(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】基板実装型のコネクタ、及び、コネクタ付き基板
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6594 20110101AFI20231212BHJP
H01R 13/652 20060101ALI20231212BHJP
H01R 12/51 20110101ALI20231212BHJP
【FI】
H01R13/6594
H01R13/652
H01R12/51
(21)【出願番号】P 2019157254
(22)【出願日】2019-08-29
【審査請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】坪 慧吾
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼柳 政祥
(72)【発明者】
【氏名】塚本 真史
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-110089(JP,A)
【文献】特開2010-251178(JP,A)
【文献】特開2009-110697(JP,A)
【文献】登録実用新案第3134262(JP,U)
【文献】特開2016-076352(JP,A)
【文献】特開2016-103424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/6581
H01R 13/6594
H01R 13/648
H01R 13/652
H01R 12/51
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に電気的に接続される端子と、前記端子を覆うように配置されるノイズ低減用のシールドケースと、前記端子及び前記シールドケースを一体的に保持するハウジングと、を備える基板実装型のコネクタであって、
前記シールドケースの少なくとも一部は、
前記端子と前記回路基板上の導体パターンとの接点箇所を当該コネクタの外部から視認可能である隙間を前記回路基板と当該少なくとも一部との間に画成する開位置から、当該少なくとも一部が前記開位置にあるときよりも前記隙間が狭い状態にて前記接点箇所を覆い且つ当該少なくとも一部の全体が前記導体パターンに非接触であるように前記隙間が存在する閉位置まで、変位可能である、ように構成され
、
前記シールドケースは、
前記ハウジングに保持される本体部と、前記本体部から片持ち梁状に延びるとともに外力を受けて前記開位置から前記閉位置まで弾性変形可能な可動部と、を有し、
前記可動部は、前記開位置において、前記回路基板に沿って前記本体部から離れるにつれて前記回路基板から徐々に遠ざかるように前記回路基板に対して傾斜して前記本体部から延びる第1部と、前記回路基板に沿って前記第1部の延出端縁から離れるにつれて前記回路基板に徐々に近づくように前記回路基板に対して傾斜して前記第1部の前記延出端縁から延びる第2部と、を有し、前記第2部の前記延出端縁と前記回路基板との間に前記隙間を画成し、
前記可動部は、前記開位置では、前記本体部との境界に位置する前記第1部の根元部が非弾性変形状態にあり、前記第1部の前記根元部が弾性変形することで前記開位置から前記閉位置まで変位する、
基板実装型のコネクタ。
【請求項2】
請求項1
に記載の基板実装型のコネクタと、前記コネクタが実装される回路基板と、を備え、
前記コネクタの前記少なくとも一部が前記開位置にある状態にて、前記コネクタが前記回路基板に実装されている、
コネクタ付き基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に電気的に接続される端子と、端子を覆うように配置されるノイズ低減用のシールドケースと、端子及びシールドケースを一体的に保持するハウジングと、を備える基板実装型のコネクタ、及び、そのコネクタと回路基板とを備えるコネクタ付き基板、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回路基板に実装して用いられる基板実装型のコネクタが提案されている。例えば、従来の基板実装型のコネクタの一つは、回路基板上の導体パターンにハンダ付けされる端子と、相手側コネクタを受け入れる嵌合凹部を有するハウジングと、ハウジングの外壁面を覆うようにハウジングに組み付けられる金属製のシールドケースと、を備えている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したシールドケースは、一般に、電気的ノイズ等の原因となる電磁波がコネクタの外部から内部へ侵入すること及び内部から外部へ放出されることを抑制する目的で、コネクタに設けられている。このようなノイズ低減に関する性能は、コネクタのEMC性能とも称呼される。上述した従来のコネクタが有するシールドケースは、主としてハウジングの嵌合凹部を取り囲むように配置されている。一方、このシールドケースは、端子と導体パターンとの接点箇所(いわゆるSMT部)を覆っておらず、接点箇所は、コネクタの外部に露出している。コネクタのEMC性能を向上させる観点からは、この接点箇所もシールドケースで覆われることが望ましい。
【0005】
しかしながら、実際には、不用意に端子と導体パターンとの接点箇所をシールドケースで覆うと、接点箇所におけるハンダ付けの状態(例えば、いわゆるフィレットの形状)をコネクタの外部から視認することが困難になる。接点箇所における電気的接続の信頼性を高める観点からは、例えば作業者がハンダ付けの状態を目視で確認できるように、この接点箇所がコネクタの外部に露出していることが望ましい。
【0006】
このように、コネクタのEMC性能の向上と、コネクタと回路基板との電気的接続の信頼性の向上と、を両立する点において、従来の基板実装型のコネクタには更なる改善の余地がある。
【0007】
本発明の目的の一つは、コネクタのEMC性能の向上と、コネクタと回路基板との電気的接続の信頼性の向上と、を両立可能な基板実装型のコネクタ、及び、そのコネクタを用いたコネクタ付き基板、の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係る基板実装型のコネクタ及びコネクタ付き基板は、下記[1]~[2]を特徴としている。
[1]
回路基板に電気的に接続される端子と、前記端子を覆うように配置されるノイズ低減用のシールドケースと、前記端子及び前記シールドケースを一体的に保持するハウジングと、を備える基板実装型のコネクタであって、
前記シールドケースの少なくとも一部は、
前記端子と前記回路基板上の導体パターンとの接点箇所を当該コネクタの外部から視認可能である隙間を前記回路基板と当該少なくとも一部との間に画成する開位置から、当該少なくとも一部が前記開位置にあるときよりも前記隙間が狭い状態にて前記接点箇所を覆い且つ当該少なくとも一部の全体が前記導体パターンに非接触であるように前記隙間が存在する閉位置まで、変位可能である、ように構成され、
前記シールドケースは、
前記ハウジングに保持される本体部と、前記本体部から片持ち梁状に延びるとともに外力を受けて前記開位置から前記閉位置まで弾性変形可能な可動部と、を有し、
前記可動部は、前記開位置において、前記回路基板に沿って前記本体部から離れるにつれて前記回路基板から徐々に遠ざかるように前記回路基板に対して傾斜して前記本体部から延びる第1部と、前記回路基板に沿って前記第1部の延出端縁から離れるにつれて前記回路基板に徐々に近づくように前記回路基板に対して傾斜して前記第1部の前記延出端縁から延びる第2部と、を有し、前記第2部の前記延出端縁と前記回路基板との間に前記隙間を画成し、
前記可動部は、前記開位置では、前記本体部との境界に位置する前記第1部の根元部が非弾性変形状態にあり、前記第1部の前記根元部が弾性変形することで前記開位置から前記閉位置まで変位する、
基板実装型のコネクタであること。
[2]
上記[1]に記載の基板実装型のコネクタと、前記コネクタが実装される回路基板と、を備え、
前記コネクタの前記少なくとも一部が前記開位置又は前記閉位置にある状態にて、前記コネクタが前記回路基板に実装されている、
コネクタ付き基板であること。
【0009】
上記[1]の構成の基板実装型のコネクタによれば、ハウジングに一体的に保持されているシールドケースの少なくとも一部(以下「可動部」という。)が、端子と導体パターンとの接点箇所をコネクタの外部から視認可能である隙間を回路基板との間に画成する開位置から、その少なくとも一部が開位置にあるときよりも隙間が狭い状態にて接点箇所を覆う閉位置まで、変位可能となっている。そこで、例えば、可動部が開位置にある状態でコネクタを回路基板に実装すれば、接点箇所におけるハンダ付けの状態を、作業者が容易に確認できる。更に、例えば、実装の後、別の筐体などにコネクタ及び回路基板を収容する際、可動部を筐体に押圧接触させて閉位置に向けて変位させれば、従来のコネクタのように接点箇所が露出している場合に比べ、コネクタのEMC性能を向上できる。このように、本構成のコネクタは、コネクタのEMC性能の向上と、コネクタと回路基板との電気的接続の信頼性の向上と、を両立可能である。
【0010】
更に、上記構成の基板実装型のコネクタは、コネクタ自身が有するシールドケースの少なくとも一部を可動部として用いるため、別体のノイズ低減用の金属製カバー等を用いる必要がない。よって、そのような別体のカバーを要さない分、組み付け作業の作業性を向上できるとともに、同作業に要するコストを低減できる。
【0011】
なお、シールドケースの少なくとも一部(即ち、可動部)と回路基板との間の隙間は、可動部が閉位置から閉位置に移動するときに狭くなればよく、可動部が閉位置にあるときに必ずしも隙間を完全に無くす必要はない。例えば、可動部が閉位置にあるとき、シールドケースやハウジングの製造上の公差に起因する隙間が存在してもよい。また、シールドケース(可動部を含む。)は、端子や接点箇所を必ずしも物理的に密封するように覆う必要はなく、要求されるEMC性能を発揮できる程度に端子や接点箇所を電磁気的に覆っていればよい。例えば、シールドケースは、シールド対象の電磁波の波長などを考慮して定められた大きさの開口部(例えば、放熱用の孔)を有してもよい。
【0013】
更に、上記[1]の構成の基板実装型のコネクタによれば、シールドケースの可動部が、本体部から延びる片持ち梁状の形状を有するとともに、開位置から閉位置まで弾性変形可能となっている。よって、可動部に外力を及ぼすことで一旦は可動部を閉位置に向けて変位させても、その外力を解除することで可動部を開位置に戻すことができる。これにより、例えば、定期メンテナンスの際などにおいて、接点箇所におけるハンダ付けの状態を容易に点検できる。
【0014】
なお、上記構成の基板実装型のコネクタは、可動部が閉位置にある状態で可動部を本体部やハウジングに係止可能であるように、係止構造を有してもよい。この場合、可動部に及ぼす外力を解除しても、意図的に係止状態を解除しない限り可動部が開位置に戻らない。そのため、接点箇所が意図せず外部に露出することを避け得る。
【0016】
上記[2]の構成のコネクタ付き基板によれば、基板実装型のコネクタのハウジングに一体的に保持されているシールドケースの少なくとも一部(即ち、可動部)が、端子と導体パターンとの接点箇所をコネクタの外部から視認可能である隙間を回路基板との間に画成する開位置から、その少なくとも一部が開位置にあるときよりも隙間が狭い状態にて接点箇所を覆う閉位置まで、変位可能となっている。更に、可動部が開位置にある状態でコネクタが回路基板に実装されているため、接点箇所におけるハンダ付けの状態を、作業者が容易に確認できる。更に、例えば、実装の後、別の筐体などにコネクタ付き基板を収容する際、可動部を筐体に押圧接触させて閉位置に向けて変位させれば、従来のコネクタのように接点箇所が露出している場合に比べ、コネクタのEMC性能を向上できる。このように、本構成のコネクタ付き基板は、コネクタのEMC性能の向上と、コネクタと回路基板との電気的接続の信頼性の向上と、を両立可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コネクタのEMC性能の向上と、コネクタと回路基板との電気的接続の信頼性の向上と、を両立可能な基板実装型のコネクタ、及び、そのコネクタを用いたコネクタ付き基板、を提供できる。
【0018】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る基板実装型のコネクタの斜視図であり、
図1(a)は、シールドケースの可動部が開位置にある状態を示し、
図1(b)は、シールドケースの可動部が閉位置にある状態を示す。
【
図4】
図4は、
図1に示すコネクタが回路基板に実装された本発明の実施形態に係るコネクタ付き基板を筐体に収容する際の様子を示す斜視図である。
【
図5】
図5(a)は、
図4のB-B断面図であって可動部が開位置にある状態を表しており、
図5(b)は、コネクタ付き基板の筐体への収容が完了した状態を示す
図5(a)に対応する断面図であって可動部が閉位置にある状態を表している。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)はそれぞれ、変形例に係る
図5(a)及び
図5(b)に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る基板実装型のコネクタ1及びコネクタ付き基板3について説明する。コネクタ1(
図1参照)は、回路基板2に実装されてコネクタ付き基板3として使用される(
図4参照)。
【0021】
以下、説明の便宜上、
図1に示すように、「前後方向」、「幅方向」、「上下方向」、「前」、「後」、「上」及び「下」を定義する。「前後方向」、「幅方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。前後方向は、コネクタ1と相手側コネクタ6(
図6参照)との嵌合方向と一致している。
【0022】
コネクタ1は、
図1及び
図2に示すように、回路基板2に電気的に接続される複数(本例では、4つ)の端子10と、複数の端子10を覆うように配置されるノイズ低減用のシールドケース20と、複数の端子10及びシールドケース20を一体的に保持するハウジング30と、を備える。以下、コネクタ1を構成する各部材について順に説明する。
【0023】
まず、端子10について説明する。
図2に示すように、金属製の端子10は、前後方向に延びる接続部11と、接続部11の後端部から屈曲して下方に延びる垂下部12と、垂下部12の下端部から屈曲して後方に延びる接点部13と、を一体に備える。端子10は、一本の金属棒に対して所定のプレス加工及び曲げ加工等を施すことによって形成される。
【0024】
接続部11は、その根元部(後側部分)がハウジング30の端子収容孔33(
図2参照)に挿入されて固定されると共に、その先端部(前側部分)が相手側コネクタ6に収容されている相手側端子(図示省略)に接続される機能を果たす。接点部13は、回路基板2の上面に形成された導体パターン(図示省略)に接続される機能を果たす。
【0025】
次いで、シールドケース20について説明する。シールドケース20は、複数の端子10を覆うように配置されることで、外部の電磁ノイズから複数の端子10を保護する機能を果たす。シールドケース20は、一枚の金属板に対して所定のプレス加工及び曲げ加工等を施すことによって形成される。
【0026】
図2に示すように、シールドケース20は、ハウジング30に保持される本体部21と、本体部21から片持ち梁状に延びる可動部22と、を有する。本体部21は、幅方向に所定距離だけ離れて対向配置された一対の略矩形平板状の側板部23と、一対の側板部23の前側領域の上端部同士を幅方向に連結する矩形平板状の連結部24と、を備える。一対の側板部23は、ハウジング30の一対のスリット35(後述)に挿入されることで、ハウジング30に固定されることになる。
【0027】
各側板部23の下端面には、前後方向の複数箇所(本例では、3箇所)から下方に突出する複数のペグ27が設けられている。ペグ27は、コネクタ1を回路基板2に実装する際に、回路基板2に固定されることで、シールドケース20(即ち、コネクタ1)を回路基板2に固定する機能を果たす。また、例えば、ペグ27を回路基板2に形成されたアース回路(図示省略)に接続することで、シールドケース20が遮蔽した電磁波に起因する電流をアース回路に放出することもできる。
【0028】
可動部22は、
図1(a)及び
図2に示す開位置から
図1(b)に示す閉位置まで弾性変形可能に、連結部24の幅方向に延びる後端部から一体で片持ち梁状に後方に延びている。具体的には、可動部22は、連結部24の後端部から後方且つ上方に傾斜して延びる矩形平板状の第1部25と、第1部25から屈曲して後方且つ下方に傾斜して延びる略矩形平板状の第2部26と、を備える。
【0029】
可動部22は、下向きの外力を受けたとき、第1部25の根本部(連結部24との境界部)が弾性変形することで、開位置から閉位置まで変位し、当該外力を解除することにより、第1部25の根本部が弾性復帰することで、開位置に直ちに戻るようになっている。
【0030】
第1部25は、一対の側板部23の後側領域の上端部の間に位置する開口に対応する形状を有し、第2部26は、一対の側板部23の後端部の間に位置する開口に対応する形状を有している。具体的には、可動部22は、閉位置にあるとき、
図1(b)に示すように、第1部25が一対の側板部23の後側領域の上端部の間に位置する開口を塞ぎ、且つ、第2部26が一対の側板部23の後端部の間に位置する開口を塞ぐように構成されている。なお、第1部25及び第2部26と一対の側板部23とは完全に密着していることが望ましいが、第1部25と一対の側板部23との間、及び、第2部26と一対の側板部23との間には、シールドケース20の製造上の公差などに起因する僅かな隙間が存在する場合がある。シールドケース20のEMC性能に実質的な影響を及ぼさない限り、このような僅かな隙間は許容し得る。第1部25の上面には、一対の突起部25aが形成されている。一対の突起部25aについては後述する。
【0031】
次いで、ハウジング30について説明する。ハウジング30は、複数の端子10及びシールドケース20を一体的に保持する機能を果たす。樹脂成形品であるハウジング30は、
図2及び
図3に示すように、端子収容部31と、端子収容部31の前側に隣接配置されたフード部32と、を一体に備える。
【0032】
図3から理解できるように、端子収容部31は、略直方体状の形状を有する。端子収容部31には、前後方向に貫通する端子収容孔33が、所定間隔を空けて幅方向に並ぶように複数(本例では、4つ)形成されている。フード部32は、前方に開口する矩形フード状の形状を有し、直方体状の内部空間34を内部に有する。端子収容孔33の前端開口は、内部空間34に連通している。
【0033】
端子収容部31の幅方向両端部には、上方に開口し下方に窪み且つ前後方向に延びて前後方向に貫通する一対のスリット35が形成されている。一対のスリット35の前端開口は、フード部32の内部空間34に連通している(
図3参照)。以上、コネクタ1を構成する各部材について説明した。
【0034】
次いで、コネクタ1の組み付け手順について説明する。まず、複数の端子10をハウジング30に組み付ける。具体的には、
図2に示すように、複数の端子10の接続部11を、ハウジング30の複数の端子収容孔33に後方からそれぞれ挿入する。この挿入は、
図3に示すように、端子10の垂下部12が端子収容部31の前端面に近接するまで継続される。
【0035】
端子10のハウジング30への組み付け完了状態では、
図3に示すように、接続部11の先端部(前側部分)が端子収容孔33を貫通してフード部32の内部空間34内に位置し、接続部11の根元部(後側部分)が端子収容孔33に収容され固定されている。フード部32に相手側コネクタ6のハウジングが嵌合されることで、当該ハウジングに収容されている相手側端子と端子10の接続部11の先端部とが接続される。
【0036】
複数の端子10全てのハウジング30への組み付けが完了すると、次いで、シールドケース20をハウジング30に組み付ける。具体的には、
図2に示すように、シールドケース20の一対の側板部23を、ハウジング30の一対のスリット35に上方から挿入する(
図3も参照)。この挿入は、
図1(a)に示すように、シールドケース20の連結部24の下面がハウジング30の端子収容部31の上面に接触するまで継続される。
【0037】
シールドケース20のハウジング30への組み付け完了状態では、一対の側板部23が一対のスリット35に挿入されることで、シールドケース20がハウジング30に固定されると共に、
図1(a)に示すように、一対の側板部23に形成された複数のペグ27のうち一部のペグ27が、ハウジング30の下面に形成された開口(図示省略)を貫通してハウジング30の下面から下方に突出している。
【0038】
このように、シールドケース20のハウジング30への組み付けが完了すると、コネクタ1の組み付けが完了する(
図1(a)参照)。組み付けが完了したコネクタ1では、
図3等に示すように、端子10の接続部11の先端部(相手側端子と接触することになる部分)は、シールドケース20の本体部21により覆われている。一方、シールドケース20の可動部22には外力が作用していないので、可動部22は、
図1(a)に示すように開位置にある。よって、端子10の接点部13は、シールドケース20の可動部22に覆われておらず、外部に露出している。
【0039】
組み付けが完了したコネクタ1は、
図4に示すように、回路基板2の上面に実装される。具体的には、まず、コネクタ1から下方に突出する複数のペグ27を回路基板2の所定の固定部(図示省略)に固定する。次いで、複数の端子10の接点部13の、回路基板2の上面に形成された導体パターンへのハンダ付けを行う。
【0040】
このとき、可動部22が開位置にあるため、
図5(a)に示すように、可動部22の先端面(第2部26の下端面)と回路基板2との間に画成される隙間aが十分に確保されている。よって、端子10の接点部13と回路基板2との接点箇所Pにおけるハンダ付けの状態(いわゆるフィレットの形状)を、作業者が容易に確認できる。以上より、コネクタ1の回路基板2への実装が完了し、コネクタ付き基板3が完成する(
図4参照)。
【0041】
完成したコネクタ付き基板3は、
図4に示すように、下筐体4と上筐体5との間に挟むように、下筐体4及び上筐体5からなる筐体に収容される。コネクタ付き基板3を筐体に収容するためには、
図4及び
図5(a)に示すように、コネクタ付き基板3を下筐体4の上面に載置し、この状態から、
図5(b)に示すように、下筐体4に対して上筐体5を上方から近づけていく(
図5(b)参照)。
【0042】
上筐体5が下筐体4に対して近づく過程において、上筐体5が、コネクタ1から上方に突出する可動部22の一部(具体的には、第1部25及び第2部26の境界部)を下方に押圧することで、可動部22が開位置から閉位置に徐々に近づいていく(隙間aが狭くなっていく)。
【0043】
そして、下筐体4と上筐体5とが結合してコネクタ付き基板3の筐体への収容が完了した状態では、
図5(b)に示すように、可動部22の一対の突起部25aが上筐体5に接触する状態(即ち、上筐体5により下方に押圧される状態)が維持されることで、可動部22が閉位置(隙間aが実質的に消滅した位置)に維持される。
【0044】
なお、可動部22が閉位置にあっても、可動部22と回路基板2の導体パターンとの干渉を避ける程度の広さの隙間aが存在してもよいし、可動部22の製造上の公差などに起因する僅かな隙間aが存在してもよい。また、要求されるEMC性能を発揮できる限り、可動部22が閉位置にあっても、種々の目的に対応した広さの隙間aが存在してもよい。
【0045】
図5(b)に示すように、可動部22が閉位置にあるとき、端子10の接点部13と回路基板2との接点箇所Pが、閉位置にある可動部22によって覆われている。即ち、端子10の接続部11の先端部(相手側端子と接触することになる部分)がシールドケース20の本体部21により覆われ、且つ、接点箇所Pが、閉位置にある可動部22によって覆われた状態となる。これにより、接点箇所Pがシールドケース20の一部に覆われない態様と比べ、コネクタ1のEMC性能を向上できる。
【0046】
以上、本実施形態に係るコネクタ1及びコネクタ付き基板3によれば、ハウジング30に一体的に保持されているシールドケース20の一部である可動部22が、端子10と回路基板2との接点箇所Pを外部から視認可能である隙間aを画成する開位置(
図1(a)及び
図5(a)参照)から、その開位置よりも隙間aが狭くなる閉位置(
図1(b)及び
図5(b)参照)まで、変位可能となっている。可動部22が開位置にある状態でコネクタ1が回路基板2に実装されるため、端子10と回路基板2との接点箇所Pにおけるハンダ付けの状態を、作業者が容易に確認できる。更に、コネクタ付き基板3を下筐体4及び上筐体5からなる筐体に収容する際、筐体(上筐体5)そのもので可動部22に外力を及ぼし、可動部22を閉位置に変位させることで、従来のコネクタのように接点箇所Pが露出する場合に比べてEMC性能を向上できる。このように、本実施形態に係るコネクタ1及びコネクタ付き基板3は、コネクタ1のEMC性能の向上と、コネクタ1と回路基板2との電気的接続の信頼性の向上と、を両立可能である。
【0047】
更に、本実施形態に係るコネクタ1は、コネクタ1自身が有するシールドケース20の少なくとも一部を可動部22として用い得るため、別体のノイズ低減用のカバー等を用いる必要がない。よって、そのような別体のカバーを要さない分、組み付け作業の作業性を向上できるとともに、同作業に要するコストを低減できる。
【0048】
更に、本実施形態に係るコネクタ1によれば、シールドケース20の可動部22が、本体部21から延びる片持ち梁状の形状を有し、開位置から閉位置まで弾性変形可能となっている。よって、可動部22を一旦は閉位置に変位させても、可動部22に及ぼす外力を解除することで可動部22を開位置に戻すことができる。これにより、例えば、定期メンテナンスの際などにおいて、必要に応じて接点箇所Pにおけるハンダ付けの状態を容易に点検できる。
【0049】
<他の態様>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0050】
例えば、上記実施形態では、シールドケース20の可動部22は、下向きの外力を受けたときに開位置から閉位置まで変位し、当該外力を解除することにより開位置に直ちに戻るようになっている。これに対し、可動部22が閉位置にある状態で可動部22を本体部21やハウジング30に係止可能であるように、シールドケース20が係止構造を有していてもよい。この場合、可動部22に及ぼす外力を解除しても、意図的に係止状態を解除しない限り可動部22が開位置に戻らないため、接点箇所Pが意図せず外部に露出することを抑制できる。
【0051】
更に、上記実施形態では、コネクタ付き基板3を筐体に収容する際に、筐体の一部(上筐体5)からの外力を受けて可動部22が開位置から閉位置に変位するように構成されている(
図5(a)及び
図5(b)参照)。これに対し、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、コネクタ1に相手側コネクタ6を嵌合する際に、相手側コネクタ6からの外力を受けて可動部22が開位置から閉位置に変位するように、コネクタ1が構成されていてもよい。
【0052】
具体的には、
図6(a)及び
図6(b)に示す例では、シールドケース20の可動部22は、略矩形平板状の形状を有し、本体部21の後面に対して、
図6(a)に示す開位置から
図6(b)に示す閉位置まで、上下方向にスライドするように相対移動可能に保持されている。可動部22の前面の所定位置には、傾斜面29を有する突起28が設けられている。ハウジング30の端子収容部31には、突起28に対応する位置に、前後方向に貫通する貫通孔36が形成されている。貫通孔36には、相手側コネクタ6のハウジングに形成された棒状突起7が挿通することになる。
【0053】
図6(a)に示すように、可動部22が開位置にある状態では、上記実施形態と同様(
図5(a)参照)、可動部22の下端面と回路基板2との間に画成される隙間aが十分に確保されており、端子10の接点部13は外部に露出している。よって、端子10の接点部13と回路基板2との接点箇所Pにおけるハンダ付けの状態(いわゆるフィレットの形状)を、作業者が容易に視認できる。
【0054】
この状態から、相手側コネクタ6のハウジングの棒状突起7を貫通孔36に挿通させながら、相手側コネクタ6のハウジングをコネクタ1のフード部32に嵌合すると、棒状突起7の先端が突起28の傾斜面29を押圧することで、傾斜面29(即ち、可動部22)に下向きの分力が作用する。この結果、この下向きの分力を受けて可動部22が開位置から閉位置に変位する。
【0055】
そして、コネクタ1と相手側コネクタ6との嵌合が完了した状態では、
図6(b)に示すように、可動部22が閉位置(隙間aが実質的に消滅した位置)に維持されている。この結果、上記実施形態と同様、端子10の接点部13と回路基板2との接点箇所Pが閉位置にある可動部22によって覆われるので、上記実施形態と同様、接点箇所Pがシールドケース20の一部に覆われない態様と比べて、コネクタ1のEMC性能を向上できる。
【0056】
なお、
図6(a)及び
図6(b)に示す例では、本体部21に対し可動部22がスライドすることで、可動部22が開位置から閉位置まで移動している。これに対し、例えば、本体部21に対して可動部22が回転移動することで、可動部22が開位置から閉位置まで移動するように構成されてもよい。また、例えば、シールドケース20の全体をハウジング30に対して相対移動可能であるように保持し、シールドケース20の全体(即ち、可動部22)をスライド移動または回転移動させることで、シールドケース20(可動部22)が開位置から閉位置まで移動するように構成されてもよい。
【0057】
ここで、上述した本発明に係るコネクタ1及びコネクタ付き基板3の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
回路基板(2)に電気的に接続される端子(10)と、前記端子(10)を覆うように配置されるノイズ低減用のシールドケース(20)と、前記端子(10)及び前記シールドケース(20)を一体的に保持するハウジング(30)と、を備える基板実装型のコネクタ(1)であって、
前記シールドケース(20)の少なくとも一部(22)は、
前記端子(10)と前記回路基板(2)の導体パターンとの接点箇所(P)を当該コネクタ(1)の外部から視認可能である隙間(a)を前記回路基板(2)との間に画成する開位置から、当該少なくとも一部(22)が前記開位置にあるときよりも前記隙間(a)が狭い状態にて前記接点箇所(P)を覆う閉位置まで、変位可能である、ように構成される、
基板実装型のコネクタ(1)。
[2]
上記[1]に記載のコネクタ(1)において、
前記シールドケース(20)は、
前記ハウジング(30)に保持される本体部(21)と、前記本体部(21)から梁状に延びるとともに外力を受けて前記開位置から前記閉位置まで弾性変形可能な可動部(22)と、を有する、
基板実装型のコネクタ(1)。
[3]
上記[1]に記載のコネクタ(1)において、
前記シールドケース(20)は、
前記ハウジング(30)に保持される本体部(21)と、前記本体部(21)に対して相対移動可能に保持されるとともに外力を受けて前記開位置から前記閉位置まで変位可能な可動部(22)と、を有する、
基板実装型のコネクタ(1)。
[4]
上記[1]~上記[3]の何れか一つに記載の基板実装型のコネクタ(1)と、前記コネクタ(1)が実装される回路基板(2)と、を備え、
前記コネクタ(1)の前記少なくとも一部が前記開位置にある状態にて、前記コネクタ(1)が前記回路基板(2)に実装されている、
コネクタ付き基板(3)。
【符号の説明】
【0058】
1 基板実装型のコネクタ
2 回路基板
3 コネクタ付き基板
10 端子
20 シールドケース
21 本体部
22 可動部
30 ハウジング
a 隙間
P 接点箇所