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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】腐食環境モニタリング装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
G01N17/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020075851
(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公開番号】P2021173568
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】南谷 林太郎
【審査官】川瀬 正巳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/061182(WO,A1)
【文献】特開2003-294606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁板と、絶縁板上に前記絶縁板に接して形成され、腐食性物質に対して腐食し難いベース金属薄膜と、ベース金属薄膜上に前記ベース金属薄膜に接して形成され、腐食性物質に対して腐食し易いセンシング金属薄膜と、を有する積層体と、
前記積層体を内包し、側面方向に開口部を有し、内部に前記腐食性物質のガス通路を形成する筐体と、
を有する腐食環境モニタリング装置であって、
前記ベース金属薄膜は、開口部側に所定の幅を有して形成される短辺部と、前記短辺部の両側に前記開口部側から前記ガス通路の奥行き側に向けて所定の幅を有して形成される2つの長辺部と、を有し、
前記センシング金属薄膜は、前記ベース金属薄膜の短辺部上を除き、2つの長辺部上のみに形成されることを特徴とする腐食環境モニタリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載する腐食環境モニタリング装置であって、
前記センシング金属薄膜は、前記開口部側に先鋭部が形成され
前記先鋭部は、前記センシング金属薄膜の幅又は高さが、前記開口部側から前記ガス通路の奥行き側に向けて、連続的又は段階的に大きくなる領域であることを特徴とする腐食環境モニタリング装置。
【請求項3】
絶縁板と、絶縁板上に前記絶縁板に接して形成され、腐食性物質に対して腐食し難いベース金属薄膜と、ベース金属薄膜上に前記ベース金属薄膜に接して形成され、腐食性物質に対して腐食し易いセンシング金属薄膜と、を有する積層体と、
前記積層体を内包し、側面方向に開口部を有し、内部に前記腐食性物質のガス通路を形成する筐体と、
を有する腐食環境モニタリング装置であって、
前記ベース金属薄膜は、開口部側に所定の幅を有して形成される短辺部と、前記短辺部の両側に前記開口部側から前記ガス通路の奥行き側に向けて所定の幅を有して形成される2つの長辺部と、を有し、
前記センシング金属薄膜は、前記ベース金属薄膜の短辺部上及び2つの長辺部上に形成され、前記ベース金属薄膜の短辺部上のみに、腐食性物質に対して腐食し難い被覆薄膜が形成されることを特徴とする腐食環境モニタリング装置。
【請求項4】
請求項1に記載する腐食環境モニタリング装置であって、
前記絶縁板に形成される前記ベース金属薄膜及び前記ベース金属薄膜上に形成される前記センシング金属薄膜の前記2つの長辺部の前記開口部側に、前記ガス通路の奥行き側の領域に比較して、前記ベース金属薄膜及び前記センシング金属薄膜の幅が狭い先端部が形成されることを特徴とする腐食環境モニタリング装置。
【請求項5】
請求項1に記載する腐食環境モニタリング装置であって、
前記開口部側の領域に形成されるガス通路の断面積が、前記ガス通路の奥行き側の領域に形成されるガス通路の断面積に比較して、断面積が大きいことを特徴とする腐食環境モニタリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食環境モニタリング装置に関する。
【0002】
特に、本発明は、環境中の腐食度合いを測定する腐食環境モニタリング装置や環境中の腐食度合いから環境中の腐食性ガス濃度を測定する腐食環境モニタリング装置に関する。
【0003】
特に、本発明は、電気電子機器の設置環境、保管環境、輸送環境を対象に、環境中に存在する腐食性ガスによる、環境中の腐食度合いを測定する腐食環境モニタリング装置や環境中の腐食度合いから環境中の腐食性ガス濃度を測定する腐食環境モニタリング装置に関する。
【0004】
そして、本発明は、ガス腐食試験装置や有機材料から発生するガスのアウトガス試験装置の試験環境を対象に、環境中に存在する腐食性ガスによる、環境中の腐食度合いを測定する腐食環境モニタリング装置や環境中の腐食度合いから環境中の腐食性ガス濃度を測定する腐食環境モニタリング装置に関する。
【背景技術】
【0005】
本技術分野の背景技術として、WO2017-061182号公報(特許文献1)がある。
【0006】
特許文献1には、一方面に開口部を有し、開口部の面以外の面を封止することにより、内部に空間部を形成した筐体と、空間部の奥行き側から開口部に向けて設置され、腐食性物質に対して腐食し難い第1の薄膜金属と、第1の薄膜金属を支持部材として、第1の薄膜金属に沿って、空間部の奥行き側から開口部に向けて設置され、腐食性物質に対して腐食し易い計測部材である第2の薄膜金属と、第1の薄膜金属の両側に設置され、外部電圧が印可される端子と、から構成され、空間部の奥行き側から開口部に向けて設置される1つの第1の薄膜金属の片側又は両側に、第2の薄膜金属が、空間部の奥行き側から開口部に向けて設置される腐食環境モニタリング装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO2017-061182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電力、下水道、プラントなどの社会インフラ設備では、故障による操業停止が社会活動に影響を及ぼすため、安定稼働させることが要求されている。特に、腐食性の厳しい環境で操業している設備では、設備自体の耐食性と共に、併設されている情報機器や制御機器などの電子機器の耐食性を確保することも重要である。
【0009】
腐食障害が想定される設備に併設されている電子機器では、適切な防食対策が取られているが、設置実績が少なく、防食対策が十分でない設備では、新たな腐食障害が発生する可能性がある。このような設備で、適切な防食対策を施すためには、現地環境を迅速に測定し、診断することが有効であり、環境の腐食性を長期にわたり、連続的に測定することができる腐食環境モニタリング装置が要望されている。
【0010】
特許文献1に記載する腐食環境モニタリング装置は、腐食性が非常に厳しい環境(ISO 11844-1規格のIC5クラス)であっても、環境の腐食性を長期にわたり、連続的に測定することができる。
【0011】
しかし、特許文献1には、環境の腐食性のモニタリング初期における測定精度を向上させることができる腐食環境モニタリング装置については、記載されていない。
【0012】
そこで、本発明は、環境の腐食性のモニタリング初期における測定精度の低下を抑制し、モニタリング全期間において、腐食性が非常に厳しい環境であっても、環境の腐食性を長期にわたり、高精度で連続的に測定する腐食環境モニタリング装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した課題を解決するため、本発明の腐食環境モニタリング装置は、絶縁板と、絶縁板上に絶縁板に接して形成され、腐食性物質に対して腐食し難いベース金属薄膜と、ベース金属薄膜上にベース金属薄膜に接して形成され、腐食性物質に対して腐食し易いセンシング金属薄膜と、を有する積層体と、積層体を内包し、側面方向に開口部を有し、内部に腐食性物質のガス通路を形成する筐体と、を有するものであって、ベース金属薄膜は、開口部側に所定の幅を有して形成される短辺部と、短辺部の両側に開口部側からガス通路の奥行き側に向けて所定の幅を有して形成される2つの長辺部と、を有し、センシング金属薄膜は、ベース金属薄膜の短辺部上を除き、2つの長辺部上のみに形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、環境の腐食性のモニタリング初期における測定精度の低下を抑制し、モニタリング全期間において、腐食性が非常に厳しい環境であっても、環境の腐食性を長期にわたり、高精度で連続的に測定する腐食環境モニタリング装置を提供することができる。
【0016】
なお、上記した以外の課題、構成及び効果については、下記する実施例の説明により、明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】従来例の腐食環境モニタリング装置1の(a)上面図、(b)A-A断面の側面図、及び(c)正面図である。
図2】従来例の腐食環境モニタリング装置1の暴露後の(a)上面図、(b)A-A断面の側面図、及び(c)正面図である。
図3】従来例の腐食環境モニタリング装置1で、暴露前、暴露後時刻A、暴露後時刻B、暴露後時刻Cにおける絶縁板、ベース金属薄膜、センシング金属薄膜からなる積層体の腐食状況を示す正面図、及び、その腐食状況に対応する暴露時間と電気抵抗値との関係を示すグラフである。
図4】従来例の腐食環境モニタリング装置1で、暴露後時刻a、暴露後時刻b、暴露後時刻cのそれぞれにおける絶縁板、ベース金属薄膜、センシング金属薄膜からなる積層体の腐食状況を示す上面図、正面図、及び、その腐食状況に対応する暴露時間と電気抵抗値との関係を示すグラフである。
図5】実施例1の腐食環境モニタリング装置1の(a)上面図、(b)A-A断面の側面図、及び(c)正面図である。
図6】実施例2の腐食環境モニタリング装置1の(a)上面図、(b)A-A断面の側面図、及び(c)正面図である。
図7】実施例3の腐食環境モニタリング装置1の(a)上面図、(b)A-A断面の側面図、及び(c)正面図である。
図8】実施例4の腐食環境モニタリング装置1の(a)上面図、(b)A-A断面の側面図、及び(c)正面図である。
図9】実施例5の腐食環境モニタリング装置1の(a)上面図、(b)A-A断面の側面図、及び(c)正面図である。
図10】実施例6の腐食環境モニタリング装置1の(a)上面図、(b)A-A断面の側面図、及び(c)正面図である。
図11】実施例7の腐食環境モニタリング装置1の(a)上面図、(b)A-A断面の側面図、及び(c)正面図である。
図12】実施例8の腐食環境モニタリング装置1の(a)上面図、(b)A-A断面の側面図、及び(c)正面図である。
図13】実施例9の腐食環境モニタリング装置1の(a)上面図、(b)A-A断面の側面図、及び(c)正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を、図面を使用して説明する。なお、実質的に同一又は類似の構成には、同一の符号を付し、説明が重複する場合には、その説明を省略する場合がある。
【0019】
以下、本実施例では、環境の腐食性のモニタリング初期における測定精度の低下を抑制し、モニタリング全期間において、腐食性が非常に厳しい環境であっても、環境の腐食性を長期にわたり、高精度で連続的に測定する腐食環境モニタリング装置及び方法について、説明する。
【0020】
なお、本実施例では、特に、環境中の腐食度合い(腐食性ガスの有無)を測定する腐食環境モニタリング装置及び方法について、説明する。
【0021】
<従来例>
まず、本実施例を説明する前に、図1図2図3図4を使用し、従来例の腐食環境モニタリング装置を説明する。
【0022】
図1は、従来例の腐食環境モニタリング装置1の(a)上面図、(b)A-A断面の側面図、及び(c)正面図である。
【0023】
腐食環境モニタリング装置1は、以下の構成を有する。
(1)絶縁板4と、環境中に存在する腐食性ガス10に対して腐食し難く、抵抗温度変化が小さい材料からなるベース金属薄膜2と、ベース金属薄膜2を支持部材として、ベース金属薄膜2上の全領域に形成され、腐食性ガス10に対して腐食し易い材料からなるコの字型のセンシング金属薄膜3と、からなるセンサチップ20、
(2)センサチップ20を形成する基板5、
(3)基板5を内包し、側面方向(一方面)にガス通路8の開口部7を有し、一方面の開口部7の面以外の他方面を封止することにより、内部に腐食性ガス10のガス通路8を形成する筐体6、
(4)センサチップ20の両端に形成され、電気抵抗値を測定する引出電極9。
【0024】
ここで、コの字とは、開口部7側において所定の幅を有して形成される短辺部と、短辺部の両側であって、開口部7側からガス通路8の奥行き側(図1(a)及び図1(c)の右側)に向けて、所定の幅を有して形成される2つの長辺部と、を有するものである。
【0025】
つまり、腐食環境モニタリング装置1は、一方面に開口部7を有し、一方面の開口部7の面以外の他方面を封止することにより、内部に腐食性ガス10のガス通路8を形成する筐体6と、開口部7側からガス通路8の奥行き側に向けて形成され、腐食性ガス10に対して腐食し難いベース金属薄膜2と、ベース金属薄膜2を支持部材として、ベース金属薄膜2に沿って、開口部7側からガス通路8の奥行き側に向けて形成され、腐食性ガス10に対して腐食し易い計測部材であるセンシング金属薄膜3と、ベース金属薄膜2の両側に形成され、電気抵抗値を測定する引出電極9と、を有する。
【0026】
図2は、従来例の腐食環境モニタリング装置1の暴露後の(a)上面図、(b)A-A断面の側面図、及び(c)正面図である。
【0027】
従来例の腐食環境モニタリング装置1を、環境中に暴露すると、図2に示すように、環境中に存在する腐食性ガス10が、開口部7から侵入して、腐食性ガス10の濃度流束が高い開口部7から、ガス通路8の奥行き側(右側)に向けて、センシング金属薄膜3の腐食領域(腐食生成物31が生成される領域)が伸長する。
【0028】
この腐食領域の伸長は、以下のように説明される。つまり、センシング金属薄膜3が腐食して生成される腐食生成物31が、センシング金属薄膜3の下面(ベース金属薄膜2との界面)に到達した場合には、これ以上、下面方向には腐食しない。このため、腐食性ガス10は腐食反応に、下面方向には消費されず、ガス通路8の奥行き側に向けて消費され、腐食性ガス10は、ガス通路8の奥行き側に向けて、センシング金属薄膜3を腐食する。
【0029】
この際、センシング金属薄膜3の上面(ガス通路8に接する面)は、図2(c)に示すように、センシング金属薄膜3の下面に比較して、腐食の進行が速い。この腐食の挙動は、腐食性ガス10の拡散方向を限定し、センシング金属薄膜3の腐食速度を制御するガス通路8により、実現される。
【0030】
また、図2(a)に示すように、腐食により、センシング金属薄膜3の一部が腐食生成物31に変化するため、センサチップ20の両端に形成される引出電極9間の電気抵抗値が、暴露後は、暴露前(初期値)に比較して、大きくなる。
【0031】
ここで、センシング金属薄膜3に使用される金属(センシング金属)は、比抵抗が小さく、かつ、生成される腐食生成物31の比抵抗が大きい金属である。そして、ベース金属薄膜2に使用される金属(ベース金属)は、センシング金属に比較して、比抵抗が大きい金属である。
【0032】
なお、予め、センシング金属薄膜3の腐食量と引出電極9間の電気抵抗値との関係を求めることにより、測定した電気抵抗値から腐食量を推定することができる。また、予め、センシング金属薄膜3の腐食量と環境中の腐食性ガス濃度との関係を求めることにより、測定した電気抵抗値から腐食性ガス濃度を推定することができる。
【0033】
図3は、従来例の腐食環境モニタリング装置1で、暴露前、暴露後時刻A、暴露後時刻B、暴露後時刻Cにおける絶縁板、ベース金属薄膜、センシング金属薄膜からなる積層体の腐食状況を示す正面図、及び、その腐食状況に対応する暴露時間と電気抵抗値との関係を示すグラフである。
【0034】
ここで、従来例の腐食環境モニタリング装置1の、暴露前、暴露後時刻A、暴露後時刻B、暴露後時刻C(暴露後時刻A<暴露後時刻B<暴露後時刻C)における、腐食状況に対応するセンサチップ20の両端に形成される引出電極9間の電気抵抗値の変化を、模式的に説明する。
【0035】
なお、図1に示す従来例の腐食環境モニタリング装置1は、センサチップ20を使用して、説明しているが、ここでは、説明を簡単にするため、I型(矩形状)のセンサチップを使用して、説明する。そして、図3では、I型のセンサチップのうち、開口部7側を拡大して示す。なお、電気抵抗値は、I型のセンサチップの両端で測定することを想定する。
【0036】
暴露前では、ベース金属薄膜2とセンシング金属薄膜3とも腐食していない。
【0037】
暴露前におけるセンサチップの電気抵抗値は、ベース金属薄膜2の電気抵抗RBM1とセンシング金属薄膜3の電気抵抗RSM1との並列回路で、示される。
【0038】
そして、暴露前におけるセンサチップの電気抵抗値は、センシング金属の比抵抗が、ベース金属の比抵抗に比較して、小さいため、センシング金属薄膜3の電気抵抗値(電気抵抗RSM1)で示される。
【0039】
暴露後時刻Aでは、環境中に存在する腐食性ガス10により、ガス通路8に接するセンシング金属薄膜3の上面から、腐食生成物31が形成される。腐食性ガス10が、開口部7(左側)から、ガス通路8の奥行き側(右側)に向けて、侵入するため、センシング金属薄膜3は、腐食性ガス10の濃度流束が高い開口部7から、腐食する。
【0040】
暴露後時刻Aでは、センシング金属薄膜3の左端において、腐食生成物31が部分的に形成され、センシング金属薄膜3も、Lだけ残存する。
【0041】
暴露後時刻Aにおけるセンサチップの電気抵抗値は、ベース金属薄膜2の電気抵抗RBM2と電気抵抗RBM3、センシング金属薄膜3の電気抵抗RSM2と電気抵抗RSM3、腐食生成物31の電気抵抗RCP2、の等価回路で、示される。
【0042】
そして、暴露後時刻Aにおけるセンサチップの電気抵抗値は、ベース金属の比抵抗、センシング金属の比抵抗、腐食生成物31の比抵抗の大小関係から、点線矢印で示すようになり、センシング金属薄膜3の電気抵抗RSM2と電気抵抗RSM3との直列回路(直列抵抗)で近似することができる。なお、未だ、暴露後時刻Aにおけるセンサチップの電気抵抗値と、暴露前におけるセンサチップの電気抵抗値との変化は小さい。
【0043】
暴露後時刻Bでは、環境中に存在する腐食性ガス10により、ガス通路8に接するセンシング金属薄膜3の上面から、腐食生成物31が形成される。腐食性ガス10が、開口部7(左側)から、ガス通路8の奥行き側に向けて、更に、侵入するため、センシング金属薄膜3は、腐食性ガス10の濃度流束が高い開口部7から、更に、腐食する。
【0044】
暴露後時刻Bでは、センシング金属薄膜3の左端において、腐食生成物31が、センシング金属薄膜3の下面に到達し、センシング金属薄膜3は残存しない。
【0045】
暴露後時刻Bにおけるセンサチップの電気抵抗値は、ベース金属薄膜2の電気抵抗RBM4と電気抵抗RBM5、センシング金属薄膜3の電気抵抗RSM4と電気抵抗RSM5、腐食生成物31の電気抵抗RCP4、の等価回路で、示される。
【0046】
そして、暴露後時刻Bにおけるセンサチップの電気抵抗値は、ベース金属の比抵抗、センシング金属の比抵抗、腐食生成物31の比抵抗の大小関係から、点線矢印で示すようになり、センシング金属薄膜3の電気抵抗RSM4と電気抵抗RSM5との直列回路(直列抵抗)で近似することができる。なお、未だ、暴露後時刻Bにおけるセンサチップの電気抵抗値と、暴露前におけるセンサチップの電気抵抗値との変化は小さい。
【0047】
なお、暴露後時刻Bを境に、センサチップの電気抵抗値の変化は、大きくなる。
【0048】
暴露後時刻Cでは、環境中に存在する腐食性ガス10により、ガス通路8に接するセンシング金属薄膜3の上面から、腐食生成物31が形成される。腐食性ガス10が、開口部7(左側)から、ガス通路8の奥行き側に向けて、更に、更に、侵入するため、センシング金属薄膜3は、腐食性ガス10の濃度流束が高い開口部7から、更に、更に、腐食する。
【0049】
暴露後時刻Cでは、センシング金属薄膜3の左端において、腐食生成物31が、センシング金属薄膜3の下面に到達し、センシング金属薄膜3は残存せず、更に、センシング金属薄膜3の下面においても、ガス通路8の奥行き側に向けて、腐食生成物31が形成される。
【0050】
暴露後時刻Cにおけるセンサチップの電気抵抗値は、ベース金属薄膜2の電気抵抗RBM6と電気抵抗RBM7と電気抵抗RBM8、センシング金属薄膜3の電気抵抗RSM7と電気抵抗RSM8、腐食生成物31の電気抵抗RCP6と気抵抗RCP7、の等価回路で、示される。
【0051】
そして、暴露後時刻Cにおけるセンサチップの電気抵抗値は、ベース金属の比抵抗、センシング金属の比抵抗、腐食生成物31の比抵抗の大小関係から、点線矢印で示すようになり、ベース金属薄膜2の電気抵抗RBM6と、センシング金属薄膜3の電気抵抗RSM7と電気抵抗RSM8との直列回路(直列抵抗)で近似することができる。なお、暴露後時刻Cにおけるセンサチップの電気抵抗値と、暴露前におけるセンサチップの電気抵抗値との変化は大きい。
【0052】
図4は、従来例の腐食環境モニタリング装置1で、暴露後時刻a、暴露後時刻b、暴露後時刻cのそれぞれにおける絶縁板、ベース金属薄膜、センシング金属薄膜からなる積層体の腐食状況を示す上面図、正面図、及び、その腐食状況に対応する暴露時間と電気抵抗値との関係を示すグラフである。
【0053】
ここで、腐食環境モニタリング装置1において、環境の腐食性のモニタリング初期における測定精度が低下するとの課題について、説明する。
【0054】
暴露後時刻aでは、センシング金属薄膜3の左側において、腐食生成物31が、センシング金属薄膜3の下面に到達し、センシング金属薄膜3は残存せず、更に、センシング金属薄膜3の下面においても、ガス通路8の奥行き側(右側)に向けて、腐食生成物31が形成される。つまり、センシング金属薄膜3の左側において、センシング金属薄膜3が残存していない領域が認められる。
【0055】
しかし、センサチップ20を使用する従来例の腐食モニタリング装置1では、このように腐食が進行しているにもかかわらず、図4中の領域1(短辺部の幅の部分)に、わずかでもセンシング金属薄膜3が残存していると、センサチップ20の電気抵抗値は、ほとんど変化しない。
【0056】
つまり、暴露後時刻aでは、センサチップ20の電気抵抗値の変化は、小さい。このため、環境の腐食性のモニタリング初期における測定精度が低下する。
【0057】
一方、図4中の領域1が全て腐食する(図4中の領域1にセンシング金属薄膜3が残存していない)、暴露後時刻bを境に、センサチップ20の電気抵抗値の変化は、大きくなり、暴露後時刻cでは、センサチップ20の電気抵抗値の変化は、大きい。
【実施例1】
【0058】
次に、実施例1の腐食環境モニタリング装置1を説明する。なお、従来例の腐食環境モニタリング装置1の基本構成は、実施例1にも適用する。
【0059】
図5は、実施例1の腐食環境モニタリング装置1の(a)上面図、(b)A-A断面の側面図、及び(c)正面図である。
【0060】
実施例1の腐食環境モニタリング装置1は、以下の構成を有する。
(1)絶縁板4と、絶縁板4上に形成され、環境中に存在する腐食性ガス10(例えば、SO、NO、HS、Sなどの腐食性物質)に対して腐食し難く、抵抗温度変化が小さい材料からなるベース金属薄膜2と、ベース金属薄膜2を支持部材として、ベース金属薄膜2上に形成され、腐食性ガス10に対して腐食し易い材料からなり、ベース金属薄膜2上の一部領域(2つの長辺部3a及び3b)に形成される計測部材であるセンシング金属薄膜3(厚さが1μm以下)と、からなるセンサチップ(積層体)20、
(2)センサチップ20を形成する基板5、
(3)センサチップ20を内包し、側面方向(一方面)に開口部7(幅が10mm以下、高さが5mm以下)を有し、一方面の開口部7の面以外の他方面を封止することにより、内部に腐食性ガス10のガス通路8を形成する筐体6、
(4)センサチップ20の両端に形成され、電気抵抗値を測定する引出電極9。
【0061】
つまり、実施例1の腐食環境モニタリング装置1は、一方面に開口部7を有し、一方面の開口部7の面以外の他方面を封止することにより、内部に腐食性ガス10のガス通路8を形成する筐体6と、開口部7側からガス通路8の奥行き側(右側)に向けて形成され、腐食性ガス10に対して腐食し難いベース金属薄膜2と、ベース金属薄膜2を支持部材として、ベース金属薄膜2に沿って、開口部7側からガス通路8の奥行き側に向けて、2つの長辺部(3a及び3b)に形成され、腐食性ガス10に対して腐食し易い計測部材であるセンシング金属薄膜3と、ベース金属薄膜2の両側に形成され、電気抵抗値を測定する引出電極9と、を有する。
【0062】
このように、実施例1の腐食環境モニタリング装置1は、特に、ベース金属薄膜2は、絶縁板4上であり、開口部7側において所定の幅を有して形成される短辺部と、短辺部の両側であって、開口部7側からガス通路8の奥行き側に向けて、所定の幅を有して形成される2つの長辺部と、に形成され、センシング金属薄膜3は、ベース金属薄膜2上であり、短辺部の両側であって、開口部7側からガス通路8の奥行き側に向けて、所定の幅を有して形成される2つの長辺部に形成される。
【0063】
つまり、実施例1の腐食環境モニタリング装置1は、開口部7側の短辺部は、絶縁板4とベース金属薄膜2とからなる積層部分であり、2つの長辺部(3a及び3b)は、絶縁板4とベース金属薄膜2とセンシング金属薄膜3とからなる積層部分である。
【0064】
なお、ベース金属薄膜2上の一部領域とは、短辺部を除き、開口部7側からガス通路の奥行き側に向けて形成される2つの長辺部である。
【0065】
また、実施例1の腐食環境モニタリング装置1は、センシング金属薄膜3の開口部7側は、開口部7に平行な形状を有する。
【0066】
なお、センシング金属は、比抵抗が小さく、かつ、生成される腐食生成物31の比抵抗が大きい金属である。例えば、銅、銅合金、銀、銀合金(例えば、銀パラジウム合金など)、アルミニウム、鉄、亜鉛、鉛などの金属であり、金属とその腐食生成物31との電気抵抗値が相違する金属である。
【0067】
また、ベース金属は、センシング金属に比較して、比抵抗が大きい金属である。例えば、チタン、クロム、金、パラジウム、ステンレス鋼などの金属である。
【0068】
なお、腐食生成物31としては、センシング金属に、例えば、銀を使用し、腐食性ガス10が、例えば、HS、Sなどであった場合には、硫化銀が生成される。
【0069】
また、実施例1の腐食環境モニタリング方法は、このような腐食環境モニタリング装置1を使用し、環境中の腐食度合いを測定するものであって、センシング金属薄膜3に一部領域を形成することにより、一部領域における腐食生成物が生成される領域の伸長速度を速くする。
【0070】
これにより、実施例1によれば、環境の腐食性のモニタリング初期における測定精度の低下を抑制することができる。そして、モニタリング全期間において、腐食性が非常に厳しい環境であっても、環境の腐食性を長期にわたり、高精度で連続的に測定することができる。
【0071】
また、ベース金属薄膜2は、開口部7からガス通路8の奥行き側にずらして、形成される共に、センシング金属薄膜は、ベース金属薄膜2よりも、更に、開口部7からガス通路8の奥行き側にずらして、形成される。これにより、環境の腐食性のモニタリング初期における測定精度を安定化させることができる。
【0072】
また、ベース金属薄膜2上の一部領域に、センシング金属薄膜3を形成するためには、以下の工程を使用する。
(1)絶縁板4上に、ベース金属薄膜2を、スパッタリング又はめっきにより形成する。
(2)次に、センシング金属薄膜が形成される領域(短辺部の両側であって、開口部7側からガス通路8の奥行き側に向けて、所定の幅を有して形成される2つの長辺部)以外に、マスキングを施し、センシング金属薄膜を、スパッタリング又はめっきにより形成する。
【0073】
また、ベース金属薄膜2上の一部領域に、センシング金属薄膜3を形成するためには、以下の工程を使用する。
(1)絶縁板4上に、ベース金属薄膜2とセンシング金属薄膜3とを、スパッタリング又はめっきにより形成する。
(2)次に、センシング金属薄膜3が形成される領域(短辺部の両側であって、開口部7側からガス通路8の奥行き側に向けて、所定の幅を有して形成される2つの長辺部)に、マスキングを施し、センシング金属薄膜3を、エッチングにより除去する。なお、エッチングでは、ベース金属薄膜2に不活性であり、センシング金属薄膜3のみに活性である溶液を使用する。
【0074】
ベース金属薄膜2上の一部領域に、センシング金属薄膜3を形成するためには、スクリーン印刷やインクジェットプリンタ印刷を使用することもできる。
【0075】
なお、実施例1の腐食環境モニタリング装置1は、腐食性ガス10の腐食性ガス濃度の変化を把握する信頼性の高いガスセンサとしても使用することができる。
【実施例2】
【0076】
次に、実施例2の腐食環境モニタリング装置1を説明する。なお、従来例の腐食環境モニタリング装置1の基本構成は、実施例2にも適用する。
【0077】
図6は、実施例2の腐食環境モニタリング装置1の(a)上面図、(b)A-A断面の側面図、及び(c)正面図である。
【0078】
実施例2の腐食環境モニタリング装置1は、実施例1の腐食環境モニタリング装置1に比較して、センシング金属薄膜3の開口部7側における先端形状が相違する。
【0079】
実施例2の腐食環境モニタリング装置1では、実施例1の腐食環境モニタリング装置1に相違して、センシング金属薄膜3の開口部7側に、ガス通路8の奥行き側の領域(一定断面積領域)に比較して、センシング金属薄膜3の幅が狭い領域(図6(a)参照)を有する。つまり、ベース金属薄膜2上の一部領域に形成されるセンシング金属薄膜3には、その開口部7側に、ガス通路8の奥行き側の領域に比較して、センシング金属薄膜3の幅が狭い領域(先鋭部:センシング金属薄膜3の幅が、開口部7側からガス通路8の奥行き側に向けて、連続的に大きくなる領域)が形成される。
【0080】
なお、先鋭部は、センシング金属薄膜3の幅が、段階的に大きくなる領域であってもよい。
【0081】
先鋭部は、開口部7側からガス通路8の奥行き側に向けて、その断面積が増加する領域であり、センシング金属薄膜3の幅が、開口部7側からガス通路8の奥行き側に向けて、連続的に大きくなる領域である。先鋭部は、ガス通路8の奥行き側の領域に比較して、その断面積が小さい領域である。
【0082】
開口部7から侵入した腐食性ガス10の濃度流束は、センシング金属薄膜3の幅が狭い先鋭部に集中するため、センシング金属薄膜3が腐食して、腐食生成物31が生成されるまでの時間が短くなり、先鋭部は、この先鋭部よりもガス通路8の奥行き側の領域に比較して、腐食生成物31が生成される領域の伸長速度が速くなる。
【0083】
これにより、実施例2によれば、暴露前から曝露後時刻Bまでの時間を短縮することができ、環境の腐食性のモニタリング初期における測定精度の低下を抑制することができる。
【実施例3】
【0084】
次に、実施例3の腐食環境モニタリング装置1を説明する。なお、従来例の腐食環境モニタリング装置1の基本構成は、実施例3にも適用する。
【0085】
図7は、実施例3の腐食環境モニタリング装置1の(a)上面図、(b)A-A断面の側面図、及び(c)正面図である。
【0086】
実施例3の腐食環境モニタリング装置1は、実施例1の腐食環境モニタリング装置1に比較して、センシング金属薄膜3の開口部7側における先端形状が相違する。
【0087】
実施例3の腐食環境モニタリング装置1では、実施例1の腐食環境モニタリング装置1に相違して、センシング金属薄膜3の開口部7側に、ガス通路8の奥行き側の領域(一定断面積領域)に比較して、センシング金属薄膜3の膜厚が薄い領域(図7(c)参照)を有する。つまり、ベース金属薄膜2上の一部領域に形成されるセンシング金属薄膜3には、その開口部7側に、ガス通路8の奥行き側の領域に比較して、センシング金属薄膜3の膜厚が薄い領域(先鋭部:センシング金属薄膜3の高さが、開口部7側からガス通路8の奥行き側に向けて、段階的又は連続的に大きくなる領域)が形成される。
【0088】
センシング金属薄膜3の膜厚が薄い領域は、ガス通路8の奥行き側の領域に比較して、その断面積が小さい領域である。
【0089】
開口部7から侵入した腐食性ガス10の濃度流束は、センシング金属薄膜3の膜厚が薄い領域に集中するため、センシング金属薄膜3が腐食して、腐食生成物31が生成されるまでの時間が短くなり、膜厚が薄い領域は、この膜厚が薄い領域よりもガス通路8の奥行き側の領域に比較して、腐食生成物31が生成される領域の伸長速度が速くなる。
【0090】
実施例3では、先鋭部は、センシング金属薄膜3の高さが、ガス通路8の奥行き側の領域に比較して、低い領域である。この先鋭部は、開口部7側からガス通路8の奥行き側に向けて、センシング金属薄膜3の高さが、段階的に大きくなる領域であってもよく、センシング金属薄膜3の高さが、連続的に大きくなる領域であってもよい。
【0091】
これにより、実施例3によれば、暴露前から曝露後時刻Bまでの時間を短縮することができ、環境の腐食性のモニタリング初期における測定精度の低下を抑制することができる。
【実施例4】
【0092】
次に、実施例4の腐食環境モニタリング装置1を説明する。なお、従来例の腐食環境モニタリング装置1の基本構成は、実施例4にも適用する。
【0093】
図8は、実施例4の腐食環境モニタリング装置1の(a)上面図、(b)A-A断面の側面図、及び(c)正面図である。
【0094】
実施例4の腐食環境モニタリング装置1は、実施例1の腐食環境モニタリング装置1に比較して、センシング金属薄膜3の開口部7側に被覆薄膜41が形成される点が相違する。
【0095】
実施例4の腐食環境モニタリング装置1では、実施例1の腐食環境モニタリング装置1に相違して、センシング金属薄膜3の開口部7側の、センシング金属薄膜3上に、被覆薄膜41が形成される。つまり、実施例4では、センシング金属薄膜3の開口部7側に、被覆薄膜41が形成される領域を有する。
【0096】
なお、被覆薄膜41は、ベース金属薄膜2と同様に、腐食性ガス10に対して腐食し難く、抵抗温度変化が小さい材料からなる。なお、被覆薄膜41は、腐食性ガス10が被覆薄膜41を透過し、その下部に形成されるセンシング金属薄膜3を腐食させない材料であれば、金属材料に限定されず、有機材料であってもよい。
【0097】
開口部7から侵入した腐食性ガス10の濃度流束は、センシング金属薄膜3の開口部7側の側面部(先端部)に集中するため、センシング金属薄膜3が腐食して、腐食生成物31が生成されるまでの時間が短くなり、被覆薄膜41が形成される領域は、この被覆薄膜41が形成される領域よりもガス通路8の奥行き側の領域に比較して、腐食生成物31が生成される領域の伸長速度が速くなる。
【0098】
これにより、実施例4によれば、暴露前から曝露後時刻Bまでの時間を短縮することができ、環境の腐食性のモニタリング初期における測定精度の低下を抑制することができる。
【実施例5】
【0099】
次に、実施例5の腐食環境モニタリング装置1を説明する。なお、従来例の腐食環境モニタリング装置1の基本構成は、実施例5にも適用する。
【0100】
図9は、実施例5の腐食環境モニタリング装置1の(a)上面図、(b)A-A断面の側面図、及び(c)正面図である。
【0101】
実施例5の腐食環境モニタリング装置1は、実施例1の腐食環境モニタリング装置1に比較して、センシング金属薄膜3の開口部7側における先端形状が相違する。
【0102】
実施例5の腐食環境モニタリング装置1では、実施例1の腐食環境モニタリング装置1に相違して、センシング金属薄膜3の開口部7側に、ガス通路8の奥行き側の領域(一定断面積領域)に比較して、センシング金属薄膜3の幅が狭い領域(図9(a)参照)を有する。つまり、ベース金属薄膜2上の一部領域に形成されるセンシング金属薄膜3には、その開口部7側に、ガス通路8の奥行き側の領域に比較して、センシング金属薄膜3の幅が狭い領域(先鋭部:センシング金属薄膜3の幅が、開口部7側からガス通路8の奥行き側に向けて、段階的に大きくなる領域)が形成される。
【0103】
なお、先鋭部は、センシング金属薄膜3の幅が、連続的に大きくなる領域であってもよい。
【0104】
先鋭部は、開口部7側からガス通路8の奥行き側に向けて、その断面積が増加する領域であり、センシング金属薄膜3の幅が、開口部7側からガス通路8の奥行き側に向けて、段階的に大きくなる領域である。先鋭部は、ガス通路8の奥行き側の領域に比較して、その断面積が小さい領域である。
【0105】
開口部7から侵入した腐食性ガス10の濃度流束は、センシング金属薄膜3の幅が狭い先鋭部に集中するため、センシング金属薄膜3が腐食して、腐食生成物31が生成されるまでの時間が短くなり、先鋭部は、この先鋭部よりもガス通路8の奥行き側の領域に比較して、腐食生成物31が生成される領域の伸長速度が速くなる。
【0106】
これにより、実施例5によれば、暴露前から曝露後時刻Bまでの時間を短縮することができ、環境の腐食性のモニタリング初期における測定精度の低下を抑制することができる。
【実施例6】
【0107】
次に、実施例6の腐食環境モニタリング装置1を説明する。なお、従来例の腐食環境モニタリング装置1の基本構成は、実施例6にも適用する。
【0108】
図10は、実施例6の腐食環境モニタリング装置1の(a)上面図、(b)A-A断面の側面図、及び(c)正面図である。
【0109】
実施例6の腐食環境モニタリング装置1は、実施例1の腐食環境モニタリング装置1に比較して、センシング金属薄膜3の開口部7側における先端部42の形状を有する点が相違する。
【0110】
実施例6の腐食環境モニタリング装置1では、実施例1の腐食環境モニタリング装置1に相違して、センシング金属薄膜3の開口部7側に、ガス通路8の奥行き側の領域(一定断面積領域)に比較して、ベース金属薄膜2及びセンシング金属薄膜3の幅が狭い領域(図10(a)参照)を有する。つまり、絶縁板4上の一部領域に形成されるベース金属薄膜2及びセンシング金属薄膜3には、その開口部7側に、ガス通路8の奥行き側の領域に比較して、ベース金属薄膜2及びセンシング金属薄膜3の幅が狭い領域(先端部42)が形成される。
【0111】
この先端部42は、絶縁板4上の一部領域に形成され、開口部7側のベース金属薄膜2及びセンシング金属薄膜3が切り欠かれ、形成される。なお、先端部42は、マスキングによるスパッタリングやマスキングによるエッチングに加え、機械的に切断することにより、形成することができる。
【0112】
先端部42は、ガス通路8の奥行き側の領域に比較して、その断面積が小さい領域である。
【0113】
実施例6では、先端部42は、ベース金属薄膜2及びセンシング金属薄膜3の幅が、ガス通路8の奥行き側の領域に比較して、連続的に大きくなる領域である。
【0114】
開口部7から侵入した腐食性ガス10の濃度流束は、先端部42に集中するため、センシング金属薄膜3が腐食して、腐食生成物31が生成されるまでの時間が短くなり、先端部42は、この先端部42よりもガス通路8の奥行き側の領域に比較して、腐食生成物31が生成される領域の伸長速度が速くなる。
【0115】
これにより、実施例6によれば、暴露前から曝露後時刻Bまでの時間を短縮することができ、電気抵抗が大きいベース金属の効果により、更に、環境の腐食性のモニタリング初期における測定精度の低下を抑制することができる。
【実施例7】
【0116】
次に、実施例7の腐食環境モニタリング装置1を説明する。なお、従来例の腐食環境モニタリング装置1の基本構成は、実施例7にも適用する。
【0117】
図11は、実施例7の腐食環境モニタリング装置1の(a)上面図、(b)A-A断面の側面図、及び(c)正面図である。
【0118】
実施例7の腐食環境モニタリング装置1は、実施例1の腐食環境モニタリング装置1に比較して、センシング金属薄膜3の開口部7側における先端部43の形状を有する点が相違する。
【0119】
実施例7の腐食環境モニタリング装置1では、実施例1の腐食環境モニタリング装置1に相違して、センシング金属薄膜3の開口部7側に、ガス通路8の奥行き側の領域(一定断面積領域)に比較して、ベース金属薄膜2及びセンシング金属薄膜3の幅が狭い領域(図11(a)参照)を有する。つまり、絶縁板4上の一部領域に形成されるベース金属薄膜2及びセンシング金属薄膜3には、その開口部7側に、ガス通路8の奥行き側の領域に比較して、ベース金属薄膜2及びセンシング金属薄膜3の幅が狭い領域(先端部43)が形成される。
【0120】
この先端部43は、絶縁板4上の一部領域に形成され、開口部7側のベース金属薄膜2及びセンシング金属薄膜3が切り欠かれ、形成される。なお、先端部43は、マスキングによるスパッタリングやマスキングによるエッチングに加え、機械的に切断することにより、形成することができる。
【0121】
先端部43は、ガス通路8の奥行き側の領域に比較して、その断面積が小さい領域である。
【0122】
実施例7では、先端部43は、ベース金属薄膜2及びセンシング金属薄膜3の幅が、ガス通路8の奥行き側の領域に比較して、段階的に大きくなる領域である。
【0123】
開口部7から侵入した腐食性ガス10の濃度流束は、先端部43に集中するため、センシング金属薄膜3が腐食して、腐食生成物31が生成されるまでの時間が短くなり、先端部43は、この先端部43よりもガス通路8の奥行き側の領域に比較して、腐食生成物31が生成される領域の伸長速度が速くなる。
【0124】
これにより、実施例7によれば、暴露前から曝露後時刻Bまでの時間を短縮することができ、電気抵抗が大きいベース金属の効果により、更に、環境の腐食性のモニタリング初期における測定精度の低下を抑制することができる。
【実施例8】
【0125】
次に、実施例8の腐食環境モニタリング装置1を説明する。なお、従来例の腐食環境モニタリング装置1の基本構成は、実施例8にも適用する。
【0126】
図12は、実施例の腐食環境モニタリング装置1の(a)上面図、(b)A-A断面の側面図、及び(c)正面図である。
【0127】
実施例8の腐食環境モニタリング装置1は、実施例1の腐食環境モニタリング装置1に比較して、筐体6の開口部7側における開放形状が相違する。
【0128】
実施例8の腐食環境モニタリング装置1では、実施例1の腐食環境モニタリング装置1に相違して、開口部7側の領域に形成されるガス通路8の高さ(断面積)が、ガス通路8の奥行き側の領域(一定断面積領域)に形成されるガス通路8の高さ(断面積)に比較して、ガス通路8の高さが高い(断面積が大きい)領域81(図12(c)参照)を有する。
【0129】
ガス通路8の高さが高い領域81は、ガス通路8の奥行き側の領域に比較して、その断面積が大きい領域である。
【0130】
実施例8では、ガス通路8の高さが高い領域81を形成するため、開口部7から侵入する腐食性ガス10の総量が増加し、腐食性ガス10が、開口部7側のセンシング金属薄膜3に集中する。このため、開口部7側のセンシング金属薄膜3が腐食して、ガス通路8の高さが高い領域81は、ガス通路8の奥行き側の領域に比較して、腐食生成物31が生成される領域の伸長速度が速くなる。
【0131】
実施例8では、ガス通路8の高さが高い領域81を形成するが、このガス通路8の高さが高い領域81は、開口部7側からガス通路8の奥行き側に向けて、その高さが、段階的に小さくなる領域であってもよく、連続的に小さくなる領域であってもよい。
【0132】
これにより、実施例8によれば、暴露前から曝露後時刻Bまでの時間を短縮することができ、環境の腐食性のモニタリング初期における測定精度の低下を抑制することができる。
【実施例9】
【0133】
次に、実施例の腐食環境モニタリング装置1を説明する。なお、従来例の腐食環境モニタリング装置1の基本構成は、実施例にも適用する。
【0134】
図13は、実施例9の腐食環境モニタリング装置1の(a)上面図、(b)A-A断面の側面図、及び(c)正面図である。
【0135】
実施例9の腐食環境モニタリング装置1は、実施例1の腐食環境モニタリング装置1に比較して、筐体6の開口部7側における開放形状が相違する。
【0136】
実施例9の腐食環境モニタリング装置1では、実施例1の腐食環境モニタリング装置1に相違して、開口部7側の領域に形成されるガス通路8の幅(断面積)が、ガス通路8の奥行き側の領域(一定断面積領域)に形成されるガス通路8の幅(断面積)に比較して、ガス通路8の幅が広い(断面積が大きい)領域91(図13(a)参照)を有する。
【0137】
ガス通路8の幅が広い領域91は、ガス通路8の奥行き側の領域に比較して、その断面積が大きい領域である。
【0138】
実施例9では、ガス通路8の幅が広い領域91を形成するため、開口部7から侵入する腐食性ガス10の総量が増加し、腐食性ガス10が、開口部7側のセンシング金属薄膜3に集中する。このため、開口部7側のセンシング金属薄膜3が腐食して、ガス通路8の幅が広い領域91は、ガス通路8の奥行き側の領域に比較して、腐食生成物31が生成される領域の伸長速度が速くなる。
【0139】
実施例9では、ガス通路8の幅が広い領域91を形成するが、このガス通路8の幅が広い領域91は、開口部7側からガス通路8の奥行き側に向けて、その幅が、段階的に小さくなる領域であってもよく、連続的に小さくなる領域であってもよい。
【0140】
これにより、実施例によれば、暴露前から曝露後時刻Bまでの時間を短縮することができ、環境の腐食性のモニタリング初期における測定精度の低下を抑制することができる。
【0141】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために、具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を有するものに限定されるものではない。
【0142】
また、ある実施例の構成の一部を、他の実施例の構成の一部に置換することもできる。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を追加することもできる。また、各実施例の構成の一部について、それを削除し、他の構成の一部を追加し、他の構成の一部と置換することもできる。
【符号の説明】
【0143】
1・・・腐食環境モニタリング装置、2・・・ベース金属薄膜、3・・・センシング金属薄膜、4・・・絶縁板、5・・・基板、6・・・筐体、7・・・開口部、8・・・ガス通路、9・・・引出電極、10・・・腐食性ガス、20・・・センサチップ、31・・・腐食生成物、41・・・被覆薄膜、42・・・先端部、43・・・先端部、81・・・ガス通路8の高さが高い領域、91・・・ガス通路8の幅が広い領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13