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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/02 20210101AFI20231212BHJP
   G03B 17/56 20210101ALI20231212BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20231212BHJP
   H04N 23/58 20230101ALI20231212BHJP
   H04N 5/222 20060101ALI20231212BHJP
   H04N 23/51 20230101ALI20231212BHJP
【FI】
G03B17/02
G03B17/56 B
G03B15/00 P
H04N23/58
H04N5/222 100
H04N23/51
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019100462
(22)【出願日】2019-05-29
(65)【公開番号】P2020194118
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】兵藤 禎正
(72)【発明者】
【氏名】根本 歩
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-245425(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044489(WO,A1)
【文献】特開2018-207476(JP,A)
【文献】特開2002-034935(JP,A)
【文献】特開2019-061055(JP,A)
【文献】特開2000-078453(JP,A)
【文献】特開2001-352380(JP,A)
【文献】特開2001-211676(JP,A)
【文献】特開2010-124603(JP,A)
【文献】特開平07-234447(JP,A)
【文献】特開平11-017999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 15/00 - 15/16
G03B 17/02
G03B 17/56 - 17/58
G03B 5/00 - 5/08
H04N 5/222 - 5/257
H04N 23/00
H04N 23/40 - 23/76
H04N 23/90 - 23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ、撮像素子アンテナを通じて外部との無線通信を行う通信手段および電池を含む撮像ユニットと、
少なくとも一部が球面である外面を有し、前記レンズを露出させるために前記外面にて開口する凹部が内側に設けられ、該凹部内に挿入された前記撮像ユニットを保持する筐体と、
前記撮像ユニットの向きが変わるように前記筐体を回転させる駆動手段とを有し、
前記駆動手段は、圧電素子により振動が励起される振動体であり、
前記球面に前記振動体が接触する接触面が設けられており、
前記接触面は、前記球面の球心を通る少なくとも1つの断面において、該球面における前記球心回りにおける180度以上の中心角の領域に連続して設けられており、
前記アンテナは、前記撮像ユニットのうち前記接触面に対して前記球面の径方向にて重ならない位置に配置され
前記撮像ユニット内において、前記アンテナ、前記通信手段およびこれらを接続する通信系信号路と、前記撮像素子に接続された撮像系信号路とが、前記電池を挟んだ互いに反対側の領域にそれぞれ配置されていることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記アンテナは、前記撮像ユニットのうち前記凹部の開口から露出した部分の内側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記中心角が270度以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記撮像ユニットは、前記凹部に対して着脱可能であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記球面のうち前記凹部の開口とは反対側の部分も前記接触面の一部になっていることを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記接触面は、金属により形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記アンテナは、前記少なくとも1つの断面における前記中心角の領域の両端を超えた範囲に配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記アンテナは、前記少なくとも1つの断面において、前記中心角の領域の両端よりも被写体側に突出した位置に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像方向を変更可能な可動部を有する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような撮像装置としては、特許文献1にて開示されているように、圧電素子に電圧を印加して振動体を振動させ、該振動体に加圧接触している球体可動部を回転させることで、該球体可動部により保持された撮像系の向き、すなわち撮像方向を変更できるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-124603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような撮像装置においては撮像可能な範囲(撮像範囲)ができるだけ広いことが望ましく、このため球体可動部の回転可能範囲(可動範囲)をできるだけ大きくすることが望ましい。
【0005】
本発明は、球体可動部の可動範囲を大きくして撮像範囲を広くすることができるようにした撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としての撮像装置は、レンズ、撮像素子アンテナを通じて外部との無線通信を行う通信手段および電池を含む撮像ユニットと、少なくとも一部が球面である外面を有し、レンズを露出させるために外面にて開口する凹部が内側に設けられ、該凹部内に挿入された撮像ユニットを保持する筐体と、撮像ユニットの向きが変わるように筐体を回転させる駆動手段とを有する。駆動手段は、圧電素子により振動が励起される振動体であり、上記球面に振動体が接触する接触面が設けられている。接触面は、球面の球心を通る少なくとも1つの断面において、該球面における球心回りにおける180度以上の中心角の領域に連続して設けられている。アンテナは、撮像ユニットのうち接触面に対して球面の径方向にて重ならない位置に配置され、撮像ユニット内において、アンテナ、通信手段およびこれらを接続する通信系信号路と、撮像素子に接続された撮像系信号路とが、電池を挟んだ互いに反対側の領域にそれぞれ配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、球体可動部の可動範囲を大きくして撮像範囲を広くした撮像装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例である撮像装置の構成を示すブロック図。
図2】実施例の撮像装置の外観斜視図。
図3】実施例の撮像装置に用いられる振動型アクチュエータを説明する図。
図4】実施例の撮像装置の分解斜視図。
図5】実施例の撮像装置における支持部、可動部、振動体および受圧部の関係を示す図。
図6】実施例の撮像装置における可動部に対する撮像ユニットの着脱を示す図。
図7】実施例の撮像装置における可動部の斜視図、正面図および断面図。
図8】実施例の撮像装置における可動部の筐体の外観図および断面。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施例である撮像装置1の内部構成を示している。100は移動体としての球体可動部(以下、単に可動部という)であり、200は可動部100を回転可能に支持する支持部である。可動部100の外面の少なくとも一部は、球面SRとして形成されている。支持部200には、圧電素子(図3中の17)を含む複数の振動体(振動型アクチュエータ)11~13が可動部100の球面SRに加圧接触するように設けられている。支持部200は、振動体11~13を駆動して振動を発生させることにより可動部100の回転位置を制御するとともに撮像装置1の全体を制御するメイン制御部201を有する。
【0010】
可動部100は、レンズユニット101と撮像部102とにより構成される撮像系を有する。レンズユニット101は、ズームユニット、絞り/シャッタユニットおよびフォーカスユニット等を含む撮像光学系である。撮像部102は、CMOSセンサやCCDセンサ等の撮像素子を含む。撮像素子は、レンズユニット101により形成された光学像(被写体像)を光電変換して電気信号(撮像データ)を出力する。撮像部102はさらに、撮像素子を制御したり撮像データに対する処理を行ったりする撮像制御処理回路も含まれる。
【0011】
撮像データ記憶部103は、撮像部102から出力された撮像データを記憶し、記憶した撮像データを通信手段としての可動部無線通信部104に転送する。可動部無線通信部104は、送受信アンテナを含み、可動部100と支持部200との間で無線によるデータ通信を行う。撮像部102から出力されて撮像データ記憶部103に記憶された撮像データは、時系列の順序で支持部200に送信される。
【0012】
レンズアクチュエータ制御部106は、モータドライバICを含み、レンズユニット101のズームユニット、絞り/シャッタユニットおよびフォーカスユニット等におけるアクチュエータを駆動する。各アクチュエータは、可動部通信部104を介して支持部200から受信したレンズユニット101のアクチュエータ駆動指示信号に応じて駆動される。電池105は、電力を可動部100内の各要素に電源を供給する。
【0013】
支持部200において、メイン制御部201は、CPU等のマイクロコンピュータにより構成され、撮像装置1の全体を制御する。固定部通信部208は、無線通信によって、可動部100から撮像部102で得られた撮像データを受信したり可動部100にアクチュエータ駆動指示信号を送信したりする。撮像信号処理部209は、固定部通信部208なより受信した撮像データを映像信号に変換する。映像信号処理部210は、撮像信号処理部209から出力された映像信号を用途に応じて加工する。映像信号の加工は、電子防振のための画像切出しおよび回転加工を含む。
【0014】
操作部202は、ユーザが撮像装置1に対して指示を与えるために設けられている。記憶部203は、映像信号や種々なデータを記憶する。表示部204は、LCD等のディスプレイデバイスを備え、映像信号処理部210から出力された映像信号に応じて画像表示を行う。外部入出力端子部205は、外部装置との間で通信信号および映像信号を入出力する。電源部206は、撮像装置1内の各要素に対して電源を供給する。
【0015】
位置検出部212は、光源と画像センサとを含み、可動部100の回転位置を検出する。具体的には、位置検出部212は、光源からの光を可動部100の球面SRに照射して画像センサによって該球面SRを撮像し、その後に所定時間が経過してから画像センサにより球面SRを再度撮像する。球面SRには、マークまたは模様等の相対位置検出用の指標が設けられている。そして位置検出部212は、最初の撮像により得られた画像と後の撮像により得られた画像とを比較して、指標の移動方向と移動量を検出する。これにより、可動部100の回転方向と回転量、すなわち相対的な回転位置を検出することができる。
【0016】
また、球面SRには、相対位置検出用の指標とは別に絶対位置検出用の指標も設けられている。可動部100における絶対位置検出用の指標の位置は予めメモリに記憶されており、絶対位置検出用の指標が検出された状態からの相対位置検出用の指標の移動方向と移動量に基づいて可動部100の絶対的な回転位置を検出することができる。
【0017】
メイン制御部201は、位置検出部212からの回転位置をモニタしながら可動部制御部211を通じて複数の振動体11~13の駆動を制御することにより、可動部100の多自由度回転を制御する。可動部制御部211は、振動体11~13のうち全部または一部の圧電素子に電圧を印加することで、振動体を駆動して振動を発生させる。
【0018】
位置検出補正部213は、位置検出部212の画像センサにより取得した画像に可動部100の回転位置情報(絶対位置検出用の指標)が含まれている場合に、相対的な回転位置検出結果から求めた絶対位置と実際の絶対位置の誤差を補正する。
【0019】
次に、図2および図4を用いて撮像装置1の具体的な構成について説明する。図2は撮像装置1の外観を示し、図4は撮像装置1を分解して示している。可動部100は、内部にレンズユニット101と撮像部102等が組み込まれた筐体(外装部材)としての球体を有する。球体の表面が前述した球面SRである。可動部100は、支持部200に設けられた複数の振動体11~13上に載置されている。以下の説明においては、図2に示すように、支持部200の底面200aは互いに直交するX軸とZ軸を含むX-Z面に平行な平面とし、X軸とZ軸のそれぞれに対して直交する軸(高さ方向の軸)をY軸とする。
【0020】
振動体11~13はそれぞれ、可動部100の球心Cに向かって付勢されるように不図示のバネ部材を介して支持部200により保持されている。すなわち、振動体11~13はそれぞれ、可動部100における接触面としての球面SRに加圧接触した状態で支持部200により保持されている。球面SRは金属等、振動体との摩擦接触による摩耗が少ない材料の面として形成されている。本実施例では、球面SRを金属により形成している。
【0021】
図1に示した可動部制御部211が各振動体の圧電素子に電圧を印加すると、該振動体に振動が励起され、可動部100は該振動体との接触部にて摩擦駆動される。振動体11~13のそれぞれから可動部100に与えられた駆動力の合成力によって、可動部100は球心Cを中心として回転する。これにより、レンズユニット101の向きである撮像方向を自由に選択することができる。
【0022】
図3(a)~(c)を用いて、振動体11~13の駆動原理について説明する。各振動体は、振動板18と、振動板18の裏面に貼り付けられた電気機械エネルギー変換素子としての圧電素子17とにより構成されている。 図3(a)は、振動板18の裏面に貼り付けられた圧電素子17の電極領域を示す。ここでは、長手方向(a方向)において2等分された電極領域17-1,17-2が形成されている。電極領域17-1,17-2のそれぞれにおける分極方向は、同一方向(「+」)となっている。右側の電極領域17-1には交流電圧V1が印加され、左側の電極領域17-2には交流電圧V2が印加される。交流電圧V1,V2は、図3(b)に示す振動モード(Aモード)の共振周波数付近の周波数を有し、互いに位相が180°ずれている。
【0023】
図3(b)では、圧電素子17のうち右側の電極領域17-1が縮み、左側の電極領域17-2が伸びた状態を示している。交流電圧V1,V2の印加により、この状態と右側の電極領域17-1が伸び、左側の電極領域17-2が縮む状態とが交互に発生する。その結果、振動板18にAモードの振動が発生する。このAモードは、a方向の2次の曲げモードであり、c方向の変位が小さい3つの節部とc方向の変位が大きい2つの腹部とを有する振動モードである。このような振動モードの振動が発生すると、振動板18の中心部に設けられた接触部としての突起部19の先端が図3(b)の左右方向に変位する。図3(a)では、突起部19は圧電素子17の裏側に存在する。
【0024】
一方、交流電圧V1,V2を図3(c)に示す振動モード(Bモード)の共振周波数付近の周波数を有し、互いに同位相の交流電圧とすると、圧電素子17の全体(電極領域17-1,17-2)が伸びる状態と縮む状態とが交互に発生する。この結果、振動板18にはBモードの振動が発生する。Bモードは、b方向の1次の曲げモードであり、c方向の変位が小さい2つの節部と、c方向の変位が大きい1つの腹部とを有する振動モードである。Aモードの共振周波数とBモードの共振周波数は、互いに同じ(または同じと見なせる程度の差のみを有する)周波数に設定される。
【0025】
このような振動をある時間的位相関係で合成することにより、可動部100と接触している突起部19の先端には、a方向およびc方向を径方向とする楕円状の運動が発生する。可動部100は、このように楕円運動する突起部19から摩擦力を受けて図3(b)中の太矢印の方向に駆動される。また、電極領域17-1,17-2への印加電圧の位相差を変えることにより、AモードとBモードの発生比を変化させることが可能である。楕円の縦横比も、AモードとBモードの発生比に応じて変化する。振動体11~13のそれぞれにおいてAモードとBモードの発生比を変えることによって、それぞれの振動体11~13が可動部100に与える駆動力を変えることができるため、可動部100の回転速度をコントロールすることが可能となる。
【0026】
図4において、支持部200は、ベースカバー230、シャーシ240、内部構造体250およびボトムカバー260により構成されている。ベースカバー230には、振動体11~13を保持するシャーシ240が固定される。振動体11~13はそれぞれ、シャーシ240に設けられた開口240aから可動部100側に露出するように配置され、可動部100の球心Cに向かって付勢力が作用するように不図示のバネ部材を介してシャーシ240に取り付けられる。振動体11~13から延出するフレキシブルプリント基板(FPC)11a~11cはそれぞれ、制御基板250aと電気的に接続されている。
【0027】
内部構造体250の制御基板250aは、図1に示したメイン制御部201、記憶部203および可動部制御部211等を有する。可動部制御部211は、FPC11a~11cを介して振動体11~13のそれぞれの圧電素子17に交流電圧を印加する。内部構造体250は、シャーシ240とともにベースカバー230の内側に固定され、ベースカバー230の下部にボトムカバー260が固定されることでケーシングされる。
【0028】
図5(a)~(c)は、Y軸方向から見た可動部100と振動体11~13を示している。振動体11~13は、図2に示すようにY軸に直交するX-Z面に平行で可動部100の球心Cから距離Lだけ離れた平面と球面SRとの交円Sの周上に120°間隔で配置されている。交円Sの中心をCsとする。このような構成により、可動部100に対して振動体11~13が加圧接触した状態を効果的に維持することが可能となるとともに、可動部100を確実に保持してそれらの脱落を阻止することができる。
【0029】
次に、可動部100の回転方向に応じた振動体11~13の駆動制御について説明する。図5(a)は、可動部100をZ軸回りで回転させるときの振動体11~13の駆動制御を示す。3つの振動体11~13は、交円Sの周上に120°間隔でY軸から距離dの位置に配置されている。振動体11~13がそれぞれ時計回り方向の正の駆動力を発生すると、振動体11が発生する駆動力の向きはX軸方向を基準として0°方向、振動体12が発生する駆動力の向きは240°方向、振動体13が発生する駆動力の向きは120°方向となる。3つの振動体11~13は、それらの突起部(接触部)19にて可動部100の球面SRに3点で接触する。これにより、振動体11~13の突起部19は、可動部100の球面SRと安定的に接触することが可能である。
【0030】
図5(a)において可動部100をZ軸回りで回転させるために振動体11が発生する駆動力をf1、振動体12が発生する駆動力をf2、振動体13が発生する駆動力をf3とし、単位駆動力をfとすると、f1=2×f f2=-f f3=-fとなる。FxをX軸方向への力、FzをY軸方向への力、Fyを回転方向への力、dをY軸から振動体11~13のそれぞれまでの距離とすると、Fx、FzおよびFxはそれぞれ以下の式(1),(2)および(3)で表される。
【0031】
Fx=f1×cos(0deg)+f2×cos(240deg)
+f3×cos(120deg)
=(2×f×1)+(-f×-0.5)+(-f×-0.5)=3×f (1)
Fz=f1×sin(0deg)+f2×sin(240deg)
+f3×sin(120deg)
=(2×f×0)+(-f×-0.86)+(-f×0.86)=0×f (2)
Fy=f1×d+f2×d+f3×d
=(2×f×d)+(-f×d)+(-f×d)
=0×f (3)
このため、振動体11~13にf1~f3を発生させると、交円Sの中心点Csに合成力としてX軸方向の力Fxのみが発生する。すなわちX軸方向の駆動力のみが可動部100に加えられる。したがって、振動体11~13が発生する駆動力の合成力Fxは、可動部100をZ軸回りで回転させる。
【0032】
図5(b)は、可動部100をX軸回りで回転させるときの振動体11~13の駆動制御を示している。可動部100をX軸回りで回転させるために振動体11が発生する駆動力をf1、振動体12が発生する駆動力をf2、振動体13が発生する駆動力をf3とし、単位駆動力をfとすると、
f1=0×f
f2=-f
f3=+f
となる。可動部100をZ軸回りで回転させるときと同じように、可動部100に加わる力Fx、FzおよびFyはそれぞれ、以下の式(1a),(2a)および(3a)のように表される。
【0033】
Fx=f1×cos(0deg)+f2×cos(240deg)
+f3×cos(120deg)
=(0×f×1)+(-f×-0.5)+(f×-0.5)
=0×f (1a)
Fz=f1×sin(0deg)+f2×sin(240deg)
+f3×sin(120deg)
=(0×f×0)+(-f×-0.86)+(f×0.86)
=1.73×f (2a)
Fy=f1×d+f2×d+f3×d
=(0×f×d)+(-f×d)+(f×d)
=0×f (3a)
このため、振動体11~13にf1~f3を発生させると、交円Sの中心点Csに合成力として-Z軸方向の力Fzのみが発生する。すなわち-Z軸方向の駆動力のみが可動部100に加えられる。したがって、振動体11~13が発生する駆動力の合成力Fzは、可動部100をX軸回りで回転させる。
【0034】
図5(c)は、可動部100をY軸回りで回転させるときの振動体11~13の駆動制御を示している。可動部100をY軸回りで回転させるために振動体11が発生する駆動力をf1、振動体12が発生する駆動力をf2、振動体13が発生する駆動力をf3とし、単位駆動力をfとすると、
f1=-f
f2=-f
f3=-f
となる。可動部100に加わる力Fx、FzおよびFyはそれぞれ、以下の式(1b),(2b)および(3b)のように表される。
【0035】
Fx=f1×cos(0deg)+f2×cos(240deg)
+f3×cos(120 deg)
=(-f×1)+(-f×-0.5)+(-f×-0.5)
=0×f (1b)
Fz=f1×sin(0deg)+f2×sin(240deg)
+f3×sin(120deg)
=(-f×0)+(-f×-0.86)+(-f×0.86)
=0×f (2b)
Fy=f1×d+f2×d+f3×d
=(-f×d)+(-f×d)+(-f×d)
=-3×f (3b)
このため、振動体11~13にf1~f3を発生させると、交円Sの中心点Csに合成力としてY軸回りの力Fyのみが発生する。すなわちY軸回りの駆動力のみが可動部100に加えられる。したがって、振動体11~13が発生する駆動力の合成力Fyは、可動部100をY軸回りで回転させる。
【0036】
これらの回転を組み合わせることにより、可動部100を球心Cを中心として、言い換えれば球心Cを通る任意の軸回りで回転させることができ、任意の撮像方向にレンズユニット101を向けることができる。これにより、様々な方向の撮像が可能になる。
【0037】
図6は、可動部100(筐体110)に対して着脱可能な撮像ユニット300を示す。図7(a)および(b)は筐体110に撮像ユニット300が装着された状態の可動部100の外観を示す。図7(c)は図7(b)におけるA-A線での可動部100の断面を示す。撮像ユニット300は、図1に示したレンズユニット101、レンズアクチュエータ制御部106、撮像部102、撮像データ記憶部103、可動部無線通信部104および電池105を一体に収容している。
【0038】
図7(b)において、51は撮像部102のうち撮影素子から前述した撮像制御処理回路や撮像データ記憶部103への撮像データ用の信号路(撮像系信号路)を形成する撮像フレキシブル配線板である。52は可動部無線通信部104とそのアンテナ53とを接続する通信系信号路を形成する通信フレキシブル配線板である。図8(a)は筐体110の外観を示し、図8(b)は図8(a)におけるA-A線での筐体110の断面を示している。筐体110は、その全体が金属で構成(例えば削り出しにより作製)されてもよいし、樹脂製の筐体本体の外周面にメッキ等により金属層を形成することで構成されてもよい。また、3Dプリンタによって金属粉を含有した材料を用いて製作してもよい。
【0039】
筐体110には、該筐体110の表面にて開口する凹部としての底付き穴部110aが形成されている。撮像ユニット300は、この底付き穴部110aにレンズユニット101側とは反対側から挿入されて筐体110に装着される。底付き穴部110aへの撮像ユニット300の挿入は可動部100の回転時における撮像ユニット300の抜けを防止するために圧入であってもよい。また、筐体110からの撮像ユニット300の抜けを阻止したりこれを解除したりするロック機構を設けてもよい。
【0040】
図7(c)の断面において、筐体110の表面における底付き穴部110aの開口およびその近傍を除いた領域は、球心C回りにおける180度以上の角度または180度より大きい角度(以下、中心角という)θの領域である。中心角θは、より望ましくは270度以上、さらに望ましくは300度以上であるとよい。この中心角θの領域が全て振動体11~13と接触可能な連続した球面SRとなっている。言い換えれば、中心角θの球面SR内には筐体110の分割線や段差等の不連続な部分がない。底付き穴部110aの開口とは反対側の部分も閉じられて球面SRの一部となっている。このような球面SRを設けることで、振動体11~14の駆動によって可動部100をスムーズに回転させることができる回転範囲(可動範囲)を大きくすることができる。
【0041】
なお、中心角θの連続した球面SRは、筐体110において球心Cを通る複数の断面のうち1つの断面において存在すればよい。
【0042】
また、図7(c)に示すように、可動部無線通信部104が可動部100の外部(支持部通信部208)と無線通信を行うために撮像ユニット300の内部に設けられたアンテナ53は、可動部100における上記中心角θの領域(球面SR)の外側、すなわち可動部100における中心角θの領域の両端を超えた範囲に配置されている。言い換えれば、アンテナ53は、可動部100のうち中心角θの領域の両端よりも被写体側Bに突出した位置に配置されている。
【0043】
本実施例では、可動部100の可動範囲を大きくするために可動部100の外面のうち金属で形成される球面SRを広くしている。このとき仮にアンテナ53の周囲が金属の球面SRで覆われると、良好な無線通信ができなくなる。このため、アンテナ53を図7(c)に示したように配置することで、筐体110全体または球面SRが金属により形成されていても、アンテナ53が球面SRに径方向にて重ならず、この結果、外部との無線通信を良好に行うことができる。
【0044】
さらに、撮像ユニット300内において、撮像フレキシブル配線板51、撮像部102のうち撮像制御処理回路および撮像データ記憶部103と、可動部無線通信部104、アンテナ53および通信フレキシブル配線板52とは、電池105を挟んで(言い換えればレンズユニット101の光軸を挟んで)互いに反対側の領域に配置されている。このような配置により、撮像系信号路である撮像フレキシブル配線板51と通信系信号路である通信フレキシブル配線板52とを離すことができ、しかもそれらの間に電池105を配置できるため、撮像系通信路で発生するノイズによって無線通信が影響を受け難くなる。
【0045】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 撮像装置
11,12,13 振動体
100 可動部
110 筐体
200 支持部
300 撮像ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8