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<図1>
  • -改良地盤の品質評価方法 図1
  • -改良地盤の品質評価方法 図2
  • -改良地盤の品質評価方法 図3
  • -改良地盤の品質評価方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】改良地盤の品質評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20231212BHJP
   G01N 3/00 20060101ALI20231212BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20231212BHJP
   G01N 13/04 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
G01N23/046
G01N3/00 D
E02D3/12
G01N13/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019176674
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021056021
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100162145
【弁理士】
【氏名又は名称】村地 俊弥
(72)【発明者】
【氏名】野崎 隆人
(72)【発明者】
【氏名】七尾 舞
(72)【発明者】
【氏名】肥後 康秀
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-130403(JP,A)
【文献】特開2019-035208(JP,A)
【文献】特開2001-336142(JP,A)
【文献】特表2013-515957(JP,A)
【文献】特開2018-189378(JP,A)
【文献】特開平07-197444(JP,A)
【文献】特開2013-231697(JP,A)
【文献】特開平09-138202(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0383862(KR,B1)
【文献】森川嘉之 他,複数の高圧噴射ノズルによる地盤の掘削・攪拌性能評価,港湾空港技術研究所資料,2014年12月,No.1293,ISSN1346-7840
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
G01N 23/00 - G01N 23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤改良材と改良の対象となる地盤を混合して、改良地盤を得る第一の地盤改良工程と、
上記改良地盤をボーリングして、コア体を得るボーリング工程と、
上記コア体を、X線CTを用いて分析し、上記コア体のCT値に関するデータとしてCT値の分布画像を得る第一の分析工程と、
上記CT値の分布画像を用いて、上記改良地盤の品質として、上記地盤改良材が、粉体とスラリーのいずれの形態で上記地盤と混合されたかの評価、又は、締固めの打継ぎの有無の評価を行う評価工程を含むことを特徴とする改良地盤の品質評価方法。
【請求項2】
請求項1記載の改良地盤の品質評価方法によって、上記改良地盤の品質を評価した後、該評価の結果に基づいて、地盤の改良条件を調整する調整工程と、
調整した地盤の改良条件に基いて、地盤改良材と改良の対象となる地盤を混合して、改良地盤を得る第二の地盤改良工程を含む改良地盤の品質管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良地盤の品質評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固化材を用いた地盤改良工事における品質管理方法としては、改良後の地盤(以下、「改良地盤」ともいう。)からボーリングによってコアを採取し、採取されたコアの強度(例えば、一軸圧縮強さ)を実際に測定して改良の効果を確認して、地盤改良の施工条件を適宜変更する方法等が挙げられる。
特許文献1には、地盤改良の実施工に先立ち、現場土試料に対して、固化材の設計添加量に対して複数の増量された固化材を添加した試験体を作製し、該試験体に対してせん断波速度と強度とを求める室内試験を行ってせん断波速と強度との関係を定式化して回帰曲線を求め、該回帰曲線に、改良直後の改良地盤で求めたせん断波速度値を適用して当該改良地盤の強度を把握して改良効果確認を行うようにしたことを特徴とするセメント改良地盤の品質管理試験方法が記載されている。該方法によれば、早期に改良地盤の強度(一軸圧縮強さ)の数値を推定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-241262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
改良地盤から採取されたコアの強度は、該コアが採取された箇所によって、その大きさにばらつきが生じることがある。この原因として、固化材と改良の対象となる地盤の混合の程度が十分ではなかったこと等が考えられる。しかし、固化材と地盤が十分に混合されているかどうかを判断することは困難である。
本発明の目的は、改良地盤の品質(地盤改良材の混合時の形態、又は、締固めの打継ぎの有無)の評価を行うことができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、地盤改良材と改良の対象となる地盤を混合して、改良地盤を得る工程と、改良地盤をボーリングして、コア体を得る工程と、コア体を、X線CTを用いて分析し、コア体のCT値に関するデータを得る工程と、CT値に関するデータを用いて、改良地盤の品質を評価する工程を含む方法によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[5]を提供するものである。
[1] 地盤改良材と改良の対象となる地盤を混合して、改良地盤を得る第一の地盤改良工程と、上記改良地盤をボーリングして、コア体を得るボーリング工程と、上記コア体を、X線CTを用いて分析し、上記コア体のCT値に関するデータを得る第一の分析工程と、上記CT値に関するデータを用いて、上記改良地盤の品質を評価する評価工程を含むことを特徴とする改良地盤の品質評価方法。
[2] 上記CT値に関するデータが、CT値の分布画像であり、上記評価工程において、上記CT値の分布画像を用いて、上記地盤改良材と上記改良の対象となる地盤の混合の程度を評価する前記[1]に記載の改良地盤の品質評価方法。
【0006】
[3] 上記第一の地盤改良工程の前に、改良の対象となる地盤から得られた土を含み、かつ、地盤改良材の添加量が異なる2つ以上の試験体を作製する試験体作製工程と、上記試験体を、X線CTを用いて分析し、上記試験体のCT値に関するデータを得る第二の分析工程と、上記試験体の品質に関するデータを従属変数とし、上記試験体のCT値に関するデータを独立変数として、回帰分析を行って、上記試験体の品質の予測式を作成する予測式作成工程を行い、上記評価工程において、上記コア体のCT値に関するデータと、上記予測式を用いて、上記コア体の品質に関するデータの予測値を得た後、該予測値に基いて、上記改良地盤の品質を評価する前記[1]または[2]に記載の改良地盤の品質評価方法。
[4] 上記品質に関するデータが、地盤改良材の添加量、改良地盤の一軸圧縮強さ、透水係数、pH、及び改良地盤からの重金属類の溶出量から選ばれる1種以上である前記[3]に記載の改良地盤の品質評価方法。
[5] 前記[1]~[4]のいずれかに記載の改良地盤の品質評価方法によって、上記改良地盤の品質を評価した後、該評価の結果に基づいて、地盤の改良条件を調整する調整工程と、調整した地盤の改良条件に基いて、地盤改良材と改良の対象となる地盤を混合して、改良地盤を得る第二の地盤改良工程を含む改良地盤の品質管理方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の改良地盤の品質評価方法によれば、改良地盤の品質(地盤改良材の混合時の形態、又は、締固めの打継ぎの有無)を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1においてX線CT装置を用いて撮影された、コア体のCT値の分布画像である。
図2】実施例2においてX線CT装置を用いて撮影された、コア体のCT値の分布画像である。
図3】実施例3においてX線CT装置を用いて撮影された、コア体のCT値の分布画像である。
図4】実施例4においてX線CT装置を用いて撮影された、コア体のCT値の分布画像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の改良地盤の品質評価方法は、地盤改良材と改良の対象となる地盤を混合して、改良地盤を得る第一の地盤改良工程と、改良地盤をボーリングして、コア体を得るボーリング工程と、コア体を、X線CTを用いて分析し、コア体のCT値に関するデータを得る第一の分析工程と、CT値に関するデータを用いて、改良地盤の品質を評価する評価工程を含むものである。
以下、各工程を詳細に説明する。
【0010】
[第一の地盤改良工程]
本工程は、地盤改良材と改良の対象となる地盤を混合して、改良地盤を得る工程である。
本明細書中、「地盤改良材」とは、地盤の固化(強度の向上)、地盤中の重金属類の不溶化、地盤中の空洞または空隙の充填等の、地盤の改良を目的として地盤と混合される材料である。
地盤改良材の例としては、セメントを母材とし、石膏、高炉スラグ微粉末、石炭灰(フライアッシュ)、石灰石微粉末、シリカフューム等の各種有効成分を添加したセメント系固化材;軽焼マグネシア、軽焼マグネシアの部分水和物等の酸化マグネシウム含有物や、水酸化マグネシウム含有物等のマグネシウム系不溶化材;硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸第二鉄等の硫酸鉄塩や、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムナトリウム等の硫酸アルミニウム塩等の金属硫酸塩系不溶化材;塩化第一鉄、塩化第二鉄等の塩化鉄塩や、ポリ塩化アルミニウム等の塩化アルミニウム塩等の金属塩化物系不溶化材;水ガラス等が挙げられる。
地盤改良材の種類及び量は、特に限定されるものではなく、一般的な地盤改良材から、改良の対象となる地盤(土壌)の性状に応じて適宜定めればよい。
地盤改良材と改良の対象となる地盤を混合する際の、地盤改良材の形態は、スラリー、粉体、粒体、グラウト等のいずれであってもよい。なお、地盤改良材の形態によって、第一の分析工程においてX線CTを用いて分析されるコア体のCT値の数値が変化する。
【0011】
本工程において、地盤改良材と改良の対象となる地盤を混合する方法としては、特に限定されるものではない。例えば、地盤改良材をスラリーの形態で用いる場合には、トレンチャー撹拌機、ロータリー式撹拌機、ツインヘッダ等を用いて混合する方法や、深層混合処理工法における、各種機械攪拌(スラリー撹拌)工法、各種高圧噴射工法、各種機械攪拌併用型高圧噴射工法に従って混合する方法等が挙げられる。
また、地盤改良材を粉体又は粒体の形態で用いる場合には、バックホウバケット、スケルトンバケット等を用いて混合する方法や、深層混合処理工法における、各種機械攪拌(粉体噴射撹拌)工法に従って混合する方法等が挙げられる。
また、グラウト等の流動性を有する液体(薬液)の形態で、地盤改良材を混合(注入)する方法としては、各種薬液注入工法に従って混合(注入)する方法等が挙げられる。
なお、本明細書中、地盤改良材の混合には、地盤改良材の注入が含まれるものとする。
【0012】
[ボーリング工程]
本工程は、地盤改良工程によって得られた改良地盤をボーリングして、コア体を得る工程である。
ボーリングによって採取されるコア体(改良地盤の一部)の大きさや形状は、X線CT装置を用いて分析する際に支障がない大きさであればよいが、通常、直径3~10cm、高さが5~15cmの円柱状である。また、改良地盤の一軸圧縮強さを「JIS A 1216:2009(土の一軸圧縮試験方法)」に準拠して測定する目的で改良地盤から採取した供試体を、一軸圧縮強さを測定する前に、本発明において使用してもよい。
【0013】
[第一の分析工程]
本工程は、ボーリング工程で得られたコア体を、X線CTを用いて分析し、コア体のCT値に関するデータを得る工程である。
分析は、市販のX線CT装置を用いて行えばよい。
コア体のCT値に関するデータの例としては、X線CT装置によって撮影された、コア体のCT値の分布画像、該画像から得られるCT値と頻度の関係を示したCT値ヒストグラム、上記画像または上記CT値ヒストグラムから得られる特定の値、上記画像から得られるCT値の標準偏差の数値等が挙げられる。
【0014】
コア体のCT値の分布画像は、コア体のCT値(単位:HU)の分布を、白黒の濃淡のみで表した画像(光度以外の情報が含まれない画像:グレースケール)である。該画像において、CT値が大きい部分ほど、白く表示され、CT値が小さい部分ほど、黒く表示される。
X線CT装置によって撮影された画像の一部の領域を選択し、該領域をCT値の分布画像としてもよい。該領域は、通常、X線CT装置によって撮影された画像の端部、辺縁部を除いた中心部分が選択される。また、該領域は線、平面、空間のいずれからなる領域であってもよい。
また、CT値の分布画像(X線CT装置によって撮影された画像、または該画像から選択された一部の領域)に対して、改良地盤の品質をより正確に評価する観点から、各種の画像処理を行ってもよい。各種画像処理としては、二値化処理、Watershed法、濃度変換等が挙げられる。上記二値化処理において、基準となる閾値を定める方法としては、単純閾値、P-タイル法、モード法、判別分析法(大津の二値化法)等が挙げられる。
さらに、分布画像は2D画像であっても、3D画像であってもよい。
CT値は、Voxel(画素)毎に得られるものである。Voxelの一辺の大きさは、φ5~6cmのコア体を対象とし、一般的な解像度で撮影された場合、通常、1~50μmである。
【0015】
また、コア体のCT値の分布画像から得られる特定の値の例としては、上記分布画像に表示されているCT値の平均値や、上記分析画像において最も大きな領域(面積)を占めるCT値等が挙げられる。
コア体のCT値の分布画像から得られる、CT値と頻度の関係を示したCT値ヒストグラムから得られる特定の値の例としては、CT値ヒストグラムの、特定のCT値の数値範囲内(通常、頻度のピークを有する範囲内)の頻度の最大値、該範囲内におけるピークの面積、該範囲内のピークのブロード(CT値の幅)、該範囲内のピークの凸性の度合いを数値に変換したもの等が挙げられる。
【0016】
[評価工程]
本工程は、第一の分析工程で得られたCT値に関するデータを用いて、改良地盤の品質を評価する工程である。
評価に用いられるCT値に関するデータは、上述した1種であってもよく、2種以上であってもよい。
CT値に関するデータを用いて、改良地盤の品質を評価する方法の例としては、コア体のCT値の分布画像から目視によって評価する方法、上記分布画像または上記分布画像から得られるCT値と頻度の関係を示したCT値ヒストグラムから特定の値を得た後、該値に基づいて評価する方法、予測式作成工程(後述)において得られた予測式を用いて評価する方法、分布画像を畳み込みニューラルネットワーク等を用いた画像解析によって評価する方法等が挙げられる。
【0017】
以下、分布画像から目視によって改良地盤の品質を評価する方法について、具体的に説明する。
評価する改良地盤の品質の例としては、地盤改良材の添加量、地盤改良材と地盤の混合の程度、地盤改良材の添加時の形態、締固めの打継ぎの有無等が挙げられる。
例えば、CT値の分布画像において、白い(CT値が大きい)部分ほど、密度が大きく、黒い(CT値が小さい)部分ほど、密度が小さいことを意味している。すなわち、画像が全体的に白いほど、地盤改良材の添加量が大きく、全体的に黒いほど、地盤改良材の添加量が小さいと評価することができる。
また、分布画像において、色むらがない(CT値のばらつきが少ない)ほど、地盤改良材と地盤の混合が十分に行われ、地盤改良材が均一に分散していると評価することができ、色むらが大きい(CT値のばらつきが大きい)ほど、地盤改良材と地盤の混合が不十分であり、地盤改良材の分散が不均一であると評価することができる。また、地盤改良材と地盤の混合が不十分であるため、地盤改良材がコア体の一部分にダマとして偏在している(塊状となって存在している)場合には、地盤改良材のダマは、CT値の分布画像において、略円形状の白い塊として表示され、該ダマの有無によって、地盤改良材と地盤の混合の程度を評価することができる。
【0018】
また、地盤改良材と改良の対象となる地盤を混合する際の、地盤改良材の形態によっても、CT値は異なってくる。具体的には、地盤改良材が粉体の状態で混合された場合、地盤改良材がスラリーの形態で混合された場合と比較して、画像がより白く表示される(CT値が大きくなる)。
さらに、分布画像において、白黒の濃淡が、明確な境目として表れた場合には、地盤改良材と地盤を混合する際に、該境目において締固めの打継ぎが行われたと評価することができる。
【0019】
また、上記分布画像または上記分布画像から得られるCT値と頻度の関係を示したCT値ヒストグラムから、特定の値を得た後、該値の大きさに基づいて評価する方法の例としては、例えば、上記分布画像に表示されているCT値の平均値や、上記分析画像において最も大きな領域(面積)を占めるCT値や、上記CT値ヒストグラムの、特定のCT値の数値範囲内(通常、頻度のピークを有する範囲内)の頻度の最大値、該範囲内におけるピークの面積、該範囲内のピークのブロード(CT値の幅)、該範囲内のピークの凸性の度合いを数値に変換したもの等の値が、事前に定めた基準となる数値を満たすかどうかによって改良地盤の品質を評価する方法等が挙げられる。
なお、特定のCT値の数値範囲内(通常、頻度のピークを有する範囲内)の頻度の最大値が大きい場合、地盤改良材の添加量が大きく、上記最大値が小さい場合には固化材の添加量が小さい傾向がみられる。
また、特定のCT値の数値範囲内(通常、頻度のピークを有する範囲内)の頻度の最大値が小さく、かつ、上記範囲内のピークのブロード(CT値の幅)が大きい場合、地盤改良材と地盤の混合が不十分でありムラが存在しており、上記最大値が大きく、かつ、上記ブロードが小さい場合、地盤改良材と地盤の混合が十分であり、地盤改良材が均一に分散している傾向がみられる。
事前に定めた基準となる数値は、これらの傾向を考慮して、適宜定めればよい。
また、CT値は、対象となる地盤の土質(例えば、土の粒度や含水量の大きさ)や、地盤改良材の使用時の形態(例えば、粉体形状、スラリー形状)、地盤改良材の添加量等によって変わるため、同じCT値であっても、改良地盤の品質が異なる場合がある。このため、事前に室内配合試験を行い、上記基準となる数値を定めてもよい。
【0020】
また、より正確かつ詳細に改良地盤の品質を評価する観点から、以下の工程を行ってもよい。
[試験体作製工程]
本工程は、第一の地盤改良工程の前に行われる工程であって、改良の対象となる地盤から得られた土を含み、かつ、地盤改良材の添加量が異なる2つ以上の試験体を作製する工程である。
試験体は、上記土と上記地盤改良材を混合してなるものである。
地盤改良材の添加量は特に限定されるものではないが、少なくとも1つの試験体における地盤改良材の添加量は、第一の地盤改良工程において、地盤改良材と改良の対象となる地盤を混合する際に添加する予定の量であることが好ましい。また、上記試験体の1つとして、地盤改良材の添加量が0kg/mであるものを用いてもよい。
試験体としては、地盤改良を行う前に、改良の対象となる地盤に対する地盤改良材の添加量を定める目的で一般的に行われている、室内配合試験で作製される試験体を利用することができる。
【0021】
[第二の分析工程]
本工程は、試験体作製工程で得られた試験体を、X線CTを用いて分析し、試験体のCT値に関するデータを得る工程である。
本工程は、ボーリング工程で得られたコア体の代わりに、試験体作製工程で得られた試験体を用いる以外は、上述した第一の分析工程と同様の工程である。
試験体のCT値に関するデータの例としては、X線CT装置によって撮影された、試験体のCT値の分布画像または該画像から得られるCT値と頻度の関係を示したCT値ヒストグラムから得られる、特定の値等が挙げられる。該特定の値は、上述した、コア体のCT値の分布画像から得られる特定の値、及び、コア体のCT値の分布画像から得られる、CT値と頻度の関係を示したCT値ヒストグラムから得られる特定の値と同様である。
【0022】
[予測式作成工程]
本工程は、試験体作製工程で得られた試験体の品質に関するデータを従属変数とし、第二の分析工程で得られた試験体のCT値に関するデータを独立変数として、回帰分析(重回帰分析を含む)を行って、上記試験体の品質の予測式を作成する工程である。
従属変数である、上記試験体の品質に関するデータの例としては、地盤改良材の添加量、改良地盤(土と地盤改良材を混合してなる試験体)の一軸圧縮強さ、改良地盤の透水係数、pH、及び改良地盤からの重金属類の溶出量等の実測値が挙げられる。
重金属類とは、カドミウム及びその化合物、六価クロム化合物、シアン、水銀及びその化合物、セレン及びその化合物、鉛及びその化合物、ひ素及びその化合物、フッ素及びその化合物、及び、ホウ素及びその化合物(土壌汚染対策法(平成15年)において第二種特定有害物質として挙げられているもの)のいずれかである。なお、フッ素及びホウ素は重金属ではないが、フッ素及びその化合物、及び、ホウ素及びその化合物は重金属類に含まれるものとする。
中でも、より正確に評価することができる観点から、六価クロム化合物、水銀及びその化合物、セレン及びその化合物、フッ素及びその化合物、及び、ホウ素及びその化合物が好ましい。
独立変数は、一種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0023】
予測式は、従属変数(試験体の品質に関するデータ)1種につき一つ作成される。
予測式は、評価工程において、評価する品質(地盤改良材の添加量、改良地盤の一軸圧縮強さ、改良地盤の透水係数、pH、及び改良地盤からの重金属類の溶出量等)の種類の数に応じて、複数作成してもよい。
回帰分析に用いられる、従属変数および独立変数からなるデータの組み合わせの個数(試験体の個数)は、2つ以上、予測の精度をより向上する観点から、好ましくは3つ以上、より好ましくは5以上である。
【0024】
予測式作成工程において、予測式を作成した後、上述した評価工程において、第一の分析工程で得られたコア体のCT値に関するデータと、上記予測式を用いて、コア体(ボーリング工程で得られたもの)の品質に関するデータの予測値を得た後、該予測値に基いて、改良地盤の品質を評価することができる。
具体的には、第一の分析工程で得られたコア体のCT値に関するデータ(例えば、上述した、コア体のCT値の分布画像から得られる特定の値や、コア体のCT値の分布画像から得られる、CT値と頻度の関係を示したCT値ヒストグラム得られる特定の値)を、上記予測式における独立変数として、上記予測式に代入し、得られた予測値(第一の地盤改良工程における地盤改良材の添加量、改良地盤(コア体)の一軸圧縮強さ、改良地盤の透水係数、及び改良地盤からの重金属類の等の予測値)を用いて、改良地盤の品質を評価する。
また、上記予測式を用いた改良地盤の品質の評価と、第一の分析工程で得られたCT値の分布画像を用いた目視による改良地盤の品質の評価を組み合わせて行ってもよい。
【0025】
上述した改良地盤の品質評価方法によって、第一の地盤改良工程で得られた改良地盤の品質を評価した後、以下の工程を行うことによって、改良地盤の品質を管理することができる。
[調整工程]
本工程は、上記評価工程において、改良地盤の品質を評価した後、該評価の結果に基づいて、地盤の改良条件を調整する工程である。
地盤の改良条件を調整する方法の例としては、地盤改良材の添加量を変更する方法、スラリーの水と地盤改良材の質量比(水/地盤改良材)を変更する方法、地盤改良材の種類を変更する方法、地盤改良材と地盤の混合条件を調整する方法等が挙げられる。
[第二の地盤改良工程]
本工程は、調製工程において調整した地盤の改良条件に基いて、地盤改良材と改良の対象となる地盤を混合して、改良地盤を得る工程である。
【実施例
【0026】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
粘性土(含水比68.5%)に、混合後の土壌の含水比が71.5%となる量の水を添加してホバート社製の竪型ミキサで1分間混合して得られた土壌に、粉体状の地盤改良材(高有機質土用固化材)を、100kg/mとなる量で添加し、「JGS 0821-2009(安定処理土の締固めをしない供試体作製方法)」に準拠して、試験体を作製した。試験体の作製において、ホバート社製の竪型ミキサに各材料を同時に投入し、地盤改良材が均一に分散するように、3分間混合した後、7日間密封養生した。
養生後の試験体について、X線CT装置(島津製作所社製、商品名「inspeXio SMX-225CT」)を用いて分析を行い、CT値の分布画像を得た。結果を図1に示す。
【0027】
[実施例2]
試験体の作製において、地盤改良材が均一に分散せずに、混合むらが生じるようにする目的で、含水比3%相当の水を固化材と同時に添加して混合時間を1分間にする以外は、実施例1と同様にして試験体を作製した後、該試験体のCT値の分布画像を得た。結果を図2-1に示す。
また、CT値の分布画像を得る際に、分布画像の低CT値の領域を非表示に変更することで得られたCT値の分布画像を図2-2に示す。
[実施例3]
粉体状の地盤改良材の代わりに、該地盤改良材と水を、水地盤改良材比(水/地盤改良材の質量比)が1となるように混合してなるスラリーを用いる以外は、実施例1と同様にして試験体を作製した後、該試験体のCT値の分布画像を得た。結果を図3に示す。
[実施例4]
粘性土(含水比68.5%)に、混合後の土壌の含水比が71.5%となる量の水を添加してホバート社製の竪型ミキサで1分間混合して得られた土壌にと粉体状の地盤改良材(高有機質土用固化材)を、該固化剤の添加量が100kg/mとなるように、ホバート社製の竪型ミキサに同時に投入し、地盤改良材が均一に分散するように、3分間混合した後、締固めを行った。次いで、締固めた土壌の上面に、土壌に、粉体状の地盤改良材を、200kg/mとなる量で使用し、同様に混合した混合物を投入し、締固めを行った。さらに、締固めた土壌の上面に、土壌に、粉体状の地盤改良材を、300kg/mとなる量で使用し、同様に混合した混合物を投入した後、締固めを行い、試験体を得た。該試験体について、X線CT装置を用いて分析を行い、CT値の分布画像を得た。結果を図4に示す。
【0028】
図1図2-1の比較から、地盤改良材の混合が不十分である場合(図2-1:実施例2)、地盤改良材の混合が十分である場合(図1:実施例1)と比較して、CT値の分析画像において、色むらが生じていることがわかる。また、図2-2から、地盤改良材のダマが生じていることがわかる。
また、図1図3の比較から、粉体状の地盤改良材を用いた場合(図1:実施例1)、スラリー状の地盤改良材を用いた場合(図3:実施例3)と比較して、分布画像が全体的に白い(CT値が大きい)ことがわかる。
さらに、図4から、地盤改良材の添加量が大きくなると、CT値の分析画像において、色がより白くなる(CT値が大きくなる)ことがわかる。
図1
図2
図3
図4