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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】作業車両の操作評価システム
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20231212BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20231212BHJP
   G07C 5/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B66F9/24 Z
G08G1/00 D
G07C5/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019238451
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021107261
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】大石 啓之
(72)【発明者】
【氏名】南 良樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕一
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-199331(JP,A)
【文献】特許第6613343(JP,B1)
【文献】特許第6586497(JP,B1)
【文献】中国特許出願公開第110143543(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0229988(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/24
G08G 1/00
G07C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両の荷物積載部に載置された荷物の画像を取得する画像取得手段と、
前記作業車両の操作に関する情報を取得する操作情報取得手段と、
前記画像取得手段で取得した画像情報と、前記操作情報取得手段で取得した操作情報に基づいて、前記作業車両に関する挙動情報を生成する挙動情報生成手段と、
前記挙動情報に基づいて、前記作業車両の操作が所定の車両操作条件を満たしているか否かを判定する操作判定手段と、
を備える作業車両の操作評価システムであって、
前記作業車両は、昇降可能に構成された前記荷物積載部を備え、
前記所定の車両操作条件は、
前記荷物積載部の昇降動作の前後において、運搬する荷物と前記作業車両との間隔が所定間隔以下に狭まった場合に、前記荷物積載部により前記荷物を二度に分けてすくう二度すくい操作を行ったことである、作業車両の操作評価システム
【請求項2】
前記画像情報、前記操作情報、前記挙動情報および前記操作判定手段の判定結果の少なくとも1つを格納する情報格納手段を備える請求項1に記載の作業車両の操作評価システム。
【請求項3】
前記情報格納手段は、
前記荷物積載部により前記荷物を二度に分けてすくう二度すくい操作を行った頻度情報、前記二度すくい操作を行った位置情報および前記二度すくい操作を行った時刻情報の少なくとも1つを格納する請求項2に記載の作業車両の操作評価システム。
【請求項4】
前記操作判定手段は、
前記二度すくい操作が必要な箇所における前記二度すくい操作の実施率を算出し、
当該実施率に基づいて前記作業車両の操作の評価を行う請求項1~3のいずれか1項に記載の作業車両の操作評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフト等の作業車両の操作評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフト等の作業車両を運用して、荷物の運搬作業等を行っている。
ここで、フォークリフト等の作業車両の運用状況を監視し、運用効率を向上させようとする技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-156863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、作業車両の一種であるフォークリフトは、フォーク部(ツメ、荷物積載部ともいう)によって荷物をすくい上げて運搬作業を行う。
【0005】
ここで、例えば、奥行き方向に複数の荷物が密着状態で置かれている場合、或いは、トラックの荷台やプラットホーム等の段上への荷揚げや荷降ろしを行う場合には、荷物同士が衝突する事態、奥側の荷物をフォーク部で傷つける事態等が発生し易い。
また、プラットホームやトラック車両とフォークリフトの車体とが衝突する虞もある。
そのため、上記のような状況で荷物の荷揚げや荷降ろしを行う場合には、荷物を二度に分けてすくう二度すくい操作を行うことが望ましい。
【0006】
しかしながら、作業現場において上述のような二度すくい操作等の所定の車両操作条件を満たす操作が行われているかの監視は、従来技術に係る技術では行うことができないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、所定の車両操作条件を満たす操作が行われているかを評価できる作業車両の操作評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様に係る作業車両の操作評価システムは、作業車両の荷物積載部に載置された荷物の画像を取得する画像取得手段と、前記作業車両の操作に関する情報を取得する操作情報取得手段と、前記画像取得手段で取得した画像情報と、前記操作情報取得手段で取得した操作情報に基づいて、前記作業車両に関する挙動情報を生成する挙動情報生成手段と、前記挙動情報に基づいて、前記作業車両の操作が所定の車両操作条件を満たしているか否かを判定する操作判定手段と、を備える。
前記画像情報、前記操作情報、前記挙動情報および前記操作判定手段の判定結果の少なくとも1つを格納する情報格納手段を備えることが好ましい。
【0009】
前記作業車両は、昇降可能に構成された前記荷物積載部を備え、前記所定の車両操作条件は、前記荷物積載部の昇降動作の前後において、運搬する荷物と前記作業車両との間隔が所定間隔以下に狭まった場合に、前記荷物積載部により前記荷物を二度に分けてすくう二度すくい操作を行ったことであることが好ましい。
【0010】
前記情報格納手段は、前記荷物積載部により前記荷物を二度に分けてすくう二度すくい操作を行った頻度情報、前記二度すくい操作を行った位置情報および前記二度すくい操作を行った時刻情報の少なくとも1つを格納することが好ましい。
【0011】
前記操作判定手段は、前記二度すくい操作が必要な箇所における前記二度すくい操作の実施率を算出し、当該実施率に基づいて前記作業車両の操作の評価を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、所定の車両操作条件を満たす操作が行われているかを評価できる作業車両の操作評価システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態に係る作業車両の操作評価システムが適用されるフォークリフトを示す側面図である。
図2】実施の形態に係る作業車両の操作評価システムが適用されるフォークリフトを示す斜視図である。
図3】実施の形態に係る作業車両の操作評価システムの機能構成を示す機能ブロック図である。
図4】実施の形態に係る作業車両の操作評価システムに適用されるデジタルタコグラフの構成例を示すブロック図である。
図5】二度すくい操作が必要な場合を示す説明図である。
図6A】二度すくい操作の手順(イ)~(ニ)を示す説明図である。
図6B】二度すくい操作の手順(ホ)~(ト)を示す説明図である。
図7】実施の形態に係る作業車両の操作評価システムで実行される二度すくい判定処理の処理手順の続きを示すフローチャートである。
図8】操作管理の例を示すチャート図である。
図9】実施の形態に係る作業車両の操作評価システムに適用されるデジタルタコグラフにおける表示例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1図9を参照して、本発明の実施の形態に係る作業車両の操作評価システムS1について説明する。
【0015】
(作業車両の構成例)
図1および図2を参照して、本実施の形態に係る作業車両の操作評価システムS1を適用可能な作業車両の構成例としてのフォークリフトFについて説明する。
作業車両としてのフォークリフトFは、昇降可能なフォーク部(荷物積載部)103、駆動輪(後輪)104、走行用車輪(前輪)105、インスツルメントパネル116、ステアリング110、変速レバー111等を備えている。
【0016】
フォークリフトFは、ガソリンエンジン等の内燃機関を駆動源102とする所謂エンジン車であってもよいし、発電機等から充電可能な二次電池(バッテリ)などから供給される電力で駆動される電動モータを駆動源102とする所謂バッテリ車であってもよい。
【0017】
フォーク部103を支持するマスト部115の上方には、荷物(例えばパレットP1上に荷物本体A1を載置したもの)C1の画像を取得可能な車載カメラ等で構成される画像取得手段101が設けられている。
【0018】
なお、車載カメラ101の撮影範囲500は、フォーク部103、荷物C1等を撮影可能な範囲に設定される。また、車載カメラ101が設けられる場所は、フォーク部103の画像を取得可能な位置であればマスト部115には限定されない。
【0019】
インスツルメントパネル116内には、作業車両の操作評価システムS1の一部を構成する車載器としてのデジタルタコグラフDT1等が設けられている。なお、デジタルタコグラフDT1等の詳細については後述する。
【0020】
そして、フォークリフトFのオペレータ(運転者)は、ステアリング110、変速レバー111および図示されないアクセルペダル、ブレーキペダル等のペダル等を操作して、フォーク部103の昇降、フォークリフトFの前進、後退、右折、左折等の動作を行わせて荷役作業等を行う。
【0021】
この際に、荷物C1(C2)等の置き方などに応じて、荷物C1を二度に分けてすくう所謂「二度すくい操作」を行う場合がある。なお、二度すくい操作の詳細については後述する。
【0022】
そして、フォークリフトFの作業過程において、二度すくい操作等の所定の車両操作条件を満たす操作、運転が行われているのかについて、取得した画像情報、操作情報に基づく挙動情報から判定する。
これにより、管理者は、フォークリフトFの作業過程において二度すくい操作等が適切に行われているか等を正確に把握することができる。
【0023】
また、判定結果に基づく、評価内容や指示等をフォークリフトFのオペレータ(運転者)に報知することにより、荷物同士の衝突等の発生を抑制することができる。
また、作業車両としては、工場、倉庫等の構内などにおいて荷物、製品等の積み降ろしや搬送等を行う車両であれば、フォークリフトFに限らず、搬送車等であってもよい。
【0024】
(作業車両の操作評価システムの機能構成)
図3を参照して、本実施の形態に係る作業車両の操作評価システムS1の機能構成について説明する。
ここで、図3は、実施の形態に係る作業車両の操作評価システムS1の機能構成を示す機能ブロック図である。
【0025】
まず、図3に示すように、作業車両の操作評価システムS1は、作業車両としてのフォークリフトFのフォーク部(荷物積載部)103に積載された荷物C1の画像を取得可能な車載カメラ等で構成される画像取得手段101を備える。
また、フォークリフトFの操作に関する情報(前進後退、右折左折、フォーク部の昇降等の操作情報)を取得する操作情報取得手段350を備える。
【0026】
また、画像取得手段101で取得した画像情報と、操作情報取得手段350で取得した操作情報に基づいて、フォークリフトFに関する挙動情報を生成する挙動情報生成手段351を備える。
さらに、挙動情報に基づいて、フォークリフトFの操作が所定の車両操作条件を満たしているか否かを判定する操作判定手段352を備える。
また、画像情報、操作情報、挙動情報および前記操作判定手段の判定結果の少なくとも1つを格納するフラッシュメモリ等で構成される情報格納手段を備える。
また、作業車両の操作評価システムS1は、タイマ等で構成される計時手段303、スピーカ404、表示器405等で構成される報知手段を備える。
【0027】
ここで、所定の車両操作条件は、フォーク部103の昇降動作の前後において、運搬する荷物C1(C2)とフォークリフトFとの間隔が所定間隔以下に狭まった場合に、前記フォーク部103により荷物C1(C2)を二度に分けてすくう二度すくい操作を行ったこと、とすることができる。
【0028】
なお、情報格納手段301は、二度すくい操作を行った頻度情報、二度すくい操作を行った位置情報および二度すくい操作を行った時刻情報の少なくとも1つを格納するようにできる。
これにより、管理者等は、二度すくい操作が適切に行われているかを正確に把握することができる。
【0029】
また、操作判定手段352は、二度すくい操作が必要な箇所における二度すくい操作の実施率を算出し、その実施率に基づいてフォークリフトFの操作の評価を行うようにできる。
これにより、管理者等は、二度すくい操作が適切に行われているかの情報に基づいて、フォークリフトFのオペレータ(運転者)の評価を適正に行うことできる。
【0030】
(デジタルタコグラフの構成例)
図4を参照して、デジタルタコグラフDT1の構成について説明する。
ここで、図4は、作業車両の操作評価システムS1に適用される車載器としてのデジタルタコグラフDT1の構成例を示すブロック図である。
【0031】
図4に示す車載器としてのデジタルタコグラフDT1は、フォークリフト(作業車両)Fに搭載され、エンジン回転数オーバ、急発進、急加速、急減速等の運転状態を表す運転データを含む稼働データを時刻毎に記録するものである。
【0032】
デジタルタコグラフDT1は、CPU11、速度/エンジン回転数I/F12、外部入力I/F13、センサ入力I/F14、GPS受信部202、CAN_I/F16、情報格納手段301、カードI/F18、音声I/F19、スピーカ404、RTC(時計IC)21、出庫/入庫ボタンSW入力部22、表示コントローラ23、通信部24、電源部25、メモリ26、LED表示部403、陸送ON/OFFボタンSW入力部31を有している。
【0033】
CPU11は、マイクロコンピュータにより構成される制御部であり、プログラムに従ってデジタルタコグラフDT1の全体を制御する。CPU11が実行するプログラムや制御に必要な定数等のデータはメモリ26上に保持されている。メモリ26は不揮発性であり、所定のプログラム、データの読み出しおよび書き込みが可能である。
メモリ26上には、定数のデータとして、2つの閾値テーブル26a、26bと、エリア情報テーブル26cとが格納されている。
情報格納手段301は、データの読み出しおよび書き込みが可能な不揮発性のメモリであり、稼働データの記録および保持のために利用される。
【0034】
カードI/F(インタフェース)18は、所定の規格に適合するメモリカードをCPU11に接続するためのインタフェースであり、メモリカードを着脱自在に保持するカードスロットを備えている。このカードI/F18には、フォークリフト(作業車両)Fを運転する各オペレータ(操作者)が所持している所定のメモリカード55が装着される。このメモリカード55は、不揮発性のメモリを内蔵しており、各オペレータを特定するための番号などが登録された状態で使用される。
【0035】
音声I/F19は、疑似音声信号を合成して出力するためのインタフェースであり、CPU11の制御により様々なメッセージに対応する音声信号を出力することができる。音声I/F19の出力には報知手段としてのスピーカ404が接続されている。
【0036】
RTC(リアルタイムクロック)21は、所定のクロックパルスを常時計数することにより、現在時刻の情報を把握している。また、RTC21はタイマ(計時手段)303を兼ねている。CPU11は、RTC21を制御することにより、現在時刻の情報を取得したり、タイマ(計時手段)303を利用することができる。
【0037】
出庫/入庫ボタンSW入力部22には、出庫/入庫ボタンのON/OFF信号が入力される。したがって、CPU11は、出庫/入庫ボタンSW入力部22を介して出庫/入庫ボタンのON/OFF状態を監視し、自車両が出庫/入庫の何れの状態であるかを把握でき、フォークリフト(作業車両)Fの作業時間を取得することができる。
【0038】
表示コントローラ23は、表示器405の表示内容を制御する。表示器405は、例えば、液晶表示装置や有機EL表示装置等で構成され、種々の情報をグラフィック表示を混じえて表示することができる。
【0039】
LED表示部403は、複数のLED(発光ダイオード)を内蔵し、CPU11の制御により各LEDを点灯、消灯、または点滅し、通信や動作の状態を表示することができる。
陸送ON/OFFボタンSW入力部31は、オペレータ等により操作され、手動操作による陸送モードのオンオフ切り替えに使用される。
【0040】
速度/エンジン回転I/F12には、車速センサやエンジン回転数センサからそれぞれ速度パルスや回転パルスが入力される。速度/エンジン回転数I/F12は、入力された信号をCPU11の処理に適した信号に変換する。
外部入力I/F13は、外部装置をCPU11に接続するためのインタフェースであり、車載カメラ(撮影手段)CAM等が接続される。
センサ入力I/F14は、様々なセンサをCPU11に接続するためのインタフェースである。
【0041】
センサ入力I/F14の入力には、エンジン温度を検知する温度センサ、燃料量を検知する燃料センサ、車両の加速度(G値)を感知するGセンサ等の信号が入力される。
【0042】
GPS受信部(GPSセンサ)202は、複数のGPS(Global Positioning System)衛星からの電波をGPSアンテナ202aで受信し、所定の計算処理を行って受信信号からフォークリフト(作業車両)Fの現在位置を表す緯度、経度の情報を取得する。これにより、フォークリフト(作業車両)Fの位置情報を取得することができる。
【0043】
CAN_I/F16は、CAN(Controller Area Network)規格の通信ネットワークと接続するためのインタフェースである。CPU11は、車両上の通信ネットワークに接続されている様々な機器との間でCAN_I/F16を介して通信できる。実際には、速度、エンジン回転数、燃料量等の各種データの通信が行われる。
通信部24は、所定の無線通信インタフェースを内蔵しており、車両の外部との間で無線通信回線を利用して稼働データ等のデータ通信を行うことができる。
【0044】
電源部25は、車両のバッテリなどから供給される電力に基づき、CPU11等が動作するために必要な安定した電圧(例えば+5[V])を生成し、イグニッションスイッチがオンの時にデジタルタコグラフDT1の各回路に電力を供給するようになっている。
【0045】
そして、CPU11等で構成される操作判定手段352は、挙動情報に基づいて、フォークリフトFの操作が所定の車両操作条件を満たしているか否かを判定することができる。
【0046】
また、操作判定手段352は、例えば、二度すくい操作が必要な箇所における二度すくい操作の実施率を算出し、その実施率に基づいてフォークリフトFの操作の評価を行うことができる。
さらに、判定結果や評価結果を表示器405に表示すると共に、スピーカ404から音声による報知を行うようにしてもよい。
これにより、荷物同士の衝突等の発生を抑制することができる。
【0047】
(二度すくい操作について)
ここで、図5図6A図6Bを参照して「二度すくい操作」について説明する。
まず、「二度すくい操作」とは、奥行き方向に複数の荷物C1、C2が密着状態で置かれている場合、或いは、トラックの荷台やプラットホーム等の段上への荷揚げや荷降ろしを行う場合において、荷物を一度途中まで持ち上げ、手前側に荷物をずらした後にフォーク部を奥まで刺して運搬する操作をいう。
ここで、二度すくい操作が必要な状況としては、例えば図5(a)、(b)に示す場合が挙げられる。
【0048】
図5(a)には、荷物C2とC1が至近距離で隣接して置かれている場合を示す。なお、荷物C2は、パレットP2上に荷物本体A2が載置されている。また、荷物C1は、パレットP1上に荷物本体A1が載置されている。
この場合において、フォークリフトFのフォーク部103を手前側の荷物C1の図5(a)深く刺し込むと、荷物C1と荷物C2が衝突する虞がある。
【0049】
そのため、フォーク部103をパレットP1に浅く刺し込んだ後に、一旦後退し、その後にフォーク部103をパレットP1に深く刺し込むという「二度すくい操作」が必要となる。
また、図5(b)には、荷物C1がトラックの荷台やプラットホーム600等の上に載置されている場合を示す。
この場合にも、一度の操作では、フォーク部103をパレットP1に深く刺し込むことが難しいため、「二度すくい操作」が必要となる。
次に、図6A図6Bを参照して「二度すくい操作」の工程(イ)~(ト)の例について説明する。
まず、工程(イ)では、フォークリフトFを前進させて、手前側の荷物C1のパレットP1にフォーク部103を浅めに刺して工程(ロ)に移行する。
工程(ロ)では、フォークリフトFを停止状態とし、フォーク部103により荷物C1のパレットP1を少し上昇させて工程(ハ)に移行する。
工程(ハ)では、フォークリフトFを後退させて、荷物C2から離間した状態として工程(ニ)に移行する。
工程(ニ)では、フォークリフトFを停止状態とし、フォーク部103により荷物C1のパレットP1を一旦床面まで降ろして工程(ホ)に移行する。
工程(ホ)では、フォークリフトFを前進させて、荷物C1のパレットP1にフォーク部103を深く刺して工程(ヘ)に移行する。
【0050】
工程(ヘ)では、フォークリフトFを停止状態とし、フォーク部103により荷物C1のパレットP1を少し上昇させると共に、フォーク部103の先端側を上げるチルトアップ状態として工程(ト)に移行する。
そして、工程(ト)では、フォークリフトFを後退させるなどして、荷物C1の運搬を行う。
このような工程(イ)~(ト)を有する「二度すくい操作」を行うことにより、荷物C2と荷物C1が隣接して置かれている場合であっても、荷物C2と荷物C1が衝突する事態を回避することができる。
【0051】
(二度すくい操作判定処理について)
次に、図7のフローチャートを参照して作業車両の操作評価システムS1で実行される二度すくい操作判定処理の処理手順について説明する。
【0052】
この処理が開始されると、まずステップS101で、画像取得手段(車載カメラ)101によって取得される荷物の画像に基づいて、積荷検知を開始してステップS102に移行する。
ステップS102では、フォークリフトFが前進走行状態で荷物が有るか否かが判定される。
判定結果が「Yes」の場合にはステップS103に移行する。
ステップS103では、フォークリフトFが停止状態で荷物が有るか否かが判定される。
判定結果が「No」の場合にはステップS102に戻り、「Yes」の場合にはステップS104に移行する。
ステップS104では、フォークリフトFが2秒(2sec)以内のバック走行(後退走行)であるか否かが判定される。
【0053】
なお、フォークリフトFが後退しているか否かは、画像取得手段(車載カメラ)101によって取得される画像に基づいて判定するようにできる。また、フォークリフトFから出力されるバック信号を取得して判定するようにしてもよい。
判定結果が「No」の場合にはステップS102に戻り、「Yes」の場合にはステップS105に移行する。
ステップS105では、フォークリフトFが停止状態で荷物が有るか否かが判定される。
判定結果が「No」の場合にはステップS102に戻り、「Yes」の場合にはステップS106に移行する。
ステップS106では、フォークリフトFが前進状態で荷物が有るか否かが判定される。
判定結果が「No」の場合にはステップS102に戻り、「Yes」の場合にはステップS107に移行する。
ステップS107では、フォークリフトFがバック走行(後退走行)で、荷物の離脱があったか否かが判定される。
【0054】
判定結果が「No」の場合にはステップS102に戻り、「Yes」の場合にはステップS108に移行して、二度すくい操作の一種である「二段置き」と判定して処理を終了する。
一方、ステップS102で「No」と判定された場合にはステップS109に移行する。
ステップS109では、荷物への接近が有るか否かが判定される。
判定結果が「No」の場合にはステップS102に戻り、「Yes」の場合にはステップS110に移行する。
ステップS110では、フォークリフトFが停止状態で荷物が有るか否かが判定される。
判定結果が「No」の場合にはステップS102に戻り、「Yes」の場合にはステップS111に移行する。
ステップS111では、フォークリフトFが2秒(2sec)以内のバック走行(後退走行)であるか否かが判定される。
判定結果が「No」の場合にはステップS102に戻り、「Yes」の場合にはステップS112に移行する。
ステップS112では、フォークリフトFが停止状態で荷物が有るか否かが判定される。
判定結果が「No」の場合にはステップS102に戻り、「Yes」の場合にはステップS113に移行する。
ステップS113では、フォークリフトFが2秒(2sec)以内の前進走行であるか否かが判定される。
判定結果が「No」の場合にはステップS102に戻り、「Yes」の場合にはステップS114に移行する。
ステップS114では、フォークリフトFがバック走行(後退走行)で荷物が有るか否かが判定される。
判定結果が「No」の場合にはステップS102に戻り、「Yes」の場合にはステップS115に移行する。
ステップS115では、二度すくい操作の一種である「二段取り」と判定して処理を終了する。
このようにして、フォークリフトFの挙動(操作)に基づいて、二度すくい操作を行ったか否かを判定することができる。
【0055】
また、二度すくい操作が必要な箇所(例えば、荷物の間隔が狭い場合や、荷物の高さが所定値以上の場合など)における二度すくい操作の実施率等を算出し、その実施率に基づいてフォークリフトFのオペレータの操作の評価を行うこともできる。
【0056】
なお、荷物の高さを画像取得手段(車載カメラ)101によって取得される画像に基づいて判定するようにできる。即ち、画像内のバックレストの横方向の長さから荷物の高さを算出することができる。
また、荷物の高さによって、トラックの荷台や、プラットホーム等への荷役であるかを判定するようにしてもよい。
また、フォークリフトFの稼働状況(操作状況)を、例えば図8のチャート図のように示すこともできる。
図8に示すチャート図では、(a)キーON状態、(b)走行状態、(c)積荷状態、(d)空荷状態、(e)荷役状態を時系列にプロットして示している。
これにより、フォークリフトFのオペレータの操作状況を把握することができる。
【0057】
(報知例)
図9に、二度すくい操作に関する報知例を示す。
図9に示すでは、二度すくい操作判定処理の判定結果等に基づいて、デジタルタコグラフ(車載器)DT1の報知手段である表示器405に、「荷物が、ぶつからないように、二度すくい操作を行って下さい。」とのメッセージ表示を行う。なお、報知手段としてのスピーカから同様のメッセージを音声出力するようにしてもよい。
また、状況に応じて、「奥側の荷物をフォーク部で傷つけないように、二度すくい操作を行って下さい。」と報知してもよい。
また、「プラットホームやトラック車両とフォークリフトの車体とが衝突しないように、二度すくい操作を行って下さい。」と報知するようにしてもよい。
これにより、フォークリフトFのオペレータに対して二度すくい操作が必要な場所や状況における「二度すくい操作」の励行を促すことができる。
【0058】
また、二度すくい操作判定処理の判定結果等に基づく評価結果が比較的好成績の場合には、例えば「二度すくい操作が正しく行われています。以降も安全な運搬を継続して下さい。」等のメッセージを報知することができる。これにより、フォークリフトFのオペレータの意欲を高めて、安全な運搬作業を促すことができる。
【0059】
また、二度すくい操作判定処理の判定結果等に基づく評価結果が比較的良くない場合には、例えば「二度すくい操作が正しく行われていません。荷物の状態に応じて、二度すくい操作を行うようにして下さい。」等のメッセージを報知することができる。これにより、フォークリフトFのオペレータに対する教育効果を高めて、安全な運搬作業に寄与することができる。
なお、作業車両の操作評価システムS1により、二度すくい操作以外の所定の車両操作条件を満たす操作が行われているかの評価を行うようにしてもよい。
【0060】
また、二度すくい操作等の所定の車両操作条件を満たす操作が行われているかに基づいて、荷役作業におけるフォークリフトFの適切な稼働台数等を割り出すようにしてもよい。
【0061】
以上、本発明の作業車両の操作評価システムを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【符号の説明】
【0062】
S1 作業車両の操作評価システム
F フォークリフト(作業車両)
DT1 デジタルタコグラフ(車載器)
A1、A2 荷物本体
C1、C2 荷物
P1、P2 パレット
101 画像取得手段(車載カメラ)
102 駆動手段
103 フォーク部(荷物積載部)
150 操作手段
301 情報格納手段
350 操作情報取得手段
351 挙動情報生成手段
352 操作判定手段
404 スピーカ(報知手段)
405 表示器(報知手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9