(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20231212BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20231212BHJP
【FI】
G02B7/02 C
G02B7/04 D
(21)【出願番号】P 2019159621
(22)【出願日】2019-09-02
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】石政 徹
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-209519(JP,A)
【文献】特開2014-021411(JP,A)
【文献】特開2006-227404(JP,A)
【文献】特開平09-145975(JP,A)
【文献】特開2018-077381(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106569311(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109884766(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズホルダと、
前記レンズホルダを光軸方向へガイドするガイドバーと、
前記ガイドバーの一端を保持する第1の保持部材と、
前記ガイドバーの他端を保持する第2の保持部材と、
前記第2の保持部材を第1の位置と第2の位置との間で移動可能に保持するベース部材と、
前記第2の保持部材の撮像面側に配置されたレンズと、を備え、
前記第2の保持部材は、前記第1の位置にある状態では前記ベース部材に対して光軸方向と直交する平面方向への移動が規制され、前記第2の位置にある状態では前記ベース部材に対して光軸方向と直交する平面方向へ移動可能であ
り、
光軸方向から見た場合に前記第2の保持部材の一部が前記レンズとオーバーラップしていることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
前記第2の保持部材は、
光軸方向と直交する方向に突出する複数の鍔部と、
光軸方向において前記鍔部とは異なる位置で光軸方向と直交する方向に突出する複数の突起部と、を有し、
前記複数の鍔部はそれぞれ、
最外周に設けられた嵌合面と、
光軸方向と直交する一方の面に設けられた突き当て面と、を有し、
前記複数の突起部は、
前記突き当て面と対向する向きに設けられた規制面を有し、
前記ベース部材は、
開口部と、
前記開口部に面して、前記第2の保持部材が前記第1の位置にある場合に前記鍔部の嵌合面と嵌合する嵌合面と、
光軸方向と直交し、前記第2の保持部材が前記第1の位置にある場合に前記鍔部の突き当て面と当接する突き当て面と、
前記突き当て面の反対側に設けられ、前記第2の保持部材が前記第1の位置にある場合に前記突起部の規制面と当接する規制面と、を有することを特徴とする請求項
1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記突起部は、光軸方向から見た場合に前記鍔部の間に設けられていることを特徴とする請求項
2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記第2の保持部材が前記第2の位置にある場合に、前記第2の保持部材の突き当て面と前記ベース部材の突き当て面とが当接することを特徴とする請求項
2又は
3に記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記鍔部の突き当て面の反対側の面の外周近傍に溝部が形成され、
前記ベース部材は、
前記ベース部材の嵌合面と同位相で設けられた第1接着部と、
前記第1接着部とは異なる位相で設けられた第2接着部と、を有し、
前記第2の保持部材が前記第1の位置にある場合に前記溝部と前記第1接着部が同位相に位置し、前記第2の保持部材が前記第2の位置にある場合に前記溝部と前記第2接着部が同位相に位置することを特徴とする請求項
2乃至
4のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記溝部と第1接着部、又は、前記溝部と前記第2接着部、のいずれか1組に接着剤が塗布されていることを特徴とする請求項
5に記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
前記第2の保持部材は、前記複数の鍔部の間、且つ、前記突起部と同位相に設けられた治具受け面を有し、
前記第2の保持部材が前記第2の位置にある状態で、前記治具受け面が光軸方向を向いていないことを特徴とする請求項
2乃至
6のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項8】
請求項1乃至
7のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒と、
前記レンズ鏡筒を介して形成された光学像を画像データに変換する撮像素子と、を備えることを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒及び撮像装置に関し、特にレンズホルダをガイドするガイドバーを備えるレンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズホルダの光軸方向の移動をガイドバーによりガイドする機構を備えるレンズ鏡筒が知られている。例えば、特許文献1には、レンズホルダ、ガイドバー、第1のバー保持部材、第2のバー保持部材及びベース部材を有するガイド機構を備えたレンズ鏡筒が記載されている。ここで、レンズホルダは、レンズを保持する。ガイドバーは、レンズホルダに挿入されて、レンズホルダをレンズの光軸方向へ直進ガイドする。第1のバー保持部材はガイドバーの一端を保持し、第2のバー保持部材はガイドバーの他端を保持する。ベース部材には、第2のバー保持部材を挿入する開口部が形成されており、第2のバー保持部材を光軸と直交する平面方向へ移動させてガイドバーを傾けることによってレンズの傾きを調整することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、第2のバー保持部材がベース部材に対して常に移動可能に保持されているため、全てのレンズ鏡筒で第2のバー保持部材の調整を行わなければならない。
【0005】
本発明は、組み立てが容易で、且つ、高い光学性能を有するレンズ鏡筒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るレンズ鏡筒は、レンズホルダと、前記レンズホルダを光軸方向へガイドするガイドバーと、前記ガイドバーの一端を保持する第1の保持部材と、前記ガイドバーの他端を保持する第2の保持部材と、前記第2の保持部材を第1の位置と第2の位置との間で移動可能に保持するベース部材と、前記第2の保持部材の撮像面側に配置されたレンズと、を備え、前記第2の保持部材は、前記第1の位置にある状態では前記ベース部材に対して光軸方向と直交する平面方向への移動が規制され、前記第2の位置にある状態では前記ベース部材に対して光軸方向と直交する平面方向へ移動可能であり、光軸方向から見た場合に前記第2の保持部材の一部が前記レンズとオーバーラップしていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、組み立てが容易で、且つ、高い光学性能を有するレンズ鏡筒を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るレンズ鏡筒の断面図である。
【
図4】第2固定レンズ枠に設けられた開口部付近の斜視図である。
【
図5】第2固定レンズ枠と軸受けの位置関係を光軸方向から見て表した図である。
【
図6】第2固定レンズ枠に軸受けが組み込まれた状態を示す断面図である。
【
図7】フォーカス群の倒れ調整を説明する上面図である。
【
図8】フォーカス群の倒れ調整を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るレンズ鏡筒10の構造示す断面図である。
図2は、レンズ鏡筒10の分解斜視図である。
【0010】
レンズ鏡筒10は、第1固定レンズ群100、フォーカス群200、第2固定レンズ群300、振れ補正群500、絞りユニット600、第1調整レンズ群700及び第2調整レンズ群800を備える。
【0011】
第1固定レンズ群100は、第1固定レンズ110、第1固定レンズ枠120(第1の保持部材)、メインガイドバー130及びサブガイドバー140を有する。なお、
図1の断面図は、メインガイドバー130とサブガイドバー140を含む平面でレンズ鏡筒10の構造を表している。第1固定レンズ110は、第1固定レンズ枠120の略中心に保持されている。第1固定レンズ枠120は、光学設計上の必要がない場合には、レンズを保持していなくても構わない。メインガイドバー130及びサブガイドバー140の詳細については後述する。
【0012】
第1固定レンズ群100は、駆動源150、FPC170、コイル180、第1磁気シールド板金190及び第2磁気シールド板金195を有する。第1固定レンズ枠120は、振れ補正群500を構成する振れ補正レンズ枠520に保持された一対の振れ補正用マグネット530及び一対のヨーク540と同位相に一対のコイル180及び一対の第1磁気シールド板金190を保持している。第1固定レンズ枠120は更に、第1磁気シールド板金190を覆うように第2磁気シールド板金195を保持している。
【0013】
第1固定レンズ枠120には、3つのボール(不図示)とそれぞれ当接する3か所のボール受面部(不図示)と、スラストバネ(不図示)の一端がそれぞれ掛止されるフック(不図示)が設けられている。第1固定レンズ枠120は、メインガイドバー130の一端(被写体側)が挿入されてメインガイドバー130を保持するメインガイド保持部120aを有する。また、第1固定レンズ枠120は、サブガイドバー140の一端(被写体側)が挿入されてサブガイドバー140を保持するサブガイド保持部120bを有する。
【0014】
第1固定レンズ枠120は、被写体側に複数の第2調整コロ830を介して第2調整レンズ群800を保持し、第2調整レンズ群800は複数の第1調整コロ730を介して第1調整レンズ群700を保持している。第1調整レンズ群700は、第1調整レンズ710、第1調整レンズ枠720、第1調整コロ730及び第1調整レンズ群ネジを有する。第2調整レンズ群800は、第2調整レンズ810、第2調整レンズ枠820、第2調整コロ830、第1調整コロ挿入部840及び第2調整レンズ群ネジを有する。
【0015】
第1調整コロ730の最外周は、第1調整レンズ群ネジの中心に対して偏心し、且つ、第2調整レンズ枠820の第1調整コロ挿入部840と嵌合している。第1調整コロ730を回転させることによって、第2調整レンズ810に対して第1調整レンズ710を所望の位置へ移動させて位置決めすることができる。同様に、第2調整コロ830の最外周は、第2調整レンズ群ネジの中心に対して偏心し、且つ、第1固定レンズ枠120の第2調整コロ挿入部120cと嵌合している。第2調整コロ830を回転させることにより、第1固定レンズ枠120に対して第2調整レンズ810を所望の位置へ移動させて、位置決めすることができる。こうして第1調整レンズ710及び第2調整レンズ810の撮像光軸に対する傾きや偏心を調整することで、良好な光学性能を得ることができる。
【0016】
第2固定レンズ群300は、第2固定レンズ310、第2固定レンズ枠320(ベース部材)、カバー330、ネジ340及び軸受け400(第2の保持部材)を有する。第2固定レンズ枠320は、軸受け400が挿入される開口部320aと、サブガイドバー140の他端が挿入されるサブガイド保持部320bを有する。
【0017】
カバー330は、バヨネット結合により第2固定レンズ枠320に取り付けられる。第2固定レンズ310は、カバー330により第2固定レンズ枠320に保持される。レンズ鏡筒10では、第2固定レンズ310はカバー330に設けられた複数の腕部330aによるバネ性を利用して第2固定レンズ枠320に保持されている。但し、第2固定レンズ枠320が第2固定レンズ310を保持する構成はこれに限定されず、他の構成を用いてもよい。第2固定レンズ枠320による軸受け400の具体的な保持方法については後述する。
【0018】
フォーカス群200は、直進移動群として光軸方向において第1固定レンズ群100と第2固定レンズ群300の間に配置されている。フォーカス群200は、フォーカスレンズ210、フォーカスレンズ枠220(レンズホルダ)、ラック230、ラックスプリング240及びマスク250を有する。フォーカスレンズ枠220は、メインガイドバー130が摺動可能に挿入される嵌合部220aと、サブガイドバー140と係合する振れ止め部220bを有する。ラック230は、フォーカスレンズ枠220に回動可能に保持され、ラックスプリング240の作用によって駆動源150の出力軸上に設けられたリードスクリュー150aへ付勢される。
【0019】
FPC170を介して駆動源150が通電されると、リードスクリュー150aとラック230の作用により、フォーカス群200はメインガイドバー130及びサブガイドバー140に案内されて、光軸方向の所定の位置へ移動する。これにより、レンズ鏡筒10の光学系は被写体に対して合焦した状態となる。被写体に対して合焦した光学像は、レンズ鏡筒10が装着されている不図示の撮像装置に設けられたCMOSセンサ等の撮像素子の撮像面に結像し、撮像素子は光電変換により画像データを生成する。なお、駆動源150は、例えばステッピングモータであるが、フォーカス群200を任意の位置へ移動させることができる限りにおいて制限されない。
【0020】
振れ補正群500は、振れ補正レンズ510、振れ補正レンズ枠520、一対の振れ補正用マグネット530、一対のヨーク540及び一対の位置検出用マグネットを有する。振れ補正レンズ510、一対の振れ補正用マグネット530、一対のヨーク540及び一対の位置検出用マグネットは、振れ補正レンズ枠520に保持される。一対の振れ補正用マグネット530は、光軸と直交する面内で互いに周方向に90°離間して配置される。一対のヨーク540は、光軸方向の被写体側に、一対の振れ補正用マグネット530と対面するように配置される。一対の位置検出用マグネットは、光軸を挟んで一対の振れ補正用マグネット530と対向する位置に配置される。なお、振れ補正群500では振れ補正用マグネット530とは別に位置検出用マグネットを設けているが、構成によっては振れ補正用マグネット530で位置検出を行うようにしてもよい。
【0021】
振れ補正レンズ枠520には、3つのボール(不図示)のそれぞれに当接するように3か所にボール受面部(不図示)が設けられている。また、振れ補正レンズ枠520には、一端が第1固定レンズ枠120のフックに固定されたスラストバネ(不図示)の他端が掛止されるフック(不図示)が設けられている。スラストバネ(不図示)の付勢力によって、第1固定レンズ枠120のボール受面部(不図示)と振れ補正レンズ枠520のボール面受け部(不図示)との間にボール(不図示)が挟持された状態になる。こうして、振れ補正レンズ枠520は、光軸と直交する平面内で移動可能に配置される。
【0022】
絞りユニット600は、振れ補正群500の被写体側に配置され、ネジ(不図示)によって第2固定レンズ枠320に保持される。
【0023】
次に、レンズ鏡筒10での像ぶれ補正方法について説明する。前述の通り、第1固定レンズ枠120には、同位相に配置される一対の振れ補正用マグネット530と一対のコイル180、一対の第1磁気シールド板金190及びフレキ(不図示)が設けられる。
【0024】
フレキ(不図示)には、位置検出用マグネット(不図示)が実装され、位置検出用マグネット(不図示)と同位相に一対のホール素子(不図示)が実装されている。コイル180に通電を行うと、コイル180と振れ補正用マグネット530の磁気との間に発生するローレンツ力により、振れ補正群500は光軸と直交する平面内で第1固定レンズ群100に対して移動する。ホール素子(不図示)は、位置検出用マグネット(不図示)の磁力を検出し、その検出結果に基づいて、レンズ鏡筒10が装着される撮像装置本体(不図示)の制御部が第1固定レンズ群100に対する振れ補正群500の位置を求める。
【0025】
撮像装置本体(不図示)の制御部は、レンズ鏡筒10又は撮像装置本体(不図示)に設けられたジャイロセンサ(不図示)の像ブレ情報に基づき、コイル180への印加電圧を制御し、光軸と直交する平面内で振れ補正群500を像ぶれ補正する方向へ移動させる。これにより、手ぶれ等の振動が生じても、レンズ鏡筒10の撮影光学系を通して撮像素子(不図示)に結像する被写体像の像ぶれが補正して、像ぶれが軽減された静止画像や動画像を得ることができる。
【0026】
なお、コイル180への通電が行われると、コイル180と振れ補正用マグネット530との間に磁気が発生する。発生した磁気が撮像素子(不図示)へ影響を与えないように、コイル180と同位相で撮像素子側へ第1磁気シールド板金190が配置されている。そして、磁気シールド効果を更に高めるために、第1磁気シールド板金190の撮像素子側へ第2磁気シールド板金195が配置されている。本実施形態では、第2磁気シールド板金195は、一対の第1磁気シールド板金190を覆うように一体的に構成されているが、これに限らず、各部材の配置に応じて複数に分けて二体化しても構わない。
【0027】
次に、フォーカス群200の傾き調整方法について説明する。
図3は、軸受け400の構成を示す斜視図であり、
図3(a),(b)では軸受け400を見る方向が異なっている。
図4は、第2固定レンズ枠320に設けられた開口部320a付近の斜視図である。
【0028】
軸受け400は、一体的に形成された複数の鍔部400aと複数の突起部400bを有する。なお、軸受け400がレンズ鏡筒10に配置された状態(第2固定レンズ枠320に保持された状態)で、複数の鍔部400aと複数の突起部400bはそれぞれ、軸受け400の略円柱状の本体部から、光軸と直交する方向に突出するように形成されている。軸受け400の突起部400b側には、メインガイドバー130の他端(撮像面側)を保持する保持部400cが設けられている。鍔部400aの最外周には、嵌合面400dが設けられている。鍔部400aの突起部400b側には、第2固定レンズ枠320の突き当て面320cと当接する突き当て面400eが設けられている。鍔部400aの突き当て面400eの反対側面の外周近傍には、第2固定レンズ枠320との接着に用いられる溝部(以下「接着溝400f」という)が設けられている。周方向で鍔部400aの間には、フォーカス群200の傾き調整時に用いられる治具20(
図7参照)が突き当たる治具受け面400gが設けられている。
【0029】
突起部400bは、メインガイドバー130を保持する保持部400c側に設けられており、光軸方向から見た場合に鍔部400aの間に、つまり、治具受け面400gと同位相に設けられている。なお、本実施形態では、軸受け400は同数の鍔部400aと突起部400bを有するが、必ずしも同数である必要はなく、レンズ鏡筒10の構成に応じて必要数だけ設ければよい。
【0030】
突起部400bの鍔部400a側には、規制面400hが設けられている。突起部400bと治具受け面400gは同数で同位相に設けられているが、構成によっては同数でなく、また、同位相でなくともよい。
【0031】
なお、第2固定レンズ枠320は、光軸と直交する平面内で軸受け400に設けられた突き当て面400eと当接する突き当て面320cと、軸受け400の突起部400bが挿入される切り欠き部320dを有する。また、第2固定レンズ枠320は、開口部320aに面する嵌合面320eと、嵌合面320eの間に設けられた内壁320hを有する。第2固定レンズ枠320は更に、嵌合面320eと同位相に設けられた第1接着部320fと、内壁320hと同位相に設けられた第2接着部320gを有する。突き当て面320cの裏側には、光軸と直交する規制面320iが設けられている。
【0032】
次に、レンズ鏡筒10の組立工程について説明する。先ず、第1固定レンズ枠120のメインガイド保持部120aへメインガイドバー130の一端(被写体側)を挿入し、サブガイド保持部120bへサブガイドバー140の一端(被写体側)を挿入する。その際、事前にフォーカスレンズ210、ラック230、ラックスプリング240及びマスク250が組み込まれたフォーカスレンズ枠220の嵌合部220aを事前にメインガイドバー130へ挿入しておく。これにより、フォーカス群200が第1固定レンズ群100に組み込まれる。
【0033】
続いて、第2固定レンズ枠320の側面からラック230とリードスクリュー150aが噛み合うように駆動源150とFPC170を組み付け、第2固定レンズ枠320にネジ160で固定する。そして、サブガイドバー140の他端(撮像面側)を第2固定レンズ枠320に設けられたサブガイド保持部320bへ挿入しながら、第1固定レンズ群100へ第2固定レンズ枠320を組み込む。この状態で、複数のネジ340により第2固定レンズ枠320を第1固定レンズ枠120に固定する。その後、軸受け400の突起部400bと切り欠き部320dの位相を合わせるようにして、軸受け400をカバー330側から開口部320aへ組み込む。
【0034】
図5は、第2固定レンズ枠320と軸受け400の位置関係を、光軸方向から見た状態で表した図である。
図5(a)は軸受け400の組位相を表しており、
図5(b)は軸受け400におけるフォーカス群200の無調整時の組位相(第1の位置)を表しており、
図5(c)は軸受け400におけるフォーカス群200の倒れ調整時の組位相(第2の位置)を表している。
図6は、第2固定レンズ枠320に軸受け400が組み込まれた状態を示す断面図である。
図6(a)は、
図5(b)の第1の位置での軸受け400と第2固定レンズ枠320との係合状態を表している。
図6(b)は、
図5(c)の第2の位置での軸受け400と第2固定レンズ枠320との係合状態を表している。
【0035】
図5(a)に示されるように、第2固定レンズ枠320の開口部320aに軸受け400が挿入されると、保持部400cにメインガイドバー130の他端(撮像面側)が挿入される。開口部320aに軸受け400が挿入されると、第2固定レンズ枠320の突き当て面320cと軸受け400の突き当て面400eとが互いに当接する。なお、突き当て面320cと突き当て面400eは共に光軸と直交する平面である。
【0036】
第2固定レンズ枠320は、軸受け400を矢印30方向と矢印40方向へ移動可能に保持している。
図5(a)の組位相の状態から軸受け400を矢印30の方向へ回転させると、第2固定レンズ枠320に対して軸受け400が、
図5(b)及び
図6(a)に示す第1の位置へ移動する。軸受け400が第1の位置にあるとき、軸受け400の嵌合面400dが第2固定レンズ枠320の嵌合面320eと嵌合する。また、軸受け400の規制面400hが第2固定レンズ枠320の規制面320iと当接する。
【0037】
軸受け400が第1の位置で第2固定レンズ枠320に保持された状態は、軸受け400の光軸方向と直交する平面での移動が規制され、軸受け400の接着溝400fと第2固定レンズ枠320の第1接着部320fが同位相となって接着が可能な状態である。したがって、接着溝400f及び第1接着部320fの付近に所定の接着剤を塗布することにより、軸受け400を第2固定レンズ枠320に接着、固定した状態とすることができる。
【0038】
図5(a)の組位相の状態から軸受け400を矢印40の方向へ回転させると、第2固定レンズ枠320に対して軸受け400が
図5(c)及び
図6(b)に示す第2の位置へ移動する。軸受け400が第2の位置にあるとき、軸受け400の嵌合面400dは第2固定レンズ枠320の内壁320hと対向し、軸受け400の接着溝400fと第2固定レンズ枠320の第2接着部320gが同位相となって接着が可能となる。よって、接着溝400f及び第2接着部320gの付近に所定の接着剤を塗布することにより、軸受け400を第2固定レンズ枠320に接着固定した状態とすることができる。
【0039】
また、軸受け400が第2の位置にあるとき、軸受け400の突き当て面400eは第2固定レンズ枠320の突き当て面320cと当接する。第2固定レンズ枠320において、内壁320hの径は嵌合面320eの径よりも大きいため、嵌合面400dと内壁320hの間に隙間50が形成される。そして、第2固定レンズ枠320の規制面320iと対向する位置には軸受け400の規制面400hは存在せず、規制面320iの撮像面側には隙間60が形成される。
【0040】
すなわち、軸受け400が第2の位置で第2固定レンズ枠320に保持された状態は、軸受け400は突き当て面400eだけが第2固定レンズ枠320の突き当て面320cと当接して、光軸と直交する平面方向に移動可能に保持された状態である。この状態で治具20(
図7参照)により軸受け400を光軸と直交する平面内の任意の位置へ移動させると、軸受け400はメインガイドバー130を保持しているためにメインガイドバー130が傾いて、フォーカス群200が傾く。こうして、軸受け400を光軸と直交する平面内の任意の位置へ移動させることにより、フォーカス群200の倒れ調整を行うことができる。
【0041】
ここで、従来技術として説明した特開2018-77381号公報(特許文献1)での工法について確認する。特許文献1の工法において、調整コマが5群鏡筒に保持された状態は、本実施形態で軸受け400が第2の位置にある状態と似ている。つまり、従来工法では、5群ベースに対して調整コマの位置調整を行うことでガイドバーが倒れて、4郡鏡筒の傾きが調整される。このような構成には、調整コマの光軸と直交する平面方向の移動を規制する部分がないため、全てのレンズ鏡筒で倒れ調整を行わなければならない。
【0042】
これに対して、本実施形態に係るレンズ鏡筒10では、軸受け400を第1の位置である矢印30の方向へ回転させると、軸受け400は第2固定レンズ枠320に固定された状態となる。この状態でフォーカス群200の倒れを検査する。その結果、倒れが所定の規格を満足していることが確認された場合には、接着溝400f及び第1接着部320fへ所定の接着剤を塗布する。これにより、フォーカス群200の倒れ調整を行うこと鳴く、軸受け400を強固に固定することができる。
【0043】
一方、軸受け400を第1の位置へ移動させた状態でフォーカス群200の倒れを確認した結果、所定の規格が満たされていない場合には、軸受け400を矢印40の方向へ回転させて第2の位置へ移動させ、治具20により倒れ調整を行う。そして、接着溝400f及び第2接着部320gへ所定の接着剤を塗布して軸受け400を第2固定レンズ枠320に固定する。つまり、フォーカス群200の倒れ調整は、軸受け400を第1の位置で固定することができなかった場合にのみ行えばよいため、フォーカス群200の倒れ調整の工程を簡略化して、生産性を高めることが可能になる。
【0044】
なお、このような調整の結果、接着溝400fと第1接着部320f、又は、接着溝400fと第2接着部320g、のいずれか1組に接着剤が塗布されて、軸受け400は第2固定レンズ枠320に固定される。
【0045】
ところで、軸受け400の嵌合面400dの直径をR_400d、外周400iの直径をR400i、第2固定レンズ枠320の内壁320hの直径をr_320h、内周320jの直径をr_320jとする。すると、“R_400d-r_320h<r320j-R400i”の関係が成り立つ。
【0046】
これにより、軸受け400を光軸と直交する平面方向へ移動させたとき、軸受け400の嵌合面400dが移動の規制面となって第2固定レンズ枠320の内壁320hに接触する。つまり、倒れ調整が可能な状態で、嵌合面400dと内壁320hは光軸と直交する平面方向で最も近接する位置関係にある。また、前述したように、嵌合面400dの撮像面側には接着溝400fが設けられており、内周320jと同位相に第2接着部320gが設けられている。そのため、軸受け400を矢印40の方向へ回転させて倒れ調整を行った際に、接着溝400fと第2接着部320gは最も近接するため、効率よく接着を行うことができる。
【0047】
ここで、再度、従来技術(特開2018-77381号公報(特許文献1))でのレンズ鏡筒の構成について確認する。特許文献1に記載されたレンズ鏡筒では、光軸方向において調整コマはレンズの外側に配置されているため、レンズ鏡筒が大型化(長尺化)してしまう。これに対して、本実施形態では、軸受け400及びメインガイドバー130は第2固定レンズ310の被写体側に、軸受け400の一部が第2固定レンズ310と光軸方向から見た場合にオーバーラップするように、配置されている。そのため、レンズ鏡筒10の小型化(短尺化)が可能となる。
【0048】
図7は、治具20による軸受け400の調整(フォーカス群200の倒れ調整)を撮像面側から見た図である。
図8は、治具20による軸受け400の調整状態を示す斜視図である。
図7に示すように、軸受け400が第2の位置にある場合に、突き当て面320cが光軸に向かって配置されないように突起部400bと切り欠き部320dが配置されている。これにより、フォーカス群200の倒れ調整を行う際に、治具20が光軸に掛からなくなる(光軸方向から見たときに治具20が光軸に重ならない)ため、倒れ調整を容易に行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0049】
10 レンズ鏡筒
120 第1固定レンズ枠
130 メインガイドバー
200 フォーカス群
310 第2固定レンズ
320 第2固定レンズ枠
320c (第2固定レンズ枠の)突き当て面
320e (第2固定レンズ枠の)嵌合面
320f 第1接着部
320g 第2接着部
320i 規制面
400a 鍔部
400b 突起部
400d (鍔部の)嵌合面
400e (鍔部の)突き当て面
400f 接着溝
400g 治具受け面
400h 規制面