(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】噴射装置の泡吐出部構造
(51)【国際特許分類】
B05B 1/02 20060101AFI20231212BHJP
B05B 11/00 20230101ALN20231212BHJP
B65D 47/34 20060101ALN20231212BHJP
【FI】
B05B1/02 101
B05B11/00 102B
B65D47/34 100
(21)【出願番号】P 2020034333
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100113169
【氏名又は名称】今岡 憲
(72)【発明者】
【氏名】先曽 洋一
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-171338(JP,A)
【文献】特開2017-213523(JP,A)
【文献】特開2011-245435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00- 3/18
7/00- 9/08
11/00-11/10
B65D35/44-35/54
39/00-55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性を有する液体を泡状にして吐出する噴射装置の液体射出経路の下流側に装備された管部材(12)と、
この管部材(12)の先部(12b)に回転可能に取り付けられた発泡ノズル(20)とからなり、
前記発泡ノズル(20)は、前記管部材(12)の軸方向(О)に直交する基壁部(24)を有する基部材(22)と、
前記基壁部(24)と向かい合う隔壁部(42)を有し、
この隔壁部(42)と
前記基壁部(24)との間に周囲から区画された空間(R)を画成する区画体(40)と、
前記隔壁部(42)の外側に設けられ、前記空間(R)を経由して前記管部材(12)に連通する吐出孔(54)を有し、この吐出孔(54)から霧状の液体を吐出する吐出チップ(50)と、
前記吐出チップ(50)の外側に配置された発泡筒(66)を有する発泡部材(60)と
を具備し、かつ前記吐出孔(54)と
前記発泡筒(66)とで泡吐出口(A)を形成しており、
前記管部材(12)に対する
前記発泡ノズル(20)の回転操作により、
前記管部材(12)の内部から前記空間(R)に至る流路(P)の開閉を可能とした噴射装置の泡吐出部構造において、
前記隔壁部(42)と
前記基壁部(24)との間に、前記管部材(12)の軸方向(О)から見て、前記空間(R)を、第1分室(R1)と第2分室(R2)とに区分する仕切り壁(38)を形成し、
前記基壁部(24)に、前記管部材(12)を
前記第1分室(R1)に連通させる第1貫通孔(34A)と、前記管部材(12)を
前記第2分室(R2)に連通させる第2貫通孔(34B)とをそれぞれ形成するとともに、
前記泡吐出口(A)として、前記第1分室(R1)に通ずる単一の第1泡吐出口(A1)と、前記第2分室(R2)に通ずる複数の第2泡吐出口(A2)とを形成して
おり、
前記管部材(12)は、前記先部(12b)の内側に、前記管部材(12)と同心状に支承させた軸部(16)を有し、
前記軸部(16)を前記基壁部(24)から突設する嵌合筒部(30)内に相対的に回転可能に嵌合させ、
前記嵌合筒部(30)の内周面に前記管部材(12)の基部(12a)側と連続する連通凹部(32)を形成するとともに、前記軸部(16)の外周面に、周方向に離間させて、主連通溝(18A)及び副連通溝(18B)を形成しており、
これら主連通溝(18A)及び副連通溝(18B)は、前記管部材(12)の管径方向から見て前記連通凹部(32)と重なるように配置されており、
かつ、前記発泡ノズル(20)を特定の角度位置に回転させたときに、前記主連通溝(18A)及び前記副連通溝(18B)の一方が前記第1分室(R1)へ、また他方が前記第2分室(R2)へそれぞれ連続するように設けたことを特徴とする噴射装置の泡吐出部構造。
【請求項2】
前記管部材(12)の軸方向(О)から見て、
前記第2分室(R2)が
前記第1分室(R1)より広くなるように、前記仕切り壁(38)を形成したことを特徴とする、
請求項1
に記載の噴射装置の泡吐出部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射装置の泡吐出部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗剤や整髪料などの発泡性を有する液体を収納した容器体に装着されたポンプ式の噴射装置として、前記容器体内の液体を吸い上げて、射出筒から圧送するように構成し、この射出筒の先端に付設した泡吐出部構造により、液体を霧化し、発泡させて外方へ突出するように構成した装置が知られている(特許文献1)。
前記泡吐出部構造は、前記射出筒に、管壁の基部を嵌挿させるとともに、管壁の先部内に軸部を支承させた管部材(スピンエレメント)と、前記管壁の基部に回転可能に取り付けた発泡ノズルとからなり、この発泡ノズルに、前記軸部に回転可能に組み付けた吐出チップを一体的に組み付けている。
この吐出チップは、前記軸部の周面に嵌合させた嵌合筒部の先端に内向きフランジを付設し、この内向きフランジと軸部の先端面との間にスピン機構を形成するとともに、内向きフランジのフランジ孔である吐出孔の周りから発泡筒を外方へ突出している。
こうすることにより、射出筒からスピン機構内へ流入する液体を、前記吐出孔から円錐状の霧として噴射させ、この霧が発泡筒に衝突して発泡するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば発泡性の液体を目的面に射出するときには、一度の操作でより広い面に吹き付けることが望まれる場合がある。
特許文献1の装置では、単一の操作でより広い面に吹き付けるためには、吐出孔から霧状に吐出された液体が発泡筒の内面に当たる度合いを減らし、より広い角度で吐出されるような構成にする必要がある。
しかしながら、そのような構成とすると、その分、霧状の液体に混合される空気の量が減り、液体の泡立ちが弱くなり、泡質が低下する可能性があるという問題点がある。
その反面、用途によっては、広い面に吹き付ける必要がない場面も存在する。
【0005】
本発明の目的は、単数の泡吐出口の噴射モードと、複数の泡吐出口からの噴射モードとを選択でき、泡質を下げずに広角に噴射できる泡吐出部構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の手段は、発泡性を有する液体を泡状にして吐出する噴射装置の液体射出経路の下流側に装備された管部材12と、
この管部材12の先部12bに回転可能に取り付けられた発泡ノズル20とからなり、
前記発泡ノズル20は、前記管部材12の軸方向Оに直交する基壁部24を有する基部材22と、
前記基壁部24と向かい合う隔壁部42を有し、この隔壁部42と前記基壁部24との間に周囲から区画された空間Rを画成する区画体40と、
前記隔壁部42の外側に設けられ、前記空間Rを経由して前記管部材12に連通する吐出孔54を有し、この吐出孔54から霧状の液体を吐出する吐出チップ50と、
前記吐出チップ50の外側に配置された発泡筒66を有する発泡部材60と
を具備し、かつ前記吐出孔54と前記発泡筒66とで泡吐出口Aを形成しており、
前記管部材12に対する前記発泡ノズル20の回転操作により、前記管部材12の内部から前記空間Rに至る流路Pの開閉を可能とした噴射装置の泡吐出部構造において、
前記隔壁部42と前記基壁部24との間に、前記管部材12の軸方向Оから見て、前記空間Rを、第1分室R1と第2分室R2とに区分する仕切り壁38を形成し、
前記基壁部24に、前記管部材12を前記第1分室R1に連通させる第1貫通孔34Aと、前記管部材12を前記第2分室R2に連通させる第2貫通孔34Bとをそれぞれ形成するとともに、
前記泡吐出口Aとして、前記第1分室R1に通ずる単一の第1泡吐出口A1と、前記第2分室R2に通ずる複数の第2泡吐出口A2とを形成しており、
前記管部材12は、前記先部12bの内側に、前記管部材12と同心状に支承させた軸部16を有し、
前記軸部16を前記基壁部24から突設する嵌合筒部30内に相対的に回転可能に嵌合させ、
前記嵌合筒部30の内周面に前記管部材12の基部12a側と連続する連通凹部32を形成するとともに、前記軸部16の外周面に、周方向に離間させて、主連通溝18A及び副連通溝18Bを形成しており、
これら主連通溝18A及び副連通溝18Bは、前記管部材12の管径方向から見て前記連通凹部32と重なるように配置されており、
かつ、前記発泡ノズル20を特定の角度位置に回転させたときに、前記主連通溝18A及び前記副連通溝18Bの一方が前記第1分室R1へ、また他方が前記第2分室R2へそれぞれ連続するように設けた。
【0007】
本手段では、
図1に示す如く、噴射装置の液体射出経路(図示例では射出筒4)の下流側に装備された管部材12と、この管部材12の先部12bに回転可能に取り付けられた発泡ノズル20とからなる泡吐出部構造を開示している。
前記発泡ノズル20は、前記管部材12の軸方向Оに直交する基壁部24を有する基部材22と、基壁部24と向かい合う隔壁部42を有し、隔壁部42と基壁部24との間に周囲から区画された空間Rを画成する区画体40とを具備する。
そして前記隔壁部42と基壁部24との間に、前記管部材12の軸方向Оから見て、前記空間Rを、第1分室R1と第2分室R2とに区分する仕切り壁38を形成している。
またこれら第1分室R1及び第2分室R2をそれぞれ基壁部24に穿設した貫通孔を介して前記管部材12に連通させるとともに、前記第1分室R1に通ずる単一の第1泡吐出口A1と、前記第2分室R2に通ずる複数の第2泡吐出口A2とを形成している。
この構造によれば、単一の第1泡吐出口A1から泡を吐出するモード(
図6(D)参照)及び複数の第2泡吐出口A2から泡を吐出するモード(
図6(B)参照)を状況に応じて使い分けることができる。より広い角度へ泡を噴射したいときには、その用途にした複数の吐出口を選択すればよく、そうすることで、泡の質が低下することを回避することができる。
また本手段では、図2に示す如く管部材12の内部から前記空間Rに至る流路Pの一部として、前記嵌合筒部30の内周面に前記管部材12の基部12a側と連続する連通凹部32を形成している。
また前記軸部16の外周面に、周方向に離間させて、主連通溝18A及び副連通溝18Bを形成している。
そして、発泡ノズル20を特定の角度位置に回転させたときに、管部材12の基部12a側と連続する連通凹部32と重なる主連通溝18A及び副連通溝18Bの一方が第1分室R1へ、また他方が第2分室R2へそれぞれ連続するように設けている。
この構造によれば、発泡ノズル20の使用態様として、単一の第1泡吐出口A1及び複数の第2泡吐出口A2の双方から泡を吐出するモード(図6(C)参照)を選択することができ、利便性が向上する。
【0010】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ前記管部材12の軸方向Оから見て、前記第2分室R2が前記第1分室R1より広くなるように、前記仕切り壁38を形成した。
【0011】
本手段では、
図6(A)に示す如く、前記管部材12の軸方向Оから見て、複数の第2泡吐出口A2と連続する第2分室R2が、単数の泡吐出口Aと連続する第1分室R1より広くなるように、前記仕切り壁38を形成している。
この構造によれば、泡吐出口の配置を無理なく行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
第1の手段に係る発明によれば、発泡ノズル20の隔壁部42と基壁部24との間に、管部材12の軸方向Оから見て、前記隔壁部42及び基壁部24の間に形成される空間Rを、第1分室R1と第2分室R2とに区分する仕切り壁38を形成し、前記第1分室R1に通ずる単一の第1泡吐出口A1と、前記第2分室R2に通ずる複数の第2泡吐出口A2とを形成したから、泡質を低下させることなく、単一の吐出口からの吐出モードと、より広い角度への噴射に適した複数の吐出口からの吐出モードとを選択することができる。
また第1の手段に係る発明によれば、発泡ノズル20を特定の角度位置に回転させたときに、管部材12の基部12a側と連続する連通凹部32と重なる主連通溝18A及び副連通溝18Bの一方が第1分室R1へ、また他方が第2分室R2へそれぞれ連続するように設けたから、発泡ノズル20の使用態様として、単一の第1泡吐出口A1及び複数の第2泡吐出口A2の双方から泡を吐出するモードを選択することができ、利便性が向上する。
第2の手段に係る発明によれば、前記管部材12の軸方向Оから見て、複数の第2泡吐出口A2と連続する第2分室R2が、単数の泡吐出口Aと連続する第1分室R1より広くなるようにしたから、泡吐出口の配置を無理なく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る泡吐出部構造を備えた噴射装置の全体図である。
【
図2】
図1の泡噴出部構造の主要部を側方から見た断面図である。
【
図4】
図1の泡噴出部構造の主要部を上方から見た断面図である。
【
図5】
図1の泡噴出部構造の発泡ノズルの一部品(基部材)の斜視図である。
【
図6】
図1の泡噴出部構造の作用の説明図であり、同図(A)は全ての泡吐出口が閉であるモードを、同図(B)は一対の第2泡吐出口から泡が吐出されるモードを、同図(C)は単一の第1泡吐出口及び一対の第2泡吐出口から泡が吐出されるモードを、同図(D)は単一の第1泡吐出口が吐出されるモードをそれぞれ示している。
【
図7】
図4と同じ方向から見た、一対の第2泡吐出口から泡が吐出される状態を、チップペアの変形を強調して表した説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1から
図7は、本発明の実施形態に係る噴射装置の泡吐出部構造及び当該泡吐出部構造を備えた噴射装置を示している。
図1には当該噴射装置1の全体図が示されている。泡吐出部構造以外の噴射装置の構造は従来公知であり、まず公知の構造を簡単に説明する。
前記噴射装置は、容器体の口頸部(図示せず)に使用するためのものであり、符号3で示す、縦方向に延びる主筒(図示例では内筒部3aと外筒部3bとからなる)を有し、その主筒の下部に、前記口頸部の外面へ装着させるための装着キャップ2が取り付けられている。
前記主筒3の上端部からは、射出筒4が前方へ突設されている。
なお、本明細書では、説明の便宜上、
図1の右方を“後”と、左方を“前”と、これらに直交する方向を“左右”と称する。
前記射出筒4の下方に位置させて、前記主筒3と連通するシリンダ5が前方へ突設されており、このシリンダ5内にピストン6が前後動可能に嵌合されている。前記射出筒4の前部からは、前後方向への揺動可能なトリガー7の上端部が枢着されている。このトリガー7は付勢手段により、前方へ付勢されており、このトリガー7に前記ピストンの前部を連係させている。
前記主筒3の内部には、第1逆止弁V1及び第2逆止弁V2が配置されており、トリガー7の操作により、容器体内の液体を、第1逆止弁V1を介してシリンダ5内に吸い込むとともに、シリンダ5内から第2逆止弁V2を介して射出筒4側へ圧送するように構成している。8は、カバー部材である。
もっとも、噴射装置は、容器体から液体を吸込み、射出筒4から吐出することができればどのような構造でも構わない。例えばトリガー式ではなくてもよい。
【0015】
本発明において、前記泡吐出部構造10は、前記射出筒4の先端(前端)側に装着して使用される。
前記泡吐出部構造10は、
図1に示す如く、管部材12と発泡ノズル20とからなる。
【0016】
前記管部材12は、前記射出筒4と発泡ノズル20とを連結するとともに、射出筒4の内部を発泡ノズル20に連通させる部材である。
前記管部材12の基部12aは前記射出筒4の前部内に嵌合されており、また管部材12の先部12bは前記発泡ノズル20の後部に連結されている。
図示例では、
図2に示す如く、前記基部12aを小径管部に形成するとともに、この小径管部の前端に外向きフランジ13が付設されており、この外向きフランジ13から、先部12bである大径管部を前方へ突設している。図示の大径管部は前記小径管部に対して下側へ偏心されている。
先部12b内には、この先部に対して同心状で軸部16が支承されている。
図示例の軸部16は、前端閉塞の円筒形に形成されているが、丸棒状に形成しても構わない。
前記軸部16の外周面の前部には、軸部の周方向の一部(図示例では、
図1の状態での軸部16の上面)に位置させて、主連通溝18Aを形成している。
この主連通溝18Aは、前記管部材12の軸方向Оに延びており、後述の嵌合筒部30に形成した連通凹部32と重なり合うことで、管部材12の内部から発泡ノズル20の内部へ至る流路Pが開通するように形成している。
好適な本実施形態では、前記軸部16の周方向の別の一部(図示例では、
図1の状態で軸部16の側面)に副連通溝18Bを形成している。この副連通溝18Bは、形成される位置を除いて、前記主連通溝18Aと同じ構造であってよい。
なお、前記主連通溝18A及び副連通溝18Bの位置は、適宜変更することができる。
【0017】
前記発泡ノズル20は、
図2に示す如く、基部材22と、区画体40と、吐出チップ50と、発泡部材60とを具備する。
【0018】
前記基部材22は、前記管部材12の軸線Оと直交する基壁部24を有する。本実施形態では、前記基壁部24は、前方から見て、矩形(図示例では略正方形)に形成されているが、その形状は適宜変更することができる。
【0019】
前記基壁部24の周端部からは、外周壁26が後方へ突設されている。
また前記基壁部24の後面からは、大径の連結筒部28と小径の嵌合筒部30とが2重筒状に後方へ突設されている。
連結筒部28及び嵌合筒部30は、円筒状であり、連結筒部28は前記管部材12の先部12bの外面に対して、また嵌合筒部30は前記軸部16の外面へそれぞれ回転可能に嵌合されている。
前記連結筒部28の内面には、前記先部12bからの抜止め防止用の抜止め用リブ29が周設されている。
前記嵌合筒部30の後部の内周面には、前記流路Pの一部を形成する連通凹部32を周設している。
【0020】
前記基壁部24の前面の周端部付近からは、
図2に示すように、第1囲成筒部36が前方へ突設されている。
前記第1囲成筒部36は、図示例において、
図5に示す如く、前方から見て略四角形状の輪郭を有する。具体的には、第1囲成筒部36は、その略四角形の各辺に相当する辺部分36aと、四角形の角部付近に位置し、丸みを付けたコーナー部分36bとで形成されている。もっともその形状は適宜変更することができる。
【0021】
前記基壁部24には、
図5に示すように、仕切り壁38と第1貫通孔34A及び第2貫通孔34Bとが形成されている。
前記仕切り壁38は、前記第1囲成筒部36の内側に配置されており、前記基壁部24の前面から前方突出されている。
前記仕切り壁38の突出長は、好適な図示例において、前記第1囲成筒部36の突出長よりも低く設定している。なお、仕切り壁38の突出長は、前記第1囲成筒部36の突出長と同等あるいは高くしても構わない。
前記仕切り壁38の形状は、図示例において、前方から見て略V字形である。この仕切り壁38は、前記第1囲成筒部36の略四角形状の輪郭の中心に位置する曲がり部38aと、この曲り部からの角部分と中心部との間を延びる2つの直線部38bとで形成されている。
前記仕切り壁38は、前記第1囲成筒部36で囲まれる略四角形状の基壁部分を、四半部(三角形状の部分)と残りの部分とに区分している。
前記第1貫通孔34A及び第2貫通孔34Bは、前記流路Pの一部であり、前記仕切り壁38の両側に位置するように配置されている。図示例では、第1貫通孔34Aは、前記四半部側に、かつ第2貫通孔34Bは残りの部分にそれぞれ配置されている。
また前記第1貫通孔34A及び第2貫通孔34Bは、後方から見て、前記嵌合筒部30の内側に位置するように配置されている(
図2及び
図4参照)。
好適な図示例では、第1貫通孔34A及び第2貫通孔34Bは、
図3に示す如く、嵌合筒部30の筒軸を中心として90°の角度を保って配置されている。故に、発泡ノズル20を90°ずつ回転させたときに、前記第1貫通孔34A及び第2貫通孔34Bが、順次、前記主連通溝18Aと副連通溝18Bとに接続することが可能に構成している。
【0022】
前記区画体40は、
図2に示す如く、前記基壁部24と向かい合う隔壁部42を有し、隔壁部42の周端部から連結片45を介して前後方向へ延びるカバー周壁46を付設している。
図示例のカバー周壁46は、
図3に示す如く、四角筒に形成されており、このカバー周壁46の後半部は、前記基部材22の外周壁26の外面に嵌着されている。こうすることにより、前記区画体40は、前記基部材22に対して回転不能に組み付けられている。
前記隔壁部42の前面の外周部には、
図2に示す如く、発泡部材60を取り付けるための環状凹部43が形成されている。
【0023】
前記隔壁部42の後面からは、前記第1囲成筒部36の突設箇所に対応させて、第2囲成筒部44を後方へ突設させている。第2囲成筒部44と第1囲成筒部36とは相互に液密に嵌合して、囲成周壁Eを形成している。
前記囲成周壁Eと前記基壁部24と前記隔壁部42とで、周囲から区画された空間Rが形成されている。空間Rは、前記流路Pを介して射出筒4に連通している。
前記隔壁部42の後面には、前記第2囲成筒部44の内方に位置させて、前記仕切り壁38の突出箇所に対応する嵌合溝部47を形成している。嵌合溝部47内には、前記仕切り壁38の先端部が嵌着されている。これにより、前記仕切り壁38が、前述の空間Rを前方から見て、第1分室R1及び第2分室R2に区分するように設けている。
なお、仕切り壁38及び嵌合溝部47の構造は適宜変更することができる。例えば、前記隔壁部42から後方へ仕切り壁38を突設するとともに、前記基壁部24の前面に嵌合溝部47を形成してもよい。
前記第1分室R1は、前記第1貫通孔34Aを介して、また第2分室R2は、前記第2貫通孔34Bを介して、前記管部材12の基部12a側へそれぞれ連通させることが可能に設けている。
【0024】
前記隔壁部42には、前記第1分室R1の前方に位置させて一つの柱状部48が、また前記第2分室R2の前方に位置させて二つの柱状部48が、それぞれ一体的に設けられている。
前記柱状部48は、吐出チップ50を取り付けるための部位である。
各柱状部48の周囲には、深溝状の切溝49が穿設されている。図示例の切溝49は前方から見て円形に形成されている。
なお、各切溝49の溝底から第1分室R1又は第2分室R2に亘って開通する連通路Nが前記隔壁部42に穿設されている。
【0025】
前記吐出チップ50は、図示例において、嵌着筒部52の前端に、内向きのフランジ状壁53を付設してなる。このフランジ状壁53のフランジ孔として吐出孔54が開口されている。
前記嵌着筒部52は、液体が流れるための間隙を存して、前記切溝49内に嵌挿されている。
前記フランジ状壁53と柱状部48の前面との間には、従来公知のスピン機構Sが形成されている。これにより、前記連通路Nを通ってスピン機構S内に入った液体を回転させ、前記吐出孔54から円錐状の霧として吐出するように構成している。
【0026】
図示例では、第2分室R2の前方に配置した2個の吐出チップ50を、
図4に示す如く、相互に一体に成形したチップペア51に形成している。
この構成では、各吐出チップ50のフランジ状壁53同士が連結壁部56を介して一体に連結されている。
図示例では、前記連結壁部56の後面側に一対の切割り58を穿設している。これにより、
図7に示す如く、連結壁部56を撓めることで、チップペアを屈曲変形させ、前記吐出孔54の中心線Cの方向を調整することを容易としている。
【0027】
前記発泡部材60は、
図3に示す如く、前記隔壁部42の前面を覆う覆合板部62を有する。この覆合板部62は、前記カバー周壁46の前部内に嵌合されている。
図示例では、
図2に示す如く、前記覆合板部62の周端部に係合鉤部63を形成しており、前記環状凹部43内に係止させている。
前記覆合板部62には、
図3に示すように、左右一対の肉薄線72が形成されている。
これら肉薄線72は、覆合板部62の上下方向の中間部に位置させて、覆合板部62の左右両端から中心側へ延びている。
図示例の肉薄線72は、覆合板部62の前面に深溝を穿設することにより形成している。
一対の肉薄線72を形成することにより、前
記チップペア51の屈曲変形に対応して、覆合板部62の上半部を変位させることが可能となる。
【0028】
前記覆合板部62には、前記吐出チップ50に対応する箇所に開口した吐出チップ50と同数の窓孔64を形成している。
図示例の窓孔64は、前記吐出チップ50のフランジ状壁53が外部に露出されるように開口されるように形成している。
前記窓孔64の孔縁からは、発泡筒66を外方へ突設させている。発泡筒66と前記吐出孔54とで泡吐出口Aが形成されている。
また前記発泡部材60には、前記発泡筒66の根元付近に外気を供給するための外気導入孔68が形成されている。図示の外気導入孔68は、覆合板部62の前面側から窓孔64の内周面へ開通している。好適な図示例では、複数の外気導入孔68を前記窓孔64の内周面に一定の間隔で開口させている。これらの構造は適宜変更することができる。
前記構成によれば、吐出孔54から円錐状に吐出された霧状の液体は、前記発泡筒66の内面に衝突し、前記外気導入孔68から供給される外気と混ざり合って泡となり、前方へ吐出される。
【0029】
本実施形態では、前記泡吐出口Aとして、前記第1分室R1と連続する単一の第1泡吐出口A1、及び、第2分室R2と連続する一対の第2泡吐出口A2を形成している。
この構成では、広角に泡を吐出するときには、一対の第2泡吐出口A2から泡を吐出するモードを選択するとよい。
この構成によれば、前述の従来技術のように、単一の操作でより広い面に吹き付けるために、“吐出孔から霧状に吐出された液体が発泡筒の内面に当たる度合いを減らし、より広い角度で吐出されるような構成”とする必要がない。従って、泡質を低下させることなく、広角に泡を吐出させることができる。
本実施形態では、前記発泡ノズル20の前面に、
図3に示すように、任意の一方向Xに相互に隣接させて前記一対の第2泡吐出口A2を配置している。
図示例においては、
図3に示すモードにおいて、前記一対の第2泡吐出口A2は、四角形状の発泡ノズル20の前面上半部に横方向に隣接させて配置されている。他方、単一の第1泡吐出口A1は、発泡ノズル20の前面下半部の左右方向中間部に位置している。
【0030】
前記構成において、
図6を用いて、本発明の泡吐出部構造の作用を説明する。
(1)
図6(A)に示す状態では、発泡ノズル20の第1貫通孔34A及び第2貫通孔34Bは、前方から見て、主連通溝18A及び副連通溝18Bのいずれとも重なり合っていない。すなわち、両貫通孔は各連通溝と連通していない。
これにより、“いずれの泡吐出口からも泡が吐出されない閉鎖モード”が実現される。
(2)
図6(B)に示す状態では、発泡ノズル20の第2貫通孔34Bは、副連通溝18Bと重なり合っているが、第1貫通孔34Aは主連通溝18Aと重なり合っていない。
従って、同図に太線で矢示する通り、液体は、副連通溝18B及び第2貫通孔34B、第2分室R2を順次通過して、第2泡吐出口A2の吐出孔54に到達する。
これにより、“複数の第2泡吐出口A2から泡が吐出されるモード”が実現される。
(3)
図6(C)に示す状態では、発泡ノズル20の第1貫通孔34Aは副連通溝18Bと重なり合っており、また第2貫通孔34Bは主連通溝18Aと重なり合っている。
従って、同図に太線で矢示する通り、液体は、副連通溝18B及び第1貫通孔34A、第1分室R1を順次通過して、第1泡吐出口A1の吐出孔54に到達するとともに、主連通溝18A及び第2貫通孔34B、第2分室R2を順次通過して、第2泡吐出口A2の吐出孔54に到達する。
これにより、“単数の第1泡吐出口A1の双方から泡が吐出されるモード”が実現される。
(4)
図6(D)に示す状態では、発泡ノズル20の第1貫通孔34Aは、主連通溝18Aと重なり合っているが、また第2貫通孔34Bは、副連通溝18Bと重なり合っていない。
従って、同図に太線で矢示する通り、液体は、主連通溝18A及び第1貫通孔34A、第1分室R1を順次通過して、第1泡吐出口A1の吐出孔54に到達する。
これにより、“単数の第1泡吐出口A1から泡が吐出されるモード”が実現される。
【0031】
次に前
記チップペア51の作用を、
図7を用いて説明する。
図7は、
図4と同じ方向から見た図であるが、連結壁部5
6及び切割り58の作用を強調して描かれている。
前述の構成によれば、一対の吐出チップ50を連結する連結壁部56の後面側に切割り58を穿設しているため、この切割り58が狭まることにより、連結壁部56が前方へ撓み変形することが容易となる。
その結果として、各吐出チップ50の吐出孔54の中心線Cが、管部材12の軸線Оに対して、発泡ノズル20から遠くなるほど離れる。このようにすることで、次のような利点がある。
第1に、一対の吐出孔54から円錐状に吐出される霧状の液体は、各発泡筒66の左右方向外側でより多く発泡筒内面に衝突する。故に広角な方向へ泡を十分に供給することができる。
第2に、
図7に一点鎖線で示す、一対の第2泡吐出口A1からの泡の流れが重なり合うオーバーラップ領域Lを縮小又は解消することができ、より好適に泡を放出することができる。
【符号の説明】
【0032】
1…噴射装置 2…装着キャップ 3…主筒 3a…内筒部 3b…外筒部
4…射出筒 5…シリンダ 6…ピストン 7…トリガー 8…カバー部材
10…泡吐出部構造 12…管部材 12a…基部(小径管部)
12b…先部(大径管部)
13…外向きフランジ 16…軸部
18A…主連通溝 18B…副連通溝
20…発泡ノズル 22…基部材 24…基壁部 26…外周壁 28…連結筒部
29…抜止め用リブ 30…嵌合筒部 32…連通凹部
34A…第1貫通孔 34B…第2貫通孔
36…第1囲成筒部 36a…辺部分 36b…コーナー部分
38…仕切り壁 38a…曲がり部 38b…直線部
40…区画体 42…隔壁部 43…環状凹部 44…第2囲成筒部 45…連結片
46…カバー周壁 47…嵌合溝部 48…柱状部 49…切溝
50…吐出チップ 51…チップペア 52…嵌着筒部
53…フランジ状壁 54…吐出孔 56…連結壁部 58…切割り
60…発泡部材 62…覆合板部 63…係合鈎部 64…窓孔 66…発泡筒
68…外気導入孔 72…肉薄線
A…泡吐出口 A1…第1泡吐出口 A2…第2泡吐出口 C…中心線
E…囲成周壁 L…オーバーラップ領域 N…連通路 O…軸方向 P…流路
R…空間 R1…第1分室 R2…第2分室
S…スピン機構
V1…第1逆止弁 V2…第2逆止弁