(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】センサ素子
(51)【国際特許分類】
G01L 15/00 20060101AFI20231212BHJP
G01L 13/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
G01L15/00
G01L13/00 B
(21)【出願番号】P 2019185770
(22)【出願日】2019-10-09
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】徳田 智久
(72)【発明者】
【氏名】米田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】東條 博史
(72)【発明者】
【氏名】津嶋 鮎美
(72)【発明者】
【氏名】木田 のぞみ
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-308330(JP,A)
【文献】特開平9-218121(JP,A)
【文献】特開2008-292185(JP,A)
【文献】米国特許第5526692(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00-23/32
G01L27/00-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサチップとこのセンサチップの一面に接合されるダイアフラムベースから構成されるセンサ素子であって、
前記センサチップは、
第1の圧力と第2の圧力の差圧計測用の第1のダイアフラムと、
前記第2の圧力の絶対圧計測用またはゲージ圧計測用の第2のダイアフラムと、
前記第1のダイアフラム
の一面に前記第1の圧力を伝達する第1の圧力導入路と、
前記第1のダイアフラム
の他面と前記第2のダイアフラム
の基準室と反対側の前記第2のダイアフラムの一面に前記第2の圧力を伝達する第2の圧力導入路とを備え、
前記ダイアフラムベースは、
前記第1の圧力を有する計測対象の流体を直接受ける第3のダイアフラムと、
前記第2の圧力を有する計測対象の流体を直接受ける第4のダイアフラムと、
前記第1の圧力導入路と連通して前記第3のダイアフラムが受けた前記第1の圧力を前記第1の圧力導入路および前記第1のダイアフラム
の一面へと伝達する第3の圧力導入路と、
前記第2の圧力導入路と連通して前記第4のダイアフラムが受けた前記第2の圧力を前記第2の圧力導入路
、前記第1のダイアフラムの他面および前記第2のダイアフラム
の一面へと伝達する第4の圧力導入路とを備え、
前記第1の圧力導入路から前記第3の圧力導入路には、前記第1のダイアフラムに前記第1の圧力を伝達することが可能な第1の圧力伝達媒体が封入され、前記第2の圧力導入路から前記第4の圧力導入路には、前記第1のダイアフラムと前記第2のダイアフラムに前記第2の圧力を伝達することが可能な第2の圧力伝達媒体が封入されるとともに、前記第1の圧力導入路から前記第3の圧力導入路の何れかの途中に前記第1の圧力伝達媒体の量と前記第2の圧力伝達媒体の量とを実質的に同じにする調整構造を備えるセンサ素子。
【請求項2】
前記調整構造は、前記第1の圧力伝達媒体の量と前記第2の圧力伝達媒体の量とが実質的に同じになるように、前記第1の圧力導入路の途中に設けられた液量調整室である、請求項1記載のセンサ素子。
【請求項3】
前記調整構造は、前記第1の圧力伝達媒体の量と前記第2の圧力伝達媒体の量とが実質的に同じになるように、前記第3の圧力導入路の途中に設けられた液量調整室である、請求項1記載のセンサ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、差圧あるいは圧力を検出する圧力センサとして、感圧部である半導体ダイアフラムにピエゾ抵抗を形成した半導体ピエゾ抵抗式圧力センサが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された圧力センサでは、差圧のみ、または絶対圧のみを測定対象としており、差圧と絶対圧など複数の圧力を同時に計測する構造は知られていなかった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、複数の圧力を同時に計測することができるセンサ素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、センサチップとこのセンサチップの一面に接合されるダイアフラムベースから構成されるセンサ素子であって、前記センサチップは、第1の圧力と第2の圧力の差圧計測用の第1のダイアフラムと、前記第2の圧力の絶対圧計測用またはゲージ圧計測用の第2のダイアフラムと、前記第1のダイアフラムの一面に前記第1の圧力を伝達する第1の圧力導入路と、前記第1のダイアフラムの他面と前記第2のダイアフラムの基準室と反対側の前記第2のダイアフラムの一面に前記第2の圧力を伝達する第2の圧力導入路とを備え、前記ダイアフラムベースは、前記第1の圧力を有する計測対象の流体を直接受ける第3のダイアフラムと、前記第2の圧力を有する計測対象の流体を直接受ける第4のダイアフラムと、前記第1の圧力導入路と連通して前記第3のダイアフラムが受けた前記第1の圧力を前記第1の圧力導入路および前記第1のダイアフラムの一面へと伝達する第3の圧力導入路と、前記第2の圧力導入路と連通して前記第4のダイアフラムが受けた前記第2の圧力を前記第2の圧力導入路、前記第1のダイアフラムの他面および前記第2のダイアフラムの一面へと伝達する第4の圧力導入路とを備え、前記第1の圧力導入路から前記第3の圧力導入路には、前記第1のダイアフラムに前記第1の圧力を伝達することが可能な第1の圧力伝達媒体が封入され、前記第2の圧力導入路から前記第4の圧力導入路には、前記第1のダイアフラムと前記第2のダイアフラムに前記第2の圧力を伝達することが可能な第2の圧力伝達媒体が封入されるとともに、前記第1の圧力導入路から前記第3の圧力導入路の何れかの途中に前記第1の圧力伝達媒体の量と前記第2の圧力伝達媒体の量とを実質的に同じにする調整構造を備えることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明のセンサ素子の1構成例において、前記調整構造は、前記第1の圧力伝達媒体の量と前記第2の圧力伝達媒体の量とが実質的に同じになるように、前記第1の圧力導入路の途中に設けられた液量調整室である。
また、本発明のセンサ素子の1構成例において、前記調整構造は、前記第1の圧力伝達媒体の量と前記第2の圧力伝達媒体の量とが実質的に同じになるように、前記第3の圧力導入路の途中に設けられた液量調整室である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の圧力を同時に計測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施例に係るセンサ素子の平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施例に係るセンサ素子の断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施例に係るセンサ素子の断面図である。
【
図4】
図4は、液量調整部材が無いセンサ素子の例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、液量調整部材が無いセンサ素子の例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第1の実施例においてセンサチップをダイアフラムベース上に搭載した状態のセンサ素子の断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2の実施例に係るセンサ素子の平面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2の実施例に係るセンサ素子の断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第2の実施例に係るセンサ素子の断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第3の実施例に係るセンサ素子の平面図である。
【
図11】
図11は、本発明の第3の実施例に係るセンサ素子の断面図である。
【
図12】
図12は、本発明の第3の実施例に係るセンサ素子の断面図である。
【
図13】
図13は、本発明の第4の実施例に係るセンサ素子の断面図である。
【
図14】
図14は、本発明の第4の実施例に係るセンサ素子の他の構成を示す断面図である。
【
図15】
図15は、本発明の第5の実施例に係るセンサ素子の平面図である。
【
図16】
図16は、本発明の第5の実施例に係るセンサ素子の断面図である。
【
図17】
図17は、本発明の第5の実施例に係るセンサ素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施例に係るセンサ素子の平面図、
図2は
図1のA-A線断面図、
図3は
図1のB-B線断面図である。
【0011】
センサ素子1は、平板状のセンサチップ10から構成される。センサチップ10は、ガラスからなる平板状の基台2と、基台2と接合されたシリコンからなる平板状の流路部材3と、流路部材3と接合されたシリコンからなる平板状の感圧部材4と、感圧部材4と接合されたシリコンからなる平板状の蓋部材5と、蓋部材5と接合されたシリコンからなる平板状の液量調整部材6とから構成される。
【0012】
基台2には、裏面から表面まで基台2を貫く圧力導入路となる2つの貫通孔20,21が形成されている。
流路部材3には、基台2と流路部材3とが接合されたときに貫通孔20,21と連通する位置に、裏面から表面まで流路部材3を貫く圧力導入路となる貫通孔30,31が形成されている。また、流路部材3の感圧部材4と向かい合う表面には、一端が貫通孔30と連通し、流路部材3と感圧部材4とが接合されたときに他端が後述する凹陥部40と連通する圧力導入路となる溝32が形成されている。
【0013】
感圧部材4の流路部材3と向かい合う裏面には、感圧部材4の表面側が残るように裏面側を除去して形成された正方形の2つの凹陥部40,41(圧力導入室)が形成されている。感圧部材4の凹陥部40,41が形成された領域の表面側に残った部分が、ダイアフラム42,43となる。
【0014】
また、感圧部材4の蓋部材5と向かい合う表面のうち、凹陥部40,41の領域の表面側に形成されたダイアフラム42,43の周縁部には、例えば不純物拡散またはイオン打ち込みの技術によりピエゾ抵抗素子として機能する歪みゲージ44-1~44-4,45-1~45-4が形成されている。歪みゲージ44-1~44-4は、それぞれ平面視正方形のダイアフラム42(第1のダイアフラム)の4辺の中点付近に形成されている。同様に、歪みゲージ45-1~45-4は、それぞれ平面視正方形のダイアフラム43(第2のダイアフラム)の4辺の中点付近に形成されている。
【0015】
さらに、感圧部材4には、流路部材3と感圧部材4とが接合されたときに貫通孔30,31と連通する位置に、裏面から表面まで感圧部材4を貫く圧力導入路となる貫通孔46,47が形成されている。
【0016】
蓋部材5の感圧部材4と向かい合う裏面には、感圧部材4と蓋部材5とが接合されたときにダイアフラム42,43に覆いをする位置に、蓋部材5の表面側が残るように裏面側を除去して形成された正方形の2つの凹陥部50,51(圧力導入室)が形成されている。また、蓋部材5には、感圧部材4と蓋部材5とが接合されたときに貫通孔47と連通する位置に、裏面から表面まで蓋部材5を貫く圧力導入路となる貫通孔52が形成されている。また、蓋部材5の裏面には、一端が貫通孔52と連通し、他端が凹陥部50と連通する圧力導入路となる溝53が形成されている。さらに、蓋部材5の裏面には、感圧部材4と蓋部材5とが接合されたときに一端が貫通孔46と連通し、他端が凹陥部51と連通する圧力導入路となる溝54が形成されている。
【0017】
液量調整部材6の蓋部材5と向かい合う裏面には、液量調整部材6の表面側が残るように裏面側を除去して形成された凹陥部60(液量調整室)が形成されている。さらに、液量調整部材6の裏面には、蓋部材5と液量調整部材6とが接合されたときに一端が貫通孔52と連通し、他端が凹陥部60と連通する圧力導入路となる溝61が形成されている。
【0018】
貫通孔20,21,30,31,46,47,52と凹陥部40,41,50,51,60と溝32,53,54,61とは、エッチング技術によって容易に形成できることは言うまでもない。以降の実施例の貫通孔と凹陥部と溝についても同様にエッチング技術によって容易に形成することができる。
【0019】
基台2と流路部材3とは、基台2の貫通孔20,21と流路部材3の貫通孔30,31とが連通するように、直接接合によって接合される。
流路部材3と感圧部材4とは、流路部材3の貫通孔30,31と感圧部材4の貫通孔46,47とが連通し、流路部材3の溝32と感圧部材4の凹陥部40とが連通するように、直接接合によって接合される。
【0020】
感圧部材4と蓋部材5とは、蓋部材5の凹陥部50,51が感圧部材4のダイアフラム42,43を覆い、感圧部材4の貫通孔46と蓋部材5の溝54とが連通し、感圧部材4の貫通孔47と蓋部材5の貫通孔52とが連通するように、直接接合によって接合される。蓋部材5と液量調整部材6とは、蓋部材5の貫通孔52と液量調整部材6の溝61とが連通するように、直接接合によって接合される。
【0021】
ダイアフラム42の上面には、貫通孔21,31,47,52、溝53および凹陥部50を介して第1のオイル(第1の圧力伝達媒体)が到達可能となっている。第1のオイルは、印加された第1の圧力をダイアフラム42の上面に伝達する。ダイアフラム42の下面には、貫通孔20,30、溝32および凹陥部40を介して第2のオイル(第2の圧力伝達媒体)が到達可能となっている。第2のオイルは、印加された第2の圧力をダイアフラム42の下面に伝達する。ダイアフラム43の上面には、貫通孔20,30,46、溝54および凹陥部51を介して第2のオイルが到達可能となっている。第2のオイルは、印加された第2の圧力をダイアフラム43の上面に伝達する。ダイアフラム43の下面の凹陥部41(基準室)は、真空状態で密封されている。
【0022】
貫通孔21,31,47,52、溝53および凹陥部50は、ダイアフラム42に第1の圧力を伝達する第1の圧力導入路を構成している。貫通孔20,30,46、溝32,54および凹陥部40,51は、ダイアフラム42,43に第2の圧力を伝達する第2の圧力導入路を構成している。
【0023】
図1~
図3では図示していないが、例えば感圧部材4の平面形状を蓋部材5の平面形状よりも大きくして、感圧部材4の露出した表面に、各歪みゲージ44-1~44-4,45-1~45-4とそれぞれ電気的に接続された8つの電極パッドを形成することで、歪みゲージ44-1~44-4,45-1~45-4を外部の回路と結線できるようになっている。歪みゲージと外部の回路との結線方法は、以降の実施例についても同様である。
【0024】
歪みゲージ44-1~44-4は、外部の回路と共に差圧計測用のホイートストンブリッジ回路を構成する。差圧計測用のホイートストンブリッジ回路により、ダイアフラム42の上面に印加される第1の圧力とダイアフラム42の下面に印加される第2の圧力の差圧を計測することができる。
【0025】
歪みゲージ45-1~45-4は、外部の回路と共に絶対圧計測用のホイートストンブリッジ回路を構成する。絶対圧計測用のホイートストンブリッジ回路により、ダイアフラム43の上面に印加される第2の圧力の絶対圧を計測することができる。
なお、ホイートストンブリッジ回路の構成については周知の技術であるので、詳細な説明は省略する。
【0026】
こうして、本実施例では、差圧と絶対圧とを同時に高感度に計測することができる。また、本実施例では、液量調整部材6に液量調整室となる凹陥部60を設けることにより、貫通孔21,31,47,52、溝53,61および凹陥部50,60に封入される第1のオイルの量と、貫通孔20,30,46、溝32,54および凹陥部40,51に封入される第2のオイルの量とを同じにすることができる。
【0027】
ダイアフラム43の下面の凹陥部41には第1のオイルを導入しないため、液量調整部材6が無い構造では、第2のオイルよりも第1のオイルの量が少なくなってしまう。液量調整部材6が無いセンサチップ10cの例を
図4、
図5に示す。
図4はセンサチップ10cを
図1のA-A線に相当する線で切断した断面図であり、
図5はセンサチップ10cを
図1のB-B線に相当する線で切断した断面図である。上記のようにオイル量の差があると、オイル量の差に起因して温度による圧力のゼロ点のシフトが大きくなるという問題があった。機器の小型化のためにダイアフラム42,43が小さく(コンプライアンスが小さく)なればなる程、上記の問題の影響は大きくなる。
【0028】
これに対して、本実施例では、第1のオイルの量と第2のオイルの量とを同じにすることができ、温度変化によるオイル膨張・収縮による特性変化(差圧のゼロ点のシフト)を低減することができる。したがって、本実施例では、差圧と絶対圧とを同時に高感度に計測することができ、センサ素子の小型化が可能となる。
【0029】
なお、センサチップ10は、ダイアフラムベース上に搭載される。センサチップ10をダイアフラムベース上に搭載した状態のセンサ素子1の断面図を
図6に示す。
ダイアフラムベース7は、計測対象の流体の圧力をセンサチップ10に導くための金属材料からなる。金属材料としては、ステンレス鋼(SUS)を例示することができる。
図6に示すように、ダイアフラムベース7は、主面7aとその反対側の主面7bとを有する。ダイアフラムベース7には、主面7aと主面7bとを貫通する貫通孔70と貫通孔71とが形成されている。貫通孔70,71の主面7a側の開口部には、2つの凹陥部72,73が形成されている。凹陥部72は、第2の圧力を有する計測対象の流体を直接受けるバリアダイアフラム74(第4のダイアフラム)によって覆われている。同様に、凹陥部73は、第1の圧力を有する計測対象の流体を直接受けるバリアダイアフラム75(第3のダイアフラム)によって覆われている。バリアダイアフラム74,75は、例えばステンレス鋼(SUS)から構成されている。
【0030】
センサチップ10とダイアフラムベース7とは、センサチップ10の貫通孔20,21とダイアフラムベース7の貫通孔70,71とが連通するように、接着剤によって接合される。
ダイアフラムベース7の凹陥部73と貫通孔71とは、前記第1の圧力導入路と連通してダイアフラム75が受けた第1の圧力を前記第1の圧力導入路およびダイアフラム42へと伝達する第3の圧力導入路を構成している。ダイアフラムベース7の凹陥部72と貫通孔70とは、前記第2の圧力導入路と連通してダイアフラム74が受けた第2の圧力を前記第2の圧力導入路およびダイアフラム43へと伝達する第4の圧力導入路を構成している。
【0031】
本実施例のダイアフラムベース7において、凹陥部73および貫通孔71中の第1のオイルの量と、凹陥部72および貫通孔70中の第2のオイルの量とは同一である。
【0032】
[第2の実施例]
次に、本発明の第2の実施例について説明する。
図7は本発明の第2の実施例に係るセンサ素子の平面図、
図8は
図7のA-A線断面図、
図9は
図7のB-B線断面図である。本実施例のセンサ素子1aは、ダイアフラムベースと、ダイアフラムベース上に搭載された平板状のセンサチップ10aとから構成される。ダイアフラムベースについては、
図6で説明したとおりであるので、記載を省略する。本実施例は、第1の実施例とは異なる調整構造でオイル量の調整を実現するものである。
【0033】
センサチップ10aは、ガラスからなる平板状の基台2と、基台2と接合されたシリコンからなる平板状の流路部材3と、流路部材3と接合されたシリコンからなる平板状の感圧部材4と、感圧部材4と接合されたシリコンからなる平板状の蓋部材5aとから構成される。基台2と流路部材3と感圧部材4については第1の実施例で説明したとおりである。
【0034】
蓋部材5aには、第1の実施例と同様に、凹陥部51と溝54とが形成されている。さらに、蓋部材5aの感圧部材4と向かい合う裏面には、感圧部材4と蓋部材5aとが接合されたときにダイアフラム42に覆いをする位置に、蓋部材5aの表面側が残るように裏面側を除去して形成された正方形の凹陥部50aが形成されている。また、蓋部材5aの裏面には、感圧部材4と蓋部材5aとが接合されたときに一端が貫通孔47と連通し、他端が凹陥部50aと連通する圧力導入路となる溝53aが形成されている。
【0035】
貫通孔21,31,47、溝53aおよび凹陥部50aは、ダイアフラム42に第1の圧力を伝達する第1の圧力導入路を構成している。貫通孔20,30,46、溝32,54および凹陥部40,51は、ダイアフラム42,43に第2の圧力を伝達する第2の圧力導入路を構成している。
【0036】
基台2と流路部材3とは、基台2の貫通孔20,21と流路部材3の貫通孔30,31とが連通するように、直接接合によって接合される。
流路部材3と感圧部材4とは、流路部材3の貫通孔30,31と感圧部材4の貫通孔46,47とが連通し、流路部材3の溝32と感圧部材4の凹陥部40とが連通するように、直接接合によって接合される。
【0037】
感圧部材4と蓋部材5aとは、蓋部材5aの凹陥部50a,51が感圧部材4のダイアフラム42,43を覆い、感圧部材4の貫通孔46と蓋部材5aの溝54とが連通し、感圧部材4の貫通孔47と蓋部材5aの溝53aとが連通するように、直接接合によって接合される。
【0038】
第1の実施例と本実施例との違いは、本実施例では液量調整部材6を設ける代わりに、凹陥部50aの容積を凹陥部50の容積よりも大きくすることにより、貫通孔21,31,47、溝53aおよび凹陥部50aに封入される第1のオイルの量と、貫通孔20,30,46、溝32,54および凹陥部40,51に封入される第2のオイルの量とを同じにしていることである。すなわち、凹陥部50aは、圧力導入室であると同時に液量調整室(調整構造)となっている。
こうして、本実施例では、第1の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0039】
[第3の実施例]
次に、本発明の第3の実施例について説明する。
図10は本発明の第3の実施例に係るセンサ素子の平面図、
図11は
図10のA-A線断面図、
図12は
図10のB-B線断面図である。本実施例のセンサ素子1bは、ダイアフラムベースと、ダイアフラムベース上に搭載された平板状のセンサチップ10bとから構成される。ダイアフラムベースについては、
図6で説明したとおりであるので、記載を省略する。本実施例は、第1、第2の実施例とは異なる調整構造でオイル量の調整を実現するものである。
【0040】
センサチップ10bは、ガラスからなる平板状の基台2bと、基台2bと接合されたシリコンからなる平板状の流路部材3と、流路部材3と接合されたシリコンからなる平板状の感圧部材4と、感圧部材4と接合されたシリコンからなる平板状の蓋部材5bとから構成される。流路部材3と感圧部材4については第1の実施例で説明したとおりである。
【0041】
基台2bには、裏面から表面まで基台2bを貫く圧力導入路となる2つの貫通孔20,21b(調整構造)が形成されている。
蓋部材5bには、第1の実施例と同様に、凹陥部50,51と溝54とが形成されている。さらに、蓋部材5aの感圧部材4と向かい合う裏面には、感圧部材4と蓋部材5bとが接合されたときに一端が貫通孔47と連通し、他端が凹陥部50と連通する圧力導入路となる溝53bが形成されている。
【0042】
貫通孔21b,31,47、溝53bおよび凹陥部50は、ダイアフラム42に第1の圧力を伝達する第1の圧力導入路を構成している。貫通孔20,30,46、溝32,54および凹陥部40,51は、ダイアフラム42,43に第2の圧力を伝達する第2の圧力導入路を構成している。
【0043】
基台2bと流路部材3とは、基台2bの貫通孔20,21bと流路部材3の貫通孔30,31とが連通するように、直接接合によって接合される。
流路部材3と感圧部材4とは、流路部材3の貫通孔30,31と感圧部材4の貫通孔46,47とが連通し、流路部材3の溝32と感圧部材4の凹陥部40とが連通するように、直接接合によって接合される。
【0044】
感圧部材4と蓋部材5bとは、蓋部材5bの凹陥部50,51が感圧部材4のダイアフラム42,43を覆い、感圧部材4の貫通孔46と蓋部材5bの溝54とが連通し、感圧部材4の貫通孔47と蓋部材5bの溝53bとが連通するように、直接接合によって接合される。
【0045】
第1の実施例と本実施例との違いは、本実施例では液量調整部材6を設ける代わりに、基台2bの貫通孔21bの径を貫通孔20の径よりも大きくすることにより、貫通孔21b,31,47、溝53bおよび凹陥部50に封入される第1のオイルの量と、貫通孔20,30,46、溝32,54および凹陥部40,51に封入される第2のオイルの量とを同じにしていることである。
こうして、本実施例では、第1の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0046】
[第4の実施例]
第1~第3の実施例では、センサチップ10,10a,10bにオイル量の調整構造を設けるようにしたが、センサチップを搭載するダイアフラムベースにオイル量の調整構造を設けるようにしてもよい。
【0047】
図13は本発明の第4の実施例に係るセンサ素子の断面図である。本実施例のセンサ素子1cは、ダイアフラムベース7cと、ダイアフラムベース7c上に搭載されたセンサチップ10cとから構成される。
センサチップ10cは、第1の実施例のセンサチップ10から液量調整部材6と蓋部材5の貫通孔52とを除いた構成(
図4、
図5に示した構成)なので、詳細な説明は省略する。
【0048】
ダイアフラムベース7と同様に、金属材料からなるダイアフラムベース7cには、貫通孔70,71と凹陥部72,73とが形成されている。凹陥部72は、バリアダイアフラム74によって覆われ、凹陥部73は、バリアダイアフラム75によって覆われている。
センサチップ10cとダイアフラムベース7cとは、センサチップ10cの貫通孔20,21とダイアフラムベース7cの貫通孔70,71とが連通するように、接着剤によって接合される。
ダイアフラムベース7cの凹陥部73と貫通孔71とは、前記第1の圧力導入路と連通してダイアフラム75が受けた第1の圧力を前記第1の圧力導入路およびダイアフラム42へと伝達する第3の圧力導入路を構成している。ダイアフラムベース7cの凹陥部72と貫通孔70とは、前記第2の圧力導入路と連通してダイアフラム74が受けた第2の圧力を前記第2の圧力導入路およびダイアフラム43へと伝達する第4の圧力導入路を構成している。
【0049】
本実施例では、ダイアフラムベース7cの貫通孔71の径を貫通孔70の径よりも大きくすることにより、ダイアフラムベース7cの凹陥部73と貫通孔71とセンサチップ10cの貫通孔21,31,47と溝53と凹陥部50とに封入される第1のオイルの量と、ダイアフラムベース7cの凹陥部72と貫通孔70とセンサチップ10cの貫通孔20,30,46と溝32,54と凹陥部40,51とに封入される第2のオイルの量とを同じにすることができる。
こうして、本実施例では、センサチップ10cの代わりに、ダイアフラムベース7cにオイル量の調整構造(貫通孔71)を設けることにより、第1の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0050】
なお、貫通孔71の径を貫通孔70の径よりも大きくする代わりに、凹陥部73(調整構造)の容積を凹陥部72の容積よりも大きくして、第1のオイルの量と第2のオイルの量とを同じにしてもよい。
また、
図14に示すように、貫通孔71と連通する液量調整室76(調整構造)をダイアフラムベース7d内に設けて、第1のオイルの量と第2のオイルの量とを同じにしてもよい。
【0051】
[第5の実施例]
第1~第4の実施例では、第2の圧力のゲージ圧を計測することも可能である。
図15は本発明の第4の実施例に係るセンサ素子の平面図、
図16は
図15のA-A線断面図、
図17は
図15のB-B線断面図である。本実施例のセンサ素子1dは、平板状のセンサチップ10dから構成される。センサチップ10dは、ガラスからなる平板状の基台2と、基台2と接合されたシリコンからなる平板状の流路部材3と、流路部材3と接合されたシリコンからなる平板状の感圧部材4dと、感圧部材4dと接合されたシリコンからなる平板状の蓋部材5と、蓋部材5と接合されたシリコンからなる平板状の液量調整部材6とから構成される。基台2と流路部材3と蓋部材5と液量調整部材6については第1の実施例で説明したとおりである。
【0052】
感圧部材4dは、第1の実施例の感圧部材4において、一端が凹陥部41と連通し、他端が感圧部材4dの側面に開口する圧力導入路となる溝48を裏面に形成したものである。本実施例では、ダイアフラム43に形成された歪みゲージ45-1~45-4は、外部の回路と共にゲージ圧計測用のホイートストンブリッジ回路を構成する。ゲージ圧計測用のホイートストンブリッジ回路により、ダイアフラム43の上面に印加される第2の圧力のゲージ圧を計測することができる。その他の構成は第1の実施例で説明したとおりである。
【0053】
こうして、本実施例では、差圧とゲージ圧を同時に高精度に計測することができる。本実施例では、ゲージ圧計測用の構造を第1の実施例に適用したが、第2~第4の実施例に適用してもよいことは言うまでもない。
【0054】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明した。しかしながら、本発明の技術的範囲はかかる例に限定されない。本発明の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、様々な変形例に想到しうることは明らかであり、これらの変形例についても、当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0055】
1,1a~1d…センサ素子、2,2b…基台、3…流路部材、4,4d…感圧部材、5,5a,5b…蓋部材、6…液量調整部材、7,7c,7d…ダイアフラムベース、10,10a~10d…センサチップ、20,21,30,31,46,47,52,70,71…貫通孔、32,48,53,53a,54,61…溝、40,41,50,50a,51,60,72,73…凹陥部、42,43…ダイアフラム、44-1~44-4,45-1~45-4…歪みゲージ、74,75…バリアダイアフラム、76…液量調整室。