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特許7401366燃焼器部品の取付方法、燃焼器部品セット、吊り治具、及び吊り治具セット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】燃焼器部品の取付方法、燃焼器部品セット、吊り治具、及び吊り治具セット
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/60 20060101AFI20231212BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20231212BHJP
   F02C 7/20 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
F23R3/60
F01D25/00 X
F02C7/20 B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020050936
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021148386
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】樋口 覚
(72)【発明者】
【氏名】安田 茂治
(72)【発明者】
【氏名】小林 正治
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0030224(US,A1)
【文献】特開平10-194665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/20
F23R 3/60; 3/42
F01D 25/00;25/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器軸線に対して放射方向に広がり、ガスタービンケーシングに取り付けられる取付フランジと、燃料を噴射するノズルとを有し、前記ノズルが前記取付フランジに対して前記燃焼器軸線が延びる燃焼器軸線方向における基端側と先端側のうち前記先端側に配置されている燃焼器部品を、前記ガスタービンケーシングに取り付ける燃焼器部品の取付方法において、
前記燃焼器部品を紐材で吊るすための少なくとも一つの吊り治具を準備する準備工程と、
前記吊り治具を前記燃焼器部品の前記取付フランジに取り付ける治具取付工程と、
前記燃焼器部品に取り付けられた前記吊り治具に紐材を掛けて、前記吊り治具と共に前記燃焼器部品を紐材で吊る部品吊り工程と、
前記燃焼器部品を吊っている状態での前記燃焼器軸線方向の向きを維持しつつ、前記燃焼器部品を前記先端側に移動させて、前記燃焼器部品の前記取付フランジを前記ガスタービンケーシング中の燃焼器取付位置に接触させる部品押し込み工程と、
前記部品押し込み工程中であって、前記燃焼器部品の前記取付フランジが前記ガスタービンケーシングに接触する前に、前記吊り治具を前記取付フランジから外す治具除去工程と、
前記部品押し込み工程後に、前記取付フランジを前記ガスタービンケーシングの前記燃焼器取付位置に取り付ける部品取付工程と、
を実行し、
前記準備工程で準備する前記吊り治具は、
長手方向を有する調節部材と、
前記調節部材の前記長手方向における長手方向第一側と長手方向第二側とのうち、前記長手方向第一側の端に取り付けられ、前記取付フランジに前記調節部材を取り付けるフランジ取付具と、
前記調節部材の前記長手方向第二側の端に取り付けられ、紐材が掛かって前記燃焼器部品を吊っている際に前記紐材が接する下吊り点になる部分を有する吊り具と、
を有し、
前記下吊り点は、前記吊り治具を前記取付フランジに取り付けた際、前記燃焼器軸線方向で、前記燃焼器部品の重心よりも、前記先端側に位置する、
燃焼器部品の取付方法。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼器部品の取付方法において、
前記燃焼器軸線方向における前記下吊り点の位置は、前記部品吊り工程で、前記燃焼器部品を吊っている状態での鉛直方向に対する前記燃焼器軸線の角度が、前記部品取付工程で、前記取付フランジを前記ガスタービンケーシングに取り付けた状態での鉛直方向に対する前記燃焼器軸線の角度に一致させることができる、位置であり、
前記燃焼器軸線の前記角度は、鉛直方向に広がり、且つ前記燃焼器軸線を含む仮想平面内での角度である、
燃焼器部品の取付方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の燃焼器部品の取付方法において、
前記準備工程で準備する前記少なくとも一つの吊り治具は、二つの吊り治具を有し、
前記治具取付工程では、前記二つの吊り治具のうち一方の吊り治具を前記取付フランジの第一位置に取り付け、前記二つの吊り治具のうち他方の吊り治具を前記取付フランジ中で、前記燃焼器軸線に対する周方向で前記第一位置と異なる第二位置に取り付け、
前記部品吊り工程は、前記一方の吊り治具に第一紐材を掛け、前記他方の吊り治具に第二紐材を掛けて、前記一方の吊り治具及び前記他方の吊り治具と共に前記燃焼器部品を前記第一紐材及び前記第二紐材で吊る紐材掛け工程を含む、
燃焼器部品の取付方法。
【請求項4】
請求項3に記載の燃焼器部品の取付方法において、
前記燃焼器部品には、前記燃焼器軸線に対して垂直な方向に延びる基準線が予め定められており、
前記部品吊り工程は、前記燃焼器部品を吊っている状態での前記燃焼器部品の前記基準線の向きが、前記取付フランジを前記ガスタービンケーシングに取り付けた状態での前記燃焼器部品の前記基準線の向きに一致するよう、前記一方の吊り治具に対する前記他方の吊り治具の相対位置を調節する周方向調節工程を含む、
燃焼器部品の取付方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の燃焼器部品の取付方法において、
前記部品吊り工程は、前記紐材掛け工程の後に行う吊り位置移動工程を含み、
前記吊り位置移動工程では、前記ガスタービンケーシングに対して、前記一方の吊り治具に掛かっている前記第一紐材の上端の位置、及び前記他方の吊り治具に掛かっている前記第二紐材の上端の位置を水平方向成分を含む方向に移動させることで、前記ガスタービンケーシングに対する前記燃焼器部品の水平方向成分を含む方向の位置を変えて、前記燃焼器部品を前記部品押し込み工程の実行前の位置まで移動させ、
前記部品押し込み工程の実行前の前記位置は、前記燃焼器部品を吊っている状態での前記燃焼器軸線方向の向きを維持しつつ、前記燃焼器部品を前記先端側に移動させると、前記燃焼器部品の前記取付フランジを前記ガスタービンケーシング中の前記燃焼器取付位置に接触させることができる位置である、
燃焼器部品の取付方法。
【請求項6】
燃焼器軸線に対して放射方向に広がり、ガスタービンケーシングに取り付けられる取付フランジを有する燃焼器部品を吊るすための吊り治具において、
長手方向を有する調節部材と、
前記調節部材の前記長手方向における長手方向第一側と長手方向第二側とのうち、前記長手方向第一側に端に取り付けられ、前記取付フランジに前記調節部材を取り付けるフランジ取付具と、
紐材が掛かって前記燃焼器部品を吊っている際に前記紐材が接する下吊り点になる部分を有する吊り具と、
を有し、
前記フランジ取付具と前記吊り具とのうち、少なくとも前記フランジ取付具は、前記調節部材に対して、取り付け及び取り外しが可能な構造である、
吊り治具。
【請求項7】
請求項6に記載の吊り治具において、
前記調節部材には、前記調節部材の前記長手方向第一側の端から前記長手方向第二側に向かって凹んだ第一ネジ穴が形成され、
前記フランジ取付具は、前記第一ネジ穴に捩じ込み可能なネジ軸部を有する第一ボルトを有する、
吊り治具。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の吊り治具において、
前記吊り具は、
環状を成し、前記紐材が掛かって前記燃焼器部品を吊っている際に前記紐材が接する前記下吊り点になる部分を有する吊り環と、
前記吊り環が取り付けられている吊り環支持具と、
前記吊り環支持具を前記調節部材の前記長手方向第二側の端に取り付ける支持取付具と、
を有し、
前記支持取付具は、前記調節部材に対して、取り付け及び取り外しが可能な構造である、
吊り治具。
【請求項9】
請求項8に記載の吊り治具において、
前記調節部材には、前記調節部材の前記長手方向第二側の端から前記長手方向第一側に向かって凹んだ第二ネジ穴が形成され、
前記支持取付具は、前記第二ネジ穴に捩じ込み可能なネジ軸部を有する第二ボルトを有する、
吊り治具。
【請求項10】
請求項9に記載の吊り治具において、
前記第二ボルトは、前記吊り環支持具に対して、前記第二ボルトの前記ネジ軸部を中心として回転可能に、且つ、前記第二ボルトの前記ネジ軸部が延びる軸部長手方向に相対移動不能に、前記吊り環支持具は取り付けられている、
吊り治具。
【請求項11】
請求項8から10のいずれか一項に記載の吊り治具において、
前記吊り環は、前記吊り環支持具に対して、揺動可能に取り付けられている、
吊り治具。
【請求項12】
請求項8から11のいずれか一項に記載の吊り治具において、
前記調節部材は、前記長手方向に垂直な方向で互いに相反する側を向いている二つの平坦な工具接触面を有する、
吊り治具。
【請求項13】
請求項8から12のいずれか一項に記載の吊り治具と、
長手方向を有する第二調節部材と、
を備え、
前記第二調節部材の前記長手方向の長さが、前記吊り治具の前記調節部材の前記長手方向の長さと異なり、
前記吊り治具の前記フランジ取付具は、前記第二調節部材の前記長手方向における長手方向第一側と長手方向第二側とのうち、前記長手方向第一側に端に取り付け可能であり、
前記吊り治具の前記吊り具は、前記第二調節部材の前記長手方向第二側の端に取り付け可能である、
吊り治具セット。
【請求項14】
請求項8から12のいずれか一項に記載の吊り治具と、
前記燃焼器部品と、
を備え、
前記燃焼器部品は、燃料を噴射するノズルを有し、前記ノズルが前記取付フランジに対して前記燃焼器軸線が延びる燃焼器軸線方向における基端側と先端側とのうち前記先端側に配置されており、
前記吊り治具の前記下吊り点は、前記吊り治具を前記取付フランジに取り付けた際、前記燃焼器軸線方向で、前記燃焼器部品の重心よりも、前記先端側に位置する、
燃焼器部品セット。
【請求項15】
燃焼器軸線に対して放射方向に広がり、ガスタービンケーシングに取り付けられる取付フランジと、燃料を噴射するノズルとを有し、前記ノズルが前記取付フランジに対して前記燃焼器軸線が延びる燃焼器軸線方向における基端側と先端側とのうち前記先端側に配置されている燃焼器部品と、
前記燃焼器部品を紐材で吊るす吊り治具と、
を備え、
前記吊り治具は、
長手方向を有する調節部材と、
前記調節部材の前記長手方向における長手方向第一側と長手方向第二側とのうち、前記長手方向第一側の端に取り付けられ、前記取付フランジに前記調節部材を取り付けるフランジ取付具と、
前記調節部材の前記長手方向第二側の端に取り付けられ、紐材が掛かって前記燃焼器部品を吊っている際に前記紐材が接する下吊り点になる部分を有する吊り具と、
を有し、
前記下吊り点は、前記吊り治具を前記取付フランジに取り付けた際、前記燃焼器軸線方向で、前記燃焼器部品の重心よりも、前記先端側に位置する、
燃焼器部品セット。
【請求項16】
請求項15に記載の燃焼器部品セットにおいて、
前記フランジ取付具と前記吊り具とのうち、少なくとも前記フランジ取付具は、前記調節部材に対して、取り付け及び取り外しが可能な構造である、
燃焼器部品セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンケーシングに燃焼器部品を取り付ける燃焼器部品の取付方法、この方法を実行するための燃焼器部品セット、吊り治具、及び吊り治具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、ロータ軸線を中心として回転するガスタービンロータと、このガスタービンロータを覆うガスタービンケーシングと、このガスタービンケーシングに取り付けられている複数の燃焼器と、を備えている。複数の燃焼器は、ロータ軸線に対する周方向に並んでガスタービンケーシングに取り付けられている。
【0003】
ガスタービンを組み立てる過程では、燃焼器の一部を構成する燃焼器部品をガスタービンケーシングに取り付ける工程が実行される。
【0004】
複数の燃焼器部品の燃焼器軸線は、水平方向に対して傾いている。
【0005】
以下の特許文献1では、燃焼器部品をガスタービンケーシングに取り付ける方法として、以下の方法を開示している。
【0006】
この方法で取付対象となる燃焼器部品は、ガスタービンケーシングに取り付けられる取付フランジと、この取付フランジの固定されているノズルと、を有する。ノズルは、取付フランジに対して、燃焼器軸線が延びる燃焼器軸線方向における先端側と基端側とのうち、先端側に配置されている。
【0007】
複数の燃焼器のうち、ガスタービン軸線よりも下側に配置された燃焼器の燃焼器軸線は、先端側が基端側より高くなるよう、水平方向に対して傾斜している。そこで、この方法では、燃焼器部品をガスタービンケーシングに取り付ける直前の状態で、この燃焼器部品の燃焼器軸線が水平方向に対して傾斜させるために、以下の治具を用いている。
【0008】
この治具は、基体と、第一アームと、第一吊り具と、第二アームと、第二吊り具と、を有する。基体は、燃焼器部品の取付フランジにボルトで取付可能である。第一アーム及び第二アームは、いずれも、基体に固定されている。第一アームは、基体が取付フランジに取り付けられた状態で、基体から先端側に延びている。第一吊り具は、この第一アームの先端側の端に取り付けられている。第二アームは、基体が取付フランジに取り付けられた状態で、基体から基端側に延びている。第二吊り具は、この第二アームの基端側の端に取り付けられている。第一吊り具に紐材が掛かって、燃焼器部品を吊っている際に第一吊り具に紐材が接する下吊り点は、燃焼器軸線方向で、燃焼器部品のバランス点が存在する位置である。
【0009】
この方法では、以上で説明した治具を燃焼器部品の取付フランジに取り付けた後、一本の紐材を第一吊り具及び第二吊り具に掛けて、この紐材の中間部を上吊り点とする。なお、この紐材で第一吊り具の掛っている部分が第一下吊り点で、この紐材で第二吊り具の掛っている部分が第二下吊り点である。そして、上吊り点と第一下吊り点との間の距離と、上吊り点と第二下吊り点との間の距離とが変わるよう、紐材中で上吊り点になる位置を変えて、燃焼器部品の燃焼器軸線を水平方向に対して傾斜させる。次に、燃焼器部品を吊っている状態での燃焼器軸線方向の向きを維持しつつ、燃焼器部品をガスタービンケーシングの取付位置に向けて移動させて、燃焼器部品の取付フランジをガスタービンケーシングの取付位置に接触させ、この取付フランジをタービンケーシングの取付位置に取り付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許出願公開第2017/0030224号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1に記載の方法では、燃焼器部品をガスタービンケーシングに取り付ける直前に、燃焼器軸線が水平方向に対して傾斜した状態で燃焼器部品を吊るすことができる。しかしながら、上記特許文献1に記載の方法では、重量物である燃焼器部品を紐材で吊っている状態で、この紐材中で上吊り点になる位置を変える必要があり、燃焼器部品の取付作業に手間がかかる。
【0012】
そこで、本発明は、ガスタービンケーシングに対する燃焼器部品の取付作業の手間を抑えることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するための発明に係る一態様としての燃焼器部品の取付方法は、
燃焼器軸線に対して放射方向に広がり、ガスタービンケーシングに取り付けられる取付フランジと、燃料を噴射するノズルとを有し、前記ノズルが前記取付フランジに対して前記燃焼器軸線が延びる燃焼器軸線方向における基端側と先端側のうち前記先端側に配置されている燃焼器部品を、前記ガスタービンケーシングに取り付ける燃焼器部品の取付方法である。この取付方法では、前記燃焼器部品を紐材で吊るすための少なくとも一つの吊り治具を準備する準備工程と、前記吊り治具を前記燃焼器部品の前記取付フランジに取り付ける治具取付工程と、前記燃焼器部品に取り付けられた前記吊り治具に紐材を掛けて、前記吊り治具と共に前記燃焼器部品を紐材で吊る部品吊り工程と、前記燃焼器部品を吊っている状態での前記燃焼器軸線方向の向きを維持しつつ、前記燃焼器部品を前記先端側に移動させて、前記燃焼器部品の前記取付フランジを前記ガスタービンケーシング中の燃焼器取付位置に接触させる部品押し込み工程と、前記部品押し込み工程中であって、前記燃焼器部品の前記取付フランジが前記ガスタービンケーシングに接触する前に、前記吊り治具を前記取付フランジから外す治具除去工程と、前記部品押し込み工程後に、前記取付フランジを前記ガスタービンケーシングの前記燃焼器取付位置に取り付ける部品取付工程と、を実行する。前記準備工程で準備する前記吊り治具は、長手方向を有する調節部材と、前記調節部材の前記長手方向における長手方向第一側と長手方向第二側とのうち、前記長手方向第一側の端に取り付けられ、前記取付フランジに前記調節部材を取り付けるフランジ取付具と、前記調節部材の前記長手方向第二側の端に取り付けられ、紐材が掛かって前記燃焼器部品を吊っている際に前記紐材が接する下吊り点になる部分を有する吊り具と、を有する。前記下吊り点は、前記吊り治具を前記取付フランジに取り付けた際、前記燃焼器軸線方向で、前記燃焼器部品の重心よりも、前記先端側に位置する。
【0014】
複数の燃焼器を備えているガスタービンでは、各燃焼器がガスタービンケーシングに取り付けられた際、各燃焼器の燃焼器軸線は、ガスタービン軸線上流側(GT軸線上流側)からガスタービン軸線下流側(GT軸線下流側)に向うに連れてガスタービン軸線(GT軸線)に対する径方向内側に向かうよう、GT軸線に対して傾斜している。言い換えると、燃焼器の燃焼器軸線は、先端側が基端側よりGT軸線に近くなるよう、GT軸線に対して傾斜している。このため、複数の燃焼器のうち、GT軸線よりも下に配置された燃焼器の燃焼器軸線は、その基端側よりも先端側の方が上になる。なお、本明細書中で「下」とは、鉛直方向における下を意味し、「上」とは、鉛直方向における上を意味する。
【0015】
本態様では、吊り治具を用いて、燃焼器部品を吊ると、この燃焼器部品の燃焼器軸線は、その基端側よりも先端側の方が上になる。このため、本態様では、重量物である燃焼器部品を紐材で吊っている状態で、燃焼器軸線の傾きの調節作業を無くすことができる、若しくは低減することができる。
【0016】
前記目的を達成するための発明に係る一態様としての吊り治具は、
燃焼器軸線に対して放射方向に広がり、ガスタービンケーシングに取り付けられる取付フランジを有する燃焼器部品を吊るすための吊り治具である。この吊り治具は、長手方向を有する調節部材と、前記調節部材の前記長手方向における長手方向第一側と長手方向第二側とのうち、前記長手方向第一側に端に取り付けられ、前記取付フランジに前記調節部材を取り付けるフランジ取付具と、紐材が掛かって前記燃焼器部品を吊っている際に前記紐材が接する下吊り点になる部分を有する吊り具と、を有する。前記フランジ取付具と前記吊り具とのうち、少なくとも前記フランジ取付具は、前記調節部材に対して、取り付け及び取り外しが可能な構造である。
【0017】
前述したように、複数の燃焼器のうち、GT軸線よりも下に配置された燃焼器の燃焼器軸線は、その基端側よりも先端側の方が上になる。本態様では、長手方向の長さが調節された調節部材を有する吊り治具を用いて、燃焼器部品を吊ると、この燃焼器部品の燃焼器軸線は、その基端側よりも先端側の方が上になる。このため、本態様では、重量物である燃焼器部品を紐材で吊っている状態で、燃焼器軸線の傾きの調節作業を無くすことができる、若しくは軽減することができる。
【0018】
前記目的を達成するための発明に係る一態様としての吊り治具セットは、
前記態様における吊り治具と、長手方向を有する第二調節部材と、を備える。前記第二調節部材の前記長手方向の長さが、前記吊り治具の前記調節部材の前記長手方向の長さと異なる。前記吊り治具のフランジ取付具は、前記第二調節部材の前記長手方向における長手方向第一側と長手方向第二側とのうち、前記長手方向第一側に端に取り付け可能である。前記吊り治具の前記吊り具は、前記第二調節部材の前記長手方向第二側の端に取り付け可能である。
【0019】
燃焼器部品の燃焼器軸線の傾きは、ガスタービンケーシング中の取付位置が異なると、燃焼器部品の燃焼器軸線の傾きが異なる。このため、本態様では、調節部材を有する吊り治具と、第二調節部材を有する吊り治具とを使い分けることで、燃焼器部品の燃焼器軸線を取付位置に応じた傾きにすることができる。
【0020】
前記目的を達成するための発明に係る一態様としての燃焼器部品セットは、
前記態様における吊り治具と、前記燃焼器部品と、を備える。前記燃焼器部品は、燃料を噴射するノズルを有し、前記ノズルが前記取付フランジに対して前記燃焼器軸線が延びる燃焼器軸線方向における基端側と先端側とのうち前記先端側に配置されている。前記吊り治具の前記下吊り点は、前記吊り治具を前記取付フランジに取り付けた際、前記燃焼器軸線方向で、前記燃焼器部品の重心よりも、前記先端側に位置する。
【0021】
前述したように、複数の燃焼器のうち、GT軸線よりも下に配置された燃焼器の燃焼器軸線は、その基端側よりも先端側の方が上になる。本態様の吊り治具を用いて、燃焼器部品を吊ると、この燃焼器部品の燃焼器軸線は、その基端側よりも先端側の方が上になる。このため、本態様では、重量物である燃焼器部品を紐材で吊っている状態で、燃焼器軸線の傾きの調節作業を無くすことができる、若しくは軽減することができる。
【0022】
前記目的を達成するための発明に係る他の態様としての燃焼器部品セットは、
燃焼器軸線に対して放射方向に広がり、ガスタービンケーシングに取り付けられる取付フランジと、燃料を噴射するノズルとを有し、前記ノズルが前記取付フランジに対して前記燃焼器軸線が延びる燃焼器軸線方向における基端側と先端側とのうち前記先端側に配置されている燃焼器部品と、前記燃焼器部品を紐材で吊るす吊り治具と、を備える。前記吊り治具は、長手方向を有する調節部材と、前記調節部材の前記長手方向における長手方向第一側と長手方向第二側とのうち、前記長手方向第一側の端に取り付けられ、前記取付フランジに前記調節部材を取り付けるフランジ取付具と、前記調節部材の前記長手方向第二側の端に取り付けられ、紐材が掛かって前記燃焼器部品を吊っている際に前記紐材が接する下吊り点になる部分を有する吊り具と、を有する。前記下吊り点は、前記吊り治具を前記取付フランジに取り付けた際、前記燃焼器軸線方向で、前記燃焼器部品の重心よりも、前記先端側に位置する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様では、重量物である燃焼器部品を紐材で吊っている状態で、燃焼器軸線の傾きの調節作業を無くすことができる、若しくは軽減することができる。このため、半発明の一態様によれば、ガスタービンケーシングに対する燃焼器部品の取付作業の手間を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る一実施形態におけるガスタービンの模式的な断面図である。
図2】本発明に係る一実施形態におけるガスタービンの要部断面図である。
図3図2におけるIII矢視図である。
図4】本発明に係る一実施形態における吊り治具の分解図である。
図5】本発明に係る一実施形態における吊り治具の組立図である。
図6】本発明に係る一実施形態における燃焼器部品の取付方法の手順を示すフローチャートである。
図7】本発明に係る一実施形態における治具取付工程及び部品吊り工程での作業内容を示す説明図である。
図8】本発明に係る一実施形態における周方向調節工程での作業内容を示す説明図である。
図9】本発明に係る一実施形態におけるガイドロッド配置工程での作業内容を示す説明図である。
図10】本発明に係る一実施形態における部品吊り工程中の吊り治具及び燃焼器部品の側面図である。
図11】本発明に係る一実施形態におけるガイドロッド配置行程中のガイドロッド及び燃焼器部品の側面図である。
図12】本発明に係る一実実施形態における治具除去工程中の吊り治具及び燃焼器部品の側面図である。
図13】本発明に係る一実施形態における部品平行移動工程中の燃焼器部品の側面図である。
図14】本発明に係る一四実施形態における部品取付工程中の燃焼器部品の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る燃焼器部品の取付方法、燃焼器部品セット、吊り治具、及び吊り治具セットの実施形態、及びこれらの変形例について説明する。
【0026】
「ガスタービンの実施形態」
まず、燃焼器部品を備えるガスタービンの実施形態について、図1図3を用いて説明する。
【0027】
本実施形態のガスタービンは、図1に示すように、外気Aoを圧縮して圧縮空気Aを生成する圧縮機10と、圧縮空気A中で燃料を燃焼させて燃焼ガスGを生成する複数の燃焼器20と、燃焼ガスGにより駆動するタービン40と、を備えている。
【0028】
圧縮機10は、ガスタービン軸線(以下、GT軸線)Arを中心として回転する圧縮機ロータ11と、圧縮機ロータ11を覆う圧縮機ケーシング15と、複数の静翼列16と、を有する。タービン40は、GT軸線Arを中心として回転するタービンロータ41と、タービンロータ41を覆うタービンケーシング45と、複数の静翼列46と、を有する。
【0029】
圧縮機ロータ11とタービンロータ41とは、同一GT軸線Ar上に位置し、互いに接続されてガスタービンロータ1を成す。このガスタービンロータ1には、例えば、発電機GENのロータが接続されている。なお、以下では、GT軸線Arが延びる方向をGT軸線方向Daとする。このGT軸線方向Daは、実質的に水平方向である。このGT軸線方向Daでタービン40を基準にして圧縮機10側をGT軸線上流側Dau、その反対側をGT軸線下流側Dadとする。また、GT軸線Arを中心とした周方向を単に周方向Dcとし、GT軸線Arに対して垂直な方向を径方向Drとする。また、径方向DrでGT軸線Arに近づく側を径方向内側Dri、その反対側を径方向外側Droとする。
【0030】
圧縮機ロータ11は、GT軸線Arを中心としてGT軸線方向Daに延びるロータ軸12と、このロータ軸12に取り付けられている複数の動翼列13と、を有する。複数の動翼列13は、軸線方向Daに並んでいる。各動翼列13は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼で構成されている。複数の動翼列13の各GT軸線下流側Dadには、静翼列16が配置されている。各静翼列16は、圧縮機ケーシング15の内側に設けられている。各静翼列16は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼で構成されている。
【0031】
タービンロータ41は、GT軸線Arを中心としてGT軸線方向Daに延びるロータ軸42と、このロータ軸42に取り付けられている複数の動翼列43と、を有する。複数の動翼列43は、軸線方向Daに並んでいる。各動翼列43は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼で構成されている。複数の動翼列43の各GT軸線上流側Dauには、静翼列46が配置されている。各静翼列46は、タービンケーシング45の内側に設けられている。各静翼列46は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼で構成されている。
【0032】
ロータ軸42の外周側とタービンケーシング45の内周側との間であって、GT軸線方向Daで動翼列43及び静翼列46が配置されている環状の空間は、燃焼器20からの燃焼ガスGが流れる燃焼ガス流路49を成す。この燃焼ガス流路49は、GT軸線Arを中心として環状を成し、GT軸線方向Daに長い。
【0033】
ガスタービンは、さらに、GT軸線Arを中心として筒状の中間ケーシング51を備えている。中間ケーシング51は、GT軸線方向Daで、圧縮機ケーシング15とタービンケーシング45との間に配置されている。中間ケーシング51のGT軸線上流側Dau、の端には、圧縮機ケーシング15に接続される上流側フランジ52(図2参照)が形成されている。また、中間ケーシング51のGT軸線下流側Dadの端には、タービンケーシング45に接続される下流側フランジ53(図2参照)が形成されている。圧縮機ケーシング15、中間ケーシング51、タービンケーシング45は、互いに接続されてガスタービンケーシング5を成す。
【0034】
複数の燃焼器20は、図1図3に示すように、周方向Dcに互いの間隔をあけて、中間ケーシング51に固定されている。燃焼器20は、高温高圧の燃焼ガスGをタービンケーシング45内の燃焼ガス流路49に送る燃焼筒(又は尾筒)21と、この燃焼筒21内に圧縮空気Aと共に燃料Fを噴射する燃料噴射器30と、を有する。燃料噴射器30は、本実施形態における燃焼器部品である。
【0035】
燃焼筒21は、燃焼器軸線Ac周りに筒状を成している。ここで、燃焼器軸線Acが延びている方向を燃焼器軸線方向Dacとする。また、燃焼器軸線方向Dacにおける両側のうち、一方の側を基端側Dac1とし、他方の側を先端側Dac2とする。筒状の燃焼筒21は、燃焼器軸線方向Dacの両端22,23が開口している。燃焼筒21の基端側Dac1の開口端22は、中間ケーシング51に固定されている燃焼筒サポート24により支持されている。この燃焼筒21の基端側Dac1の開口端22には、燃料噴射器30の一部が挿入されている。燃焼筒21の先端側Dac2の開口端23は、タービンケーシング45に支持されていると共に、タービン40の複数の静翼列46のうち、最も上流側の第一静翼列46aに接続されている。
【0036】
燃焼器部品としての燃料噴射器30は、複数のバーナ31と、複数のバーナ31の外周側を覆うバーナ保持筒35と、中間ケーシング51に取り付けられるトップフランジ(取付フランジ)37と、トップフランジ37に固定されているノズル基台36と、を有する。
【0037】
各バーナ31は、燃焼器軸線方向Dacに長いノズル32を有する。ノズル32の基端側Dac1の部分は、ノズル基台36に固定されている。また、バーナ保持筒35は、燃焼器軸線Ac周りに筒状を成し、複数のバーナ31の外周側を覆う。バーナ保持筒35の基端側Dac1の端は、トップフランジ37に固定されている。
【0038】
トップフランジ37は、ノズル基台36から燃焼器軸線Acに対する放射方向に張り出している。つまり、トップフランジ37は、燃焼器軸線Acに対して放射方向に広がっている。トップフランジ37には、燃焼器軸線方向Dacに貫通する複数のボルト孔38が形成されている。
【0039】
中間ケーシング51には、複数の開口54が形成されている。複数の開口54は、周方向Dcに互いに間隔をあけて並んでいる。各開口54の周りには、燃焼器取付フランジ55が形成されている。燃焼器取付フランジ55には、GT軸線方向Daに凹んだ複数のボルトネジ穴56が形成されている。燃料噴射器30を中間ケーシング51に取り付ける際には、燃焼器取付ボルト59のネジ軸部が、燃焼器20におけるトップフランジ37のボルト孔38に挿通されてから、燃焼器取付フランジ55のボルトネジ穴56に捩じ込まれる。このように、燃料噴出器30が中間ケーシング51に取り付けられた際、この燃料噴射器30の燃焼器軸線方向Dacは、GT軸線方向Daの方向成分を含む方向になる。また、この際、この燃料噴射器30の基端側Dac1は、GT軸線方向DaにおいてGT軸線上流側Dauになり、この燃料噴射器30の先端側Dac2は、GT軸線下流側Dadになる。
【0040】
燃焼器取付フランジ55のフランジ面は、図2及び図3に示すように、GT軸線上流側DauからGT軸線下流側Dadに向うに連れて径方向外側Droに向かうよう、GT軸線Arに対して傾斜した面である。燃料噴射器30がこの燃焼器取付フランジ55に取り付けられた際、燃料噴射器30の燃焼器軸線Acは、燃焼器取付フランジ55のフランジ面に対して実質的に垂直な方向に延びている。このため、燃料噴射器30がこの燃焼器取付フランジ55に取り付けられた際、燃料噴射器30の燃焼器軸線Acは、GT軸線上流側DauからGT軸線下流側Dadに向うに連れて径方向内側Driに向かうよう、GT軸線Arに対して傾斜している。言い換えると、燃料噴射器30の燃焼器軸線Acは、先端側Dac2が基端側Dac1よりGT軸線Arに近くなるよう、GT軸線Arに対して傾斜している。
【0041】
圧縮機10は、外気Aoを吸込んで、これが圧縮機ケーシング15内を通る過程でこの空気を圧縮する。圧縮された空気、つまり圧縮空気Aは、圧縮機10から中間ケーシング51内に流入する。この圧縮空気Aは、中間ケーシング51内からバーナ保持筒35内に流入する。バーナ保持筒35内に流入した圧縮空気Aは、各バーナ31内に流入する。各バーナ31は、この圧縮空気Aと燃料Fとを燃焼筒21内に噴射する。燃料Fは、燃焼筒21内で燃焼する。この燃焼の結果、燃焼ガスGが生成される。この燃焼ガスGは、燃焼筒21からタービンケーシング45内の燃焼ガス流路49(図2参照)内に流入する。タービンロータ41は、この燃焼ガスGが燃焼ガス流路49を通ることで、回転する。
【0042】
「吊り治具、吊り治具セット、燃焼器部品セットの実施形態」
本発明に係る吊り治具、吊り治具セット、燃焼器部品セットの実施形態について、図3図5、及び図10を参照して説明する。なお、本実施形態における燃焼器部品は、前述したように、燃料噴射器30である。
【0043】
本実施形態の吊り治具が取り付けられる燃料噴射器30は、図3に示す複数の燃料噴射器30のうち、GT軸線Arを基準にして下側に配置される燃料噴射器30である。
【0044】
図4及び図5に示すように、本実施形態の吊り治具60は、棒軸線Asを中心として円柱状の調節棒(調節部材)61と、燃料噴射器30のトップフランジ(取付フランジ)37に調節棒61を取り付けるフランジ取付具68と、紐材が掛かる吊り具71と、を有する。ここで、棒軸線Asが延びる方向を長手方向Deとする。また、この長手方向Deにおける両側のうち、一方の側を長手方向第一側De1とし、他方の側を長手方向第二側De2とする。
【0045】
調節棒61は、棒本体62と、受けフランジ63と、を有する。棒本体62は、棒軸線Asを中心として、長手方向Deに延びている円柱状の棒である。受けフランジ63は、この棒本体62の長手方向第一側De1の端から、棒軸線Asに対する放射方向に張り出している。棒本体62は、第一ネジ穴64と、第二ネジ穴65と、二つの工具接触面66と、を有する。第一ネジ穴64は、棒本体62の長手方向第一側De1の端から長手方向第二側De2に向かって凹む雌ネジ穴である。第二ネジ穴65は、棒本体62の長手方向第二側De2の端から長手方向第一側De1に向かって凹む雌ネジ穴である。二つの工具接触面66は、長手方向Deに垂直な方向で互いに相反する側を向いている平坦な面である。
【0046】
フランジ取付具68は、調節棒61の第一ネジ穴64に捩じ込み可能なネジ軸部を有する第一ボルト69を有する。よって、フランジ取付具68は、調節棒61に対して、取り付け及び取り外しが可能である。吊り治具60をトップフランジ37に取り付ける際には、第一ボルト69のネジ軸部をトップフランジ37のボルト孔38に挿通させてから、この第一ボルト69のネジ軸部を調節棒61の第一ネジ穴64に捩じ込む。
【0047】
吊り具71は、吊り環72と、吊り環支持具73と、支持取付具78と、を有する。吊り環72は、棒を曲げて、環状に形成した部品である。棒の両端は、互に間隔をあけて対向している。この吊り環72は、図10に示すように、この吊り環72に紐材80が掛かって燃料噴射器30を吊っている際に紐材80が接する下吊り点Plになる部分を有する。
【0048】
吊り環支持具73は、支持具本体74と、スリーブ75と、を有する。支持具本体74は、円筒状を成している。支持具本体74の円筒の中心軸に対して垂直な方向に延びる揺動軸Ay上に、吊り環72の両端が位置する。支持具本体74は、この揺動軸Ay周りに吊り環72が揺動可能に、吊り環72の両端を支持する。スリーブ75は、円筒状を成し、円筒状の支持具本体74の内周側に取り付けられている。
【0049】
支持取付具78は、調節棒61の第二ネジ穴65に捩じ込み可能なネジ軸部を有する第二ボルト79を有する。吊り環支持具73は、この第二ボルト79のネジ軸部を吊り環支持具73のスリーブ75に挿通させ、このネジ軸部を調節棒61の第二ネジ穴65に捩じ込むことで、調節棒61に取り付けられる。このため、支持取付具78を有する吊り具71は、調節棒61に対して、取り付け及び取り外しが可能である。また、第二ボルト79のネジ軸部は、スリーブ75の内周面に接して、円筒状のスリーブ75の中心軸Axを中心として回転可能である。このため、第二ボルト79は、吊り環支持具73に対して、第二ボルト79のネジ軸部を中心として回転可能である。また、第二ボルト79は、調節棒61の第二ネジ穴65に捩じ込まれることで、吊り環支持具73に対して、第二ボルト79のネジ軸部が延びる軸部長手方向Deに相対移動不能である。なお、スリーブ75の中心軸Axは、吊り具71を調節棒61に取り付けた際には、棒軸線As上に位置する。
【0050】
以上の構成より、支持取付具78により調節棒61に取り付けられた吊り具71の吊り環72は、棒軸線As周りに回転可能で、且つ棒軸線Asに対して垂直な揺動軸Ay周りに揺動可能である。従って、本実施形態では、吊り治具60を用いて、燃料噴射器30を吊る際、吊り環72及び吊り環支持具73に生じる応力が小さくなるよう、第二ボルト79に対して吊り環支持具73が回転し、さらに、吊り環72が吊り環支持具73に対して揺動する。このため、本実施形態の吊り治具60を用いて、燃料噴射器30を吊る際、この吊り治具60が損傷することを抑制することができる。
【0051】
吊り治具セットは、以上で説明した吊り治具60の他に、第二調節棒(第二調節部材)61xを有する。第二調節棒61xの構成は、以上で説明した吊り治具60の調節棒61の構造と同じである。このため、この第二調節棒61xも、以上で説明した吊り治具60の調節棒61と同様、受けフランジ63と、第一ネジ穴64と、第二ネジ穴65と、二つの工具接触面66と、を有する。このように、第二調節棒61xも、第一ネジ穴64及び第二ネジ穴65を有するので、前述したフランジ取付具68及び吊り具71は、いずれも、第二調節棒61xに対して取り付け及び取り外しが可能である。但し、この第二調節棒61xの長手方向Deの長さLxは、以上で説明した調節棒61の長手方向Deの長さLと異なる。なお、この第二調節棒61xと、フランジ取付具68と、吊り具71とを有する吊り治具を以下では別吊り治具60xとする。
【0052】
吊り治具セットは、複数の第二調節棒61xを備えていてもよい。この場合、複数の第二調節棒61xの長手方向Deの長さ、及び、以上で説明した調節棒61の長手方向Deの長さは、相互に異なる。
【0053】
燃焼器部品セットは、図10に示すように、以上で説明した吊り治具60と、燃焼器部品である燃料噴射器30と、を有する。なお、燃焼器部品セットは、複数の燃料噴射器30と、以上で説明した吊り治具60と、一以上の第二調節棒61xと、を有してもよい。
【0054】
ところで、前述したように、燃料噴射器30が中間ケーシング51に取り付けられた際、この燃料噴射器30の燃焼器軸線Acは、先端側Dac2が基端側Dac1よりGT軸線Arに近くなるよう、GT軸線Arに対して傾斜している。このため、図10に示すように、中間ケーシング51中でGT軸線Arを基準にして下側の位置に取り付けられた燃料噴射器30の燃焼器軸線Acは、先端側Dac2が基端側Dac1より上になる。
【0055】
燃焼器部品セットに含まれる吊り治具60の下吊り点Plは、図10に示すように、この吊り治具60を燃料噴射器30のトップフランジ37に取り付けた際、この燃料噴射器30の燃焼器軸線方向Dacで、この燃料噴射器30の重心Cよりも、先端側Dac2に位置する。このため、この吊り治具60に紐材80が掛けて、燃料噴射器30を吊っている状態での燃料噴射器30の燃焼器軸線AcCaは、中間ケーシング51中でGT軸線Arを基準にして下側の位置に取り付けられた燃料噴射器30の燃焼器軸線Acと同様、先端側Dac2が基端側Dac1より上になる。
【0056】
燃焼器軸線方向Dacにおける下吊り点Plの位置は、紐材80で吊られている燃料噴射器30の燃焼器軸線Acの鉛直方向Dvに対する角度αが、中間ケーシング51の下側に取り付けられた燃料噴射器30の燃焼器軸線Acの鉛直方向Dvに対する角度αに一致する、位置であることが好ましい。なお、ここでの角度の一致は、正確な意味で一致している必要がなく、角度が実質的に一致していればよく、例えば、5°程度の角度の違いは一致の範囲内である。但し、ここでの角度の一致は、5°以上の角度の違いがあっても、中間ケーシング51の下側に燃料噴射器30を取り付ける作業が容易である程度の角度の違いであれば、角度が一致しているとみなす。また、ここでの角度は、鉛直方向Dvに広がり、且つ燃料噴射器30の燃焼器軸線Acを含む仮想平面内での角度である。
【0057】
「燃焼器部品の取付方法の実施形態」
本発明に係る燃焼器部品の取付方法の実施形態について、図6に示すフローチャートに従って説明する。なお、以下では、GT軸線Ar周りに周方向Dcに並んでいる複数の燃焼器取付フランジ55のうち、最も下に位置している燃焼器取付フランジ55に、燃焼器部品30である燃料噴射器30を取り付ける方法について説明する。
【0058】
まず、図4及び図5を用いて説明した吊り治具60を2つ準備する(S1:準備工程)。この準備工程(S1)で準備する2つの吊り治具60の下吊り点Plの位置は、図10に示すように、いずれも、紐材80で吊られている燃料噴射器30の燃焼器軸線Acの鉛直方向Dvに対する角度αが、中間ケーシング51の下側に取り付けられた燃料噴射器30の燃焼器軸線Acの鉛直方向Dvに対する角度αに一致する、位置である。
【0059】
次に、準備工程(S1)で準備する二つの吊り治具60を燃料噴射器30に取り付ける(S2:治具取付工程)。この治具取付工程(S3)では、図7及び図8に示すように、二つの吊り治具60のうち第一吊り治具60aをトップフランジ37の第一位置に取り付け、第二吊り治具60bをトップフランジ37の第二位置に取り付ける。第二位置は、燃焼器軸線Acに対する周方向Dcで第一位置と異なる位置である。吊り治具60をトップフランジ37に取り付ける際には、図10に示すように、吊り治具60における第一ボルト69のネジ軸部をトップフランジ37の複数のボルト孔38のうちの一のボルト穴39に挿通させてから、この第一ボルト69のネジ軸部を調節棒61の第一ネジ穴64に捩じ込む。
【0060】
次に、図7に示すように、燃料噴射器30に取り付けられた二つの吊り治具60のそれぞれに紐材80を掛けて、二つの吊り治具60と共に燃料噴射器30を紐材80で吊る(S3:部品吊り工程)。
【0061】
部品吊り工程(S3)は、紐材掛け工程(S3a)と、吊り位置移動工程(S3b)と、周方向調節工程(S3c)と、を含む。
【0062】
紐材掛け工程(S3a)では、図7及び図8に示すように、二つの吊り治具60のうちの第一吊り治具60aに第一紐材80aを掛け、二つの吊り治具60のうちの第二吊り治具60bに第二紐材80bを掛け、第一吊り治具60a及び第二吊り治具60bと共に燃料噴射器30を第一紐材80a及び第二紐材80bで吊る。なお、ここでの第一紐材80a及び第二紐材80bは、いずれも、実際の紐81と、チェーンブロック82とを有する。このチェーブロック82は、チェーン83と、このチェーン83の一端に取り付けられている下フック84と、このチェーン83が巻き付いているブロック85と、このブロック85に取り付けられている上フック86と、を有する。この紐材掛け工程(S3a)では、チェーンブロック82の上フック86を中間ケーシング51中のいずれかの箇所に掛け、チェーンブロック82の下フック84に実際の紐81の一部を掛け、この紐81の他の一部を吊り治具60の吊り環72に掛ける。このように、第一紐材80a及び第二紐材80bは、いずれも、チェーンブロック82を有するので、第一紐材80aの長さ及び第二紐材80bの長さを変えることができる。
【0063】
この紐材掛け工程(S3a)では、以上で説明した吊り治具60を用いて、燃料噴射器30を吊っているので、この紐材掛け工程(S3a)の実行で吊られた燃料噴射器30の燃焼器軸線Acは、図10に示すように、その基端側Dac1よりも先端側Dac2の方が上になる。また、前述したように、この燃料噴射器30を中間ケーシング51に取り付けた際にも、この燃料噴射器30の燃焼器軸線Acは、その基端側Dac1よりも先端側Dac2の方が上になる。しかも、この紐材掛け工程(S3a)の実行で吊られた燃料噴射器30の燃焼器軸線Acの鉛直方向Dvに対する角度αは、中間ケーシング51の下側に取り付けられた燃料噴射器30の鉛直方向Dvに対する角度αに一致する。このため、本態様では、重量物である燃料噴射器30を紐材80で吊っている状態で、燃焼器軸線Acの傾きの調節作業を無くすことができる、若しくは軽減することができる。
【0064】
前述したように、ここででは、GT軸線Ar周りに周方向Dcに並んでいる複数の燃焼器取付フランジ55のうち、最も下に位置している燃焼器取付フランジである第一燃焼器取付フランジ55aに、燃料噴射器30を取り付ける方法を説明する。この第一燃焼器取付フランジ55aの上側には、中間ケーシング51の一部が存在する。従って、上から見た場合に、GT軸線Arに対して垂直で且つ水平な方向において、中間ケーシング51の一部と第一燃焼器取付フランジ55aとが重なることなる。このため、第一燃焼器取付フランジ55aに燃料噴射器30が対向するよう、この燃料噴射器30を吊るすことが困難である。そこで、本実施形態では、図7に示すように、紐材掛け工程(S3a)において、第一紐材80aの上端である第一上吊り点Pu1及び第二紐材80bの上端である第二上吊り点Pu2の位置を、上から見た場合に、GT軸線Arに対して垂直で且つ水平な方向において、中間ケーシング51と重ならない位置にしている。
【0065】
吊り位置移動工程(S3b)では、図7に示すように、中間ケーシング51に対して、第一紐材80a及び第二紐材80bで吊っている燃料噴射器30を、GT軸線Arに対して垂直で且つ水平な方向成分を含む方向に移動させて、この燃料噴射器30を第一燃焼器取付フランジ55aと対向する位置まで移動させる。具体的に、ここでは、第一吊り治具60aに掛かっている第一紐材80aの上端の位置である第一上吊り点Pu1、及び第二吊り治具60bに掛かっている第二紐材80bの上端の位置である第二上吊り点Pu2を、GT軸線Arに対して垂直で且つ水平な方向成分を含む方向に移動させると共に、第一紐材80aの長さ及び/又は第二紐材80bの長さを変えることで、燃料噴射器30を移動させる。
【0066】
周方向調節工程(S3c)では、図8に示すように、燃料噴射器30に対して定められている基準線BLの向きを調節する。ここで、基準線BLとは、燃料噴射器30に対して定められた線であって、この燃料噴射器30の燃焼器軸線Acに対して垂直な方向に延びる線である。この周方向調節工程(S3c)では、燃料噴射器30を吊っている状態での燃料噴射器30の基準線BLの向きが、この燃料噴射器30を中間ケーシング51に取り付けた状態での燃料噴射器30の基準線BLの向きに一致するよう、第一吊り治具60aに対する第二吊り治具60bの相対位置を調節する。第一吊り治具60aに対する第二吊り治具60bの相対位置を調節する際には、第一紐材80aと第二紐材80bとのうち、少なくとも一方の紐材80の長さを調節する。この周方向調節工程(S3c)の実行により、トップフランジ37の複数のボルト孔38のそれぞれは、第一燃焼器取付フランジ55aの複数のボルトネジ穴56のうち、いずれか一のボルトネジ穴56に対向することになる。
【0067】
以上で、部品吊り工程(S3)における作業が終了する。部品吊り工程(S3)における作業が終了した段階での燃料噴射器30は、以下の状態である。
a.吊られている燃料噴射器30の燃焼器軸線Acの鉛直方向Dvに対する角度αが、中間ケーシング51の第一燃焼器取付フランジ55aに取り付けられた燃料噴射器30の燃焼器軸線Acの鉛直方向Dvに対する角度αに一致する。
b.吊られている燃料噴射器30のトップフランジ37が、このトップフランジ37が取り付けられる中間ケーシング51の第一燃焼器取付フランジ55aと対向している。
c.吊られている燃料噴射器30におけるトップフランジ37の複数のボルト孔38のそれぞれは、第一燃焼器取付フランジ55aの複数のボルトネジ穴56のうち、いずれか一のボルトネジ穴56に対向している。
【0068】
以上のように、吊り治具60を用いて、燃料噴射器30を吊ると、この燃料噴射器30の燃焼器軸線Acは、その基端側Dac1よりも先端側Dac2の方が上になる。また、前述したように、この燃料噴射器30を中間ケーシング51に取り付けた際にも、この燃料噴射器30の燃焼器軸線Acは、その基端側Dac1よりも先端側Dac2の方が上になる。このため、本実施形態では、重量物である燃料噴射器30を紐材80で吊っている状態で、燃焼器軸線Acの傾きの調節作業を無くすことができる、若しくは軽減することができる。
【0069】
部品吊り工程(S3)における作業が終了すると、部品押し込み工程の一部であるガイドロッド配置行程(S4a)を実行する。このガイドロッド配置行程(S4a)では、図9及び図11に示すように、複数のガイドロッド90を中間ケーシング51の第一燃焼器取付フランジ55aに取り付ける。複数のガイドロッド90は、複数の第一ガイドロッド91と、複数の第二ガイドロッド92と、を有する。第一ガイドロッド91は、実質的にその長手方向の全域に、燃焼器取付フランジ55のボルトネジ穴56に捩じ込み可能な雄ネジが形成されている。また、第二ガイドロッド92は、その長手方向の一方側の端部のみに、燃焼器取付フランジ55のボルトネジ穴56に捩じ込み可能な雄ネジが形成され、長手方向のその他の部分の外周面には凹凸がなく、この外周面はなめらかである。これらガイドロッド90を中間ケーシング51の第一燃焼器取付フランジ55aに取り付ける際には、ガイドロッド90をトップフランジ37の複数のボルト孔38のうちのいずれかの一のボルト孔38に挿通させてから、これらガイドロッド90の雄ネジの部分を第一燃焼器取付フランジ55aの複数のボルトネジ穴56のうち、一のボルト孔38に対向するボルトネジ穴56に捩じ込む。次に、第一ガイドロッド91の先端部に、部品移動用ナット93を捩じ込み、各ガイドロッド90から燃料噴射器30が抜け落ちないようにする。
【0070】
各ガイドロッド90を中間ケーシング51の第一燃焼器取付フランジ55aに取り付けた際、各ガイドロッド90は、中間ケーシング51の第一燃焼器取付フランジ55aに取り付けられた燃料噴射器30の燃焼器軸線Acと平行である。なお、ここでの平行とは、正確な意味で平行である必要がなく、実質的に平行であればよく、燃焼器軸線Acに対するガイドロッド90の角度が5°以内であれば、平行の範囲内である。
【0071】
ガイドロッド配置行程(S4a)での作業が終了すると、図12に示すように、燃料噴射器30から吊り治具60を外す(S5:治具除去工程)。この治具除去工程(S5)では、まず、吊り治具60から紐材80を外す。次に、吊り治具60の第一ボルト69を調節棒61から外す。この際、例えば、第一ボルト69のボルト頭にレンチ又はスパナ等の第一工具のボルト接触面を接触させ、調節棒61の工具接触面66(図4及び図5参照)にレンチ又はスパナ等の第二工具のボルト接触面を接触させて、第二工具に対して第一工具を相対的に回転させる。調節棒61から第一ボルト69が外れると、燃料噴射器30から吊り具71が外れる。
【0072】
ここで、調節棒61の棒本体62に、棒本体62の長手方向第一側De1の端からこの長手方向第一側De1に延びる雄ネジが形成されている場合について考察する。この場合、フランジ取付具は、この雄ネジが捩じ込み可能なボルトである。この吊り治具を燃料噴射器30から取り外す際、調節棒61の雄ネジからフランジ取付具であるボルトを外す。その後、調節棒61の雄ネジがトップフランジ37のボルト孔38から抜けるよう、この調節棒61を長手方向第二側De2に移動させる。そして、調節棒61をトップフランジ37のフランジ面と平行な方向に移動させる。このため、この場合には、トップフランジ37から吊り治具60を外す際に、この吊り治具の長手方向第二側De2に、調節棒61を移動させるための空間が必要である。しかしながら、本実施形態における調節棒61の棒本体62には、フランジ取付具68としての第一ボルト69が捩じ込み可能な第一ネジ穴64が形成されているため、調節棒61から第一ボルト69を外せば、この調節棒61を長手方向第二側De2に移動させずに、直ちに、この調節棒61をトップフランジ37のフランジ面と平行な方向に移動させることができる。
【0073】
次に、図13に示すように、部品押し込み工程の一部である部品平行移動行程(S4b)を実行する。この部品平行移動工程(S4b)では、部品移動用ナット93を第一ガイドロッド91に捩じ込み、燃料噴射器30を各ガイドロッド90に沿ってスライドさせて、吊られている燃料噴射器30の燃焼器軸線方向Dacの向きを維持しつつ、この燃料噴射器30を中間ケーシング51の第一燃焼器取付フランジ55aに近づける。なお、ここでの燃焼器軸線方向Dacの向きを維持するとは、正確な意味で向きを維持する必要がなく、実質的に維持すればよく、燃料噴射器30の移動開始から移動終了までの間で、向きの変化が5°以内であれば、向きを維持している範囲内である。この燃料噴射器30のトップフランジ37が中間ケーシング51の第一燃焼器取付フランジ55aに接触すると、部品平行移動行程(S4b)を含む部品押し込み工程が終了する。
【0074】
部品押し込み工程が終了すると、図14に示すように、燃料噴射器30のトップフランジ37を中間ケーシング51の第一燃焼器取付フランジ55aに取り付ける(S6:部品取付工程)。この部品取付工程(S6)では、まず、トップフランジ37の複数のボルト孔38のうち、ガイドロッド90が挿入されていないボルト孔38に、燃焼器取付ボルト59のネジ軸部を挿入した後、この燃焼器取付ボルト59のネジ軸部を第一燃焼器取付フランジ55aのボルトネジ穴56に捩じ込む。
【0075】
次に、ガイドロッド配置行程(S4a)で、第一燃焼器取付フランジ55aに取り付けた複数のガイドロッド90を外す(S7)。そして、トップフランジ37の複数のボルト孔38のうち、ガイドロッド90が抜かれたボルト孔38に、燃焼器取付ボルト59のネジ軸部を挿入した後、この燃焼器取付ボルト59のネジ軸部を第一燃焼器取付フランジ55aのボルトネジ穴56に捩じ込む。
【0076】
以上で、GT軸線Ar周りに周方向Dcに並んでいる複数の燃焼器取付フランジ55のうち、最も下に位置している第一燃焼器取付フランジ55aに対する燃料噴射器30の取付が完了する。
【0077】
仮に、最も下に位置している第一燃焼器取付フランジ55aに対して、周方向Dcに隣接している他の燃焼器取付フランジ55(以下、第二燃焼器取付フランジ55b(図3参照))に、吊り治具を用いて燃料噴射器30を取り付ける場合には、以下のように行う。
【0078】
準備工程(S1)では、第一燃焼器取付フランジ55に燃料噴射器30を取り付ける場合と同様に、二つの別吊り治具60xを準備する。なお、別吊り治具60xは、図4を用いて前述したように、第二調節棒61xと、フランジ取付具68と、吊り具71と、を有する。この第二調節棒61xの長さLxは、第一燃焼器取付フランジ55に燃料噴射器30を取り付ける際に用いる吊り治具60の調節棒61の長さLより短い。
【0079】
第二燃焼器取付フランジ55bに取り付けられた燃料噴射器30の燃焼器軸線Acの鉛直方向Dvに対する角度は、第一燃焼器取付フランジ55に取り付けられた燃料噴射器30の燃焼器軸線Acの鉛直方向Dvに対する角度より大きい。言い換えると、第二燃焼器取付フランジ55bに取り付けられた燃料噴射器30の燃焼器軸線Acの水平方向に対する角度は、第一燃焼器取付フランジ55に取り付けられた燃料噴射器30の燃焼器軸線Acの水平方向に対する角度より小さい。
【0080】
このため、別吊り治具60xを用いて、第二燃焼器取付フランジ55bに取り付ける燃料噴射器30を吊った際の燃焼器軸線Acの鉛直方向Dvに対する角度も、吊り治具60を用いて、第一燃焼器取付フランジ55aに取り付ける燃料噴射器30を吊った際の燃焼器軸線Acの鉛直方向Dvに対する角度より大きいことが好ましい。このため、第二燃焼器取付フランジ55bに燃料噴射器30を取り付ける場合には、第一燃焼器取付フランジ55に燃料噴射器30を取り付ける際に用いた吊り治具60の調節棒61の長さLより短い長さLxの第二調節棒61xを用いる。
【0081】
第二燃焼器取付フランジ55bに燃料噴射器30を取り付ける場合、以下、第一燃焼器取付フランジ55に燃料噴射器30を取り付ける場合と同様に、S2~S7の各工程を実行する。
【0082】
次に、上から見た場合に、GT軸線Arに対して垂直で且つ水平な方向において、中間ケーシング51と重ならず、且つGT軸線Arよりも下に位置する燃焼器取付フランジ55(以下、第三燃焼器取付フランジ55c(図3参照))に対して、吊り治具を用いて、燃料噴射器30を取り付ける場合について説明する。
【0083】
準備工程(S1)では、第一燃焼器取付フランジ55及び第二燃焼器取付フランジ55bに燃料噴射器30を取り付ける場合と同様に、二つの別吊り治具60xを準備する。この別吊り治具60xは、第二調節棒61xと、フランジ取付具68と、吊り具71と、を有する。但し、この第二調節棒61xの長さは、第二燃焼器取付フランジ55bに燃料噴射器30を取り付ける際に用いる別吊り治具60xの調節棒61xの長さより短い。
【0084】
次に、第一燃焼器取付フランジ55に燃料噴射器30を取り付ける場合と同様に、治具取付工程(S2)を実行する。
【0085】
次に、部品吊り工程(S3)を実行する。この部品吊り工程(S3)では、図6のフロチャートに示す紐材掛け工程(S3a)と、吊り位置移動工程(S3b)と、周方向調節工程(S3c)とのうち、紐材掛け工程(S3a)及び周方向調節工程(S3c)を実行し、吊り位置移動工程(S3b)を実行しない。これは、上から見た場合に、第三燃焼器取付フランジ55cが、GT軸線Arに対して垂直で且つ水平な方向において、中間ケーシング51と重ならない位置に位置しているからである。このため、紐材掛け工程(S3a)で、燃料噴射器30を吊った後、この燃料噴射器30を移動させなくても、この燃料噴射器30を第三燃焼器取付フランジ55cに対向させることができる。
【0086】
第三燃焼器取付フランジ55cに燃料噴射器30を取り付ける場合、以下、第一燃焼器取付フランジ55に燃料噴射器30を取り付ける場合と同様に、S4a~S7の各工程を実行する。
【0087】
なお、第三燃焼器取付フランジ55cに燃料噴射器30を取り付ける場合、紐材掛け工程(S3a)を実行した時点で、燃料噴射器30を吊っている状態での燃料噴射器30の基準線BLの向きが、この燃焼器20を中間ケーシング51に取り付けた状態での燃料噴射器30の基準線BLの向きに一致させることができる場合には、部品吊り工程(S3)における周方向調節工程(S3c)を省くことができる。すなわち、この場合、部品吊り工程(S3)では、紐材掛け工程(S3a)のみを実行し、吊り位置移動工程(S3b)及び周方向調節工程(S3c)を省くことができる。
【0088】
以上のように、部品吊り工程(S3)では、紐材掛け工程(S3a)のみを実行し、吊り位置移動工程(S3b)及び周方向調節工程(S3c)を実行しない場合、準備工程(S1)では、準備する吊り治具60の数は、1つであってもよい。この場合、燃料噴射器30は、一点吊りとなる。
【0089】
「変形例」
以下、以上で説明した実施形態の変形例について説明する。
【0090】
以上の実施形態における紐材80は、実際の紐81とチェーンブロック82とを有する。しかしながら、紐材は、その長さを変えることができれば、如何なるものでもよく、例えば、チェーンブロック82のみでもよい。また、紐材は、実際の紐81のみでもよい。この場合、実際の紐81中で、フックと結び付く位置を変えて、紐材80の長さを変える。
【0091】
以上の実施形態では、フランジ取付具68と吊り具71との両方が、調節棒61に対して取り付け及び取り外しが可能である。しかしながら、フランジ取付具68と吊り具71とのうち、フランジ取付具68のみが、調節棒61に対して取り付け及び取り外しが可能であってもよい。
【0092】
以上の実施形態における燃焼器部品30は、バーナ31とバーナ保持筒35とノズル基台36とトップフランジ37とを有する燃料噴射器30である。しなしながら、燃焼器部品30は、トップフランジ(取付フランジ)37及びバーナ31のノズル32を有する部品であれば、如何なる部品であってもよい。例えば、燃焼器部品は、トップフランジ(取付フランジ)37の他、燃料噴射器30中の複数のノズル32のうち、一部のノズルのみを有する部品であってよい。また、燃焼器部品は、燃焼器20自体であってもよい。
【0093】
「付記」
以上の実施形態における燃焼器部品の取付方法は、例えば、以下のように把握される。
【0094】
(1)第一態様における燃焼器部品の取付方法は、
燃焼器軸線Acに対して放射方向に広がり、ガスタービンケーシング5に取り付けられる取付フランジ37と、燃料を噴射するノズル32とを有し、前記ノズル32が前記取付フランジ37に対して前記燃焼器軸線Acが延びる燃焼器軸線方向Dacにおける基端側Dac1と先端側Dac2とのうち前記先端側Dac2に配置されている燃焼器部品30を、前記ガスタービンケーシング5に取り付ける燃焼器部品30の取付方法である。この取付方法では、前記燃焼器部品30を紐材80で吊るすための少なくとも一つの吊り治具60を準備する準備工程S1と、前記吊り治具60を前記燃焼器部品30の前記取付フランジ37に取り付ける治具取付工程S2と、前記燃焼器部品30に取り付けられた前記吊り治具60に紐材80を掛けて、前記吊り治具60と共に前記燃焼器部品30を紐材80で吊る部品吊り工程S3と、前記燃焼器部品30を吊っている状態での前記燃焼器軸線方向Dacの向きを維持しつつ、前記燃焼器部品30を前記先端側Dac2に移動させて、前記燃焼器部品30の前記取付フランジ37を前記ガスタービンケーシング5中の燃焼器取付位置55に接触させる部品押し込み工程と、前記部品押し込み工程中であって、前記燃焼器部品30の前記取付フランジ37が前記ガスタービンケーシング5に接触する前に、前記吊り治具60を前記取付フランジ37から外す治具除去工程S5と、前記部品押し込み工程後に、前記取付フランジ37を前記ガスタービンケーシング5の前記燃焼器取付位置55に取り付ける部品取付工程S6と、を実行する。前記準備工程S1で準備する前記吊り治具60は、長手方向Deを有する調節部材61と、前記調節部材61の前記長手方向Deにおける長手方向第一側De1と長手方向第二側De2とのうち、前記長手方向第一側De1の端に取り付けられ、前記取付フランジ37に前記調節部材61を取り付けるフランジ取付具68と、前記調節部材61の前記長手方向第二側De2の端に取り付けられ、紐材80が掛かって前記燃焼器部品30を吊っている際に前記紐材80が接する下吊り点Plになる部分を有する吊り具71と、を有する。前記下吊り点Plは、前記吊り治具60を前記取付フランジ37に取り付けた際、前記燃焼器軸線方向Dacで、前記燃焼器部品30の重心Cよりも、前記先端側Dac2に位置する。
【0095】
複数の燃焼器20を備えているガスタービンでは、各燃焼器20がガスタービンケーシング5に取り付けられた際、各燃焼器20の燃焼器軸線Acは、ガスタービン軸線上流側(GT軸線上流側)Dauからガスタービン軸線下流側(GT軸線下流側)Dadに向うに連れてガスタービン軸線(GT軸線)Arに対する径方向内側Driに向かうよう、GT軸線Arに対して傾斜している。言い換えると、燃焼器20の燃焼器軸線Acは、先端側Dac2が基端側Dac1よりGT軸線Arに近くなるよう、GT軸線Arに対して傾斜している。このため、複数の燃焼器20のうち、GT軸線Arよりも下に配置された燃焼器20の燃焼器軸線Acは、その基端側Dac1よりも先端側Dac2の方が上になる。
【0096】
本態様では、吊り治具60を用いて、燃焼器部品30を吊ると、この燃焼器部品30の燃焼器軸線Acは、その基端側Dac1よりも先端側Dac2の方が上になる。このため、本態様では、重量物である燃焼器部品30を紐材80で吊っている状態で、燃焼器軸線Acの傾きの調節作業を無くすことができる、若しくは軽減することができる。
【0097】
(2)第二態様における燃焼器部品の取付方法は、
前記第一態様における燃焼器部品30の取付方法において、前記燃焼器軸線方向Dacにおける前記下吊り点Plの位置は、前記部品吊り工程S3で、前記燃焼器部品30を吊っている状態での鉛直方向Dvに対する前記燃焼器軸線Acの角度αが、前記部品取付工程S6で、前記取付フランジ37を前記ガスタービンケーシング5に取り付けた状態での鉛直方向Dvに対する前記燃焼器軸線Acの角度αに一致させることができる、位置である。前記燃焼器軸線Acの前記角度αは、鉛直方向Dvに広がり、且つ前記燃焼器軸線Acを含む仮想平面内での角度である。
【0098】
本態様では、重量物である燃焼器部品30を紐材80で吊っている状態で、燃焼器軸線Acの傾きの調節作業を実質的に無くすことができる。
【0099】
(3)第三態様における燃焼器部品の取付方法は、
前記第一態様又は前記第二態様における燃焼器部品の取付方法において、前記準備工程S1で準備する前記少なくとも一つの吊り治具60は、二つの吊り治具60を有する。前記治具取付工程S2では、前記二つの吊り治具60のうち一方の吊り治具60を前記取付フランジ37の第一位置に取り付け、前記二つの吊り治具60のうち他方の吊り治具60を前記取付フランジ37中で、前記燃焼器軸線Acに対する周方向で前記第一位置と異なる第二位置に取り付ける。前記部品吊り工程S3は、前記一方の吊り治具60に第一紐材80aを掛け、前記他方の吊り治具60に第二紐材80bを掛けて、前記一方の吊り治具60及び前記他方の吊り治具60と共に前記燃焼器部品30を前記第一紐材80a及び前記第二紐材80bで吊る紐材掛け工程S3aを含む。
【0100】
(4)第四態様における燃焼器部品の取付方法は、
前記第三態様における燃焼器部品の取付方法において、前記燃焼器部品30には、燃焼器軸線Acに対して垂直な方向に延びる基準線BLが予め定められている。前記部品吊り工程S3は、前記燃焼器部品30を吊っている状態での前記燃焼器部品30の前記基準線BLの向きが、前記取付フランジ37を前記ガスタービンケーシング5に取り付けた状態での前記燃焼器部品30の前記基準線BLの向きに一致するよう、前記一方の吊り治具60に対する前記他方の吊り治具60の相対位置を調節する周方向調節工程S3cを含む。
【0101】
本態様では、燃焼器部品30を吊っている状態での燃焼器部品30の基準線BLの向きを、取付フランジ37をガスタービンケーシング5に取り付けた状態での燃焼器部品30の基準線BLの向きに一致させることができる。このため、本態様では、部品取付工程S6を容易に行うことができる。
【0102】
(5)第五態様における燃焼器部品の取付方法は、
前記第三態様又は前記第四態様における燃焼器部品の取付方法において、前記部品吊り工程S3は、前記紐材掛け工程S3aの後に行う吊り位置移動工程S3bを含む。前記吊り位置移動工程S3bでは、前記ガスタービンケーシング5に対して、前記一方の吊り治具60に掛かっている前記第一紐材80aの上端の位置、及び前記他方の吊り治具60に掛かっている前記第二紐材80bの上端の位置を水平方向成分を含む方向に移動させることで、前記ガスタービンケーシング5に対する前記燃焼器部品30の水平方向成分を含む方向の位置を変えて、前記燃焼器部品30を前記部品押し込み工程の実行前の位置まで移動させる。前記部品押し込み工程の実行前の前記位置は、前記燃焼器部品30を吊っている状態での前記燃焼器軸線方向Dacの向きを維持しつつ、前記燃焼器部品30を前記先端側Dac2に移動させると、前記燃焼器部品30の前記取付フランジ37を前記ガスタービンケーシング5中の前記燃焼器取付位置55に接触させることができる位置である。
【0103】
複数の燃焼器部品30のうち、ガスタービンケーシング5の下側に配置する燃焼器部品30を、ガスタービンケーシング5中でこの燃焼器部品30を取り付ける目的の取付位置55に対向するよう、燃焼器部品30を吊るすことは困難である。そこで、本態様では、紐材掛け工程S3aにおいて、第一紐材80aの上端の位置及び第二紐材80bの上端の位置を、上から見た場合に、GT軸線Arに対して垂直で且つ水平な方向において、ガスタービンケーシング5と重ならない位置にする。その後、本態様では、吊り位置移動工程S3cにおいて、第一紐材80aの上端の位置及び第二紐材80bの上端の位置を移動させて、燃焼器部品30をタービンケーシン中で前記目的の取付位置55に対向させる。
【0104】
以上の実施形態における吊り治具は、例えば、以下のように把握される。
【0105】
(6)第六態様における吊り治具は、
燃焼器軸線Acに対して放射方向に広がり、ガスタービンケーシング5に取り付けられる取付フランジ37を有する燃焼器部品30を吊るすための吊り治具において、長手方向Deを有する調節部材61と、前記調節部材61の前記長手方向Deにおける長手方向第一側De1と長手方向第二側De2とのうち、前記長手方向第一側De1に端に取り付けられ、前記取付フランジ37に前記調節部材61を取り付けるフランジ取付具68と、紐材80が掛かって前記燃焼器部品30を吊っている際に前記紐材80が接する下吊り点Plになる部分を有する吊り具71と、を有する。前記フランジ取付具68と前記吊り具71とのうち、少なくとも前記フランジ取付具68は、前記調節部材61に対して、取り付け及び取り外しが可能な構造である。
【0106】
前述したように、複数の燃焼器20のうち、GT軸線Arよりも下に配置された燃焼器20の燃焼器軸線Acは、その基端側Dac1よりも先端側Dac2の方が上になる。本態様では、長手方向Deの長さが調節された調節部材61を有する吊り治具60を用いて、燃焼器部品30を吊ると、この燃焼器部品30の燃焼器軸線Acは、その基端側Dac1よりも先端側Dac2の方が上になる。このため、本態様では、重量物である燃焼器部品30を紐材80で吊っている状態で、燃焼器軸線Acの傾きの調節作業を無くすことができる、若しくは軽減することができる。
【0107】
(7)第七態様における吊り治具は、
第七態様における吊り治具において、前記調節部材61には、前記調節部材61の前記長手方向第一側De1の端から前記長手方向第二側De2に向かって凹んだ第一ネジ穴64が形成されている。前記フランジ取付具68は、前記第一ネジ穴64に捩じ込み可能なネジ軸部を有する第一ボルト69を有する。
【0108】
ここで、調節部材61に、その長手方向第一側De1の端から長手方向第一側De1に延びる雄ネジが形成されている場合について考察する。この場合、フランジ取付具68は、この雄ネジが捩じ込み可能なボルトである。この吊り治具60を燃料噴射器30から取り外す際、調節部材61の雄ネジからフランジ取付具68であるボルトを外す。その後、調節部材61の雄ネジが取付フランジ37から抜けるよう、この調節部材61を長手方向第二側De2に移動させる。そして、調節部材61を取付フランジ37のフランジ面と平行な方向に移動させる。このため、この場合には、取付フランジ37から吊り治具60を外す際に、この吊り治具60の長手方向第二側De2に、調節部材61を移動させるための空間が必要である。しかしながら、本態様では、調節部材61には、フランジ取付具68としての第一ボルト69が捩じ込み可能な第一穴が形成されているため、調節部材61から第一ボルト69を外せば、この調節部材61を長手方向第二側De2に移動させずに、直ちに、この調節部材61を取付フランジ37のフランジ面と平行な方向に移動させることができる。
【0109】
(8)第八態様における吊り治具は、
前記第六態様又は前記第七態様における吊り治具において、前記吊り具71は、環状を成し、紐材80が掛かって前記燃焼器部品30を吊っている際に前記紐材80が接する前記下吊り点Plになる部分を有する吊り環72と、前記吊り環72が取り付けられている吊り環支持具73と、前記吊り環支持具73を前記調節部材61の前記長手方向第二側De2の端に取り付ける支持取付具78と、を有する。前記支持取付具78は、前記調節部材61に対して、取り付け及び取り外しが可能な構造である。
【0110】
(9)第九態様における吊り治具は、
前記第八態様における吊り治具において、前記調節部材61には、前記調節部材61の前記長手方向第二側De2の端から前記長手方向第一側De1に向かって凹んだ第二ネジ穴65が形成されている。前記支持取付具78は、前記第二ネジ穴65に捩じ込み可能なネジ軸部を有する第二ボルト79を有する。
【0111】
(10)第十態様における吊り治具は、
前記第九態様における吊り治具において、前記第二ボルト79は、前記吊り環支持具73に対して、前記第二ボルト79の前記ネジ軸部を中心として回転可能に、且つ、前記第二ボルト79の前記ネジ軸部が延びる軸部長手方向Deに相対移動不能に、前記吊り環支持具73は取り付けられている。
【0112】
本態様では、吊り治具60を用いて、燃焼器部品30を吊る際、吊り環72及び吊り環支持具73に生じる応力が小さくなるよう、第二ボルト79に対して吊り環支持具73が回転する。このため、本態様の吊り治具60を用いて、燃焼器部品30を吊る際、この吊り治具60が損傷することを抑制することができる。
【0113】
(11)第十一態様における吊り治具は、
前記第八態様から前記第九態様のいずれか一態様における吊り治具において、前記吊り環72は、前記吊り環支持具73に対して、揺動可能に取り付けられている。
【0114】
本態様では、吊り治具60を用いて、燃焼器部品30を吊る際、吊り環72及び吊り環72に支持具に生じる応力が小さくなるよう、吊り環72が吊り環支持具73に対して揺動する。このため、本態様の吊り治具60を用いて、燃焼器部品30を吊る際、この吊り治具60が損傷することを抑制することができる。
【0115】
(12)第十二態様における吊り治具は、
前記第八態様から前記第十一態様のいずれか一態様における吊り治具において、前記調節部材61は、前記長手方向Deに垂直な方向で互いに相反する側を向いている二つの平坦な工具接触面66を有する。
【0116】
本態様では、調節部材61の工具接触面66にレンチ又はスパナ等の工具のボルト接触面を接触させて、この工具を操作して、吊り治具60を取付フランジ37に取り付ける作業、又は吊り治具60を取付フランジ37から外す作業を行うことができる。このため、これらの作業の作業量を軽減できる。
【0117】
以上の実施形態における吊り治具セットは、例えば、以下のように把握される。
【0118】
(13)第十三態様における吊り治具セットは、
前記第八態様から前記第十二態様のいずれか一態様における吊り治具と、長手方向を有する第二調節部材61xと、を備える。前記第二調節部材61xの前記長手方向Deの長さが、前記吊り治具60の前記調節部材61の前記長手方向Deの長さと異なる。前記吊り治具60のフランジ取付具68は、前記第二調節部材61xの前記長手方向Deにおける長手方向第一側De1と長手方向第二側De2とのうち、前記長手方向第一側De1に端に取り付け可能である。前記吊り治具60の前記吊り具71は、前記第二調節部材61xの前記長手方向第二側De2の端に取り付け可能である。
【0119】
燃焼器部品30の燃焼器軸線Acの傾きは、ガスタービンケーシング5中の取付位置55が異なると、燃焼器部品30の燃焼器軸線Acの傾きが異なる。このため、本態様では、調節部材61を有する吊り治具60と、第二調節部材61xを有する別吊り治具60xとを使い分けることで、燃焼器部品30の燃焼器軸線Acを取付位置に応じた傾きにすることができる。
【0120】
以上の実施形態における燃焼器部品セットは、例えば、以下のように把握される。
【0121】
(14)第十四態様における燃焼器部品セットは、
前記第八態様から前記第十二態様のいずれか一態様における吊り治具と、前記燃焼器部品30と、を備える。前記燃焼器部品30は、燃料を噴射するノズル32を有し、前記ノズル32が前記取付フランジ37に対して前記燃焼器軸線Acが延びる燃焼器軸線方向Dacにおける基端側Dac1と先端側Dac2とのうち前記先端側Dac2に配置されている。前記吊り治具60の前記下吊り点Plは、前記吊り治具60を前記取付フランジ37に取り付けた際、前記燃焼器軸線方向Dacで、前記燃焼器部品30の重心Cよりも、前記先端側Dac2に位置する。
【0122】
前述したように、複数の燃焼器20のうち、GT軸線Arよりも下に配置された燃焼器20の燃焼器軸線Acは、その基端側Dac1よりも先端側Dac2の方が上になる。本態様の吊り治具60を用いて、燃焼器部品30を吊ると、この燃焼器部品30の燃焼器軸線Acは、その基端側Dac1よりも先端側Dac2の方が上になる。このため、本態様では、重量物である燃焼器部品30を紐材80で吊っている状態で、燃焼器軸線Acの傾きの調節作業を無くすことができる、若しくは軽減することができる。
【0123】
(15)第十五態様における燃焼器部品セットは、
燃焼器軸線Acに対して放射方向に広がり、ガスタービンケーシング5に取り付けられる取付フランジ37と、燃料を噴射するノズル32とを有し、前記ノズル32が前記取付フランジ37に対して前記燃焼器軸線Acが延びる燃焼器軸線方向Dacにおける基端側Dac1と先端側Dac2とのうち前記先端側Dac2に配置されている燃焼器部品30と、前記燃焼器部品30を紐材80で吊るす吊り治具60と、を備える。前記吊り治具60は、長手方向Deを有する調節部材61と、前記調節部材61の前記長手方向Deにおける長手方向第一側De1と長手方向第二側De2とのうち、前記長手方向第一側De1の端に取り付けられ、前記取付フランジ37に前記調節部材61を取り付けるフランジ取付具68と、前記調節部材61の前記長手方向第二側De2の端に取り付けられ、紐材80が掛かって前記燃焼器部品30を吊っている際に前記紐材80が接する下吊り点Plになる部分を有する吊り具71と、を有する。前記下吊り点Plは、前記吊り治具60を前記取付フランジ37に取り付けた際、前記燃焼器軸線方向Dacで、前記燃焼器部品30の重心Cよりも、前記先端側Dac2に位置する。
【0124】
前述したように、複数の燃焼器20のうち、GT軸線Arよりも下に配置された燃焼器20の燃焼器軸線Acは、その基端側Dac1よりも先端側Dac2の方が上になる。本態様の吊り治具60を用いて、燃焼器部品30を吊ると、この燃焼器部品30の燃焼器軸線Acは、その基端側Dac1よりも先端側Dac2の方が上になる。このため、本態様では、重量物である燃焼器部品30を紐材80で吊っている状態で、燃焼器軸線Acの傾きの調節作業を無くすことができる、若しくは軽減することができる。
【0125】
(16)第十六態様における燃焼器部品セットは、
前記第十五態様における燃焼器部品セットにおいて、前記フランジ取付具68と前記吊り具71とのうち、少なくとも前記フランジ取付具68は、前記調節部材61に対して、取り付け及び取り外しが可能な構造である。
【符号の説明】
【0126】
1:ガスタービンロータ
5:ガスタービンケーシング
10:圧縮機
11:圧縮機ロータ
12:ロータ軸
13:動翼列
15:圧縮機ケーシング
16:静翼列
20:燃焼器
21:燃焼筒(又は尾筒)
24:燃焼筒サポート
30:燃料噴射器(又は燃焼器部品)
31:バーナ
32:ノズル
35:バーナ保持筒
36:ノズル基台
37:トップフランジ(取付フランジ)
38:ボルト孔
40:タービン
41:タービンロータ
42:ロータ軸
43:動翼列
45:タービンケーシング
46:静翼列
49:燃焼ガス流路
51:中間ケーシング
52:上流側フランジ
53:下流側フランジ
54:開口
55:燃焼器取付フランジ(取付位置)
55a:第一燃焼器取付フランジ
55b:第二燃焼器取付フランジ
55c:第三燃焼器取付フランジ
59:燃焼器取付ボルト
56:ボルトネジ穴
60:吊り治具
60a:第一吊り治具
60b:第二吊り治具
60x:別吊り治具
61:調節棒(又は調節部材)
61x:第二調節棒(又は第二調節部材)
62:棒本体
63:受けフランジ
64:第一ネジ穴
65:第二ネジ穴
66:工具接触面
68:フランジ取付具
69:第一ボルト
71:吊り具
72:吊り環
73:吊り環支持具
74:支持具本体
75:スリーブ
78:支持取付具
79:第二ボルト
80:紐材
80a:第一紐材
80b:第二紐材
81:紐
82:チェーンブロック
83:チェーン
84:下フック
85:ブロック
86:上フック
90:ガイドロッド
91:第一ガイドロッド
92:第二ガイドロッド
93:部品移動用ナット
Ao:外気
A:圧縮空気
G:燃焼ガス
Ar:ガスタービン軸線(GT軸線)
Ac:燃焼器軸線
As:棒軸線
Ay:揺動軸
Ax:中心軸
Da:ガスタービン軸線方向(GT軸線方向)
Dac:燃焼器軸線方向
Dr:径方向
Dri:径方向内側
Dro:径方向外側
Dc:周方向
De:長手方向
De1:長手方向第一側
De2:長手方向第二側
BL:基準線
Pl:下吊り点
Pu:上吊り点
C:重心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14