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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】検査支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20231212BHJP
   G06F 3/16 20060101ALI20231212BHJP
   G10L 13/00 20060101ALI20231212BHJP
   G10L 15/00 20130101ALI20231212BHJP
   G10L 15/22 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
G06Q10/20
G06F3/16 650
G10L13/00 100C
G10L15/00 200L
G10L15/22 200H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019180212
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021056845
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】井谷 佳史
(72)【発明者】
【氏名】武田 英明
【審査官】鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-032206(JP,A)
【文献】特開2019-032685(JP,A)
【文献】特開2016-091281(JP,A)
【文献】特開2015-075792(JP,A)
【文献】特開2017-041193(JP,A)
【文献】特開2007-193661(JP,A)
【文献】特開2010-277442(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0004827(US,A1)
【文献】勘米良俊暢、ほか2名,IoT・AI・スマートグラスによる設備点検の生産性向上と働き方改革,別冊技報,日本,日本ユニシス株式会社,2019年05月31日,第39巻,第1号,p.1-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G10L 15/00
G10L 15/22
G10L 13/00
G06F 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の検査における検査部位、検査項目及び合格基準を含む検査項目テーブルを記憶する記憶部と、
少なくとも前記検査項目テーブルの前記検査項目を、音声で読み上げる音声出力部と、
検査員の発話の入力を受け、発話内容を認識する音声認識部と、
前記音声認識部での認識内容が前記合格基準を満たすかを判定する判定部と、
を具備し、
前記音声出力部は、
前記判定部での判定結果を音声で出力するものであり、
前記所定の検査では、複数の前記検査項目が設定され、
各前記検査項目の判定が行われるごとに当該検査項目の判定結果が音声で出力され、
全ての前記検査項目の判定が行われると、全ての前記検査項目の判定結果が再び音声で出力される、
検査支援システム。
【請求項2】
検査開始に関する発話の入力を受けると、前記所定の検査が開始され、
前記全ての前記検査項目の判定結果が再び音声で出力されると、前記所定の検査が終了される、
請求項1に記載の検査支援システム。
【請求項3】
前記判定部は、
判定後に前記検査部位の写真撮影を促す音声を出力する、
請求項1又は請求項2に記載の検査支援システム。
【請求項4】
前記判定部は、
判定結果に基づいて検査報告書を作成する、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の検査支援システム。
【請求項5】
前記記憶部、前記音声出力部、前記音声認識部及び前記判定部は、
ウェアラブルデバイスで構成される、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の検査支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査を支援するための検査支援システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検査を支援するための検査支援システムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の情報処理システム(検査支援システム)は、建造物の検査に用いられる。情報処理システムは、携帯端末及びサーバ等を具備する。携帯端末は、建造物の図面を表示可能に構成される。また、携帯端末は、入力された音声をテキストデータに変換可能に構成される。サーバは、ネットワークを介して携帯端末と接続される。
【0004】
特許文献1に記載の情報処理システムでは、携帯端末に表示された建造物の図面に対して検査員が指摘箇所を選択し、検査結果を音声入力する。携帯端末は、入力された音声をテキストデータに変換し、前記指摘箇所と対応付けてテキストデータを記憶する。携帯端末は、検査が完了すると、検査結果をサーバに送信する。サーバは、必要に応じて所定の提供先に検査結果を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-84050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の情報処理システムでは、検査結果の入力の手間を省くことはできるものの、当該検査結果の合否判定は検査員が行う必要がある。このため、検査員の検査における業務負荷の軽減は未だ十分ではなかった。
【0007】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、検査における業務負荷の低減を図ることが可能な検査支援システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、所定の検査における検査部位、検査項目及び合格基準を含む検査項目テーブルを記憶する記憶部と、少なくとも前記検査項目テーブルの前記検査項目を、音声で読み上げる音声出力部と、検査員の発話の入力を受け、発話内容を認識する音声認識部と、前記音声認識部での認識内容が前記合格基準を満たすかを判定する判定部と、を具備し、前記音声出力部は、前記判定部での判定結果を音声で出力するものであり、前記所定の検査では、複数の前記検査項目が設定され、各前記検査項目の判定が行われるごとに当該検査項目の判定結果が音声で出力され、全ての前記検査項目の判定が行われると、全ての前記検査項目の判定結果が再び音声で出力されるものである。
【0010】
検査開始に関する発話の入力を受けると、前記所定の検査が開始され、前記全ての前記検査項目の判定結果が再び音声で出力されると、前記所定の検査が終了されることとしてもよい。
このような構成により、利便性を向上させることができる。
【0011】
前記判定部は、判定後に前記検査部位の写真撮影を促す音声を出力することとしてもよい。
このような構成により、検査における業務負荷の低減を効果的に図ることができる。
【0012】
前記判定部は、判定結果に基づいて検査報告書を作成することとしてもよい。
このような構成により、利便性を向上させることができる。
【0013】
前記記憶部、前記音声出力部、前記音声認識部及び前記判定部は、ウェアラブルデバイスで構成されることとしてもよい。
このような構成により、検査を効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
検査における業務負荷の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】検査支援システムを示したブロック図。
図2】端末の外観を示す図。
図3】検査項目テーブルを示す図。
図4】検査報告書を示す図。
図5】検査システムによる検査の流れを示す図。
図6】検査項目テーブルをダウンロードする様子を示したブロック図。
図7】検査システムにおける対話のイメージを示す図。
図8】画像ファイルをアップロードする様子を示したブロック図。
図9】スタンドアロンで動作する様子を示したブロック図。
図10】検査項目をスキップする際の対話のイメージを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本実施形態に係る検査支援システム1について説明する。
【0017】
図1に示す検査支援システム1は、検査を支援する(検査時に検査員Bの補助を行う)ためのものである。本実施形態において、検査支援システム1は、建物の検査に用いられる。検査支援システム1は、端末10、サーバ20及び社内システム30等を具備する。
【0018】
図1及び図2に示す端末10は、検査員Bが所持する機器である。端末10は、検査員Bが装着可能な眼鏡型のウェアラブルデバイスによって構成される。端末10は、スピーカ11、マイク12、カメラ13及び処理部14を具備する。
【0019】
スピーカ11は、音声を出力するためのものである。マイク12は、音声を入力するためのものである。カメラ13は、写真や動画を撮影するためのものである。スピーカ11、マイク12及びカメラ13は、眼鏡のフレーム10aに適宜設けられる。当該フレーム10aには、例えば、カメラ13でシャッターを切るためのボタンや検査を開始する際に操作する開始ボタン等も適宜設けられる(不図示)。これにより、端末10は、検査員Bが適宜操作可能に構成される。
【0020】
図1に示す処理部14は、演算処理を行うためのものである。処理部14は、ハードウェア資源とソフトウェア資源との協動により、演算処理を行うことができる。処理部14は、前記ハードウェア資源として、演算装置及び記憶装置等を具備する。また、処理部14は、前記ソフトウェア資源として、OS14a、音声認識部14b及び検査システム14cを具備する。
【0021】
OS14aは、プログラムを実行させるための基本となるソフトウェアである。OS14aは、後述するサーバ20との通信を管理したり、記憶装置との間でのデータの受け渡しを管理することができる。また、OS14aは、スピーカ11、マイク12及びカメラ13との間の入出力を管理することができる。
【0022】
音声認識部14bは、検査員Bが発した言葉(発話内容)を認識するためのものである。音声認識部14bは、OS14a上で動作可能なプログラムによって構成される。音声認識部14bは、音声ファイルを解析し、テキストファイルへと変換可能に構成される。
【0023】
検査システム14cは、検査員Bが発した言葉に基づいて適宜処理を行うものである。検査システム14cは、OS14a上で動作可能なプログラムによって構成される。検査システム14cは、検査で使用するための記憶領域A(空き領域)を端末10の記憶装置に確保することができる。検査システム14cの処理については後述する。
【0024】
サーバ20は、端末10及び後述する社内システム30からの要求に応じて適宜処理を行うものである。サーバ20は、ネットワーク回線Nを介して端末10及び社内システム30と接続される。サーバ20は、クラウドサーバ(厳密には、検査のため、クラウドサーバ内に仮想的に構築されたサーバ)によって構成される。サーバ20は、検査項目テーブル21及び保存用DB22を具備する。
【0025】
図3に示す検査項目テーブル21は、検査項目に関する情報を格納するものである。検査項目テーブル21には、「No」、「工程・部位等」、「検査項目」及び「管理値」が含まれる。
【0026】
「No」は、検査項目テーブル21のレコード毎に割り当てられる通し番号である。
【0027】
「工程・部位等」は、検査の工程(建物の工事におけるどの工程での検査であるのか)、及び検査対象の部位(建物のどの箇所を対象とした検査であるのか)を示すものである。検査の工程としては、例えば、コンクリート打設前の検査であるのか、フレッシュコンクリートの受入の検査であるのか等がある。また、検査対象の部位としては、例えば、基礎等がある。なお、図3に示す検査項目テーブル21の「工程・部位等」には、検査の工程等を示す文字列が格納されているが、これに限定されるものではなく、検査の工程等を一意に特定可能な数値等が格納されるものであってもよい。
【0028】
「検査項目」は、検査の工程及び検査対象の部位において実施する検査の内容を示すものである。例えば、所定の数値に異常がないかの検査である場合、「検査項目」には、当該数値に相当する情報(例えば、『スランプ値』等)が格納される。なお、図3に示す検査項目テーブル21の「検査項目」には、検査の内容を示す文字列が格納されているが、これに限定されるものではなく、検査の内容を一意に特定可能な数値等が格納されるものであってもよい。
【0029】
「管理値」は、「検査項目」が示す検査の合否判定の基準となる情報を示すものである。「管理値」には、検査の内容に応じて、合格となる値や範囲等が格納される。なお、図3に示す検査項目テーブル21の「管理値」には、合否判定の基準を示す文字列が格納されているが、これに限定されるものではなく、合否判定の基準を一意に特定可能な数値等が格納されるものであってもよい。
【0030】
図1に示す保存用DB22は、カメラ13での撮影結果(図8に示す画像ファイルC1・C2参照)やマイク12を介して録音した音声ファイル等を記憶するためのもの(テーブル群)である。保存用DB22には、例えば、画像ファイルを記憶するためのテーブル、及び音声ファイルを記憶するためのテーブル等が含まれる。保存用DB22は、例えば、画像ファイル等のファイルパスを、検査項目テーブル21の「工程・部位等」及び「管理項目」の情報と関連付けて記憶する。これにより、保存用DB22は、画像ファイル等がどの検査で得られたものなのかを特定可能となるように、当該画像ファイルを記憶することができる。
【0031】
社内システム30は、検査に関する情報を適宜管理するためのものである。社内システム30は、サーバ20と通信することで、検査項目テーブル21の内容を変更する(新たにレコードを追加したり既存のレコードを上書きする)ことができる。より詳細には、例えば、社内システム30には、検査項目テーブル21の内容を変更するデータが手動で入力される。社内システム30は、当該データに基づいて検査項目テーブル21の内容を変更する。また、社内システム30は、サーバ20と通信することで、保存用DB22から情報(画像ファイル等)を取得することができる。また、社内システム30は、取得した情報に基づいて、図4に示す検査報告書Dを作成することができる。
【0032】
検査報告書Dは、検査の結果を報告するためのものである。図4は、検査報告書Dの一例を示すものである。図4に示す検査報告書Dには、「No」、「工程・部位等」、「検査項目」、「管理値」、「検査値」、「合否」及び「写真」等が含まれる。
【0033】
「No」、「工程・部位等」、「検査項目」及び「管理値」は、検査項目テーブル21の「No」、「工程・部位等」、「検査項目」及び「管理値」と同様である。
【0034】
「検査値」は、検査の結果(例えば、測定値等)を示すものである。「合否」は、検査の結果(「検査値」)が合格基準を満たしているか否かを示すものである。「写真」は、検査で撮影された結果(カメラ13で撮った画像)を示すものである。
【0035】
次に、検査システム14cの構成について説明する。
【0036】
上述の如く、検査システム14cは、検査員Bが発した言葉に基づいて適宜処理を行うものである。図1に示す検査システム14cは、OS14aを介してスピーカ11等を適宜制御することができる。
【0037】
具体的には、検査システム14cは、OS14aを介してスピーカ11に信号を送信し、所定の音声を出力させることができる。また、検査システム14cは、マイク12に信号を送信し、マイク12への音声入力を受け付ける(マイク12を介して録音する)ことができる。また、検査システム14cは、マイク12から受信した信号に基づいて、マイク12を介して録音した音声ファイルを取得することができる。また、検査システム14cは、カメラ13から受信した信号に基づいて、カメラ13で撮影したファイル(例えば、画像ファイル)を取得することができる。
【0038】
また、検査システム14cは、音声認識部14bに指示を出し、音声ファイルをテキストファイルに変換することができる。また、検査システム14cは、音声認識部14bからの応答に基づいて、変換したテキストファイルを取得することができる。
【0039】
また、検査システム14cは、ネットワーク回線Nを介してサーバ20と通信することで、当該サーバ20との間でファイルの転送を行うことができる。より詳細には、検査システム14cは、サーバ20から検査項目テーブル21をダウンロードしたり、カメラ13で撮影した画像ファイル等をサーバ20へアップロードすることができる。
【0040】
以下では、図5及び図6を参照し、検査システム14cを用いた検査の流れについて説明する。
【0041】
検査においては、現場に行く前に最新の検査項目テーブル21を取得することが予め決められている。このため、検査員Bは、端末10を操作して、サーバ20から最新の検査項目テーブル21を取得する(ステップS110)。検査システム14cは、当該検査項目テーブル21を記憶領域Aに格納する。その後、検査員Bは、現場へ行く(ステップS120)。
【0042】
現場に行った検査員Bは、検査開始の旨を発声する(ステップS130)。このとき、検査員Bは、例えば、検査項目テーブル21の「工程・部位等」に格納された値に関する言葉(『フレッシュコンクリートの受入検査』等)を発声する。検査システム14cは、マイク12を介して当該検査員Bが発生した言葉を録音する。
【0043】
検査システム14cは、マイク12を介して録音した音声ファイルを音声認識部14bで処理してテキストファイルを取得する。検査システム14cは、取得したテキストファイルを解析し、検査員Bが検査を開始すると判断する。
【0044】
検査システム14cは、端末10の記憶領域Aに格納された検査項目テーブル21から「検査項目」を読み込んで、検査員Bと対話する形で検査を支援する(ステップS140~S220)。検査システム14cは、このような検査の支援を、全ての「検査項目」(「工程・部位等」に対応する全ての「検査項目」)が終了するまで行う。
【0045】
具体的には、検査システム14cは、「工程・部位等」をキーに検査項目テーブル21を検索し、「検査項目」を読み込む(ステップS140)。検査システム14cは、読み込んだ「検査項目」の情報をスピーカ11から出力させる(読み上げる)ことで、検査員Bに対して「検査項目」を質問する(ステップS150)。検査員Bは、スピーカ11からの音声に基づいて、「検査項目」の内容を検査する。そして、検査員Bは、検査の結果を発声(回答)する(ステップS160)。
【0046】
検査システム14cは、検査の結果を検査項目テーブル21の「管理値」と照合する(ステップS170)。具体的には、検査システム14cは、ステップS160で検査員Bが発声した言葉(検査の結果)を録音した音声ファイルを、音声認識部14bで処理してテキストファイルを取得する。検査システム14cは、取得したテキストファイルを解析して検査の結果のデータ(例えば、検査の結果を示す値等)を取得し、検査項目テーブル21の「管理値」と対比する。
【0047】
そして、検査システム14cは、検査結果を判定する(ステップS180)。このとき、検査システム14cは、検査の結果が「管理値」の条件を満たしている場合、検査の結果(「合否」)がOKであると判定する。一方、検査システム14cは、検査の結果が「管理値」の条件を満たしていない場合、検査の結果がNGであると判定する。
【0048】
その後、検査システム14cは、スピーカ11を介して音声を出力し、カメラ13での撮影を促す(ステップS190)。検査員Bは、端末10を操作して、カメラ13で適宜の箇所を撮影する(ステップS200)。
【0049】
カメラ13での撮影が行われると、検査システム14cは、撮影された画像ファイルを保存する(ステップS210)。このとき、検査システム14cは、カメラ13からの画像ファイルを記憶領域Aに格納すると共に、当該画像ファイルをサーバ20にアップロードする。サーバ20は、アップロードされた画像ファイルを保存用DB22に登録する。
【0050】
検査システム14cは、このようなステップS150~S210を、全ての「検査項目」が終了するまで繰り返す。なお、検査システム14cは、カメラ13での撮影が必要のない「検査項目」である場合、ステップS190~S210をスキップする。具体的には、例えば、検査システム14cは、写真撮影の有無と「検査項目」とを予め関連付けて記憶しており、当該記憶している情報に基づいて、カメラ13での撮影が必要のない「検査項目」であるのか否かを判断する。
【0051】
検査システム14cは、全ての「検査項目」が終了すると(ステップS220)、「検査項目」を振り返る(ステップS230)。このとき、検査システム14cは、検査項目テーブル21の「検査項目」の音声をスピーカ11から出力し、その後に、ステップS170で取得した検査の結果(テキストファイルの内容)をスピーカ11から出力する。検査システム14cは、これらの出力を、全ての「検査項目」に対して行う。
【0052】
検査システム14cは、「検査項目」を振り返ると、検査を終える旨の音声をスピーカ11から出力する(ステップS240)。これにより、検査員Bは、端末10の電源を切る等し、検査を終了する(ステップS250)。
【0053】
以下では、図7及び図8を参照し、検査(ステップS130~S210)の流れを具体的に説明する。また、以下では、図3に示す検査項目テーブル21の検査を行う場合を例に挙げて、検査の流れを説明する。
【0054】
まず、検査員Bは、検査を開始するときに、マイク12に向けて検査開始の旨を発声する。具体的には、検査員Bは、『コンクリート検査』と発声する(ステップS130)。検査システム14cは、当該発声に基づいて検査員Bが『フレッシュコンクリートの受入検査』を開始すると判断する。そして、検査システム14cは、検査を開始する旨の音声(『コンクリート検査を開始します。』との音声)をスピーカ11から出力させる。
【0055】
その後、検査項目テーブル21から「検査項目」を読み込む(ステップS140)。このとき、検査システム14cは、まず、検査項目テーブル21の「No」が最も小さい「検査項目」である『スランプ値』を読み込んで、その音声をスピーカ11から出力させる(ステップS150)。
【0056】
検査員Bは、上記音声を受けてスランプ値を測定し、当該測定結果(『X2』)を発声する(ステップS160)。なお、『X2』は、『X1』よりも大きく、かつ『X3』よりも小さい値となっている。
【0057】
検査システム14cは、当該発声に基づいて『スランプ値』の測定結果が『X2』であったと判断し、「管理値」と照合する(ステップS170)。図2に示す検査項目テーブル21において、『スランプ値』の「管理値」は、『X1以上X3以下』であるため、検査システム14cは、検査結果(『X2』)がOKであると判定する(ステップS180)。この場合、検査システム14cは、スピーカ11から検査結果がOKである旨の音声(『問題ありません。』との音声)を出力する。
【0058】
また、図7における『スランプ値』の検査では写真撮影が必要であることから、検査システム14cは、カメラ13での撮影を促す音声(『写真を撮ってください。』との音声)をスピーカ11から出力させる(ステップS190)。
【0059】
検査員Bは、上記音声を受けてカメラ13での撮影を行う。カメラ13で撮影した画像ファイルC1は、図8に示す記憶領域Aに格納されると共に、ネットワーク回線Nを介してサーバ20の保存用DB22に登録される(ステップS200)。
【0060】
そして、図7に示す検査システム14cは、検査項目テーブル21から次の「検査項目」(「No」が『2』である『空気量』)を読み込み、その音声をスピーカ11から出力させる。
【0061】
なお、図7における『空気量』の検査では、その結果が『Y4』となっている。当該『Y4』は、『Y3』よりも大きな値、すなわち、「管理値」の条件を満たさない値となっている。この場合、検査システム14cは、検査結果がNGであると判定し、スピーカ11からその旨の音声(『管理値外です。是正が必要です。』との音声)を出力する。
【0062】
また、検査システム14cは、検査の結果がNGであった場合でも、OKであった場合と同じように動作する。よって、検査システム14cは、検査員Bに写真の撮影を促して、カメラ13で撮影した画像ファイルC2をサーバ20にアップロードする。その後、検査システム14cは、次の「検査項目」を読み込んでスピーカ11から出力させる。
【0063】
また、検査システム14cは、『フレッシュコンクリートの受入検査』を終了すると、検査時に録音した音声ファイルや検査の結果等をサーバ20にアップロードする。サーバ20は、アップロードされた音声ファイル等を、「工程・部位等」及び「検査項目」と関連付けて保存用DB22に登録する。
【0064】
社内システム30は、こうして登録された保存用DB22を検索することで、「検査項目」に対応する検査の結果、合否の判定結果及び画像ファイルC1・C2を取得することができる。また、社内システム30は、保存用DB22から取得したデータを図4に示す検査報告書Dの「検査値」、「合否」及び「写真」に反映させることで、検査報告書Dを自動的に作成することができる。
【0065】
本実施形態の検査支援システム1によれば、検査システム14cが検査項目テーブル21の「管理値」に基づいて検査の合否を判定するため(ステップS170・S180)、検査員Bが合否判定を行う手間を省いて、検査における業務負荷を低減することができる。また、合否を誤って判定するのを防止することができるため、検査結果に対する信頼性の向上(品質の均一化)を図ることができる。
【0066】
また、本実施形態の検査支援システム1によれば、スピーカ11から「検査項目」の音声を出力させることで、検査員Bに「検査項目」を提供することができる(ステップS150)。また、全ての「検査項目」が終了するまで音声出力を繰り返し実行することで(ステップS220)、検査員Bに全ての「検査項目」を提供することができる。これによれば、検査員Bが検査に漏れがないか確認しなくて済むため、検査における業務負荷を低減することができる。また、検査を漏れなく行うことができ、検査結果に対する信頼性の向上を図ることができる。
【0067】
また、検査システム14cでは、現場に行く前に、最新の検査項目テーブル21を取得するようにしている(ステップS110)。これによれば、現場におけるネットワーク環境に関わらず、検査の支援を安定して行うことができる。具体的には、図9に示すように、現場によっては、ネットワーク回線Nが不安定となり、端末10がサーバ20と通信できない可能性がある。本実施形態では、検査員Bが現場に行く前に検査項目テーブル21を端末10の記憶領域Aに格納して(ステップS110)、当該記憶領域Aの検査項目テーブル21を用いて検査の支援を行うようにしている。これによれば、端末10は、スタンドアロンで検査の支援を実行することができる。なお、端末10は、スタンドアロンで検査の支援を実行する場合、画像ファイルC1・C2等を適宜(例えば、検査員Bが現場から離れてネットワーク回線Nが安定すると)アップロードする。
【0068】
以上の如く、本実施形態に係る検査支援システム1は、検査部位(「工程・部位等」)、検査項目及び合格基準(「管理値」)を含む検査項目テーブル21を記憶する記憶領域Aが確保された記憶装置及びサーバ20(記憶部)と、少なくとも前記検査項目テーブル21の前記検査項目を、音声で読み上げるスピーカ11(音声出力部)と、検査員Bの発話の入力を受け、発話内容を認識する音声認識部14bと、前記音声認識部14bでの認識内容が前記合格基準を満たすかを判定する検査システム14c(判定部)と、を具備するものである。
【0069】
このように構成することにより、検査員Bが合否判定を行う手間を省いて、検査における業務負荷の低減を図ることができる。
【0070】
また、前記スピーカ11は、前記検査システム14cでの判定結果を音声で出力するものである(ステップS180)。
【0071】
このように構成することにより、検査員Bが自発的に判定結果を取得しなくて済むため、利便性を向上させることができる。
【0072】
また、前記スピーカ11は、前記検査システム14cでの判定後に前記検査システム14cの写真撮影を促す音声を出力するものである(ステップS190)。
【0073】
このように構成することにより、写真撮影が必要な検査項目であるか否かを検査員Bが確認しなくて済むため、検査における業務負荷の低減を効果的に図ることができる。また、検査において写真撮影を忘れるのを抑制し、検査結果に対する信頼性の向上を効果的に図ることができる。
【0074】
また、前記記憶領域Aが確保された記憶装置、前記スピーカ11、前記音声認識部14b及び前記検査システム14cは、ウェアラブルデバイスで構成されるものである。
【0075】
このように構成することにより、検査員Bの手を塞ぐことなく検査を行うことができるため、検査を効率的に行うことができる。
【0076】
なお、本実施形態に係る記憶領域Aが確保された記憶装置及びサーバ20は、記憶部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るスピーカ11は、音声出力部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る検査システム14cは、判定部の実施の一形態である。
【0077】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0078】
例えば、検査支援システム1は、建物の検査に用いられるものとしたが、これに限定されるものではなく、他の検査(外構の検査等)に用いられるものであってもよい。また、検査支援システム1は、建物の竣工前の検査(例えば、フレッシュコンクリートの受入検査等)に限らず、竣工後に行われる検査(定期点検等)に用いられるものであってもよい。
【0079】
また、検査システム14cは、「検査項目」をスキップ可能であってもよい。具体的には、図10に示すように、検査システム14cは、検査員Bが所定の言葉(図10では、『スキップ』)を発した場合に、次の「検査項目」に進むものであってもよい。
【0080】
また、検査システム14cは、スピーカ11から出力させる音声の速さを変更可能であってもよい。これにより、検査員Bが任意に音声の速さを調整する(例えば、聞き取り易い速さにする)ことができ、利便性を向上させることができる。
【0081】
また、検査においては、端末10を操作することで写真を撮影するものとしたが、これに限定されるものではなく、検査員Bの発話を受けて写真を撮影するものであってもよい。この場合、検査システム14cは、例えば、写真の撮影を促す音声をスピーカ11から出力した後で、カメラ13を起動させる。また、検査システム14cは、カメラ13を撮影する旨の言葉(例えば、『撮影』等の言葉)を検査員Bが発声した場合に、カメラ13のシャッターを切る。このような構成により、検査員Bの手を塞ぐことなく写真を撮影することができ、検査を効率的に行うことができる。
【0082】
また、検査システム14cは、カメラ13で撮影した画像ファイルC1・C2を解析し、合否を判定してもよい。
【0083】
また、検査システム14cは、検査員Bのコメントを適宜記憶可能であってもよい。例えば、検査システム14cは、「検査項目」における検査員Bの見解等をコメントとして記憶してもよい。また、当該コメントを検査報告書Dに反映させてもよい。これにより、検査報告書Dの品質を向上させることができる。
【0084】
また、検査システム14cは、記憶領域Aに格納された検査項目テーブル21を用いて検査を行うものとしたが、これに限定されるものではなく、サーバ20に記憶された検査項目テーブル21を用いて検査を行ってもよい。
【0085】
また、検査システム14cは、検査の合否をスピーカ11から出力するものとしたが(ステップS180)、これに限定されるものではなく、スピーカ11から出力しないものであってもよい。
【0086】
また、検査システム14cは、必要に応じて写真撮影を促すものとしたが(ステップS190)、これに限定されるものではなく、写真撮影を促さないものであってもよい。
【0087】
また、検査システム14cは、検査員Bが検査開始の旨を発声した場合に、検査を開始するものとしたが、これに限定されるものではなく、検査員Bが発声する前に、検査開始の旨をスピーカ11から出力してもよい。
【0088】
また、「検査項目」は、検査システム14c側から検査員Bへと提供されるものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、検査員B側から検査システム14cへと提供されるものであってもよい。この場合、検査員Bは、検査を開始すると「検査項目」に関する言葉(例えば、『スランプ値』等)を発声する。検査システム14cは、当該発声を受けて「検査項目」を読み上げる音声(例えば、『スランプ値ですね?』等)をスピーカ11から出力する。その後、検査員Bは、検査の結果に関する言葉(例えば、『X2』等)を発声する。このような構成により、検査員Bが任意に「検査項目」を選ぶことができ、利便性を向上させることができる。
【0089】
また、本実施形態において、検査報告書Dは、社内システム30が作成するものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、端末10等が検査報告書Dを作成してもよい。
【0090】
以上の如く、検査システム14c及び社内システム30は、判定結果に基づいて検査報告書Dを作成するものである。
なお、検査システム14c及び社内システム30は、判定部の実施の一形態である。
【0091】
このように構成することにより、判定結果を入力する手間を省いて利便性を向上させることができる。
【0092】
また、本実施形態では、検査報告書Dの一例として、図4に示す検査報告書Dを挙げたが、検査報告書Dの構成(レイアウト等)は、これに限定されるものではなく、任意の構成とすることができる。
【0093】
また、端末10は、ウェアラブルデバイスによって構成されるものとしたが、これに限定されるものではなく、他の機器(例えば、タブレット端末等)であってもよい。
【0094】
また、端末10は、スピーカ11及びマイク12等を具備するものとしたが、端末10の構成はこれに限定されるものではなく、スピーカ11及びマイク12等に加えてモニタを具備するものであってもよい。
【0095】
また、社内システム30は、検査項目テーブル21の内容を手動で変更するものとしたが、検査項目テーブル21の内容を変更する手段は、これに限定されるものではない。社内システム30は、例えば、建物を建設するためのデータ(BIM(Building Information Modeling)データ等)と連携し、当該データの変更に伴って検査項目テーブル21の内容を自動的に変更するものであってもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 検査支援システム
10 端末
11 スピーカ(音声出力部)
14c 検査システム(判定部)
15b 音声認識部
21 検査項目テーブル
B 検査員
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10