(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】送電装置および無線電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20231212BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231212BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20231212BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20231212BHJP
B60L 53/122 20190101ALI20231212BHJP
B60L 53/20 20190101ALI20231212BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J7/00 301D
H02J7/00 P
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L53/122
B60L53/20
(21)【出願番号】P 2019186618
(22)【出願日】2019-10-10
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】庄司 勇輝
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-104164(JP,A)
【文献】特開2016-067135(JP,A)
【文献】特開2018-078746(JP,A)
【文献】特開2011-087457(JP,A)
【文献】特開2014-121171(JP,A)
【文献】特開2019-017151(JP,A)
【文献】特開2011-083178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00-50/90
H02J 7/00
B60M 7/00
B60L 5/00
B60L 53/122
B60L 53/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端子と第2の端子を有する第1のスイッチング素子と、
前記第1のスイッチング素子の第1の端子と第2の端子の間に接続される第1のキャパシタと、
前記第1のスイッチング素子に直流的に接続され、交流電力を無線送電する送電インダクタと、
第1の端子と第2の端子を有する第2のスイッチング素子と、
前記第2のスイッチング素子の第1の端子と第2の端子の間に接続される第2のキャパシタとを有し、
前記送電インダクタの第1の端子は、前記第1のスイッチング素子の第1の端子に直流的に接続され、
前記送電インダクタの第2の端子は、前記第2のスイッチング素子の第1の端子に直流的に接続され、
前記送電インダクタは、第1の端子と中間タップと第2の端子を有し、
前記送電インダクタの中間タップに直列に接続される直流電源と第1のインダクタを
さらに有することを特徴とする送電装置。
【請求項2】
前記送電インダクタ
の第1の端子は、前記第1のスイッチング素子の第1の端子と直接または導線を介して接続され
、前記送電インダクタの第2の端子は、前記第2のスイッチング素子の第1の端子と直接または導線を介して接続されることを特徴とする請求項
1に記載の送電装置。
【請求項3】
前記第1のスイッチング素子がオフ状態からオン状態に遷移するタイミングでは、前記第1のスイッチング素子の第1の端子と第2の端子の間の電位差が略ゼロであることを特徴とする請求項1
または2に記載の送電装置。
【請求項4】
前記第1のスイッチング素子がオフ状態からオン状態に遷移するタイミングでは、前記第1のスイッチング素子の第1の端子と第2の端子の間の電位差の変化が略ゼロであることを特徴とする請求項1
または2に記載の送電装置。
【請求項5】
前記第1のスイッチング素子の第2の端子と前記第2のスイッチング素子の第2の端子は、それぞれ、基準電位ノードに接続されることを特徴とする請求項
1~4のいずれか1項に記載の送電装置。
【請求項6】
送電装置と、
受電装置とを有する無線電力伝送システムであって、
前記送電装置は、
第1の端子と第2の端子を有する第1のスイッチング素子と、
前記第1のスイッチング素子の第1の端子と第2の端子の間に接続される第1のキャパシタと、
前記第1のスイッチング素子に直流的に接続され、交流電力を無線送電する送電インダクタと、
第1の端子と第2の端子を有する第2のスイッチング素子と、
前記第2のスイッチング素子の第1の端子と第2の端子の間に接続される第2のキャパシタとを有し、
前記送電インダクタの第1の端子は、前記第1のスイッチング素子の第1の端子に直流的に接続され、
前記送電インダクタの第2の端子は、前記第2のスイッチング素子の第1の端子に直流的に接続され、
前記送電インダクタは、第1の端子と中間タップと第2の端子を有し、
前記送電インダクタの中間タップに直列に接続される直流電源と第1のインダクタ
とをさらに有し、
前記受電装置は、
前記交流電力を無線受電する受電インダクタと、
第
3のキャパシタと、
負荷とを有することを特徴とする無線電力伝送システム。
【請求項7】
前記受電装置は、交流電力を直流電力に変換する交流直流変換回路をさらに有することを特徴とする請求項
6に記載の無線電力伝送システム。
【請求項8】
前記受電装置は、前記受電インダクタと前記第
3のキャパシタが、前記第1のスイッチング素子のスイッチング周波数
fにおいて共振していることを特徴とする請求項
6または
7に記載の無線電力伝送システム。
【請求項9】
前記第1のスイッチング素子のスイッチング周波数fは0.5MHz以上6.78MHz以下であることを特徴とする請求項6または7に記載の無線電力伝送システム。
【請求項10】
ロボットアームの旋回可動部、ネットワークカメラ、アクチュエータの平行移動部、及び半導体露光装置のレチクル可動部の少なくとも何れかに搭載されることを特徴とする請求項
6~
8のいずれか1項に記載の無線電力伝送システム。
【請求項11】
車両装置と充電装置間、またはドローンと地上電力源間に搭載されることを特徴とする請求項
6~
8のいずれか1項に記載の無線電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電装置および無線電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パワースイッチングデバイスの高速化にともない、動作周波数が数MHz以上の高周波帯域における無線電力伝送技術が研究開発されている。
【0003】
特許文献1には、送電コイルとともに送電装置側共振回路を構成する送電装置側共振キャパシタと、送電コイルに電気的に接続されて、スイッチ素子、ダイオードおよびキャパシタの並列接続回路で構成されたスイッチ回路とを有し、送電コイルと磁界共鳴によって結合する受電コイルとともに受電装置側共振回路を有する電力伝送システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来有線接続されていた送電システムを無線電力伝送技術によって無線化するにあたり、高効率化、省スペース化および低コスト化等の需要が高まっている。
【0006】
本発明の目的は、無線電力伝送システムにおける上記の課題の少なくとも一つを解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の送電装置は、第1の端子と第2の端子を有する第1のスイッチング素子と、前記第1のスイッチング素子の第1の端子と第2の端子の間に接続される第1のキャパシタと、前記第1のスイッチング素子に直流的に接続され、交流電力を無線送電する送電インダクタと、第1の端子と第2の端子を有する第2のスイッチング素子と、前記第2のスイッチング素子の第1の端子と第2の端子の間に接続される第2のキャパシタとを有し、前記送電インダクタの第1の端子は、前記第1のスイッチング素子の第1の端子に直流的に接続され、前記送電インダクタの第2の端子は、前記第2のスイッチング素子の第1の端子に直流的に接続され、前記送電インダクタは、第1の端子と中間タップと第2の端子を有し、前記送電インダクタの中間タップに直列に接続される直流電源と第1のインダクタをさらに有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、無線電力伝送システムにおける、高効率化、省スペース化および低コスト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】無線電力伝送システムの構成例を示すブロック図である。
【
図3】E級電源を用いた無線電力伝送システムの構成例を示す回路図である。
【
図4】無線電力伝送システムの効率を示すグラフである。
【
図6】無線電力伝送システムの構成例を示す図である。
【
図7】無線電力伝送システムの構成例を示す回路図である。
【
図8】無線電力伝送システムの構成例を示す回路図である。
【
図9】無線電力伝送システムの構成例を示す回路図である。
【
図10】無線電力伝送システムの構成例を示す回路図である。
【
図11】スイッチング制御信号波形とVds波形を示す図である。
【
図13】送電アンテナ及び受電アンテナを示す図である。
【
図14】導線の隣接係数と表皮厚さを示す図である。
【
図16】ソレノイドコイルの巻き数に対する自己インダクタンスを示す図である。
【
図17】システム全体効率とαの関係を求めるためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施形態による無線電力伝送システム100の構成例を示すブロック図である。無線電力伝送システム100は、送電装置107と、受電装置108とを有する。送電装置107は、直流電源101と、直流交流変換回路(DC-AC変換回路)102と、送電アンテナ103を有する。直流電源101は、直流電圧(直流電力)を供給する。DC-AC変換回路102は、直流電源101が供給する直流電圧を交流電圧に変換する。送電アンテナ103は、DC-AC変換回路102により変換された交流電圧(交流電力)を受電装置108に無線送電する。
【0011】
受電装置108は、受電アンテナ104と、交流直流変換回路(AC-DC変換回路)105と、負荷106を有する。受電アンテナ104は、送電アンテナ103から交流電力を受電し、交流電圧が誘起される。AC-DC変換回路105は、受電アンテナ104に誘起される交流電圧を直流電圧に変換し、直流電圧を負荷106に供給する。なお、AC-DC変換回路105は、削除可能である。その場合、受電アンテナ104は、誘起された交流電圧を負荷106に供給する。
【0012】
例えば、DC-AC変換回路102は、直流電源101から供給される直流電力を高速にスイッチング動作するスイッチング素子によって交流電力に変換し、交流電力を送電アンテナ103に供給する。この変換効率を向上させるために、E級電源を用いた無線電力伝送システム100を説明する。
【0013】
E級電源は、スイッチング素子における導通損失やスイッチング損失を低減することで、高効率な高周波スイッチングを可能とする電源方式である。以下に、E級電源の動作原理を説明する。E級電源の定義は、スイッチング素子の端子間電圧をVsとすると、Vs=0[V]かつdVs/dt=0の時に、スイッチング素子がオフ状態からオン状態に遷移する電源である。以下、このスイッチング動作をZVS(Zero Voltage Switching)動作と呼ぶ。DC-AC変換回路102は、ZVS動作によって、直流電力を交流電力に変換することによって、スイッチング損失が少なく、高効率な電力変換が実現可能となる。
【0014】
図2(a)は、E級電源200の構成例を示す回路図であり、
図2(b)は、E級電源200の機能構成例を示すブロック図である。E級電源200は、直流電源201と、チョークコイル202と、スイッチング回路203と、移相回路204と、フィルタ回路205と、負荷206を有する。
【0015】
直流電源201は、直流電源211を有する。チョークコイル202は、インダクタLcを有する。スイッチング回路203は、スイッチ制御信号源212と、スイッチング素子213を有する。移相回路204は、キャパシタC1とインダクタLxを有する。フィルタ回路205は、インダクタLoとキャパシタC2を有する。負荷206は、抵抗RLを有する。
【0016】
直流電源211およびスイッチ制御信号源212の負端子は、基準電位ノード(グランド電位ノード)に接続される。スイッチング素子213は、例えば、電界効果トランジスタ(FET)である。インダクタLcは、直流電源211の正端子とスイッチング素子213のドレイン端子の間に接続される。スイッチ制御信号源212の正端子は、スイッチング素子213のゲート端子に接続され、スイッチング素子213にスイッチ制御信号(パルス信号)を供給する。スイッチング素子213のソース端子は、基準電位ノードに接続される。キャパシタC1は、スイッチング素子213のドレイン端子とソース端子の間に接続される。インダクタLxとインダクタLoとキャパシタC2と抵抗RLの直列接続回路は、キャパシタC1に並列に接続される。
【0017】
直流電源201は、送電装置107の直流電圧を供給する。チョークコイル202は、直流電源201から供給される直流電圧を直流電流に変換し、電流を平滑化する。スイッチング回路203は、直流電源201からチョークコイル202を介して供給される直流電流をスイッチング素子213によりスイッチングし、直流電力を交流電力に変換する。スイッチング素子213は、例えば、高速動作可能であり、かつ導通損失が小さいFETである。移相回路204は、スイッチング回路203をZVS動作させるために、電流と電圧の位相を変化させる役割を有する。主に、移相回路204の中のインダクタLxがその役割を担っている。インダクタLxが、スイッチング周波数に対して、十分なインピーダンスを有することが、E級電源がZVS動作するための必要条件である。フィルタ回路205は、スイッチング回路203から移相回路204を介して供給される交流電力をフィルタリングし、負荷206に供給される交流電圧を帯域制限する。フィルタ回路の通過帯域の狭さ指す、Q(クオリティファクタ:Quality Factor)値QLは、[数1]で与えられる。ここで、rLoはインダクタLoの直流抵抗値を表し、rLxはインダクタLxの直流抵抗値を表す。
【0018】
【数1】
フィルタ回路205の通過帯域が狭くなるほど、負荷206に供給される電圧波形は、スイッチング周波数付近の正弦波に近づく。フィルタ回路205が帯域制限することにより、高調波電力が減少し、ノイズの少ない交流電力が負荷206に供給される。[数1]から明らかなように、インダクタL
oを増加し、キャパシタC
2を減少させるほど、通過帯域の狭さQ
Lが高まり、フィルタ回路205の通過帯域が狭くなる。ただし、フィルタ回路205に使用するインダクタL
oを増加させると、インダクタL
oの直流抵抗も増加するため、E級電源の電力変換効率は劣化する。ここに、E電源設計上、トレードオフの要素が存在する。なお、移相回路204のインダクタL
xのインダクタンスは、フィルタ回路205がスイッチング周波数で共振状態にとき、以下の式で計算される。
【0019】
【0020】
ここで、ωは、スイッチング回路203のスイッチング周波数の角周波数である。定数1.1525は、スイッチ制御信号源212のスイッチ制御信号のデューティー比Dtで決まる定数である。ここでは、デューティー比Dtを0.5とした。[数2]からも明らかなように、L
xはE級電源における負荷抵抗RL、スイッチング周波数、スイッチングデューティー比という多次元のパラメータから算出される、限定的なインダクタンス値である。E級電源装置はL
xが適切に設計されている場合に限り、FETのドレイン-ソース間電圧波形(以下、Vds波形と呼ぶ)がE級動作条件を満たす。L
xが適切に設計され、E級動作条件を満たしているときのスイッチング制御信号波形とVds波形を
図11に示す。Vds波形208は、スイッチング制御信号波形207がオフ状態(0V)からオン状態(5V)に遷移するタイミングで、Vds=0VかつdVds/dt=0となっており、E級動作条件を満たしていることがわかる。
【0021】
図3は、E級電源を用いた無線電力伝送システム100の構成例を示す回路図である。無線電力伝送システム100は、
図1の送電装置107に
図2(a)のE級電源200を用いたものである。
図3の無線電力伝送システム100は、
図1の無線電力伝送システム100に対して、AC-DC変換回路105を削除したものである。
【0022】
直流電源211とインダクタL
cとスイッチ制御信号源212とスイッチング素子213とキャパシタC
1の接続は、
図2(a)のものと同じである。キャパシタC
2とインダクタL
1と抵抗r
L1の直列接続回路は、キャパシタC
1に並列に接続される。
【0023】
インダクタL2は、インダクタL1に対して、結合係数kで結合されている。インダクタL2の一方の端子は、基準電位ノードに接続される。インダクタL2の他方の端子は、抵抗rL2とキャパシタCrと抵抗RLの直列接続回路を介して、規準電位ノードに接続される。
【0024】
直流電源211は、
図1の直流電源101に対応する。スイッチ制御信号源212とスイッチング素子213は、
図1のDC-AC変換回路102に対応する。インダクタL
1は、
図1の送電アンテナ103に対応し、
図2(a)のインダクタL
xおよびL
oを統合したものである。インダクタL
1のインダクタンスは、インダクタL
xおよびL
oのインダクタンスの和である。
【0025】
インダクタL
2は、
図1の受電アンテナ104に対応する。インダクタL
1とインダクタL
2は、結合係数kで互いに結合されている。抵抗r
L1は、インダクタ(送電アンテナ)L
1の実抵抗成分である。抵抗r
L2は、インダクタ(受電アンテナ)L
2の実抵抗成分である。キャパシタCrは、共振キャパシタであり、電力伝送周波数において、インダクタL
2のインダクタンスと共振するキャパシタンスを有する。抵抗RLは、
図1の負荷106に対応する。無線電力伝送システム100の電力伝送効率の理論限界η
MAXは、以下の式で求められる。
【0026】
【0027】
図4は、抵抗r
L1が無線電力伝送システム100の電力伝送効率に与える影響について数値解析した結果を示すグラフである。横軸は抵抗RLを示し、縦軸は無線電力伝送システム100の電力伝送効率を示す。
【0028】
インダクタL1およびL2のインダクタンスは、それぞれ、2μHである。結合係数kは、0.8である。角周波数ωは、2πf=2π×3×106である。抵抗rL2は、0.4Ωである。
【0029】
線401は、抵抗rL1が0.2Ωの場合の抵抗RLに対する電力伝送効率の特性を示す。線402は、抵抗rL1が1Ωの場合の抵抗RLに対する電力伝送効率の特性を示す。線403は、抵抗rL1が3Ωの場合の抵抗RLに対する電力伝送効率の特性を示す。この解析結果より、抵抗rL1が増加すると、特に抵抗RLが大きい領域において、電力伝送効率が劣化することが分かる。無線電力伝送システム100は、抵抗rL1を小さくすることにより、負荷の抵抗RLが変動しても、高い電力伝送効率を得ることができる。
【0030】
無線電力伝送システム100の受電装置108が、電力伝送周波数において共振状態にある場合、送電装置107から見た受電装置108のインピーダンスReqは、以下の式で表現される。
【0031】
【0032】
図5は、
図3の無線電力伝送システム100の等価回路図である。
図5の無線電力伝送システム100は、
図3の無線電力伝送システム100に対して、インダクタL
2と抵抗r
L2とキャパシタC
rと抵抗RLを削除し、抵抗r
L1の代わりに抵抗501を設けたものである。キャパシタC
2とインダクタL
1と抵抗501の直列接続回路は、キャパシタC
1に対して並列に接続される。抵抗501は、
図3の抵抗r
L1の値と上式のインピーダンスR
eqとの和のインピーダンスを有する。
【0033】
図6は、
図5の無線電力伝送システム100の構成要素を
図2(a)および(b)のE級電源200の機能ごとに分解した無線電力伝送システム100の構成例を示す図である。
図6の無線電力伝送システム100は、
図5の無線電力伝送システム100に対して、キャパシタC
2とインダクタL
1と抵抗501の接続回路の代わりに、インダクタL
x,L
oとキャパシタC
2と抵抗r
Lx,r
Loと抵抗601の接続回路が設けられる。インダクタL
xとインダクタL
oとキャパシタC
2と抵抗r
Lxと抵抗r
Loと抵抗601の直列接続回路は、キャパシタC1に対して並列に接続される。抵抗601は、上記のインピーダンスR
eqを有する。抵抗r
Lxは、インダクタL
xの実抵抗成分である。抵抗r
Loは、インダクタL
oの実抵抗成分である。
【0034】
図4に示すように、抵抗r
L1が増加すると、電力伝送効率が劣化する。以下、その理由
について、
図6を参照しながら説明する。無線電力伝送システム100の送電装置107の電力変換効率η
TXは、以下の式で表される。
【0035】
【0036】
抵抗rL1は、抵抗rLxと抵抗rLoの和である。上式から明らかなように、送電装置107の電力変換効率ηTXを向上させるためには、抵抗rL1を小さくする必要がある。そこで、抵抗rL1を最小化することを考える。抵抗rL1を最小化するということは、すなわち、インダクタ(送電アンテナ)L1のインダクタンスを最小化することと同義である。E電源において、先に述べた通り、Lxのインダクタンスは限定的なインダクタンス値であるため、フィルタ回路に使用するインダクタLoを最小化することを考える。負荷206に供給される電圧波形に高調波が含まれることを許容するならば、インダクタLoを最小化することが可能である。よって、E級電源の最大効率は[数6]で示される。
【0037】
【数6】
E級電源がZVS動作するための必要最小限の移相回路204のインダクタL
xのインダクタンスは、インピーダンスR
eqを用いて、以下の式のように書き換えられる。
【0038】
【0039】
したがって、無線電力伝送システム100は、インダクタ(送電アンテナ)L1のインダクタンスを上式のインダクタLxのインダクタンスに近くなるようにすれば、送電装置107の電力変換効率ηTXを最大化することが可能となる。
【0040】
フィルタ回路として機能するインダクタLo(rLo)を最小化することによって、送電回路の電力変換効率の最大化が可能であることを述べた。ここで、フィルタ回路に用いるキャパシタC2について説明する。フィルタ回路205のキャパシタンスC2は、[数8]で計算される。
【0041】
【数8】
本実施形態で説明した原理に従ってL
1を決定する場合、[数8]で計算されるキャパシタC
2は[数9]で示されるように、数学的に発散する。すなわち、スイッチング周波数において無視できる程度のリアクタンス成分しか有していないため、回路から排除することが可能である。すなわち、インダクタ(送電アンテナ)L
1とスイッチング素子213は、直接または導線を介して、直流的に接続できる。
【0042】
【0043】
上記原理によってC
2を排除し、インダクタ(送電アンテナ)L
1とスイッチング素子213を、直接または導線を介して、直流的に接続した無線電力伝送システム100を
図7に示す。E級電源のスイッチング素子213のドレイン端子とソース端子の間の電位差Vsは、直流電源電圧の3~5倍のピーク値になるため、それぞれの部品の耐圧性能はそのピーク電圧以上が求められる。高周波特性が良好でかつ高耐圧なキャパシタは一般に高価で大型であるため、
図7のようにC
2を排除できることは低コスト・省スペースの観点で大変メリットが大きい。また、C
2の実装スペースが不要となることで、スイッチングノード(FETのドレインにつながる配線パターン)を最小化できるため、ノイズ放射の観点で有利となる。
【0044】
ただし、無線電力伝送システム100は、リアクタンスが十分に小さいキャパシタC
2を物理的に有していてもよい。この場合には部品点数は増えるが、無線電力伝送システム100は
図7に示す構成と同等の電力伝送性能を実現できる。ここまで、インダクタL
oとキャパシタンスC
2の関係について述べた。ここから、インダクタL
1とキャパシタC
2の関係について述べる。インダクタL
1のインダクタンスとインダクタL
oのインダクタンスの比を1:αとすると、インダクタL
oのインダクタンスは[数10]で表される。
【0045】
【0046】
[数8]の関係が成り立つとき、フィルタ回路205のキャパシタンスC2は[数11]となる。
【0047】
【0048】
すなわち、フィルタ回路205のキャパシタンスC2のリアクタンスZc2は[数12]となる。
【0049】
【0050】
ここで、ZL1はインダクタL1のリアクタンスである。αが1よりも十分に小さいとき、[数9]と同様に、キャパシタC2のキャパシタンスが増加し、そのリアクタンスZc2は減少する。すなわち、[数9]はαを用いて、[数13]で表される。
【0051】
【0052】
[数13]の条件を満たすとき、フィルタ回路205のキャパシタC2とインダクタLoはフィルタとしての機能をほとんど失っている。本実施形態の趣旨に沿った説明をするならば、フィルタとして帯域制限し、ノイズの少ない交流電力を負荷206に供給することよりも、電力変換効率ηTXの向上を優先する場合には、[数13]に従った設計が最も望ましい。
【0053】
なお、[数13]の条件を満たし、フィルタ回路205の機能を犠牲にしても問題が生じないアプリケーションにおいては、キャパシタC2と電気的に等価になる位置に対して、ACカップリングの目的で、カップリングコンデンサC2を挿入しても良い。なお、[数13]で説明した条件を満たすキャパシタC2の挿入は、本実施形態におけるL1の最小化による電力変換効率ηTXの向上を何ら阻害するものではない。
【0054】
図7は、本実施形態による無線電力伝送システム100の構成例を示す回路図である。
図7の無線電力伝送システム100は、
図3の無線電力伝送システム100に対して、キャパシタC
2を削除し、
図1のAC-DC変換回路105を追加したものである。AC-DC変換回路105は、ダイオード701~704とキャパシタ705を有し、交流電力を直流電力に変換する。
【0055】
無線電力伝送システム100の効率は、送電アンテナ103と受電アンテナ104の間の効率と、直流交流変換効率(交流直流変換効率)の積で表現できる。無線電力伝送システム100は、それぞれの効率を最適化することで、全体の効率を最適化できる。無線電力伝送システム100は、インダクタL1およびL2のサイズ、出力電力、入力電圧、ZVS動作保証等の制約の下、先の2つの効率を最適化するパラメータ(インダクタL1およびL2のインダクタンス、スイッチング周波数、回路定数)を決定する。
【0056】
スイッチング素子213のスイッチング周波数は、例えば、100kHz~15MHzである。
図7の無線電力伝送システム100は、そのスイッチング周波数において、
図3のキャパシタC
2を削除し、サイズおよびコストを低減することができる。以下、
図7の無線電力伝送システム100が
図3の無線電力伝送システム100と異なる点を説明する。
【0057】
図7では、
図3の抵抗r
L1およびr
L2の表記を省略しているが、
図7の無線電力伝送システム100は、実際には、
図3の抵抗r
L1とr
L2を有する。直流電源211とインダクタL
cは、スイッチング素子213のドレイン端子とソース端子の間に直列に接続される。
【0058】
無線電力伝送システム100は、
図1の送電装置107と受電装置108を有する。送電装置107は、直流電源211と、スイッチ制御信号源212と、スイッチング素子213と、インダクタL
cと、キャパシタC
1と、インダクタL
1を有する。受電装置108は、インダクタL
2と、キャパシタC
rと、ダイオード701~704と、キャパシタ705と、抵抗RLを有する。
【0059】
インダクタL1は、第1の端子と第2の端子を有し、交流電力を無線送電する送電インダクタである。インダクタL1の第1の端子と第2の端子は、それぞれ、スイッチング素子213のドレイン端子とソース端子に接続される。スイッチング素子213のドレイン端子とソース端子は、それぞれ、直流的にインダクタL1の第1の端子と第2の端子に接続される。すなわち、スイッチング素子213のドレイン端子とソース端子は、それぞれ、直接または導線を介してインダクタL1の第1の端子と第2の端子に接続される。キャパシタC1は、スイッチング素子213のドレイン端子とソース端子の間に接続される。
【0060】
インダクタL2は、第1の端子と第2の端子を有し、交流電力を無線受電する受電インダクタである。キャパシタCrは、インダクタL2の第1の端子とノードN1の間に接続される。インダクタL2の第2の端子は、ノードN2に接続される。
【0061】
ダイオード701は、アノードがノードN1に接続され、カソードがノードN3に接続される。ダイオード702は、アノードが基準電位ノードに接続され、カソードがノードN1に接続される。ダイオード703は、アノードが基準電位ノードに接続され、カソードがノードN2に接続される。ダイオード704は、アノードがノードN2に接続され、カソードがノードN3に接続される。
【0062】
ダイオード701~704は、全波整流回路であり、ノードN1およびN2の交流電力(交流電圧)を整流し、直流電力(直流電圧)をノードN3および基準電位ノードに出力する。キャパシタ705は、ノードN3と基準電位ノードとの間に接続され、直流電力を平滑化する。抵抗RLは、
図1の負荷106であり、ノードN3と基準電位ノードとの間に接続される。抵抗RLには、直流電力が供給される。
【0063】
無線電力伝送システム100は、E級電源と同様に、スイッチング素子213がオフ状態からオン状態に遷移するタイミングでは、スイッチング素子213のドレイン端子とソース端子の間の電位差Vsが略ゼロである。さらに、スイッチング素子213がオフ状態からオン状態に遷移するタイミングでは、スイッチング素子213のドレイン端子とソース端子の間の電位差の変化(dVs/dt)が略ゼロである。
【0064】
なお、
図7の無線電力伝送システム100は、
図3と同様に、AC-DC変換回路105(ダイオード701~704とキャパシタ705)を削除してもよい。その場合、インダクタL
2の第1の端子は、キャパシタC
rを介して、ノードN3に接続される。インダクタL
2の第2の端子は、基準電位ノードに接続される。抵抗RLは、ノードN3と基準電位ノードとの間に接続される。
【0065】
以上のように、無線電力伝送システム100は、
図3のキャパシタC
2を削除することにより、サイズおよびコストを低減することができる。
【0066】
図12(a)は、
図7の無線電力伝送システム100に対して、具体的な回路定数を設定した回路例を示す。ここで、インダクタL
1とインダクタL
2は結合係数0.3で結合している。また、スイッチング素子213のスイッチング周波数は1MHzとした。
【0067】
図12(b)は、
図12(a)の無線電力伝送システム100について回路シミュレーションの結果である。
図12(b)の無線電力伝送システム100において、負荷抵抗RLは約13W(8V・1.6A)の電力を消費している。波形801はスイッチ制御信号源212が出力するスイッチング素子213のスイッチング信号である。波形802はスイッチング素子213のドレイン端子とソース端子間電圧Vsである。波形802はスイッチング素子213がオフ状態からオン状態に遷移するタイミングでは、スイッチング素子213のドレイン端子とソース端子の間の電位差Vsが略ゼロである。さらに、スイッチング素子213がオフ状態からオン状態に遷移するタイミングでは、スイッチング素子213のドレイン端子とソース端子の間の電位差の変化(dVs/dt)が略ゼロである。したがって、本シミュレーションによって、キャパシタC
2を排除した無線電力伝送システム100について、ZVS動作を達成する高効率なE級電源の実現性が示された。これまで述べた手段によって、ZVS動作条件を満たしつつ、L
1を最適化(r
L1を最小とする)することで、無線電力伝送システム100の送電部は最大限の高効率化が図れる。
【0068】
ここまで、無線電力伝送システム100の送電部の最大効率化の観点で述べた。しかしながら、無線電力伝送システム100のシステム全体効率ηALLの最大化を達成しようとするならば、受電アンテナ104による損失は無視できるものではない。
【0069】
無線電力伝送システム100のシステム全体効率η
ALLとαの関係について考察する。ここで、送電アンテナ103及び受電アンテナ104の代表例として、
図13に示す形態のソレノイドコイルを想定する。ここで、Nはソレノイドコイルの巻き数である。r
Rはソレノイドコイルの半径である。hはソレノイドコイルの高さ(厚さ)である。ソレノイドコイルの巻き数Nや半径r
Rの変化に対する、等価直列抵抗と自己インダクタンスを求めるために、一般的に知られている代表的な解析式を導入する。ソレノイドコイルの自己インダクタンスは[数14]で表される。
【0070】
【0071】
ここで、KNは長岡係数であり、μ0は真空の透磁率である。長岡係数KNは[数15]で表される。
【0072】
【0073】
ここで、kNは[数16]で与えられる。
【0074】
【0075】
また、関数K(kN)と関数E(kN)はそれぞれkNについての、第一種及び第二種完全楕円積分であり、それぞれ[数17]と[数18]で与えられる。
【0076】
【0077】
【0078】
次に、ソレノイドコイルの等価直列抵抗を求める解析式を導入する。ソレノイドコイルに流す電流の周波数fの増加に伴い、導線間の近接効果や表皮効果によって等価直列抵抗が増加することが知られている。この等価直列抵抗の増加率をFR、ソレノイドコイルの直流抵抗をRwdcとすると、ソレノイドコイルの等価直列抵抗は[数19]で与えられる。
【0079】
【0080】
等価直列抵抗の増加率FRを表現する解析式として、Dowell's方程式を用いる。Dowell's方程式は[数20]で表される。
【0081】
【0082】
ここで、Nlはソレノイドコイルの半径方向の巻き線の積層数である。Aは[数21]で与えられる。
【0083】
【0084】
dは導線径である。pは導線の隣接係数である。δ
wは導線を流れる電流の周波数fに対応した表皮厚さであり、[数22]で与えられる。なお、導線の隣接係数pと表皮厚さδ
w等の物理的イメージを
図14に示す。
【0085】
【0086】
ρwは導線の抵抗率である。導線の巻き線長さをlwとすると、ソレノイドコイルの直流抵抗Rwdcは[数23]で与えられる。
【0087】
【0088】
[数14]~[数23]に具体的な数値を設定し、考察を進める。各変数に設定した数値を
図15に示す。ここでは、実用的なアンテナ半径として、50mmを設定した。また、スイッチング周波数f(=導線を流れる電流の周波数)として、0.5MHz、1.0MHz、2.5MHz、6.78MHzを設定した。
【0089】
図16(a)は、ソレノイドコイルの巻き数Nの変化に対する自己インダクタンスを[数14]によって求めた結果である。
図16(b)は、ソレノイドコイルの巻き数Nの変化に対する等価直列抵抗を、スイッチング周波数fをパラメータとして、[数19]によって求めた結果である。
【0090】
無線電力伝送システム100の送電アンテナ103と受電アンテナ104の自己共振周波数はスイッチング周波数fよりも十分に高い必要がある。本実施形態において、最大のスイッチング周波数fは6.78MHzである。6.78MHzのスイッチング周波数fで無線電力伝送システム100を動作させるための条件として、送電アンテナ103と受電アンテナ104の自己共振周波数下限値を10MHzと定義する。ソレノイドコイルに現実的に発生しうる寄生容量を約25pFとすると、自己共振周波数が10MHzになるソレノイドコイルの自己インダクタンスは、[数24]から約10uHと求められる。
【0091】
【0092】
[表1]の条件下で設計されたソレノイドコイルが約10uHのインダクタンスを有するのは、
図16(a)の結果から、約7回巻きの時であることが分かる。したがって、以後の考察では、巻き数の上限Nmaxを7回巻きに制限する。
【0093】
図17は、無線電力伝送システム100のシステム全体効率とαの関係を求めるための解析フローチャートである。なお、無線電力伝送システム100の負荷106は10Ω抵抗とした。また、送電アンテナ103と受電アンテナ104の結合係数は0.5とした。
【0094】
図18(a)は、
図17の解析フローに従って、送電アンテナ巻き数を7回巻き、スイッチング周波数fを2.5MHzに固定して解析を実施した一例である。
図18(a)と
図18(b)において、図の左方向に移動する方向で、受電アンテナ104の巻き数Nrxは増加している。
【0095】
図18(a)の結果から、送電装置107の電力変換効率η
TXはαの低下とともに単調増加する。一方で、受電装置108の電力変換効率η
RXはαの低下とともに単調減少する。無線電力伝送システム100のシステム全体効率η
ALLは、受電装置108の電力変換効率η
RXと送電装置107の電力変換効率η
TXの積で表される。したがって、あるαにおいて、無線電力伝送システム100のシステム全体効率η
ALLは最大値を取る。なお、無線電力伝送システム100のシステム全体効率η
ALLは[数3]によって算出される。
【0096】
図19(a)はスイッチング周波数fを0.5MHzとし、送電アンテナ103と受電アンテナ104の巻き数を1~7回巻きまで可変して、無線電力伝送システム100のシステム全体効率とαの関係を解析した結果である。図中のマーカがある位置で、無線電力伝送システム100のシステム全体効率η
ALLは最大値を取る。同様に、
図19(b)は、前述の条件下において、無線電力伝送システム100のシステム全体効率η
ALLとフィルタ回路205の通過帯域の狭さQ
Lの関係を解析した結果である。これらの結果から、スイッチング周波数fを0.5MHzとした無線電力伝送システム100は、α<0.13(Q
L<1.33)として設計すれば、複数のアンテナ条件下においてシステム全体効率η
ALLを最大とすることができる。
【0097】
図20(a)は、スイッチング周波数fを1.0MHzとし、送電アンテナ103と受電アンテナ104の巻き数を1~7回巻きまで可変して、無線電力伝送システム100のシステム全体効率η
ALLとαの関係を解析した結果である。図中のマーカがある位置で、無線電力伝送システム100のシステム全体効率は最大値を取る。同様に、
図20(b)は、前述の条件下において、無線電力伝送システム100のシステム全体効率η
ALLとフィルタ回路205の通過帯域の狭さQ
Lの関係を解析した結果である。これらの結果から、スイッチング周波数fを1.0MHzとした無線電力伝送システム100は、α<0.32(Q
L<1.69)として設計すれば、複数のアンテナ条件下においてシステム全体効率η
ALLを最大とすることができる。
【0098】
図21(a)は、スイッチング周波数fを2.5MHzとし、送電アンテナ103と受電アンテナ104の巻き数を1~7回巻きまで可変して、無線電力伝送システム100のシステム全体効率とαの関係を解析した結果である。図中のマーカがある位置で、無線電力伝送システム100のシステム全体効率η
ALLは最大値を取る。同様に、
図21(b)は、前述の条件下において、無線電力伝送システム100のシステム全体効率η
ALLとフィルタ回路205の通過帯域の狭さQ
Lの関係を解析した結果である。これらの結果から、スイッチング周波数fを2.5MHzとした無線電力伝送システム100は、α<0.49(Q
L<2.24)として設計すれば、複数のアンテナ条件下においてシステム全体効率η
ALLを最大とすることができる。
【0099】
図22(a)は、スイッチング周波数fを6.78MHzとし、送電アンテナ103と受電アンテナ104の巻き数を1~7回巻きまで可変して、無線電力伝送システム100のシステム全体効率η
ALLとαの関係を解析した結果である。図中のマーカがある位置で、無線電力伝送システム100のシステム全体効率η
ALLは最大値を取る。同様に、
図22(b)は、前述の条件下において、無線電力伝送システム100のシステム全体効率η
ALLとフィルタ回路205の通過帯域の狭さQ
Lの関係を解析した結果である。これらの結果から、スイッチング周波数fを6.78MHzとした無線電力伝送システム100は、α<0.62(Q
L<3.03)として設計すれば、複数のアンテナ条件下においてシステム全体効率η
ALLを最大とすることができる。
【0100】
図8は、他の実施形態による無線電力伝送システム100の構成例を示す回路図である。
図8の無線電力伝送システム100は、
図7の無線電力伝送システム100に対して、インダクタL
cの代わりに、インダクタL
caおよびL
cbを設けたものである。また、
図8の無線電力伝送システム100は、
図7の無線電力伝送システム100に対して、スイッチ制御信号源212の代わりに、スイッチ制御信号源212aおよび212bを設けたものである。また、
図8の無線電力伝送システム100は、
図7の無線電力伝送システム100に対して、スイッチング素子213の代わりに、スイッチング素子213aおよび213bを設けたものである。また、
図8の無線電力伝送システム100は、
図7の無線電力伝送システム100に対して、キャパシタC
1の代わりに、キャパシタC
1aおよびC
1bを設けたものである。本実施形態は一般にプッシュプル回路構成と呼ばれる。
図8の無線電力伝送システム100は、
図7の無線電力伝送システム100に対して、同一のDC入力電圧・負荷時に、4倍の電力を出力することが可能となる。また、偶数次高調波ひずみを抑制する効果も得られる。以下、
図8の無線電力伝送システム100が
図7の無線電力伝送システム100と異なる点を説明する。
【0101】
直流電源211の負端子は、基準電位ノードに接続される。スイッチ制御信号源212aおよび212bの負端子は、基準電位ノードに接続される。スイッチング素子213aおよび213bは、それぞれ、例えばFETである。
【0102】
インダクタLcaは、直流電源211の正端子とスイッチング素子213aのドレイン端子との間に接続される。スイッチ制御信号源212aは、スイッチング素子213aのゲート端子に接続され、スイッチング素子213aにスイッチ制御信号(パルス信号)を供給する。スイッチング素子213aのソース端子は、基準電位ノードに接続される。キャパシタC1aは、スイッチング素子213aのドレイン端子とソース端子との間に接続される。インダクタL1の第1の端子は、スイッチング素子213aのドレイン端子に直流的に接続される。
【0103】
インダクタLcbは、直流電源211の正端子とスイッチング素子213bのドレイン端子との間に接続される。スイッチ制御信号源212bは、スイッチング素子213bのゲート端子に接続され、スイッチング素子213bにスイッチ制御信号(パルス信号)を供給する。スイッチ制御信号源212bが供給するスイッチ制御信号は、スイッチ制御信号源212aが供給するスイッチ制御信号とは位相が異なる。スイッチング素子213bのソース端子は、基準電位ノードに接続される。キャパシタC1bは、スイッチング素子213bのドレイン端子とソース端子との間に接続される。インダクタL1の第2の端子は、スイッチング素子213bのドレイン端子に直流的に接続される。
【0104】
スイッチング素子213aおよび123bは、交互にオンすることにより、直流電力を交流電力に変換し、交流電力をインダクタL1に供給する。
【0105】
スイッチング素子213aのドレイン端子は、直流的にインダクタL
1の第1の端子に接続される。スイッチング素子213bのドレイン端子は、直流的にインダクタL
1の第2の端子に接続される。無線電力伝送システム100は、
図3のキャパシタC
2を削除することにより、サイズおよびコストを低減することができる。
【0106】
図9は、さらに他の実施形態による無線電力伝送システム100の構成例を示す回路図である。
図9の無線電力伝送システム100は、
図8の無線電力伝送システム100に対して、インダクタL
caを削除したものである。スイッチング素子213aのドレイン端子は、インダクタL
caを介して、直流電源211の正端子に接続されない。直流電源211とインダクタL
cbは、スイッチング素子213bのドレイン端子に直列に接続される。
図9の無線電力伝送システム100は、
図8の無線電力伝送システム100に対して、同様の動作を行い、同様の効果を得ることができる。
【0107】
図10は、さらに他の実施形態による無線電力伝送システム100の構成例を示す回路図である。
図10の無線電力伝送システム100は、
図8の無線電力伝送システム100に対して、インダクタL
ca,L
cbの代わりに、インダクタL
cを設けたものである。以下、
図10の無線電力伝送システム100が
図8の無線電力伝送システム100と異なる点を説明する。
【0108】
インダクタL
1は、第1の端子と中間タップと第2の端子を有する。インダクタL
1の第1の端子は、スイッチング素子213aのドレイン端子に接続される。インダクタL
1の第2の端子は、スイッチング素子213bのドレイン端子に接続される。インダクタL
1の中間タップは、インダクタLcを介して、直流電源211の正端子に接続される。インダクタL
cと直流電源211は、インダクタL
1の中間タップに直列に接続される。直流電源211の負端子は、基準電位ノードに接続される。
図10の無線電力伝送システム100は、
図8の無線電力伝送システム100に対して、同様の動作を行い、同様の効果を得ることができる。
【0109】
図8に示す無線電力伝送システム100において使用されるインダクタL
ca,L
cbは一般に大型部品であり、これを1つに統一できることは、小型化の観点で非常に有利である。
【0110】
なお、本実施形態に記載の無線電力伝送システム100は、ロボットアームの旋回可動部の非接触化部に搭載してもよい。また、本実施形態に記載の無線電力伝送システム100は、ネットワークカメラの旋回可動部の非接触化部に搭載してもよい。また、本実施形態に記載の無線電力伝送システム100は、アクチュエータの平行移動部の非接触化部に搭載してもよい。また、本実施形態に記載の無線電力伝送システム100は、半導体露光装置のレチクル可動部の非接触化部に搭載してもよい。また、本実施形態に記載の無線電力伝送システム100は、車両装置と充電装置間の非接触化部に搭載してもよい。また、本実施形態に記載の無線電力伝送システム100は、ドローンと地上電力源間の非接触化部に搭載してもよい。
【0111】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0112】
100 無線電力伝送システム、107 送電装置、108 受電装置、211 直流電源、212 スイッチ制御信号源、213 スイッチング素子