2電力ライン302、カソード電極が第1電力ライン301に接続されている。そのため、このダイオード、リアクトル313、および、第1平滑コンデンサ305を通る閉ループが構成されている。リアクトル313の電気エネルギーに起因する電流はこの閉ループを流れる。
【0063】
<インバータ>
第1インバータ320は第1スイッチ321~第6スイッチ326、および、第1ダイオード321a~第6ダイオード326aを有する。第1スイッチ321~第6スイッチ326としてはIGBTやパワーMOSFETなどを採用することができる。本実施形態では第1スイッチ321~第6スイッチ326としてnチャネル型のIGBTを採用している。これらスイッチとしてMOSFETを採用する場合、上記のダイオードはなくともよい。第1インバータ320を構成する半導体素子は、Siなどの半導体、若しくは、SiCなどのワイドギャップ半導体によって製造することができる。
【0064】
第1スイッチ321~第6スイッチ326に対応する第1ダイオード321a~第6ダイオード326aが逆並列接続されている。すなわち、kを1~6の自然数とすると、第kスイッチのコレクタ電極に第kダイオードのカソード電極が接続されている。第kスイッチのエミッタ電極に第kダイオードのアノード電極が接続されている。
【0065】
第1スイッチ321と第2スイッチ322は第3電力ライン303から第4電力ライン304へ向かって順に直列接続されている。第1スイッチ321と第2スイッチ322によって第1U相レグが構成されている。第1スイッチ321と第2スイッチ322との間の中点に第1通電バスバー341の一端が接続されている。第1通電バスバー341の他端が第1モータ400の第1U相ステータコイル401と接続されている。
【0066】
第3スイッチ323と第4スイッチ324は第3電力ライン303から第4電力ライン304へ向かって順に直列接続されている。第3スイッチ323と第4スイッチ324によって第1V相レグが構成されている。第3スイッチ323と第4スイッチ324との間の中点に第2通電バスバー342の一端が接続されている。第2通電バスバー342の他端が第1モータ400の第1V相ステータコイル402と接続されている。
【0067】
第5スイッチ325と第6スイッチ326は第3電力ライン303から第4電力ライン304へ向かって順に直列接続されている。第5スイッチ325と第6スイッチ326によって第1W相レグが構成されている。第5スイッチ325と第6スイッチ326との間の中点に第3通電バスバー343の一端が接続されている。第3通電バスバー343の他端が第1モータ400の第1W相ステータコイル403と接続されている。
【0068】
第2インバータ330は第1インバータ320と同様の構成になっている。第2インバータ330は第7スイッチ331~第12スイッチ336、および、第7ダイオード331a~第12ダイオード336aを有する。
【0069】
第7スイッチ331~第12スイッチ336に対応する第7ダイオード331a~第12ダイオード336aが逆並列接続されている。nを7~12の自然数とすると、第nスイッチのコレクタ電極に第nダイオードのカソード電極が接続されている。第nスイッチのエミッタ電極に第nダイオードのアノード電極が接続されている。
【0070】
第7スイッチ331と第8スイッチ332は第3電力ライン303と第4電力ライン304との間で直列接続されて第2U相レグを構成している。第7スイッチ331と第8スイッチ332との間の中点に第4通電バスバー344の一端が接続されている。第4通電バスバー344の他端が第2モータ500の第2U相ステータコイル501と接続されている。
【0071】
第9スイッチ333と第10スイッチ334は第3電力ライン303と第4電力ライン304との間で直列接続されて第2V相レグを構成している。第9スイッチ333と第10スイッチ334との間の中点に第5通電バスバー345の一端が接続されている。第5通電バスバー345の他端が第2モータ500の第2V相ステータコイル502と接続されている。
【0072】
第11スイッチ335と第12スイッチ336は第3電力ライン303と第4電力ライン304との間で直列接続されて第2W相レグを構成している。第11スイッチ335と第12スイッチ336との間の中点に第6通電バスバー346の一端が接続されている。第6通電バスバー346の他端が第2モータ500の第2W相ステータコイル503と接続されている。
【0073】
以上に示したように第1インバータ320と第2インバータ330それぞれはモータのU相~W相のステータコイルそれぞれに対応する3相のレグを有する。これら3相のレグそれぞれを構成するスイッチのゲート電極に、ゲートドライバ803によって増幅されたMGECU802の制御信号が入力される。
【0074】
モータを力行する場合、MGECU802からの制御信号の出力によって各スイッチがPWM制御される。これによりインバータで3相交流が生成される。モータが発電する場合、MGECU802は例えば制御信号の出力を停止する。これによりモータの発電によって生成された交流電力がダイオードを通る。この結果、交流電力が直流電力に変換される。
【0075】
以上に示した第1モータ400を入出力する交流電力は、第1インバータ320と第1モータ400とを接続する第1通電バスバー341~第3通電バスバー343を流れる。同様にして、第2モータ500を入出力する交流電力は、第2インバータ330と第2モータ500とを接続する第4通電バスバー344~第6通電バスバー346を流れる。
【0076】
流れる物理量を限定して言えば、第1モータ400を入出力する交流電流は、第1通電バスバー341~第3通電バスバー343を流れる。第2モータ500を入出力する交流電流は、第4通電バスバー344~第6通電バスバー346を流れる。
【0077】
<電流センサ>
次に、これまでに説明した車載システム100に適用される電流センサを説明する。
【0078】
電流センサとしては、第1電流センサ11、第2電流センサ12、および、第3電流センサ13がある。第1電流センサ11はコンバータ310を流れる電流を検出する。第2電流センサ12は第1モータ400を流れる電流を検出する。第3電流センサ13は第2モータ500を流れる電流を検出する。
【0079】
第1電流センサ11は通電バスバー307に設けられる。上記したように通電バスバー307にはバッテリ200を入出力する直流電流が流れる。第1電流センサ11はこの直流電流を検出する。
【0080】
第1電流センサ11で検出された直流電流は電池ECU801に入力される。電池ECU801は第1電流センサ11で検出された直流電流や図示しない電圧センサで検出される電池スタックの電圧などに基づいて、バッテリ200のSOCを監視する。
【0081】
第2電流センサ12は第1通電バスバー341~第3通電バスバー343に設けられる。上記したように第1通電バスバー341~第3通電バスバー343には第1モータ400を入出力する交流電流が流れる。第2電流センサ12はこの交流電流を検出する。
【0082】
第2電流センサ12で検出された交流電流はMGECU802に入力される。MGECU802は第2電流センサ12で検出された交流電流や図示しない回転角センサで検出される第1モータ400の回転角などに基づいて、第1モータ400をベクトル制御する。
【0083】
第3電流センサ13は第4通電バスバー344~第6通電バスバー346に設けられる。上記したように第4通電バスバー344~第6通電バスバー346には第2モータ500を入出力する交流電流が流れる。第3電流センサ13はこの交流電流を検出する。
【0084】
第3電流センサ13で検出された交流電流はMGECU802に入力される。MGECU802は第3電流センサ13で検出された交流電流や図示しない回転角センサで検出される第2モータ500の回転角などに基づいて、第2モータ500をベクトル制御する。
【0085】
なお、第1モータ400の有する第1U相ステータコイル401、第1V相ステータコイル402、および、第1W相ステータコイル403はスター結線されている。同様にして、第2モータ500の有する第2U相ステータコイル501、第2V相ステータコイル502、および、第2W相ステータコイル503はスター結線されている。そのためにこれら3相のステータコイルのうちの2相の電流を検出することで、残り1相の電流を検出することができる。
【0086】
これら3相のステータコイルがデルタ結線された構成を採用することもできる。この構成においても、2相のステータコイルの電流を検出することで、残り1相の電流を検出することができる。
【0087】
第2電流センサ12は第1U相ステータコイル401~第1W相ステータコイル403に接続される第1通電バスバー341~第3通電バスバー343のうちの2つに設けられる。より具体的に言えば、第2電流センサ12は第1通電バスバー341と第2通電バスバー342に設けられる。
【0088】
そのために第2電流センサ12は第1U相ステータコイル401に流れる電流と、第1V相ステータコイル402に流れる電流を検出する。MGECU802はこれら第1U相ステータコイル401と第1V相ステータコイル402に流れる電流に基づいて第1W相ステータコイル403に流れる電流を検出する。
【0089】
同様にして、第3電流センサ13は第2U相ステータコイル501~第2W相ステータコイル503に接続される第4通電バスバー344~第6通電バスバー346のうちの2つに設けられる。より具体的に言えば、第3電流センサ13は第4通電バスバー344と第5通電バスバー345に設けられる。
【0090】
そのために第3電流センサ13は第2U相ステータコイル501に流れる電流と、第2V相ステータコイル502に流れる電流を検出する。MGECU802はこれら第2U相ステータコイル501と第2V相ステータコイル502に流れる電流に基づいて第2W相ステータコイル503に流れる電流を検出する。
【0091】
上記したバッテリ200を入出力する直流電流、および、第1モータ400と第2モータ500を入出力する交流電流それぞれが被測定電流に相当する。そしてこれらの電流の流動によって発生する磁界が被測定磁界に相当する。
【0092】
<第1電流センサ>
上記したように第1電流センサ11は通電バスバー307に設けられる。通電バスバー307はリアクトル313側とハイサイドスイッチ311(ローサイドスイッチ312)側とで分断されている。第1電流センサ11はこの分断された通電バスバー307のリアクトル313側とハイサイドスイッチ311側とを架橋する態様で通電バスバー307に設けられる。これにより第1電流センサ11には通電バスバー307を流れる電流、すなわち、バッテリ200を入出力する直流電流が流れる。
【0093】
なおもちろんではあるが、通電バスバー307がリアクトル313側とハイサイドスイッチ311側とで分断された構成は一例に過ぎない。例えば、通電バスバー307が分断されずにハイサイドスイッチ311側だけに接続されている場合、第1電流センサ11はリアクトル313と通電バスバー307とを架橋する。
【0094】
図2~
図5に示すように第1電流センサ11は、配線基板20、導電バスバー30、シールド40、および、センサ筐体50を有する。導電バスバー30が上記の通電バスバー307を架橋する。そのため、導電バスバー30に直流電流が流れる。導電バスバー30が導電部材に相当する。
【0095】
図4の(a)欄は第1電流センサ11の上面図を示している。
図4の(b)欄は第1電流センサの正面図を示している。
図4の(c)欄は第1電流センサの下面図を示している。
図5の(a)欄は第1電流センサ11の正面図を示している。
図5の(b)欄は第1電流センサの側面図を示している。
図5の(c)欄は第1電流センサの背面図を示している。なお、
図4の(b)欄と
図5の(a)欄には同一の図面を示している。
【0096】
これらの図面に明示されるように、導電バスバー30の一部はセンサ筐体50にインサート成形されている。このセンサ筐体50に配線基板20とシールド40とが設けられる。センサ筐体50は絶縁性の樹脂材料からなる。
【0097】
配線基板20は導電バスバー30のセンサ筐体50にインサート成形された部位と対向する態様でセンサ筐体50に固定される。この配線基板20における導電バスバー30との対向部位に後述の磁電変換部25が搭載されている。この磁電変換部25によって、導電バスバー30を流れる直流電流の発する磁界が電気信号に変換される。
【0098】
シールド40は第1シールド41と第2シールド42を有する。第1シールド41と第2シールド42は互いに離間する態様でセンサ筐体50に固定される。この第1シールド41と第2シールド42との間に配線基板20と導電バスバー30それぞれの互いに対向する部位が位置する。
【0099】
第1シールド41と第2シールド42はセンサ筐体50よりも透磁率の高い材料からなる。したがって第1電流センサ11の外部から内部へと透過しようとする電磁ノイズ(外部ノイズ)は、第1シールド41と第2シールド42を積極的に通ろうとする。これにより外部ノイズの磁電変換部25への入力が抑制されている。
【0100】
なおセンサ筐体50には
図4に示す接続端子60がインサート成形されている。この接続端子60ははんだ61によって配線基板20と電気的および機械的に接続される。この接続端子60がワイヤハーネスなどを介して電池ECU801と電気的に接続される。磁電変換部25で変換された電気信号は、接続端子60と図示しないワイヤハーネスなどを介して電池ECU801に入力される。
【0101】
次に、第1電流センサ11の構成要素を個別に詳説する。それに当たって、以下においては互いに直交の関係にある3方向をx方向、y方向、および、z方向とする。x方向が横方向に相当する。y方向が延長方向に相当する。
【0102】
<配線基板>
図6に示すように配線基板20は平板形状を成している。配線基板20はz方向の厚さの薄い扁平形状を成している。配線基板20は絶縁性の樹脂層と導電性の金属層がz方向に複数積層されて成る。配線基板20の最も面積の広い対向面20aおよびその裏側の背面20bはz方向に面している。
図6の(a)欄は配線基板の上面図を示している。
図6の(b)欄は配線基板の下面図を示している。
【0103】
配線基板20の対向面20aには、
図6の(a)欄および
図7に示す第1センシング部21と第2センシング部22が搭載されている。第1センシング部21と第2センシング部22それぞれはASIC23とフィルタ24を有する。ASIC23とフィルタ24は配線基板20の配線パターンを介して電気的に接続されている。この配線パターンに接続端子60が電気的に接続されている。ASICはapplication specific integrated circuitの略である。なお、背面20bに第1センシング部21と第2センシング部22が搭載された構成を採用することもできる。
【0104】
<ASIC>
ASIC23は磁電変換部25、処理回路26、接続ピン27、および、樹脂部28を有する。磁電変換部25と処理回路26は電気的に接続されている。接続ピン27の一端が処理回路26に電気的に接続されている。接続ピン27の他端が配線基板20に電気的および機械的に接続されている。接続ピン27の一端側、処理回路26、および、磁電変換部25は樹脂部28によって被覆されている。接続ピン27の他端側は樹脂部28から露出されている。
【0105】
磁電変換部25は自身を透過する磁界(透過磁界)に応じて抵抗値が変動する磁気抵抗効果素子を複数有する。この磁気抵抗効果素子は対向面20aに沿う透過磁界に応じて抵抗値が変化する。すなわち磁気抵抗効果素子は透過磁界のx方向に沿う成分とy方向に沿う成分に応じて抵抗値が変化する。
【0106】
その反面、磁気抵抗効果素子はz方向に沿う透過磁界によって抵抗値が変化しない。したがってz方向に沿う外部ノイズが磁気抵抗効果素子を透過したとしても、それによって磁気抵抗効果素子の抵抗値は変化しない。
【0107】
磁気抵抗効果素子は磁化方向の固定されたピン層、磁化方向が透過磁界に応じて変化する自由層、および、両者の間に設けられた非磁性の中間層を有する。中間層が非導電性を有する場合、磁気抵抗効果素子は巨大磁気抵抗素子である。中間層が導電性を有する場合、磁気抵抗効果素子はトンネル磁気抵抗素子である。なお、磁気抵抗効果素子は異方性磁気抵抗効果素子(AMR)でもよい。さらに言えば、磁電変換部25は磁気抵抗効果素子の代わりにホール素子を有してもよい。
【0108】
磁気抵抗効果素子はピン層と自由層それぞれの磁化方向の成す角度によって抵抗値が変化する。ピン層の磁化方向は対向面20aに沿っている。自由層の磁化方向は対向面20aに沿う透過磁界によって定まる。磁気抵抗効果素子の抵抗値は、自由層と固定層それぞれの磁化方向が平行の場合に最も小さくなる。磁気抵抗効果素子の抵抗値は、自由層と固定層それぞれの磁化方向が反平行の場合に最も大きくなる。
【0109】
磁電変換部25は、上記した磁気抵抗効果素子として第1磁気抵抗効果素子25aと第2磁気抵抗効果素子25bを有する。第1磁気抵抗効果素子25aと第2磁気抵抗効果素子25bはピン層の磁化方向が90°異なっている。このために第1磁気抵抗効果素子25aと第2磁気抵抗効果素子25bの抵抗値の増減が逆転している。第1磁気抵抗効果素子25aと第2磁気抵抗効果素子25bのうちの一方の抵抗値が減少すると、他方の抵抗値はそれと同等分だけ増大する。
【0110】
磁電変換部25は第1磁気抵抗効果素子25aと第2磁気抵抗効果素子25bそれぞれを2つ有する。電源電位から基準電位に向かって第1磁気抵抗効果素子25aと第2磁気抵抗効果素子25bが順に直列接続されて第1ハーフブリッジ回路が構成されている。電源電位から基準電位に向かって第2磁気抵抗効果素子25bと第1磁気抵抗効果素子25aが順に直列接続されて第2ハーフブリッジ回路が構成されている。
【0111】
このように2つのハーフブリッジ回路では第1磁気抵抗効果素子25aと第2磁気抵抗効果素子25bの並びが逆転している。そのために2つのハーフブリッジ回路の中点電位は、一方の電位が下がれば他方の電位が上がる構成となっている。磁電変換部25ではこれら2つのハーフブリッジ回路が組み合わさることでフルブリッジ回路が構成されている。
【0112】
磁電変換部25は上記したフルブリッジ回路を構成する磁気抵抗効果素子の他に、差動アンプ25c、フィードバックコイル25d、および、シャント抵抗25eを有する。差動アンプ25cの反転入力端子と非反転入力端子に2つのハーフブリッジ回路の中点電位が入力される。差動アンプ25cの出力端子から基準電位に向かって、フィードバックコイル25dとシャント抵抗25eとが順に直列接続されている。
【0113】
以上に示した接続構成により、差動アンプ25cの出力端子からは、フルブリッジ回路を構成する第1磁気抵抗効果素子25aと第2磁気抵抗効果素子25bの抵抗値の変動に応じた出力がなされる。この抵抗値の変化は、磁気抵抗効果素子を対向面20aに沿う磁界が透過することで生じる。磁気抵抗効果素子には導電バスバー30を流れる電流から生じる磁界(被測定磁界)が透過する。したがって差動アンプ25cの入力端子には被測定磁界に応じた電流が流れる。
【0114】
差動アンプ25cの入力端子と出力端子は図示しない帰還回路を介して接続されている。そのために差動アンプ25cはバーチャルショートしている。したがって差動アンプ25cは反転入力端子と非反転入力端子とが同電位となるように動作する。すなわち差動アンプ25cは入力端子に流れる電流と出力端子に流れる電流とがゼロとなるように動作する。この結果、差動アンプ25cの出力端子からは、被測定磁界に応じた電流(フィードバック電流)が流れる。
【0115】
フィードバック電流はフィードバックコイル25dとシャント抵抗25eとを介して、差動アンプ25cの出力端子と基準電位との間で流れる。このフィードバック電流の流動によって、フィードバックコイル25dに相殺磁界が発生する。この相殺磁界が磁電変換部25を透過する。これによって磁電変換部25を透過する被測定磁界が相殺される。以上により磁電変換部25は、自身を透過する被測定磁界と相殺磁界とが平衡となるように動作する。
【0116】
相殺磁界を発生するフィードバック電流の電流量に応じたフィードバック電圧がフィードバックコイル25dとシャント抵抗25eとの間の中点に生成される。このフィードバック電圧が、被測定電流を検出した電気信号として、後段の処理回路26に出力される。
【0117】
処理回路26は、調整アンプ26aと閾値電源26bを有する。調整アンプ26aの非反転入力端子にフィードバックコイル25dとシャント抵抗25eとの間の中点が接続されている。調整アンプ26aの反転入力端子に閾値電源26bが接続されている。これにより調整アンプ26aからは差動増幅されたフィードバック電圧が出力される。
【0118】
フルブリッジ回路を構成する第1磁気抵抗効果素子25aと第2磁気抵抗効果素子25bそれぞれの抵抗値は、温度に依存する性質を有する。そのために温度変化によって調整アンプ26aの出力が変動する。そこで処理回路26は図示しない温度検出素子や、磁気抵抗効果素子の温度と抵抗値の関係を記憶する不揮発性メモリなどを有する。この不揮発性メモリは電気的に書き換え可能である。不揮発性メモリに記憶された値を書き換えることで、調整アンプ26aのゲインやオフセットが調整される。これにより温度変化に起因する調整アンプ26aの出力の変動がキャンセルされる。
【0119】
<フィルタ>
フィルタ24は抵抗24aとコンデンサ24bを有する。そして
図7に示すように配線基板20には、配線パターンとして電源配線20c、第1出力配線20d、第2出力配線20e、および、グランド配線20fが形成されている。
【0120】
第1センシング部21のASIC23は電源配線20c、第1出力配線20d、および、グランド配線20fそれぞれと接続されている。第1センシング部21のASIC23の調整アンプ26aの出力端子が第1出力配線20dに接続されている。
【0121】
第1センシング部21のフィルタ24の抵抗24aは第1出力配線20dに設けられている。コンデンサ24bは第1出力配線20dとグランド配線20fとを接続している。これにより第1センシング部21のフィルタ24は抵抗24aとコンデンサ24bとによってローパスフィルタを構成している。第1センシング部21のASIC23の出力はこのローパスフィルタを介して電池ECU801に出力される。これにより高周波ノイズの除去された第1センシング部21の出力が電池ECU801に入力される。
【0122】
第2センシング部22のASIC23は電源配線20c、第2出力配線20e、および、グランド配線20fそれぞれと接続されている。第1センシング部21のASIC23の調整アンプ26aの出力端子が第2出力配線20eに接続されている。
【0123】
第2センシング部22のフィルタ24の抵抗24aは第2出力配線20eに設けられている。コンデンサ24bは第2出力配線20eとグランド配線20fとを接続している。これにより第2センシング部22のフィルタ24は抵抗24aとコンデンサ24bとによってローパスフィルタを構成している。第2センシング部22のASIC23の出力はこのローパスフィルタを介して電池ECU801に出力される。これにより高周波ノイズの除去された第2センシング部22の出力が電池ECU801に入力される。
【0124】
以上に示したように本実施形態の第1センシング部21と第2センシング部22は同一構成となっている。これら第1センシング部21と第2センシング部22それぞれの磁電変換部25はy方向に並んでいる。後で詳説するように第1センシング部21と第2センシング部22それぞれの磁電変換部25を透過する磁界は同一となっている。
【0125】
したがって、第1センシング部21から電池ECU801に入力される電気信号と、第2センシング部22から電池ECU801に入力される電気信号は同一になっている。電池ECU801は入力されるこれら2つの電気信号を比較することで、第1センシング部21と第2センシング部22のいずれか一方に異常が生じているか否かを判定する。このように本実施形態にかかる第1電流センサ11は冗長性を有している。
【0126】
なお、上記のシャント抵抗25eは樹脂部28の中に設けられても良いし、その外に設けられてもよい。樹脂部28の外に設けられる場合、シャント抵抗25eは配線基板20に搭載される。そしてシャント抵抗25eはASIC23に外付けされる。
【0127】
また、フルブリッジ回路を構成する4つの抵抗それぞれが磁気抵抗効果素子でなくともよい。これら4つの抵抗のうちの少なくとも1つが磁気抵抗効果素子であればよい。フルブリッジ回路ではなく、1つのハーフブリッジ回路だけを構成してもよい。
【0128】
上記の冗長性を有さなくともよい場合、第1電流センサ11は第1センシング部21と第2センシング部22のうちの一方を有する構成を採用することもできる。
【0129】
<導電バスバー>
導電バスバー30は銅や黄銅およびアルミニウムなどの導電材料から成る。導電バスバー30は例えば以下に列挙する方法で製造することができる。導電バスバー30は平板をプレス加工することで製造することができる。導電バスバー30は複数の平板を一体的に連結することで製造することができる。導電バスバー30は複数の平板を溶接することで製造することができる。導電バスバー30は鋳型に溶融状態の導電材料を流し込むことで製造することができる。導電バスバー30の製造方法としては特に限定されない。
【0130】
図8に示すように導電バスバー30はz方向の厚さの薄い扁平形状を成している。導電バスバー30の表面30aおよびその裏面30bそれぞれはz方向に面している。
図8の(a)欄は導電バスバーの上面図を示している。
図8の(b)欄は導電バスバーの側面図を示している。
【0131】
導電バスバー30はy方向に延びている。
図8において2つの破線で区切って示すように、導電バスバー30はセンサ筐体50に被覆される被覆部31、および、センサ筐体50から露出される第1露出部32と第2露出部33を有する。第1露出部32と第2露出部33は被覆部31を介してy方向に並んでいる。第1露出部32と第2露出部33は被覆部31を介して一体的に連結されている。
【0132】
図8の(b)欄に示すように被覆部31、第1露出部32、および、第2露出部33それぞれのz方向の長さ(厚さ)は相等しくなっている。すなわち被覆部31、第1露出部32、および、第2露出部33それぞれの表面30aと裏面30bとの間のz方向の離間距離が相等しくなっている。
【0133】
第1露出部32と第2露出部33それぞれには、ボルトを通して通電バスバー307と電気的および機械的に接続するためのボルト孔30cが形成されている。このボルト孔30cは表面30aと裏面30bとを貫通している。
【0134】
上記したように通電バスバー307はリアクトル313側とハイサイドスイッチ311側とで分断されている。この通電バスバー307のリアクトル313側、および、ハイサイドスイッチ311側それぞれに、ボルト孔30cに対応する取付孔が形成されている。
【0135】
通電バスバー307のリアクトル313側の取付孔と第1露出部32のボルト孔30cとをz方向で並ばせる。通電バスバー307のハイサイドスイッチ311側の取付孔と第2露出部33のボルト孔30cとをz方向で並ばせる。この状態において、ボルト孔30cと取付孔とにボルトの軸部を通す。そしてボルトの軸部の先端から頭部に向かってナットを締結する。ボルトの頭部とナットとによって通電バスバー307と導電バスバー30とを挟持する。これにより通電バスバー307と導電バスバー30とを接触し、両者を電気的および機械的に接続する。以上により、分断された通電バスバー307のリアクトル313側とハイサイドスイッチ311側とが導電バスバー30によって架橋される。通電バスバー307と導電バスバー30とに共通の電流が流れる。
【0136】
図8の(a)欄に示すように被覆部31には、x方向の長さの局所的に短い狭窄部31aが形成されている。本実施形態の狭窄部31aはx方向の長さが段階的に短くなっている。狭窄部31aは、y方向において被覆部31の第1露出部32側から被覆部31の中心点CPに向かうにしたがって、二段階にわたってx方向の長さが短くなっている。同様にして狭窄部31aは、y方向において被覆部31の第2露出部33側から被覆部31の中心点CPに向かうにしたがって、二段階にわたってx方向の長さが短くなっている。なお狭窄部31aのx方向の長さはより多段階的に短くなっても良いし、連続的に短くなってもよい。
【0137】
上記の中心点CPは被覆部31の重心と同等である。被覆部31および狭窄部31aは、中心点CPをz方向に通る中心線を対称軸ASとして、線対称な形状となっている。
【0138】
狭窄部31aは第1露出部32および第2露出部33それぞれよりもx方向の長さが短くなっている。このため狭窄部31aを流れる電流の密度は、第1露出部32と第2露出部33を流れる電流の密度よりも濃くなっている。この結果、狭窄部31aを流れる電流から発せられる被測定磁界の強度が高くなっている。
【0139】
図8の(a)欄と(b)欄それぞれに第1センシング部21と第2センシング部22の磁電変換部25を概略的に破線で囲って示すように、第1センシング部21と第2センシング部22は狭窄部31aとz方向で離間して対向配置される。したがって第1センシング部21と第2センシング部22それぞれには、狭窄部31aを流れる電流から発せられる、強度の高い被測定磁界が透過する。
【0140】
上記したように導電バスバー30はy方向に延びている。したがって導電バスバー30ではy方向に電流が流れる。このy方向への電流の流動によって、y方向まわりの周方向に、アンペールの法則にしたがう被測定磁界が生成される。被測定磁界は、x方向とz方向とによって規定される平面において、導電バスバー30を中心として環状に流れる。第1センシング部21と第2センシング部22は被測定磁界のx方向に沿う成分を検出する。
【0141】
図8に破線で示すように第1センシング部21と第2センシング部22それぞれの磁電変換部25はy方向に並んでいる。これら2つの磁電変換部25は対称軸ASを介して対称配置されている。2つの磁電変換部25のx方向の位置と対称軸AS(中心点CP)のx方向の位置とが同一になっている。したがって2つの磁電変換部25は中心点CPを介してy方向に並んでいる。
【0142】
また2つの磁電変換部25と被覆部31とのz方向の離間距離は同一となっている。そして上記したように被覆部31および狭窄部31aは対称軸ASを介して線対称な形状となっている。以上により、2つの磁電変換部25にはx方向の成分が同等の被測定磁界が透過する。
【0143】
なお、本実施形態の導電バスバー30は導電性の平板をプレス加工することで製造している。このプレス加工は、平板をダイに置き、パンチをダイに近づけて平板に引張り力を加える。こうすることで平板を導電バスバー30と切りくずとに分離し、導電バスバー30を製造する。
【0144】
上記のプレス加工によって導電バスバー30を製造すると、導電バスバー30にはせん断面が形成される。導電バスバー30におけるパンチと始めに接触する面側のせん断面にダレが発生する。これによってせん断面の直角性が損なわれる虞がある。この結果、導電バスバー30を流動する電流によって発生する被測定磁界の分布が設計からずれる虞がある。
【0145】
本実施形態の導電バスバー30は、パンチと始めに接触する面ではなく、パンチによって最後に分離される面を配線基板20側に設けている。すなわち、パンチと始めに接触する面を裏面30b、パンチによって最後に分離される面を表面30aとしている。せん断面は表面30aと裏面30bとの間の側面に相当する。したがって導電バスバー30の側面における表面30a側の直角性が損なわれがたくなっている。この導電バスバー30の表面30aが配線基板20と対向している。そのために配線基板20に搭載された第1センシング部21と第2センシング部22を透過する被測定磁界の分布が設計からずれることが抑制されている。
【0146】
なお、上記のように導電バスバー30をプレス加工で製造した後、側面における表面30a側と裏面30b側のいずれにダレが発生しているかを見分ける必要がある。これを見分けるための切欠き33aが、目印として導電バスバー30の第2露出部33に形成されている。本実施形態の切欠き33aは半円形状を成している。
【0147】
<シールド>
上記したようにシールド40は第1シールド41と第2シールド42を有する。
図9および
図10に示すように第1シールド41と第2シールド42それぞれはz方向の厚さの薄い板形状を成している。第1シールド41の最も面積の広い一面41aとその裏面41bそれぞれはz方向に面している。第2シールド42の最も面積の広い一面42aとその裏面42bそれぞれはz方向に面している。
【0148】
図2および
図3に示すように一面41aと一面42aとが互いにz方向において対向する態様で、第1シールド41と第2シールド42はセンサ筐体50に設けられる。第1シールド41の裏面41bと第2シールド42の裏面42bそれぞれはセンサ筐体50の外に露出される。これら裏面41bと裏面42bそれぞれは第1電流センサ11の最外表面の一部を構成している。
【0149】
図9の(a)欄は第1シールドの上面図を示している。
図9の(b)欄は第1シールドの下面図を示している。
図10の(a)欄は第2シールドの上面図を示している。
図10の(b)欄は第2シールドの下面図を示している。
【0150】
これら第1シールド41と第2シールド42は、パーマロイなどの透磁率の高い軟磁性材料から成る複数の平板を圧着することで製造することができる。若しくは、第1シールド41と第2シールド42は電磁鋼を圧延することで製造することができる。
【0151】
本実施形態の第1シールド41と第2シールド42それぞれは軟磁性材料から成る複数の平板を圧着することで製造している。複数の平板それぞれには、その主面から裏面に向かって突起する4つの凸部が形成されている。これに応じて複数の平板それぞれには、裏面から主面に向かって凹む4つの凹部が形成されている。これら複数の平板それぞれを、主面と裏面とが対向するように配置する。そして対向する2つの平板のうちの一方の凹部に、他方の凸部が入り込むように、複数の平板を積層する。この積層状態で複数の平板を圧着する。これにより第1シールド41と第2シールド42とが製造される。
【0152】
なお、電磁鋼を圧延することで第1シールド41と第2シールド42を製造する場合、その圧延によって電磁鋼を延ばす方向を、例えばx方向にする。これにより電磁鋼の原子配列(結晶)がx方向に整列される。この結果、x方向のほうがy方向よりも透磁率が高まる。このように電磁鋼の圧延方向を特定することで、シールドの透磁率に異方性を持たせることができる。
【0153】
<第1シールド>
第1シールド41の平面形状は、
図9に示すようにx方向を長手方向とする矩形を成している。そして本実施形態の第1シールド41の四隅には切欠き41cが形成されている。
図9では、y方向における第1シールド41の中央と両端との境界を明りょうとするため、x方向に延びる2つの破線を第1シールド41に付与している。以下においては第1シールド41のy方向の中央を第1中央部41dと示す。第1シールド41のy方向の両端を第1両端部41eと示す。y方向において第1両端部41eの有する2つの端部の間に第1中央部41dが位置している。
【0154】
この破線の付与によって明示されるように、第1両端部41eは第1中央部41dよりもx方向の長さが短くなっている。そのために第1両端部41eは第1中央部41dよりもx方向の透磁率が低くなっている。第1両端部41eに磁界が侵入しがたくなっている。したがって、第1両端部41eの有する2つの端部の一方から他方へと、第1中央部41dにおける第1両端部41eと直接連結されてy方向で並ぶ部位(並列部位)を介して磁界が透過することが抑制されている。第1中央部41dの並列部位に磁界が透過しがたくなっている。この結果、第1中央部41dの並列部位は磁気飽和しがたくなっている。
【0155】
この磁気飽和の抑制された第1中央部41dの並列部位と、配線基板20に搭載された第1センシング部21および第2センシング部22がz方向で並んでいる。第1中央部41dと狭窄部31aとの間に第1センシング部21と第2センシング部22それぞれの磁電変換部25が位置している。
【0156】
<第2シールド>
第2シールド42の平面形状は、
図10に示すようにx方向を長手方向とする矩形を成している。
図10では、y方向における第2シールド42の中央と両端との境界を明りょうとするために、x方向に延びる2つの破線を第2シールド42に付与している。以下においては第2シールド42のy方向の中央を第2中央部42dと示す。第2シールド42のy方向の両端を第2両端部42eと示す。y方向において第2両端部42eの有する2つの端部の間に第2中央部42dが位置している。
【0157】
第2シールド42はx方向で並ぶ2つの端辺42fを有する。これら2つの端辺42fの第2中央部42d側それぞれに、z方向に延びる延設部42cが形成されている。これら2つの延設部42cはz方向において裏面42bから一面42aに向かう方向に延びている。延設部42cはy方向を長手方向とする直方体を成している。延設部42cは上記したように第2シールド42を製造するにあたって軟磁性材料から成る複数の平板を圧着した後に曲げ加工することで形成される。
【0158】
上記したように第1シールド41の一面41aと第2シールド42の一面42aとが互いにz方向において対向する態様で、第1シールド41と第2シールド42はセンサ筐体50に設けられる。このセンサ筐体50に設けられている状態で、延設部42cは第1シールド41に向かって延びている。延設部42cの端面と第1シールド41の第1中央部41dの一面41aとがz方向で対向している。
【0159】
これにより、第1シールド41の一面41aと第2シールド42の一面42aとのz方向の離間距離よりも、第1シールド41の第1中央部41dと第2シールド42の延設部42cとのz方向の離間距離のほうが短くなっている。そのため、第1シールド41に侵入した磁界は、この延設部42cを介して第2シールド42へと透過しやすくなっている。
【0160】
上記したように延設部42cは端辺42fの第2中央部42d側からz方向に延びている。端辺42fの第2両端部42e側に延設部42cは形成されていない。そのため、第1シールド41に侵入した磁界は、延設部42cを介して第2シールド42の第2中央部42dへと透過しやすくなっている。
【0161】
この第2中央部42dと、配線基板20に搭載された第1センシング部21および第2センシング部22がz方向で対向している。第1中央部41dと第2中央部42dとの間に、第1センシング部21と第2センシング部22それぞれの磁電変換部25と狭窄部31aが位置している。
【0162】
また、磁電変換部25のx方向の位置は、2つの端辺42fそれぞれに形成された2つの延設部42cの間になっている。そのため、磁電変換部25の位置する第1シールド41の一面41aと第2シールド42の一面42aとの間の領域をx方向に沿う外部ノイズが透過しようとした場合、その外部ノイズは磁電変換部25ではなく延設部42cに侵入しようとする。延設部42cに侵入した外部ノイズは第2シールド42の中を透過するべく、その透過方向が曲げられる。この結果、外部ノイズが磁電変換部25を透過することが抑制されている。
【0163】
<センサ筐体>
図3および
図11に示すように、センサ筐体50には導電バスバー30と接続端子60がインサート成形されている。そしてセンサ筐体50には、配線基板20とシールド40が設けられる。導電バスバー30、配線基板20、および、シールド40はz方向で離間して並んでいる。
図11の(a)欄はセンサ筐体の上面図を示している。
図11の(b)欄はセンサ筐体の下面図を示している。
【0164】
図5および
図11に示すようにセンサ筐体50は、基部51、絶縁部52、第1囲み部53、第2囲み部54、および、コネクタ部55を有する。
【0165】
基部51はx方向を長手方向とする直方体を成している。そのために基部51は6面を有する。基部51はy方向に面する左面51aと右面51bを有する。基部51はx方向に面する上面51cと下面51dを有する。基部51はz方向に面する上端面51eと下端面51fを有する。
【0166】
図5の(a)欄および
図5の(c)欄に示すように、絶縁部52は基部51の左面51aと右面51bそれぞれの一部に形成されている。これら2つの絶縁部52は基部51から離れるようにy方向に延びている。2つの絶縁部52は基部51を介してy方向に並んでいる。2つの絶縁部52と基部51それぞれによって導電バスバー30の被覆部31が被覆されている。
【0167】
概略的に言えば、2つの絶縁部52によって被覆部31の第1露出部32側と第2露出部33側が被覆されている。基部51によって被覆部31の狭窄部31aが被覆されている。したがって狭窄部31aはz方向において基部51の上端面51eと下端面51fとの間に位置する。狭窄部31aと上端面51eとの間、および、狭窄部31aと下端面51fとの間それぞれに、基部51を構成する絶縁性の樹脂材料が位置している。
【0168】
図11の(a)欄に示すように、第1囲み部53は基部51の上端面51eに形成されている。第1囲み部53はy方向に並ぶ左壁53aと右壁53bを有する。第1囲み部53はx方向に並ぶ上壁53cと下壁53dを有する。
【0169】
これら第1囲み部53を構成する壁は上端面51eの縁に沿って形成されている。z方向まわりの周方向において、左壁53a、上壁53c、右壁53b、および、下壁53dが順に連結されている。これにより第1囲み部53はz方向に開口する環状を成している。第1囲み部53によって上端面51eが囲まれている。この第1囲み部53と上端面51eとによって構成される第1収納空間に配線基板20と第1シールド41が設けられる。
【0170】
図11の(b)欄に示すように、第2囲み部54は基部51の下端面51fに形成されている。第2囲み部54はy方向に並ぶ左壁54aと右壁54bを有する。第2囲み部54はx方向に並ぶ上壁54cと下壁54dを有する。
【0171】
これら第2囲み部54を構成する壁は、下端面51fにおける上記の基部51の狭窄部31aとz方向で並ぶ部位の周囲に形成されている。z方向まわりの周方向において、左壁54a、上壁54c、右壁54b、および、下壁54dが順に連結されている。これにより第2囲み部54はz方向に開口する環状を成している。第2囲み部54によって下端面51fの一部が囲まれている。この第2囲み部54と下端面51fとによって構成される第2収納空間に第2シールド42が設けられる。
【0172】
第2収納空間は第1収納空間よりもz方向に直交する平面の大きさが小さくなっている。第2収納空間は第1収納空間の一部とz方向で並んでいる。この第1収納空間における第2収納空間とのz方向で並ばない部位とコネクタ部55とがz方向で並んでいる。
【0173】
図5の(b)欄および
図11の(b)欄に示すように、コネクタ部55は基部51の下端面51fに形成されている。コネクタ部55は下端面51fにおける第2囲み部54によって囲まれていない部位(非囲み部位)から離れるようにz方向に延びている。コネクタ部55は下壁54dの一部を構成している。
【0174】
コネクタ部55は下端面51fからz方向に延びる柱部55aと、柱部55aの先端面55bをz方向まわりの周方向で囲む囲み部55cと、を有する。接続端子60はz方向に延びている。接続端子60は柱部55a、および、基部51における柱部55aとz方向で並ぶ部位それぞれによって被覆されている。
【0175】
接続端子60の一端は先端面55bから柱部55aの外に露出されている。この先端面55bから露出した接続端子60の一端は上記の囲み部55cによってその周囲を囲まれている。これにより囲み部55cと接続端子60の一端とによってコネクタが構成されている。このコネクタにワイヤハーネスなどのコネクタが接続される。
【0176】
接続端子60の他端は上端面51eから基部51の外に露出されている。接続端子60の他端は上記の第1収納空間に設けられている。接続端子60は導電バスバー30における基部51によって被覆された部位(狭窄部31a)とx方向で離れている。x方向において接続端子60の他端は下壁53d側に位置する。狭窄部31aは上壁53c側に位置する。接続端子60と狭窄部31aそれぞれのセンサ筐体50にインサート成形された部位の間に、基部51を構成する絶縁性の樹脂材料が位置している。
【0177】
上記したように導電バスバー30にはバッテリ200を入出力する直流電流が流れる。そして接続端子60には、配線基板20と電池ECU801との間で、直流電流よりも電流量の少ない電気信号が流れる。この導電バスバー30と接続端子60との沿面距離が近いと、両者が導通してショートする虞がある。
【0178】
このような不具合が生じることを抑制するためのリブ52aが絶縁部52に形成されている。リブ52aは絶縁部52からz方向に突起している。そしてリブ52aはx方向に延びている。リブ52aのx方向の長さは第1露出部32および第2露出部33それぞれのx方向の長さよりも長くなっている。
【0179】
リブ52aは絶縁部52の外に位置する導電バスバー30の第1露出部32および第2露出部33と、接続端子60の上端面51eから外に露出された他端との間に位置する。このリブ52aにより、センサ筐体50の表面における導電バスバー30と接続端子60との沿面距離が長くなっている。これにより導電バスバー30と接続端子60とのショートが抑制されている。
【0180】
またリブ52aは第1露出部32および第2露出部33と、第1シールド41および第2シールド42との間に位置する。これにより導電バスバー30とシールド40とのショートも抑制されている。
【0181】
リブ52aによる沿面距離の延長によって、絶縁部52のy方向の長さを短くすることができる。絶縁部52のy方向の長さをおよそ85%短くすることができる。これにより第1電流センサ11の体格の増大が抑制される。
【0182】
<センサ筐体に対する配線基板の固定形態>
図11の(a)欄および
図12の(a)欄に示すように、基部51の上端面51eには、z方向に局所的に延びる基板支持ピン56aと基板接着ピン56bが形成されている。これら基板支持ピン56aと基板接着ピン56bは上端面51eに複数形成されている。
図12の(a)欄はセンサ筐体の斜視図を示している。
図12の(b)欄は配線基板の設けられたセンサ筐体の斜視図を示している。
図12ではこれらピンを説明するために、一部の符号の付与を略している。
【0183】
複数の基板支持ピン56aそれぞれはz方向に面する先端面56cを有する。これら複数の先端面56cのz方向の位置が相等しくなっている。同様にして、複数の基板接着ピン56bそれぞれはz方向に面する先端面56dを有する。これら複数の先端面56dのz方向の位置が相等しくなっている。
【0184】
図13に示すように基板支持ピン56aの先端面56cと上端面51eとの間のz方向の長さはL1となっている。基板接着ピン56bの先端面56dと上端面51eとの間のz方向の長さはL2となっている。図面に明示するように、長さL1は長さL2よりも長くなっている。
【0185】
そのために基板支持ピン56aの先端面56cは、基板接着ピン56bの先端面56dよりも上端面51eからz方向に離れている。この基板支持ピン56aの先端面56cに対向面20aが接触する態様で、配線基板20はセンサ筐体50に搭載される。基板支持ピン56aが基板支持部に相当する。先端面56cが支持面に相当する。
【0186】
基板支持ピン56aの先端面56cに搭載されている状態において、配線基板20の対向面20aと基板接着ピン56bの先端面56dはz方向で離れている。この配線基板20と基板接着ピン56bとの間に、両者を接着固定する基板接着剤56eが設けられる。基板接着ピン56bが基板接着部に相当する。先端面56dが搭載面に相当する。
【0187】
基板接着剤56eによって配線基板20とセンサ筐体50とを接着固定する際、基板接着剤56eの温度は第1電流センサ11の設けられる環境温度よりも高めに設定される。この際の基板接着剤56eの温度は例えば150℃程度に設定することができる。この温度において基板接着剤56eは流動性を有している。基板接着剤56eとしてはシリコン系接着剤を採用することができる。
【0188】
基板接着ピン56bの先端面56dに150℃程度の流動性を有する基板接着剤56eを塗布する。そして配線基板20の対向面20aに基板支持ピン56aの先端面56cと基板接着剤56eそれぞれが接触するように、配線基板20をセンサ筐体50に設ける。この後に基板接着剤56eを室温まで降温して固化する。
【0189】
これにより基板接着剤56eには、第1電流センサ11の設けられる環境温度において、自身の中心へと凝縮する残留応力が発生する。この残留応力により、配線基板20と基板接着ピン56bとが互いに近づく状態となる。配線基板20の対向面20aと基板支持ピン56aの先端面56cとの接触状態が維持される。
【0190】
この結果、配線基板20のセンサ筐体50に対する位置ずれが、接着固定時に流動性を有する基板接着剤56eの形状バラツキに依存しなくなる。配線基板20のセンサ筐体50に対する位置ずれがセンサ筐体50の製造誤差になる。さらに言い換えれば、配線基板20のセンサ筐体50にインサート成形された導電バスバー30に対する位置ずれがセンサ筐体50の製造誤差になる。
【0191】
本実施形態では3つの基板支持ピン56aが上端面51eに形成されている。これら3つの基板支持ピン56aのうちの2つがy方向に離間して並んでいる。残り1つの基板支持ピン56aがy方向に並ぶ2つの基板支持ピン56aの間の中点からx方向に離間している。3つの基板支持ピン56aの先端面56cは二等辺三角形の頂点を成している。y方向に並ぶ2つの基板支持ピン56aと残り1つの基板支持ピン56aとの間に導電バスバー30の狭窄部31aが位置する。
【0192】
本実施形態では3つの基板接着ピン56bが上端面51eに形成されている。これら3つの基板接着ピン56bのうちの2つがy方向に離間して並んでいる。残り1つの基板接着ピン56bがy方向に並ぶ2つの基板支持ピン56aの間の中点からx方向に離間している。3つの基板接着ピン56bの先端面56dは二等辺三角形の頂点を成している。
【0193】
y方向に並ぶ2つの基板支持ピン56aの間で複数の接続端子60の他端が並んでいる。残り1つの基板支持ピン56aはy方向に並ぶ2つの基板接着ピン56bの間の中点に位置している。したがってこの残り1つの基板支持ピン56aはx方向において残り1つの基板接着ピン56bと並んでいる。そして狭窄部31aの中心点CPはx方向においてこれら残り1つの基板支持ピン56aと残り1つの基板接着ピン56bとの間に位置している。
【0194】
以上に示した構成により、3つの基板支持ピン56aの先端面56cを結んで成る二等辺三角形と、3つの基板接着ピン56bの先端面56dを結んで成る二等辺三角形とはz方向で重なっている。そしてこれら2つの二等辺三角形のz方向で重なる領域に狭窄部31aの中心点CPが位置している。
【0195】
配線基板20は、これら2つの二等辺三角形それぞれとz方向で対向する態様でセンサ筐体50に設けられる。この配線基板20における2つの二等辺三角形と対向する部位は、基板支持ピン56aとの接触、および、基板接着剤56eを介した基板接着ピン56bとの連結のため、2つの二等辺三角形と対向しない部位よりも、センサ筐体50との接続が安定化している。この配線基板20におけるセンサ筐体50との接続が安定化している部位に、第1センシング部21と第2センシング部22が搭載されている。
【0196】
配線基板20が基板支持ピン56aに搭載され、基板接着剤56eを介して基板接着ピン56bに固定されている状態において、配線基板20の対向面20aと基部51の上端面51eとがz方向に離間して対向している。製造誤差などが全くない場合、対向面20aと上端面51eとの離間距離は全面にわたって一定で、両者は平行の関係となっている。
【0197】
上記したように基部51には導電バスバー30の狭窄部31aがインサート成形されている。製造誤差などが全くない場合、狭窄部31aの表面30aと基部51の上端面51eとの間の離間距離も全面にわたって一定で、両者は平行の関係となっている。
【0198】
以上に示した平行の関係により、製造誤差などが全くない場合、配線基板20の対向面20aと狭窄部31aの表面30aとの離間距離も全面にわたって一定で、両者は平行の関係となっている。
【0199】
ところで、上記したように配線基板20は樹脂層と金属層がz方向に複数積層されて成る。そのために配線基板20のz方向の厚みの製造誤差は大きくなっている。配線基板20のz方向の厚みの製造誤差は、導電バスバー30のセンサ筐体50へのインサート成形によるz方向の位置の製造誤差、および、センサ筐体50に対する配線基板20のz方向の配置誤差の2倍程度となっている。
【0200】
これに対して、上記したように配線基板20における導電バスバー30との対向面20aに第1センシング部21と第2センシング部22が設けられている。したがって第1センシング部21と第2センシング部22それぞれの導電バスバー30とのz方向の離間距離が、配線基板20のz方向の厚みに依存しなくなっている。配線基板20のz方向の厚みの製造誤差によって、第1センシング部21と第2センシング部22それぞれと導電バスバー30とのz方向の離間距離が変動することが抑制されている。
【0201】
なお、基板支持ピン56aと基板接着ピン56bの数としては3つに限定されない。基板支持ピン56aの数としては4つ以上を採用することもできる。基板接着ピン56bの数としては、1つ、2つ、若しくは、4つ以上を採用することもできる。
【0202】
また、基板支持ピン56aと基板接着ピン56bそれぞれの数が3つ以上の場合、3つ以上の基板支持ピン56aの先端面56cを結んで成る多角形と、3つ以上の基板接着ピン56bの先端面56dを結んで成る多角形とがz方向で重なる構成がよい。この構成において、配線基板20における2つの多角形とz方向で対向する領域に第1センシング部21と第2センシング部22を搭載するとよい。これにより第1センシング部21と第2センシング部22それぞれのセンサ筐体50に対する位置ずれが抑制される。
【0203】
基板支持ピン56a、および、基板接着ピン56bと名称したように、これらがz方向に延びる柱状である例を示した。しかしながらこれらの形状は柱状に限定されない。基板支持ピン56aの先端面56cが基板接着ピン56bの先端面56dよりも上端面51eから離れていればよく、その形状は特に限定されない。
【0204】
<センサ筐体に対する第1シールドの固定形態>
図11の(a)欄および
図14の(a)欄に示すように、基部51の上端面51eには、z方向に局所的に延びるシールド支持ピン57aとシールド接着ピン57bが形成されている。これらシールド支持ピン57aとシールド接着ピン57bは上端面51eに複数形成されている。
図14の(a)欄は配線基板の設けられたセンサ筐体の斜視図を示している。
図14の(b)欄は配線基板とシールドの設けられたセンサ筐体の斜視図を示している。
図14ではこれらピンを説明するために、一部の符号の付与を略している。
【0205】
複数のシールド支持ピン57aそれぞれはz方向に面する先端面57cを有する。これら複数の先端面57cのz方向の位置が相等しくなっている。同様にして、複数のシールド接着ピン57bそれぞれはz方向に面する先端面57dを有する。これら複数の先端面57dのz方向の位置が相等しくなっている。
【0206】
図15に示すようにシールド支持ピン57aとシールド接着ピン57bそれぞれは、基板支持ピン56aよりもz方向の長さが長くなっている。より詳しく言えば、シールド支持ピン57aとシールド接着ピン57bそれぞれは、基板支持ピン56aよりもz方向の長さが配線基板20のz方向の厚さ以上長くなっている。そのため、上記したようにセンサ筐体50に配線基板20が搭載された状態において、シールド支持ピン57aの先端面57cとシールド接着ピン57bの先端面57dそれぞれは配線基板20の背面20bよりも上端面51eからz方向に離れている。なお、シールド接着ピン57bと基板支持ピン56aとのz方向の長さの相違が、配線基板20のz方向の厚さよりも短い構成を採用することもできる。
【0207】
図15に示すようにシールド支持ピン57aの先端面57cと上端面51eとの間のz方向の長さはL3となっている。シールド接着ピン57bの先端面57dと上端面51eとの間のz方向の長さはL4となっている。図面に明示するように、長さL3は長さL4よりも長くなっている。
【0208】
そのためにシールド支持ピン57aの先端面57cは、シールド接着ピン57bの先端面57dよりも上端面51eからz方向に離れている。このシールド支持ピン57aの先端面57cに一面41aが接触する態様で、第1シールド41はセンサ筐体50に搭載される。シールド支持ピン57aがシールド支持部に相当する。先端面57cが接触面に相当する。
【0209】
シールド支持ピン57aの先端面57cに搭載されている状態において、第1シールド41の一面41aとシールド接着ピン57bの先端面57dはz方向で離れている。この第1シールド41とシールド接着ピン57bとの間に、両者を接着固定する基板接着剤56eが設けられる。シールド接着ピン57bがシールド接着部に相当する。先端面57dが設置面に相当する。
【0210】
シールド接着剤57eによって第1シールド41とセンサ筐体50とを接着固定する際、シールド接着剤57eの温度は第1電流センサ11の設けられる環境温度よりも高めに設定される。この際のシールド接着剤57eの温度も例えば150℃程度に設定することができる。この温度においてシールド接着剤57eは流動性を有している。シールド接着剤57eとしてはシリコン系接着剤を採用することができる。
【0211】
シールド接着ピン57bの先端面57dに150℃程度の流動性を有するシールド接着剤57eを塗布する。そして第1シールド41の一面41aにシールド支持ピン57aの先端面57cとシールド接着剤57eそれぞれが接触するように、第1シールド41をセンサ筐体50に設ける。この後にシールド接着剤57eを室温まで降温して固化する。
【0212】
これによりシールド接着剤57eには、第1電流センサ11の設けられる環境温度において、自身の中心へと凝縮する残留応力が発生する。この残留応力により、第1シールド41とシールド接着ピン57bとが互いに近づく状態となる。第1シールド41の一面41aとシールド支持ピン57aの先端面57cとの接触状態が維持される。
【0213】
この結果、第1シールド41のセンサ筐体50に対する位置ずれが、接着固定時に流動性を有するシールド接着剤57eの形状バラツキに依存しなくなる。第1シールド41のセンサ筐体50に対する位置ずれがセンサ筐体50の製造誤差になる。さらに言い換えれば、第1シールド41のセンサ筐体50に固定された配線基板20に対する位置ずれがセンサ筐体50の製造誤差になる。
【0214】
本実施形態では3つのシールド支持ピン57aが上端面51eに形成されている。これら3つのシールド支持ピン57aのうちの1つが左壁53aと一体的に連結されている。残り2つのシールド支持ピン57aのうちの1つが右壁53bと一体的に連結されている。残り1つのシールド支持ピン57aが上壁53cと一体的に連結されている。これにより3つのシールド支持ピン57aの先端面57cは三角形の頂点を成している。
【0215】
左壁53aと一体的に連結されたシールド支持ピン57aと、右壁53bと一体的に連結されたシールド支持ピン57aはy方向で並んでいる。これら2つのシールド支持ピン57aの間と、上壁53cと一体的に連結されたシールド支持ピン57aとがx方向で離間している。これら3つのシールド支持ピン57aの先端面57cを結んで成る三角形の領域に配線基板20の第1センシング部21と第2センシング部22が位置している。
【0216】
本実施形態では3つのシールド接着ピン57bが上端面51eに形成されている。これら3つのシールド接着ピン57bのうちの1つが左壁53aと一体的に連結されている。残り2つのシールド接着ピン57bのうちの1つが右壁53bと一体的に連結されている。残り1つのシールド接着ピン57bが上壁53cと一体的に連結されている。これにより3つのシールド接着ピン57bの先端面57dは三角形の頂点を成している。
【0217】
左壁53aと一体的に連結されたシールド接着ピン57bと、右壁53bと一体的に連結されたシールド接着ピン57bはy方向で並んでいる。これら2つのシールド接着ピン57bの間と、上壁53cと一体的に連結されたシールド接着ピン57bとがx方向で離間している。これら3つのシールド接着ピン57bの先端面57dを結んで成る三角形の領域と、第1センシング部21と第2センシング部22がz方向で並んでいる。
【0218】
また左壁53aと右壁53bそれぞれにおいて1つのシールド支持ピン57aと1つのシールド接着ピン57bが並んでいる。上壁53cにおいて1つのシールド支持ピン57aと1つのシールド接着ピン57bが並んでいる。3つのシールド支持ピン57aの先端面57cを結んで成る三角形と、3つのシールド接着ピン57bの先端面57dを結んで成る三角形とがz方向で重なっている。そしてこれらz方向で重なる領域と狭窄部31aの中心点CPとがz方向で並んでいる。
【0219】
第1シールド41はこれら2つの三角形それぞれとz方向で対向する態様で、センサ筐体50に設けられる。この第1シールド41における2つの三角形と対向する部位は、シールド支持ピン57aとの接触、および、シールド接着剤57eを介したシールド接着ピン57bとの連結のため、2つの三角形と対向しない部位よりもセンサ筐体50との接続が安定化している。
【0220】
この第1シールド41におけるセンサ筐体50との接続が安定化している部位が、配線基板20の第1センシング部21と第2センシング部22それぞれとz方向で並んでいる。具体的に言えば、第1シールド41の第1中央部41dが第1センシング部21と第2センシング部22それぞれとz方向で並んでいる。
【0221】
第1シールド41がシールド支持ピン57aに搭載され、シールド接着剤57eを介してシールド接着ピン57bに固定されている状態において、第1シールド41の一面41aと配線基板20の背面20bとがz方向に離間して対向している。製造誤差などが全くない場合、一面41aと背面20bとの離間距離は全面にわたって一定で、両者は平行の関係となっている。したがって配線基板20の対向面20aと、第1シールド41の一面41aとの離間距離も全面にわたって一定で、両者は平行の関係となっている。
【0222】
なお、
図6および
図14の(a)欄に示すように、配線基板20の端には、上記のシールド支持ピン57aとシールド接着ピン57bそれぞれを配線基板20の上方に通すための切欠き20gが形成されている。そして配線基板20には接続端子60の他端を通すための複数の貫通孔20hが形成されている。
【0223】
図6に示すように複数の貫通孔20hはy方向に並んでいる。配線基板20におけるこれら複数の貫通孔20hの形成された部位と、第1センシング部21と第2センシング部22の搭載される部位とは、x方向に並んでいる。配線基板20におけるこれらx方向に並ぶ2つの部位の間には、配線基板20をセンサ筐体50に設ける際に、配線基板20のセンサ筐体50に対するx方向の位置をガイドするための第1切欠き20iが形成されている。また配線基板20における第1センシング部21と第2センシング部22の搭載される部位には、配線基板20をセンサ筐体50に設ける際に、配線基板20のセンサ筐体50に対するy方向の位置をガイドするための第2切欠き20jが形成されている。
【0224】
これに対応して、センサ筐体50の左壁53aと右壁53bそれぞれには、
図11の(a)欄および
図12の(b)欄に示すように、第1切欠き20iに挿入される第1凸部53eが形成されている。左壁53aと右壁53bそれぞれには、第2切欠き20jとy方向で対向配置される第2凸部53fが形成されている。第1切欠き20iと第1凸部53eは相似形状を成してy方向に延びている。第2切欠き20jと第2凸部53fは相似形状を成してx方向に延びている。
【0225】
上記したシールド支持ピン57aとシールド接着ピン57bの数としては上記例に限定されない。シールド支持ピン57aの数としては4つ以上を採用することができる。シールド接着ピン57bの数としては、1つ、2つ、若しくは、4つ以上を採用することができる。
【0226】
シールド支持ピン57aとシールド接着ピン57bそれぞれの数が3つ以上の場合、3つ以上のシールド支持ピン57aの先端面57cを結んで成る多角形と、3つ以上のシールド接着ピン57bの先端面57dを結んで成る多角形とがz方向で重なる構成がよい。この構成において、第1シールド41における2つの多角形とz方向で対向する領域が、配線基板20の第1センシング部21と第2センシング部22それぞれとz方向で並ぶとよい。これにより第1シールド41の第1センシング部21と第2センシング部22それぞれに対する位置ずれが抑制される。
【0227】
シールド支持ピン57a、および、シールド接着ピン57bと名称したように、これらがz方向に延びる柱状である例を示した。しかしながらこれらの形状は柱状に限定されない。シールド支持ピン57aの先端面57cがシールド接着ピン57bの先端面57dよりも上端面51eから離れていればよく、その形状は特に限定されない。
【0228】
<センサ筐体に対する第2シールドの固定形態>
図11の(b)欄および
図15に示すように、基部51の下端面51fにも複数のシールド支持ピン57aが形成されている。
【0229】
第1シールド41とは異なり、センサ筐体50と第2シールド42との間に配線基板20が設けられていない。そのために下端面51fに形成されたシールド支持ピン57aは、上端面51eに形成されたシールド支持ピン57aよりもz方向の長さが短くなっている。z方向における複数の基板支持ピン56aそれぞれの先端の位置が相等しくなっている。このシールド支持ピン57aの先端面57cに一面42aが接触する態様で、第2シールド42はセンサ筐体50に搭載される。
【0230】
シールド支持ピン57aの先端面57cに搭載されている状態において、第2シールド42の一面42aは下端面51fとz方向で離れている。この第2シールド42と下端面51fとの間にシールド接着剤57eが設けられる。
【0231】
シールド接着剤57eによって第2シールド42とセンサ筐体50とを接着固定する際、このシールド接着剤57eの温度も第1電流センサ11の設けられる環境温度よりも高めに設定される。
【0232】
下端面51fに流動性を有するシールド接着剤57eを塗布する。そして第2シールド42の一面42aにシールド支持ピン57aの先端面57cとシールド接着剤57eそれぞれが接触するように、第2シールド42をセンサ筐体50に設ける。この後にシールド接着剤57eを室温まで降温して固化する。
【0233】
これにより下端面51fに設けられたシールド接着剤57eにも、第1電流センサ11の設けられる環境温度において、自身の中心へと凝縮する残留応力が発生する。この残留応力により、第2シールド42とシールド接着ピン57bとが互いに近づく状態となる。第2シールド42の一面42aとシールド支持ピン57aの先端面57cとの接触状態が維持される。
【0234】
この結果、第2シールド42のセンサ筐体50に対する位置ずれが、接着固定時に流動性を有するシールド接着剤57eの形状バラツキに依存しなくなる。第2シールド42のセンサ筐体50に対する位置ずれがセンサ筐体50の製造誤差になる。さらに言いかえれば、第2シールド42のセンサ筐体50に固定された配線基板20に対する位置ずれがセンサ筐体50の製造誤差になる。
【0235】
本実施形態では4つのシールド支持ピン57aが下端面51fに形成されている。4つのシールド支持ピン57aの先端面57cは四角形の頂点を成している。これら4つのシールド支持ピン57aの先端面57cを結んで成る四角形と狭窄部31aの中心点CPとがz方向で並んでいる。シールド接着剤57eは下端面51fにおけるこの四角形と対向する領域に塗布される。
【0236】
第2シールド42は上記の四角形とz方向で対向する態様で、センサ筐体50に設けられる。この第2シールド42における四角形と対向する部位は、シールド支持ピン57aとの接触、および、シールド接着剤57eを介した下端面51fとの連結のため、四角形と対向しない部位よりも、センサ筐体50との接続が安定化している。
【0237】
この第2シールド42におけるセンサ筐体50との接続が安定化している部位が、配線基板20の第1センシング部21と第2センシング部22それぞれとz方向で並んでいる。具体的に言えば、第2シールド42の第2中央部42dが第1センシング部21と第2センシング部22それぞれとz方向で並んでいる。
【0238】
なお、下端面51fに形成されるシールド支持ピン57aの数としては4つに限定されない。シールド支持ピン57aの数としては3つ以上であれば適宜採用することができる。
【0239】
シールド支持ピン57aの数が3つ以上の場合、第2シールド42におけるこれら3つ以上のシールド支持ピン57aの先端面57cを結んで成る多角形とz方向で対向する領域が、第1センシング部21と第2センシング部22それぞれとz方向で並ぶとよい。これにより第2シールド42の第1センシング部21と第2センシング部22それぞれに対する位置ずれが抑制される。
【0240】
上記したように、第2シールド42のx方向で並ぶ2つの端辺42fそれぞれには、z方向に延びる延設部42cが形成されている。下端面51fには、この延設部42cを設けるための2つの溝部51gが形成されている。
【0241】
図11の(b)欄、および、
図13に示すように2つの溝部51gは上壁54cと下壁54dとの間でx方向に並んでいる。2つの溝部51gはそれぞれ下端面51fから上端面51eに向かってz方向に形成されている。2つの溝部51gのうちの一方の一部が上壁54cによって構成されている。残り1つの溝部51gの一部が下壁54dによって構成されている。これら2つの溝部51gの間に被覆部31が位置する。したがって第2シールド42の2つの延設部42cの間に被覆部31が位置する。
【0242】
<支持ピンと接着ピンの長さ>
基部51の上端面51eは、上記の第1凸部53eをy方向における境として、x方向に並ぶ接続端子60の他端の露出される部位と狭窄部31aを被覆する部位とに区分けすることができる。この上端面51eにおける接続端子60の他端の露出される部位は、狭窄部31aを被覆する部位よりも、z方向において下端面51f側に位置している。したがって上端面51eにおける接続端子60の他端の露出される部位と配線基板20の対向面20aとのz方向の離間距離は、上端面51eにおける狭窄部31aを被覆する部位と配線基板20の対向面20aとのz方向の離間距離よりも長くなっている。これは、配線基板20の貫通孔20hに接続端子60の他端を挿入するための距離を確保するためである。
【0243】
このように上端面51eにおける接続端子60の他端の露出される部位と狭窄部31aを被覆する部位のz方向の位置が異なっている。これら2つの部位それぞれに基板支持ピン56aが形成されている。このように形成される上端面51eのz方向の位置が異なるにも関わらずに、本実施形態では複数の基板支持ピン56aそれぞれの先端面56cのz方向の位置が同一となっている。そのために複数の基板支持ピン56aのz方向の長さは異なっている。
【0244】
複数の基板支持ピン56aのz方向の長さは、一律に
図13に示す長さL1とはなっていない。この長さL1は、上端面51eにおける狭窄部31aを被覆する部位に形成された基板支持ピン56aのz方向の長さを示している。上端面51eにおける接続端子60の他端の露出される部位に形成された基板支持ピン56aのz方向の長さは、長さL1よりも、上記の2つに区分けられる上端面51eのz方向の位置の相違分だけ長くなっている。
【0245】
以上に示したように、形成される面のz方向の位置に応じて支持ピンのz方向の長さが相違してもよい。複数の基板支持ピン56aそれぞれの先端面56cのz方向の位置が同一であればよい。これは、複数のシールド支持ピン57aについても同様である。
【0246】
なお、センサ筐体50に配線基板20を搭載する際、基板接着ピン56bの先端面56dに流動性の基板接着剤56eが塗布される。基板接着剤56eはその流動性のためにz方向の形状が可変である。そのために複数の基板接着ピン56bそれぞれの先端面56dのz方向の位置は異なっていてもよい。これは、複数のシールド接着ピン57bについても同様である。
【0247】
<第2電流センサと第3電流センサ>
次に、第2電流センサ12を詳説する。なお第2電流センサ12と第3電流センサ13は実質的に構成が同一である。そのために第3電流センサ13の説明を省略する。
【0248】
また第2電流センサ12は第1電流センサ11と共通の構成要素を有する。したがって以下においては第1電流センサ11と同一の点についてはその説明を省略し、主として異なる点を説明する。
【0249】
上記したように第2電流センサ12は第1通電バスバー341と第2通電バスバー342に設けられる。これら第1通電バスバー341と第2通電バスバー342それぞれの電流を検出するために、第2電流センサ12は第1電流センサ11と同等の機能を有する2つの個別センサ71を有する。また第2電流センサ12はこれら2つの個別センサ71を収納する配線ケース72を有する。
【0250】
2つの個別センサ71のうちの一方によって第1通電バスバー341を流れる交流電流から発生される磁界が検出される。2つの個別センサ71のうちの他方によって第2通電バスバー342を流れる交流電流から発生される磁界が検出される。
【0251】
図16に2つの個別センサ71を示す。このように2つの個別センサ71は同一の形状を成している。この個別センサ71と第1電流センサ11との構造上の相違は、導電バスバー30における通電バスバーとの連結部位、および、接続端子60を被覆するコネクタ部55の形状などである。すなわち、導電バスバー30の第1露出部32と第2露出部33の形状、および、囲み部55cの消失などである。
【0252】
このように個別センサ71と第1電流センサ11とに構造上の相違が生じるのは、両者の接続対象が異なるからである。第1電流センサ11はコンバータ310の通電バスバー307に接続されるからである。第2電流センサ12は第1インバータ320の第1通電バスバー341と第2通電バスバー342に接続されるからである。ただし、個別センサ71と第1電流センサ11の内部構造は同一である。したがって個別センサ71は第1電流センサ11と同等の作用効果を奏するようになっている。
【0253】
複数の個別センサ71は
図17に示す配線ケース72に収納される。
図18に示すように複数の個別センサが一括して配線ケース72に収納可能となっている。
図19に示すように複数の個別センサが配線ケース72に収納されることで第2電流センサ12が構成されている。
【0254】
なお、この配置構成の場合、個別センサ71それぞれの第1シールド41と第2シールド42はx方向に交互に並ぶ。個別センサ71の有する磁電変換部25の磁界の検知方向はz方向とy方向になる。
【0255】
また、これまでに示した
図17~
図19、および、以下に示す図面に示す配線ケース72それぞれには6個の個別センサ71が収納されている。この配線ケース72に収納される個別センサ71の数は一例に過ぎない。配線ケース72は少なくとも2つの個別センサ71を収納可能であればよい。
【0256】
また、第2電流センサ12の有する配線ケース72に、他の車載機器の電流を検出する電流センサが収納されてもよい。さらに言えば、第2電流センサ12と第3電流センサ13とが共通の配線ケース72を有し、この共通の配線ケース72に、第2電流センサ12と第3電流センサ13それぞれの有する個別センサ71が収納される構成を採用することもできる。
【0257】
<配線ケース>
図17に示すように配線ケース72は、統合筐体73、端子筐体74、および、通電端子75を有する。統合筐体73と端子筐体74は絶縁性の樹脂材料から成る。統合筐体73と端子筐体74は一体的に連結されている。
図18および
図19に示すように統合筐体73に複数の個別センサ71が収納される。したがって統合筐体73は個別センサ71のセンサ筐体50よりも体格が大きくなっている。端子筐体74に複数の通電端子75がインサート成形されている。
図20~
図23に示すように複数の通電端子75それぞれの一端と他端が端子筐体74の外に露出されている。
【0258】
図20の(a)欄は配線ケースの背面図を示している。
図20の(b)欄は配線ケースの上面図を示している。
図20の(c)欄は配線ケースの下面図を示している。
図21の(a)欄は配線ケースの左側面図を示している。
図21の(b)欄は配線ケースの上面図を示している。
図21の(c)欄は配線ケースの右側面図を示している。なお、
図20の(b)欄と
図21の(b)欄には同一の図面を示している。
【0259】
図22の(a)欄は第2電流センサの正面図を示している。
図22の(b)欄は第2電流センサの上面図を示している。
図22の(c)欄は第2電流センサの下面図を示している。
図23の(a)欄は第2電流センサの側面図を示している。
図23の(b)欄は第2電流センサの上面図を示している。なお、
図22の(b)欄と
図23の(b)欄には同一の図面を示している。
【0260】
図20および
図22それぞれの(c)欄に示すように配線ケース72は統合配線基板76を有する。この統合配線基板76に個別センサ71の接続端子60の一端が接続される。統合配線基板76に通電端子75の一端が接続される。これにより統合配線基板76の配線パターンを介して個別センサ71と通電端子75とが電気的に接続される。通電端子75の他端がワイヤハーネスなどを介してMGECU802と電気的に接続される。以上により、個別センサ71の出力が統合配線基板76、通電端子75、および、ワイヤハーネスを介してMGECU802に入力される。統合配線基板76と通電端子75が入出力配線に相当する。
【0261】
上記したように第2電流センサ12は第1通電バスバー341と第2通電バスバー342に設けられる。これら通電バスバーは第1インバータ320側と第1モータ400側とで分断されている。通電バスバーは第1インバータ320と第2電流センサ12とを接続する部位と、第2電流センサ12と第1モータ400とを接続する部位と、を有する。
【0262】
本実施形態の通電バスバーにおける第1インバータ320と第2電流センサ12とを接続する部位は金属材料から成る導電プレートである。通電バスバーにおける第2電流センサ12と第1モータ400とを接続する部位はワイヤーである。以下においては、通電バスバーにおける第1インバータ320と第2電流センサ12とを接続する部位を単に導電プレートと示す。通電バスバーにおける第2電流センサ12と第1モータ400とを接続する部位を単にワイヤーと示す。
【0263】
なお、通電バスバーの形態は、インバータとモータそれぞれの形状、および、これらの車載への搭載形態などに応じて適宜変更可能である。したがって通電バスバーの具体的な形態は上記例に限定されない。これら通電バスバーの形態に応じて、配線ケース72や個別センサ71の導電バスバー30それぞれの形態は適宜変更可能である。特に個別センサ71の導電バスバー30の形態に対しては、第1露出部32と第2露出部33それぞれの形状を変えるだけで対応可能である。そのために個別センサ71の内部形状は変更不要である。これにより個別センサ71の製造ラインを変更しなくともよくなっている。
【0264】
図20および
図21に示すように統合筐体73は底壁77と周壁78を有する。底壁77はz方向に面している。底壁77の平面形状はx方向を長手方向とする矩形を成している。
【0265】
周壁78は底壁77のz方向に面する内底面77aからz方向に起立している。周壁78はx方向に並ぶ左壁78aと右壁78bを有する。周壁78はy方向に並ぶ上壁78cと下壁78dを有する。z方向まわりの周方向で左壁78a、上壁78c、右壁78b、および、下壁78dが順に連結されている。これにより周壁78はz方向に開口する筒形状を成している。底壁77と周壁78とによって構成される収納空間に、複数の個別センサ71が収納可能となっている。
【0266】
図18に示すように個別センサ71は統合筐体73の収納空間にz方向から挿入される。そして
図19に示すように収納空間において複数の個別センサ71はx方向に並んで設けられる。
【0267】
複数の個別センサ71は第1電流センサ11と同様にして第1シールド41と第2シールド42を有する。これら第1シールド41と第2シールド42それぞれはx方向で離間して対向している。したがって収納空間において、複数の個別センサの有する第1シールド41と第2シールド42とが交互に並んでいる。
【0268】
図16に示すように個別センサ71のセンサ筐体50からは、第1露出部32と第2露出部33がy方向に延びている。統合筐体73の上壁78cには、個別センサ71のセンサ筐体50を収納空間に収納しつつ、第1露出部32の先端を収納空間の外に配置するためのスリット78eが形成されている。スリット78eは上壁78cの先端面から底壁77に向かって、z方向に沿って形成されている。
【0269】
個別センサ71が統合筐体73に収納されている状態において、個別センサ71の第1露出部32の先端がスリット78eを介して収納空間の外に位置している。この第1露出部32の先端が上記の導電プレートとレーザ溶接などによって電気的に接続される。
【0270】
また統合筐体73の底壁77には導電端子79がインサート成形されている。
図20および
図21それぞれの(b)欄に示すように導電端子79の一部は底壁77の内底面77aから露出されている。
【0271】
個別センサ71が統合筐体73に収納されている状態において、個別センサ71の第2露出部33が導電端子79における内底面77aから露出された部位と対向配置される。この第2露出部33と導電端子79とがレーザ溶接などによって電気的に接続される。
【0272】
また統合筐体73は複数の導電端子79を支持するための端子台80を有する。端子台80は下壁78dの底壁77側に一体的に形成されている。端子台80はx方向に延びる直方体形状を成している。複数の導電端子79はこの端子台80にもインサート成形されている。複数の導電端子79の一部がこの端子台80から露出されている。導電端子79における端子台80から露出した部位は端子台80から離れるようにz方向に延びている。導電端子79における端子台80から露出した部位は下壁78dとy方向で対向している。複数の導電端子79における端子台80から露出した部位はx方向に離間して並んでいる。
【0273】
この導電端子79における端子台80から露出された部位はy方向の厚さの薄い扁平形状を成している。導電端子79における端子台80から露出された部位はy方向に面する通電面79aとその裏面79bとを有する。導電端子79には通電面79aと裏面79bとをy方向に貫通するボルト孔79cが形成されている。
【0274】
また導電端子79の裏面79bにはy方向に開口するナット81が設けられている。このナット81の開口とボルト孔79cの開口とがy方向に並んでいる。
【0275】
導電端子79の通電面79aにワイヤーの端子が設けられる。このワイヤーの端子にもy方向に貫通するボルト孔が形成されている。導電端子79の通電面79aにワイヤーの端子におけるボルト孔の貫通する面を対向させる。この態様で両者のボルト孔に図示しないボルトの軸部を通す。そしてこのボルトの軸部の先端をナット81に締結する。ボルトの軸部の先端から頭部に向かうように、ナット81にボルトを締結する。ボルトの頭部とナット81とによって導電端子79とワイヤーの端子とを挟持する。これによりワイヤーの端子と導電端子79とを接触し、両者を電気的および機械的に接続する。以上により、個別センサ71の第2露出部33とワイヤーの端子とが導電端子79を介して電気的に接続される。
【0276】
個別センサ71のセンサ筐体50からは、接続端子60がz方向に延びている。統合筐体73の底壁77には、接続端子60の一端を収納空間の外に配置するための挿通孔が形成されている。この挿通孔は底壁77の内底面77aとその裏側の外底面77bとを貫通している。接続端子60の一端は挿通孔を介して外底面77bから離れる態様で収納空間の外に突出している。なお挿通孔は微小である。そのために挿通孔は図面に示されていない。
【0277】
端子筐体74は統合筐体73とx方向に並んでいる。端子筐体74は統合筐体73の左壁78aと一体的に連結されている。端子筐体74はz方向に延びている。端子筐体74はz方向に並ぶ上面74aと下面74bを有する。
【0278】
この端子筐体74にインサート成形される複数の通電端子75はz方向に延びている。通電端子75の一端が端子筐体74の下面74bから突出している。通電端子75の他端が端子筐体74の上面74aから突出している。
【0279】
図20の(a)欄および(c)欄に示すように統合筐体73の底壁77の外底面77bと端子筐体74の下面74bはx方向およびy方向において連続的に連なっている。この連続的に連なる外底面77bと下面74bに統合配線基板76が設けられる。
【0280】
統合配線基板76はz方向の厚さの薄い扁平形状を成している。統合配線基板76はz方向に面する載置面76aと裏面76bを有する。統合配線基板76は、載置面76aが外底面77bと下面74bそれぞれとz方向で対向する態様で統合筐体73と端子筐体74に固定されている。
【0281】
上記したように通電端子75の一端が下面74bから突出している。接続端子60の一端が外底面77bから突出している。これに対して統合配線基板76には通電端子75の一端の挿入される第1スルーホール76cが形成されている。統合配線基板76には接続端子60の一端の挿入される第2スルーホール76dが形成されている。これら第1スルーホール76cと第2スルーホール76dそれぞれは統合配線基板76の載置面76aと裏面76bとをz方向に貫通している。また統合配線基板76には第1スルーホール76cと第2スルーホール76dとを電気的に接続する配線パターンが形成されている。
【0282】
第1スルーホール76cに通電端子75の一端が挿入されるように、統合配線基板76を外底面77bと下面74bに設ける。そして第1スルーホール76cと通電端子75とをはんだなどを介して電気的に接続する。
【0283】
接続端子60の一端が底壁77の挿通孔と第2スルーホール76dに挿入されるように、個別センサ71を収納空間に設ける。そして第2スルーホール76dと接続端子60とをはんだなどを介して電気的に接続する。以上により、個別センサ71の接続端子60は、第2スルーホール76d、統合配線基板76の配線パターン、および、第1スルーホール76cを介して通電端子75と電気的に接続される。
【0284】
配線ケース72は車両に搭載するための複数のフランジ82を有する。これら複数のフランジ82それぞれには第2電流センサ12を車両にボルト止めするためのボルト孔82aが形成されている。
【0285】
本実施形態の配線ケース72は3つのフランジ82を有する。3つのフランジ82のうちの1つが底壁77の右壁78b側に形成されている。残り2つのフランジ82のうちの1つが端子筐体74の下壁78d側に形成されている。このフランジ82は端子台80と一体的に連結されている。残り1つのフランジ82が端子筐体74における統合筐体73との連結部位とは反対側に形成されている。
【0286】
以上により3つのフランジ82のうちの2つが統合筐体73と端子筐体74とを介してx方向に並んでいる。残り1つのフランジ82がx方向に並ぶ2つのフランジ82とy方向に離間している。このように3つのフランジ82は三角形の頂点を成している。
【0287】
上記したように接続端子60の一端が外底面77bから突出し、通電端子75の一端が下面74bから突出している。そして外底面77bと下面74bに統合配線基板76が設けられる。これら接続端子60の一端、通電端子75の一端、および、統合配線基板76それぞれの車両との接触を避けるために、3つのフランジ82それぞれはz方向に延びる脚部83を有する。この脚部83により、第2電流センサ12が車両に搭載されている状態において、接続端子60の一端、通電端子75の一端、および、統合配線基板76がz方向において車両と離間している。
【0288】
<電流センサの作用効果>
次に、本実施形態にかかる電流センサの作用効果を説明する。上記したように第1電流センサ11と、第2電流センサ12および第3電流センサ13の有する個別センサ71とは同等の構成を有している。そのために同等の作用効果を奏する。したがって、以下においては煩雑となることを避けるために第1電流センサ11と個別センサ71とを区別せずに、これらを単に電流センサと示す。以下に示す各種作用効果によって、被測定電流の検出精度の低下が抑制される。
【0289】
<シールドの磁気飽和>
上記したように第1シールド41の第1両端部41eは第1中央部41dよりもx方向の長さが短くなっている。そのために第1両端部41eには磁界が侵入しがたくなっている。第1両端部41eの有する2つの端部の一方から他方へと、第1中央部41dにおける第1両端部41eと直接連結されてy方向で並ぶ部位(並列部位)に磁界が透過することが抑制されている。この結果、第1中央部41dの並列部位の磁気飽和が抑制されている。第1中央部41dから電磁ノイズが漏れることが抑制されている。
【0290】
図24に、第1シールド41における磁界の透過によって磁気飽和しやすい領域を模式的にハッチングで示す。
図24の(a)欄は比較構成としての切欠きのない第1シールドに生じる磁気飽和を示す模式図である。
図24の(b)欄は本実施形態の第1シールド41の磁気飽和する領域を示す模式図である。
図24に示す太い実線矢印は導電バスバー30を流れる電流を示す。
【0291】
この模式図に示すように、切欠きのない第1シールドでは均等に磁気飽和しやすくなっている。これに対して切欠き41cの形成された第1シールド41では、第1中央部41dの並列部位以外の領域で磁気飽和が生じたとしても、並列部位で磁気飽和することが抑制されている。
【0292】
図25に、シールドを透過する磁界分布のシミュレーション結果を示す。
図25の(a)欄は
図24に示すXXVa-XXVa線に沿う断面の磁界分布を示している。
図25の(b)欄は
図24に示すXXVb-XXVb線に沿う断面の磁界分布を示している。
【0293】
ただし、
図25の(a)欄は第1シールド41と第2シールド42それぞれが矩形の場合のシミュレーション結果を示している。
図25の(b)欄は第1シールド41と第2シールド42それぞれに切欠き41cが形成されている場合のシミュレーション結果を示している。そして磁界の強度をハッチングの粗密で示している。ハッチングが粗いほどに磁界の強度が弱く、ハッチングが密であるほどに磁界の強度が高くなっている。
【0294】
このシミュレーション結果からも明らかなように、切欠き41cがない場合、第1シールドと第2シールドそれぞれの磁界分布は一様になる。そして第1シールドと第2シールドそれぞれの全体の磁界の強度が高くなる。これに対して、切欠き41cが形成されていると、第1シールドと第2シールドそれぞれの全体の磁界の強度が低くなる。特に、第1中央部41dと第2中央部42dそれぞれの並列部位の磁界分布の強度が低くなる。このために磁気飽和によって第1中央部41dと第2中央部42dから電磁ノイズが漏れることが抑制されている。
【0295】
なお
図25に示すように第1シールド41と第2シールド42それぞれの磁界分布の強度が相違している。この相違は、第1シールド41と第2シールド42それぞれの導電バスバー30との離間距離の相違に起因している。いずれの磁界分布も、並列部位では強度が低く、並列部位以外の領域では強度が高くなっている。
【0296】
この磁気飽和の抑制された第1中央部41dの並列部位と、配線基板20に搭載された第1センシング部21および第2センシング部22とがz方向で並んでいる。したがって、第1中央部41dの磁気飽和によって漏れた電磁ノイズが第1センシング部21と第2センシング部22の磁電変換部25に入力されることが抑制される。
【0297】
<シールドの位置ずれ>
第1シールド41はシールド支持ピン57aに搭載され、シールド接着剤57eを介してシールド接着ピン57bに固定されている。第2シールド42はシールド支持ピン57aに搭載され、シールド接着剤57eを介して基部51に固定されている。
【0298】
これにより第1シールド41と第2シールド42それぞれのセンサ筐体50に対する位置ずれが、接着固定時に流動性を有するシールド接着剤57eの形状バラツキに依存しなくなる。第1シールド41と第2シールド42それぞれのセンサ筐体50に対する位置ずれがセンサ筐体50の製造誤差になる。第1シールド41と第2シールド42それぞれのセンサ筐体50に固定された配線基板20に対する位置ずれの要因を、センサ筐体50の製造誤差にすることができる。この結果、第1シールド41および第2シールド42による電磁ノイズの磁電変換部25への入力抑制の低下が抑制される。
【0299】
第1シールド41および第2シールド42それぞれをセンサ筐体50に接着固定する際のシールド接着剤57eの温度は電流センサの設けられる環境温度よりも高めに設定される。このシールド接着剤57eは室温まで降温されて固化する。そのためにシールド接着剤57eには電流センサの設けられる環境温度において、自身の中心へと凝縮する残留応力が発生する。この残留応力により、第1シールド41とシールド支持ピン57aとの接触状態、および、第2シールド42とシールド支持ピン57aとの接触状態それぞれが維持される。
【0300】
これにより第1シールド41および第2シールド42それぞれのセンサ筐体50に対するz方向の変位が抑制される。換言すれば、第1シールド41と第2シールド42それぞれのセンサ筐体50に固定された配線基板20に対するz方向の変位が抑制される。これにより第1シールド41および第2シールド42による電磁ノイズの磁電変換部25への入力抑制の低下が抑制される。
【0301】
<配線基板の位置ずれ>
配線基板20は基板支持ピン56aに搭載され、基板接着剤56eを介して基板接着ピン56bに固定されている。
【0302】
これにより配線基板20のセンサ筐体50に対する位置ずれが、接着固定時に流動性を有する基板接着剤56eの形状バラツキに依存しなくなる。配線基板20のセンサ筐体50に対する位置ずれがセンサ筐体50の製造誤差になる。配線基板20のセンサ筐体50に固定された導電バスバー30に対する位置ずれの要因を、センサ筐体50の製造誤差にすることができる。この結果、配線基板20に搭載された磁電変換部25を透過する被測定磁界が変動することが抑制される。
【0303】
配線基板20をセンサ筐体50に接着固定する際の基板接着剤56eの温度は電流センサの設けられる環境温度よりも高めに設定される。基板接着剤56eは室温まで降温されて固化する。そのために基板接着剤56eには電流センサの設けられる環境温度において、自身の中心へと凝縮する残留応力が発生する。この残留応力により、配線基板20と基板支持ピン56aとの接触状態が維持される。
【0304】
これにより配線基板20のセンサ筐体50に対するz方向の変位が抑制される。換言すれば、配線基板20のセンサ筐体50に固定された導電バスバー30に対するz方向の変位が抑制される。これにより配線基板20に搭載された磁電変換部25を透過する被測定磁界が変動することが抑制される。
【0305】
<配線基板の製造誤差>
配線基板20における導電バスバー30との対向面20aに第1センシング部21と第2センシング部22が設けられている。これにより第1センシング部21と第2センシング部22それぞれの導電バスバー30とのz方向の離間距離が、配線基板20のz方向の厚みに依存しなくなっている。配線基板20のz方向の厚みの製造誤差によって、これらセンシング部と導電バスバー30とのz方向の離間距離が変動することが抑制されている。
【0306】
<配線ケースと個別センサの分離>
絶縁性の樹脂材料から成る筐体に導電バスバーが固定される場合、筐体の製造誤差やクリープなどの経年劣化によって導電バスバーは筐体に対して位置ずれを起こす。その位置ずれは、筐体の体格が大きいほどに大きくなる。
【0307】
これに対して、上記したように第2電流センサ12と第3電流センサ13は、電流センサ(個別センサ71)のセンサ筐体50よりも体格の大きい統合筐体73を有する。この統合筐体73に電流センサが収納される。そしてこの体格の大きい統合筐体73ではなく、センサ筐体50に導電バスバー30が固定されている。この導電バスバー30を流れる電流を磁電変換部25が検出する。
【0308】
これによれば、上記の筐体の製造誤差やクリープなどの経年劣化によって、導電バスバー30と磁電変換部25との相対的な位置ズレが生じることが抑制される。
【0309】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を
図26および
図27に基づいて説明する。以下に示す各実施形態にかかる電流センサは上記した実施形態によるものと共通点が多い。そのため以下においては共通部分の説明を省略し、異なる部分を重点的に説明する。また以下においては上記した実施形態で示した要素と同一の要素には同一の符号を付与する。
【0310】
<両端に延設部>
第1実施形態では、第2シールド42のx方向で並ぶ2つの端辺42fの第2中央部42d側それぞれにz方向に延びる延設部42cが形成された例を示した。これに対して本実施形態では、
図26に示すように第2シールド42の2つの端辺42fの第2両端部42e側それぞれに延設部42cが形成されている。
図26の(a)欄はシールド、磁電変換部、および、導電バスバーの配置を説明するための斜視図である。
図26の(b)欄はシールド、磁電変換部、および、導電バスバーの配置を説明するための側面図である。
【0311】
この構成により、第2シールド42に侵入した磁界は、第2両端部42e側に形成された延設部42cを介して第1シールド41へと透過しやすくなっている。この磁界の透過経路は、
図27に模式的に示すように第1シールド41では第1両端部41e側となる。同様にして、磁界の透過経路は第2シールド42の第2両端部42e側となる。
【0312】
なお、
図27に示す太い実線矢印は導電バスバー30を流れる電流を示す。実線矢印は第1シールド41を透過する磁界を示す。破線矢印は第2シールド42を透過する磁界を示す。丸の中心に点の付された記号は、z方向において、第2シールド42から第1シールド41へ向かう磁界を示す。丸の中にバツ印の付された記号は、z方向において、第1シールド41から第2シールド42へ向かう磁界を示す。
【0313】
したがって、第2シールド42に侵入した電磁ノイズは、第2中央部42dを介して第1シールド41へと流れがたくなる。同様にして、第1シールド41に侵入した電磁ノイズは、第1中央部41dを介して第2シールド42へと透過しがたくなる。
【0314】
そのために第2中央部42dと第1中央部41dそれぞれは磁気飽和しがたくなっている。この結果、第2中央部42dと第1中央部41dそれぞれから磁気飽和によって磁界が漏れることが抑制されている。
【0315】
また
図26の(b)欄に明示するように、第1センシング部21と第2センシング部22それぞれの磁電変換部25はy方向において2つの延設部42cの間に位置する。すなわち、磁電変換部25はz方向において第2中央部42dと第1中央部41dの間に位置する。したがって第2中央部42dと第1中央部41dそれぞれの磁気飽和によって漏れた磁界が磁電変換部25に入力されることが抑制される。この結果、被測定電流の検出精度の低下が抑制される。
【0316】
本実施形態では第2シールド42の2つの端辺42fの第2両端部42e側それぞれに延設部42cが形成される例を示した。しかしながら例えば
図28の(a)欄に示すように第2シールド42の2つの端辺42fの第2中央部42dにも延設部42cが形成された構成も採用することができる。ただし、この第2中央部42dに形成された延設部42cは、第2両端部42eに形成された延設部42cよりもz方向の長さが短くなっている。これにより、シールド40に侵入した磁界は中央部よりも端部を透過しやすくなる。
【0317】
また
図28の(b)欄に示すように、2つの端辺42fのうちの一方の第2両端部42e側に延設部42cが形成され、他方の第2両端部42eと第2中央部42dそれぞれに延設部42cが形成された構成を採用することもできる。ただし、2つの端辺42fのうちの他方の第2両端部42eと第2中央部42dそれぞれに形成された延設部42cのz方向の長さは同一となっている。これによっても、シールド40に侵入した磁界は中央部よりも端部を透過しやすくなる。
図28の(a)欄および(b)欄それぞれはシールド、磁電変換部、および、導電バスバーの配置を説明するための斜視図である。
【0318】
さらに
図29の(a)欄に示すように、2つの端辺42fのうちの一方の第2両端部42eの有する2つの端部の一方側、および、他方の第2両端部42eの有する2つの端部の他方側それぞれに延設部42cが形成された構成を採用することもできる。2つの端辺42fのうちの一方に形成された延設部42cと、他方に形成された延設部42cはy方向およびx方向それぞれに離間している。
【0319】
第2シールド42だけでなく第1シールド41に延設部42cが形成された構成を採用することもできる。第1シールド41はx方向で並ぶ2つの対向辺41fを有する。例えば
図29の(b)欄に示すように、この第1シールド41の2つの対向辺41fの第1両端部41e側それぞれに延設部42cが形成された構成を採用することができる。
図29の(a)欄および(b)欄それぞれはシールド、磁電変換部、および、導電バスバーの配置を説明するための斜視図である。
【0320】
第1シールド41に形成することのできる延設部42cの形態は、これまでに示した第2シールド42に形成された延設部42cと同等の形態を採用することができる。第1シールド41に形成された延設部42cが延長部に相当する。
【0321】
なお本実施形態、および、以下に示す実施形態にかかる電流センサには、第1実施形態に記載の電流センサと同等の構成要素が含まれている。そのため同等の作用効果を奏することは言うまでもない。
【0322】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を
図30~
図32に基づいて説明する。
【0323】
<応力緩和部>
本実施形態では第1電流センサ11の導電バスバー30に応力緩和部34が形成されている。この応力緩和部34は導電バスバー30の第1露出部32と第2露出部33それぞれに形成されている。
【0324】
上記したように導電バスバー30はセンサ筐体50に被覆された被覆部31を有する。第1露出部32と第2露出部33それぞれはセンサ筐体50から露出され、被覆部31と一体的に連結されている。そして第1露出部32と第2露出部33それぞれにはボルトを通して通電バスバー307と電気的および機械的に接続するためのボルト孔30cが形成されている。応力緩和部34はこの第1露出部32および第2露出部33それぞれの被覆部31との連結部位と、ボルト孔30cの形成部位との間に形成されている。
【0325】
図31に示すように応力緩和部34は導電バスバー30の裏面30bから表面30aに向かって局所的に湾曲してなる。この湾曲により、導電バスバー30に付与されるz方向の力に対して、応力緩和部34は撓んで弾性変形可能となっている。なお、
図31においては応力緩和部34が一回波打つように湾曲しているが、この波打つ回数、および、その湾曲形態は上記例に限定されない。
【0326】
上記したように導電バスバー30は通電バスバー307とボルト止めされる。本実施形態の通電バスバー307は、
図32に示す第1端子台307aと第2端子台307bに相当する。導電バスバー30はこれら第1端子台307aと第2端子台307bにボルト止めされる。これにより第1端子台307aと第2端子台307bは通電バスバー307により架橋される。通電バスバー307を介して第1端子台307aと第2端子台307bが電気的に接続される。なお以下においては、
図32に示すように、導電バスバー30のボルト孔30cに通されるボルトに307cの符号を付す。第1端子台307aと第2端子台307bは外部通電部に相当する。
【0327】
第1端子台307aはz方向に面する第1載置面307dを有する。同様にして第2端子台307bはz方向に面する第2載置面307eを有する。これら第1載置面307dと第2載置面307eには、ボルト307cの軸部を締結するための締結孔307fが形成されている。締結孔307fは第1載置面307dと第2載置面307eに開口している。締結孔307fはz方向に延びている。
図32の(a)欄は、第1載置面と第2載置面のz方向の位置が一致している場合を示している。
図32の(b)欄は、第1載置面と第2載置面のz方向の位置が一致していない場合を示している。
【0328】
第1載置面307dに第1露出部32の裏面30bがz方向で対向する。第2載置面307eに第2露出部33の裏面30bがz方向で対向する。この態様で、第1端子台307aと第2端子台307bに第1電流センサ11が設けられる。
【0329】
図32の(a)欄に示すように第1載置面307dと第2載置面307eのz方向の位置が一致している場合、第1載置面307dに第1露出部32の裏面30bが接触するとともに、第2載置面307eに第2露出部33の裏面30bが接触する。この接触状態で、導電バスバー30のボルト孔30cと端子台の締結孔307fにボルト307cの軸部の先端がz方向から挿入される。そしてボルト307cの頭部が第1載置面307d(第2載置面307e)に近づくように、ボルト307cが端子台に締結される。ボルト307cの頭部と端子台とによって第1露出部32と第2露出部33が挟持される。これにより第1電流センサ11が端子台に機械的および電気的に接続される。
【0330】
これに対して、
図32の(b)欄に示すように第1載置面307dと第2載置面307eのz方向の位置が一致していない場合、第1載置面307dに第1露出部32の裏面30bが接触する際、第2載置面307eに第2露出部33の裏面30bが接触しない。第2載置面307eと第2露出部33の裏面30bとがz方向で離間し、両者の間に隙間が形成される。
【0331】
この離間状態でボルト孔30cと締結孔307fにボルト307cの軸部が通され、ボルト307cの頭部が第2露出部33の表面30aに接触すると、第2露出部33にz方向に向かう力が作用する。
【0332】
上記したように、磁電変換部25を透過する被測定磁界の強度を強めるために、被覆部31には局所的にx方向の長さの短い狭窄部31aが形成されている。狭窄部31aはx方向の長さが短いために他の部位よりも剛性が低くなっている。そのために狭窄部31aは変形しやすくなっている。
【0333】
したがって上記のようにボルト307cの締結時のz方向に向かう力が第2露出部33に作用すると、それによって狭窄部31aが変形する虞がある。狭窄部31aのセンサ筐体50内での位置が変位する虞がある。もちろん、被覆部31に狭窄部31aが形成されていなくとも、被覆部31のセンサ筐体50内での位置が変位する虞がある。これによって磁電変換部25を透過する被測定磁界の分布が変化する虞がある。
【0334】
これに対して、上記したように第1露出部32と第2露出部33それぞれには応力緩和部34が形成されている。したがって上記した第1載置面307dと第2載置面307eのz方向の位置の相違により、第2載置面307eと第2露出部33の裏面30bとの間に空隙があったとしても、ボルト307cのz方向に向かう力に応じて応力緩和部34が弾性変形する。これにより狭窄部31aの変形が抑制される。狭窄部31aのセンサ筐体50内での位置の変位が抑制される。この結果、磁電変換部25を透過する被測定磁界の分布の変化が抑制される。被測定電流の検出精度の低下が抑制される。
【0335】
なお、応力緩和部34の表面30aと裏面30bとの間の長さ(厚さ)は、被覆部31、第1露出部32、および、第2露出部33それぞれの厚さと相等しくなっている。これにより、例えば応力緩和部の厚さが被覆部や露出部に比べて局所的に薄い構成とは異なり、電流の通電によって、応力緩和部34が局所的に発熱することが抑制される。この結果、導電バスバー30の寿命の低下が抑制される。
【0336】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態を
図33~
図35に基づいて説明する。
図33の(a)欄は導電バスバーの上面図を示している。
図33の(b)欄は導電バスバーの側面図を示している。
図34の(a)欄は第1センシング部21と第2センシング部22それぞれの磁電変換部25を搭載する配線基板20と導電バスバー30の位置を示している。
図34の(b)欄は配線基板20の導電バスバー30に対する変位を示している。
図34の(c)欄は第1センシング部21と第2センシング部22それぞれの磁電変換部25を透過する磁界を示している。
【0337】
<差分キャンセル>
第1実施形態では第1センシング部21と第2センシング部22それぞれの磁電変換部25がy方向に並ぶ例を示した。これに対して本実施形態では
図33に破線で示すように第1センシング部21と第2センシング部22それぞれの磁電変換部25はx方向に並んでいる。第1センシング部21の磁電変換部25が第1磁電変換部に相当する。第2センシング部22の磁電変換部25が第2磁電変換部に相当する。
【0338】
2つの磁電変換部25は対称軸ASを介して対称配置されている。2つの磁電変換部25のy方向の位置と対称軸AS(中心点CP)のy方向の位置とが同一になっている。したがって2つの磁電変換部25は中心点CPを介してx方向に並んでいる。
【0339】
また2つの磁電変換部25と被覆部31とのz方向の離間距離は同一となっている。そして被覆部31および狭窄部31aは対称軸ASを介して線対称な形状となっている。以上により、2つの磁電変換部25には、z方向の成分は異なるものの、x方向の成分の同等な被測定磁界が透過する。そのために2つの磁電変換部25から出力される電気信号の絶対値は同等になる。
【0340】
上記したように被覆部31はセンサ筐体50の基部51に被覆されている。そして2つの磁電変換部25を搭載する配線基板20はセンサ筐体50に形成された基板支持ピン56aに搭載されている。したがって配線基板20のz方向の変位が基板支持ピン56aによって規制されている。
【0341】
しかしながら配線基板20は基板接着剤56eを介して基板接着ピン56bに固定されている。基板接着剤56eは環境温度の変化によって膨張したりクリープなどの経年劣化をしたりする。このために配線基板20は被覆部31に対してx方向とy方向とに相対的に変位する虞がある。
【0342】
配線基板20がy方向に変位した場合、上記の2つの磁電変換部25のx方向での対称配置により、両者を透過する被測定磁界のx方向の成分は変化しない。しかしながら
図34に示すように配線基板20がx方向に変位すると、両者を透過する被測定磁界のx方向の成分が変化する。この結果、2つの磁電変換部25から出力される電気信号の絶対値が同等ではなくなる。
【0343】
図34に示す破線は2つの磁電変換部25の導電バスバー30に対する配置位置を示している。一点鎖線は導電バスバー30の中心点CPを通る対称軸ASを示している。二点鎖線は2つの磁電変換部25が導電バスバー30に対して変位した位置を示している。白抜き矢印は2つの磁電変換部25を搭載する配線基板20の基板接着剤56eによる導電バスバー30に対する変位方向を示している。
図34の(a)欄と(b)欄に示す実線矢印は磁電変換部25を通る磁界を示している。
図34の(c)欄に示す実線矢印は磁電変換部25を透過する磁界の変化方向を示している。
【0344】
ただし、上記したように2つの磁電変換部25はともに配線基板20に搭載されている。そのため、上記したように基板接着剤56eの変形によって配線基板20と被覆部31とのx方向の相対位置が変化したとしても、配線基板20に搭載されている2つの磁電変換部25の相対距離は変化しない。したがって、基板接着剤56eの変形によって配線基板20と被覆部31との相対位置がx方向に変化した場合、2つの磁電変換部25の一方は対称軸ASに近づき、他方は対称軸ASから遠ざかる。その遠近距離は同等である。
図34の(b)欄ではこの遠近距離をΔで示している。
【0345】
そのために
図34の(c)欄に示すように2つの磁電変換部25の一方を透過する被測定磁界が減少し、他方を透過する被測定磁界が増大する。2つの磁電変換部25を透過する被測定磁界の減少量と増大量は同等となることが期待される。
図34の(b)欄ではこの被測定磁界の変化量をΔBと示している。
【0346】
そこで、本実施形態では2つの磁電変換部25の出力する電気信号の極性を反転している。このように極性を反転するには、例えば
図35に示すように第1磁気抵抗効果素子25aと第2磁気抵抗効果素子25bの配置を2つの磁電変換部25で逆転させることで実現される。若しくは、より単純に、
図7に示す差動アンプ25cの反転入力端子と非反転入力端子を第1センシング部21と第2センシング部22とで逆転させることで2つの電気信号の極性を反転することができる。
【0347】
以上により、2つの磁電変換部25からは、増大量と減少量の絶対値が等しく、なおかつ極性の異なる電気信号が出力される。電池ECU801に第1電流センサ11で生成された2つの電気信号が電池ECU801に入力される。MGECU802に第2電流センサ12および第3電流センサ13それぞれで生成された2つの電気信号が入力される。
【0348】
電池ECU801とMGECU802は2つの電気信号の差分をとる。この差分処理は、変位のない場合に2つの磁電変換部25から出力される電気信号の絶対値をB、変位による電気信号の変化量の絶対値をΔBとすると、B+ΔB-(-(B-ΔB))=2Bと表すことができる。若しくは、B-ΔB-(-(B+ΔB))=2Bと表すことができる。プラスが第1極性と第2極性の一方に相当し、マイナスが第1極性と第2極性の他方に相当する。
【0349】
このように差分処理を行うことで、上記の基板接着剤56eの変形に起因する配線基板20と被覆部31との相対位置の変化に起因する電気信号の減少と増大がキャンセルされる。電池ECU801とMGECU802が差分部に相当する。
【0350】
なお、例えば
図36に示すように2つの磁電変換部25の出力の差分を取る差分回路29が配線基板20に搭載された構成を採用することもできる。差分回路29の反転入力端子と非反転入力端子に第1出力配線20dと第2出力配線20eが接続される。この場合、差分回路29が差分部に相当する。
【0351】
上記した配線基板20と被覆部31とのx方向の相対位置の変化は、上記した基板接着剤56eの変形だけではなく、例えば車両に作用する外部応力やエンジン600などの駆動による振動によっても起こり得る。しかしながら例えこれらによって配線基板20と被覆部31とのx方向の相対位置が変化したとしても、上記したように2つの磁電変換部25から出力される2つの電気信号の差分をとる。こうすることで配線基板20と被覆部31との相対位置の変化による電気信号の減少と増大がキャンセルされる。以上により、被測定磁界の検出精度が低下することが抑制される。
【0352】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態を
図37および
図38に基づいて説明する。
【0353】
<透磁率の異方性>
第1実施形態では第1シールド41と第2シールド42それぞれを軟磁性材料から成る複数の平板を圧着することで製造する例を示した。これに対して本実施形態では第1シールド41と第2シールド42それぞれを、電磁鋼を圧延することで製造している。
【0354】
第1実施形態で説明したように電磁鋼の圧延方向を特定することで、シールドの透磁率に異方性を持たせることができる。本実施形態では、第1シールド41と第2シールド42の圧延方向をz方向に沿わせている。これにより第1シールド41と第2シールド42の透磁率に異方性を持たせている。なお、第1シールド41と第2シールド42の製造方法は上記例に限定されず、そもそも透磁率に異方性を有する材料によって製造してもよい。また、第1シールド41と第2シールド42の一方に透磁率の異方性を持たせてもよい。
【0355】
図37に示すように第2電流センサ12および第3電流センサ13それぞれでは、個別センサ71がx方向に並べて配置される。個別センサ71それぞれの第1シールド41と第2シールド42がx方向に交互に並ぶ構成となる。この構成においては、個別センサ71の有する磁電変換部25の磁界の検知方向はz方向とy方向になる。なおこの構成においては、x方向に並ぶ2つの個別センサ71のうちの一方の有する第1シールド41と、他方の有する第2シールド42とを一つにまとめた構成を採用することもできる。
【0356】
このように複数の個別センサ71がx方向に並ぶ構成においては、ある個別センサ71の導電バスバー30から発せられる被測定磁界が、他の個別センサ71にとっては外部ノイズになる。この外部ノイズは導電バスバー30を中心として、x方向とz方向とによって規定される平面で環状に形成される。したがって外部ノイズはx方向とz方向に沿う成分を有する。このようにx方向とz方向に沿う外部ノイズが個別センサ71を透過しやすい環境になっている。
【0357】
図37では2つの個別センサ71を示している。この2つの個別センサ71のうちの導電バスバー30に丸の中にバツ印の付されているほうに被測定電流が流れている。ここから被測定磁界が発せられている。隣の個別センサ71にとっては、この丸の中にバツ印の付されている導電バスバー30から発せられる被測定磁界が電磁ノイズになっている。
図37では磁界を矢印で示している。
【0358】
上記したように第1シールド41と第2シールド42それぞれはz方向に異方性を有する。したがって第1シールド41と第2シールド42それぞれには外部ノイズのz方向に沿う成分が侵入しようとする。これに対して、外部ノイズのx方向に沿う成分は第1シールド41と第2シールド42の異方性に依存しなくなる。そのためにこのx方向に沿う成分は磁電変換部25を透過しようとする。
【0359】
例えば
図37において破線矢印で示す磁界が磁電変換部25を通ろうとする場合、この磁界のz方向に沿う成分が第1シールド41と第2シールド42それぞれを積極的に通ろうとする。しかしながらこの磁界のx方向の成分は多少残る。そのためにこの磁界のx方向の成分は磁電変換部25を透過しようとする。
【0360】
これに対して磁電変換部25の被測定磁界の検知方向はz方向とy方向である。磁電変換部25はx方向の磁界を検知しない。したがって上記した電磁ノイズのx方向の成分が磁電変換部25を透過したとしても、それによって被測定磁界の検出精度が低下することが抑制される。
【0361】
個別センサ71の並び構成としては上記例に限定されない。例えば
図38に示すように個別センサ71がx方向に並べて配置される構成も考えられる。この構成においては、個別センサ71の第1シールド41同士、第2シールド42同士、および、磁電変換部25同士がx方向に並ぶ。個別センサ71の有する磁電変換部25の磁界の検知方向はx方向とy方向になる。この構成においては、x方向に並ぶ複数の個別センサ71それぞれの有する第1シールド41を一つにまとめた構成を採用することもできる。同様にして、複数の個別センサ71それぞれの有する第2シールド42を一つにまとめた構成を採用することもできる。
【0362】
図38においても2つの個別センサ71を示している。2つの個別センサ71のうちの導電バスバー30に丸の中にバツ印の付されているほうに被測定電流が流れている。
図38においても磁界を矢印で示している。磁界はx方向とz方向に沿う成分を有する。そのためにx方向とz方向に沿う外部ノイズが個別センサ71を透過しやすい環境になっている。
【0363】
この構成においては、第1シールド41と第2シールド42の透磁率をy方向よりもx方向に高めている。したがって第1シールド41と第2シールド42それぞれには外部ノイズのx方向に沿う成分が侵入しようとする。これに対して、外部ノイズのz方向に沿う成分は第1シールド41と第2シールド42の異方性に依存しなくなる。そのためにこのz方向に沿う成分は磁電変換部25を透過しようとする。
【0364】
例えば
図38において破線矢印で示す磁界が磁電変換部25を通ろうとする場合、この磁界のx方向に沿う成分が第1シールド41と第2シールド42それぞれを積極的に通ろうとする。しかしながらこの磁界のz方向の成分は多少残る。そのためにこの磁界のz方向の成分は磁電変換部25を透過しようとする。
【0365】
これに対して磁電変換部25の被測定磁界の検知方向はx方向とy方向である。磁電変換部25はz方向の磁界を検知しない。したがって上記した電磁ノイズのz方向の成分が磁電変換部25を透過したとしても、それによって被測定磁界の検出精度が低下することが抑制される。
【0366】
以上、本開示物の好ましい実施形態について説明したが、本開示物は上記した実施形態になんら制限されることなく、本開示物の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0367】
(第1の変形例)
第1実施形態では第1シールド41の四隅に切欠き41cが形成された例を示した。これにより第1シールド41の第1両端部41eは第1中央部41dよりもx方向の長さが短い例を示した。そして第2シールド42に延設部42cが形成された例を示した。
【0368】
これに対して
図39に示すように第1シールド41と第2シールド42それぞれの四隅に切欠き41cの形成された構成を採用することもできる。これにより第2両端部42eは第2中央部42dよりもx方向の長さが短くなっている。
図39の(b)欄に示すように第1中央部41dと第2中央部42dとの間に、配線基板20に搭載された第1センシング部21および第2センシング部22の磁電変換部25が位置している。
図39の(a)欄はシールド、磁電変換部、および、導電バスバーの配置を説明するための斜視図である。
図39の(b)欄はシールド、磁電変換部、および、導電バスバーの配置を説明するための側面図である。
【0369】
また
図40の(a)欄に示すように第2シールド42に延設部42cおよび切欠き41cが形成されなくともよい。
図40の(b)欄に示すように、第1シールド41の四隅のうちの2つに切欠き41cが形成された構成を採用することもできる。なお
図40の(b)欄では2つの切欠き41cがx方向に並んでいる。
図40の(a)欄および(b)欄それぞれはシールド、磁電変換部、および、導電バスバーの配置を説明するための斜視図である。以上に示したように、第1シールド41の第1両端部41eが第1中央部41dよりもx方向の長さが短ければよく、切欠き41cの形成位置は特に限定されない。
【0370】
(第2の変形例)
第1実施形態では統合筐体73が底壁77と周壁78を有し、これらによって構成される収納空間に複数の個別センサ71が収納される例を示した。しかしながら
図41~
図43に示すように統合筐体73は周壁78を有さなくともよい。この場合、個別センサ71は底壁77に対して90°回転して設けられる。それによって、個別センサ71の導電バスバー30の表面30aと裏面30bそれぞれはz方向に面する。第1シールド41の一面41aと裏面41bそれぞれはz方向に面する。同様にして第2シールド42の一面42aと裏面42bそれぞれもz方向に面する。個別センサ71の磁電変換部25の検知方向はx方向とy方向になる。
【0371】
これにより、
図38に示したように複数の個別センサ71それぞれの第1シールド41がx方向に並ぶ構成となる。複数の個別センサ71それぞれの第2シールド42がx方向に並ぶ構成となる。複数の個別センサ71それぞれの磁電変換部25がx方向に並ぶ構成となる。
【0372】
なお
図42の(a)欄は第2電流センサの上面図を示している。
図42の(b)欄は第2電流センサの正面図を示している。
図42の(c)欄は第2電流センサの下面図を示している。
図43の(a)欄は第2電流センサの側面図を示している。
図43の(b)欄は第2電流センサの正面図を示している。
図42の(b)欄と
図43の(b)欄には同一の図面を示している。
【0373】
本変形例では、端子台80に個別センサ71と同数のz方向に沿うボルト孔が形成されている。個別センサ71の第2露出部33にボルト孔30cが形成されている。この端子台80のボルト孔と第2露出部33のボルト孔30c、および、ワイヤーの端子に形成されたボルト孔にボルトが通される。そしてそのボルトの先端にナットが締結される。ボルトの軸部の先端から頭部に向かうように、ナットをボルトに締結する。ボルトの頭部と端子台80とによって第2露出部33とワイヤーの端子とを挟持する。これにより第2露出部33とワイヤーの端子とが接触し、両者が電気的および機械的に接続される。
【0374】
(第3の変形例)
第1実施形態で示したように第1電流センサ11のセンサ筐体50にリブ52aが形成されている。これと同様にして、
図44に示すように個別センサ71のセンサ筐体50にリブ52aを形成してもよい。そして統合筐体73の底壁77に、個別センサ71を配線ケース72に挿入する際のガイド部72aが形成されてもよい。ガイド部72aはリブ52aと相似形状の中空を有する溝を構成している。ガイド部72aはz方向に開口している。この開口を介して、ガイド部72aの中空へとリブ52aを通す。これにより個別センサ71の統合筐体73への組み付けが容易となる。なお
図44に示す変形例では、個別センサ71における接続端子60の先端の突出する端部を設けるための溝77cが底壁77に形成されている。
【0375】
(第4の変形例)
図45の(a)欄に模式的に示すように、各実施形態ではモータのU相ステータコイルとV相ステータコイルに個別センサ71が設けられる例を示した。これら個別センサ71が第1センシング部21と第2センシング部22を有する例を示した。
【0376】
しかしながら
図45の(b)欄に模式的に示すように、モータのU相ステータコイル、V相ステータコイル、および、W相ステータコイルそれぞれに個別センサ71が設けられた構成を採用することもできる。これら個別センサ71は第1センシング部21だけを有する構成を採用することができる。
【0377】
上記したように3相のステータコイルのうちの2つに流れる電流に基づいて残り1つの電流を検出することができる。したがって3相のステータコイルに設けられた3つの個別センサ71の第1センシング部21のうちの2つの出力に基づいて残り1つのステータコイルの電流を検出することができる。また、この残り1つのステータコイルに設けられた個別センサ71の第1センシング部21によって、残り1つのステータコイルの電流を検出することができる。これら2つの検出した電流を比較することで、いずれか一方に異常が生じているか否かを判定することができる。
【0378】
(その他の変形例)
各実施形態では、ハイブリッドシステムを構成する車載システム100に電流センサが適用される例を示した。しかしながら電流センサの適用される車載システムは上記例に限定されない。例えば電流センサは電気自動車やエンジン自動車の車載システムに適用されてもよい。電流センサの適用されるシステムに関しては特に限定されない。
【符号の説明】
【0379】
11…第1電流センサ、12…第2電流センサ、13…第3電流センサ、20…配線基板、20a…対向面、20b…背面、21…第1センシング部、22…第2センシング部、25…磁電変換部、29…差分回路、30…導電バスバー、30a…表面、30b…裏面、30c…ボルト孔、31…被覆部、31a…狭窄部、32…第1露出部、33…第2露出部、34…応力緩和部、40…シールド、41…第1シールド、41a…一面、41c…切欠き、41d…第1中央部、41e…第1両端部、41f…対向辺、42…第2シールド、42a…一面、42c…延設部、42d…第2中央部、42e…第2両端部、42f…端辺、50…センサ筐体、51…基部、51f…下端面、56a…基板支持ピン、56b…基板接着ピン、56c…先端面、56d…先端面、56e…基板接着剤、57a…シールド支持ピン、57b…シールド接着ピン、57c…先端面、57d…先端面、57e…シールド接着剤、71…個別センサ、72…配線ケース、73…統合筐体、75…通電端子、76…統合配線基板、100…車載システム、307…通電バスバー、307a…第1端子台、307b…第2端子台、341…第1通電バスバー、342…第2通電バスバー、343…第3通電バスバー、344…第4通電バスバー、345…第5通電バスバー、346…第6通電バスバー、801…電池ECU、802…MGECU、AS…対称軸、CP…中心点