(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】眼血流を視野内の全領域で画像化する方法および装置
(51)【国際特許分類】
G03H 1/04 20060101AFI20231212BHJP
G03H 1/22 20060101ALI20231212BHJP
A61B 3/12 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
G03H1/04
G03H1/22
A61B3/12 300
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019238066
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-12-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 バイオメディカル オプティクス エクスプレス Vol.10、No.2 平成31年1月31日発行
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】515185843
【氏名又は名称】エコール・シュペリュール・ドゥ・フィシック・エ・ドゥ・シミー・アンデュストリエル・ドゥ・ラ・ヴィル・ドゥ・パリ
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】レオ プジョ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル アトラン
【審査官】内村 駿介
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-177207(JP,A)
【文献】特表2015-527178(JP,A)
【文献】特表2018-523106(JP,A)
【文献】特表2018-525606(JP,A)
【文献】特開2013-178263(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0206193(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109620134(CN,A)
【文献】L. PUYO et al.,“In vivo laser Doppler holography of the human retina”,Biomedical Optics Express,2018年08月06日,Vol. 9, No. 9,p.4113,DOI: 10.1364/BOE.9.004113
【文献】Jerome BARANGER et al.,“Adaptive Spatiotemporal SVD Clutter Filtering for Ultrafast Doppler Imaging Using Similarity of Spatial Singular Vectors”,IEEE Transactions on Medical Imaging,2018年07月,Vol. 37, No. 7,p.1574-1586,DOI: 10.1109/TMI.2018.2789499
【文献】Dierck HILLMANN et al.,“Aberration-free volumetric high-speed imaging of in vivo retina”,Scientific Reports,2016年10月20日,Vol. 6, No. 1,DOI: 10.1038/srep35209
【文献】F J W-M LEONG et al.,“Correction of uneven illumination (vignetting) in digital microscopy images”,Journal of Clinical Pathology,2003年08月01日,Vol. 56, No. 8,p.619-621,DOI:10.1136/jcp.56.8.619
【文献】Leo PUYO et al.,“Choroidal vasculature imaging with laser Doppler holography”,Biomedical Optics Express,2019年01月31日,Vol. 10, No. 2,p.995,DOI: 10.1364/BOE.10.000995
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03H 1/04
G03H 1/22
A61B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目(10)の第1の層(11)の眼血管の眼血流を視野内の全領域で画像化する方法(200)であって、
レーザードップラーホログラフィ技術を用いて、前記第1の層の複数の干渉図形(I(x、y、t))を経時的に取得するステップ(201)と、
前記複数の干渉図形の各々について、ホログラム(H(x、y、t))を計算し、複数の第1のホログラムを生成するステップ(202)と、
連続的な時間ウィンドウ(t
w)内で、前記第1のホログラムから複数の第2のホログラムを選択するステップ(203)と、
前記第2のホログラムに関し、ドップラーパワースペクトル(S(x,y、f))を計算するステップ(204)と、
前記ドップラーパワースペクトルに基づいて、第1のドップラー画像を計算し、前記連続的な時間ウィンドウに関する複数の第1のドップラー画像を生成するステップ(205)と、
前記第1のドップラー画像を処理するステップと、を含み、
前記第1の層は、光ビームで照明され、
前記第1のホログラムは、所定の空間平面における前記第1の層によって後方散乱された光ビームの複素振幅で定義され、
前記第1のドップラー画像を計算し、前記連続的な時間ウィンドウに関する複数の第1のドップラー画像を生成するステップ(205)は、
前記第1のドップラー画像から口径食化を除去して、口径食除去された第1のドップラー画像を生成するステップ(206)と、
前記第1のドップラー画像の強度の空間平均に基づいて、前記口径食除去された第1のドップラー画像を正規化し、正規化された第1のドップラー画像を生成するステップ(207)と、
前記正規化された第1のドップラー画像から、前記第1のドップラー画像の強度の空間平均を減算し、補正された第1のドップラー画像を生成するステップ(208)と、を含み、
前記方法(200)は、前記補正された第1のドップラー画像を連続的に集め、前記眼血管内の血流の時間発展を表す動画像を生成するステップをさらに含
み、
前記第1のドップラー画像を処理するステップは、前記補正された第1のドップラー画像の反転を計算するステップをさらに含み、
前記動画像は、前記補正された第1のドップラー画像の反転から生成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第2のホログラムに関し、ドップラーパワースペクトル(S(x,y、f))を計算するステップ(204)は、
前記第2のホログラムの時間フーリエ変換を計算するステップと、
前記時間フーリエ変換の2乗ノルムを計算するステップと、を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のホログラムから生成された2次元行列(H
w)の特異値分解(SVD)を実行し、複数の特異値および特異ベクトルを生成するステップと、
前記複数の特異値および特異ベクトルを用いて前記第2のホログラムをフィルタして、複数のフィルタされたホログラムを生成するステップと、を含み、
前記第2のホログラムに関し、ドップラーパワースペクトル(S(x,y、f))を計算するステップ(204)は、前記複数のフィルタされたホログラムで実行されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のドップラー画像を計算し、前記連続的な時間ウィンドウに関する複数の第1のドップラー画像を生成するステップ(205)は、前記ドップラーパワースペクトルを第1の周波数範囲で積分することを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
複数の第2のドップラー画像を生成するために、前記ドップラーパワースペクトルを前記第1の周波数範囲と異なる第2の周波数範囲で積分するステップをさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
目の反射収差を補償するための位相補正処理をさらに備え、
前記位相補正処理は、
前記第1のドップラー画像から修正位相項を見積もるステップ(211)と、
前記第1のホログラムの各々に関し、補償されたホログラム(H^(x、y、t))を計算するステップ(212)と、を含み、
前記補償されたホログラム(H^(x、y、t))の計算は、前記修正位相項を使うことを特徴とする請求項
1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記修正位相項は、ゼルニケ多項式の線形結合で表されることを特徴とする請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のドップラー画像から修正位相項を見積もるステップ(211)は、反復的処理を備えることを特徴とする請求項
6に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のドップラー画像から修正位相項を見積もるステップ(211)は、副口径で計算された前記ドップラー画像の自己相関から生成された位相項をデジタル波面評価するステップを備えることを特徴とする請求項
6に記載の方法。
【請求項10】
目(10)の第1の層(11)の眼血管の眼血流を視野内の全領域で画像化するためのデジタルホログラフィ型の装置(100)であって、
光源(101)と、
結合器(134)と、
所定のフレームレート(f
s)の2次元光電気検出器(135)と、
処理ユニット(150)と、を備え、
前記光源(101)は、前記第1の層(11)を照明するための照明ビーム(E
obj)と、参照ビーム(E
LO)と、を生成するように構成され、
前記結合器(134)は、前記参照ビーム(E
LO)と、前記照明ビーム(E
obj)のうち前記第1の層(11)で後方散乱されたものと、を結合するように構成され、
前記2次元光電気検出器(135)は、複数の干渉図形(I(x、y、t))を取得するように構成され、
前記干渉図形は、前記参照ビーム(E
LO)と、前記照明ビーム(E
obj)のうち前記第1の層(11)で後方散乱されたものと、の間の干渉に起因する信号として定義され、
前記処理ユニット(150)は、前記複数の干渉図形(I(x、y、t))に対する処理を実行するように構成され、
前記複数の干渉図形(I(x、y、t))に対する処理は、
レーザードップラーホログラフィ技術を用いて、前記第1の層の複数の干渉図形(I(x、y、t))を経時的に取得するステップ(201)と、
前記複数の干渉図形の各々について、ホログラム(H(x、y、t))を計算し、複数の第1のホログラムを生成するステップ(202)と、
連続的な時間ウィンドウ(t
w)内で、前記第1のホログラムから複数の第2のホログラムを選択するステップ(203)と、
前記第2のホログラムに関し、ドップラーパワースペクトル(S(x,y、f))を計算するステップ(204)と、
前記ドップラーパワースペクトルに基づいて、第1のドップラー画像を計算し、前記連続的な時間ウィンドウに関する複数の第1のドップラー画像を生成するステップ(205)と、
前記第1のドップラー画像を処理するステップと、を含み、
前記第1の層は、光ビームで照明され、
前記第1のホログラムは、所定の空間平面における前記第1の層によって後方散乱された光ビームの複素振幅で定義され、
前記第1のドップラー画像を計算し、前記連続的な時間ウィンドウに関する複数の第1のドップラー画像を生成するステップ(205)は、
前記第1のドップラー画像から口径食化を除去して、口径食除去された第1のドップラー画像を生成するステップ(206)と、
前記第1のドップラー画像の強度の空間平均に基づいて、前記口径食除去された第1のドップラー画像を正規化し、正規化された第1のドップラー画像を生成するステップ(207)と、
前記正規化された第1のドップラー画像から、前記第1のドップラー画像の強度の空間平均を減算し、補正された第1のドップラー画像を生成するステップ(208)と、を含み、
前記複数の干渉図形(I(x、y、t))に対する処理は、前記補正された第1のドップラー画像を連続的に集め、前記眼血管内の血流の時間発展を表す動画像を生成するステップをさらに含
み、
前記第1のドップラー画像を処理するステップは、前記補正された第1のドップラー画像の反転を計算するステップをさらに含み、
前記動画像は、前記補正された第1のドップラー画像の反転から生成されることを特徴とする装置。
【請求項11】
前記視野のサイズを変えるように構成された光学要素(131)をさらに備えることを特徴とする請求項
10に記載の装置。
【請求項12】
前記光源は、ファイバシングルモード外部共振器型半導体レーザーであることを特徴とする請求項
11に記載の装置。
【請求項13】
前記2次元光電気検出器(135)は、CCDカメラまたはCMOSカメラであることを特徴とする請求項
10から12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
前記2次元光電気検出器(135)のフレームレート(f
s)は10kHz未満であることを特徴とする請求項
10から13のいずれかに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にレーザードップラーホログラフィを用いて、眼血流を視野内の全領域で画像化する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
目の疾患(例えば、中心および分枝網膜静脈および動脈閉塞、中心性漿液性脈絡網膜症、糖尿病網膜症、高血圧網膜症、加齢黄斑変性、緑内障など)を理解し診断するために、眼血流の正確なモニタリングが使われる。典型的にはこれらの疾患は、様々な網膜層および脈絡膜層における眼血管の微視的構造および血流動態に影響する。これらを検知するためには、十分な空間分解能(10ミクロンより良い)と、血流動態の通常の時間スケールより短い時間分解能(1秒より短い)とを持つ画像化技術が必要である。
【0003】
蛍光眼底造影法(FA)およびインドシアニングリーン蛍光眼底撮影法(ICGA)は、眼血流を調べるための一般的な方法であり、例えば“Fluorescence properties and metabolic features of indocyanine green (ICG) as related to angiography” Survey of ophthalmology 45.1 (2000):15-27に開示されている。これらは、眼血管内を循環して網膜や脈絡膜の脈管構造可視化する蛍光造影剤の使用に基づく。しかし患者の不便やリスクを抑えるためには、非侵襲性技術が望ましい。
【0004】
近年、眼血流測定に使われる既知の大抵の非侵襲技術は、照射された眼の層に存在する動く物体(スキャッタラー(典型的には赤血球))によって後方散乱された複数の明視野間の干渉に起因する不規則な強度のゆらぎ(スペックル)の測定に依拠する。空間的コントラストはスキャッタラーの速度に依存するため、眼血流に関する情報を得ることができる。
【0005】
Pechauer et al. “Assessing total retinal blood flow in diabetic retinopathy using multiplane en face Doppler optical coherence tomography” British Journal of Ophthalmology 102.1 (2017): 126-130に開示されているように、光干渉断層血管撮影(OCT-A)は、強力な血流画像化技術であり、スキャッタラーによって引き起こされ、複数回の測定にわたるスペックルの局所的な変化を計算することにより眼血管のコントラスト画像を生成する、OCT信号内のスペックルの変化を利用する。OCT-A装置は、網膜の毛細血管ネットワークをマイクロメートルの軸分解能でマップ化することができ、糖尿病網膜症の進行に関するパラメータ(例えば、毛管のサイズや分布、中心窩無血管域、すなわち網膜血管の欠損にあたる中心窩内の網膜領域の広がりを測定するために使うことができる。しかしながらこの技術は、特定の深さで特定の眼層のみを画像化することができ、網膜の全体画像を得るためには、サンプルの深さ全体を走査することにより網膜全体を再構成することが必要である。このプロセスには秒オーダの時間がかかるため、眼血流の時間分解測定を得る(典型的には秒未満の時間スケールで進行する)ためには、この技術の時間分解能は十分ではない。
【0006】
その他の既存の技術に、例えばSugiyama et al. “Use of laser speckle flowgraphy in ocular blood flow research” Acta ophthalmologica 88.7 (2010): 723-729に開示されたレーザースペックル流量測定(またはフローグラフ)がある。OCT-Aと同様にこの技術は、眼画像において血流内で運動するスキャッタラーによって引き起こされたスペックルパターンの非相関率を計算することにより、眼血流に関する情報を提供する。この技術は眼血流をリアルタイムで測定する(例えば、33ミリ秒の時間分解能で)ことはできるが、深さを区分することはできない。このため、異なる眼層からの寄与を明確に区別することができず、測定された速度のダイナミックレンジは狭い。
【0007】
その他の既存の技術に、レーザードップラー流量測定(LDF)がある。この技術では、眼血流は、フォトダイオード上の眼層によって後方散乱された光の自己干渉をもとに測定される。換言すれば、サンプルを単一周波数の光で照明し、後方散乱光のスペクトル内容を分析することにより、眼血流を見積もることができる。この方法の主な制限は、サンプルの一点のみしかモニタできないことにある。よい結果を得るためには、潜在的により広い領域を与えることのできる構成を走査することが必要である。なぜなら、心周期で起こる血流の変化をサンプルするためには、時間分解能が十分でないからである。
【0008】
よりよい時間分解能で眼血流の全領域測定を得るために、レーザードップラーホログラフィと呼ばれる新しい技術が出現している。この技術は、Puyo, L., et al. (“In vivo laser Doppler holography of the human retina” Biomedical optics express 9.9 (2018): 4113-4129)に開示されており、単色参照光と目の層(典型的には網膜または脈絡膜)によって後方散乱されたドップラー拡張ビームとの間の干渉に起因する信号のスペクトル内容を測定することに依拠する。この技術は、ドップラー流量測定(LDF)と幾分似たところがあるが、全領域画像画像化技術であるという点で異なる。従って領域を走査する必要がない。従ってこの技術は、高速かつ短時間解像度を持つこととなる。これにより、時間分解された動的な眼血流画像化が可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら上記の論文に記載された技術には、依然として眼血流に関する情報の量的取得ができないという問題がある。
【0010】
本開示は、レーザードップラーホログラフィで得られた干渉図形を処理する方法について記述する。これにより、眼層(例えば網膜または脈絡膜)内の血流の時間分解された全領域測定が可能となり、コントラストが量的である画像、すなわち画像強度が眼血流に対して線形関係にある画像が与えられる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、「備える」という用語は「含む」「含有する」の同義語(同じ意味を持つことば)であり、包括的で非限定的であり、他の言及されていない要素を排除するものではない。さらに本開示で数値に言及するとき、「約」「実質的に」という用語は、その数値の80%以上120%以下、好ましくは90%以上110%以下の範囲の同義語(同じ意味を持つことば)である。
【0012】
第1の態様では、本開示は、目の第1の層の眼血管の眼血流を視野内の全領域で画像化する方法に関する。この方法は、レーザードップラーホログラフィ技術を用いて、第1の層の複数の干渉図形(I(x、y、t))を経時的に取得するステップ(201)と、複数の干渉図形の各々について、ホログラム(H(x、y、t))を計算し、複数の第1のホログラムを生成するステップ(202)と、連続的な時間ウィンドウ(tw)内で、第1のホログラムから複数の第2のホログラムを選択するステップ(203)と、複数の第2のホログラムに関し、ドップラーパワースペクトル(S(x,y、f))を計算するステップ(204)と、ドップラーパワースペクトルに基づいて、第1のドップラー画像を計算し、連続的な時間ウィンドウに関する複数の第1のドップラー画像を生成するステップ(205)と、第1のドップラー画像を処理するステップと、を含む。第1の層は、光ビームで照明される。第1のホログラムは、所定の空間平面における第1の層によって後方散乱された光ビームの複素振幅で定義される。第1のドップラー画像を計算し、連続的な時間ウィンドウに関する複数の第1のドップラー画像を生成するステップ(205)は、第1のドップラー画像から口径食化を除去して、口径食除去された第1のドップラー画像を生成するステップ(206)と、第1のドップラー画像の強度の空間平均に基づいて、口径食除去された第1のドップラー画像を正規化し、正規化された第1のドップラー画像を生成するステップ(207)と、正規化された第1のドップラー画像から、第1のドップラー画像の強度の空間平均を減算し、補正された第1のドップラー画像を生成するステップ(208)と、を含む。方法(200)は、補正された第1のドップラー画像を連続的に集め、眼血管内の血流の時間発展を表す動画像を生成するステップをさらに含む。
【0013】
本開示では、「血流」という用語は、血管中に存在するスキャッタラーの速度を定量化する尺度であると理解される。
【0014】
本出願人は、前述の方法を用いることにより、目の層のドップラー画像を得ることができることを示した。このドップラー画像から、眼血流に関する情報を抽出することができる。特に、補正されたドップラー画像を得ることができる。この場合、血流のレベルは、等分目盛での任意単位で定量的に表される。これにより例えば、血管のレオロジー的なパラメータ、例えば粘性、圧力場または弾性などを得ることができる。本出願人はまた、前述のドップラー画像を動画に組み立てると、動的に時間分解された眼血流の測定、例えば眼血流の波面の時間プロファイル(眼血脈流とも呼ばれる)を得ることができることを示した。このパラメータは、目の疾患を調べるための重要な医学的手段である。
【0015】
1つ以上の実施の形態では、ドップラーパワースペクトルの計算は、スライディング法により実行される。すなわち、前述の第2のホログラムは、時間的に一定に変化する。新たな量のホログラムが計算に追加されるたびに、同じ量のホログラムが計算から除去され、ドップラーパワースペクトルは異なる複数のホログラム上で計算される。
【0016】
1つ以上の実施の形態では、前述の第1のドップラー画像の計算は、第1の選択された周波数範囲でのドップラーパワースペクトルの積分によって実行される。本出願人は、この選択された周波数範囲でのドップラーパワースペクトルの積分により、目の視野内に存在する血管のタイプに関する情報を取得でき、この血管の目のどの層に属するかを判別できることを示した。
【0017】
1つ以上のさらなる実施の形態では、第1および第2のドップラー画像は、異なる2つの選択された周波数範囲でのドップラーパワースペクトルの積分によって実行される。計算される。本出願人は、異なる選択された周波数範囲でのドップラーパワースペクトルの積分により、調査中の目の層の視野内に存在する血管のタイプをさらに区別できることを示した。
【0018】
有利には、合成画像を生成するために、前述の第1および第2のドップラー画像を重ね合わせることができる。2つの画像のカラースケールは異なっていてよく、これにより、血管のタイプを画像内で明確に区別できる。これは例えば、心周期における収縮および拡張期間中の眼血流の異なる挙動を表現し調べるために使うことできる。
【0019】
1つ以上のさらなる実施の形態では、ドップラー画像を処理するステップは、補正された第1のドップラー画像の反転を計算するステップをさらに含む。前述の動画像は、この補正された第1のドップラー画像の反転から生成される。
【0020】
有利には、本出願人は、例えば、前述の選択した周波数範囲が所定の周波数値(例えば5kHz)より低い周波数だけを含む特別な場合は、補正された第1のドップラー画像に代えて、補正された第1のドップラー画像を表示することにより、光センサのフレームレートの半分より高い周波数に相当する血流に関する情報を得ることができることを示した。これは、干渉図形を検出するために低速カメラ、例えば10kHz未満のフレームレートのカメラが使われるとき発生する。
【0021】
本開示では、所定の低フレームレート値より低いフレームレートが2次元の光電気検出器は低速カメラと呼ばれる。このような低フレームレート値は、例えば10kHzである。
【0022】
本明細書ではフレームレートは、光センサが1秒間に検出できる画像の数で定義される。
【0023】
1つ以上のさらなる実施の形態では、この方法は、寄生寄与を除去し、フィルタされたホログラムに基づいて前述のドップラーパワースペクトルを計算するために、第2のホログラムをフィルタするステップをさらに含む。
【0024】
1つ以上のさらなる実施の形態では、2次元行列の特異値分解(SVD)が実行され、複数の特異値と特異ベクトルとが生成されてよい。ここでこの2次元行列は、第2のホログラムから生成される。その後前述の第2のホログラムは、この特異値と特異ベクトルとを用いてフィルタされ、第2のフィルタされたホログラムが得られる。前述のドップラーパワースペクトルの計算は、この第2のフィルタされたホログラムに基づいて実行される。
【0025】
本出願人は、例えばホログラムのSVDを用いて、眼血流(これは主に赤血球の運動に起因する)と、寄生寄与(例えば、目の揃った運動、技術的な雑音、および目の前方部分からの疑似反射)と、を区別できることを示した。その後、特定された寄生寄与を除去することにより、ホログラムをフィルタすることができる。特にこれは、SVDがない場合と比べて、ドップラー画像の空間分解能と血流の検出率を著しく改善する。
【0026】
1つ以上のさらなる実施の形態では、この方法は、目の反射収差を補償するための位相補正処理をさらに備える。この位相補正処理は、第1のドップラー画像から修正位相項を見積もるステップと、第1のホログラムの各々に関し、補償されたホログラムを計算するステップと、を含む。補償されたホログラムの計算は、この修正位相項を使う。
【0027】
本出願人は、位相補正を用いることによって、調査中の目の光学系の品質に関わらず、空間分解能が著しく改善された補正されたドップラー画像を得られることを示した。
【0028】
1つ以上の実施のさらなる形態では、前述の修正位相項は、ゼルニケ多項式の線形結合で表される。
【0029】
1つ以上の実施のさらなる形態では、前述の第1のドップラー画像から修正位相項を見積もるステップは、反復的処理を備える。このような反復的処理は、位相補正処理が複数回実行されることを意味する。このとき、所定の時間位相補正処理を行った結果、すなわち補償されたホログラムは、後のさらなる位相補正処理に使われる。
【0030】
1つ以上の実施の形態では、第1のドップラー画像から修正位相項を見積もるステップは、ホログラムの空間フーリエ変換内で選択された副口径を用いて計算された前述のドップラー画面で実行されるデジタル波面を評価評価するステップを備える。
【0031】
第2の態様では、本開示は、目の第1の層の眼血管の眼血流を視野内の全領域で画像化するためのデジタルホログラフィ装置に関する。このデジタルホログラフィ装置は、第1の態様に係る方法の1つ以上の実施の形態を実行するように構成される。
【0032】
1つ以上のさらなる実施の形では、第2の態様に係る装置は、デジタルホログラフィ型であって、光源と、結合器と、フレームレートの2次元光電気検出器と、処理ユニットと、を備える。光源は、第1の層を照明するための照明ビームと、参照ビームと、を生成するように構成される。結合器は、参照ビームと、照明ビームのうち第1の層で後方散乱されたものと、を結合するように構成される。2次元光電気検出器は、複数の干渉図形を取得するように構成される。干渉図形は、参照ビームと、照明ビームのうち第1の層で後方散乱されたものと、の間の干渉に起因する信号として定義される。処理ユニットは、複数の干渉図形に対する処理を実行するように構成される。この処理は、レーザードップラーホログラフィ技術を用いて、第1の層の複数の干渉図形を経時的に取得するステップと、複数の干渉図形の各々について、ホログラムを計算し、複数の第1のホログラムを生成するステップと、連続的な時間ウィンドウ内で、第1のホログラムから複数の第2のホログラムを選択するステップと、複数の第2のホログラムに関し、ドップラーパワースペクトルを計算するステップと、ドップラーパワースペクトルに基づいて、第1のドップラー画像を計算し、連続的な時間ウィンドウに関する複数の第1のドップラー画像を生成するステップと、第1のドップラー画像を処理するステップと、を含み、第1の層は、光ビームで照明され、第1のホログラムは、所定の空間平面における第1の層によって後方散乱された光ビームの複素振幅で定義され、第1のドップラー画像を計算し、連続的な時間ウィンドウに関する複数の第1のドップラー画像を生成するステップは、第1のドップラー画像から口径食化を除去して、口径食除去された第1のドップラー画像を生成するステップと、第1のドップラー画像の強度の空間平均に基づいて、口径食除去された第1のドップラー画像を正規化し、正規化された第1のドップラー画像を生成するステップと、正規化された第1のドップラー画像から、第1のドップラー画像の強度の空間平均を減算し、補正された第1のドップラー画像を生成するステップと、を含み、前述の複数の干渉図形に対する処理は、補正された第1のドップラー画像を連続的に集め、眼血管内の血流の時間発展を表す動画像を生成するステップをさらに含む。
【0033】
1つ以上の実施の形態では、この装置は、視野のサイズを変えるように構成された光学要素をさらに備える。
【0034】
有利には、装置の他のパラメータを変えることなく、さらにこうしたパラメータを再度最適化する必要なく、画像化対象の目の層での視野を容易に変えられるように、この光学要素はリトラクタブルである。
【0035】
1つ以上の実施の形態では、2次元光電気検出器は、CCDカメラまたはCMOSカメラである。
【0036】
1つ以上の実施の形態では、2次元光電気検出器のフレームレートは10kHz未満である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
下記の図面を参照して以下の説明を読むことにより、本発明のその他の利点および特徴が明らかとなるだろう。
【
図1】本開示に係る典型的なドップラーホログラフィ装置の図である。
【
図2】本開示に係る典型的な方法の処理ステップを示す図である。
【
図3A】光ドップラーパワースペクトルの模式図である。
【
図3B】高フレームレートf
s1を持つ2次元光電気検出器が使われたときのドップラーパワースペクトルの積分によるドップラー画像の計算の模式図である。
【
図3C】低フレームレートf
s2を持つ2次元光電気検出器が使われたときのドップラーパワースペクトルの積分によるドップラー画像の計算の模式図である。
【
図4A】異なる周波数選択領域にわたってドップラーパワースペクトルを積分した後、本開示に係る典型的な装置で得られた目(網膜または脈絡膜)の後部層のドップラー画像を低周波数でセンタリングした図である。
【
図4B】異なる周波数選択領域にわたってドップラーパワースペクトルを積分した後、本開示に係る典型的な装置で得られた目(網膜または脈絡膜)の後部層のドップラー画像を高周波数でセンタリングした図である。
【
図4C】上記2つのドップラー画像を組み合わせて単一画像にした後、得られた合成画像である。
【
図4D】比較のため、インドシアニングリーン蛍光眼底撮影法で得られた同じ目の層のドップラー画像である。
【
図5A】
図1の例の装置で得られたドップラー画像である。
【
図5B】
図1の例の装置で得られた修正ドップラー画像である。
【
図6A】異なる関心領域を特定する目の後部層のドップラー画像である(B:背景、RV:網膜静脈、RA:網膜動脈)。
【
図6B】本開示に係る正規化されたドップラー画像におけるベースラインを減算する前の、上記のドップラー画像における異なる関心領域の眼血流の時間発展を示す図である。
【
図6C】本開示に係る正規化されたドップラー画像におけるベースラインを減算した後の、上記のドップラー画像における異なる関心領域の眼血流の時間発展を示す図である。
【
図7】本開示のある実施の形態に係る特異値分解(SVD)の処理ステップを示す図である。
【
図8A】本開示のある実施の形態に係るSVDにおける固有ベクトルの役割を示す図であり、複数のホログラムのSVD後の、正規化された特異値のプロットを示す。
【
図8B】本開示のある実施の形態に係るSVDにおける固有ベクトルの役割を示す図であり、異なるインデックスを持つ空間固有ベクトルの2次元表示である。
【
図9】網膜のドップラー画像と、SVD処理の前後における血流の時間プロファイルである。
【
図10】いくつかの周波数領域にわたってドップラーパワースペクトルを積分することによって得られた、3つの修正ドップラー画像と逆ドップラー画像である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、干渉図形を与える典型的なドップラーホログラフィ装置100を示す。この干渉図形の処理が本開示の目的である。
【0039】
図2は、本開示のある実施の形態に係る方法の処理ステップに関する。
【0040】
装置100は、干渉計、例えば
図1に示されるようなon軸配置のファイバマッハツェンダー光干渉計を備える。光周波数f
0の時間コヒーレント光源(例えばレーザー)によって放射されたソースビーム102が、光分岐器103(例えばファイバ光カプラ)に送られ、照明ビーム120E
objと、参照ビーム110E
LOに分岐される。照明ビーム120E
objは、波長板121と線形偏光子122と第1光学レンズ123とを通り、ビームスプリッタ132で後方に反射され、第2光学レンズ130を通った後、目10の層11に導かれる。層11を照明した後、光の一部は、後方散乱され、第2光学レンズ130とビームスプリッタ132と結合器134(例えば非線形ビームスプリッタ)とを通り、その後光センサ135(すなわち、2次元光電気検出器)に入る。参照ビーム110E
LOは、波長板111と線形偏光子112と第3光学レンズ113と結合器134とを備える光路を通った後、光センサ135に導かれる。光センサ135から得られたデータは、処理ユニット150に送られる。処理ユニット150は、本開示の方法、例えば
図2に記載されたステップを含む方法に従ってデータを処理する。
【0041】
一般に本開示に係る処理ユニット150は、1つ以上の物理ユニット、例えば1つ以上のコンピュータを備える。本開示において、方法を実行するための計算ステップまたは処理ステップというときは、これらの各計算スタップまたは各処理ステップはソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、マイクロコードまたはこれらの好適な組み合わせによって実行されることを意味する。ソフトウェアが使われるときは、各計算ステップまたは各処理ステップは、コンピュータ・プログラムまたはソフトウェアコードからの命令によって実行されてもよい。これらの命令は、ストレージ媒体に記憶または送信され、計算ステップまたは処理ステップを実行するために処理ユニットによって読みこまれ、および/または、処理ユニットによって実行されてよい。
【0042】
装置100のある例によれば、目10の層11のうち画像化可能な部分(領域)は固定され、使われる光学システムのパラメータ(レンズの輻輳、レンズ間の距離、目10と第2レンズ130との距離、光センサ135と第3レンズとの距離を含む)に依存する。
本出願人は、目10と第2レンズとの間に光学部品131(例えば、追加的なリトラクタブルレンズ)を加えることによって、可変な領域(特により大きな領域)の配置を得ることができることを示した。この光学部品はリトラクタブルであるため、その動作は、機器の配置に影響を与えることなくオンにもオフにもできる。なぜなら、光学共役のいかなる変化も、数値ホログラフィック伝播によって補償できるからである。
【0043】
本開示の特定の実施の形態によれば、光源101はファイバシングルモード外部共振器型半導体レーザーである。光源は、例えば赤外線領域の光を放射するように構成される。目10に到達する照明ビームからの光のパワーは、眼科装置に関する国際標準の露出レベルに従う。
【0044】
例えば光センサ135は、所定の低フレームレート値(例えば約10kHz)より低いフレームレートのカメラである。本開示では、こうしたカメラは「低速カメラ」と呼ばれる。
【0045】
別の例によれば、光センサ135は、前述の低フレームレート値より高いフレームレートのカメラである。本開示では、こうしたカメラは「高速カメラ」と呼ばれる。
【0046】
参照ビームの電界は、
ELO(t)=A0exp(i2πf0t)
と書くことができる。ここでA0は、参照ビームの複素振幅である。後方散乱ビームの電界は、
E(t)=A(t)exp(i2πf0t)
と書くことができる。ここでA(t)は、照明ビームEobjと関心対象の層11内を運動するスキャッタラーとの相互作用に起因する情報を含む参照ビームの複素振幅である。層11内を運動するスキャッタラー(典型的には赤血球細胞)は、照明ビームからの光を反射し、当該光の光周波数(これはスキャッタラー(赤血球)の速度に依存する)のシフトを引き起こす。生体内のスキャッタラーの速度分布が広い範囲にわたることにより、後方散乱ビームにおける周波数内容が大きくなる。これは、本明細書ではドップラーパワースペクトルと呼ばれる。従って、光ドップラーパワースペクトルは、血流の画像化のために抽出されるべき血流情報を持つパラメータである。
【0047】
図3Aは、典型的な光ドップラーパワースペクトルを示す模式図である。光ドップラーパワースペクトルは、層11内に存在する血流の特性で決まる幅を持つ光源の光周波数に関する周波数シフトの特定の関数である。低血流の主なものは、周波数の増加に伴って急速に減少する光ドップラーパワースペクトル301に一致する。高血流の主なものは、周波数の増加に伴ってゆっくり減少する光ドップラーパワースペクトル302に一致する。光ドップラーパワースペクトルは、レーザーの光周波数に一致するガウスの法則と層11内の血流の強さに比例する標準偏差に従ってよい。
【0048】
本出願人は、共線後方散乱と参照ビームと(EとELO)の2次元の干渉によって発生する干渉パターンを(光センサ135を用いて)検出し(処理ユニット150を用いて)処理することにより、光ドップラーパワースペクトルを見積もることができることを示した。本開示では、光センサによる2次元干渉パターンの取得は、干渉図形I(x、y、t)と呼ばれる。
【0049】
光センサによって生成される干渉図形I(x、y、t)は、
I=|E+ELO|2
であり、2次元の光センサに沿った複数のピクセルにより定義される実数値の2次元行列であり、参照ビームの方向に実質的に直行する平面上で定義される。ピクセルは、2次元座標を用いて特定することができる。本開示では、座標はx、yと呼ばれる。ピクセルの数は、光センサ135の性能に依存する。干渉図形は、光センサ135によって経時的に取得される。従ってI(x、y、t)は、時間tの関数でもある。
【0050】
本開示の目的の1つは、目10の層11の視野内の血流の動画を生成するために、処理ユニット150内で干渉図形を処理することにある。
【0051】
図2に、本開示のある実施の形態の処理方法を示す。干渉図形が、経時的に取得される(ステップ201)。各干渉図形I(x、y、t)に関し、対応するホログラムH(x、y、t)が再構成される(ステップ202)。この再構成は、例えばフレネル変換を用いて記録された干渉図形の角度スペクトル伝播によって行われる(Goodman, Introduction to Fourier optics. Roberts and Company Publishers (2005)に開示されている)。従って各干渉図形に関し、層11の平面の領域において、複素数値
H(x、y、t)=Fresnel{I(x、y、t)}
を持つホログラムを取得することができる。領域は数mm
2であり、典型的には4mm×4mmの正方形である。再構成距離は十分大きい。従って、ホログラフィックな2つの寄生画像エネルギーは、再構成ホログラム全体に広がり、結果画像に実質的な影響を与えない。
【0052】
時間ウィンドウ
tw=N/fs
内で計算されたある個数N(典型的には数百から数千)の連続ホログラムが、ホログラムの流れの中から選択される(検出された干渉図形の流れから計算される)(ステップ203)。パラメータtwの選択により、本開示に係る装置の時間分解能が決定される。時間分解能と信号帯雑音比との間のトレードオフを考慮し、0.5ms以上20ms以下、有利には1ms以上20ms以下の時間ウィンドウが使われてよい。例えばフレームレート75kHzの光センサが高速カメラの場合、6.8msの時間ウィンドウが使われてよいこの場合、512個のホログラムが選択される。
【0053】
本出願人は、光ドップラーパワースペクトルの見積もりを得るために、複素振幅Nのホログラムの時間周波数フーリエ変換の2乗ノルムを計算できることを示した(ステップ204)。本開示では、前述の光ドップラーパワースペクトルの見積もりは、簡単に「ドップラーパワースペクトル」S(x、y、t、f)と呼ばれる。数学的には、ステップ204は以下のように書ける。
【数1】
【0054】
ドップラーパワースペクトルは、周波数fの関数で表される。この周波数fはドップラー周波数と呼ばれ、ゼロ周波数の周辺にセンタリングされる。
【0055】
ドップラーパワースペクトルの計算は、スライディング法により実行されてもよい。これは、時間周波数フーリエ変換が実行されるN個の連続ホログラムが、常に経時的に変化することを意味する。新たな量のホログラムがN個のホログラムに追加されるたびに、同じ量のホログラムがN個のホログラムから除去され、異なる組成のホログラムの数N上でドップラーパワースペクトルが計算される。ホログラムの連続する数Nの間で一定のオーバーラップを定義することができる。このオーバーラップは、0以上N-1以下である。例えばN/2個の画像のオーバーラップを選択することができる。これは、2つの連続するドップラーパワースペクトルが、同じ内容の半分を共有するホログラムの量にわたって計算されることを意味する。0個の画像のオーバーラップを選ぶこともできる。これは、2つの連続するドップラーパワースペクトルが、異なるホログラムにわたって計算されることを意味する。例えばN-1といった大きなオーバーラップによりドップラー画像の時間分解能が改善されるが、典型的には計算時間が増える。
【0056】
各時間ウィンドウtw(N個のホログラムに対応する)に関し、ドップラー周波数「f1、f2」の選択された範囲(層11の特徴を明らかにするために選択される)でドップラーパワースペクトルの積分を実行することにより(ステップ205)、画像M(x、y、t)(ドップラー画像と呼ばれる)を計算することができる。
【0057】
図3Bは、ドップラーパワースペクトル311の広いドップラー周波数範囲での積分による、ドップラー画像の計算(ステップ205)の例を示す。ドップラー周波数の範囲は、ドップラーパワースペクトル311の主要部分312を含む。一方、ドップラーパワースペクトル311の小数部分だけは省かれる。これは、光センサ135がフレームレートf
s1(これは、層11における運動するスキャッタラーにより生成されたドップラー周波数の最大値の半分に近いかそれ以上である)の高速カメラであるとき、典型的にあてはまる。こうした高速カメラの場合、ナイキスト-シャノン基準が正当化され、これらの周波数に対応する信号には折り返し雑音がなく明瞭に視認できる。典型的には、眼画像におけるドップラー周波数の最大値は30kHzであり(動脈に起因する)、センサのフレームレートは60kHz以上である必要がある。
【0058】
代替的に本開示の特定の実施の形態は、干渉図形を記録するために、フレームレートf
s2(これは、層11における運動するスキャッタラーに起因するドップラー周波数の最大値の2倍より著しく低く、例えば10kHz)の低速カメラを使用することを含む。
図3Cに示される通り、このような構成では、カメラのフレームレートの約半分の周波数に対応する信号323-324は失われ、ドップラーパワースペクトル321のこれらの周波数での積分は不可能であろう。従ってドップラーパワースペクトル321の積分205は、狭い領域322に制限され、領域323-324に含まれる情報は失われるだろう。狭い領域322に含まれる情報は、大半が低速流(照明ビーム光の小さいドップラー周波数シフトを生成するスキャッタラー)に関係する。
【0059】
数学的には、積分(ステップ205)は以下のように書ける。
【数2】
ここで、f
1およびf
2は、ドップラー画像を計算するためにドップラーパワースペクトルが積分される周波数領域を定義する。
【0060】
図4A-4Dは、異なる方法による網膜の実験的なドップラー画像を示す。実験的な画像は、
図1に示される装置を用いて得られる。この場合、光源は波長785nmで45mWの光を放射する単一波長のレーザーダイオードであり、光センサはフレームレート75kHzの高速のCMOSカメラである。
【0061】
図4Aはおよび
図4Bは、ドップラーパワースペクトルをドップラー周波数の異なる領域にわたって積分することにより得られたドップラー画像を示す。
図4Cは、層11の血管のタイプを明らかにするために
図4Aおよび
図4Bから得られる複合ドップラー画像を示す。本出願人は、明らかにされた血管のタイプは、パワードップラー画像を計算するために使われる選択的な周波数のフィルタフィング領域によって決定されることを示した。特に高いドップラー周波数(典型的には、6-30kHz)は高い流量の血管に起因する信号に対応し、低いドップラー周波数(典型的には、2.5-6kHz)は、より低い流量の血管に起因する信号に対応する。本出願人は、高いおよび低いドップラー周波数に対応するドップラー画像(
図4A-4B)を個別に計算し、これらを単一の合成カラー画像(
図4C)に統合すると、広範囲にわたる流れを持つ血管を同時に表示でき、流れの情報を画像の色に定性的に符号化でき、これにより流れに従って血管を明確に区別できることを示した(この様子を
図4Cに示す)。本開示の装置及び方法のこの特別な実施の形態は、例えば眼静脈と眼動脈とを区別するために使うことができ、ICGAのような他の技術に対する利点を示すことができる。
図4Dは、
図4A-4Cに示される層11と同じ画像をICGA技術で取得したものを示す。特に、
図4C(本方法で得られたもの)には大きな眼静脈が見られるが、ICGA技術では明らかにされない(
図4Dに示される)。
【0062】
ドップラーパワースペクトル解析そのものとは別に、前述の方法で得られた眼血流のドップラー画像の解像度をさらに改善することは医学的興味の対象だろう。もちろん、ステップ201-205の後で得られたドップラー画像の品質は、目10の巨視的な動きや不完全な光学システムといったいくつかの原因で劣化する。
【0063】
本出願人は、ステップ206-208の処理により、ドップラー画像の品質を著しく改善できることを示した。
【0064】
図5Aは、縁に向かう側面のかげり(本明細書では「口径食」と呼ぶ)を持つドップラー画像を示す。
【0065】
本出願人は、特定の処理(ステップ206)をドップラー画像に施すことにより、前述の口径食を補正できることを示した。ここで、不鮮明とする目的で、ドップラー画像Mは、それ自身がガウス関数でたたみ込まれたばージョンデ割り算される。この処理(ステップ206)により、以下のように表される「口径食除去された」画像M’が得られる。
M’=M/(M*G)
ここで記号「*」は、たたみ込みを表し、Gはガウス関数である。別の文脈で適用される口径食除去の詳細と、典型的なガウス関数は、例えば以下に記載されている。Leong et al. “Correction of uneven illumination (vignetting) in digital microscopy images.” Journal of clinical pathology 56.8 (2003): 619-621
【0066】
図5Bに示されるように、口径食除去処理(ステップ206)により、画像には口径食はもはや存在しない。そして画像の周辺にある血流が明らかとなる。
【0067】
図5Aおよび5Bは、
図1に示される装置を用いて得られた。ここで光源は、波長785nmで45mWを放射する単一波長のレーザーダイオードである。光センサは、フレームレート75kHzの高速CMOSカメラである。
【0068】
本出願人は、正規化処理(ステップ207)をベースライン減算処理(ステップ208)と組み合わせることにより、口径食除去されたドップラー画像をさらに改善できることを示した。
【0069】
正規化処理は、口径食除去されたドップラー画像M’で実行されてよい。その結果、正規化されたドップラー画像M’’が得られる。数学的には、上記の正規化処理(ステップ207)は以下のように書ける。
M’’=(A/A’)M’
ここで、A=<M(x、y)>およびA’=<M’(x、y)>は、それぞれドップラー画像と口径食除去されたドップラー画像の平均強度(すなわち、すべてのピクセル強度の2次元xおよびy上での平均)である。
【0070】
ベースライン減算処理(ステップ208)は、M’’’=M’’-Aと書くことができ、これにより、画像M’’’が生成される。本開示では、M’’’は補正されたドップラー画像と呼ばれる。この処理は、正規化されたドップラー画像M’’からドップラー画像Mの平均強度Aを引くことに相当する。
【0071】
本出願人は、前述の処理(ステップ207-208)を用いて、補正されたドップラー画像M’’’は、目の動きによる様々な寄生寄与と不完全な光学システムが著しく低減された眼血流データを与えることを示した。
【0072】
寄生寄与の低減が得られるのは、ベースラインの減算(ステップ208)と正規化処理207との相乗効果のおかげであることに注意する。このとき、画像の平均強度が保存される一方、画像強度の空間分布は変化する。
【0073】
本出願人は、眼血流の動画像を生成するために、ステップ208後の一定の時間の間に得られた補正された画像M’’’を集めることができることを示した。眼血流の動画像は高品質で、層11の血管内の流れの時間的波形(または脈流)を調べるために有用である。例えばこれにより、網膜または脈絡膜内の静脈および動脈内の収縮または拡張脈流をモニタすることができる。
【0074】
図6A-6Bは、目10の層11の眼血流を画像化するときの処理207-208の技術的効果を示す。
【0075】
図6Aは、網膜の実験的なドップラー画像であり、関心のある3つの領域が示される(RA、RVおよびB)。こうした実験的な画像は、
図1に示されるような装置を用いて得られる。ここで光源は、波長785nmで45mWを放射する単一波長のレーザーダイオードである。光センサは、フレームレート75kHzの高速CMOSカメラである。
【0076】
図6Bは、
図6Aのドップラー画像の関心のある3つの領域の血流の時間発展のグラフを示す。
図6Cは、同じ関心領域の血流の時間発展だが、補正された画像M’’’から得られた(
図6Aのドップラー画像に処理207-208を施した後に得られた)もののグラフを示す。時間発展は、いくつかの連続するドップラー画像(これらは、動画像を生成し、該動画像から血流の情報を抽出するために、経時的に取得されたものである)を集めた後に得られる。処理207-208がない場合、関心のある3つの領域における血流の時間発展は同じ形を持つ。このとき、各関心領域に存在する特徴のタイプは、簡単には区別することできない。これとは逆に、処理207-208がある場合、時間発展の異なる傾向が明らかになる。
【0077】
従って、正規化処理(ステップ207)および本開示における動画像を構成するドップラー画像内のベースライン信号の減算(ステップ208)は、調べられたドップラー画像の特徴に特有の流れの振る舞いを明らかにし、例えば、眼静脈および眼動脈の脈流を特定し、これらを背景から区別する方法を提供することが示される。
【0078】
さらに本出願人は、本開示に係る方法で画像化された層11の血管内の血流は、任意単位で線形に定量化でき、補正された画像の各ピクセルの値に定性的に符号化できることを示した。これにより、眼血管のレオロジー的なパラメータに関する情報を与えることができる。このパラメータは、血流(そのような粘性、弾性および圧力場)に対応し、目に関する病気や他のタイプの病気(例えば高血圧)を診断するのに有用である。
【0079】
本開示の選択的な実施の形態では、目の組織の運動に起因する信号から有用な血流信号を分離するために、ドップラーパワースペクトルの計算204の前に、追加的なステップを実行することができる。このような処理ステップにより、著しく解像度が改善された画像が与えられる。
【0080】
本出願人は、この解像度の改善は、ドップラースペクトルが流れの周波数範囲(典型的には、概ね5kHz未満の周波数)で積分されるときに特に顕著であることを示した。
【0081】
このような追加的な処理ステップは、時間ウィンドウtw内で取得された複数の第2のホログラムH(x、y、t)の各々の特異値分解(SVD)を含む。
【0082】
図7は、このような複数の第2のホログラムの各々の特異値分解を実行するのに使うことのできるアレイ操作を示す。
【0083】
本開示の実施のある実施の形態では、N個の第2のホログラムH(x、y、t)(サイズ(dx、dy、N)の3次元アレイで構成される)のSVDは、2つのステップを含む。第1のステップ。N個のホログラムH(x、y、t)の最大多数が、2つの空間的次元により、サイズ(dx、dy、N)の2次元行列H
w(x、y、t)に再構成される。第2のステップ。2次元行列は、以下の式に従って、特異値に分解される。
【数3】
UおよびVはそれぞれ、サイズ(dx、dy、dx.dy)および(N、M)のユニタリ行列で、その列はそれぞれ空間的固有ベクトル(空間的特異ベクトル)および時間的固有ベクトル(時間的特異ベクトル)に相当する。Δ領域の対角成分は、行列H
wの特異値(λ
1、…、λ
N)である。従って、行列H
wの任意の係数は、以下のように表すことができる。
【数4】
【0084】
SVDは、行列を2つの部分空間、すなわち信号部分空間(行の間および/または列の間の顕著な相関で特徴づけられる)と雑音部分空間(行の間および/または列の間の低い相関で特徴づけられる)とに分解する。信号部分空間は最大の分解値に関し、雑音部分空間はより小さい分解値に関する。従ってSVDにより、信号と雑音の両方の寄与を含む空間から、雑音部分空間を除去することができる。他の文脈で適用されるSVD法に関する詳細は、例えば以下に記載される。
Baranger et al. “Adaptive spatiotemporal SVD clutter filtering for ultrafast Doppler imaging using similarity of spatial singular vectors.” IEEE transactions on medical imaging 37.7 (2018): 1574-1586.
【0085】
図8A-8Bは、第2のホログラムにSVD処理を施した後に見いだされる特異ベクトルの列に関する、順序化された正規化された特異値の例をdBで示す。
図8A-8Bは、
図1に示される装置を用いて得られた実験的な画像である。ここで、光源は、波長785nmで45mWを放射する単一波長のレーザーダイオードである。光センサは、フレームレート75kHzの高速CMOSカメラである。
【0086】
図8Aに示される通り、特異値は、特異ベクトルインデックスの増加とともに減少する。
図8Bに示される通り、目の組織の運動に起因して、第1の固有ベクトル(81-83)は寄生情報を含む。一方、より大きいインデックスの固有ベクトル(84-86)は、眼血流データを含む。その後、組織の揃った運動、技術的な雑音、レーザー強度のゆらぎ、および目の前方部分からの反射に起因する寄生情報は、雑音行列H
noiseを定義することにより除去される。この雑音行列H
noiseは、最大の特異値(すなわち、
図8Aの点線で示される閾値より小さいインデックスの特異ベクトル)からの寄与を含み、以下のようにH
wから引き算される。
【数5】
この操作により、H
fを用いて、フィルタされた第2のホログラムを得ることができる。
【0087】
図9は、前述のフィルタされたホログラムにステップ204-208を施した後に、一般的なアルゴリズム200(すなわちSVDのない)だけから得られた補正されたドップラー画像91に比べて空間分解能の品質が高い、フィルタされたドップラー画像93が得られることを示す。
【0088】
図91および93は、
図1に示される装置を用いて得られた実験的画像である。ここで、光源は、波長785nmで45mWを放射する単一波長のレーザーダイオードである。光センサは、フレームレート75kHzの高速CMOSカメラである。
【0089】
SVD処理の利点は、(SVDで)フィルタされたドップラー画像の連続的な集合によって生成された動画像から血流の時間的プロファイルを抽出すると、(SVDのない)補正されたドップラー画像に比べて視認性が向上することにある。SVDがあると、血流の時間的プロファイル(94)は時間分解され、心周期を観測することができる。これに対しSVDがないと、時間的プロファイル(92)の信号帯雑音比はより低く、心周期はほとんど観測できない。
【0090】
性能向上は、5kHz未満のドップラー周波数に相当する低血流で特に顕著である。このとき、背景信号が特に著しい。
【0091】
本開示のある選択的な実施の形態では、ドップラー画像の計算後に追加的な処理ステップが実行される。この追加的な処理ステップでは、補正されたドップラー画像の反転(すなわち、補正されたドップラー画像とコントラストが反転している画像)が計算される。このドップラー画像の反転は、本開示では「反転したドップラー画像」と呼ばれる。
【0092】
図10は、ドップラーパワースペクトルの周波数の複数範囲([0.2-1kHz]、[2-6kHz]および[6-33kHz])での積分から生成された補正されたドップラー画像(96、98、99)と、補正されたドップラー画像96(低周波数に相当する)のコントラストを逆転することにより得られた反転したドップラー画像97とを示す。特に反転したドップラー画像97は、高周波数での積分から得られた補正されたドップラー画像99に似ていること分かる。
【0093】
こうした追加的なステップは、補正されたドップラー画像M’’’の反転の計算を含む。数学的には、この計算はM’’’ ̄=-M’’’と書ける。一旦いくつかのドップラー画像が計算されると、動画像を生成するために、これらは連続的に集められる。これにより、高い流量レベルの時間的挙動が明らかになる。
【0094】
特にこのような追加的なステップのおかげで、ドップラーパワースペクトルの低周波成分分析することにより、ドップラーパワースペクトルの高周波成分に関する情報を得ることができる。こうした特性は、高流量の変化によって生じるドップラーパワースペクトルの変形に起因するものであると理解することができる。実際、高流量の変化はドップラーパワースペクトルの形を歪ませる。この歪みは、ドップラーパワースペクトルの中心付近にも見られるだろう。典型的には、高流量の増加はドップラーパワースペクトルを引き伸ばし、高さを低くする(
図3Aに示されるように)。これにより、中心付近のスペクトルの振幅は減少する。結果として、低周波範囲で計算された反転したドップラー画像の動画を表すことにより、高流量に関する情報を得ることができる。
【0095】
本出願人は、この追加的ステップは、干渉図形を検出するために低速カメラが使われる場合に特に有用であることを示した。
【0096】
有利には、解像度の改善された眼血流プロファイルを得るために、この追加的ステップをSVD処理と組み合わせることができる。
【0097】
前述に加えて、目10の光学系に屈折収差が存在することにより、ドップラー画像の形状が崩れ、該画像から抽出される眼血流の情報が制限される。この技術的課題を解決するために、本出願人は、ホログラム(H(x、y、t)にデジタル収差補償アルゴリズムを施すことにより、目10の不完全性に起因する屈折収差を補正できることを示した。
【0098】
「位相補正」と呼ばれるこの操作は、以下の通りである。最初にドップラー画像Mから、位相マスクΦ(x、y)に関する目の屈折収差を見積もる(211)。これはゼルニケ多項式の線形結合として表すことができる。次に以下の式に従って位相項の逆変換を適用することにより、ホログラムHを補正する(212)。
【数6】
ここでFT
-1は逆フーリエ変換を表す。これにより、複数の補償されたホログラムH^(x、y、t)が得られる。212の次に、(選択203と同様に)補償されたホログラムのある数Nを選択する(213)。その後、補正された画像M’’’を取得するために、前述の204-208と同じ処理が施される。この屈折補償技術により、空間分解能に関する補正された画像の品質が著しく改善される。
【0099】
本開示のある可能な実施の形態では、位相項は、ドップラー画像で計算された特定のメトリックの収束により反復的に見積もられる。このとき位相項は、ゼルニケ多項式の線形結合で表される。
【0100】
本開示の別の実施の形態では、位相項は、ホログラムの空間フーリエ変換内で選択された副開口を用いて計算されたドップラー画像の自己相関から見積もられる。
【0101】
本開示のある可能な実施の形態では、位相補正は反復的にされてもよいし、非反復的にされてもよい。以下を参照のこと。Hillmann et al. “Aberration-free volumetric high-speed imaging of in vivo retina.” Scientific reports 6 (2016): 35209. and Ginner et al. “Noniterative digital aberration correction for cellular resolution retinal optical coherence tomography in vivo” Optica 4.8 (2017): 924-931.
【0102】
以上、複数の詳細の典型的な実施の形態を用いて説明した。しかし、本開示に係る方法または装置が、異なる代替的な実施の形態、変形および改良を含むことは、当業者には明らかだろう。これらの異なる代替的な実施の形態、変形および改良が、以下の請求項で定義される発明の範囲に含まれることも理解される。