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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】ダイナミックダンパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/12 20060101AFI20231212BHJP
   B60K 17/22 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
F16F15/12 L
B60K17/22 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019115237
(22)【出願日】2019-06-21
(65)【公開番号】P2020094684
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2018227007
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】織奥 豊
(72)【発明者】
【氏名】龍 佳久
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-103543(JP,U)
【文献】特開2003-240052(JP,A)
【文献】特開2011-137506(JP,A)
【文献】特開2011-220445(JP,A)
【文献】特開2012-241822(JP,A)
【文献】特開2000-240725(JP,A)
【文献】特開2017-166661(JP,A)
【文献】米国特許第06837345(US,B1)
【文献】独国特許出願公開第102013106291(DE,A1)
【文献】特開2005-273703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 7/00-7/14
F16F 15/00-15/36
B60K 17/10-17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空軸の内部に配置され、前記中空軸に固定される取付環と、
前記取付環に対しゴム状弾性材のみからなる弾性体を介して軸方向一方の位置に片寄って配置され、前記中空軸との間に径方向クリアランスを設定するマスと、
を備え、
前記取付環と前記マスとは、前記弾性体のみによって連結され、
前記取付環の外周側には前記弾性体と一体の外周ゴム部が設けられており、
前記マスの外周側には前記弾性体と一体の膜状のマス被覆部が設けられており、
前記マスは、偏芯時に、前記マス被覆部を介して前記中空軸に接触することにより偏芯量を規制される、
ことを特徴とするダイナミックダンパ。
【請求項2】
請求項記載のダイナミックダンパにおいて、
前記外周ゴム部を軸方向に貫通し、洗浄液を通過させるゴム流路が設けられていることを特徴とするダイナミックダンパ。
【請求項3】
請求項1記載のダイナミックダンパにおいて、
前記マスを軸方向に貫通し、洗浄液を通過させるマス流路が設けられていることを特徴とするダイナミックダンパ。
【請求項4】
請求項1記載のダイナミックダンパにおいて、
前記マスを非接着で保持するマス保持部が前記弾性体に一体に設けられていることを特徴とするダイナミックダンパ。
【請求項5】
請求項1記載のダイナミックダンパにおいて、
前記取付環を非接着で保持する取付環保持部が前記弾性体に一体に設けられていることを特徴とするダイナミックダンパ。
【請求項6】
請求項1乃至の何れか一に記載のダイナミックダンパにおいて、
前記取付環は、樹脂製の取付環とされていることを特徴とするダイナミックダンパ。
【請求項7】
請求項記載のダイナミックダンパにおいて、
前記取付環の外周側に、前記弾性体と一体の外周ゴム部が設けられるとともに、前記取付環の内周側に、前記弾性体と一体の内周ゴム部が設けられ、
前記取付環に貫通穴が設けられ、
前記貫通穴を介して前記外周ゴム部および前記内周ゴム部が一体化され、
前記外周ゴム部および前記内周ゴム部と前記取付環とが非接着にて接続されていることを特徴とするダイナミックダンパ。
【請求項8】
請求項または記載のダイナミックダンパにおいて、
前記取付環の軸方向端部に、前記弾性体に埋設される被埋設部が設けられ、
前記被埋設部の軸方向長さが調整されることにより前記ダイナミックダンパの軸直角方向の固有振動数が調整可能とされていることを特徴とするダイナミックダンパ。
【請求項9】
請求項記載のダイナミックダンパにおいて、
前記被埋設部は、前記取付環の軸方向端部に設けられた周上複数の突起よりなり、
前記突起の軸方向長さ、周方向幅または形成数が調整されることにより前記ダイナミックダンパの軸直角方向の固有振動数が調整可能とされていることを特徴とするダイナミックダンパ。
【請求項10】
請求項1乃至の何れか一に記載のダイナミックダンパにおいて、
前記取付環は、前記マスに対面する側の端部から径方向内方に向けて設けられた内向きフランジ部を一体に備え、
前記弾性体は、前記内向きフランジ部によって保持されていることを特徴とするダイナミックダンパ。
【請求項11】
請求項に記載のダイナミックダンパにおいて、
前記取付環は、前記マスに対面する側の端部から径方向外方に向けて設けられた外向きフランジ部を一体に備え、
前記弾性体は、前記外向きフランジ部によって保持されていることを特徴とするダイナミックダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイナミックダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
図12(A)(B)に示すように、中空軸61の内部に装着されるダイナミックダンパ51は、中空軸61の内部に配置され、中空軸61に固定される取付環52と、この取付環52のさらに内周側に配置されたマス53とをゴム状弾性材製の弾性体54を介して連結した構造とされ、軸方向、軸直角方向、ねじり方向および、こじり方向にそれぞれの固有振動数を有する。
【0003】
上記ダイナミックダンパ51は例えば、自動車等の車両の駆動力伝達に供する中空プロペラシャフトの内部に装着され、回転時、プロペラシャフトに生起される振動を低減し走行時の静粛性の向上を図るとともに、プロペラシャフト自体の共振による強度の低下を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-240052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年における車両の軽量化等に伴い、ダイナミックダンパ51に求められる軸直角方向の固有振動数は低下する傾向にある。軸直角方向の固有値の低下(低周波化)に伴い、通常領域の回転数でマス53が大きく偏芯し弾性体54に大きな負荷が作用し、弾性体54の破損に至ることが懸念される。
【0006】
マス53の偏芯を抑制する対策としては図13(A)(B)に示すように、取付環52の内周面に偏芯ストッパとしてゴム状弾性材製の凸形状55を設けることが考えられ、これによれば過大荷重の入力時にマス53が凸形状55に接触することで、マス53の偏芯量を規制することが可能とされる。
【0007】
しかしながらこの対策によると、マス53および凸形状55の間に設定される初期的な径方向クリアランスcが、弾性体54や凸形状55を成形するゴム成形型の抜き型によって形成されるため、ゴム成形型の維持管理を考慮すると径方向クリアランスcは1mm程度の大きさが最小値とされる。したがって径方向クリアランスcをそれ以上小さく設定することができず、マス53の偏芯量をそれ以上小さく抑えることができない。径方向クリアランスcが1mmの場合、車両によってはマス53の偏芯によるプロペラシャフトの回転アンバランスが問題となる。
【0008】
また、偏芯ストッパとしての凸形状55をゴム材料で担っているため、凸形状55は図14のグラフ図に参考例(点線)として示すように、ストッパ作動後も圧縮変形し、マス53の偏芯を許容する。したがって偏芯ストッパとしての機能が不足することがある。
【0009】
空軸の内部に装着されるダイナミックダンパにおいて、マスの偏芯量を小さく抑えることができ、しかも高剛性の偏芯ストッパを備えるダイナミックダンパを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ダイナミックダンパの一態様は、中空軸の内部に配置され、前記中空軸に固定される取付環と、前記取付環に対しゴム状弾性材のみからなる弾性体を介して軸方向一方の位置に片寄って配置され、前記中空軸との間に径方向クリアランスを設定するマスと、を備え、前記取付環と前記マスとは、前記弾性体のみによって連結され、前記取付環の外周側には前記弾性体と一体の外周ゴム部が設けられており、前記マスの外周側には前記弾性体と一体の膜状のマス被覆部が設けられており、前記マスは、偏芯時に、前記マス被覆部を介して前記中空軸に接触することにより偏芯量を規制される。
【発明の効果】
【0011】
空軸の内部に装着されるダイナミックダンパにおいて、マスの偏芯量を小さく抑えることができ、しかも高剛性の偏芯ストッパを備えるダイナミックダンパを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施の形態のダイナミックダンパを示す断面図
図2】第2実施の形態のダイナミックダンパを示す断面図
図3】第3実施の形態のダイナミックダンパを示す断面図
図4】第4実施の形態のダイナミックダンパを示す断面図
図5】第5実施の形態のダイナミックダンパを示す図で、(A)はその断面図であって(B)におけるC-O-C線断面図、(B)はその側面図
図6】第6実施の形態のダイナミックダンパを示す断面図
図7】第7実施の形態のダイナミックダンパを示す断面図
図8】(A)は図7におけるD部拡大図、(B)は図7におけるE部拡大図
図9】第8実施の形態のダイナミックダンパを示す断面図
図10】同ダイナミックダンパにおける取付環の長さ調整の説明図
図11】同ダイナミックダンパにおける被埋設部の他の例を示す説明図
図12】背景技術で説明したダイナミックダンパを示す図で、(A)はその側面図、(B)はその断面図
図13】背景技術で説明したダイナミックダンパを示す図で、(A)はその側面図、(B)はその断面図
図14】プロペラシャフト回転数とマス偏芯量の関係を示すグラフ図
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1実施の形態・・・・
図1に示すように、実施の形態のダイナミックダンパ11は、プロペラシャフト等の中空軸61の内部に装着されるダイナミックダンパであって、回転時、中空軸61に生起される振動を低減し走行時の静粛性の向上を図るとともに、中空軸61自体の共振による強度の低下を防止する。
【0014】
ダイナミックダンパ11は、中空軸61の内部に配置され、中空軸61の内周面62に固定される取付環21と、この取付環21に対しゴム状弾性材製の弾性体41を介して軸方向一方(図では左方)の位置に片寄って配置され、中空軸61の内周面62との間に径方向クリアランスcを設定し、偏芯時に中空軸61の内周面62に接触することにより偏芯量を規制されるマス31とを備えている。マス31はダイナミックダンパ共振系における慣性質量体として機能し、弾性体41はバネとして機能する。
【0015】
取付環21は、金属材により環状に形成され、筒状部22とこの筒状部22の軸方向一方の端部から径方向内方へ向けて設けられた内向きフランジ部23とを一体に備えている。
【0016】
マス31は、金属材により円板状に形成され、その外径を中空軸61の内径よりも小さく形成されることにより上記したように中空軸61の内周面62との間に径方向クリアランスcを設定する。径方向クリアランスcはゴム成形型の抜き型によって形成されるものでないため、その大きさを参考例(図13)よりも小さく形成することができ、例えば1mm未満の大きさとすることができる。マス31は取付環21に対し弾性体41を介して軸方向一方の位置に片寄って配置されるので、取付環21および弾性体41によって片持ち式に保持される。
【0017】
弾性体41は、ゴム状弾性材により環状に形成され、マス31と取付環21との間に配置され、その軸方向一方の端部にてマス31に接着(加硫接着)されるとともにその軸方向反対側の端部にて取付環21のフランジ部23に接着(加硫接着)されることにより上記したように取付環21とマス31とを連結している。弾性体41はその配置により作動時、径方向(軸直角方向)にせん断変形することになる。弾性体41は取付環21の筒状部22ではなくフランジ部23によって保持されるので、フランジ部23の径方向幅に応じてその径方向幅を大きく設定されている。
【0018】
取付環21の外周側に外周ゴム部42が設けられている。外周ゴム部42は、ゴム状弾性材により環状に形成され、弾性体41と一体に形成され、取付環21の筒状部22の外周面に接着(加硫接着)され、その外径を中空軸61の内径よりも大きく形成されることにより取付環21の筒状部22および中空軸61間に径方向の締め代をもって介装される。外周ゴム部42は弾性体41と一体に形成されているので、これらを形成するゴム材が取付環21の筒状部22とフランジ部23との間の角部によって傷付けられることがないよう、筒状部22とフランジ部23との間の角部には図示するように、断面円弧形のアール形状を形成しておくことが望ましい。
【0019】
マス31の外周側にマス被覆部43が設けられている。マス被覆部43は、ゴム状弾性材により環状であってかつ薄肉の膜状に形成され、弾性体41と一体に形成され、マス31の外周面32に接着(加硫接着)され、マス31の外周面32を全周・全面に亙って被覆している。マス被覆部43は薄肉の膜状に形成されているので、上記径方向クリアランスcの設定に影響を及ぼすことがない。
【0020】
上記構成のダイナミックダンパ11においては、取付環21に対しマス31が弾性体41を介して軸方向一方の位置に片寄って配置され、マス31と中空軸61との間に径方向クリアランスcが設定され、マス31が偏芯時に中空軸61に接触することにより偏芯量を規制されるよう構成されているため、ここにマス31および中空軸61の組み合わせによる偏芯ストッパが構成されている。また、この偏心ストッパにおける径方向クリアランスcが小さく形成され、上記の例では1mm未満とされているため、マス31の偏芯量を参考例(図13)対比で小さく抑えることが可能とされている。したがってマス31の偏芯が過大となることがなく、マス31の偏芯によるプロペラシャフトの回転アンバランスの問題が生じるのを抑制することができる。
【0021】
また、偏芯ストッパがマス31および中空軸61の組み合わせとされ、すなわち金属部品同士の組み合わせとされているため、図14のグラフ図に実施の形態(実線)として示すようにストッパの作動後、マス31はまったく偏芯しない。したがって参考例(図13)対比で高剛性の偏芯ストッパを形成することができ、偏芯ストッパによりゴム材料の使用量が増えるのを抑制することもできる。
【0022】
また、取付環21の外周側に外周ゴム部42が設けられているため、中空軸61の内径に多少の寸法誤差があっても取付環21を中空軸61の内周に圧入することができる。
【0023】
また、マス31の外周側に膜状のマス被覆部43が設けられているため、金属部品同士が繰り返し接触することによる異音の発生を防止することができる。
【0024】
上記実施の形態のダイナミックダンパ11は、その構成を以下のように付加または変更しても良い。
【0025】
第2実施の形態・・・・
図2に示すダイナミックダンパ11では、取付環21が、筒状部22と、筒状部22の軸方向一方の端部から径方向内方へ向けて設けられた内向きフランジ部23と、筒状部22の軸方向反対側の端部から径方向内方へ向けて設けられた内向きフランジ部24とを一体に備えるものとされている。また、取付環21の内周側に内周ゴム部44が接着(加硫接着)され、取付環21が外周ゴム部42および内周ゴム部44間で径方向両側から挟み込まれるかたちにて被覆(埋設)されている。内周ゴム部44の内径と弾性体41の内径は同寸法または略同寸法に設定されている。
【0026】
第3実施の形態・・・・
図3に示すダイナミックダンパ11では、取付環21が、筒状部22と、筒状部22の軸方向一方の端部から径方向外方へ向けて設けられた外向きフランジ部25とを一体に備えるものとされている。また、取付環21における筒状部22の内径と弾性体41の内径が同寸法または略同寸法に設定されている。
【0027】
第4実施の形態・・・・
図4に示すダイナミックダンパ11では、取付環21が、筒状部22と、筒状部22の軸方向一方の端部から径方向外方へ向けて設けられた外向きフランジ部25と、筒状部22の軸方向反対側の端部から径方向外方へ向けて設けられた外向きフランジ部26とを一体に備えるものとされている。また、取付環21における筒状部22の内径と弾性体41の内径が同寸法または略同寸法に設定されている。
【0028】
第5実施の形態・・・・
図5に示すダイナミックダンパ11では、外周ゴム部42に、中空軸61への装着時、洗浄液を通過させるためのゴム流路45が設けられている。ゴム流路45は、外周ゴム部42を軸方向に貫通する溝として形成されており、このように溝状を呈する流路45が複数、等配状(図では6等配)に形成されている。この構成によれば、外周ゴム部42にゴム流路45が設けられているため、中空軸61の内周にダイナミックダンパ11が装着された状態であってもダイナミックダンパ11の軸方向一方から軸方向反対側へと洗浄液を流通させることが可能とされる。
【0029】
第6実施の形態・・・・
図6に示すダイナミックダンパ11では、マス31に、中空軸61への装着時、洗浄液を通過させるためのマス流路33が設けられている。マス流路33は、マス31を軸方向に貫通する孔として形成されており、このように孔状を呈するマス流路33がマス31の中心軸線上に1箇所形成されている。この構成によれば、マス31にマス流路33が設けられているため、中空軸61の内周にダイナミックダンパ11が装着された状態であってもダイナミックダンパ11の軸方向一方から軸方向反対側へと洗浄液を流通させることが可能とされる。
【0030】
第7実施の形態・・・・
図7に示すダイナミックダンパ11では、弾性体41がマス31に対し非接着とされるとともに弾性体41にマス保持部46が一体に設けられている。マス保持部46は、ゴム状弾性材により膜状に形成され、マス31の外周面32を非接着で被覆する外周被覆部46aと、マス31の軸方向一方の端面34を非接着で被覆する端面被覆部46bと、マス31の軸方向反対側の端面35を非接着で被覆する反対側端面被覆部46cとを一体に備えて袋状を呈し、この袋の中にマス31を接着せず非接着で保持している。この構成によれば、ダンパ11の製造時、ゴム材料をマス31に接着する接着工程を省略することが可能とされる。図8(B)は図7のE部を拡大して示している。
【0031】
また、図7に示すダイナミックダンパ11では、弾性体41および外周ゴム部42が取付環21に対して非接着とされるとともに弾性体41に取付環保持部47が一体に設けられている。取付環保持部47は、ゴム状弾性材により膜状に形成され、取付環21の内周面を非接着で被覆する内周被覆部47aと、取付環21の端面を非接着で被覆する端面被覆部47bとを一体に備えて袋状を呈し、この袋の中に取付環21を接着せず非接着で保持している。この構成によれば、ダンパ11の製造時、ゴム材料を取付環21に接着する接着工程を省略することが可能とされる。図8(A)は図7のD部を拡大して示している。
【0032】
第8実施の形態・・・・
図9に示すダイナミックダンパ11では、取付環21が金属材ではなく樹脂材にて形成されることにより樹脂製の取付環とされている。取付環21は円筒状のスリーブとして形成されている。
【0033】
取付環21の外周側に、弾性体41と一体の外周ゴム部42が設けられるとともに、取付環21の内周側に、弾性体41と一体の内周ゴム部44が設けられている。また、取付環21に周上複数(例えば5等配)の貫通穴27が設けられ、この貫通穴27を介して外周ゴム部42および内周ゴム部44が直接一体化されている。
【0034】
したがって取付環21は、外周ゴム部42および内周ゴム部44に挟まれるかたちで両ゴム部42,44内に埋設されており、両ゴム部42,44により非接着の構造で保持されている。
【0035】
樹脂製の取付環21には、金属製の取付環と比較して一般に部品重量を軽量化できるメリットがある。
【0036】
また、上記したように取付環21および両ゴム部42,44の接続が非接着の構造とされているため、ダンパ製造工程から取付環21および両ゴム部42,44の接着工程を省略することができる。したがって取付環21の樹脂化による部品コスト低減と合わせて、製造コストを低減させることが可能とされている。
【0037】
尚、車両用ダイナミックダンパ系の品目については車両開発後期の実車評価後、評価結果に基づいて固有振動数を調整するケースが多々あるが、車両開発後期となると短時間での変更を求められるため形状変更(新規成形型製作)が容易でなく、取付環21の仕様をそのままとしてゴム硬度変更による調整対応をとるしかない等、設計自由度が小さいと云う不都合を生じることがある。
【0038】
これに対する対策として、上記した取付環21の樹脂化はきわめて有効であり、すなわち取付環21の製作時に取付環21の軸方向長さを調整することによりダンパの軸直角方向の固有振動数を調整することが可能とされている。
【0039】
図10の例では、取付環21の軸方向一方の端部に、弾性体41に埋設される被埋設部48が設けられ、この被埋設部48の軸方向長さが調整され、その結果として取付環21全体の軸方向長さが調整されることによりダンパの軸直角方向の固有振動数が調整可能とされている。
【0040】
取付環21全体の軸方向長さの基準値をLとすると、取付環21全体の軸方向長さが大きくなるほど(L<L)、ダンパの軸直角方向の固有振動数が高くなり、反対に、取付環21全体の軸方向長さが小さくなるほど(L>L)、ダンパの軸直角方向の固有振動数が低くなる。
【0041】
被埋設部48の形状としては、円筒状のスリーブ形状を呈する取付環21をそのまま軸方向一方へ向けて延長した、環状体であることを原則とするが、図11に示すように、被埋設部48を取付環21の軸方向一方の端部に設けられた周上複数の突起(突起群)よりなるものとしても良い。そしてこの場合には、突起の軸方向長さ、周方向幅または形成数が調整されることによりダンパの軸直角方向の固有振動数が調整されることになるため、設計の自由度を一層拡大することが可能とされる。
【符号の説明】
【0042】
11 ダイナミックダンパ
21 取付環
22 筒状部
23,24,25,26 フランジ部
27 貫通穴
31 マス
32 外周面
33 マス流路
34,35 端面
41 弾性体
42 外周ゴム部
43 マス被覆部
44 内周ゴム部
45 ゴム流路
46 マス保持部
46a 外周被覆部
46b,47b 端面被覆部
46c 反対側端面被覆部
47 取付環保持部
47a 内周被覆部
48 被埋設部
61 中空軸
62 内周面
c 径方向クリアランス

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14