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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/092 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
A61M25/092 500
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019193171
(22)【出願日】2019-10-24
(65)【公開番号】P2021065436
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【弁理士】
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】加藤 佑軌
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-076480(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0204197(US,A1)
【文献】特開2012-115679(JP,A)
【文献】特表平05-507212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/092
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルであって、
アウターシャフトと、
前記アウターシャフトの内側に形成されたインナールーメンと、
前記アウターシャフトの内側かつ前記インナールーメンの外側に収容された操作ワイヤと、
前記アウターシャフトの先端部に配置され、前記操作ワイヤの先端側を保持する保持部と、を備え、
前記操作ワイヤは、
第1操作ワイヤと、
前記インナールーメンを挟んで、前記第1操作ワイヤと対向する位置に配置されている第2操作ワイヤと、を含み、
前記第1操作ワイヤと前記第2操作ワイヤとは、いずれも、先端側の横断面における長手方向の長さと、基端側の横断面における長手方向の長さとが相違しており、
前記第1操作ワイヤと前記第2操作ワイヤとは、先端側の横断面における長手方向の長さが互いに相違しており、
前記保持部は、前記アウターシャフトの先端部において、前記第1操作ワイヤの先端側と、前記第2操作ワイヤの先端側とを保持している、カテーテル。
【請求項2】
請求項1に記載のカテーテルであって、
前記操作ワイヤは、略円柱形状の細径部と、前記細径部よりも径が太い略円柱形状の太径部と、前記細径部と前記太径部との間に配置された縮径部と、を備える、カテーテル。
【請求項3】
請求項2に記載のカテーテルであって、
前記操作ワイヤは、前記細径部が前記太径部よりも先端側に配置され、前記細径部の一部分が前記保持部によって保持されている、カテーテル。
【請求項4】
請求項1に記載のカテーテルであって、
前記操作ワイヤは、偏平形状の偏平部と、略円柱形状の太径部と、前記偏平部と前記太径部との間に配置された中間部と、を備える、カテーテル。
【請求項5】
請求項4に記載のカテーテルであって、
前記操作ワイヤは、前記偏平部が前記太径部よりも先端側に配置され、前記偏平部の一部分が前記保持部によって保持されている、カテーテル。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のカテーテルであって、さらに、
前記アウターシャフトの内側かつ前記インナールーメンの外側に形成され、前記第1操作ワイヤを収容した第1ワイヤ用インナールーメンと、
前記アウターシャフトの内側かつ前記インナールーメンの外側において、前記インナールーメンを挟んで、前記第1ワイヤ用インナールーメンと対向する位置に形成され、前記第2操作ワイヤを収容した第2ワイヤ用インナールーメンと、
を備える、カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
血管系、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺及び生殖器官といった、生体管腔内に挿入して使用されるカテーテルが知られている。このようなカテーテルにおいて、カテーテルの先端側を生体組織の近傍に位置させるために、カテーテルを長手方向に交差する方向に湾曲させる技術が知られている。例えば、特許文献1には、カテーテルの先端側において、梁の側上にスペーサーを配置することによって、カテーテルを湾曲させることが開示されている。例えば、特許文献2には、プルワイヤを取り囲むプルワイヤ圧縮コイルを用いることによって、カテーテルを湾曲させることが開示されている。例えば、特許文献3及び特許文献4には、ワイヤ(または操作線)を用いてカテーテルを湾曲させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-097389号公報
【文献】特表2017-518122号公報
【文献】特開2016-002345号公報
【文献】特開2013-208150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術では、スペーサーが配置されている部分についてはカテーテルを湾曲させることができず(すなわち直線形状となり)、使い勝手に劣るという課題があった。また、特許文献2に記載の技術では、カテーテルを構成する部品の点数が多くなり、カテーテルの製造にかかる工数が多くなるという課題があった。さらに、特許文献3及び特許文献4に記載の技術では、カテーテルが意図しない位置で湾曲する場合があり、使い勝手に劣るという課題があった。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、湾曲可能なカテーテルにおいて、使い勝手の向上と、製造工数の低減とを図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、カテーテルが提供される。このカテーテルは、アウターシャフトと、前記アウターシャフトの内側に形成されたインナールーメンと、前記アウターシャフトの内側かつ前記インナールーメンの外側に収容された操作ワイヤと、前記アウターシャフトの先端部に配置され、前記操作ワイヤの先端側を保持する保持部と、を備え、前記操作ワイヤは、先端側の横断面における長手方向の長さと、基端側の横断面における長手方向の長さとが相違している。
【0008】
この構成によれば、カテーテルは、アウターシャフトの内側かつインナールーメンの外側において保持された操作ワイヤを備える。このため、操作ワイヤの基端側を引っ張ることによる操作ワイヤの湾曲に伴って、カテーテルを湾曲させることができる。このため、例えばスペーサーを用いてカテーテルを湾曲させる構成と比較して、カテーテルの先端側の全体を滑らかに湾曲させることができ、使い勝手を向上できる。また、例えばプルワイヤ圧縮コイルを用いてカテーテルを湾曲させる構成と比較して、カテーテルの製造工数を低減できる。また、操作ワイヤは、先端側の横断面における長手方向の長さと、基端側の横断面における長手方向の長さとが相違しているため、先端側と基端側との間で操作ワイヤの剛性を変える(すなわち操作ワイヤに剛性ギャップを設ける)ことができる。このため、操作ワイヤの剛性ギャップが設けられた箇所を基点としてカテーテルを湾曲させることができ、使い勝手を向上できる。これらの結果、本構成のカテーテルによれば、湾曲可能なカテーテルにおいて、使い勝手の向上と、製造工数の低減とを図ることができる。
【0009】
(2)上記形態のカテーテルにおいて、前記操作ワイヤは、略円柱形状の細径部と、前記細径部よりも径が太い略円柱形状の太径部と、前記細径部と前記太径部との間に配置された縮径部と、を備えてもよい。
この構成によれば、操作ワイヤは、略円柱形状の細径部と、細径部よりも径が太い略円柱形状の太径部と、細径部と太径部との間に配置された縮径部と、を備えるため、センタレスコアによって操作ワイヤを構成できる。また、操作ワイヤは、細径部と太径部との間に配置された縮径部を有するため、縮径部によって操作ワイヤの剛性を徐変させることができ、操作ワイヤの破断や損傷を抑制できる。
【0010】
(3)上記形態のカテーテルにおいて、前記操作ワイヤは、前記細径部が前記太径部よりも先端側に配置され、前記細径部の一部分が前記保持部によって保持されていてもよい。
この構成によれば、操作ワイヤは、細径部が太径部よりも先端側に配置されているため、カテーテルの先端側を、基端側と比較して柔軟に構成でき、カテーテルの安全性を向上できる。
【0011】
(4)上記形態のカテーテルにおいて、前記操作ワイヤは、偏平形状の偏平部と、略円柱形状の太径部と、前記偏平部と前記太径部との間に配置された中間部と、を備えてもよい。
この構成によれば、操作ワイヤは、偏平形状の偏平部と、略円柱形状の太径部と、偏平部と太径部との間に配置された中間部と、を備えるため、例えば略円柱形状の部材の一方をプレス加工することにより、偏平部と中間部とを容易に形成できる。また、操作ワイヤは、偏平形状の偏平部を有するため、操作ワイヤが引っ張られた際のカテーテルの湾曲方向を、偏平形状の短半径の側とできる。さらに、操作ワイヤは、偏平部と太径部との間に配置された中間部を有するため、中間部によって操作ワイヤの剛性を徐変させることができ、操作ワイヤの破断や損傷を抑制できる。
【0012】
(5)上記形態のカテーテルにおいて、前記操作ワイヤは、前記偏平部が前記太径部よりも先端側に配置され、前記偏平部の一部分が前記保持部によって保持されていてもよい。
この構成によれば、操作ワイヤは、偏平部が太径部よりも先端側に配置されているため、カテーテルの先端側を、基端側と比較して柔軟に構成でき、カテーテルの安全性を向上できる。
【0013】
(6)上記形態のカテーテルにおいて、前記操作ワイヤは、第1操作ワイヤと、前記インナールーメンを挟んで、前記第1操作ワイヤと対向する位置に配置されている第2操作ワイヤと、を含み、前記保持部は、前記アウターシャフトの先端部において、前記第1操作ワイヤの先端側と、前記第2操作ワイヤの先端側とを保持していてもよい。
この構成によれば、操作ワイヤは、第1操作ワイヤと、インナールーメンを挟んで、第1操作ワイヤと対向する位置に配置されている第2操作ワイヤとを含んでいるため、第1操作ワイヤの操作によりカテーテルが湾曲する方向と、第2操作ワイヤの操作によりカテーテルが湾曲する方向とを変化させることができる。このため、カテーテルの使い勝手をより向上できる。
【0014】
(7)上記形態のカテーテルにおいて、前記第1操作ワイヤと前記第2操作ワイヤとは、先端側の横断面における長手方向の長さが相違してもよい。
この構成によれば、第1操作ワイヤと第2操作ワイヤとは、先端側の横断面における長手方向の長さが相違するため、第1操作ワイヤの操作によりカテーテルが湾曲する方向及び曲率と、第2操作ワイヤの操作によりカテーテルが湾曲する方向及び曲率とを変化させることができる。このため、カテーテルの使い勝手をより向上できる。
【0015】
(8)上記形態のカテーテルでは、さらに、前記アウターシャフトの内側かつ前記インナールーメンの外側に形成され、前記第1操作ワイヤを収容した第1ワイヤ用インナールーメンと、前記アウターシャフトの内側かつ前記インナールーメンの外側において、前記インナールーメンを挟んで、前記第1ワイヤ用インナールーメンと対向する位置に形成され、前記第2操作ワイヤを収容した第2ワイヤ用インナールーメンと、を備えていてもよい。
この構成によれば、第1操作ワイヤは第1ワイヤ用インナールーメンに収容され、第2操作ワイヤは第2ワイヤ用インナールーメンに収容されているため、アウターシャフトの内側における第1及び第2操作ワイヤの干渉を抑制できる。
【0016】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、カテーテル、カテーテル用の本体部、カテーテルや本体部の製造方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態のカテーテルの構成を例示した説明図である。
図2】カテーテルの先端側の断面構成を例示した説明図である。
図3図1及び図2のB1-B1線における断面構成を例示した説明図である。
図4図1及び図2のB2-B2線における断面構成を例示した説明図である。
図5】先端を湾曲させたカテーテルを例示した説明図である。
図6】第2実施形態のカテーテルの先端側の断面構成を例示した説明図である。
図7】第3実施形態のカテーテルの先端側の断面構成を例示した説明図である。
図8】第4実施形態のカテーテルのB2-B2線における断面構成を例示した説明図である。
図9】第5実施形態のカテーテルの先端側の断面構成を例示した説明図である。
図10】第6実施形態のカテーテルのB2-B2線における断面構成を例示した説明図である。
図11】第7実施形態のカテーテルの先端側の断面構成を例示した説明図である。
図12】第7実施形態のカテーテルのC1-C1線(図11)における断面構成を例示した説明図である。
図13】第7実施形態のカテーテルのC2-C2線(図11)における断面構成を例示した説明図である。
図14】第8実施形態のカテーテルの先端側の断面構成を例示した説明図である。
図15】第9実施形態のカテーテルの先端側の断面構成を例示した説明図である。
図16】第10実施形態のカテーテルのB2-B2線における断面構成を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態のカテーテル1の構成を例示した説明図である。カテーテル1は、血管系、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺及び生殖器官といった生体管腔内に挿入され、生体管腔内を診断又は治療するために使用される。カテーテル1は、チューブ状(管状)の本体部10と、本体部10の基端側に接続されたコネクタ90とを備えている。
【0019】
図1では、カテーテル1の中心を通る軸を軸線O(一点鎖線)で表す。図1の例では、軸線Oは、本体部10及びコネクタ90の各中心を通る軸と一致している。しかし、軸線Oは、本体部10及びコネクタ90の各中心軸と相違していてもよい。図1には、相互に直交するXYZ軸を図示する。X軸はカテーテル1の長手方向(長さ方向)に対応し、Y軸はカテーテル1の幅方向に対応し、Z軸はカテーテル1の高さ方向に対応する。図1の左側(-X軸方向)をカテーテル1及び各構成部材の「先端側」と呼び、図1の右側(+X軸方向)をカテーテル1及び各構成部材の「基端側」と呼ぶ。カテーテル1及び各構成部材について、先端側に位置する端部を「先端」と呼び、先端及びその近傍を「先端部」と呼ぶ。また、基端側に位置する端部を「基端」と呼び、基端及びその近傍を「基端部」と呼ぶ。先端側は生体内部へ挿入され、基端側は医師等の術者により操作される。これらの点は、図1以降においても共通する。
【0020】
図2は、カテーテル1の先端側の断面構成を例示した説明図である。図2には、カテーテル1の本体部10の先端側の一部分A(図1:破線枠)の断面構成を図示している。図3は、図1及び図2のB1-B1線における断面構成を例示した説明図である。図4は、図1及び図2のB2-B2線における断面構成を例示した説明図である。図2図4を用いて、カテーテル1の本体部10の構成について説明する。
【0021】
図2に示すように、本体部10は、アウターシャフト11と、インナーシャフト12と、第1ワイヤ用インナーシャフト13と、第2ワイヤ用インナーシャフト14と、第1操作ワイヤ30と、第2操作ワイヤ40と、保持部50と、封止部材111とを備える。アウターシャフト11は、カテーテル1の長手方向(軸線O)に沿って延びる長尺状の部材である。アウターシャフト11は、先端部と基端部とにそれぞれ開口が形成され、内側に両開口を連通する内腔(アウタールーメン11L)が形成された中空の略円筒形状である。アウターシャフト11の外径及び長さは任意に決定できる。
【0022】
インナーシャフト12は、アウターシャフト11と同様に、カテーテル1の長手方向に沿って延びる長尺状の部材である。インナーシャフト12は、先端部と基端部とにそれぞれ開口が形成され、内側に両開口を連通する内腔(インナールーメン12L)が形成された中空の略円筒形状である。図1図4に示すように、インナーシャフト12は、アウターシャフト11の内側、すなわちアウタールーメン11Lに配置されている。インナーシャフト12の外径は、アウターシャフト11の外径よりも小さい。インナーシャフト12の長さは、アウターシャフト11の長さと略同一である。
【0023】
第1ワイヤ用インナーシャフト13は、アウターシャフト11と同様に、カテーテル1の長手方向に沿って延びる長尺状の部材である。第1ワイヤ用インナーシャフト13は、先端部と基端部とにそれぞれ開口が形成され、内側に両開口を連通する内腔(第1ワイヤ用インナールーメン13L)が形成された中空の略円筒形状である。図1図4に示すように、第1ワイヤ用インナーシャフト13は、アウターシャフト11の内側かつインナーシャフト12の外側において、インナーシャフト12と並んで配置されている。換言すれば、第1ワイヤ用インナーシャフト13は、アウターシャフト11の内側かつインナールーメン12Lの外側において、インナールーメン12Lと並んで形成されている。第1ワイヤ用インナーシャフト13の外径は、アウターシャフト11及びインナーシャフト12の各外径よりも小さい。図2に示すように、第1ワイヤ用インナーシャフト13の長さは、アウターシャフト11の長さよりも短い。
【0024】
第2ワイヤ用インナーシャフト14は、アウターシャフト11と同様に、カテーテル1の長手方向に沿って延びる長尺状の部材である。第2ワイヤ用インナーシャフト14は、先端部と基端部とにそれぞれ開口が形成され、内側に両開口を連通する内腔(第2ワイヤ用インナールーメン14L)が形成された中空の略円筒形状である。図1図4に示すように、第2ワイヤ用インナーシャフト14は、アウターシャフト11の内側かつインナーシャフト12の外側において、インナーシャフト12を挟んで第1ワイヤ用インナーシャフト13と対向する位置に配置されている。換言すれば、第2ワイヤ用インナーシャフト14は、アウターシャフト11の内側かつインナールーメン12Lの外側において、インナールーメン12Lを挟んで、ワイヤ用インナールーメン13Lと対向する位置に形成されている。第2ワイヤ用インナーシャフト14の外径は、アウターシャフト11、インナーシャフト12、及び第1ワイヤ用インナーシャフト13の各外径よりも小さい。図2に示すように、第2ワイヤ用インナーシャフト14の長さは、アウターシャフト11の長さよりも短い。
【0025】
第1操作ワイヤ30は、カテーテル1の長手方向に沿って延びる中実かつ長尺状の部材である。第1操作ワイヤ30は、細径部31と、縮径部32と、太径部33とを有している。細径部31は、第1操作ワイヤ30の先端側に設けられている。細径部31は、略一定の外径を有する、中実の略円柱形状の部分である。細径部31の横断面形状は図3に示すように略円形状であるため、細径部31の横断面における長手方向の長さは、円の外径D1である(図2)。縮径部32は、細径部31と太径部33との間に設けられている。縮径部32は、基端側から先端側に向かって外径が徐々に縮径した、中実の略円錐台形状の部分である。太径部33は、第1操作ワイヤ30の基端側に設けられている。太径部33は、略一定の外径を有する、中実の略円柱形状の部分である。太径部33の横断面形状は図4に示すように略円形状であるため、太径部33の横断面における長手方向の長さは、円の外径D11である(図2)。
【0026】
ここで、太径部33の外径D11は、細径部31の外径D1よりも大きい。換言すれば、太径部33は、細径部31よりも径が太い。また、縮径部32は、基端の外径が太径部33の外径D11と略等しく、先端の外径が細径部31の外径D1と略等しい。外径D1,D11は、第1ワイヤ用インナーシャフト13の内径よりも小さい限りにおいて任意に決定できる。このような第1操作ワイヤ30は、例えば、略一定の外径D11を有する長尺の略円柱形状の部材を準備し、この部材の先端側の一部分を切削して細径部31と縮径部32とを形成することで作製できる。このようにして作製された第1操作ワイヤ30は、センタレスコアともいう。
【0027】
第1操作ワイヤ30は、アウターシャフト11の内側かつインナールーメン12Lの外側、より具体的には、第1ワイヤ用インナーシャフト13の内側に形成された第1ワイヤ用インナールーメン13Lに収容されている。図2及び図3に示すように、第1操作ワイヤ30の先端部は、保持部50によって、アウターシャフト11、インナーシャフト12、及び第1ワイヤ用インナーシャフト13と保持されている。また、第1操作ワイヤ30の基端部は、後述する第1巻取部92Aに巻回され、固定されている(図2)。
【0028】
第2操作ワイヤ40は、カテーテル1の長手方向に沿って延びる中実かつ長尺状の部材である。第2操作ワイヤ40は、細径部41と、縮径部42と、太径部43とを有している。細径部41は、第2操作ワイヤ40の先端側に設けられている。細径部41は、略一定の外径を有する、中実の略円柱形状の部分である。細径部41の横断面形状は図3に示すように略円形状であるため、細径部41の横断面における長手方向の長さは、円の外径D2である(図2)。縮径部42は、細径部41と太径部43との間に設けられている。縮径部42は、基端側から先端側に向かって外径が徐々に縮径した、中実の略円錐台形状の部分である。太径部43は、第2操作ワイヤ40の基端側に設けられている。太径部43は、略一定の外径を有する、中実の略円柱形状の部分である。太径部43の横断面形状は図4に示すように略円形状であるため、太径部43の横断面における長手方向の長さは、円の外径D21である(図2)。
【0029】
ここで、太径部43の外径D21は、細径部41の外径D2よりも大きい。換言すれば、太径部43は、細径部41よりも径が太い。また、縮径部42は、基端の外径が太径部43の外径D21と略等しく、先端の外径が細径部41の外径D2と略等しい。外径D2,D21は、第2ワイヤ用インナーシャフト14の内径よりも小さい限りにおいて任意に決定できる。図示の例では、細径部41の外径D2は細径部31の外径D1よりも小さく、太径部43の外径D21は太径部33の外径D11よりも小さい。しかし、外径D2,D1、及び、外径D21,D11はそれぞれ略同一でもよく、逆の大小関係であってもよい。第2操作ワイヤ40は、第1操作ワイヤ30と同様の方法により作製できる。
【0030】
第2操作ワイヤ40は、アウターシャフト11の内側かつインナールーメン12Lの外側、より具体的には、第2ワイヤ用インナーシャフト14の内側に形成された第2ワイヤ用インナールーメン14Lに収容されている。図2及び図3に示すように、第2操作ワイヤ40の先端部は、保持部50によって、アウターシャフト11、インナーシャフト12、及び第2ワイヤ用インナーシャフト14と保持されている。また、第2操作ワイヤ40の基端部は、後述する第2巻取部92Bに巻回され、固定されている(図2)。なお、第1操作ワイヤ30と第2操作ワイヤ40とを総称して「操作ワイヤ」とも呼ぶ。
【0031】
保持部50は、アウターシャフト11の先端部に配置されており、インナーシャフト12の先端側と、第1操作ワイヤ30の先端側(具体的には細径部31の先端部)と、第2操作ワイヤ40の先端側(具体的には細径部41の先端部)と、第1ワイヤ用インナーシャフト13の先端側と、第2ワイヤ用インナーシャフト14の先端側とを保持する部材である。図2に示すように、保持部50は、アウターシャフト11の内側かつインナールーメン12Lの外側の全体に設けられる一方、インナーシャフト12の内側には設けられていない。このため、インナーシャフト12のインナールーメン12Lを、カテーテル1にガイドワイヤを挿通するガイドワイヤルーメンや、生体組織に薬液を供給する薬液用ルーメンとして用いることができる。
【0032】
封止部材111は、保持部50よりも基端側において、アウターシャフト11の内側、かつ、インナーシャフト12、第1ワイヤ用インナーシャフト13、及び第2ワイヤ用インナーシャフト14の外側に充填されている(図2図4)。封止部材111が設けられることにより、アウターシャフト11の内側(すなわちアウタールーメン11L内)において、インナーシャフト12、第1ワイヤ用インナーシャフト13、及び第2ワイヤ用インナーシャフト14の位置がずれることを抑制できると共に、カテーテル1のバックアップ力を向上できる。
【0033】
図1に戻り説明を続ける。コネクタ90は、本体部10の基端部10pに配置されて、術者によって把持される部材である。コネクタ90は、コネクタ本体部91と、巻取部92と、羽根部93とを備える。コネクタ本体部91は、先端部90dと基端部90pにそれぞれ開口が形成され、内側に両開口を連通する内腔が形成された中空状である。コネクタ本体部91の先端側には、本体部10の基端側の一部分が挿入された状態で、接合されている。接合には、エポキシ系接着剤などの任意の接合剤を利用できる。
【0034】
巻取部92は、第1巻取部92Aと、第2巻取部92Bとを備えている。第1巻取部92Aと、第2巻取部92Bとは、それぞれ、筒状または棒状のワイヤ巻回部と、ワイヤ巻回部の外側に設けられたつまみ部とを有している。第1巻取部92Aのワイヤ巻回部には、第1操作ワイヤ30の基端部が巻回され、固定されている。第1巻取部92Aのつまみ部を時計回りに回転させることにより、第1操作ワイヤ30の基端部がワイヤ巻回部に巻き取られ、これにより第1操作ワイヤ30の基端側を引っ張る操作ができる。第1巻取部92Aのつまみ部を反時計回りに回転させることにより、第1操作ワイヤ30の基端部がワイヤ巻回部から繰り出され、これにより第1操作ワイヤ30を緩める操作ができる。同様に、第2巻取部92Bのワイヤ巻回部には、第2操作ワイヤ40の基端部が巻回され、固定されている。第2巻取部92Bのつまみ部を時計回りに回転させることにより、第2操作ワイヤ40の基端側を引っ張る操作ができる。また、第2巻取部92Bのつまみ部を反時計回りに回転させることにより、第2操作ワイヤ40を緩める操作ができる。
【0035】
羽根部93は、コネクタ本体部91の基端側に設けられた2枚の羽根状の部材である。羽根部93は、術者がカテーテル1を把持する際に使用される。羽根部93は、任意の形状とすることができ、省略してもよい。羽根部93は、コネクタ本体部91に接合されていてもよく、コネクタ本体部91と一体的に形成されていてもよい。
【0036】
アウターシャフト11、インナーシャフト12、第1ワイヤ用インナーシャフト13、及び第2ワイヤ用インナーシャフト14は、抗血栓性、可撓性、生体適合性を有することが好ましく、樹脂材料や金属材料で形成できる。樹脂材料としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等を採用できる。金属材料としては、例えば、SUS304等のステンレス鋼、ニッケルチタン合金、コバルトクロム合金等を採用できる。このほか、放射線不透過材料である金、白金、タングステン、またはこれらの元素を含む合金を採用すれば、X線透視下での視認性を向上させることができ、好ましい。
【0037】
第1操作ワイヤ30及び第2操作ワイヤ40は、例えば、SUS304等のステンレス鋼、ニッケルチタン合金、コバルトクロム合金、タングステン合金等の金属材料により形成できる。保持部50及び封止部材111は、柔軟性を有することが好ましく、例えば、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー等の樹脂材料により形成できる。コネクタ90は、例えば、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエーテルサルフォン等の樹脂材料で形成できる。なお、上述した各材料はあくまで例示に過ぎず、上記以外の公知の材料を用いて各部材を形成してもよい。
【0038】
図5は、先端を湾曲させたカテーテル1を例示した説明図である。以上のようなカテーテル1では、第1巻取部92Aのつまみ部を時計回りに回転させて、第1操作ワイヤ30の基端側を引っ張る操作をすることによって、カテーテル1の先端側を外側(カテーテル1の長手方向に交差する方向)に湾曲させることができる。この際、カテーテル1は、第1操作ワイヤ30の剛性が変化する部分、すなわち縮径部32の近傍を基点Pとして、アウターシャフト11の内側において第1操作ワイヤ30が設けられている第1の方向W1(図3図5)に向かって湾曲する。同様に、第2巻取部92Bのつまみ部を時計回りに回転させて、第2操作ワイヤ40の基端側を引っ張る操作をすることによって、カテーテル1の先端側を外側に湾曲させることができる。この際、カテーテル1は、第2操作ワイヤ40の剛性が変化する部分、すなわち縮径部42の近傍を基点Pとして、アウターシャフト11の内側において第2操作ワイヤ40が設けられている第2の方向W2(図3図5)に向かって湾曲する。
【0039】
ここで、図5に示すようにカテーテル1は、第1の方向W1に湾曲した際の曲率半径r1と、第2の方向W2に湾曲した際の曲率半径r2とが相違している。これは、第1操作ワイヤ30の外径と、第2操作ワイヤ40の外径とが相違していることに起因する。このように、外径を相違させた複数の操作ワイヤを備えることにより、図5に示すように、カテーテル1の先端側を、異なる曲率半径で、異なる方向に湾曲させることができる。なお、第1操作ワイヤ30と、第2操作ワイヤ40とにおいて、外径を相違させるほか、縮径部32,42の形状を相違させる、または、縮径部32,42が設けられる位置を相違させることによっても、湾曲時の曲率半径r1,r2、及び湾曲可能な部分の長さを調整できる。
【0040】
以上のように、第1実施形態のカテーテル1は、アウターシャフト11の内側かつインナールーメン12Lの外側において保持された操作ワイヤ(第1操作ワイヤ30、第2操作ワイヤ40)を備える。このため、図5で説明した通り、操作ワイヤの基端側を引っ張ることによる操作ワイヤの湾曲に伴って、カテーテル1を湾曲させることができる。このため、例えばスペーサーを用いてカテーテル1を湾曲させる構成と比較して、カテーテル1の先端側の全体を滑らかに湾曲させることができ、使い勝手を向上できる。また、例えばプルワイヤ圧縮コイルを用いてカテーテル1を湾曲させる構成と比較して、製造工数を低減できる。また、操作ワイヤ(第1操作ワイヤ30、第2操作ワイヤ40)は、先端側の横断面における長手方向の長さ(D1,D2)と、基端側の横断面における長手方向の長さ(D11,D21)とが相違しているため、先端側と基端側との間で操作ワイヤの剛性を変える(すなわち操作ワイヤに剛性ギャップを設ける)ことができる。このため、図5で説明した通り、操作ワイヤの剛性ギャップが設けられた箇所を基点Pとしてカテーテル1を湾曲させることができ、使い勝手を向上できる。これらの結果、第1実施形態のカテーテル1によれば、湾曲可能なカテーテルにおいて、使い勝手の向上と、製造工数の低減とを図ることができる。
【0041】
また、第1実施形態のカテーテル1によれば、操作ワイヤ(第1操作ワイヤ30、第2操作ワイヤ40)は、略円柱形状の細径部31,41と、細径部31,41よりも径が太い略円柱形状の太径部33,43と、細径部31,41と太径部33,43との間に配置された縮径部32,42と、を備えるため、センタレスコアによって操作ワイヤを構成できる。また、操作ワイヤは、細径部31,41と太径部33,43との間に配置された縮径部32,42を有するため、縮径部32,42によって操作ワイヤの剛性を徐変させることができ、操作ワイヤの破断や損傷を抑制できる。また、図2に示すように、操作ワイヤは、細径部31,41が太径部33,43よりも先端側に配置されているため、カテーテル1の先端側を、基端側と比較して柔軟に構成でき、カテーテル1の安全性を向上できる。
【0042】
さらに、第1実施形態のカテーテル1によれば、操作ワイヤは、第1操作ワイヤ30と、インナールーメン12Lを挟んで、第1操作ワイヤ30と対向する位置に配置されている第2操作ワイヤ40とを含んでいる。このため、図5に示すように、第1操作ワイヤ30の操作によりカテーテル1が湾曲する方向W1と、第2操作ワイヤ40の操作によりカテーテル1が湾曲する方向W2とを変化させることができる。このため、カテーテル1の使い勝手をより向上できる。また、図2に示すように、第1操作ワイヤ30は第1ワイヤ用インナーシャフト13内の第1ワイヤ用インナールーメン13Lに収容され、第2操作ワイヤ40は第2ワイヤ用インナーシャフト14内の第2ワイヤ用インナールーメン14Lに収容されている。このため、アウターシャフト11の内側における第1及び第2操作ワイヤ30,40の干渉を抑制できる。
【0043】
さらに、第1実施形態のカテーテル1によれば、第1操作ワイヤ30と第2操作ワイヤ40とは、先端側の横断面における長手方向の長さD1,D2がそれぞれ相違する。このため、図5で説明した通り、第1操作ワイヤ30の操作によりカテーテル1が湾曲する方向W1及び曲率r1と、第2操作ワイヤ40の操作によりカテーテル1が湾曲する方向W2及び曲率r2とを変化させることができる。このため、カテーテル1の使い勝手をより向上できる。
【0044】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態のカテーテル1aの先端側の断面構成を例示した説明図である。第2実施形態のカテーテル1aは、第1操作ワイヤ30に代えて第1操作ワイヤ30aを、第2操作ワイヤ40に代えて第2操作ワイヤ40aを、それぞれ備える。第1操作ワイヤ30a及び第2操作ワイヤ40aは、第1実施形態で説明した縮径部32及び縮径部42を備えていない。このため、第1操作ワイヤ30a及び第2操作ワイヤ40aは、細径部31,41と、太径部33,43との境界において剛性ギャップを有している。また、第1操作ワイヤ30a及び第2操作ワイヤ40aは、長手方向(軸線O方向)における細径部31の長さと、細径部41の長さとが、それぞれ相違している。このため、カテーテル1aは、第1操作ワイヤ30aの基端側を引っ張った場合の湾曲の起点P1と、第2操作ワイヤ40の基端側を引っ張った場合の湾曲の起点P2とが、それぞれ相違している。
【0045】
このように、第1操作ワイヤ30a及び第2操作ワイヤ40aの構成は種々の変更が可能であり、縮径部32,42を備えていなくてもよく、また、細径部31,41をそれぞれ異なる長さとしてもよい。このような第2実施形態のカテーテル1aによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第2実施形態のカテーテル1aでは、第1操作ワイヤ30aの基端側を引っ張った場合の湾曲の起点P1と、第2操作ワイヤ40の基端側を引っ張った場合の湾曲の起点P2とを相違させることができるため、カテーテル1aの使い勝手を向上できる。
【0046】
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態のカテーテル1bの先端側の断面構成を例示した説明図である。第3実施形態のカテーテル1bは、第1操作ワイヤ30に代えて第1操作ワイヤ30bを、第2操作ワイヤ40に代えて第2操作ワイヤ40bを、それぞれ備える。第1操作ワイヤ30bは、太径部33bが先端側に配置され、細径部31bが基端側に配置されている点を除いて、図2で説明した第1操作ワイヤ30と同様の構成を有している。同様に、第2操作ワイヤ40bは、太径部43bが先端側に配置され、細径部41bが基端側に配置されている点を除いて、図2で説明した第2操作ワイヤ40と同様の構成を有している。このように、第1操作ワイヤ30a及び第2操作ワイヤ40aの構成は種々の変更が可能であり、太径部33,43が先端側に配置されていてもよい。このような第3実施形態のカテーテル1bによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0047】
<第4実施形態>
図8は、第4実施形態のカテーテル1cのB2-B2線における断面構成を例示した説明図である。第4実施形態のカテーテル1cは、第1実施形態で説明した各構成に加えてさらに、第3ワイヤ用インナーシャフト16と、第4ワイヤ用インナーシャフト17と、第3操作ワイヤ60と、第4操作ワイヤ70とを備える。
【0048】
第3ワイヤ用インナーシャフト16は、第1ワイヤ用インナーシャフト13と同様に、カテーテル1cの長手方向に沿って延びる長尺状の部材である。第3ワイヤ用インナーシャフト16は、先端部と基端部とにそれぞれ開口が形成され、内側に両開口を連通する内腔(第3ワイヤ用インナールーメン16L)が形成された中空の略円筒形状である。図8に示すように、第3ワイヤ用インナーシャフト16は、アウターシャフト11の内側かつインナールーメン12Lの外側において、第1ワイヤ用インナーシャフト13及び第2ワイヤ用インナーシャフト14と、周方向に等間隔に距離を置いて配置されている。第3ワイヤ用インナーシャフト16の外径、長さ、及び材料は、第2ワイヤ用インナーシャフト14の外径、長さ、及び材料と略同一であるが、これらは相違していてもよい。
【0049】
第4ワイヤ用インナーシャフト17は、第1ワイヤ用インナーシャフト13と同様に、カテーテル1cの長手方向に沿って延びる長尺状の部材である。第4ワイヤ用インナーシャフト17は、先端部と基端部とにそれぞれ開口が形成され、内側に両開口を連通する内腔(第4ワイヤ用インナールーメン17L)が形成された中空の略円筒形状である。図8に示すように、第4ワイヤ用インナーシャフト17は、アウターシャフト11の内側かつインナールーメン12Lの外側において、インナールーメン12Lを挟んで第3ワイヤ用インナーシャフト16と対向する位置に配置されている。第4ワイヤ用インナーシャフト17の外径、長さ、及び材料は、第2ワイヤ用インナーシャフト14の外径、長さ、及び材料と略同一であるが、これらは相違していてもよい。
【0050】
第3操作ワイヤ60は、第1操作ワイヤ30と同様に、カテーテル1cの長手方向に沿って延びる中実かつ長尺状の部材であり、先端側に配置された細径部61と、基端側に配置された太径部63と、これらの間に配置された縮径部62とを備える。第3操作ワイヤ60は、アウターシャフト11の内側かつインナールーメン12Lの外側(具体的には第3ワイヤ用インナーシャフト16の内側の第3ワイヤ用インナールーメン16L)に収容されている。第3操作ワイヤ60の先端部は、保持部50によって、アウターシャフト11、インナーシャフト12、第1~第4ワイヤ用インナーシャフト13,14,16,17と保持されている。また、第3操作ワイヤ60の基端部は、図示しない第3巻取部92Cに巻回されて固定されている。第3操作ワイヤ60の基端側を引っ張ることにより、カテーテル1cの先端側を、第3操作ワイヤ60が設けられている第3の方向W3に向かって湾曲させることができる。
【0051】
第4操作ワイヤ70は、第1操作ワイヤ30と同様に、カテーテル1cの長手方向に沿って延びる中実かつ長尺状の部材であり、先端側に配置された細径部71と、基端側に配置された太径部73と、これらの間に配置された縮径部72とを備える。第4操作ワイヤ70は、アウターシャフト11の内側かつインナールーメン12Lの外側(具体的には第4ワイヤ用インナーシャフト17の内側の第4ワイヤ用インナールーメン17L)に収容されている。第4操作ワイヤ70の先端部は、保持部50によって、アウターシャフト11、インナーシャフト12、第1~第4ワイヤ用インナーシャフト13,14,16,17と保持されている。また、第4操作ワイヤ70の基端部は、図示しない第4巻取部92Dに巻回されて固定されている。第4操作ワイヤ70の基端側を引っ張ることにより、カテーテル1cの先端側を、第4操作ワイヤ70が設けられている第4の方向W4に向かって湾曲させることができる。
【0052】
このように、カテーテル1cの構成は種々の変更が可能であり、任意の本数の操作ワイヤと、各操作ワイヤを収容するためのワイヤ用インナーシャフトを設けてもよい。図8の例では、4本の操作ワイヤ30,40,60,70を例示したが、操作ワイヤの本数は任意に定めることができ、3本でもよく、5本以上であってもよい。また、図8の例では、各操作ワイヤが周方向において等間隔に配置されている場合を例示したが、各操作ワイヤは、周方向において等間隔に配置されていなくてもよい。このような第4実施形態のカテーテル1cによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第4実施形態のカテーテル1cでは、操作ワイヤの本数分だけの異なる方向W1~W4に向かってカテーテル1cを湾曲可能とできるため、カテーテル1cの使い勝手をより向上できる。
【0053】
<第5実施形態>
図9は、第5実施形態のカテーテル1dの先端側の断面構成を例示した説明図である。第5実施形態のカテーテル1dは、第1実施形態で説明した構成において、第2ワイヤ用インナーシャフト14と、第2操作ワイヤ40とを備えていない。このように、カテーテル1dの構成は種々の変更が可能であり、1本の操作ワイヤ(第1操作ワイヤ30)のみを備える構成であってもよい。このような第5実施形態のカテーテル1dによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0054】
<第6実施形態>
図10は、第6実施形態のカテーテル1eのB2-B2線における断面構成を例示した説明図である。第6実施形態のカテーテル1eは、第1実施形態で説明した各構成に加えてさらに、第2インナーシャフト18を備える。第2インナーシャフト18は、インナーシャフト12と同様に、カテーテル1eの長手方向に沿って延びる長尺状の部材であり、先端部と基端部とにそれぞれ開口が形成され、内側に両開口を連通する内腔(第2インナールーメン18L)が形成された中空の略円筒形状である。第2インナーシャフト18の先端側の開口は、インナーシャフト12と同様に、保持部50によって封止されておらず、開放している。図10に示すように、第2インナーシャフト18は、アウターシャフト11の内側において、インナーシャフト12と並んで配置されている。第2インナーシャフト18の外径、長さ、及び材料は、インナーシャフト12の外径、長さ、及び材料と略同一であるが、これらは相違していてもよい。
【0055】
このように、カテーテル1eの構成は種々の変更が可能であり、インナーシャフト12と、第2インナーシャフト18とを備えるダブルルーメンカテーテルとして構成されてもよい。また、さらなる他のインナーシャフトを備えるマルチルーメンカテーテルとして構成されてもよい。このような第6実施形態のカテーテル1eによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0056】
<第7実施形態>
図11は、第7実施形態のカテーテル1fの先端側の断面構成を例示した説明図である。図12は、第7実施形態のカテーテル1fのC1-C1線(図11)における断面構成を例示した説明図である。図13は、第7実施形態のカテーテル1fのC2-C2線(図11)における断面構成を例示した説明図である。第1実施形態のカテーテル1fは、第1操作ワイヤ30に代えて第1操作ワイヤ30fを、第2操作ワイヤ40に代えて第2操作ワイヤ40fを、それぞれ備える。
【0057】
第1操作ワイヤ30fは、カテーテル1fの長手方向に沿って延びる中実かつ長尺状の部材であり、偏平部31fと、中間部32fと、太径部33とを有している。偏平部31fは、第1操作ワイヤ30fの先端側に設けられた、中実の略楕円柱形状の部分である。偏平部31fの横断面形状は、図12に示すように、長手方向の長さがD3aかつ短手方向の長さがD3bの略楕円形状である。ここで、偏平部31fの横断面における長手方向の長さD3aは、太径部33の外径D11よりも長い。中間部32fは、偏平部31fと太径部33との間に設けられている。中間部32fは、基端側から先端側に向かって外側の形状が徐々に変化(円柱から楕円柱へと変化)した部分である。太径部33は、第1実施形態と同様である。第2操作ワイヤ40fは、偏平部41fと、中間部42fと、太径部43とを有している。詳細な構成は、第1操作ワイヤ30fと同様である。
【0058】
このように、第1操作ワイヤ30f及び第2操作ワイヤ40fの構成は種々の変更が可能であり、細径部31,41に代えて偏平部31f,41fを備え、縮径部32,42に代えて中間部32f,42fを備えていてもよい。このような第7実施形態のカテーテル1fによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0059】
また、第7実施形態のカテーテル1fでは、操作ワイヤ(第1操作ワイヤ30f、第2操作ワイヤ40f)は、偏平形状の偏平部31f,41fと、略円柱形状の太径部33,43と、偏平部31f,41fと太径部33,43との間に配置された中間部32f,42fと、を備えるため、例えば略円柱形状の部材の一方をプレス加工することにより、偏平部31f,41fと中間部32f,42fとを容易に形成できる。また、操作ワイヤは、偏平形状の偏平部31f,41fを有するため、操作ワイヤが引っ張られた際のカテーテル1fの湾曲方向を、偏平形状の短半径W1,W2の側とできる。さらに、操作ワイヤは、偏平部31f,41fと太径部33,43との間に配置された中間部32f,42fを有するため、中間部32f,42fによって操作ワイヤの剛性を徐変させることができ、操作ワイヤの破断や損傷を抑制できる。また、操作ワイヤは、偏平部31f,41fが太径部33,43よりも先端側に配置されているため、カテーテル1fの先端側を、基端側と比較して柔軟に構成でき、カテーテル1fの安全性を向上できる。
【0060】
<第8実施形態>
図14は、第8実施形態のカテーテル1gの先端側の断面構成を例示した説明図である。第8実施形態のカテーテル1gは、保持部50に代えて保持部50gを備える。保持部50gは、第1実施形態の保持部50よりも基端側、すなわちアウターシャフト11の先端よりも基端側に配置されている点を除いて、保持部50と同様の構成を有している。このように、カテーテル1gの構成は種々の変更が可能であり、例えば、保持部50gは、カテーテル1gの先端側の任意の位置に配置されてよい。また、例えば、アウターシャフト11の内側を封止する封止部材111を省略してもよい。このような第8実施形態のカテーテル1gによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0061】
<第9実施形態>
図15は、第9実施形態のカテーテル1hの先端側の断面構成を例示した説明図である。第9実施形態のカテーテル1hは、第1実施形態で説明した第1ワイヤ用インナーシャフト13、第2ワイヤ用インナーシャフト14、及び封止部材111を備えない。換言すれば、カテーテル1hにおいて、第1操作ワイヤ30及び第2操作ワイヤ40は、ワイヤ用インナーシャフトに収容されずに、アウターシャフト11の内側かつインナールーメン12Lの外側に直接収容されている。このように、カテーテル1hの構成は種々の変更が可能であり、操作ワイヤを収容するインナーシャフトや、アウターシャフト11の内側を封止する封止部材を備えていなくてもよい。また、第9実施形態の構成において、アウターシャフト11の内側かつインナールーメン12Lの外側には、さらに、第1操作ワイヤ30と第2操作ワイヤ40との干渉を抑制するための隔壁が設けられていてもよい。このような第9実施形態のカテーテル1hによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0062】
<第10実施形態>
図16は、第10実施形態のカテーテル1iのB2-B2線における断面構成を例示した説明図である。第10実施形態のカテーテル1iは、第1実施形態で説明したアウターシャフト11に代えてアウターシャフト11iを備えており、さらに、インナーシャフト12、第1ワイヤ用インナーシャフト13、及び第2ワイヤ用インナーシャフト14を備えていない。アウターシャフト11iは、カテーテル1iの長手方向に沿って延びる長尺状、かつ中実の部材である。アウターシャフト11iの肉厚部11Tには、インナールーメン12Lと、第1ワイヤ用インナールーメン13Lと、第2ワイヤ用インナールーメン14Lとがそれぞれ形成されている。インナールーメン12L、第1ワイヤ用インナールーメン13L、及び第2ワイヤ用インナールーメン14Lの構成は、第1実施形態と同様である。このような第10実施形態において、保持部50は、アウターシャフト11iの先端部において、第1ワイヤ用インナールーメン13Lの内側と、第2ワイヤ用インナールーメン14Lの内側とにそれぞれ設けられ、第1操作ワイヤ30と第2操作ワイヤ40とを保持している。なお、保持部50は、アウターシャフト11iの先端部において、肉厚部11Tと一体的に構成されてもよい。
【0063】
このように、カテーテル1iの構成は種々の変更が可能であり、インナーシャフトを用いずに、アウターシャフト11iの肉厚部11Tに対して、インナールーメン12Lや、第1及び第2ワイヤ用インナールーメン13L,14Lを形成してもよい。このような第10実施形態のカテーテル1iによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第10実施形態のカテーテル1iによれば、インナーシャフトを用いないため、カテーテル1iを構成する部品点数及び製造コストを低減できると共に、カテーテル1iを細径化できる。
【0064】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0065】
[変形例1]
上記第1~10実施形態では、カテーテル1,1a~1iの構成を例示した。しかし、カテーテル1の構成は種々の変更が可能である。例えば、上記各実施形態では、管状の本体部10を有するカテーテル1を例示したが、本体部10には、他の構成要素(例えば、バルーン部材、網目状の素線からなるメッシュ部材、電極部材等)が設けられていてもよい。例えば、上記実施形態において、アウターシャフト11の外周面に、インナールーメン12Lにアクセスするためのポートを設けてもよい。このポートは、換言すれば、アウターシャフト11の外周面(すなわちカテーテル1の外側)と、インナールーメン12Lとを連通する貫通孔である。
【0066】
[変形例2]
上記第1~10実施形態では、第1操作ワイヤ30,30a,30b,30f、及び、第2操作ワイヤ40,40a,40b,40fの構成を例示した。しかし、これらの操作ワイヤの構成は種々の変更が可能である。例えば、操作ワイヤの基端側は、巻取部92に内蔵されておらず、コネクタ90の基端側から、カテーテル1の外部に露出していてもよい。例えば、第1操作ワイヤ30の基端側と、第2操作ワイヤ40の基端側とが互いに接続されており、一方(例えば第1操作ワイヤ30)の基端側を巻き取った場合に、他方(例えば第2操作ワイヤ40)の基端側が繰り出される構成を採用してもよい。
【0067】
例えば、第1操作ワイヤ30は、先端側から基端側に向かって細径部31、縮径部32、太径部33を有する構成に代えて、先端側から基端側に向かって太径部33、細径部31(又は偏平部)、太径部33を有する構成を採用してもよい。この場合、先端側と基端側との太径部33に挟まれた細径部31(又は偏平部)において剛性ギャップが生じる。このため、第1操作ワイヤ30(すなわちカテーテル1)を、細径部31(又は偏平部)の箇所を基点として湾曲させることができる。第2操作ワイヤ40についても同様である。
【0068】
例えば、第1操作ワイヤ30は、先端側から基端側に向かって細径部31、縮径部32、太径部33を有する構成に代えて、先端側から基端側に向かって第1部分、第2部分を有する構成を採用してもよい。第1部分と第2部分とは、略同一の外径、形状を有している一方で、剛性の異なる材料により形成されている。このようにすれば、第1部分と第2部分との境界において剛性ギャップが生じる。このため、第1操作ワイヤ30(すなわちカテーテル1)を、第1部分と第2部分との境界を基点として湾曲させることができる。第2操作ワイヤ40についても同様である。
【0069】
例えば、第1操作ワイヤ30及び第2操作ワイヤ40の横断面形状は、略円形形状のほか、略矩形形状、略多角形形状等、任意に変更できる。例えば、第1操作ワイヤ30及び第2操作ワイヤ40は、複数本の素線を撚り合せた撚線により構成されてもよい。
【0070】
[変形例3]
上記第1~10実施形態のカテーテル1,1a~1iの構成、及び上記変形例1,2の各構成は、適宜組み合わせてもよい。例えば、第4実施形態で説明した3本以上の操作ワイヤを備える構成や、第5実施形態で説明した1本の操作ワイヤを備える構成や、第6実施形態で説明したダブルルーメン(又はマルチルーメン)の構成や、第8実施形態で説明した保持部50gを備える構成や、第9実施形態で説明したワイヤ用インナーシャフトを備えない構成において、第2,第3,第7実施形態で説明した構成の操作ワイヤを用いてもよい。例えば、第10実施形態で説明したインナーシャフトを備えない構成において、第2,第3,第7実施形態で説明した構成の操作ワイヤを備える構成を採用してもよく、第4実施形態で説明した3本以上の操作ワイヤを備える構成や、第5実施形態で説明した1本の操作ワイヤを備える構成や、第6実施形態で説明したダブルルーメン(又はマルチルーメン)の構成や、第8実施形態で説明した保持部50gを備える構成を採用してもよい。
【0071】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0072】
1,1a~1i…カテーテル
10…本体部
11,11i…アウターシャフト
12…インナーシャフト
13…第1ワイヤ用インナーシャフト
14…第2ワイヤ用インナーシャフト
16…第3ワイヤ用インナーシャフト
17…第4ワイヤ用インナーシャフト
18…第2インナーシャフト
30,30a,30b,30f…第1操作ワイヤ
31,31b…細径部
31f…偏平部
32…縮径部
32f…中間部
33,33b…太径部
40,40a,40b,40f…第2操作ワイヤ
41,41b…細径部
41f…偏平部
42…縮径部
42f…中間部
43,43b…太径部
50,50g…保持部
60…第3操作ワイヤ
61…細径部
62…縮径部
63…太径部
70…第4操作ワイヤ
71…細径部
72…縮径部
73…太径部
90…コネクタ
91…コネクタ本体部
92…巻取部
92A…第1巻取部
92B…第2巻取部
92C…第3巻取部
92D…第4巻取部
93…羽根部
111…封止部材
図1
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