(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】コネクタ用キャップ、及び、導電路のドラム巻回方法
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
H01R13/52 302E
(21)【出願番号】P 2020037507
(22)【出願日】2020-03-05
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】樗木 翔
(72)【発明者】
【氏名】小林 陽介
(72)【発明者】
【氏名】地田 祐太
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】実公昭40-002628(JP,Y1)
【文献】特開2016-070198(JP,A)
【文献】特開平11-256577(JP,A)
【文献】特開平07-270484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
H01R 4/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁と、
筒状に形成され軸方向の一端
の開口が
前記底壁にて閉塞されるとともに軸方向の他端からコネクタの嵌合部が挿入される保護部と、
該保護部の外周面に複数設けられ、且つ、前記軸方向に所定の間隔をあけて配置された緩衝部と、
を備え
、
前記緩衝部としての第1の緩衝部は、前記底壁の前記軸方向の他端側の端面である内面より前記軸方向の他端側に位置し、
前記緩衝部としての第2の緩衝部は、前記底壁の前記内面より前記軸方向の一端側に位置し、且つ、前記軸方向の一端側に向けて前記保護部の前記軸方向の一端側の端まで延びており、
前記第2の緩衝部の前記軸方向の幅は、前記第1の緩衝部の前記軸方向の幅より大きい
ことを特徴とするコネクタ用キャップ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタ用キャップにおいて、
前記緩衝部は、前記保護部内に挿入された前記嵌合部の接続端面側が少なくとも前記軸方向において対向する
前記第1の緩衝部及び前記第2の緩衝部の間に位置するように形成される
ことを特徴とするコネクタ用キャップ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコネクタ用キャップにおいて、
前記緩衝部は、前記外周面に突設され、且つ、該外周面の周方向にわたって形成されるリブである
ことを特徴とするコネクタ用キャップ。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載のコネクタ用キャップにおいて、
前記保護部の軸方向の一端には、把持部が設けられる
ことを特徴とするコネクタ用キャップ。
【請求項5】
導電路の長手方向の少なくとも一方の端末に設けられたコネクタに請求項1、2、3又は4に記載のコネクタ用キャップを装着し、ドラムの胴部に前記一方の端末を巻回始点として前記導電路を巻回する
ことを特徴とする導電路のドラム巻回方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタの接続端面側に装着、被覆され、コネクタの接続端子を水や塵埃から保護するコネクタ用キャップ、及び、このコネクタ用キャップを導電路の端末に設けられるコネクタに装着し、この導電路をドラムの胴部に巻回する導電路のドラム巻回方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコネクタ用キャップとしては、絶縁性を有する合成樹脂にて成形され、基板と、筒状に形成され、軸方向の一端が基板の周縁に連続する周壁と、を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。従来のコネクタ用キャップは、軸方向における、基板が形成される側とは反対側の端部が開口形成されている。周壁の内側には、上記開口に連通する挿入部が形成されている。挿入部は、コネクタの接続端面側が挿入可能に形成され、接続端面側の挿入状態において、周壁の内面がコネクタの外面と当接するような形状、及び、大きさに形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、長手方向の端末に上記コネクタが設けられた導電路(例えば、ケーブルやブランチケーブル)は、製品条長が比較的長いことから、一般的なケーブルと同様にドラム巻きにて梱包、出荷されている。
【0005】
上記従来のコネクタ用キャップは、挿入部にコネクタの接続端面側が挿入された状態において、キャップ周壁の内面がコネクタの外面と当接している。このため、製造時のドラム巻きや、輸送時又は保管時のケーブルの自重や、外部からの負荷により、キャップ周壁の外面に外力(荷重)が加わると、この外力がコネクタの外面に直接加わってしまう。
【0006】
このように、上記外力がコネクタの外面に直接加わると、ケーブルやブランチケーブルの分岐部等に押し潰されるような形でコネクタが破損してしまう虞があるという問題点があった。特に、コネクタの外面は、相手コネクタと接続する嵌合部の接続端面側において最も強度が低下する。コネクタの嵌合部外面に孔や溝が形成されている場合は、孔や溝付近において最も強度が低下する。上記外力がコネクタの嵌合部に直接加わると、嵌合部が上記接続端面や孔等の付近で破損してしまう虞があるという問題点があった。
【0007】
その他、従来技術では、つぎのような問題点もあった。すなわち、上記の通り、コネクタが破損してしまう虞があることから、コネクタを保護するために副資材が用いられてきた。しかしながら、コネクタを保護するための副資材を用いると、副資材を取り付けるための作業工数及びコストが増加してしまうという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、外力の影響によるコネクタの破損を防止することができるコネクタ用キャップ、及び、このコネクタ用キャップを導電路の端末に設けられるコネクタに装着し、この導電路をドラムの胴部に巻回する導電路のドラム巻回方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明のコネクタ用キャップは、底壁と、筒状に形成され軸方向の一端の開口が前記底壁にて閉塞されるとともに軸方向の他端からコネクタの嵌合部が挿入される保護部と、該保護部の外周面に複数設けられ、且つ、前記軸方向に所定の間隔をあけて配置された緩衝部と、を備え、前記緩衝部としての第1の緩衝部は、前記底壁の前記軸方向の他端側の端面である内面より前記軸方向の他端側に位置し、前記緩衝部としての第2の緩衝部は、前記底壁の前記内面より前記軸方向の一端側に位置し、且つ、前記軸方向の一端側に向けて前記保護部の前記軸方向の一端側の端まで延びており、前記第2の緩衝部の前記軸方向の幅は、前記第1の緩衝部の前記軸方向の幅より大きいことを特徴とする。
【0010】
上記(1)のような特徴を有する本発明によれば、保護部の外周面には、複数の緩衝部が設けられているため、コネクタ用キャップに外力が加わった場合であっても、この外力を各緩衝部に分散させることにより、コネクタの嵌合部に外力が直接負荷されない構造となる。したがって、例えば、長手方向の端末に上記コネクタを設けたケーブルやブランチケーブルをドラムに巻回する際、ケーブルや分岐部等に押し潰されるような形でコネクタ用キャップに外力が加わっても、嵌合部に外力が直接負荷されないようになる。
【0011】
(2)請求項2記載の本発明のコネクタ用キャップは、請求項1に記載のコネクタ用キャップにおいて、前記緩衝部は、前記保護部内に挿入された前記嵌合部の接続端面側が少なくとも前記軸方向において対向する一対の前記緩衝部間に位置するように形成されることを特徴とする。
【0012】
上記(2)のような特徴を有する本発明によれば、保護部内に挿入された嵌合部の接続端面側が少なくとも保護部の軸方向において対向する一対の緩衝部間に位置するため、嵌合部の接続端面側が緩衝部間に確実に納まるようになる。このように、嵌合部の接続端面側が緩衝部間に確実に納まるため、コネクタ用キャップに外力が加わった場合であっても、嵌合部の接続端面側に外力が直接負荷されない構造となる。
【0013】
(3)請求項3記載の本発明のコネクタ用キャップは、請求項1又は2に記載のコネクタ用キャップにおいて、前記緩衝部は、前記外周面に突設され、且つ、該外周面の周方向にわたって形成されるリブであることを特徴とする。
【0014】
上記(3)のような特徴を有する本発明によれば、リブ(緩衝部)が、保護部の外周面に突設され、且つ、外周面の周方向にわたって形成されるため、外周面の周方向における、どの部分に外力が加わったとしても、この外力を各リブに、より確実に分散させることにより、コネクタの嵌合部に外力が直接負荷されない構造となる。
【0015】
(4)請求項4記載の本発明のコネクタ用キャップは、請求項1、2又は3に記載のコネクタ用キャップにおいて、前記保護部の軸方向の一端には、把持部が設けられることを特徴とする。
【0016】
上記(4)のような特徴を有する本発明によれば、把持部が設けられることから、コネクタへのコネクタ用キャップの着脱作業時に作業者が把持部を把持して着脱作業を行うことができる。
【0017】
(5)上記課題を解決するためになされた請求項5記載の本発明の導電路のドラム巻回方法は、導電路の長手方向の少なくとも一方の端末に設けられたコネクタに請求項1、2、3又は4に記載のコネクタ用キャップを装着し、ドラムの胴部に前記一方の端末を巻回始点として前記導電路を巻回することを特徴とする。
【0018】
上記(5)のような特徴を有する本発明によれば、例えば、ケーブルやブランチケーブル等の導電路の端末に設けられるコネクタに、請求項1、2、3又は4に記載のコネクタ用キャップを装着した状態で、ドラムの胴部に上記端末を巻回始点としてケーブルやブランチケーブルを巻回するため、巻回されたケーブルやブランチケーブルの自重による荷重(外力)がコネクタ用キャップに加わったとしても、この外力が各緩衝部に分散させ、コネクタの嵌合部に外力が直接負荷されない構造となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、コネクタ用キャップが装着されたコネクタに外力が加わっても、この外力がコネクタの嵌合部に直接負荷されないようになるため、嵌合部に加わる外力を従来のコネクタ用キャップを用いた場合と比較して軽減することができる。したがって、本発明によれば、上記外力の影響によるコネクタの破損を防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明のコネクタ用キャップの実施例1を示す、この軸方向の一端側から視た斜視図である。
【
図2】
図1におけるコネクタ用キャップの、この軸方向の他端側から視た斜視図である。
【
図3】ケーブルの端末に設けられたコネクタの側面図である。
【
図5】コネクタ用キャップにコネクタの嵌合部を挿入した状態を示す側面図である。
【
図7】コネクタ用キャップに外力が加わったときの作用を説明する図である。
【
図10】コネクタ用キャップにコネクタの嵌合部を挿入した状態を示す一部断面図である。
【
図11】コネクタ用キャップに外力が加わったときの作用を説明する図である。
【
図12】本発明のコネクタ用キャップの実施例2を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、
図1-
図11を参照しながら、本発明に係るコネクタ用キャップの実施例1について、また、
図12を参照しながら、本発明に係るコネクタ用キャップの実施例2について、それぞれ説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は本発明のコネクタ用キャップの実施例1を示す、この軸方向の一端側から視た斜視図、
図2は
図1におけるコネクタ用キャップの、この軸方向の他端側から視た斜視図、
図3はケーブルの端末に設けられたコネクタの側面図、
図4は
図3におけるA-A間の一部断面図、
図5はコネクタ用キャップにコネクタの嵌合部を挿入した状態を示す側面図、
図6は
図5におけるB-B間の一部断面図、
図7はコネクタ用キャップに外力が加わったときの作用を説明する図、
図8はコネクタの変形例を示す側面図、
図9は
図8におけるD-D間の一部断面図、
図10はコネクタ用キャップにコネクタの嵌合部を挿入した状態を示す一部断面図、
図11はコネクタ用キャップに外力が加わったときの作用を説明する図である。
なお、図中の矢印は、前後方向を示している(矢印の方向は一例であるものとする)。
【0023】
図1及び
図2において、引用符号1は、本発明に係るコネクタ用キャップの実施例を示している。コネクタ用キャップ1は、絶縁性を有する合成樹脂にて成形され、有底円筒状に形成される部材である。コネクタ用キャップ1は、
図5に図示するように、ケーブル2(例えば、ブランチケーブル等)の、この長手方向の端末に設けられたコネクタ3の接続端面8(
図3参照)側に装着、被覆され、コネクタ3の接続端子(図示せず)を水や塵埃から保護するためのキャップである。本実施例では、まず、ケーブル2と、コネクタ用キャップ1が装着されるコネクタ3について説明し、つぎに、コネクタ用キャップ1について説明する。
【0024】
まず、ケーブル2について説明する。
ケーブル2は、特許請求の範囲に記載される「導電路」に相当するものである。本明細書においては、以下、「ケーブル2」の具体例として、長手方向の端末にコネクタ3が設けられたブランチケーブルを挙げて説明するものとする(これに限定されるものではない。その他、長手方向の端末にコネクタ3が設けられたケーブルを採用してもよいものとする)。ここで、「ブランチケーブル」とは、詳細な説明を省略するが、例えば、幹線と、この幹線から分岐する分岐線と、幹線から分岐線を分岐する分岐部(
図7に図示する「分岐部17」参照)と、を備えるものである。
【0025】
つぎに、コネクタ3について説明する。
図3及び
図4に図示するように、本実施例におけるコネクタ3は、絶縁性を有する合成樹脂にて成形され、円筒状に形成されている。コネクタ3は、詳細な説明を省略するが、本体部4と、嵌合部5と、を備えている。本体部4は、特に図示しないが、この内部に接続端子が収容可能に形成されている。
図4に図示するように、嵌合部5は、この軸方向の一端側(
図4における前後方向の前端側)が開放された円筒状に形成されている。嵌合部5は、コネクタ3との接続相手となる相手コネクタ(図示せず)と嵌合可能に形成されている。
図4に図示するように、嵌合部5は、この内側に相手コネクタが挿入、嵌合される嵌合空間6が形成されている。
【0026】
図3及び
図4に図示する嵌合部5は、この軸方向の一端側(
図3及び
図4における前後方向の前端側)の端面(開放端面)が接続端面8となっている。本実施例における接続端面8は、嵌合部5の他の部分と比較して嵌合部5における最も強度が低下する部分(「強度低下部」ということもできる)である。
【0027】
なお、本実施例では、コネクタ用キャップ1の装着対象となるコネクタとして、
図3及び
図4に図示するコネクタ3を挙げているが、これに限定されるものではない。その他、コネクタ用キャップ1の装着対象となるコネクタとして、コネクタ3の変形例であるコネクタ23を採用してもよいものとする(
図8及び
図9参照)。
【0028】
つぎに、コネクタ用キャップ1について説明する。
図1及び
図2に図示するように、コネクタ用キャップ1は、底壁9と、保護部10と、第一リブ11及び第二リブ12と、を備えている。以下、コネクタ用キャップ1の各構成について説明する。
【0029】
まず、底壁9について説明する。
図1に図示するように、底壁9は、コネクタ用キャップ1の軸方向の一端(
図1における前後方向の前端)に形成され、コネクタ3の接続端面8(
図3参照)の輪郭の形状及び大きさと略同等の輪郭の形状及び大きさにて形成されている。
【0030】
つぎに、保護部10について説明する。
図1及び
図2に図示するように、保護部10は、円筒状に形成されている。
図1及び
図2に図示するように、保護部10は、この軸方向の一端側(
図1における前後方向の前端側)が底壁9にて閉塞され、この軸方向の他端側(
図2における前後方向の後端側)にコネクタ挿入口13が開口形成されている。コネクタ挿入口13は、コネクタ3の接続端面8側(嵌合部5)を挿入可能に形成されている。
【0031】
図2に図示するように、保護部10の内側には、コネクタ挿入口13に連通するコネクタ収容部14が形成されている。コネクタ収容部14は、コネクタ3の嵌合部5の輪郭の形状及び大きさと略同等の輪郭の形状及び大きさにて形成されている。保護部10は、コネクタ収容部14にコネクタ3の嵌合部5が収容された状態において、保護部10の内面15が嵌合部5の外面7に当接するように形成されている(
図6参照)。
【0032】
つぎに、第一リブ11及び第二リブ12について説明する。
図1及び
図2に図示する第一リブ11及び第二リブ12は、特許請求の範囲に記載される「緩衝部」に相当するものである。
図1及び
図2に図示するように、第一リブ11及び第二リブ12は、保護部10の外周面16に設けられている。
図1及び
図2に図示するように、第一リブ11及び第二リブ12は、保護部10の軸方向(
図1及び
図2における前後方向)に所定の間隔をあけて対向するように配置されている。
【0033】
図1及び
図2に図示するように、第一リブ11及び第二リブ12は、それぞれ、外周面16に突設され、且つ、外周面16の周方向にわたって形成されている。
図1及び
図2に図示するように、第一リブ11は、保護部10の開放端側(
図1及び
図2における前後方向の後端側)に配置されている。
図1及び
図2に図示するように、第二リブ12は、保護部10の閉塞端側(
図1及び
図2における前後方向の前端側)に配置されている。
【0034】
図5及び
図6に図示するように、第一リブ11及び第二リブ12は、保護部10のコネクタ収容部14にコネクタ3の嵌合部5が挿入された状態において、嵌合部5の接続端面8が第一リブ11と第二リブ12との間に位置するように形成されている。より具体的には、第一リブ11及び第二リブ12は、
図6に図示するように、コネクタ収容部14に嵌合部5が挿入された状態において、嵌合部5の接続端面8が保護部10の軸方向(
図6における前後方向)における第一リブ11及び第二リブ12の配置範囲内に位置するように形成されている。ここで、「第一リブ11及び第二リブ12の配置範囲」とは、
図6に図示する第一リブ11の前端面から第二リブ12の後端面までの範囲Cをいうものとする。
【0035】
図6に図示するように、第二リブ12は、保護部10のコネクタ収容部14にコネクタ3の嵌合部5が挿入された状態において、嵌合部5の接続端面8が保護部10の軸方向(
図6における前後方向)における第二リブ12の近傍に位置するように形成されている。
【0036】
図1及び
図2に図示する第一リブ11及び第二リブ12は、それぞれの厚み(高さ)及び幅が下記の通り形成されている。ここで、「厚み(高さ)」とは、保護部10の軸方向(
図1及び
図2における前後方向)に直交する方向おける厚み(高さ)をいう。また、「幅」とは、保護部10の軸方向における幅をいう。すなわち、第一リブ11及び第二リブ12は、それぞれ、外力(荷重)が加わった場合において保護部10の変形を防止するとともに、この外力を分散させ、コネクタ3の嵌合部5に外力が直接負荷されないような厚み及び幅にて形成されている。
【0037】
ここで、第一リブ11及び第二リブ12は、それぞれ、同等の上記厚み(高さ)にて形成されている。このように、第一リブ11及び第二リブ12が、それぞれ、同等の上記厚み(高さ)にて形成されることにより、外力が加わった場合において、第一リブ11と第二リブ12とに外力が加わり易くなり、第一リブ11と第二リブ12とに外力を分散させ易くなる。
【0038】
また、第二リブ12は、この上記幅が、第一リブ11の上記幅よりも大きくなるように形成されている。さらに、第二リブ12は、底壁9に連続するように形成されている。上記の通り、第二リブ12が形成されることにより、外力が加わった場合において、保護部10の、この軸方向の一端側(
図6における前後方向の前端側)の変形が生じ難くなる。
【0039】
なお、本実施例では、特許請求の範囲に記載される「緩衝部」として、第一リブ11及び第二リブ12を形成する構成となっているが、これに限定されるものではない。その他、第一リブ11及び第二リブ12に加え、例えば、第三リブを設ける等、リブを3個以上設けてもよいものとする。
【0040】
ここで、特に図示しないが、例えば、リブ(緩衝部)を3個以上設けた場合、保護部10のコネクタ収容部14にコネクタ3の嵌合部5が挿入された状態において、嵌合部5の接続端面8が少なくとも保護部10の軸方向において対向する一対のリブ間に位置するように形成されるものとする。
【0041】
つぎに、コネクタ3へのコネクタ用キャップ1の着脱作業(装着及び取り外し作業)について説明する。
コネクタ3の嵌合部5にコネクタ用キャップ1を装着する際には、まず、作業者は、
図1及び
図2に図示するコネクタ用キャップ1を把持する。しかる後、コネクタ3の接続端面8側(嵌合部5)を保護部10のコネクタ挿入口13から挿入し、嵌合部5をコネクタ収容部14内に収容する。以上でコネクタ3へのコネクタ用キャップ1の装着が完了する(
図5及び
図6参照)。
【0042】
また、コネクタ3からコネクタ用キャップ1を取り外す際には、まず、作業者は、
図5に図示するコネクタ用キャップ1を把持する。しかる後、特に図示しないが、コネクタ用キャップ1をコネクタ3の接続端面8側からの離脱方向(
図6における前方向)に引っ張り、コネクタ3から離脱させる。以上でコネクタ3からのコネクタ用キャップ1の取り外しが完了する。
【0043】
つぎに、コネクタ用キャップ1をケーブル2のコネクタ3に装着した状態でケーブル2をドラムに巻回するケーブル2のドラム巻回作業(ドラム巻回方法)について説明する。ここで、ケーブル2のドラム巻回作業とは、ケーブル2を運搬、保管するために、ケーブル2をドラムに巻回する作業である。
【0044】
ケーブル2のドラム巻回作業では、上記ドラムとして、特に図示しないが、胴部と、一対の鍔部と、を備える公知のものを用いるものとする。胴部は、円筒状に形成され、この外周面にケーブル2が巻回される部分である。また、鍔部は、胴部の軸方向における両端に設けられ、胴部の外周面に巻回されるケーブル2を軸方向からガイドする部分である。
【0045】
ケーブル2のドラム巻回作業において、作業者は、まず、先に説明した通り、コネクタ3の接続端面8側にコネクタ用キャップ1を装着する(
図5参照)。しかる後、特に図示しないが、ケーブル2のコネクタ3側の端末を巻回の始点として、ケーブル2をドラムの胴部に、例えば、複数段にわたって巻回する。以上でケーブル2のドラム巻回作業が完了する。
【0046】
つぎに、
図7を参照しつつ、コネクタ用キャップ1にコネクタ3の嵌合部5が収容された状態において、コネクタ用キャップ1に外力が加わったときの作用について説明する。ここで、上記外力とは、例えば、先に説明したケーブル2のドラム巻回作業においてケーブル2や分岐部17にて押し潰されるように加わる外力をいうものとする。
【0047】
本実施例によれば、
図7に図示するように、例えば、ケーブル2の分岐部17にて押し潰されるように外力(
図7に図示する矢印F1)が加わった場合、この外力を緩衝部としての第一リブ11及び第二リブ12それぞれに分散させ(
図7に図示するF2、F3参照)、嵌合部5の接続端面8に外力が直接負荷されないようになる。
【0048】
また、本実施例によれば、第一リブ11と第二リブ12とが、外周面16に突設され、且つ、外周面16の周方向にわたって形成されるため、外周面16の周方向における、どの部分に外力が加わったとしても、この外力を第一リブ11及び第二リブ12それぞれに、より確実に分散させることができる。したがって、第一リブ11と第二リブ12とが上記の通り形成されている点からも、嵌合部5の接続端面8に外力が直接負荷されないようになる。
【0049】
また、本実施例によれば、保護部10のコネクタ収容部14に嵌合部5が挿入された状態において、接続端面8が第一リブ11及び第二リブ12の配置範囲(
図6に図示する範囲C)内に位置するため、接続端面8は、第一リブ11及び第二リブ12の上記配置範囲内に確実に納まるようになる。このように、接続端面8が第一リブ11及び第二リブ12の上記配置範囲内に確実に納まるため、外力が加わった場合であっても、より確実に、接続端面8に外力が直接負荷されないようになる。
【0050】
また、本実施例によれば、ケーブル2の端末に設けられるコネクタ3に、本実施例のコネクタ用キャップ1を装着した状態で、ドラムの胴部に上記端末を巻回始点としてケーブル2を巻回するため、巻回されたケーブル2や分岐部17に押し潰されるような形で外力がコネクタ用キャップ1に加わったとしても、この外力が第一リブ11及び第二リブ12に分散させ、接続端面8に外力が直接負荷されないようになる。
【0051】
以上、説明した本実施例のコネクタ用キャップ1は、装着対象であるコネクタ3を、
図8及び
図9に図示する変形例(コネクタ23)に置き換えてもよいものとする。以下、
図8-
図11を参照しながら、本実施例のコネクタ用キャップ1の装着対象となるコネクタを変形例であるコネクタ23とした場合について説明する。なお、コネクタ3と同一の構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0052】
図8及び
図9に図示するコネクタ23は、嵌合部5に嵌合確認窓24が形成されている点において、本実施例におけるコネクタ3(
図3及び
図4参照)と異なっている。嵌合確認窓24は、嵌合部5の接続端面8側に貫通形成された孔部であり、コネクタ23と相手コネクタ(図示せず)とが嵌合した際、嵌合状態にあることを確認するために形成された部分である。
【0053】
より具体的には、嵌合確認窓24は、コネクタ23と相手コネクタとが嵌合した際、正しく嵌合された状態であれば、相手コネクタの外面に形成された嵌合表示部(図示せず。例えば、蛍光シール等)を嵌合確認窓24から確認できるように形成されている。このような嵌合確認窓24が形成されることにより、コネクタ23と相手コネクタとが正しく嵌合された状態であれば、嵌合表示部を嵌合確認窓24から目視することができる。したがって、作業者は、コネクタ23と相手コネクタとが嵌合状態にあることを容易に確認することができる。
【0054】
コネクタ23における嵌合確認窓24付近(以下、「嵌合確認窓24の周縁25」という)は、嵌合部5の他の部分と比較して嵌合部5における最も強度が低下する部分(「強度低下部」ということもできる)である。
【0055】
ここで、コネクタ用キャップ1の第一リブ11及び第二リブ12について補足説明する。
図10に図示するように、第一リブ11及び第二リブ12は、保護部10のコネクタ収容部14にコネクタ23の嵌合部5が挿入された状態において、嵌合確認窓24の周縁25が第一リブ11と第二リブ12との間に位置するように形成されている。より具体的には、
図10に図示するように、第一リブ11及び第二リブ12は、コネクタ収容部14に嵌合部5が挿入された状態において、上記周縁25が保護部10の軸方向(
図10における前後方向)における第一リブ11及び第二リブ12の配置範囲(
図10に図示する第一リブ11の前端面から第二リブ12の後端面までの範囲E)内に位置するように形成されている。
【0056】
つぎに、
図11を参照しつつ、コネクタ用キャップ1にコネクタ23の嵌合部5が収容された状態において、コネクタ用キャップ1に外力が加わったときの作用について説明する。ここで、上記外力とは、例えば、先に説明したケーブル2のドラム巻回作業においてケーブル2や分岐部17にて押し潰されるように加わる外力をいうものとする。
【0057】
本実施例によれば、
図11に図示するように、例えば、ケーブル2の分岐部17にて押し潰されるように外力(
図11に図示する矢印F4)が加わった場合、この外力を緩衝部としての第一リブ11及び第二リブ12それぞれに分散させ(
図11に図示する矢印F5、F6参照)、嵌合確認窓24の周縁25に外力が直接負荷されないようになる。
【0058】
また、本実施例によれば、第一リブ11と第二リブ12とが、外周面16に突設され、且つ、外周面16の周方向にわたって形成されるため、外周面16の周方向における、どの部分に外力が加わったとしても、この外力を第一リブ11及び第二リブ12それぞれに、より確実に分散させることができる。したがって、第一リブ11と第二リブ12とが上記の通り形成されている点からも、嵌合確認窓24の周縁25に外力が直接負荷されないようになる。
【0059】
また、本実施例によれば、保護部10のコネクタ収容部14に嵌合部5が挿入された状態において、嵌合確認窓24の周縁25が第一リブ11及び第二リブ12の配置範囲(
図10に図示する範囲E)内に位置するため、上記周縁25は、第一リブ11及び第二リブ12の上記配置範囲内に確実に納まるようになる。このように、上記周縁25が第一リブ11及び第二リブ12の上記配置範囲内に確実に納まるため、コネクタ用キャップ1に外力が加わった場合であっても、より確実に、嵌合確認窓24の周縁25に外力が直接負荷されないようになる。
【0060】
また、本実施例によれば、ケーブル2の端末に設けられるコネクタ23に、本実施例のコネクタ用キャップ1を装着した状態で、ドラムの胴部に上記端末を巻回始点としてケーブル2を巻回するため、巻回されたケーブル2や分岐部17に押し潰されるような形で外力がコネクタ用キャップ1に加わったとしても、この外力が第一リブ11及び第二リブ12に分散させ、嵌合確認窓24の周縁25に外力が直接負荷されないようになる。
【0061】
つぎに、本実施例の効果について説明する。
以上、
図1-
図11を参照しながら説明してきたように、本実施例によれば、コネクタ用キャップ1が装着されたコネクタ3、23に外力が加わっても、この外力が嵌合部5における、この嵌合部5の他の部分と比較して強度が低下する部分(コネクタ3における接続端面8、コネクタ23における嵌合確認窓24の周縁25)に直接負荷されないようになる。このため、嵌合部5に加わる外力を従来のコネクタ用キャップを用いた場合と比較して軽減することができるという効果を奏する。したがって、本実施例によれば、上記外力の影響によるコネクタ3、23の破損を防止することができるという効果を奏する。
【0062】
その他、本実施例によれば、下記のような効果を奏する。すなわち、本実施例によれば、従来技術においてコネクタ3、23を保護するために用いていた副資材を廃止することができ、作業工数の低減及びコストの低減を図ることができるという効果を奏する。
【実施例2】
【0063】
本発明に係るコネクタ用キャップは、実施例1の他、下記の実施例2を用いてもよいものとする。以下、
図12を参照しながら、実施例2について説明する。
【0064】
図12は本発明のコネクタ用キャップの実施例2を示す斜視図である。なお、図中の矢印は、前後方向を示している(矢印の方向は一例であるものとする)。
【0065】
図12に図示するコネクタ用キャップ31は、底壁32と、保護部33と、第一リブ34及び第二リブ35と、把持部36と、を備えている。なお、
図12において、引用符号37は、外周面を示している。また、
図12において、引用符号38は、コネクタ挿入口を示している。本実施例では、以下、把持部36について説明する。なお、コネクタ用キャップ31の、把持部36以外の各構成については、実施例1と基本的に同一の構成であるため、詳細な説明を省略する。
【0066】
図12に図示するように、把持部36は、保護部33の軸方向の一端(
図12における前後方向の前端)に設けられている。より詳細に説明すると、把持部36は、
図12に図示するように、底壁32の外面から突出するように設けられている。把持部36は、コネクタ3(又はコネクタ23)へのコネクタ用キャップ31の着脱作業時に作業者が把持する部分として形成されている。
【0067】
本実施例において、把持部36は、
図12に図示するように、舌片状に形成されているが、上記着脱作業時に作業者が把持し易い形状であれば他の形状であってもよいものとする。
【0068】
本実施例によれば、コネクタ3、23へのコネクタ用キャップ31の着脱作業時に、作業者が把持部36を把持して着脱作業を行うことができる。このように、本実施例によれば、把持部36を把持して着脱作業を行うことにより、コネクタ用キャップ31の上記着脱作業の作業性が向上する。
【0069】
つぎに、本実施例の効果について説明する。
以上、
図12を参照しながら説明してきたように、本実施例によれば、実施例1と同様の効果を奏する。
【0070】
この他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【0071】
上記説明では、実施例1におけるコネクタ用キャップ1(
図1及び
図2参照)、及び、実施例2におけるコネクタ用キャップ31(
図12参照)は、いずれも円筒状に形成されているが、これに限らず、つぎのような構成にしてもよいものとする。
【0072】
すなわち、本発明のコネクタ用キャップは、特に図示しないが、例えば、角筒状(保護部の軸方向に直交する断面が矩形)に形成されるものであってもよいものとする。本発明のコネクタ用キャップを角筒状に形成することにより、角筒状コネクタに装着することができる。
【符号の説明】
【0073】
1、31…コネクタ用キャップ、 2…ケーブル(導電路)、 3、23…コネクタ、 4…本体部、 5…嵌合部、 6…嵌合空間、 7…外面、 8…接続端面、 9、32…底壁、 10、33…保護部、 11、34…第一リブ(緩衝部)、 12、35…第二リブ(緩衝部)、 13、38…コネクタ挿入口、 14…コネクタ収容部、 15…内面、 16、37…外周面、 17…分岐部、 24…嵌合確認窓、 25…周縁、 36…把持部