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特許7401391トンネル工事におけるロックボルトの設置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】トンネル工事におけるロックボルトの設置方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 20/00 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
E21D20/00 W
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020087969
(22)【出願日】2020-05-20
(65)【公開番号】P2021181724
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】三河内 永康
(72)【発明者】
【氏名】末松 幸人
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-108546(JP,A)
【文献】実開昭54-115705(JP,U)
【文献】特開2017-158309(JP,A)
【文献】実開昭63-162000(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2003/0026664(US,A1)
【文献】特表昭57-500254(JP,A)
【文献】特開2000-230400(JP,A)
【文献】特開昭63-55298(JP,A)
【文献】特開2005-314993(JP,A)
【文献】特開2019-167774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削された地山内面にコンクリートを吹き付け、
前記コンクリートの上から前記地山内面に複数の孔を削孔してそれら孔にモルタルなどの定着材を注入し、
前記各孔にロックボルトを挿入し、前記コンクリートから突出する前記ロックボルトの基部を、ベアリングプレートのロックボルト挿通孔に挿通し、
前記ベアリングプレートを前記ロックボルトを介して前記コンクリートの表面に押し付けるようにしたトンネル工事におけるロックボルトの設置方法であって、
前記ロックボルトの基部に取り付け部を形成すると共に、前記取り付け部にワンタッチで取り付け可能で前記取り付け部に取り付けられた状態で前記ロックボルト挿通孔の周囲の前記ベアリングプレートの箇所に係止可能なワンタッチ式固定具を用意し、
前記コンクリートとして硬化時に体積が膨張する発泡コンクリートを用い、
前記発泡コンクリートの前記地山内面への吹き付け後、前記発泡コンクリートの半硬化状態で前記発泡コンクリートの上から前記地山内面に複数の孔を削孔してそれら孔に前記定着材を注入し、前記各孔に前記ロックボルトを挿入し、
前記発泡コンクリートから突出する前記ロックボルトの基部を前記ベアリングプレートのロックボルト挿通孔に挿通し、
前記ベアリングプレートの一方の側面を半硬化状態の前記発泡コンクリートの表面に位置させ、前記ベアリングプレートの他方の側面が位置する前記ロックボルトの基部の取り付け部にワンタッチ式固定具を取り付け、前記ワンタッチ式固定具により前記ベアリングプレートの前記発泡コンクリートの表面から離れる方向への移動を阻止するようにした、
ことを特徴とするトンネル工事におけるロックボルトの設置方法。
【請求項2】
前記取り付け部は、前記ロックボルトの前記基部に貫通形成された貫通孔であり、
前記ワンタッチ式固定具は、前記貫通孔に挿通され係止される割りピンである、
ことを特徴とする請求項1記載のトンネル工事におけるロックボルトの設置方法。
【請求項3】
前記取り付け部は、前記ロックボルトの前記基部に貫通形成された貫通孔であり、
前記ワンタッチ式固定具は、前記貫通孔に押し込まれて係止するテーパピンである、
ことを特徴とする請求項1記載のトンネル工事におけるロックボルトの設置方法。
【請求項4】
前記取り付け部は、前記ロックボルトの前記基部の外周部に形成された環状溝であり、
前記ワンタッチ式固定具は、前記環状溝に装着されるスナップリングである、
ことを特徴とする請求項1記載のトンネル工事におけるロックボルトの設置方法。
【請求項5】
前記取り付け部は、前記ロックボルトの前記基部の外周部に形成された環状溝であり、
前記ワンタッチ式固定具は、前記環状溝に装着される結束バンドである、
ことを特徴とする請求項1記載のトンネル工事におけるロックボルトの設置方法。
【請求項6】
前記取り付け部は前記ロックボルトの基部の延在方向に間隔をおいて複数設けられている、
ことを特徴とする請求項1~5の何れか1項記載のトンネル工事におけるロックボルトの設置方法。
【請求項7】
前記ロックボルトの基部に目印が設けられ、
前記孔に前記ロックボルトを挿入する際に、前記目印が前記発泡コンクリートの表面に位置するまで挿入される、
ことを特徴とする請求項1~5の何れか1項記載のトンネル工事におけるロックボルトの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトンネル工事におけるロックボルトの設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
NATM工法で掘削される山岳トンネルのトンネル工事では、図10(A)に示すように、地山の掘削後、掘削されることで形成された地山内面50に、落盤しないようにコンクリートC1が吹き付けられる。
その後、トンネルの周方向および長手方向に間隔をおいた複数箇所において、硬化状態のコンクリートC1の上から地山内面50に孔52が削孔され、各孔52にモルタルなどの定着材が注入される。
次に、各孔52にロックボルト54が挿入され、コンクリートC1から突出するロックボルト54の基部が、角型プレートや丸型プレートなどからなる鋼板製のベアリングプレート56のロックボルト挿通孔5602に挿通される。
そして、このベアリングプレート56をコンクリートC1の表面に当て付け、ロックボルト54の基部の雄ねじにナット58を螺合し、ナット58を締結してベアリングプレート56をコンクリートC1の表面に押し付けることで各ロックボルト54の設置作業が終了し、岩盤の固定化、安定化が図られる。
その後、図10(B)に示すように、必要に応じて地山の水がトンネル内に侵入しないようにコンクリートC1の表面に防水シートが敷設され、この防水シートに対向させてコンクリート打設型枠が配置され、防水シートとコンクリート打設型枠の型枠面との間にコンクリートC2が打設されて覆工コンクリートが行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-167774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、トンネル工事の支保工のうちロックボルト工では、ロックボルト54の基部の雄ねじにナット58を螺合し、ナット58を回転させてベアリングプレート56をコンクリートC1の表面に押し付ける作業は、作業員が足場に乗って行なうことから無理な姿勢となる場合が多く、手間取る作業となっている。
また、ナット58を回転させる作業であるため時間が掛り、コンクリートC1が吹き付けられた岩盤付近に長時間いなければならないため、危険性を伴う作業となっている。
特に、トンネル断面が大きく、トンネルの長さが大きくなると、ロックボルト54の本数は数千、数万本の単位となり、ナット58の締結作業に多くの時間を要し、危険性も増大し、トンネル工事の施工期間を短縮化し、コストダウンを図る観点から何らかの改善が望まれていた。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、ナットの締結作業を省略し、ワンタッチでベアリングプレートをコンクリートの表面に押し付けることができ、危険性を減少する上で有利となり、トンネル工事の施工期間を短縮し、コストダウンを図る上で有利なトンネル工事におけるロックボルトの設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明は、掘削された地山内面にコンクリートを吹き付け、前記コンクリートの上から前記地山内面に複数の孔を削孔してそれら孔にモルタルなどの定着材を注入し、前記各孔にロックボルトを挿入し、前記コンクリートから突出する前記ロックボルトの基部を、ベアリングプレートのロックボルト挿通孔に挿通し、前記ベアリングプレートを前記ロックボルトを介して前記コンクリートの表面に押し付けるようにしたトンネル工事におけるロックボルトの設置方法であって、前記ロックボルトの基部に取り付け部を形成すると共に、前記取り付け部にワンタッチで取り付け可能で前記取り付け部に取り付けられた状態で前記ロックボルト挿通孔の周囲の前記ベアリングプレートの箇所に係止可能なワンタッチ式固定具を用意し、前記コンクリートとして硬化時に体積が膨張する発泡コンクリートを用い、前記発泡コンクリートの前記地山内面への吹き付け後、前記発泡コンクリートの半硬化状態で前記発泡コンクリートの上から前記地山内面に複数の孔を削孔してそれら孔に前記定着材を注入し、前記各孔に前記ロックボルトを挿入し、前記発泡コンクリートから突出する前記ロックボルトの基部を前記ベアリングプレートのロックボルト挿通孔に挿通し、前記ベアリングプレートの一方の側面を半硬化状態の前記発泡コンクリートの表面に位置させ、前記ベアリングプレートの他方の側面が位置する前記ロックボルトの基部の取り付け部にワンタッチ式固定具を取り付け、前記ワンタッチ式固定具により前記ベアリングプレートの前記発泡コンクリートの表面から離れる方向への移動を阻止するようにしたことを特徴とする。
また、本発明は、前記取り付け部は、前記ロックボルトの前記基部に貫通形成された貫通孔であり、前記ワンタッチ式固定具は、前記貫通孔に挿通され係止される割りピンであることを特徴とする。
また、本発明は、前記取り付け部は、前記ロックボルトの前記基部に貫通形成された貫通孔であり、前記ワンタッチ式固定具は、前記貫通孔に押し込まれて係止するテーパピンであることを特徴とする。
また、本発明は、前記取り付け部は、前記ロックボルトの前記基部の外周部に形成された環状溝であり、前記ワンタッチ式固定具は、前記環状溝に装着されるスナップリングであることを特徴とする。
また、本発明は、前記取り付け部は、前記ロックボルトの前記基部の外周部に形成された環状溝であり、前記ワンタッチ式固定具は、前記環状溝に装着される結束バンドであることを特徴とする。
また、本発明は、前記取り付け部は前記ロックボルトの基部の延在方向に間隔をおいて複数設けられていることを特徴とする。
また、本発明は、前記ロックボルトの基部に目印が設けられ、前記孔に前記ロックボルトを挿入する際に、前記目印が前記発泡コンクリートの表面に位置するまで挿入されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来のナットを回転していく手間取る作業を省略でき、取り付け部にワンタッチ式固定具を取り付けるというワンタッチ作業で済むため、ロックボルトの設置作業の効率化を図る上で有利となる。
また、ロックボルトの設置作業を短時間で行なうことができることから、トンネル工事の支保工工事では、コンクリートが吹き付けられた岩盤付近に短時間いれば足り、危険性を減少する上で有利となる。
また、短時間で地山を支保できるため、地山を早期に安定させる上で有利となる。
特に、トンネル断面が大きく、トンネルの長さが大きくなり、ロックボルトの本数が数千、数万本の単位となった場合でも、ロックボルトの設置作業に要する時間を大幅に短縮でき、トンネル工事の施工期間を短縮化し、コストダウンを図る上で有利となる。
また、本発明のワンタッチ式固定具として、割りピン、テーパピン、スナップリング、結束バンドを使用可能であり、それらは簡単に入手できる市販品で安価であるため、トンネル工事のコストダウンを図る上で有利となる。
また、本発明では、地山内面に吹付けるコンクリートとして硬化時に体積が膨張する発泡コンクリートを用いるので、ベアリングプレートとワンタッチ式固定具との間に若干の隙間が介在していても、ロックボルトの設置作業を行なえることから、取り付け部をロックボルトの基部の延在方向に間隔をおいて複数設けると、ロックボルトの設置作業を簡単に行なう上で有利となる。
また、取り付け部をロックボルトの基部の長手方向に間隔をおいて複数設けると、1本のロックボルトを、地山に削孔される深さの異なる孔に共通して利用でき、コストダウンを図る上で有利となる。
また、ロックボルトの基部の外周面に目印を設けると、地山内面に削孔した孔へのロックボルトの挿入を簡単に迅速に行なえ、また、ロックボルトの固定を確実に行なう上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施の形態のロックボルトの設置方法で用いるロックボルトの基部の側面図である。
図2】第1の実施の形態のロックボルトの設置方法でワンタッチ式固定具として用いる割りピンの正面図である。
図3】第1の実施の形態のロックボルトの設置方法の説明図で、削孔された孔にロックボルトを挿入し、ベアリングプレートのロックボルト挿通孔にロックボルトの基部を挿通させ、貫通孔に割りピンを挿入した状態の図である。
図4図3のX矢印から見た図で、割りピンの脚部を開いた状態の説明図である。
図5】第1の実施の形態のロックボルトの設置方法の説明図である。
図6】第1の実施の形態のロックボルトの設置方法で用いるロックボルトの基部の他の変形例の側面図である。
図7】第2の実施の形態のロックボルトの設置方法の説明図で、削孔された孔にロックボルトを挿入し、ベアリングプレートのロックボルト挿通孔にロックボルトの基部を挿通させ、貫通孔にテーパピンを挿入した状態の図である。
図8】第3の実施の形態のロックボルトの設置方法の説明図で、削孔された孔にロックボルトを挿入し、ベアリングプレートのロックボルト挿通孔にロックボルトの基部を挿通させ、環状溝にスナップリングを装着した状態の図である。
図9】第4の実施の形態のロックボルトの設置方法の説明図で、削孔された孔にロックボルトを挿入し、ベアリングプレートのロックボルト挿通孔にロックボルトの基部を挿通させ、環状溝に結束バンドを装着した状態の図である。
図10】従来工法の説明図で(A)は支保工の説明図、(B)は覆工コンクリートの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
まず、第1の実施の形態から図1図5を参照して説明する。
なお、従来の箇所、部材に同一の符号を付し、その説明を省略する。
図3図5に示すように、本実施の形態では、NATM工法を用いたトンネル工事において、地山が掘削されることで形成された地山内面50に吹付けるコンクリートC1に、硬化時に体積が膨張する発泡コンクリートC3が用いられる。
発泡コンクリートC3が硬化時に膨張する際の膨張率は、混入する膨張材により調整可能である。
【0009】
また、図1に示すように、地山内面50に削孔された孔52に挿入される側とは反対の端部であるロックボルト54の基部54Aには、ワンタッチ式固定具12がワンタッチで取り付けられる取り付け部14が設けられている。
取り付け部14は、ロックボルト54の基部54Aに貫通形成された貫通孔14Aである。
なお、本実施の形態では従来のナット58を用いないため、ロックボルト54の基部54Aに雄ねじが形成されている必要はない。言い換えると、従来と同様に雄ねじが形成されているものを用いてもよく、雄ねじが形成されていない鉄筋や鋼棒などを用いてもよく、要するにロックボルト54に取り付け部14を設ければよい。
図2図3に示すように、ワンタッチ式固定具12は、貫通孔14Aに挿通され係止される割りピン12Aである。
割りピン12Aは、頭部1202と2本の脚部1204とを有する市販品であり、図4に示すように、割りピン12Aを貫通孔14Aに挿通して脚部1204を開くと、ロックボルト54が挿通されたベアリングプレート56のロックボルト挿通孔5602の周囲の箇所に係止可能な寸法のものが用いられる。
また、図1に示すように、ロックボルト54の基部54Aに、地山内面50に吹付けた発泡コンクリートC3の表面に対してロックボルト54をどこまで挿入するかの目印16が設けられている。この目印16は、例えば、ペンキを塗布することなどで、あるいは、切削加工することなどで設けられている。
目印16から、貫通孔14Aの目印16側の縁までの距離は、ベアリングプレート56の厚さ分の寸法である。
【0010】
次に、本実施の形態のトンネル工事におけるロックボルト54の設置方法について説明する。
図5に示すように、地山が掘削されることで形成された地山内面50に、硬化時に体積が膨張する発泡コンクリートC3が吹き付けられる。
発泡コンクリートC3の膨張途中の半硬化状態で、トンネルの周方向および長手方向に間隔をおいた複数箇所において、発泡コンクリートC3の上から地山に孔52が削孔され、各孔52にモルタルなどの定着材が注入される。
そして、発泡コンクリートC3の上から各孔52にロックボルト54が挿入される。
この場合、図3に示すように、ロックボルト54に設けられた目印16が、発泡コンクリートC3の表面に位置するまで挿入される。
次に、ロックボルト54の基部54Aをベアリングプレート56のロックボルト挿通孔5602に挿通させ、ベアリングプレート56の一方の側面を半硬化状態の発泡コンクリートC3の表面に当て付ける。
【0011】
次に、図3に示すように、ベアリングプレート56の他方の側面が位置するロックボルト54の基部54Aの貫通孔14Aに割りピン12Aを挿入し、図4に示すように、一対の脚部1204を開く。
これによりベアリングプレート56のロックボルト挿通孔5602の周囲の他方の側面の箇所が割りピン12Aに係止可能な状態となり、割りピン12Aの取り付けが終了すると共にロックボルト54の設置作業が終了する。
発泡コンクリートC3の膨張に伴ってベアリングプレート56は地山内面から離れる方向に変位しようとするが、ベアリングプレート56の他方の側面でロックボルト挿通孔5602の周囲の箇所が割りピン12Aに係止され、ベアリングプレート56の発泡コンクリートC3の表面から離れる方向への移動が阻止される。
【0012】
したがって、孔52に注入された定着材と発泡コンクリートC3が硬化することで、発泡コンクリートC3と複数のロックボルト54とによる岩盤の固定化、安定化が図られる。
また、ベアリングプレート56の他方の側面と割りピン12Aとの間に若干の隙間が介在していても、発泡コンクリートC3の膨張に伴ってベアリングプレート56は地山内面から離れる方向に変位し、ベアリングプレート56の他方の側面でロックボルト挿通孔5602の周囲の箇所が割りピン12Aに係止され、ベアリングプレート56の発泡コンクリートC3の表面から離れる方向への移動が阻止される。
したがって、孔52に注入された定着材と発泡コンクリートC3が硬化することで、発泡コンクリートC3と複数のロックボルト54とによる岩盤の固定化、安定化が図られる。
【0013】
本実施の形態によれば、単に割りピン12Aを貫通孔14Aに挿入して脚部1204を開くというワンタッチ作業により、ロックボルト54の設置作業を終了させることができる。
すなわち、従来のロックボルト54の雄ねじにナット58を螺合し、ナット58を回転していく手間取る作業に比べ、極めて短時間でロックボルト54の設置作業を終了させることができ、ロックボルト54の設置作業の効率化を図る上で有利となる。
また、ロックボルト54の設置作業を短時間で行なうことができることから、発泡コンクリートC3が吹き付けられた岩盤付近に短時間いれば足り、危険性を減少する上で有利となる。
また、短時間で地山を支保できるため、地山を早期に安定させる上で有利となる。
特に、本実施の形態によれば、トンネル断面が大きく、トンネルの長さが大きくなり、ロックボルト54の本数が数千、数万本の単位となった場合でも、ロックボルト54の設置作業に要する時間を大幅に短縮でき、トンネル工事の施工期間を短縮化し、コストダウンを図る上で有利となる。
【0014】
なお、ベアリングプレート56の他方の側面と割りピン12Aとの間に若干の隙間が介在していても、ベアリングプレート56の発泡コンクリートC3の表面から離れる方向への移動が阻止され、ロックボルト54の設置作業を行なえることから、図6に示すように、貫通孔14Aをロックボルト54の基部54Aの延在方向に間隔をおいて複数設けると、ベアリングプレート56の他方の側面の近傍の貫通孔14Aに割りピン12Aを挿入することで、ロックボルト54の設置作業を行なえ、目印16を省略することができる。
言い換えると、ベアリングプレート56の他方の側面とワンタッチ式固定具12との間に若干の隙間が介在していても、ベアリングプレート56の発泡コンクリートC3の表面から離れる方向への移動が阻止され、ロックボルト54の設置作業を行なえることから、取り付け部14をロックボルト54の基部54Aの延在方向に間隔をおいて複数設けると、ベアリングプレート56の他方の側面の近傍の取り付け部14にワンタッチ式固定具12を取り付けることで、ロックボルト54の設置作業を簡単に行なえ、目印16を省略することができる。
また、取り付け部14をロックボルト54の基部54Aの延在方向に間隔をおいて複数設けると、1本のロックボルト54を、地山に削孔される深さの異なる孔に共通して利用でき、コストダウンを図る上で有利となる。
なお、取り付け部14が貫通孔14Aで形成され、貫通孔14Aを複数設ける場合、貫通孔14Aの延在方向をロックボルト54の中心軸回りにずらして設けると、ロックボルト54の強度、剛性を確保する上で有利となる。
このように取り付け部14をロックボルト54の基部54Aの延在方向に間隔をおいて複数設けることによる効果は、以下の実施の形態でも同様に奏される。
【0015】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について図7を参照して説明する。
なお、以下の実施の形態では、取り付け部14の構造あるいはワンタッチ式固定具12の構造が第1の実施の形態と異なっており、第1の実施の形態と同様な箇所の説明は省略し、第1の実施の形態と異なった箇所を重点的に説明する。
第2の実施の形態では、取り付け部14は、ロックボルト54の基部54Aに貫通形成された貫通孔14Bであり、ワンタッチ式固定具12は、貫通孔14Bに押し込まれて係止するテーパピン12Bである。
テーパピン12Bは市販品であり、貫通孔14Bに押し込むと貫通孔14Bに係止し、ロックボルト54が挿通されたベアリングプレート56のロックボルト挿通孔5602の周囲の箇所に係止可能な寸法のものが用いられる。
【0016】
ロックボルト54の設置方法は、第1の実施の形態と同様であり、モルタルなどの定着材が注入された孔52にロックボルト54が挿入され、ロックボルト54の基部54Aをベアリングプレート56のロックボルト挿通孔5602に挿通させ、ベアリングプレート56の一方の側面を半硬化状態の発泡コンクリートC3の表面に当て付ける。
次に、ベアリングプレート56の他方の側面が位置するロックボルト54の基部54Aの貫通孔14Bにテーパピン12Bを押し込み貫通孔14Bに係止させる。
これによりベアリングプレート56のロックボルト挿通孔5602の周囲の他方の側面の箇所がテーパピン12Bに係止可能な状態となり、テーパピン12Bの取り付けが終了すると共にロックボルト54の設置作業が終了する。
【0017】
発泡コンクリートC3の膨張に伴ってベアリングプレート56は地山内面から離れる方向に変位しようとするが、ベアリングプレート56の他方の側面でロックボルト挿通孔5602の周囲の箇所が割りピン12Aに係止され、ベアリングプレート56の発泡コンクリートC3の表面から離れる方向への移動が阻止される。
したがって、孔52に注入された定着材と発泡コンクリートC3が硬化することで、発泡コンクリートC3と複数のロックボルト54とによる岩盤の固定化、安定化が図られる。
このような第2の実施の形態によっても第1の実施の形態と同様な効果が奏される。
【0018】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態について図8を参照して説明する。
第3の実施の形態では、取り付け部14は、ロックボルト54の基部54Aの外周部に形成された環状溝14Cであり、ワンタッチ式固定具12は、環状溝14Cに装着されるスナップリング12Cである。
スナップリング12Cは市販品であり、環状溝14Cに装着されるとスナップリング12Cはロックボルト54の基部54Aの軸方向に移動不能となり、ロックボルト54が挿通されたベアリングプレート56のロックボルト挿通孔5602の周囲の箇所に係止可能な寸法のものが用いられる。
【0019】
ロックボルト54の設置方法は、第1の実施の形態と同様であり、モルタルなどの定着材が注入された孔52にロックボルト54が挿入され、ロックボルト54の基部54Aをベアリングプレート56のロックボルト挿通孔5602に挿通させ、ベアリングプレート56の一方の側面を半硬化状態の発泡コンクリートC3の表面に当て付ける。
次に、ベアリングプレート56の他方の側面が位置するロックボルト54の基部54Aの環状溝14Cにスナップリング12Cを装着する。
これによりベアリングプレート56のロックボルト挿通孔5602の周囲の他方の側面の箇所がスナップリング12Cに係止可能な状態となり、スナップリング12Cの取り付けが終了すると共にロックボルト54の設置作業が終了する。
【0020】
発泡コンクリートC3の膨張に伴ってベアリングプレート56は地山内面から離れる方向に変位しようとするが、ベアリングプレート56の他方の側面でロックボルト挿通孔5602の周囲の箇所がスナップリング12Cに係止され、ベアリングプレート56の発泡コンクリートC3の表面から離れる方向への移動が阻止される。
したがって、孔52に注入された定着材と発泡コンクリートC3が硬化することで、発泡コンクリートC3と複数のロックボルト54とによる岩盤の固定化、安定化が図られる。
このような第3の実施の形態によっても第1の実施の形態と同様な効果が奏される。
【0021】
(第4の実施の形態)
次に、第4の実施の形態について図9を参照して説明する。
第4の実施の形態では、取り付け部14は、ロックボルト54の基部54Aの外周部に形成された環状溝14Dであり、ワンタッチ式固定具12は、環状溝14Dに装着される結束バンド12Dである。
結束バンド12Dは市販品であり、歯部が設けられたベルト部と、歯部に噛合可能な締結ヘッドを含んで構成されている。
締結ヘッドにベルト部が挿入されて結束バンド12Dが長尺のベルト1と、そのベルト1の一端に一体に設けた締結ヘッド2とで構成される。環状溝14Dに装着されると、結束バンド12Dはロックボルト54の基部54Aの軸方向に移動不能となり、結束バンド12Dはこの状態でアリングプレート56のロックボルト挿通孔5602の周囲の箇所に係止可能な寸法のものが用いられる。
【0022】
ロックボルト54の設置方法は、第1の実施の形態と同様であり、モルタルなどの定着材が注入された孔52にロックボルト54が挿入され、ロックボルト54の基部54Aをベアリングプレート56のロックボルト挿通孔5602に挿通させ、ベアリングプレート56の一方の側面を半硬化状態の発泡コンクリートC3の表面に当て付ける。
次に、ベアリングプレート56の他方の側面が位置するロックボルト54の基部54Aの環状溝14Dに結束バンド12Dを装着する。
これによりベアリングプレート56のロックボルト挿通孔5602の周囲の他方の側面の箇所が結束バンド12Dに係止可能な状態となり、結束バンド12Dの取り付けが終了すると共にロックボルト54の設置作業が終了する。
【0023】
発泡コンクリートC3の膨張に伴ってベアリングプレート56は地山内面から離れる方向に変位しようとするが、ベアリングプレート56の他方の側面でロックボルト挿通孔5602の周囲の箇所が結束バンド12Dに係止され、ベアリングプレート56の発泡コンクリートC3の表面から離れる方向への移動が阻止される。
したがって、孔52に注入された定着材と発泡コンクリートC3が硬化することで、発泡コンクリートC3と複数のロックボルト54とによる岩盤の固定化、安定化が図られる。
このような第4の実施の形態によっても第1の実施の形態と同様な効果が奏される。
【0024】
なお、第1~第4の実施の形態では、ワンタッチ式固定具12として割りピン12A、テーパリング12B、スナップリング12C、結束バンド12Dを用いた場合について説明したが、ワンタッチ式固定具12はそれらに限定されず従来公知の様々なワンタッチ式固定具を採用可能であり、採用するワンタッチ式固定具に対応して取り付け部の構造も変わる。ただし、ワンタッチ式固定具12として割りピン12A、テーパリング12B、スナップリング12C、結束バンド12Dを用いると、それらは安価な市販品であり簡単に入手できることから、トンネル工事のコストダウンを図る上で有利となる。
【符号の説明】
【0025】
12 ワンタッチ式固定具
1202 頭部
1204 脚部
12A 割りピン
12B テーパピン
12C スナップリング
12D 結束バンド
14 取り付け部
14A、14B 貫通孔
14C、14D 環状溝
16 目印
C1、C2 コンクリート
50 地山内面
52 孔
54 ロックボルト
54A 基部
56 ベアリングプレート
5602 ロックボルト挿通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10