(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】カチオン電着塗料組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20231212BHJP
C09D 5/44 20060101ALI20231212BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20231212BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20231212BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/44 A
C09D7/61
C09D7/65
(21)【出願番号】P 2019129248
(22)【出願日】2019-07-11
【審査請求日】2022-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】坂井 菜見子
(72)【発明者】
【氏名】小谷 誠之
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0282557(US,A1)
【文献】特開2018-184489(JP,A)
【文献】特開2009-280803(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106883690(CN,A)
【文献】特表2017-508025(JP,A)
【文献】特開平08-245917(JP,A)
【文献】特開昭63-245917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗膜形成樹脂(A)
、シリコーン化合物(C)
および顔料分散ペーストを含むカチオン電着塗料組成物であって、
前記顔料分散ペーストは、3価の金属元素を含む金属化合物(B)、顔料分散樹脂、封鎖剤および顔料を含み、
前記封鎖剤は、水酸基価150mgKOH/g以上650mgKOH/g以下およびアミン価30mgKOH/g以上190mgKOH/g以下であるアミン変性エポキシ樹脂および多価酸からなる群から選択される1種またはそれ以上を含み、
前記金属化合物(B)の含有量は、前記塗膜形成樹脂(A)の樹脂固形分100質量部に対して、金属元素換算で0.03質量部以上4質量部未満であり、
前記シリコーン化合物(C)の含有量は、前記塗膜形成樹脂(A)の樹脂固形分100質量部に対して0.005質量部以上4.5質量部以下であ
り、
前記金属化合物(B)は、Y、La、Ce、Nd、Pr、YbおよびBiからなる群から選択される1種またはそれ以上の酸化物であり、
前記シリコーン化合物(C)は、ポリエーテル変性シリコーン化合物(C-1)であって、かつ、SP値が10.5を超え15.0以下である、
カチオン電着塗料組成物。
【請求項2】
前記シリコーン化合物(C)が、水系溶媒中に溶解又は分散可能である、請求項
1に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項3】
請求項1
または2に記載のカチオン電着塗料組成物に、被塗物を浸漬し、電着塗装を行い、未硬化の電着塗膜を形成すること、及び
前記未硬化の電着塗膜を加熱硬化させて、被塗物上に硬化電着塗膜を形成すること、
を包含する、硬化電着塗膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカチオン電着塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
金属基材などの被塗物の表面には、種々の役割を持つ複数の塗膜を形成して、被塗物を保護すると同時に美しい外観を付与している。一般に、被塗物に防食性を付与する塗膜としては、電着塗装により形成される電着塗膜が広く用いられている。電着塗装は、複雑な形状を有する被塗物であっても細部にまで塗装を施すことができ、自動的かつ連続的に塗装することができるので、特に自動車車体などの大型で複雑な形状を有する被塗物の下塗り塗装方法として広く実用化されている。このような電着塗装として、カチオン電着塗料組成物を用いる電着塗装が広く用いられている。
【0003】
塗膜は、被塗物の防食性付与が求められることに加えて、その表面状態の良好さも求め
られる。塗膜の平滑性を低下させる要因の1つとして、例えばハジキと言われる現象が挙げられる。ここでいう「ハジキ」とは、一連の塗装・乾燥工程において生じる塗膜表面の表面欠陥(くぼみ・孔)を指す。これらの表面欠陥をもたらす成分(原因物質)は一般に、例えば塗料組成物の原材料、製造装置、容器、塗装する基材などから、意図せずに塗料組成物中に持ち込まれることが多い。そしてこのような原因物質を塗料組成物から完全に排除することは困難である。
【0004】
例えば特開2012-092293号公報(特許文献1)には、顔料分散用樹脂(A)、セルロース(B)、体質顔料(C)及び水を含有する、電着塗料用顔料分散ペーストであって、体質顔料(C)が、-10mV~+50mVの範囲のゼータ電位を有し、前記顔料分散ペーストが、固形分換算で、顔料分散用樹脂(A)100質量部あたり、セルロース(B)及び体質顔料(C)を、それぞれ、0.1~25質量部及び80~800質量部の比率で含むことを特徴とする、前記顔料分散ペーストについて記載される(請求項1)。特許文献1には、この顔料分散ペーストが含まれることによって、攪拌、循環等が長期間に渡って停止した後に使用した際に、ハジキ、ブツ等の不具合が発生しにくくなると記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の発明は、特定の体質顔料(C)を用いることによってハジキの発生を防ぐことを試みた発明である。一方で特定の顔料を必須成分とすることによって、電着塗料組成物の色調そして塗膜物性など設計範囲が制限される可能性もある。また近年においては、さらに高レベルのハジキ発生防止性能が求められる傾向にある。本発明は、上記技術的課題を解決することを目的とするものであり、より高レベルのハジキ発生防止性能を有する電着塗料組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は下記態様を提供する。
[1]
塗膜形成樹脂(A)、3価の金属元素を含む金属化合物(B)およびシリコーン化合物(C)を含むカチオン電着塗料組成物であって、
上記金属化合物(B)の含有量は、上記塗膜形成樹脂(A)の樹脂固形分100質量部に対して、金属元素換算で0.03質量部以上4質量部未満であり、
上記シリコーン化合物(C)の含有量は、上記塗膜形成樹脂(A)の樹脂固形分100質量部に対して0.005質量部以上4.5質量部以下である、
カチオン電着塗料組成物。
[2]
上記金属化合物(B)に含まれる金属元素は、Y、La、Ce、Nd、Pr、YbおよびBiからなる群から選択される1種またはそれ以上である、カチオン電着塗料組成物。
[3]
上記シリコーン化合物(C)は、SP値が10.5を超え15.0以下である、カチオン電着塗料組成物。
[4]
上記シリコーン化合物(C)は、ポリエーテル変性シリコーン化合物(C-1)、ポリエステル変性シリコーン化合物(C-2)及びポリアクリル変性シリコーン化合物(C-3)からなる群から選択される少なくとも1つである、カチオン電着塗料組成物。
[5]
上記シリコーン化合物(C)が、水系溶媒中に溶解又は分散可能である、カチオン電着塗料組成物。
[6]
上記カチオン電着塗料組成物に、被塗物を浸漬し、電着塗装を行い、未硬化の電着塗膜を形成すること、及び
上記未硬化の電着塗膜を加熱硬化させて、被塗物上に硬化電着塗膜を形成すること、
を包含する、硬化電着塗膜の形成方法。
【発明の効果】
【0008】
上記カチオン電着塗料組成物は、良好なハジキ防止性能を有する。上記カチオン電着塗料組成物を用いることによって、良好な塗膜外観を有する硬化電着塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上記カチオン電着塗料組成物は、塗膜形成樹脂(A)、3価の金属元素を含む金属化合物(B)およびシリコーン化合物(C)を含む。以下、各成分について記載する。
【0010】
塗膜形成樹脂(A)
カチオン電着塗料組成物は塗膜形成樹脂(A)を含む。カチオン電着塗料組成物に含まれる塗膜形成樹脂(A)は、アミン化樹脂および硬化剤を含む樹脂エマルションを含むのが好ましい。
【0011】
アミン化樹脂
アミン化樹脂は電着塗膜を構成する塗膜形成樹脂である。アミン化樹脂として、樹脂骨格中のオキシラン環を有機アミン化合物で変性して得られるアミン変性エポキシ樹脂が好ましい。一般にアミン変性エポキシ樹脂は、出発原料樹脂分子内のオキシラン環を1級アミン、2級アミンあるいは3級アミンおよび/またはその酸塩などのアミン類との反応によって開環して調製される。出発原料樹脂の典型例は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどの多環式フェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応生成物であるポリフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂である。また他の出発原料樹脂の例として、特開平5-306327号公報に記載のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を挙げることができる。これらのエポキシ樹脂は、ジイソシアネート化合物、またはジイソシアネート化合物のイソシアネート基をメタノール、エタノールなどの低級アルコールでブロックして得られたビスウレタン化合物と、エピクロルヒドリンとの反応によって調製することができる。
【0012】
上記出発原料樹脂は、アミン類によるオキシラン環の開環反応の前に、2官能性のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ビスフェノール類、2塩基性カルボン酸などにより鎖延長して用いることができる。特にビスフェノール類は、アミン類によるオキシラン環の開環反応時に用いて、鎖延長してもよい。
【0013】
また同じく、アミン類によるオキシラン環の開環反応の前に、分子量またはアミン当量の調節、熱フロー性の改良などを目的として、一部のオキシラン環に対して2-エチルヘキサノール、ノニルフェノール、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテルなどのモノヒドロキシ化合物、オクチル酸などのモノカルボン酸化合物を付加して用いることもできる。
【0014】
オキシラン環を開環し、アミノ基を導入する際に使用し得るアミン類の例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミンなどの1級アミン、2級アミンまたは3級アミンおよび/もしくはその酸塩を挙げることができる。また、アミノエチルエタノールアミンメチルイソブチルケチミンなどのケチミンブロック1級アミノ基含有2級アミン、ジエチレントリアミンジケチミンも使用することができる。これらのアミン類は、全てのオキシラン環を開環させるために、オキシラン環に対して少なくとも当量で反応させる必要がある。
【0015】
アミン化樹脂の数平均分子量は、1,000~5,000であるのが好ましい。数平均分子量が1,000以上であることにより、得られる硬化電着塗膜の耐溶剤性および耐食性などの物性が良好となる。一方で、数平均分子量が5,000以下であることにより、アミン化樹脂の粘度調整が容易となって円滑な合成が可能となり、また、得られたアミン化樹脂の乳化分散の取扱いが容易になる。アミン化樹脂の数平均分子量は1,600~3,200の範囲であるのがより好ましい。
【0016】
なお、本明細書において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0017】
アミン化樹脂のアミン価は、20~100mgKOH/gの範囲内であるのが好ましい。アミン化樹脂のアミン価が20mgKOH/g以上であることにより、電着塗料組成物中におけるアミン化樹脂の乳化分散安定性が良好となる。一方で、アミン価が100mgKOH/g以下であることにより、硬化電着塗膜中のアミノ基の量が適正となり、塗膜の耐水性を低下させるおそれがない。アミン化樹脂のアミン価は、20~80mgKOH/gの範囲内であるのがより好ましい。
【0018】
アミン化樹脂の水酸基価は、50~400mgKOH/gの範囲内であるのが好ましい。水酸基価が50mgKOH/g以上であることにより、硬化電着塗膜において硬化が良好となる。一方で、水酸基価が400mgKOH/g以下であることにより、硬化電着塗膜中に残存する水酸基の量が適正となり、塗膜の耐水性を低下させるおそれがない。アミン化樹脂の水酸基価は、100~300mgKOH/gの範囲内であるのがより好ましい。
【0019】
本発明の電着塗料組成物において、数平均分子量が1,000~5,000であり、アミン価が20~100mgKOH/gであり、かつ、水酸基価が50~400mgKOH/gであるアミン化樹脂を用いることによって、被塗物に優れた耐食性を付与することができるという利点がある。
【0020】
なおアミン化樹脂としては、必要に応じて、アミン価および/または水酸基価の異なるアミン化樹脂を併用してもよい。2種以上の異なるアミン価、水酸基価のアミン化樹脂を併用する場合は、使用するアミン化樹脂の質量比に基づいて算出する平均アミン価および平均水酸基価が、上記の数値範囲であるのが好ましい。また、併用するアミン化樹脂としては、アミン価が20~50mgKOH/gであり、かつ、水酸基価が50~300mgKOH/gであるアミン化樹脂と、アミン価が50~200mgKOH/gであり、かつ、水酸基価が200~500mgKOH/gであるアミン化樹脂との併用が好ましい。このような組合わせを用いると、エマルションのコア部がより疎水となりシェル部が親水となるため優れた耐食性を付与することができるという利点がある。
【0021】
なおアミン化樹脂は、必要に応じて、アミノ基含有アクリル樹脂、アミノ基含有ポリエステル樹脂などを含んでもよい。
【0022】
硬化剤
上記樹脂エマルションは硬化剤を含む。硬化剤として、ブロックイソシアネート硬化剤が好適に用いられる。ブロックイソシアネート硬化剤は、ポリイソシアネートを、ブロック剤でブロック化することによって調製することができる。
【0023】
ポリイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(3量体を含む)、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイシシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)などの脂環式ポリイソシアネート;4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物(ウレタン化物、カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトンイミン、ビューレットおよび/またはイソシアヌレート変性物など);が挙げられる。
【0024】
ブロック剤の例としては、n-ブタノール、n-ヘキシルアルコール、2-エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、フェノールカルビノール、メチルフェニルカルビノールなどの一価のアルキル(または芳香族)アルコール類;エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテルなどのセロソルブ類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールフェノールなどのポリエーテル型両末端ジオール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオールなどのジオール類と、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸などのジカルボン酸類から得られるポリエステル型両末端ポリオール類;パラ-t-ブチルフェノール、クレゾールなどのフェノール類;ジメチルケトオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、メチルアミルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類;およびε-カプロラクタム、γ-ブチロラクタムに代表されるラクタム類が好ましく用いられる。
【0025】
ブロックイソシアネート硬化剤のブロック化率は100%であるのが好ましい。これにより、電着塗料組成物の貯蔵安定性が良好になるという利点がある。
【0026】
ブロックイソシアネート硬化剤は、脂肪族ジイソシアネートをブロック剤でブロック化することによって調製された硬化剤と、芳香族ジイソシアネートをブロック剤でブロック化することによって調製された硬化剤とを併用することが好ましい。
【0027】
ブロックイソシアネート硬化剤は、アミン化樹脂の1級アミンと優先的に反応し、さらに水酸基と反応して硬化する。硬化剤としては、メラミン樹脂またはフェノール樹脂などの有機硬化剤、シランカップリング剤、金属硬化剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の硬化剤を、ブロックイソシアネート硬化剤と併用してもよい。
【0028】
樹脂エマルションの調製
樹脂エマルションは、アミン化樹脂および硬化剤それぞれを、有機溶媒中に溶解させて、溶液を調製し、これらの溶液を混合した後、中和酸を用いて中和することにより、調製することができる。中和酸として、例えば、メタンスルホン酸、スルファミン酸、乳酸、ジメチロールプロピオン酸、ギ酸、酢酸などの有機酸が挙げられる。本発明においては、アミン化樹脂および硬化剤を含む樹脂エマルションを、ギ酸、酢酸および乳酸からなる群から選択される1種またはそれ以上の酸によって中和するのがより好ましい。
【0029】
硬化剤の含有量は、硬化時にアミン化樹脂中の、1級アミノ基、2級アミノ基または水酸基などの活性水素含有官能基と反応して、良好な硬化塗膜を与えるのに十分な量が必要とされる。好ましい硬化剤の含有量は、アミン化樹脂と硬化剤との固形分質量比(アミン化樹脂/硬化剤)で表して90/10~50/50、より好ましくは80/20~65/35の範囲である。アミン化樹脂と硬化剤との固形分質量比の調整により、造膜時の塗膜(析出膜)の流動性および硬化速度が改良され、塗装外観が向上する。
【0030】
樹脂エマルションの固形分量は、通常、樹脂エマルション全量に対して25~50質量%、特に35~45質量%であるのが好ましい。ここで「樹脂エマルションの固形分」とは、樹脂エマルション中に含まれる成分であって、溶媒の除去によっても固形となって残存する成分全ての質量を意味する。具体的には、樹脂エマルション中に含まれる、アミン化樹脂、硬化剤および必要に応じて添加される他の固形成分の質量の総量を意味する。
【0031】
中和酸は、アミン化樹脂が有するアミノ基の当量に対する中和酸の当量比率として、10~100%となる量で用いるのがより好ましく、20~70%となる量で用いるのがさらに好ましい。本明細書において、アミン化樹脂が有するアミノ基の当量に対する中和酸の当量比率を、中和率とする。中和率が10%以上であることにより、水への親和性が確保され、水分散性が良好となる。
【0032】
ある態様において、塗膜形成樹脂(A)がアミン化樹脂及び硬化剤を含む樹脂エマルションを含む場合、塗膜形成樹脂の樹脂固形分100質量部とは、これらの樹脂固形分の合計が100質量部であることを意味する。また、この例の他に、塗膜形成樹脂(A)が複数種の樹脂を含む場合、塗膜形成樹脂(A)に含まれる樹脂固形分の100質量部とは、複数種の樹脂固形分の合計が100質量部であることを意味する。
【0033】
塗膜形成樹脂(A)が含んでもよい他の塗膜形成樹脂成分として、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン系樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂などが挙げられる。
【0034】
3価の金属元素を含む金属化合物(B)
上記カチオン電着塗料組成物は、3価の金属元素を含む金属化合物(B)を含む。本明細書における「3価の金属元素」とは、3価の陽イオンとなる金属元素を意味する。3価の金属元素として、例えば、Y、La、Ce、Nd、Pr、Yb、Biなどが挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を併用してもよい。上記金属化合物の形態として、金属酸化物、金属水酸化物などが挙げられる。
【0035】
金属化合物(B)に含まれる金属元素として、Y、La、Ce、NdおよびBiからなる群から選択される1種またはそれ以上であるのが好ましい。
【0036】
上記カチオン電着塗料組成物が上記金属化合物(B)を含むことによって、良好な防錆性および硬化性などが得られる利点がある。そして本発明はさらに、カチオン電着塗料組成物において上記金属化合物(B)およびシリコーン化合物(C)を併用することによって、良好なハジキ発生防止性能が達成される利点がある。
【0037】
例えば金属化合物(B)としてビスマス化合物を含む場合は、カチオン電着塗料組成物に対して良好な硬化性能を付与することができる。カチオン電着塗料組成物にビスマス化合物が含まれることによって、硬化触媒としての鉛化合物、有機錫化合物などを用いる必要がなくなる。これにより、実質的に錫化合物および鉛化合物の何れも含まない電着塗料組成物を調製することができる。
【0038】
金属化合物(B)の含有量は、カチオン電着塗料組成物中に含まれる樹脂固形分100質量部に対して、金属元素換算で0.03質量部以上4質量部未満となる量である。金属化合物(B)の含有量が0.03質量部未満である場合は、得られる硬化電着塗膜の塗膜外観およびハジキ発生防止性能のバランスが崩れるおそれがある。また、金属化合物(B)の含有量が4質量部以上である場合は、得られる硬化電着塗膜の塗膜外観が劣るおそれがある。金属化合物(B)の含有量は、0.04質量部以上3.8質量部以下であるのが好ましく、0.05質量部以上3.5質量部以下であるのがより好ましい。
【0039】
シリコーン化合物(C)
上記カチオン電着塗料組成物は、シリコーン化合物(C)を含む。シリコーン化合物(C)は、SP値が10.5を超え、SP値が15.0以下であるのが好ましい。
【0040】
上記カチオン電着塗料組成物は、上記金属化合物(B)およびシリコーン化合物(C)の両方を特定の含有量の範囲内で含むことにより、例えば、後述するかけ流し油ハジキ評価および混入油ハジキ評価で示されるような、油分が存在するメカニズムが異なる場合であっても、良好なハジキ防止性を示すことができる。したがって、例えば、間接炉、乾燥炉など乾燥、硬化工程等で用いられる装置由来の油分、すなわち、塗装後、硬化前に混入し得る油分に対しても良好なハジキ防止性を示すことができる。例えば、塗装後、硬化前に混入し得る油分は、焼き付け温度付近などの高温の状態で混入される場合がある。更に、塗料組成物に油分が混在する場合、被塗物に油分が残存し得るような条件で塗膜を形成しても、良好なハジキ防止性を示すことができる。
【0041】
その上、得られる電着塗膜は良好な外観を示すことができ、例えば、ブツ(小さな突起様の不純物)の発生も抑制することができる。更に、均一塗膜表面を有し、塗装ムラが生じない等、良好な塗膜外観を有することもできる。
【0042】
上記シリコーン化合物(C)は、SP値が10.5を超え、SP値が15.0以下であるのが好ましい。上記SP値は11.0以上15.0以下であるのがより好ましく、12.0以上15.0以下であるのがさらに好ましい。上記SP値は12.3以上15.0未満であるのが特に好ましく、12.5以上15.0未満であるのがとりわけ好ましい。
【0043】
シリコーン化合物(C)のSP値がこのような範囲内であることにより、得られた塗膜の外観を損ねず、油分の侵入経路が様々な条件であっても、良好なハジキ防止性が得られる利点がある。更に、例えば、上塗り塗膜等とも良好な密着性を示すことができる。また、シリコーン化合物(C)のSP値がこのような範囲内であることにより、ハジキ発生防止性能を良好に確保でき、その上、良好な塗料安定性を得ることができる利点がある。特定の理論に限定して解釈すべきではないが、シリコーン化合物(C)のSP値がこのような範囲内であることにより、塗料安定性を損ねることなく、良好なハジキ防止性と外観を高位に両立できるものと考えられる。
【0044】
SP値とは、solubility parameter(溶解性パラメーター)の略であり、溶解性の尺度となるものである。SP値は数値が大きいほど極性が高く、逆に数値が小さいほど極性が低いことを示す。
【0045】
例えば、SP値は次の方法によって実測することができる[参考文献:SUH、CLARKE、J.P.S.A-1、5、1671~1681(1967)]。
【0046】
サンプルとして、有機溶剤0.5gを100mlビーカーに秤量し、アセトン10mlを、ホールピペットを用いて加え、マグネティックスターラーにより溶解したものを使用する。このサンプルに対して測定温度20℃で、50mlビュレットを用いて貧溶媒を滴下し、濁りが生じた点を滴下量とする。貧溶媒は、高SP貧溶媒としてイオン交換水を用い、低SP貧溶媒としてn-ヘキサンを使用して、それぞれ濁点測定を行う。有機溶剤のSP値δは下記計算式によって与えられる。
δ=(Vml
1/2δml+Vmh
1/2δmh)/(Vml
1/2+Vmh
1/2)
Vm=V1V2/(φ1V2+φ2V1)
δm=φ1δ1+φ2δ2
Vi:溶媒の分子容(ml/mol)
φi:濁点における各溶媒の体積分率
δi:溶媒のSP値
ml:低SP貧溶媒混合系
mh:高SP貧溶媒混合系
【0047】
なお、シリコーン化合物(C)が、複数種のシリコーン化合物(C)を含む場合、シリコーン化合物(C)のSP値は、各化合物のSP値を用いて、シリコーン化合物(C)成分中における固形分質量比を元に平均値を算出することによって、求めることができる。
【0048】
上記カチオン電着塗料組成物は、塗膜形成樹脂(A)の樹脂固形分100質量部に対して、シリコーン化合物(C)を0.005質量部以上4.5質量部以下で含む。シリコーン化合物(C)の含有量は0.006質量部以上4.0質量部以下であるのが好ましく、0.008質量部以上3.8質量部以下であるのがさらに好ましい。
【0049】
シリコーン化合物(C)の量がこのような範囲内であることにより、得られた塗膜の外観を損ねず、混入油ハジキ評価、かけ流し油ハジキ評価などで起こり得る、メカニズムの異なる種々のハジキに対しても、良好なハジキ防止性を有する。更に、例えば、上塗り塗膜等、種々の塗膜とも良好な密着性を示すことができる利点がある。
【0050】
上記所定のSP値を有するシリコーン化合物(C)は、水系で安定して存在でき、水系溶媒中に溶解又は分散可能であり、単体で水に容易に分散することができるなどの利点がある。本明細書において、シリコーン化合物(C)が水系溶媒中に溶解又は分散可能であるとは、上記シリコーン化合物(C)を、本開示で示される所定量で、常温にて、水系溶媒と混合した場合、容易に溶解又は均一に分散できることを意味する。また、単体で水に容易に分散するとは、分散剤、界面活性剤などを用いなくても、シリコーン化合物(C)が、常温で、水系溶媒に均一に分散できることを意味する。
【0051】
シリコーン化合物(C)がこのような性質を有することにより、良好な塗料安定性を有することができ、例えば、水系での安定性を有する。その上、カチオン塗料組成物の製造に際し、シリコーン化合物(C)を、溶剤による希釈を行なうことなく、水系溶媒に分散できるので、環境に対する負荷も低減することができる。
【0052】
ある態様において、シリコーン化合物(C)は、ポリシロキサンを主骨格に有する。例えば、ポリシロキサンは、分子中にSi原子を3~20個有し、例えば、3~10個有する。ある態様においてシリコーン化合物(C)は、ポリジメチルシロキサンを主骨格に有する。
【0053】
ある態様において、シリコーン化合物(C)は、ポリエーテル変性シリコーン化合物(C-1)、ポリエステル変性シリコーン化合物(C-2)及びポリアクリル変性シリコーン化合物(C-3)からなる群から選択される少なくとも1つである。本開示のカチオン電着塗料組成物は、これら変性シリコーン化合物を単独で含んでもよく、組合せて含んでもよい。
このようなシリコーン化合物(C)を含むことにより、本開示のカチオン電着塗料組成物は、より良好なハジキ防止性と、より良好な塗膜外観とを共に備えることができ、その上、より良好な塗料安定性を示すことができる。
【0054】
ある態様において、シリコーン化合物(C)は、ポリエーテル変性シリコーン化合物(C-1)と、ポリエステル変性シリコーン化合物(C-2)及びポリアクリル変性シリコーン化合物(C-3)から選択される少なくとも1種とを含む。
シリコーン化合物(C)は、このような組合せを含むことにより、より安定な水和性を備えることができる。
また、このようなシリコーン化合物(C)を有する、本開示のカチオン電着塗料組成物は、優れたハジキ防止性を有することができる。また、より良好な、塗料の安定性を示すことができる。更に、カチオン電着塗料組成物から形成した電着塗膜と、上塗り塗膜等との密着性がより良好となるなどの利点がある。
【0055】
ポリエーテル変性シリコーン化合物(C-1)として、ポリシロキサンの末端および/または側鎖に、ポリエーテル鎖が導入された化合物等が挙げられる。例えば、ポリシロキサンにポリエーテル鎖以外の置換基を更に有してもよい。
ある態様において、ポリエーテル変性シリコーン化合物(C-1)は、ポリシロキサン、例えば、ポリジメチルシロキサン等の側鎖に、ポリエーテル鎖が導入された化合物である。
ポリエーテル変性シリコーン化合物(C-1)を含むことで、本開示のカチオン電着塗料組成物は、より優れたハジキ防止性、より優れた塗膜外観、例えば、良好な塗膜平滑性及び塗装ムラが生じない等の効果を示すことができる。また、より良好な、塗料の安定性を示すことができる。更に、カチオン電着塗料組成物から形成した電着塗膜と、上塗り塗膜等との密着性がより良好となるなどの利点がある。
【0056】
ポリエステル変性シリコーン化合物(C-2)として、ポリシロキサンの末端および/または側鎖に、ポリエステル鎖が導入された化合物等が挙げられる。例えば、ポリシロキサンにポリエステル鎖以外の置換基を更に有してもよい。
ある態様において、ポリエステル変性シリコーン化合物(C-2)は、ポリシロキサン、例えば、ポリジメチルシロキサン等の側鎖に、ポリエステル鎖が導入された化合物である。
ポリエステル変性シリコーン化合物(C-2)を含むことで、本開示のカチオン電着塗料組成物は、より優れたハジキ防止性、塗膜外観を示すことができる。また、より良好な、塗料の安定性を示すことができる。更に、カチオン電着塗料組成物から形成した電着塗膜と、上塗り塗膜等との密着性がより良好となるなどの利点がある。
【0057】
ポリアクリル変性シリコーン化合物(C-3)として、ポリシロキサンの末端および/または側鎖に、ポリアクリル鎖が導入された化合物等が挙げられる。例えば、ポリシロキサンにポリアクリル鎖以外の置換基を更に有してもよい。
ある態様において、ポリアクリル変性シリコーン化合物(C-3)は、ポリシロキサン、例えば、ポリジメチルシロキサン等の側鎖に、ポリアクリル鎖が導入された化合物である。
ポリアクリル変性シリコーン化合物(C-3)を含むことで、本開示のカチオン電着塗料組成物は、より優れたハジキ防止性、塗膜外観を示すことができる。また、より良好な、塗料の安定性を示すことができる。更に、カチオン電着塗料組成物から形成した電着塗膜と、上塗り塗膜等との密着性がより良好となるなどの利点がある。
【0058】
顔料および顔料分散ペースト
上記カチン電着塗料組成物は、上記成分に加えて顔料を含んでもよい。カチオン電着塗料組成物が顔料を含む場合は、電着塗料組成物の調製において、顔料および顔料分散剤を用いて顔料分散ペーストを調製するのが好ましい。顔料分散ペーストは、当業者において知られた方法により調製することができる。
【0059】
顔料分散ペーストの調製において、上記金属化合物(B)を分散させるのが好ましい。このような顔料分散ペーストの調製の態様例として例えば下記態様例1から3が挙げられる。
【0060】
態様例1
顔料分散ペーストは、金属化合物(B)、顔料分散樹脂および顔料;を含み、
上記顔料分散ペーストは、
上記金属化合物(B)と、上記顔料分散樹脂を混合し、得られた混合物と、上記顔料分散樹脂と、上記顔料とを混合する工程によって調製される、態様。
態様例2
顔料分散ペーストは、金属化合物(B)、顔料分散樹脂、封鎖剤および顔料;を含み、
上記封鎖剤は、水酸基価150~650mgKOH/gおよびアミン価30~190mgKOH/gであるアミン変性エポキシ樹脂および多価酸からなる群から選択される1種またはそれ以上を含み、および
上記顔料分散ペーストは、
上記金属化合物(B)と、上記顔料分散樹脂と、封鎖剤とを混合し、得られた混合物と、上記顔料分散樹脂と、上記顔料とを混合する工程によって調製される、態様。
態様例3
顔料分散ペーストは、金属化合物(B)、顔料分散樹脂、有機酸、封鎖剤および顔料;を含み、
上記有機酸は、ヒドロキシモノカルボン酸およびスルホン酸からなる群から選択される1種またはそれ以上の化合物であり、
上記封鎖剤は、水酸基価150~650mgKOH/gおよびアミン価30~190mgKOH/gであるアミン変性エポキシ樹脂および多価酸からなる群から選択される1種またはそれ以上を含み、および
上記顔料分散ペーストは、
上記金属化合物(B)と、上記有機酸とを混合し、得られた混合物と、上記顔料分散樹脂と、上記封鎖剤とを混合し、次いで上記顔料とを混合する工程によって調製される、態様。
以下、顔料分散ペーストに含まれる各成分について詳述する。
【0061】
顔料分散樹脂
顔料分散樹脂は、顔料を分散させるための樹脂であり、水性媒体中に分散されて使用される。顔料分散樹脂として、4級アンモニウム基、3級スルホニウム基および1級アミン基から選択される少なくとも1種またはそれ以上を有する変性エポキシ樹脂などの、カチオン基を有する顔料分散樹脂を用いることができる。水性溶媒としてはイオン交換水または少量のアルコール類を含む水などを用いる。
【0062】
顔料分散樹脂として、水酸基価が20~120mgKOH/gであるアミン変性エポキシ樹脂が好ましく用いられる。水酸基価が20~120mgKOH/gであるアミン変性エポキシ樹脂は、例えば、水酸基を有するエポキシ樹脂の水酸基に対して、ハーフブロックイソシアネートを反応させて、ブロックイソシアネート基を導入することによって、調製することができる。
【0063】
上記エポキシ樹脂としては、一般的にはポリエポキシドが用いられる。このエポキシドは、1分子中に平均2個以上の1,2-エポキシ基を有する。このようなポリエポキシドの有用な例として、上述のエポキシ樹脂が挙げられる。
【0064】
エポキシ樹脂と反応させるために用いられるハーフブロックイソシアネートは、ポリイソシアネートを部分的にブロックすることにより調製される。ポリイソシアネートとブロック剤との反応は、必要に応じた硬化触媒(例えばスズ系触媒など)の存在の下で、攪拌下、ブロック剤を滴下しながら40~50℃に冷却することにより行うことが好ましい。
【0065】
上記のポリイソシアネートは、1分子中に平均で2個以上のイソシアネート基を有するものであれば特に限定されない。具体的な例としては、上記ブロックイソシアネート硬化剤の調製で用いることができるポリイソシアネートを用いることができる。
【0066】
上記のハーフブロックイソシアネートを調製するための適当なブロック化剤としては、4~20個の炭素原子を有する低級脂肪族アルキルモノアルコールが挙げられる。具体的には、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、ヘプチルアルコールなどが挙げられる。
【0067】
上記のエポキシ樹脂とハーフブロックイソシアネートとの反応は、好ましくは140℃で約1時間保つことにより行われる。
【0068】
上記3級アミンとして、炭素数1~6のものが好ましく用いることができる。3級アミンの具体例として、例えば、ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジエチルベンジルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、トリ-n-ブチルアミン、ジフェネチルメチルアミン、ジメチルアニリン、N-メチルモルホリンなどが挙げられる。
【0069】
さらに上記3級アミンと混合して用いられる中和酸としては、特に制限はなく、具体的には、塩酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸のような無機酸または有機酸などである。中和酸は、ギ酸、酢酸および乳酸からなる群から選択される1種またはそれ以上の酸であるのがより好ましい。このようにして得られる3級アミンの中和酸塩とエポキシ樹脂との反応は、常法により行うことができる。例えば、エチレングリコールモノブチルエーテルなどの溶剤に上記エポキシ樹脂を溶解させ、得られた溶液を60~100℃まで加熱し、ここへ3級アミンの中和酸塩を滴下して、酸価が1となるまで反応混合物を60~100℃に保持して行われる。
【0070】
上記水酸基価が20~120mgKOH/gであるアミン変性エポキシ樹脂は、エポキシ当量が1000~1800であるのが好ましい。このエポキシ当量は1200~1700であるのがより好ましい。また水酸基価が20~120mgKOH/gであるアミン変性エポキシ樹脂は、数平均分子量が1500~2700であるのが好ましい。
【0071】
上記水酸基価が20~120mgKOH/gであるアミン変性エポキシ樹脂は、100g当り35~70meq(ミリグラム当量数)の4級アンモニウム基を有するのが好ましく、100g当り35~55meqの4級アンモニウム基を有するのがより好ましい。4級アンモニウム基の量が上記範囲であることによって、顔料分散性能が向上し、また、電着塗料組成物の塗装作業性が良好となる利点がある。
【0072】
顔料分散樹脂の量は、顔料分散ペーストに含まれる顔料および顔料分散樹脂の比率(固形分質量比)として、顔料/顔料分散樹脂=1/0.1~1/1.5の範囲内であるのが好ましく、顔料/顔料分散樹脂=1/0.1~1/1.1の範囲内であるのがより好ましい。
【0073】
顔料
顔料として、電着塗料組成物において通常用いられる顔料を用いることができる。顔料として、例えば、通常使用される無機顔料および有機顔料、例えば、チタンホワイト(二酸化チタン)、カーボンブラックおよびベンガラのような着色顔料;カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカおよびクレーのような体質顔料;リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、トリポリリン酸アルミニウム、およびリンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛のような防錆顔料など、が挙げられる。
【0074】
顔料は、カチオン電着塗料組成物の樹脂固形分に対して1~30質量%となる量で用いるのが好ましい。
【0075】
有機酸
本発明において、顔料分散ペーストの調製において有機酸を用いるのがより好ましい。本発明において有機酸を用いる場合は、上記金属化合物(B)と有機酸とを予め混合し、混合物を調製する。金属化合物(B)と有機酸とを予め混合することによって、金属化合物(B)の溶解性・分散性が向上し、これにより触媒活性が向上し、硬化性および耐食性に優れた塗膜を形成することができるという利点がある。
【0076】
有機酸は、例えば、ヒドロキシモノカルボン酸およびスルホン酸からなる群から選択される1種またはそれ以上の化合物である。
ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、以下の化合物が挙げられる;
・乳酸、グリコール酸などの、全炭素原子数2~5、好ましくは2~4のモノヒドロキシモノカルボン酸、特に脂肪族モノヒドロキシモノカルボン酸;
・ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、グリセリン酸などの、全炭素原子数3~7、好ましくは3~6のジヒドロキシモノカルボン酸、特に脂肪族ジヒドロキシモノカルボン酸。
スルホン酸は有機スルホン酸であり、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸などの全炭素原子数1~5、好ましくは1~3のアルカンスルホン酸が挙げられる。
【0077】
有機酸として、乳酸、ジメチロールプロピオン酸およびメタンスルホン酸からなる群から選択される1種またはそれ以上を用いるのがさらに好ましい。
【0078】
有機酸の使用形態は特に限定されず、例えば、固体形態、液体形態、溶媒に溶解された溶液形態(特に水溶液形態)が挙げられる。有機酸は水溶液の形態で用いるのが好ましい。有機酸の水溶液の調製に用いることができる溶媒として、イオン交換水、浄水、蒸留水などの水、そして水を主成分とする水性溶媒などが挙げられる。水性溶媒は、水に加えて、必要に応じた有機溶媒(例えば、アルコール、エステル、ケトンなどの、水溶性または水混和性有機溶媒など)を含んでもよい。
【0079】
本発明において、有機酸を用いる場合における、金属化合物(B)における金属のモル数と、前記有機酸のモル数との比率は、金属化合物(B):有機酸=1:0.3~1:2.7の範囲内であるのがより好ましい。本発明における金属化合物(B)に含まれる金属元素は、Y、La、Ce、Nd、PrおよびBiからなる群から選択される1種またはそれ以上の金属元素であり、全て3価の陽イオンとなる元素である。そして、上記有機酸である、ヒドロキシモノカルボン酸およびスルホン酸からなる群から選択される1種またはそれ以上の化合物は、いずれも1価の酸である。そのため、上記金属元素のモル数と有機酸のモル数との比率が、金属元素:有機酸=1:0.3~1:2.7の範囲内である場合は、金属元素による陽イオンの総価数(つまり、金属元素のモル数×3)に対して、有機酸による陰イオンの総価数(有機酸のモル数)が満たない状態である。上記比率で金属化合物(B)、そして有機酸を用いることによって、優れた塗膜外観を有する硬化塗膜を提供する、電着塗料組成物を調製することができる。
【0080】
本発明の好ましい態様において、顔料分散ペーストが、金属化合物(B)と、有機酸とを上記モル数比率で含むことによって、得られる硬化電着塗膜の塗膜外観を悪化させることなく、より優れたハジキ発生防止性能が得られることとなるという利点がある。このメカニズムの詳細は必ずしも明らかではなく、理論に拘束されるものではないが、金属元素による陽イオンの総価数(つまり、金属元素のモル数×3)に対して、有機酸による陰イオンの総価数(有機酸のモル数)が満たない状態であることによって、上記金属化合物(B)そして有機酸が電着塗料組成物中に含まれる場合であっても、電着塗料組成物の電導度が適切な範囲に保たれるためと考えられる。
【0081】
上記モル数の比率は、金属化合物(B):有機酸=1:0.5~1:2.4の範囲内であるのがより好ましく、金属化合物(B):有機酸=1:0.9~1:2.1の範囲内であるのがさらに好ましい。
【0082】
封鎖剤
本発明の好ましい1態様においては、顔料分散ペーストの調製において封鎖剤が用いられる。封鎖剤は、水酸基価150~650mgKOH/gおよびアミン価30~190mgKOH/gであるアミン変性エポキシ樹脂および多価酸からなる群から選択される1種またはそれ以上を含む。封鎖剤として、上記いずれか一方を用いてもよく、併用してもよい。
【0083】
アミン変性エポキシ樹脂
水酸基価150~650mgKOH/gおよびアミン価30~190mgKOH/gであるアミン変性エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂骨格中のオキシラン環に対して、アミン化合物を反応して変性することによって調製することができる。上記アミン変性エポキシ樹脂は、上述したアミン化樹脂のアミン変性エポキシ樹脂と同様にして調製することができる。上記アミン変性エポキシ樹脂として、アミン化樹脂におけるアミン変性エポキシ樹脂をそのまま用いてもよい。本発明において、上記アミン変性エポキシ樹脂およびアミン化樹脂のアミン変性エポキシ樹脂として、同一の樹脂を用いてもよく、また異なる樹脂を用いてもよい。
【0084】
水酸基価150~650mgKOH/gおよびアミン価30~190mgKOH/gであるアミン変性エポキシ樹脂の調製において、エポキシ樹脂のオキシラン環と反応させるアミンは、2級アミンが50~95質量%、ブロックされた1級アミンを有する2級アミンが0~30質量%、1級アミンが0~20質量%であるのが好ましい。
【0085】
アミン変性エポキシ樹脂において、水酸基価が150~650mgKOH/gであり、かつ、アミン価30~190mgKOH/gであることによって、封鎖性能が良好に発揮され、得られる顔料分散ペーストの分散安定性が向上し、塗料安定性に優れた電着塗料組成物が得られる利点がある。
【0086】
水酸基価150~650mgKOH/gおよびアミン価30~190mgKOH/gであるアミン変性エポキシ樹脂は、数平均分子量が1,000~5,000の範囲であるのが好ましい。数平均分子量が上記範囲であることにより、良好な顔料分散安定性を得ることができ、好ましい。上記アミン変性エポキシ樹脂の数平均分子量は、2,000~3,500の範囲であるのがさらに好ましい。上記アミン変性エポキシ樹脂の数平均分子量が1,000以上であることによって、得られる硬化電着塗膜の耐溶剤性および耐食性などの物性が良好となる。また上記アミン変性エポキシ樹脂の数平均分子量が5,000以下であることによって、得られる顔料分散ペーストの分散性および分散安定性が良好となる。
【0087】
水酸基価150~650mgKOH/gおよびアミン価30~190mgKOH/gであるアミン変性エポキシ樹脂は、樹脂固形分100gに対する塩基のミリグラム当量(MEQ(B))が50~350であるのが好ましい。アミン変性エポキシ樹脂のMEQ(B)が上記範囲内であることによって、顔料分散ペーストの良好な貯蔵安定性を確保することができる利点がある。なお、アミン変性エポキシ樹脂の固形分100gに対する塩基のミリグラム当量(MEQ(B))は、アミン変性エポキシ樹脂の調製において反応させるアミン化合物の種類および量によって調整することができる。
【0088】
ここでMEQ(B)とは、mg equivalent(base)の略であり、樹脂の固形分100g当たりの塩基のmg当量である。このMEQ(B)は、電着塗料組成物の固形分を約10g精秤し約50mlの溶剤(THF:テトラヒドロフラン)に溶解した後、無水酢酸7.5ml、酢酸2.5mlを加え、自動電位差滴定装置(例えば京都電子工業株式会社製、APB-410など)を用いて0.1N過塩素酸酢酸溶液で電位差滴定を行うことによって、アミン変性エポキシ樹脂中の含塩基量を定量して測定することができる。
【0089】
本発明において、水酸基価150~650mgKOH/gおよびアミン価30~190mgKOH/gであるアミン変性エポキシ樹脂が用いられる場合は、樹脂エマルションの状態に調製して用いられるのが好ましい。樹脂エマルションの調製方法の1態様として、塗膜形成樹脂(A)として用いることができる樹脂エマルションと同様にして調製する方法が挙げられる。具体的には、上記アミン変性エポキシ樹脂および上記ブロックイソシアネート硬化剤それぞれを、有機溶媒中に溶解させて、溶液を調製し、これらの溶液を混合した後、中和酸を用いて水中に分散させることにより、アミン変性エポキシ樹脂エマルションを調製することができる。樹脂エマルションの調製方法の他の1態様として、上記アミン変性エポキシ樹脂を有機溶媒中に溶解させて溶液を調製し、中和酸を用いて水中に分散させることにより、アミン変性エポキシ樹脂エマルションを調製することができる。樹脂エマルションの調製に用いることができる中和酸として、例えば、メタンスルホン酸、スルファミン酸、乳酸、ジメチロールプロピオン酸、ギ酸、酢酸などの有機酸が挙げられる。中和酸として、ギ酸、酢酸および乳酸からなる群から選択される1種またはそれ以上の酸を用いるのがより好ましい。
【0090】
封鎖剤として上記アミン変性エポキシ樹脂を用いる場合における、顔料分散ペースト中に含まれるアミン変性エポキシ樹脂の量は、顔料分散樹脂の樹脂固形分100質量部に対して、アミン変性エポキシ樹脂の樹脂固形分量として0.02~3質量部であるのが好ましく、0.03~1質量部であるのがより好ましく、0.06~0.4質量部であるのがさらに好ましい。アミン変性エポキシ樹脂の量が上記範囲内であることによって、封鎖剤としての効果および硬化性を確保することができる利点がある。
【0091】
多価酸
本明細書において「多価酸」とは、1価の酸基を2またはそれ以上有する化合物もしくは2価以上の酸基を有する化合物をいう。多価酸は、2またはそれ以上のカルボン酸基を有する化合物およびリン酸基を有する化合物からなる群から選択される1種またはそれ以上であるのが好ましい。多価酸の具体例として、例えば、
2またはそれ以上のカルボン酸基を有する炭素数2~6の化合物、例えば、酒石酸、ブドウ酸、クエン酸、リンゴ酸、ヒドロキシマロン酸、マロン酸、コハク酸、グルタン酸、アジピン酸など;
2またはそれ以上のカルボン酸基を有するポリマー、例えばポリアクリル酸など;
リン酸基を有する化合物、例えば、リン酸、縮合リン酸(例えば二リン酸、三リン酸、ポリリン酸、シクロリン酸など)など;
が挙げられる。
【0092】
本明細書において、縮合リン酸は、2またはそれ以上のリン酸基を有する無機化合物を意味する。縮合リン酸は、例えば、オルトリン酸(H3PO4)の脱水反応またはそれに類する反応によって調製することができる。
【0093】
多価酸として、酒石酸、クエン酸、リン酸、縮合リン酸、リンゴ酸およびポリアクリル酸からなる群から選ばれる1種またはそれ以上であるのが好ましく、酒石酸、クエン酸およびリンゴ酸からなる群から選ばれる1種またはそれ以上であるのがさらに好ましい。
【0094】
顔料分散ペースト中に含まれる多価酸の量は、顔料分散樹脂の樹脂固形分100質量部に対して0.01~10質量部であるのが好ましく、0.08~5質量部であるのがより好ましく、0.09~3.5質量部であるのがさらに好ましい。
【0095】
本発明の好ましい1態様において、顔料分散ペーストの調製において、水酸基価150~650mgKOH/gおよびアミン価30~190mgKOH/gであるアミン変性エポキシ樹脂および多価酸からなる群から選択される1種またはそれ以上を含む封鎖剤が用いられること、そしてこの顔料分散ペーストの調製が、上記金属化合物(B)と、上記有機酸とを混合し、得られた混合物と、上記顔料分散樹脂と、上記封鎖剤とを混合し、次いで上記顔料とを混合することによって、得られる顔料分散ペーストの分散安定性が向上し、塗料安定性に優れた電着塗料組成物が得られることとなる。このメカニズムの詳細は必ずしも明らかではなく、理論に拘束されるものではないが、以下のように考えられる。
金属化合物(B)および有機酸を予め混合することによって、一部の金属化合物(B)が有機酸と溶解し、そして一部の金属化合物(B)が有機酸と共に分散(例えばキレート様分散)し、金属化合物(B)が微分散状態であると考えられる。ここで、得られた混合物と顔料分散樹脂とを混合することによって、金属化合物(B)の金属成分の少なくとも一部を顔料分散樹脂が被覆し、金属化合物(B)の分散安定性がわずかに向上する。しかしながらこの段階における金属化合物(B)の被覆状態は十分でないと考えられ、顔料を加えると、顔料と金属化合物(B)とが反応し被覆状態が崩れる可能性がある。そこで、顔料分散樹脂に対して封鎖剤を併用することによって、顔料分散樹脂を自己凝集させ、緩やかだった顔料分散樹脂と金属化合物(B)の被覆が強固なものとなると考えられる。この自己凝集力は強いため、顔料分散樹脂に対して封鎖剤を併用することによって、顔料分散樹脂の量を低減しても、良好な分散安定性を得ることができる利点がある。すなわち本明細書において、封鎖剤とは、金属化合物(B)の少なくとも一部を被覆する顔料分散樹脂の被覆性能を強固なものとする作用を有する成分を意味する。
【0096】
顔料分散ペーストの調製
上記態様例1~3の調製について順次説明する。上記態様例1においては、顔料分散ペーストは、上記金属化合物(B)と、上記顔料分散樹脂とを混合し、得られた混合物と、上記顔料分散樹脂と、上記顔料とを混合する工程によって調製される。
【0097】
この態様においては、最初に、金属化合物(B)と、顔料分散樹脂(すなわち、電着塗料組成物中に含まれる顔料分散樹脂の一部)とを混合する。得られた混合物に対して、顔料分散樹脂(すなわち、電着塗料組成物中に含まれる顔料分散樹脂の残り)と、顔料とを混合する。
【0098】
金属化合物(B)と、顔料分散樹脂との混合における温度および撹拌速度などの混合条件は、塗料組成物の製造において通常行われる条件であってよく、例えば10~50℃、好ましくは20~40℃において、各成分を分散させることができる撹拌流が生じる程度の撹拌速度において行うことができる。撹拌時間は、反応系のスケールおよび撹拌装置などに依存して任意に選択することができる。撹拌時間は、例えば、5分~2時間であってよい。
【0099】
こうして得られた混合物と、顔料分散樹脂および顔料とを混合する。顔料分散樹脂および顔料の混合方法は、任意の方法であってよい。例えば、残りの顔料分散樹脂および顔料を予め混合しておき、次いで、上記より得られた混合物と混合してもよい。この混合によって、顔料分散ペーストが調製される。この混合における温度および撹拌速度などの条件は、塗料組成物の製造において通常行われる条件であってよく、例えば10~50℃、好ましくは20~40℃において、顔料を分散させることができる撹拌流が生じる程度の撹拌速度において行うことができる。撹拌時間は、例えば、顔料の分散粒度が10μm以下となるまで行うのが好ましい。ここで顔料の分散粒度は、顔料の体積平均粒子径を測定することによって確認することができる。
【0100】
上記態様例2において、顔料分散ペーストは、上記金属化合物(B)と、上記顔料分散樹脂と、封鎖剤とを混合し、得られた混合物と、上記顔料分散樹脂と、上記顔料とを混合する工程によって調製される。
【0101】
この態様においては、最初に、顔料分散ペーストは、上記金属化合物(B)と、上記顔料分散樹脂(すなわち、電着塗料組成物中に含まれる顔料分散樹脂の一部)と、封鎖剤とを混合する。この混合において、封鎖剤は、金属化合物(B)と顔料分散樹脂とを混合した後に加えるのが好ましい。次いで、得られた混合物に対して、顔料分散樹脂(すなわち、電着塗料組成物中に含まれる顔料分散樹脂の残り)と、顔料とを混合する。得られた混合物に対する、顔料分散樹脂および顔料の混合方法は、任意の方法であってよい。例えば、残りの顔料分散樹脂および顔料を予め混合しておき、次いで、上記より得られた混合物と混合してもよい。
【0102】
この態様における混合温度および撹拌速度などの混合条件は、塗料組成物の製造において通常行われる条件であってよく、より具体的には、上記した態様例1と同様の条件であってよい。
【0103】
上記態様例3において、顔料分散ペーストは、まず、金属化合物(B)と有機酸とを予め混合して、次いで、得られた混合物と、上記金属化合物(B)と、上記顔料分散樹脂と、封鎖剤)とを混合し、得られた混合物と、上記顔料分散樹脂と、上記顔料とを混合する工程によって調製される。
【0104】
金属化合物(B)と有機酸とを、他の成分に先立って予め混合して、混合物を調製する。金属化合物(B)と有機酸とを予め混合して混合物を調製することによって、金属化合物(B)の溶解性・分散性が向上し、これにより触媒活性が向上し、硬化性および耐食性に優れた塗膜を形成することができる。
【0105】
金属化合物(B)と有機酸との混合は、例えば、有機酸と溶媒(特に水溶媒)とを混合して得られた有機酸水溶液中に、金属化合物(B)の粒子を、撹拌により分散させることによって行うことができる。混合における温度および撹拌速度などの条件は、塗料組成物の製造において通常行われる条件であってよく、例えば10~30℃、好ましくは室温条件下において、撹拌流が生じる程度の撹拌速度において行うことができる。撹拌時間は、反応系の大きさに応じて適宜選択することができ、例えば、0.1~24時間の範囲で選択することができる。
【0106】
こうして得られた混合物と、顔料分散樹脂、封鎖剤を混合して分散液を調製する。上記混合物、顔料分散樹脂および封鎖剤の混合順序は任意であってよい。例えば、上記混合物、顔料分散樹脂および封鎖剤を同時に添加し混合してもよく、混合物および顔料分散樹脂を予め混合した後に封鎖剤を添加してもよく、混合物および封鎖剤を予め混合した後に顔料分散樹脂を添加してもよい。この混合における温度および撹拌速度などの条件は、塗料組成物の製造において通常行われる条件であってよく、例えば10~50℃、好ましくは20~40℃において、各混合物、顔料分散樹脂および封鎖剤を分散させることができる撹拌流が生じる程度の撹拌速度において行うことができる。撹拌時間は、反応系のスケールおよび撹拌装置などに依存して任意に選択することができる。撹拌時間は、例えば、5分~1時間であってよい。
【0107】
顔料分散樹脂の量は、顔料分散ペーストに含まれる顔料および顔料分散樹脂の比率(固形分質量比)として、顔料/顔料分散樹脂=1/0.1~1/1.5の範囲内であるのが好ましく、顔料/顔料分散樹脂=1/0.1~1/1.1の範囲内であるのがより好ましい。顔料分散樹脂の量が上記範囲内であることによって、良好な硬化性および顔料分散安定性を確保することができる利点がある。
【0108】
金属化合物(B)、顔料分散樹脂、封鎖剤の混合によって調製された分散液と、顔料とを混合することによって、顔料分散ペーストが調製される。この混合における温度および撹拌速度などの条件は、塗料組成物の製造において通常行われる条件であってよく、例えば10~50℃、好ましくは20~40℃において、顔料を分散させることができる撹拌流が生じる程度の撹拌速度において行うことができる。撹拌時間は、例えば、顔料の分散粒度が10μm以下となるまで行うのが好ましい。ここで顔料の分散粒度は、顔料の体積平均粒子径を測定することによって確認することができる。
【0109】
電着塗料組成物の製造
上記カチオン電着塗料組成物は、上記塗膜形成樹脂(A)および顔料分散ペーストを混合することによって調製することができる。上記塗膜形成樹脂(A)および顔料分散ペーストの混合比率は、固形分質量比率として、塗膜形成樹脂(A):顔料分散ペースト=1:0.1~1:0.4の範囲内であるのが好ましく、1:0.15~1:0.3の範囲内であるのがより好ましい。
【0110】
カチオン電着塗料組成物の固形分量は、電着塗料組成物全量に対して1~30質量%であるのが好ましい。
【0111】
カチオン電着塗料組成物は、pHが4.5~7であることが好ましい。電着塗料組成物のpHは、用いる中和酸の量、遊離酸の添加量などの調整によって、上記範囲に設定することができる。電着塗料組成物のpHは、温度補償機能を有する市販のpHメーターを用いて測定することができる。
【0112】
電着塗料組成物の固形分100gに対する酸のミリグラム当量(MEQ(A))は40~120であるのが好ましい。なお、電着塗料組成物の樹脂固形分100gに対する酸のミリグラム当量(MEQ(A))は、中和酸量および遊離酸の量によって調整することができる。
【0113】
ここでMEQ(A)とは、mg equivalent(acid)の略であり、塗料の固形分100g当たりのすべての酸のmg当量の合計である。このMEQ(A)は、電着塗料組成物の固形分を約10g精秤し約50mlの溶剤(THF:テトラヒドロフラン)に溶解した後、1/10NのNaOH溶液を用いて電位差滴定を行うことによって、電着塗料組成物中の含有酸量を定量して測定することができる。
【0114】
上記カチオン電着塗料組成物は、塗料分野において一般的に用いられている添加剤、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテルなどの有機溶媒、乾き防止剤、消泡剤などの界面活性剤、アクリル樹脂微粒子などの粘度調整剤、はじき防止剤、バナジウム塩、銅、鉄、マンガン、マグネシウム、カルシウム塩などの無機防錆剤など、を必要に応じて含んでもよい。またこれら以外に、目的に応じて公知の補助錯化剤、緩衝剤、平滑剤、応力緩和剤、光沢剤、半光沢剤、酸化防止剤、および紫外線吸収剤などを配合してもよい。これらの添加剤は、塗膜形成樹脂A(A)の調製時に混合してもよく、顔料分散ペーストの調製時に混合してもよく、また、塗膜形成樹脂(A)と顔料分散ペーストとの混合時または混合後に混合してもよい。
【0115】
電着塗装および電着塗膜形成
上記カチオン電着塗料組成物を用いて被塗物に対し電着塗装および電着塗膜形成を行うことができる。カチオン電着塗料組成物を用いる電着塗装においては、被塗物を陰極とし、陽極との間に、電圧を印加する。これにより、電着塗膜が被塗物上に析出する。
【0116】
電着塗装工程において、電着塗料組成物中に被塗物を浸漬した後、50~450Vの電圧を印加することによって、電着塗装が行われる。電着塗装時、塗料組成物の浴液温度は、通常10~45℃に調節される。
【0117】
電圧を印加する時間は、電着条件によって異なるが、一般には、2~5分とすることができる。
【0118】
電着塗膜の膜厚は、加熱硬化により最終的に得られる電着塗膜の膜厚が好ましくは5~40μm、より好ましくは10~25μmとなるような膜厚とする。
【0119】
上述のようにして得られる電着塗膜を、電着過程の終了後、そのまま、または水洗した後、120~260℃、好ましくは140~220℃で、10~30分間加熱することによって、加熱硬化した電着塗膜が形成される。
【0120】
カチオン電着塗料組成物を塗装する被塗物としては、通電可能な種々の被塗物を用いることができる。使用できる被塗物として例えば、冷延鋼板、熱延鋼板、ステンレス、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、亜鉛-アルミニウム合金系めっき鋼板、亜鉛-鉄合金系めっき鋼板、亜鉛-マグネシウム合金系めっき鋼板、亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金系めっき鋼板、アルミニウム系めっき鋼板、アルミニウム-シリコン合金系めっき鋼板、錫系めっき鋼板などが挙げられる。
【0121】
上記カチオン電着塗料組成物は、上記金属化合物(B)およびシリコーン化合物(C)の両方を特定の含有量の範囲内で含むことにより、良好なハジキ防止性を示す利点がある。上記カチオン電着塗料組成物はさらに、得られる硬化電着塗膜の塗膜外観も良好であるという利点がある。
【実施例】
【0122】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。
【0123】
実施例及び比較例において、シリコーン化合物として、以下のものを使用した。
シリコーン化合物:TEGOWet265 Evonik製
(SP値=12.7、ポリエーテル変性シリコーン化合物、シリコーン化合物の濃度52質量%)
【0124】
製造例1 顔料分散樹脂の製造
2-エチルヘキサノールハーフブロック化イソホロンジイソシアネートの調製
攪拌装置、冷却管、窒素導入管および温度計を装備した反応容器に、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略す)222.0部を入れ、メチルイソブチルケトン(MIBK)39.1部で希釈した後、ここヘジブチル錫ジラウレート0.2部を加えた。その後、これを50℃に昇温した後、2-エチルヘキサノール131.5部を攪拌下、乾燥窒素雰囲気で2時間かけて滴下し、2-エチルヘキサノールハーフブロック化IPDI(固形分90.0質量%)を得た。
4級化剤の調製
反応容器に、ジメチルエタノールアミン87.2部、75%乳酸水溶液117.6部およびエチレングリコールモノn-ブチルエーテル39.2部を順に加え、65℃で30分攪拌して4級化剤を調製した。
顔料分散樹脂の製造
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:DER-331J、ダウケミカル社製)710.0部とビスフェノールA289.6部とを反応容器に仕込み、窒素雰囲気下、150~160℃で1時間反応させ、次いで、120℃に冷却した後、先に調製した2-エチルヘキサノールハーフブロック化IPDI(MIBK溶液)498.8部を加えた。反応混合物を110~120℃で1時間撹拌し、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル463.4部を加え、混合物を85~95℃に冷却し、先に調製した4級化剤196.7部を添加した。酸価が1となるまで反応混合物を85~95℃に保持した後、脱イオン水964部を加えて、目的とする顔料分散樹脂を得た(固形分50質量%)。得られた顔料分散樹脂の水酸基価は、75mgKOH/gであった。
【0125】
製造例2 アミン化樹脂の製造
メチルイソブチルケトン92部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:DER-331J、ダウケミカル社製)940部、ビスフェノールA382部、オクチル酸63部、ジメチルベンジルアミン2部を加え、反応容器内の温度を140℃に保持し、エポキシ当量が1110g/eqになるまで反応させた後、反応容器内の温度が120℃になるまで冷却した。ついでジエチレントリアミンジケチミン(固形分73%のメチルイソブチルケトン溶液)78部とジエタノールアミン92部の混合物を添加し、120℃で1時間反応させることにより、アミン化樹脂(アミン変性エポキシ樹脂)を得た。この樹脂の数平均分子量は2,560、アミン価(樹脂固形分100gに対する塩基のミリグラム当量:MEQ(B))は50mgKOH/g(うち1級アミンに由来するアミン価は14mgKOH/g)、水酸基価は240mgKOH/gであった。
【0126】
製造例3-1 ブロックイソシアネート硬化剤(1)の製造
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)1680部およびMIBK732部を反応容器に仕込み、これを60℃まで加熱した。ここに、トリメチロールプロパン346部をMEKオキシム1067部に溶解させたものを60℃で2時間かけて滴下した。さらに75℃で4時間加熱した後、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失したことを確認し、放冷後、MIBK27部を加えて、固形分が78%のブロックイソシアネート硬化剤(1)を得た。イソシアネート基価は252mgKOH/gであった。
【0127】
製造例3-2 ブロックイソシアネート硬化剤(2)の製造
4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート1340部およびMIBK277部を反応容器に仕込み、これを80℃まで加熱した後、ε-カプロラクタム226部をブチルセロソルブ944部に溶解させたものを80℃で2時間かけて滴下した。さらに100℃で4時間加熱した後、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失したことを確認し、放冷後、MIBK349部を加えて、ブロックイソシアネート硬化剤(2)を得た(固形分80%)。イソシアネート基価は251mgKOH/gであった。
【0128】
製造例4 アミン変性エポキシ樹脂のエマルション(1)の製造
製造例2で得たアミン化樹脂350部(固形分)と、製造例3-1で得たブロックイソシアネート硬化剤(1)75部(固形分)および製造例3-2で得たブロックイソシアネート硬化剤(2)75部(固形分)とを混合し、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテルを固形分に対して3%(15部)になるように添加した。次に、ギ酸を添加量が樹脂中和率40%相当分になるように加えて中和し、イオン交換水を加えてゆっくり希釈し、次いで固形分が40%になるように減圧下でメチルイソブチルケトンを除去して、アミン変性エポキシ樹脂のエマルション(1)を得た。
【0129】
実施例1
顔料分散ペーストの製造
分散ペーストの固形分濃度が47質量%になるように、イオン交換水125.7部に、50%乳酸水溶液0.04部および酸化イットリウム0.05部を加え室温で1時間撹拌・混合した。ここに、製造例1で得られた、顔料分散樹脂を81.4部(樹脂固形分換算量)加え、室温で1時間、1000rpmにて攪拌した。
その後、10%酒石酸水溶液2.6部を加え、次いで製造例4で得られたアミン変性エポキシ樹脂のエマルション(1)7.5部(樹脂固形分換算、アミン変性エポキシ樹脂を含むエマルション(封鎖剤)として使用)を加えて混合し、さらに顔料であるカーボン1部、酸化チタン45.6部、サテントン(焼成カオリン)63.6部を加え、サンドミルを用いて40℃で1時間、2000rpmにて撹拌することで顔料分散ペーストを得た。
【0130】
電着塗料組成物の製造
ステンレス容器に、イオン交換水492.8部、製造例4で調製したアミン変性エポキシ樹脂のエマルション(1)369.1部(樹脂固形分換算量、塗膜形成樹脂(A)の樹脂エマルションとして使用)、上記顔料分散ペースト91.6部およびシリコーン化合物を0.015部加えて混合し、その後、40℃で16時間エージングして、カチオン電着塗料組成物を得た。
【0131】
実施例2
顔料分散ペーストの製造
分散ペーストの固形分濃度が47質量%になるように、125.7部に、50%乳酸水溶液0.04部および酸化ランタン0.05部を加え室温で1時間撹拌・混合した。ここに、製造例1で得られた、顔料分散樹脂を81.4部(樹脂固形分換算量)加え、室温で1時間、1000rpmにて攪拌した。
その後、10%酒石酸水溶液2.6部を加え、次いで製造例4で得られたアミン変性エポキシ樹脂のエマルション(1)7.5部(樹脂固形分換算、アミン変性エポキシ樹脂を含むエマルション(封鎖剤)として使用)を加えて混合し、さらに顔料であるカーボン1部、酸化チタン45.6部、サテントン(焼成カオリン)63.7部を加え、サンドミルを用いて40℃で1時間、2000rpmにて撹拌することで顔料分散ペーストを得た。
【0132】
電着塗料組成物の製造
ステンレス容器に、イオン交換水492.8部、製造例4で調製したアミン変性エポキシ樹脂のエマルション(1)369.1部(樹脂固形分換算量、塗膜形成樹脂(A)の樹脂エマルションとして使用)、上記顔料分散ペースト91.6部およびシリコーン化合物を0.015部加えて混合し、その後、40℃で16時間エージングして、カチオン電着塗料組成物を得た。
【0133】
実施例3
顔料分散ペーストの製造
分散ペーストの固形分濃度が47質量%になるように、125.7部に、50%乳酸水溶液0.04部および酸化セリウム0.05部を加え室温で1時間撹拌・混合した。ここに、製造例1で得られた、顔料分散樹脂を81.4部(樹脂固形分換算量)加え、室温で1時間、1000rpmにて攪拌した。
その後、10%酒石酸水溶液2.6部を加え、次いで製造例4で得られたアミン変性エポキシ樹脂のエマルション(1)7.5部(樹脂固形分換算、アミン変性エポキシ樹脂を含むエマルション(封鎖剤)として使用)を加えて混合し、さらに顔料であるカーボン1部、酸化チタン45.6部、サテントン(焼成カオリン)63.7部を加え、サンドミルを用いて40℃で1時間、2000rpmにて撹拌することで顔料分散ペーストを得た。
【0134】
電着塗料組成物の製造
ステンレス容器に、イオン交換水492.8部、製造例4で調製したアミン変性エポキシ樹脂のエマルション(1)369.1部(樹脂固形分換算量、塗膜形成樹脂(A)の樹脂エマルションとして使用)、上記顔料分散ペースト91.6部およびシリコーン化合物を0.015部加えて混合し、その後、40℃で16時間エージングして、カチオン電着塗料組成物を得た。
【0135】
実施例4
顔料分散ペーストの製造
分散ペーストの固形分濃度が47質量%になるように、イオン交換水125.7部に、50%乳酸水溶液0.04部および酸化ネオジム0.05部を加え室温で1時間撹拌・混合した。ここに、製造例1で得られた、顔料分散樹脂を81.4部(樹脂固形分換算量)加え、室温で1時間、1000rpmにて攪拌した。
その後、10%酒石酸水溶液2.6部を加え、次いで製造例4で得られたアミン変性エポキシ樹脂のエマルション(1)7.5部(樹脂固形分換算、アミン変性エポキシ樹脂を含むエマルション(封鎖剤)として使用)を加えて混合し、さらに顔料であるカーボン1部、酸化チタン45.6部、サテントン(焼成カオリン)63.7部を加え、サンドミルを用いて40℃で1時間、2000rpmにて撹拌することで顔料分散ペーストを得た。
【0136】
電着塗料組成物の製造
ステンレス容器に、イオン交換水492.8部、製造例4で調製したアミン変性エポキシ樹脂のエマルション(1)369.1部(樹脂固形分換算量、塗膜形成樹脂(A)の樹脂エマルションとして使用)、上記顔料分散ペースト91.6部およびシリコーン化合物を0.015部加えて混合し、その後、40℃で16時間エージングして、カチオン電着塗料組成物を得た。
【0137】
実施例5
顔料分散ペーストの製造
分散ペーストの固形分濃度が47質量%になるように、イオン交換水125.7部に、50%乳酸水溶液0.04部および酸化ビスマス0.05部を加え室温で1時間撹拌・混合した。ここに、製造例1で得られた、顔料分散樹脂を81.4部(樹脂固形分換算量)加え、室温で1時間、1000rpmにて攪拌した。
その後、10%酒石酸水溶液2.6部を加え、次いで製造例4で得られたアミン変性エポキシ樹脂のエマルション(1)7.5部(樹脂固形分換算、アミン変性エポキシ樹脂を含むエマルション(封鎖剤)として使用)を加えて混合し、さらに顔料であるカーボン1部、酸化チタン45.6部、サテントン(焼成カオリン)63.5部を加え、サンドミルを用いて40℃で1時間、2000rpmにて撹拌することで顔料分散ペーストを得た。
【0138】
電着塗料組成物の製造
ステンレス容器に、イオン交換水492.8部、製造例4で調製したアミン変性エポキシ樹脂のエマルション(1)369.1部(樹脂固形分換算量、塗膜形成樹脂(A)の樹脂エマルションとして使用)、上記顔料分散ペースト91.6部およびシリコーン化合物を0.015部加えて混合し、その後、40℃で16時間エージングして、カチオン電着塗料組成物を得た。
【0139】
実施例6
顔料分散ペーストの製造
分散ペーストの固形分濃度が47質量%になるように、イオン交換水130.4部に、50%乳酸水溶液0.006部、酸化ビスマス0.01部を加え、室温で1時間攪拌した。ここに、さらに50%乳酸水溶液0.037部および酸化ランタン0.04部を加え室温で1時間撹拌・混合した。ここに、製造例1で得られた、顔料分散樹脂を85.2部(樹脂固形分換算量)加え、室温で1時間、1000rpmにて攪拌した。
その後、10%酒石酸水溶液2.7部を加え、次いで製造例4で得られたアミン変性エポキシ樹脂のエマルション(1)7.5部(樹脂固形分換算、アミン変性エポキシ樹脂を含むエマルション(封鎖剤)として使用)を加えて混合し、さらに顔料であるカーボン1部、酸化チタン47.5部、サテントン(焼成カオリン)66.1部を加え、サンドミルを用いて40℃で1時間、2000rpmにて撹拌することで顔料分散ペーストを得た。
【0140】
電着塗料組成物の製造
ステンレス容器に、イオン交換水492.8部、製造例4で調製したアミン変性エポキシ樹脂のエマルション(1)369.1部(樹脂固形分換算量、塗膜形成樹脂(A)の樹脂エマルションとして使用)、上記顔料分散ペースト91.6部およびシリコーン化合物を0.015部加えて混合し、その後、40℃で16時間エージングして、カチオン電着塗料組成物を得た。
【0141】
実施例7
電着塗料組成物の製造において、シリコーン化合物の量を7.4部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0142】
実施例8
電着塗料組成物の製造において、シリコーン化合物の量を7.4部に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0143】
実施例9
電着塗料組成物の製造において、シリコーン化合物の量を7.4部に変更したこと以外は、実施例3と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0144】
実施例10
電着塗料組成物の製造において、シリコーン化合物の量を7.4部に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0145】
実施例11
電着塗料組成物の製造において、シリコーン化合物の量を7.4部に変更したこと以外は、実施例5と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0146】
実施例12
電着塗料組成物の製造において、シリコーン化合物の量を7.4部に変更したこと以外は、実施例6と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0147】
実施例13
顔料分散ペーストの製造において、50%乳酸水溶液0.78部および酸化イットリウム1部を用いたこと、および、電着塗料組成物の製造においてシリコーン化合物を2.4部用いたこと以外は、実施例1と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0148】
実施例14
顔料分散ペーストの製造において、50%乳酸水溶液0.73部および酸化イットリウム1部を用いたこと、および、電着塗料組成物の製造においてシリコーン化合物を2.4部用いたこと以外は、実施例2と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0149】
実施例15
顔料分散ペーストの製造において、50%乳酸水溶液0.70部および酸化イットリウム1部を用いたこと、および、電着塗料組成物の製造においてシリコーン化合物を2.4部用いたこと以外は、実施例3と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0150】
実施例16
顔料分散ペーストの製造において、50%乳酸水溶液0.74部および酸化イットリウム1部を用いたこと、および、電着塗料組成物の製造においてシリコーン化合物を2.4部用いたこと以外は、実施例4と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0151】
実施例17
顔料分散ペーストの製造において、50%乳酸水溶液0.77部および酸化イットリウム1部を用いたこと、および、電着塗料組成物の製造においてシリコーン化合物を2.4部用いたこと以外は、実施例5と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0152】
実施例18
顔料分散ペーストの製造
分散ペーストの固形分濃度が47質量%になるように、イオン交換水130.1部に、50%乳酸水溶液0.15部、酸化ビスマス0.2部を加え、室温で1時間攪拌した。ここに、さらに50%乳酸水溶液0.88部および酸化ランタン0.8部を加え室温で1時間撹拌・混合した。ここに、製造例1で得られた、顔料分散樹脂)を85.2部(樹脂固形分換算量)加え、室温で1時間、1000rpmにて攪拌した。
その後、10%酒石酸水溶液2.7部を加え、次いで製造例4で得られたアミン変性エポキシ樹脂のエマルション(1)7.5部(樹脂固形分換算、アミン変性エポキシ樹脂を含むエマルション(封鎖剤)として使用)を加えて混合し、さらに顔料であるカーボン1部、酸化チタン47.5部、サテントン(焼成カオリン)66.1部を加え、サンドミルを用いて40℃で1時間、2000rpmにて撹拌することで顔料分散ペーストを得た。
【0153】
電着塗料組成物の製造
ステンレス容器に、イオン交換水492.8部、製造例4で調製したアミン変性エポキシ樹脂のエマルション(1)375.1部(樹脂固形分換算量、塗膜形成樹脂(A)の樹脂エマルションとして使用)、上記顔料分散ペースト92.1部およびシリコーン化合物を2.4部加えて混合し、その後、40℃で16時間エージングして、カチオン電着塗料組成物を得た。
【0154】
実施例19
顔料分散ペーストの製造において、50%乳酸水溶液2.34部および酸化イットリウム3部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0155】
実施例20
顔料分散ペーストの製造において、50%乳酸水溶液2.2部および酸化ランタン3部を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0156】
実施例21
顔料分散ペーストの製造において、50%乳酸水溶液2.1部および酸化セリウム3部を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0157】
実施例22
顔料分散ペーストの製造において、50%乳酸水溶液2.2部および酸化ネオジム3部を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0158】
実施例23
顔料分散ペーストの製造において、50%乳酸水溶液2.3部および酸化ビスマス3部を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0159】
実施例24
顔料分散ペーストの製造
分散ペーストの固形分濃度が47質量%になるように、イオン交換水128.1部に、50%乳酸水溶液0.43部、酸化ビスマス0.6部を加え、室温で1時間攪拌した。ここに、さらに50%乳酸水溶液2.6部および酸化ランタン2.4部を加え、室温で1時間撹拌および混合した。ここに、製造例1で得られた顔料分散樹脂を85.2部(樹脂固形分換算量)加え、室温で13時間、1000rpmにて攪拌した。
その後、10%酒石酸水溶液2.7部を加え、次いで製造例4で得られたアミン変性エポキシ樹脂のエマルション(1)7.5部(樹脂固形分換算、アミン変性エポキシ樹脂を含むエマルション(封鎖剤)として使用)を加えて混合した。さらに顔料であるカーボン1部、酸化チタン47.5部、サテントン(焼成カオリン)63.7部を加え、サンドミルを用いて40℃で1時間、2000rpmにて撹拌することで顔料分散ペーストを得た。
【0160】
電着塗料組成物の製造
ステンレス容器に、イオン交換水492.8部、製造例4で調製したアミン変性エポキシ樹脂のエマルション(1)375.1部(樹脂固形分換算量、塗膜形成樹脂(A)の樹脂エマルションとして使用)、上記顔料分散ペースト91.6部およびシリコーン化合物を0.015部加えて混合し、その後、40℃で16時間エージングして、カチオン電着塗料組成物を得た。
【0161】
実施例25
電着塗料組成物の製造において、シリコーン化合物の量を7.4部に変更したこと以外は、実施例19と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0162】
実施例26
電着塗料組成物の製造において、シリコーン化合物の量を7.4部に変更したこと以外は、実施例20と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0163】
実施例27
電着塗料組成物の製造において、シリコーン化合物の量を7.4部に変更したこと以外は、実施例21と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0164】
実施例28
電着塗料組成物の製造において、シリコーン化合物の量を7.4部に変更したこと以外は、実施例22と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0165】
実施例29
電着塗料組成物の製造において、シリコーン化合物の量を7.4部に変更したこと以外は、実施例23と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0166】
実施例30
電着塗料組成物の製造において、シリコーン化合物の量を7.4部に変更したこと以外は、実施例24と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0167】
比較例1
顔料分散ペーストの製造において、50%乳酸水溶液0.019部および酸化イットリウム0.025部を用いたこと、および、電着塗料組成物の製造においてシリコーン化合物を0.008部用いたこと以外は、実施例1と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0168】
比較例2
顔料分散ペーストの製造において、50%乳酸水溶液0.018部および酸化ランタン0.025部を用いたこと、および、電着塗料組成物の製造においてシリコーン化合物を0.008部用いたこと以外は、実施例2と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0169】
比較例3
顔料分散ペーストの製造において、50%乳酸水溶液0.018部および酸化セリウム0.025部を用いたこと、および、電着塗料組成物の製造においてシリコーン化合物を0.008部用いたこと以外は、実施例3と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0170】
比較例4
顔料分散ペーストの製造において、50%乳酸水溶液0.018部および酸化ネオジム0.025部を用いたこと、および、電着塗料組成物の製造においてシリコーン化合物を0.008部用いたこと以外は、実施例4と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0171】
比較例5
顔料分散ペーストの製造において、50%乳酸水溶液0.019部および酸化ビスマス0.025部を用いたこと、および、電着塗料組成物の製造においてシリコーン化合物を0.008部用いたこと以外は、実施例5と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0172】
比較例6
顔料分散ペーストの製造
分散ペーストの固形分濃度が47質量%になるように、イオン交換水131.1部に、50%乳酸水溶液0.004部、酸化ビスマス0.005部を加え、室温で1時間攪拌した。ここに、さらに50%乳酸水溶液0.021部および酸化ランタン0.02部を加え室温で1時間撹拌・混合した。ここに、製造例1で得られた、顔料分散樹脂)を85.2部(樹脂固形分換算量)加え、室温で1時間、1000rpmにて攪拌した。
その後、10%酒石酸水溶液2.7部を加え、次いで製造例4で得られたアミン変性エポキシ樹脂のエマルション(1)7.5部(樹脂固形分換算、アミン変性エポキシ樹脂を含むエマルション(封鎖剤)として使用)を加えて混合し、さらに顔料であるカーボン1部、酸化チタン47.5部、サテントン(焼成カオリン)66.8部を加え、サンドミルを用いて40℃で1時間、2000rpmにて撹拌することで顔料分散ペーストを得た。
【0173】
電着塗料組成物の製造
ステンレス容器に、イオン交換水492.8部、製造例4で調製したアミン変性エポキシ樹脂のエマルション(1)375.1部(樹脂固形分換算量、塗膜形成樹脂(A)の樹脂エマルションとして使用)、上記顔料分散ペースト91.6部およびシリコーン化合物を0.008部加えて混合し、その後、40℃で16時間エージングして、カチオン電着塗料組成物を得た。
【0174】
比較例7
電着塗料組成物の製造において、シリコーン化合物の量を9.72部に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0175】
比較例8
電着塗料組成物の製造において、シリコーン化合物の量を9.72部に変更したこと以外は、比較例2と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0176】
比較例9
電着塗料組成物の製造において、シリコーン化合物の量を9.72部に変更したこと以外は、比較例3と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0177】
比較例10
電着塗料組成物の製造において、シリコーン化合物の量を9.72部に変更したこと以外は、比較例4と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0178】
比較例11
電着塗料組成物の製造において、シリコーン化合物の量を9.72部に変更したこと以外は、比較例5と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0179】
比較例12
電着塗料組成物の製造において、シリコーン化合物の量を9.72部に変更したこと以外は、比較例6と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0180】
比較例13
顔料分散ペーストの製造において、50%乳酸水溶液3.11部および酸化イットリウム4部を用いたこと、および、電着塗料組成物の製造においてシリコーン化合物を0.008部用いたこと以外は、実施例1と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0181】
比較例14
顔料分散ペーストの製造において、50%乳酸水溶液2.94部および酸化ランタン4部を用いたこと、および、電着塗料組成物の製造においてシリコーン化合物を0.008部用いたこと以外は、実施例2と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0182】
比較例15
顔料分散ペーストの製造において、50%乳酸水溶液2.10部および酸化セリウム4部を用いたこと、および、電着塗料組成物の製造においてシリコーン化合物を0.008部用いたこと以外は、実施例3と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0183】
比較例16
顔料分散ペーストの製造において、50%乳酸水溶液2.95部および酸化ネオジム4部を用いたこと、および、電着塗料組成物の製造においてシリコーン化合物を0.008部用いたこと以外は、実施例4と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0184】
比較例17
顔料分散ペーストの製造において、50%乳酸水溶液3.09部および酸化ビスマス4部を用いたこと、および、電着塗料組成物の製造においてシリコーン化合物を0.008部用いたこと以外は、実施例5と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0185】
比較例18
顔料分散ペーストの製造
分散ペーストの固形分濃度が47質量%になるように、イオン交換水127.1部に、50%乳酸水溶液0.58部、酸化ビスマス0.75部を加え、室温で1時間攪拌した。ここに、さらに50%乳酸水溶液3.49部および酸化ランタン3.25部を加え室温で1時間撹拌・混合した。ここに、製造例1で得られた、顔料分散樹脂)を85.2部(樹脂固形分換算量)加え、室温で1時間、1000rpmにて攪拌した。
その後、10%酒石酸水溶液2.7部を加え、次いで製造例4で得られたアミン変性エポキシ樹脂のエマルション(1)7.5部(樹脂固形分換算、アミン変性エポキシ樹脂を含むエマルション(封鎖剤)として使用)を加えて混合し、さらに顔料であるカーボン1部、酸化チタン47.5部、サテントン(焼成カオリン)62.6部を加え、サンドミルを用いて40℃で1時間、2000rpmにて撹拌することで顔料分散ペーストを得た。
【0186】
電着塗料組成物の製造
ステンレス容器に、イオン交換水492.8部、製造例4で調製したアミン変性エポキシ樹脂のエマルション(1)375.1部(樹脂固形分換算量、塗膜形成樹脂(A)の樹脂エマルションとして使用)、上記顔料分散ペースト91.6部およびシリコーン化合物を0.008部加えて混合し、その後、40℃で16時間エージングして、カチオン電着塗料組成物を得た。
【0187】
比較例19
電着塗料組成物の製造において、シリコーン化合物の量を9.72部に変更したこと以外は、比較例13と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0188】
比較例20
電着塗料組成物の製造において、シリコーン化合物の量を9.72部に変更したこと以外は、比較例14と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0189】
比較例21
電着塗料組成物の製造において、シリコーン化合物の量を9.72部に変更したこと以外は、比較例15と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0190】
比較例22
電着塗料組成物の製造において、シリコーン化合物の量を9.72部に変更したこと以外は、比較例16と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0191】
比較例23
電着塗料組成物の製造において、シリコーン化合物の量を9.72部に変更したこと以外は、比較例17と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0192】
比較例24
電着塗料組成物の製造において、シリコーン化合物の量を9.72部に変更したこと以外は、比較例18と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0193】
比較例25
顔料分散ペーストの製造
分散ペーストの固形分濃度が47質量%になるように、イオン交換水125.2部に、50%乳酸水溶液0.6部および水酸化カリウム1部を加え室温で1時間撹拌・混合した。ここに、製造例1で得られた、顔料分散樹脂を81.4部(樹脂固形分換算量)加え、室温で1時間、1000rpmにて攪拌した。
その後、10%酒石酸水溶液2.6部を加え、次いで製造例4で得られたアミン変性エポキシ樹脂のエマルション(1)7.5部(樹脂固形分換算、アミン変性エポキシ樹脂を含むエマルション(封鎖剤)として使用)を加えて混合し、さらに顔料であるカーボン1部、酸化チタン45.5部、サテントン(焼成カオリン)62.8部を加え、サンドミルを用いて40℃で1時間、2000rpmにて撹拌することで顔料分散ペーストを得た。
【0194】
電着塗料組成物の製造
ステンレス容器に、イオン交換水492.8部、製造例4で調製したアミン変性エポキシ樹脂のエマルション(1)369.1部(樹脂固形分換算量、塗膜形成樹脂(A)の樹脂エマルションとして使用)、上記顔料分散ペースト91.6部およびシリコーン化合物を2.4部加えて混合し、その後、40℃で16時間エージングして、カチオン電着塗料組成物を得た。
【0195】
比較例26
顔料分散ペーストの製造
分散ペーストの固形分濃度が47質量%になるように、イオン交換水125.2部に、50%乳酸水溶液0.6部および酸化カルシウム1部を加え室温で1時間撹拌・混合した。ここに、製造例1で得られた、顔料分散樹脂を81.4部(樹脂固形分換算量)加え、室温で1時間、1000rpmにて攪拌した。
その後、10%酒石酸水溶液2.6部を加え、次いで製造例4で得られたアミン変性エポキシ樹脂のエマルション(1)7.5部(樹脂固形分換算、アミン変性エポキシ樹脂を含むエマルション(封鎖剤)として使用)を加えて混合し、さらに顔料であるカーボン1部、酸化チタン45.5部、サテントン(焼成カオリン)62.8部を加え、サンドミルを用いて40℃で1時間、2000rpmにて撹拌することで顔料分散ペーストを得た。
【0196】
電着塗料組成物の製造
上記より得られた顔料分散ペーストを用いて、比較例25と同様の手順により、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0197】
比較例27
シリコーン化合物2.4部の代わりに、ハジキ防止剤として、メタクリル酸メチル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチルからなるアクリル樹脂(SP=11.5、固形分量52%)を2.4部用いたこと以外は、実施例18と同様にして、カチオン電着塗料組成物を製造した。
【0198】
上記実施例および比較例で得られたカチオン電着塗料組成物を用いて下記評価試験を行った。評価結果を下記表に示す。下記表に示される各成分の量は固形分質量部である。
【0199】
硬化電着塗膜の形成
冷延鋼板(JIS G3141、SPCC-SD)を、サーフクリーナーEC90(日本ペイント・サーフケミカルズ社製)中に50℃で2分間浸漬して、脱脂処理した。次にサーフファインGL1(日本ペイント・サーフケミカルズ社製)に常温30秒浸漬し、次いでサーフダインEC3200(日本ペイント・サーフケミカルズ社製、ジルコニウム化成処理剤)に35℃で2分間浸漬した。その後、脱イオン水による水洗を行った。
上記で得られたカチオン電着塗料組成物に、硬化後の電着塗膜の膜厚が20μmとなるように2-エチルヘキシルグリコールを必要量添加した。
その後、電着塗料組成物に鋼板を全て埋没させた後、直ちに電圧の印加を開始し、30秒間昇圧し180Vに達してから150秒間保持する条件で電圧を印加して、被塗物(冷延鋼板)上に未硬化の電着塗膜を析出させた。得られた未硬化の電着塗膜を、160℃で15分間加熱硬化させて、膜厚20μmの硬化電着塗膜を有する電着塗装板を得た。
【0200】
ハジキ防止性の評価(かけ流し油ハジキ性)
油分として、10%-ブチルセロソルブ溶液を調整した。
上記溶液をイオン交換水に加えて、油分を300ppm含む、油分含有水溶液を調製した。
上記実施例および比較例のカチオン電着塗料組成物を用いて、上記と同様の電圧印加条件により電着塗装し、鋼板に、未硬化の電着塗膜を析出させた。次いで、未硬化の電着塗膜を有する鋼板を、イオン交換水中に浸漬させた。
未硬化の電着塗膜を有する鋼板を30°傾斜を有する評価台上に置き、3分静置させた。30°傾斜試験台上の未硬化の電着塗膜の上に、上記油分含有水溶液1mlを、10秒間かけて、未硬化の電着塗膜の上部から垂れ流した。その後、評価台の傾斜を90°とし、3分間静置した。次いで、未硬化の電着塗膜を190℃で15分焼きつけ硬化させた。
硬化電着塗膜の表面を目視観察し、ハジキ数をカウントして、以下の評価基準に従って評価した。
評価基準
◎ ハジキ個数が5個以下
○ ハジキ個数が6個以上15個以下
○△ ハジキ個数が16個以上30個以下かつハジキは浅く小さい
△ ハジキ個数が16個以上30個以下かつハジキは深く大きい
× ハジキ個数が30個以上
【0201】
ハジキ防止性の評価(混入油ハジキ性)
油分として、10%-ブチルセロソルブ溶液を調整した。
10Lの電着塗料組成物中に、上記溶液を、油分が200ppmとなるよう混入し、500rpmで24時間撹拌した。
鋼板をL型に折り曲げたL型鋼板のうち、少なくとも水平部(長さ5cm)が電着塗料組成物に浸かるよう、L型鋼板を配置した。このとき、L型鋼板の水平部が電着塗料組成物の液面と水平になり、L型鋼板の垂直部が塗料組成物の液面と垂直になるようにL型鋼板を配置した。L型鋼板において、乾燥塗膜が20μmとなるように電着し、未硬化塗膜を形成した。
得られた未硬化塗膜を、160℃で15分焼きつけ硬化させた。その他の電着条件は、上記外観評価で作成した硬化電着塗膜の形成と同一である。混入油ハジキ性の評価は、カチオン電着塗料組成物の塗装前及び塗装時におけるハジキ防止性を評価することが想定されている。
L型鋼板の水平部の下面における塗膜表面を目視観察し、ハジキ数をカウントして、以下の評価基準に従って評価した。
評価基準
◎ ハジキ無し
○ ハジキ個数が3個以下
○△ ハジキ個数が4個以上10個以下
△ ハジキ個数が11個以上15個以下
× ハジキ個数が16個以上
【0202】
外観評価(目視評価)
上記電着塗装板により得られた電着塗膜を有する電着塗装板について、塗膜外観における異常の有無を目視で評価した。評価基準は以下の通りとした。
評価基準
○ 均一な塗膜外観を有している
○△ ややムラがあると視認される部分があるものの、全体としてほぼ均一な塗膜外観を有している
△ 塗膜外観が不均一である
× 塗膜外観が極めて不均一である。
【0203】
外観評価(Ra(2.5))
SJ-210 (Mitutoyo 製)を用いて、塗膜表面の算術平均粗さ(Ra(2.5))(2.5mm以上の波長を除去)を測定した。塗膜の厚さは20μmとし、測定を5回行い、その平均をとった。
測定条件は、カットオフ波長2.5mm以上、走査速度0.5mm/秒とした。
【0204】
【0205】
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
【0212】
上記実施例のカチオン電着塗料組成物はいずれも、かけ流しハジキおよび混入油ハジキいずれについても、良好なハジキ防止性を有することが確認された。さらに、得られる硬化電着塗膜は塗膜外観が良好であり、Ra値も低いことが確認された。
【0213】
比較例1~24は、金属化合物(B)、シリコーン化合物(C)の含有量が、上記範囲から外れる例である。これらの実験例では、ハジキ防止性および塗膜外観のうちいずれか一方または両方が劣ることが確認された。
比較例25は、1価の金属元素であるカリウム(K)を含む金属化合物を用いた例である。また比較例26は、2価の金属元素であるカルシウム(Ca)を含む金属化合物を用いた例である。これらの実験例では、いずれも、ハジキ防止性が劣ることが確認された。
比較例27は、シリコーン化合物の代わりにアクリル樹脂を用いた実験例である。この比較例で用いたアクリル樹脂のSP値は高く、実施例で用いたシリコーン化合物のSP値に近い値である。しかしながらこの比較例では、ハジキ防止性が得られないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0214】
上記カチオン電着塗料組成物は、良好なハジキ防止性能を有する。上記カチオン電着塗料組成物を用いることによって、良好な塗膜外観を有する硬化電着塗膜を形成することができる利点がある。