IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファナック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-流体侵入抑制機能を備えた電動機 図1
  • 特許-流体侵入抑制機能を備えた電動機 図2
  • 特許-流体侵入抑制機能を備えた電動機 図3
  • 特許-流体侵入抑制機能を備えた電動機 図4
  • 特許-流体侵入抑制機能を備えた電動機 図5
  • 特許-流体侵入抑制機能を備えた電動機 図6
  • 特許-流体侵入抑制機能を備えた電動機 図7
  • 特許-流体侵入抑制機能を備えた電動機 図8
  • 特許-流体侵入抑制機能を備えた電動機 図9
  • 特許-流体侵入抑制機能を備えた電動機 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】流体侵入抑制機能を備えた電動機
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/10 20060101AFI20231212BHJP
   F16J 15/447 20060101ALI20231212BHJP
   F16C 33/80 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H02K5/10
F16J15/447
F16C33/80
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020010909
(22)【出願日】2020-01-27
(65)【公開番号】P2021118622
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】向井 康仁
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-038167(JP,A)
【文献】特開2016-080141(JP,A)
【文献】特開2006-022681(JP,A)
【文献】特開平06-014496(JP,A)
【文献】特開2003-023747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/10
F16J 15/447
F16C 33/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ側侵入抑制部材と、ステータ側侵入抑制部材と、前記ロータ側侵入抑制部材と前記ステータ側侵入抑制部材との間に形成されていて外部からの流体の侵入を抑制するラビリンスと、を備えた電動機であって、
前記ロータ側侵入抑制部材は、前記電動機の軸方向の内方に向いたロータ側環状凹部を備え、
前記ステータ側侵入抑制部材は、前記電動機の軸方向の外方に向いたステータ側環状凹部と、前記ステータ側環状凹部の内周壁の外周面から前記電動機の径方向の外方に延在した流体返し壁と、を備え、
前記ロータ側環状凹部の外周壁の先端が、前記ステータ側環状凹部の内部に配置され、前記流体返し壁の流体返し面よりも前記電動機の軸方向で内方に位置決めされた、又は前記流体返し面と前記電動機の軸方向で同じ位置に位置決めされており、
前記ラビリンスの開口流路を構成する前記ステータ側侵入抑制部材の内周面と前記ロータ側侵入抑制部材の外周面とが互いに平行で、前記開口流路は前記電動機の軸方向に延在しており、
前記ラビリンスの開口は前記流体返し壁の遠位端よりも電動機の軸方向遠位に配置されている、電動機。
【請求項2】
ロータ側侵入抑制部材と、ステータ側侵入抑制部材と、前記ロータ側侵入抑制部材と前記ステータ側侵入抑制部材との間に形成されていて外部からの流体の侵入を抑制するラビリンスと、を備えた電動機であって、
前記ロータ側侵入抑制部材は、前記電動機の径方向の外方に向いたロータ側環状凹部を備え、
前記ステータ側侵入抑制部材は、前記電動機の軸方向の外方に向いたステータ側環状凸部と、前記ステータ側環状凸部の中腹に形成されたステータ側環状段部と、を備え、
前記ロータ側環状凹部は、前記電動機の軸方向の外方に形成されたロータ側侵入抑制壁と、前記ロータ側侵入抑制壁よりも背が小さく前記電動機の軸方向の内方に形成された流体返し壁と、を備え、
前記ステータ側環状段部の先端が、前記流体返し壁の流体返し面よりも前記電動機の軸方向で外方に位置決めされた、又は前記流体返し面と前記電動機の軸方向で同じ位置に位置決めされており、
前記ステータ側環状段部から前記電動機の軸方向の外方に延在した第一ステータ側流体貯留壁をさらに備え、前記第一ステータ側流体貯留壁の外周面が前記ロータ側侵入抑制壁の先端よりも前記電動機の径方向で内方に位置決めされた、又は前記第一ステータ側流体貯留壁の外周面が前記ロータ側侵入抑制壁の先端と前記電動機の径方向で同じ位置に位置決めされた、電動機。
【請求項3】
前記ラビリンスの開口流路が前記電動機の軸方向に延在し、前記ラビリンスの開口が前記流体返し壁の先端よりも前記電動機の径方向の外方に配置された、請求項1又は2に記載の電動機。
【請求項4】
前記ラビリンスの開口流路が、前記電動機の軸方向に対して傾斜し、前記ラビリンスの開口が前記流体返し壁の先端よりも前記電動機の径方向の外方に配置された、請求項1又は2に記載の電動機。
【請求項5】
前記ロータ側環状凹部の外周壁の外周面から前記電動機の径方向の外方に延在した開口流路狭窄部をさらに備える、請求項1に記載の電動機。
【請求項6】
前記ステータ側環状凸部の山麓から前記電動機の軸方向の外方に延在した第二ステータ側流体貯留壁をさらに備え、前記第二ステータ側流体貯留壁の外周面が前記流体返し壁の先端よりも前記電動機の径方向で内方に位置決めされた、又は前記第二ステータ側流体貯留壁の外周面が前記流体返し壁の先端と前記電動機の径方向で同じ位置に位置決めされた、請求項2に記載の電動機。
【請求項7】
前記流体返し壁から前記電動機の軸方向の外方に延在したロータ側流体貯留壁をさらに備える、請求項2または6に記載の電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機に関し、特に流体侵入抑制機能を備えた電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、切削液等の流体が電動機内部に侵入しないようにするため、低速回転する電動機にはゴム部材等の接触型シール部材を使用し、一方で、高速回転する電動機にはラビリンスを形成する非接触型シール部材を使用することがある。
【0003】
図9は非接触型シール部材60を備えた電動機3を示している。非接触型シール部材60は、回転軸21に嵌着されたロータ側侵入抑制部材61と、前方ハウジング33の前端面に取付けられたステータ側侵入抑制部材62と、を備えている。ロータ側侵入抑制部材61とステータ側侵入抑制部材62との間には、外部からの流体の侵入を抑制するラビリンス63が形成されている。ロータ側侵入抑制部材61が回転軸21と共に回転することにより、ラビリンス63の周囲にある流体を弾き飛ばし、電動機3の内部への流体の侵入を抑制する。このような非接触型シール部材に関連する技術としては、次の文献が公知である。
【0004】
特許文献1には、軸受に供給される潤滑油の漏洩を防止する軸封装置が開示されている。軸封装置は、回転軸に装着可能な回転部材と、回転部材に対向して配置されたカバーとを備え、回転部材は、一部が内部空間とは反対側の外部空間に位置する円筒部と、円筒部の半径方向外側に延びて内部空間に位置するフランジ部と、を備え、円筒部とカバーとの間には、円筒部の軸方向に延びる半径方向隙間が形成され、フランジ部とカバーとの間には、円筒部の半径方向外側に延びる軸方向隙間が形成されている。
【0005】
特許文献2には、外部からの異物の侵入を防止するラビリンスシールを備えた変速機が開示されている。変速機は、油圧モータが収容される固定ハウジングと、油圧モータの出力回転を変速する変速機構と、変速機構を収容していて変速された出力回転が伝達されて回転する回転ハウジングと、固定ハウジングと回転ハウジングとの間に形成されていて外部からの異物の侵入を防止するラビリンスシールと、ラビリンスシールに連通して設けられた異物を貯留するポケットと、を備えている。
【0006】
特許文献3には、減速装置内の潤滑油が電動機内に侵入するのを防止する軸封装置が開示されている。減速装置の歯車によって飛ばされた潤滑油はスリンガーカバーによって遮断され、また、スリンガーカバーに対向する中間端蓋に当たった潤滑油は中間端蓋の外周に設けた油流し溝を通って下方に流れていく。
【0007】
特許文献4には、モータ内部への異物の侵入を抑制したモータが開示されている。モータは、軸受側侵入防止部材と、シャフト側侵入防止部材と、を備えている。
【0008】
特許文献5には、グリースの漏れや外部からの異物の侵入を防止する回転電機の軸受装置が開示されている。軸受装置は、固定子側部材と回転子側部材との間にラビリンスを構成し、回転子側部材の外周面のラビリンス軸受側口付近にラビリンス内方に侵入しようとするベースオイルを堰止める溝を有している。
【0009】
特許文献6には、前側軸受及び後側軸受がオイル潤滑されるモータビルトインタイプの工作機械用主軸装置が開示されている。回転軸とハウジングとの間に形成される、前側軸受が配置される第1の空間、モータが配置される第2の空間、及び後側軸受が配置される第3の空間が、それぞれラビリンスシールによって密閉されることにより、軸受に対する潤滑油過多や軸受の異常発熱を抑制できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2018-179080号公報
【文献】特開2017-191907号公報
【文献】実全昭54-052626号公報
【文献】国際公開第2018/179830号
【文献】特開昭63-035148号公報
【文献】特開2009-214215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図10は従来の非接触型シール部材60を拡大した様子を示している。回転軸21が回転しているときには、ロータ側侵入抑制部材61が回転軸21と共に回転してラビリンス63の周囲にある流体を弾き飛ばすため、電動機3の内部への流体の侵入を抑制できる。
【0012】
しかしながら、電動機3を横向きに配置して使用する場合(即ち、回転軸21を水平方向に配向する場合)、回転軸21の回転が停止したときには、ステータ側侵入抑制部材62や前方ハウジング33から垂れてきた流体がラビリンス63を通って電動機3の内部に侵入してしまうことがある。
【0013】
そこで、回転停止時における電動機内部への流体侵入を抑制する技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示の一態様は、ロータ側侵入抑制部材と、ステータ側侵入抑制部材と、ロータ側侵入抑制部材とステータ側侵入抑制部材との間に形成されていて外部からの流体の侵入を抑制するラビリンスと、を備えた電動機であって、ロータ側侵入抑制部材は、電動機の軸方向の内方に向いたロータ側環状凹部を備え、ステータ側侵入抑制部材は、電動機の軸方向の外方に向いたステータ側環状凹部と、ステータ側環状凹部の内周壁の外周面から電動機の径方向の外方に延在した流体返し壁と、を備え、ロータ側環状凹部の外周壁の先端が、ステータ側環状凹部の内部に配置され、流体返し壁の流体返し面よりも電動機の軸方向で内方に位置決めされた、又は流体返し面と電動機の軸方向で同じ位置に位置決めされており、前記ラビリンスの開口流路を構成する前記ステータ側侵入抑制部材の内周面と前記ロータ側侵入抑制部材の外周面とが互いに平行で、前記開口流路は前記電動機の軸方向に延在しており、前記ラビリンスの開口は前記流体返し壁の遠位端よりも電動機の軸方向遠位に配置されている、電動機を提供する。
本開示の他の態様は、ロータ側侵入抑制部材と、ステータ側侵入抑制部材と、ロータ側侵入抑制部材とステータ側侵入抑制部材との間に形成されていて外部からの流体の侵入を抑制するラビリンスと、を備えた電動機であって、ロータ側侵入抑制部材は、電動機の径方向の外方に向いたロータ側環状凹部を備え、ステータ側侵入抑制部材は、電動機の軸方向の外方に向いたステータ側環状凸部と、ステータ側環状凸部の中腹に形成されたステータ側環状段部と、を備え、ロータ側環状凹部は、電動機の軸方向の外方に形成されたロータ側侵入抑制壁と、ロータ側侵入抑制壁よりも背が小さく電動機の軸方向の内方に形成された流体返し壁と、を備え、ステータ側環状段部の先端が、流体返し壁の流体返し面よりも電動機の軸方向で外方に位置決めされた、又は流体返し面と電動機の軸方向で同じ位置に位置決めされており、前記ステータ側環状段部から前記電動機の軸方向の外方に延在した第一ステータ側流体貯留壁をさらに備え、前記第一ステータ側流体貯留壁の外周面が前記ロータ側侵入抑制壁の先端よりも前記電動機の径方向で内方に位置決めされた、又は前記第一ステータ側流体貯留壁の外周面が前記ロータ側侵入抑制壁の先端と前記電動機の径方向で同じ位置に位置決めされた、電動機を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本開示のいずれの態様においても、電動機の回転停止時にラビリンスに流入した流体が流体返し壁によって返されて電動機の内部への侵入を抑制される。特に本開示の一態様によれば、電動機を横向きに配置して使用した場合に、ラビリンスに流入した流体が重力の作用でステータ側環状凹部の内周壁に沿って流下してラビリンスの開口から排出され、一方で、電動機を縦向きに配置して使用した場合には、ラビリンスに流入した流体がステータ側環状凹部の内部に貯留される。また、本開示の他の態様によれば、電動機を横向きに配置して使用した場合に、ラビリンスに流入した流体が重力の作用でロータ側環状凹部の内周壁に沿って流下してラビリンスの開口から排出される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態の非接触型シール部材を備えた電動機の一部断面図である。
図2図1の非接触型シール部材を拡大した拡大断面図である。
図3】非接触型シール部材の変形例を示す拡大断面図である。
図4】非接触型シール部材の他の変形例を示す拡大断面図である。
図5】他の実施形態の非接触型シール部材を備えた電動機の一部断面図である。
図6図5の非接触型シール部材を拡大した拡大断面図である。
図7】非接触型シール部材の変形例を示す拡大断面図である。
図8】非接触型シール部材の他の変形例を示す拡大断面図である。
図9】従来の非接触型シール部材を備えた電動機の一部断面図である。
図10】従来の非接触型シール部材を拡大した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を詳細に説明する。各図面において、同一又は類似の構成要素には同一又は類似の符号が付与されている。また、以下に記載する実施形態は、特許請求の範囲に記載される発明の技術的範囲及び用語の意義を限定するものではない。また、本書における用語「内」は電動機の内部に向かう方向を指し、用語「外」は電動機の外部に向かう方向を指し、用語「前」は電動機の負荷側を指し、用語「後」は電動機の反負荷側を指すことに留意されたい。
【0018】
図1は本実施形態の非接触型シール部材10を備えた電動機1を示している。電動機1は、ロータ20と、ステータ30と、ステータ30に着座してロータ20を軸支する前方軸受40と、を備えている。ロータ20は、回転軸21と、回転軸21に嵌着されたロータコア22と、を備えている。ステータ30は、ステータコア31と、ステータコア31に巻回された巻線32と、ステータコア31の前端面に取付けられた前方ハウジング33と、ステータコア31の後端面に取付けられた後方ハウジング34と、を備えている。電動機1は、横向きに配置して使用してもよいし(回転軸21を水平方向に配向してもよいし)、又は縦向きに配置して使用してもよい(回転軸21を鉛直方向に配向してもよい)。
【0019】
非接触型シール部材10は、ロータ側侵入抑制部材11と、ステータ側侵入抑制部材12と、を備えている。ロータ側侵入抑制部材11は、回転軸21の負荷側に嵌着されている。ステータ側侵入抑制部材12は、前方ハウジング33の前端面に取付けられている。ロータ側侵入抑制部材11とステータ側侵入抑制部材12との間には、外部からの流体の侵入を抑制するラビリンス13が形成されている。
【0020】
図2図1の非接触型シール部材10を拡大した様子を示している。ロータ側侵入抑制部材11は、電動機1の軸方向Xの内方に向いたロータ側環状凹部14を備えている。他方、ステータ側侵入抑制部材12は、電動機1の軸方向Xの外方に向いたステータ側環状凹部15と、ステータ側環状凹部15の内周壁15aの外周面15bから電動機1の径方向Yの外方に延在した流体返し壁15cと、を備えている。電動機1を横向きに配置して使用した場合に、回転軸21の回転を停止したとき、ラビリンス13の開口13aから流入した流体は、図2の矢印で示すように流体返し壁15cによって返されるため、電動機1の内部へ侵入し難くなる。
【0021】
また図2の破線で示すように、ロータ側環状凹部14の外周壁14aの先端14bは、ステータ側環状凹部15の内部に配置され、流体返し壁15cの流体返し面15dよりも電動機1の軸方向Xで内方に位置決めされている。ロータ側環状凹部14の外周壁14aの先端14bをこのように配置することにより、電動機1を横向きに配置して使用した場合には、ラビリンス13に流入した流体が流体返し壁15cで囲まれた溝に流入することになる。仮に、ロータ側環状凹部14の外周壁14aの先端14bが流体返し面15dよりも電動機1の軸方向Xで外方に位置決めされた場合には(図示せず)、ラビリンス13に流入した流体が電動機1の内部に侵入してしまう。
【0022】
また、ラビリンス13の開口流路13bは電動機1の軸方向Xに延在し、ラビリンス13の開口13aが流体返し壁15cの先端15eよりも電動機1の径方向Yの外方に配置されている。従って、電動機1を横向きに配置して使用した場合に、流体返し壁15cで囲まれた溝に流入した流体は、重力の作用でステータ側環状凹部15の内周壁15aに沿って周方向へ流下し、図2の矢印で示すようにラビリンス13の開口13aから排出されることになる。他方、電動機1を縦向きに配置して使用した場合には、ラビリンス13に流入した流体が、ステータ側環状凹部15の内部に貯留され、電動機1の内部への侵入を抑制されることになる。
【0023】
図3は非接触型シール部材10の変形例を示している。この変形例では、ロータ側環状凹部14の外周壁14aの先端14bが、ステータ側環状凹部15の内部に配置され、流体返し壁15cの流体返し面15dと電動機1の軸方向Xで同じ位置に位置決めされている点で、前述のものと異なる。ロータ側環状凹部14の外周壁14aの先端14bをこのように配置しても、電動機1を横向きに配置して使用した場合には、ラビリンス13の開口13aから流入した流体が流体返し壁15cで囲まれた溝に流入することになる。
【0024】
また、この変形例では、ステータ側環状凹部15が電動機1の軸方向Xに対して傾斜した外周壁15gを備えている。即ち、ラビリンス13の開口流路13bが電動機1の軸方向Xに対して傾斜している点でも、前述のものと異なる。このようにラビリンス13の開口流路13bを電動機1の軸方向Xに対して傾斜させ、さらに、ラビリンス13の開口13aが流体返し壁15cの先端15eよりも電動機1の径方向Yの外方に配置されると、電動機1を横向きに配置して使用した場合に、ステータ側環状凹部15の内周壁15aに沿って周方向へ流下した流体は、図3の矢印で示すように重力の作用でラビリンス13の開口13aから排出され易くなる。
【0025】
図4は非接触型シール部材10の他の変形例を示している。この変形例では、ロータ側環状凹部14の外周壁14aの外周面14cから電動機1の径方向Yの外方に延在した開口流路狭窄部14dをさらに備えている点で、前述のものと異なる。開口流路狭窄部14dをラビリンス13の開口13aの近傍に形成することにより、ラビリンス13の開口13aへの流体流入を未然に抑制できるようになる。
【0026】
図5は他の実施形態の非接触型シール部材50を備えた電動機2を示している。電動機2は、前述の電動機1と同じく、ロータ20と、ステータ30と、ステータ30に着座してロータ20を軸支する前方軸受40と、を備えている。この電動機2は、横向きに配置して使用する(回転軸21を水平方向に配向して使用する)ことが好ましい。
【0027】
非接触型シール部材50は、ロータ側侵入抑制部材51と、ステータ側侵入抑制部材52と、を備えている。ロータ側侵入抑制部材51は、回転軸21の負荷側に嵌着されている。ステータ側侵入抑制部材52は、前方ハウジング33の前端面に取付けられている。ロータ側侵入抑制部材51とステータ側侵入抑制部材52との間には、外部からの流体の侵入を抑制するラビリンス53が形成されている。
【0028】
図6図5の非接触型シール部材50を拡大した様子を示している。ロータ側侵入抑制部材51は、電動機2の径方向Yの外方に向いたロータ側環状凹部54を備えている。他方、ステータ側侵入抑制部材52は、電動機1の軸方向Xの外方に向いたステータ側環状凸部55と、ステータ側環状凸部55の中腹に形成されたステータ側環状段部55aと、を備えている。ロータ側環状凹部54は、電動機2の軸方向Xの外方に形成されたロータ側侵入抑制壁54aと、ロータ側侵入抑制壁54aよりも背が小さく電動機2の軸方向Xの内方に形成された流体返し壁54cと、を備えている。電動機2を横向きに配置して使用した場合に、回転軸21の回転を停止したとき、ラビリンス13の開口13aから流入した流体は、図6の矢印で示すように流体返し壁54cによって返されるため、電動機1の内部へ侵入し難くなる。
【0029】
また図6の破線で示すように、ステータ側環状段部55aの先端55bは、流体返し壁54cの流体返し面54eよりも電動機2の軸方向Xで外方に位置決めされている。或いは、ステータ側環状段部55aの先端55bは、流体返し壁54cの流体返し面54eと電動機2の軸方向Xで同じ位置に位置決めされてもよい。ステータ側環状段部55aの先端55bをこのように配置することにより、ラビリンス53に流入した流体が流体返し壁54cで囲まれた溝に流入することになる。仮に、ステータ側環状段部55aの先端55bが流体返し面54eよりも電動機2の軸方向Xで外方に位置決めされた場合には(図示せず)、ラビリンス53に流入した流体が電動機2の内部に侵入し易くなってしまう。
【0030】
また、ラビリンス53の開口流路53bは電動機2の軸方向Xに延在し、ラビリンス53の開口53aが流体返し壁54cの先端よりも電動機2の径方向Yの外方に形成されている。従って、電動機2を横向きに配置して使用した場合に、流体返し壁54cで囲まれた溝に流入した流体は、重力の作用でロータ側環状凹部54の内周壁に沿って周方向へ流下し、図6の矢印で示すようにラビリンス53の開口53aから排出されることになる。
【0031】
図7は非接触型シール部材50の変形例を示している。この変形例では、ステータ側環状凸部55が電動機2の軸方向Xに対して傾斜した内周壁55gを備えている。即ち、ラビリンス53の開口流路53bが電動機2の軸方向Xに対して傾斜している点で、前述のものと異なる。このようにラビリンス53の開口流路53bを電動機2の軸方向Xに対して傾斜させ、さらに、ラビリンス53の開口53aが流体返し壁54cの先端54dよりも電動機2の径方向Yの外方に配置されると、電動機2を横向きに配置して使用した場合に、ロータ側環状凹部54の内周壁に沿って周方向へ流下した流体は、図7の矢印で示すように重力の作用でラビリンス53の開口53aから排出され易くなる。
【0032】
また、変形例の非接触型シール部材50では、ステータ側環状段部55aから電動機2の軸方向Xの外方に延在した第一ステータ側流体貯留壁55cをさらに備えている点でも、前述のものと異なる。第一ステータ側流体貯留壁55cの外周面55dは、ロータ側侵入抑制壁54aの先端よりも電動機2の径方向Yで内方に位置決めされている。或いは、第一ステータ側流体貯留壁55cの外周面55dは、ロータ側侵入抑制壁54aの先端と電動機2の径方向Yで同じ位置に位置決めされてもよい。第一ステータ側流体貯留壁55cの外周面55dをこのように配置することにより、電動機2を縦向きに配置して使用した場合であっても、ラビリンス53の開口53aから流入した流体は、第一ステータ側流体貯留壁55cで囲まれた溝に流入して貯留されるため、電動機2の内部へ侵入し難くなる。
【0033】
さらに、この変形例では、ステータ側環状凸部55の山麓から電動機2の軸方向Xの外方に延在した第二ステータ側流体貯留壁55eをさらに備えている点でも、前述のものと個なる。第二ステータ側流体貯留壁55eの外周面55fは、流体返し壁54cの先端54dよりも電動機2の径方向Yで内方に位置決めされている。或いは、第二ステータ側流体貯留壁55eの外周面55fは、流体返し壁54cの先端54dと電動機2の径方向Yで同じ位置に位置決めされてもよい。第二ステータ側流体貯留壁55eの外周面55fをこのように配置することにより、電動機2を縦向きに配置して使用した場合に、第一ステータ側流体貯留壁55cで囲まれた溝から溢れた流体や、ロータ側侵入抑制壁54aを伝ってラビリンス53に流入した流体は、第二ステータ側流体貯留壁55eで囲まれた溝に流入して貯留されるため、電動機2の内部へより侵入し難くなる。
【0034】
図8は非接触型シール部材50の他の変形例を示している。この変形例では、前述の第一ステータ側流体貯留壁55cに加えて、流体返し壁54cから電動機2の軸方向Xの外方に延在したロータ側流体貯留壁54fをさらに備えている点で、前述のものと異なる。これにより、電動機2を縦向きに配置して使用した場合に、ロータ側侵入抑制壁54aを伝ってラビリンス53に流入した流体が、ロータ側流体貯留壁54fで囲まれた溝に流入して貯留されるため、より電動機2の内部へ侵入し難くなる。
【0035】
以上の実施形態によれば、電動機1、2の回転停止時にラビリンス13、53に流入した流体が流体返し壁15c、54cによって返されて電動機1、2の内部への侵入を抑制される。特に本実施形態によれば、電動機1を横向きに配置して使用した場合に、ラビリンス13に流入した流体が重力の作用でステータ側環状凹部15の内周壁15aに沿って流下してラビリンス13の開口13aから排出され、一方で、電動機1を縦向きに配置して使用した場合には、ラビリンス13に流入した流体がステータ側環状凹部15の内部に貯留される。また、他の実施形態によれば、電動機2を横向きに配置して使用した場合に、ラビリンス53に流入した流体が重力の作用でロータ側環状凹部54の内周壁に沿って流下してラビリンス53の開口53aから排出される。
【0036】
本明細書において種々の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲に記載された範囲内において種々の変更を行えることを認識されたい。
【符号の説明】
【0037】
1 電動機
10 非接触型シール部材
11 ロータ側侵入抑制部材
12 ステータ側侵入抑制部材
13 ラビリンス
13a 開口
13b 開口流路
14 ロータ側環状凹部
14a 外周壁
14b 先端
14c 外周面
14d 開口流路狭窄部
15 ステータ側環状凹部
15a 内周壁
15b 外周面
15c 流体返し壁
15d 流体返し面
15e 先端
15g 外周壁
20 ロータ
21 回転軸
22 ロータコア
30 ステータ
31 ステータコア
32 巻線
33 前方ハウジング
34 後方ハウジング
40 前方軸受
2 電動機
50 非接触型シール部材
51 ロータ側侵入抑制部材
52 ステータ側侵入抑制部材
53 ラビリンス
53a 開口
53b 開口流路
54 ロータ側環状凹部
54a ロータ側侵入抑制壁
54b 先端
54c 流体返し壁
54d 先端
54e 流体返し面
54f ロータ側流体貯留壁
55 ステータ側環状凸部
55a ステータ側環状段部
55b 先端
55c 第一ステータ側流体貯留壁
55d 外周面
55e 第二ステータ側流体貯留壁
55f 外周面
55g 内周壁
X 軸方向
Y 径方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10