(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 3/43 20060101AFI20231212BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
E02F3/43 C
E02F9/20 Q
(21)【出願番号】P 2020053350
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】坂井 大斗
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-052515(JP,A)
【文献】国際公開第2014/192475(WO,A1)
【文献】特開平10-008493(JP,A)
【文献】特開2018-016973(JP,A)
【文献】特開2019-112825(JP,A)
【文献】特開2018-003514(JP,A)
【文献】特開2018-112051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/42-3/43
3/84-3/85
9/00-9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフロント部材によって構成される作業装置と,
前記複数のフロント部材を駆動する複数のアクチュエータと,
前記複数のアクチュエータを操作するための操作装置と,
前記操作装置が操作されている間に前記作業装置が
前記作業装置の動作平面と目標地形との交線である目標面を超えないように前記複数のアクチュエータのうち少なくとも1つのアクチュエータの目標速度を演算し,その目標速度に基づいて前記少なくとも1つのアクチュエータを制御する領域制限制御を実行可能なコントローラとを備えた作業機械において,
前記コントローラは,
前記目標地形上に予め設定された複数の属性設定点における現況地形と前記目標地形との上下関係を前記目標地形のデータと前記現況地形のデータとに基づいて判定し,前記複数の属性設定点のうち前記現況地形が前記目標地形と一致すると判定された属性設定点と、前記複数の属性設定点のうち前記現況地形が前記目標地形の上方に位置すると判定された属性設定点とに第1属性を付与し,前記複数の属性設定点のうち前記現況地形が前記目標地形の下方に位置すると判定された属性設定点に第2属性を付与することで、前記目標地形と前記現況地形との上下関係が規定された上下関係データを生成し,
前記上下関係データ
に含まれる前記複数の属性設定点のうち前記目標面の周囲に位置する属性設定点の属性に基づいて前記目標面上における前記目標地形と前記現況地形との上下関係を判定し,前記目標面上で前記現況地形が前記目標地形と一致すると判定された部分及び前記目標面上で前記現況地形が前記目標地形の上方に位置すると判定された部分に
前記第1属性を付与し,前記目標面上で前記現況地形が前記目標地形の下方に位置すると判定された部分に
前記第2属性を付与し,
前記目標面上で前記第1属性が付与された部分では前記領域制限制御を実行し,前記目標面上で
前記第2属性が付与された部分では前記領域制限制御を実行しないことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項
1の作業機械において,
前記コントローラは,
前記目標面上の2つの端点と変曲点に対して,前記複数の属性設定点のうち最も近い属性設定点と同じ属性を付与し,
前記複数の属性設定点の中から,前記目標面を基準として所定の距離の範囲にある複数の属性設定点を抽出し,
前記抽出した複数の属性設定点のそれぞれに最も近い目標面上の複数の点(最近接点と称する)に前記抽出した複数の属性設定点のそれぞれと同じ属性を付与し,
前記目標面上の前記2つの端点,前記変曲点,及び前記最近接点に付与された属性に基づいて,前記目標面上における前記目標地形と前記現況地形との上下関係を判定し,その判定の結果に基づいて前記目標面上で前記第1属性と前記第2属性のいずれを付与する部分であるかを決定することを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項
2の作業機械において,
前記コントローラは,
前記目標面上の前記2つの端点,前記変曲点,及び前記最近接点のうち,前記目標面上で隣接する2つの点に対して異なる属性が付与されている場合には,前記目標面上かつ前記隣接する2つの点の間に属性変化点を設定し,
前記属性変化点によって前記目標面を複数の区間に分割し,前記目標面上の前記2つの端点,前記変曲点,及び前記最近接点のうち前記複数の区間のそれぞれに含まれる点の属性に応じて各区間の属性を付与することを特徴とする作業機械。
【請求項4】
複数のフロント部材によって構成される作業装置と,
前記複数のフロント部材を駆動する複数のアクチュエータと,
前記複数のアクチュエータを操作するための操作装置と,
前記操作装置が操作されている間に前記作業装置が前記作業装置の動作平面と目標地形との交線である目標面を超えないように前記複数のアクチュエータのうち少なくとも1つのアクチュエータの目標速度を演算し,その目標速度に基づいて前記少なくとも1つのアクチュエータを制御する領域制限制御を実行可能なコントローラとを備えた作業機械において,
前記作業装置は,前記複数のフロント部材としてバケット,アーム及びブームを備え,
前記コントローラは,
前記目標地形と現況地形との上下関係が規定された上下関係データに基づいて前記目標面上における前記目標地形と前記現況地形との上下関係を判定し,前記目標面上で前記現況地形が前記目標地形と一致すると判定された部分及び前記目標面上で前記現況地形が前記目標地形の上方に位置すると判定された部分に第1属性を付与し,前記目標面上で前記現況地形が前記目標地形の下方に位置すると判定された部分に第2属性を付与し,
前記目標面上で前記第2属性が付与された領域の上方に前記バケットが位置するとき,かつ,前記目標面上で前記第2属性が付与された領域と前記バケットの背面の角度差が所定値以下のとき,かつ,前記ブームを駆動するブームシリンダのロッド圧が所定値以上のときには,前記目標面上で前記第2属性が付与された領域であって前記バケットの下方に位置する領域の属性を前記第1属性に変更
し,
前記目標面上で前記第1属性が付与された部分では前記領域制限制御を実行し,前記目標面上で前記第2属性が付与された部分では前記領域制限制御を実行しないことを特徴とする作業機械。
【請求項5】
複数のフロント部材によって構成される作業装置と,
前記複数のフロント部材を駆動する複数のアクチュエータと,
前記複数のアクチュエータを操作するための操作装置と,
前記操作装置が操作されている間に前記作業装置が前記作業装置の動作平面と目標地形との交線である目標面を超えないように前記複数のアクチュエータのうち少なくとも1つのアクチュエータの目標速度を演算し,その目標速度に基づいて前記少なくとも1つのアクチュエータを制御する領域制限制御を実行可能なコントローラとを備えた作業機械において,
前記作業装置は,前記複数のフロント部材としてバケット,アーム及びブームを備え,
前記コントローラは,
前記目標地形と現況地形との上下関係が規定された上下関係データに基づいて前記目標面上における前記目標地形と前記現況地形との上下関係を判定し,前記目標面上で前記現況地形が前記目標地形と一致すると判定された部分及び前記目標面上で前記現況地形が前記目標地形の上方に位置すると判定された部分に第1属性を付与し,前記目標面上で前記現況地形が前記目標地形の下方に位置すると判定された部分に第2属性を付与し,
前記目標面上で前記第2属性が付与された領域と前記バケットが交差しているとき,かつ,前記バケットに最も近い前記目標面の勾配が所定値以上であるとき,かつ,前記ブームを駆動するブームシリンダのロッド圧が所定値以上のときには,前記目標面上で前記第2属性が付与された領域であって前記バケットの下方に位置する領域の属性を前記第1属性に変更
し,
前記目標面上で前記第1属性が付与された部分では前記領域制限制御を実行し,前記目標面上で前記第2属性が付与された部分では前記領域制限制御を実行しないことを特徴とする作業機械。
【請求項6】
複数のフロント部材によって構成される作業装置と,
前記複数のフロント部材を駆動する複数のアクチュエータと,
前記複数のアクチュエータを操作するための操作装置と,
前記操作装置が操作されている間に前記作業装置が前記作業装置の動作平面と目標地形との交線である目標面を超えないように前記複数のアクチュエータのうち少なくとも1つのアクチュエータの目標速度を演算し,その目標速度に基づいて前記少なくとも1つのアクチュエータを制御する領域制限制御を実行可能なコントローラとを備えた作業機械において,
前記コントローラは,
前記目標地形と現況地形との上下関係が規定された上下関係データに基づいて前記目標面上における前記目標地形と前記現況地形との上下関係を判定し,前記目標面上で前記現況地形が前記目標地形と一致すると判定された部分及び前記目標面上で前記現況地形が前記目標地形の上方に位置すると判定された部分に第1属性を付与し,前記目標面上で前記現況地形が前記目標地形の下方に位置すると判定された部分に第2属性を付与し,
前記目標面上で前記第1属性が付与された部分では前記領域制限制御を実行し,前記目標面上で前記第2属性が付与された部分では前記領域制限制御を実行せず、
前記目標面と,前記目標面に付与された属性が前記第1属性と前記第2属性のいずれであるかを示す属性情報とが表示される表示装置をさらに備えることを特徴とする作業機械。
【請求項7】
請求項1の作業機械において,
前記複数の属性設定点に前記第1属性と前記第2属性のうちいずれが付与されているかが表示される表示装置をさらに備えることを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業装置を備える作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,ICT(Information and Communication Technology :情報通信技術)を建設施工に適用して,多様な情報を効率的に活用して施工の合理化を図る情報化施工の活用が進められている。建設施工に利用される代表的な作業機械である油圧ショベルには,(1)キャブ内に設けた表示装置(モニタ)に,予め入力した目標地形(設計図で規定される完成後の地形の形状)と,作業装置を構成するバケットとを,バケットの実際の位置と角度を計測して並列表示することで,オペレータの操作を誘導するマシンガイダンス機能(MG(Machine Guidance)と省略することがある)や,(2)コントローラに目標地形の設計データを予め入力しておき,バケットの実際の位置と角度を計測して当該コントローラに入力し,バケット先端が目標地形に近づくと作業装置に対して当該コントローラが制御信号を出力して,所定の距離以上は目標地形に近接しないように作業装置の動作範囲を制限するマシンコントロール機能(以下,MC(Machine Control)と省略することがある)を搭載したものがある。
【0003】
マシンコントロール機能は目標地形に従って地形を切り出す切土作業において主に用いられ,目標地形に概ね近い形状を素早く切り出す作業(粗掘削作業)を行っている間に作業装置が目標地形の下側を掘ることの回避や,目標地形に沿って地形を正確に切り出して整形する作業(仕上作業)に用いられる。しかし,施工現場における施工開始前の初期の地形(初期地形)と目標地形との位置関係によっては,現在の地形を切り出す切土作業だけでなく,外部から搬入した土砂を現在の地形の上に積み上げて目標地形を整形する盛土作業も行う場合がある。盛土作業においてはバケットを目標地形よりも下側に位置させた状態での作業が必要となる。そのため盛土予定地周辺において上記のマシンコントロール機能を実行していると,目標地形より下側において所望のバケット動作ができない場合がある。たとえば,切土予定地から土砂を持ち上げ,その土砂を盛土予定地へ放土する作業を考えると,切土予定地においては目標地形を掘りすぎないようにマシンコントロール機能によって作業装置の動作を制御したいが,盛土予定地においてはマシンコントロール機能が実行されたままだと目標地形より下側にバケットが入り込まないように動作が制限されるため,オペレータによる所望の位置への放土操作を妨げる恐れがある。すなわち,切土予定地ではマシンコントロール機能を実行し,盛土予定地ではマシンコントロール機能が実行されないようにしたい。
【0004】
このような課題に対し,マシンコントロール機能を無効化するボタンを操作レバー上に設け,所望のタイミングで当該ボタンのONとOFFを切り替えることでオペレータの操作を妨げずにマシンコントロール機能を実行するか否かを切り替えられる技術が提案されている(特許文献1)。また,目標地形ではなく現在の地形の所定距離だけ上方に沿って作業装置(バケット)が移動するようにアクチュエータの制御信号を生成する技術が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3172447号公報
【文献】特開2018-016973
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では,マシンコントロールの実行状態の切り替えがオペレータに委ねられるため,盛土予定地内に侵入する際にマシンコントロール機能を解除し損ねて思いがけずアクチュエータが停止し土砂をこぼしてしまったり,土砂を放土した後に切土作業に戻る際にマシンコントロール機能を実行状態にすることを忘れ目標地形を傷つけてしまったりする恐れがある。
【0007】
また,油圧ショベルを用いて盛土作業を実施する場合,ブルドーザのように土砂をブレードで盛土予定地内に運搬すると同時に車体の重みで土砂を押し固める作業だけでなく,盛土予定地内にある程度の量の土砂を放土した後にその土砂を1か所にかき集めてバケットで押し固めるという作業も行われ得る。このような作業において,特許文献2に記載の技術を適用すると,盛土予定地内に放土された土砂に対し所定距離よりもバケットを近づけることができなくなるため,放土された土砂をかき集めたり,土砂をバケットで押し固めたりするといった作業が困難となる。
【0008】
本発明の目的は,盛土予定地が含まれる作業エリアにおいて,オペレータがマシンコントロール機能の実行状態を意識することなく作業できる作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが,その一例を挙げるならば,複数のフロント部材によって構成される作業装置と,前記複数のフロント部材を駆動する複数のアクチュエータと,前記複数のアクチュエータを操作するための操作装置と,前記操作装置が操作されている間に前記作業装置が前記作業装置の動作平面と目標地形との交線である目標面を超えないように前記複数のアクチュエータのうち少なくとも1つのアクチュエータの目標速度を演算し,その目標速度に基づいて前記少なくとも1つのアクチュエータを制御する領域制限制御を実行可能なコントローラとを備えた作業機械において,前記コントローラは,前記目標地形上に予め設定された複数の属性設定点における現況地形と前記目標地形との上下関係を前記目標地形のデータと前記現況地形のデータとに基づいて判定し,前記複数の属性設定点のうち前記現況地形が前記目標地形と一致すると判定された属性設定点と、前記複数の属性設定点のうち前記現況地形が前記目標地形の上方に位置すると判定された属性設定点とに第1属性を付与し,前記複数の属性設定点のうち前記現況地形が前記目標地形の下方に位置すると判定された属性設定点に第2属性を付与することで、前記目標地形と前記現況地形との上下関係が規定された上下関係データを生成し,前記上下関係データに含まれる前記複数の属性設定点のうち前記目標面の周囲に位置する属性設定点の属性に基づいて前記目標面上における前記目標地形と前記現況地形との上下関係を判定し,前記目標面上で前記現況地形が前記目標地形と一致すると判定された部分及び前記目標面上で前記現況地形が前記目標地形の上方に位置すると判定された部分に前記第1属性を付与し,前記目標面上で前記現況地形が前記目標地形の下方に位置すると判定された部分に前記第2属性を付与し,前記目標面上で前記第1属性が付与された部分では前記領域制限制御を実行し,前記目標面上で前記第2属性が付与された部分では前記領域制限制御を実行しないこととする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば,オペレータは盛土予定地を含む作業エリアにおいてマシンコントロール機能の実行状態を意識することなく作業できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る油圧ショベルの構成図。
【
図2】本発明の実施形態に係る油圧ショベルに搭載された油圧駆動システムの概略図。
【
図3】
図2中のフロント制御用油圧ユニット及びその周辺設備の詳細図。
【
図4】本発明の実施形態に係る油圧ショベルにおける座標系と各部の角度を示す図。
【
図5】本発明の実施形態に係るコントローラのハードウェア構成図。
【
図6】第1実施形態に係るコントローラによって行われる演算処理を機能ごとにブロック化して示した機能ブロック図。
【
図7】本発明の実施形態に係る油圧ショベルによって行われる掘削作業(領域制限制御)の概念図。
【
図8】
図6の目標地形情報記憶部によって行われる演算処理を機能ごとにブロック化して示した機能ブロック図。
【
図9】本発明の実施形態に係る属性設定点の生成方法の概念図。
【
図10】
図6の目標面演算部によって行われる目標面の算出処理およびその目標面に対する属性情報付与処理のフローチャート。
【
図11】コントローラ(目標面演算部)によって演算される目標面の一例を示す図。
【
図12】
図10のフローチャートにおけるステップS102-S105の説明図と,
図10のフローチャートにおけるステップS106-S107の説明図。
【
図13】第4実施形態におけるバケット背面と目標面の角度差の説明図。
【
図15】第4実施形態の変形例における目標面演算部による属性変更処理の一例の説明図。
【
図17】モニタ(表示装置)に表示される目標地形及び目標面とその属性情報の表示例。
【
図18】モニタ(表示装置)に表示される目標面とその属性情報の表示例。
【
図19】領域制限制御で利用される目標面距離dと補正係数kの相関図。
【
図20】目標面距離dに応じた補正前後のバケット先端の速度ベクトルを表す模式図。
【
図21】第4実施形態に係るコントローラの機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下,本発明の実施形態について図面を用いて説明する。本実施形態では作業機械として,バケット,アーム及びブームからなる作業装置(フロント作業装置)を備える油圧ショベルを例に説明するが,バケット以外のアタッチメント(作業具)を備えるものや,2つ以上に分割されたブームを備える油圧ショベル等にも適用できる。なお,以下の説明では,同一の構成要素が複数存在する場合,符号(数字)の末尾にアルファベットを付すことがあるが,当該アルファベットを省略して当該複数の構成要素をまとめて表記することがある。例えば,同一の3つのポンプ300a,300b,300cが存在するとき,これらをまとめてポンプ300と表記することがある。
【0013】
<実施形態1>
(油圧ショベルの全体構成)
図1は本発明の実施形態に係る油圧ショベルの構成図であり,
図2は本発明の実施形態に係る油圧ショベルの各種制御を司るコントローラ40を油圧駆動装置と共に示す図であり,
図3は
図2中のフロント制御用油圧ユニット160及びその周辺設備の詳細図である。
【0014】
図1において,油圧ショベル1は,多関節型の作業装置(フロント作業装置)1Aと,車体1Bで構成されている。車体1Bは,左右の走行油圧モータ3a,3b(油圧モータ3a,3bは
図2を参照)により走行する下部走行体11と,下部走行体11の上に取り付けられ,旋回油圧モータ4により旋回する上部旋回体12とからなる。
【0015】
作業装置1Aは,上下方向にそれぞれ回動する複数のフロント部材(ブーム8,アーム9及びバケット10)を連結して構成されている。ブーム8の基端は上部旋回体12の前部においてブームピン(ブーム基底部)8a(
図4参照)を介して回動可能に支持されている。ブーム8の先端にはアームピンを介してアーム9が回動可能に連結されており,アーム9の先端にはバケットピンを介してバケット10が回動可能に連結されている。ブーム8はブームシリンダ5によって駆動され,アーム9はアームシリンダ6によって駆動され,バケット10はバケットシリンダ7によって駆動される。
【0016】
ブーム8,アーム9,バケット10の回動角度α,β,γ(
図4参照)を測定可能なように,ブームピンにブーム角度センサ30,アームピンにアーム角度センサ31,バケットリンク13にバケット角度センサ32が取付けられ,上部旋回体12には基準面(例えば水平面)に対する上部旋回体12(車体1B)の前後方向の傾斜角(ピッチ角)θ及び左右方向の傾斜角(ロール角)φ(
図4参照)を検出する車体傾斜角センサ33が取付けられている。なお,角度センサ30,31,32はそれぞれ基準面に対する角度センサに代替可能である。
【0017】
上部旋回体12に設けられた運転室内には,走行右レバー23a(
図2)を有し走行右油圧モータ3a(下部走行体11)を操作するための操作装置47a(
図2)と,走行左レバー23b(
図2)を有し走行左油圧モータ3b(下部走行体11)を操作するための操作装置47b(
図2)と,操作右レバー1a(
図2)を共有しブームシリンダ5(ブーム8)及びバケットシリンダ7(バケット10)を操作するための操作装置45a,46a(
図2)と,操作左レバー1b(
図2)を共有しアームシリンダ6(アーム9)及び旋回油圧モータ4(上部旋回体12)を操作するための操作装置45b,46b(
図2)が設置されている。以下では,走行右レバー23a,走行左レバー23b,操作右レバー1aおよび操作左レバー1bを操作レバー1,23と総称することがある。
【0018】
上部旋回体12に搭載された原動機18(
図2)は,例えばエンジンであり,油圧ポンプ2とパイロットポンプ48を駆動する。油圧ポンプ2としてはレギュレータ2aによって容量が制御される少なくとも1つの可変容量型ポンプを利用でき,パイロットポンプ48としては固定容量型ポンプが利用可能である。本実施形態においては,
図2に示すように,パイロットライン144,145,146,147,148,149の途中にシャトルブロック162が設けられている。操作装置45,46,47から出力された油圧信号が,このシャトルブロック162を介してレギュレータ2aにも入力される。シャトルブロック162の詳細構成は省略するが,油圧信号がシャトルブロック162を介してレギュレータ2aに入力されており,油圧ポンプ2の吐出流量が当該油圧信号に応じて制御される。
【0019】
パイロットポンプ48の吐出配管であるポンプライン170はロック弁39を通った後,複数に分岐して操作装置45,46,47,フロント制御用油圧ユニット160内の各弁に接続している。ロック弁39は本例では電磁切換弁であり,その電磁駆動部は上部旋回体12の運転室に配置されたゲートロックレバー(不図示)の位置検出器と電気的に接続している。ゲートロックレバーのポジションは位置検出器で検出され,その位置検出器からロック弁39に対してゲートロックレバーのポジションに応じた信号が入力される。ゲートロックレバーのポジションがロック位置にあればロック弁39が閉じてポンプライン170が遮断され,ロック解除位置にあればロック弁39が開いてポンプライン170が開通する。つまり,ポンプライン170が遮断された状態では操作装置45,46,47による操作が無効化され,旋回,掘削等の動作が禁止される。
【0020】
操作装置45,46,47は,油圧パイロット方式が利用可能であり,パイロットポンプ48から吐出される圧油をもとに,それぞれオペレータにより操作される操作レバー1,23の操作量(例えば,レバーストローク)と操作方向に応じたパイロット圧(操作圧と称することがある)を発生する。このように発生したパイロット圧は,コントロールバルブユニット20内の対応する流量制御弁15a~15f(
図2または
図3参照)の油圧駆動部150a~155bにパイロットライン144a~149b(
図3参照)を介して供給され,これら流量制御弁15a~15fを駆動する制御信号として利用される。
【0021】
油圧ポンプ2から吐出された圧油は,流量制御弁15a,15b,15c,15d,15e,15f(
図3参照)を介して走行右油圧モータ3a,走行左油圧モータ3b,旋回油圧モータ4,ブームシリンダ5,アームシリンダ6,バケットシリンダ7,に供給される。供給された圧油によってブームシリンダ5,アームシリンダ6,バケットシリンダ7が伸縮することで,ブーム8,アーム9,バケット10がそれぞれ回動し,バケット10の位置及び姿勢が変化する。また,供給された圧油によって旋回油圧モータ4が回転することで,下部走行体11に対して上部旋回体12が旋回する。そして,供給された圧油によって走行右油圧モータ3a,走行左油圧モータ3bが回転することで,下部走行体11が走行する。
【0022】
油圧ショベル1は,
図1及び
図4に示すように,上部旋回体12の上面に取り付けられた一対のGNSS(Global Navigation Sattelite System)アンテナ14A,14Bを備えている。2つのGNSSアンテナ14A,14Bから出力された情報は上部旋回体12に搭載されたGNSS受信機59(
図5)に入力され,グローバル座標系における上部旋回体12の位置及び方位の演算に利用される。コントローラ40は,GNSS受信機59の演算結果(上部旋回体12の位置及び方位)と作業装置1Aの姿勢とに基づいてグローバル座標系における例えばバケット10の先端位置を算出できる。
【0023】
(フロント制御用油圧ユニット160)
図3に示すように,フロント制御用油圧ユニット160は,ブーム8用の操作装置45aのパイロットライン144a,144bに設けられ,操作レバー1aの操作量としてパイロット圧(第1制御信号)を検出する圧力センサ70a,70bと,一次ポート側がポンプライン170を介してパイロットポンプ48に接続されパイロットポンプ48からのパイロット圧を減圧して出力する電磁比例弁54aと,ブーム8用の操作装置45aのパイロットライン144aと電磁比例弁54aの二次ポート側に接続され,パイロットライン144a内のパイロット圧と電磁比例弁54aから出力される制御圧(第2制御信号)の高圧側を選択し,流量制御弁15aの油圧駆動部150aに導くシャトル弁82aと,ブーム8用の操作装置45aのパイロットライン144bに設置され,コントローラ40からの制御信号を基にパイロットライン144b内のパイロット圧(第1制御信号)を低減して出力する電磁比例弁54bを備えている。
【0024】
また,フロント制御用油圧ユニット160は,アーム9用のパイロットライン145a,145bに設置され,操作レバー1bの操作量としてパイロット圧(第1制御信号)を検出してコントローラ40に出力する圧力センサ71a,71bと,パイロットライン145bに設置され,コントローラ40からの制御信号を基にパイロット圧(第1制御信号)を低減して出力する電磁比例弁55bと,パイロットライン145aに設置され,コントローラ40からの制御信号を基にパイロットライン145a内のパイロット圧(第1制御信号)を低減して出力する電磁比例弁55aが設けられている。
【0025】
また,フロント制御用油圧ユニット160は,バケット10用のパイロットライン146a,146bには,操作レバー1aの操作量としてパイロット圧(第1制御信号)を検出してコントローラ40に出力する圧力センサ72a,72bと,コントローラ40からの制御信号を基にパイロット圧(第1制御信号)を低減して出力する電磁比例弁56a,56bと,一次ポート側がパイロットポンプ48に接続されパイロットポンプ48からのパイロット圧を減圧して出力する電磁比例弁56c,56dと,パイロットライン146a,146b内のパイロット圧と電磁比例弁56c,56dから出力される制御圧の高圧側を選択し,流量制御弁15cの油圧駆動部152a,152bに導くシャトル弁83a,83bとがそれぞれ設けられている。なお,
図3では,圧力センサ70,71,72とコントローラ40との接続線は紙面の都合上省略している。
【0026】
電磁比例弁54b,55a,55b,56a,56bは,非通電時には開度が最大で,コントローラ40からの制御信号である電流を増大させるほど開度は小さくなる。一方,電磁比例弁54a,56c,56dは,非通電時には開度をゼロ,通電時に開度を有し,コントローラ40からの電流(制御信号)を増大させるほど開度は大きくなる。このように各電磁比例弁の開度54,55,56はコントローラ40からの制御信号に応じたものとなる。
【0027】
上記のように構成される制御用油圧ユニット160において,コントローラ40から制御信号を出力して電磁比例弁54a,56c,56dを駆動すると,対応する操作装置45a,46aのオペレータ操作が無い場合にもパイロット圧(第2制御信号)を発生できるので,ブーム上げ,バケットクラウド,バケットダンプを強制的に発動できる。また,これと同様にコントローラ40により電磁比例弁54b,55a,55b,56a,56bを駆動すると,操作装置45a,45b,46aのオペレータ操作により発生したパイロット圧(第1制御信号)を減じたパイロット圧(第2制御信号)を発生することができ,ブーム下げ動作,アームクラウド/ダンプ動作,バケットクラウド/ダンプ動作の速度をオペレータ操作の値から強制的に低減できる。
【0028】
本稿では,流量制御弁15a~15cに対する制御信号のうち,操作装置45a,45b,46aの操作によって発生したパイロット圧を「第1制御信号」と称する。そして,流量制御弁15a~15cに対する制御信号のうち,コントローラ40で電磁比例弁54b,55a,55b,56a,56bを駆動して第1制御信号を補正(低減)して生成したパイロット圧と,コントローラ40で電磁比例弁54a,56c,56dを駆動して第1制御信号とは別に新たに生成したパイロット圧を「第2制御信号」と称する。
【0029】
第2制御信号は,第1制御信号によって発生される作業装置1Aの制御点の速度が所定の条件に反するときに生成され,当該所定の条件に反しない作業装置1Aの制御点の速度を発生させる制御信号として生成される。なお,同一の流量制御弁15a~15cにおける一方の油圧駆動部に対して第1制御信号が,他方の油圧駆動部に対して第2制御信号が生成される場合は,第2制御信号を優先的に油圧駆動部に作用させることができ,第1制御信号を電磁比例弁で遮断し,第2制御信号を当該他方の油圧駆動部に入力できる。したがって,流量制御弁15a~15cのうち第2制御信号が演算されたものについては第2制御信号を基に制御され,第2制御信号が演算されなかったものについては第1制御信号を基に制御され,第1及び第2制御信号の双方が発生しなかったものについては制御(駆動)されないことになる。上記のように第1制御信号と第2制御信号を定義すると,マシンコントロール(Machine Control:MC)は,第2制御信号に基づく流量制御弁15a~15cの制御ということもできる。
【0030】
図5は本実施形態に係る油圧ショベルが備えるマシンコントロール(Machine Control:MC)システム及びマシンガイダンス(Machine Guidance:MG)システムの構成図である。
【0031】
(マシンコントロール)
本システムでは,操作装置45a,45b,46aの少なくとも1つが操作されたときに予め定めた条件に従って作業装置1Aを動作させるMCが実行される。MCにおける油圧アクチュエータ5,6,7の制御は,該当する流量制御弁15a,15b,15cに制御信号(例えば,ブームシリンダ5を伸ばして強制的にブーム上げ動作を行う)を強制的に出力することで行われる。本システムで実行されるMCとしては,操作装置45bでアーム操作をする際に実行される「領域制限制御(整地制御)」が含まれる。その他のMCとして例えば,アーム操作を行わずにブーム下げ操作をする際に実行される「停止制御」や,同じくアーム操作を行わずにブーム下げ操作をする際に実行される「転圧制御」などを含めても良い。
【0032】
領域制限制御(整地制御)は,操作装置45,46により作業装置1Aが操作されている間に,コントローラ40が,作業装置1Aが目標面60(
図4参照)を超えないように油圧アクチュエータ5,6,7のうち少なくとも1つの油圧アクチュエータに対する制御信号(パイロット圧)を演算し,その演算された制御信号(パイロット圧)を出力して当該少なくとも1つの油圧アクチュエータを制御するMCである。換言すると,コントローラ40は領域制限制御において,目標面60上またはその上方に作業装置1Aが位置するように油圧アクチュエータ5,6,7のうち少なくとも1つを制御する。本実施形態では領域制限制御の一例として,バケット爪先(作業装置1Aの先端)が目標面60に近づくほど(すなわち,バケット爪先と目標面60との距離(目標面距離)d(
図4)がゼロに近づくほど)目標面60に垂直な方向のバケット爪先の速度ベクトルがゼロに近づくようなブーム上げ速度又はブーム下げ速度が演算され,その速度に即したブームシリンダ5用の制御信号(パイロット圧)が出力される。これによりバケット爪先が目標面60上にあるときには,オペレータのアーム操作に合わせて自動的にブーム8が動作してバケット10の爪先が目標面60に沿って移動する(すなわち,目標面60に垂直な方向のバケット爪先の速度ベクトルがゼロに保持される)。
【0033】
目標面60は,目標面60の形状を示す目標面60の位置データはコントローラ40に記憶されており,
図4に示すように作業装置1Aの動作平面(
図4のXZ平面)上において線で規定できる。目標面60は,例えば,設計図が規定する地形の最終的な3次元形状(完成形状)である目標地形と,作業装置1Aの動作平面(
図4のXZ平面)との交線として演算され得る。
【0034】
なお,本実施形態では,MC時の作業装置1Aの制御点を,油圧ショベルのバケット10の爪先(作業装置1Aの先端)に設定しているが,制御点は作業装置1Aの先端部分の点であればバケット爪先以外にも変更可能である。例えば,バケット10の底面やバケットリンク13の最外部も選択可能であり,目標面60から最も距離の近いバケット10上の点を適宜制御点とする構成を採用しても良い。また,本稿ではMCを,操作装置45,46の非操作時に作業装置1Aの動作をコントローラにより制御する「自動制御」に対して,操作装置45,46の操作時にのみ作業装置1Aの動作をコントローラにより制御する「半自動制御」と称することがある。
【0035】
(マシンガイダンス)
本システムでの作業装置1AのMGとしては,例えば
図18に示すように,目標面60と作業装置1A(例えば,バケット10)の位置関係を表示装置(モニタ)53に表示する処理がコントローラ40により行われる。
【0036】
図5のシステムは,作業装置姿勢センサ50と,目標地形入力装置57と,現況地形入力装置58と,GNSSアンテナ14A,14Bと,GNSS受信機59と,オペレータ操作センサ52と,MG及びMCを司るコントローラ(制御装置)40と,電磁比例弁54,55,56と,表示装置(モニタ)53とを備えている。
【0037】
作業装置姿勢センサ50は,ブーム角度センサ30,アーム角度センサ31,バケット角度センサ32,車体傾斜角センサ33から構成される。これらの角度センサ30,31,32,33は作業装置1Aの姿勢センサとして機能している。
【0038】
(目標地形入力装置57)
目標地形入力装置57は,目標面60の基となる目標地形のデータ(目標地形の位置データや傾斜角度データ等を含む)を入力可能なインターフェースである。目標地形入力装置57としては,例えば現場基準座標系(後述)上に規定された目標地形の3次元データが格納されたフラッシュメモリ(図示せず)や,同様に目標地形の3次元データを格納した外部端末(図示せず)が利用可能である。なお,目標地形入力装置57を介した目標地形の入力は,オペレータが手動で行っても良いし,通信端末を介して外部から入力する形式でも良い。なお,目標地形のデータはグローバル座標系(絶対座標系)上に規定しても良い。
【0039】
現況地形入力装置58は,例えば現場基準座標系上に規定された油圧ショベル1の周囲の現況地形のデータを入力可能なインターフェースである。現況地形入力装置58としては,レーザを走査して現況地形の3次元形状を取得するレーザスキャナや,視差画像に基づいて同様に現況地形を取得するステレオカメラを油圧ショベル1に搭載することが可能である。油圧ショベル1とは別に地上に設置したトータルステーションにより現況地形の3次元形状を計測しても良いし,オペレータにより手動入力可能な装置を利用しても良い。
図1には運転席16の上部に現況地形入力装置58としてレーザスキャナ又はステレオカメラを搭載した例を示している。なお,現況地形のデータもグローバル座標系(絶対座標系)上に規定しても良い。
【0040】
GNSS受信機59は,2つのGNSSアンテナ14A,14Bと通信可能に接続されており,2つのGNSSアンテナ14A,14Bで受信された衛星信号に基づいて例えばGNSSアンテナ14Aの位置と,GNSSアンテナ14AからGNSSアンテナ14Bへのベクトルとを演算する。そして,GNSSアンテナ14Aとブーム8の基底部8aとの相対位置関係を予め計測しておくことにより,グローバル座標系におけるブーム8の基底部8aの座標と上部旋回体12(作業装置1A)の方位が演算できる。GNSS受信機59はアンテナ14ごとに設置しても良い。
【0041】
オペレータ操作センサ52は,オペレータによる操作レバー1a,1b(操作装置45a,45b,46a)の操作によってパイロットライン144,145,146に生じる操作圧(第1制御信号)を取得する圧力センサ70a,70b,71a,71b,72a,72bから構成される。すなわち,作業装置1Aに係る油圧シリンダ5,6,7に対する操作を検出している。
【0042】
電磁比例弁54,55,56は,既に説明した通り,
図3で説明したパイロット圧の油圧ラインに設けられており,オペレータのレバー操作によって発生したパイロット圧を下流で増減することが可能である。また,オペレータのレバー操作なしにパイロット圧を発生させることも可能である。
【0043】
表示装置53は,
図18に示すように目標面60と作業装置1A(例えば,バケット10)の位置関係を表示するためのタッチパネル式の液晶モニタであり,運転室内に設置されている。
図18に示すように表示装置53の表示画面には,目標面60とバケット10の位置関係が表示されており,目標面60とバケット10の爪先までの距離を目標面距離(d(
図4参照))として表示しても良い。
【0044】
図5においてコントローラ40は,入力インターフェース91と,プロセッサである中央処理装置(CPU)92と,記憶装置であるリードオンリーメモリ(ROM)93及びランダムアクセスメモリ(RAM)94と,出力インターフェース95とを有している。入力インターフェース91には,作業装置姿勢センサ50(角度センサ30~32及び傾斜角センサ33)からの信号と,目標地形入力装置57からの信号と,現況地形入力装置58からの信号と,GNSS受信機59からの信号と,オペレータ操作センサ52(圧力センサ70a,70b,71a,71b,72a,72b)からの信号とが入力され,CPU92が演算可能なように変換する。ROM93は,後述する処理を含めMC及びMGを実行するための制御プログラムと,当該処理の実行に必要な各種情報等が記憶された記録媒体であり,CPU92は,ROM93に記憶された制御プログラムに従って入力インターフェース91及びROM93,RAM94から取り入れた信号に対して所定の演算処理を行う。出力インターフェース95は,CPU92での演算結果に応じた出力用の信号を作成し,その信号を表示装置53に出力することで表示装置53を作動することができる。
【0045】
なお,
図5のコントローラ40は,記憶装置としてROM93及びRAM94という半導体メモリを備えているが,記憶装置であれば特に代替可能であり,例えばハードディスクドライブ等の磁気記憶装置を備えても良い。
【0046】
図6はコントローラ40によって行われる演算処理を機能ごとにブロック化して示した機能ブロック図である。コントローラ40は,作業装置姿勢演算部41と,目標地形情報記憶部51と,目標面演算部42と,目標動作演算部43と,電磁比例弁制御部44として機能する。コントローラ40は,GNSS受信機59,作業装置姿勢センサ50,目標地形入力装置57,現況地形入力装置58およびオペレータ操作センサ52から入力したデータに基づいて所定の演算処理を実行することで表示装置53及び電磁比例弁54,55,56に対する制御指令を出力している。
【0047】
(目標地形情報記憶部51)
目標地形情報記憶部51は,目標地形の3次元形状が規定されたデータ(目標地形データ)と,目標地形と現況地形との上下関係が規定されたデータ(本稿では「上下関係データ」と称することがある)とが記憶されている部分である。目標地形データは例えば現場基準座標系やグローバル座標系上に定義できる。上下関係データは目標地形データと現況地形データに基づいて演算(生成)できる。
【0048】
(作業装置姿勢演算部41)
作業装置姿勢演算部41は,作業装置姿勢センサ50からの情報に基づき,車体座標系における作業装置1Aの位置及び姿勢を演算する。さらに作業装置姿勢演算部41は,演算した作業装置1Aの位置及び姿勢に対して,GNSS受信機59からの情報(グローバル座標系における上部旋回体12の位置及び方位)と車体傾斜角センサ33からの情報を加えることで現場基準座標系における作業装置1Aの位置及び姿勢(例えばバケット10の先端位置)を演算する。ただし,演算する作業装置1Aの位置及び姿勢は,現場基準座標系に限らず,グローバル座標系等の他の座標で表現しても良い。
【0049】
(作業装置1Aの姿勢の演算)
作業装置1Aの姿勢は
図4の現場基準座標およびショベル基準座標に基づいて定義できる。
図4の現場基準座標は,油圧ショベル1が稼働する作業現場における任意の点を原点とし,重力方向上方にZ軸を持ち,このZ軸とで右手直交座標系を構成するX軸とY軸が水平方向にあるような座標系である。一方,ショベル基準座標は,図示のように例えば上部旋回体12に設定された座標であり,ブーム8の基底部8aを原点とし,上部旋回体12の旋回軸上方にZ軸を設定し,ブーム8の回動中心軸と平行で車体正面に対し左側にY軸を設定し,それらY軸,Z軸と右手直交座標系を構成するようにX軸を設定した。X軸に対するブーム8の傾斜角をブーム角α,ブームに対するアーム9の傾斜角をアーム角β,アームに対するバケット爪先の傾斜角をバケット角γとした。水平面(基準面)に対する車体1B(上部旋回体12)の前後方向の傾斜角を傾斜角θ,左右方向の傾斜角を傾斜角φとした。ブーム角αはブーム角度センサ30により,アーム角βはアーム角度センサ31により,バケット角γはバケット角度センサ32により,傾斜角θおよびφは車体傾斜角センサ33により検出される。ブーム角αは,ブーム8を最大(最高)まで上げたとき(ブームシリンダ5が上げ方向のストロークエンドのとき,つまりブームシリンダ長が最長のとき)に最大となり,ブーム8を最小(最低)まで下げたとき(ブームシリンダ5が下げ方向のストロークエンドのとき,つまりブームシリンダ長が最短のとき)に最小となる。アーム角βは,アームシリンダ長が最短のときに最小となり,アームシリンダ長が最長のときに最大となる。バケット角γは,バケットシリンダ長が最短のとき(
図4のとき)に最小となり,バケットシリンダ長が最長のときに最大となる。このとき,ブーム8の基底部(ブームピン)8aからアーム9との接続部(アームピン)までの長さをL1,アーム9とブーム8の接続部(アームピン)からアーム9とバケット10の接続部(バケットピン)までの長さをL2,アーム9とバケット10の接続部(バケットピン)からバケット10の先端部(バケット爪先)までの長さをL3とすると,ショベル基準座標におけるバケット10の先端位置は,XbkをX方向位置,ZbkをZ方向位置として,以下の式(1)(2)で表すことができる。
【0050】
Xbk=L1cos(α)+L2cos(α+β)+L3cos(α+β+γ)…式(1)
Zbk=L1sin(α)+L2sin(α+β)+L3sin(α+β+γ)…式(2)
作業装置姿勢演算部41は,GNSS受信機59からのデータ(グローバル座標系における上部旋回体12の位置及び方位)と,車体傾斜角センサ33からのデータ(傾斜角θ,φ)とに基づき現場基準座標系におけるブーム8の基底部8aの位置および作業装置1Aの方位(向き)を演算する。ブーム角度センサ30,アーム角度センサ31,バケット角度センサ32からのデータに基づき演算されるショベル基準座標での作業装置1Aの姿勢を利用して,現場基準座標系における作業装置1Aの位置及び姿勢を演算できる。
【0051】
(目標面演算部42)
目標面演算部42は,目標地形情報記憶部51から入力する目標地形データと,作業装置姿勢演算部41から入力する現場基準座標系の作業装置1Aの位置及び姿勢データとに基づいて,作業装置1Aの動作平面(
図4のXZ平面)と目標地形との交線を演算し,その交線を目標面60とする。さらに目標面演算部42は,目標地形情報記憶部51から入力する上下関係データに基づいて目標面60上における目標地形と現況地形との上下関係を判定し,目標面60上で現況地形が目標地形と一致すると判定された部分に属性情報として第1属性を付与し,目標面60上で現況地形が目標地形の上方に位置すると判定された部分に属性情報として第1属性を付与し,目標面60上で現況地形が目標地形の下方に位置する判定された部分に属性情報として第2属性を付与する。属性情報はコントローラ40が領域制限制御を実行するか否かを決定するためにコントローラ40によって参照される情報であり,目標面60上において第1属性が付与された部分では領域制限制御が実行される(つまり,作業装置1Aが目標面60を超えないように作業装置1A(アクチュエータ5,6,7)が半自動的に動作する)。一方,第2属性が付与された部分では領域制限制御は実行されない(つまり,オペレータ操作に従って作業装置1A(アクチュエータ5,6,7)が動作する)。
【0052】
なお,目標面60は,作業装置1Aの動作平面と目標地形との交線を演算して取得する必要はなく,コントローラ40内の記憶装置(例えばROM93等)に予め記憶しておいても良い。また,目標面60に付与する属性情報(第1属性,第2属性)についても同様に目標面60の形状とともにコントローラ40に予め記憶しておいても良い。
【0053】
(目標動作演算部43)
目標動作演算部43は,操作装置45a,45b,46aが操作されている間に作業装置1Aが目標面60を超えないように(例えば目標面60の上方に作業装置1Aが位置する場合には,作業装置1Aの動作範囲が目標面60上及びその上方に制限されるように)複数のアクチュエータ(油圧シリンダ)5,6,7の目標速度を演算できる部分であり,領域制限制御の実行に必要な各アクチュエータ5,6,7の目標速度を演算できる。
【0054】
ただし,目標動作演算部43は,作業装置1Aにおける所定の位置(本実施形態ではバケット先端)が目標面60上で第1属性が付与された部分の上方(例えば,重力作用方向における目標面60の上方,または目標面60の法線方向における目標面60の上方)に位置する場合には領域制限制御を実行し,作業装置1Aにおける同所定の位置が目標面60上で第2属性が付与された部分の上方に位置する場合には領域制限制御を実行しない(例えば、領域制限制御を中断する)。つまり,第1属性が付与された部分では領域制限制御の実行に必要な各アクチュエータ5,6,7の目標速度を演算するが,第2属性が付与された部分では,領域制限制御の実行に必要な各アクチュエータ5,6,7の目標速度を演算せず,操作装置45a,45b,46aの操作量が規定する速度を各アクチュエータ5,6,7の目標速度として演算する。
【0055】
領域制限制御の実行時における各アクチュエータ5,6,7の目標速度は,目標面60とバケット10の爪先までの目標面距離dに基づいて演算できる。例えば領域制限制御時の目標速度は下記の演算により演算できる。
【0056】
まず,目標動作演算部43は,まず,圧力センサ70から入力される圧力値(ブーム操作量)から操作装置45a(操作レバー1a)によるブームシリンダ5への要求速度(ブームシリンダ要求速度)を計算し,圧力センサ71から入力される圧力値(アーム操作量)からアームシリンダ6への要求速度を計算し,圧力センサ72から入力される圧力値(バケット操作量)からバケットシリンダ7への要求速度を計算する。この3つの要求速度と作業装置姿勢演算部41で演算された作業装置1Aの各フロント部材8,9,10の姿勢から,バケット先端における作業装置1Aの速度ベクトル(要求速度ベクトル)V0(
図20の左の図参照)を計算する。そして,速度ベクトルV0の目標面鉛直方向の速度成分V0zと目標面水平方向の速度成分V0xも計算する。
【0057】
次に,目標動作演算部43は,距離dに応じて決定される補正係数kを演算する。
図19はバケット先端と目標面60の距離dと速度補正係数kとの関係を表すグラフである。バケット先端(作業装置1Aの制御点)が目標面60の上方に位置している時の距離を正,目標面60の下方に位置している時の距離を負として,距離dが正の時は正の補正係数を,距離dが負の時は負の補正係数を,1以下の値として出力する。なお,速度ベクトルは目標面60の上方から目標面60に近づく方向を正としている。
【0058】
次に,目標動作演算部43は,距離dに応じて決定される補正係数kを,速度ベクトルV0の目標面鉛直方向の速度成分V0zに乗ずることによって速度成分V1z(
図20の右の図参照)を計算する。この速度成分V1zと,速度ベクトルV0の目標面水平方向の速度成分V0xとを合成することで合成速度ベクトル(目標速度ベクトル)V1を計算し,この合成速度ベクトルV1を発生可能なブームシリンダ速度と,アームシリンダ速度(Va1)と,バケットシリンダ速度をそれぞれ目標速度として演算する。この目標速度の演算の際には,作業装置姿勢演算部41で演算された作業装置1Aの各フロント部材8,9,10の姿勢を利用しても良い。目標動作演算部43は,計算した各油圧シリンダ5,6,7の目標速度を電磁比例弁制御部44に出力する。
【0059】
図20はバケット先端における距離dに応じた補正前後の速度ベクトルを表す模式図である。要求速度ベクトルV0の目標面鉛直方向の成分V0z(
図20の左の図参照)に速度補正係数kを乗じることにより,V0z以下の目標面鉛直方向の速度ベクトルV1z(
図20の右の図参照)が得られる。V1zと要求速度ベクトルV0の目標面水平方向の成分のV0xとの合成速度ベクトルV1を計算し,V1を出力可能なアームシリンダ目標速度と,ブームシリンダ目標速度と,バケットシリンダ目標速度とが計算される。
【0060】
(電磁比例弁制御部44)
電磁比例弁制御部44は,目標動作演算部43で演算された各油圧シリンダ5,6,7の目標速度に基づいて各流量制御弁15a,15b,15cへの制御信号(パイロット圧)を演算し,その演算したパイロット圧を発生するために必要な電磁比例弁54,55,56への電気信号を演算し,その演算した電気信号を対応する電磁比例弁54,55,56に出力することで電磁比例弁54,55,56を制御する部分である。電磁比例弁制御部44が制御する電磁比例弁54,55,56によって,各油圧シリンダ5,6,7は目標動作演算部43で計算された目標速度に従って動作する。
【0061】
コントローラ40により作業装置1Aを半自動で制御し,目標面60を整形する機能であるマシンコントロール(領域制限制御)による,水平掘削動作の例を
図7に示す。オペレータが操作レバー1aを操作して,矢印A方向へのアーム9の引き動作によって水平掘削を行う場合には,バケット10の先端(爪先)が目標面60の下方に侵入しないように,ブーム8の上げ動作が自動的に行われるよう電磁比例弁54aが制御される。また,所定の掘削速度あるいは所定の掘削精度を実現するために,電磁比例弁55aを制御してアーム9の引き動作(クラウド動作)の速度調節(すなわち増速または減速)を行っても良い。さらに,バケット10背面の目標面60に対する角度Bが一定値となり,均し作業が容易となるように,電磁比例弁56c,56dを制御してバケット10が自動で回動するようにしても良い(
図7の例では電磁比例弁56dを制御して矢印C方向(ダンプ方向)にバケット10を回動している)。
【0062】
(表示装置53)
表示装置(例えば液晶モニタ)53は,作業装置姿勢演算部41,目標面演算部42,目標動作演算部43からのデータに基づき,目標面60と作業装置1Aの位置関係に関連する各種情報や,マシンコントロール(MC)に関連する各種情報を表示してオペレータへ通達(報知)する。
【0063】
表示装置53には,目標面60と,目標面60に付与された属性が第1属性と第2属性のいずれであるかを示す属性情報とを表示しても良い。
図18は,表示装置53に表示させる画面の一例であり,この画面には目標面60とその属性情報を表示させている。
図18中において,実線で表された目標面60aは第1属性が付与された部分(領域制限制御が実行される部分)を示し,破線で表された目標面60bは第2属性が付与された部分(領域制限制御が実行されない部分)を示す。このように属性情報を表示装置53に表示すると,バケット先端の現在位置がどの属性情報を付与された目標面に近いのかをオペレータに容易に把握させることができる。なお,
図18では目標面60の線種を変更することで属性情報を表示しているが,線の幅や色を変更する等,属性の違いを区別可能な表現であれば適宜変更可能である。
【0064】
(動作・効果)
以上のように構成された油圧ショベル1では,目標面60の形状を規定するデータ(目標面データ)に対して,目標面60上で現況地形が目標地形と一致する部分(領域)に第1属性が付与され,同目標面60上で現況地形が目標地形の上方に位置する部分(領域)に第1属性が付与され,同目標面60上で現況地形が目標地形の下方に位置する部分(領域)に第2属性が付与される。これにより目標面60上における切土予定地には第1属性が付与され,盛土予定地には第2属性が付与される。そして,コントローラ40(目標動作演算部43)は,バケット先端から目標面60に向かって例えば重力方向に沿って直線を下ろし,目標面データにおいて当該直線が目標面60と交差する部分に付与された属性情報が第1属性の場合(つまり,作業対象の目標面60が切土予定地の場合)には,バケット先端が目標面60を超えないように油圧シリンダ5,6,7の目標速度を演算し,当該目標速度に基づいて油圧シリンダ5,6,7を制御する領域制限制御(マシンコントロール)を実行する。反対に,バケット先端から目標面60に向かって下ろした直線が目標面60と交差する部分に付与された属性情報が第2属性の場合(つまり,作業対象の目標面60が盛土予定地の場合)には,コントローラ40は領域制限制御を実行せずにオペレータが操作装置45a,45b,46aに入力した操作に従って油圧シリンダ5,6,7を制御する。これにより盛土予定地では目標面60の下側での所望のバケット動作が可能になるため,例えばオペレータによる所望の位置への放土操作が領域制限制御により妨げられることがない。
【0065】
つまり,本実施形態の油圧ショベル1によれば,目標面データに付与された属性情報(第1属性,第2属性)に基づいて作業対象の目標面60が切土予定地と盛土予定地のいずれであるかが判定される。そして,その判定において作業対象の目標面60が切土予定地であると判定された場合には領域制限制御が実行され,逆に盛土予定地であると判定された場合には領域制限制御は実行されない。そのため,特許文献1のようにオペレータが領域制限制御のON/OFFを手動で切り換えなくても,目標面データに付与された属性情報に応じてコントローラ40によって領域制限制御の実行・不実行が自動的かつ適切に選択されるので,オペレータが領域制限制御(マシンコントロール)の機能のON・OFF状態を特段意識することなく目標面60の形成作業(つまり切土作業及び盛土作業の両方)をスムーズに行うことができる。
【0066】
<実施形態2>
本実施形態は,コントローラ40における目標地形情報記憶部51を第1実施形態のものから変更したものである。その他の部分について第1実施形態と同じであるため説明は省略する。
【0067】
(目標地形情報記憶部51)
図8は第2実施形態に係る目標地形情報記憶部51の機能ブロック図である。この図の目標地形情報記憶部51は,目標地形記憶部37と,現況地形記憶部38と,属性情報生成部49とを備えている。
【0068】
目標地形記憶部37はコントローラ40内の記憶装置(例えばROM)において目標地形データを記憶するために確保された記憶領域であり,目標地形データは目標地形入力装置57を介して目標地形記憶部37に入力される。目標地形記憶部37から目標面演算部42に対しては目標地形データが出力される。
【0069】
目標地形入力装置57から入力される目標地形データのフォーマットがコントローラ40による処理が可能なものに合致しない場合には,目標地形入力装置57に記憶する際にコントローラ40が処理可能な所定のフォーマットに変換することが好ましい。
【0070】
目標地形データは,例えば三角形の集合(三角メッシュ)により表現できるが,その他の表現方法を採用しても良い。目標地形データには目標地形上に予め設定された複数の属性設定点の属性情報が含まれている。属性設定点は,目標地形上に予め設定された複数の点であり,例えば複数のグリッドの交差点として定義できる。なお,本実施形態では矩形状のグリッドの交差点を属性設定点としたが,この他にも,例えば目標地形を表現する三角形をさらに小さい複数の三角形で分割し,分割後の各三角形の重心位置に属性設定点を定義しても良い。
【0071】
(属性設定点の設定)
ここでは目標地形データが三角メッシュで定義されている場合に,目標地形の上にグリッドを設定して複数の属性設定点61を定義する方法について
図9を用いて説明する。
図9では形状の異なる2種類の三角形62を基準として属性設定点61を設定する場合について説明する。まず,目標地形を構成する各三角形62の重心を原点63とし,その三角形を構成する辺のうち最も長い辺64(最も長い辺が複数ある場合はその中でどの辺を選択しても良い)に平行な主軸68と,原点を中心に主軸を目標面上で上方(地中側でない方向)から見て90度回転させた軸を副軸69とし,主軸および副軸に沿った等間隔のグリッド76を生成する。そして,このグリッドが公差する点を属性設定点61とする。目標地形記憶部37が記憶している目標地形データには,このように定義された各属性設定点61の位置データが含まれている。
【0072】
グリッド76の間隔はバケット背面の幅及び奥行きのうち大きい方の値に0.5×1/21/2を乗じた値以下に設定することが望ましい。このようにグリッド間隔を設定すると,バケット背面を地表に押しつけた際に当該バケット背面の領域内に少なくとも1つのグリッドが含まれることになる。ただし,グリッド76の間隔を小さくすると属性設定点61の数が増え,コントローラ40の演算処理の負荷が増大する傾向があることに注意する。一般的にこのような盛土作業に用いられるバケットの大きさを考慮すると,グリッド76の間隔は0.3~0.5m程度の間隔が良い。
【0073】
(現況地形記憶部38)
現況地形記憶部38はコントローラ40の記憶装置(例えばROM)において現況地形データを記憶するために確保された記憶領域であり,現況地形データは現況地形入力装置58を介して現況地形記憶部38に入力される。現況地形入力装置58は,施工開始前の現況地形(初期地形)を現況地形データとして取得して現況地形記憶部38に出力しても良いし,施工中に定期的に現況地形データを取得して現況地形記憶部38に出力しても良い。現況地形データは例えば現場基準座標系,グローバル座標系,ショベル基準座標系上に定義できる。現況地形データと目標地形データとで定義された座標系が異なる場合には,同一の座標系に変換することが好ましい。ここでは現況地形データと目標地形データは現場基準座標系に定義されているものとする。
【0074】
(属性情報生成部49)
属性情報生成部49は,目標地形データで定義されている各属性設定点61に対して属性情報を付与して上下関係データを生成する部分である。本実施形態の属性情報生成部49は,目標地形記憶部37から出力される目標地形データと,現況地形記憶部38から出力される現況地形データとに基づいて,複数の属性設定点61における現況地形と目標地形との上下関係を判定し,その複数の属性設定点61のうち現況地形が目標地形と一致すると判定された属性設定点61に第1属性を付与し,その複数の属性設定点61のうち現況地形が目標地形の上方に位置すると判定された属性設定点61に第1属性を付与し,その複数の属性設定点61のうち現況地形が目標地形の下方に位置する判定された属性設定点61に第2属性を付与することで上下関係データを生成する。上下関係データには,各属性設定点61の識別情報(例えば,各属性設定点の位置情報や識別子)と属性情報が含まれている。
【0075】
例えば,属性情報生成部49は,目標地形データから任意の属性設定点61の座標(位置データ)を取得し,その座標における高さ(例えば,鉛直方向における高さ)が同じ座標における現況地形の高さよりも高ければ,その属性設定点61に「第2属性(マシンコントロール機能を実行しない)」という属性を付与することができる。反対に,属性設定点61の座標における高さが同じ座標における現況地形の高さよりも低ければ,その属性設定点61に「第1属性(マシンコントロール機能を実行する)」という属性を付与することができる。
【0076】
(目標面演算部42)
本実施形態の目標面演算部42は,第1実施形態と同様に目標面60を演算し,演算した目標面60に対して上下関係データに基づいて属性情報を付与する。属性情報の付与に際して,本実施形態の目標面演算部42は,目標地形データで定義されている複数の属性設定点61のうち目標面60の周囲に位置する少なくとも1つの属性設定点61の属性に基づいて,目標面60上における目標地形と現況地形との上下関係を判定し,その判定の結果に基づいて目標面60上で第1属性と第2属性のうちいずれを付与する部分であるかを決定する。
【0077】
(表示装置53)
表示装置53には,
図17に示すように,目標地形を表示し,その目標地形上の複数の属性設定点61に第1属性と第2属性のうちいずれの属性が付与されているかを表示することが好ましい。
【0078】
(効果)
上記のように構成された油圧ショベル1によれば,目標地形データと現況地形データをコントローラ40に入力すれば,目標地形情報記憶部51によって上下関係データを自動的に生成できるので作業効率が向上する。
【0079】
また,属性設定点61に第1属性と第2属性のうちいずれが付与されているかをモニタ53に表示すると,オペレータが現況地形に対して行うべき作業が盛土作業と切土作業のいずれであるかを容易に認識させることができる。
【0080】
<実施形態3>
本実施形態は,先の各実施形態において,目標面演算部42による目標面60に対する属性情報付与処理を具体化したものである。
【0081】
本実施形態の目標面演算部42は,目標地形情報記憶部51から入力される目標面データ及び上下関係データと,作業装置姿勢演算部41から入力される作業装置1Aの姿勢(例えば現場基準座標系における作業装置1Aの位置および方位)に基づいて,
図10に示した各ステップで目標面60を生成する。
【0082】
図10は本実施形態に係るコントローラ40(目標面演算部42)によって実行される目標面60の算出処理およびその目標面60に対する属性情報付与処理のフローチャートであり,
図11は
図10のフローチャートにおけるステップS100-S101の説明図であり,
図12(a)は
図10のフローチャートにおけるステップS102-S105の説明図であり,
図12(b)は
図10のフローチャートにおけるステップS106-S107の説明図である。なお,
図12(a)と
図12(b)において同じ符号を付した部分に相関はないものとする。
【0083】
ステップS100において,コントローラ40(目標面演算部42)は,目標地形情報記憶部51から入力する目標地形データと,作業装置姿勢演算部41から入力する現場基準座標系の作業装置1Aの位置及び姿勢データとに基づいて,作業装置1Aの動作平面(
図4のXZ平面)と目標地形との交線を演算し,その交線を目標面60とする。
【0084】
図11には目標面演算部42によって演算される目標面60の一例が示されている。ここでは図示のように目標面60に2つの端点(第1端点601と第2端点602)が存在するものとする。第1端点601は2つの端点601,602のうち作業装置1Aの前後方向における前側に位置する端点であり,第2端点602は2つの端点601,602のうち作業装置1Aの前後方向における後側に位置する端点である。また,目標面60は目標地形の形状によっては
図11に示すように変曲点603を有することがある。変曲点603は目標面60を構成する角度の異なる2つの線分の節点に形成される。言うまでも無いが,変曲点603の数は目標地形の形状に依存し,
図11に示した1個だけでなく,複数存在することもあるし,無い場合もある。
【0085】
ステップS101において,コントローラ40(目標面演算部42)は,目標地形データに定義された複数の属性設定点61の中から,目標面上の2つの端点(第1端点601,第2端点602)とゼロ個以上の変曲点603のそれぞれに最も近い属性設定点61を求め,その求めた複数の属性設定点61の属性と同じ属性を,2つの端点601,602と変曲点603のうちで対応する点に付与する。なお,最も近い属性設定点61が複数存在する場合(等距離の属性設定点61が複数存在する場合)には,その複数の属性設定点に第1属性が少なくとも1つ含まれているときには対応する点の属性も第1属性とし,そうでないときには対応する点に第2属性を付与しても良い。
【0086】
ステップS101に関して,
図12(a)の例では,第1端点601と変曲点603には第2属性が付与されている。
【0087】
ステップS102からS105では,コントローラ40(目標面演算部42)は,目標地形データに定義された複数の属性設定点61の中から,目標面60を基準として左右両側の所定の距離の範囲にある複数の属性設定点61を抽出し,その抽出した複数の属性設定点61のそれぞれに最も近い目標面60上の複数の点(「最近接点」と称する)にその抽出した複数の属性設定点61のそれぞれと同じ属性を付与する。
【0088】
具体的には,ステップS102でコントローラ40(目標面演算部42)は目標地形データに定義された複数の属性設定点61の中から任意の属性設定点61を1つ選択し,その選択した属性設定点61と目標面60までの距離を演算し,その距離が所定の距離D1より小さいか否かを判定する(ステップS103)。ステップS103で演算した距離が所定の距離D1より小さい場合にはステップS104に進み,所定の距離D1以上の場合にはステップS105に進む。なお,距離D1は,属性設定点61が構成するグリッド(格子)の対角辺の長さ程度が望ましい。
【0089】
ステップS104では,コントローラ40(目標面演算部42)は,S102で選択された属性設定点61であって,S103で目標面60までの距離が所定距離D1より近いと判定された属性設定点(「選択属性設定点」と称する)61が目標面60上で最も近接する点(「最近接点」と称する)604の位置を求め,選択属性設定点と同じ属性をその最近接点604に付与する。つまり,選択属性設定点が「第1属性」の場合には最近接点604にも第1属性が付与され,選択属性設定点61が「第2属性」の場合には最近接点604にも第2属性が付与される。
【0090】
ステップS105では,コントローラ40(目標面演算部42)は目標地形データに定義された全ての属性設定点61についてステップS102の選択処理が行われたか否かを判定する。その判定結果がYESの場合にはステップS106に進み,NOの場合にはS102に戻る。
【0091】
ステップS102-S105に関して,
図12(a)の例では,コントローラ40(目標面演算部42)は,属性設定点61aの属性(第2属性)に基づいて第1端点601と最近接点604bに第2属性が付与され,属性設定点61bの属性(第1属性)に基づいて最近接点604aに第1属性が付与され,属性設定点61cの属性(第2属性)に基づいて最近接点604cに第2属性が付与されている。
【0092】
ステップS100-105までで属性が付与された目標面60上の点(2つの端点601,602,変曲点603,及び最近接点604)の属性に基づいて,目標面60上における目標地形と現況地形との上下関係を判定し,その判定の結果に基づいて目標面60上における各部分の属性(各部分に第1属性と第2属性のいずれを付与するか)を決定しても良いが,本実施形態ではさらにステップS106,S107の処理を行う。
【0093】
ステップS106では,コントローラ40(目標面演算部42)は,目標面60の一方の端点(例えば第1端点601)から他方の端点(例えば第2端点602)に向かって,ステップS101-105で行った属性情報付与処理で属性を付与した目標面60上の複数の点(端点601,602,変曲点603,及び最近接点604)の属性をチェックし,そのチェック結果において目標面上で隣接する2つの点に対して異なる属性が付与されていると判明した場合には,目標面60上かつその隣接する2つの点の間(例えば中間点)に属性変化点605を設定する。
【0094】
ステップS106に関して,
図12(b)の例では,コントローラ40(目標面演算部42)は,第1端点601から第2端点602に向かって各点(端点601,602,変曲点603,及び最近接点604)の属性をチェックする。そのチェック結果によりコントローラ40(目標面演算部42)は目標面60上で隣接する2つの点のうち,(1)最近接点604aと最近接点604b,(2)変曲点603と最近接点604c,(3)最近接点604dと第2端点602の属性に対して異なる属性が付与されていることを検出し,検出した隣接する2つの点の間に属性変化点605a,605b,605cを設定する。
【0095】
ステップS107において,コントローラ40(目標面演算部42)は,ステップS106で設定した属性変化点605によって目標面60を複数の区間に分割し,ステップS101-S105における属性情報付与処理で属性を付与した目標面60上の複数の点(端点601,602,変曲点603,及び最近接点604)のうち当該複数の区間のそれぞれに含まれる点の属性と同じ属性を各区間の属性として付与する。
【0096】
ステップS107に関して,
図12(b)の例では,第1端点601から属性変化点605aまでの区間には例えば最近接点604aの属性情報に基づいて第1属性が付与され,属性変化点605aから属性変化点605bまでの区間には例えば最近接点604bの属性情報に基づいて第2属性が付与され,属性変化点605bから属性変化点605cまでの区間には例えば最近接点604dの属性情報に基づいて第1属性が付与され,属性変化点605cから第2端点602までの区間には例えば第2端点602の属性情報に基づいて第2属性が付与されている。
【0097】
(効果)
上記のように構成された油圧ショベル1によれば,作業装置1Aの動作平面と目標地形の位置関係に応じて生成された目標面60に対して,目標地形データに含まれる各属性設定点61の属性情報に基づいて属性(第1属性,第2属性)が自動的に付与されるので作業効率が向上する。
【0098】
上記のステップS103に関して,目標面60との距離が所定値D1より小さい属性設定点61を見つけるための判定方法として,たとえば属性設定点61が構成する格子の各辺の中から目標面60と交差(もしくは重複)する辺を求め,その辺を構成する属性設定点61を採用する方法を用いてもよい。
【0099】
また,本実施形態では目標面60から所定距離D1内にある全ての属性設定点61に関して最近接点604を求めたが,たとえば目標面60上でバケット10に最も近い点を中心とした所定範囲内の属性設定点61のみを対象として最近接点604を求めてもよい。これによりコントローラ40の演算処理の負荷軽減が見込める。
【0100】
<実施形態4>
図21は第4実施形態に係るコントローラ40の機能ブロック図である。コントローラ40は,
図6に示した各部に加えて,属性変更判定部36を備えている。属性変更判定部36は属性変更フラグを出力し,本実施形態の目標面演算部42は,属性変更判定部36から出力される属性変更フラグに基づいて,目標面60上の属性を変更できる。他の部分については先に説明した各実施形態と同じであるものとする。
【0101】
(属性変更判定部36)
属性変更判定部36は,バケット10と目標面60との位置関係を含む所定の条件Cが満たされているか否かを判定し,条件Cが満たされているときには属性変更フラグとして真(TRUE)を目標面演算部42に出力し,条件Cが満たされていないときには属性変更フラグとして偽(FALSE)を目標面演算部42に出力する。
【0102】
条件Cは作業装置1Aによる盛土作業が完了したか否かを判定するための条件であり,より具体的な条件(条件C1)としては例えば次のものがある。すなわち,(1)バケット10が目標面60よりも鉛直上方にあり,かつ,(2)バケット10の背面(バケット背面(例えば
図13参照))と目標面60の角度の差Δθ(
図13参照)が所定の判定値θ1以下であり,かつ,(3)ブームシリンダ5のロッド圧(ブームロッド圧)Pが所定の判定値P1以上であることである。
【0103】
条件(1)に関して,バケット10が目標面60よりも上方にあるか否かは,目標面演算部42から入力される目標面60の位置情報と,作業装置姿勢演算部41から入力される作業装置1Aの位置情報とから判断可能である。条件(2)に関して,角度差Δθは,目標面演算部42から入力される目標面60の位置情報(例えばバケット10の鉛直下方に位置する目標面60の角度情報)と,作業装置姿勢演算部41から入力される作業装置1Aの位置情報(姿勢情報)とから演算可能であり,算出した角度差Δθが判定値θ1以下であるか否かで判断できる。判定値θ1はゼロに近い値とすることが好ましい。条件(3)に関しては,ブームシリンダ5のロッド側に取り付けられた圧力センサ73b(
図3参照)の検出値から判断できる。判定値P1はバケット背面の押圧により地面(盛土対象)が充分締め固められたことを示す値に設定することができ,盛土対象の土質等に応じて適宜変更しても良い。
【0104】
属性変更判定部36は,これら(1)-(3)の条件が全て満たされたときに盛土作業が完了したと判定し,属性変更フラグとして真(TRUE)を出力する。
【0105】
(目標面演算部42)
本実施形態の目標面演算部42は,属性変更判定部36から入力される属性変更フラグが真(TRUE)の場合,目標面60においてバケット背面の下方に位置する領域のうち第2属性が付与されている領域(対象領域)の属性を第1属性に変更する。
【0106】
図14は本実施形態に係る対象領域の説明図である。
図14の例では,バケット背面を目標面60に対して鉛直方向に投影した領域(投影領域)のうち第2属性が付与されている領域が対象領域となる。目標面60上で第2属性が付与されている部分が投影領域内に存在する場合であって,属性変更判定部36から属性変更フラグとして真が入力された場合には,当該第2属性が付与されている領域(対象領域)の属性が目標面演算部42によって第1属性に変更される。
【0107】
(効果)
上記のように構成された油圧ショベル1において,目標面60上で第2属性が付与された部分に対して盛土作業を行うと,最終的に盛土の高さが目標面60を超え,バケット10の押圧により充分締め固められた状態となる。このように作業装置1Aによる盛土作業が完了すると,バケット背面が目標面60の上方に位置し,かつ,バケット背面と目標面60の角度差Δθがθ1以下となり,かつ,バケット背面で盛土を押圧して締め固める押圧作業(転圧作業ともいう)時にブームロッド圧Pが判定値P1以上となる。このとき,コントローラ40(属性変更判定部36)は,条件C1が充足されたと判定し,属性変更フラグとして真(TRUE)を目標面演算部42に出力する。この属性変更フラグを入力した目標面演算部42は,そのときにバケット背面の下方に位置する領域のうち第2属性が付与された対象領域の盛土作業が完了したと判断して,目標面60上の対象領域の属性を第2属性から第1属性に変更する。これにより,盛土作業の完了後に,目標面60を整形する目的で行われる切土作業(仕上のための掘削作業)に速やかに移行できるので,作業効率を向上できる。
【0108】
なお,表示装置53には,目標面60上の属性の区分や,目標形状上の属性設定点61の属性を明示し,その中でバケット背面の鉛直下方の対象領域の属性が第1属性に変更されたことをオペレータに通達してもよい。
【0109】
上記では,自動的に属性を変更する方法について説明したが,上記の条件C(条件C1)を満たしていなくてもオペレータの入力指示により目標面60上の所望の領域の属性を第2属性から第1属性に変更可能なように,油圧ショベル1(コントローラ40)を構成しても良い。
【0110】
上記では目標面60に付与された属性を変更する場合について説明したが,目標形状上の属性設定点61の属性を変更しても結果的に同様の効果が得られる。この場合について
図15を用いて説明する。
【0111】
図15は,目標面演算部42による属性変更処理の他の例を示す図である。この図は,バケット背面を目標形状に対して鉛直方向に投影した領域を示しており,この領域に含まれる属性設定点61のうち第2属性が付与されているものの属性を第1属性に変更しても良い。このように目標形状に規定される属性設定点61の属性を変更しても,
図14のように目標面60上で第2属性が付与された区間の属性を第1属性に変更した場合と結果的に同じ効果が得られる。
【0112】
<実施形態5>
油圧ショベル1による盛土作業では,目標面60が
図16のように急勾配である場合に,その目標面60を盛土で形成して押し固めるにあたって,急勾配面(目標面60)をバケット背面で直接押し固めるのではなく,急勾配の目標面60を含む上下方向の空間に対して下方から上方に向かって層状に土砂を積み上げてから当該土砂を押し固め,その後に急勾配面を切り出す方法が取られる場合がある。
図16の例では,急勾配の目標面60が上下方向に長く存在しており,急勾配の目標面60の全面を形成する前の途中段階(例えば
図16に示された状態)で目標面60の属性を一時的に第2属性から第1属性に変更して切土作業を行うことが作業効率上好ましい。
【0113】
このような作業を想定した属性変更判定部36による属性変更の処理を第4実施形態の変形例として説明する。
【0114】
本実施形態の属性変更判定部36は,上記の条件C1に代えて又は加えて,下記の条件C2が満たされているか否かを判定できる。すなわち条件C2は,(1)目標面60上で第2属性が付与された領域とバケット10が交差しているとき,かつ,(2)バケット10に最も近い目標面60の勾配が所定値α1以上であるとき,かつ,(3)ブーム8を駆動するブームシリンダ5のロッド圧Pが所定の判定値P2以上のとき,である。
【0115】
条件(1)に関して,目標面60上で第2属性が付与された領域とバケット10が交差しているか否かは,目標面演算部42から入力される目標面60の位置情報及び属性情報と,作業装置姿勢演算部41から入力される作業装置1Aの位置情報とから判断可能である。条件(2)に関して,目標面60の勾配が所定値α1以上であるか否かは,目標面演算部42から入力される目標面60の位置情報と,作業装置姿勢演算部41から入力される作業装置1Aの位置情報とから判断可能である。条件(3)に関しては,ブームシリンダ5のロッド側に取り付けられた圧力センサ73b(
図3参照)の検出値から判断できる。判定値P2はバケット背面の押圧により地面(盛土対象)が充分締め固められたことを示す値に設定することができ,盛土対象の土質等に応じて適宜変更しても良い。第4実施形態の判定値P1と同じにしても良い。
【0116】
(効果)
上記のように構成された油圧ショベル1では,目標面60が急勾配の場合であって,その目標面60上で第2属性が付与された領域とバケット10が交差している場合にも,上記の条件C2が満たされれば,属性変更判定部36から属性変更フラグとして真(TRUE)を出力できる。この属性変更フラグを入力した目標面演算部42は,そのときにバケット背面の下方に位置する領域のうち第2属性が付与された対象領域の盛土作業が完了したと判断して,目標面60上の対象領域の属性を第2属性から第1属性に変更する。これにより,急勾配の目標面60の形成作業の途中段階で,目標面60を整形する目的で行われる切土作業に速やかに移行できるので,作業効率を向上できる。
【0117】
<その他>
なお,本発明は,上記の各実施の形態に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例が含まれる。例えば,本発明は,上記の各実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず,その構成の一部を削除したものも含まれる。また,ある実施の形態に係る構成の一部を,他の実施の形態に係る構成に追加又は置換することが可能である。
【0118】
第1実施形態において,目標地形データと上下関係データが目標面演算部42に予め記憶されている場合や,属性情報が付与された目標面データがコントローラ40に予め記憶されている場合には,目標地形入力装置57と現況地形入力装置58は省略可能である。
【0119】
オペレータへの目標面60に関する情報等の通達(報知)は,表示装置53を利用した画像や映像といった視覚的なものだけでなく,スピーカ等の音声出力装置を利用して音など視覚によらないもの通達しても良い。
【0120】
また,コントローラ40により領域制限制御を実行するに際して,目標面距離dを作業装置1A上のどの点と目標面60上のどの点の距離であると定義するかについては,第1実施形態で説明した方法に限らず,適宜変更が可能である。第1実施形態で説明した方法とは,バケット爪先から重力作用方向に沿って目標面60に向かって下ろした直線の長さをdとする方法や,バケット爪先から目標面60の法線方向に沿って目標面に向かって下ろした直線の長さをdとする方法である。
【0121】
また,上記のコントローラ40に係る各構成や当該各構成の機能及び実行処理等は,それらの一部又は全部をハードウェア(例えば各機能を実行するロジックを集積回路で設計する等)で実現しても良い。また,上記のコントローラ40に係る構成は,演算処理装置(例えばCPU)によって読み出し・実行されることで当該コントローラ40の構成に係る各機能が実現されるプログラム(ソフトウェア)としてもよい。当該プログラムに係る情報は,例えば,半導体メモリ(フラッシュメモリ,SSD等),磁気記憶装置(ハードディスクドライブ等)及び記録媒体(磁気ディスク,光ディスク等)等に記憶することができる。
【0122】
また,上記の各実施の形態の説明では,制御線や情報線は,当該実施の形態の説明に必要であると解されるものを示したが,必ずしも製品に係る全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。
【符号の説明】
【0123】
1a…操作右レバー,1A…作業装置(フロント作業装置),1b…操作左レバー,2…油圧ポンプ,3a…走行油圧モータ,3b…走行油圧モータ,4…旋回油圧モータ,5…ブームシリンダ,6…アームシリンダ,7…バケットシリンダ,8…ブーム,9…アーム,10…バケット,11…下部走行体,12…上部旋回体,14A…GNSSアンテナ,14B…GNSSアンテナ,16…運転席,23a…走行右レバー,23b…走行左レバー,30…ブーム角度センサ,31…アーム角度センサ,32…バケット角度センサ,33…車体傾斜角センサ,36…属性変更判定部,37…目標地形記憶部,38…現況地形記憶部,40…コントローラ(制御装置),41…作業装置姿勢演算部,42…目標面演算部,43…目標動作演算部,44…電磁比例弁制御部,45…操作装置,46…操作装置,47…操作装置,49…属性情報生成部,50…作業装置姿勢センサ,51…目標地形情報記憶部,52…オペレータ操作センサ,53…表示装置(モニタ),54…電磁比例弁,55…電磁比例弁,56…電磁比例弁,57…目標地形入力装置,58…現況地形入力装置,59…GNSS受信機,60…目標面,61…属性設定点,70…圧力センサ,71…圧力センサ,72…圧力センサ,73…圧力センサ,160…フロント制御用油圧ユニット,162…シャトルブロック,170…ポンプライン,601…第1端点,602…第2端点,603…変曲点,604…最近接点,605…属性変化点