(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】パージ通路用チェックバルブ
(51)【国際特許分類】
F02M 25/08 20060101AFI20231212BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
F02M25/08 Z
F02M25/08 K
F02M37/00 301H
(21)【出願番号】P 2019062908
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】森 智幸
(72)【発明者】
【氏名】上ノ坊 恵三
【審査官】中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】特公昭59-022066(JP,B2)
【文献】特開平04-103870(JP,A)
【文献】特開平06-249086(JP,A)
【文献】特開平07-301353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクにチューブを介して接続される入口ポートと、キャニスタにチューブを介して接続される出口ポートとを有しており、前記出口ポートよりも下方の部位に、液化した燃料を貯留できる下バッファ空間が形成されているパージ通路用チェックバルブであって、
前記入口ポートを備えた上キャップと、前記出口ポートを備えた下キャップと、前記上キャップと下キャップとで挟まれた中間部材とを有して、前記中間部材に、前記入口ポートと出口ポートとに連通した通路が形成されており、
かつ、前記下キャップの
内底面を前記出口ポートよりも下げることによって前記下バッファ空間を形成している、
パージ通路用チェックバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、車両において、燃料タンクと吸気系とに接続されたパージ通路に配置するチェックバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関を搭載した車両では、燃料タンク内で気化した燃料をパージ通路によって吸気系に逃がすことにより、燃料タンクの破損を防止しており、パージ通路には、気化燃料を吸着して一時的に貯蔵するキャニスタと、圧力調整のためのチェックバルブとが、チェックバルブが燃料タンク側(上流側)に位置して、キャニスタが吸気側(下流側)に位置する状態で配置されている。
【0003】
パージ通路に配置するチェックバルブの構造は様々であるが、いずれにしても、燃料タンクにチューブを介して接続される入口ポートと、キャニスタにチューブを介して接続される出口ポートとを備えており、入口ポートをボデーの上部に設けて出口ポートをボデーの下部に設けている。
【0004】
入口ポートと出口ポートの向きとしては、例えば特許文献1では、入口ポートと出口ポートとを互いに逆向きの姿勢にしており、特許文献2では、入口ポートと出口ポートとを平行な姿勢にしており、更に、特許文献3では、入口ポートと出口ポートとは直交した姿勢になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-141018号公報
【文献】実開昭61-161483号のマイクロフィルム
【文献】実開昭57-112176号のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これら各公知例において、実際にチェックバルブがどのような姿勢で車両に搭載されているのかは明確でないが、キャニスタをチェックバルブよりも下方に配置すると、冬季のような寒冷環境下において、チェックバルブとキャニスタとを繋ぐチューブに溜まっていた気化燃料がエンジン停止中に凝縮液化し、それから凍結してチューブを閉塞させることがあり、このため、気化燃料がキャニスタに流れずに燃料タンクの内圧が上昇して燃料タンクが破損するおそれがあった。
【0007】
この点については、チェックバルブとキャニスタとの間に、液化燃料を溜める補助タンクを設けたらよいと考えられるが、これでは部材点数が増大してコストが嵩むのみならず、チューブの本数と接続箇所が増えるため、安全面でも好ましくない。
【0008】
本願発明はこのような知見を背景に成されたものであり、気化燃料の凍結によるパージ通路の閉塞を、簡単な構造によって防止しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明はチェックバルブに係るもので、このチェックバルブは、
「燃料タンクにチューブを介して接続される入口ポートと、キャニスタにチューブを介して接続される出口ポートとを有しており、前記出口ポートよりも下方の部位に、液化した燃料を貯留できる下バッファ空間が形成されている」という構成において、
「前記入口ポートを備えた上キャップと、前記出口ポートを備えた下キャップと、前記上キャップと下キャップとで挟まれた中間部材とを有して、前記中間部材に、前記入口ポートと出口ポートとに連通した通路が形成されており、
かつ、前記下キャップの内底面を前記出口ポートよりも下げることによって前記下バッファ空間を形成している」という特徴を備えている。
【0010】
本願発明において、入口ポートと出口ポートとの姿勢に限定はないが、両ポートとも、横向き又は上向きであるのが好ましい。また、本願で記載しているチューブは管路と同義であり、金属製のものも含んでいる。
【発明の効果】
【0011】
燃料の気化は燃料タンクで発生する一方、キャニスタは大きな容量があるため、キャニスタ内で液化燃料が凍結しても、通路の閉塞の問題はない。他方、燃料が気化すると、気化燃料はチェックバルブを通過するため、チェックバルブと燃料タンクとを繋ぐチューブでの燃料の液化・凍結は殆ど生じない。従って、液化燃料の凍結による問題は、特に、チェックバルブとキャニスタの間で現れる。
【0012】
そして、本願発明では、下バッファ空間は下キャップの出口ポートよりも低い位置に形成しているため、チェックバルブとキャニスタとを繋ぐチューブに発生した液化燃料を下キャップの下バッファ空間に溜めることができるが、液化燃料が下キャップの下バッファ空間において凍結しても通路を塞ぐことはないため、気化燃料の通過に支障はない。従って、チェックバルブの機能を発揮させて、燃料タンクの内圧が異常に上昇して燃料タンクの破損に至る事態を防止できる。
【0013】
そして、下バッファ空間はチェックバルブの下キャップに形成されているため、部材点数の増加はなくてコストアップを抑制できると共に、チューブの本数や接続箇所が増えることもないため、安全面の問題もない。従って、本願発明によると、コストアップや安全面の問題を招来することなく、液化燃料の凍結に起因した燃料タンクの破損を防止できる。
【0014】
さて、気化燃料はキャニスタから吸気系に送られるため、気化燃料をキャニスタから吸気系にスムースに送るためには、キャニスタはエンジンルームのうち高い位置に配置するのが好ましい。他方、燃料タンクに接続されているパージチューブは、車体の下部を通ってエンジンルームに引き出されているため、チェックバルブをキャニスタよりも下方の部位に設けると、パージチューブをできるだけ短くできて合理的である。
【0015】
この点、本願発明では、チェックバルブをキャニスタよりも低い位置に配置しても、キャニスタとチェックバルブとを繋ぐチューブで発生した液化燃料をチェックバルブの下バッファ空間に溜めることができるため、パージチューブをできるだけ短くしつつ、燃料の凍結に起因した燃料タンクの破損を防止できる。この場合、チェックバルブの高さ位置は任意に設定できるため、チェックバルブの搭載位置の自由性も向上できる。
【0016】
実施形態のように、出口ポートをボデーの軸心に対して直交させた姿勢に形成すると、下キャップに下バッファ空間を形成しつつ高さを抑制できるため、チェックバルブをコンパクト化できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1では、チェックバルブ1の外観と配置態様を示しており、
図2では縦断面を表示している。チェックバルブ1は合成樹脂製であり、円柱状の中間部材2と、中間部材2の上部に固定された上キャップ3と、中間部材2の下部に固定された下キャップ4とでボデーを構成しており、上キャップ3には横向きの入口ポート5が一体に形成されて、下キャップ4には、横向きの出口ポート6が一体に形成されている。
【0019】
入口ポート5及び出口ポート6は、チューブ7,8を嵌め込みできるように筒状に形成されているが、継手を差し込み又はねじ込みできる穴の形態であってもよい。また、入口ポート5と出口ポート6とは同じ方向に向いているが、異なる方向を向けることも可能である。入口ポート5を上向きにして、出口ポート6を横向きにすることも可能である。
【0020】
上キャップ3及び下キャップ4は、それぞれ中間部材2に対して溶着又は強制嵌合によって固定されている。図示していないが、上キャップ3及び下キャップ4と中間部材2との重合面には、シール材を設けるのが好ましい。
【0021】
中間部材2には、気化燃料が下向きに流れる送り通路9と、気化燃料が上向きに流れる戻り通路10とが、それぞれ上下両面に開口するように形成されている。送り通路9は下半部が大径部9aになっていて、この大径部9aに、第1ボール11とこれを下方から付勢する第1ばね12とが配置されている。一方、戻り通路10は、上半部が大径部10aになっていて、この大径部10aに、第2ボール13とこれを上から付勢する第2ばね14とが配置されている。
【0022】
中間部材2の上部には、入口ポート5及び両通路9,10と連通した上下バッファ空間15が形成されている。また、上キャップ3には、第2ばね14を横ずれ不能に保持する上ばね受け16を下向きに突設している。なお、上バッファ空間15は上キャップ3に形成してもよいし、上キャップ3と中間部材2との両方に跨がった状態に形成してもよい。また、上ばね受け16は、突起でなくて凹みであってもよい。
【0023】
下キャップ4には、内底面が出口ポート6の下方に低くなっている下バッファ空間17を形成しており、この下バッファ空間17の内底面に、第1ばね12を横ずれ不能に保持する下ばね受け18が形成されている。この下ばね受け18も、突起でなく凹みであってもよい。
【0024】
入口ポート5に接続された第1チューブ7の始端は、図示しない燃料タンクに接続されている。他方、出口ポート6に接続された第2チューブ8の終端は、キャニスタ19の入口ポート20に接続されている。キャニスタ19の出口ポート21には、気化燃料を吸気系に送る第3チューブ22が接続されている。
【0025】
キャニスタ19は、その全体がチェックバルブ1の出口ポート6よりも高い位置に配置されているが、少なくとも、キャニスタ19の入口ポート20がチェックバルブ1の出口ポート6よりも高い位置にあったらよい。
【0026】
以上の構成において、燃料タンクの内圧が高くなると、気化燃料は、第1ボール11を押し下げて、送り通路9からキャニスタ19に向かって流れる。これにより、燃料タンクの内圧が過剰に高くなることを防止できる。逆に、何らかの理由で燃料タンクの内圧が低下したり、チェックバルブ1よりも下流側の圧力が高くなったりすると、気化燃料は第2ボール13を押し上げて第1チューブ7に向けて流れる。このようにして、パージ通路の圧力が調圧される。
【0027】
そして、冬季のような寒冷環境下でチューブ7,8に溜まった液化燃料が凝縮して液化することがあるが、これら液化した燃料は下バッファ空間17に流れ落ちてこれに溜まる。そして、下バッファ空間17に溜まった液化燃料23が凍結しても、下バッファ空間17は十分な容積があって出口ポート6と両通路9,10は互いに連通しているため、燃料タンクの内圧が上昇したら液化燃料をキャニスタ19に逃がすことができる。従って、燃料タンクの破損事故を防止できる。
【0028】
そして、下バッファ空間17は下キャップ4に一体に形成されているため、部材点数の増大はなくて、それだけコストを抑制できる。
【0029】
実施形態のように、出口ポート6を横向き姿勢で下キャップ4に形成すると、下キャップ4の下バッファ空間17の平面積を大きくできる。従って、下バッファ空間17の容積を十分に確保して、液化燃料23の貯蔵機能を確実化できる。また、チェックバルブ1をコンパクト化できる利点もある。実施形態のように入口ポート5が横向きに形成されていると、コンパクト化を更に促進できる。
【0030】
中間部材2は、一対の金型が密着・離反する単純な金型装置を使用して製造できる。また、上キャップ3と下キャップ4とは、ポート5,6の内部を形成するスライドピンを備えた金型装置を使用して、簡単に製造できる。従って、製造上の問題はない。
【0031】
本願発明は、図示した形態の他にも様々に具体化できる。例えば、弁機構は、図示した構造の他にも様々に具体化できる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本願発明は、車両のパージ通路用チェックバルブに具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0033】
1 チェックバルブ
2 ボデーを構成する中間部材
3 ボデーを構成する上キャップ
4 ボデーを構成する下キャップ
5 入口ポート
6 出口ポート
7 燃料タンクに接続される第1チューブ
8 キャニスタに接続される第2チューブ
9 送り通路
10 戻り通路
11,13 弁体の一例としてのボール
12,14 ばね
15 上バッファ空間
17 下バッファ空間
19 キャニスタ