(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】携帯用加工機
(51)【国際特許分類】
B23D 45/16 20060101AFI20231212BHJP
B23D 47/02 20060101ALI20231212BHJP
B23D 47/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B23D45/16
B23D47/02
B23D47/00 Z
(21)【出願番号】P 2019218388
(22)【出願日】2019-12-02
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100187436
【氏名又は名称】寺脇 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100155136
【氏名又は名称】伊藤 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100125955
【氏名又は名称】藤田 有三子
(74)【代理人】
【識別番号】100167243
【氏名又は名称】上田 充
(72)【発明者】
【氏名】可児 利之
(72)【発明者】
【氏名】後藤 弘
(72)【発明者】
【氏名】木村 佳弘
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-329001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D45/00-65/04
B27B 1/00-23/00
B27G 1/00-23/00
B25F 1/00-5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯用加工機であって、
被加工材に当接させるためのベースと、
電動モータと、
前記電動モータの駆動力によって回転するように構成された加工刃であって、前記加工刃の前記ベースからの突出量が変更可能となるように前記ベースに対して揺動可能に構成された加工刃と、
前記ベース、または、該ベース以外の支持部材に取り付けられるデプスガイドと
を備え、
前記デプスガイドは、前記ベースに対する前記加工刃の揺動位置を固定するためのデプスガイド本体と、前記デプスガイドを前記ベースまたは前記支持部材に取り付けるための取付用貫通孔を有する取付部と、を備え、
前記取付部は、前記加工刃によって加工が進められる方向である加工方向と、前記加工刃の側面に直交する方向である直交方向と、に実質的に直交する方向に前記取付用貫通孔を通って延在する軸線を有する1つのみの連結部材によって、前記ベースまたは前記支持部材に取り付けられ、
前記デプスガイドは、前記加工刃の前記側面と交差する方向に前記デプスガイドが傾動可能な遊びを持って前記ベースまたは前記支持部材に取り付けられた
携帯用加工機。
【請求項2】
携帯用加工機であって、
被加工材に当接させるためのベースと、
電動モータと、
前記電動モータの駆動力によって回転するように構成された加工刃であって、前記加工刃の前記ベースからの突出量が変更可能となるように前記ベースに対して揺動可能に構成された加工刃と、
前記ベース、または、該ベース以外の支持部材に取り付けられるデプスガイドと
を備え、
前記デプスガイドは、前記ベースに対する前記加工刃の揺動位置を固定するためのデプスガイド本体と、前記デプスガイドを前記ベースまたは前記支持部材に取り付けるための取付用貫通孔を有する取付部と、を備え、
前記取付部は、前記加工刃によって加工が進められる方向である加工方向と、前記加工刃の側面に直交する方向である直交方向と、に実質的に直交する方向に前記取付用貫通孔を通って延在する軸線を有する1つのみの連結部材によって、前記ベースまたは前記支持部材に取り付けられ、
前記ベースまたは前記支持部材は、前記取付部に向けて突出する凸部を有し、
前記凸部は、前記取付部と接触し、
前記凸部によって、前記取付部と、前記ベースまたは前記支持部材と、の間に、前記加工刃の前記側面と交差する方向に前記デプスガイドが傾動可能となるクリアランスが形成された
携帯用加工機。
【請求項3】
携帯用加工機であって、
被加工材に当接させるためのベースと、
電動モータと、
前記電動モータの駆動力によって回転するように構成された加工刃であって、前記加工刃の前記ベースからの突出量が変更可能となるように前記ベースに対して揺動可能に構成された加工刃と、
前記ベース、または、該ベース以外の支持部材に取り付けられるデプスガイドと
を備え、
前記デプスガイドは、前記ベースに対する前記加工刃の揺動位置を固定するためのデプスガイド本体と、前記デプスガイドを前記ベースまたは前記支持部材に取り付けるための取付用貫通孔を有する取付部と、を備え、
前記取付部は、前記加工刃によって加工が進められる方向である加工方向と、前記加工刃の側面に直交する方向である直交方向と、に実質的に直交する方向に前記取付用貫通孔を通って延在する軸線を有する1つのみの連結部材によって、前記ベースまたは前記支持部材に取り付けられ、
前記取付部は、前記ベースまたは前記支持部材に向けて突出する凸部を有し、
前記凸部は、前記ベースまたは前記支持部材と接触し、
前記凸部によって、前記取付部と、前記ベースまたは前記支持部材と、の間に、前記加工刃の前記側面と交差する方向に前記デプスガイドが傾動可能となるクリアランスが形成された
携帯用加工機。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の携帯用加工機であって、
前記凸部は、
前記加工刃の前記側面と略平行な方向に延在するか、または、
前記加工刃の前記側面と略平行に不連続に配列された複数の凸部の形態で構成された
携帯用加工機。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のいずれか一項に記載の携帯用加工機であって、
前記軸線の方向に見て前記凸部と重なる位置において前記取付部を前記ベースまたは前記支持部材に向けて付勢する付勢部材を備える
携帯用加工機。
【請求項6】
請求項1ないし請求項
5のいずれか一項に記載の携帯用加工機であって、
前記1つのみの連結部材はネジの形態であり、
前記取付部と前記ベースまたは前記支持部材との間と、前記取付部と前記ネジのネジ頭との間と、の両方にクリアランスが形成された
携帯用加工機。
【請求項7】
携帯用加工機であって、
被加工材に当接させるためのベースと、
電動モータと、
前記電動モータの駆動力によって回転するように構成された加工刃であって、前記加工刃の前記ベースからの突出量を変更可能となるように前記ベースに対して揺動可能、かつ、前記加工刃によって加工が進められる方向である加工方向に平行な傾動軸線を中心として傾動可能に構成された前記加工刃と、
前記ベース、または、該ベース以外の支持部材に取り付けられ、前記傾動軸線を中心として前記加工刃とともに傾動可能に構成されたデプスガイドと
を備え、
前記デプスガイドは、前記ベースに対する前記加工刃の揺動位置を固定するためのデプスガイド本体と、前記デプスガイドを前記ベースまたは前記支持部材に取り付けるための取付用貫通孔を有する取付部と、を備え、
前記ベースまたは前記支持部材は、前記加工方向に延在する第1の貫通孔を有し、
前記取付部は、前記加工方向に延在する第2の貫通孔を有し、
前記ベースまたは前記支持部材と、前記デプスガイドと、は、前記第1の貫通孔および前記第2の貫通孔を貫通する、前記傾動軸線と同軸の第1の軸部材によって互いに係合し、
前記加工刃の側面が前記ベースと直交する傾動位置に前記加工刃がある状態において、前記第1の貫通孔および前記第2の貫通孔のいずれか一方は、前記加工刃の前記側面に直交する方向である直交方向の幅が、前記直交方向と前記加工方向とに直交する方向の幅よりも大きい長孔として形成されており、
前記取付部は、前記第1の貫通孔を有する前記支持部材としてのアンギュラプレートに取り付けられ、
前記アンギュラプレートは、前記傾動軸線を中心とする円弧状のガイド孔を有し、
前記取付部は、前記加工方向に延在する第3の貫通孔を前記第2の貫通孔の上方または下方に有し、
前記携帯用加工機は、前記ガイド孔と前記第3の貫通孔とを貫通する第2の軸部材を有する締付機構であって、前記アンギュラプレートと前記取付部とを前記傾動軸線の方向に締め付ける締付機構を備える
携帯用加工機。
【請求項8】
携帯用加工機であって、
被加工材に当接させるためのベースと、
電動モータと、
前記電動モータの駆動力によって回転するように構成された加工刃であって、前記加工刃の前記ベースからの突出量を変更可能となるように前記ベースに対して揺動可能、かつ、前記加工刃によって加工が進められる方向である加工方向に平行な傾動軸線を中心として傾動可能に構成された前記加工刃と、
前記ベース、または、該ベース以外の支持部材に取り付けられ、前記傾動軸線を中心として前記加工刃とともに傾動可能に構成されたデプスガイドと
を備え、
前記デプスガイドは、前記ベースに対する前記加工刃の揺動位置を固定するためのデプスガイド本体と、前記デプスガイドを前記ベースまたは前記支持部材に取り付けるための取付用貫通孔を有する取付部と、を備え、
前記ベースまたは前記支持部材は、前記加工方向に延在する第1の貫通孔を有し、
前記取付部は、前記加工方向に延在する第2の貫通孔を有し、
前記ベースまたは前記支持部材と、前記デプスガイドと、は、前記第1の貫通孔および前記第2の貫通孔を貫通する、前記傾動軸線と同軸の第1の軸部材によって互いに係合し、
前記加工刃の側面が前記ベースと直交する傾動位置に前記加工刃がある状態において、前記第1の貫通孔および前記第2の貫通孔のいずれか一方は、前記加工刃の前記側面に直交する方向である直交方向の幅が、前記直交方向と前記加工方向とに直交する方向の幅よりも大きい長孔として形成されており、
前記取付部は、前記第1の貫通孔を有する前記ベースに取り付けられ、
前記取付部は、前記加工方向に延在する第3の貫通孔を前記第2の貫通孔の上方または下方に有し、
前記携帯用加工機は、前記加工方向に延在する第4の貫通孔および第5の貫通孔を有する補助プレートを備え、
前記ベースと前記取付部と前記補助プレートとは、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔と前記第4の貫通孔とを貫通する前記第1の軸部材によって互いに係合し、
前記取付部と前記補助プレートとは、さらに、前記第3の貫通孔と前記第5の貫通孔とを貫通する第2の軸部材によって互いに係合する
携帯用加工機。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の携帯用加工機であって、
前記長孔は、前記第2の軸部材を中心とする円弧状に形成された
携帯用加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯用加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯用マルノコ(以下、単にマルノコと呼ぶ)と称される切断機は、被切断材に当接させるための下面を有する略矩形のベースと、本体部と、を備えている。本体部は、電動モータと、電動モータによって回転駆動される略円形の鋸刃と、を備えている。本体部はベースに対して、その下面と反対側に配置されるが、鋸刃の一部は、ベースに設けられた貫通孔を貫通して、ベースの下面を超えて突出する。かかる切断機を使用する際、使用者は、鋸刃が回転した状態で、ベースの下面を被切断材に当接させ、切断機を移動させる。これによって、下面を超えて突出した鋸刃が、切断機の移動方向(以下、切断方向と呼ぶ)に沿って被切断材を切断する。
【0003】
かかるマルノコの1つとして、支軸を中心として本体部を揺動させることによって、鋸刃の突出量を調整可能なタイプが周知である。この種のマルノコでは、本体部の揺動をガイドするとともに切断方向における支軸と反対側で本体部を支持するために、デプスガイドが設けられる(例えば、下記の特許文献1,2)。
【0004】
デプスガイドは、支軸を中心とする円弧状のガイド孔を有している。ガイド孔には、本体部とデプスガイドとを係合させるための係合部品(例えば、ブレードケース(より具体的には、固定カバー)とデプスガイドとを締め付け固定するためのボルト)が挿入される。鋸刃の突出量を変更する場合、デプスガイドと、上記の係合部品または他の部品(例えば、固定カバー)と、の間での摺動が生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-89156号
【文献】特開2008-183784号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このタイプのマルノコにおいて、経年劣化や頻繁な使用等によってデプスガイドの寸法精度(例えば、平面度または曲げ精度)が悪化した場合や、ブレードケースが歪んでいる場合には、鋸刃の突出量の変更時に局所的に摺動荷重が大きくなり、円滑な摺動が得られないという問題があった。このような問題は、鋸刃の平行度調節機能付きのマルノコにおいて、平行度の調整によってデプスガイドと他の部品(例えば、固定カバー)との相対位置関係が変化することによっても生じ得る。上述の問題は、マルノコに限らず、ベースと、ベース下面側への突出量を変更可能に構成された加工刃と、デプスガイドと、を備える種々の携帯用加工機に共通する。
【0007】
本発明は、携帯用加工機においてデプスガイドに関する摺動性を向上させることを目的とする。
【0008】
本発明の一態様によれば、携帯用加工機が提供される。この携帯用加工機は、被加工材に当接させるためのベースと、電動モータと、電動モータの駆動力によって回転するように構成されるとともに、加工刃のベースからの突出量が変更可能となるようにベースに対して揺動可能に構成された加工刃と、ベース、または、ベース以外の支持部材に取り付けられるデプスガイドと、を備えている。デプスガイドはベースに対する加工刃の揺動位置を固定するためのデプスガイド本体と、デプスガイドをベースまたは支持部材に取り付けるための取付孔を有する取付部と、を備えている。取付部は、加工刃によって加工が進められる方向である加工方向と、加工刃の側面に直交する方向である直交方向と、に実質的に直交する方向に取付用貫通孔を通って延在する軸線を有する1つのみの連結部材によって、ベースまたは支持部材に取り付けられる。
【0009】
かかる携帯用加工機によれば、デプスガイドは、加工方向と直交方向とに実質的に直交する方向に取付用貫通孔を通って延在する軸線を有する1つのみの連結部材によってベースまたは支持部材に取り付けられるので、当該軸線を中心として回転可能な遊びを持ってベースまたは支持部材に取り付けられ得る。このため、デプスガイドと、係合部品または他の部品と、の摺動負荷が大きくなった場合に、デプスガイドを、軸線を中心とした回転方向に僅かに逃がして、摺動負荷の増大を吸収することができる。したがって、デプスガイドに関する摺動性を向上できる。連結部材は、ネジであってもよい。あるいは、連結部材は、ネジが形成されていない軸部材であってもよく、この場合、軸部材は、ベースまたは支持部材にかしめられてもよい。
【0010】
本発明の一態様によれば、デプスガイドは、加工刃の側面と交差する方向にデプスガイドが傾動可能な遊びを持ってベースまたは支持部材に取り付けられてもよい。かかる態様によれば、デプスガイドと、係合部品または他の部品と、の摺動負荷が大きくなった場合に、デプスガイドを、加工刃の側面と交差する方向に僅かに傾動させて、摺動負荷の増大を吸収することができる。
【0011】
本発明の一態様によれば、ベースまたは支持部材は、取付部に向けて突出する凸部を有していてもよい。凸部は、取付部と接触していてもよい。凸部によって、取付部と、ベースまたは支持部材と、の間に、加工刃の側面と交差する方向にデプスガイドが傾動可能となるクリアランスが形成されてもよい。かかる態様によれば、凸部を支点としてデプスガイドを傾動させることができる。
【0012】
本発明の一態様によれば、取付部は、ベースまたは支持部材に向けて突出する凸部を有していてもよい。凸部は、ベースまたは支持部材と接触していてもよい。凸部によって、取付部と、ベースまたは支持部材と、の間に、加工刃の側面と交差する方向にデプスガイドが傾動可能となるクリアランスが形成されてもよい。かかる態様によれば、凸部を支点としてデプスガイドを傾動させることができる。
【0013】
本発明の一態様によれば、凸部は、加工刃の側面と略平行な方向に延在していてもよい。代替的に、凸部は、加工刃の側面と略平行に不連続に配列された複数の凸部の形態で構成されてもよい。かかる態様によれば、デプスガイドを、加工刃の側面に対して略直交する方向に傾動させることができる。換言すれば、デプスガイドの傾動方向を、加工刃の側面に対して略直交する方向に誘導できる。したがって、摺動負荷の増大を効率的に吸収できる。
【0014】
本発明の一態様によれば、携帯用加工機は、軸線の方向に見て凸部と重なる位置において取付部をベースまたは支持部材に向けて付勢する付勢部材を備えていてもよい。かかる態様によれば、付勢部材が、取付部をベースまたは支持部材に向けて付勢することにより、デプスガイドに摺動負荷が作用していないときに、デプスガイドが傾動していない状態を保持することができる。つまり、デプスガイドのガタつきを抑制できる。
【0015】
本発明の一態様によれば、取付部とベースまたは支持部材との間と、取付部とネジのネジ頭との間と、の両方にクリアランスが形成されていてもよい。かかる態様によれば、デプスガイドに大きな摺動負荷が作用した際に、デプスガイドを傾動させやすい。
【0016】
本発明の一態様によれば、携帯用加工機が提供される。この携帯用加工機は、被加工材に当接させるためのベースと、電動モータと、電動モータの駆動力によって回転するように構成されるとともに、加工刃のベースからの突出量を変更可能となるようにベースに対して揺動可能、かつ、加工刃によって加工が進められる方向である加工方向に平行な傾動軸線を中心として傾動可能に構成された加工刃と、ベース、または、ベース以外の支持部材に取り付けられ、傾動軸線を中心として加工刃とともに傾動可能に構成されたデプスガイドと、を備えている。デプスガイドは、ベースに対する加工刃の揺動位置を固定するためのデプスガイド本体と、デプスガイドをベースまたは支持部材に取り付けるための取付用貫通孔を有する取付部と、を備えている。ベースまたは支持部材は、加工方向に延在する第1の貫通孔を有している。取付部は、加工方向に延在する第2の貫通孔を有している。ベースまたは支持部材と、デプスガイドと、は、第1の貫通孔および第2の貫通孔を貫通する、傾動軸線と同軸の第1の軸部材によって互いに係合する。加工刃の側面がベースと直交する傾動位置に加工刃がある状態において、第1の貫通孔および第2の貫通孔のいずれか一方は、加工刃の側面に直交する方向である直交方向の幅が、直交方向と加工方向とに直交する方向の幅よりも大きい長孔として形成されている。
【0017】
かかる携帯用加工機によれば、デプスガイドに大きな摺動負荷が作用した際に、第1の軸部材と長孔との相対移動が可能な範囲内で、摺動負荷が低減される方向にデプスガイドを変位させることができる。この変位により摺動負荷が吸収されるので、デプスガイドに関する摺動性を向上できる。第1の貫通孔および第2の貫通孔のうちの第2の貫通孔が長孔として形成されていてもよい。つまり、長孔がデプスガイドの取付部に形成されていてもよい。この場合、加工刃とデプスガイドとは一緒に傾動するので、加工刃の傾動位置に関係なく、加工刃と長孔との相対位置(より正確には、相対角度)が一定になる。このため、加工刃の傾動位置に関係なく、デプスガイドを所望の方向に変位させることができる。
【0018】
本発明の一態様によれば、取付部は、第1の貫通孔を有する支持部材としてのアンギュラプレートに取り付けられてもよい。アンギュラプレートは、傾動軸線を中心とする円弧状のガイド孔を有していてもよい。取付部は、加工方向に延在する第3の貫通孔を第2の貫通孔の上方または下方に有していてもよい。携帯用加工機は、ガイド孔と第3の貫通孔とを貫通する第2の軸部材を有する締付機構であって、アンギュラプレートと取付部とを傾動軸線の方向に締め付ける締付機構を備えていてもよい。かかる態様によれば、締付機構によってアンギュラプレートと取付部との間に作用する摩擦力を超える摺動負荷がデプスガイドに作用した際のデプスガイドの変位方向を、第2の軸部材を中心とした円弧方向に誘導することができる。つまり、デプスガイドの変位軌道を安定化させることができる。
【0019】
本発明の一態様によれば、取付部は、第1の貫通孔を有するベースに取り付けられてもよい。取付部は、加工方向に延在する第3の貫通孔を第2の貫通孔の上方または下方に有していてもよい。携帯用加工機は、加工方向に延在する第4の貫通孔および第5の貫通孔を有する補助プレートを備えていてもよい。ベースと取付部と補助プレートとは、第1の貫通孔と第2の貫通孔と第4の貫通孔とを貫通する第1の軸部材によって互いに係合していてもよい。取付部と補助プレートとは、さらに、第3の貫通孔と第5の貫通孔とを貫通する第2の軸部材によって互いに係合していてもよい。かかる態様によれば、デプスガイドの変位方向を、第2の軸部材を中心とした円弧方向に誘導することができる。つまり、デプスガイドの変位軌道を安定化させることができる。
【0020】
本発明の一態様によれば、長孔は、第2の軸部材を中心とする円弧状に形成されてもよい。かかる態様によれば、デプスガイドの変位方向を所望の方向(例えば、第2の軸部材を中心とした円弧方向、および、加工刃の側面に直交する方向)に限定することができる。換言すれば、デプスガイドが、直交方向と加工方向とに直交する方向にガタつくことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態によるマルノコの斜視図である。
【
図2】マルノコの斜視図であり、デプスガイドの視認性を高めるために、本体の一部が取り除かれた図である。
【
図3】デプスガイドの取付構造を示す、マルノコの縦断面図である。
【
図4】デプスガイドの取付構造を示す、マルノコの縦断面図である。
【
図6】デプスガイドの取付構造を示す、マルノコの横断面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態による支持部材および取付部を示す断面図であり、
図5に対応している。
【
図8】本発明の第3実施形態による支持部材を示す断面図であり、
図6に対応している。
【
図9】本発明の第4実施形態によるマルノコの斜視図であり、
図2に対応している。
【
図10】デプスガイドの取付構造を示す、マルノコの部分縦断面図であり、
図5に対応している。
【
図11】デプスガイドの取付構造を示す、マルノコの横断面図であり、
図6に対応している。
【
図12】本発明の第5実施形態によるマルノコの斜視図である。
【
図13】マルノコの斜視図であり、デプスガイドの視認性を高めるために、本体部が取り除かれた図である。
【
図16】
図14のA-A線に沿ったアンギュラプレートおよび取付部の断面図である。
【
図17】本発明の第6実施形態によるマルノコの斜視図である。
【
図18】前側から見たデプスガイドの取付部の拡大図である。
【
図19】後側から見たデプスガイドの取付部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
A.第1実施形態:
本発明の第1実施形態による携帯用マルノコ(以下、単にマルノコと呼ぶ)10について
図1~6を参照して説明する。以下の説明では、使用者がマルノコ10を手に持って被切断材を切断するときにマルノコ10を進行させる方向(切断が進められる方向であり、切断方向とも呼ぶ)を前側とし、その反対方向を後側と定義する。また、このとき、鉛直方向上方に位置する側を上側と定義し、その反対側を下側と定義する。さらに、前後方向と上下方向とに直交する方向を左右方向と定義する。左右方向のうち、後側から前側を見たときの右側を右側と定義し、その反対側を左側と定義する。
【0023】
図1に示すように、マルノコ10は、ベース20と本体部30とを備えている。ベース20は、略矩形の外形を有している。ベース20の長手方向は、前後方向である。ベース20は、被切断材を切断するときに当該被切断材に当接させるための下面を備えている。
【0024】
本体部30は、基本的には、ベース20に対して上側に配置される。本体部30は、電動モータ31(
図1参照)と、ハンドル32(
図1参照)と、電動モータ31によって回転駆動されるチップソーと称される略円形の鋸刃36(
図4参照)と、ベース20よりも上側において鋸刃36を覆う固定カバー35(
図2および
図4参照)と、を備えている。
図4に示すように、鋸刃36の一部は、ベース20の貫通孔を貫通して、ベース20よりも下側に突出している。マルノコ10を使用する際、使用者が、ハンドル32の近傍に設けられたトリガ33を押すと、電動モータ31の駆動力によって鋸刃36が回転する。使用者は、この状態で、ベース20の下面を被切断材に当接させ、マルノコ10を前方に移動させる。これによって、ベース20を超えて突出した鋸刃36が、マルノコ10の移動方向(つまり、切断方向)に沿って被切断材を切断する。
【0025】
鋸刃36は、ベース20から下方への突出量を変更可能に構成される。具体的には、本体部30は、前側において、鋸刃36の回転軸線と平行に左右方向に延在する支軸34(
図1および
図2参照)のまわりを揺動可能となるように、支軸34によって支持される。支軸34のまわりでの本体部30の揺動位置を変更することによって、鋸刃36のベース20からの突出量が変更され得る。支軸34は、ベース20上に設けられた支持部材40に取り付けられている。支持部材40は、ベース20の下面より下方において前後方向に延在する仮想的な傾動軸線を中心としてベース20に対して傾動可能に構成される。これにより、支持部材40によって支持される鋸刃36も、ベース20に対して傾動可能に構成される。この構成は周知であるので、詳しい説明は省略する。以下の説明では、鋸刃36は傾いていない(つまり、鋸刃36の側面が左右方向に直交する)状態にあるものとして、マルノコ10の向きに言及する。
【0026】
また、本体部30は、後側において、デプスガイド50に支持される。具体的には、
図2に示すように、デプスガイド50は、ベース20に対する鋸刃36(換言すれば、本体部30)の揺動位置を固定するためのデプスガイド本体51と、取付部52と、を備えている。本実施形態では、デプスガイド本体51は、鋸刃36の側面(つまり、略円形の面)と略平行に配置される板状部材である。取付部52は、支持部材40に取り付けられる(詳細は後述する)。デプスガイド本体51は、鋸刃36の側面と直交する方向にデプスガイド本体51を貫通するガイド孔53を有している。固定カバー35の貫通孔を貫通するボルトが、回り止め状態でガイド孔53を貫通している。当該ボルトにはナットが取り付けられており、ナットの外周には固定レバー60が取り付けられている。固定レバー60を用いてナットを締め付けることによって、固定カバー35とデプスガイド本体51とが、鋸刃36の側面と直交する方向に締め付けられる。これによって、本体部30は、デプスガイド50に固定され、デプスガイド50によって支持される。ガイド孔53は、支軸34を中心とする円弧形状に形成されているので、本体部30の揺動位置に応じてボルトの位置をガイドすることができる。
【0027】
かかる構成によれば、使用者は、固定レバー60を緩めて、支軸34のまわりで本体部30を揺動させる。このとき、ガイド孔53を貫通するボルトは、ガイド孔53を形成するデプスガイド本体51の内面上を摺動する。また、固定カバー35のうちの、ボルトが貫通する貫通孔の付近の部分は、デプスガイド本体51(デプスガイド本体51の右側面)上を摺動する。そして、使用者は、所望の揺動位置で固定レバー60を締めることにより、本体部30を所望の揺動位置に固定できる。これにより、鋸刃36のベース20から下方への突出量が、所望の程度に調節される。
【0028】
このようにして鋸刃36のベース20からの突出量を変更する際、上述のように、ガイド孔53を貫通するボルトと、デプスガイド本体51と、は摺動関係にある。また、固定カバー35とデプスガイド本体51とは摺動関係にある。このようなデプスガイド本体51と、他の部品と、の摺動関係において、デプスガイド50の寸法精度が悪い場合や、固定カバー35が歪んでいる場合には、鋸刃36の突出量の変更時に局所的に摺動荷重が大きくなり、円滑な摺動が得られないことがあった。つまり、途中で摺動不能となる事象や、摺動のために大きな力が必要となる事象が生じ得る。本実施形態では、このような事象に対して、デプスガイド50に関する摺動性を向上させる構成を有している。以下、その内容について説明する。
【0029】
図2および
図5に示すように、デプスガイド50の取付部52は、上下方向に直交する方向に広がる板状の部分である。
図6から分かるように、取付部52は、前後方向における中央かつ左右方向における右端が切り欠かれている。これにより、固定レバー60の基端と取付部52とが干渉することが防止される(
図2参照)。取付部52は、デプスガイド50を支持部材40に取り付けるための1つの取付用貫通孔54を有している。取付用貫通孔54は、取付部52を、その板厚方向(つまり、上下方向)に貫通している(
図5参照)。取付用貫通孔54の内面には雌ネジは形成されていない。
【0030】
図5および
図6に示すように、支持部材40には、取付部52を取り付けるための取付平面41が形成されている。取付平面41は、支持部材40の他の領域よりも下側に凹んでいる。取付部52は、取付平面41内において、連結部材の一例としての段付ネジ80によって支持部材40に取り付けられる。具体的には、段付ネジ80は、ネジ頭81と、ネジ頭81から延在する段部82と、段部82の外径よりも小さい外径を有し、雄ネジが形成されたネジ部83と、を備えている。また、段付ネジ80は、軸線84を有している。軸線84は、上下方向に(換言すれば、切断方向と、鋸刃36の側面に直交する方向と、に直交する方向)に取付用貫通孔54を通って延在している。取付部52は、段部82が取付用貫通孔54を貫通し、かつ、段部82の下端面が取付平面41に当接した状態で、ネジ部83が支持部材40内にねじ込まれるように、支持部材40に取り付けられる。
【0031】
図5および
図6に示すように、取付平面41には、上側に向けて(つまり、取付部52に向けて)突出する凸条部42が形成されている。凸条部42は、取付平面41を前後方向に横切って、鋸刃36の側面と略平行な方向に延在している。本実施形態では、凸条部42は、取付部52上の左右方向における右側(換言すれば、取付部52の基部側)に偏った位置で取付部52と接触する位置に形成されている。
図5に示すように、この凸条部42によって、取付部52と支持部材40(より具体的には、取付平面41)との間にクリアランス85が形成されている。クリアランス85は、取付部52のうちの凸条部42よりも左側の領域全体に亘って形成されており、その領域には、上下方向に見たときに、ネジ頭81と重複する、段部82の周囲の領域が含まれる。
【0032】
図2~6に示すように、取付部52の上には付勢部材70が配置される。付勢部材70は、本実施形態では、板バネの形態である。より具体的には、付勢部材70は、
図2および
図6に示すように、本体71と、2つの突出部72と、を備えている。本体71は、略矩形の平板の形態である。本体71は、その長手方向が前後方向に一致するように配置されている。本体71の左端は、支持部材40上に支持されている。2つの突出部72は、前後方向における本体71の両端において、本体71の右端から右側にそれぞれ延在している。
【0033】
突出部72は、下側、すなわち、取付部52側に突出するように折り曲げられた凸条部73を備えている。
図5および
図6に示すように、凸条部73は、軸線84の方向(つまり、上下方向)に見て凸条部42と重なる位置に形成されている。
図5に示すように、本体71は、本体71をその厚み方向に貫通する貫通孔74を有している。本実施形態では、付勢部材70は、この貫通孔74を利用して、段付ネジ80によって取付部52と共締めされる。凸条部73によって、取付部52とネジ頭81との間には、クリアランス86が形成されている。
【0034】
付勢部材70は、本体71の左端が支持部材40上に支持された状態で段付ネジ80によって締め付けられるので、本体71は、下側に向けて押圧される。この押圧力は、凸条部73を介して取付部52に下向きに作用し、取付部52を下向きに付勢する。凸条部73は、軸線84の方向に見て凸条部42と重複する位置にあるので、凸条部73からの付勢力は、取付部52に対してモーメントを発生させない。このため、取付部52は、クリアランス85,86が維持された状態で、水平に保持される。換言すれば、デプスガイド本体51は、クリアランス85,86が維持された状態で(換言すれば、フローティング状態で)、鋸刃36の側面に対して平行に保持される。このため、クリアランス85,86が形成されているにもかかわらず、デプスガイド50のガタつきを抑制することができる。
【0035】
上述したマルノコ10によれば、デプスガイド50の取付部52は、上下方向に延在する軸線84を有する1つの段付ネジ80のみによって支持部材40に取り付けられる。このため、デプスガイド50は、軸線84を中心として、
図2に矢印A1で示す方向に僅かに回転可能な遊びを持って支持部材40に取り付けられ得る。したがって、デプスガイド50と、ガイド孔53を貫通するボルト、または、固定カバー35と、の摺動負荷が大きくなった場合に、デプスガイド50を、矢印A1で示す方向に変位させて、摺動負荷の増大を吸収することができる。したがって、デプスガイド50に関する摺動性を向上できる。
【0036】
しかも、マルノコ10によれば、デプスガイド50は、取付部52と支持部材40との間にクリアランス85が形成され、かつ、ネジ頭81(より具体的には、付勢部材70)と取付部52との間にクリアランス86が形成された状態で、支持部材40に取り付けられている。換言すれば、
図3に矢印A2で示すように、凸条部42の上端と取付部52の下面との接触部を支点として鋸刃36の側面と直交する方向にデプスガイド50が傾動可能な遊びを持って、支持部材40に取り付けられている。したがって、摺動負荷が大きくなった場合に、デプスガイド50を、矢印A2で示す方向に変位させて、摺動負荷の増大を吸収することができる。また、凸条部42は、鋸刃36の側面と平行な方向に延在しているので、デプスガイド50の傾動方向を矢印A2の方向(つまり、左右方向)に誘導できる。
【0037】
また、凸条部42は、上述したように、取付部52上の左右方向における取付部52の基部側(つまり、デプスガイド本体51側)に偏った位置で取付部52と接触する位置に形成されている。取付部52の基部の付近は、先端側よりも直角精度(デプスガイド本体51に対して直交する方向に延在する精度)が高い。このため、本実施形態のように取付部52の基部付近で凸条部42と凸条部73とによって取付部52を保持すれば、デプスガイド本体51と鋸刃36との平行度を精度良く確保できる。
【0038】
上述したマルノコ10は、種々の変形が可能である。例えば、凸条部は、鋸刃36の側面に対して角度付けられた方向に延在していてもよい。こうしても、凸条部を支点としたデプスガイド50の傾動方向が、左右方向の成分を有していれば、摺動負荷をある程度、吸収することができる。
【0039】
さらに、支持部材40に代えて、支持部材40と取付部52との間にスペーサが配置され、それによって、当該スペーサを支点としてデプスガイド50が鋸刃36の側面と交差する方向に傾動可能な遊びが確保されてもよい。あるいは、支持部材40と取付部52との間にバネが配置され、それによって、デプスガイド50が鋸刃36の側面と交差する方向に傾動可能な遊びが確保されてもよい。この場合、バネは、段付ネジ80の段部82を取り囲む1つのコイルバネの形態であってもよいし、左右方向において、段付ネジ80よりも左側と右側との両方に配置された複数のコイルバネの形態であってもよいし、これらの形態の組み合わせであってもよい。
【0040】
さらに、段付ネジ80に代えて、通常のネジが使用されてもよい。この場合、ネジの周囲を取り囲むようにリングが配置されてもよい。この場合、リングは、段部82と同じ機能を果たすことができる。
【0041】
さらに、付勢部材70は、段付ネジ80によって取付部52と共締めされる構成に代えて、ネジ頭81と干渉することなく凸条部42に対応する箇所を上側から下方に向けて押さえるように、個別的に支持部材40に固定されてもよい。
【0042】
さらに、クリアランス85およびクリアランス86のうちの一方のみが形成されていてもよい。例えば、凸条部42が形成されていない場合、取付平面41と取付部52とは面接触するので、クリアランス85は形成されないが、デプスガイド50は、クリアランス86によって右側に傾動することができる。あるいは、付勢部材70が取付部52と共締めされず、ネジ頭81と取付部52とが接触する場合、クリアランス86は形成されないが、デプスガイド50は、クリアランス85によって左側に傾動することができる。
【0043】
さらに、鋸刃36がベース20に対して傾動可能に構成されていない場合には、支持部材40が省略され、取付部52が、支持部材40に代えて、ベース20に取り付けられてもよい。この場合、ベース20は、支持部材40の上述した構造を有していてもよい。
【0044】
B.第2実施形態:
本発明の第2実施形態によるマルノコについて
図7を参照して、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。第2実施形態によるマルノコは、支持部材40に代えて支持部材40aを備えている点と、取付部52に代えて取付部52aを備えている点と、が第1実施形態と異なっている。支持部材40aは、凸条部42を備えていない点のみが支持部材40と異なっている。その代わりに、取付部52aは、支持部材40に向けて突出する凸条部55aを備えている。かかる構成によっても、取付部52aと支持部材40aとの間にクリアランス85を形成することができる。
【0045】
C.第3実施形態:
本発明の第3実施形態によるマルノコについて
図8を参照して、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。第3実施形態によるマルノコは、支持部材40に代えて支持部材40bを備えている点のみが第1実施形態と異なっている。支持部材40bは、1つの凸条部42に代えて、複数(図示する例では、6つ)の凸部42bを備えている点のみが第1実施形態と異なっている。6つの凸部42bは、鋸刃36の側面と平行に不連続に配列されている。かかる構成によっても、デプスガイド50の傾動方向を左右方向に誘導できる。
【0046】
D.第4実施形態:
本発明の第4実施形態によるマルノコ100について
図9~11を参照して説明する。マルノコ100は、付勢部材70に代えて、付勢部材170を備えている点のみが、第1実施形態によるマルノコ10と異なっている。以下、マルノコ100について、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。付勢部材170は、本体71および突出部72に加えて、第1の脚部174と、2つの第2の脚部175と、を備えている。
【0047】
第1の脚部174は、本体71の左端全体から下向きに延在している。第1の脚部174の下端は、取付平面41上に配置されている。かかる構成によれば、支持部材40は、本体71の左端を支持するための特別な形状を備えている必要が無い。したがって、支持部材40の形状を簡素化できる。
【0048】
2つの第2の脚部175は、それぞれ、本体71の左右方向における中央において、本体71の前端および後端から前後方向の外側に延在し、さらに、折れ曲がって、下方に向けて延在している。第2の脚部175の下方に延在する部分は、取付部52に当接している。これによって、付勢部材170は、取付部52に対して回り止めされている。かかるマルノコ100によっても、マルノコ10と同様の効果を得ることができる。
【0049】
E.第5実施形態:
本発明の第5実施形態によるマルノコ200について
図12~16を参照して説明する。
図12に示すように、マルノコ200は、ベース220と本体部230とを備えている。本体部230は、電動モータ231と、ハンドル232と、鋸刃236と、固定カバー235と、を備えている。これらの基本的な構成は、マルノコ10と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0050】
鋸刃236は、ベース220からの突出量を変更可能に構成される。具体的には、本体部230は、前側において、鋸刃236の回転軸線と平行に左右方向に延在する支軸234(
図12および
図13参照)のまわりを揺動可能となるように、支軸234によって支持される。支軸234は、ブラケット237によって支持されている。
【0051】
図13に示すように、マルノコ200は、デプスガイド250を備えている。デプスガイド250は、鋸刃236の側面と略平行に配置されるデプスガイド本体251と、デプスガイド本体251から折れ曲がった取付部252と、を備えている。デプスガイド本体251は、支軸234を中心とする円弧状のガイド孔253を有している。デプスガイド250の取付部252は、前後方向に直交する方向に広がる板状の部分である。本体部230は、マルノコ10と同様にして、後側においてデプスガイド250によって支持される。かかる構造により、第5実施形態においても、第1実施形態と同様に、支軸234のまわりでの本体部230の揺動位置を変更することによって、鋸刃236のベース220からの突出量が変更され得る。
【0052】
ベース220上には、前側アンギュラプレート290と後側アンギュラプレート240とが取り付けられている。前側アンギュラプレート290は、ベース220の前後方向における前端付近に取り付けられている。前側アンギュラプレート290は、前後方向に延在するピン293を中心とする円弧状のガイド孔291を有している。ブラケット237の貫通孔(図示されていない)を貫通するボルトが、回り止め状態でガイド孔291を貫通している。当該ボルトにはナットが取り付けられており、ナットの外周には固定レバー292が取り付けられている。固定レバー292を用いてナットを締め付けることによって、ブラケット237と前側アンギュラプレート290とが、前後方向に締め付けられる。これによって、ブラケット237は、前側アンギュラプレート290に固定され、前側アンギュラプレート290によって支持される。ブラケット237は、ピン293のまわりで、傾動軸線AX1を中心として傾動可能に前側アンギュラプレート290に係合される。ガイド孔291は、ピン293を中心とする円弧形状に形成されているので、ブラケット237の傾動位置に応じてボルトの位置をガイドすることができる。この構成により、ブラケット237に支持される本体部230は、ベース220に対して傾動可能に構成される。
【0053】
後側アンギュラプレート240は、ベース220の前後方向における後端付近に取り付けられている。後側アンギュラプレート240は、
図13および
図14に示すように、傾動軸線AX1を中心とする円弧状のガイド孔241を有している。ガイド孔241は、後側アンギュラプレート240を前後方向(換言すれば、切断方向)に貫通している。ガイド孔241は、後側アンギュラプレート240の上側に配置されている。後側アンギュラプレート240は、
図14および
図15に示すように、ガイド孔241の下方に(本実施形態では真下に)第1の貫通孔242を有している。第1の貫通孔242は、前後方向に延在して、後側アンギュラプレート240を貫通している。
【0054】
デプスガイド250の取付部252は、第2の貫通孔254を有している。第2の貫通孔254は、実質的に円形状を有する丸孔である。第2の貫通孔254は、前後方向に延在して、取付部252を貫通している。取付部252は、さらに、第2の貫通孔254の上方に第3の貫通孔255を有している。第3の貫通孔255は、前後方向に延在して、取付部252を貫通している。
【0055】
後側アンギュラプレート240と取付部252とは、第1の貫通孔242および第2の貫通孔254を貫通する第1の軸部材270によって互いに係合している。第1の軸部材270は、傾動軸線AX1と同軸に配置されている。第1の軸部材270は、その先端部がかしめられることによって、抜け止め状態で第1の貫通孔242および第2の貫通孔254に挿入されている。
【0056】
図13および
図16に示すように、後側アンギュラプレート240と取付部252とは、さらに、締付機構280によって係合される。締付機構280は、固定ノブ281と第2の軸部材282とを備えている。第2の軸部材282は、ガイド孔241と第3の貫通孔255とを貫通するように抜け止め状態で配置されている。第2の軸部材282は、雄ネジ部を有しており、その雄ネジ部にはナットが取り付けられている。ナットの外周には固定ノブ281が取り付けられている。本体部230は後側においてデプスガイド250によって支持されるので、本体部230が傾動軸線AX1を中心として傾動する際、デプスガイド250も一緒に傾動する。このとき、第1の軸部材270は傾動軸として機能し、ガイド孔241は、第2の軸部材282の位置をガイドする。デプスガイド250が所望の傾動位置にあるときに固定ノブ281を回してナットを締め付けることによって、後側アンギュラプレート240と取付部252とが前後方向に締め付けられる。これによって、デプスガイド250および本体部230が所望の傾動位置に固定される。
【0057】
図15に示すように、第1の貫通孔242は、長孔として形成されている。より具体的には、鋸刃236の側面に直交する方向(つまり、左右方向)における第1の貫通孔242の幅W1は、左右方向と切断方向(つまり、前後方向)とに直交する方向(つまり、上下方向)における第1の貫通孔242の幅W2よりも大きい。従来のマルノコでは、第1の軸部材270と、第1の軸部材270が挿入される後側アンギュラプレート240の貫通孔と、のクリアランスは、最大でも片側で0.075mm程度であった。幅W2は、上下方向における第1の軸部材270と第1の貫通孔242とのクリアランスが従来と同等になるように設定される。一方、幅W1は、左右方向における第1の軸部材270と第1の貫通孔242とのクリアランスが、片側で0.25~0.50mmとなるように設定される。ただし、このクリアランスは一例であり、この値に限定されるものではない。
【0058】
上述したマルノコ200によれば、締付機構280によって後側アンギュラプレート240と取付部252との間に作用する摩擦力を超える摺動負荷がデプスガイド250に作用した際に、デプスガイド250を、第2の貫通孔254に挿入された第1の軸部材270とともに、第1の軸部材270と第1の貫通孔242(つまり、長孔)との相対移動が可能な範囲内で変位させることができる。この変位により、摺動負荷を吸収できるので、デプスガイド250に関する摺動性を向上できる。
【0059】
しかも、第2の軸部材282の周囲では、後側アンギュラプレート240と取付部252との間に大きな摩擦力が作用しており、第1の軸部材270と後側アンギュラプレート240との間には大きな摩擦力は作用していない。このため、デプスガイド250は、第2の軸部材282の周囲よりも第1の軸部材270の周囲で変位しやすい。したがって、
図15に矢印A3で示すように、第2の軸部材282(換言すれば、軸線AY1)を中心とした円弧方向にデプスガイド250が変位するように(換言すれば、鋸刃236の側面と直交する方向にデプスガイド250が傾動するように)、デプスガイド250の変位軌道を安定化させることができる。
【0060】
第1の貫通孔242は、第2の軸部材282を中心とする円弧状に形成されてもよい。こうすれば、デプスガイド250の変位軌道を矢印A3の方向にさらに誘導することができる。
【0061】
上述した実施形態に代えて、第1の貫通孔242が丸孔として形成され、第2の貫通孔254が長孔として形成されてもよい。この構成によっても、締付機構280によって後側アンギュラプレート240と取付部252との間に作用する摩擦力を超える摺動負荷がデプスガイド250に作用した際に、第1の軸部材270と第2の貫通孔254(つまり、長孔)との相対移動が可能な範囲内でデプスガイド250を変位させ、摺動負荷を吸収することができる。しかも、この構成によれば、傾動軸線AX1を中心として本体部230を傾動させる場合、鋸刃236とデプスガイド250とは一緒に傾動するので、鋸刃236の傾動位置に関係なく、鋸刃236と第2の貫通孔254(つまり、長孔)との相対位置(より正確には、相対角度)が一定になる。このため、鋸刃236の傾動位置に関係なく、鋸刃236の側面と直交する方向に傾動するようにデプスガイド250を変位させることができる。
【0062】
さらに、上述した実施形態に代えて、第3の貫通孔255は、第2の貫通孔254の下方に位置していてもよい。この場合、ガイド孔241は、第1の貫通孔242の下方に位置する。本願において「上方」および「下方」とは、真上または真下に限定的に解釈されることは意図されておらず、上下方向における位置関係のみを意味することが意図されている。
【0063】
F.第6実施形態:
本発明の第6実施形態によるマルノコ300について
図17~19を参照して説明する。
図17に示すように、マルノコ300は、ベース320と本体部330とを備えている。本体部330は、電動モータ331と、ハンドル332と、鋸刃336と、固定カバー335と、を備えている。これらの基本的な構成は、マルノコ10と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0064】
鋸刃336は、第5実施形態と同様に、ベース320からの突出量を変更可能に構成される。ベース320上には前側アンギュラプレート390が取り付けられている。前側アンギュラプレート390は、ベース320の前後方向における前端付近に取り付けられている。前側アンギュラプレート390は、ピン393を中心とする円弧状のガイド孔391を有している。前側アンギュラプレート390の機能は前側アンギュラプレート290の機能と同一であり、その説明は省略する。本体部330は、第5実施形態と同様に、ピン393と同軸の傾動軸線AX2を中心としてベース320に対して傾動可能に構成される。
【0065】
図19に示すように、マルノコ300は、デプスガイド350を備えている。デプスガイド350は、鋸刃336の側面と略平行に配置されるデプスガイド本体351と、デプスガイド本体351から折れ曲がった取付部352と、を備えている。デプスガイド本体351の構造および機能は、第5実施形態によるデプスガイド本体251と同様であるので、その説明は省略する。取付部352は、前後方向に直交する方向に広がる板状の部分である。
【0066】
第6実施形態では、取付部352は、ベース320に直接的に取り付けられる。具体的には、
図19に示すように、ベース320は、その後端において上方に突出する取付部321を備えている。取付部321は、第1の貫通孔322を有している。第1の貫通孔322は、前後方向に延在して、取付部321を貫通している。第1の貫通孔322は、実質的に円形状を有する丸孔である。
【0067】
図19に示すように、取付部352は、第2の貫通孔353と第3の貫通孔354とを有している。第2の貫通孔353および第3の貫通孔354は、前後方向に延在して、取付部352を貫通している。第3の貫通孔354は、第2の貫通孔353の上方(本実施形態では真上)に形成されている。第2の貫通孔353は、第5実施形態による第1の貫通孔242と同様に、長孔として形成されている。つまり、左右方向における第2の貫通孔353の幅は、上下方向における第2の貫通孔353の幅よりも大きい。一方、第3の貫通孔354は、実質的に円形状を有する丸孔である。
【0068】
図18に示すように、マルノコ300は、補助プレート380を備えている。補助プレート380は、上下方向に延在しており、取付部352の前面に接触するように配置される。補助プレート380は、第4の貫通孔381と第5の貫通孔382とを有している。第4の貫通孔381および第5の貫通孔382は、前後方向に延在して、補助プレート380を貫通している。第4の貫通孔381および第5の貫通孔382は、実質的に円形状を有する丸孔である。
【0069】
図18および
図19に示すように、ベース320と取付部352と補助プレート380とは、第1の貫通孔322と第2の貫通孔353と第4の貫通孔381とを貫通する第1の軸部材370によって互いに係合している。第1の軸部材370は、傾動軸線AX2と同軸に配置されている。第1の軸部材370は、その先端部がかしめられることによって、抜け止め状態で第1の貫通孔322、第2の貫通孔353および第4の貫通孔381に挿入されている。第1の軸部材370は、傾動軸線AX2を中心として本体部330およびデプスガイド350を傾動させる際の傾動軸としても機能する。
【0070】
さらに、取付部352と補助プレート380とは、第3の貫通孔354と第5の貫通孔382とを貫通する第2の軸部材383によって互いに係合している。第2の軸部材383は、その先端部がかしめられることによって、抜け止め状態で第3の貫通孔354および第5の貫通孔382に挿入されている。
【0071】
上述したマルノコ300によれば、デプスガイド350に大きな摺動負荷が作用した際に、第1の軸部材370と第2の貫通孔353(つまり、長孔)との相対移動が可能な範囲内で、デプスガイド350を変位させることができる。この変位により、摺動負荷を吸収できるので、デプスガイド350に関する摺動性を向上できる。
【0072】
しかも、第2の軸部材383を設けたことにより、
図19に矢印A4で示すように、第2の軸部材383(換言すれば、軸線AY2)を中心とした円弧方向にデプスガイド350が変位するように(換言すれば、鋸刃336の側面と直交する方向にデプスガイド350が傾動するように)、デプスガイド350の変位方向を誘導することができる。つまり、デプスガイド350の変位軌道を安定化させることができる。第2の貫通孔353は、第2の軸部材383を中心とする円弧状に形成されてもよい。こうすれば、デプスガイド350の変位軌道を矢印A4の方向にさらに誘導することができる。第2の貫通孔353が円弧状に形成される場合であっても、第2の貫通孔353は、第1の軸部材370に対して左右方向のクリアランス(換言すれば、公差)も僅かに有しているので、デプスガイド350は、左右方向に変位することも可能である。
【0073】
上述した実施形態に代えて、第3の貫通孔354、第5の貫通孔382および第2の軸部材383は、第1の貫通孔322および第2の貫通孔353の下方に配置されてもよい。また、上述した実施形態に代えて、第1の貫通孔322が長孔として形成され、第2の貫通孔353が丸孔として形成されてもよい。この構成によっても、本体部330が傾動されていない場合には、上述の実施形態と同様の効果を奏する。
【0074】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明してきたが、上述した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各形態要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【0075】
例えば、第1ないし第4実施形態において、1つの段付ネジ80のみを使用して取付部52が支持部材40に取り付けられる構成が、マルノコ100の他の特徴と独立して実施されてもよい。例えば、クリアランス85,86が確保されることなく、1つの段付ネジ80のみを使用して取付部52が支持部材40に取り付けられてもよい。この場合、1つの段付ネジ80に代えて、雄ネジが形成されていない軸部材が使用されてもよい。この軸部材は、かしめられることにより、取付部52に固定されてもよい。
【0076】
さらに、第1ないし第4実施形態において、クリアランス85およびクリアランス86を形成するための構成が、2つ以上の段付ネジ80を使用して取付部52が支持部材40に取り付けられる構成に適用されてもよい。
【0077】
さらに、第6実施形態において、補助プレート380および第2の軸部材383は省略されてもよい。
【0078】
さらに、デプスガイドの形状および配置は、特に限定されるものではなく、公知の任意の形状および配置が採用され得る。例えば、デプスガイド本体は、上述したデプスガイド本体51,251,351のような板状の形状に代えて、ダイキャストによって形成された立体的な形状を有していてもよい。あるいは、デプスガイド本体は、上述したデプスガイド本体51,251,351のような左右方向に固定カバーと並ぶ位置に代えて、前後方向に固定カバーと並ぶ位置に配置されていてもよい。
【0079】
さらに、上述した種々の形態は、マルノコに限らず、ベースと、ベース下面側への突出量を変更可能に構成された加工刃と、デプスガイドと、を備える種々の携帯用加工機、例えば、溝切りカッタなどに適用可能である。
【符号の説明】
【0080】
10,100,200,300…携帯用マルノコ
20,220,320…ベース
30,230,330…本体部
31,231,331…電動モータ
32,232,332…ハンドル
33…トリガ
34,234…支軸
35,235,335…固定カバー
36,236,336…鋸刃
40,40a,40b…支持部材
41…取付平面
42…凸条部
42b…凸部
50,250,350…デプスガイド
51,251,351…デプスガイド本体
52,52a,252,352…取付部
53,253…ガイド孔
54…取付用貫通孔
55a…凸部
60…固定レバー
70,170…付勢部材
71…本体
72…突出部
73…凸条部
74…貫通孔
80…段付ネジ
81…ネジ頭
82…段部
83…ネジ部
84…軸線
85,86…クリアランス
174…第1の脚部
175…第2の脚部
237…ブラケット
240…後側アンギュラプレート
241…ガイド孔
242…第1の貫通孔
254…第2の貫通孔
255…第3の貫通孔
270…第1の軸部材
280…締付機構
281…固定ノブ
282…第2の軸部材
290…前側アンギュラプレート
291…ガイド孔
292…固定レバー
293…ピン
321…取付部
322…第1の貫通孔
353…第2の貫通孔
354…第3の貫通孔
370…第1の軸部材
380…補助プレート
381…第4の貫通孔
382…第5の貫通孔
383…第2の軸部材
390…前側アンギュラプレート
391…ガイド孔
393…ピン
AX1,AX2…傾動軸線