(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】基地局、交通通信システム、及び交通管理方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20231212BHJP
G08G 1/13 20060101ALI20231212BHJP
G08G 1/01 20060101ALI20231212BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20231212BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20231212BHJP
H04W 4/44 20180101ALI20231212BHJP
【FI】
G08G1/00 J
G08G1/13
G08G1/01 A
G08G1/09 F
H04N7/18 D
H04N7/18 K
H04W4/44
(21)【出願番号】P 2019138999
(22)【出願日】2019-07-29
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】梅原 優太
(72)【発明者】
【氏名】岡本 哲生
(72)【発明者】
【氏名】酒井 博司
(72)【発明者】
【氏名】藤田 博己
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/225347(WO,A1)
【文献】特開2012-108586(JP,A)
【文献】特開2008-234044(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047687(WO,A1)
【文献】特開2018-169880(JP,A)
【文献】特開2004-118730(JP,A)
【文献】特開2003-157487(JP,A)
【文献】国際公開第2019/142458(WO,A1)
【文献】特開2010-039705(JP,A)
【文献】特開2019-109675(JP,A)
【文献】特開2012-014471(JP,A)
【文献】特開2001-339334(JP,A)
【文献】特開2018-198004(JP,A)
【文献】特開平06-215300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
H04N 7/18
G06T 7/00
H04W 4/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通通信システムに用いる基地局であって、
道路上を走行する車両から送信される情報を無線通信により受信する通信部と、
前記通信部が受信する前記情報に基づいて、前記道路における前記車両の走行経路を含む走行挙動を特定する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記道路上を走行する複数の車両のそれぞれについて特定された前記走行挙動に対して統計
を行うことにより、前記道路上で各車両が走行する走行領域を特定し、前記特定した走行領域において一定期間にわたっていずれの車両も走行しない無走行領域を検出し、前記無走行領域が検出された場合、前記道路上の交通障害物が存在すると判定する第1判定処理と、
前記道路上を走行する複数の車両のそれぞれについて特定された前記走行挙動に対して機械学習を行う
ことにより、前記道路上の異常な走行挙動を示す挙動情報を生成し、前記挙動情報に基づいて、前記道路上を走行する車両について特定した前記走行挙動において前記異常な走行挙動が検出された場合、前記交通障害物が存在すると判定する第2判定処理と、
前記第1判定処理及び前記第2判定処理を併用し、両方の判定結果が一致する場合に前記交通障害物が存在すると判定する第3判定処理と、
前記第
3判定処理の結果に基づいて、前
記交通障害物の有無及び前記交通障害物の位置について判定する第
4処理と、を実行し、
前記制御部は、前記第
4処理により前記交通障害物の位置を判定した場合、前記判定した交通障害物の位置へ向けて走行する車両に対して、車載カメラの撮像画像の提供を要求する撮像画像要求をさらに送信するように前記通信部を制御する
基地局。
【請求項2】
前記第
4処理は、
前記検出された無走行領域の位置に基づいて、前記交通障害物の位置を判定する処理と、を含む
請求項1に記載の基地局。
【請求項3】
前記第
4処理は、
前記異常な走行挙動が検出された走行区間に基づいて、前記交通障害物の位置を判定する処理と、を含む
請求項1に記載の基地局。
【請求項4】
前記制御部は、前記第
4処理により前記交通障害物の位置を判定した場合、前記判定した交通障害物の位置へ向けて走行する車両に対して前記交通障害物の位置を示す情報を送信するように前記通信部を制御する
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の基地局。
【請求項5】
前記制御部は、前記車載カメラの撮像画像を前記車両から取得し、取得した撮像画像に基づいて前記交通障害物の属性を判定する
請求項4に記載の基地局。
【請求項6】
前記制御部は、前記第
4処理により前記交通障害物の位置を判定した場合、前記道路と関連付けられた他の基地局に対して、前記判定した交通障害物の位置を示す情報を通知する
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の基地局。
【請求項7】
前記制御部は、前記第
4処理により前記交通障害物の位置を判定した場合、前記交通障害物に対するセンシングを行うように、前記道路と関連付けられた路側センサを制御する
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の基地局。
【請求項8】
前記路側センサは、路側カメラであり、
前記制御部は、前記第
4処理により前記交通障害物の位置を判定した場合、前記交通障害物を撮影するように、前記路側カメラのパン、チルト、及びズームの少なくとも1つを制御する
請求項7に記載の基地局。
【請求項9】
前記制御部は、前記路側センサによる前記センシングの結果に基づいて前記交通障害物の属性を判定する
請求項7又は8に記載の基地局。
【請求項10】
交通通信システムであって、
道路上を走行する車両から送信される情報を無線通信により受信する
通信部を有する基地局と、
前記通信部が受信する前記情報に基づいて、前記道路における前記車両の走行経路を含む走行挙動を特定する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記道路上を走行する複数の車両のそれぞれについて特定された前記走行挙動に対して統計
を行うことにより、前記道路上で各車両が走行する走行領域を特定し、前記特定した走行領域において一定期間にわたっていずれの車両も走行しない無走行領域を検出し、前記無走行領域が検出された場合、前記道路上の交通障害物が存在すると判定する第1判定処理と、
前記道路上を走行する複数の車両のそれぞれについて特定された前記走行挙動に対して機械学習を行う
ことにより、前記道路上の異常な走行挙動を示す挙動情報を生成し、前記挙動情報に基づいて、前記道路上を走行する車両について特定した前記走行挙動において前記異常な走行挙動が検出された場合、前記交通障害物が存在すると判定する第2判定処理と、
前記第1判定処理及び前記第2判定処理を併用し、両方の判定結果が一致する場合に前記交通障害物が存在すると判定する第3判定処理と、
前記第
3判定処理の結果に基づいて前
記交通障害物の位置について判定する第
4処理と、を実行し、
前記制御部は、前記第
4処理により前記交通障害物の位置を判定した場合、前記判定した交通障害物の位置へ向けて走行する車両に対して、車載カメラの撮像画像の提供を要求する撮像画像要求をさらに送信するように前記通信部を制御する
交通通信システム。
【請求項11】
前記基地局は、前記制御部を有する
請求項10に記載の交通通信システム。
【請求項12】
前記道路を管理するためのサーバ装置をさらに備え、
前記サーバ装置は、前記制御部を有する
請求項10に記載の交通通信システム。
【請求項13】
前記サーバ装置は、所定範囲に限定されたエリア内の道路を管轄するエッジサーバである
請求項12に記載の交通通信システム。
【請求項14】
道路上を走行する車両から送信される情報を無線通信により基地局が受信することと、
前記基地局が受信する前記情報に基づいて、前記道路における前記車両の走行経路を含む走行挙動を特定することと、
前記道路上を走行する複数の車両のそれぞれについて特定された前記走行挙動に対して統計
を行うことにより、前記道路上で各車両が走行する走行領域を特定し、前記特定した走行領域において一定期間にわたっていずれの車両も走行しない無走行領域を検出し、前記無走行領域が検出された場合、前記道路上の交通障害物が存在すると判定する第1判定処理を実行することと、
前記道路上を走行する複数の車両のそれぞれについて特定された前記走行挙動に対して機械学習を行う
ことにより、前記道路上の異常な走行挙動を示す挙動情報を生成し、前記挙動情報に基づいて、前記道路上を走行する車両について特定した前記走行挙動において前記異常な走行挙動が検出された場合、前記交通障害物が存在すると判定する第2判定処理を実行することと、
前記第1判定処理及び前記第2判定処理を併用し、両方の判定結果が一致する場合に前記交通障害物が存在すると判定する第3判定処理を実行することと、
前記第
3判定処理の結果に基づいて前
記交通障害物の位置について判定する第
4処理を実行することと、
前記第
4処理により前記交通障害物の位置を判定した場合、前記判定した交通障害物の位置へ向けて走行する車両に対して、車載カメラの撮像画像の提供を要求する撮像画像要求をさらに送信することと、を含む
交通管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局、交通通信システム、及び交通管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通事故の危険を回避可能な技術として高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport System)が注目されている。
【0003】
特許文献1には、道路を複数の車両が走行する状況下において、後続車両が、自車両と同一車線を走行する先行車両から経路履歴データを取得し、取得した経路履歴データに基づいて当該車線に交通障害物が存在していると判定すると、運転者に警告を行うシステムが記載されている。
【0004】
具体的には、特許文献1に記載のシステムにおいて、後続車両は、先行車両が減速した後に車線変更を行った場合、先行車両が交通障害物を回避したとみなし、交通障害物が存在していると判定する。すなわち、交通障害物を回避する挙動として予め定義された挙動を先行車両が行ったかのパターンマッチングにより、交通障害物の有無を判定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のシステムでは、交通障害物を回避する挙動が予め定義されているが、道路環境によっては、交通障害物が存在しない場合でも車両がそのような挙動を行い得る。例えば、二車線から一車線への合流地点や交差点の手前等において車両が減速及び車線変更を行う場合がある。よって、特許文献1に記載のシステムでは、交通障害物の有無及びその位置について適切な判定を行うことができない懸念がある。
【0007】
また、特許文献1に記載のシステムでは、交通障害物の有無についての判定を各車両が行っており、各車両の処理負荷が増大するという問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、各車両の交通障害物の判定処理を不要とし、交通障害物の有無及びその位置について適切な判定を行うことが可能な基地局、交通通信システム、及び交通管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様に係る基地局は、交通通信システムに用いる基地局であって、道路上を走行する車両から送信される情報を無線通信により受信する通信部と、前記通信部が受信する前記情報に基づいて、前記道路における前記車両の走行経路を含む走行挙動を特定する制御部とを備える。前記制御部は、前記道路上を走行する複数の車両のそれぞれについて特定された前記走行挙動に対して統計又は機械学習を行う第1処理と、前記第1処理の結果に基づいて、前記道路上の交通障害物の有無及び前記交通障害物の位置について判定する第2処理とを実行する。
【0010】
第2の態様に係る交通通信システムは、道路上を走行する車両から送信される情報を無線通信により受信する基地局と、前記通信部が受信する前記情報に基づいて、前記道路における前記車両の走行経路を含む走行挙動を特定する制御部とを備える。前記制御部は、前記道路上を走行する複数の車両のそれぞれについて特定された前記走行挙動に対して統計又は機械学習を行う第1処理と、前記第1処理の結果に基づいて前記道路上の交通障害物の位置について判定する第2処理とを実行する。
【0011】
第3の態様に係る交通管理方法は、道路上を走行する車両から送信される情報を無線通信により基地局が受信することと、前記基地局が受信する前記情報に基づいて、前記道路における前記車両の走行経路を含む走行挙動を特定することと、前記道路上を走行する複数の車両のそれぞれについて特定された前記走行挙動に対して統計又は機械学習を行う第1処理を実行することと、前記第1処理の結果に基づいて前記道路上の交通障害物の位置について判定する第2処理を実行することとを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、各車両の交通障害物の判定処理を不要とし、交通障害物の有無及びその位置について適切な判定を行うことが可能な基地局、交通通信システム、及び交通管理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係る交通通信システムの構成を示す図である。
【
図2】一実施形態に係る路側機の構成を示す図である。
【
図3】一実施形態に係る路側機が実行する第1処理及び第2処理について説明するための図である。
【
図4】一実施形態に係る車両の構成を示す図である。
【
図5】一実施形態に係る路側機の動作を示す図である。
【
図6】一実施形態に係る交通障害物の判定動作の動作パターン1を示す図である。
【
図7】一実施形態に係る交通障害物の判定動作の動作パターン2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一実施形態に係る交通通信システムについて図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。
【0015】
(交通通信システムの構成)
まず、一実施形態に係る交通通信システムの構成について説明する。
図1は、一実施形態に係る交通通信システム1の構成を示す図である。
【0016】
図1に示すように、交通通信システム1は、道路Rを通る車両100と、道路Rの路側に設置される基地局である路側機200とを有する。
図1において、車両100として車両100A及び100Bを例示し、路側機200として路側機200A及び200Bを例示している。なお、車両100としては普通自動車や軽自動車等の自動車を例示しているが、道路Rを通る車両であればよく、例えば自動二輪車(オートバイ)等であってもよい。
【0017】
各車両100には、無線通信を行う移動局である車載機150が搭載されている。車載機150は、路側機200との路車間通信を行う。
図1において、車載機150A及び路側機200Aが路車間通信を行うとともに、車載機150B及び路側機200Bが路車間通信を行う一例を示している。
【0018】
路側機200は、道路R周辺に設置されている。路側機200は、2以上の道路が交差する交差点に設置されてもよい。路側機200は、他の路側機200との路路間通信を行う。
図1において、路側機200A及び路側機200Bが無線通信により路路間通信を行う一例を示しているが、路路間通信が有線通信であってもよい。
【0019】
図1に示す例おいて、路側機200Aは、交通信号機(交通信号灯器)300又はその支柱に設置されており、交通信号機300と連携して動作する。例えば、路側機200Aは、交通信号機300に関する信号情報を含む無線信号を車両100(車載機150)に送信する。このような路車間通信には、不特定多数を宛先とするブロードキャストによる無線通信が用いられてもよい。或いは、路車間通信には、特定多数を宛先とするマルチキャストによる無線通信が用いられてもよいし、特定単数を宛先とするユニキャストによる無線通信が用いられてもよい。
【0020】
各路側機200は、通信回線を介してサーバ装置400に接続される。この通信回線は、有線回線であってもよいし、無線回線であってもよい。サーバ装置400には、路側に設置される車両感知器が通信回線を介して接続されてもよい。サーバ装置400は、各路側機200から、当該路側機200が車載機150から受信した車両100の位置や車速等の情報を受信する。サーバ装置400は、道路Rに設置された路側センサから車両感知情報をさらに受信してもよい。サーバ装置400は、受信した情報に基づいて各種の交通情報を収集及び処理し、道路交通を統合して管理する。
【0021】
(路側機の構成)
次に、一実施形態に係る路側機200の構成について説明する。
図2は、一実施形態に係る路側機200の構成を示す図である。
【0022】
図2に示すように、路側機200は、通信部21と、制御部22と、インターフェイス23とを有する。
【0023】
通信部21は、車両100に設けられる車載機150との無線通信(すなわち、路車間通信)を行う。具体的には、通信部21は、アンテナ21aと、受信部21bと、送信部21cとを有し、アンテナ21aを介して無線通信を行う。アンテナ21aは、無指向性アンテナであってもよいし、指向性を有する指向性アンテナであってもよい。アンテナ21aは、指向性を動的に変更可能なアダプティブアレイアンテナであってもよい。通信部21は、他の路側機200との路路間通信を行ってもよい。
【0024】
通信部21は、アンテナ21aが受信する無線信号を受信データに変換して制御部22に出力する受信部21bを有する。また、通信部21は、制御部22が出力する送信データを無線信号に変換してアンテナ21aから送信する送信部21cを有する。
【0025】
通信部21の無線通信方式は、ARIB(Association of Radio Industries and Businesses)のT109規格に準拠した方式であってもよいし、3GPP(Third Generation Partnership Project)のV2X(Vehicle-to-everything)規格に準拠した方式であってもよいし、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11シリーズ等の無線LAN(Local Area Network)規格に準拠した方式であってもよい。通信部21は、これらの通信規格の全てに対応可能に構成されていてもよい。
【0026】
制御部22は、路側機200における各種の機能を制御する。制御部22は、少なくとも1つのメモリ22bと、メモリ22bと電気的に接続された少なくとも1つのプロセッサ22aとを有する。メモリ22bは、揮発性メモリ及び不揮発性メモリを含み、プロセッサ22aにおける処理に用いる情報と、プロセッサ22aにより実行されるプログラムとを記憶する。メモリ22bは、記憶部に相当する。プロセッサ22aは、メモリ22bに記憶されたプログラムを実行することにより各種の処理を行う。
【0027】
インターフェイス23は、有線回線及び/又は無線回線を介して路側カメラ500と接続される。路側カメラ500は、路側センサの一例である。路側カメラ500は、道路Rを撮影して得た撮像画像を出力する。インターフェイス23は、路側カメラ500以外の路側センサ、例えば、超音波センサ又は赤外線センサとさらに接続されてもよい。
【0028】
インターフェイス23は、有線回線及び/又は無線回線を介してサーバ装置400と接続される。インターフェイス23は、有線又は無線で交通信号機300と接続されていてもよい。インターフェイス23は、有線又は無線で他の路側機200と接続され、路路間通信に用いられてもよい。
【0029】
このように構成された路側機200において、第1に、通信部21は、道路R上を走行する車両100から送信される情報を無線通信により受信する。通信部21は、各種の情報を含む路車間通信メッセージを周期的に車両100から受信してもよい。
【0030】
通信部21が車両から受信する情報は、例えば、位置情報、車速情報、加速度情報、ステアリング情報、及びアクセル・ブレーキ情報のうち少なくとも1つを含む。位置情報は、車両100の現在位置(緯度、経度)を示す情報である。車速情報は、車両100の車速を示す情報である。加速度情報は、車両100の加速度を示す情報である。加速度情報は、車両100の前後方向の加速度を示す情報だけではなく、車両100の左右方向の加速度を示す情報も含んでもよい。ステアリング情報は、車両100のステアリング操作の内容(方向及び角度)を示す情報である。アクセル・ブレーキ情報は、車両100のアクセル操作及びブレーキ操作の内容を示す情報である。
【0031】
第2に、制御部22は、通信部21が受信する情報に基づいて、道路Rにおける車両100の走行経路を含む走行挙動を特定する。制御部22は、例えば、周期的に取得する車両100の位置情報に基づいて車両100の大凡の走行経路を特定できる。位置情報がQZSS(Quasi-Zenith Satellite System)位置情報のように高精度な位置情報である場合、制御部22は、位置情報に基づいて車両100の詳細な走行経路を特定できる。或いは、制御部22は、位置情報と、加速度情報(特に、車両100の左右方向の加速度を示す情報)及び/又はステアリング情報とに基づいて、車両100の詳細な走行経路を特定してもよい。車両100の走行挙動は、車両100の走行経路に加えて、車両100の速度変化の推移及び/又は加速度変化の推移を含んでもよい。
【0032】
第3に、制御部22は、道路R上を走行する各車両100について特定された走行挙動に対して統計又は機械学習を行う第1処理を実行する。
【0033】
第4に、制御部22は、第1処理の結果に基づいて、道路R上の交通障害物Eの有無及び交通障害物Eの位置について判定する第2処理を実行する。
【0034】
このように、制御部22は、道路R上を走行する各車両100について特定された走行挙動に対する統計又は機械学習の結果に基づいて、道路R上の交通障害物Eの有無及び交通障害物Eの位置について判定する。
【0035】
これにより、交通障害物を回避する挙動が予め定義されていなくても、交通障害物の有無及びその位置について適切な判定を行うことができる。また、交通障害物の有無についての判定を路側機200側で行うことにより、各車両の処理負荷の増大を抑制できる。よって、一実施形態に係る路側機200によれば、各車両100の処理負荷の増大を抑制しつつ、交通障害物Eの有無及びその位置について適切な判定を行うことができる。
【0036】
図3は、制御部22が実行する第1処理及び第2処理について説明するための図である。
図3(a)は道路Rに交通障害物Eが存在しない場合の1つの車両100の走行経路を示し、
図3(b)は道路Rに交通障害物Eが存在する場合の1つの車両100の走行経路を示す。なお、交通障害物Eとは、例えば、落下物、故障車、又は道路破損(例えば、穴)等をいう。
【0037】
路側機200の動作パターン1において、第1処理は、統計により、道路R上で各車両100が走行する走行領域を特定する処理と、走行領域を特定した後、特定した走行領域において一定期間にわたっていずれの車両100も走行しない領域である無走行領域を検出する処理とを含む。第2処理は、無走行領域が検出された場合、交通障害物Eが存在すると判定する処理と、検出された無走行領域の位置に基づいて、交通障害物Eの位置を判定する処理とを含む。
【0038】
例えば、制御部22は、道路R上の各車両100の走行経路を集計することにより走行領域を特定する。ここで、制御部22は、道路R上を走行する複数の車両100から自車両の位置の時系列データを収集し、それぞれのデータの平均を求めることで走行領域を特定してもよい。
【0039】
そして、制御部22は、走行領域を特定した後、各車両100から受信する情報に基づいて各車両100の走行経路を監視し、特定した走行領域において一定時間にわたっていずれの車両100も走行しない無走行領域を検出し、検出した無走行領域に交通障害物Eが存在すると判定する。
【0040】
路側機200の動作パターン2において、第1処理は、機械学習により、道路R上の異常な走行挙動を示す挙動情報を生成する処理を含む。第2処理は、生成した挙動情報に基づいて、道路R上を走行する車両100について特定した走行挙動において異常な走行挙動が検出された場合、交通障害物Eが存在すると判定する処理と、異常な走行挙動が検出された走行区間に基づいて、交通障害物Eの位置を判定する処理とを含む。
【0041】
例えば、制御部22は、道路R又は道路Rを模擬したテスト道路に交通障害物Eが存在する場合における各車両100の一定期間にわたる走行挙動を学習する。具体的には、道路Rを走行する各車両100からの一定期間にわたる情報の時系列データ(走行履歴)の時系列データを教師データとして用いて機械学習を行い、異常な走行挙動を示す学習済みモデルを挙動情報として生成する。
【0042】
挙動情報を生成した後、制御部22は、道路Rを走行する対象車両100からの一定期間にわたる情報(走行挙動)の時系列データと、生成した挙動情報とに基づいて、この対象車両100について特定した走行挙動における異常な走行挙動を検出する。そして、制御部22は、異常な走行挙動が検出された走行区間に基づいて交通障害物Eの位置を判定する。
【0043】
なお、制御部22は、上述した動作パターン1及び2のいずれか一方のみを実行してもよい。或いは、制御部22は、動作パターン1による判定及び動作パターン2による判定を併用し、両方の判定結果が一致する場合に交通障害物Eが存在すると判定してもよい。
【0044】
(車両の構成)
次に、一実施形態に係る車両100の構成について説明する。
図4は、一実施形態に係る車両100の構成を示す図である。
【0045】
図4に示すように、車両100は、通信部11と、GNSS受信機12と、通知部13と、駆動制御部14と、車載カメラ15と、制御部16とを有する。通信部11、GNSS受信機12、及び制御部16は、車載機150を構成する。車載機150は移動局の一例である。
【0046】
通信部11は、路側機200との無線通信(すなわち、路車間通信)を行う。具体的には、通信部11は、アンテナ11aと、受信部11bと、送信部11cとを有し、アンテナ11aを介して無線通信を行う。通信部11は、アンテナ11aが受信する無線信号を受信データに変換して制御部16に出力する受信部11bを有する。また、通信部11は、制御部16が出力する送信データを無線信号に変換してアンテナ11aから送信する送信部11cを有する。
【0047】
通信部11の無線通信方式は、ARIBのT109規格に準拠した方式であってもよいし、3GPPのV2X規格に準拠した方式であってもよいし、IEEE802.11シリーズ等の無線LAN規格に準拠した方式であってもよい。通信部11は、これらの通信規格の全てに対応可能に構成されていてもよい。
【0048】
GNSS受信機12は、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からGNSS信号を受信し、現在位置を示す位置情報を出力する。GNSS受信機12は、例えば、GPS、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、IRNSS(Indian Regional Navigational Satellite System)、COMPASS、Galileo、及びQZSS(Quasi-Zenith Satellite System)のうち少なくとも1つのGNSSの受信機を含んで構成される。
【0049】
通知部13は、制御部16の制御下で、車両100の運転者に対する情報の通知を行う。通知部13は、情報を表示するディスプレイ13aと、情報を音声出力するスピーカ13bとを有する。
【0050】
駆動制御部14は、動力源としてのエンジン又はモータ、動力伝達機構、及びブレーキ等を制御する。車両100が自動運転車両である場合、駆動制御部14は、制御部16と連携して車両100の運転制御を行ってもよい。
【0051】
車載カメラ15は、車両100の前方を撮影して得た撮像画像を制御部16に出力する。
【0052】
制御部16は、車両100(車載機150)における各種の機能を制御する。制御部16は、少なくとも1つのメモリ16bと、メモリ16bと電気的に接続された少なくとも1つのプロセッサ16aとを有する。メモリ16bは、揮発性メモリ及び不揮発性メモリを含み、プロセッサ16aにおける処理に用いる情報及びプロセッサ16aにより実行されるプログラムを記憶する。プロセッサ16aは、メモリ16bに記憶されたプログラムを実行することにより各種の処理を行う。
【0053】
このように構成された車両100において、制御部16は、各種の情報を無線通信により路側機200に送信するように通信部11を制御する。制御部16は、各種の情報を含む路車間通信メッセージを周期的に路側機200に送信するように通信部11を制御してもよい。路側機200に送信する情報は、例えば、位置情報、車速情報、加速度情報、ステアリング情報、及びアクセル・ブレーキ情報のうち少なくとも1つを含む。
【0054】
(路側機の動作)
次に、一実施形態に係る路側機200の動作について説明する。
図5は、一実施形態に係る路側機200の動作を示す図である。
【0055】
図5に示すように、ステップS1において、通信部21は、道路R上を走行する各車両100から送信される情報を無線通信により受信する。制御部22は、通信部21が受信する情報に基づいて、道路Rにおける各車両100の走行経路を含む走行挙動を特定し、特定した走行挙動の情報を蓄積する。
【0056】
ステップS2において、制御部22は、ステップS1で各車両100について特定された走行挙動に対して統計又は機械学習を行う第1処理を実行する。
【0057】
ステップS3において、制御部22は、第1処理の結果に基づいて、道路R上の交通障害物Eの有無及び交通障害物Eの位置について判定する第2処理を実行する。
【0058】
交通障害物Eが存在しないと判定した場合(ステップS4:NO)、本フローが終了する。
【0059】
一方、交通障害物Eが存在すると判定し、交通障害物Eの位置を判定した場合(ステップS4:YES)、ステップS5において、制御部22は、ステップS3で判定した交通障害物Eの位置へ向けて走行する車両100に対して、交通障害物Eの位置を示す情報を路車間通信により送信するように通信部21を制御する。交通障害物Eの位置を示す情報は、例えば、交通障害物Eの経度及び緯度、道路Rにおいて交通障害物Eが存在する車線の識別子、又は道路Rにおける交通障害物Eの相対的な位置(例えば、左側、右側)を示す情報である。
【0060】
ステップS5において、制御部22は、ステップS3で判定した交通障害物Eの位置へ向けて走行する車両100に対して、車載カメラ15の撮像画像の提供を要求する撮像画像要求を路車間通信により送信するように通信部21を制御してもよい。
【0061】
制御部22は、交通障害物Eの位置を示す情報と撮像画像要求とを含む1つの路車間通信メッセージを車両100に送信してもよい。或いは、制御部22は、交通障害物Eの位置を示す情報と撮像画像要求とを別々の路車間通信メッセージにより車両100に送信してもよい。
【0062】
車両100(車載機150)の制御部16は、交通障害物Eの位置を示す情報を路側機200から受信し、自車両の進行方向前方に交通障害物Eがあると判定した場合、その旨及び交通障害物Eの位置を通知部13により運転者に通知する。車両100(車載機150)の制御部16は、交通障害物Eの位置を避けるように車両100の車速制御及びステアリング制御を行ってもよい。
【0063】
また、車両100(車載機150)の制御部16は、撮像画像要求を路側機200から受信した場合、一定期間にわたって車載カメラ15により車両前方を撮影させて、撮像画像(動画像)を取得する。或いは、車両100(車載機150)の制御部16は、撮像画像要求を路側機200から受信した場合、交通障害物Eの位置を示す情報に基づいて、交通障害物Eの直前で1回だけ撮像画像(静止画像)を取得するように車載カメラ15を制御してもよい。
【0064】
ステップS6において、制御部22は、交通障害物Eに対するセンシングを行うように、道路Rと関連付けられた路側センサを制御する。例えば、制御部22は、ステップS3で判定した交通障害物Eの位置に基づいて、交通障害物Eに対する撮影を行うように路側カメラ500のパン、チルト、及びズームの少なくとも1つを制御する。なお、ステップS5及びステップS6は順序が逆であってもよい。
【0065】
ステップS7において、制御部22は、通信部21を介して車載カメラ15の撮像画像を車両100から取得し、インターフェイス23を介して路側カメラ500の撮像画像を路側カメラ500から取得し、取得した撮像画像に基づいて交通障害物Eの属性を判定する。交通障害物Eの属性は、交通障害物Eの種別(例えば、落下物、故障車、又は道路破損)を含む。交通障害物Eの属性は、交通障害物Eのサイズ(例えば、大、中、小)を含んでもよい。例えば、制御部22は、撮像画像に対する画像認識処理により交通障害物Eの属性を判定する。画像認識には、パターンマッチング技術や、強化学習等の学習(例えば、知識ベース、統計ベース、ニューラルネットベース)による画像認識技術を適用できる。
【0066】
ステップS8において、制御部22は、道路Rを管理するためのサーバ装置400に対し、インターフェイス23を介して、ステップS3で判定した交通障害物Eの位置を示す情報と、ステップS7で判定した交通障害物Eの属性を示す情報とを通知する。これにより、サーバ装置400は、交通障害物Eを除去するための適切な措置をとることができる。
【0067】
ステップS8において、制御部22は、道路Rと関連付けられた他の路側機200に対し、通信部21を介して、ステップS3で判定した交通障害物Eの位置を示す情報と、ステップS7で判定した交通障害物Eの属性を示す情報とを路路間通信により通知する。このような通知を受けた他の路側機200は、例えば、通知された交通障害物Eの位置を示す情報及び交通障害物Eの属性を示す情報を路車間通信により送信する。これにより、交通障害物Eに関する情報を道路R上の多くの車両100に通知できる。
【0068】
次に、一実施形態に係る交通障害物Eの判定動作の動作パターン1について説明する。
図6は、一実施形態に係る交通障害物Eの判定動作の動作パターン1を示す図である。
【0069】
図6に示すように、ステップS11において、制御部22は、道路R上の各車両100の走行経路を集計することにより走行領域を特定する。
【0070】
ステップS12において、制御部22は、各車両100から受信する情報に基づいて各車両100の走行経路を監視する。
【0071】
監視により、走行領域において一定時間にわたっていずれの車両100も走行しない無走行領域を検出した場合(ステップS13:YES)、ステップS14において、制御部22は、交通障害物Eが存在すると判定し、検出された無走行領域の位置に基づいて交通障害物Eの位置を判定する。例えば、制御部22は、無走行領域の中心位置を交通障害物Eの位置として判定してもよい。
【0072】
次に、一実施形態に係る交通障害物Eの判定動作の動作パターン2について説明する。
図7は、一実施形態に係る交通障害物Eの判定動作の動作パターン2を示す図である。
【0073】
図7に示すように、ステップS21において、制御部22は、機械学習により、交通障害物Eが存在する場合における各車両100の一定期間にわたる走行挙動を学習し、道路R上の異常な走行挙動を示す挙動情報を生成する。
【0074】
ステップS22において、制御部22は、道路R上を走行する車両100から受信する情報に基づいてこの車両100の一定期間にわたる走行挙動を特定する。
【0075】
ステップS23において、制御部22は、ステップS21で生成した挙動情報とステップS22で特定した走行挙動とに基づいて、ステップS22で特定した走行挙動が異常な走行挙動を含むか否かを判定する。
【0076】
ステップS22で特定した走行挙動が異常な走行挙動を含むと判定した場合(ステップS23:YES)、ステップS24において、制御部22は、交通障害物Eが存在すると判定し、異常な走行挙動が検出された走行区間に基づいて交通障害物Eの位置を判定する。例えば、制御部22は、異常な走行挙動が検出された走行区間の中心位置を交通障害物Eの位置として判定してもよい。
【0077】
(その他の実施形態)
図5乃至
図7に示す動作を、路側機200に代えてサーバ装置400が実行してもよい。この場合、
図5乃至
図7に示す動作の説明において、路側機200をサーバ装置400と読み替える。ここで、サーバ装置400は、路側機200の近くに配置されるエッジサーバであってもよい。具体的には、サーバ装置400は、路側機200とインターネットとの間に設けられ、所定範囲に限定されたエリア内の道路Rを管轄する。サーバ装置400は、WAN(Wide Area Network)を介さずに、LAN(Local Area Network)を介して路側機200と接続されてもよい。
【0078】
車両100(車載機150)又は路側機200が行う各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。
【0079】
また、車載機150又は路側機200が行う各処理を実行する回路を集積化し、車載機150又は路側機200の少なくとも一部を半導体集積回路(チップセット、SoC)として構成してもよい。
【0080】
以上、図面を参照して実施形態について詳しく説明したが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 :交通通信システム
11 :通信部
11a :アンテナ
11b :受信部
11c :送信部
12 :GNSS受信機
13 :通知部
13a :ディスプレイ
13b :スピーカ
14 :駆動制御部
15 :車載カメラ
16 :制御部
16a :プロセッサ
16b :メモリ
21 :通信部
21a :アンテナ
21b :受信部
21c :送信部
22 :制御部
22a :プロセッサ
22b :メモリ
23 :インターフェイス
100 :車両
150 :車載機
200 :路側機
300 :交通信号機
400 :サーバ装置
500 :路側カメラ