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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】織機
(51)【国際特許分類】
   D03D 51/02 20060101AFI20231212BHJP
   D03D 49/02 20060101ALI20231212BHJP
   D03D 51/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
D03D51/02
D03D49/02
D03D51/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020097692
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021188215
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】名木 啓一
(72)【発明者】
【氏名】山岸 大吾
(72)【発明者】
【氏名】田村 公一
(72)【発明者】
【氏名】山 和也
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-107838(JP,A)
【文献】特開平5-156551(JP,A)
【文献】特開昭53-74160(JP,A)
【文献】特開2007-107147(JP,A)
【文献】特開昭62-170559(JP,A)
【文献】実開昭56-28086(JP,U)
【文献】特開昭56-91045(JP,A)
【文献】特開2007-332477(JP,A)
【文献】特開平10-102357(JP,A)
【文献】特表2008-505256(JP,A)
【文献】中国実用新案第209508527(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 51/00-51/46
D03D 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
織機の主軸が連結される駆動軸であって筬を揺動駆動するための揺動軸が揺動機構を介して連結される駆動軸と、該駆動軸が駆動伝達機構を介して連結されて前記駆動軸を回転駆動する原動モータと、前記駆動軸に連結された前記主軸に対し制動を掛けるブレーキ装置と、前記駆動軸及び前記揺動軸の各軸線方向を幅方向と一致させる向きで前記駆動軸及び前記揺動軸を収容する筐体状のサイドフレームとを備えた織機において、
前記駆動伝達機構は、前記サイドフレームの空間内で前記駆動軸と平行に延在すると共に前記サイドフレームの側壁から突出するように設けられた駆動伝達軸であって前記原動モータに連結される駆動伝達軸と、該駆動伝達軸と前記駆動軸とを連結する伝達機構とを含み、
前記伝達機構は、前記駆動軸と前記揺動機構との連結位置よりも前記幅方向における前記主軸側の位置で前記駆動伝達軸と前記駆動軸とを連結する
ことを特徴とする織機。
【請求項2】
前記伝達機構は、前記駆動伝達軸に取り付けられる駆動歯車と前記駆動軸に取り付けられる従動歯車とを含む歯車列である
ことを特徴とする請求項1に記載の織機。
【請求項3】
前記ブレーキ装置は、前記駆動伝達軸を介して前記駆動軸に制動を掛けるように前記駆動伝達軸に連結されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の織機。
【請求項4】
前記駆動軸は、その中間部分が両側の部分に対し偏心する偏心部として形成されたクランク形状の軸であり、前記偏心部に対し前記揺動機構が連結されている
ことを特徴とする請求項2に記載の織機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機の主軸が連結される駆動軸であって筬を揺動駆動するための揺動軸が揺動機構を介して連結される駆動軸と、該駆動軸が駆動伝達機構を介して連結されて駆動軸を回転駆動する原動モータと、駆動軸に連結された主軸に制動を掛けるブレーキ装置と、駆動軸及び揺動軸の各軸線方向を幅方向と一致させる向きで駆動軸及び揺動軸を収容する筐体状のサイドフレームとを備えた織機に関する。
【背景技術】
【0002】
織機において、フレームは、一対のサイドフレームを含み、そのサイドフレームが複数の梁材で連結された構成となっている。また、織機は、主駆動源としての原動モータを備えており、その原動モータにより主軸(メインシャフト)を駆動するように構成されている。そして、その原動モータは、一対のサイドフレームのうちの一方のサイドフレームの側に設けられている。なお、各サイドフレームは、筐体形状を成しており、その内部に空間を有している。
【0003】
また、前記一方のサイドフレーム内には、その一端部に主軸が連結される駆動軸が収容されている。そして、その駆動軸が原動モータによって回転駆動されることで、その駆動軸に連結された主軸が回転駆動される。また、その駆動軸の回転は、筬を揺動駆動するためのものともなっている。具体的には、前記一方のサイドフレーム内には筬を揺動駆動するための揺動軸も収容されており、その揺動軸がカム機構、クランク機構といった揺動機構を介して駆動軸と連結されている。そして、前記のように駆動軸が回転駆動されるのに伴い、揺動軸が揺動駆動され、それによって筬が揺動駆動されるように織機が構成されている。
【0004】
そして、前記のように原動モータにより駆動軸を回転駆動するために駆動軸と原動モータとを連結する構成(駆動伝達機構)としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。その特許文献1に開示された構成では、駆動軸は、主軸が連結される一端部とは反対側の端部(他端部)がサイドフレームの外側の側壁から突出するように設けられている。
【0005】
また、特許文献1には説明は無いが、一般的な織機では、駆動軸を回転駆動する原動モータは、その駆動軸を収容するサイドフレームの外側において、サイドフレーム等に取り付けられたブラケットに支持されるかたちで設けられている。そして、その原動モータと駆動軸とは、例えば、原動モータの出力軸及び駆動軸の他端部のそれぞれに取り付けられたプーリと両プーリに掛けられたタイミングベルトとで連結されている。また、織機は、駆動軸に連結された主軸に制動を掛けるためのブレーキ装置(例えば、電磁ブレーキ)を備えている。そして、一般的には、そのブレーキ装置は、駆動軸の他端部に連結されており、駆動軸に制動を掛けることで主軸に制動を掛けるように設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-107838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、駆動軸は、前述のように、その一端部において主軸と連結されると共に、その中間部において揺動機構と連結されている。そして、その主軸には、主軸を駆動源とする装置(例えば、開口装置)が連結され、また、揺動機構には、筬打ち装置が連結されている。したがって、原動モータによって駆動軸を回転駆動すると、(特に駆動開始時において、)それらの装置を駆動するための負荷が、主軸及び揺動機構が連結される位置において回転抵抗として駆動軸に対し作用する。
【0008】
そのため、特許文献1のような構成では、駆動軸における原動モータ側(駆動伝達機構)と連結される連結位置(拘束点)に対する軸端側(一端部側)の部分(=駆動軸全体)に対し、前記のような回転抵抗が全て掛かることとなる。その結果、駆動軸に対し大きな捻れが発生してしまう場合がある。そして、そのような大きな捻れが発生すると、前記のように駆動軸に連結される各装置の位相が、駆動軸を回転駆動する原動モータの回転位相と比べて遅れた状態となる。それにより、筬打ちタイミングや開口タイミング等にもズレが生じてしまい、その結果として、製織に悪影響が及ぶこととなる。
【0009】
そこで、本発明は、原動モータの回転を駆動軸に伝達する駆動伝達機構を駆動軸の捻れが可及的に小さくなるような構成とすることで、駆動軸に連結される装置における位相のズレを小さくすることができる織機の構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成すべく、本発明は、前述のような織機において、駆動伝達機構が、サイドフレームの空間内で駆動軸と平行に延在すると共にサイドフレームの側壁から突出するように設けられた駆動伝達軸であって原動モータに連結される駆動伝達軸と、駆動伝達軸と駆動軸とを連結する伝達機構とを含み、伝達機構が、駆動軸と揺動機構との連結位置よりもサイドフレームの幅方向における主軸側の位置で駆動伝達軸と駆動軸とを連結することを特徴とする。
【0011】
また、そのような本発明による織機において、伝達機構は、駆動伝達軸に取り付けられる駆動歯車と駆動軸に取り付けられる従動歯車とを含む歯車列であっても良い。さらに、ブレーキ装置は、駆動伝達軸を介して駆動軸に制動を掛けるように駆動伝達軸に連結されるものとしても良い。また、駆動軸を、その中間部分が両側の部分に対し偏心する偏心部として形成されたクランク形状の軸とし、偏心部に対し揺動機構が連結されるものとしても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明による織機によれば、原動モータに連結される駆動伝達軸と駆動軸との連結位置(前記拘束点)が、駆動軸における揺動機構との連結位置よりも主軸側となるように、駆動伝達機構が構成されている。それにより、前記のように2カ所において駆動軸に対して作用する前記回転抵抗は、駆動軸における前記拘束点に対する両軸端側(一端部側及び他端部側)の部分で、それぞれ1カ所ずつで作用することとなる。したがって、そのように構成された本発明の織機によれば、駆動軸の前記拘束点よりも軸端側の部分に対し作用する前記回転抵抗が前記した従来の構成と比べて小さくなるため、駆動軸の捻れもその従来の構成と比較して小さいものとなる。それにより、駆動軸の捻れに起因する前記のような位相のズレを小さくすることができる。
【0013】
また、そのような本発明による織機において、駆動軸と駆動伝達軸とを連結する伝達機構を歯車列とすることにより、そのように構成された駆動伝達機構は、メンテナンスの面において有利なものとなる。詳しくは、伝達機構の構成としては、プーリ及びタイミングベルトを介して連結する構成とすることも考えられる。但し、その場合には、タイミングベルトの張力の調整等の作業が必要となる。それに対し、伝達機構を歯車列とすることで、そのような作業が不要となる。したがって、その構成によれば、駆動伝達機構は、メンテナンスの面において有利なものとなる。
【0014】
また、前記した本発明による織機において、駆動軸と連結された駆動伝達軸に制動を掛けるようにブレーキ装置が駆動伝達軸に連結されるものとすることで、ブレーキ装置による主軸の制動時における駆動軸の捻れも小さくすることができる。
【0015】
詳しくは、前記のように主軸に制動を掛けるべく駆動軸に制動を掛けると、駆動軸及び主軸に連結された装置の動作を停止させるための負荷(慣性力)が、前記した回転抵抗と同様に、駆動軸と主軸及び揺動機構との連結位置において駆動軸に対し作用する。そこで、前記のように駆動軸と連結された駆動伝達軸に制動を掛けるような織機の構成とすることで、制動時に駆動軸に掛かる負荷が小さくなり、駆動軸の捻れも従来の構成と比較して小さいものとなる。なお、そのように制動時における駆動軸の捻れが小さくなることで、その駆動軸の捻れに起因する駆動軸を支持する軸受に掛かる負荷も小さくなり、その結果として、その軸受の破損を可及的に防止することができる。
【0016】
また、織機における揺動機構としては、前記したようにカム機構やクランク機構が存在するが、駆動軸がクランク形状の軸、すなわち、揺動機構がクランク機構である織機に対し本発明を適用する方がより効果的である。詳しくは、クランク機構を揺動機構として採用した場合、駆動軸が偏心部分を有するクランク形状の軸であるため、駆動軸が偏心部分を有さない軸であるカム機構の場合と比べ、筬の揺動駆動に伴って駆動軸に掛かる負荷(前記回転抵抗)によって軸の捻れが生じ易い。したがって、揺動機構がクランク機構である織機の方が、本発明を適用する上でより有効である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る一実施形態における織機1の正面断面図である。
図2図1のA-A線断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下では、図1及び図2に基づき、本発明が適用された織機の一実施形態(実施例)について説明する。
【0019】
織機1において、フレーム10は、筐体形状を成す一対のサイドフレーム12、12を含み、そのサイドフレーム12が複数の梁材で連結された構成となっている。また、織機1は、原動モータ20を備えており、その原動モータ20により織機1の主軸5を駆動するように構成されている。そして、その原動モータ20は、一対のサイドフレーム12、12のうちの一方のサイドフレーム(以下、「駆動側フレーム」と言う。)12の側に設けられている。
【0020】
そして、駆動側フレーム12は、主体的な部分であるフレーム本体14と、フレーム本体14に取り付けられるフレームカバ16とで構成されている。具体的には、フレーム本体14は、内部に空間を有する筐体形状に形成されているが、織機1の幅方向において外側となる側壁(外壁部)14aにおける一部分(幅方向に見て後述する揺動機構60等に対応する部分)が開放された形状となっている。また、フレームカバ16は、板状に形成された部材であり、フレーム本体14の開放された部分(開放部)14cを覆うことが可能な大きさを有している。そして、駆動側フレーム12は、フレーム本体14に対し開放部14cを覆うようなかたちでフレームカバ16が取り付けられる構成となっている。したがって、前記幅方向において外側となる駆動側フレーム12の側壁(外側壁)12aは、フレーム本体14の外壁部14aとその開放部14cを覆うフレームカバ16とから成っている。なお、フレーム本体14に対するフレームカバ16の取り付けは、ボルト等のネジ部材(図示略)を用いて行われており、フレームカバ16はフレーム本体14に対し着脱可能となっている。
【0021】
また、織機1は、原動モータ20と主軸5との間に介装される駆動軸30であって、原動モータ20によって回転駆動されると共に主軸5を回転駆動する駆動軸30を備えている。さらに、織機1は、筬打ち装置40におけるロッキング軸44を揺動駆動するための揺動軸50、及びその揺動軸50と駆動軸30とを連結する揺動機構60を備えている。なお、本実施例は、その揺動機構60としてクランク機構が採用された例である。そして、その駆動軸30、揺動軸50及び揺動機構60は、前記幅方向に見て駆動側フレーム12における開放部14cの範囲内に位置するような配置で、前記した駆動側フレーム12内の空間に収容されている。そのような織機1における各構成について、詳しくは以下の通り。
【0022】
駆動軸30は、その軸線方向における寸法(長さ寸法)が駆動側フレーム12の前記幅方向における寸法よりも大きい軸として形成されている。但し、駆動軸30は、その中間の部分が両側の部分(両側部)に対し偏心する偏心部32として形成されたクランク形状の軸となっている。そして、駆動軸30は、その軸線方向を前記幅方向に一致させた向きで、駆動側フレーム12の両側壁12a、12bに対し軸受を介して回転可能に支持されており、そのようなかたちで駆動側フレーム12に収容されている。
【0023】
なお、その支持位置は、駆動側フレーム12を前記幅方向に見て、駆動軸30がフレーム本体14における開放部14c内の中間付近よりも下側に位置するような位置となっている。そして、駆動軸30は、その一端側においては、その一端部でフレームカバ16に対し支持されている。したがって、駆動軸30は、その他端側においては、他端部を含む部分がフレーム本体14の前記幅方向における内側の側壁(内壁部)14bから突出するかたちで設けられた状態となっている。そして、その駆動軸30は、その突出する部分よりも駆動側フレーム12側の部分においてフレーム本体14の内壁部に支持されている。そして、その駆動軸30における他端部には、カップリング部材70によって主軸5が連結されている。
【0024】
揺動軸50は、駆動軸30と同じく、駆動側フレーム12の前記幅方向における寸法よりも大きい軸として形成されている。そして、揺動軸50は、駆動軸30と平行を成す向きで、駆動軸30と同様に駆動側フレーム12の両側壁12a、12bに対し軸受を介して支持され、駆動側フレーム12に収容されている。なお、その支持位置は、駆動側フレーム12を前記幅方向に見て、駆動軸30と同じくフレーム本体14における開放部14cの範囲内の位置であって、駆動軸30よりも上側の位置となっている。そして、揺動軸50も、その一端部においてフレームカバ16に支持されると共に、他端部を含む部分がフレーム本体14の内壁部14bから突出するように設けられ、その他端側においてフレーム本体14の内壁部14bに支持されている。その上で、その揺動軸50の他端部には、筬42を支持するロッキング軸44がカップリング部材72によって連結されている。
【0025】
揺動機構60は、前記のようにクランク機構であり、揺動軸50に対し相対的に回転不能に設けられた揺動アーム62と、その揺動アーム62と駆動軸30の偏心部32とを連結するリンクである連結レバ64とを含んでいる。なお、図示の例では、揺動軸50と揺動アーム62とは一体的に形成されている。また、連結レバ64は、揺動アーム62及び駆動軸30(偏心部32)に対し相対的に回転可能に連結されている。その上で、その揺動機構60においては、駆動軸30が回転駆動されて偏心部32が両側部の軸心から偏心した位置で回転運動することで、連結レバ64を介して偏心部32に連結された揺動アーム62(揺動軸50)が揺動駆動される。したがって、その構成では、駆動軸30の一部も揺動機構60として機能している。そして、そのように揺動軸50が揺動駆動されることで、その揺動軸50に連結されたロッキング軸44、及びそのロッキング軸44に支持された筬42が揺動運動し、筬打ち動作が行われる。
【0026】
以上のような織機1において、その織機1は、主軸5に連結された駆動軸30を原動モータ20で回転駆動すべく駆動軸30と原動モータ20とを連結する駆動伝達機構80を備えている。その上で、本発明では、その駆動伝達機構80が、原動モータ20に連結される駆動伝達軸82、及びその駆動伝達軸82と駆動軸30とを連結する伝達機構84を含むように構成される。なお、本実施例は、その伝達機構84が歯車列であると共に、その歯車列が駆動側フレーム12内に収容される例である。そのような本実施例の駆動伝達機構80について、詳しくは、以下の通りである。
【0027】
駆動伝達軸82は、その軸線方向における寸法(長さ寸法)が駆動側フレーム12の前記幅方向における寸法よりも大きく且つ前記した駆動軸30の長さ寸法よりも大きい軸として形成されている。その上で、駆動伝達軸82は、駆動軸30と平行を成す向きで、その一端部の側において駆動側フレーム12の内側壁12bに対し軸受を介して支持されると共に、フレーム本体14の外壁部14a(駆動側フレーム12の外側壁12a)を貫通し、その他端部が外壁部14aよりも外側に位置するように設けられている。したがって、駆動伝達軸82は、軸受で支持されている部分から外壁部14aに至る間の部分が駆動側フレーム12内に収容された状態となっている。但し、駆動伝達軸82は、前記のように一端部の側において内側壁12bに支持されるが、その一端部が内側壁12bよりも外側に位置するように、内側壁12bからも突出するように設けられている。その上で、そのように設けられた駆動伝達軸82は、駆動側フレーム12内において、伝達機構84により駆動軸30と連結されている。
【0028】
なお、その駆動伝達軸82の支持位置は、フレーム本体14における開放部14cの範囲外の位置であって駆動軸30に対し下方に離間した位置となっている。また、フレーム本体14の外壁部14aには、前記のような駆動伝達軸82の貫通を許容すべく、その支持位置に対応する位置に貫通孔14dが形成されている。
【0029】
また、伝達機構84は、本実施例では、駆動側フレーム12内に収容される2つの歯車を含む歯車列として構成されている。具体的には、その伝達機構84は、駆動伝達軸82に対し相対回転不能に取り付けられた駆動歯車84aと、その駆動歯車84aに噛合する従動歯車84bであって駆動軸30に対し相対回転不能に取り付けられた従動歯車84bとで構成されている。但し、駆動歯車84a及び従動歯車84bが各軸に対し取り付けられる位置は、前記した駆動軸30(偏心部32)と揺動機構60(連結レバ64)との連結位置よりも、前記幅方向における駆動側フレーム12の内側壁12bの側の位置となっている。すなわち、本実施例では、駆動伝達軸82と駆動軸30とが、駆動軸30と揺動機構60との連結位置よりも前記幅方向における駆動側フレーム12の内側壁12bの側の位置で連結されている。
【0030】
また、駆動伝達軸82は、その他端部側において、その駆動伝達軸82を回転駆動するための原動機構90であって、原動モータ20を含む原動機構90と連結されている。その原動機構90は、原動モータ20に加え、原動モータ20の出力軸22と駆動伝達軸82とを連結する原動歯車列92とを備えている。また、原動機構90は、基体となる筐体形状の原動ボックス94を有しており、原動モータ20がその原動ボックス94の外側面に取り付けられると共に、原動歯車列92がその原動ボックス94内に収容される構成となっている。
【0031】
なお、その原動ボックス94は、対向する一対の側壁94a、94bのうちの一方の側壁94aにおける外側面94a1に原動モータ20が取り付けられると共に、その両側壁94a、94bが駆動側フレーム12における外側壁12aと平行を成すように設けられている。そして、原動ボックス94は、織機1の前後方向において駆動側フレーム12と重複して設けられている。また、前記のように駆動側フレーム12から突出する駆動伝達軸82が原動ボックス94内に収容された原動歯車列92と連結されることから、駆動伝達軸82は、原動ボックス94における一対の側壁94a、94bのうちの他方の側壁94bを貫通し、その他端部側の部分が原動ボックス94内に位置する(原動ボックス94に収容される)こととなる。そこで、その原動ボックス94における他方の側壁94bには、そのような駆動伝達軸82の貫通を許容する貫通孔94dが形成されている。
【0032】
その上で、前記のように駆動側フレーム12から突出する駆動伝達軸82は、その他端部において原動ボックス94における一方の側壁94aに対し軸受を介して支持されている。但し、その原動ボックス94は、その駆動伝達軸82が貫通する他方の側壁94bが駆動側フレーム12から離間するように設けられている。
【0033】
原動モータ20は、前記のように支持された駆動伝達軸82に対し上方に離間した位置で、出力軸22を駆動側フレーム12の側へ向ける向きで、ボルト等(図示略)によって原動ボックス94に取り付けられている。なお、その原動モータ20が取り付けられる原動ボックス94における一方の側壁94aには、その取り付け位置において、原動モータ20の出力軸22の貫通を許容する貫通孔94cが形成されている。したがって、前記のように原動ボックス94に原動モータ20が取り付けられた状態では、その出力軸22は、原動ボックス94内で前記幅方向に延在すると共に、駆動伝達軸82と平行を成すように存在している。その上で、その出力軸22は、原動ボックス94内において、駆動伝達軸82の他端部側の部分に対し原動歯車列92を介して連結されている。
【0034】
その原動歯車列92は、駆動軸30と駆動伝達軸82とを連結する歯車列84と同じく、2つの歯車で構成されている。具体的には、原動歯車列92は、原動モータ20の出力軸22に対し相対回転不能に取り付けられた駆動歯車92aと、その駆動歯車92aに噛合する従動歯車92bであって駆動伝達軸82に対し相対回転不能に取り付けられた従動歯車92bとで構成されている。
【0035】
また、織機1は、駆動軸30に連結された主軸5に制動を掛けるためのブレーキ装置(例えば、電磁ブレーキ)110を備えている。そして、ブレーキ装置110は、駆動側フレーム12よりも前記幅方向における内側の位置で、駆動伝達軸82と連結されるように設けられている。そこで、駆動伝達軸82は、そのブレーキ装置110との連結のために、その一端部が駆動側フレーム12の内側壁12bから突出するように設けられている。その上で、ブレーキ装置110は、駆動側フレーム12の内側壁12bに対し取り付けられると共に、その突出する駆動伝達軸82の一端部に対し連結されている。そして、そのような構成によれば、織機1(主軸5)の制動時において、ブレーキ装置110により駆動伝達軸82に対し制動が掛けられることで、前記のように伝達機構84を介して連結された駆動軸30に対し制動が掛けられることとなり、その結果としてその駆動軸30に連結された主軸5の回転が停止される。
【0036】
因みに、図示の例では、フレーム本体14は、その外壁部14aにおける貫通孔14dの周囲において外壁部14aから原動ボックス94の側へ向けて突出するように形成された突出部14eを有している。一方、原動ボックス94も、その他方の側壁94bにおける貫通孔94dの周囲において他方の側壁94bから駆動側フレーム12の側へ向けて突出するように形成された突出部94eを有している。そして、フレーム本体14及び原動ボックス94は、その両突出部14e、94eが互いに嵌まり合うかたちで連結されている。なお、その突出部14e、94e内の空間において、突出部14e、94eの内周面と駆動伝達軸82との間には、オイルシール100が設けられている。
【0037】
以上のように構成された本実施例の織機1によれば、原動モータ20(出力軸22)の回転を主軸5に伝達する駆動伝達機構80における駆動伝達軸82であって、主軸5に連結されると共に原動モータ20によって回転駆動される駆動伝達軸82は、その一端部側の部分が駆動側フレーム12に収容されると共に、駆動側フレーム12内において駆動軸30と連結されている。
【0038】
その上で、その駆動伝達軸82と駆動軸30との連結位置は、前記幅方向に関し、駆動軸30と揺動機構60との連結位置に対して主軸5側(駆動軸30と主軸5との連結位置側)である駆動側フレーム12の内側壁12bの側の位置となっている。それにより、駆動軸30上においては、駆動伝達機構80(伝達機構84)との連結位置がその駆動軸30の拘束点となるが、揺動機構60との連結位置及び主軸5との連結位置は、その一方(揺動機構60側)がその拘束点に対する一方の軸端部側(一端部側)に位置し、他方(主軸5側)が他方の軸端部側(他端部側)に位置することとなる。したがって、揺動機構60との連結位置及び主軸5との連結位置において駆動軸30に作用する回転抵抗は、拘束点に対する両軸端部側(一端部側及び他端部側)のそれぞれにおいて1カ所ずつで作用することとなる。
【0039】
そして、そのように構成された織機1によれば、拘束点に対する一方の軸端部側で全ての回転抵抗が作用するような従来の構成と比べて、駆動軸30における揺動機構60との連結部分及び主軸5との連結部分でのそれぞれの捻れ量が小さくなる。その結果として、駆動軸30に連結される装置において駆動軸30の捻れに起因して発生する位相のズレが従来の構成と比べて小さくなる。
【0040】
また、その織機1においては、ブレーキ装置110が、駆動軸30と連結された駆動伝達軸82に制動を掛けるように設けられている。したがって、その構成によれば、主軸5の制動時において、駆動軸30における主軸5及び揺動機構60との連結位置に掛かる負荷(慣性力)が、前記した回転抵抗と同様に、前記拘束点に対する両軸端部側のそれぞれにおいて1カ所ずつで作用することとなる。それにより、主軸5の制動時の負荷に起因する駆動軸30の捻れ量も、前記した回転抵抗による捻れ量と同様に小さくなり、制動時における駆動軸30の捻れに起因する軸受の破損を可及的に防止することができる。
【0041】
以上では、本発明が適用された織機の一実施形態(以下、「前記実施例」と言う。)について説明した。しかし、本発明は、前記実施例において説明した構成に限定されるものではなく、以下のような別の実施形態(変形例)での実施も可能である。
【0042】
(1)駆動軸と駆動伝達軸とを連結する伝達機構について、その伝達機構は、前記実施例のような駆動側フレーム12内に収容される駆動歯車84a及び従動歯車84bの2つの歯車から成る歯車列には限らない。例えば、その伝達機構は、同じく歯車列で構成されたものであっても、3以上の歯車から成る歯車列であっても良い。また、その伝達機構は、歯車列で構成されたものに限らず、駆動軸に取り付けられたプーリと駆動伝達軸に取り付けられたプーリとをタイミングベルトで連結するように構成されたものであっても良い。
【0043】
(2)駆動軸と駆動伝達軸とを伝達機構で連結する位置について、その連結位置(拘束点)は、前記実施例のような駆動側フレーム内の位置に限らない。例えば、駆動伝達軸を駆動側フレームの内側壁よりも主軸側に突出するような軸として形成した上で、駆動軸と駆動伝達軸とを駆動側フレーム外の位置(駆動側フレームの内側壁よりも前記幅方向における主軸側の位置)で連結するようにしても良い。
【0044】
(3)ブレーキ装置を設ける位置について、前記実施例では、ブレーキ装置110は、駆動伝達軸82に連結されるかたちで、駆動側フレーム12に対する前記幅方向における内側に設けられている。しかし、本発明においては、そのブレーキ装置を設ける位置は、駆動伝達軸に連結される場合であっても、駆動側フレームに対し、前記内側に限らず、外側であっても良い。そして、その場合には、そのブレーキ装置を、駆動側フレームの外側壁に取り付けるか、あるいは原動ボックスの側壁に取り付けるかたちで設けるようにすれば良い。
【0045】
また、本発明は、駆動伝達軸に連結するかたちでブレーキ装置が設けられるように構成されたものに限定されず、駆動軸に連結されるかたちでブレーキ装置が設けられるものであっても良い。さらに、そのブレーキ装置の配置については、駆動軸及び駆動伝達軸とは別の軸(ブレーキ軸)であって、駆動軸又は駆動伝達軸に対し歯車列等を介して連結されるブレーキ軸をサイドフレーム内に設け、そのブレーキ軸に対し連結されるようにブレーキ装置を設けるようにしても良い。
【0046】
(4)揺動機構について、前記実施例は、揺動機構60としてクランク機構が採用された織機に対して本発明を適用した例である。そして、前記実施例では、揺動機構60における揺動アーム62が揺動軸50と一体的に形成されたものとなっている。しかし、その揺動機構は、前記実施例のようなクランク機構であっても、揺動アームと揺動軸とが別部材として形成された上で、両者が相対回転不能に連結されるように構成されたものであっても良い。また、その揺動機構は、前記実施例のようなクランク機構に限らず、カム機構であっても良い。そして、その場合には、カムが取り付けられる軸が、本発明で言う駆動軸となる。
【0047】
また、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 織機
5 主軸
10 フレーム
12 駆動側フレーム(サイドフレーム)
12a 駆動側フレームの外側壁
12b 駆動側フレームの内側壁
14 フレーム本体
14a フレーム本体の外壁部
14b フレーム本体の内壁部
14c 開放部
14d 貫通孔
14e 突出部
16 フレームカバ
20 原動モータ
22 出力軸
30 駆動軸
32 偏心部
40 筬打ち装置
42 筬
44 ロッキング軸
50 揺動軸
60 揺動機構
62 揺動アーム
64 連結レバ
70 カップリング部材
72 カップリング部材
80 駆動伝達機構
82 駆動伝達軸
84 伝達機構
84a 駆動歯車
84b 従動歯車
90 原動機構
92 原動歯車列
92a 駆動歯車
92b 従動歯車
94 原動ボックス
94a 一方の側壁
94a1 外側面
94b 他方の側壁
94c 貫通孔
94d 貫通孔
94e 突出部
100 オイルシール
110 ブレーキ装置
図1
図2