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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/04 20060101AFI20231212BHJP
   B60K 23/08 20060101ALI20231212BHJP
   F16H 1/08 20060101ALI20231212BHJP
   F16H 1/14 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B60K17/04 D
B60K23/08 Z
F16H1/08
F16H1/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020041208
(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公開番号】P2021142798
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】安田 紀史
(72)【発明者】
【氏名】高木 浩
(72)【発明者】
【氏名】蔵本 孝史
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-054620(JP,A)
【文献】特開平05-330359(JP,A)
【文献】特開2010-095105(JP,A)
【文献】特開2005-297673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/04
B60K 23/08
F16H 1/08
F16H 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の車軸に動力を伝達する差動装置と、前記差動装置に動力を伝達する動力伝達機構と、を有する動力伝達ユニットと、
前記動力伝達ユニットに動力を伝達する伝動軸と、を備え、
前記動力伝達機構は、前記伝動軸からの動力が伝達される第一ギヤ機構と、前記第一ギヤ機構からの動力を前記差動装置に伝達する第二ギヤ機構と、を有し、
前記第一ギヤ機構は、前記伝動軸からの動力が伝達される第一駆動ギヤと、前記第一駆動ギヤの回転軸心に直交する回転軸心周りで回転可能に構成され、前記第一駆動ギヤと噛み合う第一従動ギヤと、を有し、
前記第二ギヤ機構は、前記第一従動ギヤと同一の回転軸心周りで回転可能に構成され、前記第一従動ギヤと一体に回転する第二駆動ギヤと、前記第二駆動ギヤの回転軸心と平行な回転軸心周りで回転可能に構成され、前記第二駆動ギヤと噛み合う第二従動ギヤと、を有し、
前記動力伝達機構は、機体左右方向に沿って延びる状態で設けられ、前記第一従動ギヤ及び前記第二駆動ギヤを支持する支軸を有し、
前記支軸は、前記車軸よりも下側に配置されている作業車。
【請求項2】
前記動力伝達ユニットは、前記差動装置及び前記動力伝達機構を収容するケースを有し、
前記動力伝達機構は、前記ケースの後部から後方に向かって突出する状態で設けられ、前記第一駆動ギヤを支持する入力軸を有し、
前記入力軸は、前記車軸よりも下側に配置されている請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記入力軸の上方に、左右の車輪を操舵するためのパワーステアリング装置が配置されている請求項2に記載の作業車。
【請求項4】
前記伝動軸と前記入力軸との間に設けられ、前記伝動軸からの動力を前記入力軸に伝達する動力伝達状態と、前記伝動軸からの動力を前記入力軸に伝達しない動力遮断状態とに切り替え可能に構成された切り替え装置を備え、
前記切り替え装置は、前記動力伝達ユニットの後隣りに配置されている請求項2又は3に記載の作業車。
【請求項5】
側面視で機体前後方向に沿って延びる左右の主フレームを備え、
前記左右の主フレームの前部同士の間に、前記左右の主フレームの間隔が狭くなる幅狭部が形成され、
前記動力伝達ユニット及び前記切り替え装置は、前記幅狭部に配置されている請求項4に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業車として、例えば、特許文献1に記載の作業車が知られている。特許文献1に記載の作業車には、左右の車軸(文献では「フロントドライブシャフト〔32〕、〔33〕」)に動力を伝達する差動装置(文献では「差動制限装置〔50〕」)と、差動装置に動力を伝達する動力伝達機構(文献では「ドライブピニオン〔54〕、リングギヤ〔75〕」)と、を有する動力伝達ユニット(文献では「終減速装置〔21〕」)と、動力伝達機構に動力を伝達する伝動軸(文献では「フロントプロペラシャフト〔31〕」)と、が備えられている。動力伝達機構には、伝動軸からの動力が伝達される駆動ギヤ(文献では「ドライブピニオン〔54〕」)と、駆動ギヤと噛み合う従動ギヤ(文献では「リングギヤ〔75〕」)と、が備えられている。特許文献1に記載の作業車では、伝動軸からの動力が駆動ギヤ及び従動ギヤを介して差動装置に伝達されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-172431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の作業車では、伝動軸と差動装置との間において、伝動軸からの動力を一対のギヤのみによって減速しているため、従動ギヤ(文献では「リングギヤ〔75〕」)の大型化、ひいては、動力伝達ユニットの大型化を招いている。
【0005】
上記状況に鑑み、動力伝達ユニットの小型化が可能な作業車が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴は、左右の車軸に動力を伝達する差動装置と、前記差動装置に動力を伝達する動力伝達機構と、を有する動力伝達ユニットと、前記動力伝達ユニットに動力を伝達する伝動軸と、を備え、前記動力伝達機構は、前記伝動軸からの動力が伝達される第一ギヤ機構と、前記第一ギヤ機構からの動力を前記差動装置に伝達する第二ギヤ機構と、を有し、前記第一ギヤ機構は、前記伝動軸からの動力が伝達される第一駆動ギヤと、前記第一駆動ギヤの回転軸心に直交する回転軸心周りで回転可能に構成され、前記第一駆動ギヤと噛み合う第一従動ギヤと、を有し、前記第二ギヤ機構は、前記第一従動ギヤと同一の回転軸心周りで回転可能に構成され、前記第一従動ギヤと一体に回転する第二駆動ギヤと、前記第二駆動ギヤの回転軸心と平行な回転軸心周りで回転可能に構成され、前記第二駆動ギヤと噛み合う第二従動ギヤと、を有し、前記動力伝達機構は、機体左右方向に沿って延びる状態で設けられ、前記第一従動ギヤ及び前記第二駆動ギヤを支持する支軸を有し、前記支軸は、前記車軸よりも下側に配置されていることにある。
【0007】
本特徴構成によれば、伝動軸と差動装置との間において、伝動軸からの動力を第一ギヤ機構と第二ギヤ機構とによって減速(二段減速)可能な構成となる。これにより、第一ギヤ機構の従動ギヤ及び第二ギヤ機構の従動ギヤの小型化、ひいては、動力伝達ユニットの小型化を実現することができる。
【0008】
【0009】
本特徴構成によれば、伝動軸からの動力が第一駆動ギヤから第一従動ギヤに伝達され、第一従動ギヤと一体に回転する第二駆動ギヤから第二従動ギヤに伝達されることになる。
これにより、伝動軸からの動力の回転軸心方向を車軸の回転軸心方向に合うように変換しながら、伝動軸と差動装置との間の減速比を適切に設定することができる。
【0010】
【0011】
本特徴構成によれば、動力伝達ユニットのうち支軸に対応する部分の高さ位置をできるだけ低くして、動力伝達ユニットの上方に他物を配置する空間を確保し易くなる。
【0012】
さらに、本発明において、前記動力伝達ユニットは、前記差動装置及び前記動力伝達機構を収容するケースを有し、前記動力伝達機構は、前記ケースの後部から後方に向かって突出する状態で設けられ、前記第一駆動ギヤを支持する入力軸を有し、前記入力軸は、前記車軸よりも下側に配置されていると好適である。
【0013】
本特徴構成によれば、入力軸の高さ位置をできるだけ低くして、入力軸の上方に他物を配置する空間を確保し易くなる。
【0014】
さらに、本発明において、前記入力軸の上方に、左右の車輪を操舵するためのパワーステアリング装置が配置されていると好適である。
【0015】
本特徴構成によれば、入力軸の上方の空間をパワーステアリング装置を配置する空間として利用することができる。
【0016】
さらに、本発明において、前記伝動軸と前記入力軸との間に設けられ、前記伝動軸からの動力を前記入力軸に伝達する動力伝達状態と、前記伝動軸からの動力を前記入力軸に伝達しない動力遮断状態とに切り替え可能に構成された切り替え装置を備え、前記切り替え装置は、前記動力伝達ユニットの後隣りに配置されていると好適である。
【0017】
本特徴構成によれば、作業車を二輪駆動状態と四輪駆動状態とに切り替える構成を、切り替え装置によって容易に実現することができる。また、動力伝達ユニットの後隣りの空間を切り替え装置を配置する空間として利用することができる。
【0018】
さらに、本発明において、側面視で機体前後方向に沿って延びる左右の主フレームを備え、前記左右の主フレームの前部同士の間に、前記左右の主フレームの間隔が狭くなる幅狭部が形成され、前記動力伝達ユニット及び前記切り替え装置は、前記幅狭部に配置されていると好適である。
【0019】
本特徴構成によれば、幅狭部の空間を動力伝達ユニット及び切り替え装置を配置する空間として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】多目的車両を示す左側面図である。
図2】走行機体の前部を示す底面図である。
図3】動力伝達構成を示す平面図である。
図4】二輪駆動状態における動力伝達ユニットを示す平面断面図である。
図5】動力伝達ユニットを示す左側面断面図である。
図6】四輪駆動状態における動力伝達ユニットを示す平面断面図である。
図7】第一の別実施形態に係る切り替え装置を示す平面図である。
図8】第二の別実施形態に係る切り替え装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。なお、以下の説明では、矢印Fの方向を「機体前側」、矢印Bの方向を「機体後側」、矢印Lの方向を「機体左側」、矢印Rの方向を「機体右側」とする。
【0022】
〔多目的車両の全体構成〕
図1には、本発明に係る「作業車」に相当するユーティリティビークル(多目的車両)を示している。本車両には、走行機体1と、ボンネット2と、乗員が搭乗する搭乗部3と、ダンプ式の荷台4と、水冷式のエンジンEと、変速部5と、が備えられている。走行機体1には、機体フレーム6と、走行装置7と、が備えられている。機体フレーム6には、側面視で機体前後方向に沿って延びる左右の主フレーム6Aが備えられている。
【0023】
走行装置7には、操舵可能、かつ、駆動可能な左右の前輪7Fと、操舵不能、かつ、駆動可能な左右の後輪7Bと、が備えられている。走行装置7は、左右の後輪7Bのみが駆動する二輪駆動状態と左右の前輪7F及び左右の後輪7Bが駆動する四輪駆動状態とに切り替え可能に構成されている。
【0024】
ボンネット2は、搭乗部3の前方に配置されている。ボンネット2には、エンジンE用の冷却水を冷却するラジエータ(図示省略)等が収容されている。
【0025】
搭乗部3には、前搭乗部8と、後搭乗部9と、乗員保護用のロプス10と、が備えられている。前搭乗部8には、ステアリングハンドル11と、前部座席12と、が備えられている。ステアリングハンドル11は、パワーステアリング装置14(図2及び図3参照)を介して左右の前輪7Fと操舵可能に接続されている。後搭乗部9には、後部座席13が備えられている。
【0026】
荷台4は、搭乗部3の後方に配置されている。エンジンE及び変速部5は、荷台4の下方に配置されている。
【0027】
図1及び図2に示すように、左右の前輪7Fは、左右のサスペンション装置15を介して左右の主フレーム6Aの前部に支持されている。左右の主フレーム6Aの前部同士の間には、左右の主フレーム6Aの間隔が狭くなる幅狭部6Bが形成されている。サスペンション装置15には、サスペンションアーム16と、ダンパ17と、が備えられている。サスペンションアーム16は、機体前後方向に沿って延びる揺動軸心Y1周りで上下揺動可能なように、主フレーム6Aの前部に支持されている。サスペンションアーム16の先端部には、前輪7Fが操舵可能に支持されている。ダンパ17は、機体フレーム6とサスペンションアーム16とに亘って設けられている。
【0028】
図3に示すように、変速部5には、エンジンEからの動力を無段階に変速するベルト式の無段変速装置18と、無段変速装置18からの動力を変速するトランスミッション19と、が備えられている。トランスミッション19には、ギヤ式の変速機構(図示省略)や差動装置(図示省略)が備えられている。トランスミッション19には、左右の後車軸20がトランスミッション19からの動力を伝達可能に接続されている。トランスミッション19からの動力は、左右の後車軸20を介して左右の後輪7Bに伝達されることになる。
【0029】
〔動力伝達ユニット〕
トランスミッション19からの動力を左右の前車軸21を介して左右の前輪7Fに伝達する動力伝達ユニット22が設けられている。トランスミッション19と動力伝達ユニット22とに亘って、トランスミッション19からの動力を動力伝達ユニット22に伝達する伝動軸23が設けられている。伝動軸23は、トランスミッション19から前方に向かって延び出ている。
【0030】
図4及び図5に示すように、動力伝達ユニット22には、左右の前車軸21に動力を伝達する差動装置24と、差動装置24に動力を伝達する動力伝達機構25と、差動装置24及び動力伝達機構25を収容する前車軸ケース26と、が備えられている。動力伝達ユニット22は、幅狭部6Bに配置されている。動力伝達ユニット22の下端は、主フレーム6Aの下面S2よりも下側に食み出していない。動力伝達ユニット22の下方には、動力伝達ユニット22を下方から覆うカバー42が設けられている。
【0031】
前車軸ケース26は、左ケース部26Lと右ケース部26Rとに分割可能に構成されている。前車軸ケース26は、その上面が側面視で後下がりに傾斜する姿勢で配置されている。
【0032】
本実施形態では、差動装置24は、差動制限装置(LSD:Limited Slip
Differential)によって構成されている。差動装置24には、左右の前車軸21が差動装置24からの動力を伝達可能に接続されている。差動装置24には、差動ケース24Aが備えられている。差動ケース24Aは、機体左右方向に沿って延びる回転軸心X1周りで回転可能なように、軸受け27を介して前車軸ケース26(左ケース部26L)に支持されている。
【0033】
〔動力伝達機構〕
動力伝達機構25には、伝動軸23からの動力が伝達される第一ギヤ機構28と、第一ギヤ機構28からの動力を差動装置24に伝達する第二ギヤ機構29と、支軸30と、入力軸31と、が備えられている。
【0034】
第一ギヤ機構28には、伝動軸23からの動力が伝達される第一駆動ギヤ28Aと、第一駆動ギヤ28Aと噛み合う第一従動ギヤ28Bと、が備えられている。本実施形態では、第一駆動ギヤ28A及び第一従動ギヤ28Bは、夫々、スパイラルベベルギヤによって構成されている。第一駆動ギヤ28Aは、機体前後方向に沿って延びる回転軸心Y2周りで回転可能に構成されている。第一駆動ギヤ28Aは、入力軸31の前端部に入力軸31と一体的に形成されている。
【0035】
第一従動ギヤ28Bは、機体左右方向に沿って延びる回転軸心X2周りで回転可能に構成されている。すなわち、第一従動ギヤ28Bは、第一駆動ギヤ28Aの回転軸心Y2に直交する回転軸心X2周りで回転可能に構成されている。第一従動ギヤ28Bは、支軸30の左側部分にスプライン嵌合されている。第一従動ギヤ28Bは、第一駆動ギヤ28Aと第一従動ギヤ28Bとの間で減速可能なように、第一駆動ギヤ28Aよりも大径のギヤ(歯数が多いギヤ)によって構成されている。
【0036】
第二ギヤ機構29には、第一従動ギヤ28Bと一体に回転する第二駆動ギヤ29Aと、第二駆動ギヤ29Aと噛み合う第二従動ギヤ29Bと、が備えられている。本実施形態では、第二駆動ギヤ29A及び第二従動ギヤ29Bは、夫々、ヘリカルギヤによって構成されている。第二駆動ギヤ29Aは、第一従動ギヤ28Bと同一の回転軸心X2周りで回転可能に構成されている。第二駆動ギヤ29Aは、支軸30の右側部分に支軸30と一体的に形成されている。
【0037】
第二従動ギヤ29Bは、差動ケース24Aと一体に回転可能なように、差動ケース24Aの右側部にボルト連結されている。第二従動ギヤ29Bは、機体左右方向に沿って延びる回転軸心X1周りで回転可能なように、軸受32を介して前車軸ケース26(右ケース部26R)に支持されている。すなわち、第二従動ギヤ29Bは、第二駆動ギヤ29Aの回転軸心X2と平行な回転軸心X1周りで回転可能に構成されている。第二従動ギヤ29Bは、第二駆動ギヤ29Aと第二従動ギヤ29Bとの間で減速可能なように、第二駆動ギヤ29Aよりも大径のギヤ(歯数が多いギヤ)によって構成されている。
【0038】
支軸30は、機体左右方向に沿って延びる状態で設けられている。支軸30には、第一従動ギヤ28B及び第二駆動ギヤ29Aが支持されている。支軸30は、機体左右方向に沿って延びる回転軸心X2周りで回転可能なように、左右の軸受け33、34を介して前車軸ケース26に支持されている。支軸30の左端部は、軸受け33を介して左ケース部26Lに支持されている。支軸30の右端部は、軸受け34を介して右ケース部26Rに支持されている。
【0039】
支軸30は、前車軸21よりも下側に配置されている。すなわち、支軸30の軸心(回転軸心X2)は、前車軸21の軸心(回転軸心X1)よりも下側に位置している。言い換えると、支軸30の軸心(回転軸心X2)は、主フレーム6Aの上面S1よりも下側に位置している。
【0040】
入力軸31は、前車軸ケース26の後部から後方に向かって突出する状態で設けられている。入力軸31は、機体前後方向に沿って延びる回転軸心Y2周りで回転可能なように、前後の軸受35を介して前車軸ケース26に支持されている。入力軸31の前端部には、第一駆動ギヤ28Aが支持されている。
【0041】
入力軸31は、前車軸21よりも下側に配置されている。すなわち、入力軸31の軸心(回転軸心Y2)は、前車軸21の軸心(回転軸心X1)よりも下側に位置している。言い換えると、入力軸31の軸心(回転軸心Y2)は、支軸30の軸心(回転軸心X2)と同一の高さ位置に位置している。入力軸31の上方には、左右の前輪7Fを操舵するためのパワーステアリング装置14が配置されている。
【0042】
〔クラッチ機構〕
伝動軸23と入力軸31との間には、伝動軸23からの動力を入力軸31に伝達する動力伝達状態と、伝動軸23からの動力を入力軸31に伝達しない動力遮断状態とに切り替え可能に構成されたクラッチ機構36(本発明に係る「切り替え装置」に相当)が設けられている。クラッチ機構36が動力伝達状態と動力遮断状態とに切り替わることにより、走行装置7が四輪駆動状態と二輪駆動状態とに切り替わることになる。
【0043】
本実施形態では、クラッチ機構36と、クラッチ機構36を収容するクラッチケース37と、クラッチ機構36を動力伝達状態と動力遮断状態とに切り替える切り替え機構38と、がユニット(駆動輪切り替えユニットU)として構成されている。
【0044】
駆動輪切り替えユニットUは、幅狭部6Bにおいて、動力伝達ユニット22の後隣りに配置されている。駆動輪切り替えユニットUの下端は、主フレーム6Aの下面S2よりも下側に食み出していない。
【0045】
クラッチ機構36は、噛み合い式の爪クラッチ(ドッグクラッチ)によって構成されている。クラッチ機構36には、伝動軸23の前端部に設けられた駆動爪36Aと、入力軸31の後端部に設けられた従動爪36Bと、が備えられている。駆動爪36Aは、伝動軸23に対して伝動軸23の軸心(回転軸心Y2)方向に沿って移動可能、かつ、伝動軸23に対して伝動軸23の軸心(回転軸心Y2)周りで相対回転不能に設けられている。従動爪36Bは、入力軸31に対して入力軸31の軸心(回転軸心Y2)方向に沿って移動不能、かつ、入力軸31に対して入力軸31の軸心(回転軸心Y2)周りで相対回転不能に設けられている。
【0046】
クラッチケース37は、前車軸ケース26に対して着脱可能なように、前車軸ケース26の後面部にボルト連結されている。伝動軸23の前端部は、クラッチケース37に後方から差し込まれ、かつ、前後の軸受け39を介してクラッチケース37に回転可能に支持されている。
【0047】
切り替え機構38は、駆動爪36Aを伝動軸23の軸心(回転軸心Y2)方向に沿って移動可能なように、駆動爪36Aと接続されている。ここで、前搭乗部8には、クラッチ機構36を動力伝達状態と動力遮断状態とに切り替え操作するための人為操作式の操作具(図示省略)が設けられている。前記操作具は、連係機構(図示省略)を介して切り替え機構38と接続されている。運転者が前記操作具を操作することにより、前記連係機構及び切り替え機構38を介してクラッチ機構36を動力伝達状態と動力遮断状態とに切り替える(駆動爪36Aを伝動軸23の軸心(回転軸心Y2)方向に沿って移動させる)ことができる。
【0048】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、本発明に係る「切り替え装置」は、クラッチ機構36によって構成されている。しかし、本発明に係る「切り替え装置」は、電動の切り替え装置によって構成されていてもよい。図7では、電動の切り替え装置として、例えば、電磁クラッチ40が採用されている。電磁クラッチ40は、前車軸ケース26の後隣りに配置され、かつ、前車軸ケース26の後面部にボルト連結されている。
【0049】
(2)上記実施形態では、運転者が前記操作具を操作することにより、前記連係機構及び切り替え機構38を介してクラッチ機構36を動力伝達状態と動力遮断状態とに切り替えることができる。しかし、例えば、図8に示すように、切り替え機構38は、連係機構41を介してモータMと接続されていてもよい。連係機構41には、モータMによって押し引き駆動されるロッド41Bと、切り替え機構38とロッド41Bとに亘って設けられるワイヤ41Aと、が備えられている。ワイヤ41Aは、プッシュプル式のワイヤによって構成されている。モータMの動力がロッド41B及びワイヤ41Aを介して切り替え機構38に伝達されることにより、クラッチ機構36が動力伝達状態と動力遮断状態とに切り替えられることになる。
【0050】
(3)上記実施形態では、差動装置24は、差動制限装置(LSD)によって構成されている。しかし、差動装置24は、LSD以外の差動装置によって構成されていてもよい。
【0051】
(4)上記実施形態では、第一駆動ギヤ28A及び第一従動ギヤ28Bは、夫々、スパイラルベベルギヤによって構成されている。しかし、第一駆動ギヤ28A及び第一従動ギヤ28Bは、夫々、ストレートベベルギヤによって構成されていてもよい。
【0052】
(5)上記実施形態では、第二駆動ギヤ29A及び第二従動ギヤ29Bは、夫々、ヘリカルギヤによって構成されている。しかし、第二駆動ギヤ29A及び第二従動ギヤ29Bは、夫々、平ギヤによって構成されていてもよい。
【0053】
(6)上記実施形態では、駆動輪切り替えユニットUは、動力伝達ユニット22の後隣りに配置されている。しかし、駆動輪切り替えユニットUは、トランスミッション19の近傍に配置されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、多目的車両の他、トラクタ、コンバイン、田植機等の農業作業車や建設作業車にも利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
6A 主フレーム
6B 幅狭部
7F 前輪(車輪)
14 パワーステアリング装置
21 前車軸(車軸)
22 動力伝達ユニット
23 伝動軸
24 差動装置
25 動力伝達機構
26 前車軸ケース(ケース)
28 第一ギヤ機構
28A 第一駆動ギヤ
28B 第一従動ギヤ
29 第二ギヤ機構
29A 第二駆動ギヤ
29B 第二従動ギヤ
30 支軸
31 入力軸
36 クラッチ機構(切り替え装置)
X1 回転軸心(第二駆動ギヤの回転軸心と平行な回転軸心)
X2 回転軸心(第一駆動ギヤの回転軸心に直交する回転軸心、第一従動ギヤと同一の回転軸心、第二駆動ギヤの回転軸心)
Y2 回転軸心(第一駆動ギヤの回転軸心)



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8