IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社LIXIL鈴木シャッターの特許一覧

<>
  • 特許-防煙スクリーン装置 図1
  • 特許-防煙スクリーン装置 図2
  • 特許-防煙スクリーン装置 図3
  • 特許-防煙スクリーン装置 図4
  • 特許-防煙スクリーン装置 図5
  • 特許-防煙スクリーン装置 図6
  • 特許-防煙スクリーン装置 図7
  • 特許-防煙スクリーン装置 図8
  • 特許-防煙スクリーン装置 図9
  • 特許-防煙スクリーン装置 図10
  • 特許-防煙スクリーン装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】防煙スクリーン装置
(51)【国際特許分類】
   A62C 2/06 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
A62C2/06 507
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019234048
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021101853
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000252034
【氏名又は名称】株式会社鈴木シャッター
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】大庭 敦
(72)【発明者】
【氏名】大場 広敦
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-286549(JP,A)
【文献】特開2001-276243(JP,A)
【文献】特開平11-197261(JP,A)
【文献】特開昭63-206262(JP,A)
【文献】特開2018-091042(JP,A)
【文献】特開2005-155270(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0051829(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻装手段に巻装され、下端縁部に設けられたボトム材の重量を受けて降下するスクリーンと、該スクリーン降下の制動をする制動手段と、該制動手段の制動の解除をする解除手段と、降下したスクリーンを巻き取る巻き取り手段とを備えて構成される防煙スクリーンにおいて、
前記制動手段、解除手段、スクリーン、巻き取り手段を、天井面に取り付けられた収納ケース内に配すると共に、
該制動手段は該スクリーンに該収納ケース内で対向するようにして配したことを特徴とする防煙スクリーン装置。
【請求項2】
収納ケースは天井面に着脱自在に取り付けられることを特徴とする請求項1記載の防煙スクリーン装置。
【請求項3】
収納ケース内に、解除手段がスクリーンの左右方向一端側方に配され、巻き取り手段がスクリーンの左右方向他端側方に配されることを特徴とする請求項1または2記載の防煙スクリーン装置。
【請求項4】
解除手段は、煙検知等の異常検知をする異常検知手段からの検知信号に基づいて解除作動し、検知信号の消失に基づいて復帰することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1記載の防煙スクリーン装置。
【請求項5】
制動手段は、スクリーンに当接してスクリーン降下の制動をする降下制動部と、スクリーンから離間してスクリーン降下を許容する降下許容部とを備えた制動体を有し、該制動体は、解除手段による解除作動を受けることでスクリーン対向部位が降下制動部から降下許容部に変位するよう変位自在に構成されると共に、制動体には、スクリーン対向部位が降下許容部から降下制動部に復帰せしめるための復帰手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1記載の防煙スクリーン装置。
【請求項6】
制動体は、降下制動部がスクリーンに対向している状態で該スクリーンが上昇移動したときには該スクリーン上昇に連動してスクリーン対向部位が降下制動部から降下許容部に変姿して巻き取り手段によるスクリーンの巻き取りができるように構成されていることを特徴とする請求項5記載の防煙スクリーン装置。
【請求項7】
制動体は、制動力が強化される制動強化部を備え、降下制動部がスクリーンに対向している制動姿勢でスクリーンが降下方向に移動したときには該スクリーン降下に連動してスクリーン対向部位が降下制動部から制動強化部側に変姿することを特徴とする請求項5または6記載の防煙スクリーン装置。
【請求項8】
制動体は、偏心軸を軸心として回動する偏心部材を用いて構成されていることを特徴とする請求項5乃至7の何れか1記載の防煙スクリーン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井部の空間を仕切って火災発生等の異常時において発生した煙の天井部での自由な拡散を防止(阻止、抑止)するため設けられる防煙スクリーン装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ビル等建築物の室内や廊下等の建物内において火災等の異常事態が発生し、これに起因して煙が発生した場合に、該煙が天井面を這うようにして自由に拡散することによって延焼を助長するだけでなく人的被害が拡大してしまうことが知られており、そこで天井部から垂下する状態で板材を設けて天井部を仕切るようにし、これによって煙の自由な拡散を防止するようにした所謂防煙垂れ壁の技術が知られている。
しかしながらこのものは、防煙垂れ壁として使用される板材が常時天井部から垂下する状態で視認されることになって外観を損なうだけでなく、常時において天井部での空気の流れが停滞することになって空調の点での問題がある。
そこで常時は天井部側に収納されたスクリーンを、火災等の異常発生があった際に天井部から垂下させるようにした防煙スクリーンの技術が知られている(例えば特許文献1参照)。しかしながらこのものは手動操作によりスクリーンを垂下させるものであるため操作が面倒であるうえ、操作忘れがあった場合には防煙区画を形成できなくなるという問題がある。
これに対し、煙検知器(感知器)等の異常検知手段による異常検知に基づいてスクリーンが自動的に降下して天井部から垂下するように構成したものが知られているが、このものはスクリーンを収納することが難しいという問題がある(例えば特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公昭58-54131号公報
【文献】特表2012-503521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかも前記従来のものは、常時においてはスクリーンを天井部側に可及的にコンパクトに収納させるためスクリーンを渦巻き状に巻回した状態で収納するようにはしているが、この場合に、定期点検等のため垂下せしめたスクリーンを収納するにはスクリーンを巻き取る必要があるが、スクリーンは横方向(左右方向)に幅広いものであるため、該スクリーンを左右均一状に収納することが難しいだけでなく、該巻き取った状態のスクリーンを、非検知状態に復帰した異常検知手段にいちいち保持させなければならないことになって作業性が劣る等の問題があり、これらに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、巻装手段に巻装され、下端縁部に設けられたボトム材の重量を受けて降下するスクリーンと、該スクリーン降下の制動をする制動手段と、該制動手段の制動の解除をする解除手段と、降下したスクリーンを巻き取る巻き取り手段とを備えて構成される防煙スクリーンにおいて、前記制動手段、解除手段、スクリーン、巻き取り手段を、天井面に取り付けられた収納ケース内に配すると共に、該制動手段は該スクリーンに該収納ケース内で対向するようにして配したことを特徴とする防煙スクリーン装置である。
請求項2の発明は、収納ケースは天井面に着脱自在に取り付けられることを特徴とする請求項1記載の防煙スクリーン装置である。
請求項3の発明は、収納ケース内に、制動手段がスクリーンに対向するようにして配され、解除手段がスクリーンの左右方向一端側方に配され、巻き取り手段がスクリーンの左右方向他端側方に配されることを特徴とする請求項1または2記載の防煙スクリーン装置である。
請求項4の発明は、解除手段は、煙検知等の異常検知をする異常検知手段からの検知信号に基づいて解除作動し、検知信号の消失に基づいて復帰することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1記載の防煙スクリーン装置である。
請求項5の発明は、制動手段は、スクリーンに当接してスクリーン降下の制動をする降下制動部と、スクリーンから離間してスクリーン降下を許容する降下許容部とを備えた制動体を有し、該制動体は、解除手段による解除作動を受けることでスクリーン対向部位が降下制動部から降下許容部に変位するよう変位自在に構成されると共に、制動体には、スクリーン対向部位が降下許容部から降下制動部に復帰せしめるための復帰手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1記載の防煙スクリーン装置である。
請求項6の発明は、制動体は、降下制動部がスクリーンに対向している状態で該スクリーンが上昇移動したときには該スクリーン上昇に連動してスクリーン対向部位が降下制動部から降下許容部に変姿して巻き取り手段によるスクリーンの巻き取りができるように構成されていることを特徴とする請求項5記載の防煙スクリーン装置である。
請求項7の発明は、制動体は、制動力が強化される制動強化部を備え、降下制動部がスクリーンに対向している制動姿勢でスクリーンが降下方向に移動したときには該スクリーン降下に連動してスクリーン対向部位が降下制動部から制動強化部側に変姿することを特徴とする請求項5または6記載の防煙スクリーン装置である。
請求項8の発明は、制動体は、偏心軸を軸心として回動する偏心部材を用いて構成されていることを特徴とする請求項5乃至7の何れか1記載の防煙スクリーン装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、天井面に防煙区画を形成するための防煙スクリーン装置を構成する構成部材が、天井面に取り付けられた収納ケース内に配されたものとなって天井面にコンパクトに取り付けることができる。
請求項2の発明とすることにより、防煙スクリーンを内装した収納ケースが天井面に着脱自在に取り付けられることになって、既存の天井面に対して後付けの取り付けができるだけでなく、メンテナンスをする際に、天井面から取り外すことができるので作業性が向上するうえ、部品交換も容易になる。
請求項3の発明とすることにより、収納ケース内に防煙スクリーン装置の構成部材が収納される場合に、制動手段がスクリーンに対向する状態のものの左右方向一端側に解除手段が配され、他端側に巻き取り手段が配された直列状態での配置ができることになって、収納ケースをコンパクト化できることになる。
請求項4の発明とすることにより、解除手段は、煙感知器等の異常検知手段からの検知信号に基づいて解除作動し、該検知信号の消失により元状態に復帰するものであるから、定期点検等の点検作業をした後の復帰作業が容易になって作業性が向上する。
請求項5の発明とすることにより、制動手段が、異常検知手段からの検知信号に基づく解除手段の作動によりスクリーン対向部位が降下制動部から降下許容部に変位することになって異常時において円滑なスクリーン降下ができながら、降下許容部状態に変位した制動手段は、復帰手段により降下制動部状態に復帰できることになって定期点検をした場合等において元状態への復帰が容易になる。
請求項6の発明とすることにより、制動手段が降下制動部状態になっている状態で、降下したスクリーンを巻装手段に巻き取る場合に、制動手段は、スクリーンの巻き取りに連動して降下許容部状態側に変位することになり、この結果、スクリーンの巻き取り作業において、制動手段の制動解除作業が不要になって操作性が向上する。
請求項7の発明とすることにより、通常状態において何らかの要因でスクリーンを降下する方向の負荷が働いた場合に、制動手段は、スクリーンの降下を受けて制動力が強化される制動強化部側に変姿することになり、この結果、スクリーンが不用意に降下してしまうことが規制され、通常状態の維持が確実になる。
請求項8の発明とすることにより、制動体が、偏心軸を軸心として回動する偏心部材で構成されるため、構造の簡略化が図れることになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】防煙スクリーン装置の正面図である。
図2】(A)(B)は防煙スクリーン装置の一方側の側面断面図、他方側の側面断面図である。
図3】防煙スクリーン装置の収納ケースを断面した状態の正面図である。
図4】(A)(B)は防煙スクリーン装置の制動体部位の側面断面図、正面断面図である。
図5】(A)(B)は制動体が下降制動状態、下降許容状態となった場合の要部拡大説明図である。
図6】(A)(B)(C)は制動体が下降制動姿勢、下降許容姿勢、制動強化姿勢になった状態を示す作用説明図である。
図7】防煙スクリーン装置の巻き取り手段部位の側面断面図である。
図8】防煙スクリーン装置の他例を示す側面断面図である。
図9】(A)(B)は他例の制動体を示す側面図である。
図10】防煙スクリーン装置のさらなる他例を示す側面断面図である。
図11】防煙スクリーン装置のまたさらなる他例を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図面において、1は防煙スクリーン装置であって、該防煙スクリーン装置1を構成する収納ケース2は、左右方向に長い角筒形状をしたものであって、上面部2aがビス等の固定部材2bを介して天井面(天井板下面)Hに着脱自在に設けられたものであり、該収納ケース2の左右両端部には、左右側板2cに対して間隙を存する状態で左右のブラケット3が垂下するようにして設けられ、該ブラケット3間に巻取りドラム4のドラム軸4aが回転自在に軸支されている。前記巻取りドラム4に耐火性(難燃性、不燃性)を備えたスクリーン5が巻装されているが、該スクリーン5は、収納ケース2の下面部2dに形成した出入り口部2eを通って(貫通して)垂下し、下端縁部に設けられたボトム材6の重量を受けて降下することで防煙区画をする設定になっている。この場合にスクリーン5は、出入り口部2eを構成する前後方向一方側の端縁部2fに当接(摺接)する設定になっている。
そして該降下するスクリーン5の左右両端縁部は、収納ケース2の左右両端縁部において、壁面Wに添う状態で上端縁部が取り付けられたガイドレール7にガイドされるように設定されている。
因みに本実施の形態の収納ケース2は、上面部2aを天井面Hにビス2bを介して着脱自在に固定するため、該ビス2bの抜き差し作業や収納ケース2内の各部材装置のメンテナンス作業をする際に取り外す開閉自在な蓋体2hが設けられたものになっている。
【0009】
8は制動体であって、該制動体8は、前記出入り口部2eの一方側の端縁部2fに対向する他方側の端縁部2g部位に配されたものであって、偏心軸(カム軸)8aを軸心として回動(揺動)する偏心カム構造により構成され、制動体8の表面のカム面が、前記一方側の端縁部に当接する部位のスクリーン5と対向している。そして制動体8のカム面には、前記一方側端縁部2fに当接する部位のスクリーン5に押圧状に当接して該スクリーン5のボトム材6の重量を受けての降下に制動(ブレーキ制動)を与えて、該スクリーン5が降下するのを規制(停止)する降下制動部8bと、該降下制動部8bの下側に隣接する状態で、前記一方側端縁部2fに当接する部位のスクリーン5から離間してスクリーン5の降下を許容する降下許容部8cと、降下制動部8bの上側に隣接する状態で、前記一方側端縁部2fに当接する部位のスクリーン5に対して前記降下制動部8bよりも押圧力が大きくなるよう当接してスクリーン5の制動力が強化される制動強化部8dとが偏心軸8aからの径(距離)を長短異ならしめることにより形成されている。つまり各部の偏心軸8aの軸心Oからの径の長短は、降下許容部8c<降下制動部8b<制動強化部8dとなっている。
さらに制動体8とブラケット3とのあいだには、制動体8を、一方側端縁部2fに当接する部位のスクリーン5に対向する部位が降下制動部8bに復帰するための復帰弾機(本実施の形態のものは捻り弾機により構成されている。)9が設けられている。
【0010】
前記偏心軸8aは、左右両端縁部がブラケット3に回動自在に軸支されるが、左右方向一方の端縁部8aLは、ブラケット3を貫通して該側のブラケット3と側板2cとのあいだの一方の間隙(空間、部屋)Lにまで至るようになっている。そして該一方の端縁部8aLには、揺動アーム8eが一体的に設けられ、該揺動アーム8eの先端部に回動体8fが回転自在に設けられている。
さらに前記間隙Lには、図示しない煙感知器や火災感知器等の図示しない異常検知手段(天井面等の適宜部位に設けられている。)からの検知信号を受けて作動する電磁式のソレノイド装置(例えばロータリーソレノイド装置)を内装して構成される解除装置10が設けられているが、該解除装置10は、制動体8の降下制動部8bが前記スクリーン5に押圧状に当接して該スクリーン5の降下制動をする制動姿勢(通常時の姿勢)のときの回転体8fに、作動軸10aに設けた作動アーム10bの先端部が当接(または近接対向)している。そしてこの状態で前述したように解除装置10が異常検知手段からの検知信号を入力すると、これに連動して作動アーム10bが揺動し、これによって揺動アーム8eが揺動されることになって制動体8のスクリーン対向部位が降下制動部8bから降下許容部8cに変位することになる。この結果、スクリーン5は、制動体8による制動が解除されることになってボトム材6の重量を受けて降下して天井面Hから垂下した防煙区画を形成するようになっている。
【0011】
このようにスクリーン5が垂下した防煙状態において異常検知手段からの検知信号の入力がなくなる(消失する)と、解除装置9は、元状態(元姿勢)に復帰し、これに伴い制動体8も、復帰弾機9の付勢力を受けてスクリーン対向部位が降下許容部8cから降下制動部8bに変位することになるが、スクリーン5による防煙状態はそのまま維持される。
【0012】
これに対し、巻き取りドラム4のドラム軸4aの左右方向他方の端縁部4aRは、ブラケット3を貫通して該側のブラケット3と側板2cとのあいだの他方の間隙(空間、部屋)Rにまで至るようになっている。そして該他方の他端部4aRは、二段のベベルギア機構11a、11bを用いて構成される手動による巻き取り機構11に連動連結される。
前記一段のベベルギア機構11aは、左右方向を向くドラム軸4aの他方の他端部4aRの動力軸方向を前後方向に変換して下方のガイドレール7位置から前後方向に外れたものとし、これをさらに二段のベベルギア機構10bにより下方に向けたものとして変換するよう構成したものである。具体的には、一段目のベベルギア機構11aは、ドラム軸他端部4aRに設けられるベベルギア15a、収納ケース2に設けた支持部2iに回転自在に設けられる支軸15に一体的に支持される状態で前記ベベルギア15aに噛合するベベルギア15bとを用いて構成され、二段目のベベルギア機構11bは、前記支軸15に一体的に支持されるベベルギア15c、巻き取り機構11の入力軸11cとして収納ケース2に設けた該入力軸11cに一体的に設けられ、前記ベベルギア15cに噛合するベベルギア15dとを用いて構成されている。
そしてこのようにして設けられる巻き取り機構11の入力軸11cに、外付けの操作棒12を係脱自在に係止した状態で、該操作棒12を回し操作すると、これに連動してドラム軸4aが回転することになって巻き取りドラム4によるスクリーン5の巻き取りがなされることになる。この場合に、ドラム軸4aがベベルギア機構11bの回転による抵抗を受けずにスクリーン5の確実な降下を実現するため巻き取り機構11に、入力軸11cを、スクリーン5の巻き取り方向に回転操作した場合には、ドラム軸4aを該巻き取り方向に回転するよう動力伝動するが、スクリーン5の降下に影響を与えない状態で、逆方向への回転操作ができないようにするか、回転操作はできても空転をするように構成することが要求され、そこで本実施の形態のものでは、支軸15とベベルギア15bとの間に一方向回転クラッチ16を設け、これによって、スクリーン5を巻き取る方向の回転については支軸15とベベルギア15bとが一体回転して動力伝動をし、スクリーン5が降下する方向の回転についてはベベルギア15bが支軸15に対して自由回転するように構成されている。尤も、巻き取り機構11を構成するベベルギア機構10bの抵抗を受けてもこれらの回転が制御できるものであれば、一方向回転クラッチを設ける必要は必ずしもない。
しかもこの場合、制動体8のスクリーン対向部位が降下制動部8bである状態になるが、巻き取られるスクリーン5は制動体8を上動させる方向の移動になるため、該制動体8は、巻き取り方向に移動するスクリーンによる摺動抵抗を受けることになってスクリーン対向部位が降下許容部8c側になるよう揺動し、これによってスクリーン5は制動部7による制動を受けることなく(受けることが殆どなく)巻取りドラム4に巻取られるように設定される。
【0013】
叙述の如く構成された本実施の形態において、防煙スクリーン装置1は、巻取りドラム4に巻装され、下端縁部に設けられるボトム材6の重量を受けて降下するスクリーン5と、該スクリーン5の降下の制動をする制動体8と、該制動体8の制動解除をする解除装置10と、降下したスクリーン5を巻き取る巻き取り機構11とを備えて構成されるが、これらスクリーン5、制動体8、解除装置10、巻き取り機構11が天井面Hに取り付けられた収納ケース2内に配されたものとして構成されているため、防煙スクリーン装置1を天井面Hにコンパクトに取り付けることができる。
【0014】
しかもこの場合に、収納ケース2は天井面Hに着脱自在に取り付けられる結果、既存の天井面Hに対し、必要に応じて後付けの取り付けが簡単にできるだけでなく、メンテナンスをする際には、天井面から取り外して床面や作業台に置いての作業ができることになってこれらの作業性が向上する。
そのうえ収納ケース2内には、制動体8がスクリーン5に対向するようにして配され、解除装置10がスクリーン5の左右方向一端側の間隙Lに配され、巻き取り機構11がスクリーン5の左右方向他端側の間隙Rに配される結果、解除装置10、スクリーン5および制動体8、そして巻き取り機構11が左右方向に直列状態に配置されたものとなって構成でき、収納ケースのコンパクト化が図れることになる。
【0015】
またこの場合に、解除装置10は、煙検知等の異常検知をする異常検知手段からの検知信号に基づいて解除作動し、検知信号の消失に基づいて復帰するものであるため、定期点検等の点検作業をした後の復帰作業が容易になって作業性が向上することになる。
さらにこの場合に、制動体8は、スクリーン5に当接してスクリーン降下の制動をする降下制動部8bと、スクリーン5から離間してスクリーン5の降下を許容する降下許容部8cとを備えたものとして構成され、しかも該制動体8は、解除装置10による解除作動を受けることでスクリーン5の対向部位が降下制動部8bから降下許容部8cに変位するよう構成されると共に、さらに解除装置10による解除作動がなくなると、スクリーン5の対向部位が降下許容部8cから降下制動部8bに復帰弾機9により復帰することになり、この結果、スクリーン5は、異常検知手段からの検知信号に基づいて円滑なスクリーン5の降下ができながら、降下許容状態に変位した制動体8は、復帰弾機9により降下制動状態に復帰できることになって定期点検をした場合等において元状態への復帰が容易になる。
【0016】
そのうえ制動体8は、制動力が強化される制動強化部8dを備えたものとなっていて、降下制動部8bがスクリーン5に対向している制動姿勢の状態において、何らかの要因でスクリーン5を降下する方向の負荷が働いた場合に、制動体8は、スクリーン5の降下を受けて制動力が強化される制動強化部8d側に変姿することになり、この結果、スクリーン5が不用意に降下してしまうことが規制され、通常状態の維持が確実になる。
このような機能を有する制動体8が、偏心軸8aを軸心として回動する偏心部材を用いて構成されているため、構造の簡単なものになる。
【0017】
尚、本発明は前記実施の形態のものに限定されないことは勿論であって、収納ケース2を天井面Hに着脱自在に取り付ける構成としては、図8に示す実施の形態のように、収納ケース2の上面部2aに形成した係止フック2iを、天井面Hに取り付けた取付け具13に設けた係止爪13aに着脱自在に取り付ける構成にしたものであってもよい。因みにこの場合の着脱操作は、収納ケース2の天井面Hに添うスライド移動の操作で行うことができるようになっている。
また制動体8としては、前記実施の形態のものは円柱形状のものの軸心から偏心した位置に偏心軸8aを設けたものとしたがこれに限定されるものではなく、例えば図9(A)(B)の他例に示すように偏心カムのようなものを採用してもよく、また制動体8としては、スクリーン5に当接する部位にゴム質弾性を有した摩擦力のある表面材8gを取り付けたものとすることができる。
さらにまた図10の他例に示すように、スクリーン5の安定した降下、巻き取りを行うことができるよう、収納ケース2内にスクリーン5の移動案内をする案内ローラ14を設けたものとすることができ、また図11に示す他例のように、ボトム材15を収納ケース2の下面板とするとともに、該ボトム材15に設けた係止部15aに、異常検知手段の検知信号を受けて作動する解除装置16の作動体16aを係脱自在に係止したものとし、そして解除装置16が検知信号を受けたことに伴い作動体16aの作動により係止部15aの係止が解除され、これに伴いスクリーン5がボトム材15の重量を受けて降下する構成にしたものであり、このようにしたものでは、解除装置が制動手段を兼用したものとなり、このように構成したものであっても本発明を実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、天井部の空間を仕切って火災発生等の異常時において発生した煙の天井部での自由な拡散を防止するため設けられる防煙スクリーン装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0019】
1 防煙スクリーン装置
2 収納ケース
4 巻取りドラム
5 スクリーン
6 ボトム材
8 制動体
8a 偏心軸
8b 降下制動部
8c 降下許容部
8d 制動強化部
9 復帰弾機
10 解除装置
11 巻き取り機構
H 天井面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11