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特許7401267インプリント装置およびインプリント装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】インプリント装置およびインプリント装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20231212BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20231212BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20231212BHJP
   B05C 11/02 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
B05C5/00 101
B05C11/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019204776
(22)【出願日】2019-11-12
(65)【公開番号】P2021077801
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 謙一
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-042565(JP,A)
【文献】特開2011-061029(JP,A)
【文献】特開2013-182902(JP,A)
【文献】特開2019-004074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出材を吐出する第1のノズル列と前記第1のノズル列から第1方向に離れ吐出材を吐出する第2のノズル列とを含む複数のノズル列を有する吐出手段と、基板を前記第1方向と前記第1方向と交差する第2方向に移動させる基板ステージと、を備え、前記基板ステージを移動させながら前記吐出手段から吐出材を基板上の複数のフィールドに吐出させるインプリント装置であって、
記第1方向において第1のフィールドに続いて当該第1のフィールドと隣接する第2のフィールドに、前記第1方向において前記第1のノズル列、次に前記第2のノズル列の順で吐出材を吐出させるとき、前記第1のフィールドに対する前記第2のノズル列による吐出動作が完了する前に、前記第2のフィールドに対する前記第1のノズル列の吐出開始信号を受け付けて前記第2のフィールドにおける吐出開始のタイミング決定されることを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
記第1のフィールドと前記第2のフィールドとの間隔は、前記複数のノズル列の幅よりも短いことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
ズル列ごとに設けられた、ノズル列における吐出を制御するノズル列制御部と、
前記吐出開始信号を受け付けると、各ノズル列における吐出開始のタイミングをそれぞれ決定し、吐出開始のタイミングで前記ノズル列制御部に吐出開始を命令するタイミング制御部と、を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記ノズル列制御部は、フィールド内の吐出パターンを示す情報に従って、対応するノズル列のノズルを駆動することを特徴とする請求項3に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記タイミング制御部は、前記基板ステージから前記吐出開始信号を受け付けることを特徴とする請求項3または4に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記ノズル列制御部と、前記タイミング制御部とは、分離して構成され、前記ノズル列制御部は、前記吐出開始信号を受け付けないことを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載のインプリント装置。
【請求項7】
各ノズル列のノズルは、前記第1方向と直交する前記第2方向において他のノズル列のノズルと重複しない位置に配されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記第1方向と直交する前記第2方向および回転方向の前記基板ステージの位置の誤差を補正する補正量を近似補間して得られた駆動軌跡に従って、前記基板ステージを移動させることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のインプリント装置。
【請求項9】
前記基板ステージの移動速度を一定にし、かつ、吐出材の吐出周波数を各フィールド単位で可変にすることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のインプリント装置。
【請求項10】
前記第1のフィールドと前記第2のフィールドとが、前記第1方向においてオーバーラップする形状である場合、それぞれの吐出領域が前記第1方向においてオーバーラップしないように吐出領域を制限することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のインプリント装置。
【請求項11】
前記吐出手段は、前記制限された吐出領域の範囲内で生成された吐出パターンを示す情報に従って吐出を行うことを特徴とする請求項10に記載のインプリント装置。
【請求項12】
前記第1方向における隣接フィールドを含む1行分のフィールドに吐出材を吐出した後に、当該1行分のフィールドにインプリント動作を行うことを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のインプリント装置。
【請求項13】
吐出材を吐出する第1のノズル列と前記第1のノズル列から第1方向に離れ吐出材を吐出する第2のノズル列とを含む複数のノズル列を有する吐出手段と、基板を前記第1方向と前記第1方向と交差する第2方向に移動させる基板ステージと、を備え、前記基板ステージを移動させながら前記吐出装置から吐出材を基板上の複数のフィールドに吐出させるインプリント装置の制御方法であって、
記第1方向において第1のフィールドに続いて当該第1のフィールドと隣接する第2のフィールドに、前記第1方向において前記第1のノズル列、次に前記第2のノズル列の順で吐出材を吐出させるとき、前記第1のフィールドに対する前記第2のノズル列による吐出動作が完了する前に、前記第2のフィールドに対する前記第1のノズル列の吐出開始信号を受け付ける工程と、
前記吐出開始信号に応じて前記第2のフィールドにおける吐出開始のタイミングを決定する工程と、
を有することを特徴とするインプリント装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置およびインプリント装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上の未硬化樹脂を型で形成することで、樹脂のパターンを基板上に形成するインプリント技術が知られている。インプリント技術では、基板上に数ナノメートルオーダーの微細な構造体を形成することができる。光硬化法を採用したインプリント装置では、次のようにしてパターンが形成される。まず、基板上のインプリント領域であるフィールドに吐出材(インプリント材、光硬化性樹脂など)を吐出する。次に、基板上の吐出材に型を押し付ける。次に、紫外線を照射して吐出材を硬化させた後に、型を引き離すことにより、吐出材で固められたパターンが、基板上に形成される。
【0003】
このようなインプリント装置では、吐出材を基板上に吐出するためにインクジェット方式の吐出装置が使われている。吐出動作時においては、基板を等速移動させながら、インプリント対象領域に吐出が行われる。インプリント装置では、このような吐出動作とインプリント動作とが交互に繰り返される。特許文献1には、複数のフィールドに対してまとめて吐出動作を行うことで、基板移動回数を低減させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2007/120537号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、吐出装置のノズル列幅が、隣接するフィールド間の間隔よりも大きい場合、隣接するフィールドを含む複数のフィールドに連続して吐出をすることができない。このため、吐出動作のスループットが低下してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るインプリント装置は、吐出材を吐出する第1のノズル列と前記第1のノズル列から第1方向に離れ吐出材を吐出する第2のノズル列とを含む複数のノズル列を有する吐出手段と、基板を前記第1方向と前記第1方向と交差する第2方向に移動させる基板ステージと、を備え、前記基板ステージを移動させながら前記吐出手段から吐出材を基板上の複数のフィールドに吐出させるインプリント装置であって、記第1方向において第1のフィールドに続いて当該第1のフィールドと隣接する第2のフィールドに、前記第1方向において前記第1のノズル列、次に前記第2のノズル列の順で吐出材を吐出させるとき、前記第1のフィールドに対する前記第2のノズル列による吐出動作が完了する前に、前記第2のフィールドに対する前記第1のノズル列の吐出開始信号を受け付けて前記第2のフィールドにおける吐出開始のタイミング決定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吐出動作のスループットを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】インプリント装置の構成を示す図。
図2】吐出動作を示す図。
図3】吐出装置のノズルレイアウトとノズル列毎の吐出動作とを示す図。
図4】比較例における吐出制御タイミングを示す図。
図5】比較例における複数フィールドの連続吐出動作を示した図。
図6】吐出制御タイミングを示す図。
図7】複数フィールドに連続で吐出する場合の動作を示す図。
図8】基板ステージの位置を補正する例を説明する図。
図9】隣接フィールドがオーバーラップしたレイアウトを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。尚、同一の構成については、同じ符号を付して説明する。また、実施形態に記載されている構成要素の相対配置、形状などは、あくまで例示である。
【0010】
<<第1実施形態>>
<インプリント装置の構成>
図1は、本実施形態のインプリント装置1の構成を示す図である。図1を用いてインプリント装置1の構成を説明する。
【0011】
インプリント装置1は、基板6上に供給された吐出材11を型3で押印し、吐出材11に硬化用のエネルギーを与えることにより、型3上の凹凸パターン3aが転写された硬化物のパターンを形成する装置である。インプリント装置1は、物品としての半導体デバイスなどのデバイス製造に使用される。吐出材11は、インプリント材、樹脂、または塗布材などとも呼ばれる。ここでは、吐出材11に光硬化型樹脂材を使ったインプリント装置を説明する。
【0012】
インプリント装置1は、型3を保持するための型保持部4と、型3を基板6に押印するために鉛直方向に移動する型駆動機構5とを備える。また、基板6を保持するための基板保持部7と、少なくともx方向、y方向、およびxy面の回転方向を含む水平方向に移動可能な基板ステージ8とを備える。基板ステージ8の位置決め制御には、一般的に位置決めテーブルで用いられる干渉計方式の変位計9が使われる。或いは、変位計9の代わりにリニアエンコーダを用いてもよい。
【0013】
吐出装置10は、パターン形成するための吐出材11を凹凸パターン3aと同サイズの基板6上の領域に吐出する。吐出動作時には、基板ステージ8を等速移動させながら吐出が行われる。また、吐出材11を光硬化させるための光源2が備えられている。光源2には、一般的には400nm以下のUV光源が用いられる。
【0014】
型駆動機構5、基板ステージ8、吐出装置10、及び光源2は、制御部12によってコントロールされる。制御部12は、複数のコントローラ(不図示)を含んでよい。基板ステージ8は、ステージ制御部22を有する。ステージ制御部22は、制御部12からの命令に従って基板ステージ8を制御する。吐出装置10は、吐出制御部21を有する。吐出制御部21は、制御部12およびステージ制御部22からの命令に従って吐出装置10を制御する。
【0015】
<吐出動作の説明>
図2は、吐出装置10による吐出動作を示す図である。図2の点線は、型3によるインプリント位置を示している。図2は、基板ステージ8が、ステージ移動方向(この例では、y方向)に移動しながら吐出装置10から吐出が行われることで、所定のフィールド(吐出領域)に吐出材11が吐出される例を示している。吐出動作時においては、吐出装置10の位置は変わらず、基板ステージ8の位置が変わる様子を示している。
【0016】
図2(a)は、吐出動作開始時における吐出装置10と基板ステージ8との位置を示している。図2(b)は、基板ステージ8を等速移動させて、基板6上の吐出領域における吐出開始位置が、吐出装置10の重力方向下方に位置している状態を示している。この図2(b)のタイミングで、吐出装置10は、吐出を開始する。基板ステージ8は、等速動作を維持したまま移動を続け、図2(c)に示す吐出完了位置に到達後、減速を開始し停止する。一方、吐出装置10は、吐出動作を完了する。これにより、吐出領域への吐出動作が完了する。
【0017】
次に、インプリント動作を行うために、図2(d)に示すように、吐出領域の位置が、インプリント位置に対応するように、基板ステージ8を折り返し移動させる。尚、この時、復路側でも吐出動作を実施することで、より高密度に吐出材11を吐出することができる。
【0018】
その後、型3(図2では不図示)を降下させることによって、型3を基板6の吐出領域に押印する。そして、光源2を使って吐出領域を照射することで、吐出材11を硬化させる。硬化後、型3を上昇させ、パターン形成が完了する。基板6の全面でパターン形成する場合、このような吐出動作とインプリント動作とが繰返し行われる。尚、図2では、説明のため、1つのフィールド(吐出領域、インプリント領域)に吐出動作が行われ、そのフィールドに対してインプリント動作が行われる例を示している。本実施形態では、後述するように複数のフィールドに連続して吐出動作が行われた後に、インプリント動作が連続して行われることになる。
【0019】
図3は、吐出装置10のノズルレイアウトとノズル列毎の吐出動作とを示す図である。吐出装置10は、インクジェット方式の吐出ヘッド13を備える。吐出ヘッド13によって吐出材11が基板6に吐出される。
【0020】
図3(a)は、吐出ヘッド13のノズル面を示している。吐出ヘッド13のノズル面には、基板ステージ8の等速移動方向(y方向)に対して直交する方向(x方向)に、等間隔でノズル14が配されている。ノズル14の間隔は、ノズル径および加工技術によって制限される。本実施形態では、より高密度に吐出材11を吐出できるように、基板ステージ8の等速移動方向(y方向)にノズル列を複数列配する構成としている。図3の例では、ノズル列14a~14dの4列でノズル列が配列されている。また、各ノズル列は、等速移動方向(y方向)に対する直交方向(x方向)に位置をずらして配置されている。このように、インプリント装置1では、複数のノズル列を有し、各ノズル列のノズルが、ステージ移動方向と直交する方向において重複しない位置に配されている吐出ヘッド13が用いられる。
【0021】
図3(b)から(f)は、基板6のフィールド15aに吐出材11が吐出される様子を、時系列で示している。この例では、ノズル列14aのノズルから吐出が開始され、その後、基板ステージ8(図3では不図示)の移動に応じてフィールド15aには、ノズル列14b、14c、14dのノズルから吐出が行われる。図3(b)から(f)に示すように、ノズル列14a~14d単位で吐出タイミングを変えることで、吐出領域において1列に高密度な吐出をすることができる。このように、インプリント装置1では、フィールドにおけるステージ移動方向の所定の領域の吐出動作が、複数のノズル列による吐出によって完了する。
【0022】
尚、図3(f)に示すように、基板6のフィールド15aの吐出が完了した時点では、最初に吐出を行ったノズル列14aの基板6上の位置は、フィールド15aに隣接するフィールド15bの吐出開始位置を越えた位置となる。即ち、この図3(f)に示す状態で吐出を行ったとしても、ノズル列14aからノズル列14dの間のノズル列幅分の吐出が、少なくともノズル列14aにおいては行うことができない。以下、図4の比較例を用いて説明する。
【0023】
<比較例の説明>
図4は、本実施形態とは異なる比較例における吐出制御タイミングを示す図である。図4を用いて比較例を説明した後に、本実施形態の例を説明する。基板ステージ8のステージ制御部22は、吐出領域に到達した時点で、吐出装置10の吐出制御部21に吐出を開始させるためのトリガー信号を出力する。吐出装置10の吐出制御部21は、トリガー信号を受信した時刻を基準に、各ノズル列の列間隔と基板ステージ8の移動速度とから、各ノズル列の吐出開始時間(Ta~Td)を決定する。吐出制御部21を構成する各ノズル列のノズル列制御部CNTa~CNTdは、吐出開始時間(Ta~Td)に到達した時点で、吐出制御(Ga~Gd)を開始する。
【0024】
吐出制御(Ga~Gd)では、吐出領域に吐出すべき吐出パターンを示す吐出パターン情報に基づき、一定周期間隔で指定された回数の吐出が行われる。吐出パターン情報には、吐出周期毎の吐出有無情報が含まれる。ノズル列制御部CNTa~CNTdは、吐出周期毎に吐出有無を判断して、吐出材11を吐出するための駆動信号をノズル14に出力する。
【0025】
ここで、吐出装置10の吐出制御部21は、後端のノズル列における吐出制御Gdが完了するまで、次のフィールドの吐出のためのトリガー信号を受けることができない。吐出制御Gdの途中でトリガー信号を受けると、吐出制御Gdが完了する前に次のフィールド用の吐出制御が開始されてしまうからである。このため、比較例においては、吐出制御Gaが完了してから吐出制御Gdが完了するまでの時間分だけ、待ち時間が必要になる。この待ち時間は、両端のノズル列14aと14dとの間のノズル列幅(図3参照)と、基板ステージ8の移動速度と、によって決まる。連続して複数のフィールドに吐出をする場合、少なくとも両端ノズル列幅分の間隔をフィールド間に設ける必要がある。
【0026】
図5は、図4の比較例における複数フィールドの連続吐出動作を示した図である。図5は、型3上にある凹凸パターン3aおよび吐出装置10の位置が固定され、基板ステージ8が移動することで基板6の位置が移動する様子を示している。図5(a)から(c)の順に時系列で遷移する様子を示している。
【0027】
図5(a)は、基板ステージ8の中心座標がインプリント位置にある状態を示している。即ち、型3の凹凸パターン3aに対応する位置に基板6の中心座標が位置している。そして、基板ステージ8を吐出装置10へ等速駆動させ、吐出装置10による吐出動作が行われる。これにより、図5(b)に示す、1行分の連続吐出動作が実施される。その後、図5(c)に示すインプリント位置に基板ステージ8を移動させ、それぞれの吐出領域に順次インプリント動作が行われる。
【0028】
本実施形態の吐出装置10では、両端のノズル列幅が5mm程度であるのに対し、隣接するフィールドの間隔は数umの間隔しかない。このため、図4および図5に示すように、隣接フィールドの連続吐出を行うことができない。少なくとも1フィールド飛ばしで吐出する必要がある。図5は、1フィールド飛ばして吐出が行われた例を示している。1フィールド飛ばしで1行分の連続吐出が完了した後、インプリント位置に基板ステージ8を移動させインプリント動作を行う。一番目のフィールド15のインプリント動作が完了後、吐出済みのフィールドに順次インプリント動作が行われる。吐出済みのフィールドのインプリント動作が全て完了したら、インプリント装置1は、同じ行における未吐出フィールドに対して吐出動作を行い、同様に、一連のインプリント動作を行う。このように、比較例においては、基板6の各行に対して、少なくとも2回吐出動作を行う必要がある。
【0029】
一方、以下で説明する本実施形態の吐出制御によれば、隣接フィールドを含む複数のフィールドに連続して吐出をすることが可能である。
【0030】
<吐出制御の説明>
図6は、本実施形態における吐出制御タイミングを示す図である。図6に示すように、吐出装置10の吐出制御部21は、各ノズル列の吐出開始タイミングを一括制御するための吐出開始タイミング制御部CNTtを有する。この吐出開始タイミング制御部CNTtは、各ノズル列のノズル列制御部CNTa~CNTdとは、分離して独立した構成である。
【0031】
吐出開始タイミング制御部CNTtは、基板ステージ8が吐出開始位置に到達した時点においてステージ制御部22から出力されるトリガー信号を受信すると、各ノズル列の吐出開始時間を、ノズル列間隔と基板ステージ8との移動速度から決定する。そして、吐出開始タイミング制御部CNTtは、決定された時間に到達すると、該当するノズル列の制御部CNTに対してトリガー信号(吐出開始命令)を出力する。各ノズル列制御部CNTa~CNTdは、トリガー信号を受信したタイミングで、一定周期間隔で指定された回数の吐出動作を行う。
【0032】
このように、各ノズル列制御部CNTa~CMTdと吐出開始タイミング制御部CNTtとを独立した構成にする。これにより、例えば最終列のノズル列の吐出制御Gdの途中で、ステージ制御部22からのトリガー信号を吐出開始タイミング制御部CNTtが受信しても、最終列のノズル列の吐出制御Gdは、最後まで実行される。そのタイミングでは、吐出開始タイミング制御部CNTtから最終列のノズル列のノズル列制御部CMTdにトリガー信号が出力されないからである。このように、全ノズル列の吐出が完了しない状態でも基板ステージ8からのトリガー信号を受け付けて、適切に吐出タイミングを制御することで、隣接フィールドを含む複数のフィールドに連続して吐出をすることが可能となる。
【0033】
即ち、吐出開始タイミング制御部CNTtは、基板6上の複数のフィールドのうち、N番目のフィールドにおける吐出動作が完了する前に、N+1番目のフィールドの吐出開始信号を受け付けてN+1番目のフィールドにおける吐出開始のタイミングを決定する。尚、Nは自然数である。また、N+1番目のフィールドは、ステージ移動方向においてN番目のフィールドの下流に位置するフィールドである。このように、本実施形態では、第1方向において第1のフィールドに続いて当該第1のフィールドと隣接する第2のフィールドに吐出材を吐出させるときに、第1のフィールドにおける吐出動作が完了する前に、第2のフィールドの吐出開始信号を受け付ける。そして、吐出開始タイミング制御部CNTtは、第2のフィールドにおける吐出開始のタイミングを決定する。
【0034】
図7は、図6に示す吐出制御を行う場合において、インプリント装置における複数フィールドに連続で吐出する場合の動作を示す図である。図7(a)は、基板ステージ8の中心座標がインプリント位置にある状態を示している。基板ステージ8を吐出装置10方向に等速駆動させ、隣接フィールドを含む1行分の吐出動作を実施する。図7(b)に示すように1行分の連続吐出が完了したら、図7(c)に示すインプリント位置に基板ステージ8を移動させる。そして、インプリント動作が行われる。一番目のフィールド15のインプリント動作が完了後、吐出済みのフィールドに順次インプリント動作が行われる。吐出済みのフィールドのインプリントが全て完了したら、移動方向に交差する方向の次列の吐出動作に移行する。このように、本実施形態の処理によれば、各行のフィールドに連続して吐出することができるので、1回の吐出動作で1行分のフィールドの吐出を完了することができる。このため、比較例と比べてスループットを向上させることができる。
【0035】
<<第2実施形態>>
第1実施形態では、隣接フィールドを含む複数のフィールドに連続して吐出をする連続吐出制御を説明した。第2実施形態では、連続吐出制御を行う際に、基板ステージ8の位置を補正しながら基板ステージ8をステージ移動方向に移動する例を説明する。
【0036】
インプリント装置1では、フィールドに高精度に吐出するために、基板ステージ8の移動方向に直交する直交方向、及び、回転方向の基板位置を、フィールド毎に調整している。ここで、第1実施形態で説明したように、隣接フィールドを含む複数のフィールドに連続して吐出をする場合、基板6をステップ移動させるための時間が確保できない虞がある。本実施形態では、基板ステージ8の位置を補正しながら基板ステージ8をステージ移動方向に等速移動させる例を説明する。
【0037】
図8は、基板ステージ8の位置を補正する例を説明する図である。図8(a)は、基板6上の1行分のフィールドに連続吐出する際の基板ステージ8の動作軌跡を示した図である。図8(a)では、11個のフィールド15によって1行分のフィールドが構成されている。基板ステージ8の等速移動方向に対する直交方向(図の方向)には、基板ステージ8自身の走り誤差が含まれる。このため、各フィールド15が理想的な格子状にならない。走り誤差は、基板ステージ8ガイドの加工精度、または、位置計測センサのリニアリティ誤差等によって発生する。特にインプリント装置では、数umの吐出位置精度が要求されるため、基板ステージ8の走り誤差は許容できない。
【0038】
ここで、基板ステージ8の走り誤差は、予め測定して求めることができる。例えば、吐出した吐出材11をインプリントせずに、装置内に構成された顕微鏡(不図示)で位置計測することで、吐出位置のバラツキを計測することができる。フィールド内に吐出された、各吐出材11の位置の平均値(X,Y)を求めることで、各フィールドの走り誤差1を算出することができる。
【0039】
図8(b)は、図8(a)に示す走り誤差が生じている場合に、基板ステージ8をステップ移動させる例を示している。図8(b)に示すように、フィールドとフィールドとの間で、走り誤差1を補正するように、方向に基板ステージ8をステップ移動することで、吐出位置の誤差を補正することができる。ただし、隣接したフィールドに連続吐出する場合、ステップ移動するための時間が確保できない虞がある。また、ステップ移動量によっては、オーバーシュートまたはアンダーシュートが発生し、振動が減衰するのに時間がかかる。その場合、次フィールドの飛び込み領域の吐出位置精度が悪くなる虞がある。
【0040】
本実施形態では、図8(c)に示すように、基板ステージ8の位置を補正する際に、フィールド間でのみ移動させる制御を行わず、フィールドに吐出動作が実行中の場合にも位置補正を行うように制御する。具体的には、まず、各フィールドの補正量2を求める。補正量2は、走り誤差1を補正する補正量に相当する。そして、各フィールドの補正量2の間を近似補間することで、連続的な駆動軌跡を生成する。この駆動軌跡に従って基板ステージ8を、吐出動作が実行中の場合においても位置補正することで、隣接したフィールド間でも、位置補正しながら連続して吐出動作を実施することができる。
【0041】
尚、図8の例では、方向の補正のみを説明したが、回転方向についても同様に回転補正することができる。例えば、装置内の顕微鏡(不図示)で計測した各吐出材11の位置から回転補正量を算出することができる。そして、フィールド毎の回転補正量を近似補間して連続的な軌跡を生成し、回転補正しながら連続して吐出動作を実施することができる。尚、このような位置補正に応じて、吐出パターン情報を補正してもよい。
【0042】
一方、等速移動させる方向にも走り誤差がある場合がある。方向の走り誤差も同様に、吐出位置精度に影響を与える。また、誤差補正だけでなく、フィールド毎に吐出間隔を変える要求がある場合がある。このような場合、速度をフィールド毎に変更すると、整定時間が必要になるので、方向のステップ移動と同様に、隣接フィールドに連続して吐出をする場合、隣接フィールド間での速度変更ができない。
【0043】
ここで、等速移動させる方向における走り誤差は、基板ステージ8の速度誤差であるといえる。そして、基板ステージ8の速度誤差は、ステージ移動方向である方向の吐出間隔(吐出倍率)が変動することを意味する。従って、図6で示した各ノズルのノズル列制御部CNTa~CNTdで制御している一定周期で吐出している吐出周波数を調整することで、吐出間隔誤差を補正することができる。尚、吐出周波数は、基板ステージ8のように物体を移動させるものではなく、電気的に瞬時切替えが可能である。即ち、吐出周波数は、フィールド単位で瞬時的な切り替えが可能であることから、フィールド間で吐出周波数を可変にすることができる。このため、吐出間隔誤差の補正を容易に行うことができる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によれば、基板ステージ8の走り誤差を補正するように制御することで、隣接したフィールドに連続吐出する際に、誤差補正をしながら連続吐出を行うことで、吐出位置精度を確保することができる。
【0045】
<<第3実施形態>>
第1実施形態および第2実施形態は、フィールドが格子状に整列される基板6を用いる例を説明した。即ち、隣接フィールドが、ステージ移動方向においてオーバーラップしていない例を説明した。本実施形態は、隣接フィールドがステージ移動方向においてオーバーラップしている場合の例を説明する。
【0046】
図9は、隣接フィールドが、ステージ移動方向(Y方向)においてオーバーラップしたレイアウトを示す図である。ナノインプリントに限らず、半導体プロセスでは、図9(a)に示す様なパズル形状をしたフィールド16が用いられる場合がある。このようなフィールド16では、アライメントマーク等(不図示)をオーバーラップした領域に配置することで、パターン領域(例えばメモリセル部など)を有効に確保することができる。このようなレイアウトにおいて、フィールド16の形状に合わせて吐出領域を決定した場合、隣接フィールドで吐出領域の一部がステージ移動方向においてオーバーラップする。オーバーラップした領域に対しては、2種類の吐出パターンが混在することになる。同一のノズル列は、同時刻において異なる吐出周波数、または、異なる吐出タイミングで制御することはできない。そこで、本実施形態では、吐出領域がオーバーラップしないように制限を設ける。
【0047】
図9(b)は、図9(a)のオーバーラップ部分を拡大した図である。隣接するフィールド16の間隔17は、数umである。図9(b)に示すように、インプリント領域がオーバーラップしたフィールド16に対し、吐出領域がオーバーラップしないように、インプリント領域の内側に制限18を設ける。そして、制限18の境界を超えないように、制御部12は、各フィールドの吐出パターンを生成する。制限18を設けた場合、吐出できない領域19が発生する。例えば図9(b)の上段の領域19は、紙面に向かって左側のフィールド16のインプリント領域であるものの、吐出領域から除外されている。同様に、図9(b)の下段の領域19は、紙面に向かって右側のフィールド16のインプリント領域であるものの、吐出領域から除外されている。ここで、インプリント領域の周辺部分は、インプリント領域外への吐出材11の染み出しを抑制するために、吐出材11をインプリント領域の内側に配置することが行われる。このため、吐出できない領域19に吐出材11を配置することない。ゆえに領域19が発生しても特に問題にはならない。吐出パターン情報は、この制限18の範囲内で生成され、吐出制御部21に入力される。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によれば、吐出領域がオーバーラップしないように、吐出領域に制限を設けることで、オーバーラップしたインプリントのレイアウトでも、隣接フィールドの連続吐出動作を実施することができる。
【0049】
<<その他の実施形態>>
上述した実施形態では、ノズル列幅の長さが、隣接フィールド間の長さよりも長い場合を例に挙げて説明したが、これに限られない。ノズル列幅が隣接フィールド間の長さと同じまたは短いような場合において、前述した実施形態で説明した制御を行ってもよい。
【0050】
また、第1実施形態から第3実施形態をそれぞれ説明したが、各実施形態が組み合わせた形態を用いてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 インプリント装置
6 基板
8 基板ステージ
10 吐出装置
11 吐出材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9