(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】コンクリートの水平打継目処理方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/02 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
E04G21/02 103A
(21)【出願番号】P 2020027301
(22)【出願日】2020-02-20
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
(72)【発明者】
【氏名】守屋 健一
(72)【発明者】
【氏名】大橋 英紀
(72)【発明者】
【氏名】奥村 正樹
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-140468(JP,A)
【文献】特開昭64-024961(JP,A)
【文献】特開昭59-118960(JP,A)
【文献】特開2016-044393(JP,A)
【文献】特開2011-117235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/02
E02D 15/00-15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを上方向に向けて順次層状に打設して行くに当たって、打設途中に生じる水平打継目の処理方法であって、
前記水平打継目に至る下段側最終層のコンクリート打設において、超遅延剤を添加したコンクリートの層を打設する第1手順と、
所定時間の経過後に、前記水平打継目から開始する初層のコンクリート打設において、硬化促進剤を添加したコンクリートの層を打設する第2手順と、
前記超遅延剤を添加したコンクリートの層と前記硬化促進剤を添加したコンクリートの層とを撹拌混合する第3手順と、
その上層にコンクリートを上方向に向けて順次層状に打設して行く第4手順とからなることを特徴とするコンクリートの水平打継目処理方法。
【請求項2】
前記超遅延剤の添加率は、前記第3手順の撹拌混合時に前記超遅延剤を添加したコンクリート層の貫入抵抗値が0.1N/mm2以下となることを基準として決定する請求項1記載のコンクリートの水平打継目処理方法。
【請求項3】
前記超遅延剤及び前記硬化促進剤の溶液は単位水量の一部として換算しコンクリート中に混合する請求項1、2いずれかに記載のコンクリートの水平打継目処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートを上方向に順次層状に打設して行くに当たって、打設途中に生じる水平打継目の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、土木工事等において大規模なコンクリート構造物を構築するに当たって、コンクリートを上方向に向けて順次層状に打設して行くことになる。この際、1日のコンクリート打設が完了したならば、日付を跨いでコンクリート打設を再開することになるため、打設済みコンクリートと新規コンクリートとの境界面(水平打継目)の処理がコンクリート品質を確保する上で重要となる。
【0003】
従来は、専らある程度硬化した下層側コンクリートの表面(水平打継目となる)をワイヤーブラシやチッピング等によりレイタンスを除去した後(グリーンカット処理という。)、上層にコンクリートを打設する方法が採用されていたが、この方法は基本的に手作業となるため、多くの手間と時間が掛かるとともに、粉塵の発生を伴うため環境防止対策が必要になるなどの問題があった。
【0004】
そこで、近年は凝結遅延剤や打継目処理剤を用いた処理方法が提案され実用化されている。前者の凝結遅延剤は、例えば下記非特許文献1に示されるように、コンクリートを打設後、ブリーディング水がなくなった頃を見計らって、噴霧器などによりコンクリート面に均一になるように凝結遅延剤を散布したならば養生マットやシートなどで養生を行い、打設から6~24時間経過後に高圧洗浄機で表面薄層部の洗い出し(レイタンス処理)を行った後、次のコンクリートの打設を行うようにするものである。
【0005】
後者の打継目処理剤は、例えば下記非特許文献2に示されるように、コンクリートの打設後にブリーディング水が引き終わる前に打継目処理剤を散布し、所定時間の養生の後に、次のコンクリートの打設を行うようにするものである。この打継目処理剤の場合は、打継目処理剤の散布により打継ぎ部に強固なポリマーコンクリート層を形成するためレイタンス層の除去処理作業が不要になるなどの利点を有するようになる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】“ルガゾールC コンクリート打継目処理剤(表面凝結遅延剤)”株式会社サンヒット商会、[令和2年2月12日検索]、インターネット<URL: http://www.sunhit.co.jp/pdf/ruga.pdf >
【文献】“コンクリート打継ぎ面処理剤 ジョイントエースJA-40”、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社、[令和2年2月12日検索]、インターネット<URL:https://www.lion-specialty-chem.co.jp/ja/catalog/06/sja40.php>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記凝結遅延剤を用いる方法の場合は、コンクリート打設終了後に凝結遅延剤を散布する作業と、翌日に高圧水によってレイタンスの除去作業とを必要するため、多くの作業手間と時間が掛かるとともに、連続日でのコンクリート打設が実質的に困難であるなどの問題があった。
【0008】
一方、前記打継目処理剤を用いる方法の場合は、レイタンスの除去作業が無くなる点で作業効率が改善されるが、コンクリート打設終了後に打継目処理剤を散布する作業が依然として必要になるなどの問題があった。
【0009】
そこで本発明の主たる課題は、コンクリートを上方向に向けて順次層状に打設して行くに当たって、打設途中に生じる水平打継目の処理方法に関して、従来よりも省力的に打継作業が行えるようにするとともに、水平打継部におけるコンクリートの一体化を更に向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、コンクリートを上方向に向けて順次層状に打設して行くに当たって、打設途中に生じる水平打継目の処理方法であって、
前記水平打継目に至る下段側最終層のコンクリート打設において、超遅延剤を添加したコンクリートの層を打設する第1手順と、
所定時間の経過後に、前記水平打継目から開始する初層のコンクリート打設において、硬化促進剤を添加したコンクリートの層を打設する第2手順と、
前記超遅延剤を添加したコンクリートの層と前記硬化促進剤を添加したコンクリートの層とを撹拌混合する第3手順と、
その上層にコンクリートを上方向に向けて順次層状に打設して行く第4手順とからなることを特徴とするコンクリートの水平打継目処理方法が提供される。
【0011】
上記請求項1記載の発明では、水平打継目に至る下段側最終層のコンクリート打設において、超遅延剤を添加したコンクリートの層を打設し(第1手順)、所定の時間後に(打継ぎ間隔:1~3日程度)、前記水平打継目から開始する初層のコンクリート打設において、硬化促進剤を添加したコンクリートの層を打設し(第2手順)、前記超遅延剤を添加したコンクリートの層と前記硬化促進剤を添加したコンクリートの層とを撹拌混合するものである(第3手順)。
【0012】
前記超遅延剤はコンクリート中に添加して打設するため散布手間が無くなるとともに、前記硬化促進剤もコンクリート中に添加して打設するため散布手間がなくなる。そして、これら超遅延剤を添加したコンクリートの層と硬化促進剤を添加したコンクリートの層とを撹拌混合する手間は必要となるが、バイブレーター掛けと同等の作業手間であり、併行して行うことで作業の遅延を招くことも無くなる。後述の実験例で示すように、超遅延剤を添加したコンクリートの層と硬化促進剤を添加したコンクリートの層とが撹拌混合されたコンクリート層は圧縮強度を高く、色むらの発生もかなり低減されて外観も良好となり、コンクリートの一体化が従来のものよりも更に向上したものとなる。
【0013】
請求項2に係る本発明として、前記超遅延剤の添加率は、前記第3手順の撹拌混合時に前記超遅延剤を添加したコンクリート層の貫入抵抗値が0.1N/mm2以下となることを基準として決定する請求項1記載のコンクリートの水平打継目処理方法が提供される。
【0014】
上記請求項2記載の発明は、前記超遅延剤の添加率の決定方法について規定したものである。一般的に打継ぎ時のコンクリート貫入抵抗値が0.1N/mm2以上となると打継目にコールドジョイントが発生することが知られている。従って、超遅延剤の添加率を決定するに当たって、超遅延剤を添加したコンクリートの層と硬化促進剤を添加したコンクリートの層と撹拌混合時にコンクリート層の貫入抵抗値が0.1N/mm2以下であることを一つの基準とすることができる。
【0015】
請求項3に係る本発明として、前記超遅延剤及び前記硬化促進剤の溶液は単位水量の一部として換算しコンクリート中に混合する請求項1、2いずれかに記載のコンクリートの水平打継目処理方法が提供される。
【0016】
上記請求項3記載の発明は、前記超遅延剤及び前記硬化促進剤の溶液は単位水量の一部として換算しコンクリート中に混合することを規定したものである。本方法では、前記超遅延剤及び前記硬化促進剤の溶液を散布ではなくコンクリート中に添加するものであるため、単位水量の増加にならないように単位水量の一部として換算することが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上詳説のとおり本発明によれば、コンクリートを上方向に向けて順次層状に打設して行くに当たって、打設途中に生じる水平打継目の処理方法に関して、従来よりも省力的に打継ぎ作業が行えるようになるとともに、水平打継ぎ部におけるコンクリートの一体化を更に向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るコンクリートの水平打継目処理方法に係るコンクリート断面図である。
【
図2】水平打継目処理方法の手順図(その1)である。
【
図3】水平打継目処理方法の手順図(その2)である。
【
図4】水平打継目処理方法の手順図(その3)である。
【
図5】貫入抵抗値0.1N/mm2が得られる時間と超遅延剤添加率との関係を示すグラフである。
【
図6】実施例における圧縮強度試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0020】
本発明は、
図1に示されるように、コンクリートを上方向に向けて順次層状に打設して行くに当たって、打設途中に生じる水平打継目1の処理方法であって、具体的には下記の手順によるものである。
【0021】
(第1手順)
第1手順では、
図2に示されるように、前記水平打継目1に至る下段側最終層のコンクリート打設において、超遅延剤を添加したコンクリートの層3を打設する。
【0022】
コンクリートの打設工程では、事前に構造物の規模や形状に基づき、1日のコンクリート打設能力を勘案しながら、コンクリート打設割の計画が決定される。
【0023】
1日のコンクリート打設作業は、通常バイブレータによって締固めを行いながら作業となるため、1日のコンクリート打設高さを2層以上に分けて打ち込むようにするのが普通である。この際、1層のコンクリート打設高さは締固め能力等を考慮して決定されるが、コンクリートの打込みの1層の高さh1は40~50cm以下を標準としている。
【0024】
コンクリートに使用するセメントの種類は、特に限定されるものではないが、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、低発熱ポルトランドセメントなどの各種ポルトランドセメント、及び高炉スラグセメント、フライアッシュセメント、シリカセメントなどの混合セメントなどを用いることができる。なお、リグニンスルホン酸塩系やポリオール系、オキシカルボン酸塩系などの一般的な減水剤や高性能減水剤及び高性能AE減水剤を使用することが望ましい。中でも、減水率の大きいポリアルキルアリルスルホン酸塩系やメラミン樹脂スルホン酸塩系などの高性能減水剤、ポリカルボン酸塩系の高性能AE減水剤が好ましい。なお、図中では鉄筋や型枠などについては図示を省略し、コンクリート部分のみを示している。
【0025】
前記超遅延剤とは、添加することによりコンクリートの凝結速度を任意に調整する(遅くする)ことができる添加剤であり、セメント粒子の表面に吸着して水とセメントの接触を一時的に遮断してコンクリートの凝結を遅延させるものである。JIS A 0203によれば、セメントの水和反応を遅らせ、凝結に要する時間を長くするために用いる混和剤が凝結遅延剤であると定義されている。凝結遅延剤は一般に遅延剤と超遅延剤に分類され、数時間以内の短時間の遅延作用を示す混和剤を遅延剤と呼び、数時間から数日間の長時間の遅延作用を有する混和剤を超遅延剤と呼んでいる。本発明で使用するものは後者の「超遅延剤」である。
【0026】
超遅延剤は、概ね無機系化合物と有機系化合物とに分類される。前者の無機系化合物の超遅延剤としては、塩化亜鉛、炭酸化亜鉛、一酸化鉛、リン酸塩、ケイフッ化物、ホウ砂、マグネシア塩等がある。後者の有機系化合物の超遅延剤としては、糖類やその誘導体、リグニンスルホン酸塩、有機酸やその酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩などのオキシカルボン酸塩、セルロース誘導体、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子類などが挙げられる。一般的に、有機系化合物の遅延剤は無機系化合物よりも大きく超遅延剤として使用する場合は有機系化合物が有利とされている。
【0027】
前記超遅延剤の添加率は、前記第3手順の撹拌混合時に前記超遅延剤を添加したコンクリートの層3の貫入抵抗値が0.1N/mm2以下となることを基準として決定することが望ましい。水平打継ぎを行う場合、貫入抵抗値が0.1N/mm2以上になるとコールドジョイントが発生すると言われている。従って、所定の時間を空けた後のコンクリート打設開始時に前記超遅延剤を添加したコンクリート層3の貫入抵抗値が0.1N/mm2以下となるように管理することが望ましい。
【0028】
打継ぎの間隔(時間)については、概ね24時間から72時間となっており、時間の幅が大きい。前記超遅延剤を添加したコンクリート層3の貫入抵抗値が0.1N/mm2以下となるように管理するために、
図5に示されるように、事前に室内試験を行い、貫入抵抗値0.1N/mm2が得られる時間と使用する超遅延剤添加率との関係を示すグラフを得ておくことが望ましい。このようなグラフを得ておくことにより、打継ぎの間隔が変わっても超遅延剤の添加率を簡単に決定することが可能になる。なお、前記貫入抵抗値の測定は、JIS A 1147コンクリートの凝結時間試験方法によって測定することができる。
【0029】
また、前記超遅延剤の溶液の添加によって単位水量が増加するのを防止するため、超遅延剤溶液の添加量は単位水量の一部として換算しコンクリート中に混合することが望ましい。
【0030】
前記超遅延剤を添加したコンクリート層3の高さh2は、後述する第3手順での撹拌を考慮して、標準的なコンクリート2の打込みの1層の高さh1の1/2~1/3程度の高さとすることが望ましい。
【0031】
(第2手順)
第2手順では、所定時間の経過後に、すなわち打継ぎ間隔の時間が経過した後に、前記水平打継目1から開始する初層のコンクリート打設において、硬化促進剤を添加したコンクリートの層4を打設する。
【0032】
前記硬化促進剤とは、セメントから溶出する水和生成物の形成を促進することでコンクリートの硬化を促進する添加剤であり、JIS A 6204コンクリート用化学混和剤の中の一つとして規定されている。
【0033】
前記硬化促進剤は、概ね無機系化合物ろ有機系化合物とに分類される。前者の無機化合物の硬化促進剤としては、塩化カルシウムなどの塩化物(無筋コンクリートに限定される。)、硝酸塩や亜硝酸塩、溶解度の高い硫酸塩や亜硫酸塩及び明礬類や明礬石などのアルミニウム化合物、チオ硫酸塩やチオシアン酸塩、さらにクロム酸塩などが知られている。後者の有機系化合物の硬化促進剤としては、ギ酸塩や酢酸塩、アミノ酸化合物が知られている。
【0034】
硬化促進剤の添加量については、硬化促進剤の種類によって大きく異なるが、概ね結合材(セメント)重量に対して1~5重量%である。前記超遅延剤を添加したコンクリートの層3部分を早期に硬化させるために通常よりも多く添加することになる。いずれにしても、目標とするコンクリートのワーカビリティが得られるように試験練りを行って確認することが望ましい。
【0035】
前記硬化促進剤を添加したコンクリートの層4の高さh3は、後述する第3手順での撹拌を考慮して、標準的なコンクリート2の打込みの1層の高さh1の1/2~1/3程度の高さとすることが望ましい。
【0036】
(第3手順)
第3手順では、
図3に示されるように、前記超遅延剤を添加したコンクリートの層3と、前記硬化促進剤を添加したコンクリートの層4とを撹拌混合する。使用する撹拌機6としては、作業員が手で持ち操作できる程度のものを用いることが望ましい。先端の撹拌羽根部分をコンクリート内に挿入し水平方向に移動させて、前記超遅延剤を添加したコンクリートの層3と前記硬化促進剤を添加したコンクリートの層4とを撹拌混合する。
【0037】
(第4手順)
その後は、標準的なコンクリート打設に従って、前記超遅延剤を添加したコンクリートの層3と前記硬化促進剤を添加したコンクリートの層4とを撹拌混合した層の上層側に、コンクリート5を上方向に向けて順次層状に打設して行く。なお、コンクリート5の打込みの1層の高さh4は40~50cm以下を標準とする。
【実施例】
【0038】
次に、本発明に係るコンクリートの水平打継目処理方法によって得られたコンクリート供試体と、他の水平打継目処理方法によって得られたコンクリート供試体とについて圧縮強度試験等を行い、本発明方法の効果を検証した。また、使用するフローリック社製の超遅延剤について、貫入抵抗値0.1N/mm2が得られる時間と超遅延剤添加率との関係を示すグラフ(
図5)を得るようにした。
【0039】
1.コンクリートの配合
使用したコンクリートの配合を表1に示す。
【表1】
【0040】
2.貫入抵抗値0.1N/mm2が得られる時間と超遅延剤添加率との関係グラフ
使用するフローリック社製の超遅延剤について、貫入抵抗値0.1N/mm2が得られる時間と超遅延剤添加率との関係を示すグラフを得た。超遅延剤の添加率はC×(0、0.40、0.55、0.70、0.85)の5点について行った。その結果を
図5に示す。参考のために他社の2つの超遅延剤(A社製とB社製)について、添加率:C×0.7%のみについても貫入抵抗値試験を行った。なお、超遅延剤については、単位水量の一部とし、コンクリート練上りの直後に添加した。
【0041】
図5において、打設間隔の時間が決まったならば、その時間に水平線を引き、関係曲線との交点の超遅延剤添加率よりも多くの量を添加すれば良いことがグラフから簡単に求めることができる。なお、図中に打設間隔を40時間とした場合について示した。この場合は、曲線との交点が添加率が0.75%であるため、超遅延剤の添加率は0.80%とすれば良いことが分かる。
【0042】
3.圧縮試験
(1)使用した超遅延剤および硬化促進剤について
使用した超遅延剤および硬化促進剤は下表2のとおりとした。
【表2】
【0043】
コンクリートの供試体の試験項目は下表3のとおりとした。
【表3】
圧縮試験の供試体1~3の形状は、いずれもφ150×300とした。供試体1は、高さ方向に3分割し、下層の高さ100mmに遅延剤0.8%を添加したコンクリートを充填し、中間層及び上層の200mmの空間にベースコンクリート(con1)を充填した。供試体2は高さ方向に3分割し、下層の高さ100mmに遅延剤0.8%を添加したコンクリートを充填し、40時間経過後に中間層の高さ100mmに硬化促進剤5%を添加したコンクリートを充填し、上層の高さ100mmにベースコンクリート(con1)を充填した。供試体3は高さ方向に3分割し、下層の高さ100mmに遅延剤0.8%を添加したコンクリートを充填した後、40時間経過後に中間層の高さ100mmに硬化促進剤5%を添加したコンクリートを充填し、遅延剤0.8%を添加したコンクリートと混合撹拌し、上層の高さ100mmにベースコンクリート(con1)を充填した。
【0044】
これら供試体1~3について、圧縮試験を行った結果を
図6に示す。供試体1や供試体2と比較して、本発明に係る供試体3の圧縮強度が3日、7日、14日及び28日強度のいずれのケースにおいても、最も高くなった。
【0045】
また、外観的に供試体1、2はいずれも色むらが認められたが、供試体3については色むらも無く綺麗な表面となっていた。
【符号の説明】
【0046】
1…水平打継目、2・5…コンクリート、3…超遅延剤を添加したコンクリートの層、4…硬化促進剤を添加したコンクリートの層、6…撹拌機