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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 43/20 20180101AFI20231212BHJP
   F21S 43/14 20180101ALI20231212BHJP
   F21V 5/04 20060101ALI20231212BHJP
   G02B 3/08 20060101ALI20231212BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20231212BHJP
   F21W 103/40 20180101ALN20231212BHJP
【FI】
F21S43/20
F21S43/14
F21V5/04 650
G02B3/08
F21Y115:10
F21W103:40
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020075946
(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公開番号】P2021174616
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】高本 裕貴
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0024871(US,A1)
【文献】特開2007-294434(JP,A)
【文献】特開2019-220408(JP,A)
【文献】特開2010-251013(JP,A)
【文献】特開2015-216056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 43/20
F21S 43/14
F21V 5/04
G02B 3/08
F21Y 115/10
F21W 103/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDからなる光源と、前記光源から出射した光が入射するフレネルレンズと、を備え、
前記フレネルレンズは、当該フレネルレンズのレンズ光軸の周りに同心状に形成される第1レンズカット、第2レンズカットおよび第3レンズカットを有し、
前記第1レンズカットは、前記レンズ光軸上に配置され、
前記第2レンズカットは、前記第1レンズカットの径方向外側に接続され、
前記第3レンズカットは、前記第2レンズカットの径方向外側に配置されており、
前記第1レンズカットは、当該第1レンズカットから出射された第1光を集光させた後に発散させ、被照明領域上に設定される仮想スクリーンの中央部に光度分布のピークをもつ第1配光パターンを生成するように、形成され、
前記第2レンズカットは、当該第2レンズカットから出射された第2光を集光させることで前記仮想スクリーンの前記中央部に光度分布のピークをもつ第2配光パターンを生成するように、形成され、
前記第3レンズカットは、当該第3レンズカットから出射された第3光を集光させることで、前記第1配光パターンの前記光度分布における両裾部に光度分布のピークをもつ第3配光パターンを前記仮想スクリーン上に生成するように、形成され、
前記第2配光パターンにおける前記光度分布のピークは、前記第1配光パターンにおける前記光度分布のピークの2倍以上であり、
前記第3配光パターンにおける前記光度分布のピークは、前記第1配光パターンにおける前記光度分布のピークと前記第2配光パターンにおける前記光度分布のピークとの間の大きさである
車両用灯具。
【請求項2】
前記フレネルレンズは、前記第3レンズカットの径方向外側に配置される第4レンズカットを有し、
前記第4レンズカットは、当該第4レンズカットから出射された第4光を集光させることで、前記第3配光パターンにおける前記光度分布のピークに重なるように光度分布のピークをもつ第4配光パターンを前記仮想スクリーン上に生成するように、形成される
請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記第1レンズカットおよび前記第2レンズカットの境界部分には徐変加工が施されている
請求項1または請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記第1配光パターンにおける前記光度分布を規定する第1曲線は、前記第2配光パターンにおける前記光度分布を規定する第2曲面よりもなだらかに変化する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、LEDから出射した光をフレネルレンズのレンズカットによって振り分けて所定の配光特性を実現させるようにした車両用灯具がある(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-294434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記車両用灯具では、LEDから射出された光のうち最も光度が高い光軸付近の成分を用いて光度分布のピークを形成するため、被照明領域上の仮想スクリーンに形成される配光パターンの中央部における光度が相対的に高くなり易く、配光設計がやり難いという課題があった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、所望の配光特性を容易に設計可能とする、車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に従えば、LEDからなる光源と、前記光源から出射した光が入射するフレネルレンズと、を備え、前記フレネルレンズは、当該フレネルレンズのレンズ光軸の周りに同心状に形成される第1レンズカット、第2レンズカットおよび第3レンズカットを有し、前記第1レンズカットは、前記レンズ光軸上に配置され、前記第2レンズカットは、前記第1レンズカットの径方向外側に接続され、前記第3レンズカットは、前記第2レンズカットの径方向外側に配置されており、前記第1レンズカットは、当該第1レンズカットから出射された第1光を集光させた後に発散させ、被照明領域上に設定される仮想スクリーンの中央部に光度分布のピークをもつ第1配光パターンを生成するように、形成され、前記第2レンズカットは、当該第2レンズカットから出射された第2光を集光させることで前記仮想スクリーンの前記中央部に光度分布のピークをもつ第2配光パターンを生成するように、形成され、前記第3レンズカットは、当該第3レンズカットから出射された第3光を集光させることで、前記第1配光パターンの前記光度分布における両裾部に光度分布のピークをもつ第3配光パターンを前記仮想スクリーン上に生成するように、形成され、前記第2配光パターンにおける前記光度分布のピークは、前記第1配光パターンにおける前記光度分布のピークの2倍以上であり、前記第3配光パターンにおける前記光度分布のピークは、前記第1配光パターンにおける前記光度分布のピークと前記第2配光パターンにおける前記光度分布のピークとの間の大きさである車両用灯具が提供される。
【0007】
また、上記車両用灯具において、前記フレネルレンズは、前記第3レンズカットの径方向外側に配置される第4レンズカットを有し、前記第4レンズカットは、当該第4レンズカットから出射された第4光を集光させることで、前記第3配光パターンにおける前記光度分布のピークに重なるように光度分布のピークをもつ第4配光パターンを前記仮想スクリーン上に生成するように、形成されてもよい。
【0008】
また、上記車両用灯具において、前記第1レンズカットおよび前記第2レンズカットの境界部分には徐変加工が施されてもよい。
【0009】
また、上記車両用灯具において、前記第1配光パターンにおける前記光度分布のピークは第1曲面で規定され、前記第2配光パターンにおける前記光度分布のピークは第2曲面で規定され、前記第1曲面は、前記第2曲面よりもなだらかな曲面であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、所望の特性を得る配光設計を容易に実現できる、車両用灯具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】車両用灯具の側断面図である。
図2】リアフォグランプの配光規格を説明するための図である。
図3】光源から出射される光の光度分布を示した図である。
図4】フレネルレンズの正面図である。
図5図4のA-A線矢視によるフレネルレンズの断面図である。
図6】フレネルレンズを透過した光の光度分布を示した図である。
図7】各光の光度分布を合成した合成光度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態である車両用灯具について図面を参照しながら説明する。
以下の説明で用いる図面は、特徴を分かり易くするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。本実施形態の車両用灯具は、車両の後端側の両コーナー部の下方に搭載されるリアフォグランプに本発明を適用したものである。
【0013】
以下に示す図面では、XYZ直交座標系を設定して各部材の構成を説明する。X軸方向は車両用灯具が取り付けられる車両の左右方向に相当し、Y軸方向は車両の上下方向に相当し、Z軸方向は車両の前後方向に相当する。
【0014】
図1は本実施形態の車両用灯具の側断面図である。図1に示すように、本実施形態の車両用灯具1は、ハウジング2に保持された光源3と、フレネルレンズ4と、エクステンション5と、レンズカバー(アウターレンズ)6とを備えている。車両用灯具1は、車両100のリアバンパー101に取り付けられる。
【0015】
光源3は、赤色光(以下、単に「光」という。)Lを出射するLEDで構成される。フレネルレンズ4は、例えばポリカーボネイトやアクリル等の透明樹脂やガラスなど、空気よりも屈折率の高い光透過性部材からなる。
【0016】
エクステンション5は、遮光性を有する黒色の樹脂からなる。エクステンション5は、フレネルレンズ4の光出射側を外方に臨ませる開口部5aを有している。また、エクステンション5は、フレネルレンズ4の光出射側を除く部分を覆う構成となっている。レンズカバー6は、例えばポリカーボネイトやアクリル等の透明樹脂やガラスなどの光透過性部材で構成される。
【0017】
リアフォグランプとして用いられる本実施形態の車両用灯具1は所定の配光規格を満たす必要がある。
図2はリアフォグランプの配光規格を説明するための図である。図2において、「H」はリアフォグランプの前方に設けられた仮想スクリーン内における水平線を示しており、「V」はリアフォグランプの主光軸線と交差する鉛直線を示している。「5°U」は水平線Hより5°上向きを示しており、「5°D」は水平線Hより5°下向きを示している。「10°R」はリアフォグランプの主光軸線方向より10°右向きを示しており、「10°L」はリアフォグランプの主光軸線方向より10°左向きを示している。
【0018】
リアフォグランプの配光規格では、図2中の線HV上の光度が150cd以上になり、図2中の線VL上の光度が150cd以上になるように規定されている。また、図2中の破線の内側の部分の光度が75cd以上かつ300cd以下になるように規定されている。リアフォグランプの配光規格では、鉛直線Vに沿う垂直方向に比べて水平線Hに沿う水平方向の角度範囲の方が広い。
【0019】
LEDからなる本実施形態の光源3は指向性の高い光Lを出射する。ここで、光源3から出射される光の光度分布について説明する。
図3は光源3から出射される光の光度分布を示した図である。図3において、横軸は光源3の光軸となす角度を示しており、縦軸は光源3から出射された光の光度の百分率を示している。具体的に図3は、光源3の光軸上の光度を100%とした場合における光源3の光軸となす角度と光度との関係を示している。
【0020】
図3に示すように、光源3は光軸となす角度が大きくなるに従って光度が急激に低下する特性(指向性)を有している。そのため、本実施形態の光源3は、光軸3Cとなす角度が大きくなるに従って光度が急激に低下する特性を有する光Lを出射する(図1参照)。
【0021】
つまり、本実施形態の車両用灯具1において、光軸3Cと小さい角度をなして光源3から出射された光(光軸近傍の光)は、光軸3Cに対してより大きい角度をなして光源3から出射された光(光軸から離間した光)よりも高い光度を有する。
【0022】
ここで、例えば、光源3から出射した光のうちの光軸近傍における比較的光度の高い成分をリアフォグランプの配光パターンの光度分布のピーク強度として利用したとする。このとき、光度分布のピーク強度が図2に示したリアフォグランプの配光規格の上限を超えてしまうおそれがあり、配光設計が困難となる。
【0023】
これに対して、本実施形態の車両用灯具1では、光源3から出射される指向性の高い光Lをフレネルレンズ4の各レンズカットで屈折させることで複数の配光パターンに振り分けて、上述したリアフォグランプの配光規格(図2参照)を満足する所定の配光パターンを形成することが可能である。
【0024】
図4はフレネルレンズ4を正面側(+Z側)から視た図である。図5図4のA-A線矢視によるフレネルレンズ4の断面図である。図5中におけるA-A線による断面はフレネルレンズ4の左右方向に沿うXZ面に平行な水平面内の断面に相当する。なお、図5中では、フレネルレンズ4と光源との位置関係を示すため、光源3および光源3から出射される光Lも図示している。
【0025】
図4および図5に示すように、フレネルレンズ4は、第1レンズカット11と、第2レンズカット12と、第3レンズカット13と、第4レンズカット14と、を有する。第1レンズカット11、第2レンズカット12、第3レンズカット13および第4レンズカット14はフレネルレンズ4の光出射側の面に形成されている。フレネルレンズ4における光出射側と反対の面は平面で構成されている。
【0026】
第1レンズカット11、第2レンズカット12、第3レンズカット13および第4レンズカット14は、フレネルレンズ4の中心を通るレンズ光軸4Cの周りに同心状に形成される。第1レンズカット11の平面形状は円形であり、第2レンズカット12、第3レンズカット13および第4レンズカット14の平面形状はそれぞれリング状である。
【0027】
本実施形態のフレネルレンズ4において、第1レンズカット11、第2レンズカット12、第3レンズカット13および第4レンズカット14の各断面はレンズ光軸4Cの周方向において共通の形状を有している。
【0028】
第1レンズカット11は、レンズ光軸4C上に配置される。第1レンズカット11は光源3から出射された光Lの一部である第1光L1を屈折させることで被照明領域に設定される仮想スクリーン上に所定の配光パターンを生成する。
【0029】
以下、レンズ光軸4Cに直交する方向を「径方向」と称し、径方向においてレンズ光軸4Cに近づく方向を「径方向内側」、径方向においてレンズ光軸4Cから遠ざかる方向を「径方向外側」と称す。
【0030】
第2レンズカット12は第1レンズカット11の径方向外側に接続されている。第2レンズカット12は光源3から出射された光Lの一部である第2光L2を屈折させることで被照明領域に設定される仮想スクリーン上に所定の配光パターンを生成する。
【0031】
第3レンズカット13は、第2レンズカット12の径方向外側に配置されている。第3レンズカット13は光源3から出射された光Lの一部である第3光L3を屈折させることで被照明領域に設定される仮想スクリーン上に所定の配光パターンを生成する。
【0032】
第4レンズカット14は、第3レンズカット13の径方向外側に配置されている。第4レンズカット14は光源3から出射された光Lの一部である第4光L4を屈折させることで被照明領域に設定される仮想スクリーン上に所定の配光パターンを生成する。
【0033】
図5に示すようにフレネルレンズ4は、レンズ光軸4Cと光源3の光軸3Cとを一致させるように、光源3に対して配置される。本実施形態において、車両用灯具1の主光軸線1Cはレンズ光軸4Cおよび光軸3Cに一致する。なお、車両用灯具1の主光軸線1Cとは、車両用灯具1から出射される光の主光線が通る軸であり、仮想スクリーンの中心を通る軸に相当する。
【0034】
図6および図7図5に示すフレネルレンズ4を透過した光の光度分布を示す図である。具体的に図6はフレネルレンズ4で振り分けられた各光による配光パターンの光度分布を示した図である。図7は各配光パターンLP1~LP4を合成した合成光度分布LGを示す図である。
【0035】
図6および図7において、縦軸は光度を示しており、横軸は仮想スクリーンの中心を通る車両用灯具1の主光軸線1Cに対する水平方向の角度(以下、水平線上角度と称す)を示している。例えば、図5および図6における水平線上角度0°の光度とは、仮想スクリーン内における車両用灯具1の主光軸線1C上の光度に相当する。
【0036】
図5に示すように光源3から射出された光Lのうちの第1光L1はフレネルレンズ4の第1レンズカット11に入射する。第1光L1は、光源3から出射された光Lのうち光軸3Cに対する角度範囲が小さい光である。第1光L1は光軸3Cに対してなす角度が例えば、±17.5度の範囲内の光線を含む。
第1光L1は、光軸3Cに対してより大きい角度をなして光源3から出射された他の光(第2光L2、第3光L3および第4光L4)に比べて非常に高い光度を有する(図3参照)。
【0037】
本実施形態の第1レンズカット11は、当該第1レンズカット11から出射された第1光L1を集光させた後に発散させ、仮想スクリーンの中央部に光度分布のピークをもつ第1配光パターンLP1(図6参照)を生成するように、形成される。ここで、仮想スクリーンの中央部とは、仮想スクリーンの中心を通る車両用灯具1の主光軸線1C上のみならず、主光軸線1Cから所定距離だけ離れた周辺部分を含んだ領域を意味する。
【0038】
第1レンズカット11は凸状の第1レンズ面11aを有する。第1レンズ面11aは比較的大きな曲率を有する。第1レンズカット11は、第1光L1を屈折させることで集光させた後、仮想スクリーン上において第1光L1を発散させた状態で照射する。
【0039】
第1レンズカット11は、仮想スクリーン上において車両用灯具1の主光軸線1Cに対して、例えば、上下左右0~9°の角度をなす方向に拡げるように第1光L1を発散させる。これにより、仮想スクリーン上には、発散された状態(デフォーカス状態)で照射された第1光L1によって図6に示す第1配光パターンLP1が形成される。
【0040】
図6に示すように、第1配光パターンLP1の光度分布LD1は、仮想スクリーンの中央部にピークP1を有する。第1配光パターンLP1は、上述のように発散された状態の第1光L1によって形成されるため、水平線上角度±9°の範囲でなだらかな傾斜をもつ光度分布LD1を有する。よって、第1配光パターンLP1の光度分布LD1のピークP1は、高光度の第1光L1を拡散させずに第1配光パターンLP1を生成した場合の光度分布ピークの大きさに比べて十分低く抑えられる。本実施形態において、第1配光パターンLP1の光度分布LD1のピークP1は、例えば53cd程度に抑えられる。
【0041】
図5に示すように光源3から射出された光Lのうちの第2光L2はフレネルレンズ4の第2レンズカット12に入射する。本実施形態において、第2光L2は、第1光L1に比べて、光軸3Cに対してより大きい角度をなして光源3から出射された光である。そのため、第2光L2の光度は第1光L1の光度よりも低くなる(図3参照)。
【0042】
本実施形態の第2レンズカット12は、当該第2レンズカット12から出射された第2光L2を集光させることで仮想スクリーンの中央部に光度分布のピークをもつ第2配光パターンLP2(図6参照)を生成するように、形成される。
【0043】
第2レンズカット12は、第1レンズカット11の第1レンズ面11aを径方向外側において同心円状に囲む第2レンズ面12aを有する。第2レンズ面12aは第1レンズカット11の第1レンズ面11aよりも大きい曲率を有する。第2レンズカット12は、第2光L2を第1光L1よりも緩やかに屈折させることで集光させる。第2レンズカット12は、仮想スクリーン上において車両用灯具1の主光軸線1Cに対して上下左右0~10°の角度をなす範囲に拡がるように第2光L2を集光させる。これにより、仮想スクリーン上には、集光状態で照射された第2光L2によって図6に示す第2配光パターンLP2が形成される。
【0044】
図6に示すように、第2配光パターンLP2の光度分布LD2は、仮想スクリーンの中央部にピークP2を有する。第2配光パターンLP2は、上述のように第1光L1よりも光度が低いものの、第2光L2を集光させて生成されるため、第2配光パターンLP2の光度分布LD2のピークP2は第1配光パターンLP1の光度分布LD1のピークP1よりも十分に大きくなる。
【0045】
本実施形態のフレネルレンズ4において、第1レンズカット11および第2レンズカット12は、第2配光パターンLP2における光度分布LD2のピークP2が第1配光パターンLP1における光度分布LD1のピークP1の2倍以上となるように、形成される。本実施形態において、第2配光パターンLP2の光度分布LD2のピークP2は第1配光パターンLP1の光度分布LD1のピークP1の2倍以上である、例えば150cd程度となる。
【0046】
図5に示すように、本実施形態のフレネルレンズ4において、第1配光パターンLP1における光度分布LD1を規定する第1曲線C1は、第2配光パターンLP2における光度分布LD2を規定する第2曲線C2よりもなだらかに変化する。すなわち、本実施形態のフレネルレンズ4によれば、第1配光パターンLP1における光度分布LD1が第2配光パターンLP2に比べてよりなだらかな曲線(第1曲線C1)で規定されるので、光度の高い第1光L1を上下左右の広範囲に振り分けることができる。よって、第1配光パターンLP1は上下左右の広範囲に亘って均一な光度分布を有する。
【0047】
また、本実施形態のフレネルレンズ4において、第1レンズカット11および第2レンズカット12における図5に示す境界部分20には徐変加工が施されている。境界部分20は徐変加工によって表面の曲率が連続的に変化している。そのため、第1レンズカット11の第1レンズ面11aと第2レンズカット12の第2レンズ面12aとを滑らかに接続することができる。これにより、第1レンズカット11および第2レンズカット12の境界部分20において、比較的高い光度の第1光L1および第2光L2が乱反射されてしまうことによる光損失の低下を回避できる。
【0048】
図5に示すように光源3から射出された光Lのうちの第3光L3はフレネルレンズ4の第3レンズカット13に入射する。本実施形態において、第3光L3は、第1光L1に比べて、光軸3Cに対してより大きい角度をなして光源3から出射された光である。そのため、第3光L3の光度は第1光L1の光度よりもかなり低くなる(図3参照)。
【0049】
本実施形態の第3レンズカット13は、当該第3レンズカット13から出射された第3光L3を集光させることで、第1配光パターンLP1の光度分布LD1における両方の裾部(両裾部)に光度分布のピークをもつ第3配光パターンLP3(図6参照)を仮想スクリーン上に生成するように、形成される。また、第3レンズカット13は、第2配光パターンLP2の光度分布LD2の両裾部に光度分布のピークをもつ第3配光パターンLP3を仮想スクリーン上に生成するように、形成される。
【0050】
具体的に第3レンズカット13は、第2レンズカット12の第2レンズ面12aを径方向外側において同心円状に囲む第3レンズ面13aを有する。第3レンズ面13aは鋸歯状の断面形状を有する。第3レンズカット13は、仮想スクリーン上において車両用灯具1の主光軸線1Cに対して、例えば、上下左右8~12°の角度をなす範囲に拡がるように第3光L3を集光させる。なお、第3レンズ面13aにおける径方向内側の角部をR面取りし、該R面取り部分によって仮想スクリーン上の中央部(主光軸線1Cに対して上下左右0度から8度の角度をなす範囲)に第3光L3の一部を振り分けてもよい。
【0051】
第3レンズカット13を透過した第3光L3は、第1レンズカット11を透過した第1光L1の中心(第1配光パターンLP1における光度分布LD1の中心)に向かわず、第1レンズカット11を透過した第1光L1の外縁(光度分布LD1の外縁)に向かうようにして集光される。また、第3レンズカット13を透過した第3光L3は、第2レンズカット12を透過した第2光L2の外縁(第2配光パターンLP2における光度分布LD2の外縁)に向かうようにして集光される。
【0052】
これにより、仮想スクリーン上には、集光状態で照射された第3光L3によって図6に示す第3配光パターンLP3が形成される。
図6に示すように、第3配光パターンLP3は、仮想スクリーン上において、光度分布LD1および光度分布LD2の両裾部に光度分布LD3のピークP3を有する。光度分布LD3のピークP3は、第1配光パターンLP1における光度分布LD1のピークP1と第2配光パターンLP2における光度分布LD2のピークP2との間の大きさである。
【0053】
図5に示すように光源3から射出された光Lのうちの第4光L4はフレネルレンズ4の第4レンズカット14に入射する。本実施形態において、第4光L4は、第3光L3に比べて、光軸3Cに対してより大きい角度をなして光源3から出射された光である。そのため、第4光L4の光度は第3光L3の光度よりもさらに低くなる(図3参照)。
【0054】
本実施形態の第4レンズカット14は、当該第4レンズカット14から出射された第4光L4を集光させることで、第3配光パターンLP3における光度分布LD3のピークP3に重なるように光度分布のピークをもつ第4配光パターンLP4(図6参照)を生成するように、形成される。
【0055】
具体的に第4レンズカット14は、第3レンズカット13の第3レンズ面13aを同心円状に囲む第4レンズ面14aを有する。第4レンズ面14aは鋸歯状の断面形状を有する。第4レンズカット14は第3レンズカット13よりも集光度合いが大きい。ここで、集光度合いとは、レンズカットを透過した光がこのレンズ材料の有する屈折率及びこのレンズカットの形状によって定まる屈折量によって集光される割合を意味する。
【0056】
第4レンズカット14は、仮想スクリーン上において車両用灯具1の主光軸線1Cに対して、例えば、上下左右10~12°の角度をなす範囲に拡がるように第4光L4を集光させる。第4レンズカット14を透過した第4光L4は、第1レンズカット11を透過した第1光L1の中心(第1配光パターンLP1における光度分布LD1の中心)に向かわず、第1レンズカット11を透過した第1光L1の外縁(光度分布LD1の外縁)に向かうようにして集光される。また、第4レンズカット14を透過した第4光L4は、第2レンズカット12を透過した第2光L2の外縁(第2配光パターンLP2における光度分布LD2の外縁)に向かうようにして集光される。
【0057】
これにより、仮想スクリーン上には、集光状態で照射された第4光L4によって図6に示す第4配光パターンLP4が形成される。第4配光パターンLP4は、仮想スクリーン上において、光度分布LD1および光度分布LD2の両裾部に光度分布LD4のピークP4を有する。
【0058】
本実施形態のフレネルレンズ4において、第3レンズカット13および第4レンズカット14は、第3レンズカット13を透過した第3光L3と第4レンズカット14を透過した第4光L4とが交差するように形成される。
【0059】
より具体的に、本実施形態のフレネルレンズ4において、第4レンズカット14を透過した第4光L4の外縁が第3レンズカット13を透過した第3光L3の外縁の内側に含まれる、すなわち、図6に示すように、第4配光パターンLP4の光度分布LD4が第3配光パターンLP3の光度分布LD3に含まれるように、第3レンズカット13および第4レンズカット14が形成されている。
【0060】
本実施形態の車両用灯具1によれば、図7に示すように、仮想スクリーン上において、フレネルレンズ4の各レンズカット11~14によって生成される第1配光パターンLP1~第4配光パターンLP4を重ね合わせた合成配光パターンLLを生成できる。
【0061】
合成配光パターンLLの光度分布LDの中央部は、高光度の第1光L1を拡散させることでピーク光度を抑えた第1配光パターンLP1と、第1光L1よりも低い光度をもつ第2光L2を集光させることで第1配光パターンLP1の2倍以上のピーク光度を有する第2配光パターンLP2とを主に重ね合わせて構成される。よって、本実施形態の合成配光パターンLLによれば、高光度の第1光L1を拡散させずに配光設計する場合のように、中央部における光度が必要以上に高くなってしまうことを回避できる。よって、本実施形態の車両用灯具1における配光設計は容易なものとなる。
また、広範囲に均一な光度分布を有する第1配光パターンLP1を用いることで、合成配光パターンLLの光度分布LDの均一性を高めることができる。
【0062】
第1配光パターンLP1および第2配光パターンLP2の外縁部における光度は中央部に比べて低い。そのため、第1配光パターンLP1および第2配光パターンLP2のみを重ね合わせた合成配光パターンは外縁部における光度が相対的に低くなってしまう。これに対し、本実施形態の合成配光パターンLLの光度分布LDは、第1配光パターンLP1および第2配光パターンLP2の外縁部(両裾部)にピークを有する第3配光パターンLP3および第4配光パターンLP4を第1配光パターンLP1および第2配光パターンLP2に重ね合わせて構成される。よって、本実施形態の合成配光パターンLLによれば、外縁部における光度が不足することを回避できる。
【0063】
本実施形態の合成配光パターンLLによれば、水平線上角度±12°の範囲において、リアフォグランプの配光規格を満たす均一な光度を有する光度分布LDを実現できる。つまり、本実施形態の車両用灯具1は、リアフォグランプの配光規格に対して、水平方向において±2°の余裕度を有している。そのため、本実施形態の車両用灯具1は、車両100に対する正規の取り付け位置に対して±2°の余裕があるため、取り付け時に2°程度のズレが生じたとしても水平方向において規格内の光度分布を実現できる。
【0064】
ここで、図2に示したようにリアフォグランプの配光規格では垂直方向より水平方向の角度範囲の方が広い。本実施形態の車両用灯具1は上述のように水平線方向においてリアフォグランプの配光規格を満たすため、垂直方向においてもリアフォグランプの配光規格を満たすことができる。
【0065】
以上のように本実施形態の車両用灯具1によれば、所望の特性(リアフォグランプの配光規格を満たす特性)を得る配光設計を比較的容易に実現できる。
【0066】
本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態において、フレネルレンズ4は4つのレンズカット(第1レンズカット11~第4レンズカット14)を用いてリアフォグランプの配光規格を満たす構成を実現する場合を例に挙げた。しかし、第4レンズカットは、部品公差からくる光源とレンズの位置のズレをカバーするために好適な構成ではあるものの配光全体に対して必須の構成要素ではないため、3つのレンズカット(第1レンズカット11~第3レンズカット13)を用いてリアフォグランプの配光規格を満たす構成を実現してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1…車両用灯具、3…光源、3C…光軸、4…フレネルレンズ、4C…レンズ光軸、11…第1レンズカット、12…第2レンズカット、13…第3レンズカット、14…第4レンズカット、20…境界部分、100…車両、L1…第1光、L2…第2光、L3…第3光、L4…第4光、LD,LD1,LD2,LD3,LD4…光度分布、LP1…第1配光パターン、LP2…第2配光パターン、LP3…第3配光パターン、LP4…第4配光パターン、P1,P2,P3,P4…ピーク(光度分布のピーク)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7