(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】対象物を加熱及び冷却するためのステージ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20231212BHJP
C23C 16/46 20060101ALI20231212BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20231212BHJP
F26B 23/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H01L21/68 N
C23C16/46
H01L21/302 101G
F26B23/00 Z
(21)【出願番号】P 2019221514
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】599176344
【氏名又は名称】株式会社アドバンテック
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】増田 裕二
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2010-0137795(KR,A)
【文献】特開平10-50811(JP,A)
【文献】特開2007-43042(JP,A)
【文献】特開平6-260430(JP,A)
【文献】特開2000-21890(JP,A)
【文献】特開平9-82786(JP,A)
【文献】特開2017-84523(JP,A)
【文献】特開2002-25913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
C23C 16/46
H01L 21/3065
F26B 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ内に設置され,対象物を加熱及び冷却するためのステージであって,
前記ステージは,
対象物を搭載する搭載表面を有するステージ本体と,
前記搭載表面を加熱するための加熱部と,
前記搭載表面を冷却するための冷却部と,
を有する,ステージ
であって,
前記ステージ本体は,前記加熱部が挿入される第1の溝と,
前記冷却部が挿入される第2の溝をさらに有し,
第1の溝と前記加熱部の隙間,及び第2の溝と前記冷却部の隙間に,熱伝導媒体が充填され,
前記熱伝導媒体は、圧力が1気圧以上100気圧以下のヘリウムガスである
ステージ。
【請求項2】
請求項1に記載のステージであって,前記熱伝導媒体は、圧力が2気圧以上10気圧以下のヘリウムガスである,ステージ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のステージをサセプタとして有する真空装置。
【請求項4】
請求項3に記載の真空装置であって,半導体集積回路,フラットディスプレイパネル,又は太陽電池パネルを製造するために用いられる真空装置。
【請求項5】
請求項3に記載の真空装置を用いる,半導体集積回路,フラットディスプレイパネル,又は太陽電池パネルを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,対象物を加熱及び冷却するためのステージに関する。
【背景技術】
【0002】
特許第5427367号公報には,矩形サセプタが記載されている。サセプタは,例えば,半導体集積回路,フラットディスプレイパネル,及び太陽光発電用パネルを製造する際にステージとして用いられる。サセプタは,製造工程において例えば基板を加熱する。その際に,基板を迅速かつ均一に加熱することが求められる。また,基板を冷却することができるようにすることも望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は,基板を加熱のみならず冷却できるステージを提供することを目的とする。また,この発明は,基板を均一に加熱(又は冷却)できるステージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は,ステージの搭載表面を加熱する加熱部のみならず冷却部を備えるステージにより解決できる。また,上記の課題は,加熱部や冷却部を収容する溝の隙間に熱伝導媒体を充填させることにより,解決できる。
【0006】
本発明の第1の側面は,チャンバ内に設置され,対象物を加熱及び冷却するためのステージに関する。
チャンバの例は,真空チャンバである。対象物の例は,半導体集積回路,フラットディスプレイパネル,及び太陽光発電用パネルであるか,又はそれらを製造する途中の基板である。このステージ1は,対象物を搭載する搭載表面を有するステージ本体5,6と,搭載表面を加熱するための加熱部7と,搭載表面を冷却するための冷却部8と,を有する。冷却部8は,搭載表面に搭載された対象物を冷却するものであってもよいし,加熱部7より低温で対象物を加熱するために用いられてもよい。加熱部7及び冷却部8は,例えば,ステージを均一に加熱又は冷却できるように,渦を巻くように設置されてもよい。例えば,流体をステージ中央の下方から加熱部7及び冷却部8内を循環させる場合,加熱部7及び冷却部8は,ステージを巡るように設計されることが好ましい。
【0007】
このステージの好ましい態様は,ステージ本体5,6が,加熱部7が挿入される第1の溝10と,冷却部8が挿入される第2の溝10をさらに有するものである。第1の溝10及び第2の溝10は,ステージ本体5,6の内部に設けられることが好ましい。この場合,第1の溝10及び第2の溝は,加熱部7及び冷却部8を収容するトンネル(穴)状のものであってもよい。第1の溝10及び第2の溝10は,加熱部7及び冷却部8のある部分を収容することができる大きさのものであればよい。そして,好ましいステージ1は,第1の溝と加熱部の隙間,及び第2の溝と冷却部の隙間に,熱伝導媒体13を有するものである。熱伝導媒体13は,好ましくは,上記の隙間に充填される。
【0008】
このステージの好ましい態様は, 熱伝導媒体13が,銀,グリース,金属繊維,又はガスのものである。熱伝導媒体13は,希ガスであってもよい。希ガスは,圧力は1気圧以上100気圧以下(又は2気圧以上10気圧以下)のヘリウムガスであってもよい。銀は銀ペーストであることが好ましい。グリースの例は,シリコングリスである。
【0009】
本発明の第2の側面は,上記したいずれかのステージをサセプタとして有する真空装置に関する。この真空装置は,例えば,半導体集積回路,フラットディスプレイパネル,又は太陽電池パネルを製造するために用いられる真空装置である。真空装置は,通常チャンバと,チャンバを真空にするための真空ポンプとを有する。また,真空装置は,各種の試料をチャンバ内に導入するための導入部を有していてもよい。また,真空装置は,各種測定を行うためのセンサや測定機器を適宜有していてもよい。チャンバの例は,目的物を製造するためのプロセスチャンバである。フラットディスプレイパネルの例は,有機ELディスプレイ,プラズマディスプレイ及び液晶ディスプレイである。
【0010】
本発明の第3の側面は,上記した真空装置を用いる,半導体集積回路,フラットディスプレイパネル,又は太陽電池パネルを製造する方法に関する。半導体集積回路の製造方法は,例えば特許3956697号公報,特許3519589号公報,及び特許3064993号公報に記載されているとおり公知である。フラットディスプレイパネルの製造方法は,例えば特許5173757号公報,特許5169757号公報,及び特許4604752号公報に記載されているとおり公知である。太陽電池パネルの製造方法は,例えば特許6555964号公報,特許6498053号公報,及び特許5386044号公報に記載されているとおり公知である。
【発明の効果】
【0011】
この発明は,ステージの搭載表面を加熱する加熱部のみならず冷却部をも備えるので,ステージの搭載表面を加熱及び冷却できる。また,この発明の好ましい例は,加熱部や冷却部を収容する溝の隙間に熱伝導媒体を有するので,搭載表面を均一に加熱(及び冷却)できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は,ステージの設置の状況を示す概念図である。
【
図2】
図2は,ステージの構造例を示す概念図である。
【
図3】
図3は,ステージの断面の例を示す概念図である。
【
図4】
図4は,ステージの断面の例を示す概念図である。
【
図5】
図5は,熱伝導媒体の使用例を示す概念図である。
【
図6】
図6は,熱伝導媒体として流体を用いたものの例を示す概念図である。
【
図7】
図7は,ステージ本体を構成する上面テーブル及び下面テーブルの双方に溝が形成されたステージの例を示す概念図である。
【
図8】
図8は,流路を有するアルミ板の設計図である。
【
図9】
図9は,熱電対を取り付けたステージの様子を示す図である。
【
図10】
図10は,ステージの各部位における温度変化を示す図面に代わるグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0014】
図1は,ステージの設置の状況を示す概念図である。ステージ1は通常プロセスチャンバ2の内部に設置され,基板3の温度管理をおこなう。プロセスチャンバ2は外気と遮断されており,所望の真空度に保たれている。プロセスチャンバ2はプロセスガス4でみたされて,圧力を保っていてもよい。異なるタイプのプロセスチャンバ,例えば,物理気相堆積(PVD)チャンバやスパッタリングチャンバ,イオン金属注入(IMP)チャンバ,化学気相堆積(CVD)チャンバ,原子層堆積(ALD)チャンバ,プラズマエッチングチャンバ,アニーリングチャンバ,他の他のチャンバによって,プロセスガス4の圧力は異なる。
【0015】
図2は,ステージの構造例を示す概念図である。
図2に示されるように,ステージ1は,通常対象物を搭載する搭載表面を有する上面テーブル5と下面テーブル6により加熱部7及び冷却部8をサンドイッチ状にはさんでいる。下面テーブル6にはテーブルサポート9が取り付けられており,加熱部7及び冷却部8はテーブルサポート9の内部を通じてプロセスチャンバ2の外に通じている。ステージ1の温度は,例えば室温から摂氏500度程度で,温度が低い場合は,加熱部7を使わず,冷却部(管の例を示す)8に液体を流すこともできる。温度が高い場合は,冷却部8を使わず,加熱部7のみを使うこともできる。ステージ1の材質は金属,クォーツ,パイレックス(登録商標):耐熱ガラス,及び炭素繊維などが考えられる。金属の例は,アルミニウム,銅,及びステンレスである。加熱部7は,溝内に収納される抵抗ヒーター,加熱流体と管の組み合わせ,ヒートポンプなどが考えられる。冷却部8は,溝内に収納される冷却流体と管の組み合わせ,ヒートポンプなどが考えられる。加熱部7及び冷却部8を収容するための溝は,上面テーブル5と下面テーブル6のそれぞれに設けられてもよい。
【0016】
図3は,ステージの断面の例を示す概念図である。通常上面テーブル5には接触効率を向上させるため溝10が設置されており,下面テーブル6により溝内に収納された加熱部7及び冷却部8をサンドイッチ状にはさんでいる。
【0017】
図4は,ステージの断面の例を示す概念図である。上面テーブル5と加熱部7及び,冷却部8の接触効率をあげるため,塑性変形を利用し,かしめた構造になっている。加熱部7,冷却部8及び上面テーブル5の一部が塑性変形して上面テーブル5と下面テーブル6への接触効率を向上させる。上面テーブル5の塑性変形を部位11で示す。かしめ時に加熱部7及び,冷却部8が塑性変形することもあり部位12で示されている。
【0018】
図5は,熱伝導媒体の使用例を示す概念図である。接触効率を上げるため塑性変形を利用してかしめた構造でも,ミクロにみれば微小な隙間が空いており,真の接触面積は,例えばわずか数パーセントである。そのため熱伝導媒体13を使用することが効果的である。熱伝導媒体13は炭素繊維などの固体,グリース状のもの,銀のような液体,水素,ヘリウムのような気体が考えられる。グリース状のもの,液体,気体の場合は流出を防ぐためシールすることもできる。
【0019】
図6は,熱伝導媒体として流体を用いたものの例を示す概念図である。
図6に示されるように,熱伝導媒体13が,グリース状のもの,液体,気体といった流体である場合,熱伝導媒体13が隙間に充填され,漏れないように密閉することが望ましい。簡単のため,
図6では,左半分に,加熱部7のみを示し,右半分に冷却部8のみを示す。テーブルサポート9の端部にシール板14が取り付けられており,加熱部7と冷却部8は,シール部15で完全に密封されている。熱伝導媒体13をシールすることにより大気から遮断されており,流出防止になっている。熱伝導媒体13が気体の場合,隙間に気体を圧入することにより,熱伝導効率を飛躍的に上げることができる。
【0020】
図7は,ステージ本体を構成する上面テーブル及び下面テーブルの双方に溝が形成されたステージの例を示す概念図である。
図7に示されるように,加熱部7及び冷却部8を収容するための溝は,上面テーブル5と下面テーブル6のそれぞれに設けられてもよい。
【0021】
ステージは,例えば,以下のように製造できる。厚み30~100mmのアルミの板,1辺の長さが1500~4000ミリメートルの矩形(例えば正方形)の2枚の板に溝(流路)を機械加工する。ステージ本体の材質は,アルミニウムに限定されず金属であればよい。そのようにして得られた溝(流路),に外形φ5~φ20のステンレス製のパイプを挿入する。溝にパイプを挿入した後,2枚のアルミの板を合わせて外周を摩擦攪拌接合(FSW溶接)する。2枚のアルミの板を併せた際に,アルミ板の溝とステンレス製のパイプには,隙間ができる。この隙間を放置すると,熱伝導効率が悪くなる。そのため,アルミ板の溝とステンレス製のパイプの間に熱伝導媒体を挿入し,熱伝導効率を向上させることが望ましい。例えば,パイプなどの加熱部や冷却部を溝に設置する前に溝に熱伝導媒体である流体を塗布しておいてもよいし,FSW溶接した後に,溝内にガスを充填し,密封してもよい。このようにしてステージを製造できる。
【実施例】
【0022】
[実験例1]
ガラス基板を温度制御するためのサセプタの製造
ガラス基板の温度制御のためサセプタが用いられる。サセプタの温度制御時間によってプロセスの時間に影響が出る。温度制御の時間短縮やスループット向上のため温度制御機能を有するサセプタが望まれた。
【0023】
サセプタを以下のように製造した。
材質A6061のアルミの板に流路を加工し,そこにヒーターや熱伝導媒体を流すことで温度制御を行うこととした。
図8は,流路を有するアルミ板の設計図である。ステージ(サセプタ)は,本来真空装置に内において用いられるものの,ここでは温度変化を測定するため,大気中にて温度変化を測定した。
【0024】
熱伝導媒体は,固体(金属・金属繊維・セメント,ファイバーなど),液体(グリス,銀ペーストなど),気体(ヘリウムなど)になる。
それらを挿入することで熱伝導効率を向上することができる。
【0025】
400mm四方,厚み40mmの2枚のアルミ板の一方に溝を機械加工し,SUSパイプを挿入,その後外周をFSWにて接合した基盤を作成した。SUSパイプと,アルミニウム板との隙間にヘリウムガスを圧入し,充填させた。そして,一方のアルミ板に熱電対を18か所取り付け,SUSパイプに80℃の熱湯を流して温度変化を測定した。
図9は,熱電対を取り付けたステージの様子を示す図である。
図9の右部分は,写真である。
【0026】
[実験例2] 熱伝導媒体を用いない以外は,実験例1と同様にしてステージを製造し,温度変化を測定した。
【0027】
[実験例3] 熱伝導媒体としてシリコングリスを用いた以外は,実験例1と同様にしてステージを製造し,温度変化を測定した。シリコングリスは,SUSパイプを溝に挿入する前に溝に塗布した。
【0028】
[実験例4] 熱伝導媒体として銀ペーストを用いた以外は,実験例1と同様にしてステージを製造し,温度変化を測定した。銀ペーストは,SUSパイプを溝に挿入する前に溝に塗布した。
【0029】
結果
図10は,ステージの各部位における温度変化を示す図面に代わるグラフである。
図10は,実験例2(
図10(a)),実験例3(
図10(b)),実験例4(
図10(c))における温度変化を示す。縦軸は温度,横軸は経過時間を示す。シリコングリス,銀ペーストの熱抵抗は,熱伝導媒体無しの場合と比較し約1/2となっており,熱伝導効率向上することが分かった。また,ヘリウムガスの熱抵抗が最も低く,1/2未満となるので,熱伝導効率向上することが推測される。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明は,例えば真空チャンバ内で用いられるサセプタとしても用いられるステージに関するので,半導体製造産業や,パネル製造産業及び太陽発電パネルの製造産業において利用され得る。
【符号の説明】
【0031】
1 ステージ
2 プロセスチャンバ
3 基板
4 プロセスガス
5 上面テーブル
6 下面テーブル
7 加熱部
8 冷却部
9 テーブルサポート
10 溝
11 塑性変形部位
12 塑性変形部位
13 熱伝導媒体
14 シール板
15 シール部