(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】長尺構造物の点検装置
(51)【国際特許分類】
E01D 22/00 20060101AFI20231212BHJP
E21F 13/02 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
E01D22/00 A
E21F13/02
(21)【出願番号】P 2020073788
(22)【出願日】2020-04-17
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】391033115
【氏名又は名称】株式会社カナモト
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【氏名又は名称】小林 義美
(72)【発明者】
【氏名】吉田 道信
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真琴
(72)【発明者】
【氏名】小野澤 龍介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰啓
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 翔太郎
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-166241(JP,A)
【文献】特開2017-115505(JP,A)
【文献】実開昭57-004498(JP,U)
【文献】特開2003-013700(JP,A)
【文献】特開平09-115088(JP,A)
【文献】国際公開第2016/060140(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/209726(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00-24/00
E21D 1/00-9/14
E21D 11/00-19/06
E21D 23/00-23/26
E21F 1/00-17/18
G05D 1/00-1/12
B64B 1/00-1/70
B64U 10/00-80/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺構造物の長さ方向にわたって備えられたレール部と、
前記レール部に沿って移動可能に備えられた移動体と、
前記移動体を遠隔移動操作する操作部と、で構成され、
前記レール部は、レール敷設方向にわたって連続して凹設された係止部及び車輪溝を含み、
前記移動体は、
本体部と、
前記本体部の上面に備えられ、
前記レール部に対して摺動可能に吊り下げ支持可能に係止される落下防止部と、
前記落下防止部は、
前記本体部の上面の長さ方向にのびる中心線上から鉛直方向上方に向けて垂直に成形される第一部材と、
前記第一部材の頂面から水平方向に成形される第二部材と、で正面視略T字状に構成され、
前記レール部の車輪溝に沿って案内される車輪部と、
前記車輪部は、前記本体部の前面と後面にそれぞれ突設した左右の支持部から鉛直方向で前記落下防止部の第二部材よりも高さ方向で上方の位置に立設され、当該鉛直方向の回転軸を中心として回転するように備えられ、
前記本体部に備えられ、前記操作部によって正転若しくは逆転駆動可能なプロペラ部と、
前記本体部に備えられ、移動領域を撮影する撮像部と、を含むことを特徴とする長尺構造物の点検装置。
【請求項2】
前記プロペラ部は、移動方向における前記本体部の左右に備えられることを特徴とする請求項1に記載の長尺構造物の点検装置。
【請求項3】
前記プロペラ部は、移動方向における前記本体部の前後に備えられることを特徴とする請求項1に記載の長尺構造物の点検装置。
【請求項4】
前記本体部は第1パーツから第nパーツに複数分割され、
前記車輪部は前記複数に分割されたそれぞれのパーツ毎に備えられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の長尺構造物の点検装置。
【請求項5】
前記本体部には物の運搬用の機構を備えてなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の長尺構造物の点検装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル・橋梁などの長尺構造物の状況を遠隔操作によって移動点検する点検装置に関する。なお、本明細書において長尺構造物とは、コンクリートや鉄骨など様々な材料を用いて長尺状に構成されている構造物をいうものとする。
【背景技術】
【0002】
例えば、トンネル堀削工事において生じる、岩石や土砂などのずりは、トンネル内に配置したベルトコンベアによってトンネル外へと搬送される(特許文献1を参照。)。
【0003】
コンベア上あるいはその周辺に落下物などがあり、それが作業の支障やコンベアの故障につながる場合があるため、作業の前後、あるいは作業中であってもコンベアとその周辺の点検を行う必要がある。
しかし、トンネルの仕様によってはトンネル長さが数キロメートルにも及ぶことがあり、作業員が歩いて点検するには多大な労力と時間を要するとともに煩わしいものである。また、トンネルが極めて狭い場合もあり、このような場合、作業員がトンネル内を移動して点検するには大変困難である。
【0004】
そこで、トンネルの長さ方向にレールを敷設するとともに、レール上に撮像部を有する移動体を備え、この移動体をリニアモータにより移動可能に構成することにより、トンネル内の状況を遠隔撮影する技術が提案されている(特許文献2)。
このようなトンネル内の点検作業は、例えば作業開始前の短時間の間に行なうことが求められている。例えば、約5kmの長さのトンネル内のベルトコンベア上を点検等する場合、10分程度で行なうことが求められている。
【0005】
しかし、特許文献2に開示の先行技術の場合、リニアモータにより構成された移動体の構造上、複雑でかつ重量が嵩むため、トンネル内を高速かつ短時間で点検移動させるには適していなかった。また、リニアモータを採用している関係上、導入時のコストが嵩むばかりか、故障時の修理コストも嵩む、との課題も有していた。
従って、上述の種々の課題から現実に市場に提供されているものは存在していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-212888号公報
【文献】特開平6-323099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされており、その目的とするところは、トンネルや橋梁などの長尺構造物における点検などが遠隔操作により簡易かつ迅速に行える安価な長尺構造物の点検装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の本発明は、長尺構造物の長さ方向にわたって備えられたレール部と、
前記レール部に沿って移動可能に備えられた移動体と、
前記移動体を遠隔移動操作する操作部と、で構成され、
前記レール部は、レール敷設方向にわたって連続して凹設された係止部及び車輪溝を含み、
前記移動体は、
本体部と、
前記本体部の上面に備えられ、前記レール部に対して摺動可能に吊り下げ支持可能に係止される落下防止部と、
前記落下防止部は、
前記本体部の上面の長さ方向にのびる中心線上から鉛直方向上方に向けて垂直に成形される第一部材と、
前記第一部材の頂面から水平方向に成形される第二部材と、で正面視略T字状に構成され、
前記レール部の車輪溝に沿って案内される車輪部と、
前記車輪部は、前記本体部の前面と後面にそれぞれ突設した左右の支持部から鉛直方向で前記落下防止部の第二部材よりも高さ方向で上方の位置に立設され、当該鉛直方向の回転軸を中心として回転するように備えられ、
前記本体部に備えられ、前記操作部によって正転若しくは逆転駆動可能なプロペラ部と、
前記本体部に備えられ、移動領域を撮影する撮像部と、を含むことを特徴とする長尺構造物の点検装置としたことである。
【0009】
第2の本発明は、第1の本発明において、前記プロペラ部は、移動方向における前記本体部の左右に備えられることを特徴とする長尺構造物の点検装置としたことである。
【0010】
第3の本発明は、第1の本発明において、前記プロペラ部は、移動方向における前記本体部の前後に備えられることを特徴とする長尺構造物の点検装置としたことである。
【0011】
第4の本発明は、第1の発明乃至第3の本発明のいずれかにおいて、前記本体部は第1パーツから第nパーツに複数分割され、
前記車輪部は前記複数に分割されたそれぞれのパーツ毎に備えられていることを特徴とする長尺構造物の点検装置としたことである。
【0012】
第5の本発明は、第1の本発明乃至第4の本発明のいずれかにおいて、前記本体部には物の運搬用の機構を備えてなることを特徴とする長尺構造物の点検装置としたことである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、トンネルや橋梁などの長尺構造物における点検などが遠隔操作により簡易かつ迅速に行える安価な長尺構造物の点検装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第一実施形態を示す概略縦断面図である。
【
図3】本実施形態の移動体のレール吊り下げ状態を示す概略正面図である。
【
図4】本発明の第二実施形態を示す概略従断面図である。
【
図6】第二実施形態の移動体のレール吊り下げ状態を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態では、長尺構造物の一例としてトンネルを想定している。
なお、本実施形態は本発明の一例にすぎずなんらこれに限定解釈されるものではなく、本発明の範囲内で設計変更可能である。また、本発明の適用対象もトンネルに限らず、橋梁や高架橋などの長尺構造物であれば本発明の範囲内である。
【0016】
「第一実施形態」
図1乃至
図3は本発明の第一実施形態を示す。
トンネルT内には、トンネル堀削時に生じる岩石や土砂などのずりをトンネルT外へと搬出する所定長さのコンベアCが、トンネルTの長さ方向A2にわたって配設されており、本実施形態では、このコンベア配設領域を作業領域A1としている。
なお、このコンベアは、ずりを搬出しているとき以外は、その使用形態に限定されず、例えば、作業領域にてコンベアにて必要な道具などを搬送することも可能である。
【0017】
本実施形態におけるトンネル内状況確認装置は、レール部1と、レール部1に沿って移動可能に配設される移動体15と、移動体15を遠隔移動操作する操作部(図示省略)と、で構成されている。
【0018】
操作部は、特に限定解釈されるものではないが、無線によって操作信号を移動体15へと送信可能なものであればよく、例えば、トンネルT外に設営されている指令室などに備えられ、トンネルT内などの所定位置に配設した無線局を介して移動体15に備えた受信部へと無線によって操作信号が送られる。無線局は、特に限定されず周知構成のものでよく、トンネルTの長さによって適切な数量を配設するようにする。
また、本実施形態では、撮像部41によって映し出された映像を操作者がタイムリーに確認できるように、操作部の所定位置に液晶モニターなどの表示装置を備えることを想定している。なお、操作部とは別途、所定位置に表示装置を備えるものとしてもよい。
【0019】
レール部1は、作業領域A1の上方、例えば本実施形態では、トンネルT内の長さ方向A2に配設されているコンベアCの上方のトンネル内壁(内壁上面)にて、コンベアC(作業領域A1)と相対向して平行に備えられている(
図1参照。)。
【0020】
レール部1は、断面視で矩形状を有するレール本体3と、レール敷設方向(トンネル長さ方向A2と同じ)にわたってレール本体3に連続して凹設された係止部5及び車輪溝11を有して構成されている(
図3参照。)。
【0021】
係止部5は、レール本体3の下面3a(コンベア対向面)の略中央の領域にて、レール敷設A2方向にわたってレール部1の一端から他端まで連続して凹設されている(
図1及び
図2参照。)。
【0022】
係止部5は、本実施形態では、後述する移動体15の落下防止部19の第二部材23を収容する第二収容領域9と、第二収容領域9の下方を開口するとともに、第二収容領域9よりも幅狭で連通状に設け、その下端を開口することで後述する落下防止部19の第一部材21を収容する第一収容領域7と、によって全体が断面視でほぼT字状に設けられている。
係止部5は、摩擦抵抗の少ない摺動性に優れた材質を採用すると移動体15の前後進動作がスムーズになるため好ましい。
【0023】
車輪溝11は、レール本体3の左側面3bと右側面3cのそれぞれの略中央の領域(相対向する領域)にて、レール敷設方向A2にわたってレール部1の一端から他端まで連続して凹設されている。
本実施形態では、後述する移動体15の車輪部25の一部を収容し得る深さ及び高さをもって断面視で矩形状に形成され、それぞれの開口が、左側面3bと右側面3cとに位置している。
具体的には、左右に相対向して位置する移動体15の左側の車輪部25と右側の車輪部25との間の最も近い位置を結んだ距離L1と、左右の車輪溝11,11の最も近い深さ位置同士(最深部位置同士)を結んだ距離L2と、左右の車輪溝11,11の最も遠い位置(開口部位)同士を結んだ距離L3と、の関係が、
L2<L1<L3
となるように構成している(
図3参照。)。
【0024】
移動体15は、レール部1に対して移動可能に保持される本体部17を有している。本体部17は、落下防止部19と車輪部25とプロペラ部35と撮像部41とを備えている。また、本体部17には、図示は省略するが、プロペラ部35を正転又は逆転駆動させる駆動源(モータ)を備え、例えば、電源は、レール部1を介して撮像部41及びモータへと送られる。
【0025】
落下防止部19は、本体部17の上面17aに備えられ、レール部1に滑動可能に係止される。落下防止部19は、本体部17の上面17aで、所定間隔をあけて複数個突設されている。本実施形態では、本体部17の上面17aの長さ方向にのびる中心線上から上方に向けて垂直に一体成形される円柱状の第一部材21と、第一部材21の頂面から水平方向に一体成形される所定厚みを有した矩形状の第二部材23と、で正面視略T字状に構成されている(
図3参照。)。
【0026】
落下防止部19は、摩擦抵抗の少ない摺動性に優れた材質を採用すると移動体15の前後進動作がスムーズになるため好ましい。
また、落下防止部19と係止部5との間に潤滑剤を設けておくことも可能で本発明の範囲内である。この場合において、潤滑剤が外部に漏洩しないように係止部5の開口部分、あるいは開口部分に位置する落下防止部19の第一部材21にシール構造を採用するのが好ましい。
なお、落下防止部19は、移動体15の車輪部25が不意にレール部1の車輪溝11から脱輪したような場合に、移動体15が落下して破損するようなことがないようにするものであって、移動体15をレール部1に対して摺動可能に吊り下げ支持可能な構成であれば本実施形態になんら限定解釈されるものではなく、また、その配設数量も一個乃至複数個の範囲で任意に設定可能である。
【0027】
また、第一部材21は角柱状に形成されているものであってもよく、第二部材23は円盤状に形成されているものであってもよく、本発明の範囲内で設計変更可能である。
なお、本実施形態では、係止部5と落下防止部19の双方に、摩擦抵抗の少ない摺動性に優れた材質を採用するものとしたが、いずれか一方が摺動性に優れた材質からなるものであってもよい。
【0028】
車輪部25は、本体部17の前面17bと後面17cにそれぞれ突設した左右の支持部27,27から鉛直方向(図中矢印Hで示す高さ方向)に立設されている。すなわち、本実施形態では、前面に2個、後面に2個、それぞれ所定間隔をあけて備え、それぞれ前後で同一軸上に備える。前記所定間隔は、上述したとおり、左側の車輪部25と右側の車輪部25との間の最も近い位置を結んだ距離L1が、左右の車輪溝11,11の最も近い深さ位置同士(最深部位置同士)を結んだ距離L2と、の関係が、L2<L1となるように構成する(
図2及び
図3参照。)。
【0029】
具体的には、支持部27に固定されて立設される円柱状の軸部29と、軸部29の先端にて正逆回転可能に軸支される円板状の回転部31と、で構成されており、レール部1の左右の車輪溝11,11に、左右の車輪部25,25を構成しているそれぞれの回転部31,31の一部が嵌ることにより、車輪溝11,11に沿って案内される。また、本実施形態では、図示するように、落下防止部19よりも高さ方向Hで上方に突出するように車輪部25を構成している(
図3参照。)。
本実施形態では、回転部31の周面に二条の当接部33,33を設け、車輪溝11との接触領域を少なくすることで摩擦抵抗を低減し、高速移動に寄与するようにしている。なお、上述のとおりの関係を有しているため、車輪部25の回転部31がレール部1の車輪溝11から脱輪する虞はない(
図2及び
図3参照。)。
【0030】
また、車輪部25の配設数量は特に限定解釈はされず、また、車輪部25は、本体部17の上面17aに立設させることも可能である。
なお、本実施形態では、鉛直方向の回転軸を中心として回転部31が水平方向に回転する形態を想定しているが、水平方向に回転軸を設け、この水平方向の回転軸を中心に回転部が前後方向に回転する形態を採用することも可能で、本発明の範囲内で設計変更可能である。
【0031】
プロペラ部35は、本体部17の左右両側面17d,17eの相対向する位置にそれぞれ1個ずつ備えられ、上述したとおり、本体部17に備えられているモータへの操作部からの操作信号によって正転若しくは逆転駆動可能に遠隔操作される。
本実施形態では、本体部17の左側面17dと右側面17eのそれぞれの相対向する位置にて、それぞれ水平方向に突設した支持腕部37,37と、支持腕部37,37の末端に突出して備えた回転軸に正逆回転可能に備えられる羽部39,39と、で構成されている。
なお、プロペラ部35の配設数量は本実施形態に限定解釈されるものではなく、仕様によって適宜本発明の範囲内で増減可能である。
【0032】
撮像部41は、前記本体部17の下面17fに備えられ、操作部によって作業領域A1を動画又は静止画によって遠隔撮影する。また、撮像部41には、例えば、無線発信機を備え、撮影した映像信号をリアルタイムで操作部へと無線にて送る。撮像部41としては周知の構成を採用可能である。
本実施形態では、本体部17の下面17fの前方寄りの位置にて、カメラのレンズ面41aを前方に向けて下り傾斜状に傾けて位置するように配設されている。レンズ面41aを斜め前方に向けて傾けて位置するように配設することで、コンベアC上の落下物などの障害物Oをいち早く検出することが出来る。
なお、レンズ面41aの向きは本発明の範囲内で最適な位置を選択して設計変更可能である。
【0033】
なお、本実施形態では、本体部17の下面17fに一体に撮像部41を配設しているが、本体部17の下面17fから所定長さの腕部を垂設し、その腕部の末端に撮像部41を備える構成などを採用することも可能で本発明の範囲内で設計変更可能である。
さらに、撮像部41は複数個配設するものであっても良く、また、本実施形態では、移動体15を前進させる方向に向けて撮影可能な撮像部41を一つ配設しているが、移動体15を後退させるときに、後退方向でも障害物Oなどを撮影可能な撮像部をさらに配設することも可能である。
【0034】
本実施形態によれば、上述した本発明特有の構成を採用しているため、次のような作用効果を奏する。
例えば、本実施形態では、トンネル工事の作業前あるいは作業後、又は作業中において、コンベアC上(作業領域A2)に落下物などの障害物Oの有無を点検する場合を想定している。
まず、操作者は、トンネルT外にて操作部を操作して移動体15に前進動作をするように信号を送ると共に、撮像部41の撮影開始信号送る。これら信号を受信した移動体15は、本体部17内に備えたモータによりその動力が左右のプロペラ部35,35に伝達され、プロペラ部35,35が正転し、移動体15は、そのプロペラ35,35の推進力によりレール部1に沿って高速で前進移動する。
このとき、移動体15に備えた撮像部41も撮影を開始し、移動体15の移動に合わせてコンベアC上が撮影され、その撮影信号が無線により操作部へと送られる。
操作者は、操作部の液晶モニターに映し出された映像を確認して、コンベアC上に落下物などの障害物Oがあるか否かを確認する。
本実施形態によれば、プロペラ35,35の推進力により、撮像部41を備えた移動体15をトンネルT内に沿って配設したレール部1を前後進可能な簡易な構成としたため、移動体15全体の重量を軽量化でき、かつコストが極めて安価な構成とした高速移動が可能なトンネル内状況確認装置として提供することができ需要者ニーズに応えることができた。
なお、本実施形態では、撮影された映像をモニターを介して認識するものを想定しているが、これに何ら限定解釈されるものではなく本発明の範囲内で設計変更可能である。例えば、HMD(Head Mounted Display)、VR(Virtual Reality)、AR(Augmented Reality)、AI(Artificial Intelligence)などの種々の技術を利用して映像を認識・処理することも可能であって本発明の範囲内である。
【0035】
本実施形態では、レール部1に設けた係止部5を凹状に構成すると共に、移動体15に設けた落下防止部19を凸状に構成した実施の一形態を持って説明したが、レール部1に設ける係止部を凸状に構成し、移動体15に設ける落下防止部を凹状に構成する形態であってもよく、移動体15がレール部1に対して摺動可能で、かつ落下しない構成であれば本発明の範囲内で設計変更可能である。
また、落下防止部19と車輪部25の位置及び構成を本実施形態とは逆に構成することも本発明の範囲内である。すなわち、例えば、レール部1の左右側面3b,3cに係止部を設け、そのレール部1の左右側面3b,3cに設けた係止部に落下防止部19が係止される構成を採用し、かつレール部1の下面3aに車輪溝を設け、そのレール部1の下面3aに設けた車輪溝に車輪部が配される構成を採用することも可能である。
【0036】
さらに、移動体15に撮像部41以外の構成を付加することも本発明の範囲内で可能である。
例えば、操作部によって遠隔操作可能な把持機構(図示省略)を本体部17に備えることが可能である。このような構成を付加することにより、撮像部41がコンベアC上の落下物などの障害物Oを検出した際に、把持機構を操作部によって遠隔操作してコンベアC上から除去することもでき大変有用である。このようにトンネルなどの長尺構造物内に長延長にわたって配設されたベルトコンベアのような設備の点検においては本発明の点検装置は特に有用である。
また、本体部17には、物の運搬用の機構を備えることも可能で、さらに、3Dスキャナー、サーモグラフィーあるいはバイタル等を搭載することも本発明の範囲内であって適宜採用可能である。
また、本実施形態によれば、例えば、トンネル内の車両事故や火災事故などの発生を迅速に検出・確認するなど、その他のトンネル内状況の遠隔確認装置としても利用可能である。
なお、橋梁や高架橋などの下面側の亀裂や破損箇所などを点検するような場合に利用されるときは、レール部は橋梁や高架橋などの下面に吊り下げ状に備えられる。そして、撮像部のカメラを、橋梁や高架橋などの下面側に向けた状態で移動体の上面側に設け、その状態でレール部に沿って高速移動可能に備えられるなど、仕様に応じて種々対応することができる。
【0037】
「第二実施形態」
図4乃至
図6は、本発明の第二実施形態(他の実施形態)を示す。
本実施形態では、移動体15において第一実施形態と相違する。その他の構成及び作用効果にあっては第一実施形態と同様であるため、同一箇所に同一符号を付してその説明を省略する。
【0038】
移動体15は、第一実施形態と同様に、本体部17と、落下防止部19と、車輪部25と、撮像部41とを備えて構成されている。
本体部17は、ボックス部43と、そのボックス部43の上面に、ボックス部43よりも長尺状に形成した取付板部45を一体に成形して構成している。従って、ボックス部43の前後に取付板部45の一部が突出している(
図4及び
図5参照。)。
【0039】
取付板部45には、その上面に落下防止部19と車輪部25とを立設している。
また、下面には、中央領域にボックス部43を一体に設け、ボックス部43の前後の位置に、それぞれプロペラ部35,35を吊り下げ状態で一体に備えている。
【0040】
落下防止部19は、ボックス部43の前端領域と後端領域に対応する取付板部45の上面の所定領域にて、取付板部45の長手方向(符号L4で示す方向)の同一軸線上に2個、所定の間隔をあけて立設させている(
図5参照。)。落下防止部19の形態(構成)は第一実施形態と同様である。
【0041】
車輪部25は、前方に位置する落下防止部19の前方領域と、後方に位置する落下防止部19の後方領域、及び前後の落下防止部19,19の中間領域に、それぞれ2個ずつ横方向(取付板部45の長手方向L4に直交する短手方向 図中符号Wで示す方向)に所定間隔をあけて並んで立設させている(
図5及び
図6参照。)。
車輪部25は、取付板部45の上面に固定されて立設される円柱状の軸部29と、軸部29の先端にて正逆回転可能に軸支される円板状の回転部31と、で構成されている。また、本実施形態でも、第一実施形態と同様に、落下防止部19よりも高さ方向Hで上方に突出するように車輪部25を構成している(
図6参照。)
【0042】
プロペラ部35,35は、取付板部45の前後の突出領域のそれぞれの下面から一体に垂設される吊下部47,47と、吊下部47,47の末端に設けられている前面・後面から突設した回転軸に正逆回転可能に構成された羽部39,369と、を備えて構成されている(
図5及び
図6参照。)。
【0043】
本実施形態では、プロペラ部35,35をボックス部43の前後方向に配設する構成を採用したため、移動体15全体の幅を狭くすることが出来る。従って、極めて狭いトンネルT内を移動するに特に適した構造である。
この場合、前後に位置するプロペラ部35,35によって撮像部41の視界が遮られないようにすると撮影に支障をきたす虞が無く好ましい。例えば、
図4に示すように、プロペラ部35の旋回領域(
図4中にて符号R1で示す領域)を避けて撮像部41を備えるように構成する。
【0044】
なお、プロペラ部35を構成する吊下部47の垂設長さは本実施形態に限定されず本発明の範囲内で設計変更可能である。また、プロペラ部35を前後いずれか一方に設ける形態であっても本発明の範囲内である。
【0045】
「第三実施形態」
本実施形態では、図示は省略するが、上述した第一実施形態と第二実施形態におけるそれぞれの移動体を構成する本体部を、第1パーツから第nパーツに複数分割した構成を採用することを想定する。
このように移動体の本体部を複数分割構成としたのは、トンネルが蛇行しているような状況下においてスムーズな移動ができるよう対処するためである。
分割数は特に限定解釈されないが、多数の分割構成を採用することによりさまざまなレールの配設形態(蛇行形態)に対応可能である。
車輪部及び落下防止部は、複数に分割されたそれぞれのパーツ毎に備えることを想定している。
その他の構成及び作用効果は第一実施形態・第二実施形態と同様であるため、必要に応じて各実施形態の構成を採用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、トンネルの他、橋梁、道路・鉄道の高架橋などの長尺構造物における点検・確認装置としても利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 レール部
5 係止部
11 車輪溝
15 移動体
19 落下防止部
25 車輪部
35 プロペラ部
41 撮像部
A1 作業領域
T トンネル
C コンベア