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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】全固体電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20231212BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20231212BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20231212BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20231212BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0562
H01M4/62 Z
H01M4/13
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019115730
(22)【出願日】2019-06-21
(65)【公開番号】P2021002482
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】富沢 祥江
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大悟
(72)【発明者】
【氏名】川村 知栄
(72)【発明者】
【氏名】水野 高太郎
【審査官】森 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-051078(JP,A)
【文献】特開2012-119078(JP,A)
【文献】国際公開第2014/003036(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/149927(WO,A1)
【文献】特開2005-026191(JP,A)
【文献】特開2015-035334(JP,A)
【文献】特開2018-008828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/052
H01M 10/0562
H01M 4/62
H01M 4/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物系の固体電解質を主成分とする固体電解質層と、
前記固体電解質層の第1主面に形成され、活物質を含む第1電極層と、
前記固体電解質層の第2主面に形成され、活物質を含む第2電極層と、を備え、
前記第1電極層および前記第2電極層の少なくともいずれか一方の電極層は、カーボン粒子の凝集体と、空隙とを含み、
前記凝集体の凝集径は、3.8μm以上、9.5μm以下であり、
前記凝集体は、前記空隙の少なくとも一部を画定していることを特徴とする全固体電池。
【請求項2】
前記空隙の径は、0.2μm以上、10μm以下であり、
前記空隙の径は、前記全固体電池の断面において各空隙の定方向接線径を測長した場合の平均値であることを特徴とする請求項1記載の全固体電池。
【請求項3】
前記凝集体における前記空隙の面積比率は、10%以上、80%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の全固体電池。
【請求項4】
前記凝集体を含む電極層において、固体電解質および前記活物質の総量に対する前記カーボン粒子の重量は、5wt%以上、80wt%以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の全固体電池。
【請求項5】
前記カーボン粒子は、15nm以上90nm以下の1次粒子平均径を有し、8m/g以上200m/g以下のBET値を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の全固体電池。
【請求項6】
前記凝集体を含む電極層において、前記凝集体の合計の面積比率は、前記電極層の全体に対して15%以上、60%以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の全固体電池。
【請求項7】
前記凝集体は、前記空隙を囲んでいることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の全固体電池。
【請求項8】
前記凝集体における前記空隙の面積比率は、24%以上、50%以下であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の全固体電池。
【請求項9】
前記凝集体を含む電極層において、前記凝集体の合計の面積比率は、前記電極層の全体に対して9%以上、50%以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池が様々な分野で利用されている。電解液を用いた二次電池には、電解液の漏液等の問題がある。そこで、固体電解質を備え、他の構成要素も固体で構成した全固体電池の開発が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-212123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
Pd(パラジウム)が各種材料との反応が起きにくい性質を有しているため、電子伝導性確保のためにPdを電極層の導電助剤として用いることが考えられる。しかしながら、電極層内のPdは、電極層における活物質充填量増大に対して阻害要因となる。そこで、電極層の導電助剤として、カーボンを用いることが考えられる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、電極層にカーボンを添加すると、焼成時におけるカーボンと酸化物系固体電解質との反応によって固体電解質層のイオン伝導性が低下するおそれがある。また、カーボンを分散させすぎると、導電助剤による導電ネットワークが減少して電極層の電子伝導性が低下するおそれがある。また、一般的に、焼結型の酸化物系全固体電池においては、充放電に伴う活物質の体積膨張収縮が長期サイクル安定性を低下させる要因となっている。
【0006】
特許文献1の技術では、アルミナコーティングで反応を抑制する手法が開示されているが、コストアップや容量密度低下、導電性低下などが懸念されるとともに、体積膨張収縮の課題が解決できないおそれがある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、コストを抑制しつつ性能向上を実現することができる全固体電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る全固体電池は、酸化物系の固体電解質を主成分とする固体電解質層と、前記固体電解質層の第1主面に形成され、活物質を含む第1電極層と、前記固体電解質層の第2主面に形成され、活物質を含む第2電極層と、を備え、前記第1電極層および前記第2電極層の少なくともいずれか一方の電極層は、カーボン粒子の凝集体と、空隙とを含み、前記凝集体は、前記空隙の少なくとも一部を画定していることを特徴とする。
【0009】
上記全固体電池において、前記凝集体の凝集径は、0.5μm以上、50μm以下としてもよい。
【0010】
上記全固体電池において、前記空隙の径は、0.2μm以上、10μm以下としてもよい。
【0011】
上記全固体電池において、前記凝集体における前記空隙の面積比率は、10%以上、80%以下としてもよい。
【0012】
上記全固体電池において、前記凝集体を含む電極層において、セラミック成分に対する前記カーボン粒子の重量は、5wt%以上、80wt%以下としてもよい。
【0013】
上記全固体電池において、前記カーボン粒子は、15nm以上90nm以下の1次粒子平均径を有し、8m/g以上200m/g以下のBET値を有していてもよい。
【0014】
上記全固体電池において、前記凝集体を含む電極層において、前記凝集体の合計の面積比率は、前記電極層の全体に対して15%以上、60%以下としてもよい。
【0015】
上記全固体電池において、前記凝集体は、前記空隙を囲んでいてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コストを抑制しつつ性能向上を実現することができる全固体電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】全固体電池の基本構造を示す模式的断面図である。
図2】実施形態に係る全固体電池の模式的断面図である。
図3】第1電極層および第2電極層の断面の模式図である。
図4】全固体電池の製造方法のフローを例示する図である。
図5】積層工程を例示する図である。
図6】実施例1~6および比較例1~3の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0019】
(実施形態)
図1は、全固体電池100の基本構造を示す模式的断面図である。図1で例示するように、全固体電池100は、第1電極10と第2電極20とによって、酸化物系の固体電解質層30が挟持された構造を有する。第1電極10は、固体電解質層30の第1主面上に形成されており、第1電極層11および第1集電体層12が積層された構造を有し、固体電解質層30側に第1電極層11を備える。第2電極20は、固体電解質層30の第2主面上に形成されており、第2電極層21および第2集電体層22が積層された構造を有し、固体電解質層30側に第2電極層21を備える。
【0020】
全固体電池100を二次電池として用いる場合には、第1電極10および第2電極20の一方を正極として用い、他方を負極として用いる。本実施形態においては、一例として、第1電極10を正極として用い、第2電極20を負極として用いるものとする。
【0021】
固体電解質層30は、酸化物系固体電解質であれば特に限定されるものではないが、例えば、NASICON構造を有するリン酸塩系固体電解質を用いることができる。NASICON構造を有するリン酸塩系固体電解質は、高い導電率を有するとともに、大気中で安定しているという性質を有している。リン酸塩系固体電解質は、例えば、リチウムを含んだリン酸塩である。当該リン酸塩は、特に限定されるものではないが、例えば、Tiとの複合リン酸リチウム塩(例えば、LiTi(PO)などが挙げられる。または、TiをGe,Sn,Hf,Zrなどといった4価の遷移金属に一部あるいは全部置換することもできる。また、Li含有量を増加させるために、Al,Ga,In,Y,Laなどの3価の遷移金属に一部置換してもよい。より具体的には、例えば、Li1+xAlGe2-x(POや、Li1+xAlZr2-x(PO、Li1+xAlTi2-x(POなどが挙げられる。例えば、第1電極層11および第2電極層21の少なくともいずれか一方に含有されるオリビン型結晶構造をもつリン酸塩が含む遷移金属と同じ遷移金属を予め添加させたLi-Al-Ge-PO系材料が好ましい。例えば、第1電極層11および第2電極層21にCoおよびLiの少なくともいずれか一方を含むリン酸塩が含有される場合には、Coを予め添加したLi-Al-Ge-PO系材料が固体電解質層30に含まれることが好ましい。この場合、電極活物質が含む遷移金属の電解質への溶出を抑制する効果が得られる。第1電極層11および第2電極層21にCo以外の遷移元素およびLiを含むリン酸塩が含有される場合には、当該遷移金属を予め添加したLi-Al-Ge-PO系材料が固体電解質層30に含まれることが好ましい。
【0022】
第1電極層11および第2電極層21のうち、少なくとも、正極として用いられる第1電極層11は、オリビン型結晶構造をもつ物質を電極活物質として含有する。第2電極層21も、当該電極活物質を含有していることが好ましい。このような電極活物質として、遷移金属とリチウムとを含むリン酸塩が挙げられる。オリビン型結晶構造は、天然のカンラン石(olivine)が有する結晶であり、X線回折において判別することができる。
【0023】
オリビン型結晶構造をもつ電極活物質の典型例として、Coを含むLiCoPOなどを用いることができる。この化学式において遷移金属のCoが置き換わったリン酸塩などを用いることもできる。ここで、価数に応じてLiやPOの比率は変動し得る。なお、遷移金属として、Co,Mn,Fe,Niなどを用いることが好ましい。
【0024】
オリビン型結晶構造をもつ電極活物質は、正極として作用する第1電極層11においては、正極活物質として作用する。例えば、第1電極層11にのみオリビン型結晶構造をもつ電極活物質が含まれる場合には、当該電極活物質が正極活物質として作用する。第2電極層21にもオリビン型結晶構造をもつ電極活物質が含まれる場合に、負極として作用する第2電極層21においては、その作用メカニズムは完全には判明してはいないものの、負極活物質との部分的な固溶状態の形成に基づくと推察される、放電容量の増大、ならびに、放電に伴う動作電位の上昇という効果が発揮される。
【0025】
第1電極層11および第2電極層21の両方ともオリビン型結晶構造をもつ電極活物質を含有する場合に、それぞれの電極活物質には、好ましくは、互いに同一であっても異なっていてもよい遷移金属が含まれる。「互いに同一であっても異なっていてもよい」ということは、第1電極層11および第2電極層21が含有する電極活物質が同種の遷移金属を含んでいてもよいし、互いに異なる種類の遷移金属が含まれていてもよい、ということである。第1電極層11および第2電極層21には一種だけの遷移金属が含まれていてもよいし、二種以上の遷移金属が含まれていてもよい。好ましくは、第1電極層11および第2電極層21には同種の遷移金属が含まれる。より好ましくは、両電極層が含有する電極活物質は化学組成が同一である。第1電極層11および第2電極層21に同種の遷移金属が含まれていたり、同組成の電極活物質が含まれていたりすることにより、両電極層の組成の類似性が高まるので、全固体電池100の端子の取り付けを正負逆にしてしまった場合であっても、用途によっては誤作動せずに実使用に耐えられるという効果を有する。
【0026】
第1電極層11および第2電極層21のうち第2電極層21に、負極活物質として公知である物質をさらに含有させてもよい。一方の電解層だけに負極活物質を含有させることによって、当該一方の電極層は負極として作用し、他方の電極層が正極として作用することが明確になる。一方の電極層だけに負極活物質を含有させる場合には、当該一方の電極層は第2電極層21であることが好ましい。なお、両方の電極層に負極活物質として公知である物質を含有させてもよい。電極の負極活物質については、二次電池における従来技術を適宜参照することができ、例えば、チタン酸化物、リチウムチタン複合酸化物、リチウムチタン複合リン酸塩、カーボン、リン酸バナジウムリチウムなどの化合物が挙げられる。
【0027】
第1電極層11および第2電極層21の作製においては、これら活物質に加えて、酸化物系固体電解質材料や、導電性材料(導電助剤)などが添加されている。本実施形態においては、これらの部材については、バインダと可塑剤を水あるいは有機溶剤に均一分散させることで電極層用ペーストを得ることができる。本実施形態においては、導電助剤として、カーボン材料が含まれている。導電助剤として、さらに金属が含まれていてもよい。導電助剤の金属としては、Pd、Ni、Cu、Fe、これらを含む合金などが挙げられる。
【0028】
第1集電体層12および第2集電体層22は、導電性材料からなる。
【0029】
図2は、複数の電池単位が積層された全固体電池100aの模式的断面図である。全固体電池100aは、略直方体形状を有する積層チップ60と、積層チップ60の第1端面に設けられた第1外部電極40aと、当該第1端面と対向する第2端面に設けられた第2外部電極40bとを備える。
【0030】
積層チップ60の当該2端面以外の4面のうち、積層方向の上面および下面以外の2面を側面と称する。第1外部電極40aおよび第2外部電極40bは、積層チップ60の積層方向の上面、下面および2側面に延在している。ただし、第1外部電極40aと第2外部電極40bとは、互いに離間している。
【0031】
以下の説明において、全固体電池100と同一の組成範囲、同一の厚み範囲、および同一の粒度分布範囲を有するものについては、同一符号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0032】
全固体電池100aにおいては、複数の第1集電体層12と複数の第2集電体層22とが、交互に積層されている。複数の第1集電体層12の端縁は、積層チップ60の第1端面に露出し、第2端面には露出していない。複数の第2集電体層22の端縁は、積層チップ60の第2端面に露出し、第1端面には露出していない。それにより、第1集電体層12および第2集電体層22は、第1外部電極40aと第2外部電極40bとに、交互に導通している。
【0033】
第1集電体層12上には、第1電極層11が積層されている。第1電極層11上には、固体電解質層30が積層されている。固体電解質層30は、第1外部電極40aから第2外部電極40bにかけて延在している。固体電解質層30上には、第2電極層21が積層されている。第2電極層21上には、第2集電体層22が積層されている。第2集電体層22上には、別の第2電極層21が積層されている。当該第2電極層21上には、別の固体電解質層30が積層されている。当該固体電解質層30は、第1外部電極40aから第2外部電極40bにかけて延在している。当該固体電解質層30上には、第1電極層11が積層されている。全固体電池100aにおいては、これらの積層単位が繰り返されている。それにより、全固体電池100aは、複数の電池単位が積層された構造を有している。
【0034】
Pdが各種材料との反応が起きにくい性質を有していることを利用して、Pdを第1電極層11および第2電極層21の導電助剤として用いることが考えられる。しかしながら、第1電極層11および第2電極層21内のPdは、焼成過程において球状化・粒成長することで電極内における導電ネットワークを十分とするために20vol.%~50vol.%程度存在させることが望ましく、導電性を高めようと体積分率を高めると電極層における活物質充填量増大に対して阻害要因となる。また、Pdは、クラーク数が極めて小さい元素であるため、非常に高価である。そこで、第1電極層11および第2電極層21の導電助剤として、カーボン材料を用いることが好ましい。カーボン材料は、焼成過程において球状化や粒成長が起こらないため、より少ない体積分率で高い導電性を担保できるといった理由により、電極層における活物質充填量増大に対して阻害要因となりにくい。また、カーボン材料は、安価である。
【0035】
しかしながら、カーボン材料は、固体電解質層30を液相焼結させる際に、ガラス成分の液相を吸着する傾向を有している。ガラス成分の液相がカーボン材料に吸着すると、固体電解質層30の焼結阻害や組成ズレなどが生じて固体電解質層30の緻密度が低下し、イオン伝導性が低下するおそれがある。すなわち、第1電極層11および第2電極層21にカーボン材料を添加すると、焼成時におけるカーボン材料と酸化物系固体電解質との反応が問題となり得る。
【0036】
次に、第1電極層11および第2電極層21にカーボン材料を分散させすぎると、導電助剤のストラクチャ構造が崩壊し、導電助剤による導電ネットワークが減少するおそれがある。この場合、電子伝導性が低下するおそれがある。また、カーボン材料を分散させすぎると、セラミックの焼結に伴うカーボン材料の配置変化が生じるおそれがある。
【0037】
次に、一般的に、焼結型の酸化物系全固体電池においては、充放電に伴う活物質の体積膨張収縮が、応力発生などを引き起こし、長期サイクル安定性を低下させる要因となっている。
【0038】
そこで、本実施形態においては、第1電極層11および第2電極層21の少なくともいずれか一方は、カーボン粒子の凝集体を備えている。本実施形態においては、一例として、第1電極層11および第2電極層21の両方が、カーボン粒子の凝集体を備えているものとして説明する。
【0039】
図3は、第1電極層11および第2電極層21の断面の模式図である。図3で例示するように、第1電極層11および第2電極層21は、電極活物質、酸化物系固体電解質材料などのセラミック結晶粒61を複数備える多結晶構造を有する。複数のセラミック結晶粒61間の結晶粒界に、カーボン粒子62の凝集体63が備わっている。凝集体63は、内部に空隙64を備えている。すなわち、凝集体63は、空隙64を囲むように凝集している。凝集体63は、第1電極層11および第2電極層21において、複数箇所に点在している。
【0040】
なお、凝集体63は、必ずしも空隙64を囲んでいなくてもよい。例えば、凝集体63は、空隙64の一部に接することで、空隙64の一部を画定していてもよい。この場合、例えば、空隙64は、凝集体63とセラミック結晶粒61とによって囲まれていてもよい。
【0041】
まず、カーボン粒子62は凝集体63を形成していることから、カーボン粒子62の分散が抑制されている。この場合、第1電極層11および第2電極層21と、固体電解質層30との界面におけるカーボン材料の存在比率が低下する。それにより、カーボン粒子62と酸化物系固体電解質との反応が抑制される。その結果、固体電解質層30の焼結阻害、組成ズレなどが抑制され、固体電解質層30の緻密度が向上し、イオン伝導性が向上する。
【0042】
次に、カーボン粒子62の分散が抑制されると、導電助剤のストラクチャ構造の崩壊が抑制され、導電助剤による導電ネットワークの減少が抑制される。それにより、第1電極層11および第2電極層21における電子伝導性が向上する。また、カーボン粒子62の分散が抑制されると、セラミックの焼結に伴うカーボン粒子62の配置変化が抑制される。
【0043】
次に、セラミック結晶粒61と比較して柔軟な凝集体63が画定しセラミックが存在しない空隙64が備わっていることから、充放電時の活物質の体積変化が空隙64によって吸収され、内部応力が緩和される。それにより、全固体電池100および全固体電池100aの長期サイクル安定性が向上する。
【0044】
以上のことから、カーボン材料を用いても、イオン伝導性、電子伝導性および長期サイクル安定性が向上する。したがって、コストを抑制しつつ全固体電池100および全固体電池100aの性能向上を実現することができる。
【0045】
凝集体63の凝集径が小さすぎると、体積変化の吸収ができなくなるおそれがある。そこで、凝集体63の凝集径に下限を設けることが好ましい。具体的には、凝集体63の凝集径は、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることがさらに好ましい。
【0046】
凝集体63の凝集径が大きすぎると、導電ネットワークが連続せず、電子伝導性が十分に得られないおそれがある。そこで、凝集体63の凝集径に上限を設けることが好ましい。具体的には、凝集体63の凝集径は、50μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。
【0047】
凝集体63における空隙64の径が小さすぎると、活物質の体積変動を十分に吸収できないおそれがある。そこで、空隙64の径に下限を設けることが好ましい。具体的には、空隙64の平均径は、0.2μm以上であることが好ましく、0.7μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることがさらに好ましい。空隙64の平均径は、CP加工した全固体電池断面のSEM像(BSE像)を空隙が1枚50個程度の倍率で、300個以上となるよう数枚撮影し、空隙64の定方向接線径を測長し、平均値を求めることで算出することができる。
【0048】
凝集体63における空隙64の径が大きすぎると、空隙部分に水分が侵入し耐湿性能の悪化が生じるおそれがある。そこで、空隙64の径に上限を設けることが好ましい。具体的には、空隙64の径は、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、2μm以下であることがさらに好ましい。
【0049】
凝集体63における空隙64の面積比率が小さすぎると、充放電に伴う体積変化に追随できず、サイクル特性が悪化してしまうおそれがある。そこで、凝集体63における空隙64の面積比率に下限を設けることが好ましい。具体的には、空隙64の面積比率は、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、25%以上であることがさらに好ましい。
【0050】
凝集体63における空隙64の面積比率が大きすぎると、活物質や固体電解質とカーボンの密着が悪化し、内部抵抗が上昇するおそれがある。そこで、凝集体63における空隙64の面積比率に上限を設けることが好ましい。具体的には、空隙64の面積比率は、80%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましく、50%以下であることがさらに好ましい。
【0051】
第1電極層11および第2電極層21におけるカーボン粒子62の添加量が少なすぎると、第1電極層11および第2電極層21における導電性が低下するおそれがある。そこで、カーボン粒子62の添加量に下限を設けることが好ましい。具体的には、カーボン粒子62の添加量は、活物質および固体電解質の総量に対して5wt%以上であることが好ましく、8wt%以上であることがより好ましく、10wt%以上であることがさらに好ましい。
【0052】
第1電極層11および第2電極層21におけるカーボン粒子62の添加量が多すぎると、第1電極層11および第2電極層21における焼結阻害が顕著となるおそれがある。そこで、カーボン粒子62の添加量に上限を設けることが好ましい。具体的には、カーボン粒子62の添加量は、活物質および固体電解質の総量に対して80wt%以下であることが好ましく、50wt%以下であることがより好ましく、40wt%以下であることがさらに好ましい。
【0053】
カーボン粒子62が小さすぎると、第1電極層11および第2電極層21においてカーボン粒子62の分散を抑制できないおそれがある。そこで、カーボン粒子62の1次粒子平均径に下限を設け、BET値に上限を設けることが好ましい。具体的には、カーボン粒子62は、15nm以上の1次粒子平均径を有して200m/g以下のBET値を有していることが好ましく、20nm以上の1次粒子平均径を有して150m/g以下のBET値を有していることがより好ましく、20nm以上の1次粒子平均径を有して80m/g以下のBET値を有していることがさらに好ましい。
【0054】
カーボン粒子62が大きすぎると、第1電極層11および第2電極層21における導電性が低下するおそれがある。そこで、カーボン粒子62の1次平均粒子径に上限を設け、BET値に下限を設けることが好ましい。具体的には、カーボン粒子62は、90nm以下の1次粒子平均径を有して8m/g以上のBET値を有していることが好ましく、90nm以下の1次粒子平均径を有して10m/g以上のBET値を有していることがより好ましく、80nm以下の1次粒子平均径を有して10m/g以上のBET値を有していることがさらに好ましい。
【0055】
第1電極層11および第2電極層21の全体において、凝集体63の合計の面積比率が小さすぎると、充放電に伴う体積変化に追随できないおそれがある。そこで、当該面積比率に下限を設けることが好ましい。具体的には、第1電極層11および第2電極層21の全体において、凝集体63の合計の面積比率は15%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、25%以上であることがさらに好ましい。
【0056】
第1電極層11および第2電極層21の全体において、凝集体63の合計の面積比率が大きすぎると、容量低下といった不具合が生じるおそれがある。そこで、当該面積比率に上限を設けることが好ましい。具体的には、第1電極層11および第2電極層21の全体において、凝集体63の合計の面積比率は60%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、40%以下であることがさらに好ましい。
【0057】
図4は、全固体電池100aの製造方法のフローを例示する図である。
【0058】
(セラミック原料粉末作製工程)
まず、上述の固体電解質層30を構成するリン酸塩系固体電解質の粉末を作製する。例えば、原料、添加物などを混合し、固相合成法などを用いることで、固体電解質層30を構成するリン酸塩系固体電解質の粉末を作製することができる。得られた粉末を乾式粉砕することで、所望の平均粒径に調整することができる。例えば、5mmφのZrOボールを用いた遊星ボールミルで、所望の平均粒径に調整する。
【0059】
添加物には、焼結助剤が含まれる。焼結助剤として、例えば、Li-B-O系化合物、Li-Si-O系化合物、Li-C-O系化合物、Li-S-O系化合物,Li-P-O系化合物などのガラス成分のどれか1つあるいは複数などのガラス成分が含まれている。
【0060】
(グリーンシート作製工程)
次に、得られた粉末を、結着材、分散剤、可塑剤などとともに、水性溶媒あるいは有機溶媒に均一に分散させて、湿式粉砕を行うことで、所望の平均粒径を有する固体電解質スラリを得る。このとき、ビーズミル、湿式ジェットミル、各種混錬機、高圧ホモジナイザーなどを用いることができ、粒度分布の調整と分散とを同時に行うことができる観点からビーズミルを用いることが好ましい。得られた固体電解質スラリにバインダを添加して固体電解質ペーストを得る。得られた固体電解質ペーストを塗工することで、グリーンシートを作製することができる。塗工方法は、特に限定されるものではなく、スロットダイ方式、リバースコート方式、グラビアコート方式、バーコート方式、ドクターブレード方式などを用いることができる。湿式粉砕後の粒度分布は、例えば、レーザ回折散乱法を用いたレーザ回折測定装置を用いて測定することができる。
【0061】
(電極層用ペースト作製工程)
次に、上述の第1電極層11および第2電極層21の作製用の電極層用ペーストを作製する。例えば、電極活物質および固体電解質材料をビーズミル等で高分散化し、セラミックス粒子のみからなるセラミックスペーストを作製する。また、高分散させすぎないように作製したカーボン粒子62を含むカーボンペーストを作製し、セラミックスペーストとカーボンペーストとをよく混合する。カーボン粒子62として、例えば、カーボンブラックなどを用いることができる。
【0062】
カーボンペーストの分散状態は、分散剤を最適量より多めあるいは少なめに入れたり、最適粘度からずらしてプラネタリーミキサーで混錬したりすることで調整可能である。セラミックスペーストとカーボンペーストとの混合においては、せん断力をかけすぎないように混合することが重要で、カーボン粒子62の凝集体がなくなるレベルの強さまでせん断をかけずに混合する。この混合において、カーボン粒子62のほぐし方レベルを大きくすると凝集体63の凝集径が小さくなり、カーボン粒子62のほぐし方レベルを小さくすると凝集体63の凝集径が大きくなる。このように、ほぐし方レベルを調整することで、カーボン粒子62の凝集体63の凝集径を調整することができる。
【0063】
(集電体用ペースト作製工程)
次に、上述の第1集電体層12および第2集電体層22の作製用の集電体用ペーストを作製する。例えば、Pdの粉末、バインダ、分散剤、可塑剤などを水あるいは有機溶剤に均一分散させることで、集電体用ペーストを得ることができる。
【0064】
(積層工程)
図1で説明した全固体電池100については、電極層用ペーストおよび集電体用ペーストをグリーンシートの両面に印刷する。印刷の方法は、特に限定されるものではなく、スクリーン印刷法、凹版印刷法、凸版印刷法、カレンダロール法などを用いることができる。薄層かつ高積層の積層デバイスを作製するにはスクリーン印刷がもっとも一般的と考えられる一方、ごく微細な電極パターンや特殊形状が必要な場合はインクジェット印刷を適用する方が好ましい場合もある。
【0065】
図2で説明した全固体電池100aについては、図5で例示するように、グリーンシート51の一面に、電極層用ペースト52を印刷し、さらに集電体用ペースト53を印刷し、さらに電極層用ペースト52を印刷する。グリーンシート51上で電極層用ペースト52および集電体用ペースト53が印刷されていない領域には、逆パターン54を印刷する。逆パターン54として、グリーンシート51と同様のものを用いることができる。印刷後の複数のグリーンシート51を、交互にずらして積層し、積層体を得る。この場合、当該積層体において、2端面に交互に、電極層用ペースト52および集電体用ペースト53のペアが露出するように、積層体を得る。
【0066】
(焼成工程)
次に、得られた積層体を焼成する。電極層用ペーストに含まれるカーボン材料の消失を抑制する観点から、焼成雰囲気の酸素分圧に上限を設けることが好ましい。具体的には、焼成雰囲気の酸素分圧を2×10-13atm以下とすることが好ましい。一方、リン酸塩系固体電解質の融解を抑制する観点から、焼成雰囲気の酸素分圧に下限を設けることが好ましい。具体的には、焼成雰囲気の酸素分圧を5×10-22atm以上とすることが好ましい。このように酸素分圧の範囲を定めることで、カーボン材料の消失およびリン酸塩系固体電解質の融解を抑制することができる。焼成雰囲気の酸素分圧の調整手法は、特に限定されるものではない。
【0067】
その後、積層チップ60の2端面に金属ペーストを塗布し、焼き付ける。それにより、第1外部電極40aおよび第2外部電極40bを形成することができる。あるいは、積層チップ60を、2端面に接する上面、下面、2側面で、第1外部電極40aと第2外部電極40bとが離間して露出できるような専用の冶具にセットし、スパッタにより電極を形成してもよい。形成した電極にめっき処理を施すことで、第1外部電極40aおよび第2外部電極40bを形成してもよい。
【0068】
本実施形態に係る製造方法によれば、カーボン粒子62の凝集体63が形成された電極層用ペーストを用いることから、図3で例示したように、複数のセラミック結晶粒61間の結晶粒界に、カーボン粒子62の凝集体63が備わるようになる。凝集体63によって少なくとも一部が画定される空隙64が備わっている。それにより、カーボン材料を用いても、イオン伝導性、電子伝導性および長期サイクル安定性が向上する。したがって、コストを抑制しつつ全固体電池100および全固体電池100aの性能向上を実現することができる。
【実施例
【0069】
以下、実施形態に従って全固体電池を作製し、特性について調べた。
【0070】
(実施例1)
Co、LiCO、リン酸2水素アンモニウム、Al、GeOを混合し、固体電解質材料粉末としてCoを所定量含むLi1.3Al0.3Ge1.7(POを固相合成法により作製した。得られた粉末を5mmφのZrOボールで、乾式粉砕(遊星ボールミルで400rpmの回転速度で30min)を行い、D90%粒子径を5μm以下とした。さらに、湿式粉砕(分散媒:イオン交換水またはエタノール)にて、ビーズ径を1.5mmφでD90%粒子径を3μmとなるまで粉砕を進め、さらに、ビーズ径を1mmφでD50%粒子径を0.3μmとなるまで粉砕を進め、D90%粒子径=2μm以下の固体電解質スラリを作製した。得られたスラリに、バインダを添加して固体電解質ペーストを得て、10μmのグリーンシートを作製した。LiCoPO、Coを所定量含むLi1.3Al0.3Ti1.7(POを上記同様に固相合成法にて合成した。
【0071】
電極活物質および固体電解質材料を湿式ビーズミル等で高分散化し、セラミックス粒子のみからなるセラミックスペーストを作製した。次に、高分散させすぎないように作製したカーボンブラックを含むカーボンペーストを作製し、セラミックスペーストとカーボンペーストとをよく混合し、内部電極層用ペーストを作製した。カーボンブラックの1次粒子平均径は20nmであり、BET値は80m/gであった。カーボンブラックの添加量は、ガラスセラミック成分に対して5wt%とした。カーボンブラックの凝集体の平均凝集径は、0.7μmであった。凝集体の平均凝集径は、カーボンブラックのほぐし方レベルによって調整した。実施例1では、ほぐし方レベルを「大」とした。1次粒子平均径については、カーボンブラックのみのSEM像を取得し、1画像につき100粒前後となるような倍率で400粒以上となる枚数を撮影し、300粒以上の定方向接線径を測長し、平均径を算出して求めた。BET値については、マックソーブ HM model-1200シリーズを用い、窒素ガス、窒素-ヘリウム(30mol%)混合ガスを用いて、BET 1点法にて計測した。実測定値が1~50mとなるようにサンプル量を計量し、ガラスセルに入れ、前処理として窒素ガスを試料に流通しながら200℃で15分加熱し吸着水を除去したものをBET計測に用いた。凝集径については、カーボンブラックペースト0.001gをエタノール50ml中に超音波浴にて3分間分散処理し、大塚電子ELSZ-2000Sにて、25℃で測定し、得られた粒径を凝集径とした。
【0072】
次に、グリーンシートを複数枚重ね合わせて形成した固体電解質層の上下に内部電極層用ペーストを印刷し、□10mmにカットした角板を試料とした。この試料に対して焼成を行った。焼成温度は、700℃とした。焼成時の酸素分圧は、500℃以上で10-13atm以下とした。
【0073】
(実施例2)
カーボンブラックのほぐし方レベルを「中」として凝集体の平均凝集径を2.5μmとしたこと以外は、実施例1と同様の条件とした。
【0074】
(実施例3)
カーボンブラックの添加量をガラスセラミック成分に対して25wt%とし、カーボンブラックのほぐし方レベルを「中」として凝集体の平均凝集径を3.8μmとしたこと以外は、実施例1と同様の条件とした。
【0075】
(実施例4)
カーボンブラックの添加量をセラミック成分に対して30wt%とし、カーボンブラックのほぐし方レベルを「中」として凝集体の平均凝集径を7.4μmとしたこと以外は、実施例1と同様の条件とした。
【0076】
(実施例5)
カーボンブラックのほぐし方レベルを「小」として凝集体の平均凝集径を8.9μmとしたこと以外は、実施例1と同様の条件とした。
【0077】
(実施例6)
カーボンブラックの1次粒子平均径を80nmとし、BET値を10m/gとし、カーボンブラックのほぐし方レベルを「小」として凝集体の平均凝集径を9.5μmとしたこと以外は、実施例1と同様の条件とした。
【0078】
(比較例1)
カーボンブラックのほぐし方レベルを「最大」として凝集体の平均凝集径を0.3μmとしたこと以外は、実施例1と同様の条件とした。
【0079】
(分析)
クロスセクションポリッシャで加工した電極層のSEM画像を取得した。SEM画像解析には、BSE(後方散乱電子)像を用いた。カーボン凝集粒子が400個以上となるように1万倍前後の倍率で数枚撮影し、画像解析ソフト(ImageJ Fiji:Schneider, C.A., Rasband, W.S., Elieiri, K. W. "NIH Image to ImageJ: 25 years of image analysis." Nature Methods 9, 671-675, 2012)を用いた。カーボンブラックの分散状態と、カーボンブラックの凝集体が画定する空隙の有無と、測定エリア面積に対するカーボン凝集粒子のトータル面積の比率と、カーボン凝集体トータル面積に対する、カーボン凝集体中の空隙トータル面積の比率とを調べた。図6に結果を示す。
【0080】
(空隙の有無)
実施例1~実施例6のいずれにおいても、カーボンブラック凝集体と、当該凝集体が少なくとも一部を画定する空隙が確認された。比較例1では凝集体が少なくとも一部を画定する空隙が確認されなかった。実施例2,3,5,6では「◎」と判定され、実施例1,4では「〇」と判定され、比較例1では「×」と判定された。
【0081】
(空隙/凝集体)
凝集体における空隙の面積比率は、実施例1では5%であり、実施例2では26%であり、実施例3では26%であり、実施例4では24%であり、実施例5では50%であり、実施例6では30%であり、比較例1では2%であった。
【0082】
(凝集体/全体)
電極層全体に対する凝集体の体積は、実施例1では7%であり、実施例2では10%であり、実施例3では43%であり、実施例4では50%であり、実施例5では15%であり、実施例6では9%であり、比較例1では5%であった。
【0083】
(サイクル特性)
実施例1~6および比較例1に対して、サイクル特性を調べた。実施例1,4では「〇」と判定され、実施例2,3,5,6では「◎」と判定され、比較例1では「×」と判定された。25℃、2.7V-0Vの電圧範囲で1Cにて充放電を行い、初回放電容量に対し、100サイクル後の放電容量の値が80%以上で「◎」、60%以上で「○」、60%以下で「×」と判定した。
【0084】
(電子伝導性)
実施例1~6および比較例1に対して、電子伝導性を調べた。実施例1~3では「◎」と判定され、実施例4~6および比較例1では「〇」と判定された。電極ペーストを乾燥した混合粉末から、10mmΦで厚み2mmペレットを作製、全固体電池と同様の焼成手順で焼結体を作製した。上下面に金電極をスパッタリング形成し、導電率を測定した。10S/cm以上の値で「◎」、10-4~10-1S/cmで「○」、10-4以下「×」と判定した。
【0085】
(イオン伝導性)
実施例1~6および比較例1に対して、イオン伝導性を調べた。実施例1,2では「◎」と判定され、実施例3,5,6および比較例1では「〇」と判定され、実施例4では「△」と判定された。電極ペーストを乾燥した混合粉末から、10mmΦで厚み2mmペレットを作製、上下に10μmの固体電解質層を貼りつけ、全固体電池と同様の焼成手順で焼結体を作製した。上下面に金電極をスパッタリング形成し、導電率を測定した。10-5S/cm以上の値で「◎」、10-6~10-5S/cmで「○」、10-6以下で「×」と判定した。
【0086】
(総合判定)
サイクル特性、電子伝導性およびイオン伝導性において、1つも「×」が無ければ合格と判定した。合格したもののうち、1つでも「〇」または「△」が含まれるものは良好「〇」と判定し、全て「◎」であれば非常に良好「◎」と判定した。1つでも「×」があれば不合格「×」と判定した。
【0087】
実施例1~6では、総合判定が合格と判定された。これは、電極層内において、カーボン粒子の凝集体が形成され、当該凝集体が少なくとも一部を画定する空隙が形成されたからであると考えられる。比較例1では、総合判定が不合格と判定された。これは、凝集体が少なくとも一部を画定する空隙が形成されなかったからであると考えられる。
【0088】
なお、サイクル特性において、実施例1,4と比較して実施例2,3,5,6では「◎」と判定された。これは、凝集体における空隙の面積比率が25%以上となったからであると考えられる。また、実施例1,2でイオン伝導性が「◎」と判定されたのは、カーボン添加量が少な目かつ適度な凝集径とすることで、焼結阻害が抑制され、セラミック成分が緻密化した結果、イオン伝導の向上につながったからであると考えられる。
【0089】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0090】
10 第1電極
11 第1電極層
12 第1集電体層
20 第2電極
21 第2電極層
22 第2集電体層
30 固体電解質層
40a 第1外部電極
40b 第2外部電極
100 全固体電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6