(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】容器蓋
(51)【国際特許分類】
B65D 51/18 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
B65D51/18
(21)【出願番号】P 2019175826
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2022-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】佐原 亨
(72)【発明者】
【氏名】杉山 尚
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-013830(JP,A)
【文献】特開2009-057064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 51/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口頸部に装着される蓋本体、該蓋本体を覆う閉位置と該蓋本体を露呈させる開位置との間を旋回自在に該蓋本体に連結された外蓋、及び中栓を具備し、
該蓋本体は頂面壁と該頂面壁の周縁に接続された筒状装着壁とを含み、該頂面壁には排出開口が形成されていると共に該排出開口の外周縁から上方に延出する筒状排出筒が形成されており、該装着壁を容器の口頸部に被嵌することによって容器の口頸部に装着され、
該外蓋は天面壁と該天面壁の周縁から垂下するスカート壁と該スカート壁よりも半径方向内方において該天面壁の内面から垂下する筒状係合壁とを含み、
該中栓は基壁と該基壁から垂下する筒状密封壁とを含み、
該中栓の該密封壁が該蓋本体の該頂面壁に付設されている該排出筒内に挿入されることによって該排出開口は密封され、該外蓋が該閉位置から該開位置に開動されると、該外蓋の該係合壁が該中栓に係合することによって、該外蓋の開動に付随して該中栓も開移動され該中栓が該蓋本体の該排出筒から離脱される、合成樹脂製容器蓋において、
該外蓋の該天面壁の内
面には、
該天面壁の内面から垂下して該中栓の該基壁の外面に当接し、該外蓋の該天面壁に対して該中栓を下方に弾性的に偏倚する弾性片が付設されている、
ことを特徴とする合成樹脂製容器蓋。
【請求項2】
該弾性片は該係合壁よりも半径方向内側において該天面壁の内面から垂
下する、請求項
1に記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項3】
該弾性片の少なくとも下部は自由状態において下方に向かって半径方向外方又は内方に傾斜して延びる、請求項
1又は2記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項4】
該弾性片は周方向に連続して延在し、自由状態において下方に向かって軸線方向に平行に延びる円筒形状上部と下方に向かって半径方向外方又は内方に傾斜して延びる円錐台又は逆円錐台形状下部とを有する、請求項
3記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項5】
容器の口頸部に装着される蓋本体、該蓋本体を覆う閉位置と該蓋本体を露呈させる開位置との間を旋回自在に該蓋本体に連結された外蓋、及び中栓を具備し、
該蓋本体は頂面壁と該頂面壁の周縁に接続された筒状装着壁とを含み、該頂面壁には排出開口が形成されていると共に該排出開口の外周縁から上方に延出する筒状排出筒が形成されており、該装着壁を容器の口頸部に被嵌することによって容器の口頸部に装着され、
該外蓋は天面壁と該天面壁の周縁から垂下するスカート壁と該スカート壁よりも半径方向内方において該天面壁の内面から垂下する筒状係合壁とを含み、
該中栓は基壁と該基壁から垂下する筒状密封壁とを含み、
該中栓の該密封壁が該蓋本体の該頂面壁に付設されている該排出筒内に挿入されることによって該排出開口は密封され、該外蓋が該閉位置から該開位置に開動されると、該外蓋の該係合壁が該中栓に係合することによって、該外蓋の開動に付随して該中栓も開移動され該中栓が該蓋本体の該排出筒から離脱される、合成樹脂製容器蓋において、
該中栓の該基壁の上面には、
該外蓋の該天面壁の内面に当接し、該外蓋の該天面壁に対して該中栓を下方に弾性的に偏倚する弾性片が付設されている、
ことを特徴とする合成樹脂製容器蓋。
【請求項6】
該中栓の該基壁は円形板形状であり、該外蓋の該係合壁には内径が該中栓の該基壁の外径よりも小さい係合突条が形成されており、該中栓の該密封壁が該蓋本体の該排出筒内に挿入された状態で該外蓋が該閉位置に閉動されると、該係合壁の該係合突条が該基壁を弾性的に乗り越えて該基壁よりも下方に位置し、該外蓋が該閉位置から該開位置に開動されると、該係合壁の該係合突条が該中栓の該基壁に係合する、請求項1
から5までのいずれかに記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項7】
該中栓の該基壁は円形であり且つ該蓋本体の該排出筒の上端の外径よりも大きい外径を有し、該外蓋の該係合壁は円筒形状であり且つ該係合突条の内径は該蓋本体の該排出筒の上端の外径よりも大きく該中栓の該基壁の外径よりは小さい、請求項
6記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項8】
該外蓋には、該天面壁の内面から突出し、該外蓋の該天面壁に対する該中栓の上昇を制限する制限突起が形成されている、請求項1から
7までのいずれかに記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項9】
該蓋本体及び該外蓋は一体に成形され、該中栓は該蓋本体及び該外蓋とは別個に成形されている、請求項1から
8までのいずれかに記載の合成樹脂製容器蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の口頸部に装着される蓋本体、蓋本体を覆う閉位置と該蓋本体を露呈させる開位置との間を旋回自在に蓋本体に連結された外蓋、及び中栓を具備する合成樹脂容器蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1及び2に開示されている如く、液体調味料及び飲料等のための容器の口頸部に適用される容器蓋として、容器の口頸部に装着される蓋本体、該蓋本体を覆う閉位置と該蓋本体を露呈させる開位置との間を旋回自在に該蓋本体に連結された外蓋、及び中栓を具備する容器蓋が開示されている。該蓋本体は頂面壁と該頂面壁の周縁に接続された筒状装着壁とを含み、該頂面壁には排出開口が形成されていると共に該排出開口の外周縁から上方に延出する筒状排出筒が形成されており、該装着壁を容器の口頸部に被嵌することによって容器の口頸部に装着される。該外蓋は天面壁と該天面壁の周縁から垂下するスカート壁と該スカート壁よりも半径方向内方において該天面壁の内面から垂下する筒状係合壁とを含んでいる。該中栓は基壁と該基壁から垂下する筒状密封壁とを含んでいる。そして、該中栓の該密封壁が該蓋本体の該頂面壁に付設されている該排出筒内に挿入されることによって該排出開口は密封され、該外蓋が該閉位置から該開位置に開動されると、該外蓋の該係合壁が該中栓に係合することによって、該外蓋の開動に付随して該中栓も開移動され該中栓が該蓋本体の該排出筒から離脱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-162499号公報
【文献】特開2017-13830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
而して、特許文献1に開示された従来の容器蓋にあっては、中栓の密封壁が蓋本体の排出筒内に挿入され且つ外蓋が閉位置にある状態において中栓における基壁の上面と外蓋における天面壁の下面とは離隔していることに起因して、容器蓋が容器の口頸部に装着された状態で落下乃至横転すると衝撃で中栓が蓋本体に対し上方に移動して密封壁による排出開口の密封が毀損され、内容物が流出してしまう虞がある。
【0005】
また、特許文献1及び特許文献2に開示された従来の容器蓋にあっては、外蓋が中栓を付随して開位置から閉位置に閉動される際、中栓は外蓋に対して上下方向及び左右方向に対して移動可能つまり所謂ガタを有していることに起因して、蓋本体の排出筒における外蓋の旋回中心側の上端部に中栓の密封壁の下端が当接することで外蓋に対する中栓の姿勢が変更せしめられ、中栓の密封壁が蓋本体の排出筒内に円滑に案内されなくなる虞がある。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、(1)容器蓋が容器の口頸部に装着された状態で落下乃至横転しても密封壁による排出開口の密封が毀損されず、そして(2)外蓋が中栓を付随して開位置から閉位置に閉動される際に中栓の密封壁が蓋本体の排出筒内に円滑に案内される、新規且つ改良された合成樹脂製容器蓋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討の結果、外蓋の天面壁の内面或いは中栓の基壁の上面に、外蓋の天面壁に対して中栓を下方に弾性的に偏倚する弾性片を付設することによって上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【0008】
即ち、本発明の第一の局面によれば、上記主たる技術的課題を達成する容器蓋として、容器の口頸部に装着される蓋本体、該蓋本体を覆う閉位置と該蓋本体を露呈させる開位置との間を旋回自在に該蓋本体に連結された外蓋、及び中栓を具備し、
該蓋本体は頂面壁と該頂面壁の周縁に接続された筒状装着壁とを含み、該頂面壁には排出開口が形成されていると共に該排出開口の外周縁から上方に延出する筒状排出筒が形成されており、該装着壁を容器の口頸部に被嵌することによって容器の口頸部に装着され、
該外蓋は天面壁と該天面壁の周縁から垂下するスカート壁と該スカート壁よりも半径方向内方において該天面壁の内面から垂下する筒状係合壁とを含み、
該中栓は基壁と該基壁から垂下する筒状密封壁とを含み、
該中栓の該密封壁が該蓋本体の該頂面壁に付設されている該排出筒内に挿入されることによって該排出開口は密封され、該外蓋が該閉位置から該開位置に開動されると、該外蓋の該係合壁が該中栓に係合することによって、該外蓋の開動に付随して該中栓も開移動され該中栓が該蓋本体の該排出筒から離脱される、合成樹脂製容器蓋において、
該外蓋の該天面壁の内面には、該天面壁の内面から垂下して該中栓の該基壁の外面に当接し、該外蓋の該天面壁に対して該中栓を下方に弾性的に偏倚する弾性片が付設されている、
ことを特徴とする合成樹脂製容器蓋が提供される。
更に、本発明の第二の局面によっても、上記主たる技術的課題を達成する容器蓋として、容器の口頸部に装着される蓋本体、該蓋本体を覆う閉位置と該蓋本体を露呈させる開位置との間を旋回自在に該蓋本体に連結された外蓋、及び中栓を具備し、
該蓋本体は頂面壁と該頂面壁の周縁に接続された筒状装着壁とを含み、該頂面壁には排出開口が形成されていると共に該排出開口の外周縁から上方に延出する筒状排出筒が形成されており、該装着壁を容器の口頸部に被嵌することによって容器の口頸部に装着され、
該外蓋は天面壁と該天面壁の周縁から垂下するスカート壁と該スカート壁よりも半径方向内方において該天面壁の内面から垂下する筒状係合壁とを含み、
該中栓は基壁と該基壁から垂下する筒状密封壁とを含み、
該中栓の該密封壁が該蓋本体の該頂面壁に付設されている該排出筒内に挿入されることによって該排出開口は密封され、該外蓋が該閉位置から該開位置に開動されると、該外蓋の該係合壁が該中栓に係合することによって、該外蓋の開動に付随して該中栓も開移動され該中栓が該蓋本体の該排出筒から離脱される、合成樹脂製容器蓋において、
該中栓の該基壁の上面には、該外蓋の該天面壁の内面に当接し、該外蓋の該天面壁に対して該中栓を下方に弾性的に偏倚する弾性片が付設されている、
ことを特徴とする合成樹脂製容器蓋が提供される。
【0009】
本発明の第一の局面にあっては、該弾性片は該係合壁よりも半径方向内側において該天面壁の内面から垂下するのが好ましい。該弾性片の少なくとも下部は自由状態において下方に向かって半径方向外方又は内方に傾斜して延びるのが好適である。更に、該弾性片は周方向に連続して延在し、自由状態において下方に向かって軸線方向に平行に延びる円筒形状上部と下方に向かって半径方向外方又は内方に傾斜して延びる円錐台又は逆円錐台形状下部とを有するのがよい。
本発明の第一及び第二の局面にあっては、該中栓の該基壁は円形板形状であり、該外蓋の該係合壁には内径が該中栓の該基壁の外径よりも小さい係合突条が形成されており、該中栓の該密封壁が該蓋本体の該排出筒内に挿入された状態で該外蓋が該閉位置に閉動されると、該係合壁の該係合突条が該基壁を弾性的に乗り越えて該基壁よりも下方に位置し、該外蓋が該閉位置から該開位置に開動されると、該係合壁の該係合突条が該中栓の該基壁に係合するのが好ましい。この場合には、該中栓の該基壁は円形であり且つ該蓋本体の該排出筒の上端の外径よりも大きい外径を有し、該外蓋の該係合壁は円筒形状であり且つ該係合突条の内径は該蓋本体の該排出筒の上端の外径よりも大きく該中栓の該基壁の外径よりは小さいのがよい。好ましくは、該外蓋には、該天面壁の内面から突出し、該外蓋の該天面壁に対する該中栓の上昇を制限する制限突起が形成されている。該蓋本体及び該外蓋は一体に成形され、該中栓は該蓋本体及び該外蓋とは別個に成形されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の容器蓋においては、外蓋の天面壁の内面或いは中栓の基壁の上面には、外蓋の天面壁に対して中栓を下方に弾性的に偏倚する弾性片が付設されていることに起因して、(1)中栓の密封壁が蓋本体の排出筒内に挿入され且つ外蓋が閉位置にある状態において、中栓は弾性片によって排出筒の上端に押圧されているため、本発明の容器蓋が装着された容器が落下乃至転倒して容器蓋に衝撃が付加された場合であっても密封壁による排出開口の密封は維持され、内容物が流出することは防止される、(2)外蓋が中栓を付随して開位置から閉位置に閉動される際に、弾性片と係合壁との共働によって外蓋に対する中栓の移動が制限されるため、中栓の密封壁の下端が蓋本体の排出筒の上端部と当接しても外蓋に対する中栓の姿勢は維持され、中栓の密封壁は蓋本体の排出筒内に円滑に案内される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に従って構成された容器蓋の好適実施形態の断面図。
【
図2】
図1に示す容器蓋の蓋本体及び外蓋が一体的に成形された状態の断面図。
【
図3】
図1に示す容器蓋の蓋本体及び外蓋が一体的に成形された状態の平面図。
【
図4】
図1に示す容器蓋の蓋本体及び外蓋が一体的に成形された状態の底面図。
【
図6】蓋本体及び外蓋と中栓とを組み合わせる工程を説明する図。
【
図8】本発明に従って構成された容器蓋の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に従って構成された容器蓋の好適実施形態を図示している添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0013】
図1を参照して説明すると、本発明に従って構成された、全体を番号2で示す容器蓋は、蓋本体4、外蓋6、及び中栓8を具備している。図示の実施形態においては、蓋本体4及び外蓋6は一体に成形され、中栓8は蓋本体4及び外蓋6とは別個に成形されている。蓋本体4及び外蓋6はポリエチレンの如き比較的軟質の合成樹脂から射出成形することによって形成され、中栓8は高密度ポリエチレン又はポリプロピレンの如き比較的硬質の合成樹脂から射出成形することによって形成されている。外蓋6はヒンジ手段10を介して蓋本体4に、蓋本体4を覆う閉位置(
図1及び
図7(c)に示す状態)と蓋本体4を露呈させる開位置(
図6及び
図7(a)に示す状態)との間を旋回自在に連結されている。
【0014】
図1と共に
図2乃至
図4を参照して説明すると、蓋本体4は、頂面壁12と、この頂面壁12の周縁に接続された筒状装着壁14とを含んでいる。頂面壁12は平面視において円形であって、その中央部分には円形の排出開口16が形成されている。排出開口16の中心は頂面壁12の中心に対してヒンジ手段10とは直径方向反対側(
図1乃至
図4において左側)に幾分偏心している。排出開口16には、その中央から径方向外側に向かって放射状に延出し頂面壁12の内周面に接続されているスポーク18が設けられている。かかるスポーク18の中心には、射出成形によって蓋本体4及び外蓋6を成形した際の、成形型内への溶融状態の合成樹脂の入口(所謂ゲート)が設けられており、スポーク18は上記溶融状態の合成樹脂の流路を構成するものである。頂面壁12の上面には、排出開口16の外周縁から上方に延出する筒状排出筒20が形成されている。排出筒20は全体的に円筒形状であって、その上端部22は径方向外方にカールせしめられている。上端部22については後に更に言及する。排出筒20の内周面における上端部22の幾分下方には、径方向内側に突出する円環形状の突条23が形成されている。頂面壁12の上面の外周縁部には、上方に隆起する筒状シール壁24が形成されている。シール壁24の上端位置は排出筒20の上端位置よりも低く、シール壁24の上端部には径方向外方に突出する環状係止突条26が形成されている。頂面壁12の下面には、下方に延びる円筒形状シール片28が形成されている。シール片28は、径方向に見てシール壁24と排出筒20との間に設けられている。頂面壁12の上面及び下面には夫々環状凹部30a及び30bが形成されている。
【0015】
装着壁14は全体的に円筒形状である。装着壁14の内周面の下部の内径は上部の内径よりも拡径せしめられており、上記下部と上部とは上方に向かって径方向内側に傾斜した円錐台形状の中間部によって接続されている。装着壁14の内周面の下端部には、径方向内側に突出する嵌合突条32が周方向に間隔をおいて複数形成されている。装着壁14の外周面の上端部にはヒンジ手段10の一端が接続されている。装着壁14の外周面の上端部における、ヒンジ手段10とは直径方向反対側には、外径が比較的大きく低減せしめられた第一の切欠き34が円弧状に形成されている。第一の切欠き34の下方には、外径が比較的小さく低減せしめられた第二の切欠き36も円弧状に形成されている。
【0016】
外蓋6は、天面壁38と、この天面壁38の周縁から垂下するスカート壁40と、このスカート壁40よりも半径方向内方において天面壁38の内面から垂下する筒状係合壁42とを含んでいる。ここで、外蓋6の上下、左右及び内外方向は、特に指定しない限り外蓋6が閉位置にある状態を基準として、以下説明を続ける。
【0017】
天面壁38は全体的に円形であるが、その外周縁部は径方向外方に向かって下方に弧状に湾曲せしめられている。本発明の容器蓋にあっては、外蓋6の天面壁38の内面には、外蓋6の天面壁38に対して中栓8を下方に弾性的に偏倚する弾性片44が付設されていることが重要である。図示の実施形態においては、弾性片44は係合壁42よりも半径方向内側において天面壁38の内面から垂下しており、自由状態において下方に向かって軸線方向に平行に延びる円筒形状上部46と下方に向かって半径方向外方に傾斜して延びる円錐台形状下部48とを有しており、弾性片44は周方向に連続して延在している。所望ならば、弾性片44は周方向に連続して延在することに替えて、周方向に角度間隔をおいて複数個設けられているようにしてもよい。また、弾性片は、少なくともその下部が自由状態において下方に向かって半径方向外方又は内方に傾斜して延びていればよく、従って、円筒形状上部46を省略して、弾性片は天面壁38の内面から下方に向かって半径方向外方に傾斜して延びるようにしてもよい。更にまた、弾性片は、その少なくとも下部が自由状態において下方に向かって半径方向内方に傾斜して延びるようにしてもよい。この場合には、弾性片は自由状態において下方に向かって軸線方向に平行に延びる円筒形状上部と下方に向かって半径方向内方に傾斜して延びる逆円錐台形状下部とを有するようにすることもできる。弾性片44が備える弾性力、即ち弾性片44が外蓋6の天面壁38に対して中栓8を下方に偏倚させる力の大きさについては後に言及する。
【0018】
天面壁38の内面には更に、弾性片44の内周縁に沿って円環形状の凹溝50が形成されている。凹溝50の断面形状は略矩形である。係合壁42と弾性片44との間には、下方に突出する円環状の制限突起52も形成されている。制限突起52の断面形状は略正方形であって、制限突起52の下端位置は、上下方向に見て、自由状態における弾性片44の下部48の上端位置と下端位置との間に位置している。所望ならば、制限突起52は円環状ではなく、周方向に間隔をおいて複数設けられているようにしてもよい。かような制限突起52については後に更に言及する。係合壁42は円筒形状であって、その下端部には下方に向かって径方向内側に傾斜して延びる係合突条54が形成されている。
図1を参照することによって理解されるとおり、係合突条54の内径は蓋本体4の排出筒20の上端の外径よりも大きく、更に詳しくは、係合突条54の内径は排出筒20の上端部22の最大外径よりも大きく中栓8の後述する基壁の外径よりは小さい。ここで、凹溝50、弾性片44、制限突起52及び係合壁42は同心状に配置されており、その中心は、蓋本体4の排出開口16(及び排出筒20)と対応して、天面壁38の中心に対してヒンジ手段10とは直径方向反対側(
図1においては左側、
図2及び
図3においては右側)に幾分偏心している。
【0019】
スカート壁40は円筒形状であって、その外周面の下端部にはヒンジ手段10の他端が接続されている。スカート壁40の内周面の上下方向中間部には既知の環状捨てアンダーカット56が形成されている。捨てアンダーカットについては、例えば本願の出願人によって本願より先に出願されて公開された特開2003-2348号公報を参照されたい。捨てアンダーカット56の下方には、蓋本体4のシール壁24の係止突条26に係止する環状被係止突条58が形成されている。スカート壁40の外周面における、ヒンジ手段10とは直径方向反対側の下端部には、径方向外方に突出して使用者の指がかけられる鍔部60が形成されている。スカート壁40の下端面における、ヒンジ手段10とは直径方向反対側には、下方に垂下する円弧形状の垂下片62が形成されている。スカート壁40の下端面には更に、4個の突部64が周方向に間隔をおいて形成されている。
【0020】
図1と共に
図5を参照して説明を続けると、中栓8は基壁66と、この基壁66から垂下する筒状密封壁68とを含んでいる。基壁66は円形板形状であって、その上面の外周縁部は径方向外方に向かって下方に傾斜せしめられている。基壁66の外径は蓋本体4の排出筒20の上端の外径、更に詳しくは、径方向外方にカールせしめられた上端部22の最大外径よりも大きい外径を有している。密封壁68は円筒形状であって、その外径は蓋本体4の排出筒20の内径と同一乃至これよりも幾分大きく、密封壁68は幾分弾性変形して排出筒20の内側に圧入可能である。
【0021】
図6及び
図1を参照して説明を続けると、中栓8は以下のようにして蓋本体4及び外蓋6と組み合わされる。即ち、最初に、
図6に示すとおり中栓8と蓋本体4とを、中栓8の密封壁68が蓋本体4の頂面壁12に付設された排出筒20内に挿入され、中栓8の基壁66の下面が排出筒20の上端に当接するようにして組み合わせる。このとき、密封壁68の外径は排出筒20の内径と同一乃至これよりも幾分大きく、更に排出筒20の内周面には径方向内側に突出する突条23が形成されていることに起因して、密封壁68の外周面は排出筒20の内周面に強く密接し、排出開口16は密封される。次いで、外蓋6を開位置から閉位置に閉動せしめ、
図1に示すとおり、係合壁42の係合突条54が中栓8の基壁66を弾性的に乗り越えて基壁66よりも下方に位置させる。この際には、基壁66の外周縁部の上面が径方向外方に向かって下方に傾斜していることに起因して、係合突条54は基壁66を容易に乗り越えることができる。
図1に示す状態にあっては、外蓋6の天面壁38の内面に付設された弾性片44が中栓8の基壁66の上面に当接して中栓8を下方に弾性的に偏倚させる。このとき、弾性片44は中栓8の密封壁68と整合するのが好ましい。図示の実施形態においては
図1を参照することによって明確に理解されるとおり、弾性片44の下部48が密封壁68の上方に位置している。かくして、中栓8は蓋本体4及び外蓋6と組み合わされる。
【0022】
上述したとおりの容器蓋2は、
図1において二点鎖線で示されるとおり、ガラス或いはポリエチレンテレフタレートの如き適宜の合成樹脂から形成することができる容器の口頸部70に装着される。口頸部70は上面が開口された略円筒形状であり、その外周面上端には環状被嵌合突条72が形成されている。容器蓋2は、その蓋本体4のシール片28を口頸部70内に挿入し、装着壁14を口頸部70の外周に被嵌せしめることによって口頸部70に装着される。このとき、シール片28の外周面は口頸部70の内周面に密接せしめられる。装着壁14の内周面に形成されている嵌合突条32は、口頸部70の被嵌合突条72を弾性的に乗り越えて、これに係止せしめられ、容器の口頸部70に容器蓋2が保持される。ここで、本発明の容器蓋においては、外蓋6の天面壁38の内面には、外蓋6の天面壁38に対して中栓8を下方に弾性的に偏倚する弾性片44が付設されていることに起因して、中栓8の密封壁68が蓋本体4の排出筒20内に挿入され且つ外蓋6が閉位置にある状態において、中栓8は弾性片44によって排出筒20の上端に押圧されているため、本発明の容器蓋が装着された容器が落下乃至転倒して容器蓋2に衝撃が付加された場合であっても密封壁68による排出開口16の密封は維持され、内容物が流出することは防止される。また、図示の実施形態においては、外蓋6の天面壁38の内面には下方に突出した制限突起52が形成されていることに起因して、上記衝撃で仮に中栓8が蓋本体6に対し上方に移動したとしても、中栓8が過剰に上昇することは制限される。かかる点からも密封壁68による排出開口16の密封は維持され、内容物の流出は防止される。
【0023】
続いて、本発明の容器蓋の使用様式について
図1及び
図7を参照して説明する。
図1に示す状態から容器の内容物を消費する際は、最初に、鍔部60に指を掛けて、閉位置に位置する外蓋6を上方に強制することで、外蓋6のスカート壁40に形成された被係止突条58が、蓋本体4のシール壁24に形成された係止突条26を弾性的に乗り越える。そして、外蓋6が閉位置から開位置に開動されると、外蓋6はヒンジ手段10を旋回中心として旋回せしめられ、外蓋6の係合突条54が中栓8の基壁66に係合することによって、外蓋6の回動に付随して中栓8も開移動され中栓8が蓋本体6の排出筒20から離脱される。かくして、
図7(a)に示すとおり、頂面壁12の排出開口16が露呈される。その後に、容器を適宜に傾斜せしめれば、容器内の内容物が排出開口16を通過した後に排出筒20に案内されて排出される。内容物を所定量排出した後に、再度排出開口16を密封する際には、
図7(b)に示すとおり、ヒンジ手段10を旋回中心として中栓8を付随した外蓋6を旋回閉動せしめ、中栓8の密封壁68を蓋本体6の排出筒20内に挿入せしめる。このとき、本発明の容器蓋においては、外蓋6の天面壁38の内面には、外蓋6の天面壁38に対して中栓8を下方に弾性的に偏倚する弾性片44が付設されていることに起因して、外蓋6が中栓8を付随して開位置から閉位置に閉動される際に、弾性片44と係合壁42(係合突条54)との共働によって外蓋6に対する中栓8の移動が制限されるため、中栓8の密封壁68の下端が蓋本体6の排出筒20の上端部と当接しても外蓋6に対する中栓8の姿勢は維持され、中栓8の密封壁68は蓋本体6の排出筒20内に円滑に案内される。そして、外蓋6が再度閉位置となることで、排出開口16は再度密封される。このとき、弾性片44の弾性力、即ち弾性片44が外蓋6の天面壁38に対して中栓8を下方に偏倚させる力は、中栓8の密封壁68が排出筒20の内周面に形成された突条23を弾性的に乗り越えるほど大きくはなく、それ故に、
図7(c)を参照することによって理解されるとおり、外蓋6の天面壁38の下面に形成された制限突起52は中栓8の基壁66の上面と当接するが、中栓8の基壁66の下面は蓋本体4の排出筒20の上端と当接せず、基壁66の下面と排出筒20の上端との間には幾分の隙間が存在することとなる。そのため、
図7(c)に示す状態(再密封状態)と
図1に示す状態(初期密封状態)とを比較すると、排出筒20が中栓8を保持する力は、再密封状態の方が初期密封状態よりも弱い。初期密封状態にあっては、搬送時において容器又は容器蓋に大きな衝撃が加えられる可能性があることから中栓8は排出筒20によって強く保持されている必要があるが、再密封状態にあっては上述したような大きな衝撃が容器又は容器蓋に加えられることは考えにくく、中栓8を排出筒20によって強く保持するよりも使用者が容易に外蓋6を再度開封することができるようにする方が望ましい。
【0024】
図8を参照して本発明の容器蓋の変形例について説明する。
図8に示す変形例は、中栓の形態を除いて
図1に示した実施形態と同一であるため、以下では
図1に示した実施形態との相違点についてのみ説明し、同一の箇所については番号にaを付して説明を省略する。
【0025】
図8に示す容器蓋2aの中栓8aは円環形状の基壁66aと、この基壁66aの内周縁から垂下する円筒形状の密封壁68aとを含んでおり、密封壁68aの底面は円形の底壁74aによって閉塞されている。中栓をこのような形態にしても
図1に示す容器蓋と同一の上述した作用効果を奏する。
図8に示す容器蓋2aでは、
図1に示す容器蓋2と同様、外蓋6aの天面壁38aの内面から垂下する係合壁42aは弾性片44aよりも径方向外側に位置し、係合壁42aの下端部に形成された係合突条54aは下方に向かって径方向内側に傾斜して延びており、この係合突条54aは中栓8aの基壁66aの外周縁部と係合可能であるが、所望ならば、基壁66aの内周面上端部(或いは密封壁68aの内周面上端部)に径方向内側に突出する突部乃至突条(図示せず)を設けると共に、係合壁42aを弾性片44aよりも径方向内側に配置させ、係合突条54aが下方に向かって径方向外側に傾斜して延びるようにすることで、係合突条54aが上記突部乃至突条と係合可能となるようにすることができる。この場合には、弾性片44aは
図8に示す位置よりも径方向外側に幾分変位せしめられることとなる。
【0026】
以上本発明の容器蓋について添付図面を参照して詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形が可能である。例えば、上述した実施形態においては、弾性片は外蓋の天面壁の内面に付設され、中栓の基壁の外面に当接して中栓を下方に弾性的に偏倚させていたが、これに替えて、弾性片を中栓の基壁の上面に付設し、外蓋の天面壁の内面に当接して中栓を下方に弾性的に偏倚するようにしてもよい。制限突起についても同様に、外蓋の天面壁の内面に付設することに替えて、中栓の基壁の上面に付設してもよい。また、上述した実施形態においては、蓋本体及び外蓋はポリエチレンの如き比較的軟質の合成樹脂から射出成形することによって形成され、中栓は高密度ポリエチレン又はポリプロピレンの如き比較的硬質の合成樹脂から射出成形することによって形成されていたが、所望ならば、蓋本体及び外蓋をポリプロピレンの如き比較的硬質の合成樹脂から射出成形し、中栓をポリエチレンの如き比較的軟質の合成樹脂から射出成形してもよい。蓋本体及び外蓋並びに中栓は同一の合成樹脂で成形されていてもよいが、少なくとも蓋本体と中栓とは剛性の異なる合成樹脂で成形されるようにした方が、中栓の密封壁と蓋本体の排出筒とは両者の弾性変形に起因した食い付きによってより強固に密着される。上述した実施形態においては、中栓は蓋本体及び外蓋と別体で成形されていたが、例えば特開2019-11131号公報に開示されているように、中栓と蓋本体と外蓋とを一体で成形した後に、中栓を蓋本体及び外蓋から分離するようにしてもよい。この場合には、中栓の基壁は排出筒の上端よりも上方に位置するようにして成形されることが好ましい。この場合には更に、中栓は蓋本体及び外蓋と同一の材料により成形されることとなる。
【符号の説明】
【0027】
2:容器蓋
4:蓋本体
6:外蓋
8:中栓
12:頂面壁
14:装着壁
16:排出開口
20:排出筒
38:天面壁
40:スカート壁
42:係合壁
44:弾性片
52:制限突起
66:基壁
68:密封壁
70:容器の口頸部