(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】ノズル装置
(51)【国際特許分類】
B05B 1/02 20060101AFI20231212BHJP
B05B 1/10 20060101ALI20231212BHJP
B60S 1/56 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B05B1/02
B05B1/10
B60S1/56 100
(21)【出願番号】P 2020013802
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】肥田 昌志
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-062351(JP,A)
【文献】特開2014-000949(JP,A)
【文献】特開2018-144542(JP,A)
【文献】実開昭58-146556(JP,U)
【文献】国際公開第2017/002878(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00-1/36
B60S 1/00-1/68
B08B 1/00-1/04
5/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧送された流体をセンサの検知面に向けて噴出する噴出部と、
前記センサの上面に沿って設けられ、前記噴出部へ向かう前記流体の流路を形成するとともに、上カバーまたは下カバーのいずれか一方が板金である流路部と
を備え
、
前記流路部は、
前記噴出部から前記流路の外側に折り返した折り返し部を前記板金に有すること
を特徴とするノズル装置。
【請求項2】
前記流路部は、
上カバーが樹脂であり、下カバーが板金であること
を特徴とする請求項1に記載のノズル装置。
【請求項3】
前記流路部は、
断面積が略一定の前記流路を形成すること
を特徴とする請求項1
または2に記載のノズル装置。
【請求項4】
前記流路部は、
前記流路の外枠を規定するガイド部と、
前記ガイド部の外側に前記上カバーと前記下カバーとを接着する接着剤が充填される溝部と
を備えることを特徴とする請求項1
、2または3に記載のノズル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の周辺を撮像する車載カメラのレンズに向けて圧縮した気体を噴射することで、レンズに付着した付着物を除去する付着物除去装置がある。かかる付着物除去装置は、車両のバックドア内部に設置され、噴出口がレンズの中央に向けて設けられたノズル装置を介して圧縮した気体を噴射する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来においては、車載カメラおよびノズル装置の設置スペースが狭い場合に、ノズル装置を取り付けられない場合があった。具体的には、従来技術では、車載カメラとリアガーニッシュとのクリアランスが十分でない場合に、ノズル装置を取り付けられない場合があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、狭小スペースに取り付けることができるノズル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態に係るノズル装置は、噴出部と、流路部とを備える。前記噴出部は、圧縮された流体をセンサの検知面に向けて噴出する。前記流路部は、前記センサの上面に沿って設けられ、前記噴出部へ向かう前記流体の流路を形成するとともに、上カバーまたは下カバーのいずれか一方が板金である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、狭小スペースに取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、ノズル装置の搭載例を示す図である。
【
図6】
図6は、変形例に係るノズル装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係るノズル装置について説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
まず、
図1を用いて、実施形態に係るノズル装置の搭載例について説明する。
図1は、ノズル装置の搭載例を示す図である。なお、
図1には、ノズルを含む付着物除去システム1をあわせて示す。また、以下では、カメラ50が車両の後方を撮影するバックカメラである場合を例に挙げて説明する。また、以下では、センサが車両の後方を撮影するバックカメラであるカメラ50であり、検知面がレンズである場合を例に挙げて説明する。なお、センサは、カメラ50に限られず、その他のカメラや、ミリ波レーダなどのレーダ装置であってもよい。また、以下では、実施形態に係るノズル装置についてノズル30とも記載する。
【0011】
図1に示す付着物除去システム1は、カメラ50のレンズに付着した付着物を除去するシステムである。具体的には、
図1に示す流体噴出装置10は、内部にモータ(不図示)を有しており、ハーネスHから入力される制御信号に応じてモータを作動させることで流体を噴出する。
【0012】
以下では、流体が気体である場合について説明するが、噴出される流体は液体であってもよい。
図1に示す付着物除去システム1は、カメラ50のレンズに付着した付着物を除去するシステムである。具体的には、
図1に示す流体噴出装置10は、内部にモータ(不図示)を有しており、ハーネスHから入力される制御信号に応じてモータを作動させることで気体を圧縮、噴射する。
【0013】
流体噴出装置10によって圧縮された気体は、ホース20を介してノズル30へ圧送される。その後、かかる気体は、ノズル30からカメラ50に向けて噴射される。これにより、カメラ50のレンズに付着した付着物を除去することができる。
【0014】
ここで、
図1に示すように、ノズル30は、カメラ50とリアガーニッシュGとの間に設けられる。このため、車両によっては、カメラ50とリアガーニッシュGとのクリアランスが十分でなく、ノズルを設置するスペースが確保できない場合がった。
【0015】
これに対して、実施形態に係るノズル30では、ノズル30の厚みを薄くすることで、狭小スペースに取り付け可能とすることとした。具体的には、実施形態に係るノズル30の上カバーまたは下カバーのいずれかを板金とすることで、ノズル30の厚みを薄くすることとした。
【0016】
以下、ノズル30についてさらに説明する。
図2は、ノズル装置の断面模式図である。なお、
図2には、カメラ50を併せて示すとともに、カメラ50を簡略化して示す。
【0017】
図2に示すように、ノズル30は、接続部31と、上カバー32と、下カバー33とを備える。接続部31には、
図1に示したホース20が接続され、ホース20を介して流体噴出装置10から気体が圧送される。
【0018】
また、ノズル30は、上カバー32および下カバー33によって気体の流路を形成する。また、上カバー32および下カバー33は、流路部の一例に対応する。ここで、
図2の例において、上カバー32は、樹脂であり、下カバー33は、板金である。上カバー32は、例えば、金型に樹脂を流し込んだ後に、樹脂を固めることで成形することができる。なお、樹脂は、プラスチック樹脂であるが、シリコンやゴムであってもよい。
【0019】
下カバー33は、例えば、アルミニウム、銅などといった各種金属により構成される。また、板金は、樹脂に比べて、容易に薄く成形することができるので、下カバー33を板金とすることで、下カバー33の厚みを上カバー32の厚みよりも薄くすることができ、ノズル30の厚み自体を薄くすることができる。
【0020】
このように、実施形態に係るノズル30は、下カバー33に板金を用いることで、ノズル30の厚みを抑えることができ、カメラ50とリアガーニッシュGとのクリアランスが小さい場合であっても、ノズル30を設置することができる。
【0021】
また、
図2に示すように、上カバー32および下カバー33は、カメラ50の上面からカメラ50の前面(レンズ)に向かって湾曲した形状を有する。これにより、ノズル30は、レンズに向かって気体を噴射することができる。なお、下カバー33は、上カバー32によって覆われるので、車両の外部から見えないことになる。したがって、下カバー33を板金とする場合には、下カバー33の塗装が不要となる。
【0022】
図3は、ノズル30の下面図である。
図3に示すように、ノズル30は、上カバー32と下カバー33とによって噴出部34が形成される。噴出部34は、接続部31から圧送された気体をカメラ50のレンズへ噴射する噴出口である。
【0023】
すなわち、ノズル30は、接続部31から噴出部34に向かって、気体の流路が形成される。なお、
図3に示す例では、下カバー33の幅(Y軸方向の長さ)が噴出部34近傍において、狭くなる場合を示す。つまり、下カバー33の主面に段差を設けることで、後述するように、上カバー32に対して下カバー33を容易に固定することができる。
【0024】
次に、
図4Aおよび
図4Bを用いて、上カバー32内部の詳細について説明する。
図4は、ノズル30の分解斜視図である。また、
図4Bは、
図4Aに示すA-A線に沿った断面模式図である。
【0025】
図4Aに示すように、上カバー32は、開口部32aと、ガイド部32bと、枠部32cとを有する。また、
図4に示すように、接続部31は、上カバー32に設けられる。
【0026】
開口部32aは、接続部31へ接続する開口である。接続部31から開口部32aへ圧送された気体は、ノズル30の内部に形成された流路を通り、ノズル30の逆側(すなわち、噴出部34)から噴出される。ガイド部32bは、気体の流路の外枠であり、ガイド部32bの内側に気体の流路が形成されることになる。
【0027】
また、ガイド部32bの外側には、枠部32cが設けられ、上カバー32を下カバー33で覆う際に、枠部32cと下カバー33とが接触し、ガイド部32bの内側に気体の流路が形成される。また、
図4Aの例では、ガイド部32bと枠部32cは噴出部34付近で合流する場合を示す。
【0028】
また、
図4Aに示すように、ガイド部32bと、枠部32cとの間には、溝部Mが形成される。
図4Bに示すように、溝部Mは、溶剤(例えば、接着剤)を充填するための溝であり、溝部Mに溶剤を流し込むことで、上カバー32と、下カバー33とを接着させることができる。
【0029】
このように、溝部Mを設けることで、接着箇所を明確にして、溶剤を塗布できるので、安定した接着が図れ、密閉性が損なわれないようにすることができる。また、溝部Mを設けることにより、溝部Mに沿って接着剤を充填することができるので、流路が接着剤によって塞がれるのを抑制することができる。
【0030】
また、
図4Aに示すように、上カバー32において、枠部32cのさらに外側には、下カバー33の形状に沿って段差32dが設けられる。したがって、段差32dの内側に下カバー33をはめ込むことで、上カバー32に対して下カバー33を容易に固定することが可能となる。
【0031】
また、
図4Aに示す例において、ガイド部32b間の間隔は、開口部32aから噴出部34へ向かって一旦広がり、その後、上カバー32の中央付近の境界線L付近を境に噴出部34に行くにつれて次第に狭くなる。
【0032】
これにより、境界線L付近を境として、気体の流路が徐々に狭くなるので、さらに圧縮された状態で、噴出部34から気体を噴射することが可能となる。
【0033】
また、噴出部34に至るまでの流路は、断面積が略一定に形成されることが好ましい。これは、流路の断面積が変化すると、断面積の増減に応じて、圧送された気体の圧力にロスが生じるおそれがあるためである。
【0034】
このため、
図4Aに示すように、開口部32aの開口の高さを低くなるにつれて、開口の幅を広くしている。つまり、接続部31から境界線L付近までの流路の断面積を略一定に設計している。
【0035】
これにより、流体噴出装置10から噴出された気体の圧力の低下を抑制しつつ、さらに、境界線L付近から噴出部34までの間に気体の圧送圧力を高めた状態で、噴出部34から気体を噴出することができる。
【0036】
次に、
図5を用いて、下カバー33の特徴部分について説明する。
図5は、折り返し部の一例を示す図である。上述のように、下カバー33は、板金によって構成されるとともに、風雨にさらされる環境下に設置されることになる。このため、下カバー33の破断面33bから経年劣化によって錆びることも想定される。
【0037】
このため、下カバー33は、噴出部34の近傍において、流路の外側に折り返した折り返し部33aを有する。つまり、下カバー33は、折り返し部33aによって噴出部34から遠ざかるように破断面33bが設けられる。
【0038】
つまり、下カバー33に対してヘミング曲げ加工を施すことにより、板金の先端となる破断面33bが錆びたとしても、噴出部34を塞ぐことを抑制することができる。一方、折り返し部33aを設けずに破断面33bが噴出部34近傍に設けられた場合に、破断面33bが錆びると、噴出部34を塞ぐ恐れがある。
【0039】
上述したように、実施形態に係るノズル30は、噴出部34と、上カバー32および下カバー33(流路部の一例)とを備える。噴出部34は、圧縮された流体をカメラ50(センサの一例)のレンズ(検知面の一例)に向けて噴出する。流路部は、カメラ50の上面に沿って設けられ、噴出部34へ向かう流体の流路を形成するとともに、上カバー32または下カバー33のいずれか一方が板金である。したがって、実施形態に係るノズル30によれば、狭小スペースに取り付けることができる。
【0040】
ところで、上述の実施形態では、ノズル30の下カバー33が板金である場合について説明したが、これに限定されるものではない。ここで、
図6を用いて、変形例に係るノズル30について説明する。
図6は、変形例に係るノズル30の斜視図である。
【0041】
図6に示す例において、ノズル30は、上カバー32が板金であり、下カバー33が樹脂である。この場合においても、上カバー32を板金とすることにより、上カバー32および下カバー33をそれぞれ樹脂とする場合に比べてノズル30の厚みを薄くすることができる。
【0042】
したがって、この場合においても、ノズル30を極小スペースに設置することが可能となる。なお、
図6に示す例では、搭載される車両の色にあわせて上カバー32を塗装することが好ましい。
【0043】
ところで、上述した実施形態では、カメラ50が車両の後方を撮影するリアカメラである場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、カメラ50は、車両の前方ならびに側方を撮影するフロントカメラおよびサイドカメラであってもよい。この場合であっても、各カメラ50に対してノズル30を適用することが可能である。
【0044】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 付着物除去システム
10 流体噴出装置
20 ホース
30 ノズル(ノズル装置の一例)
31 接続部
32 上カバー
32a 開口部
32b ガイド部
32c 枠部
32d 段差
33 下カバー
33a 折り返し部
34 噴出部
50 カメラ(センサの一例)
M 溝部