(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】リリース剤、および、樹脂成形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/62 20060101AFI20231212BHJP
B29C 41/32 20060101ALI20231212BHJP
C08F 220/04 20060101ALI20231212BHJP
C08F 220/18 20060101ALI20231212BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20231212BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20231212BHJP
C10M 107/42 20060101ALI20231212BHJP
C10N 20/04 20060101ALN20231212BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20231212BHJP
C10N 40/36 20060101ALN20231212BHJP
【FI】
B29C33/62
B29C41/32
C08F220/04
C08F220/18
C08J5/18 CEX
C09K3/00 R
C10M107/42
C10N20:04
C10N30:00 Z
C10N40:36
(21)【出願番号】P 2020018482
(22)【出願日】2020-02-06
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】312016056
【氏名又は名称】ハリマ化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】松永 洋子
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 匠
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-026836(JP,A)
【文献】特開2014-129517(JP,A)
【文献】特開昭55-069660(JP,A)
【文献】特開2019-084803(JP,A)
【文献】特開2018-103579(JP,A)
【文献】特開2018-095888(JP,A)
【文献】特開平06-055545(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0002377(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76;41/00-70/88
C08F 6/00-246/00;301/00
C08J 5/00-5/22
C09K 3/00
C10M 101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数12~22の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートと、酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーとを含む重合成分の重合体であって、
酸基がアンモニアおよび/またはアミン類により中和されている重合体を含み、
前記重合成分は、下記一般式(1)で表される含フッ素モノマーを含有しない
ことを特徴とする、リリース剤。
一般式(1) CH
2=C(-X)C(=O)-Y-Z-Rf
(式中、Xは、水素原子、1価の有機基、ハロゲン原子、炭素数1~21の直鎖状または分岐鎖状パーフルオロアルキル基、または、シアノ基を示す。Yは、酸素原子、硫黄原子、または、第2級アミンを示す。Zは、直鎖
アルキレン基、2価有機基、炭素数6~18の芳香族基または脂環族基、または、炭素数1~10の脂肪族基を示す。Rfは、炭素数1~21の直鎖状または分岐鎖状パーフルオロアルキルを示す。)
【請求項2】
前記重合体のガラス転移温度が、25℃以上であることを特徴とする、請求項1に記載のリリース剤。
【請求項3】
酸基中和前の前記重合体の酸価が、80mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のリリース剤。
【請求項4】
前記重合体の重量平均分子量が、3,000以上220,000以下である
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のリリース剤。
【請求項5】
前記酸基がアンモニアにより中和されている
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のリリース剤。
【請求項6】
前記酸基の中和率が、60モル%以上である
ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のリリース剤。
【請求項7】
前記酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーが、リン酸基含有(メタ)アクリレートを含有する
ことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のリリース剤。
【請求項8】
前記酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーの割合が、前記重合成分の総量に対して、5質量%以上25質量%以下である
ことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のリリース剤。
【請求項9】
極性基含有樹脂の成形に用いられる
ことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のリリース剤。
【請求項10】
金属基体の表面に、請求項1~9のいずれか一項に記載のリリース剤からリリース膜を形成する工程と、
前記リリース膜に極性基含有樹脂を接触させた状態で、前記極性基含有樹脂を成形する工程と、
前記極性基含有樹脂の成形物を、前記金属基体から離す工程と
を備えることを特徴とする、樹脂成形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リリース剤、および、樹脂成形物の製造方法に関し、詳しくは、リリース剤と、そのリリース剤を用いた樹脂成形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂フィルムは、例えば、フィルム用樹脂の水溶液を、ステンレスドラムなどの金属基体に塗布および乾燥させる方法(溶液製膜法)などにより、製造されている。
【0003】
また、このような方法において、金属基体から樹脂フィルムを容易に剥離させるため、金属基体にリリース剤(易剥離剤、脱型剤など)を塗布し、リリース膜を形成することが知られている。
【0004】
リリース剤としては、例えば、水性ラテックスポリマー組成物が知られており、より具体的には、アクリル酸オクタデシル、アクリル酸メチル、アクリロニトリル、アクリル酸などのモノマーを、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ソジウムアルキルアリルスルホサクシネートなどの乳化剤の存在下で重合して得られるラテックス粒子を含む水性ラテックスポリマー組成物が、提案されている(例えば、特許文献1(実施例1~3)参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の水性ラテックスポリマーから形成されるリリース膜は、ナトリウムイオンが含まれるため、親水性が比較的高く、また、耐水性が比較的低い場合がある。
【0007】
そのため、上記の水性ラテックスポリマーから形成されるリリース膜に、フィルム用樹脂の水溶液を塗布すると、リリース膜がフィルム用樹脂の水溶液に溶出し、樹脂フィルムを汚染する場合がある。
【0008】
また、リリース膜から樹脂フィルムが剥離し難くなり、樹脂フィルムに損傷(皺、破れなど)を生じる場合がある。
【0009】
本発明は、耐水性およびリリース性に優れるリリース膜を形成でき、樹脂成形物の汚染および損傷を抑制できるリリース剤、および、そのリリース剤を用いた樹脂成形物の製造方法である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明[1]は、炭素数12~22の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートと、酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーとを含む重合成分の重合体であって、酸基がアンモニアおよび/またはアミン類により中和されている重合体を含む、リリース剤を含んでいる。
【0011】
本発明[2]は、前記重合体のガラス転移温度が、25℃以上である、上記[1]に記載のリリース剤を含んでいる。
【0012】
本発明[3]は、前記重合体の酸価が、80mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である、上記[1]または[2]に記載のリリース剤を含んでいる。
【0013】
本発明[4]は、前記重合体の重量平均分子量が、3,000以上220,000以下である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載のリリース剤を含んでいる。
【0014】
本発明[5]は、前記酸基がアンモニアにより中和されている、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載のリリース剤を含んでいる。
【0015】
本発明[6]は、前記酸基の中和率が、60モル%以上である、上記[1]]~[5]のいずれか一項に記載のリリース剤を含んでいる。
【0016】
本発明[7]は、前記酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーが、リン酸基含有(メタ)アクリレートを含有する、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載のリリース剤を含んでいる。
【0017】
本発明[8]は、前記酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーの割合が、前記重合成分の総量に対して、5質量%以上25質量%以下である、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載のリリース剤を含んでいる。
【0018】
本発明[9]は、極性基含有樹脂の成形に用いられる、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載のリリース剤を含んでいる。
【0019】
本発明[10]は、金属基体の表面に、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載のリリース剤からリリース膜を形成する工程と、前記リリース膜に極性基含有樹脂を接触させた状態で、前記極性基含有樹脂を成形する工程と、前記極性基含有樹脂の成形物を、前記金属基体から離す工程とを備える、樹脂成形物の製造方法を含んでいる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のリリース剤は、長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートと、酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーとを含む重合成分の重合体において、酸基がアンモニアおよび/またはアミン類により中和されている重合体を含んでいる。
【0021】
そのため、リリース剤中の重合体は、酸基に由来した金属基体に対する親和性と、長鎖アルキル基に由来した極性基含有樹脂に対する易分離性とを有する。
【0022】
また、リリース剤の酸基は、アンモニアおよび/またはアミン類により中和されている。アンモニアおよび/またはアミン類は、リリース剤の乾燥時に揮発し易く、除去され易い。そのため、リリース剤の酸基が、アンモニアおよび/またはアミン類により中和されていれば、揮発し難いナトリウムイオンにより中和される場合などに比べて、耐水性およびリリース性に優れるリリース膜を形成できる。
【0023】
その結果、本発明のリリース剤によれば、極性基含有樹脂からなる樹脂成形物の汚染および損傷を抑制できる。
【0024】
本発明の樹脂成形物の製造方法は、上記のリリース剤を用いるため、樹脂成形物の汚染および損傷を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、耐成形物汚染性の評価におけるA評価~C評価のIRチャートの具体例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明において、リリース剤は、脱型剤および/または易剥離剤を示し、リリースは、脱型および/または剥離を示す。
【0027】
すなわち、本発明のリリース剤は、後述する金属基体の表面をコーティングするためのコート剤であり、極性基含有樹脂(後述)の金属基体(後述)の表面への貼付きを抑制するための組成物である。
【0028】
本発明のリリース剤は、(メタ)アクリル樹脂の中和物を含んでおり、より具体的には、後述する重合成分の重合体に含まれる酸基がアンモニアおよび/またはアミン類により中和されている重合体(重合体中和物)を、含んでいる。
【0029】
なお、以下において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および/または「メタクリル」を示す。また、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」および/または「メタクリレート」を示す。
【0030】
重合成分は、重合体を構成するモノマーを含む組成物である。重合成分は、必須成分として、炭素数12~22の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートと、酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーとを含んでいる。
【0031】
炭素数12~22の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレート(以下、長鎖アルキル(メタ)アクリレート)としては、例えば、ラウリル(メタ)アクリレート(アルキル炭素数12)、トリデシル(メタ)アクリレート(アルキル炭素数13)、テトラデシル(メタ)アクリレート(アルキル炭素数14)、ペンタデシル(メタ)アクリレート(アルキル炭素数15)、ヘキサデシル(メタ)アクリレート(アルキル炭素数16)、オクタデシル(メタ)アクリレート(ステアリル(メタ)アクリレート)(アルキル炭素数18)、エイコシル(メタ)アクリレート(アルキル炭素数20)、ベヘニル(メタ)アクリレート(アルキル炭素数22)などの直鎖状の長鎖アルキル(メタ)アクリレート、例えば、2,2-ジメチルラウリル(メタ)アクリレート(アルキル炭素数14)、2,3-ジメチルラウリル(メタ)アクリレート(アルキル炭素数14)、2,2-ジメチルステアリル(メタ)アクリレート(アルキル炭素数20)、2,3-ジメチルステアリル(メタ)アクリレート(アルキル炭素数20)、2,2-ジメチルエイコシル(メタ)アクリレート(アルキル炭素数22)、2,3-ジメチルエイコシル(メタ)アクリレート(アルキル炭素数22)などの分岐鎖状の長鎖アルキル(メタ)アクリレート、例えば、シクロドデシル(メタ)アクリレート(アルキル炭素数12)などの環状の長鎖アルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0032】
これら長鎖アルキル(メタ)アクリレートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0033】
長鎖アルキル(メタ)アクリレートとして、好ましくは、直鎖状の長鎖アルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0034】
また、長鎖アルキル(メタ)アクリレートとして、好ましくは、炭素数12~20の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレート、より好ましくは、炭素数12~18の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレート、さらに好ましくは、炭素数14~18の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートが挙げられ、とりわけ好ましくは、ステアリル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0035】
長鎖アルキル(メタ)アクリレートの炭素数が上記下限を上回っていれば、極性基含有樹脂(後述)に対する優れた易分離性が得られる。
【0036】
また、長鎖アルキル(メタ)アクリレートの炭素数が上記上限を下回っていれば、金属基体(後述)に対する優れた塗布性が得られる。
【0037】
長鎖アルキル(メタ)アクリレートの含有割合は、優れた耐成形物汚染性を得る観点から、重合成分の総量に対して、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、20質量%以上、さらに好ましくは、25質量%以上であり、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下、より好ましくは、70質量%以下、さらに好ましくは、60質量%以下、さらに好ましくは、50質量%以下、さらに好ましくは、40質量%以下、とりわけ好ましくは、25質量%以下である。
【0038】
酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーにおいて、酸基としては、例えば、カルボキシ基、リン酸基、スルホン酸基などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0039】
換言すれば、酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーとしては、例えば、カルボキシ基含有エチレン性不飽和結合含有モノマー、リン酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマー、スルホン酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーなどが挙げられる。
【0040】
カルボキシ基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸などのα,β-不飽和カルボン酸またはその塩、例えば、ω-カルボキシカプロラクトンモノアクリレートなどが挙げられる。
【0041】
これらカルボキシ基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0042】
カルボキシ基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーとして、好ましくは、α,β-不飽和カルボン酸、より好ましくは、(メタ)アクリル酸が挙げられる。
【0043】
リン酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーとしては、例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート(別名:アシッドホスフォオキシエチル(メタ)アクリレート)、モノ(2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)ホスフェート、プロピルプロピレングリコールモノメタクリルアシッドフォスフェートなどのリン酸基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0044】
これらリン酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0045】
リン酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーとして、好ましくは、リン酸基含有(メタ)アクリレートが挙げられ、より好ましくは、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェートが挙げられる。
【0046】
スルホン酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーとしては、例えば、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルフォン酸、ビニルスルホン酸などが挙げられる。
【0047】
これらスルホン酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0048】
これら酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0049】
酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーの含有割合は、酸価を後述の範囲に調整し、優れた耐水性、リリース性および耐成形物汚染性を得る観点から、重合成分の総量に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは、8質量%以上、さらに好ましくは、10質量%以上であり、例えば、40質量%以下、好ましくは、35質量%以下、より好ましくは、25質量%以下、さらに好ましくは、20質量%以下である。
【0050】
また、酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーは、金属基体に対する塗布性の観点から、好ましくは、カルボキシ基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーを含有し、より好ましくは、(メタ)アクリル酸を含有し、さらに好ましくは、アクリル酸を含有する。
【0051】
なお、酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーは、カルボキシ基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーのみを含有することもできる。
【0052】
酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーが、カルボキシ基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーを含有する場合には、カルボキシ基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーの含有割合が、酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーの総量に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは、5質量%以上であり、例えば、100質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、25質量%以下、さらに好ましくは、10質量%以下である。
【0053】
また、酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーは、リリース膜(後述)の耐水性およびリリース性の観点から、好ましくは、リン酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーを含有し、より好ましくは、リン酸基含有(メタ)アクリレートを含有する。
【0054】
酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーは、とりわけ好ましくは、カルボキシ基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーと、リン酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーとを併有する。
【0055】
酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーが、リン酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーを含有する場合、リン酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーの含有割合は、酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーの総量に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは、5質量%以上であり、例えば、100質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、25質量%以下、さらに好ましくは、10質量%以下である。
【0056】
また、重合成分は、得られる重合体のガラス転移温度(後述)を調整する観点から、任意成分として、炭素数11以下の短鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートを含有することができる。
【0057】
炭素数11以下の短鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレート(以下、短鎖アルキル(メタ)アクリレート)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、へプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートなどの直鎖状の短鎖アルキル(メタ)アクリレート、例えば、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレートなどの分岐鎖状の短鎖アルキル(メタ)アクリレート、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、メチルアダマンチル(メタ)アクリレートなどの環状の短鎖アルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0058】
短鎖アルキル(メタ)アクリレートとして、好ましくは、直鎖状の短鎖アルキル(メタ)アクリレート、環状の短鎖アルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0059】
また、短鎖アルキル(メタ)アクリレートとして、好ましくは、重合体のガラス転移温度(後述)を高くする短鎖アルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0060】
重合体のガラス転移温度(後述)を高くする短鎖アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレートなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0061】
短鎖アルキル(メタ)アクリレートとしては、重合体のガラス転移温度(後述)を高くしながら、耐水性の向上を図る観点から、より好ましくは、イソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられ、さらに好ましくは、イソボルニルメタクリレートが挙げられる。
【0062】
イソボルニルメタクリレートを用いて重合体(後述)のガラス転移温度を高く調整することにより、メチルメタクリレートなどを用いる場合に比べ、リリース膜(後述)の耐水性の向上を図ることができる。
【0063】
重合成分が、短鎖アルキル(メタ)アクリレートを含有する場合、短鎖アルキル(メタ)アクリレートの含有割合は、重合成分の総量に対して、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、20質量%以上、さらに好ましくは、40質量%以上であり、例えば、80質量%以下、好ましくは、70質量%以下、より好ましくは、60質量%以下である。
【0064】
さらに、重合成分は、任意成分として、例えば、芳香環を含有するエチレン性不飽和結合含有モノマー、ヒドロキシル基を含有するエチレン性不飽和結合含有モノマーなどを含有することができる。
【0065】
芳香環を含有するエチレン性不飽和結合含有モノマーとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸フェノキシジエチレングリコール、o-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香環含有(メタ)アクリレート、例えば、スチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン系モノマーなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0066】
重合成分が、芳香環を含有するエチレン性不飽和結合含有モノマーを含有する場合、芳香環を含有するエチレン性不飽和結合含有モノマーの含有割合は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0067】
ヒドロキシル基を含有するエチレン性不飽和結合含有モノマーとしては、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1-メチル-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートが挙げられ、好ましくは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0068】
重合成分が、ヒドロキシル基を含有するエチレン性不飽和結合含有モノマーを含有する場合、ヒドロキシル基を含有するエチレン性不飽和結合含有モノマーの含有割合は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0069】
さらに、重合成分は、任意成分として、反応性乳化剤を含有することができる。
【0070】
反応性乳化剤は、分子中に炭素-炭素二重結合(C=C)を有する乳化剤である。
【0071】
すなわち、反応性乳化剤は、乳化作用を有し、分子中に炭素-炭素二重結合(C=C)を有する化合物である。
【0072】
炭素-炭素二重結合(C=C)は、例えば、アルケニル基、(メタ)アリルオキシアルキル基、(メタ)アクリロイル基などの官能基に含まれる不飽和結合である。
【0073】
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アリル基、1-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、イソプロペニル基などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0074】
これら炭素-炭素二重結合(C=C)を含む官能基は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0075】
炭素-炭素二重結合を有する乳化剤としては、上記の官能基を有する乳化剤が挙げられる。
【0076】
より具体的には、分子中に上記の官能基を少なくとも1つ有するポリオキシエチレンアルキルエーテルのスルホコハク酸エステル塩、分子中に上記の官能基を少なくとも1つ有するポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル塩(エステルナトリウム塩、エステルアンモニウム塩など)、分子中に上記の官能基を少なくとも1つ有するポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのスルホコハク酸エステル塩、分子中に上記の官能基を少なくとも1つ有するポリオキシアルキレンエーテルの硫酸エステル塩、分子中に上記の官能基を少なくとも1つ有するポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルの硫酸エステル塩、分子中に上記の官能基を少なくとも1つ有するポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル塩、分子中に上記の官能基を少なくとも1つ有する酸性リン酸(メタ)アクリル酸エステル系分散剤などが挙げられる。さらに、例えば、ロジングリシジルエステルアクリレートの酸無水物変性物(特開平4-256429号公報)、加えて、特開昭63-23725号公報に記載の分散剤、特開昭63-240931号公報に記載の分散剤、特開昭62-104802号公報に記載の分散剤などが挙げられる。
【0077】
また、反応性乳化剤は、市販品として入手することもできる。そのような市販品としては、例えば、KAYAMER PM-1(日本化薬製)、KAYAMER PM-2(日本化薬製)、KAYAMER PM-21(日本化薬製)、SE-10N(旭電化工業製)、NE-10(旭電化工業製)、NE-20(旭電化工業製)、NE-30(旭電化工業製)、ニューフロンティアA229E(第一工業製薬製)、ニューフロンティアN-117E(第一工業製薬製)、ニューフロンティアN250Z(第一工業製薬製)、アクアロンRN-20(第一工業製薬製)、アクアロンRN-2025(第一工業製薬製)、アクアロンBC-1025(第一工業製薬製)、アクアロンAR-1025(第一工業製薬製)、アクアロンHS-10(第一工業製薬製)、アクアロンKH-1025(第一工業製薬製)、エレミノールJS-2(三洋化成製)、ラテムルK-180(花王製)、ラテムルPD-104(花王製)などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0078】
重合成分が、反応性乳化剤を含有する場合、反応性乳化剤の含有割合は、重合成分の総量に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上であり、例えば、20質量%以下、好ましくは、15質量%以下である。
【0079】
そして、上記した重合成分の重合体は、例えば、上記の重合成分を、溶液重合、塊状重合、乳化重合などの公知の方法で重合させることにより得られる。
【0080】
重合方法として、好ましくは、溶液重合が挙げられる。
【0081】
溶液重合では、まず、上記の重合成分を、公知の溶媒に配合して、モノマー溶液を調製する。
【0082】
溶媒としては、例えば、水、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤などの水系溶剤などが挙げられる。
【0083】
また、溶媒としては、例えば、ヘキサン、ミネラルスピリットなどの石油系炭化水素溶剤、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ―ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ピリジンなどの非プロトン性極性溶剤などの非水系有機溶剤も挙げられる。
【0084】
これら溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0085】
溶媒として、好ましくは、水系溶剤、より好ましくは、グリコールエーテル系溶剤、さらに好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。
【0086】
溶媒の配合割合は、重合成分の総量100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、30質量部以上であり、例えば、500質量部以下、好ましくは、100質量部以下である。
【0087】
次いで、この方法では、得られたモノマー溶液を、公知のラジカル重合開始剤(例えば、アゾ系化合物、パーオキサイド系化合物など)の存在下において加熱する。これにより、重合成分を、ラジカル重合させる。また、この方法では、モノマー溶液を、一括または分割して配合することができる。
【0088】
重合条件は、重合成分の処方、ラジカル重合開始剤の種類などにより異なるが、例えば、重合温度が、例えば、30℃以上、好ましくは、60℃以上であり、例えば、150℃以下、好ましくは、120℃以下である。また、重合時間は、例えば、2時間以上、好ましくは、4時間以上であり、例えば、20時間以下、好ましくは、10時間以下である。
【0089】
これにより、上記の重合成分の重合体の溶液が得られる。
【0090】
また、上記の重合反応では、重合体の重量平均分子量を調整するため、連鎖移動剤を添加することができる。
【0091】
連鎖移動剤としては、例えば、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、メルカプトプロピオン酸ドデシルエステルなどのメルカプタン類、クメン、四塩化炭素、α-メチルスチレンダイマー、ターピノーレン、メルカプトエタノール、チオグリコール酸およびその塩などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0092】
連鎖移動剤として、好ましくは、n-ドデシルメルカプタンが挙げられる。
【0093】
連鎖移動剤の添加割合は、所望の重量平均分子量を有する重合体が得られるように、適宜設定される。
【0094】
得られる重合体の重量平均分子量は、リリース膜(後述)の耐水性の観点から、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量として、例えば、1,000以上、好ましくは、3,000以上、より好ましくは、5,000以上、さらに好ましくは、10,000以上であり、リリース性の観点から、例えば、500,000以下、好ましくは、300,000以下、より好ましくは、220,000以下、さらに好ましくは、200,000以下、とりわけ好ましくは、150,000以下である。
【0095】
なお、重量平均分子量の測定方法は、後述する実施例に準拠する。
【0096】
また、重合体のガラス転移温度は、重合体の重量平均分子量にもよるが、リリース性の観点から、例えば、-10℃以上、好ましくは、0℃以上、より好ましくは、10℃以上、さらに好ましくは、25℃以上、さらに好ましくは、50℃以上、さらに好ましくは、80℃以上、とりわけ好ましくは、100℃以上であり、リリース性の観点から、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下、より好ましくは、150℃以下である。
【0097】
なお、重合体のガラス転移温度は、重合成分の処方から、FOX式に基づいて算出される。
【0098】
また、重合体の酸価は、リリース性および耐成形物汚染性の観点から、例えば、10mgKOH/g以上、好ましくは、50mgKOH/g以上、より好ましくは、80mgKOH/g以上、さらに好ましくは、100mgKOH/g以上であり、また、リリース膜(後述)の耐水性、リリース性および耐成形物汚染性の観点から、例えば、300mgKOH/g以下、好ましくは、250mgKOH/g以下、より好ましくは、200mgKOH/g以下、さらに好ましくは、150mgKOH/g以下である。
【0099】
なお、重合体の酸価は、重合成分の処方に基づいて算出される。
【0100】
また、重合体のClogP(poly)値は、例えば、1.50以上、好ましくは、2.50以上、より好ましくは、3.00以上、さらに好ましくは、3.50以上であり、例えば、6.00以下、好ましくは、5.50以下、より好ましくは、5.00以下である。
【0101】
なお、ClogP(poly)値は、重合体に含まれる各繰り返し単位に対応する各モノマーのClogP値と、各繰り返し単位のモル分率との積の総和である。
【0102】
また、ClogP値は、n-オクタノール/水分配係数(P)の対数値であり、疎水性および親水性の度合いを示すパラメータである。
【0103】
モノマーのClogP値は、通常、計算により算出される。より具体的には、ChemBioDrawUltra14.0(Cambridge corporation社)の算出値が採用される。
【0104】
また、重合体のClogP(Poly)は、例えば、国際公開WO2016/194613号の記載に準拠して、以下の式(1)により求められる。
【0105】
ClogP(Poly)=モノマーAのClogP×繰り返し単位Aの組成比率+モノマーBのClogP×繰り返し単位Bの組成比率+・・・・ (1)
次いで、この方法では、得られた重合体を、アンモニアおよび/またはアミン類からなる中和剤により中和する。
【0106】
アミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、N-(2-ヒドロキシプロピル)-エチレンジアミン、2-アミノ-1-ブタノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、3-アミノ-1-プロパノール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、トリス(ヒドロキシエチル)-アミノメタンなどの第1級アルカノールアミン、例えば、ジエタノールアミン、メチルエタノールアミン、ブチルメタノールアミン、N-アセチルエタノールアミン、ジイソプロパノールアミンなどの第2級アルカノールアミン、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどの第3級アルカノールアミン、例えば、メチルアミン、エチルアミン、イソブチルアミン、t-ブチルアミン、シクロヘキシルアミンなど第1級アルキルアミン、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミンなどの第2級アルキルアミン、例えば、トリメチルアミンなどの第3級アルキルアミンなどが挙げられる。
【0107】
これらアミン類は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0108】
アンモニアおよび/またはアミン類として、好ましくは、アンモニアが挙げられる。
【0109】
換言すれば、上記の重合体の酸基は、好ましくは、アンモニアにより中和される。
【0110】
アンモニアは、アミン類に比べて揮発性に優れるため、後述する乾燥工程において、より効率よくアンモニアを除去し、リリース膜(後述)の耐水性の向上を図ることができる。
【0111】
アンモニアおよび/またはアミン類の配合割合は、中和率が所定範囲となるように、調整される。
【0112】
なお、中和率は、上記の重合体に含まれる酸基1モルに対する、アンモニアのモル数および/またはアミン類に含まれるアミノ基のモル数(アンモニアおよびアミン類が併用される場合、アンモニアのモル数と、アミン類に含まれるアミノ基のモル数との総量)の割合(モル割合)を示す。
【0113】
より具体的には、重合体における酸基の中和率(アンモニア・アミノ基/酸基)は、優れた耐水性、リリース性および耐成形物汚染性を得る観点から、例えば、40モル%以上、好ましくは、60モル%以上、より好ましくは、80モル%以上、さらに好ましくは、90モル%以上であり、例えば、150モル%以下、好ましくは、120モル%以下、より好ましくは、110モル%以下、さらに好ましくは、100モル%以下である。
【0114】
中和率が上記範囲であれば、リリース膜(後述)の耐水性およびリリース性の向上を図ることができ、樹脂成形物(後述)の汚染および損傷を抑制できる。
【0115】
そして、この方法では、上記のアンモニアおよび/またはアミン類(中和剤)を、上記の重合体に、一括または分割して配合し、必要に応じて、所定温度で保持する。
【0116】
中和における温度条件は、例えば、10℃以上、好ましくは、20℃以上、より好ましくは、40℃以上であり、例えば、100℃以下、好ましくは、80℃以下である。また、中和時間は、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上であり、例えば、10時間以下、好ましくは、5時間以下である。
【0117】
これにより、上記した重合体の酸基がアンモニアおよび/またはアミン類により中和された重合体(重合体中和物)の溶液が得られる。
【0118】
なお、重合体中和物の重量平均分子量は、上記した中和前の重合体の重量平均分子量と略同一である。
【0119】
また、重合体中和物のガラス転移温度は、上記した中和前の重合体のガラス転移温度と略同一である。
【0120】
また、この方法では、必要に応じて、上記の溶媒を添加または除去して、上記の溶液における重合体中和物の含有割合(固形分濃度)を調整することができる。
【0121】
これにより、重合体中和物の溶液として、リリース剤が得られる。
【0122】
重合体中和物の含有割合は、リリース剤の総量に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上であり、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。
【0123】
また、リリース剤は、さらに、添加剤を含有することができる。
【0124】
添加剤としては、例えば、非反応性乳化剤(反応性乳化剤を除く乳化剤。)、上記の重合体を除くリリース剤(公知の離型剤、易剥離剤など)、さらには、顔料、乾燥剤、防錆剤、可塑剤、塗膜表面調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、防腐剤などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。なお、添加剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0125】
例えば、非反応性乳化剤としては、アニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤などが挙げられる。
【0126】
アニオン系乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0127】
カチオン系乳化剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0128】
ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0129】
これら非反応性乳化剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0130】
非反応性乳化剤の含有割合は、上記の重合体100質量部に対して、非反応性乳化剤が、例えば、2.80質量部以下、好ましくは、2.00質量部以下、より好ましくは、1.00質量部以下である。
【0131】
耐水性の観点から、好ましくは、リリース剤は非反応性乳化剤を含有しない。
【0132】
そして、このようなリリース剤は、長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートと、酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーとを含む重合成分の重合体において、酸基がアンモニアおよび/またはアミン類により中和されている重合体を含んでいる。
【0133】
そのため、リリース剤中の上記の重合体は、酸基に由来した金属基体に対する親和性と、長鎖アルキル基に由来した極性基含有樹脂に対する易分離性とを有する。
【0134】
また、リリース剤の酸基は、アンモニアおよび/またはアミン類により中和されている。アンモニアおよび/またはアミン類は、リリース剤の乾燥時に揮発し易く、除去され易い。そのため、リリース剤の酸基が、アンモニアおよび/またはアミン類により中和されていれば、揮発し難いナトリウムイオンにより中和される場合などに比べて、耐水性およびリリース性に優れるリリース膜を形成できる。
【0135】
その結果、上記のリリース剤によれば、極性基含有樹脂からなる樹脂成形物の汚染および損傷を抑制できる。
【0136】
以下において、極性基含有樹脂からなる樹脂成形物の製造方法について、詳述する。
【0137】
極性基含有樹脂は、樹脂の分子鎖中に極性基が含まれる樹脂である。
【0138】
極性基としては、例えば、カルボニル基、水酸基、スルホン酸基、アミノ基、アミド基、イミド基、ハロゲノ基、ウレタン基などの公知の極性基が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0139】
極性基含有樹脂として、より具体的には、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)、PVP(ポリビニルピロリドン)、TCA(セルローストリアセテート)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PI(ポリイミド)、PC(ポリカーボネート)、PPO(ポリフェニレンオキサイド)、PAI(ポリアミドイミド)、PEI(ポリエーテルイミド)、PU(ポリウレタン)、PRA(ポリアリレート)、PSF(ポリスルフォン)、アラミド、APA(全芳香族ポリアミド)、PPA(ポリパラバン酸)、POD(ポリオキサジアゾール)、セロハンなどが挙げられる。
【0140】
これら極性基含有樹脂は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0141】
極性基含有樹脂として、好ましくは、PVA(ポリビニルアルコール)が挙げられる。
【0142】
樹脂成形物としては、上記の極性基含有樹脂の成形物が挙げられ、より具体的には、例えば、フィルム、モールド成形物などが挙げられ、好ましくは、フィルムが挙げられる。
【0143】
フィルムは、特に制限されないが、例えば、溶液製膜法(キャスト法)により製造される。
【0144】
以下において、樹脂成形物としてのフィルムの製造方法について、詳述する。
【0145】
この方法では、まず、金属基体の表面に、上記したリリース剤からリリース膜を形成する(リリース膜形成工程)。
【0146】
リリース膜の形成では、例えば、上記したリリース剤を、金属基体の表面に、塗布および乾燥させる。これにより、リリース剤の乾燥塗膜として、リリース膜を形成する。
【0147】
金属基体としては、樹脂成形品としてのフィルムの製造に用いられる金属基体であれば、特に制限されないが、例えば、ステンレスドラム、ステンレスベルト、鉄製金型、鋼製金型、銅合金製金型、アルミニウム合金製金型などが挙げられる。
【0148】
塗布方法としては、特に制限されず、例えば、ロールコーター、バーコーター、ドクターブレード、メイヤーバー、エアナイフなど、塗布の際に、一般的に使用される機器を用いた塗布や、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、はけ塗り、スプレー塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工といった公知の塗布方法が採用される。
【0149】
乾燥条件としては、特に制限されないが、加熱温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、60℃以上であり、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下であり、加熱時間が、例えば、0.5分以上、好ましくは、1分以上であり、例えば、60分以下、好ましくは、30分以下である。
【0150】
これにより、金属基体の表面に、リリース膜が形成される。
【0151】
リリース剤の塗布量は、特に制限されないが、リリース膜(乾燥後の量)として、例えば、0.01g/m2以上、好ましくは、0.05g/m2以上であり、例えば、2g/m2以下、好ましくは、1g/m2以下である。
【0152】
次いで、この方法では、リリース膜に極性基含有樹脂を接触させた状態で、極性基含有樹脂を成形する(樹脂成形工程)。
【0153】
より具体的には、例えば、上記した極性基含有樹脂(好ましくは、ポリビニルアルコール)を、上記した水系溶剤(好ましくは、水)に溶解し、極性基含有樹脂の溶液を調製する。
【0154】
極性基含有樹脂の濃度は、特に制限されないが、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上であり、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。
【0155】
そして、この方法では、極性基含有樹脂の溶液を、リリース膜の表面に塗布し、乾燥させる。
【0156】
樹脂溶液の塗布方法としては、特に制限されず、上記した公知の塗布方法が採用される。
【0157】
乾燥条件としては、特に制限されないが、加熱温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、60℃以上であり、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下であり、加熱時間が、例えば、0.5分以上、好ましくは、1分以上であり、例えば、60分以下、好ましくは、30分以下である。
【0158】
これにより、リリース膜の表面に、極性基含有樹脂の溶液の乾燥塗膜として、極性基含有樹脂のフィルムが形成される。
【0159】
なお、樹脂溶液の塗布量は、特に制限されず、フィルムが所望の厚みとなるように、調整される。
【0160】
フィルムの厚みは、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0161】
その後、この方法では、得られた極性基含有樹脂のフィルムを、金属基体およびリリース膜から離す(リリース工程)。
【0162】
より具体的には、この方法では、金属基体の表面に形成されたリリース膜から、極性基含有樹脂のフィルムを、剥離させる。
【0163】
これにより、極性基含有樹脂の樹脂成形物として、フィルムが得られる。
【0164】
上記した樹脂成形物の製造方法では、上記のリリース剤を用いるため、樹脂成形物の汚染および損傷を抑制できる。
【0165】
すなわち、上記のリリース剤は、長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートと、酸基含有エチレン性不飽和結合含有モノマーとを含む重合成分の重合体において、酸基がアンモニアおよび/またはアミン類により中和されている重合体を含んでいる。
【0166】
このように、リリース剤の酸基が、アンモニアおよび/またはアミン類により中和されている場合、リリース剤の乾燥時に、アンモニアおよび/またはアミン類が揮発し易く、除去され易い。
【0167】
そのため、リリース剤の酸基が、アンモニアおよび/またはアミン類により中和されていれば、揮発し難いナトリウムイオンにより中和される場合などに比べて、耐水性およびリリース性に優れるリリース膜を形成できる。
【0168】
そして、形成されるリリース膜は、リリース膜中の重合体に含まれる酸基が金属基体側に向かい、長鎖アルキル基が金属基体に対する反対側に向かうように、配向および配置される。
【0169】
より具体的には、リリース膜中の重合体に含まれる酸基と、金属基体との親和性が比較的高いため、酸基が金属基体側に向かうように、リリース膜が配置され、酸基が金属基体に吸着および固定される。
【0170】
そのため、リリース膜の表面で極性基含有樹脂を成形し、得られる樹脂成形体をリリース膜から離す(脱型、剥離など)場合、リリース膜を酸基によって固定でき、金属基体から離れることを抑制できる。その結果、上記のリリース膜は、金属基体の表面に残存できる。
【0171】
また、酸基が金属基体側に向かうように配置される一方、リリース膜に含まれる長鎖アルキル基は、金属基体に対する親和性が酸基に比べて低いため、金属基体に対して反対側に向かって伸びるように配置される。
【0172】
そのため、極性基含有樹脂をリリース膜に接触させた状態で成形すると、得られる樹脂成形物は、リリース膜の長鎖アルキル基と接触するように配置される。
【0173】
このような場合、樹脂成形物に含まれる極性基と、リリース膜の長鎖アルキル基との親和性が、比較的低いため、極性基含有樹脂からなる樹脂成形物を、リリース膜から容易に離す(脱型、剥離など)ことができる。
【0174】
なお、上記の説明では、樹脂成形物としてフィルムを例示して説明したが、樹脂成形物は、例えば、モールド成形物であってもよい。
【0175】
モールド成形物の成形方法としては、特に制限されず、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形法などの公知の成形方法が採用される。
【0176】
そして、モールド成形物の製造では、例えば、金属基体として、公知のモールド(成形用金型)を用意し、そのモールドの内面に、上記のリリース剤を塗布および乾燥させることによって、リリース膜を形成する。
【0177】
次いで、この方法では、モールドにおいて、リリース膜に上記の極性基含有樹脂を接触させた状態で、上記の極性基含有樹脂を成形し、その後、得られるモールド成形物を、金属基体から離す。
【0178】
より具体的には、この方法では、金属基体としてのモールドの表面に形成されたリリース膜から、極性基含有樹脂のモールド成形物を、脱型させる。
【0179】
このような方法でも、モールドの内面に形成されるリリース膜から、極性基含有樹脂の樹脂成形物(モールド成形物)を、容易に離すことができる。
【0180】
そのため、上記のリリース剤、および、樹脂成形物の製造方法は、例えば、包装材料分野、電子機器分野、光学機器分野、自動車用プラスチック部品分野などの産業分野において好適に用いられる。
【実施例】
【0181】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0182】
<重合体中和物>
(実施例1)
撹拌装置、温度計および還流冷却器を備えた4つ口フラスコに、ラウリルメタクリレート(LMA)25質量部、ステアリルメタクリレート(SMA)20質量部、nブチルメタクリレート(nBMA)40質量部、アクリル酸(AA)15質量部、連鎖移動剤としてのn-ドデシルメルカプタン(NDM)4質量部、および、溶剤としてのプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)35質量部を入れて撹拌した。
【0183】
次いで、フラスコ内を95℃まで加熱し、重合開始剤としてのアゾ化合物(商品名ABN-E、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、日本ファインケム社製)5質量部を添加し、95℃で4時間反応させた。これにより、重合体を得た。
【0184】
次いで、得られた重合体に、25質量%アンモニア水14.5質量部と、脱イオン水350質量部とを添加し、重合体中の酸基(カルボキシ基)を、アンモニアにより中和した。
【0185】
これにより、上記重合体中和物を含むリリース剤を得た。
【0186】
リリース剤の固形分濃度は20質量%、中和率(重合体中の酸基のモル数に対する、アンモニアのモル数の割合)は、100モル%であった。
【0187】
(実施例2~21)
表1~表3に示す処方に変更した以外は、実施例1と同じ方法で、重合体中和物を含むリリース剤を得た。
【0188】
(比較例1)
撹拌装置、温度計および還流冷却器を備えた4つ口フラスコに、脱イオン水385質量部と、非反応性乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10質量部とを入れて、撹拌した。
【0189】
次いで、フラスコ内に、ステアリルメタクリレート(SMA)35質量部、イソボルニルメタクリレート(IBXMA)60質量部、アクリル酸(AA)5質量部、および、連鎖移動剤としてのn-ドデシルメルカプタン(NDM)4質量部を入れて撹拌した。
【0190】
次いで、フラスコ内を80℃まで加熱し、重合開始剤としての過硫酸カリウム(KPS)5質量部を添加し、80℃で4時間反応させた。
【0191】
これにより、重合体およびリリース剤を得た。リリース剤の固形分濃度は22質量%であった。
【0192】
(比較例2)
撹拌装置、温度計および還流冷却器を備えた4つ口フラスコに、脱イオン水385質量部と、反応性乳化剤としてのソジウムアルキルアリルスルホサクシネート10質量部とを入れて、撹拌した。
【0193】
次いで、フラスコ内に、ステアリルメタクリレート(SMA)35質量部、イソボルニルメタクリレート(IBXMA)60質量部、アクリル酸(AA)5質量部、および、連鎖移動剤としてのn-ドデシルメルカプタン(NDM)4質量部を入れて撹拌した。
【0194】
次いで、フラスコ内を80℃まで加熱し、重合開始剤としての過硫酸カリウム(KPS)5質量部を添加し、80℃で4時間反応させた。
【0195】
これにより、重合体およびリリース剤を得た。リリース剤の固形分濃度は21質量%であった。
【0196】
(比較例3)
アンモニアに代えて水酸化ナトリウムにより重合体中の酸基(カルボキシ基)を中和した以外は、実施例1と同じ方法で、重合体中和物を含むリリース剤を得た。
【0197】
<物性>
(1)重量平均分子量
以下の条件で、酸基中和前の重合体の重量平均分子量を測定した。その結果を、表中に示す。
【0198】
すなわち、酸基中和前の重合体(サンプル)をテトラヒドロフランに溶解させ、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)によって測定し、サンプルの分子量分布を得た。
【0199】
その後、得られたクロマトグラム(チャート)から、標準ポリスチレンを検量線として、サンプルの重量平均分子量(Mw)を算出した。測定装置および測定条件を以下に示す。
・装置:GPC-101(昭和電工製)
・流量:1.0mL/min
・展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
・カラム種類:GPC KF-806L(昭和電工製)、KF-802(昭和電工製)
・カラム温度:40℃
・試料濃度:0.2質量%
・検出器:RI
・標準試料:単分散ポリスチレン(昭和電工製)
(2)酸価
各実施例および各比較例における配合処方に基づいて、酸基中和前の重合体の酸価を算出した。
【0200】
(3)ガラス転移温度
各実施例および各比較例における配合処方、および、FOX式(下記式(1))に基づいて、酸基中和前の重合体のガラス転移温度を算出した。
【0201】
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn (1)
上記式(1)において、Tgは酸基中和前の重合体のガラス転移温度(単位:K)を示し、Tgi(i=1、2、・・・n)は、重合成分に含まれる各モノマーiがホモポリマーを形成した際のガラス転移温度(単位:K)を示し、Wi(i=1、2、・・・n)は、各モノマーiの全重合成分中の質量分率を示す。
【0202】
(4)ClogP(poly)
各実施例および各比較例における配合処方、および、以下の方法により、酸基中和前の重合体のClogP(poly)値を算出した。
【0203】
すなわち、重合成分としての各モノマーのClogP値として、ChemBioDrawUltra14.0(Cambridge corporation社)の算出値を使用した。
【0204】
そして、酸基中和前の重合体のClogP(Poly)を、以下の式(1)により求めた。
【0205】
ClogP(Poly)=モノマーAのClogP×繰り返し単位Aの組成比率+モノマーBのClogP×繰り返し単位Bの組成比率+・・・・ (1)
<評価>
(1)耐水性
各実施例および各比較例で得られたリリース剤を、固形分濃度5質量%となるように蒸留水で希釈した後、ステンレス(SUS 304)製のテストピースに、バーコーター(No3)にて塗布し、80℃の乾燥機で5分間乾燥させた。これにより、テストピースにリリース膜を形成した。
【0206】
次いで、得られたリリース膜と、5uL蒸留水との接触角を、自動接触角計(DMs-601,協和界面科学製)にて測定した。
【0207】
その結果を表中に示す。
【0208】
(2)リリース性
各実施例および各比較例で得られたリリース剤を、固形分濃度5質量%となるように蒸留水で希釈した後、ステンレス(SUS 304)製のテストピースに、バーコーター(No3)にて塗布し、80℃の乾燥機で5分間乾燥させた。これにより、テストピースに塗布量(乾燥後の量)0.5g/m2のリリース膜を形成した。
【0209】
次いで、得られたリリース膜に、10質量%のポリビニルアルコール溶液を、バーコーター(No36)にて塗布し、100℃で5分感乾燥させた。これにより、膜厚10μmのポリビニルアルコールのフィルムを形成した。
【0210】
その後、得られたフィルムの剥離強度を、剥離試験機(TE-1003 テスター産業製)にて測定した。なお、剥離角度を180度とし、剥離速度を10mm/minとした。その結果を表中に示す。
【0211】
なお、評価の基準を下記する。
A+: 10mN/cm未満
A : 10mN/cm以上 40mN/cm未満
B+: 40mN/cm以上 70mN/cm未満
B : 70mN/cm以上100mN/cm未満
C :100mN/cm以上
(3)耐成形物汚染性
上記(2)の剥離試験の後において、ポリビニルアルコールのフィルムにおけるリリース膜と接触していた面を、フーリエ交換赤外分光光度計(FTIR-4600 日本分光製)にて分析した。
【0212】
そして、リリース膜に由来する赤外吸収強度(2850cm-1近傍)と、ポリビニルアルコールフィルムに由来する赤外吸収強度(1086cm-1近傍)とを比較して、以下の基準により評価した。その結果を表中に示す。
【0213】
A:リリース膜に由来する赤外吸収が確認されなかった。
【0214】
B:リリース膜に由来する赤外吸収強度 < ポリビニルアルコールフィルムに由来する赤外吸収強度
C:リリース膜に由来する赤外吸収強度 ≧ ポリビニルアルコールフィルムに由来する赤外吸収強度
A評価~C評価のIRチャートの具体例を、
図1に示す。
【0215】
なお、
図1において、A評価のIRチャートは、実施例3の評価結果を示す。
【0216】
また、
図1において、B評価のIRチャートは、実施例19の評価結果を示す。
【0217】
また、
図1において、C評価のIRチャートは、比較例3の評価結果を示す。
【0218】
【0219】
【0220】
【0221】
LMA:ラウリルメタクリレート
SMA:ステアリルメタクリレート
SA:ステアリルアクリレート
VA:ベヘニルアクリレート
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
2EHMA:2-エチルヘキシルメタクリレート
nBMA:n-ブチルメタクリレート
iBMA:イソブチルメタクリレート
IBXMA:イソボルニルメタクリレート
AA:アクリル酸
リン酸系A:2-アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
ABN-E:2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、日本ファインケム社製
NDM:n-ドデシルメルカプタン
KPS:過硫酸カリウム
非反応性乳化剤A:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
反応性乳化剤B:ソジウムアルキルアリルスルホサクシネート
NH3:アンモニア
NaOH:水酸化ナトリウム