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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   B60K 23/08 20060101AFI20231212BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20231212BHJP
   B60K 23/04 20060101ALI20231212BHJP
   B60K 17/34 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B60K23/08 C
A01B69/00 302
B60K23/04 E
B60K17/34 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020045273
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021146757
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】石井 優史
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-172951(JP,A)
【文献】特開2014-124993(JP,A)
【文献】特開2014-189215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 23/08
A01B 69/00
B60K 23/04
B60K 17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の駆動輪を有する走行装置と、
前記左右の駆動輪に動力を伝達する差動装置と、
前記差動装置を差動状態と非差動状態とに切り替える差動ロック装置と、
前記走行装置を二輪駆動状態と四輪駆動状態とに切り替える駆動輪切り替え装置と、
前記差動ロック装置を駆動する第一アクチュエータと、
前記駆動輪切り替え装置を駆動する第二アクチュエータと、
前記第一アクチュエータを駆動操作するための第一操作具と、
前記第二アクチュエータを駆動操作するための第二操作具と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記第一操作具が人為操作されるのに応じて、前記第一アクチュエータを駆動するように構成された第一駆動部と、
前記第二操作具が人為操作されるのに応じて、前記第二アクチュエータを駆動するように構成された第二駆動部と、を有しており、
前記第一駆動部は、車速が第一基準車速よりも高速である場合、前記第一操作具が人為操作されても、前記第一アクチュエータを駆動せずに、前記第一アクチュエータの駆動を保留し、かつ、前記第一アクチュエータの駆動を保留後、車速が前記第一基準車速以下になると、前記第一操作具が人為操作されなくても、前記第一アクチュエータを自動的に駆動する作業車。
【請求項2】
前記第二駆動部は、車速が第二基準車速よりも高速である場合、前記第二操作具が人為操作されても、前記第二アクチュエータを駆動せずに、前記第二アクチュエータの駆動を保留する請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記第二駆動部は、前記第二アクチュエータの駆動を保留後、車速が前記第二基準車速以下になると、前記第二アクチュエータを駆動する請求項に記載の作業車。
【請求項4】
前記第一基準車速と前記第二基準車速とは、同一である請求項又はに記載の作業車。
【請求項5】
エンジンと、
前記エンジンから前記走行装置への動力伝達経路に設けられ、前記エンジンからの動力を変速する変速装置と、
前記変速装置を変速操作するための変速操作具と、を備え、
前記変速操作具は、前記変速装置が駐車状態に切り替わる駐車位置に位置変更可能に構成され、
前記第一駆動部は、前記変速操作具が前記駐車位置に人為操作されるのに応じて、前記差動ロック装置が前記差動装置を非差動状態に切り替えるように、前記第一アクチュエータを駆動する請求項1からの何れか一項に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業車として、例えば、特許文献1に記載の作業車が知られている。特許文献1に記載の作業車には、左右の駆動輪(文献では「後輪〔12〕」)を有する走行装置と、左右の駆動輪に動力を伝達する差動装置(文献では「差動装置〔17〕」)と、差動装置を差動状態と非差動状態とに切り替える差動ロック装置(文献では「ロック機構〔78〕」)と、走行装置を二輪駆動状態と四輪駆動状態とに切り替える駆動輪切り替え装置(文献では「駆動切換機構〔89〕」)と、が備えられている。差動ロック装置は、ペダル(文献では「デフロックペダル」)によって操作可能に構成されている。駆動輪切り替え装置は、レバー(文献では「切換レバー」)によって操作可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-67081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の作業車では、ペダルと差動ロック装置とをワイヤ等によって機械的に連係したり、レバーと駆動輪切り替え装置とをワイヤ等によって機械的に連係したりする必要がある。このため、差動ロック装置を操作するための構成及び駆動輪切り替え装置を操作するための構成を簡素化する点で改善の余地がある。
【0005】
上記状況に鑑み、差動ロック装置を操作するための構成及び駆動輪切り替え装置を操作するための構成を簡素化することが可能な作業車が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴は、左右の駆動輪を有する走行装置と、前記左右の駆動輪に動力を伝達する差動装置と、前記差動装置を差動状態と非差動状態とに切り替える差動ロック装置と、前記走行装置を二輪駆動状態と四輪駆動状態とに切り替える駆動輪切り替え装置と、前記差動ロック装置を駆動する第一アクチュエータと、前記駆動輪切り替え装置を駆動する第二アクチュエータと、前記第一アクチュエータを駆動操作するための第一操作具と、前記第二アクチュエータを駆動操作するための第二操作具と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記第一操作具が人為操作されるのに応じて、前記第一アクチュエータを駆動するように構成された第一駆動部と、前記第二操作具が人為操作されるのに応じて、前記第二アクチュエータを駆動するように構成された第二駆動部と、を有しており、前記第一駆動部は、車速が第一基準車速よりも高速である場合、前記第一操作具が人為操作されても、前記第一アクチュエータを駆動せずに、前記第一アクチュエータの駆動を保留し、かつ、前記第一アクチュエータの駆動を保留後、車速が前記第一基準車速以下になると、前記第一操作具が人為操作されなくても、前記第一アクチュエータを自動的に駆動することにある。
【0007】
本特徴構成によれば、第一操作具と第一アクチュエータとが電気的に接続され、第二操作具と第二アクチュエータとが電気的に接続されていることになる。これにより、第一操作具と差動ロック装置とをワイヤ等によって機械的に連係したり、第二操作具と駆動輪切り替え装置とをワイヤ等によって機械的に連係したりする必要がない。すなわち、差動ロック装置を操作するための構成及び駆動輪切り替え装置を操作するための構成を簡素化することが可能な作業車を実現することができる。
ここで、作業車が高速で走行中に、差動ロック装置が駆動されると、差動ロック装置にかかる負荷が大きいため、差動ロック装置を構成する部材の摩耗や破損が懸念される。しかし、本特徴構成によれば、作業車が第一基準車速よりも高速で走行中は、差動ロック装置が駆動されることがないため、差動ロック装置を構成する部材の摩耗や破損を防止することができる。
また、本特徴構成によれば、車速が第一基準車速以下になると、差動ロック装置が自動的に駆動されることになる。これにより、車速が第一基準車速以下になってから、差動ロック装置を駆動するために、作業者が第一操作具を改めて操作する手間を省くことができる。
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
さらに、本発明において、前記第二駆動部は、車速が第二基準車速よりも高速である場合、前記第二操作具が人為操作されても、前記第二アクチュエータを駆動せずに、前記第二アクチュエータの駆動を保留すると好適である。
【0013】
ここで、作業車が高速で走行中に、駆動輪切り替え装置が駆動されると、駆動輪切り替え装置にかかる負荷が大きいため、駆動輪切り替え装置を構成する部材の摩耗や破損が懸念される。しかし、本特徴構成によれば、作業車が高速で走行中は、駆動輪切り替え装置が駆動されることがないため、駆動輪切り替え装置を構成する部材の摩耗や破損を防止することができる。
【0014】
さらに、本発明において、前記第二駆動部は、前記第二アクチュエータの駆動を保留後、車速が前記第二基準車速以下になると、前記第二アクチュエータを駆動すると好適である。
【0015】
本特徴構成によれば、車速が第二基準車速以下になると、駆動輪切り替え装置が自動的に駆動されることになる。これにより、車速が第二基準車速以下になってから、駆動輪切り替え装置を駆動するために、作業者が第二操作具を改めて操作する手間を省くことができる。
【0016】
【0017】
【0018】
さらに、本発明において、前記第一基準車速と前記第二基準車速とは、同一であると好適である。
【0019】
本特徴構成によれば、作業者が第一基準車速と第二基準車速とを混同することがないように、作業者にとって分かり易い制御構成を実現することができる。
【0020】
さらに、本発明において、エンジンと、前記エンジンから前記走行装置への動力伝達経路に設けられ、前記エンジンからの動力を変速する変速装置と、前記変速装置を変速操作するための変速操作具と、を備え、前記変速操作具は、前記変速装置が駐車状態に切り替わる駐車位置に位置変更可能に構成され、前記第一駆動部は、前記変速操作具が前記駐車位置に人為操作されるのに応じて、前記差動ロック装置が前記差動装置を非差動状態に切り替えるように、前記第一アクチュエータを駆動すると好適である。
【0021】
本特徴構成によれば、変速装置が駐車状態に切り替わると、差動装置が非差動状態に切り替わることになる。これにより、変速装置を駐車状態に切り替える操作とは別に、差動装置を非差動状態に切り替える操作を行うことを要せずに、作業車を安定して駐車することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】多目的車両を示す左側面図である。
図2】本車両の制御構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。なお、以下の説明では、図1において、矢印Fの方向を「機体前側」、矢印Bの方向を「機体後側」、矢印Fの方向に向かって左側の方向を「機体左側」、矢印Fの方向に向かって右側の方向を「機体右側」とする。
【0024】
〔多目的車両の全体構成〕
図1には、本発明に係る「作業車」に相当するユーティリティビークル(多目的車両)を示している。本車両には、走行機体1と、ボンネット2と、乗員が搭乗する搭乗部3と、ダンプ式の荷台4と、水冷式のエンジンEと、変速部5と、が備えられている。走行機体1には、機体フレーム6と、走行装置7と、が備えられている。
【0025】
走行装置7には、操舵可能、かつ、駆動可能な左右の前輪7Fと、操舵不能、かつ、駆動可能な左右の後輪7B(本発明に係る「駆動輪」に相当)と、が備えられている。走行装置7は、左右の後輪7Bのみが駆動する二輪駆動状態と、左右の前輪7F及び左右の後輪7Bが駆動する四輪駆動状態とに切り替え可能に構成されている。
【0026】
ボンネット2は、搭乗部3の前方に配置されている。ボンネット2には、エンジンE用の冷却水を冷却するラジエータ8等が収容されている。
【0027】
搭乗部3には、操縦部9と、座席10と、乗員保護用のロプス11と、が備えられている。荷台4は、搭乗部3の後方に配置されている。エンジンE及び変速部5は、荷台4の下方に配置されている。変速部5は、エンジンEから走行装置7への動力伝達経路に設けられている。変速部5には、エンジンEからの動力を無段階に変速するベルト式の無段変速装置12と、変速装置13と、が備えられている。
【0028】
変速装置13には、左右の後車軸7Baが変速装置13からの動力を伝達可能に接続されている。変速装置13からの動力は、左右の後車軸7Baを介して左右の後輪7Bに伝達されることになる。
【0029】
変速装置13からの動力を左右の前輪7Fに伝達する前差動装置14が設けられている。変速装置13と前差動装置14とに亘って、変速装置13からの動力を前差動装置14に伝達する伝動軸15が設けられている。前差動装置14には、左右の前車軸7Faが前差動装置14からの動力を伝達可能に接続されている。前差動装置14からの動力は、左右の前車軸7Faを介して左右の前輪7Fに伝達されることになる。
【0030】
〔変速部〕
図2に示すように、変速装置13には、無段変速装置12からの動力を変速するギヤ式の変速機構16と、変速機構16からの動力を左右の後輪7Bに伝達する後差動装置17(本発明に係る「差動装置」に相当)と、後差動装置17を差動状態と非差動状態とに切り替える差動ロック装置18、走行装置7を二輪駆動状態と四輪駆動状態とに切り替える駆動輪切り替え装置19と、走行装置7を制動可能な駐車ブレーキ装置20と、差動ロック装置18を駆動する第一アクチュエータ21と、駆動輪切り替え装置19を駆動する第二アクチュエータ22と、が備えられている。
【0031】
変速機構16は、前進高速状態と、前進低速状態と、後進変速状態と、中立状態と、駐車状態とに切り替え可能に構成されている。差動ロック装置18は、後差動装置17を非差動状態に切り替える差動ロック状態と、後差動装置17を差動状態に切り替える差動ロック解除状態とに切り替え可能に構成されている。
【0032】
第一アクチュエータ21によって、差動ロック装置18が差動ロック状態と差動ロック解除状態とに切り替えられることになる。本実施形態では、第一アクチュエータ21は、ソレノイドによって構成されている。
【0033】
駆動輪切り替え装置19は、変速装置13の出力軸からの動力を伝動軸15に伝達する動力伝達状態(四輪駆動状態に対応)と、変速装置13の出力軸からの動力を伝動軸15に伝達しない動力遮断状態(二輪駆動状態に対応)とに切り替え可能に構成されている。駆動輪切り替え装置19は、伝動軸15と変速装置13の出力軸とに亘って構成されている。本実施形態では、駆動輪切り替え装置19は、噛み合い式の爪クラッチ(ドッグクラッチ)によって構成されている。
【0034】
第二アクチュエータ22によって、駆動輪切り替え装置19が動力伝達状態と動力遮断状態とに切り替えられることになる。本実施形態では、第二アクチュエータ22は、電磁クラッチによって構成されている。
【0035】
駐車ブレーキ装置20は、走行装置7を制動する制動状態と、走行装置7を制動しない非制動状態とに切り替え可能に構成されている。駐車ブレーキ装置20が制動状態に切り替えられるのに連動して差動ロック装置18が差動ロック状態に切り替わるように、駐車ブレーキ装置20と差動ロック装置18とが連係機構23によって機械的に連係されている。
【0036】
〔操縦部〕
図1及び図2に示すように、操縦部9には、左右の前輪7Fを操舵操作するためのステアリングハンドル24と、変速レバー25(本発明に係る「変速操作具」に相当)と、駐車ブレーキレバー26と、差動ロックスイッチ27(本発明に係る「第一操作具」に相当)と、駆動輪切り替えスイッチ28(本発明に係る「第二操作具」に相当)と、が備えられている。
【0037】
変速レバー25は、変速機構16を変速操作するためのものである。変速レバー25によって変速機構16を変速操作可能なように、変速レバー25と変速機構16とが連係機構29によって機械的に連係されている。変速レバー25は、変速機構16が前進高速状態に切り替わる前進高速位置と、変速機構16が前進低速状態に切り替わる前進低速位置と、変速機構16が後進状態に切り替わる後進位置と、変速機構16が中立状態に切り替わる中立位置と、変速機構16が駐車状態に切り替わる駐車位置とに位置変更可能に構成されている。
【0038】
駐車ブレーキレバー26は、駐車ブレーキ装置20を制動状態と非制動状態とに切り替える操作を行うためのものである。駐車ブレーキレバー26によって駐車ブレーキ装置20を制動状態と非制動状態とに切り替える操作が可能なように、駐車ブレーキレバー26と駐車ブレーキ装置20とが連係機構30によって機械的に連係されている。
【0039】
差動ロックスイッチ27は、後差動装置17を差動状態と非差動状態とに切り替える操作を行うためのものである。すなわち、差動ロックスイッチ27は、差動ロック装置18が差動ロック状態と差動ロック解除状態とに切り替わるように、第一アクチュエータ21を駆動操作するためのものである。差動ロックスイッチ27は、例えば、ロッカー式のスイッチであってもよいし、あるいは、ダイヤル式のスイッチであってもよい。
【0040】
駆動輪切り替えスイッチ28は、走行装置7を二輪駆動状態と四輪駆動状態とに切り替える操作を行うためのものである。すなわち、駆動輪切り替えスイッチ28は、駆動輪切り替え装置19が動力伝達状態と動力遮断状態とに切り替わるように、第二アクチュエータ22を駆動操作するためのものである。駆動輪切り替えスイッチ28は、例えば、ロッカー式のスイッチであってもよいし、あるいは、ダイヤル式のスイッチであってもよい。
【0041】
〔制御構成〕
図2には、本車両の制御構成を示している。本車両の制御構成には、変速レバー25、駐車ブレーキレバー26、差動ロックスイッチ27及び駆動輪切り替えスイッチ28の他、本機ECU31(本発明に係る「制御装置」に相当)、エンジンECU32、駐車位置検出スイッチ33、中立状態検出スイッチ34、ギヤ位置検出スイッチ35及び車速センサ36が備えられている。
【0042】
駐車位置検出スイッチ33は、変速レバー25が駐車位置に位置していることを検出するものである。中立状態検出スイッチ34は、変速機構16が中立状態であることを検出するものである。ギヤ位置検出スイッチ35は、変速機構16のギヤ位置を検出するものである。車速センサ36は、本車両の車速(例えば、変速装置13の出力軸の回転数)を計測するものである。
【0043】
本機ECU31には、第一駆動部37と、第二駆動部38と、記憶部39と、が備えられている。記憶部39には、第一駆動部37や第二駆動部38を実行するためのプログラムの他、詳しくは後述する基準車速Sr(本発明に係る「第一基準車速」、「第二基準車速」に相当)等が記憶されている。本機ECU31とエンジンECU32とは、CAN通信によって互いに通信可能に接続されている。
【0044】
差動ロックスイッチ27、駆動輪切り替えスイッチ28及び駐車位置検出スイッチ33は、夫々の電気信号が本機ECU31に入力されるように、本機ECU31と電気的に接続されている。中立状態検出スイッチ34、ギヤ位置検出スイッチ35及び車速センサ36は、夫々の電気信号がエンジンECU32に入力されるように、エンジンECU32と電気的に接続されている。なお、図2中の実線の矢印は、電気信号の流れを示している。
【0045】
〔第一制御部〕
第一駆動部37は、差動ロックスイッチ27が人為操作されるのに応じて、第一アクチュエータ21を駆動するように構成されている。
【0046】
詳述すると、第一駆動部37は、差動ロックスイッチ27によって後差動装置17を差動状態に切り替える操作が行われると、差動ロック装置18が差動ロック解除状態に切り替わるように、第一アクチュエータ21を駆動するように構成されている。
【0047】
また、第一駆動部37は、差動ロックスイッチ27によって後差動装置17を非差動状態に切り替える操作が行われると、差動ロック装置18が差動ロック状態に切り替わるように、第一アクチュエータ21を駆動するように構成されている。
【0048】
ここで、第一駆動部37は、車速センサ36によって計測された車速が基準車速Srよりも高速である場合、差動ロックスイッチ27が人為操作されても、第一アクチュエータ21を駆動せずに、第一アクチュエータ21の駆動を保留する。
【0049】
詳述すると、第一駆動部37は、車速センサ36によって計測された車速が基準車速Srよりも高速である場合、差動ロックスイッチ27によって後差動装置17を差動状態に切り替える操作が行われても、第一アクチュエータ21を駆動せずに、第一アクチュエータ21の駆動を保留する。
【0050】
また、第一駆動部37は、車速センサ36によって計測された車速が基準車速Srよりも高速である場合、差動ロックスイッチ27によって後差動装置17を非差動状態に切り替える操作が行われても、第一アクチュエータ21を駆動せずに、第一アクチュエータ21の駆動を保留する。
【0051】
そして、第一駆動部37は、第一アクチュエータ21の駆動を保留後、車速センサ36によって計測された車速が基準車速Sr以下になると、第一アクチュエータ21を駆動する。
【0052】
詳述すると、差動ロックスイッチ27によって後差動装置17を差動状態に切り替える操作が行われた場合において、第一駆動部37は、第一アクチュエータ21の駆動を保留したときは、第一アクチュエータ21の駆動を保留後、車速センサ36によって計測された車速が基準車速Sr以下になると、自動的に(再度、差動ロックスイッチ27によって後差動装置17を差動状態に切り替える操作が行われなくても)、差動ロック装置18が差動ロック解除状態に切り替わるように、第一アクチュエータ21を駆動する。
【0053】
また、差動ロックスイッチ27によって後差動装置17を非差動状態に切り替える操作が行われた場合において、第一駆動部37は、第一アクチュエータ21の駆動を保留したときは、第一アクチュエータ21の駆動を保留後、車速センサ36によって計測された車速が基準車速Sr以下になると、自動的に(再度、差動ロックスイッチ27によって後差動装置17を非差動状態に切り替える操作が行われなくても)、差動ロック装置18が差動ロック状態に切り替わるように、第一アクチュエータ21を駆動する。
【0054】
ここで、第一駆動部37は、変速レバー25が駐車位置に人為操作されるのに応じて、差動ロック装置18が後差動装置17を非差動状態に切り替えるように、第一アクチュエータ21を駆動する。
【0055】
すなわち、第一駆動部37は、変速レバー25が駐車位置に位置していることが駐車位置検出スイッチ33によって検出されると、差動ロック装置18が差動ロック状態に切り替わるように、第一アクチュエータ21を駆動する。
【0056】
〔第二制御部〕
第二駆動部38は、駆動輪切り替えスイッチ28が人為操作されるのに応じて、第二アクチュエータ22を駆動するように構成されている。
【0057】
詳述すると、第二駆動部38は、駆動輪切り替えスイッチ28によって走行装置7を二輪駆動状態に切り替える操作が行われると、駆動輪切り替え装置19が動力遮断状態に切り替わるように、第二アクチュエータ22を駆動するように構成されている。
【0058】
また、第二駆動部38は、駆動輪切り替えスイッチ28によって走行装置7を四輪駆動状態に切り替える操作が行われると、駆動輪切り替え装置19が動力伝達状態に切り替わるように、第二アクチュエータ22を駆動するように構成されている。
【0059】
ここで、第二駆動部38は、車速センサ36によって計測された車速が基準車速Srよりも高速である場合、駆動輪切り替えスイッチ28が人為操作されても、第二アクチュエータ22を駆動せずに、第二アクチュエータ22の駆動を保留する。
【0060】
詳述すると、第二駆動部38は、車速センサ36によって計測された車速が基準車速Srよりも高速である場合、駆動輪切り替えスイッチ28によって走行装置7を二輪駆動状態に切り替える操作が行われても、第二アクチュエータ22を駆動せずに、第二アクチュエータ22の駆動を保留する。
【0061】
また、第二駆動部38は、車速センサ36によって計測された車速が基準車速Srよりも高速である場合、駆動輪切り替えスイッチ28によって走行装置7を四輪駆動状態に切り替える操作が行われても、第二アクチュエータ22を駆動せずに、第二アクチュエータ22の駆動を保留する。
【0062】
そして、第二駆動部38は、第二アクチュエータ22の駆動を保留後、車速センサ36によって計測された車速が基準車速Sr以下になると、第二アクチュエータ22を駆動する。
【0063】
詳述すると、駆動輪切り替えスイッチ28によって走行装置7を二輪駆動状態に切り替える操作が行われた場合において、第二駆動部38は、第二アクチュエータ22の駆動を保留したときは、第二アクチュエータ22の駆動を保留後、車速センサ36によって計測された車速が基準車速Sr以下になると、自動的に(再度、駆動輪切り替えスイッチ28によって走行装置7を二輪駆動状態に切り替える操作が行われなくても)、駆動輪切り替え装置19が動力遮断状態に切り替わるように、第二アクチュエータ22を駆動する。
【0064】
また、駆動輪切り替えスイッチ28によって走行装置7を四輪駆動状態に切り替える操作が行われた場合において、第二駆動部38は、第二アクチュエータ22の駆動を保留したときは、第二アクチュエータ22の駆動を保留後、車速センサ36によって計測された車速が基準車速Sr以下になると、自動的に(再度、駆動輪切り替えスイッチ28によって走行装置7を四輪駆動状態に切り替える操作が行われなくても)、駆動輪切り替え装置19が動力伝達状態に切り替わるように、第二アクチュエータ22を駆動する。
【0065】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、第一駆動部37は、車速が基準車速Srよりも高速である場合、差動ロックスイッチ27が人為操作されても、第一アクチュエータ21を駆動せずに、第一アクチュエータ21の駆動を保留する。しかし、第一駆動部37は、車速が基準車速Srよりも高速である場合でも、差動ロックスイッチ27が人為操作されると、第一アクチュエータ21の駆動を保留せずに、第一アクチュエータ21を駆動してもよい。
【0066】
(2)上記実施形態では、第二駆動部38は、車速が基準車速Srよりも高速である場合、駆動輪切り替えスイッチ28が人為操作されても、第二アクチュエータ22を駆動せずに、第二アクチュエータ22の駆動を保留する。しかし、第二駆動部38は、車速が基準車速Srよりも高速である場合でも、駆動輪切り替えスイッチ28が人為操作されると、第二アクチュエータ22の駆動を保留せずに、第二アクチュエータ22を駆動してもよい。
【0067】
(3)上記実施形態では、本発明に係る「駆動輪」は、後輪7Bであり、かつ、本発明に係る「差動装置」は、後差動装置17である。しかし、本発明に係る「駆動輪」は、前輪7Fであり、かつ、本発明に係る「差動装置」は、前差動装置14であってもよい。
【0068】
(4)上記実施形態では、第一アクチュエータ21は、ソレノイドによって構成されている。しかし、第一アクチュエータ21は、ソレノイド以外のアクチュエータによって構成されていてもよい。
【0069】
(5)上記実施形態では、第二アクチュエータ22は、電磁クラッチによって構成されている。しかし、第二アクチュエータ22は、電磁クラッチ以外のアクチュエータによって構成されていてもよい。
【0070】
(6)上記実施形態では、差動ロックスイッチ27と駆動輪切り替えスイッチ28とは、別々のスイッチによって構成されている。しかし、本発明に係る「第一操作具」と本発明に係る「第二操作具」とは、単一の操作具によって構成されていてもよい。
【0071】
(7)上記実施形態では、上記実施形態では、本発明に係る「第一基準車速」と本発明に係る「第二基準車速」とは、同一(基準車速Sr)である。しかし、本発明に係る「第一基準車速」と本発明に係る「第二基準車速」とは、異なっていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、多目的車両の他、トラクタ、コンバイン、田植機等の農業作業車や建設作業車にも利用可能である。
【符号の説明】
【0073】
7 走行装置
7B 後輪(駆動輪)
13 変速装置
17 後差動装置(差動装置)
18 差動ロック装置
19 駆動輪切り替え装置
21 第一アクチュエータ
22 第二アクチュエータ
25 変速レバー(変速操作具)
27 差動ロックスイッチ(第一操作具)
28 駆動輪切り替えスイッチ(第二操作具)
31 本機ECU(制御装置)
37 第一駆動部
38 第二駆動部
E エンジン
Sr 基準車速(第一基準車速、第二基準車速)
図1
図2