(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】固定バンドを有する咬合スプリント構成
(51)【国際特許分類】
A61F 5/56 20060101AFI20231212BHJP
A61C 7/08 20060101ALI20231212BHJP
A61C 7/36 20060101ALI20231212BHJP
A61C 19/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
A61F5/56
A61C7/08
A61C7/36
A61C19/00 M
(21)【出願番号】P 2019570111
(86)(22)【出願日】2018-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2018066653
(87)【国際公開番号】W WO2018234498
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】102017113833.1
(32)【優先日】2017-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514240806
【氏名又は名称】ホフマン, コンラッド
【氏名又は名称原語表記】HOFMANN, Konrad
【住所又は居所原語表記】Schillerstr.6, 97291 Thungersheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン, コンラッド
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0038259(US,A1)
【文献】特表2017-505179(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02143397(EP,A1)
【文献】特表2013-523221(JP,A)
【文献】特開2006-095245(JP,A)
【文献】特表2000-507114(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0308531(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0277774(US,A1)
【文献】特表2006-519656(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0202075(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0326253(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/56
A61C 7/08,7/36
A61C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
咬合スプリント構成(01, 33, 58)であって、
上顎の歯列上に配置可能な上顎スプリント(02, 24, 27, 34, 53, 59)及び下顎の歯列上に配置可能な下顎スプリント(03, 18, 35, 60)を有し、前記下顎スプリント(03, 18, 35, 60)は、横断面(04)内において、前記上顎スプリント(02, 24, 27, 34, 53, 59)に対して接触状態に置かれることができ、前記下顎スプリント(03, 18, 35, 60)は、前記横断面(04)内において、X方向において唇側に、Y方向において頬側に、前記上顎スプリント(02, 24, 27, 34, 53, 59)に対して移動可能であり、前記咬合スプリント構成(01, 33, 58)は、それによって前記上顎スプリント(02, 24, 27, 34, 53, 59)に対する前記下顎スプリント(03, 18, 35, 60)のX方向における位置を規定可能な位置決め手段を含み、
前記位置決め手段は、引張力を伝達する固定バンド(05, 26, 37, 40, 48, 52, 55, 61)の態様で形成されており、前記固定バンド(05, 26, 37, 40, 48, 52, 55, 61)の2つの端部(06, 43, 47, 49)は、2つの固定要素(08, 39, 45, 46, 63, 64)に固定可能であり、前記固定要素(08, 39, 45, 46, 63, 64)は、前記下顎スプリント(03, 18, 35, 60)の左側及び右側の臼歯領域(09)に配置されており、前記固定バンド(05, 26, 37, 40, 48, 52, 55, 61)の中央部分(12)は、溝(13, 25, 28, 38, 54, 62)の態様のガイド装置(11, 29)に接して案内されており、前記溝(13, 25, 28, 38, 54, 62)は、前記上顎スプリント(02, 24, 27, 34, 53, 59)の切歯領域(10)に配置されており、前記固定バンド(52)は、その長手軸の方向において形状が安定した、弾性的に変形可能なプラスチックから製造されており、前記固定バンド(52)は、前記スプリントに装着され、前記スプリントの円弧状の形状を収容するように構成されて
おり、
前記溝(54)の断面は、前記固定バンド(55)の断面より少なくとも僅かに小さく、前記固定バンド(55)は、それにより形成された圧力嵌めによって前記溝(54)内で固定される、ことを特徴とする咬合スプリント構成。
【請求項2】
2つの前記固定要素(08)は前記下顎スプリント(03)に又はその内部に一体に形成されており、及び/又は、前記ガイド装置(11, 29)は前記上顎スプリント(02, 24, 27)に又はその内部に一体に形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の咬合スプリント構成。
【請求項3】
2つの前記固定要素(08)は前記下顎スプリント(03)と同一のプラスチック材料から形成されており、及び/又は、前記ガイド装置(11, 29)は前記上顎スプリント(02, 24, 27)と同一のプラスチック材料から形成されている、ことを特徴とする請求項2に記載の咬合スプリント構成。
【請求項4】
前記下顎スプリント(03)は、それに又はその内部に一体に形成された2つの前記固定要素(08)と共に3Dプラスチック印刷プロセスで製造されており、及び/又は、前記上顎スプリント(02, 24, 27)は、それに又はその内部に一体に形成された前記ガイド装置(11, 29)と共に3Dプラスチック印刷プロセスで製造されている、ことを特徴とする請求項3に記載の咬合スプリント構成。
【請求項5】
前記下顎スプリント(03)は、それに又はその内部に一体に形成された2つの前記固定要素(08)と共に多軸フライス加工プロセスで製造されており、及び/又は、前記上顎スプリント(02, 24, 27)は、それに又はその内部に一体に形成された前記ガイド装置(11, 29)と共に多軸フライス加工プロセスで製造されている、ことを特徴とする請求項3に記載の咬合スプリント構成。
【請求項6】
前記固定バンド(05, 26, 37, 40, 48, 52, 55, 61)は、その長さが調整可能である、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の咬合スプリント構成。
【請求項7】
前記固定バンド(05, 26, 55)は、プラスチックから製造されている、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の咬合スプリント構成。
【請求項8】
前記固定バンド(05, 26)は、その長手軸の方向において高い剛性を有するように形成されている、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の咬合スプリント構成。
【請求項9】
前記固定バンド(55)は、その長手軸に対して横方向に弾性的に変形可能に形成されている、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の咬合スプリント構成。
【請求項10】
前記溝(13, 25, 28, 38, 54, 62)は、前記上顎スプリント(02, 24, 27, 34, 59)の前記切歯領域(10)において唇側に配置されていると共に歯弓に対して平行に延びており、前記溝(13, 25, 28, 38, 54, 62)は前記固定バンド(05, 26, 61)を少なくとも部分的に受容し、前記固定バンド(05, 26, 61)は押し付け力を前記溝の底に伝達することができる、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の咬合スプリント構成。
【請求項11】
前記上顎スプリント(02, 24, 27)の前記溝(13, 25, 28)の横方向の2つの端部(14)と、前記下顎スプリント(03)の2つの前記固定要素(08)との間には、それぞれ間隔が存在しており、前記間隔内で前記固定バンド(05, 26)は自由長さ部分(15)において案内されることなく延びており、前記固定バンドの2つの前記自由長さ部分(15)は、少なくともY方向における前記下顎スプリント(03)の前記上顎スプリント(02, 24, 27)に対する移動を可能とする、ことを特徴とする請求項10に記載の咬合スプリント構成。
【請求項12】
前記上顎スプリント(34)の前記溝(38)の横方向の2つの端部と、前記下顎スプリント(35)の2つの前記固定要素との間には、それぞれ間隔が存在しており、前記下顎スプリント(35)には右側及び左側の転向要素(36)が設けられており、前記転向要素において前記固定バンド(37)は転向され、それにより、前記上顎スプリント(34)と前記下顎スプリント(35)との間の鉛直方向の相対移動が制限される、ことを特徴とする請求項10に記載の咬合スプリント構成。
【請求項13】
前記溝(54)の開口(56)には、1つ又は複数の狭窄部が設けられており、前記狭窄部によって、前記固定バンド(55)は、前記溝(54)内で形状接続的に固定される、ことを特徴とする請求項10~12のいずれか1項に記載の咬合スプリント構成。
【請求項14】
前記固定バンド(55)は断面において円形状である、ことを特徴とする請求項13に記載の咬合スプリント構成。
【請求項15】
狭窄部を有する前記開口(56)の外側を向いた面には挿入斜面(57)が設けられており、前記挿入斜面によって前記固定バンド(55)は前記溝(54)内に導かれる、ことを特徴とする請求項13又は14に記載の咬合スプリント構成。
【請求項16】
前記溝(25, 28)の前記開口には、固定ピン(30)及び/又は固定ウェブ(22, 23)が設けられており、それらは前記溝(25, 28)の前記開口を狭めている、ことを特徴とする請求項13~15のいずれか1項に記載の咬合スプリント構成。
【請求項17】
前記溝(28)の前記開口には、少なくとも3つの固定ピン(30)が設けられており、隣接するそれぞれの固定ピン(30)は、前記溝(28)の2つの側縁部(31, 32)から交互に前記開口内へ突出している、ことを特徴とする請求項16に記載の咬合スプリント構成。
【請求項18】
前記溝(25)の前記開口には、少なくとも1つの固定ウェブ(22, 23)が設けられており、前記固定ウェブ(22, 23)は、前記溝(25)の横方向の2つの端部(14)の間で連続して延びている、ことを特徴とする請求項16に記載の咬合スプリント構成。
【請求項19】
前記固定バンド(55)は、円形状の断面を有する、ことを特徴とする請求項1~18のいずれか1項に記載の咬合スプリント構成。
【請求項20】
前記固定バンド(26)は、矩形状の断面を有する、ことを特徴とする請求項1~
19のいずれか1項に記載の咬合スプリント構成。
【請求項21】
前記固定バンド(26)は、前記切歯領域で、前記矩形状の断面のうち長い側において歯弓に対して平行に延びる、ことを特徴とする請求項
20に記載の咬合スプリント構成。
【請求項22】
前記固定バンド(26)の幅は前記溝(25)の開口断面よりも大きく、前記固定バンド(26)の高さは前記溝(25)の開口断面よりも小さい、ことを特徴とする請求項10~
21のいずれか1項に記載の咬合スプリント構成。
【請求項23】
前記下顎スプリント(03)の前記固定要素(08)は、固定ピン(16)の態様で形成されており、前記固定ピンは、前記下顎スプリント(03)の右側及び左側の臼歯領域(09)において横方向に突出しており、前記固定バンド(05)の前記端部(06)は、前記固定ピン(16)に固定的に掛けられ得る、ことを特徴とする請求項1~
22のいずれか1項に記載の咬合スプリント構成。
【請求項24】
前記固定ピン(16)の自由端には安全要素(17)が設けられており、前記安全要素(17)によって前記固定バンド(05, 26)の座は前記固定ピン(16)に固定される、ことを特徴とする請求項
23に記載の咬合スプリント構成。
【請求項25】
前記安全要素(17)は増厚部の態様で形成されている、ことを特徴とする請求項
24に記載の咬合スプリント構成。
【請求項26】
前記固定要素(39)の自由端には、それぞれ少なくとも1つの突出部(41, 42)が設けられており、前記固定バンド(40)の組み立て位置において前記突出部(41, 42)は、前記固定バンド(40)の端部(43)の開口(44)内に挿入されることができ、前記固定バンド(40)の固定位置において前記突出部(41, 42)は、前記固定バンド(40)の端部(43)の開口(44)の後方に固定的に係合する、ことを特徴とする請求項1~
25のいずれか1項に記載の咬合スプリント構成。
【請求項27】
右側の前記固定要素(46)の前記安全要素は、左側の前記固定要素(45)の前記安全要素とは異なる形状を有し、前記固定バンド(48)の左側の端部(47)の開口は、左側の前記固定要素(45)の前記安全要素の形状に適合されており、且つ、前記固定バンド(48)の右側の端部(49)の開口は、右側の前記固定要素(46)の前記安全要素の形状に適合されている、ことを特徴とする請求項
24又は
25に記載の咬合スプリント構成。
【請求項28】
右側の前記固定要素(46)の前記増厚部は左側の前記固定要素(45)の前記増厚部とは異なる直径を有する、ことを特徴とする請求項
25に記載の咬合スプリント構成。
【請求項29】
前記下顎スプリント(03)の前記固定要素(08)に隣接して、それぞれ滑らかなカバー要素(20)が設けられており、前記カバー要素は、前記下顎スプリント(03)の前記臼歯領域(09)において突出すると共に、前記固定要素(08)を横方向において少なくとも部分的に覆っている、ことを特徴とする請求項1~
28のいずれか1項に記載の咬合スプリント構成。
【請求項30】
2つの前記スプリント(34, 35)の上にはマーキングが施されており、前記マーキングは、2つの前記スプリント(34, 35)の互いに対する位置を明らかにする、ことを特徴とする請求項1~
29のいずれか1項に記載の咬合スプリント構成。
【請求項31】
睡眠時無呼吸の治療のために用いられる、ことを特徴とする請求項1~
30のいずれか1項に記載の咬合スプリント構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の上顎及び下顎のミニプラストスプリントを有する、特に睡眠時無呼吸の治療のための咬合スプリント構成に関する。
【背景技術】
【0002】
特に睡眠時無呼吸の治療のために、先行技術から、咬合スプリント構成の様々な実施形態が知られている。これらは、基本的に、気道が開いたままに保たれ、呼吸空気の供給不足による睡眠障害が軽減又は完全に排除される程度にまで軟口蓋を緊張させるために、深い睡眠中に、下顎並びに舌筋及び軟口蓋の後方への沈下が、下顎を前方に(X方向において)移動させることによって許容し得るレベルに制限されるよう、下顎に対する上顎の位置に影響を及ぼすことを目的としている。
【0003】
一般的な咬合スプリント構成が、特許文献1から知られている。この咬合スプリント構成は、それぞれ上顎又は下顎の対応する歯列の上に載せることができる、上顎ミニプラストスプリント及び下顎ミニプラストスプリントを備えている。更に、これらのミニプラストスプリントは、互いに対向する接触面を備え、これらの接触面は、横断面内で、X方向において唇側に、Y方向において頬側に、互いに相対的に移動することができる。上顎ミニプラストスプリントに対する下顎ミニプラストスプリントの特定の位置の定義を実現するために、咬合スプリント装置は、係合ピン及び係合ガイドを有する調整装置を備える。係合ピンを係合ガイド内に係合させることにより、上顎ミニプラストスプリントに対する下顎ミニプラストスプリントの位置が固定される。しかしながら、この咬合スプリント構成は、係合ピンを係合させた後は、2つのミニプラストスプリントの間の如何なる相対移動ももはや可能ではなく、これにより装着時快適性が著しく低下するという欠点を有している。更に、この公知の咬合スプリント構成において不都合なのは、その複雑な構造と、それと結びついた高い製造コストである。加えて、咬合スプリント構成は、洗浄が困難な部位に汚れが付着しやすく、その結果、必要な衛生状態を保証することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】独国特許出願公開第10341260号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、下顎及び上顎ミニプラストスプリントの間の割り当てを可能とし、先行技術から知られた咬合スプリント構成の欠点を回避する、新しい咬合スプリント構成を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1の教示による咬合スプリント構成によって解決される。
【0007】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0008】
咬合スプリント構成は、好ましくは睡眠時無呼吸の治療のために用いられる。したがって、咬合スプリント構成の本実施形態は、第一には睡眠時無呼吸症候群の治療を目的としてはいるが、本発明による咬合スプリント構成を他の方法でも使用することは、原則的に自由裁量に委ねられている。その際、咬合スプリント構成は、例えば不正咬合の治療のためにも、あるいは、夜間の歯軋り防止用のマウスピースとしても、企図され得る。本発明による咬合スプリント構成は、X方向における上顎ミニプラストスプリントに対する下顎ミニプラストスプリントの位置を規定するための位置決め手段によって特徴付けられる。その際、位置の規定という概念は、例えば特定の位置が規定されるのではなく、それによって所望の効果が達成され得る2つのミニプラストスプリントの互いに対する位置が規定されるという、広い範囲の概念として理解されるべきである。上顎及び下顎の2つの歯列の互いに対する特定の残余可動性は、主観的な装着時快適性の感覚を著しく高める。本発明による咬合スプリント構成においては、引張力を伝達することができる固定バンドが位置決め手段として機能する。その際、固定バンドの2つの端部は、下顎ミニプラストスプリントの臼歯領域に配置された2つの固定要素に固定される。同時に、通常は固定バンドの中央部の上を端部まで延びる固定バンドの中央部分は、上顎ミニプラストスプリントの切歯領域に配置されたガイド装置に接して案内され得る。固定バンドの中央部分が上顎ミニプラストスプリントの切歯領域において案内されることにより、押し付け力が、中央部分から上顎ミニプラストスプリントの唇側を向いた外面に伝達され得る。同時に、固定バンドの2つの端部は、下顎ミニプラストスプリントの臼歯領域において固定され、その結果、固定バンドの端部も、引張力を、下顎ミニプラストスプリントの2つの固定要素に伝達することができる。その結果、固定バンドの長さに応じて、下顎ミニプラストスプリントを上顎ミニプラストスプリントに対して前方に引っ張ることが可能である。固定バンドが短く選択されるほど、下顎ミニプラストスプリントは下顎と共に、上顎ミニプラストスプリント及び上顎に対して、大きく前方に引っ張られる。
【0009】
本発明による咬合スプリント構成の利点は、一方では、安価に製造され得る非常に単純な構造をもたらすことである。加えて、咬合スプリント構成の装着者には、ミニプラストスプリントの装着後、両方の顎半部の間に広範囲の残余可動性が残される。なぜなら、下顎の軟口蓋の方向への沈下のみが、固定バンドの長さによって制限されるからである。対照的に、横方向(Y方向)における2つのミニプラストスプリントの互いに対する移動は、固定バンドによって強固には制限されず、その結果、咬合スプリント構成の装着者は、高い装着時快適性を知覚する。
【0010】
固定要素又はガイド装置が、下顎ミニプラストスプリント又は上顎ミニプラストスプリントにどのような方法で固定されるかは、基本的に任意である。咬合スプリント構成を製造するために用いられる様々な材料の適合性に関しては非常に高い要求が設定されるので、2つの固定要素が下顎ミニプラストスプリントに又はその内部に一体に形成されている、及び/又は、ガイド装置が上顎ミニプラストスプリントに又はその内部に一体に形成されていると、特に有利である。固定要素又はガイド装置を、それぞれが属するミニプラストスプリントに又はその内部に一体に形成することにより、2つのミニプラストスプリント自体の製造と同一の材料を、固定要素又はガイド装置の製造に使用することができる。一体的な形成は、更に、固定要素又はガイド装置の高い機械的な安定性を可能とし、このことは、固定要素又はガイド装置の望ましくない緩みを考慮すると、大きな意義を有する。
【0011】
どのような材料から2つの固定要素又はガイド装置が製造されるかは、基本的に任意である。固定要素が、下顎ミニプラストスプリントと同一のプラスチック材料から形成されているか、あるいは、ガイド装置が上顎ミニプラストスプリントと同一のプラスチック材料から形成されていると、特に有利である。2つのミニプラストスプリント自体と固定要素及び/又はガイド装置の両方に同一のプラスチックを用いることにより、適合性の問題は、ミニプラストスプリントに固定要素及び/ガイド装置を付加的に配置することを通じて、問題なく排除することができる。
【0012】
どのような製造方法によって本発明による咬合スプリント構成が製造されるかは、基本的に任意である。したがって、咬合スプリント構成の製造のために、歯列の複製を調製することができ、それに由来する型の上で、2つのミニプラストスプリントの原形を形成することができる。下顎ミニプラストスプリントに2つの固定要素を、上顎ミニプラストスプリントにガイド装置を、それぞれ有する本発明の咬合スプリント構成は、非常に単純な構造を有するので、下顎ミニプラストスプリントが、それに又はその内部に一体に形成された2つの固定要素と共に3Dプラスチック印刷プロセスで製造されており、及び/又は、上顎ミニプラストスプリントが、それに又はその内部に一体に形成されたガイド装置と共に3Dプラスチック印刷プロセスで製造されていることも可能であり、且つ、それは基本的に非常に有利である。2つのミニプラストスプリントを3Dプラスチック印刷プロセスで製造することにより、複製の製造、及びそれに続く型の製造、及びそれに続く型の上でのミニプラストスプリントの原形の形成において殆ど不可避である型取り誤差は、基本的に排除され得る。その代わりに、2つの歯列は適当なスキャナでスキャンされ、このようにして収集された幾何学的データは、公知のCAD/CAM手法を用いて3Dプラスチック印刷プロセスを制御するために使用される。更に、咬合スプリント構成の製造は、3Dプラスチックプリンタを使用することにより、大幅に合理化され得る。
【0013】
3Dプラスチック印刷での製造の代替として、咬合スプリント構成の製造は、CAD制御された多軸フライスプロセスを使用することによっても可能である。
【0014】
固定バンドによる上顎ミニプラストスプリントに対する下顎ミニプラストスプリントのX方向における位置の規定は、主として固定バンドの長さによって設定される。固定バンドが短ければ短いほど、下顎ミニプラストスプリントは、そこに保持された下顎と共により大きく前方へ引っ張られ、それにより、軟口蓋が緊張する。2つのミニプラストスプリントの互いに対する位置を簡単な方法で適合させることを可能とするために、固定バンドの長さが調整可能であると特に有利である。固定バンドを伸長又は短縮することによって、2つのミニプラストスプリントの互いに対する位置は、それぞれの装着者の要求に個別に適合され得る。それに代えて、咬合スプリント構成は、使用者が、特定の固定バンドを選択することを通じて、それにより達成可能な2つのミニプラストスプリントの相対位置を互いに適合させることができるようにするため、異なる長さを有する複数の固定バンドを備えることもできる。
【0015】
どのような材料から固定バンドが製造されるかは、基本的に任意である。咬合スプリント構成を装着する際の適合性の問題を、固定バンドの材料によって可能な限り容易に排除するために、固定バンドがプラスチックから製造されると特に有利である。なぜなら、口腔適合性プラスチックは、容易に入手できるからである。
【0016】
睡眠時無呼吸の治療における咬合スプリント構成の再現性のある決定的な効果に関して、軟口蓋が一貫して特定の最小張力を有することが、大きな意義を有する。これを常に保証するために、固定バンドが、その長手軸の方向において高い剛性を有するように形成されており、規定どおりの使用中に生じる負荷の下で、弾性変形を実質的に許容しないことが特に有利である。それにより、2つの歯列が互いに対して不随意に移動する場合であっても、下顎が、固定バンドの望ましくない弾性に起因して、軟口蓋が所望の張力を下回るほど大きく上顎に対して引っ張られることが不可能とされる。
【0017】
有利な実施形態によれば、固定バンドは、形状が安定した弾性的に変形可能なプラスチックから製造されていることが企図される。その際、固定バンドは、負荷のない状態において円弧状の形状を有する。その結果、予備成形された固定バンドは、ミニプラストスプリントに固定された後に固定バンドが取る形状にほぼ対応する形状を有する。取り付け形態に対応するこの予備成形によって、固定バンドの材料の内部応力は著しく低減され、その結果、固定バンドは、使用者によってミニプラストスプリントに固定されるために、全く変形される必要がなく又は最小限にしか変形される必要がない。
【0018】
上顎ミニプラストスプリント又は下顎ミニプラストスプリントのガイド装置又は固定要素の構造的な形成には、多数の可能性がある。有利な実施形態によれば、下顎ミニプラストスプリントのガイド装置は、溝の態様で形成されていることが企図される。その際、この溝は、上顎ミニプラストスプリントの切歯領域において唇側に、即ちミニプラストスプリントの外側において歯弓に対して平行に延びる。上顎ミニプラストスプリントのこの溝には、固定バンドを外側から挿入することができ、その結果、固定バンドは、溝底部に押し付け力を伝達することができる。固定バンドの中央部分から溝の溝底部に伝達されるこの押し付け力によって、必要な張力が固定バンドに構築されることができ、当該張力によって、下顎ミニプラストスプリントは、上顎ミニプラストスプリントに対して前方に引っ張られ、その位置に規定される。
【0019】
固定バンドが、例えば圧力嵌めによって、ミニプラストスプリントの溝内に形状接続的に固定される場合、固定バンドが、その長手軸に対して横方向に弾性的に変形可能に形成されていると有利である。固定バンドのこの弾性的な変形可能性によって、固定バンドは、その長手軸に対して横方向に少なくとも僅かに圧縮され、狭くされた溝開口を通じて溝内に押し込まれることができる。
【0020】
上顎ミニプラストスプリントの溝の長さは、上顎ミニプラストスプリントにおける固定バンドの十分な案内が常に保証される程度に長くなければならない。同時に、有利な実施形態によれば、上顎ミニプラストスプリントの溝の2つの端部と下顎ミニプラストスプリントの2つの固定要素との間には、それぞれ間隔が存在しており、当該間隔内において、固定バンドは、自由長さ部分において案内されることなく延びている。固定バンドのこの自由長さ部分によって、少なくともY方向、即ち引張方向に対して横方向における上顎ニプラストスプリントに対する下顎ニプラストスプリントの変位が、可能となることが保証される。
【0021】
上顎に対する下顎の開角を咬合スプリント構成によって制御できるようにするために、上顎ミニプラストスプリントの溝の横方向の2つの端部と、下顎ミニプラストスプリントの2つの固定要素との間に、それぞれ間隔が存在しており、下顎ミニプラストスプリントには右側及び左側の転向要素が設けられており、転向要素において固定バンドが転向され、それにより、上顎ミニプラストスプリントと下顎ミニプラストスプリントとの間の鉛直方向の相対移動が制限されると、有利である。その結果、転向要素によって、下顎が上顎に対してどの程度強く引っ張られるかが決定され得る。
【0022】
有利な実施形態によれば、溝の開口には、1つ又は複数の狭窄部が設けられており、当該狭窄部によって、特に断面において円形の固定バンドは、溝内で形状接続的に固定されることが企図される。その結果、溝内での固定バンドの座が固定され得る。これは、使用者が、先ず2つの互いに接続されていないミニプラストスプリントを上顎及び下顎に接触させ、その後に初めて、固定バンドを溝内に固定することによって2つのミニプラストスプリントを互いに接続する場合に、特に有利である。
【0023】
更に、狭窄部の外を向いた面に挿入斜面が設けられており、当該挿入斜面によって固定バンドが溝内に導かれると、特に有利である。これは、使用者が、先ず2つの互いに接続されていないミニプラストスプリントを上顎及び下顎に接触させ、その後に初めて、固定バンドを溝内に固定することによって2つのミニプラストスプリントを互いに接続する場合に、特に有利である。
【0024】
特に睡眠時無呼吸の治療における、本発明による咬合スプリント構成の機能にとって、例えば睡眠中に、上顎ミニプラストスプリントの溝からの固定バンドの意図せざる解放が生じないことは、大きな意義を有する。なぜなら、そうでなければ、上顎ミニプラストスプリントに対する下顎ミニプラストスプリントの規定どおりの固定がもはや保証されないからである。溝内での固定バンドのこの固定を保証するために、溝の開口部に固定ピン及び/又は固定ウェブが設けられることができ、それらは、溝の開口部を部分的に又は溝の全長に沿って狭くする。溝内に固定バンドを挿入する際、使用者は、固定バンドを例えば僅かに弾性的に変形させ、それにより、固定バンドを溝の狭くなった開口部を通じて押し込むことが可能である。固定ピン又は固定ウェブによって狭くされた溝の開口部からの、固定バンドの意図せざる解放が、排除される。固定バンドと溝を固定するために固定ピンが使用される限り、少なくとも3つの固定ピンが設けられていると、特に有利である。それぞれ隣接する固定ピンは、溝の互いに対向する側縁部に交互に配置され、それにより、その自由端はそれぞれ開口内に逆方向に突出している。複数の固定ピンを用いてそのように構成された溝内に固定バンドを挿入するために、先ずまだ張力がかかっていない固定バンドを溝内に導入することができ、固定バンドは、それぞれ隣接する固定ピンを通過する際、上向き又は下向きに交互に曲げられる。
【0025】
固定ピンを使用する代わりに、溝の開口部には、固定バンドを固定するために、固定ウェブも設けられ得る。これらの固定ウェブは、有利な実施形態によれば、溝の横方向の2つの端部の間で連続的に延びることができる。2つの固定ウェブの間の開口断面は、少なくとも、固定バンドの断面の許容される変形の下で、固定バンドの溝内への挿入を可能とする程度に大きくなければならない。
【0026】
有利な実施形態によれば、溝の断面は、固定バンドの断面より少なくとも僅かに小さく、固定バンドは、それにより形成された圧力嵌めによって溝内で固定されることが企図される。圧力嵌めは、溝の表面と固定バンドとの間の摩擦に起因して、溝の底部に押し付けられた後には固定バンドがもはや移動できないという結果をもたらす。
【0027】
固定バンドが円形の断面を有する場合、圧力嵌めは特に効率的に実現され得る。
【0028】
上顎ミニプラストスプリントに対する下顎ミニプラストスプリントのY方向、即ち引張方向に対して横方向の移動の際、下顎ミニプラストスプリントの2つの固定要素は、Y方向に、上顎ミニプラストスプリントに対して移動される。この移動の望まざる制限が生じないよう、溝の断面が固定バンドの断面よりも大きく、その結果、固定バンドと溝の表面との間に実質的に摩擦係合が生じないと、特に有利である。このようにして、固定バンドは、その長手軸に沿って溝内で実質的に抵抗なしに変位することができ、その結果、下顎ミニプラストスプリントのY方向における移動は、溝内での固定バンドの摩擦による固定によって妨げられない。固定バンドの下顎ミニプラストスプリントへの本発明による張力の作用は、それにより悪影響を受けない。なぜなら、この張力の作用のためには、固定バンドから溝の溝底部への押し付け力の伝達のみが必要とされるからである。溝内で固定バンドを固定するために、別の変形例によれば、固定バンドが矩形の断面を有し、その際、固定バンドの幅が溝の開口断面よりも大きく、固定バンドの高さが溝の開口断面よりも小さいことも可能である。溝内に固定バンドを挿入する際、固定バンドは、そのより狭い幅の側部が溝の開口断面に挿入されるように保持される。固定バンドが溝の全長に亘って延びるとすぐに、固定バンドは90°回転されることができ、その結果、開口断面を通じて固定バンドが引き戻されることは、固定バンドのより大きな幅に起因して、排除される。次いで、この位置における固定バンドの位置は、固定バンドの端部を下顎ミニプラストスプリントの固定要素に掛けることによって固定され得る。
【0029】
有利には、固定バンドは、切歯領域において、矩形の断面のうち長い側において切歯の外面に対して平行に、即ち歯弓に対して平行に延びる。これにより、固定バンドが、最大の横荷重方向において最大の剛性を有することが保証される。
【0030】
2つの固定要素が、下顎ミニプラストスプリントに、どのような方法で形成されるかは、基本的に任意である。固定要素が、下顎ミニプラストスプリントの臼歯領域において横方向に突出する固定ピンの態様で形成されていると、当該固定要素は、特に容易に且つ安価に実現可能である。これらの固定ピンの自由長さは、非常に短くてよい。なぜなら、固定バンドの端部を固定するためには、固定ピンの比較的小さな突出のみが必要とされるからである。更に、そのような固定ピンは、下顎ミニプラストスプリントのプラスチックと非常に良好に一体に形成され(特に、3Dプラスチック印刷で印刷され)得る。その際、固定ピンの幾何学的形状は、固定バンドの端部が、凹部又はフック要素によって固定ピンに固定的に掛けられ得るように選択されるべきである。
【0031】
固定バンドの端部の固定ピンからの望ましくない解放を排除するために、有利な実施形態によれば、固定ピンの自由端に安全要素が設けられることが企図される。この安全要素は、例えば、その断面が、それによって固定バンドが固定ピンに掛けられる固定バンドの端部の凹部の断面よりも大きい、増厚部の態様で形成され得る。その場合、固定バンドの材料は、その中に凹部が設けられた固定バンドの端部が、増厚部を乗り越えて固定ピンに押し付けられ得るような、大きな変形性を有していなければならない。
【0032】
固定ピンの自由端に、それぞれ少なくとも1つの突出部が設けられており、固定バンドの組み立て位置において、突出部が固定バンドの端部の開口内に挿入されることができ、固定バンドの固定位置において、突出部が固定バンドの端部の開口の後方に固定的に係合すると、有利である。その結果、使用者は、固定バンドの端部を適切に回転させることにより、固定バンドを、まだ接続されていない状態で、問題なく固定ピンに掛けることができる。固定バンドの使用位置において、固定バンドの端部は固定位置にあり、その結果、固定バンドの端部の固定ピンからの意図せざる解放は、突出部の後方への係合によって確実に排除される。
【0033】
特に、予備成形された固定バンドの場合、固定バンドがその予備成形に対応して固定ピンの正しい位置に掛けられることが保証されなければならない。これを保証するために、右側の固定ピンの安全要素は、左側の固定ピンの安全要素とは異なる形状を有してもよい。特に、右側の固定ピンの増厚部は、左側の固定ピンの増厚部とは異なる直径を有することができる。その際、固定バンドの左端の開口は、左側の固定ピンの安全要素の形状と適合し、固定バンドの右端の開口は、右側の固定ピンの安全要素の形状と適合し、その結果、使用者は、固定バンドの端部を、固定ピンの正しい位置にのみ掛けることができる。
【0034】
下顎ミニプラストスプリントの横方向に突出する固定要素は、敏感な使用者においては、頬領域の口腔粘膜の刺激を引き起こし得る。口腔粘膜のこれらの刺激を打ち消すために、有利な変形例によれば、下顎ミニプラストスプリントの固定要素に隣接して滑らかなカバー要素が設けられることが企図され、当該カバー要素は、固定要素に対応してミニプラストスプリントを越えて突出すると共に、このようにして固定要素を横方向において少なくとも部分的に覆う。その滑らかな表面に起因して、カバー要素は、口腔粘膜の刺激を実質的に減少させるか又は完全に排除することができる。
【0035】
患者の個々のニーズに咬合スプリント構成を適合させることを可能とするために、2つのミニプラストスプリント上に、2つのミニプラストスプリントの互いに対する位置をマークするマーキングが設けられていると有利である。それにより、特に、適切な長さを有する固定バンドの選択が容易になる。
【0036】
本発明の様々な実施形態が、図面に概略的に示され、以下で例示的に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】下顎ミニプラストスプリントと上顎ミニプラストスプリントとの間の位置を規定するための固定バンドを有する咬合スプリント構成を、上方からの斜視図で示している。
【
図2】
図1の咬合スプリント構成を側面図で示している。
【
図3】
図1の咬合スプリント構成の下顎ミニプラストスプリントを、上方からの斜視図で示している。
【
図4】
図3の下顎ミニプラストスプリントの固定要素を、切断線I-Iに沿った部分断面図で示している。
【
図5】固定バンドの端部を装着した後の
図4の固定要素を示している。
【
図6】ミニプラストスプリントに配置するための固定要素の第2の実施形態を、部分断面図で示している。
【
図7】固定バンドの端部を装着した後の
図6の固定要素を示している。
【
図8】
図2の咬合スプリント構成の上顎ミニプラストスプリントを、切断線II-IIに沿った部分断面図で示している。
【
図9】ミニプラストスプリントの第2の実施形態を、部分断面図で示している。
【
図10】ミニプラストスプリントの第3の実施形態を、部分断面図で示している。
【
図11】
図10のミニプラストスプリントを正面図で示している。
【
図12】咬合スプリント構成の第2の実施形態を、側面図で示している。
【
図13】下顎ミニプラストスプリントの固定要素の第2の実施形態を、それが属する固定バンドの端部と共に、平面図で示している。
【
図14】下顎ミニプラストスプリントの右側及び左側の固定要素の第3の実施形態を、それが属する固定バンドの右側及び左側の端部と共に、平面図で示している。
【
図15】予備成形された固定バンドを、平面図で示している。
【
図16】
図15の予備成形された固定バンドを、側面図で示している。
【
図17】圧力嵌めにより溝内で固定された固定バンドを、断面図で示している。
【
図19】咬合スプリント構成の第3の実施形態を、側面図で示している。
【
図20】
図19の咬合スプリント構成の上顎ミニプラストスプリントを、側面図で示している。
【
図21】
図19の咬合スプリント構成の下顎ミニプラストスプリントを、平面図で示している。
【
図22】
図21の下顎ミニプラストスプリントの固定要素を、それに固定された固定バンドと共に、部分断面図で示している。
【
図23】
図19の咬合スプリント構成の予備成形された固定バンドを、側面斜視図で示している。
【
図24】
図23の予備成形された固定バンドを、平面図で示している。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、例えば睡眠時無呼吸の治療のために使用することができる咬合スプリント構成01を示す。咬合スプリント構成01は、上顎の歯列に配置するための上顎ミニプラストスプリント02と、下顎の歯列に配置するための下顎ミニプラストスプリント03とを含む。2つのミニプラストスプリント02及び03は、横断面04(
図2参照)内で、X方向において唇側に、Y方向において頬側に、互いに相対的に移動可能である。
【0039】
睡眠時無呼吸の治療の枠内で、軟口蓋の張力の増大を達成可能とするために、下顎ミニプラストスプリント03は、上顎ミニプラストスプリント02に対して、X方向において前方へ引っ張られ、そこで保持されることが必要である。下顎ミニプラストスプリント03と上顎ミニプラストスプリント02との間でその際に遵守されるべき位置を規定するために、固定バンド05が利用される。固定バンド05の2つの端部06は、それぞれ環状の凹部07を備え、下顎ミニプラストスプリント03に一体に形成された固定要素08に掛けることができる。
図1では、固定バンド05の一方の端部06のみが示されている。固定バンド05の第2の端部06は、同様に、下顎ミニプラストスプリント03の右側において、凹部07を有する第2の固定要素08に掛けられる。2つの固定要素08は、ミニプラストスプリント03の臼歯領域に配置されており、ミニプラストスプリント03の側面から頬側に突出している。
【0040】
上顎ミニプラストスプリント02は、切歯領域10にガイド装置11を備え、当該ガイド装置の内部を、固定バンド05の中央部分05が案内されている。ガイド装置11は溝13の態様で形成されており(
図8参照)、
図1ではそのうち左側の端部14のみが示されている端部14の間で、上顎ミニプラストスプリント02のプラスチック材料を貫いて延びている。
【0041】
固定バンド05の2つの端部06が下顎ミニプラストスプリント03の固定要素08に掛けられており、固定バンド05の中央部分12が溝13を貫いて延びている場合、固定バンド05の長さに応じて、下顎ミニプラストスプリント03は上顎ミニプラストスプリント02に対してX方向において前方へ引っ張られ、それにより、軟口蓋の所望の張力に影響を及ぼすことができる。
【0042】
図2は、2つのミニプラストスプリント02及び03を有する咬合スプリント構成01を、側面図で示している。固定バンド05は、その長手軸に対して横方向には変形可能であるが、長手方向には剛性の高いプラスチックから製造されており、その結果、固定バンド05は、引張方向には実質的に弾性的に引き伸ばされ得ない。このようにして、使用者が対応する筋力を加えることにより、固定バンド05の弾性的な変形の下でミニプラストスプリント03を引張方向とは逆に後方へ引くことが排除される。同時に、溝13の端部14と固定要素との間には、自由長さ部分15が存在し、当該部分では、固定バンドが、咬合スプリント構成01の左右の側面上を、案内されることなく2つのミニプラストスプリント02及び03の間で延びている。固定バンド05のこの自由長さ部分15は、横断面内でのX方向に対して横方向、即ちY方向における、2つのミニプラストスプリント02及び03の移動を可能とする。
【0043】
図3は、固定要素08が臼歯領域09に取り付けられた状態の下顎ミニプラストスプリント03を、斜視図で示す。固定要素08は、下顎ミニプラストスプリント03自体と同一のプラスチックから成る。固定要素08の構造が、以下において、
図4及び
図5を参照して詳細に説明される。
【0044】
図4は、下顎ミニプラストスプリント03の固定要素08を、切断線I-Iに沿った部分断面図で示す。固定要素08は、ミニプラストスプリント03から横方向に突出する固定ピン16の態様で形成されている。その際、固定ピン16及びしたがって固定要素08は、ミニプラストスプリント03に一体に形成されており、ミニプラストスプリント03と同一のプラスチックから成る。固定要素08即ち固定ピン16を有するミニプラストスプリント03は、3Dプラスチック印刷によって、特に容易に且つ安価に製造することができる。固定ピン16の自由端には、固定ピン16の増厚部の態様で形成された
安全要素17が位置している。
【0045】
図5は、固定ピン16上に凹部07を押し付けることにより固定バンド05を固定した後の固定ピン16を示す。固定ピン16からの固定バンド05の意図せざる解放は、凹部07よりも大きな断面を有する
安全要素17によって阻止される。
【0046】
図6は、同様に固定ピン16が一体的に形成された、ミニプラストスプリントの代替的な実施形態18を示す。ミニプラストスプリント03とは異なり、ミニプラストスプリント18には、固定ピン16に隣接して配置されたカバー要素19が、一体に形成されている。その際、カバー要素19は、ミニプラストスプリント18の上方に固定ピン16と同一の自由長さだけ突出すると共に、滑らかな側面20で固定ピン16を覆っている。カバー要素19による被覆を通じて、下顎ミニプラストスプリント18を装着する際の頬の領域における粘膜の刺激が回避され得る。
【0047】
図7は、固定バンド05を固定ピン16に装着した後の、固定ピン16及びカバー要素19を有する下顎ミニプラストスプリント18を示す。
【0048】
図8は、上顎ミニプラストスプリント02を、切断線II-II(
図2参照)に沿った部分断面図で示す。ミニプラストスプリント02のガイド装置11は、上顎ミニプラストスプリント02のプラスチック内に一体に形成された溝13によって形成されている。これは、3Dプラスチック印刷によって、非常に容易に且つ安価に製造することができる。溝13の断面は、固定バンド05の断面よりも幾らか大きく、その結果、固定バンドは、その長手軸に沿って実質的に抵抗なく溝13内で移動することができる。なぜなら、固定バンド05と溝13の内面との間には、実質的に摩擦係合が存在しないからである。溝13の開口21には、溝13の開口21を狭くする2つの固定ウェブ22及び23が設けられている。開口21の残りの開口断面は、固定バンド05の断面より僅かに小さく、その結果、咬合スプリント構成01を装着する間に固定バンド05が溝13から滑り出ることが排除される。
【0049】
図9は、そのガイド装置が再び溝25の態様で形成された、上顎ミニプラストスプリントの代替的な実施形態24を示す。溝25内には矩形の固定バンド26が案内されており、固定バンド26の幅は溝25の開口断面よりも大きく、固定バンド26の高さは溝25の開口断面よりも小さい。固定バンド26を挿入するために、当該固定バンド26は、
図8での図示に対して90°回転され、側縁部において溝25内にねじ込まれる。固定バンド26は、次に溝25内で再び90°逆回転され、溝25の開口断面に対してより大きな幅に起因して、上顎ミニプラストスプリント24を装着する間に溝25から滑り出ることは、もはやあり得ない。固定バンドが、切歯領域で、その矩形の断面のうち長い側において切歯の外面に対して平行に、即ち歯弓に対して平行に延びることにより、当該固定バンドは、主荷重方向において高い剛性を有する。
【0050】
図10及び
図11は、ガイド装置29として再び溝28を含む、上顎ミニプラストスプリントの別の実施形態27を示す。固定バンド26を溝28内で固定するために、ミニプラストスプリント27は、それぞれ一方の側から溝28の開口内に突出すると共に開口断面を変化させる、一体に形成された固定ピン30を含む。
【0051】
図11から分かるように、様々な固定ピン30が、溝28の上側の側縁部31又は下側の側縁部32にそれぞれ交互に配置されており、その結果、固定バンド26は、それに応じてより容易に、溝28内に挿入することができる。
【0052】
図12は、咬合スプリント構成の第2の実施形態33を側面図で示す。2つのミニプラストスプリント34及び35を有する咬合スプリント構成33の基本的な構造は、
図2に示されている咬合スプリント構成01の構造に対応する。しかしながら、咬合スプリント構成01の場合とは異なり、咬合スプリント構成33では、下顎ミニプラストスプリント35に転向要素36が設けられており、当該転向要素において、固定バンド37は、上顎ミニプラストスプリント34の溝38内に掛けられた後に、転向することができる。この場合、
図12には、左側の転向要素36のみが示されている。下顎ミニプラストスプリント35の対向する側には、対応する右側の転向要素が位置している。下顎ミニプラストスプリント35に設けられた2つの転向要素36によって、下顎ミニプラストスプリント35及びしたがって下顎は、上顎ミニプラストスプリント34及びしたがって上顎に対して引っ張られ、その限りにおいて、上顎に対する下顎の開角は制限され得る。
【0053】
図13は、下顎ミニプラストスプリントの固定要素の第2の実施形態39を示す。固定要素39に加えて、それが属する固定バンド40の端部が示されている。固定要素39は固定ピンの態様で形成されており、
図13では平面図で示されている。固定要素39には、固定ピンの本体を越えて横方向に突出する2つの突出部41及び42が形成されている。固定バンド40の端部43には、開口44が設けられており、その輪郭は、突出部41及び42の領域における固定要素39の輪郭に対応している。端部43を90°回転させることにより、固定要素39の固定ピンは開口44内に挿入され、次いで端部43を90°逆回転させることにより、固定され得る。突出部41及び42は、それらの固定位置において、開口44の後方に係合し、それにより、固定要素39からの固定バンド40の意図せざる解放を阻止する。
【0054】
図14は、それぞれ固定ピンの態様で形成されている固定要素45又は46の第3の実施形態を示す。その際、左側の固定要素45には、固定バンド48の左側の端部47が属している。右側の固定要素46には、固定バンド48の右側の端部49が属している。固定バンド48の左側の端部47の開口50は、断面において、固定バンド48の右側の端部49の開口50より小さい。それに応じて、左側の固定要素45及び右側の固定要素46の固定ピンも、それぞれ異なる直径を有し、その結果、開口50は固定要素45の上に、開口51は固定要素46の上に、それぞれ押し付けられ、それにより、固定バンド48は左右で掛けられ得る。しかしながら、開口50及び51の異なる直径に起因して、右側の固定要素46に左側の端部47を誤って掛けることが排除される。なぜなら、直径の差は、左側の端部47がその開口50によって右側の固定要素46に掛けられ得る程度よりも大きすぎるからである。この点で、2つの固定要素45及び46に固定バンド48を誤った位置で掛けることが排除される。
【0055】
図15及び
図16は、予備成形された固定バンドの実施形態52を、それぞれ平面図及び正面図で示す。固定バンド52が円弧状に予備成形されることにより、負荷の無い状態におけるその形状は、まさに、咬合スプリント構成01への装着の際に固定バンド52が取る円弧状の形状に対応する。それにより、予備成形されていない固定バンドで生じる、固定バンド52の変形による引張荷重が回避される。
【0056】
図17及び
図18は、断面において円形状の固定バンド55を固定的に受容するための溝54の領域における、上顎ミニプラストスプリント53の部分断面図を示す。固定バンド55は、その長手軸に対して横方向に弾性的に変形可能なプラスチック材料から製造されている。溝54の開口56は、狭窄部の態様で形成されており、その結果、開口56の開口断面は、固定バンド55の外径よりも小さい。
図18に概略的に示されているように、固定バンド55が外部から溝54の方向へ押されると、固定バンド55が溝54内に滑り込むよう固定バンド55を僅かに偏平にする変形抵抗に打ち勝たなければならない。固定バンド55の溝54内へのこの挿入を容易にするために、狭窄部として形成された開口56の外側を向いた面に、挿入斜面57が設けられている。固定バンド55が溝54内に完全に受容されるとすぐに、形状接続的な圧力嵌めが形成され、その結果、固定バンド55は、対応する摩擦抵抗に打ち勝つ場合にのみ、溝54に対して移動することができる。
【0057】
図19は、咬合スプリント構成の第3の実施形態58を側面図で示す。2つのミニプラストスプリント59及び60を有する咬合スプリント構成58の基本的な構造は、
図2に示されている咬合スプリント構成01の構造に対応する。
【0058】
咬合スプリント構成58においては、上顎ミニプラストスプリント59と下顎ミニプラストスプリント60を接続するために、上顎ミニプラストスプリント59の溝62内に固定され得る固定バンド61が設けられている。固定バンド61の端部は、固定要素63及び64に固定される。固定要素63及び64は、下顎ミニプラストスプリント60と一体にプラスチックから形成されており、プラスチックからの3D印刷で製造することができる。
【0059】
図20は、溝62を有する咬合スプリント構成58の上顎ミニプラストスプリント59を側面図で示す。
【0060】
図21は、固定要素63及び64を有する下顎ミニプラストスプリント60を平面図で示す。
【0061】
図22は、下顎ミニプラストスプリントの固定要素63を、それに固定された固定バンド61と共に部分断面図で示す。
【0062】
図23は、固定要素63及び64に掛けるための開口65及び66を有する咬合スプリント構成58の予備成形された固定バンド61を、側面斜視図で示す。
【0063】
図24は、固定要素63及び64に掛けるための開口65及び66を有する固定バンド61を、平面図で示す。
【符号の説明】
【0064】
01 咬合スプリント構成
02 上顎ミニプラストスプリント
03 下顎ミニプラストスプリント
04 横断面
05 固定バンド
06 端部(固定バンド)
07 凹部(固定バンド)
08 固定要素
09 臼歯領域
10 切歯領域
11 ガイド装置
12 中央部分(固定バンド)
13 溝
14 端部(溝)
15 自由長さ部分(固定バンド)
16 固定ピン
17 安全要素
18 下顎ミニプラストスプリント
19 カバー要素
20 滑らかな側面(カバー要素)
21 開口(溝)
22 固定ウェブ
23 固定ウェブ
24 上顎ミニプラストスプリント
25 溝
26 固定バンド
27 上顎ミニプラストスプリント
28 溝
29 ガイド装置
30 固定ピン
31 上側の側縁部(溝)
32 下側の側縁部(溝)
33 咬合スプリント構成
34 上顎ミニプラストスプリント
35 下顎ミニプラストスプリント
36 転向要素
37 固定バンド
38 溝
39 固定要素
40 固定バンド
41 突出部
42 突出部
43 端部(固定バンド)
44 開口(固定バンド)
45 左側の固定要素
46 右側の固定要素
47 左側の端部(固定バンド)
48 固定バンド
49 右側の端部(固定バンド)
50 開口(固定バンド)
51 開口(固定バンド)
52 予備成形された固定バンド
53 上顎ミニプラストスプリント
54 溝
55 固定バンド
56 狭窄部を有する開口
57 挿入斜面
58 咬合スプリント構成
59 上顎ミニプラストスプリント
60 下顎ミニプラストスプリント
61 固定バンド
62 溝
63 固定要素
64 固定要素
65 開口
66 開口